JPWO2016136052A1 - エポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂硬化物、プリプレグおよび繊維強化複合材料 - Google Patents
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Abstract
強化繊維への含浸性に優れ、かつ、成形時の樹脂フローを適正に制御でき、さらには面内剪断強度に優れた繊維強化複合材料を与えるエポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂硬化物およびプリプレグを提供する。少なくとも次の構成要素[A]、[B]、[C]を有してなるエポキシ樹脂組成物である。[A]エポキシ樹脂[B]重量平均分子量2000〜20000g/molであるポリエーテルスルホン[C]硬化剤
Description
本発明は、航空宇宙用途に適した繊維強化複合材料、これを得るためのプリプレグ、さらにはそのマトリックス樹脂として好適に用いられるエポキシ樹脂組成物に関するものである。
近年、炭素繊維やアラミド繊維等の強化繊維を用いた繊維強化複合材料は、その高い比強度と比弾性率を利用して、航空機や自動車等の構造材料、テニスラケット、ゴルフシャフト、および釣り竿等のスポーツ・一般産業用途等に利用されてきた。
その繊維強化複合材料の製造方法には、強化繊維に未硬化のマトリックス樹脂が含浸されたシート状中間材料であるプリプレグを用い、それを複数枚積層した後、加熱硬化させる方法や、モールド中に配置した強化繊維に液状の樹脂を流し込んで中間体を得て、それを加熱硬化させるレジン・トランスファー・モールディング法等が用いられている。これらの製造方法の内、プリプレグを用いる方法は、強化繊維の配向を厳密に制御でき、また積層構成の設計自由度が高いことから、高性能な繊維強化複合材料を得やすい利点がある。このプリプレグに用いられるマトリックス樹脂としては、耐熱性やプロセス性等の生産性の面から、主に熱硬化性樹脂が用いられ、中でも樹脂と強化繊維との接着性や寸法安定性、および得られる複合材料の強度や剛性といった力学特性の観点からエポキシ樹脂が好適に用いられる。
その中で、近年の需要拡大に伴いさらなる軽量化や材料強度向上、および耐久安定性が求められる航空宇宙用途向け繊維強化複合材料には、その強化繊維のマトリックス樹脂として、エポキシ当量が小さく架橋密度の高い樹脂硬化物が得られる多官能の芳香族エポキシ樹脂が好適に用いられてきた。これにより、高弾性率であり、かつ、耐熱性の高い樹脂設計が可能となる一方、変形能力が小さく靭性の低い樹脂硬化物となる傾向があった。これに対し、従来、靱性に優れるゴム成分や熱可塑性樹脂を配合し、エポキシ樹脂と相分離構造を形成させる方法などが試されてきた。しかし、このような場合、樹脂粘度の上昇が著しい為にプロセス性を悪化させ、強化繊維への含浸性が不十分となることがあった。
一方、熱可塑性樹脂の分子量を中程度に低減させ、タックやドレープ性に優れたプリプレグが得られることが開示されている(特許文献1参照)。また、低分子量の熱可塑性樹脂を多量に配合することで、低粘度で高度の靭性を発現させる技術も提案されている(特許文献2参照)。具体的には、アミン末端のポリスルホンオリゴマーを大量に配合することで、低い粘度を保持しつつ高靭性化させる方法が開示されている。さらに、特許文献3では、重量平均分子量が21000のポリエーテルスルホンを配合することで、耐溶剤性を向上させるとともにプリプレグにおける加工性が改善できることが開示されている。
しかし、特許文献1の方法では、熱可塑性樹脂の分子量を大幅に低減したものではないため、熱可塑性樹脂を多量に配合することは困難であり、靱性を発現させることはできなかった。
また、特許文献2の方法では、耐熱性が低下し、かつ、成形時に樹脂のフローが過大となり、成形品の繊維体積含有量や配向にムラを生じ、力学特性にバラツキを生じる等の問題があった。
また、特許文献3の方法では、プロセス性は十分ではなく、繊維強化複合材料の層間靱性を発現させることはできなかった。
このように、十分な耐熱性やプロセス性を兼ね備えつつ、高い靭性を発現する樹脂組成物は得られておらず、前述のような軽量化用途に用いるには、繊維強化複合材料の各種特性も十分なものではなかった。とりわけ、材料軽量化に寄与する高弾性率炭素繊維を使用し、また、高繊維含有率である繊維強化複合材料において、面内剪断強度の向上が強く求められていた。
そこで、本発明の目的は、強化繊維への含浸性に優れ、かつ、成形時の樹脂フローを適正に制御でき、さらには面内剪断強度に優れた繊維強化複合材料を与えるエポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂硬化物およびプリプレグを提供することである。
本発明は、上記目的を達成するために次のいずれかの構成を有するものである。すなわち、すなわち本発明は、以下の構成からなる。
少なくとも構成要素[A]、[B]、[C]を有してなるエポキシ樹脂組成物。
[A]エポキシ樹脂
[B]重量平均分子量2000〜20000g/molであるポリエーテルスルホン
[C]硬化剤。
[A]エポキシ樹脂
[B]重量平均分子量2000〜20000g/molであるポリエーテルスルホン
[C]硬化剤。
さらに、本発明においては、前記エポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸させてなるプリプレグとすること、さらには、前記エポキシ樹脂組成物の硬化物および強化繊維を含む繊維強化複合材料とすることができる。
本発明によれば、特定範囲の動的粘弾性を有するエポキシ樹脂組成物とすることにより、低粘度で強化繊維への含浸性に優れ、かつ、成形時の樹脂フローコントロールが可能となる繊維強化複合材料、およびこれを得るためのエポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂硬化物およびプリプレグが得られる。さらには、かかるエポキシ樹脂組成物を用いることで、面内剪断強度に優れた繊維強化複合材料を得られる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、少なくとも下記の構成要素[A]、[B]、[C]を有してなる。
[A]エポキシ樹脂
[B]重量平均分子量2000〜20000g/molであるポリエーテルスルホン
[C]硬化剤。
[A]エポキシ樹脂
[B]重量平均分子量2000〜20000g/molであるポリエーテルスルホン
[C]硬化剤。
本発明における構成要素[A](構成要素を成分ということがある)はエポキシ樹脂であり、エポキシ樹脂硬化物の機械物性、取り扱い性の根幹をなす。本発明におけるエポキシ樹脂は、1分子内に1個以上のエポキシ基を有する化合物を意味する。
本発明におけるエポキシ樹脂の具体例としては、水酸基を複数有するフェノールから得られる芳香族グリシジルエーテル、水酸基を複数有するアルコールから得られる脂肪族グリシジルエーテル、アミンから得られるグリシジルアミン、カルボキシル基を複数有するカルボン酸から得られるグリシジルエステル、オキシラン環を有するエポキシ樹脂などが挙げられる。
中でも、低粘度で強化繊維への含浸性に優れ、また繊維強化複合材料とした際の耐熱性と弾性率等の力学物性に優れることから、グリシジルアミン型のエポキシ樹脂を好適に使用できる。かかるグリシジルアミン型のエポキシ樹脂は、多官能アミン型エポキシ樹脂と2官能アミン型エポキシ樹脂に大別できる。
多官能アミン型エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂1分子内に3つ以上のエポキシ基を含むグリシジルアミン型エポキシ樹脂を指す。例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノール、テトラグリシジルキシリレンジアミンや、これらのハロゲン置換体、アルキル置換体、アラルキル置換体、アリル置換体、アルコキシ置換体、アラルコキシ置換体、アリロキシ置換体、水添品などを使用することができる。
多官能アミン型エポキシ樹脂は特に限定されるものではないが、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノール、テトラグリシジルキシリレンジアミンおよびその置換体、水添品などが好適に使用される。
前記テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンとしては、“スミエポキシ(登録商標)”ELM434(住友化学工業(株)製)、YH434L(新日鉄住金化学(株)製)、“jER(登録商標)”604(三菱化学(株)製)、“アラルダイト(登録商標)”MY720、MY721(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)等を使用することができる。トリグリシジルアミノフェノールおよびそのアルキル置換体としては、“スミエポキシ(登録商標)”ELM100、ELM120(住友化学工業(株)製)、“アラルダイト(登録商標)”MY0500、MY0510、MY0600(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)、“jER(登録商標)”630(三菱化学(株)製)等を使用することができる。テトラグリシジルキシリレンジアミンおよびその水素添加品として、“TETRAD(登録商標)”−X、“TETRAD(登録商標)”−C(三菱ガス化学(株)製)等を使用することができる。
多官能アミン型エポキシ樹脂は、得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性や、弾性率等の力学物性とのバランスに優れることから、本発明におけるエポキシ樹脂として好ましく用いられる。さらに好ましい態様によれば、エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂総量100質量%に対して、多官能アミン型エポキシ樹脂は30〜80質量%含まれることが望ましい。
2官能アミン型エポキシ樹脂は、1分子中に2個のエポキシ基を含むグリシジルアミン型エポキシ樹脂を指す。例えば、ジグリシジルアニリンや、これらのハロゲン置換体、アルキル置換体、アラルキル置換体、アリル置換体、アルコキシ置換体、アラルコキシ置換体、アリロキシ置換体、水添品などを使用することができる。
かかる2官能アミン型エポキシ樹脂は特に限定されるものではないが、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジンや、これらのハロゲン、アルキル置換体、水添品などが挙げられる。
前記ジグリシジルアニリンとしては、GAN(日本化薬(株)製)、PxGAN(東レ・ファインケミカル(株)製)等を使用することができる。ジグリシジルトルイジンとしては、GOT(日本化薬(株)製)等を使用することができる。
2官能アミン型エポキシ樹脂は、繊維強化複合材料の強度発現に優れ、低粘度で強化繊維への含浸性が向上することから、本発明におけるエポキシ樹脂として好ましく用いられる。さらに好ましい態様によれば、エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂総量100質量%に対して、2官能アミン型エポキシ樹脂は10〜60質量%含まれることが望ましい。また、強化繊維との接着性と機械物性のバランスから、多官能アミン型エポキシ樹脂との組合せが好ましく、全エポキシ樹脂組成物中に多官能アミン型エポキシ樹脂が40〜70質量部、2官能アミン型エポキシ樹脂が20〜50質量部含まれることがより好ましい。
本発明における構成要素[B]([B]成分ということがある)は重量平均分子量が2000〜20000g/molのポリエーテルスルホンであり、本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなるエポキシ樹脂硬化物の圧縮破壊時呼び歪みを著しく低下させることなく高い降伏応力を確保でき、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて得られる繊維強化複合材料の面内剪断強度を十分に確保することができる。また、[B]成分は、エポキシ樹脂との相溶性が極めて高く、エポキシ樹脂組成物中でポリエーテルスルホンの分子鎖の絡み合いによる効果が十分に得られ、後述のような動的粘弾性の機構を発現できる。
かかるポリエーテルスルホンは、主鎖中に、エーテル結合とスルホン結合を有し、耐熱性と弾性率、靱性を満たすために必須の骨格である。主鎖がポリエーテルスルホン骨格であれば、側鎖の有無は問わないが、側鎖を有する場合には、側鎖も、なるべく耐熱性の高い骨格であることが望ましい。
また、かかる[B]成分の重量平均分子量は、2000〜20000g/molの範囲にあることが好ましく、より好ましくは4000〜15000g/mol、さらに好ましくは4000〜10000g/molである。かかる重量平均分子量が2000g/molより低いと、エポキシ樹脂組成物を硬化させてなるエポキシ樹脂硬化物の圧縮破壊時呼び歪みが不足し、そのエポキシ樹脂組成物を用いた繊維強化複合材料の面内剪断強度が十分に発現しない場合がある。また、複素粘性率η*の増加に対する貯蔵弾性率G'の増加を十分大きくすることができないため、成形時の樹脂フロー量を適切に制御できなくなることがある。一方、重量平均分子量が20000g/molより高いと、エポキシ樹脂組成物に熱可塑性樹脂を溶解した際、エポキシ樹脂の粘度が高くなり混練が難しく、プリプレグ化が困難となる場合がある。なお、ここで、[B]成分の重量平均分子量とは、ポリスチレン標準サンプルを用いて、GPC(Gel Permeation Chromatography)により求められる相対分子量を指す。
さらに、かかる[B]成分のポリエーテルスルホンの末端は、その末端の60モル%以上が、ヒドロキシフェニル基であることが好ましい。この官能基がエポキシ樹脂もしくは、エポキシ樹脂の硬化剤と反応することによりエポキシ樹脂からなる相と親和性が高くなり、均一に相溶する、もしくは均一に相溶しなくともエポキシ樹脂相と[B]成分のポリエーテルスルホン相の高い界面接着が得られ、エポキシ樹脂組成物とした時に高い圧縮破壊時呼び歪みが得られ、高い降伏応力を確保できる。かかる観点から、[B]成分のポリエーテルスルホンの末端におけるヒドロキシフェニル基の割合は、高いほど好ましく、全ての末端がヒドロキシフェニル基であることが最も好ましい。ヒドロキシフェニル基が末端の60モル%未満(ポリエーテルスルホンの末端におけるヒドロキシフェニル基の割合が60モル%未満の意味。以下同じ。)であると、エポキシ樹脂の種類、マトリックス樹脂の硬化温度によっては、相溶性が十分でなく圧縮破壊時呼び歪みが十分でないことがある。末端がヒドロキシフェニル基である割合は、具体的に例をあげると重水素化DMSO溶媒中、400MHz 1H−NMRを用い、積算回数100回により、7.7ppmにクロル置換された芳香族炭素に隣接するプロトン(1HCl)と、6.9ppmに水酸基で置換された芳香族炭素に隣接するプロトン(1HOH)が高分解能で観測できること、1H−NMRの面積比は、そのモル数を反映していることから、末端官能基組成(モル%)は、下記式により算出することができる。
[末端水酸基組成(モル%)]=[1HOHのピーク面積]/([1HOHのピーク面積]+[1HClのピーク面積])×100。
本発明における[B]成分のポリエーテルスルホンにおいては、ヒドロキシフェニル基が末端の60モル%以上であることが、本発明の効果を発現する上で好ましいが、末端のヒドロキシフェニル基が60モル%以上のポリエーテルスルホンの製造方法に、特に制限はなく、例えば特公昭42−7799号公報、特公昭45−21318号公報、特開昭48−19700号公報に記載の方法で製造することが可能であり、当該文献によれば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属化合物存在下、N−メチルピロリドン、DMF、DMSO、スルホランなどの非プロトン性極性溶媒中で、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンなどの二価のフェノール化合物と4,4’−ジクロロジフェニルスルホンなどの二価のジハロゲノジフェニル化合物を重縮合することで得ることができる。しかしながらその方法では、慎重に条件を選択すれば、目的とする[B]成分のポリエーテルスルホンを得られるものの、重合条件によっては、得られるポリエーテルスルホンの末端のヒドロキシフェニル基の割合は低く、さらに末端のヒドロキシフェニル基の割合を上げようとすると、ポリマー分子量が顕著に低下したり、反応溶液から目的の[B]成分のポリエーテルスルホンを回収することが困難になったりする場合がある。
そのため、本発明において用いられる[B]成分のポリエーテルスルホンの好ましい製造方法としては、まず通常公知の方法、すなわち二価フェノール化合物とジハロゲノジフェニル化合物の重縮合により得られる高分子量のポリエーテルスルホンを原料とし、引き続き得られた高分子量のポリエーテルスルホンと二価フェノール化合物を非プロトン性極性溶媒中で加熱することにより、末端にヒドロキシフェニル基を導入し製造する方法が挙げられる。
本発明における[B]成分のガラス転移温度は、180℃以上230℃以下であることが好ましい。180℃未満であると、エポキシ樹脂の耐熱性によっては、耐熱性を低下させることがあり、230℃を超えると、マトリックス樹脂のガラス転移温度が高くなるために繊維強化複合材料にした際に残留する熱応力が大きくなることがあり、繊維強化複合材料とした時の機械物性が低下することがある。
本発明において、[B]成分は、エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂総量100質量%に対して、好ましくは20〜60質量%、より好ましくは30〜55質量%、さらに好ましくは40〜50質量%含まれることが望ましい。20質量%未満となると、エポキシ樹脂硬化物の圧縮破壊時呼び歪みが低下し、得られる繊維強化複合材料の面内剪断強度が不足する。また、60質量%より多くなると、エポキシ樹脂組成物の粘度が上昇し、エポキシ樹脂組成物およびプリプレグの製造プロセス性や取り扱い性が不十分となる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化剤[C]を含む。ここで硬化剤としては、エポキシ基と反応し得る活性基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、ジシアンジアミド、芳香族ポリアミン、アミノ安息香酸エステル類、各種酸無水物、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ポリフェノール化合物、イミダゾール誘導体、脂肪族アミン、テトラメチルグアニジン、チオ尿素付加アミン、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物のようなカルボン酸無水物、カルボン酸ヒドラジド、カルボン酸アミド、ポリメルカプタンおよび三フッ化ホウ素エチルアミン錯体のようなルイス酸錯体などが挙げられる。
中でも、芳香族ポリアミンを硬化剤として用いることにより、耐熱性の良好なエポキシ樹脂硬化物が得られる。特に、ジアミノジフェニルスルホンもしくはその誘導体、またはその各種異性体は、耐熱性の良好なエポキシ樹脂硬化物を得るため最も適している硬化剤である。
また、ジシアンジアミドと尿素化合物、例えば、3,4−ジクロロフェニル−1,1−ジメチルウレアとの組合せ、あるいはイミダゾール類を硬化剤として用いることにより、比較的低温で硬化しながら高い耐熱耐水性が得られる。酸無水物を用いてエポキシ樹脂を硬化することは、アミン化合物硬化に比べ吸水率の低い硬化物を与える。その他、これらの硬化剤を潜在化したもの、例えば、マイクロカプセル化したものを用いることにより、プリプレグの保存安定性、特にタック性やドレープ性が室温放置しても変化しにくい。
硬化剤の添加量の最適値は、エポキシ樹脂と硬化剤の種類により異なる。例えば、芳香族アミン硬化剤を用いる場合、その配合量は、耐熱性や力学特性の観点から、活性水素量を、エポキシ樹脂中のエポキシ基量の0.6〜1.2倍とすることが好ましく、0.7〜1.1倍とすればより好ましい。0.6倍に満たない場合、硬化物の架橋密度が十分でないため、弾性率、耐熱性が不足したり、繊維強化複合材料の静的強度特性が不足したりする場合がある。1.2倍を超える場合、硬化物の架橋密度や吸水率が高くなりすぎ、変形能力が不足し、繊維複合材料の耐衝撃性に劣る場合がある。
芳香族ポリアミン硬化剤の市販品としては、セイカキュアS(和歌山精化工業(株)製)、MDA−220(三井化学(株)製)、“jERキュア(登録商標)”W(三菱化学(株)製)、および3,3’−DAS(三井化学(株)製)、“Lonzacure(登録商標)”M−DEA(Lonza(株)製)、“Lonzacure(登録商標)”M−DIPA(Lonza(株)製)、“Lonzacure(登録商標)”M−MIPA(Lonza(株)製)および“Lonzacure(登録商標)”DETDA 80(Lonza(株)製)などが挙げられる。
また、これらエポキシ樹脂と硬化剤、あるいはそれらの一部を予備反応させた物を組成物中に配合することもできる。この方法は、粘度調節や保存安定性向上に有効な場合がある。
本発明のエポキシ樹脂組成物において、80℃の貯蔵弾性率G’と複素粘性率η*が0.20≦G'/η*≦2.0の関係を満たすことが好ましい。具体的には、かかるエポキシ樹脂組成物の80℃の貯蔵弾性率G’と、かかるエポキシ樹脂組成物の80℃の複素粘性率η*の比率から算出されるG'/η*が0.20以上、2.0以下の範囲とすることで、低粘度でありながら、ゴム弾性率は比較的高いエポキシ樹脂組成物を得ることができる。
また、本発明における貯蔵弾性率G’と複素粘性率η*は、例えばARES(TAインスツルメンツ社製)といった動的粘弾性測定装置を用い、昇温速度1.5℃/分、周波数1Hz、歪み量0.1%の測定条件にて得られるものである。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、80℃の貯蔵弾性率G’と複素粘性率η*が0.20≦G'/η*≦2.0の関係を満たすことが好ましく、より好ましくは0.25≦G'/η*≦1.0であり、さらに好ましくは0.3≦G'/η*≦0.5である。
エポキシ樹脂組成物の80℃のG'/η*が0.20以上であることにより、成形時の樹脂フロー量を適切に制御でき、それにより樹脂含有率のバラツキが小さくなるため、繊維強化複合材料とした場合に機械特性を十分に確保することができる。特に、繊維強化複合材料成形時に樹脂量の不足を回避できるために、エポキシ樹脂硬化物の圧縮破壊時呼び歪みが十分に得られ、繊維強化複合材料の面内剪断強度を発現できる。一方、エポキシ樹脂組成物の80℃のG'/η*が2.0以下であることにより、繊維強化複合材料成形時の含浸の際、適切な粘度となり、強化繊維への含浸性が良好となる。
本発明のエポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度は、航空機材料に必要とされる耐熱性および湿熱下圧縮強度を十分に確保する観点から、好ましくは120〜250℃、より好ましくは140〜210℃である。このような比較的高い耐熱性を有するエポキシ樹脂組成物およびそれを用いたプリプレグの硬化成形には、比較的高い硬化温度が必要となる。現在航空機の機体構造材料に用いられているプリプレグは、硬化成形温度が180±10℃の範囲であることが一般的である。また、硬化成形させてなる繊維強化複合材料の強度を十分に発現させるため、プリプレグ積層体の硬化成形は1気圧以上の加圧条件下で行うことが一般的である。
本発明のエポキシ樹脂硬化物は、その中で、[A]、[B]、[C]が相分離することなく均一相を形成するか、あるいは、[A]、[B]それぞれの樹脂を主成分とする400nm以下の微細な相分離構造を形成することが好ましい。ここで、均一相を形成するとは、かかるエポキシ樹脂硬化物において、架橋反応で硬化した[A]、[B]、[C]が分子レベルで相溶している状態を指す。なお、かかるポリエーテルスルホン[B]は、[A]や[C]との反応性を有し、硬化反応において[A]や[C]からなる架橋構造に組み込まれることが、安定な均一相、あるいは、400nm以下の微細な相分離構造を形成する上で好ましい。かかるエポキシ樹脂硬化物において、[A]、[B]、[C]が400nmを超えて相分離している場合、相対的に弾性率の低い相が繊維強化複合材料の圧縮強度を低下させるとともに、安定した面内剪断強度の発現が困難となる場合がある。
本発明において相分離構造とは、異なる構成要素の樹脂を主成分とする相が、0.01μm以上の構造周期を有する構造をいう。これに対し、分子レベルで均一に混合している状態を、相溶状態といい、本発明においては異なる構成要素の樹脂を主成分とする相が0.01μm未満の相分離構造周期である場合は、相溶状態とみなすものとする。
本発明のエポキシ樹脂硬化物において、相分離の構造周期は、次のように定義するものとする。なお、相分離構造には、両相連続構造と海島構造が有るのでそれぞれについて定義する。両相連続構造の場合、顕微鏡写真の上に所定の長さの直線を引き、その直線と相界面の交点を抽出し、隣り合う交点間の距離を測定し、これらの数平均値を構造周期とする。かかる所定の長さとは、顕微鏡写真を基に以下のようにして設定するものとする。構造周期が0.01μmオーダー(0.01μm以上0.1μm未満)と予想される場合、倍率を20000倍で写真撮影し、写真上でランダムに20mmの長さ(サンプル上1μmの長さ)3本を選出したものをいい、同様にして、相分離構造周期が0.1μmオーダー(0.1μm以上1μm未満)と予想される場合、倍率を2000倍で写真撮影し、写真上でランダムに20mmの長さ(サンプル上10μmの長さ)3本を選出したものをいい、相分離構造周期が1μmオーダー(1μm以上10μm未満)と予想される場合、倍率を200倍で写真撮影し、写真上でランダムに20mmの長さ(サンプル上100μmの長さ)3本を選出したものをいうものとする。もし、測定した相分離構造周期が予想したオーダーより外れていた場合、該当するオーダーに対応する倍率にて対応する長さを再度測定し、これを採用する。海島構造の場合、島相が楕円形、不定形、または、二層以上の円または楕円になっている場合であっても、島相と島相の最短距離を用いるものとする。
本発明のエポキシ樹脂硬化物としては、[A]リッチ相と[B]リッチ相を有する海島構造の相分離構造を有するエポキシ樹脂硬化物が挙げられる。ここで、島相の径とは、海島構造における島相の大きさを示すものであり、所定の領域における数平均値である。島相が楕円形のときは、長径をとり、不定形の場合は外接する円の直径を用いる。また、二層以上の円または楕円になっている場合には、最外層の円の直径または楕円の長径を用いるものとする。なお、海島構造の場合、所定の領域内に存在する全ての島相の長径を測定し、これらの数平均値を相分離サイズとする。
上記のように、相分離の構造周期および島相の径を測定する際には、所定の領域の顕微鏡写真を撮影する。かかる所定の領域とは、顕微鏡写真を基に以下のようにして設定するものとする。相分離構造周期が0.01μmオーダー(0.01μm以上0.1μm未満)と予想される場合、倍率を20000倍で写真撮影し、写真上でランダムに4mm四方の領域(サンプル上0.2μm四方の領域)3箇所を選出した領域をいう。同様にして、相分離構造周期が0.1μmオーダー(0.1μm以上1μm未満)と予想される場合、倍率を2000倍で写真撮影し、写真上でランダムに4mm四方の領域(サンプル上2μm四方の領域)3箇所を選出した領域をいう。さらに同様に、相分離構造周期が1μmオーダー(1μm以上10μm未満)と予想される場合、倍率を200倍で写真撮影し、写真上でランダムに4mm四方の領域(サンプル上20μm四方の領域)をいうものとする。もし、測定した相分離構造周期が予想したオーダーより外れていた場合、該当するオーダーに対応する倍率にて対応する領域を再度測定し、これを採用する。
このエポキシ樹脂硬化物の構造周期は、エポキシ樹脂硬化物の断面を走査型電子顕微鏡もしくは透過型電子顕微鏡により観察することができる。必要に応じて、オスミウムなどで染色しても良い。染色は、通常の方法で行うことができる。
また、他の手法で、かかるエポキシ樹脂硬化物の相構造を確認するには、DMAやDSC等の熱力学特性分析の手法で検出されるTgが単一か否かで判断することも可能である。例えば、かかるエポキシ樹脂硬化物のDMA昇温測定により得られる損失正接(tanδ)と温度の散布図において、常温を上回る領域に、[A]や[C]からなる架橋構造に由来するtanδピークに加えて、[B]に由来するtanδピークも現れた場合、相分離していると判断できる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明の効果を妨げない範囲で、カップリング剤や、熱硬化性樹脂粒子、あるいは[B]以外の熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂粒子、エラストマー、シリカゲル、カーボンブラック、クレー、カーボンナノチューブ、金属粉体といった無機フィラー等を配合することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、硬化剤[C]以外の構成要素を、まず150〜170℃程度の温度で均一に加熱混練し、次いで80℃程度の温度まで冷却した後に、硬化剤[C]を加えて混練することが好ましいが、各構成要素の配合方法は特にこの方法に限定されるものではない。
本発明で用いられる強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、黒鉛繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維および炭化ケイ素繊維等が挙げられる。これらの強化繊維を2種以上混合して用いても構わないが、より軽量で、より耐久性の高い成形品を得るために、炭素繊維や黒鉛繊維を用いることが好ましい。特に、材料の軽量化や高強度化の要求が高い用途においては、その優れた比弾性率と比強度のため、炭素繊維が好適に用いられる。
本発明で好ましく用いられる炭素繊維は、用途に応じてあらゆる種類の炭素繊維を用いることが可能であるが、耐衝撃性の点から400GPa以下の引張弾性率を有する炭素繊維であることが好ましい。また、強度の観点からは、高い剛性および機械強度を有する複合材料が得られることから、引張強度が好ましくは4.4〜6.5GPaの炭素繊維が用いられる。また、引張伸度も重要な要素であり、1.7〜2.3%の高強度高伸度炭素繊維であることが好ましい。従って、引張弾性率が少なくとも230GPaであり、引張強度が少なくとも4.4GPaであり、引張伸度が少なくとも1.7%であるという特性を兼ね備えた炭素繊維が最も適している。
炭素繊維の市販品としては、“トレカ(登録商標)”T800G−24K、“トレカ(登録商標)”T800S−24K、“トレカ(登録商標)”T700G−24K、“トレカ(登録商標)”T300−3K、および“トレカ(登録商標)”T700S−12K(以上東レ(株)製)などが挙げられる。
炭素繊維の形態や配列については、一方向に引き揃えた長繊維や織物等から適宜選択できるが、軽量で耐久性がより高い水準にある炭素繊維強化複合材料を得るためには、炭素繊維が、一方向に引き揃えた長繊維(繊維束)や織物等連続繊維の形態であることが好ましい。
本発明のプリプレグは、上述のエポキシ樹脂組成物を上記強化繊維に含浸したものである。そのプリプレグの繊維質量分率は好ましくは40〜90質量%であり、より好ましくは50〜80質量%である。繊維質量分率が低すぎると、得られる複合材料の質量が過大となり、比強度および比弾性率に優れる繊維強化複合材料の利点が損なわれることがあり、また、繊維質量分率が高すぎると、樹脂組成物の含浸不良が生じ、得られる複合材料がボイドの多いものとなり易く、その力学特性が大きく低下することがある。
強化繊維の形態は特に限定されるものではなく、例えば、一方向に引き揃えた長繊維、トウ、織物、マット、ニット、組み紐などが用いられる。また、特に、比強度と比弾性率が高いことを要求される用途には、強化繊維が単一方向に引き揃えられた配列が最も適しているが、取り扱いの容易なクロス(織物)状の配列も本発明には適している。
本発明のプリプレグは、マトリックス樹脂として用いられる前記エポキシ樹脂組成物を、メチルエチルケトンやメタノール等の溶媒に溶解して低粘度化し、強化繊維に含浸させる方法(ウェット法)と、マトリックス樹脂を加熱により低粘度化し、強化繊維に含浸させるホットメルト法(ドライ法)等により作製することができる。
ウェット法は、強化繊維をマトリックス樹脂であるエポキシ樹脂組成物の溶液に浸漬した後、引き上げ、オーブン等を用いて溶媒を蒸発させる方法であり、ホットメルト法(ドライ法)は、加熱により低粘度化したエポキシ樹脂組成物を直接強化繊維に含浸させる方法、または一旦エポキシ樹脂組成物を離型紙等の上にコーティングしたフィルムを作製しておき、次いで強化繊維の両側または片側から前記フィルムを重ね、加熱加圧することにより強化繊維に樹脂を含浸させる方法である。ホットメルト法によれば、プリプレグ中に残留する溶媒が実質上皆無となるため、本発明においては好ましい態様である。
得られたプリプレグを積層後、積層物に圧力を付与しながらマトリックス樹脂を加熱硬化させる方法等により、本発明による繊維強化複合材料が作製される。
ここで熱および圧力を付与する方法には、プレス成形法、オートクレーブ成形法、バッギング成形法、ラッピングテープ法および内圧成形法等が採用される。
本発明の繊維強化複合材料は、プリプレグを介さず、エポキシ樹脂組成物を直接強化繊維に含浸させた後、加熱硬化せしめる方法、例えば、ハンド・レイアップ法、フィラメント・ワインディング法、プルトルージョン法、レジン・インジェクション・モールディング法、およびレジン・トランスファー・モールディング法等の成形法によっても作製できる。これら方法では、エポキシ樹脂からなる主剤と硬化剤との2液を使用直前に混合してエポキシ樹脂組成物を調製することが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物をマトリックス樹脂として用いた繊維強化複合材料は、スポーツ用途、航空機用途および一般産業用途に好適に用いられる。より具体的には、航空宇宙用途では、主翼、尾翼およびフロアビーム等の航空機一次構造材用途、フラップ、エルロン、カウル、フェアリングおよび内装材等の二次構造材用途、ロケットモーターケースおよび人工衛星構造材用途等に好適に用いられる。このような航空宇宙用途の中でも、特に耐衝撃性が必要で、かつ、高度飛行中において低温にさらされるため、低温における引張強度が必要な航空機一次構造材用途、特に胴体スキンや主翼スキンにおいて、本発明による繊維強化複合材料が特に好適に用いられる。また、スポーツ用途では、ゴルフシャフト、釣り竿、テニス、バトミントンおよびスカッシュ等のラケット用途、ホッケー等のスティック用途、およびスキーポール用途等に好適に用いられる。さらに一般産業用途では、自動車、船舶および鉄道車両等の移動体の構造材、ドライブシャフト、板バネ、風車ブレード、圧力容器、フライホイール、製紙用ローラ、屋根材、ケーブル、補強筋、および補修補強材料等の土木・建築材料用途等に好適に用いられる。
以下、実施例によって、本発明のエポキシ樹脂組成物について、より具体的に説明する。実施例で用いた樹脂原料の作製方法および評価法を次に示す。
<エポキシ樹脂[A]>
<多官能アミン型エポキシ樹脂>
・“スミエポキシ(登録商標)”ELM434(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、住友化学(株)製)
・“jER(登録商標)”630(トリグリシジルアミノフェノール、三菱化学(株)製)
・“アラルダイト(登録商標)”MY0600(トリグリシジルアミノフェノール、ハンツマン・アドバンスド・マテリアルズ社製)。
<多官能アミン型エポキシ樹脂>
・“スミエポキシ(登録商標)”ELM434(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、住友化学(株)製)
・“jER(登録商標)”630(トリグリシジルアミノフェノール、三菱化学(株)製)
・“アラルダイト(登録商標)”MY0600(トリグリシジルアミノフェノール、ハンツマン・アドバンスド・マテリアルズ社製)。
<2官能アミン型エポキシ樹脂>
・GAN(ジグリシジルアニリン、日本化薬(株)製)
・GOT(ジグリシジルトルイジン、日本化薬(株)製)。
・GAN(ジグリシジルアニリン、日本化薬(株)製)
・GOT(ジグリシジルトルイジン、日本化薬(株)製)。
<上記以外のエポキシ樹脂>
・“jER(登録商標)”828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学(株)製))
・“エピクロン(登録商標)”830(ビスフェノールF型エポキシ樹脂、DIC(株)製)
・“jER(登録商標)”1004(ビスフェノールF型エポキシ樹脂、三菱化学(株)製))
・“エピクロン(登録商標)”HP7200H(ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂、DIC(株)製)。
・“jER(登録商標)”828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学(株)製))
・“エピクロン(登録商標)”830(ビスフェノールF型エポキシ樹脂、DIC(株)製)
・“jER(登録商標)”1004(ビスフェノールF型エポキシ樹脂、三菱化学(株)製))
・“エピクロン(登録商標)”HP7200H(ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂、DIC(株)製)。
<ポリエーテルスルホン>
<重量平均分子量2000〜20000g/molであるポリエーテルスルホン[B]>
・下記方法で合成したポリエーテルスルホン([B])
([B]の製造方法:特開平5−86186号公報を参考とした。具体的な製造方法を参考例1に示す。)
参考例1
攪拌器、温度計、冷却器、留出物分液器および窒素導入管を備えた1Lのフラスコに、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(以下DHDPSと略す)(50.06g、0.20モル)、トルエン100ml、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(250.8g)、40%水酸化カリウム水溶液(56.0g、0.39モル)を秤量し、攪拌しながら窒素ガスを通じ、反応系をすべて窒素置換した。窒素ガスを通じながら130℃まで加熱した。反応系の温度が上昇するとともにトルエンの還流が開始され、反応系内の水をトルエンとの共沸で除去し、トルエンを反応系に戻しながら共沸脱水を130℃で4時間行った。この後、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(以下DCDPSと略す)(57.40g、0.20モル)をトルエン40gとともに反応系に加え、反応系を150℃に加熱した。トルエンを留出させながら4時間反応させ、高粘度の茶褐色の溶液を得た。反応液の温度を室温まで冷却し、反応溶液をメタノール1kgに投下し、ポリマー粉を析出させた。濾過によりポリマー粉を回収し、これに水1kgを加え、さらに1Nの塩酸を加え、スラリー溶液をpH3〜4になるまで加え、酸性にした。濾過によりポリマー粉を回収した後、ポリマー粉を水1kgで2回洗浄した。さらにメタノール1kgに洗浄し、150℃で12時間真空乾燥した。得られたポリマー粉は白色粉末状で収量は88.3g(収率99.9%:収率=(92.8/464.53(ポリエーテルスルホン成分合成の中間生成物の分子量)/0.2×100より算出)であった。
<重量平均分子量2000〜20000g/molであるポリエーテルスルホン[B]>
・下記方法で合成したポリエーテルスルホン([B])
([B]の製造方法:特開平5−86186号公報を参考とした。具体的な製造方法を参考例1に示す。)
参考例1
攪拌器、温度計、冷却器、留出物分液器および窒素導入管を備えた1Lのフラスコに、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(以下DHDPSと略す)(50.06g、0.20モル)、トルエン100ml、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(250.8g)、40%水酸化カリウム水溶液(56.0g、0.39モル)を秤量し、攪拌しながら窒素ガスを通じ、反応系をすべて窒素置換した。窒素ガスを通じながら130℃まで加熱した。反応系の温度が上昇するとともにトルエンの還流が開始され、反応系内の水をトルエンとの共沸で除去し、トルエンを反応系に戻しながら共沸脱水を130℃で4時間行った。この後、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(以下DCDPSと略す)(57.40g、0.20モル)をトルエン40gとともに反応系に加え、反応系を150℃に加熱した。トルエンを留出させながら4時間反応させ、高粘度の茶褐色の溶液を得た。反応液の温度を室温まで冷却し、反応溶液をメタノール1kgに投下し、ポリマー粉を析出させた。濾過によりポリマー粉を回収し、これに水1kgを加え、さらに1Nの塩酸を加え、スラリー溶液をpH3〜4になるまで加え、酸性にした。濾過によりポリマー粉を回収した後、ポリマー粉を水1kgで2回洗浄した。さらにメタノール1kgに洗浄し、150℃で12時間真空乾燥した。得られたポリマー粉は白色粉末状で収量は88.3g(収率99.9%:収率=(92.8/464.53(ポリエーテルスルホン成分合成の中間生成物の分子量)/0.2×100より算出)であった。
次に、攪拌機、窒素導入管、温度計、冷却管を取り付けた300mLの三口フラスコに上記で合成したポリエーテルスルホン成分合成の中間生成物(5g、10.7mmol(5/464.53×1000で計算))に対し、DHDPS(1.25g、4.35mmol)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)200ml、無水炭酸カリウム(0.6g、4.34mmol)を秤量し、NMP反応溶液を攪拌しながら反応温度を150℃にまで上昇させ、反応時間1時間で反応を終了し、反応溶液を500mlのメタノールに投下し、析出固体を粉砕、500mlの水で2回洗浄し、130℃で真空乾燥した。得られたポリマー粉は白色粉末状で収量は7.2g、収率96%(収率は回収したポリエーテルスルホン成分であるポリエーテルスルホンの質量/(仕込んだポリエーテルスルホン成分合成の中間生成物質量+仕込みDHDPS)×100により算出)であった。
特開平5−86186号公報で開示されているポリエーテルスルホンの重量平均分子量が[B]より大きいことを除けば、[B]は特開平5−86186号公報のポリエーテルスルホンと本質的には異ならないため、上記参考例の手順に準拠し、DHDPSの量や、アルカリ金属の量、反応時間を変更することで、重量平均分子量や末端基の変換率の異なるポリエーテルスルホンB−1〜B−4を合成し、実施例で使用した。なお、重量平均分子量は検出器にWATERS社示差屈折計R−401を用い、WATERS社201D型ゲル浸透クロマトグラフGPC−5を用いて測定した。測定条件は、o−クロルフェノール/クロロホルム(容積比2/8)を溶離液とし、カラム温度23℃、試料濃度1〜2mg/mlの溶液を0.1ml注入した。カラムは昭和電工(株)製のShodex80Mを2本と昭和電工(株)製Shodex802を1本とを直列に接続し、溶離液1.0ml/minとした。ポリマー分子量は、標準ポリメタクリル酸メチルによる校正曲線と対比して換算した。
ガラス転移温度Tgは、上記で合成した[B]を10mg取り出し、TAインスツルメンツ社製DSC2910(型番)を用いて、30℃〜350℃の温度範囲を昇温速度10℃/分にて、測定を行い、JIS K7121−1987に基づいて求めた中間点温度をガラス転移温度Tgとし、耐熱性を評価した。
・B−1(ポリエーテルスルホン、重量平均分子量:4000、ヒドロキシフェニル末端基 100モル%、Tg:204℃)
・B−2(ポリエーテルスルホン、重量平均分子量:7000、ヒドロキシフェニル末端基 100モル%、Tg:206℃)
・B−3(ポリエーテルスルホン、重量平均分子量:14000、ヒドロキシフェニル末端基 94モル%、Tg:211℃)
・B−4(ポリエーテルスルホン、重量平均分子量:18000、ヒドロキシフェニル末端基 86モル%、Tg:214℃)。
・B−1(ポリエーテルスルホン、重量平均分子量:4000、ヒドロキシフェニル末端基 100モル%、Tg:204℃)
・B−2(ポリエーテルスルホン、重量平均分子量:7000、ヒドロキシフェニル末端基 100モル%、Tg:206℃)
・B−3(ポリエーテルスルホン、重量平均分子量:14000、ヒドロキシフェニル末端基 94モル%、Tg:211℃)
・B−4(ポリエーテルスルホン、重量平均分子量:18000、ヒドロキシフェニル末端基 86モル%、Tg:214℃)。
<上記以外のポリエーテルスルホン>
・“Virantage(登録商標)”VW−10700RP(ポリエーテルスルホン、Solvay Advanced Polymers(株)製、重量平均分子量:21000)
・“スミカエクセル(登録商標)”PES5003P(ポリエーテルスルホン、住友化学工業(株)製、重量平均分子量:47000)。
・D−1(ポリエーテルスルホン、重量平均分子量:22000、ヒドロキシフェニル末端基 100モル%、Tg:217℃)
(D−1の製造方法:特開平5−86186号公報を参考とした。前述[B]の製造方法と同様に合成し、評価した。)
<構成要素[A]、[B]、[C]以外の成分>
・“Virantage(登録商標)”VW−30500RP(ポリスルホン、Solvay Advanced Polymers(株)製、重量平均分子量:14000)
・“マツモトマイクロスフィア(登録商標)”M(ポリメチルメタクリレート、松本油脂製薬(株)製、重量平均分子量:1000000)
・粒子1(“グリルアミド(登録商標)”TR55を原料として作製した熱可塑性樹脂粒子)
(粒子1の製造方法:国際公開第2009/142231号を参考とした。)
100mlの4口フラスコの中に、ポリマーAとして非晶ポリアミド(重量平均分子量 18,000、エムザベルケ社製“グリルアミド(登録商標)”TR55)2.5g、有機溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン 42.5g、ポリマーBとしてポリビニルアルコール 5g(日本合成化学工業株式会社“ゴーセノール(登録商標)”GL−05)を加え、80℃に加熱し、ポリマーが溶解するまで攪拌を行った。系の温度を室温に戻した後に、450rpmで攪拌しながら、貧溶媒として50gのイオン交換水を、送液ポンプを経由し、0.41g/分のスピードで滴下を行った。12gのイオン交換水を加えた時点で、系が白色に変化した。全量の水を入れ終わった後に、30分間攪拌し、得られた懸濁液を、ろ過し、イオン交換水100gで洗浄し、80℃ 10時間真空乾燥を行い、白色固体2.2gを得た。得られた粉体を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、平均粒子径16.1μmのポリアミド微粒子であった。
・“Virantage(登録商標)”VW−10700RP(ポリエーテルスルホン、Solvay Advanced Polymers(株)製、重量平均分子量:21000)
・“スミカエクセル(登録商標)”PES5003P(ポリエーテルスルホン、住友化学工業(株)製、重量平均分子量:47000)。
・D−1(ポリエーテルスルホン、重量平均分子量:22000、ヒドロキシフェニル末端基 100モル%、Tg:217℃)
(D−1の製造方法:特開平5−86186号公報を参考とした。前述[B]の製造方法と同様に合成し、評価した。)
<構成要素[A]、[B]、[C]以外の成分>
・“Virantage(登録商標)”VW−30500RP(ポリスルホン、Solvay Advanced Polymers(株)製、重量平均分子量:14000)
・“マツモトマイクロスフィア(登録商標)”M(ポリメチルメタクリレート、松本油脂製薬(株)製、重量平均分子量:1000000)
・粒子1(“グリルアミド(登録商標)”TR55を原料として作製した熱可塑性樹脂粒子)
(粒子1の製造方法:国際公開第2009/142231号を参考とした。)
100mlの4口フラスコの中に、ポリマーAとして非晶ポリアミド(重量平均分子量 18,000、エムザベルケ社製“グリルアミド(登録商標)”TR55)2.5g、有機溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン 42.5g、ポリマーBとしてポリビニルアルコール 5g(日本合成化学工業株式会社“ゴーセノール(登録商標)”GL−05)を加え、80℃に加熱し、ポリマーが溶解するまで攪拌を行った。系の温度を室温に戻した後に、450rpmで攪拌しながら、貧溶媒として50gのイオン交換水を、送液ポンプを経由し、0.41g/分のスピードで滴下を行った。12gのイオン交換水を加えた時点で、系が白色に変化した。全量の水を入れ終わった後に、30分間攪拌し、得られた懸濁液を、ろ過し、イオン交換水100gで洗浄し、80℃ 10時間真空乾燥を行い、白色固体2.2gを得た。得られた粉体を走査型電子顕微鏡にて観察したところ、平均粒子径16.1μmのポリアミド微粒子であった。
<硬化剤[C]>
・3,3’−DAS(3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、三井化学ファイン(株)製)
・セイカキュア−S(4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、和歌山精化(株)製)
・DICY−7(ジシアンジアミド、三菱化学(株)製)。
・3,3’−DAS(3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、三井化学ファイン(株)製)
・セイカキュア−S(4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、和歌山精化(株)製)
・DICY−7(ジシアンジアミド、三菱化学(株)製)。
<硬化促進剤>
・DCMU99(3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア、硬化促進剤、保土ヶ谷化学工業(株)製)。
・DCMU99(3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア、硬化促進剤、保土ヶ谷化学工業(株)製)。
(1)エポキシ樹脂組成物の調製
ニーダー中に、エポキシ樹脂、ポリエーテルスルホン、その他の成分を所定量加え、混練しつつ、160℃まで昇温し、160℃、1時間混練することで、透明な粘調液を得た。混練しつつ80℃まで降温させた後、硬化剤[C]を所定量加え、さらに混練し、エポキシ樹脂組成物を得た。
ニーダー中に、エポキシ樹脂、ポリエーテルスルホン、その他の成分を所定量加え、混練しつつ、160℃まで昇温し、160℃、1時間混練することで、透明な粘調液を得た。混練しつつ80℃まで降温させた後、硬化剤[C]を所定量加え、さらに混練し、エポキシ樹脂組成物を得た。
(2)エポキシ樹脂組成物の粘度(G’/η*)
エポキシ樹脂組成物の粘度は、動的粘弾性測定装置ARES(TAインスツルメンツ社製)を用い、直径40mmのパラレルプレートを用い、昇温速度1.5℃/minで単純昇温し、周波数1Hz、Gap 1mmの測定条件で得られた、貯蔵弾性率G’と複素粘性率η*の80℃における値を採用した。80℃での貯蔵弾性率G’、80℃での複素粘性率η*の値を用いて、80℃における貯蔵弾性率G’と80℃における複素粘性率η*の比率G’/η*を求めた。
エポキシ樹脂組成物の粘度は、動的粘弾性測定装置ARES(TAインスツルメンツ社製)を用い、直径40mmのパラレルプレートを用い、昇温速度1.5℃/minで単純昇温し、周波数1Hz、Gap 1mmの測定条件で得られた、貯蔵弾性率G’と複素粘性率η*の80℃における値を採用した。80℃での貯蔵弾性率G’、80℃での複素粘性率η*の値を用いて、80℃における貯蔵弾性率G’と80℃における複素粘性率η*の比率G’/η*を求めた。
(3)エポキシ樹脂硬化物の曲げ弾性率
上記(1)で調製したエポキシ樹脂組成物を真空中で脱泡した後、2mm厚の“テフロン(登録商標)”製スペーサーにより厚み2mmになるように設定したモールド中に注入した。180℃の温度で2時間硬化させ、厚さ2mmのエポキシ樹脂硬化物を得た。次に、得られたエポキシ樹脂硬化物の板から、幅10mm、長さ60mmの試験片を切り出し、スパン間32mmの3点曲げを測定し、JIS K7171−1994に従い、曲げ弾性率を求めた。
上記(1)で調製したエポキシ樹脂組成物を真空中で脱泡した後、2mm厚の“テフロン(登録商標)”製スペーサーにより厚み2mmになるように設定したモールド中に注入した。180℃の温度で2時間硬化させ、厚さ2mmのエポキシ樹脂硬化物を得た。次に、得られたエポキシ樹脂硬化物の板から、幅10mm、長さ60mmの試験片を切り出し、スパン間32mmの3点曲げを測定し、JIS K7171−1994に従い、曲げ弾性率を求めた。
(4)エポキシ樹脂硬化物の圧縮破壊時呼び歪み
上記(1)で調製したエポキシ樹脂組成物を真空中で脱泡した後、6mm厚の“テフロン(登録商標)”製スペーサーにより厚み6mmになるように設定したモールド中で、180℃の温度で2時間硬化させ、厚さ6mmのエポキシ樹脂硬化物を得た。このエポキシ樹脂硬化物を6×6mmのサイズにカットし、試験片を得た。インストロン万能試験機(インストロン社製)を用い、厚さ6mmのエポキシ樹脂硬化物の板を作製した。ついで、エポキシ樹脂硬化物の板から一辺の長さが6mmの立方体の試験片を切り出し、試験速度1±0.2mm/分で、他の条件はJIS K7181に準じた条件により圧縮破壊時呼び歪みを測定した。
上記(1)で調製したエポキシ樹脂組成物を真空中で脱泡した後、6mm厚の“テフロン(登録商標)”製スペーサーにより厚み6mmになるように設定したモールド中で、180℃の温度で2時間硬化させ、厚さ6mmのエポキシ樹脂硬化物を得た。このエポキシ樹脂硬化物を6×6mmのサイズにカットし、試験片を得た。インストロン万能試験機(インストロン社製)を用い、厚さ6mmのエポキシ樹脂硬化物の板を作製した。ついで、エポキシ樹脂硬化物の板から一辺の長さが6mmの立方体の試験片を切り出し、試験速度1±0.2mm/分で、他の条件はJIS K7181に準じた条件により圧縮破壊時呼び歪みを測定した。
(5)エポキシ樹脂硬化物の構造周期
上記(3)で得られたエポキシ樹脂硬化物を染色後、薄切片化し、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて下記の条件で透過電子像を取得した。染色剤は、モルホロジーに十分なコントラストが付くよう、OsO4とRuO4を樹脂組成に応じて使い分けた。
・装置:H−7100透過型電子顕微鏡(日立製作所(株)製)
・加速電圧:100kV
・倍率:10000倍。
上記(3)で得られたエポキシ樹脂硬化物を染色後、薄切片化し、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて下記の条件で透過電子像を取得した。染色剤は、モルホロジーに十分なコントラストが付くよう、OsO4とRuO4を樹脂組成に応じて使い分けた。
・装置:H−7100透過型電子顕微鏡(日立製作所(株)製)
・加速電圧:100kV
・倍率:10000倍。
これにより、[A]リッチ相と[B]リッチ相の構造周期を観察した。表1〜表3において、エポキシ樹脂硬化物の相構造周期は相構造サイズ(μm)欄に示されるとおりである。
(6)プリプレグの作製
エポキシ樹脂組成物を、ナイフコーターを用いて離型紙上に塗布して樹脂フィルムを作製した。次に、シート状に一方向に配列させた東レ(株)製、炭素繊維“トレカ(登録商標)”T800G−24K−31Eに、樹脂フィルム2枚を炭素繊維の両面から重ね、加熱加圧により樹脂を炭素繊維に含浸させ、炭素繊維の目付が190g/m2、マトリックス樹脂の質量分率が35.5%の一方向プリプレグを得た。その際、熱可塑性樹脂粒子を配合したエポキシ樹脂組成物を使用する場合は以下の2段含浸法を適用し、熱可塑性樹脂粒子が表層に高度に局在化したプリプレグを作製した。
エポキシ樹脂組成物を、ナイフコーターを用いて離型紙上に塗布して樹脂フィルムを作製した。次に、シート状に一方向に配列させた東レ(株)製、炭素繊維“トレカ(登録商標)”T800G−24K−31Eに、樹脂フィルム2枚を炭素繊維の両面から重ね、加熱加圧により樹脂を炭素繊維に含浸させ、炭素繊維の目付が190g/m2、マトリックス樹脂の質量分率が35.5%の一方向プリプレグを得た。その際、熱可塑性樹脂粒子を配合したエポキシ樹脂組成物を使用する場合は以下の2段含浸法を適用し、熱可塑性樹脂粒子が表層に高度に局在化したプリプレグを作製した。
まず、熱可塑性樹脂粒子を含まない1次プリプレグを作製した。表1〜表3に記載の原料成分の内、エポキシ樹脂に不溶な熱可塑性樹脂粒子を含まないエポキシ樹脂組成物を上記(1)の手順で調製した。この1次プリプレグ用エポキシ樹脂組成物を、ナイフコーターを用いて離型紙上に塗布して、通常の60質量%の目付となる30g/m2の1次プリプレグ用樹脂フィルムを作製した。次に、シート状に一方向に配列させた東レ(株)製、炭素繊維“トレカ(登録商標)”T800G−24K−31Eに、この1次プリプレグ用樹脂フィルム2枚を炭素繊維の両面から重ね合せてヒートロールを用い、温度100℃、気圧1気圧で加熱加圧しながら、樹脂を炭素繊維に含浸させ、1次プリプレグを得た。
さらに、2段含浸用樹脂フィルムを作製するために、ニーダーを用いて、表1〜表3に記載の原料成分の内、エポキシ樹脂に不溶な熱可塑性樹脂粒子を記載量の2.5倍としたエポキシ樹脂組成物を上記(1)の手順で調製した。この2段含浸用エポキシ樹脂組成物を、ナイフコーターを用いて離型紙上に塗布して、通常の40質量%の目付となる20g/m2の2段含浸用樹脂フィルムを作製した。これを1次プリプレグの両面から重ね合せてヒートロールを用い、温度80℃、気圧1気圧で加熱加圧することで、熱可塑性樹脂粒子が表層に高度に局在化したプリプレグを得た。
(7)繊維強化複合材料の面内剪断強度
一方向プリプレグシートを繊維の方向が±45°になるよう[+45/−45]5Sの積層構成で、成形物の厚みが2mmになるように所定枚数積層し、オートクレーブ中で温度180℃、圧力6kg/cm2で2時間加熱加圧して硬化し、一方向複合材料を作製した。次に得られた材料をJIS K7079(1991)に従い、面内剪断強度を測定した。試験サンプル数n=5とし、その平均値を採用した。
一方向プリプレグシートを繊維の方向が±45°になるよう[+45/−45]5Sの積層構成で、成形物の厚みが2mmになるように所定枚数積層し、オートクレーブ中で温度180℃、圧力6kg/cm2で2時間加熱加圧して硬化し、一方向複合材料を作製した。次に得られた材料をJIS K7079(1991)に従い、面内剪断強度を測定した。試験サンプル数n=5とし、その平均値を採用した。
(実施例1)
混練装置で、50質量部の“スミエポキシ(登録商標)”ELM434(多官能アミン型エポキシ樹脂)、50質量部のGAN(2官能アミン型エポキシ樹脂)、180質量部のB−1(重量平均分子量2000〜20000g/molであるポリエーテルスルホン[B])を混練した後、硬化剤[C]である3,3’−DASを50質量部混練して、エポキシ樹脂組成物を作製した。表1に、組成と割合を示す(表1中、数字は質量部を表す)。得られたエポキシ樹脂組成物について、上記の(2)エポキシ樹脂組成物の粘度(G’/η*)、(3)エポキシ樹脂硬化物の曲げ弾性率、(4)エポキシ樹脂硬化物の圧縮破壊時呼び歪み、(5)エポキシ樹脂硬化物の構造周期、(7)繊維強化複合材料の面内剪断強度を測定した。結果を表1に示す。
混練装置で、50質量部の“スミエポキシ(登録商標)”ELM434(多官能アミン型エポキシ樹脂)、50質量部のGAN(2官能アミン型エポキシ樹脂)、180質量部のB−1(重量平均分子量2000〜20000g/molであるポリエーテルスルホン[B])を混練した後、硬化剤[C]である3,3’−DASを50質量部混練して、エポキシ樹脂組成物を作製した。表1に、組成と割合を示す(表1中、数字は質量部を表す)。得られたエポキシ樹脂組成物について、上記の(2)エポキシ樹脂組成物の粘度(G’/η*)、(3)エポキシ樹脂硬化物の曲げ弾性率、(4)エポキシ樹脂硬化物の圧縮破壊時呼び歪み、(5)エポキシ樹脂硬化物の構造周期、(7)繊維強化複合材料の面内剪断強度を測定した。結果を表1に示す。
(実施例2〜10)
エポキシ樹脂、ポリエーテルスルホン、その他の成分、硬化剤および配合量を、表1および表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を作製した。得られたエポキシ樹脂組成物について、上記の(2)エポキシ樹脂組成物の粘度(G’/η*)、(3)エポキシ樹脂硬化物の曲げ弾性率、(4)エポキシ樹脂硬化物の圧縮破壊時呼び歪み、(5)エポキシ樹脂硬化物の構造周期、(7)繊維強化複合材料の面内剪断強度を測定した。結果を表1および表2に示す。
エポキシ樹脂、ポリエーテルスルホン、その他の成分、硬化剤および配合量を、表1および表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を作製した。得られたエポキシ樹脂組成物について、上記の(2)エポキシ樹脂組成物の粘度(G’/η*)、(3)エポキシ樹脂硬化物の曲げ弾性率、(4)エポキシ樹脂硬化物の圧縮破壊時呼び歪み、(5)エポキシ樹脂硬化物の構造周期、(7)繊維強化複合材料の面内剪断強度を測定した。結果を表1および表2に示す。
実施例1〜10で得られたエポキシ樹脂硬化物は、相分離せず均一なもの、もしくは、400nm以下の相分離構造を有するものとなり、力学特性は良好であった。また、得られたエポキシ樹脂組成物は特定範囲の動的粘弾性を有しており、繊維強化複合材料の成形性に優れたものであった。さらに、繊維強化複合材料の面内剪断強度が十分に確保できることが明らかとなった。
(比較例1)
[B]成分の要件を満たさないポリエーテルスルホンを用いた以外は、実施例3と同様にしてエポキシ樹脂組成物を作製した。得られたエポキシ樹脂組成物について、上記の(2)エポキシ樹脂組成物の粘度(G’/η*)、(3)エポキシ樹脂硬化物の曲げ弾性率、(4)エポキシ樹脂硬化物の圧縮破壊時呼び歪み、(5)エポキシ樹脂硬化物の構造周期、(7)繊維強化複合材料の面内剪断強度を測定した。表3に結果を示すとおり、得られたエポキシ樹脂組成物は、粘度が高くなりすぎ、エポキシ樹脂硬化物を成形することができなかった。
[B]成分の要件を満たさないポリエーテルスルホンを用いた以外は、実施例3と同様にしてエポキシ樹脂組成物を作製した。得られたエポキシ樹脂組成物について、上記の(2)エポキシ樹脂組成物の粘度(G’/η*)、(3)エポキシ樹脂硬化物の曲げ弾性率、(4)エポキシ樹脂硬化物の圧縮破壊時呼び歪み、(5)エポキシ樹脂硬化物の構造周期、(7)繊維強化複合材料の面内剪断強度を測定した。表3に結果を示すとおり、得られたエポキシ樹脂組成物は、粘度が高くなりすぎ、エポキシ樹脂硬化物を成形することができなかった。
(比較例2)
[B]成分の要件を満たさないポリエーテルスルホンを用いた以外は、実施例4と同様にしてエポキシ樹脂組成物と繊維強化複合材料を作製した。得られたエポキシ樹脂組成物について、上記の(2)エポキシ樹脂組成物の粘度(G’/η*)、(3)エポキシ樹脂硬化物の曲げ弾性率、(4)エポキシ樹脂硬化物の圧縮破壊時呼び歪み、(5)エポキシ樹脂硬化物の構造周期、(7)繊維強化複合材料の面内剪断強度を測定した。表3に結果を示すとおり、得られた樹脂組成物のG’/η*が著しく低く、繊維強化複合材料の成形性が悪化した。また、得られたエポキシ樹脂硬化物は、やや大きな相分離構造の周期を形成した為に、安定した圧縮破壊時呼び歪みが得られず、繊維強化複合材料の面内剪断強度が不十分なものとなった。
[B]成分の要件を満たさないポリエーテルスルホンを用いた以外は、実施例4と同様にしてエポキシ樹脂組成物と繊維強化複合材料を作製した。得られたエポキシ樹脂組成物について、上記の(2)エポキシ樹脂組成物の粘度(G’/η*)、(3)エポキシ樹脂硬化物の曲げ弾性率、(4)エポキシ樹脂硬化物の圧縮破壊時呼び歪み、(5)エポキシ樹脂硬化物の構造周期、(7)繊維強化複合材料の面内剪断強度を測定した。表3に結果を示すとおり、得られた樹脂組成物のG’/η*が著しく低く、繊維強化複合材料の成形性が悪化した。また、得られたエポキシ樹脂硬化物は、やや大きな相分離構造の周期を形成した為に、安定した圧縮破壊時呼び歪みが得られず、繊維強化複合材料の面内剪断強度が不十分なものとなった。
実施例3と比較例1の比較、および、実施例4と比較例2の比較により、ポリエーテルスルホンを配合しただけでは課題は達成されず、特定範囲の重量平均分子量を有するポリエーテルスルホン[B]を用いた場合に、はじめて目的の効果が発揮されることが分かる。
(比較例3〜7)
エポキシ樹脂、ポリエーテルスルホン、その他の成分、硬化剤および配合量を、表3に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を作製した。得られたエポキシ樹脂組成物について、上記の(2)エポキシ樹脂組成物の粘度(G’/η*)、(3)エポキシ樹脂硬化物の曲げ弾性率、(4)エポキシ樹脂硬化物の圧縮破壊時呼び歪み、(5)エポキシ樹脂硬化物の構造周期、(7)繊維強化複合材料の面内剪断強度を測定した。
エポキシ樹脂、ポリエーテルスルホン、その他の成分、硬化剤および配合量を、表3に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を作製した。得られたエポキシ樹脂組成物について、上記の(2)エポキシ樹脂組成物の粘度(G’/η*)、(3)エポキシ樹脂硬化物の曲げ弾性率、(4)エポキシ樹脂硬化物の圧縮破壊時呼び歪み、(5)エポキシ樹脂硬化物の構造周期、(7)繊維強化複合材料の面内剪断強度を測定した。
比較例3,4では、表3に結果を示すとおり、[B]成分の要件を満たさないポリエーテルスルホンを用いたことで、得られたエポキシ樹脂硬化物の特性バランスが悪化した。特に、エポキシ樹脂硬化物の圧縮破壊時呼び歪みは不十分なものとなり、繊維強化複合材料の面内剪断強度が十分に発現しなかった。
比較例5では、表3に結果を示すとおり、[B]成分の代わりに重量平均分子量が大きいポリメチルメタクリレートを用いたことで、得られたエポキシ樹脂組成物は、特定範囲の動的粘弾性の範囲を超え、強化繊維への含浸性が悪化した。また、繊維強化複合材料の面内剪断強度が不十分なものとなった。
比較例6は特許文献2(特開昭61−228016号公報)の実施例7と同等の樹脂組成である。比較例6では、表3に結果を示すとおり、[B]成分の代わりにポリスルホンを用いたことで、得られたエポキシ樹脂硬化物は耐熱性が大きく低下した。また、得られた樹脂組成物のG’/η*が低くなり、繊維強化複合材料の成形性が悪化した。さらに、エポキシ樹脂硬化物がやや大きな相分離構造周期を形成し、繊維強化複合材料の面内剪断強度が不十分なものとなった。
比較例7は特許文献1(特開2009−167333号公報)の実施例6と同等の樹脂組成である。比較例7では、表3に結果を示すとおり、[B]成分の代わりに分子量の異なるポリエーテルスルホンを用いたことで、エポキシ樹脂硬化物の力学特性が悪化する。また、得られた樹脂組成物のG’/η*が低くなり、繊維強化複合材料の成形性が悪化した。
本発明によれば、強化繊維への含浸性に優れ、かつ、成形時の樹脂フローを適正に制御でき、さらには面内剪断強度に優れた繊維強化複合材料を与えるエポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂硬化物、およびプリプレグ、繊維強化複合材料を得られるために、特に構造材料に好適に用いられる。例えば、航空宇宙用途では主翼、尾翼およびフロアビーム等の航空機一次構造材用途、フラップ、エルロン、カウル、フェアリングおよび内装材等の二次構造材用途、ロケットモーターケースおよび人工衛星構造材用途等に好適に用いられる。また一般産業用途では、自動車、船舶および鉄道車両等の移動体の構造材、ドライブシャフト、板バネ、風車ブレード、各種タービン、圧力容器、フライホイール、製紙用ローラ、屋根材、ケーブル、補強筋、および補修補強材料等の土木・建築材料用途等に好適に用いられる。さらにスポーツ用途では、ゴルフシャフト、釣り竿、テニス、バトミントンおよびスカッシュ等のラケット用途、ホッケー等のスティック用途、およびスキーポール用途等に好適に用いられる。
Claims (10)
- 少なくとも次の構成要素[A]、[B]、[C]を有してなるエポキシ樹脂組成物。
[A]エポキシ樹脂
[B]重量平均分子量2000〜20000g/molであるポリエーテルスルホン
[C]硬化剤 - 80℃の貯蔵弾性率G’と複素粘性率η*が0.20≦G'/η*≦2.0の関係を満たす、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
- [B]をエポキシ樹脂組成物中に20〜60質量%含む、請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物。
- [B]の末端の60モル%以上がヒドロキシフェニル基である、請求項1〜3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
- [A]が多官能アミン型エポキシ樹脂を含む、請求項1〜4のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
- [A]が2官能アミン型エポキシ樹脂を含む、請求項1〜5のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなるエポキシ樹脂硬化物であって、400nm以下の相分離構造を有する、もしくは均一相を形成するエポキシ樹脂硬化物。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸させてなるプリプレグ。
- 強化繊維が炭素繊維である、請求項8に記載のプリプレグ。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなるエポキシ樹脂硬化物もしくは請求項7に記載のエポキシ樹脂硬化物および強化繊維を含有する繊維強化複合材料。
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