JP2009167333A - エポキシ樹脂組成物・プリプレグ・繊維強化複合材料 - Google Patents

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宏明 坂田
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史郎 本田
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Koji Yamauchi
幸二 山内
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Abstract

【課題】タック・ドレープ性に優れ、かつ、機械物性にすぐれた樹脂組成物を提供すること
【解決手段】[A]還元粘度が0.21〜0.48であり、その末端の80モル%以上がヒドロキシフェニル基であるポリエーテルスルホンと[B]エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、エポキシ樹脂組成物・プリプレグ・繊維強化複合材料に関する。より詳しくは、プリプレグとしてはタック・ドレープ性などの作業性に優れ、かつ繊維強化複合材料しては、引張強度・圧縮強度などの機械物性にすぐれるエポキシ樹脂組成物に関するものである。
近年、炭素繊維やアラミド繊維などを強化繊維として用いた繊維強化複合材料は、その高い比強度・比弾性率を利用して、航空機や自動車などの構造材料や、テニスラケット、ゴルフシャフト、釣り竿などの一般産業用途に利用されて、年々拡がりを見せている。
近年、使用例が増えるに従い、この繊維強化複合材料に対する要求特性は、厳しくなってきている。中でも、繊維強化複合材料の軽量化に伴う高強度化への要求は強い。特に、繊維強化材料とした際の靱性は、航空機用途や風車などの大型部材用途における耐衝撃性などに影響を及ぼすため重要とされる。
繊維強化複合材料の製造には、強化繊維に未硬化のマトリックス樹脂が含浸されたシート状中間基材であるプリプレグを用いる方法や、モールド中に並べた繊維に液状の樹脂を流し込み硬化させるレジン・トランスファー・モールディング法などが用いられている。このうちプリプレグを用いた方法では、通常、プリプレグを複数枚積層した後、加圧加熱することによって複合材料成形物を得ている。このプリプレグに用いられる樹脂としては生産性の面から、熱硬化性樹脂特にエポキシ樹脂が用いられることが多い。実際に、マトリックス樹脂としてエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤を用いて、優れた耐熱性と良好な機械特性を兼ね備えた複合材が提供されてきている。しかしながら、エポキシ樹脂をはじめとする熱硬化性樹脂マトリックス樹脂は、優れた耐熱性や機械特性を示すものの伸度や靱性が低いためにそれらの改善を求められてきている。
繊維強化複合材料としての靱性を付与するために、マトリックス樹脂の靱性を上げることが検討されてきた。1970年代より、固形のゴムをマトリックス樹脂に加えることでマトリックス樹脂の靱性を向上させる検討がなされてきている。しかしながら、この方法で靱性を上げるためには、マトリックス樹脂そのものの潜在的な伸度が必要であるうえ、ゴムの配合によりマトリックス樹脂の弾性率や耐熱性が低下するなどの問題点が指摘され、ゴム量の配合量が制限を受けるなどマトリックス樹脂の設計が難しくなる場合があった。
また、熱可塑性樹脂を配合する方法としては、熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂に使われることの多いエポキシ樹脂に溶解させることで、機械特性を損なうことなしにマトリックス樹脂の靱性を向上し、耐衝撃性に優れる複合材料が得られることが知られている。しかし、一般的に熱可塑性樹脂はエポキシ樹脂と相溶性が低く、樹脂組成物の調製条件や硬化条件によりエポキシ樹脂と熱可塑性樹脂との界面接着性が低下し、得られる樹脂硬化物や複合材料の機械特性が低下するという問題があった。
相溶性を向上させる手段として、熱可塑性樹脂の分子量を大幅にさげることや、熱可塑性樹脂の末端官能基にアミノ基や水酸基を導入することがおこなれている。(例えば、特許文献1〜3)
特開平2−58569公報 特開平1−118565公報 特開平5−86186公報
熱可塑性樹脂の分子量を下げすぎると、靱性向上効果が低下するため多量に配合せざるをえず結果として取り扱い性が低下することがある。また、末端官能基の変換率が十分に高くないと十分な相溶性が得られないことがあった。
本発明の課題は、タック・ドレープ性に優れ、かつ、機械物性にすぐれた樹脂組成物を提供することにある。
本発明では、耐熱性低下を伴わない骨格を主骨格にもちかつ、分子量制御、末端官能基の変換率を制御することにより、靱性を向上させ、取り扱いの優れた樹脂組成物を見出にに至った。すなわち、本発明のエポキシ樹脂組成物は以下の構成を有するものである。

[A]還元粘度が0.21〜0.48であり、その末端の80モル%以上がヒドロキシフェニル基であるポリエーテルスルホンと[B]エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物。
また、前記エポキシ樹脂組成物の50℃における粘度が、100〜5000Pa・sであり、最低粘度が1.5Pa・s以下であることが好ましい。
また、前記のエポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸させてプリプレグとして好適に用いられる。
また、前記エポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸し硬化せしめることで得られる繊維強化複合材料である。
本発明によれば、以下に説明するとおり、繊維強化複合材料のマトリックス樹脂として目的に応じた設計の自由度の高いエポキシ樹脂組成物を提供するものであり、本発明のエポキシ樹脂組成物と強化繊維とからなるプリプレグはタック・ドレープ性に優れたものとなる。また、本発明の繊維強化複合材料は、航空宇宙用途、海洋船舶用途、一般産業用途などに好適な圧縮特性や耐衝撃性などを両立した機械物性を有するものとなる。
以下、本発明について詳細に説明する
本発明における[A]成分は、エポキシ樹脂からなるマトリックス樹脂の靱性を向上させ、また、プリプレグとした際には、適度なタックやドレープ性を与えるために必要な成分である。[A]成分は、還元粘度が0.21〜0.48であり、また、その末端の80モル%以上がヒドロキシフェニル基であるポリエーテルスルホンである。
ポリエーテルスルホンとは、主鎖中に、エーテル結合とスルホン結合を有し、耐熱性と弾性率、靱性を満たすために必須の骨格である。主鎖がポリエーテルスルホン骨格であれば、側鎖の有無は問わないが、側鎖を有する場合には、側鎖も、なるべく耐熱性の高い骨格であることが望ましい。
[A]成分の還元粘度としては、0.21未満であると、靱性向上効果が十分でなく、また0.48を越えるとマトリックス樹脂の粘度が上がりタックやドレープ性に欠けることがあり、十分な靱性と両立する設計が困難であった。本発明において、還元粘度とは、JIS K7367−1(2002)に記載の方法で、毛細管粘度計を用い、DMF中、25℃、1g/dlの条件で測定した還元粘度を指すものとする。
[A]成分のポリエーテルスルホンの末端は、その末端の80モル%以上が、ヒドロキシフェニル基であることが必要である。この官能基がエポキシ樹脂もしくは、エポキシ樹脂の硬化剤と反応することによりエポキシ樹脂からなる相と親和性が高くなり、均一に相溶する、もしくは均一に相溶しなくともエポキシ樹脂相と[A]成分のポリエーテルスルホン相の高い界面接着が得られ、エポキシ樹脂組成物とした時に高い靱性が得られる。かかる観点から、[A]成分のポリエーテルスルホンの末端におけるヒドロキシフェニル基の割合は、高いほど好ましく、全ての末端がヒドロキシフェニル基であることが最も好ましい。ヒドロキシフェニル基が末端の80モル%未満であると、エポキシ樹脂の種類、マトリックス樹脂の硬化温度によっては、相溶性が十分でなく靱性向上効果が十分でないことがある。
末端がヒドロキシフェニル基である割合は、具体的に例をあげると重水素化DMSO溶媒中、400MHz H−NMRを用い、積算回数100回により、7.7ppmにクロル置換された芳香族炭素に隣接するプロトン(1HCl)と、6.9ppmに水酸基で置換された芳香族炭素に隣接するプロトン(1HOH)が高分解能で観測できること、1H−NMRの面積比は、そのモル数を反映していることから、末端官能基組成(モル%)は、下記式により算出することができる。
[末端水酸基組成(モル%)]=
[1HOHのピーク面積]/([1HOHのピーク面積]+[1HClのピーク面積])×100
本発明における[A]成分のポリエーテルスルホンにおいては、ヒドロキシフェニル基が末端の80モル%以上であることが、本発明の効果を発現する上で最も重要であるが、末端のヒドロキシフェニル基が80モル%以上のポリエーテルスルホンの製造方法に、特に制限はなく、例えば特公昭42−7799号公報、特公昭45−21318号公報、特開昭48−19700号公報に記載の方法で製造することが可能であり、本文献によれば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属化合物存在下、N−メチルピロリドン、DMF、DMSO、スルホランなどの非プロトン性極性溶媒中で、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンなどの二価のフェノール化合物と4,4’−ジクロロジフェニルスルホンなどの2価のジハロゲノジフェニル化合物を重縮合することで得ることができる。しかしながら本方法では、慎重に条件を選択すれば、目的とする[A]成分のポリエーテルスルホンを得られるものの、重合条件によっては、得られるポリエーテルスルホンの末端のヒドロキシフェニル基の割合は低く、さらに末端のヒドロキシフェニル基の割合を上げようとすると、ポリマー分子量が顕著に低下したり、反応溶液から目的の[A]成分のポリエーテルスルホンを回収することが困難になる場合がある。
そのため、本発明において用いられる[A]成分のポリエーテルスルホンの好ましい製造方法としては、まず通常公知の方法、すなわち二価フェノール化合物とジハロゲノジフェニル化合物の重縮合により得られる高分子量のポリエーテルスルホンを原料とし、引き続き得られた高分子量のポリエーテルスルホンと二価フェノール化合物を非プロトン性極性溶媒中で加熱することにより、末端にヒドロキシフェニル基を導入し製造する方法が挙げられる。
本発明における[A]成分のガラス転移温度は、180℃以上230℃以下であることが好ましい。180℃未満であると、エポキシ樹脂の耐熱性によっては、耐熱性を低下させることがあり、230℃を越えるとであると、マトリックス樹脂のガラス転移温度が高くなるために繊維強化複合材料にした際に残留する熱応力が大きくなることがあり、繊維強化複合材料とした時の機械物性が低下することがある。
本発明における[B]成分はエポキシ樹脂であり、マトリックス樹脂の機械物性、取り扱い性の根幹をなす。エポキシ樹脂としては、具体的には、アミン類、フェノール類、カルボン酸、分子内不飽和炭素などの化合物を前駆体とするエポキシ樹脂が好ましい。
アミン類を前駆体とするグリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、キシレンジアミンのグリシジル化合物、トリグリシジルアミノフェノールや、グリシジルアニリンのそれぞれの位置異性体や炭素数が3以下のアルキル基や、塩素、臭素などのハロゲン類での置換体が挙げられる。中でも、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンとそのアルキル誘導体は150℃以上のガラス転移温度といった耐熱性に優れるため航空機構造材としての複合材料用樹脂として好ましい。一方、グリシジルアニリン類や、アミノフェノールのグリシジル化合物は、耐熱性や靱性などの機械物性を落とさずに低粘度化するために好ましく用いられる。
テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンの市販品としては、“スミエポキシ(登録商標)”ELM434(住友化学製)や、“アラルダイト(登録商標、以下同じ)”MY720、アラルダイトMY721、アラルダイトMY9512、アラルダイトMY9612、アラルダイトMY9634、アラルダイトMY9663(以上ハンツマン・アドバンスト・マテリアル社製)、“jER(登録商標)”604(ジャパンエポキシレジン社製)などが挙げられる。
キシレンジアミンのグリシジル化合物の市販品としてはTETRAD−X(三菱瓦斯化学社製)が挙げられる。
トリグリシジルアミノフェノールの市販品としてはjER630(ジャパンエポキシレジン社製)、アラルダイトMY0500、アラルダイトMY0510(以上ハンツマン・アドバンスト・マテリアル社製)、ELM100(住友化学製)などが挙げられる。
グリシジルアニリン類の市販品としては、GAN、GOT(以上日本化薬(株)製)などが挙げられる。
フェノール類を前駆体とするグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ジフェニルフルオレン型エポキシ樹脂やそれぞれの各種異性体やアルキル、ハロゲン置換体などがあげられる。また、フェノールを前駆体とするエポキシ樹脂をウレタンやイソシアネートで変性したエポキシ樹脂なども、このタイプに含まれる。
特に、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂や、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、イソシアネート変性によりオキサゾリドン環を有するエポキシ樹脂は、吸水率を低下させるあるいは耐熱性を向上させる効果を有するので好ましく用いられる。
また、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を臭素化したものは、耐熱性、耐水性、難燃性の面で好ましく用いられる。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、“EPON”(登録商標)825、jER(登録商標)826、jER827、jER828、jER834、jER1001、jER1002、jER1003、jER1004、jER1004AF、jER1007、jER1009(以上ジャパンエポキシレジン(株)製)、“エピクロン”(登録商標、以下同じ)850(大日本インキ化学工業(株)製)、“エポトート”(登録商標、以下同じ)YD−128(東都化成(株)製)、DER−331、DER−332(ダウケミカル社製)などが挙げられる。
ビスフェノールF型エポキシ樹脂の市販品としてはjER806、jER807、jER1750、jER4004P、jER4007P、jER4009P(以上ジャパンエポキシレジン(株)製)、エピクロン830(大日本インキ化学工業(株)製)、エポトート)YD−170、エポトートYD−175、エポトートYDF2001、エポトートYDF2004(以上東都化成(株)製)などが挙げられる。
ビスフェノールS型エポキシ樹脂としては、エピクロン)EXA−1515(大日本インキ化学工業(株)製)などがあげられる。
ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂の市販品としては、jER YX4000H、jER YX4000、jER YL6616(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、NC−3000(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
フェノールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としてはjER152、jER154(以上ジャパンエポキシレジン社製)、エピクロンN−740、エピクロンN−770、エピクロンN−775(以上、大日本インキ化学工業(株)製)などが挙げられる。
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、エピクロンN−660、エピクロンN−665、エピクロンN−670、エピクロンN−673、エピクロンN−695(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、EOCN−1020、EOCN−102S、EOCN−104S(以上、日本化薬(株)製)などが挙げられる。
レゾルシノール型エポキシ樹脂の市販品としては、“デナコール”(登録商標、以下同じ)EX−201(ナガセケムテックス(株)製)などが挙げられる。
ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂の市販品としては、エピクロンHP4032(大日本インキ化学工業(株)製)、NC−7000、NC−7300(以上、日本化薬(株)製)などが挙げられる。
トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂の市販品としてはTMH−574(住友化学社製)などが挙げられる。
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の市販品としてはエピクロンHP7200、エピクロンHP7200L、エピクロンHP7200H(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、Tactix558(ハンツマン・アドバンスト・マテリアル社製)、XD−1000−1L、XD−1000−2L(以上、日本化薬(株)製)などが挙げられる。
ウレタンおよびイソシアネート変性エポキシ樹脂の市販品としては、オキサゾリドン環を有するAER4152(旭化成エポキシ(株)製)やACR1348(旭電化(株)製)などが挙げられる。
カルボン酸を前駆体とするエポキシ樹脂としては、フタル酸のグリシジル化合物や、ヘキサヒドロフタル酸、ダイマー酸のグリシジル化合物の各種異性体が挙げられる。耐熱性を落とさずに粘度を下げることを目的として、フタル酸やヘキサヒドロフタル酸のグリシジル化合物は好ましく用いられる。
フタル酸ジグリシジルエステルの市販品としては“エポミック”(登録商標)R508(三井化学(株)製)、デナコールEX−721(ナガセケムテックス(株)製)などが挙げられる。
ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステルの市販品としてはエポミックR540(三井化学(株)製)、AK−601(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
ダイマー酸ジグリシジルエステルの市販品としては、jER871(ジャパンエポキシレジン(株)製)や、エポトートYD−171(東都化成(株)製)などが挙げられる。
分子内不飽和炭素を前駆体とするエポキシ樹脂としては、例えば脂環式エポキシ樹脂が挙げられる。その市販品としては、“セロキサイド”(登録商標、以下同じ)2021、セロキサイド2080(以上ダイセル化学工業(株)製)、CY183(ハンツマン・アドバンスト・マテリアル社製)が挙げられる。
[B]成分の配合量は、[A]成分と[B]成分を合わせた100重量部中、40重量部以上95重量部以下が好ましく用いられる。より好ましくは、50重量部以上95重量部以下である。95重量部以上であると、[A]成分の量が少なすぎて、靱性が発現しづらくなり、また、40重量部よりも少ない場合は、エポキシ樹脂組成物の粘度が高くなりすぎるため取り扱い性が低下することがある。
本発明においては、[A]成分や[B]成分の他に、[C]成分としてエポキシ樹脂の硬化剤を添加してもよい。エポキシ樹脂の硬化剤としては、アミノ基、酸無水物、水酸基のようにエポキシ樹脂と反応しうる活性を有する化合物や、イミダゾール類に含まれる3級窒素の様なエポキシ基と反応しうる電子対をもつ化合物であればこれを用いることができる。好ましくは、アミノ基、酸無水物基、アジド基、フェノール性水酸基を有する化合物が適している。例えば、ジシアンジアミド、脂環式アミン、脂肪族アミン、芳香族アミン、アミノ安息香酸エステル類、各種酸無水物、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、イミダゾール誘導体をはじめ、三フッ化ホウ素錯体や三塩化ホウ素錯体のようなルイス酸錯体などが挙げられる。硬化剤はモノマー、オリゴマーいずれの形でも使用できる。
特に機械物性にすぐれた硬化物を与えるという面で芳香族アミン硬化剤が好ましく用いられる。中でも、硬化物としたときに150℃以上のガラス転移温度といった高い耐熱性を得やすいという点で、芳香族ポリアミン類が好ましい。
芳香族ポリアミンの具体例をあげると、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、メタキシレンジアミンやこれらの各種誘導体などが挙げられる。これらの硬化剤は単独もしくは2種類以上を併用する事ができる。中でも、組成物により耐熱性を与える面からジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンが望ましい。ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンの中でも、特に耐熱性の観点から、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホンが好ましく用いられる。
[A]〜[B]成分とポリアミンとルイス酸錯体の組み合わせや、ジシアンジアミドとイミダゾール誘導体との組み合わせ、ジシアンジアミドと尿素化合物の組み合わせ、芳香族ポリアミン、ジシアンジアミドと尿素化合物のような組み合わせは、比較的低温で硬化しながら、高い耐熱耐水性が得られるために好ましくもちいられる。
[C]成分を添加する場合、その添加量の最適値は、[A]〜[C]成分の種類・量、硬化剤の種類によりことなるが、アミノ基、酸無水物、アジド基、フェノール類の様にエポキシ基と活性水素が、一定の比率で反応する硬化剤の場合、化学量論的な当量比では、耐熱性を向上させるなどの機械特性を向上させる観点から[B]成分のエポキシ基に対して[C]成分の活性水素当量を0.5〜1.5当量の間にすることが好ましい。例えば、芳香族アミン硬化剤では、化学量論的な当量比が本発明のエポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ基に対して0.5〜1.4の間にあることが好ましい。特に好ましくは0.6〜1.4である。0.5当量未満であると、[B]成分のエポキシ基の残基が多くなるために、ガラス転移温度が低下したり機械物性が低下することがある。1.4当量より多いと、硬化剤のアミノ基が未反応で残るために吸水が増える耐水性が低下することがある。イミダゾール誘導体や、ルイス酸錯体などのアニオン重合やカチオン重合を促進させる触媒を単独で使用する場合、エポキシ樹脂100重量部に対して1〜10重量部配合することが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、プリプレグのマトリックス樹脂として用いた場合のタック・ドレープ性などのプリプレグの取り扱い性を良好にするために、その粘度としては、50℃における粘度が100〜5000Pa・sにあることが好ましい。100Pa・s未満であると、本発明のエポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸させてプリプレグとした場合に、タックが強すぎたりタックの経変が大きくなることがあり、5000Pa・sより大きいと、タックが不十分となり成形型に十分に貼り付かないことや、ドレープ性が悪く曲率を持った成形型に賦形することが困難になることがある。[A]成分の量を調整することや、[B]成分に含まれる液状エポキシ樹脂の含有量によりコントロールすることが可能である。ここでいう粘度とは、動的粘弾性測定装置により求められる複素粘弾性率η*である。タックとは、プリプレグの使用時の粘着性のことであり、25℃で、プリプレグに指で触れて、その触感により判定する触感法により判定される。タックが低すぎると、プリプレグの積層工程において重ねて押さえつけたプリプレグがすぐに剥離してしまい、積層作業に支障をきたす場合がある、タックが強い場合、例えば誤って重ねてしまった場合などプリプレグの自重で貼り付いてしまい、あとで剥離して修正することが困難になる場合がある。ドレープ性とは、プリプレグの変形のしなやかさのことであり、積層時の型への賦形性などに影響する特性である。指標として様々な評価があるが、例えば、作成したプリプレグを[0°]方向に300mm、[90°]方向に25mmにカットし、渡り架台の角に100mm密着させ、さらにテープで固定した、架台に固定後5分静置し、プリプレグの屈曲角度θを測定する方法がある。屈曲角度θとは、プリプレグの固定されていない部分と、架台側面との間の角度であり、θは0〜90までの値を取る。屈曲角度θは、架台側面からの距離と架台に固定したプリプレグの表面からプリプレグの固定されていない端までの高さを測定し、このタンジェントの値から屈曲角度θを算出する。この屈曲角度θが高いほどドレープ性が低いということになる。ドレープ性が低いと曲面に賦形するのが難しく、ドレープ性が高すぎると、皺が寄り易くなるため、取扱い性が良好な範囲がある。好ましい屈曲角度θは、30〜65°である。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物の粘度としては、本発明のエポキシ樹脂組成物を後述の強化繊維に含浸させるためには、強化繊維の種類や量、強化繊維からなる基材の形態などの影響をうけるが、樹脂組成物の最低粘度が、1.5Pa・s以下、好ましくは1.0Pa・s以下であれば、好ましく用いることができる。強化繊維の基材に含浸させるために、粘度は低ければ低いほど良いが、プリプレグとして使用する場合、実質的に、0.05Pa・s以上である。それ以下であると、実際の組成物の粘度が50〜150℃全体の粘度領域で低くなりすぎるために、タック・ドレープ性の悪化や経時変化が大きくなる場合がある。
本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度は、用途にもよるが、100℃〜250℃が望ましい。100℃以下であると高温環境で使用中に変形する場合がある。また、航空機用途に置いては、150℃以上より好ましくは170℃以上の耐熱性を有することが好ましい。硬化物のガラス転移温度が250℃を超えると、繊維強化複合材料に残留する熱応力が大きくなったり、硬化物が脆くなりがちであり、得られる繊維強化複合材料の強度特性が低下する場合がある。ここでいう耐熱性とは硬化物のガラス転移温度の測定については示差熱量計(DSC)を用いて、JIS K7121(1987)に基づいてもとめた中間点温度をガラス転移温度である。アミンやフェノール類を前駆体とするエポキシ樹脂と芳香族アミン硬化剤またはDICY/DICY用の硬化促進剤などの組み合わせにより、目的とする耐熱性にすることが可能である。
本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物の靱性は、0.90MPa・m―1/2以上2.50MPa・m―1/2以下であることが好ましい。硬化物の靭性が0.90未満であると繊維強化複合材料の耐衝撃性例えば衝撃付与後の残存圧縮強度などが不足する場合があり、2.50を超えると切削性など加工性が低下して繊維強化複合材料の機械物性の低下をまねく場合がある。ここで、硬化物の靭性とは変形モードI(開口型)の臨界応力強度のことを指し、後述するようにASTM D5045に従って求めることができる値である。一般的にこの値が大きいほど硬化物の靱性ならびに耐衝撃性は高くなる。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物の物性を損なわない範囲で、難燃性や揺変性付与の観点からナノカーボンや無機充填剤などを添加しても良い。ナノカーボンとしては、カーボンナノチューブ、フラーレンやそれぞれの誘導体が挙げられる。無機充填剤としては、炭酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
本発明で用いられるマトリックス樹脂組成物の混合方法は特に限定されないが、ニーダー、プラネタリーミキサー、3本ロールおよび2軸押出機などが好ましく用いられる。粒子成分を用いる場合は、粒子の分散性の点から、予めホモミキサー、3本ロール、ボールミル、ビーズミルおよび超音波などで、粒子をマトリックス樹脂中の液状成分に拡散させておくことが好ましい。また、マトリックス樹脂との混合時、粒子の予備拡散時等には、必要に応じて加熱・冷却したり、加圧・減圧しても良い。
本発明のプリプレグは、リバースロールコーターやナイフコーターなどにより樹脂組成物を離型紙上に塗布してフィルム化し、強化繊維基材にマトリックス樹脂組成物のフィルムを重ねて加熱加圧して含浸させたり、または強化繊維基材を直接、エポキシ樹脂組成物の溶液に浸漬し、乾燥させることや、スプレーコーターなどを用いて直接樹脂を強化繊維基材に吹き付けることにより製造することができる。
本発明のプリプレグならびに繊維強化複合材料において用いる強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、黒鉛繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維等が好ましい。これらの繊維を2種以上混合して用いても構わないが、より軽量で、より耐久性の高い成形品を得るために、炭素繊維や黒鉛繊維を用いるのが良い。本発明においては、用途に応じてあらゆる種類の炭素繊維や黒鉛繊維を用いることが可能であるが、耐衝撃性に優れ、高い剛性および機械強度を有する繊維強化複合材料を得られることから、JIS R 7601(1986)に記載の方法によるストランド引張試験における引張弾性率が150〜650GPaであることが好ましく、より好ましくは200〜550GPaであり、さらに好ましくは230〜500GPaである。
強化繊維からなる基材の形態は特に限定されるものではなく、一方向に引き揃えた長繊維の他に、トウ、織物、マット、ニット、組み紐、10mm未満の長さにチョップした短繊維などが用いられる。ここでいう、長繊維とは、10mm以上の実質的に連続したマルチフィラメントの繊維束(ストランドともいう)をさす。実際の使用上、好ましくは20mm以上、更に好ましくは50mm以上、もっとも好ましくは100mm以上の実質的に連続したマルチフィラメントの繊維束である。短繊維とは10mm未満の長さに切断された繊維束であり、実質的に均一な長さに切りそろえていてもいいし、ランダムな長さに切断してもよい。また、特に、比強度、比弾性率が高いことを要求される用途には強化繊維束が単一方向に引き揃えられた配列が最も適しているが、取り扱いの容易なクロス(織物)状の配列も本発明には適している。
本発明のプリプレグは、単位面積あたりの強化繊維量が100〜2000g/mであることが好ましい。強化繊維量が、100g/m未満では、所定の厚みを得るために積層枚数を多くする必要があり、作業が繁雑となることがある。一方、強化繊維量が2000g/mを超えると、プリプレグのドレープ性が悪くなる傾向を示す。ここでいう単位面積あたりの繊維重量は、プリプレグから有機溶媒などによりマトリックス樹脂組成物を洗い落とし、乾燥させた後、重量を計量することで求めることができる。
本発明のプリプレグの繊維重量含有率は、好ましくは30〜80重量%であり、より好ましくは35〜70重量%であり、更に好ましくは40〜65重量%である。繊維重量含有率が30重量%未満では、マトリックス樹脂組成物の量が多すぎて、比強度と比弾性率に優れた繊維強化複合材料の利点が得られなかったり、繊維強化複合材料の成形の際の発熱量が高くなりすぎることがある。また、繊維重量含有率が80重量%を超えると、マトリックス樹脂組成物の含浸不良が生じ、得られる繊維強化複合材料は、ボイドの多いものとなることがある。
本発明の繊維強化複合材料は、上記のプリプレグを賦形し、硬化することにより製造することができる。プリプレグの賦形は、単数または複数のプリプレグを型上に積層してもよく、マンドレルに単数または複数のプリプレグを捲回してもよい。
本発明の繊維強化複合材料は、上記の強化繊維基材を型等に賦形した後に直接樹脂を含浸させて硬化させることによっても製造できる。本発明の樹脂組成物を流動可能な粘度まで下げて型に注入するレジン・トランスファー・モールディング法や、本発明の樹脂組成物からなるフィルムと強化繊維基材を所定の繊維量、樹脂量になるように積層、配置後、加温、必要であれば加圧して樹脂を含浸させた後、硬化させるレジン・フィルム・インフュージョン法が好ましく上げられる。
その硬化方法は、本発明で用いられるマトリックス樹脂は熱エネルギーの他に、可視光、赤外線、紫外線、電子線および放射線などのエネルギー線や超音波などを補助的に用いて硬化しても良い。また、硬化の際、必要に応じて、減圧したり加圧しても良い。
加熱する方法としては、オートクレーブ、オーブンおよびプレスなどの装置により行われる。室温から硬化温度まで上げる際には、硬化温度まで一定の昇温速度で上げてもよいし、途中の温度で一定時間保持し、その後、硬化温度まで上げても良い。実際に繊維強化複合材料を成形する際の硬化温度としては、硬化剤にもよるが、硬化後の耐熱性の観点から120〜220℃が好ましく用いられる。昇温速度は、0.1〜10℃/分昇温が好ましく用いられる。昇温速度が0.1℃/分未満では、目標とする硬化温度までの到達時間が非常に長くなり作業性が低下することがある。また、昇温速度が10℃/分を超えると、強化繊維各所での温度差が生じてしまうため、均一な硬化物が得られなくなることがある。
本発明の繊維強化複合材料は、前述の樹脂の高い靱性により開口モードや、剪断変形モードの破壊靱性にすぐれる。中でも開口モードにおいては顕著に向上が見られる。
本発明の繊維強化複合材料は、層間破壊靱性に優れ、また他の機械物性の低下を伴わないために、高い靱性を含む機械物性が必要な航空宇宙用途や船舶、風車などの大型構造部材をはじめ、自動車、建築部材や、その他一般産業用途に好適に用いられる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、この実施例における物性の測定、評価およびプリプレグの作製は以下のように行った。
(1)ポリエーテルスルホンの合成
以下に、本発明における[A]成分のポリエーテルスルホンの合成例を示す。
特許文献3(特開平5−86186)を参考に、攪拌器、温度計、冷却器、留出物分液器および窒素導入管を備えた1Lのフラスコに、4,4‘−ジヒドロキシジフェニルスルホン(以下DHDPSと略す)(50.06g、0.20モル)、トルエン100ml、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(250.8g)、40%水酸化カリウム水溶液(56.0g、0.39モル)を秤量し、攪拌しながら窒素ガスを通じ、反応系をすべて窒素置換した。窒素ガスを通じながら130℃まで加熱した。反応系の温度が上昇するとともにトルエンの環流が開始され、反応系内の水をトルエンとの共沸で除去し、トルエンを反応系に戻しながら共沸脱水を130℃で4時間行った。この後、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(以下DCDPSと略す)(57.40g、0.20モル)をトルエン40gとともに反応系に加え、反応系を150℃に加熱した。トルエンを留出させながら4時間反応させ、高粘度の茶褐色の溶液を得た。反応液の温度を室温まで冷却し、反応溶液をメタノール1kgに投下し、ポリマー粉を析出させた。濾過によりポリマー粉を回収し、これに水1kgを加え、さらに1Nの塩酸を加え、スラリー溶液をpH3〜4になるまで加え、酸性にした。濾過によりポリマー粉を回収した後、ポリマー粉を水1kgで2回洗浄した。さらにメタノール1kgに洗浄し、150℃で12時間真空乾燥した。得られたポリマー粉は白色粉末状で収量は88.3g(収率95.0%:収率=(92.8/464.53([A]成分合成の中間生成物の分子量)/0.2×100より算出)、ガラス転移温度(Tg)=224℃、5%重量減量温度は510℃であった。還元粘度は0.58であった。400MHz H−NMRにより測定したクロロフェニル末端基/ヒドロキシフェニル末端基=50/50(モル%)であった。
攪拌機、窒素導入管、温度計、冷却管を取り付けた300mLの三口フラスコに上記で合成した[A]成分合成の中間生成物(5g、10.7mmol(5/464.53×1000で計算))に対し、DHDPS(1.25g、4.35mmol)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP) 200ml、無水炭酸カリウム(0.6g、4.34mmol)を秤量し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)反応溶液を攪拌しながら反応温度を150℃にまで上昇させ、反応時間1時間で反応を終了し、反応溶液を500mlのメタノールに投下し、析出固体を粉砕、500mlの水で2回洗浄し、130℃で真空乾燥した。得られたポリマー粉は白色粉末状で収量は7.2g、収率96%(収率は回収した[A]成分であるポリエーテルスルホンの重量/(仕込んだ[A]成分合成の中間生成物重量+仕込みDHDPS)×100により算出)、ガラス転移温度=190℃、5%重量減量温度は510℃、還元粘度(ηsp/c)は0.25であった。H−NMRではクロロフェニル末端基は確認されず、ヒドロキシフェニル末端基組成が100モル%の[A]成分(ポリエーテルスルホン)が得られた。
上記の手順に準拠し、DHDPSの量や、アルカリ金属の量、反応時間を変更することで、クロロフェニル末端基の変換率の異なるヒドロキシフェニル末端のポリエーテルスルホンを合成し、実施例・比較例で使用した。
(2)還元粘度の測定
還元粘度は、JIS K7367−1(2002)に記載の方法で、毛細管粘度計を用い、DMF中、25℃、1g/dlの条件で測定した。
還元粘度(ηsp/c)は、下記式に基づき計算し、5回の測定値を平均化した値を使用した。
ηsp/c=(t−t)/t/c
t;重合体溶液の粘度計における標線間の通過時間(秒)
;純溶媒の粘度計の標線間の通過時間(秒)
c;重合体溶液の濃度(g/dl)
(3)エポキシ樹脂組成物の調製
ニーダー中に、硬化剤以外の成分を所定量加え、混練しつつ、150℃まで昇温し、150℃、1時間混練することで、透明な粘調液を得た。80℃まで混練しつつ降温させ、硬化剤および硬化促進剤を所定量添加え、混練しエポキシ樹脂組成物を得た。各実施例、比較例の成分配合比は、表1に示す通りである。なお、ここで用いたポリエーテルスルホン以外の原料は以下に示す通りである。
<エポキシ樹脂>
テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(スミエポキシELM−434、住友化学工業(株)製)
トリグリシジルp−アミノフェノール(jER630、ジャパンエポキシレジン(株)製)
<硬化剤>
・4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(スミキュア−S、住友化学工業(株)製)
(4)未硬化樹脂の粘度測定
エポキシ樹脂組成物の未硬化物の粘度は、動的粘弾性測定装置(レオメーターARES:レオメトリック社製)を用い、直径40mmのパラレルプレートを用い、昇温速度2℃/minで単純昇温し、周波数0.5Hz、Gap 1mmで測定を行った。温度範囲は、50℃〜150℃とし、この範囲で昇温により150℃に達した時点で低粘度化の傾向にある場合、150℃を越えて次の極小値を取る温度まで昇温した。また、最低粘度は、測定中に現れる極小値の中で、最も低いものを選択した。
(5)樹脂硬化物ならびにポリエーテルスルホンのガラス転移温度
樹脂硬化物ならびにポリエーテルスルホンのガラス転移温度の測定については示差熱量計(DSC)を用いて、JIS K7121(1987)に基づいてもとめた中間点温度をガラス転移温度とした。
(6)硬化物の靱性試験方法
上記(3)の未硬化樹脂を真空中で脱気を行い樹脂中の気泡を取り除いた後、6mm厚のテフロン(登録商標)製スペーサーにより厚み6mmになるように設定したモールド中で180℃の温度で2時間硬化させ、厚さ6mmの樹脂硬化物を得た。この樹脂硬化物を12.7×150mmでカットし、試験片を得た。インストロン万能試験機(インストロン社製)を用い、ASTEM D5045に従って試験片を加工・実験をおこなった。試験片への初期の与亀裂の導入は、液体窒素温度まで冷やした剃刀の刃を試験片にあてハンマーで剃刀に衝撃を加えることで行った。ここでいう、樹脂硬化物の靱性とは、変形モード1(開口型)の臨界応力強度(KIc)のことをさしている。
(7)プリプレグの作製
プリプレグは以下の様にして作製した。上記(3)の方法で調製した未硬化の樹脂組成物をナイフコーターを用いて、目付52g/mで離型紙上にフィルム化し、樹脂フィルムとした。この樹脂フィルムを用いて、一方向に引き揃えた炭素繊維(目付190g/m)の両面から加熱加圧含浸し、一方向プリプレグを得た。なお炭素繊維は“トレカ”(登録商標)T800G−12K−31E(東レ(株)製)を用いた。
(8)繊維強化複合材料の層間破壊靱性
上記(7)の一方向プリプレグを繊維方向を揃えて縦横200mmにカットし、16枚積層した。積層中央面に縁が繊維方向と直角にポリイミドフィルムを75mm挿入した。積層中央面とは、上下8枚ずつ積層した境界面である。オートクレーブにて、180℃で2時間、0.59MPaの圧力下、昇温速度1.5℃/分で成型して積層体を作製した。この積層体を繊維方向を長手方向とし、長さ150mm、幅25mmに切断して試験片を得た。この試験片に、JIS K7086に記載のピン負荷用ブロックを接着した。JIS K7086(1993)に記載の双方持ちはり試験に準じた亀裂進展初期のモードI層間破壊靱性(GIc)を求めた。なお、n数は5とした。
(9)プリプレグの含浸性
上記(7)の一方向プリプレグを40℃に設定した恒温槽で1週間放置した後、1℃/時間で180℃まで昇温させ、180℃、2時間で樹脂を流動させずに硬化させた。硬化後の断面を顕微鏡により観察し、未含浸の強化繊維の断面積と全強化繊維の断面積の比をとることにより算出した。80%以上を○、50以上80%未満を△、50%未満を×と判定した。
実施例1〜7と、比較例1,3、4との比較により末端官能基の変換率により樹脂靱性と層間破壊靱性が向上していることが分かる。実施例3、7と比較例2との比較により変換率は高くても還元粘度が低い場合、樹脂靱性や層間破壊靱性が発現しないことが分かる。
Figure 2009167333

Claims (5)

  1. [A]還元粘度が0.21〜0.48であり、その末端の80モル%以上がヒドロキシフェニル基であるポリエーテルスルホンと[B]エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂組成物。
  2. 前記[A]成分のガラス転移温度が180〜230℃である請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
  3. 50℃における粘度が、100〜5000Pa・sであり、かつ最低粘度が1.5Pa・s以下である請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸させてなるプリプレグ。
  5. 請求項1〜3記載のエポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸した後、硬化せしめた繊維強化複合材料。
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