JP2022177782A - 自動車ホース補強用合成繊維コードおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム配合物(EPDM系ゴム)との接着性が良好であり、ディップ工程において樹脂凝固物発生を抑制でき、かつ、ホース製造時の工程通過性(合成繊維コード表面の接着剤の脱落)が抑制され、さらに柔軟でカシメ部の耐液漏れ性に優れたホースを提供可能とする自動車ホース補強用合成繊維コードを提供すること。さらには、レゾルシンおよびホルマリンを含まない、環境負荷低減に有利な新規の接着処理剤からなる自動車ホース補強用合成繊維コードを提供する。【解決手段】合成繊維が、少なくともリグニン(A)とブロックドイソシアネート化合物(B)とゴムラテックス(C)が含まれてなる接着処理剤によって処理された自動車ホース補強用合成繊維コードであって、該接着処理剤に含まれる全固形分100重量%としたとき、リグニン(A)の含有量が5~50重量%であり、該接着処理剤の、リグニン(A)とブロックドイソシアネート化合物(B)の固形分重量比が、(Aの固形分):(Bの固形分)=10:1~10:20であり、前記ゴムラテックス(C)の固形分100重量部中、PBラテックスが20~100重量部であり、該接着処理剤の乾燥皮膜の最大点強度が0.2MPa~1.6MPa、最大点伸度が2%~120%であり、撚り係数80~800の片撚り構造を有することを特徴とする自動車ホース補強用合成繊維コード。【選択図】なし
Description
本発明は、自動車ホース補強用合成繊維コードに関する。
ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリビニルアルコール系繊維で代表される合成繊維は、強度、モジュラスが大きく、かつ耐疲労性に優れている等の物理的特性を有しており、自動車ホース用の補強用繊維コードとして従来から使用されている。しかし、合成繊維自身の表面が不活性なことから、ゴムとの接着性に乏しいという問題を有している。また、近年、自動車ホース分野においては、高温特性に優れたEPDM系ゴムが主に使用されているが、該ゴムは、化学構造に二重結合が少なく、反応性に乏しいという問題を有している。このため、合成繊維コードとEPDM系ゴムとの接着性を改良する手法が種々検討されている。
合成繊維とゴム製品のゴム組成物とを接着させる手段として、レゾルシン、ホルマリンおよびゴムラテックスを含むRFL(レゾルシン・ホルマリン・ラテックス)接着剤が従来から広く使用されている。しかし、レゾルシンとホルマリンはいずれも劇物であり、環境負荷が高く、健康への有害性から、近年、使用時の大気中への放出の抑制や、使用量の削減が求められている。
また、繊維にゴムとの接着性を保有させるため、上記RFLに代表される接着剤を繊維表面に処理することが必須であるが、接着剤処理プロセスにおいて、付与される接着剤組成に起因する凝集物がディッピングマシンのローラー等、処理装置に付着し操業性を低下させる問題があった。
また、接着剤処理が施された繊維コードを複数本引き揃えてホース形状にブレードする際、接着剤処理されたコードがガイド類と摩擦する際に、接着剤の脱落、ガイド類への付着、飛散が生じ、生産性や作業環境を損なうという問題も提起されている。
さらには、繊維コードをブレーキホース、ラジエーターホース、カーエアコンホースなどの補強用として用いる場合は、両端部を金具でカシメることで、製品として使用されるが、該ホースの使用時、ホースが熱老化することや、ホースが繰り返し高温から低温までのヒートサイクルに曝される等により、金具でホースをカシメた部分からの液漏れを起こしやすいという問題を有している。
上記の問題を解決する試みとして、例えば以下の特許文献1~8が提案されている。
特許文献1には、熱解離性ブロックドイソシアネート基を有するウレタン樹脂、エポキシ化合物、オキサゾリン基を有する高分子、数平均分子量1000~75000の塩基性触媒及びゴムラテックスを含む有機繊維コード用接着剤組成物について開示されている。
特許文献2には、ポリカルボン酸、塩基、エポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、VPラテックスを含む浴に織物強化部材を浸漬する加工方法について開示されている。
特許文献3には、特定の官能基を有する熱硬化性樹脂と不飽和エラストマーラテックスを含む水性接着剤組成物について開示されている。
特許文献4には、ポリフェノール類、クロルフェノール樹脂及びリグニン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の成分、及び前記成分以外の水溶性ポリマー又は前記成分以外の水分散性ポリマーから選択される少なくとも1種の成分を含む有機繊維用接着剤について開示されている。
特許文献5には、ポリエポキシド化合物を予め付与したポリエステル繊維に、RFLとクロロ変成レゾルシンが特性の重量比で混合された処理剤を付与してなるホース補強用ポリエステル繊維コードについて開示されている。
特許文献6には、実質的に塩素化合物を含有しないRFL第1処理液で処理した後、クロロフェノール系化合物を含有する第2処理液で処理したゴム補強用ポリアミド繊維コードについて開示されている。
特許文献7には、ポリビニルアルコール系フィラメントとRFL樹脂で構成されたディップコードで、RFL樹脂がコード表面層近傍に偏在するディップコードについて開示されている。
特許文献8には、3官能以上の特定のブロックドイソシアネートオリゴマー、ラテックス、ポリアクリレートまたはリグニン化合物、及び添加剤を含む水性接着剤組成物について開示されている。
特許文献1~3は、いずれもレゾルシンおよびホルマリンを含まず、従来のRFL接着剤対比環境負荷低減に有利であるが、EPDM系ゴムとの接着性が乏しいものであった。特許文献4は、レゾルシン・ホルマリンを含まず、従来のRFL接着剤対比環境負荷低減に有利で、EPDM系ゴムとの接着性もある程度発現するが、実用上不充分であり、かつ、工程通過性や、耐液漏れ性が不充分であった。特許文献5は、工程通過性、耐液漏れ性は改善されているが、従来のRFL接着剤を使用するものであり、環境負荷が大きい問題を有していた。特許文献6は、耐熱性やコードの柔軟性は改善されているが、従来のRFL接着剤を使用するものであり、環境負荷が大きい問題を有していた。特許文献7は、ゴムとの接着性や、耐液漏れ性は改善されているが、従来のRFL接着剤を使用するものであり、環境負荷が大きい問題を有していた。特許文献8は、レゾルシンおよびホルマリンを含まず、従来のRFL接着剤対比環境負荷低減に有利であるが、EPDM系ゴムとの接着性が乏しく、工程通過性や、耐液漏れ性が不充分であった。また特許文献1~8全てにおいて、ディップ工程において樹脂凝固物が発生する問題は残ったままであった。
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果なされたものである。
すなわち、本発明の目的はエチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム配合物(以下、「EPDM系ゴム」という)との接着性が良好であり、ディップ工程において樹脂凝固物発生を抑制でき、かつホース製造時の工程通過性すなわち、合成繊維コード表面の接着剤の脱落が抑制され、さらに柔軟性やカシメ部の耐液漏れ性に優れたホースを提供可能とする自動車ホース補強用合成繊維コード提供することにある。また、本発明の別の目的は、レゾルシンおよびホルマリンを含まず、環境負荷低減に有利な新規の接着処理剤からなる自動車ホース補強用合成繊維コードおよびその製造方法を提供することにある。
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。
すなわち、(1)合成繊維が、少なくともリグニン(A)とブロックドイソシアネート化合物(B)とゴムラテックス(C)が含まれてなる接着処理剤によって処理された自動車ホース補強用合成繊維コードであって、該接着処理剤に含まれる全固形分100重量%としたとき、リグニン(A)の含有量が5~50重量%であり、該接着処理剤の、リグニン(A)とブロックドイソシアネート化合物(B)の固形分重量比が、(Aの固形分):(Bの固形分)=10:1~10:20であり、前記ゴムラテックス(C)の固形分100重量部中、PBラテックスが20~100重量部であり、該接着処理剤の乾燥皮膜の最大点強度が0.2MPa~1.6MPa、最大点伸度が2%~120%であり、撚り係数80~800の片撚り構造を有することを特徴とする自動車ホース補強用合成繊維コード。
(2)合成繊維が、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリビニルアルコール系繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種の繊維であることを特徴とする上記(1)に記載のゴム補強用合成繊維コード。
(3)リグニン(A)の数平均分子量が10000~60000であり、重量平均分子量が80000~130000であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の自動車ホース補強用合成繊維コード。
(4)合成繊維が前記接着処理剤で処理される前に、プレコート剤で処理されることを特徴する自動車ホース補強用合成繊維コードであって、プレコート剤が、エポキシ化合物とブロックドイソシアネート化合物(固形分重量比10:0~10:30)を少なくとも含み、濃度が0.1~6%であることを特徴とする上記(1)~(3)のいずれかに記載の自動車ホース補強用合成繊維コード。
(5)ブロックドイソシアネート化合物(B)が、HDI系ブロックドイソシアネート、またはMDI系オキシムブロックドイソシアネートであることを特徴とする上記(1)~(4)のいずれかに記載の自動車ホース補強用合成繊維コード。
(6)前記接着処理剤のマロン式機械安定性試験による凝固物の割合が4.0%以下であることを特徴とする上記(1)~(5)のいずれかに記載の自動車ホース補強用合成繊維コード。
(7)前記接着処理剤で、リグニン(A)とブロックドイソシアネート化合物(B)とゴムラテックス(C)の固形分重量比が、((Aの固形分)+(Bの固形分)):(Cの固形分)=10:90~60:40であることを特徴とする上記(1)~(6)のいずれかに記載の自動車ホース補強用合成繊維コード。
(8)合成繊維がポリエステル繊維であり、コードに付着した樹脂単位当たりのガーレーコード硬さが1~10mN/%以下、加熱後のガーレーコード硬さ変化率が100%~240%であることを特徴とする上記(1)~(7)のいずれかに自動車ホース補強用合成繊維コード。
(9)合成繊維がポリアミド繊維であり、コードに付着した樹脂単位当たりのガーレーコード硬さが1~10mN/%以下、加熱後のガーレーコード硬さ変化率が100%~240%であることを特徴とする上記(1)~(7)のいずれかに自動車ホース補強用合成繊維コード。
(10)上記(1)~(9)のいずれかに記載の自動車ホース補強用合成繊維コードを含む自動車ホース。
(11)撚り係数80~800の片撚り撚糸した合成繊維に、少なくともリグニン(A)とブロックドイソシアネート化合物(B)とゴムラテックス(C)が含まれ、かつ以下の特性を持つ接着処理剤を合成繊維に付着させ、熱処理することを特徴とするゴム補強用合成繊維コードの製造方法。
(a)接着処理剤に含まれる全固形分100重量部としたときリグニン(A)の含有量が5~50重量%
(b)リグニン(A)とブロックドイソシアネート化合物(B)の固形分重量比が、(Aの固形分):(Bの固形分)=10:1~10:20
(c)ゴムラテックス(C)の固形分100重量部中、PBラテックスが20~100重量部
(d)該接着処理剤を乾燥皮膜としたときの乾燥皮膜の最大点強度が0.2MPa~1.6MPa、かつ最大点伸度が2%~120%
(12)リグニン(A)の数平均分子量が10,000~60,000、重量平均分子量が80,000~130,000であることを特徴とする上記(11)に記載のゴム補強用合成繊維コードの製造方法。
(a)接着処理剤に含まれる全固形分100重量部としたときリグニン(A)の含有量が5~50重量%
(b)リグニン(A)とブロックドイソシアネート化合物(B)の固形分重量比が、(Aの固形分):(Bの固形分)=10:1~10:20
(c)ゴムラテックス(C)の固形分100重量部中、PBラテックスが20~100重量部
(d)該接着処理剤を乾燥皮膜としたときの乾燥皮膜の最大点強度が0.2MPa~1.6MPa、かつ最大点伸度が2%~120%
(12)リグニン(A)の数平均分子量が10,000~60,000、重量平均分子量が80,000~130,000であることを特徴とする上記(11)に記載のゴム補強用合成繊維コードの製造方法。
(13)合成繊維に前記接着処理剤を付着させ、熱処理する前に、プレコート剤を付着させ、熱処理する工程を有し、該プレコート剤が、エポキシ化合物とブロックドイソシアネート化合物(固形分重量比10:0~10:30)を少なくとも含み、濃度が0.1~6%であることを特徴とする上記(11)または(12)に記載の自動車ホース補強用合成繊維コードの製造方法。
(14)合成繊維がポリエステル繊維であり、前記接着処理剤を付着させた後、熱処理する工程でのホットストレッチ張力が0.3~2.5cN/dtexであり、かつノルマライジング張力が0.1~1.5cN/dtexであることを特徴とする上記(11)~(13)のいずれかに記載の自動車ホース補強用合成繊維コードの製造方法。
(15)合成繊維がポリアミド繊維であり、前記接着処理剤を付着させた後、熱処理する工程でのホットストレッチ張力が0.05~1cN/dtexであり、かつノルマライジング張力が0.05~1cN/dtexであることを特徴とする上記(11)~(13)のいずれかに記載の自動車ホース補強用合成繊維コードの製造方法。
本発明によれば、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム配合物(EPDM系ゴム)との接着性が良好であり、ディップ工程において樹脂凝固物発生を抑制でき、かつ、ホース製造時の工程通過性(合成繊維コード表面の接着剤の脱落)が抑制され、さらに柔軟でカシメ部の耐液漏れ性に優れたホースを提供可能とする自動車ホース補強用合成繊維コードを提供することができる。さらには、レゾルシンおよびホルマリンを含まない、環境負荷低減に有利な新規の接着処理剤からなる自動車ホース補強用合成繊維コードを提供することができる。
以下に、本発明について詳述する。
本発明の自動車ホース補強用合成繊維コードは、合成繊維が、少なくともリグニン(A)とブロックドイソシアネート化合物(B)とゴムラテックス(C)が含まれてなる接着処理剤によって処理されてなるものである。
[自動車ホース補強用合成繊維コード]
本発明に用いる合成繊維としては、マルチフィラメントの形態であることが好ましい。また、合成繊維を構成する素材としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アラミド、ポリビニルアルコール、などが挙げられる。自動車ホース用途としての耐久性および工業生産性の面から、特にポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリビニルアルコール系繊維から選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。
本発明に用いる合成繊維としては、マルチフィラメントの形態であることが好ましい。また、合成繊維を構成する素材としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アラミド、ポリビニルアルコール、などが挙げられる。自動車ホース用途としての耐久性および工業生産性の面から、特にポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリビニルアルコール系繊維から選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。
(ポリエステル繊維)
上記ポリエステル繊維は、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするジカルボン酸とグリコールからなるポリエステルをいう。ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。また、グリコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。上記ジカルボン酸成分の一部を、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、スルホン酸金属置換イソフタル酸などで置き換えてもよく、また、上記のグリコール成分の一部を、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、およびポリアルキレングリコールなどに置き換えても良い。これらの中でも、ジカルボン酸成分の90モル%以上がテレフタル酸からなり、グリコール成分の90モル%以上がエチレングリコールからなる、ポリエチレンテレフタレートが好適である。このポリエステルには、酸化チタン、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、チッ化ケイ素、クレー、タルク、カオリン、ジルコニウム酸などの各種無機粒子や架橋高分子粒子、各種金属粒子などの粒子類のほか、従来からある抗酸化剤、金属イオン封鎖剤、イオン交換剤、着色防止剤、ワックス類、シリコーンオイル、各種界面活性剤などが添加されていてもよい。
上記ポリエステル繊維は、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするジカルボン酸とグリコールからなるポリエステルをいう。ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。また、グリコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。上記ジカルボン酸成分の一部を、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、スルホン酸金属置換イソフタル酸などで置き換えてもよく、また、上記のグリコール成分の一部を、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、およびポリアルキレングリコールなどに置き換えても良い。これらの中でも、ジカルボン酸成分の90モル%以上がテレフタル酸からなり、グリコール成分の90モル%以上がエチレングリコールからなる、ポリエチレンテレフタレートが好適である。このポリエステルには、酸化チタン、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、チッ化ケイ素、クレー、タルク、カオリン、ジルコニウム酸などの各種無機粒子や架橋高分子粒子、各種金属粒子などの粒子類のほか、従来からある抗酸化剤、金属イオン封鎖剤、イオン交換剤、着色防止剤、ワックス類、シリコーンオイル、各種界面活性剤などが添加されていてもよい。
また、ブレーキホースとして使用される場合には、繊維の固有粘度が0.85以上のものが好ましく、また動的粘弾性測定装置を用い周波数11Hzで測定したときの損失正接(tanδ)の温度分散に現れる主分散の極大値温度が130℃以上、より好ましくは140℃以上であるポリエステル繊維であることが好ましい。損失正接(tanδ)の主分散が前記範囲にある場合には、ブレーキフルードが繊維に触れるような場合においても、ポリエステル中へのブレーキフルードの防錆剤等が拡散することが抑制され、劣化の少ないホースを得ることができる。
また、ポリエステル繊維はあらかじめ製糸工程においてポリエポキシド化合物が付与されたものであってもよい。本発明で使用することのできるポリエポキシド化合物は、一分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を、ポリエポキシド化合物100gあたり0.1g当量以上含有する化合物を挙げることができる。具体的には、ペンタエリスリトール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、ソルビトールなどの多価アルコール類とエピクロルヒドリンの如きハロゲン含有エポキシド類との反応生成物、過酸化または過酸化水素などで不飽和化合物を酸化して得られるポリエポキシド化合物、すなわち、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキセンカルボキリレート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチル-シクロヘキシルメチル)アジペート、フェノールノボラック型、ハイドロキノン型、ビフェニル型、ビスフェノールS型、臭素化ノボラック型、キシレン変性ノボラック型、フェノールグリオキザール型、トリスオキシフェニルメタン型、トリスフェノールPA型、ビスフェノール型のポリエポキシド等の芳香族ポリエポキシド等が挙げられる。特に好ましいのは、ソルビトールグリシジルエーテル型やクレゾールノボラック型のポリエポキシドである。
これらの化合物は、通常は乳化液として使用されるが、乳化液、又は溶液にするには、ポリエポキシド化合物をそのままか、もしくは必要に応じて少量の溶媒に溶解したものを公知の乳化剤、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、ジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物等を用いて乳化、又は溶解して用いることもできる。
ポリエステル繊維の製糸工程においてポリエポキシド化合物を付与する方法としては、通常、ポリエステル繊維の製糸工程において紡糸油剤と共に付与される。この際のポリエポキシド化合物の付着量は、通常、0.1~5重量%の範囲である。ポリエポキシド化合物の付着量が0.1重量%未満では、ポリエポキシド化合物の効果が十分に発揮されず、ポリエステル繊維とエチレンプロピレン系ゴムとの間で満足できる接着性が得られないおそれがある。一方、ポリエポキシド化合物の付着量が5重量%を超えると繊維が非常に硬くなり、製糸工程において付与することが困難である場合があるだけでなく、次工程以降で処理する処理剤の浸透性が低下する結果、接着性能が低下する場合があるので好ましくない。
(ポリアミド繊維)
上記ポリアミド繊維は、脂肪族ポリアミドを素材としてなるマルチフィラメントであり、脂肪族ポリアミドとしては、具体的にはポリε- カプロラクタム( ナイロン6)やポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)などが挙げられるが、本発明では強力や耐熱性の点から、特にヘキサメチレンアジパミドの繰り返し単位が95モル%以上のナイロン66繊維が好ましく用いられる。
上記ポリアミド繊維は、脂肪族ポリアミドを素材としてなるマルチフィラメントであり、脂肪族ポリアミドとしては、具体的にはポリε- カプロラクタム( ナイロン6)やポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)などが挙げられるが、本発明では強力や耐熱性の点から、特にヘキサメチレンアジパミドの繰り返し単位が95モル%以上のナイロン66繊維が好ましく用いられる。
また、脂肪族ポリアミドとしては、発明の効果を損なわない程度に共重合成分を含むポリアミドのコポリマーも用いられる。さらには、製糸性改善や最終製品の品質改善のために、共重合成分を添加したり、その他の顔料などの粒子を添加したポリアミドも用いられる。具体的な共重合成分としては、ε-カプロラクタム、テトラメチレンアジパミド、ヘキサメチレンセバカミド、ヘキサメチレンイソフタラミド、テトラメチレンテレフタラミドおよびキシリレンフタラミドなどが挙げられる。また、ポリアミド中には、酸化チタン、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、チッ化ケイ素、クレー、タルク、カオリン、ジルコニウム酸などの各種無機粒子や架橋高分子粒子、各種金属粒子などの粒子類のほか、従来からある染料、耐候剤、耐熱剤、老化防止剤および酸化防止剤などが添加されていてもよい。
また、自動車ホースの補強コードとして使用される場合、高強度及び高タフネスの繊維とするため高重合度のポリマが使用され、繊維として硫酸相対粘度が3~4.5のものが好ましく用いられる。
(ポリビニルアルコール系繊維)
上記ポリビニルアルコール系繊維は、ビニルアルコールを主たる繰り返し単位とした重合体からなり、けん化度が好ましくは90モル%以上のビニルアルコール系ポリマーが、乾式、湿式または乾湿式方式にて紡糸され、延伸されて得られた繊維である。強度は7cN/dtex以上が好ましく、より好ましくは7.5cN/dtex以上が良く、切断伸度は11%未満が好ましく、より好ましくは9%未満であるのが良い。強度が7cN/dtex未満であると、自動車ホース補強用途としてホースの耐圧性能が不足することがあり、切断伸度が11%を超えると、自動車ホース用途として求められる耐膨張性能が悪化することがある。
上記ポリビニルアルコール系繊維は、ビニルアルコールを主たる繰り返し単位とした重合体からなり、けん化度が好ましくは90モル%以上のビニルアルコール系ポリマーが、乾式、湿式または乾湿式方式にて紡糸され、延伸されて得られた繊維である。強度は7cN/dtex以上が好ましく、より好ましくは7.5cN/dtex以上が良く、切断伸度は11%未満が好ましく、より好ましくは9%未満であるのが良い。強度が7cN/dtex未満であると、自動車ホース補強用途としてホースの耐圧性能が不足することがあり、切断伸度が11%を超えると、自動車ホース用途として求められる耐膨張性能が悪化することがある。
(繊維の形態)
本発明で用いる合成繊維は、繊度、フィラメント数、断面形状等の制約を受けないが、通常、総繊度200~5000dtex、30~1000フィラメント、円断面糸が用いられ、総繊度250~3000dtex、50~500フィラメント、円断面糸が好ましい。総繊度200dtex未満であるとコードの強度が不足する恐れがあり、5000dtexを超えるとコードが太くなり、取り扱い性が低下することがある。また、30フィラメント未満であるとコードが硬くなり、取り扱い性が悪化することがあり、500フィラメントを超えると毛羽が多くなり品質が低下することがある。
本発明で用いる合成繊維は、繊度、フィラメント数、断面形状等の制約を受けないが、通常、総繊度200~5000dtex、30~1000フィラメント、円断面糸が用いられ、総繊度250~3000dtex、50~500フィラメント、円断面糸が好ましい。総繊度200dtex未満であるとコードの強度が不足する恐れがあり、5000dtexを超えるとコードが太くなり、取り扱い性が低下することがある。また、30フィラメント未満であるとコードが硬くなり、取り扱い性が悪化することがあり、500フィラメントを超えると毛羽が多くなり品質が低下することがある。
本発明の自動車ホース補強用合成繊維コードは、上記合成繊維のストランド1本または複数本を引き揃えたものを撚糸して片撚りコードとし、その片撚りコードを接着剤処理剤でディップ処理し熱処理することでディップコードが得られる。ここでコードの撚り数は、下記式により定義される撚り係数が、80~800の範囲とすることが必要である。このましくは130~750の範囲とするのが良い。
撚係数={撚数(t/10cm)×(総繊度デニール)1/2}
撚り係数が80未満であると、接着力低下や耐液漏れ性の悪化に繋がることがある。800を超えると、コードの強力が低下したり、スナーリング(撚糸コードが部分的によじれて形態の安定性が崩れる現象)を起こすことがある。また、コードの構造伸びによりホースが膨張しやすくなる他、補強コード層が厚くなるなどの点からも好ましくない。また、タイヤコードのように片撚りコードをさらに複数本引き揃えて上撚りを施した諸撚りコードとすると、強力低下や耐液漏れ性が悪化するため好ましくない。
撚係数={撚数(t/10cm)×(総繊度デニール)1/2}
撚り係数が80未満であると、接着力低下や耐液漏れ性の悪化に繋がることがある。800を超えると、コードの強力が低下したり、スナーリング(撚糸コードが部分的によじれて形態の安定性が崩れる現象)を起こすことがある。また、コードの構造伸びによりホースが膨張しやすくなる他、補強コード層が厚くなるなどの点からも好ましくない。また、タイヤコードのように片撚りコードをさらに複数本引き揃えて上撚りを施した諸撚りコードとすると、強力低下や耐液漏れ性が悪化するため好ましくない。
(処理剤)
本発明の自動車ホース補強用合成繊維コードは、合成繊維が、少なくともリグニン(A)とブロックドイソシアネート化合物(B)とゴムラテックス(C)が含まれてなる接着処理剤によって処理されてなるものである。なお、「処理された」とは、接着処理剤を合成繊維に付与後、乾燥処理や加熱処理を行った後の接着処理剤の状態を意味する。乾燥処理や加熱処理では、例えば、接着処理剤に含まれる揮発分、例えば水などの溶媒が留去され、またブロックドイソシアネートのブロック剤が外れてイソシアネート基による反応が生じる。すなわち、接着処理剤で処理された合成繊維は、接着処理剤中の固形分が化学的に変性または変性されないで合成繊維に付着または接合した状態となっている。なお、本発明の自動車ホース補強用合成繊維コードは、合成繊維が、少なくともリグニン(A)とブロックドイソシアネート化合物(B)とゴムラテックス(C)が含まれてなる接着処理剤を同浴中(1浴)で、ポリエステル繊維に付与したものであり、たとえばポリエステル繊維の接着剤処理方法として公知である、いわゆる2浴処理方法で、1浴目接着剤および2浴目接着剤それぞれに(A)、(B)、(C)を分離して混合するものではない。さらに、本発明の合成繊維コードは、1浴目接着剤および2浴目接着剤いずれにも、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂を含まないものである。
本発明の自動車ホース補強用合成繊維コードは、合成繊維が、少なくともリグニン(A)とブロックドイソシアネート化合物(B)とゴムラテックス(C)が含まれてなる接着処理剤によって処理されてなるものである。なお、「処理された」とは、接着処理剤を合成繊維に付与後、乾燥処理や加熱処理を行った後の接着処理剤の状態を意味する。乾燥処理や加熱処理では、例えば、接着処理剤に含まれる揮発分、例えば水などの溶媒が留去され、またブロックドイソシアネートのブロック剤が外れてイソシアネート基による反応が生じる。すなわち、接着処理剤で処理された合成繊維は、接着処理剤中の固形分が化学的に変性または変性されないで合成繊維に付着または接合した状態となっている。なお、本発明の自動車ホース補強用合成繊維コードは、合成繊維が、少なくともリグニン(A)とブロックドイソシアネート化合物(B)とゴムラテックス(C)が含まれてなる接着処理剤を同浴中(1浴)で、ポリエステル繊維に付与したものであり、たとえばポリエステル繊維の接着剤処理方法として公知である、いわゆる2浴処理方法で、1浴目接着剤および2浴目接着剤それぞれに(A)、(B)、(C)を分離して混合するものではない。さらに、本発明の合成繊維コードは、1浴目接着剤および2浴目接着剤いずれにも、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂を含まないものである。
本発明で使用するリグニン(A)とは、樹木中に存在する芳香族ポリマーで、フェニルプロパン骨格を基本構造として有する天然高分子化合物として知られている。リグニン(A)は天然で産生される状態のほか、リグニンが化学的に処理された状態のものを含む。そのようなものには、例えば、木材を原料とする製紙産業工程において、例えばクラフトパルプ廃液から得られるクラフトリグニン、亜硫酸パルプ廃液から得られるリグニンスルホン酸などが挙げられる。リグニンスルホン酸は、リグニンのフェニルプロパン構造の側鎖にスルホン基が導入されたもので、リグニンスルホン酸塩として、例えばリグニンスルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸マグネシウム、リグニンスルホン酸カルシウムなどが挙げられる。本発明では、これらを単独、又は併用して使用することが出来るが、中でも接着力の観点からリグニンスルホン酸ナトリウムが最も好ましく使用できる。
本発明で使用するリグニン(A)の好ましい形態を鋭意検討した結果、数平均分子量が10,000~60,000でありかつ重量平均分子量が80,000~130,000であることが好ましく、より好ましくは、数平均分子量が20,000~50,000かつ重量平均分子量が90,000~120,000であるのが良い。リグニンの数平均分子量および重量平均分子量がこの範囲の上限を超えると、耐疲労性が不足したり、接着処理剤の保存安定性が悪化したり、ディップ工程において凝固物が多発し連続的な生産が困難になることがある。数平均分子量および重量平均分子量がこの範囲の下限未満であると、ゴムとの初期接着力や耐疲労性が低下して好ましくない。また、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は、2.5~5.0であることが好ましく、より好ましくは2.8~4.7であるのがよい。この範囲を外れると、接着力や耐疲労性が不足することがある。なお、本発明における数平均分子量及び重量平均分子量は、実施例の欄に記載した方法で測定した値をいう。
本発明で使用するブロックドイソシアネート化合物(B)とは、加熱によりブロック剤が遊離して活性なイソシアネート化合物を生成できる化合物である。ブロックドイソシアネート化合物とは、トリレンジイソシアネート(TDI)、メタフェニレンジイソシアネート(MDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(HDI)、ヘキサメチリンジイソシアネート、トリフェニールメタントリイソシアネートなどの骨格を有するポリイソシアネート化合物と、フェノール、クレゾール、レゾルシンなどのフェノール類、ε-カプロラクタム、バレロラクタムなどのラクタム類、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム類などのブロック化剤との反応生成物が挙げられる。
これらのブロックドイソシアネート化合物の中では、特に、ヘキサメチレンジイソシアネートとブロック化剤との反応生成物であるHDI系ブロックドイソシアネート、またはジフェニルメタンジイソシアネートとオキシム類のブロック化剤との反応生成物であるMDI系オキシムブロックドイソシアネートの中から選定することが、良好な接着力および耐疲労性を得るにおいて最も好ましい。ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)は、2,2‘-MDI、2,4’-MDI、4,4‘-MDIから選定することができるが、4-4’-MDIのモノメリックMDIが、接着力および耐疲労性の観点から最も好ましい。なお、イソシアネート基が三官能を有するポリメリックMDIは、接着力や耐疲労性が低下することがあり、好ましくない。また、HDI系ブロックドイソシアネートまたはMDI系オキシムブロックドイソシアネートのブロック剤の解離温度は、100~160℃であることが好ましい。この範囲の解離温度のものであると、熱処理時の反応性が良く、より高い接着力を発現することができ、好ましい。
本発明に使用できるゴムラテックス(C)は、例えば、天然ゴムラテックス、ブタジエンゴムラテックス、スチレン・ブタジエン・ゴムラテックス、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンゴムラテックス、ニトリルゴムラテックス、水素化ニトリルゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックス、クロロスルホン化ゴムラテックス、エチレン・プロピレン・ジエンゴムラテックス等が挙げられ、これらを単独、又は併用して使用することが出来る。
中でも、EPDM系ゴムとの接着力向上の観点から、ブタジエンゴムラテックス(PBラテックス)を含むことが必要であり、ゴムラテックス(C)の固形分100重量部中、PBラテックスが20~100重量部であることが必要であり、好ましくは30~100重量部含むのが良い。さらに好ましくは、PBラテックス以外に、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンゴムラテックス(VPラテックス)、クロロプレンゴムラテックス(CRラテックス)から選ばれる少なくとも1種を混合することがよい。
また、本発明に使用できる接着処理剤には、上記(A)、(B)および(C)以外に、本発明の目的、効果を妨げない範囲内において、必要に応じて界面活性剤、消泡剤、加硫調整剤、酸化防止剤、pH調整剤を添加しても良い。
本発明の接着処理剤において、接着処理剤に含まれる全固形分を100重量%としたとき、リグニン誘導体(A)の含有量は、5~50重量%であることが必要であり、好ましくは7~45重量%、より好ましくは10~40重量%である。5重量%未満もしくは50重量%を超えると、接着力や耐疲労性が不足することがある。
また、リグニン(A)とブロックドイソシアネート化合物(B)は、(Aの固形分):(Bの固形分)の重量比が10:1~10:20であることが必要であり、好ましくは10:5~10:20である。この重量比を超える範囲でブロックドイソシアネート化合物の量が少ないと、接着力が不足することがある。他方、この重量比を超える範囲でブロックドイソシアネート化合物の量が多いと、コードが硬くなり、ホースとしての耐疲労性が悪化することがある。
また、リグニン(A)、ブロックドイソシアネート化合物(B)、ゴムラテックス(C)は、((Aの固形分)+(Bの固形分)):(Cの固形分)の重量比が10:90~60:40で混合されることが好ましい。さらに好ましくは、((Aの固形分)+(Bの固形分)):(Cの固形分)の重量比が20:80~50:50である。この範囲を外れると接着力が不足したり、ホースとしての耐疲労性が悪化することがある。
本発明に使用する接着処理剤は、該接着処理剤を乾燥皮膜とした時の乾燥皮膜の最大点強度が0.2MPa~1.6MPaであることが必要であり、好ましくは0.3MPa~1.4MPa、より好ましくは0.5MPa~1.4MPaであるのがよい。0.2MPa未満であると、接着力が不足することがあり、1.6MPaを超えると、ホースとしての耐疲労性が悪化することがある。また、乾燥皮膜の最大点伸度は、2%~120%であることが必要であり、好ましくは4%~100%、より好ましくは、20%~100%であるのがよい。2%未満であると耐疲労性が悪化することがあり、120%を超えると、接着性が不足することがある。なお、乾燥皮膜の調整方法および最大点強度、最大点伸度の測定方法は実施例の項で説明した方法による。ただし、当該方法によることが困難である場合は、これと等価な方法を用いることができる。
本発明に使用する接着処理剤は、リグニン(A)とブロックドイソシアネート化合物(B)とゴムラテックス(C)が同一の処理剤の中に含まれ、かつ概接着処理剤の乾燥皮膜の最大点強度と最大点伸度が上記規定の範囲内であることが必要である。同一処理剤に含まれ、かつ本発明の規定範囲内とすることで、ゴムと繊維間の優れた接着性、ホースとしての耐疲労性を発現する接着処理剤となる。
接着処理剤の乾燥皮膜の最大点強度および最大点伸度は、接着処理剤に含まれる薬剤種および混合比によって調整することができる。例えば、接着処理剤のブロックドイソシアネート化合物(B)の混合量を多くすることで最大点強度を高く調整することができる。また、例えば接着処理剤にゴムラテックスを混合し、その混合量を多くすることで最大点伸度を高く調整することができる。他方、(A)、(B)、(C)以外にエポキシ化合物やオキサゾリン基含有物質など反応性が高く架橋性を有する化合物を添加すると、強度がこの範囲よりも高く、伸度がこの範囲よりも低くなり、ゴム中での耐疲労性悪化に繋がることがあるため好ましくない。
更に本発明においては上述した少なくとも(A)、(B)、(C)3種の物質を含んでなる接着処理剤がマロン式機械安定性試験による凝固物の割合で4.0%以下を示すことが好ましい。マロン式機械安定性試験の具体的な方法については後述するが、同試験は接着処理剤に機械的なシエア(せん断応力)がかかった際の処理剤の安定性を示し、接着処理剤を繊維に付与するディップ工程において凝固物の発生程度を図る尺度として本発明では活用している。マロン式機械安定性試験の凝固物の割合は、より好ましくは3.5%以下、さらに好ましくは3.0%以下であるのが良い。4.0%を超えるとディップ工程において凝固物が多発し連続的な生産が困難になることや、発生した凝固物が繊維コードに付着してゴムとの接着性悪化に繋がることがある。同試験での凝固物の割合が本発明規定以下であるとディップ工程での工程通過性が改善され好ましい。
マロン式機械安定性試験の凝固物の割合を本発明の規定以下とする方法は特に限定されないが、使用するリグニン(A)、ブロックドイソシアネート(B)、ゴムラテックス(C)の品種選定や配合比率を適正化することで調整することが可能である。または、さらに界面活性剤を追加で添加する方法も好ましい。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤が好ましく、たとえば、硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。
本発明に使用する接着処理剤は、固形分が水に溶解または分散されたものであって、総固形分濃度が、好ましくは5~25重量%、より好ましくは10~20重量%、さらに好ましくは12~18重量%とするのが良い。この範囲を外れると、接着力の低下を招くことがある。この範囲を外れると、十分な量の固形分を繊維に付与できないことがありえ、または、接着剤固形分での凝集破壊が発生することがありえ、その場合、接着力の低下を招くことがある。
合成繊維への前記接着処理剤の付着量は、合成繊維100重量部に対する接着処理剤の固形分重量が1重量部~15重量部であることが好ましく、より好ましくは1.5重量部~10重量部であるのが良い。この範囲を外れると、接着力の低下を招くことがある。
本発明の自動車ホース補強用合成繊維コードは、合成繊維が前記接着処理剤(少なくともリグニンとブロックドイソシアネート化合物とゴムラテックスを含む接着処理剤)で処理される前に、プレコート剤で処理されていても良い。
プレコート剤は、エポキシ化合物とブロックドイソシアネート化合物(固形分重量比10:0~10:30)を少なくとも含み、濃度が0.1~6%であることが好ましい。この範囲を外れると、接着力が低下することがある。また、プレコート剤の合成繊維への付着量は、合成繊維100重量部に対するプレコート剤の固形分重量が0.1重量部~3重量部であることが好ましい。この範囲を外れると、接着力の低下を招くことがある。
(ポリエステル繊維を用いた自動車ホース補強合成繊維コード)
本発明でポリエステル繊維を用いた自動車ホース補強合成繊維コードは、コードに付着した樹脂単位当たりのガーレーコード硬さが1~10mN/%以下であり、かつ加熱後のガーレーコード硬さ変化率が100~240%であることが好ましい。より好ましくは、ガーレーコード硬さが2~9mN/%であり、かつ加熱後のガーレーコード硬さ変化率が110%~220%であるのが良い。この範囲とすることで、ゴムとコードの複合体においてコードのゴムへの追従性が向上し、良好な接着力および耐液漏れ性を得ることができる。ガーレーコード硬さの調整方法は特に限定されるものではないが、例えば樹脂付着量を低下させることで、ガーレーコード硬さを減少、樹脂付着量を増加させることで、ガーレーコード硬さを向上させることができる。さらには、後述するディッピング工程における熱処理時に、熱処理温度および/または熱処理時間を減少させることで、ガーレーコード硬さを減少させることができ、また、熱処理温度および/または熱処理時間を増加させることで、ガーレーコード硬さを向上させることができる。また、後述するディップ工程のノルマライジングゾーンを通った後の機械的ソフニング処理工程時の張力を0.5cN~5.0cN/dtexとすることで達成できる。
本発明でポリエステル繊維を用いた自動車ホース補強合成繊維コードは、コードに付着した樹脂単位当たりのガーレーコード硬さが1~10mN/%以下であり、かつ加熱後のガーレーコード硬さ変化率が100~240%であることが好ましい。より好ましくは、ガーレーコード硬さが2~9mN/%であり、かつ加熱後のガーレーコード硬さ変化率が110%~220%であるのが良い。この範囲とすることで、ゴムとコードの複合体においてコードのゴムへの追従性が向上し、良好な接着力および耐液漏れ性を得ることができる。ガーレーコード硬さの調整方法は特に限定されるものではないが、例えば樹脂付着量を低下させることで、ガーレーコード硬さを減少、樹脂付着量を増加させることで、ガーレーコード硬さを向上させることができる。さらには、後述するディッピング工程における熱処理時に、熱処理温度および/または熱処理時間を減少させることで、ガーレーコード硬さを減少させることができ、また、熱処理温度および/または熱処理時間を増加させることで、ガーレーコード硬さを向上させることができる。また、後述するディップ工程のノルマライジングゾーンを通った後の機械的ソフニング処理工程時の張力を0.5cN~5.0cN/dtexとすることで達成できる。
(ポリアミド繊維を用いた自動車ホース補強用合成繊維コード)
本発明でポリアミド繊維を用いた自動車ホース補強用合成繊維コードは、コードに付着した樹脂単位当たりのガーレーコード硬さが1~10mN/%以下であり、かつ加熱後のガーレーコード硬さ変化率が100~240%であることが好ましい。より好ましくは、ガーレーコード硬さが2~9mN/%であり、かつ加熱後のガーレーコード硬さ変化率が110%~220%であるのが良い。この範囲とすることで、ゴムとコードの複合体においてコードのゴムへの追従性が向上し、良好な接着力を得ることができる。ガーレーコード硬さの調整方法は特に限定されるものではないが、例えば樹脂付着量を低下させることで、ガーレーコード硬さを減少、樹脂付着量を増加させることで、ガーレーコード硬さを向上させることができる。さらには、後述するディッピング工程における熱処理時に、熱処理温度および/または熱処理時間を減少させることで、ガーレーコード硬さを減少させることができ、また、熱処理温度および/または熱処理時間を増加させることで、ガーレーコード硬さを向上させることができる。また、後述するディップ工程のノルマライジングゾーンを通った後の機械的ソフニング処理工程時の張力を0.05~1cN/dtexとすることで達成できる。
本発明でポリアミド繊維を用いた自動車ホース補強用合成繊維コードは、コードに付着した樹脂単位当たりのガーレーコード硬さが1~10mN/%以下であり、かつ加熱後のガーレーコード硬さ変化率が100~240%であることが好ましい。より好ましくは、ガーレーコード硬さが2~9mN/%であり、かつ加熱後のガーレーコード硬さ変化率が110%~220%であるのが良い。この範囲とすることで、ゴムとコードの複合体においてコードのゴムへの追従性が向上し、良好な接着力を得ることができる。ガーレーコード硬さの調整方法は特に限定されるものではないが、例えば樹脂付着量を低下させることで、ガーレーコード硬さを減少、樹脂付着量を増加させることで、ガーレーコード硬さを向上させることができる。さらには、後述するディッピング工程における熱処理時に、熱処理温度および/または熱処理時間を減少させることで、ガーレーコード硬さを減少させることができ、また、熱処理温度および/または熱処理時間を増加させることで、ガーレーコード硬さを向上させることができる。また、後述するディップ工程のノルマライジングゾーンを通った後の機械的ソフニング処理工程時の張力を0.05~1cN/dtexとすることで達成できる。
(ポリビニルアルコール系繊維を用いた自動車ホース補強用合成繊維コード)
本発明でポリビニルアルコール繊維を用いた自動車ホース補強用合成繊維コードは、コードに付着した樹脂単位当たりのガーレーコード硬さが1~10mN/%以下であり、かつ加熱後のガーレーコード硬さ変化率が100~240%であることが好ましい。より好ましくは、ガーレーコード硬さが2~9mN/%であり、かつ加熱後のガーレーコード硬さ変化率が110%~220%であるのが良い。この範囲とすることで、ゴムとコードの複合体においてコードのゴムへの追従性が向上し、良好な接着力を得ることができる。ガーレーコード硬さの調整方法は特に限定されるものではないが、例えば樹脂付着量を低下させることで、ガーレーコード硬さを減少、樹脂付着量を増加させることで、ガーレーコード硬さを向上させることができる。さらには、後述するディッピング工程における熱処理時に、熱処理温度および/または熱処理時間を減少させることで、ガーレーコード硬さを減少させることができ、また、熱処理温度および/または熱処理時間を増加させることで、ガーレーコード硬さを向上させることができる。また、後述するディップ工程のノルマライジングゾーンを通った後の機械的ソフニング処理工程時の張力を0.05~5cN/dtexとすることで達成できる。
本発明でポリビニルアルコール繊維を用いた自動車ホース補強用合成繊維コードは、コードに付着した樹脂単位当たりのガーレーコード硬さが1~10mN/%以下であり、かつ加熱後のガーレーコード硬さ変化率が100~240%であることが好ましい。より好ましくは、ガーレーコード硬さが2~9mN/%であり、かつ加熱後のガーレーコード硬さ変化率が110%~220%であるのが良い。この範囲とすることで、ゴムとコードの複合体においてコードのゴムへの追従性が向上し、良好な接着力を得ることができる。ガーレーコード硬さの調整方法は特に限定されるものではないが、例えば樹脂付着量を低下させることで、ガーレーコード硬さを減少、樹脂付着量を増加させることで、ガーレーコード硬さを向上させることができる。さらには、後述するディッピング工程における熱処理時に、熱処理温度および/または熱処理時間を減少させることで、ガーレーコード硬さを減少させることができ、また、熱処理温度および/または熱処理時間を増加させることで、ガーレーコード硬さを向上させることができる。また、後述するディップ工程のノルマライジングゾーンを通った後の機械的ソフニング処理工程時の張力を0.05~5cN/dtexとすることで達成できる。
上記によって特徴づけられる本発明の自動車ホース補強用合成繊維コードは、レゾルシンおよびホルマリンを含まず、環境負荷低減に有利な新規の接着処理剤からなり、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム配合物(EPDM系ゴム)との接着性が良好であり、ディップ工程において樹脂凝固物発生を抑制でき、かつ、ホース製造時の工程通過性(合成繊維コード表面の接着剤の脱落)が抑制され、さらに柔軟でカシメ部の耐液漏れ性に優れたホースを提供可能とする。
本発明による自動車ホース補強用合成繊維コードを含む自動車ホースは、レゾルシンおよびホルマリンを使用しない環境に優しいゴム製品でありながら従来RFLを使用したもの同等以上の性能を発現することができる。
[自動車ホース補強用合成繊維コードの製造方法]
次に、本発明の自動車ホース補強用合成繊維コードの製造方法について述べる。
次に、本発明の自動車ホース補強用合成繊維コードの製造方法について述べる。
合成繊維がポリエステル繊維の場合、例えば、固有粘度(IV)1.00~1.50、好ましくは1.20~1.50のポリエチレンテレフタレートチップを、エクストルーダー型紡糸機を用いて紡糸温度285~300℃で溶融紡糸する。紡出後、オイリングローラーにて油剤を付与する。紡糸速度は2200~2800m/分、延伸倍率2.1~2.4倍で多段熱延伸し、1.0~4.0%の弛緩を与えた後巻き取りポリエステル繊維を得る。ポリエステル繊維の繊度および単糸繊度は口金の孔数および吐出量を変更して行う。ポリエステル繊維の熱延伸は、80~250℃の加熱ロールに糸条を捲回させて行う。
合成繊維がポリアミド繊維の場合、例えば、硫酸相対粘度(ηr)3.0~4.5、好ましくは3.5~4.0のポリヘキサメチレンアジパミドチップを、エクストルーダー型紡糸機を用いて紡糸温度285~300℃で溶融紡糸する。紡出糸条は、口金直下に設けられた280~320℃の加熱筒雰囲気中を通過させた後、冷風を吹き付け、冷却固化する。次いで油剤を付与した後、引取ロ-ルで引き取る。引取速度300~1000m/分で引き取った糸条は通常連続して延伸する。延伸は速度の異なるネルソン型ロ-ルに糸条を捲回して行う。好ましい延伸プロセスは、引取糸条を10%未満のストレッチをかけた後、多段延伸を行う。1段目の延伸は冷延伸とし、2段目以降の延伸は熱延伸で行うことが好ましく、延伸倍率は、4.0~6.0倍とし、熱延伸時の延伸ロ-ル温度は100~250℃にて行う。9cN/dtex以上のポリアミド繊維を製造する場合には3段以上の多段延伸が有利である。熱延伸した糸条は引き続き弛緩ロ-ルとの間で2~12%の弛緩を与えた後に巻き取り、ポリアミド繊維を得る。ポリアミド繊維の繊度および単糸繊度は口金の孔数および吐出量を変更して行う。
ポリビニルアルコール系繊維についても、公知の方法で製造することができる。
上記のようにして得られた合成繊維のストランド1本を、前記で定義した撚り係数80~800の範囲となるように撚りをかけて片撚りの撚糸コードとする。
本発明のゴム補強用合成繊維コードの製造方法の例としては、少なくともリグニン(A)とブロックドイソシアネート化合物(B)とゴムラテックス(C)が含まれ、かつ以下の特性を持つ接着処理剤を同浴中で合成繊維に付着させ、熱処理を施す方法である。
(a)接着処理剤に含まれる全固形分100重量部としたときリグニン(A)の含有量が5~50重量%
(b)であり、リグニン(A)とブロックドイソシアネート化合物(B)の固形分重量比が、(Aの固形分):(Bの固形分)=10:1~10:20
(c)ゴムラテックス(C)の固形分100重量部中、PBラテックスが20~100重量部
(d)該接着処理剤を乾燥皮膜としたときの乾燥皮膜の最大点強度が0.2MPa~1.6MPa、かつ最大点伸度が2%~120%
(Aの固形分):(Bの固形分)の重量比がこの範囲を超えてブロックドイソシアネート化合物の量が少ないと、接着力が不足することがあり、この重量比を超える範囲でブロックドイソシアネート化合物の量が多いと、コードが硬くなり、ホースとしての耐疲労性が悪化することがある。
(a)接着処理剤に含まれる全固形分100重量部としたときリグニン(A)の含有量が5~50重量%
(b)であり、リグニン(A)とブロックドイソシアネート化合物(B)の固形分重量比が、(Aの固形分):(Bの固形分)=10:1~10:20
(c)ゴムラテックス(C)の固形分100重量部中、PBラテックスが20~100重量部
(d)該接着処理剤を乾燥皮膜としたときの乾燥皮膜の最大点強度が0.2MPa~1.6MPa、かつ最大点伸度が2%~120%
(Aの固形分):(Bの固形分)の重量比がこの範囲を超えてブロックドイソシアネート化合物の量が少ないと、接着力が不足することがあり、この重量比を超える範囲でブロックドイソシアネート化合物の量が多いと、コードが硬くなり、ホースとしての耐疲労性が悪化することがある。
ここで、接着剤を付着させ、熱処理する方法としては、ディップバス浴内の接着処理剤に撚糸コードをディップして、引き続いて好ましくは100~150℃の温度で水分を乾燥し、続いて200~255℃の熱処理を施す方法が好ましい。リグニン(A)、ブロックドイソシアネート化合物(B)、ゴムラテックス(C)の好ましい様態は上述記載のものを使用することができる。
ここでディップとは、内部にローラーが設置されかつ接着処理剤が満たされたディップ槽内に撚糸コードを走行させることで、撚糸コードに接着処理剤を付与することを指す。熱処理とは、ローラーが設置されかつ所定の温度に設定できるオーブン内に撚糸コードまたは生簾反を走行させて撚糸コードまたは生簾反を加熱することを指す。このようなディップおよび熱処理を施すディップ処理機としては、例えばリッツラー社から市販されている。なお、接着処理剤をポリエステル繊維に付着させる他の方法としては、ディップ処理の他、例えばノズルからの接着処理剤噴霧による塗布など、任意の方法を採用することができる。
また、ポリエステル繊維に対する接着処理剤の固形分付着量を制御するために、圧接ローラーによる絞り、スクレーパーによるかき落とし、空気吹きつけによる吹き飛ばしおよび吸引などの手段を用いてもよい。
さらには、上記の乾燥、熱処理後の、機械的ソフニング処理工程時に、合成繊維コードをエッジに摺接させることにより任意のコード剛さを得るための柔軟化処理を施すこともできる。
本発明の自動車ホース補強用合成繊維コードの製造方法において使用する接着処理剤は、乾燥皮膜の最大点強度が0.2MPa~1.6MPaであり、かつ接着処理剤の乾燥皮膜の最大点伸度が2%~120%である必要がある。
また、本発明の自動車ホース補強用合成繊維コードの製造方法において使用する接着処理剤の、リグニン(A)の数平均分子量が10,000~60,000、重量平均分子量が80,000~130,000であることが好ましい。リグニンの数平均分子量および重量平均分子量がこの範囲を外れると、接着力やホースとしての耐疲労性が不足することがあり、この範囲のリグニンを選定することが、好ましい。
また、リグニン(A)、ブロックドイソシアネート化合物(B)、ゴムラテックス(C)は、((Aの固形分)+(Bの固形分)):(Cの固形分)の重量比が10:90~60:40で混合されることが好ましい。さらに好ましくは、((Aの固形分)+(Bの固形分)):(Cの固形分)の重量比が20:80~50:50である。この範囲を外れると接着力が不足したり、ホースとしての耐疲労性が悪化することがある。
本発明の自動車ホース補強用ポリエステル繊維コードの製造方法は、合成繊維に前記接着処理剤(少なくともリグニンとブロックドイソシアネート化合物とゴムラテックスを含む接着処理剤)が付着、熱処理される前に、プレコート剤が付着、熱処理されていても良い。
プレコート剤は、エポキシ化合物とブロックドイソシアネート化合物(固形分重量比10:0~10:30)を少なくとも含み、濃度が0.1~6%であることが好ましい。この範囲を外れると、接着力が低下することがある。また、プレコート剤の合成繊維への付着量は、合成繊維100重量部に対するプレコート剤の固形分重量が0.1重量部~3重量部であることが好ましい。この範囲を外れると、接着力の低下を招くことがある。
プレコート剤を付着させる場合、上記方法と同様のディップ方法を採用することができる。すなわち、合成繊維の撚糸コードを、ディップバス浴内のプレコート剤にディップして、引き続いて好ましくは100~150℃の温度で水分を乾燥し、続いて200~255℃の熱処理を施す方法が好ましい。固形分付着量の制御や、柔軟化処理については前述と同様の方法を採用することができる。
本発明の製造方法では、接着処理剤(少なくともリグニン(A)とブロックドイソシアネート化合物(B)とゴムラテックス(C)が含まれ、同浴中で使用される接着処理剤)を合成繊維に付着させ、熱処理を施すが、この熱処理時に、ホット処理とノルマライジング処理の2段階の熱処理を行うことが好ましい。いずれも熱処理温度は200~255℃であるのがよい。ポリエステル繊維の場合、ホット処理時の張力(ホットストレッチ張力)は、0.3~2.5cN/dtex、かつノルマライジング処理時の張力(ノルマライジング張力)は0.1~1.5cN/dtexであることが好ましい。ホットストレッチ張力がこの範囲を外れると、接着剤がコード表層に偏在して工程通過性が悪化したり、接着力が低下したりすることがあり、ノルマライジング張力がこの範囲を外れると、コードの熱収縮が大きくなってゴムとの追随性が低下することで耐液漏れ性が悪化することがある。ポリアミド繊維の場合、ホット処理時の張力(ホットストレッチ張力)は、0.05~1cN/dtexであり、かつノルマライジング処理時の張力(ノルマライジング張力)は0.05~1cN/dtexであることが好ましく、ホット処理時の張力(ホットストレッチ張力)は、0.3~0.8cN/dtexであり、かつノルマライジング処理時の張力(ノルマライジング張力)は0.3~0.8cN/dtexであることがより好ましい。ホットストレッチ張力がこの範囲を外れると、接着剤がコード表層に偏在して工程通過性が悪化したり、接着力が低下したりすることがあり、ノルマライジング張力がこの範囲を外れると、コードの熱収縮が大きくなってゴムとの追随性が低下することで接着力が低下することがある。ポリビニルアルコール系繊維の場合、ホット処理時の張力(ホットストレッチ張力)は、0.05~2.5cN/dtexであり、かつノルマライジング処理時の張力(ノルマライジング張力)は0.05~1.5cN/dtexであることが好ましく、ホット処理時の張力(ホットストレッチ張力)は、0.3~1.5cN/dtexであり、かつノルマライジング処理時の張力(ノルマライジング張力)は0.1~1.0cN/dtexであることがより好ましい。ホットストレッチ張力がこの範囲を外れると、接着剤がコード表層に偏在して工程通過性が悪化したり、接着力が低下したりすることがあり、ノルマライジング張力がこの範囲を外れると、コードの熱収縮が大きくなってゴムとの追随性が低下することで接着力が低下することがある。
このようにして得られる本発明の自動車ホース補強用合成繊維コードは、レゾルシンおよびホルマリンを含まず、環境負荷低減に有利な新規の接着処理剤からなり、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム配合物(EPDM系ゴム)との接着性が良好であり、ディップ工程において樹脂凝固物発生を抑制でき、かつ、ホース製造時の工程通過性(合成繊維コード表面の接着剤の脱落)が抑制され、さらに柔軟でカシメ部の耐液漏れ性に優れたホースを提供することができる。
以下、実施例により本発明についてさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下に具体的に記載する実施例において、各測定値は次の方法により求めたものである。
(1)接着剤の付着量
JIS L1017(2002)のディップピックアップの質量法に準じ、接着剤の付着料を求めた。
JIS L1017(2002)のディップピックアップの質量法に準じ、接着剤の付着料を求めた。
(2)剥離接着力
コードを隙間が無いようにアルミ板に巻き付け、アルミ板の両側にEPDM系の未加硫ゴムを張り付け、150℃で30分間プレス加硫を行った。このとき、ゴムの厚さは3mmとし、ゴムと繊維コードの面圧が30kgf/cm2となるように、プレス圧力を調整した。アルミ板の大きさ、繊維コードを巻き付ける面積は任意で構わなく、巻き付け時の張力は巻き付け時にコードが弛まなければよい。放冷後、20℃の環境下で50mm/分の速度で、ゴムと繊維コードが90°の角度になるように保ちながら、ゴムから繊維コードを剥離したときの剥離力をN/inchで表示した。なお、EPDM系未加硫ゴムの組成は下記のとおりである。
EPDM :100(重量部)
HAFカーボンブラック:80(重量部)
プロセスオイル(パラフィン系):40(重量部)
亜鉛華:5(重量部)
ステアリン酸:5(重量部)
硫黄:5(重量部)
加硫促進剤:3(重量部)
亜鉛華:5(重量部)。
コードを隙間が無いようにアルミ板に巻き付け、アルミ板の両側にEPDM系の未加硫ゴムを張り付け、150℃で30分間プレス加硫を行った。このとき、ゴムの厚さは3mmとし、ゴムと繊維コードの面圧が30kgf/cm2となるように、プレス圧力を調整した。アルミ板の大きさ、繊維コードを巻き付ける面積は任意で構わなく、巻き付け時の張力は巻き付け時にコードが弛まなければよい。放冷後、20℃の環境下で50mm/分の速度で、ゴムと繊維コードが90°の角度になるように保ちながら、ゴムから繊維コードを剥離したときの剥離力をN/inchで表示した。なお、EPDM系未加硫ゴムの組成は下記のとおりである。
EPDM :100(重量部)
HAFカーボンブラック:80(重量部)
プロセスオイル(パラフィン系):40(重量部)
亜鉛華:5(重量部)
ステアリン酸:5(重量部)
硫黄:5(重量部)
加硫促進剤:3(重量部)
亜鉛華:5(重量部)。
(3)接着処理剤の乾燥皮膜の最大点強度、最大点伸度
接着処理剤を、乾燥後の皮膜の厚みが0.5mmとなるようにガラス板に塗工し、室温で72時間乾燥した後、ガラス板から剥離し、120℃オーブンで15分間熱処理し、さらに240℃オーブンで2分間熱処理した。これを2号ダンベル型で打ち抜き、オリエンテック社製テンシロンRTM-100型試験機を用いて、25℃雰囲気下でクロスヘッドスピード50mm/分で引張試験を行い、強度および伸度を測定して、強度が最大値となる点の強度と伸度を各試料について求め、試料数6での強度の算術平均値をもって最大点強度とし、試料数6での伸度の算術平均値をもって最大点伸度とした。
接着処理剤を、乾燥後の皮膜の厚みが0.5mmとなるようにガラス板に塗工し、室温で72時間乾燥した後、ガラス板から剥離し、120℃オーブンで15分間熱処理し、さらに240℃オーブンで2分間熱処理した。これを2号ダンベル型で打ち抜き、オリエンテック社製テンシロンRTM-100型試験機を用いて、25℃雰囲気下でクロスヘッドスピード50mm/分で引張試験を行い、強度および伸度を測定して、強度が最大値となる点の強度と伸度を各試料について求め、試料数6での強度の算術平均値をもって最大点強度とし、試料数6での伸度の算術平均値をもって最大点伸度とした。
(4)マロン式機械安定度試験
接着処理剤のマロン式機械安定性試験による凝固物の割合は以下の方法で測定した。安田精機製作所製のマロン機械的安定度試験機を用いて、接着処理剤50gに、ローター回転数1000rpm、ローター荷重10kg、回転時間3分の条件で機械的せん断を与えた後、試料を100メッシュの金網で濾過した。補足された凝固物を乾燥した後質量を測定し、元の接着処理剤中の固形分質量に対する凝固物質量の割合を重量%で求め、この値を凝固物の割合(%)とした。
接着処理剤のマロン式機械安定性試験による凝固物の割合は以下の方法で測定した。安田精機製作所製のマロン機械的安定度試験機を用いて、接着処理剤50gに、ローター回転数1000rpm、ローター荷重10kg、回転時間3分の条件で機械的せん断を与えた後、試料を100メッシュの金網で濾過した。補足された凝固物を乾燥した後質量を測定し、元の接着処理剤中の固形分質量に対する凝固物質量の割合を重量%で求め、この値を凝固物の割合(%)とした。
(5)コードに付着した樹脂単位当たりのガーレーコード硬さ
コードを長さ1mに切り出して、その一端に金属製フックを結びつけ、他端に300gの重りを結びつけ、温度25℃、相対湿度40%に調節された環境下、空中に24時間吊してコードを鉛直に保持し、測定試料を得た。
コードを長さ1mに切り出して、その一端に金属製フックを結びつけ、他端に300gの重りを結びつけ、温度25℃、相対湿度40%に調節された環境下、空中に24時間吊してコードを鉛直に保持し、測定試料を得た。
これを38.1mm(1.5インチ)に切断して試験片とし、安田精機株式会社製の「Gurley’s stiffness tester」でガーレーコード硬さを測定した。図1に「Gurley’s stiffness tester」の斜視図を示す。
試験片の取付けおよび測定法は、(ア)試料長さに合わせてチャック1を設定位置に固定させ、試験片2を取付ける。(イ)回転棒3の下部(軸受より下部)に荷重任意設定孔が軸より25.4mm(1インチ)(図1中のW1)、50.8mm(2インチ)(図1中のW2)、および101.6mm(4インチ)(図1中のW3)の位置にあるので試験片2の柔軟性に応じ荷重の重さおよび孔の位置を設定する。この場合、目盛板4に針5が2~4に指示するように、荷重および孔の位置を選ばなければならない。(ウ)試験片2に見合う設定ができたならば、駆動ボタンを押し、駆動軸を左右に動かし、針が指す目盛板4の数値を0.1単位まで読取る。(エ)1つの試験片2につき、左右1回、試験片10本、計20回の値を求め、1試料の平均値を求める。計算法は次のとおりである。各測定値の平均値を、次式で計算した。最後にガーレーコード硬さ(mg)を(mN)に換算し、さらに樹脂付着量(%)で除した値を、コードに付着した樹脂単位当たりのガーレーコード硬さ(mN/%)とした。
・ガーレーコード硬さ(mg)=R×{(W1×1)+(W2×2)+(W3×4)}/5×(L-12.7)2/W×19.8
ただし、
R :測定値の平均値
W1:25.4mmの荷重位置(孔)に掛ける荷重(単位g)
W2:50.8mmの荷重位置(孔)に掛ける荷重(単位g)
W3:101.6mmの荷重位置(孔)に掛ける荷重(単位g)
L :試料長さ(mm)
W :試験片の幅(コードゲージ)(mm)。
・ガーレーコード硬さ(mg)=R×{(W1×1)+(W2×2)+(W3×4)}/5×(L-12.7)2/W×19.8
ただし、
R :測定値の平均値
W1:25.4mmの荷重位置(孔)に掛ける荷重(単位g)
W2:50.8mmの荷重位置(孔)に掛ける荷重(単位g)
W3:101.6mmの荷重位置(孔)に掛ける荷重(単位g)
L :試料長さ(mm)
W :試験片の幅(コードゲージ)(mm)。
(6)加熱後のガーレーコード硬さ変化率(加熱後変化率)
コードを長さ1mに切り出して、その一端に金属製フックを結びつけ、他端に300gの重りを結びつけ、温度160℃に調節された環境下、空中に2時間吊してコードを鉛直に保持して、コードを加熱した。その後、上記(5)と同様にしてガーレーコード硬さを求めた。(6)の値を(5)の値で除した値を加熱後のガーレーコード硬さ変化率(%)とした。
コードを長さ1mに切り出して、その一端に金属製フックを結びつけ、他端に300gの重りを結びつけ、温度160℃に調節された環境下、空中に2時間吊してコードを鉛直に保持して、コードを加熱した。その後、上記(5)と同様にしてガーレーコード硬さを求めた。(6)の値を(5)の値で除した値を加熱後のガーレーコード硬さ変化率(%)とした。
(7)ディップ工程での凝集物発生
リッツラー社のコンピュートリーター処理機を使用してディップおよび熱処理する工程において、撚糸コードを本発明の接着処理剤に浸漬し、コード走行速度20m/分で1時間走行させたあと、120℃のオーブンを走行する際にコードが接触するターンロールに堆積した凝固物の量を確認し、(凝固物:多=B>A>S=皆無)と判定した。本発明ではSとAを実用に耐えうる工程通過性の合格点としたが、Sの方が実用上優れるものである。
リッツラー社のコンピュートリーター処理機を使用してディップおよび熱処理する工程において、撚糸コードを本発明の接着処理剤に浸漬し、コード走行速度20m/分で1時間走行させたあと、120℃のオーブンを走行する際にコードが接触するターンロールに堆積した凝固物の量を確認し、(凝固物:多=B>A>S=皆無)と判定した。本発明ではSとAを実用に耐えうる工程通過性の合格点としたが、Sの方が実用上優れるものである。
(8)工程通過性
コードを、図2に示す東レ・エンジニアリング(株)製摩擦試験機に走行させ、ガイド類への接着処理剤の付着状況を指標とした。測定用の繊維コードサンプル6からコードを取り出し、糸送り用のニップロール7を経て、荷重8を付与し、梨地クロムメッキ加工管9の表面に一部巻き付け走行させ、糸送り用のニップロール10を経て巻き取り、その際の糸送り用のニップロール7および10への接着処理剤の付着状態を確認した。カスの発生の極端に少ないものはS、少ないものはA、多量のカスが発生するものはBと表示した。本発明ではSとAを実用に耐え得る工程通過性の合格点としたが、Sの方が実用上優れるものである。
コードを、図2に示す東レ・エンジニアリング(株)製摩擦試験機に走行させ、ガイド類への接着処理剤の付着状況を指標とした。測定用の繊維コードサンプル6からコードを取り出し、糸送り用のニップロール7を経て、荷重8を付与し、梨地クロムメッキ加工管9の表面に一部巻き付け走行させ、糸送り用のニップロール10を経て巻き取り、その際の糸送り用のニップロール7および10への接着処理剤の付着状態を確認した。カスの発生の極端に少ないものはS、少ないものはA、多量のカスが発生するものはBと表示した。本発明ではSとAを実用に耐え得る工程通過性の合格点としたが、Sの方が実用上優れるものである。
(9)エアーデフュージョン値
ホースとしての耐液漏れ性の指標としてエアーデフュージョン値を測定した。図3に測定用ピース及び測定装置の概略を示す。自動車ホース補強用ポリエステル繊維コードをゴム板2枚((2)の剥離接着力測定に使用したEPDM系ゴム)の間に、2本のコードがクロスするように配置し、160℃で30分間50kgf/cm2のプレス加硫を行い、ゴムに挟まれたコードの長さが5cmの測定用ピースを作成する。該測定用ピースを100℃に設定した空気循環型乾熱炉中に1週間放置し、取り出した後に室温まで放冷する。測定用ピースのコード端面が露出している一方の端面に一定の空気圧をかけられるようにし、他方の端面にコード中を透過してくる空気透過性を水柱の高さ変化から計算できるようにするため、水を入れたφ6mmのU字管を接続した。空気圧を0.2MPaとし、10分間放置したときの水面の移動距離(mm)を測定して、エアーデフュージョン値とした。数値が小さいほど、ホースとしたときの液漏れが少なく良好なホース耐久性に寄与することを意味する。
ホースとしての耐液漏れ性の指標としてエアーデフュージョン値を測定した。図3に測定用ピース及び測定装置の概略を示す。自動車ホース補強用ポリエステル繊維コードをゴム板2枚((2)の剥離接着力測定に使用したEPDM系ゴム)の間に、2本のコードがクロスするように配置し、160℃で30分間50kgf/cm2のプレス加硫を行い、ゴムに挟まれたコードの長さが5cmの測定用ピースを作成する。該測定用ピースを100℃に設定した空気循環型乾熱炉中に1週間放置し、取り出した後に室温まで放冷する。測定用ピースのコード端面が露出している一方の端面に一定の空気圧をかけられるようにし、他方の端面にコード中を透過してくる空気透過性を水柱の高さ変化から計算できるようにするため、水を入れたφ6mmのU字管を接続した。空気圧を0.2MPaとし、10分間放置したときの水面の移動距離(mm)を測定して、エアーデフュージョン値とした。数値が小さいほど、ホースとしたときの液漏れが少なく良好なホース耐久性に寄与することを意味する。
(10)リグニンの数平均分子量、重量平均分子量測定
リグニンの数平均分子量、重量平均分子量はGPC法(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定した。リグニン試料に溶媒(アンモニア緩衝液/メタノール)を加え、室温で攪拌して溶解させ、0.5μmのフィルターで濾過を行った。その後、GPCにて測定し、UV検出器にてピークを検出、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール基準の相対値で分子量を測定した。測定結果は後述する実施例内に記載した。測定条件詳細を以下に記載する。
測定装置:島津製作所製
使用カラム:TSKgel GMPWXL 1本、G3000PWXL 1本(φ7.8mm×30cm、東ソー製)
溶媒:0.1Mアンモニア緩衝液(pH11)/メタノール(4/1、v/v)
標準物質:東ソーおよびAgilent製単分散ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール
検出器:UV検出器(島津製作所 SPD-M20A)。
リグニンの数平均分子量、重量平均分子量はGPC法(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定した。リグニン試料に溶媒(アンモニア緩衝液/メタノール)を加え、室温で攪拌して溶解させ、0.5μmのフィルターで濾過を行った。その後、GPCにて測定し、UV検出器にてピークを検出、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール基準の相対値で分子量を測定した。測定結果は後述する実施例内に記載した。測定条件詳細を以下に記載する。
測定装置:島津製作所製
使用カラム:TSKgel GMPWXL 1本、G3000PWXL 1本(φ7.8mm×30cm、東ソー製)
溶媒:0.1Mアンモニア緩衝液(pH11)/メタノール(4/1、v/v)
標準物質:東ソーおよびAgilent製単分散ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール
検出器:UV検出器(島津製作所 SPD-M20A)。
(実施例1~3、5~7、9~10、比較例1~7)
グリセロールポリグリシジルエーテル(“デナコール”EX313(ナガセ化成社製))、ブロックドイソシアネート化合物(DM-6400(明成化学製))、VPラテックス(ピラテックス、日本エイアンドエル株式会社製)、PBラテックス(“ニッポール”LX-111A、日本ゼオン株式会社製)の固形分比が15:30:25:30の割合になるように混合し、水で希釈して総固形分量4.0重量%のプレコート剤(ア)を得た。
グリセロールポリグリシジルエーテル(“デナコール”EX313(ナガセ化成社製))、ブロックドイソシアネート化合物(DM-6400(明成化学製))、VPラテックス(ピラテックス、日本エイアンドエル株式会社製)、PBラテックス(“ニッポール”LX-111A、日本ゼオン株式会社製)の固形分比が15:30:25:30の割合になるように混合し、水で希釈して総固形分量4.0重量%のプレコート剤(ア)を得た。
また、水に、リグニン(A)、ブロックドイソシアネート化合物(B)、ゴムラテックス(C)(i)、ゴムラテックス(C)(ii)のそれぞれの固形分が表1に示す比率となるように混合し、総固形分濃度15重量%となる接着処理剤を得た。得られた接着処理剤の乾燥皮膜の最大点強度、最大点伸度を測定した。また、上述のマロン式機械安定度試験記載の方法にて、凝固物の割合(%)を測定した。
1670dtexのポリエステルマルチフィラメント糸(東レ株式会社製、“テトロン”1670T-288-702C)1本を、表1に示す撚り係数となるように撚糸し、片撚り構造を持つ撚糸コードを得た。
該撚糸コードをコンピュートリーター処理機(リッツラー株式会社製)を用いて、前記のプレコート剤(ア)に浸漬した後、120℃で2分間乾燥し、続いて245℃で1分間の熱処理を行った。続いて、前記の成分(A)、(B)、(C)を含む接着処理剤に浸漬した後、120℃で2分間乾燥し、引き続き240℃で0.5分間熱処理(ホット処理)を行い、さらに、240℃で0.5分間熱処理(ノルマライズ処理)を行った。ここで、2浴目ホット処理時の張力(ホットストレッチ張力)、2浴目ノルマライズ処理時の張力(ノルマライジング処張力)は表1に示すDip張力で処理した。
ここで(A)、(B)、(C)を含む接着処理剤による処理は、コードの走行速度20m/分で1時間走行させ、処理が完了した後のコンピュートリーター処理機の120℃のオーブンを走行する際にコードが接触するターンロールに堆積した凝固物の量を確認し、(凝固物:多=B>A>S=皆無)と判定した。
ここで(A)、(B)、(C)を含む接着処理剤による処理は、コードの走行速度20m/分で1時間走行させ、処理が完了した後のコンピュートリーター処理機の120℃のオーブンを走行する際にコードが接触するターンロールに堆積した凝固物の量を確認し、(凝固物:多=B>A>S=皆無)と判定した。
得られた自動車ホース補強用合成繊維コードの接着剤固形分付着量は、プレコート剤が合成繊維100重量部に対して1.1重量部、(A)、(B)、(C)を含む接着処理剤が、合成繊維100重量部に対して4.0重量部であった。
表1中に示した、接着処理剤の各成分は以下の通りである。
(A)-1:リグニン(日本製紙株式会社製、リグニンスルホン酸ナトリウム、“バニレックス”N、数平均分子量29,000、重量平均分子量105,000)
(A)-2:リグニン(日本製紙株式会社製、リグニンスルホン酸ナトリウム、“バニレックス”RN、数平均分子量34,000、重量平均分子量112,000)
(A)-3:リグニン(日本製紙株式会社製、リグニンスルホン酸ナトリウム、“パールレックス”NP、数平均分子量97,000、重量平均分子量146,000)
(B)-1:ブロックドイソシアネート(明成化学製、DM-6400、オキシムブロックジフェニルメタンジイソシアネート、解離温度120~160℃)
(B)-2:ブロックドイソシアネート(明成化学製、SU-268A、ヘキサメチレンジイソシアネートのブロック剤付加物、解離温度100~130℃)
(B)-3:ブロックドイソシアネート(明成化学製、DM-3031CONC、ラクタムブロックジフェニルメタンジイソシアネート、解離温度160~180℃)
(B)-4:ブロックドイソシアネート(明成化学製、DM-7000、ラクタムブロックポリメリックMDI、解離温度160~180℃)
(C)-1:VPラテックス(日本エイアンドエル株式会社製、ピラテックス)。
(C)-2:PBラテックス(日本ゼオン株式会社製、“ニッポール”LX111A)。
(A)-1:リグニン(日本製紙株式会社製、リグニンスルホン酸ナトリウム、“バニレックス”N、数平均分子量29,000、重量平均分子量105,000)
(A)-2:リグニン(日本製紙株式会社製、リグニンスルホン酸ナトリウム、“バニレックス”RN、数平均分子量34,000、重量平均分子量112,000)
(A)-3:リグニン(日本製紙株式会社製、リグニンスルホン酸ナトリウム、“パールレックス”NP、数平均分子量97,000、重量平均分子量146,000)
(B)-1:ブロックドイソシアネート(明成化学製、DM-6400、オキシムブロックジフェニルメタンジイソシアネート、解離温度120~160℃)
(B)-2:ブロックドイソシアネート(明成化学製、SU-268A、ヘキサメチレンジイソシアネートのブロック剤付加物、解離温度100~130℃)
(B)-3:ブロックドイソシアネート(明成化学製、DM-3031CONC、ラクタムブロックジフェニルメタンジイソシアネート、解離温度160~180℃)
(B)-4:ブロックドイソシアネート(明成化学製、DM-7000、ラクタムブロックポリメリックMDI、解離温度160~180℃)
(C)-1:VPラテックス(日本エイアンドエル株式会社製、ピラテックス)。
(C)-2:PBラテックス(日本ゼオン株式会社製、“ニッポール”LX111A)。
(実施例4)
プレコート剤を、グリセロールポリグリシジルエーテル(“デナコール”EX313(ナガセ化成社製))、ブロックドイソシアネート化合物(DM-6400(明成化学製))の固形分比が10:35の割合になるように混合し、水で希釈して得た総固形分量7.0重量%のプレコート剤(イ)に変更した以外は、実施例1と同じ手順にて処理、評価を行った。得られた自動車ホース補強用コードの接着剤固形分付着量は、プレコート剤が合成繊維100重量部に対して1.7重量部、(A)、(B)、(C)を含む接着処理剤が、合成繊維100重量部に対して3.5重量部であった。
プレコート剤を、グリセロールポリグリシジルエーテル(“デナコール”EX313(ナガセ化成社製))、ブロックドイソシアネート化合物(DM-6400(明成化学製))の固形分比が10:35の割合になるように混合し、水で希釈して得た総固形分量7.0重量%のプレコート剤(イ)に変更した以外は、実施例1と同じ手順にて処理、評価を行った。得られた自動車ホース補強用コードの接着剤固形分付着量は、プレコート剤が合成繊維100重量部に対して1.7重量部、(A)、(B)、(C)を含む接着処理剤が、合成繊維100重量部に対して3.5重量部であった。
(実施例8)
製糸工程において紡糸油剤としてポリエポキシド化合物を混合する方法で、ポリエポキシド化合物(ソルビトールポリグリシジルエーテル)を予め付与した1670dtexのポリエステルマルチフィラメント糸(東レ株式会社製、“テトロン”1670T-288-707C)1本を、表1に示す撚り係数となるように撚糸し、片撚り構造を持つ撚糸コードを得た。この撚糸コードを使用し、プレコート剤を用いず、(A)、(B)、(C)を含む接着処理剤をした以外は、実施例1と同じ手順にて処理、評価を行った。
製糸工程において紡糸油剤としてポリエポキシド化合物を混合する方法で、ポリエポキシド化合物(ソルビトールポリグリシジルエーテル)を予め付与した1670dtexのポリエステルマルチフィラメント糸(東レ株式会社製、“テトロン”1670T-288-707C)1本を、表1に示す撚り係数となるように撚糸し、片撚り構造を持つ撚糸コードを得た。この撚糸コードを使用し、プレコート剤を用いず、(A)、(B)、(C)を含む接着処理剤をした以外は、実施例1と同じ手順にて処理、評価を行った。
(従来例1)
実施例1で、(A)、(B)、(C)を含む接着処理剤を、以下の手順で得られるRFL接着剤に変更した以外は、実施例1と同じ手順にて処理、評価を行った。
レゾルシン/ホルマリンのモル比を1/1.5の割合で、苛性ソーダの存在下混合し、固形分濃度が10%となるように調整し、2時間熟成することで、レゾルシンとホルマリンの初期縮合物を得た。次にこの初期縮合物(RF)と、ゴムラテックス(VPラテックス(ピラテックス、日本エイアンドエル株式会社製)とPBラテックス(“ニッポール”LX-111A、日本ゼオン株式会社製)を固形分重量比1:1で混合したもの)を、RF/L=1/5(固形分重量比)の割合で混合し、24時間熟成した。この混合物を水で希釈し、固形分重量15%のRFL接着剤を得た。得られた自動車ホース補強用コードの接着剤固形分付着量は、プレコート剤が合成繊維100重量部に対して1.1重量部、RFL接着剤が、合成繊維100重量部に対して4.0重量部であった。
実施例1で、(A)、(B)、(C)を含む接着処理剤を、以下の手順で得られるRFL接着剤に変更した以外は、実施例1と同じ手順にて処理、評価を行った。
レゾルシン/ホルマリンのモル比を1/1.5の割合で、苛性ソーダの存在下混合し、固形分濃度が10%となるように調整し、2時間熟成することで、レゾルシンとホルマリンの初期縮合物を得た。次にこの初期縮合物(RF)と、ゴムラテックス(VPラテックス(ピラテックス、日本エイアンドエル株式会社製)とPBラテックス(“ニッポール”LX-111A、日本ゼオン株式会社製)を固形分重量比1:1で混合したもの)を、RF/L=1/5(固形分重量比)の割合で混合し、24時間熟成した。この混合物を水で希釈し、固形分重量15%のRFL接着剤を得た。得られた自動車ホース補強用コードの接着剤固形分付着量は、プレコート剤が合成繊維100重量部に対して1.1重量部、RFL接着剤が、合成繊維100重量部に対して4.0重量部であった。
(実施例11~13、15~17、19~20、比較例8~14)
グリセロールポリグリシジルエーテル(“デナコール”EX313(ナガセ化成社製))、ブロックドイソシアネート化合物(DM-6400(明成化学製))、VPラテックス(ピラテックス、日本エイアンドエル株式会社製)、PBラテックス(“ニッポール”LX-111A、日本ゼオン株式会社製)の固形分比が15:30:25:30の割合になるように混合し、水で希釈して総固形分量4.0重量%のプレコート剤(ア)を得た。
グリセロールポリグリシジルエーテル(“デナコール”EX313(ナガセ化成社製))、ブロックドイソシアネート化合物(DM-6400(明成化学製))、VPラテックス(ピラテックス、日本エイアンドエル株式会社製)、PBラテックス(“ニッポール”LX-111A、日本ゼオン株式会社製)の固形分比が15:30:25:30の割合になるように混合し、水で希釈して総固形分量4.0重量%のプレコート剤(ア)を得た。
また、水に、リグニン(A)、ブロックドイソシアネート化合物(B)、ゴムラテックス(C)(i)、ゴムラテックス(C)(ii)のそれぞれの固形分が表2に示す比率となるように混合し、総固形分濃度15重量%となる接着処理剤を得た。得られた接着処理剤の乾燥皮膜の最大点強度、最大点伸度を測定した。また、上述のマロン式機械安定度試験記載の方法にて、凝固物の割合(%)を測定した。
1400dtexのポリアミドマルチフィラメント糸(東レ株式会社製、“ナイロン”1400T-204-1782)1本を、表2に示す撚り係数となるように撚糸し、片撚り構造を持つ撚糸コードを得た。
該撚糸コードをコンピュートリーター処理機(リッツラー株式会社製)を用いて、前記のプレコート剤(ア)に浸漬した後、120℃で2分間乾燥し、続いて245℃で1分間の熱処理を行った。続いて、前記の成分(A)、(B)、(C)を含む接着処理剤に浸漬した後、120℃で2分間乾燥し、引き続き240℃で0.5分間熱処理(ホット処理)を行い、さらに、240℃で0.5分間熱処理(ノルマライズ処理)を行った。ここで、2浴目ホット処理時の張力(ホットストレッチ張力)、2浴目ノルマライズ処理時の張力(ノルマライジング処張力)は表2に示すDip張力で処理した。
ここで(A)(B)(C)を含む接着処理剤による処理は、コードの走行速度20m/分で1時間走行させ、処理が完了した後のコンピュートリーター処理機の120℃のオーブンを走行する際にコードが接触するターンロールに堆積した凝固物の量を確認し、(凝固物:多=B>A>S=皆無)と判定した。
得られた自動車ホース補強用合成繊維コードの接着剤固形分付着量は、プレコート剤が合成繊維100重量部に対して1.1重量部、(A)、(B)、(C)を含む接着処理剤が、合成繊維100重量部に対して4.0重量部であった。
表2中に示した、接着処理剤の各成分は前記の通りである。
(実施例14)
プレコート剤を、グリセロールポリグリシジルエーテル(“デナコール”EX313(ナガセ化成社製))、ブロックドイソシアネート化合物(DM-6400(明成化学製))の固形分比が10:35の割合になるように混合し、水で希釈して得た総固形分量7.0重量%のプレコート剤(イ)に変更した以外は、実施例11と同じ手順にて処理、評価を行った。得られた自動車ホース補強用コードの接着剤固形分付着量は、プレコート剤が合成繊維100重量部に対して1.7重量部、(A)、(B)、(C)を含む接着処理剤が、合成繊維100重量部に対して3.5重量部であった。
プレコート剤を、グリセロールポリグリシジルエーテル(“デナコール”EX313(ナガセ化成社製))、ブロックドイソシアネート化合物(DM-6400(明成化学製))の固形分比が10:35の割合になるように混合し、水で希釈して得た総固形分量7.0重量%のプレコート剤(イ)に変更した以外は、実施例11と同じ手順にて処理、評価を行った。得られた自動車ホース補強用コードの接着剤固形分付着量は、プレコート剤が合成繊維100重量部に対して1.7重量部、(A)、(B)、(C)を含む接着処理剤が、合成繊維100重量部に対して3.5重量部であった。
(実施例18)
プレコート剤を用いず、(A)、(B)、(C)を含む接着処理剤をした以外は、実施例11と同じ手順にて処理、評価を行った。
プレコート剤を用いず、(A)、(B)、(C)を含む接着処理剤をした以外は、実施例11と同じ手順にて処理、評価を行った。
(従来例2)
実施例11で、(A)、(B)、(C)を含む接着処理剤を、以下の手順で得られるRFL接着剤に変更した以外は、実施例11と同じ手順にて処理、評価を行った。
レゾルシン/ホルマリンのモル比を1/1.5の割合で、苛性ソーダの存在下混合し、固形分濃度が10%となるように調整し、2時間熟成することで、レゾルシンとホルマリンの初期縮合物を得た。次にこの初期縮合物(RF)と、ゴムラテックス(VPラテックス(ピラテックス、日本エイアンドエル株式会社製)とPBラテックス(“ニッポール”LX-111A、日本ゼオン株式会社製)を固形分重量比1:1で混合したもの)を、RF/L=1/5(固形分重量比)の割合で混合し、24時間熟成した。この混合物を水で希釈し、固形分重量15%のRFL接着剤を得た。得られた自動車ホース補強用コードの接着剤固形分付着量は、プレコート剤が合成繊維100重量部に対して1.1重量部、RFL接着剤が、合成繊維100重量部に対して4.0重量部であった。
実施例11で、(A)、(B)、(C)を含む接着処理剤を、以下の手順で得られるRFL接着剤に変更した以外は、実施例11と同じ手順にて処理、評価を行った。
レゾルシン/ホルマリンのモル比を1/1.5の割合で、苛性ソーダの存在下混合し、固形分濃度が10%となるように調整し、2時間熟成することで、レゾルシンとホルマリンの初期縮合物を得た。次にこの初期縮合物(RF)と、ゴムラテックス(VPラテックス(ピラテックス、日本エイアンドエル株式会社製)とPBラテックス(“ニッポール”LX-111A、日本ゼオン株式会社製)を固形分重量比1:1で混合したもの)を、RF/L=1/5(固形分重量比)の割合で混合し、24時間熟成した。この混合物を水で希釈し、固形分重量15%のRFL接着剤を得た。得られた自動車ホース補強用コードの接着剤固形分付着量は、プレコート剤が合成繊維100重量部に対して1.1重量部、RFL接着剤が、合成繊維100重量部に対して4.0重量部であった。
(実施例21~23、25~27、比較例15~21)
グリセロールポリグリシジルエーテル(“デナコール”EX313(ナガセ化成社製))、ブロックドイソシアネート化合物(DM-6400(明成化学製))、VPラテックス(ピラテックス、日本エイアンドエル株式会社製)、PBラテックス(“ニッポール”LX-111A、日本ゼオン株式会社製)の固形分比が15:30:25:30の割合になるように混合し、水で希釈して総固形分量4.0重量%のプレコート剤(ア)を得た。
グリセロールポリグリシジルエーテル(“デナコール”EX313(ナガセ化成社製))、ブロックドイソシアネート化合物(DM-6400(明成化学製))、VPラテックス(ピラテックス、日本エイアンドエル株式会社製)、PBラテックス(“ニッポール”LX-111A、日本ゼオン株式会社製)の固形分比が15:30:25:30の割合になるように混合し、水で希釈して総固形分量4.0重量%のプレコート剤(ア)を得た。
また、水に、リグニン(A)、ブロックドイソシアネート化合物(B)、ゴムラテックス(C)(i)、ゴムラテックス(C)(ii)のそれぞれの固形分が表3に示す比率となるように混合し、総固形分濃度15重量%となる接着処理剤を得た。得られた接着処理剤の乾燥皮膜の最大点強度、最大点伸度を測定した。また、上述のマロン式機械安定度試験記載の方法にて、凝固物の割合(%)を測定した。
1330dtexのポリビニルアルコールマルチフィラメント糸(株式会社クラレ製、ビニロンフィラメント1330T-200f(品番1239))1本を、表3に示す撚り係数となるように撚糸し、片撚り構造を持つ撚糸コードを得た。
該撚糸コードをコンピュートリーター処理機(リッツラー株式会社製)を用いて、前記のプレコート剤(ア)に浸漬した後、120℃で2分間乾燥し、続いて245℃で1分間の熱処理を行った。続いて、前記の成分(A)、(B)、(C)を含む接着処理剤に浸漬した後、120℃で2分間乾燥し、引き続き240℃で0.5分間熱処理(ホット処理)を行い、さらに、240℃で0.5分間熱処理(ノルマライズ処理)を行った。
ここで(A)、(B)、(C)を含む接着処理剤による処理は、コードの走行速度20m/分で1時間走行させ、処理が完了した後のコンピュートリーター処理機の120℃のオーブンを走行する際にコードが接触するターンロールに堆積した凝固物の量を確認し、(凝固物:多=B>A>S=皆無)と判定した。
ここで(A)、(B)、(C)を含む接着処理剤による処理は、コードの走行速度20m/分で1時間走行させ、処理が完了した後のコンピュートリーター処理機の120℃のオーブンを走行する際にコードが接触するターンロールに堆積した凝固物の量を確認し、(凝固物:多=B>A>S=皆無)と判定した。
得られた自動車ホース補強用合成繊維コードの接着剤固形分付着量は、プレコート剤が合成繊維100重量部に対して1.1重量部、(A)、(B)、(C)を含む接着処理剤が、合成繊維100重量部に対して4.0重量部であった。
表3中に示した、接着処理剤の各成分は前記の通りである。
(実施例24)
プレコート剤を、グリセロールポリグリシジルエーテル(“デナコール”EX313(ナガセ化成社製))、ブロックドイソシアネート化合物(DM-6400(明成化学製))の固形分比が10:35の割合になるように混合し、水で希釈して得た総固形分量7.0重量%のプレコート剤(イ)に変更した以外は、実施例21と同じ手順にて処理、評価を行った。得られた自動車ホース補強用コードの接着剤固形分付着量は、プレコート剤が合成繊維100重量部に対して1.7重量部、(A)、(B)、(C)を含む接着処理剤が、合成繊維100重量部に対して3.5重量部であった。
プレコート剤を、グリセロールポリグリシジルエーテル(“デナコール”EX313(ナガセ化成社製))、ブロックドイソシアネート化合物(DM-6400(明成化学製))の固形分比が10:35の割合になるように混合し、水で希釈して得た総固形分量7.0重量%のプレコート剤(イ)に変更した以外は、実施例21と同じ手順にて処理、評価を行った。得られた自動車ホース補強用コードの接着剤固形分付着量は、プレコート剤が合成繊維100重量部に対して1.7重量部、(A)、(B)、(C)を含む接着処理剤が、合成繊維100重量部に対して3.5重量部であった。
(実施例28)
プレコート剤を用いず、(A)、(B)、(C)を含む接着処理剤をした以外は、実施例21と同じ手順にて処理、評価を行った。
プレコート剤を用いず、(A)、(B)、(C)を含む接着処理剤をした以外は、実施例21と同じ手順にて処理、評価を行った。
(従来例3)
実施例21で、(A)、(B)、(C)を含む接着処理剤を、以下の手順で得られるRFL接着剤に変更した以外は、実施例21と同じ手順にて処理、評価を行った。
レゾルシン/ホルマリンのモル比を1/1.5の割合で、苛性ソーダの存在下混合し、固形分濃度が10%となるように調整し、2時間熟成することで、レゾルシンとホルマリンの初期縮合物を得た。次にこの初期縮合物(RF)と、ゴムラテックス(VPラテックス(ピラテックス、日本エイアンドエル株式会社製)とPBラテックス(“ニッポール”LX-111A、日本ゼオン株式会社製)を固形分重量比1:1で混合したもの)を、RF/L=1/5(固形分重量比)の割合で混合し、24時間熟成した。この混合物を水で希釈し、固形分重量15%のRFL接着剤を得た。得られた自動車ホース補強用コードの接着剤固形分付着量は、プレコート剤が合成繊維100重量部に対して1.1重量部、RFL接着剤が、合成繊維100重量部に対して4.0重量部であった。
実施例21で、(A)、(B)、(C)を含む接着処理剤を、以下の手順で得られるRFL接着剤に変更した以外は、実施例21と同じ手順にて処理、評価を行った。
レゾルシン/ホルマリンのモル比を1/1.5の割合で、苛性ソーダの存在下混合し、固形分濃度が10%となるように調整し、2時間熟成することで、レゾルシンとホルマリンの初期縮合物を得た。次にこの初期縮合物(RF)と、ゴムラテックス(VPラテックス(ピラテックス、日本エイアンドエル株式会社製)とPBラテックス(“ニッポール”LX-111A、日本ゼオン株式会社製)を固形分重量比1:1で混合したもの)を、RF/L=1/5(固形分重量比)の割合で混合し、24時間熟成した。この混合物を水で希釈し、固形分重量15%のRFL接着剤を得た。得られた自動車ホース補強用コードの接着剤固形分付着量は、プレコート剤が合成繊維100重量部に対して1.1重量部、RFL接着剤が、合成繊維100重量部に対して4.0重量部であった。
以上のようにして得られた自動車ホース補強用繊維コードの、ガーレーコード硬さ、加熱後ガーレーコード硬さ変化率、工程通過性を測定した。また、未加硫ゴムに埋め込み加硫を行った後、剥離接着力、エアーデフュージョン値をそれぞれ測定した。結果を表1~3に示す。
表1~3の結果のように、本発明による実施例の場合、接着処理剤にレゾルシンとホルマリンを含まず、従来例RFL対比環境負荷低減に有利であり、かつ、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム配合物(EPDM系ゴム)との接着性が良好であり、ディップ工程において樹脂凝固物発生を抑制でき、工程通過性が良好で、さらに柔軟でカシメ部の耐液漏れ性に優れることがわかる。
1 チャック
2 試験片
3 回転棒
4 目盛板
5 針
W1 荷重設定孔(軸より25.4mm(1インチ))
W2 荷重設定孔(軸より50.8mm(2インチ))
W3 荷重設定孔(軸より101.6mm(4インチ))
6 測定用の繊維コードサンプル
7 糸送り用のニップロール
8 荷重
9 梨地クロムメッキ加工管
10 糸送り用のニップロール
2 試験片
3 回転棒
4 目盛板
5 針
W1 荷重設定孔(軸より25.4mm(1インチ))
W2 荷重設定孔(軸より50.8mm(2インチ))
W3 荷重設定孔(軸より101.6mm(4インチ))
6 測定用の繊維コードサンプル
7 糸送り用のニップロール
8 荷重
9 梨地クロムメッキ加工管
10 糸送り用のニップロール
Claims (15)
- 合成繊維が、少なくともリグニン(A)とブロックドイソシアネート化合物(B)とゴムラテックス(C)が含まれてなる接着処理剤によって処理された自動車ホース補強用合成繊維コードであって、該接着処理剤に含まれる全固形分100重量%としたとき、リグニン(A)の含有量が5~50重量%であり、該接着処理剤の、リグニン(A)とブロックドイソシアネート化合物(B)の固形分重量比が、(Aの固形分):(Bの固形分)=10:1~10:20であり、前記ゴムラテックス(C)の固形分100重量部中、PBラテックスが20~100重量部であり、該接着処理剤の乾燥皮膜の最大点強度が0.2MPa~1.6MPa、最大点伸度が2%~120%であり、撚り係数80~800の片撚り構造を有することを特徴とする自動車ホース補強用合成繊維コード。
- 合成繊維が、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリビニルアルコール系繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種の繊維であることを特徴とする請求項1に記載のゴム補強用合成繊維コード。
- リグニン(A)の数平均分子量が10000~60000であり、重量平均分子量が80000~130000であることを特徴とする請求項1または2に記載の自動車ホース補強用合成繊維コード。
- 合成繊維が前記接着処理剤で処理される前に、プレコート剤で処理されることを特徴する自動車ホース補強用合成繊維コードであって、プレコート剤が、エポキシ化合物とブロックドイソシアネート化合物(固形分重量比10:0~10:30)を少なくとも含み、濃度が0.1~6%であることを特徴とする請求項1~3のいずれか記載の自動車ホース補強用合成繊維コード。
- ブロックドイソシアネート化合物(B)が、HDI系ブロックドイソシアネート、またはMDI系オキシムブロックドイソシアネートであることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の自動車ホース補強用合成繊維コード。
- 前記接着処理剤のマロン式機械安定性試験による凝固物の割合が4.0%以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の自動車ホース補強用合成繊維コード。
- 前記接着処理剤で、リグニン(A)とブロックドイソシアネート化合物(B)とゴムラテックス(C)の固形分重量比が、((Aの固形分)+(Bの固形分)):(Cの固形分)=10:90~60:40であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の自動車ホース補強用合成繊維コード。
- 合成繊維がポリエステル繊維であり、コードに付着した樹脂単位当たりのガーレーコード硬さが1~10mN/%以下、加熱後のガーレーコード硬さ変化率が100%~240%であることを特徴とする請求項1~7のいずれかに自動車ホース補強用合成繊維コード。
- 合成繊維がポリアミド繊維であり、コードに付着した樹脂単位当たりのガーレーコード硬さが1~10mN/%以下、加熱後のガーレーコード硬さ変化率が100%~240%であることを特徴とする請求項1~7のいずれかに自動車ホース補強用合成繊維コード。
- 請求項1~9のいずれかに記載の自動車ホース補強用合成繊維コードを含む自動車ホース。
- 撚り係数80~800の片撚り撚糸した合成繊維に、少なくともリグニン(A)とブロックドイソシアネート化合物(B)とゴムラテックス(C)が含まれ、かつ以下の特性を持つ接着処理剤を合成繊維に付着させ、熱処理することを特徴とするゴム補強用合成繊維コードの製造方法。
(a)接着処理剤に含まれる全固形分100重量部としたときリグニン(A)の含有量が5~50重量%
(b)リグニン(A)とブロックドイソシアネート化合物(B)の固形分重量比が、(Aの固形分):(Bの固形分)=10:1~10:20
(c)ゴムラテックス(C)の固形分100重量部中、PBラテックスが20~100重量部
(d)該接着処理剤を乾燥皮膜としたときの乾燥皮膜の最大点強度が0.2MPa~1.6MPa、かつ最大点伸度が2%~120% - リグニン(A)の数平均分子量が10,000~60,000、重量平均分子量が80,000~130,000であることを特徴とする請求項11に記載のゴム補強用合成繊維コードの製造方法。
- 合成繊維に前記接着処理剤を付着させ、熱処理する前に、プレコート剤を付着させ、熱処理する工程を有し、該プレコート剤が、エポキシ化合物とブロックドイソシアネート化合物(固形分重量比10:0~10:30)を少なくとも含み、濃度が0.1~6%であることを特徴とする請求項11または12に記載の自動車ホース補強用合成繊維コードの製造方法。
- 合成繊維がポリエステル繊維であり、前記接着処理剤を付着させた後、熱処理する工程でのホットストレッチ張力が0.3~2.5cN/dtexであり、かつノルマライジング張力が0.1~1.5cN/dtexであることを特徴とする請求項11~13のいずれかに記載の自動車ホース補強用合成繊維コードの製造方法。
- 合成繊維がポリアミド繊維であり、前記接着処理剤を付着させた後、熱処理する工程でのホットストレッチ張力が0.05~1cN/dtexであり、かつノルマライジング張力が0.05~1cN/dtexであることを特徴とする請求項11~13のいずれかに記載の自動車ホース補強用合成繊維コードの製造方法。
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WO2023095655A1 (ja) * | 2021-11-25 | 2023-06-01 | 東レ株式会社 | ゴム・繊維用接着処理剤およびそれを用いたゴム補強用合成繊維コード |
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2021
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WO2023095655A1 (ja) * | 2021-11-25 | 2023-06-01 | 東レ株式会社 | ゴム・繊維用接着処理剤およびそれを用いたゴム補強用合成繊維コード |
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