JP2023149305A - アラミド繊維マルチフィラメント、アラミド繊維コード及びゴム製品 - Google Patents

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勇輝 高谷
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拓也 森
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【課題】上撚りコード内のフィラメント間に隙間を確保し、接着剤が繊維コード内部に含浸するようにしたアラミド繊維マルチフィラメント及びアラミド繊維コード、ベルト耐久性が実用上十分で耐ホツレ性が良好なゴム補強用アラミド繊維コードを提供する。【解決手段】断面扁平比が18以上30未満であることを特徴とするアラミド繊維マルチフィラメント、及び、前記アラミド繊維マルチフィラメントに撚りをかけたアラミド繊維コードであって、該アラミド繊維コードにおけるアラミド繊維の断面占有率(r)が、30%以上48%未満であることを特徴とするアラミド繊維コード(ここで、断面占有率(r)=(S/A)×100 で求められる値であり、Sはコードの理論断面積、Aはコードの見掛け断面積である)、ならびに、前記アラミド繊維コードを接着剤処理したガーレー剛軟度100mN以上200mN未満であることを特徴とするアラミド繊維コード。【選択図】なし

Description

本発明は、アラミド繊維マルチフィラメント、ゴム補強用等として用いられるアラミド繊維コード及びそれを含むゴム製品に関する。
アラミド繊維は、高強度、高弾性率、高耐熱性、非導電性、錆びない等の高い機能性と、有機繊維特有のしなやかさと軽量性を併せ持った合成繊維であることから、各種タイヤ、ベルト、コンベヤ等のゴム補強用繊維として用いられている。アラミド繊維をゴムと接着させる場合、下撚り及び上撚りを施したアラミド繊維(アラミド繊維コード)を、レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(以下、RFLと言うことがある)等の接着剤で処理するのが一般的である。
しかし、繊維コードを歯付きベルト、Vリブドベルト及びカットエッジタイプのVベルト等のベルト両側面(カット面)に抗張体を露出させた動力伝動用ベルトの心線として使用した場合、カット面からコードを構成しているフィラメントが飛び出す、いわゆるホツレという問題が発生することがある。
上記のホツレ問題を解決する方法として、特許文献1は、未処理の繊維コードをイソシアネート化合物またはエポキシ化合物で前処理した後、RFL液で処理することでRFL処理液の含浸度を高め、処理コードの空隙率を0~1.5%に低下させ、ホツレを改善する方法を提案している。しかし、特許文献1では接着剤を2段で処理しているため、生産コスト及び取り扱い性が悪化する問題点がある。加えて、処理剤の含浸性を高めて処理コードの空隙率を下げるために、1段目の処理で有機溶剤を用いて、イソシアネートまたはエポキシ化合物を処理しているが、環境配慮と作業者の安全性の面からは有機溶剤を使用しないことが望ましい。
また、特許文献2は、接着剤処理後の心線径を0.7~1.2mmの範囲にすることで、高い耐疲労性と耐ポップアウト性、及びベルト強力にできることを提案している。しかし、処理コードの内部への接着剤の含浸性を向上させるためには、接着剤処理後の心線径を制御するだけでは不十分である。
そして、特許文献3は、接着剤層を2層設け、第1接着剤層の繊維コードに対する付着量を3~10重量%、第2接着剤層の繊維コードに対する付着量を0.1~3質量%にして、内部までモノフィラメント同士が接着するようにすることで、良好な接着力と耐ホツレ性を確保している。しかし、処理コードのガーレー剛軟度は330~660mNと高いのでベルトの耐久性に課題がある。さらに、接着剤の含浸性を良好にするために接着剤を2段で処理しているが、製造コストや取り扱い性が悪化する問題点がある。加えて、本公知例ではポリエチレンテレフタレートまたはナイロン66のコードが規定されているが、アラミド繊維の場合、化学的に安定であるがゆえに接着剤成分と繊維表面との間で化学結合ができにくく、コード内部のモノフィラメントに接着剤層を形成するのが難しいという課題がある。
特開平9-158989号公報 特許第6650545号公報 特開2020-033661号公報
特許文献1~3に記載された方法は、繊維コードへの接着剤の含浸性を高めるために、接着剤を工夫したものであり、マルチフィラメントに空隙ができるように工夫した方法ではない。
本発明は、上撚りコード内のフィラメント間に隙間を確保し、接着剤が繊維コード内部に含浸するようにしたアラミド繊維マルチフィラメント及びアラミド繊維コード、ならびに、ベルトの耐久性が実用上十分で耐ホツレ性が良好なゴム補強用アラミド繊維コードを提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、アラミド繊維に対する種々の検討結果から得られた知見、すなわち製造方法の違いによりアラミド繊維マルチフィラメントの断面扁平比が異なること、及び詳細は不明であるが、耐ホツレ性が良好なゴム補強用アラミド繊維コードは、アラミド繊維マルチフィラメントの断面扁平比及びコードにおけるアラミド繊維の断面占有率が特定の範囲になる、との知見に基づきなされたものである。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)アラミド繊維マルチフィラメントの幅を該マルチフィラメントの厚みで除した値(断面扁平比)が18以上30未満であることを特徴とするアラミド繊維マルチフィラメント。
(2)前記(1)に記載のアラミド繊維マルチフィラメントに、下撚り及び上撚りを施したアラミド繊維コードであって、該アラミド繊維コードにおけるアラミド繊維の断面占有率(r)が、30%以上50%未満であることを特徴とするアラミド繊維コード。
ここで、断面占有率(r)=(S/A)×100 で求められる値であり、Sはコードの理論断面積、Aはコードの見掛け断面積である。
(3)前記アラミド繊維コードの総繊度が、3,000dtex以上15,000dtex以下であることを特徴とする(2)に記載のアラミド繊維コード。
(4)前記アラミド繊維マルチフィラメントに対する硬化性エポキシ化合物の付着率が、水分0質量%のアラミド繊維マルチフィラメントに対して、0.01質量%以上0.1質量%未満であることを特徴とする(2)または(3)に記載のアラミド繊維コード。
(5)前記(2)~(4)いずれかに記載のアラミド繊維コードを接着剤処理したゴム補強用アラミド繊維コードであって、該アラミド繊維コードのガーレー剛軟度が100mN以上200mN未満であることを特徴とするゴム補強用アラミド繊維コード。
(6)前記アラミド繊維コード表面に1層の接着剤層を有することを特徴とする(5)に記載のゴム補強用アラミド繊維コード。
(7)前記接着剤処理する処理液が、水系であることを特徴とする(5)に記載のゴム補強用アラミド繊維コード。
(8)前記(5)~(7)いずれかに記載のアラミド繊維コードを含むゴム製品。
本発明によれば、アラミド繊維マルチフィラメントの断面扁平比が高く、上撚りコード内のフィラメント間に一定以上の隙間があることで、接着剤がコード内部に含浸しやすくなる。結果として、ベルト製造時にベルト断面から繊維がホツレにくい(耐ホツレ性良好)コードを提供することができる。
本発明によれば、ゴムとの接着性が良好であり、ガーレー剛軟度が低いためベルトの耐久性に優れると共に、耐ホツレ性に優れるゴム補強用コードを提供することができる。
ガーレー剛軟度測定器の斜視図である。
本発明のアラミド繊維コードに用いるアラミド繊維としては、パラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維等を挙げることができるが、引張強さに優れているパラ系アラミド繊維が好ましい。パラ系アラミド繊維の市販品としては、例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(米国デュポン社、東レ・デュポン株式会社製、商品名「Kevlar」(登録商標))、コポリパラフェニレン-3,4´-オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人株式会社製、商品名「テクノーラ」(登録商標))等を挙げることができ、これらのパラ系アラミド繊維の中でも、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維が特に好ましい。
これらのアラミド繊維は、公知の方法で製造したものを用いることができる。なお、アラミド繊維は、繊維を形成するポリマーの繰り返し単位中に、通常置換されていても良い二価の芳香族基を少なくとも一個有する繊維であって、アミド結合を少なくとも一個有する繊維であれば特に限定はなく、全芳香族ポリアミド繊維、又はアラミド繊維と称されるものであって良く、「置換されていても良い二価の芳香族基」とは、同一又は異なる1以上の置換基を有していても良い二価の芳香族基を意味する。
本発明のアラミド繊維マルチフィラメントは、あらかじめ製糸工程において、硬化性エポキシ化合物が繊維用油剤との混合物として付与されたもの、あるいは、硬化性エポキシ化合物と繊維用油剤が別工程で付与されたものが好ましい。硬化性エポキシ化合物は、紡糸、中和後、又は、紡糸、中和、洗浄後のアラミド繊維マルチフィラメントを乾燥し、水分率3~15質量%に調整されたアラミド繊維マルチフィラメントに対して付与されることが好ましい。より好ましくは5~13質量%である。水分率が15質量%以下であると、巻上後に水分が一部蒸発してもパッケージの硬度が高く保たれるため、ボビンの取り扱い性の面から好ましい。アラミド繊維の水分率が15質量%を超えると、その後の加工工程上にある金属やセラミックロールとの摩擦抵抗が高くなるため擦過毛羽等によって工程通過性が悪化する傾向がある。アラミド繊維の水分率が3質量%未満になると、静電気や擦過による毛羽が発生し易い等の不都合が生じる恐れがある。
硬化性エポキシ化合物は、脂肪族エポキシ化合物及び芳香環を有するエポキシ化合物から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。2種以上を用いる場合は、混合して用いても良く、別々に用いても良い。さらに、工程通過性を向上させるために、硬化性エポキシ化合物と繊維用油剤を混合して付与しても良く、2段階で付与しても良い。
脂肪族エポキシ化合物としては、グリセロール、ソルビトール、ポリグリセロール等の多価アルコールのグリシジルエーテル化合物があり、例えば、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。これらのエポキシ化合物の中でも、グリシジル基を2個又は3個有する多官能性エポキシ化合物(ポリエポキシド)がより好ましい。
芳香環を有するエポキシ化合物としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂があり、例えば、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン[ビスフェノールF]、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールC]等のグリシジルエーテル化合物が挙げられる。これらの中でも、常温で液状である点より、ビスフェノールA、ビスフェノールFのグリシジルエーテル化合物がより好ましい。
繊維用油剤としては、硬化性エポキシ化合物との相溶性が良い油剤(水溶性油剤)が好ましい。油剤は、硬化性エポキシ化合物と相溶性が高く、繊維油剤として必要な平滑性が高く、アラミド繊維マルチフィラメントを撚糸する際にトラベラとの摩耗を減少させることができる点より、ポリアルキレングリコールもしくはポリアルキレングリコール脂肪酸エステルが好ましい。
ポリアルキレングリコール脂肪酸エステルは、脂肪酸とポリアルキレングリコールとのエステル化合物であり、モノエステル型、ジエステル型等がある。
脂肪酸としては、飽和又は不飽和の脂肪酸で、例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等の飽和脂肪酸や、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、エライジン酸、アルケン酸等の不飽和脂肪酸や、12-ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。これらの脂肪酸の中でも、エステル化合物の粘性が極端に高くなることがなく取扱性に優れている点では炭素数13~22の飽和又は不飽和脂肪酸が好ましい。
ポリアルキレングリコールとしては、酸化エチレンの重合体であるポリエチレングリコール、酸化プロピレンの重合体であるポリプロピレングリコール、酸化エチレンと酸化プロピレンの共重合体等が挙げられるが、これらの中でも、ポリエチレングリコールが好ましい。硬化性エポキシ化合物の溶解性に優れるエステル化合物が得られる。ポリエチレングリコールの重量平均分子量(Mw)は、400~1,300が好ましく、この範囲にすることで、硬化性エポキシ化合物との混合、油剤付与性及び工程通過性が良好となる。
本発明のアラミド繊維マルチフィラメントに付与する繊維用油剤は、粘度が高すぎるとモノフィラメント同士が油剤の粘性によって付着し易くなり、マルチフィラメントが集束された状態になり易い。繊維用油剤の粘度は、30mPa・s以上90mPa・s以下が好ましく、60mPa・s以上80mPa・s以下が特に好ましい。繊維用油剤の粘度が30mPa・s未満であると、油剤がフィラメントに付着しなくなることでフィラメントの取扱い性が著しく悪化する不都合があり、90mPa・sを超えると、マルチフィラメントが集束された状態になることで、断面扁平比が高いアラミド繊維マルチフィラメントが得られ難くなる不都合がある。
本発明のアラミド繊維マルチフィラメントに対する硬化性エポキシ化合物の付着量は、アラミド繊維質量(乾燥基準)に対して0.01質量%以上0.1質量%未満であることが好ましく、より好ましくは0.02質量%以上、0.08質量%未満である。付着量を前記範囲にすることにより、アラミド繊維の工程通過性が良好となり、また、ゴムとの接着性に優れるアラミド繊維コードが得られる。エポキシ化合物のアラミド繊維表面への付着量が0.1質量%以上になると、エポキシ化合物の高い粘性によりモノフィラメント同士が粘着して、撚りをかけた時にモノフィラメント間に隙間ができにくくなり、接着剤がコード内部のモノフィラメントまで含浸しにくくなる恐れがある。
アラミド繊維マルチフィラメントへの硬化性エポキシ化合物の付着量を上記の範囲とする方法は特に限定されないが、例えばアラミド繊維に付与する油剤の中に、硬化性エポキシ化合物が5質量%以上15質量%未満含まれるようにする方法がある。より好ましくは6質量%以上9質量%未満である。
硬化性エポキシ化合物のアラミド繊維表面への付着量は、例えば以下の方法で測定できる。すなわち、アラミド繊維をアセトンに浸漬し、10分間超音波洗浄する。アラミド繊維を取り出し、アセトン溶液を85℃で加熱し、アセトンを除去する。残留物の重量を測定し、水分率0%に換算した時のアラミド繊維の重量に対する比率に100を乗じた値を付着量(%)とする。
硬化性エポキシ化合物及び繊維用油剤を付着させたアラミド繊維マルチフィラメントは、その後、巻き取り工程でボビンに巻き取られる。
巻き取り工程においては、例えば、アラミド繊維マルチフィラメント(原糸)に対するエポキシ化合物の付着率を前記好ましい範囲とした上で、原糸に付与する油剤の粘度を上記範囲にすることが好ましい。これにより、モノフィラメント同士が油剤によって粘着し難くなりフィラメントの集束性が低下する(バラケやすくなる)ことで、原糸が巻き取られた際に面圧を受けて扁平になる。
巻き上げ後の原糸は、熱処理及び緊張処理することなく常温で保持され、水分率が3~15質量%に保持される。
本発明のアラミド繊維マルチフィラメントは、マルチフィラメントの幅をマルチフィラメントの厚みで除した値(断面扁平比)が18以上30未満である。より好ましくは18.5以上25未満、特に好ましくは19以上22未満である。断面扁平比を上記範囲とすることで、ゴム補強用繊維コードの特性が向上するのは、次のような理由によるものと推察される。
すなわち、断面が扁平であれば、マルチフィラメントに撚りをかけた時に凸凹した状態のコードが得られるため、コード見掛け断面に対して繊維の占有面積の小さい隙間の多いコードとなり、コードを構成するマルチフィラメントの隙間に接着剤が含浸しやすくなる。また、断面扁平比を上記範囲とすることで、マルチフィラメントの隙間への接着剤の含浸がより容易になり、接着剤によってモノフィラメント間が接着されることで、ゴム補強用コードにおいて優れた接着性及び耐ホツレ性が発揮されるようになる。断面扁平比が18未満になると、フィラメントの集束性が高い状態となるため、撚糸した際に断面占有率が高くなることで、処理液が含浸する隙間が少なくなり、コードの耐ホツレ性が低下する不都合がある。また、断面扁平比が30以上になると、単糸がバラバラになり易く、撚糸した際にマルチフィラメント同士の引揃えが悪くなることでコード強力が低下する不都合がある。
本発明で用いるアラミド繊維は、撚糸コード総繊度、マルチフィラメント繊度や単糸繊度は制約されない。撚糸コード総繊度は、3,000~15,000dtexが好ましく、6,000~12,000dtexが特に好ましい。マルチフィラメント繊度は、1,000dtex~4,000dtexが好ましく、1,500dtex~2,000dtexが特に好ましい。単糸繊度は0.1~10dtexが好ましく、0.6~6.0dtexが特に好ましい。
総繊度が3,000dtex未満であるとコードの破断強力が低くなり、ベルト製造後に高張力で使用した時に、ベルトの破断に繋がりやすくなり、一方、15,000dtexを超えるとコードが太くなり、接着剤処理時にコード内部まで接着剤が含浸しにくくなる。
また、マルチフィラメント繊度が1,000dtex未満であるとコードの強力を保つために、上撚りを構成する下撚りの本数を増やす必要があるが、下撚りの本数を増やすと、上撚りした時に下撚りコード同士の引き揃えが難しくなり、コード強力が下がりやすくなる懸念がある。また、マルチフィラメント繊度が4,000dtexを超えると上撚りを構成する下撚りコードが太くなり、接着剤を処理する際にコード内部のモノフィラメントに接着剤が含浸しにくくなる、という懸念がある。
単糸繊度が0.1dtex未満であると、接着剤処理液に撚糸コードを浸漬する際に、毛細管現象における管径が小さくなり、接着剤処理液の浸透性が低下する。単糸繊度が10dtexを超えると、撚りをかけた時に単糸同士の追従性が悪くなり、引き揃え性が悪くなることで、コード強力が低下する。加えて、屈曲した時にコードが硬いことにより、耐疲労性が悪化する。
本発明のアラミド繊維コードは、通常、上記アラミド繊維マルチフィラメントに撚りをかけて未処理コード(「接着剤処理前のアラミド繊維コード」あるいは「生コード」)とし、その後に接着剤処理して得られる。
コードに撚りをかける場合の撚り数としては、6.0~20.0t/10cmが好ましく、より好ましくは7.0~10.0t/10cmである。撚り数をこの範囲とすることで、良好な耐疲労性と良好なコード強度を得ることができる。
コードの撚り態様としては、アラミド繊維を1本あるいは複数本を引き揃えてS方向(或いはZ方向)に下撚りを施した後、更にこれらを複数本引き揃えて、片撚りと同じ方向の上撚り(ラング撚り)又は反対方向の上撚り(諸撚り)を施すことが好ましい。
また、本発明で得られるアラミド繊維コード(上撚りコード)は、アラミド繊維の断面占有率が30%以上50%未満であることが好ましく、より好ましくは35%以上48%未満、特に好ましくは40%以上45%未満である。ここで、断面占有率は、接着剤処理前のコードにおける理論断面積を見掛け断面積で除して100を乗じた値である。また、理論断面積とは(数1)より求められる値を言い、見かけ断面積とは(数2)より求められる値を言う。
(数1)
理論断面積(m)=コード総繊度(dtex)/10(m)/密度(g/m
(数2)
見掛け断面積(m)=π×(コード直径(m)/2)
断面占有率を上記範囲とすることで、モノフィラメント間の隙間への接着剤処理液の含浸が容易になり、ゴム補強用コードにおいて優れた接着性及び耐ホツレ性が発揮される。断面占有率が30%未満であると、コードを構成するフィラメントの引揃えが悪い状態となるためコード強力が低下する恐れがあり、50%以上になると、モノフィラメント間の隙間が少なくなることでフィラメント間に接着剤処理液が浸透し難くなる恐れがある。断面占有率を上記範囲とする好ましい方法として、例えば、断面扁平比が18以上30未満である本発明のアラミド繊維マルチフィラメントを用いる方法がある。
上記アラミド繊維コードを接着剤処理する場合、接着剤の処理液は溶媒として水を用いても良く、トルエンやキシレンなどの有機溶媒を用いても良い。特にコード製造時の環境負荷を低減させるため、また製造時の作業者の安全性の面から、水を溶媒として用いる方が好ましい。水系の接着剤処理液は、製造時に取り扱い性に優れ、溶剤系に比べて環境汚染が少ない。加えて、作業者の安全性の面からも、火災リスク、中毒リスクの懸念がないために、水系溶媒の方が好ましい。また、本発明のアラミド繊維コードは、水系処理液に対する含浸性に優れており、モノフィラメント間の隙間に多くの接着剤の処理液を含浸させることができる。結果として、耐疲労性に優れたコードとなる。本発明において、接着剤処理液による処理回数に制約はないが、1回が好ましい。2回以上処理した場合にはコードの耐久性が低下する恐れがある。
接着剤は、特に限定されるものではない。例えばRFL(レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス)を含んでいても良く、さらにブロックドポリイソシアネート化合物を含んでいても良い。RFLは、レゾルシン・ホルムアルデヒドの初期縮合物とゴムラテックスとの混合物である。初期縮合物としては、アルカリ触媒又は酸触媒の存在下でレゾルシンとホルムアルデヒドを縮合させたものや、レゾルシンとホルムアルデヒドをあらかじめ酸触媒又はアルカリ触媒の存在下で反応させたノボラック型樹脂等がある。レゾルシンとホルムアルデヒドのモル比は、1/0.5~1/3が好ましく、より好ましくは1/1~1/3である。なお、レゾルシン及びホルムアルデヒドは、単体で用いることもできる。
RFLは生コードに対する浸透性・付着性及びゴムとの接着性に優れている。接着剤の調製方法は特に限定されないが、例えば、レゾルシン・ホルマリン初期縮合物(固形分換算)を約2~20質量部含有する混合物を、ゴムラテックス100質量部(固形分換算)に対し、固形分濃度で約5~25質量%配合する方法がある。
ゴムラテックスとしては、例えば、ビニルピリジン-スチレン-ブタジエン共重合体ゴムラテックス、スチレン-ブタジエン系ゴムラテックス、アクリロニトリル-ブタジエン系ゴムラテックス、クロロプレン系ゴムラテックス、クロロスルホン化ポリエチレンゴムラテックス、エチレン-プロピレン-共役ジエン系三元共重合体ゴムラテックス、アクリレート系ゴムラテックス及び天然ゴムラテックス等が挙げられる。
ブロックドポリイソシアネート化合物は、ポリイソシアネート化合物とブロック化剤との反応物であり、常温では水とは反応しないが、加熱によりブロック化剤成分が解離して活性なイソシアネート基を生じるものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等;あるいは、これらのポリイソシアネート化合物と、活性水素原子を2個以上有する化合物(例えば、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等)とを、イソシアネート基(-NCO)とヒドロキシル基(-OH)の比が1を超えるモル比で反応させて得られる末端イソシアネート基含有のポリオールアダクトポリイソシアネート化合物等;が挙げられ、芳香族ポリイソシアネート化合物が特に好ましく使用される。また、ブロック化剤としては、フェノール、クレゾール、レゾルシン等のフェノール類;ε-カプロラクタム、バレロラクタム等のラクタム類;アセトオキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類;エチレンイミン等;が挙げられる。ブロック化剤として、2,4-トルエンジイソシアネート2量体のように、ポリイソシアネート化合物自体がブロック化剤を兼ねている化合物等も挙げられる。
ブロックドポリイソシアネート化合物は、解離温度が140℃~300℃であることが好ましく、より好ましくは170~200℃である。解離温度が140℃未満であると、ゴムとの接着性が不足することがあり、解離温度が300℃を超えると、ゴムの耐疲労性が低下する傾向がある。
ゴムラテックスとしては、例えば、ビニルピリジン-スチレン-ブタジエン共重合体ゴムラテックス、スチレン-ブタジエン系ゴムラテックス、アクリロニトリル-ブタジエン系ゴムラテックス、クロロプレン系ゴムラテックス、クロロスルホン化ポリエチレンゴムラテックス、エチレン-プロピレン-共役ジエン系三元共重合体ゴムラテックス、アクリレート系ゴムラテックス及び天然ゴムラテックス等が挙げられ、これらを単体、又は混合して用いることができる。
生コードへの接着剤の付与は、接着剤を液体に溶解または分散させた処理液を用いて行うことが好ましい。処理液における接着剤の総固形分濃度は5~25質量%が好ましく、より好ましくは15~25質量%である。前記範囲にすることで、接着剤を含む処理液の安定性が優れ、アラミド繊維に接着剤を均一に塗布することができる。なお、接着剤には公知の粘度調整剤を添加することもできる。
接着剤を含む処理液をアラミド繊維に付着させるには、浸漬、ノズル噴霧、ローラーによる塗布等の任意の方法を採用することができる。例えば、リッツラー社製コンピュートリータ等を用いて処理することができる。
本発明のアラミド繊維コードの表面は1層の接着剤層を有していることが好ましい。2層以上形成した場合、接着剤処理の工程が増えるため、生産性、取り扱い性の面で望ましくない。加えて、ガーレー剛軟度が高くなり過ぎてしまい、ベルト走行させたときに折れ曲がったコードの部分に応力が集中することで、ゴムベルトの耐久性が劣る恐れがある。ゴム補強用アラミド繊維コード質量における接着剤付着量は2~10質量%が好ましく、より好ましくは3~8質量%である。前記付着量にすることでベルト製造時の耐ホツレ性とベルトの耐久性を両立して発揮することができる。付着量が10質量%を超えるとコードが硬くなりすぎて、ベルトの耐久性が低下する恐れがあり、付着量が2質量%を下回るとコードの内部に接着剤が付着していない状態になるため、耐ホツレ性が低下する恐れがある。すなわち、上撚りコードを出来るだけ凸凹にしてフィラメント間に隙間ができるようにすることで、接着剤を含む処理液の含浸性が向上し、その結果、モノフィラメント同士が処理液で接着してコードが硬くなり、コードが硬くなり過ぎるとベルトの耐久性が低下する。
上記接着剤付着量及び接着剤含浸率の制御には、例えば、接着剤処理液の濃度、接着剤処理液浸漬後の液除去条件、あるいは、ディップ処理速度や張力条件等を設定する方法を採用することができる。
接着剤を付与した生コードは、例えば、温度100~160℃で、0.5~5分間乾燥した後、200~260℃で0.5~5分間熱処理することが好ましい。上記範囲で乾燥することにより、接着剤が繊維表面と反応が必要十分量進み、特にレゾルシン・ホルマリンの架橋構造を形成しやすくなる。また、熱処理を上記範囲とすることで、接着剤が劣化することなく十分な接着力を発揮できる。
また、接着剤を付与して乾燥、熱処理を行う際は、0.05g/dtex~0.15g/dtexの張力を掛けて、緊張熱処理を行うことが好ましい。0.05g/dtex以上の張力を掛けて緊張熱処理することにより、上撚りコードのフィラメントの引き揃え状態を最適化することができ、強力を高めることができる。一方、0.15g/dtex以下で張力を掛けて緊張熱処理することにより、上撚りコードに過剰な張力負荷が掛からなくなるため、工程通過時の擦過等による糸へのダメージを最小限に抑え、コード強力をより高値に維持することができる。
本発明におけるゴム補強用アラミド繊維コードは、ガーレー剛軟度が100mN以上200mN未満であることが好ましく、より好ましくは110mN~180mNであり、特に好ましくは120mN~160mNである。ガーレー剛軟度が100mN未満であると、接着剤がコード内部に含浸していない状態となり、ベルト製造時において、ベルト断面から繊維がホツレ易くなる。一方、200mN以上になるとコードが硬い状態となり、ベルト走行時にコードが折れ曲がった箇所に応力が集中してベルトの耐久性が低下する。ガーレー剛軟度を上記範囲とする方法は特に限定されないが、例えばコードが硬くなり過ぎないように本発明のアラミド繊維コードに接着剤層を1層のみ設け、接着剤付着量を上記好ましい範囲とすることで達成できる。加えて、接着剤層を1層にすることで、製造コストを低減させることができる。さらに、接着剤付与量は、接着剤処理時に、エアーによる空気圧を調整もしくはニップロールの圧力を調整することにより、前記範囲とすることができる。
上記のようにして得られたアラミド繊維コードは、単体で用いることができるが、6ナイロン、66ナイロン等のナイロン繊維、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル繊維、ビニロン繊維、ポリケトン繊維等からなる繊維コードと撚り合せ、複合コードとして用いることもできる。
本発明のアラミド繊維コードは、モノフィラメント間の隙間に対する接着剤の含浸率が高いため、ゴムベルト製造時においてベルト断面から繊維がホツレ難くなる。また、接着剤処理時に接着剤成分がコードの外層に偏在しにくく、内部まで均一に含侵しやすいために、アラミド繊維コードの耐ホツレ性と耐疲労性を両立することができる。かかる特性を生かして、自動車、航空機等の各種タイヤのコードやスダレ;伝動ベルト、Vベルト、タイミングベルト等の各種ベルト;ラジエータホース、ヒーターホース、パワステホース等の各種ホース;等のゴム製品の補強用として、好適に用いることができる。
上記のゴムとしては、例えば、アクリルゴム(ACM)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、水素化アクリロニトリル-ブタジエンゴム(HNBR)、イソプレンゴム(IR)、ウレタンゴム(AU、EU)、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体ゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)、シリコーンゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴム等が挙げられる。ゴムには、主成分のゴムの他に、通常ゴム業界で用いられるカーボンブラック、シリカ、水酸化アルミニウム等の無機充填剤、クマロン樹脂、フェノール樹脂等の有機充填剤、加硫促進剤、老化防止剤、軟化剤等の各種配合剤が含まれていても良い。
以下、本発明を実施例及び比較例を用いて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。以下の実施例等において「%」は「質量%」である。なお、実施例中の各測定値は次の方法にしたがった。
(1)アラミド繊維水分率
試料約5gの質量(乾燥前質量)を測定し、300℃×20分間加熱し、25℃65%RHで5分間放置した後、再度質量(乾燥後質量)を測定する。ここで使う水分率は、[乾燥前質量-乾燥後質量]/[乾燥後質量]で得られるドライベース水分率である。
(2)接着剤付着率
一定長さあたりの撚糸コードの質量(A)を予め測定しておき、接着剤処理後の同一長さのコード質量(B)を測定することにより、差分としての以下の計算式により接着剤付着量を求めた。接着剤付着率=[(B-A)/A]×100(%)
(3)フィラメント断面扁平比
マルチフィラメントに100gの荷重を1分間かけて吊り下げた後、マイクロスコープを用いて、N=10で幅を測定した時の平均値をW(mm)とする。同じ荷重をかけた状態で、(株)フジワークス製の厚み測定機を用いて、N=10で厚みを測定した時の平均値をL(mm)とする。フィラメント断面扁平比R(-)を下記の式で定義する。
R=W/L
(4)生コード断面占有率
上撚りコードに、1kg/本の荷重を1分間かけた後、マイクロスコープを用いて、N=30で、コード断面の凹凸の幅が広い箇所を測定し、平均値をD(mm)とする。見掛け断面積A(mm)を下記の式で定義する。
A=π×(D/2)
コードの理論断面積S(mm)を下記の式で定義する。
S=(X/M)×10
ここで、Xは繊度(g/10000m)、Mは密度(g/m)とする。
コードの断面占有率r(%)を下記の式で定義する。
r=(S/A)×100
(5)ガーレー剛軟度
(株)安田精機製作所製のガーレー式柔軟度試験機を用いて、JIS L1096に準拠して測定した。
アラミド繊維コードを長さ1mに切り出して、その一端に、金属製フックを結びつけ、他端に2000gの重りを結びつけ、温度25℃ 、相対湿度40%に調節された環境下、空中に24時間吊してアラミド繊維コードを鉛直に保持し、測定試料を得た。
これを30mm(1.2インチ)に切断して試験片とし、安田精機(株)製の「Gurley’s stiffness tester」でガーレーコード硬さを測定した。図1に「Gurley’s stiffness tester 」の斜視図を示す。
(6)ディップコードの接着剤含浸状態評価
接着剤を処理したコードを下撚りまで解撚し、下撚り内部の接着剤の含浸度合いをマイクロスコープで観察し、定性的に3段階評価した。含浸度合いは、下撚りコードを解撚したときに、内部の単糸に茶色のディップ液が存在しているかを判定した。評価基準は以下の通りである。
3;下撚りコード内部が外部と同様に接着剤が含浸しており(色が濃い)、単糸のバラケが認められない。
2;下撚りコード内部が外部よりも接着剤の含浸量が少なく(色が薄い)、単糸のバラケは少ない。
1;下撚りコード内部に接着剤の含浸が認められず、単糸がバラケやすい。
(7)耐ホツレ性試験
ゴム補強用繊維コードを加硫処理によって表1の配合組成の未加硫EPDM系ゴムと複合させたものを裁断しコード断面を露出させ、評価サンプルを作製した。評価サンプルをコード断面が真上となるように固定し、長方形に切り出したTRUSCO製サンドペーパー(GBS-150)を、長辺側がコード長手方向に対し垂直方向となるようにコード断面上に載せ、サンドペーパー短辺側中央部にそれぞれ1kgの荷重を吊り下げた。吊り下げた荷重の片側を、サンドペーパーがコード断面上を5cm移動し擦過するように引き下げ、これを擦過1回とし、両端の荷重を交互に引き下げることにより計10回擦過させた。10回擦過後、顕微鏡により擦過部を観察し、フィラメントのホツレ状態をマイクロスコープで外観観察し、断面から飛び出したものフィラメントの本数を数えた。
(8)ベルト耐久性
プーリー径140mmの駆動プーリーとプーリー径70mmの従動プーリーとの間に(7)で作製したベルトを巻き掛け、駆動プーリーの負荷を75ps、従動プーリーの軸荷重を500kgとし、駆動プーリー12の回転速度が7000rpmとなるように駆動してベルトを100時間走行させ、走行後のベルトサンプルを得た。走行後のベルトサンプルの引張強力を測定し、走行前のベルト強力に対する割合を百分率で求め、ベルト強力保持率とした。
(実施例1)
通常の方法で得られたポリパラフェニレンテレフタルアミド(分子量約20,000)1kgを4kgの濃硫酸に溶解し、直径0.1mmのホールを1,000個有する口金からせん断速度30,000sec-1となるよう吐出し、4℃の水中に紡糸した後、10質量%の水酸化ナトリウム水溶液で、10℃×15秒の条件で中和処理し、その後、200℃で加熱乾燥して、水分率50質量%のポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(単繊維繊度1.67dtex、フィラメント数1,000本、総繊度1,670dtex)原糸を得た。
上記のポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維の束を、ソルビトールポリグリシジルエーテルとポリエチレングリコールの混合物(質量比:7.7/92.3)からなる繊維用油剤を、水分率0%に換算したときの繊維質量に対し0.65%となるよう付与した後、巻き上げてパッケージにした。
ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維の束をパッケージから巻き出し、マルチフィラメントの幅及び厚みを測定し、フィラメント断面扁平比Rを算出した。
パッケージから巻き出したポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維の束を2本引き揃えてS方向に8t/10cmで加撚して下撚りコードを得た後、下撚りコードを3本引き揃えてS方向に9t/10cmで加撚して上撚りコード(撚り構成1670dtex//2/3、ラング撚りコード)を得た。
下撚りコード及び上撚りコードの撚り係数(K)は下記式より求めた。
K=t×D1/2/303
〔但し、tは単位長さあたりの撚り数(回/10m)、Dは繊度(dtex)である。〕
さらに、固形分質量比が、レゾルシン/ホルマリン/ゴムラテックス=16/4/80となるように添加し、十分攪拌し、固形分濃度20%の水系接着剤処理液を得た。ゴムラテックスは日本ゼオン(株)製「Nipol 1571CL」を用いた。
作製したコードを、コンピュートリータ処理機(リッツラー社製)を用いて、RFL含む接着剤処理液に7秒間浸漬し、140℃で108秒乾燥し、続いて、230℃で108秒間熱処理することにより、ディップ処理アラミド繊維コード(ディップコード)を得た。
コードには接着剤処理液の固形分、すなわち接着剤が5.7質量%付着していた。コードの接着剤含浸状態は3段階評価で3であった。このようにして得られたコードについて、上記の方法で、ガーレー剛軟度、樹脂付着量、ベルト耐ホツレ試験、ベルト疲労後強力保持率を測定した。結果を表2に示す。
(実施例2)
実施例1で得られた上撚りコードを用いて、接着剤を処理する工程において、1浴目にブロックイソシアネートを処理する工程、2浴目にレゾルシン・ホルマリン・ラテックスを処理する工程に変更して、ディップコードを作製した。1浴目においては、イソシアネート化合物を固形分濃度10%、接着剤付着率を5%となるように、接着剤処理を行った。
(実施例3)
原糸に付与する油剤において、ソルビトールポリグリシジルエーテル/ポリエチレングリコール=4/6となるように混合し、付着率0.2%となるよう、原糸を得た。それ以外は実施例1と同じディップコードを得た。
(比較例1)
原糸に付与する油剤において、ソルビトールポリグリシジルエーテル/ポリエチレングリコール/脂肪酸エステル=2.9/4.4/2.6となるように混合し、付着率1.5%となるよう、原糸を得た。それ以外は実施例1と同じディップコードを得た。
(比較例2)
実施例1の原糸を用いて、コード構成1670dtex//2/5の上撚りコードを得た。それ以外は実施例1と同じディップコードを得た。
評価結果を表2にまとめて示す。
表2より、本発明のアラミド繊維コードは、該コード(生コード)を構成するフィラメントの断面扁平比が比較例1のコードに比べて大きく、生コードの断面占有率が小さいこと(すなわち、コード内の空間が多いこと)が分かる。
また、ディップコード状態にした際に、下撚りコード内部への接着剤処理液の含浸状態が高い。生コード内に空間が多いため、接着剤がコード内部にまで含浸していることがわかる。
さらに、本発明のアラミド繊維コードは、接着剤のコード内部への含浸状態が良好であるために、ガーレー剛軟度が200mN未満でコードが硬い状態にならない。そのため、ベルト走行時にコードの折れ曲がった箇所に応力が集中しないためベルトの耐久性が向上する。
本発明のアラミド繊維マルチフィラメント、及びそれに撚りを加えたアラミド繊維コードは、ゴム補強用繊維コードとして、タイヤ、ベルト、ホース等のゴム製品に好適に利用できる。
1 チャック
2 試験片
3 回転棒
4 目盛板
5 針

Claims (8)

  1. アラミド繊維マルチフィラメントの幅を該マルチフィラメントの厚みで除した値(断面扁平比)が18以上30未満であることを特徴とするアラミド繊維マルチフィラメント。
  2. 請求項1に記載のアラミド繊維マルチフィラメントに、下撚り及び上撚りを施したアラミド繊維コードであって、該アラミド繊維コードにおけるアラミド繊維の断面占有率(r)が、30%以上50%未満であることを特徴とするアラミド繊維コード。
    ここで、断面占有率(r)=(S/A)×100 で求められる値であり、Sはコードの理論断面積、Aはコードの見掛け断面積である。
  3. 前記アラミド繊維コードの総繊度が、3,000dtex以上15,000dtex以下であることを特徴とする請求項2に記載のアラミド繊維コード。
  4. 前記アラミド繊維マルチフィラメントに対する硬化性エポキシ化合物の付着率が、水分0質量%のアラミド繊維マルチフィラメントに対して、0.01質量%以上0.1質量%未満であることを特徴とする請求項2または3に記載のアラミド繊維コード。
  5. 請求項2~4いずれかに記載のアラミド繊維コードを接着剤処理したゴム補強用アラミド繊維コードであって、該アラミド繊維コードのガーレー剛軟度が100mN以上200mN未満であることを特徴とするゴム補強用アラミド繊維コード。
  6. 前記アラミド繊維コード表面に1層の接着剤層を有することを特徴とする請求項5に記載のゴム補強用アラミド繊維コード。
  7. 前記接着剤処理する処理液が、水系であることを特徴とする請求項5に記載のゴム補強用アラミド繊維コード。
  8. 請求項5~7いずれかに記載のゴム補強用アラミド繊維コードを含むゴム製品。
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