JP2023145391A - リチウムイオン電池、電子機器、および車両 - Google Patents

リチウムイオン電池、電子機器、および車両 Download PDF

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Kazuki Kuriki
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Shuhei Yoshitomi
安弘 神保
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Tetsuya Kakehata
舜平 山崎
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Abstract

【課題】低温環境下においても優れた充電特性及び放電特性を有するリチウムイオン電池を提供する。【解決手段】正極活物質と、電解質と、を備えたリチウムイオン電池であって、正極活物質は、コバルトと、酸素と、マグネシウムと、アルミニウムと、ニッケルと、を有し、電解質は、六フッ化リン酸リチウムと、エチレンカーボネートと、エチルメチルカーボネートと、ジメチルカーボネートと、を含み、電池は、20℃において第1の充電及び第1の放電をおこなうときの第1の放電容量に対して、-40℃において第2の充電及び第2の放電をおこなうときの第2の放電容量が70%以上であり、第1の放電及び第2の放電は、正極活物質の重量あたり20mA/gとする電流値での定電流放電である、リチウムイオン電池である。【選択図】図1

Description

本明細書等に開示する発明(以下、本明細書等において「本発明」と表記することがある。)は、蓄電装置、二次電池等に関する。特に、リチウムイオン電池に関する。
または、本発明は、物、方法、もしくは製造方法に関する。または、本発明は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、もしくは組成物(コンポジション・オブ・マター)に関する。または、本発明は、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、照明装置、電子機器、車両もしくはそれらの製造方法に関する。
近年、リチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタ、空気電池等、種々の蓄電装置の開発が盛んに行われている。特に、高出力、高エネルギー密度であるリチウムイオン電池は、携帯電話機、スマートフォン、もしくはノート型コンピュータ等の携帯情報端末、携帯音楽プレーヤ、デジタルカメラ、医療機器、又は、ハイブリッド車(HV)、電気自動車(EV)、もしくはプラグインハイブリッド車(PHV)等の電動車両など、半導体産業の発展と併せて急速にその需要が拡大し、繰り返し充電可能なエネルギーの供給源として現代の情報化社会に不可欠なものとなっている。
リチウムイオン電池は、電池の充電環境および/または電池の放電環境に依存して、充電特性および/または放電特性が変動する。例えば、リチウムイオン電池は、放電時の温度によって放電容量が変化することが知られている。
そのため、低温環境下であっても優れた電池特性を有するリチウムイオン電池が求められている(例えば、特許文献1参照)。
特開2015-026608
特許文献1に記載の非水溶媒を用いることにより、低温環境下(例えば、0℃以下)においても動作可能なリチウムイオン電池を実現できたことが特許文献1に記載されている。しかしながら、特許文献1に記載のリチウムイオン電池であっても、低温環境下で放電した際の放電容量は本出願時では大きいと言えず、さらなる改善が望まれている。
また、低温環境下においても動作可能なリチウムイオン電池を実現するためには、非水溶媒(電解質)だけでなく、低温環境下においても動作可能なリチウムイオン電池に適した正極及び負極の開発も求められている。より具体的には、正極の場合、低温環境下においても動作可能なリチウムイオン電池に適した正極活物質の開発が求められている。
本発明の一態様は、低温環境下においても優れた放電特性を有するリチウムイオン電池に適用可能な正極活物質の提供を課題の一とする。具体的には、低温環境下で放電しても放電容量および/または放電エネルギー密度の大きいリチウムイオン電池に適用可能な正極活物質の提供を課題の一とする。
なお、本明細書等において、「低温環境下」とは、0℃以下をいう。そして、本明細書等において「低温環境下」と記載する場合、0℃以下の任意の温度を選択することが可能である。例えば、0℃以下、-10℃以下、-20℃以下、-30℃以下、-40℃以下、-50℃以下、-60℃以下、-80℃以下、及び-100℃以下から選ばれた一を選択することが可能である。
または、本発明の一態様は、低温環境下においても優れた放電特性を有するリチウムイオン電池の提供を課題の一とする。または、低温環境下においても優れた充電特性を有するリチウムイオン電池の提供を課題の一とする。
具体的には、低温環境下(例えば、0℃以下、好ましくは-20℃以下、より好ましくは-30℃以下、さらに好ましくは-40℃以下、さらに好ましくは-50℃以下、最も好ましくは-60℃以下)で放電しても放電容量および/または放電エネルギー密度の大きいリチウムイオン電池の提供を課題の一とする。または、25℃で放電した場合の放電容量の値に対する、低温環境下(例えば、0℃以下、好ましく-20℃以下、より好ましくは-30℃以下、さらに好ましくは-40℃以下、さらに好ましくは-50℃以下、最も好ましくは-60℃以下)で放電した場合の放電容量の値の減少率が少ないリチウムイオン電池の提供を課題の一とする。または、25℃で放電した場合の放電エネルギー密度の値に対する、低温環境下(例えば、0℃以下、好ましくは-20℃以下、より好ましくは-30℃以下、さらに好ましくは-40℃以下、さらに好ましくは-50℃以下、最も好ましくは-60℃以下)で放電した場合の放電エネルギー密度の値の減少率が少ないリチウムイオン電池の提供を課題の一とする。
または、充電電圧の高い二次電池を提供することを課題の一とする。または、安全性もしくは信頼性の高い二次電池を提供することを課題の一とする。または、劣化が少ない二次電池を提供することを課題の一とする。または、長寿命の二次電池を提供することを課題の一とする。または、新規の二次電池を提供することを課題の一とする。
または、新規の物質、活物質、蓄電装置、もしくはそれらの作製方法を提供することを課題の一とする。
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。また、本発明の一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。また、本明細書、図面、請求項等の記載から、これら以外の課題を抽出することも可能である。
本発明の一態様は、正極活物質と、電解質と、を備えたリチウムイオン電池であって、正極活物質は、コバルトと、酸素と、マグネシウムと、アルミニウムと、ニッケルと、を有し、電解質は、六フッ化リン酸リチウムと、エチレンカーボネートと、エチルメチルカーボネートと、ジメチルカーボネートと、を含み、リチウムイオン電池は、20℃において第1の充電をおこなった後、20℃において第1の放電をおこなうときの第1の放電容量に対して、-40℃において第2の充電をおこなった後、-40℃において第2の放電をおこなうときの第2の放電容量が70%以上であり、第1の放電及び第2の放電は、正極活物質の重量あたり20mA/gの定電流放電である、リチウムイオン電池である。
上記に記載のリチウムイオン電池において、正極活物質は、マグネシウムと、アルミニウムと、を表層部に有し、表層部は正極活物質の表面から50nmまでの領域であり、正極活物質は、マグネシウムがアルミニウムより正極活物質の表面側に分布する領域を有することが好ましい。
上記のいずれか一に記載のリチウムイオン電池において、正極活物質は、空間群R-3mに属する層状岩塩型の結晶構造を有し、表層部は、結晶構造の(00l)面と平行な正極活物質の表面を有するベーサル領域と、(00l)面と交差する方向に露出する正極活物質の表面を有するエッジ領域と、を有し、エッジ領域は、ニッケルを有し、エッジ領域において、マグネシウムの分布と、ニッケルの分布とが重なる領域を有することが好ましい。
なお、ベーサル領域は、ニッケルを実質的に有さない場合がある。
上記のいずれか一に記載のリチウムイオン電池において、正極活物質は、メジアン径が1μm以上12μm以下であることが好ましい。
上記のいずれか一に記載のリチウムイオン電池において、電解質は、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びジメチルカーボネートの全含有量の体積を100vol%としたとき、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びジメチルカーボネートの体積比が、x:y:100-x-y(ただし、5≦x≦35であり、0<y<65である)であることが好ましい。
上記のいずれか一に記載のリチウムイオン電池において、電解質は、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びジメチルカーボネートの全含有量の体積に対して、0.5mol/L以上1.5mol/L以下の六フッ化リン酸リチウムを有することが好ましい。
また、本発明の一態様は、上記のいずれか一に記載のリチウムイオン電池を有する、電子機器である。
また、本発明の一態様は、上記のいずれか一に記載のリチウムイオン電池を有する、車両である。
本発明の一態様により、低温環境下においても優れた放電特性を有するリチウムイオン電池に適用可能な複合酸化物(正極活物質)を提供することができる。具体的には、低温環境下で放電しても放電容量および/または放電エネルギー密度の大きいリチウムイオン電池に適用可能な正極活物質を提供することができる。
または、本発明の一態様により、低温環境下(例えば、0℃以下、好ましくは-20℃以下、より好ましくは-30℃以下、さらに好ましくは-40℃以下、さらに好ましくは-50℃以下、最も好ましくは-60℃以下)で放電しても放電容量および/または放電エネルギー密度の大きいリチウムイオン電池を提供することができる。または、25℃で放電した場合の放電容量の値に対する、低温環境下(例えば、0℃以下、好ましくは-20℃以下、より好ましくは-30℃以下、さらに好ましくは-40℃以下、さらに好ましくは-50℃以下、最も好ましくは-60℃以下)で放電した場合の放電容量の値の減少率が少ないリチウムイオン電池を提供することができる。または、25℃で放電した場合の放電エネルギー密度の値に対する、低温環境下(例えば、0℃以下、好ましくは-20℃以下、より好ましくは-30℃以下、さらに好ましくは-40℃以下、さらに好ましくは-50℃以下、最も好ましくは-60℃以下)で放電した場合の放電エネルギー密度の値の減少率が少ないリチウムイオン電池を提供することができる。
または、本発明の一態様により、充電電圧の高い二次電池を提供することができる。または、安全性もしくは信頼性の高い二次電池を提供することができる。または、劣化が少ない二次電池を提供することができる。または、長寿命の二次電池を提供することができる。または、新規の二次電池を提供することができる。
または、本発明の一態様により、新規の物質、活物質、蓄電装置、またはそれらの作製方法を提供することができる。
図1(A)は、二次電池の内部構造を説明する断面図であり、図1(B)は二次電池の正極、及び電解質を説明する断面図である。 図2(A)及び図2(B)は、正極活物質を説明する断面図である。 図3(A)乃至図3(F)は、正極活物質を説明する断面図である。 図4(A)乃至図4(D)は、正極活物質の作製方法を説明する図である。 図5は、正極活物質の作製方法を説明する図である。 図6(A)乃至図6(C)は、正極活物質の作製方法を説明する図である。 図7(A)乃至図7(D)は、二次電池の正極の例を説明する断面図である。 図8(A)はコイン型二次電池の分解斜視図であり、図8(B)はコイン型二次電池の斜視図であり、図8(C)はその断面斜視図である。 図9(A)は、円筒型の二次電池の例を示す。図9(B)は、円筒型の二次電池の例を示す。図9(C)は、複数の円筒型の二次電池の例を示す。図9(D)は、複数の円筒型の二次電池を有する蓄電システムの例を示す。 図10(A)及び図10(B)は、二次電池の例を説明する図であり、図10(C)は、二次電池の内部の様子を示す図である。 図11(A)乃至図11(C)は、二次電池の例を説明する図である。 図12(A)、及び図12(B)は、二次電池の外観を示す図である。 図13(A)乃至図13(C)は、二次電池の作製方法を説明する図である。 図14(A)は、電池パックの構成例を示し、図14(B)は、電池パックの構成例を示し、図14(C)は、電池パックの構成例を示す。 図15(A)は、本発明の一態様を示す電池パックの斜視図であり、図15(B)は、電池パックのブロック図であり、図15(C)は、電池パックを有する車両のブロック図である。 図16(A)乃至図16(D)は、輸送用車両の一例を説明する図である。図16(E)は、人工衛星の一例を説明する図である。 図17(A)、及び図17(B)は、本発明の一態様に係る蓄電装置を説明する図である。 図18(A)は、電動自転車を示す図であり、図18(B)は、電動自転車の二次電池を示す図であり、図18(C)は、スクータを説明する図である。 図19(A)乃至図19(D)は、電子機器の一例を説明する図である。 図20(A)は、ウェアラブルデバイスの例を示しており、図20(B)は、腕時計型デバイスの斜視図を示しており、図20(C)は、腕時計型デバイスの側面を説明する図である。 図21は、実施例1で説明するコバルト酸リチウムの粒度分布を示すグラフである。 図22は、実施例3で説明する温度別放電容量測定の放電曲線を示すグラフである。 図23は、実施例3で説明する-40℃における放電レート別放電容量測定の結果を示すグラフである。
本発明の実施の形態について、図面を適宜用いながら説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更しうることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態において、同じ物を指し示す符号は異なる図面において共通とする。
また、以下に説明する実施の形態及び実施例それぞれにおいて、特に断りがない限り、本明細書等に記載されている実施形態及び実施例等を適宜組み合わせて実施することが可能である。
本明細書等において「電子機器」とは、蓄電装置を有する装置全般を指し、蓄電装置を有する電気光学装置、蓄電装置を有する情報端末装置などは全て電子機器である。
本明細書等において、「蓄電装置」とは、蓄電機能を有する素子及び装置全般を指すものである。例えば、リチウムイオン電池などの蓄電装置(「二次電池」ともいう)、リチウムイオンキャパシタ、及び電気二重層キャパシタなどを含む。
本明細書等において、空間群は国際表記(またはHermann-Mauguin記号)のShort notationを用いて表記する。また、ミラー指数を用いて結晶面及び結晶方向を表記する。結晶面を示す個別面は( )を用いて表記する。空間群、結晶面、および結晶方向の表記は、結晶学上、数字に上付きのバーを付すが、本明細書等では書式の制約上、数字の上にバーを付す代わりに、数字の前に-(マイナス符号)を付して表現する場合がある。また、結晶内の方向を示す個別方位は[ ]で、等価な方向全てを示す集合方位は< >で、結晶面を示す個別面は( )で、等価な対称性を有する集合面は{ }でそれぞれ表現する。また、空間群R-3mで表される三方晶は、構造の理解のしやすさのため、一般に六方晶の複合六方格子で表され、本明細書等も特に言及しない限り空間群R-3mは複合六方格子で表すこととする。またミラー指数として(hkl)だけでなく(hkil)を用いることがある。ここでiは-(h+k)である。
また1以上の任意の整数をh、k、i、lで示すことがある。たとえば(00l)は(001)、(003)および(006)を含む。
また結晶構造の空間群はXRD、電子線回折、中性子線回折等によって同定されるものである。そのため本明細書等において、ある空間群に帰属する、ある空間群に属する、またはある空間群であるとは、ある空間群に同定されると言い換えることができる。
本明細書等において、正極活物質の理論容量とは、正極活物質が有する挿入脱離可能なリチウムが全て脱離した場合の電気量をいう。例えば、LiCoOの理論容量は274mAh/g、LiNiOの理論容量は275mAh/g、LiMnの理論容量は148mAh/gである。
また、正極活物質中に挿入脱離可能なリチウムがどの程度残っているかを、組成式中のx、例えばLiCoO中のx(リチウムサイトのLiの占有率)で示すことが可能である。二次電池の有する正極活物質の場合、x=(理論容量-充電容量)/理論容量とすることができる。例えば、LiCoOを正極活物質に用いた二次電池を219.2mAh/g充電した場合、Li0.2CoOまたはx=0.2ということができる。LiCoO中のxが小さい状態とは、例えばx≦0.24であり、二次電池の正極活物質として用いる際の実用的な範囲を考慮すると、例えば0.1<x≦0.24であるものとする。
コバルト酸リチウムが化学量論比をおよそ満たす場合、LiCoOであり、x=1である。また、放電が終了した二次電池に含まれるコバルト酸リチウムも、LiCoOであり、x=1といってよい。また、一般的にLiCoOを用いたリチウムイオン電池では、放電電圧が2.5Vになるまでに放電電圧が急激に降下する。このため、本明細書等においては、例えば100mA/g以下の電流で、電圧が2.5V(対極はリチウム)となった状態を、放電が終了した状態と見なし、x=1と見なす。したがって、例えばx=0.2のときのコバルト酸リチウムとするためには、放電が終了した状態から219.2mAh/g充電すればよい。
LiCoO中のxの算出に用いる充電容量および/または放電容量は、短絡および/または電解質の分解の影響がないか、少ない条件で計測することが好ましい。例えば、短絡とみられる急激な電圧の変化が生じた二次電池のデータは、xの算出に使用するのは好ましくない。
また、陰イオンがABCABCのように3層が互いにずれて積み重なる構造であれば、「立方最密充填構造」と呼ぶこととする。そのため、陰イオンは厳密に立方格子でなくてもよい。同時に現実の結晶は必ず欠陥を有するため、分析結果が必ずしも理論通りでなくてもよい。例えば電子線回折パターンまたはTEM像等のFFT(高速フーリエ変換)パターンにおいて、理論上の位置と若干異なる位置にスポットが現れてもよい。例えば理論上の位置との方位が5°以下、または2.5°以下であれば立方最密充填構造を取るといってよい。
本明細書等において、「リチウムと遷移金属を含む複合酸化物が有する層状岩塩型の結晶構造」とは、陽イオンと陰イオンが交互に配列する岩塩型のイオン配列を有し、遷移金属とリチウムが規則配列して二次元平面を形成するため、リチウムの二次元的拡散が可能である結晶構造をいう。なお、陽イオンまたは陰イオンの欠損等の欠陥を有していてもよい。また、層状岩塩型結晶構造は、厳密に言えば、岩塩型結晶の格子が歪んだ構造となっている場合がある。
本明細書等において、「岩塩型の結晶構造」とは、陽イオンと陰イオンが交互に配列している構造をいう。なお、陽イオンまたは陰イオンの欠損があってもよい。
本明細書等において、「均質」とは、複数の元素(例えばA,B,C)からなる固体において、ある元素(例えばA)が特定の領域に同様の特徴を有して分布する現象をいう。具体的には、特定の領域同士の元素の濃度が実質的に同一であればよい。例えば、特定領域同士の元素濃度の差が10%以内であればよい。特定の領域としては、例えば表層部、表面、凸部、凹部、内部などが挙げられる。
本明細書等において、「偏析」とは、複数の元素(例えばA,B,C)からなる固体において、ある元素(例えばB)が空間的に不均一に分布する現象をいう。または、ある領域におけるある元素の濃度が、他の領域における濃度と異なることをいう。偏在、析出、不均一、偏り、または濃度が高い箇所と濃度が低い箇所が混在する、と同義である。
本明細書等において、活物質等の粒子の「表層部」とは、例えば、表面から内部に向かって50nm以内、より好ましくは35nm以内、さらに好ましくは20nm以内、最も好ましくは10nm以内の領域である。また、ひび又はクラックにより生じた面は、表面と見なすことができる。また、本明細書等において、表層部より深い領域を「内部」と呼ぶことがある。また、本明細書等において、「粒界」とは、例えば粒子同士が固着している部分、粒子内部(中央部を含む)で結晶方位が変わる部分、欠陥を多く含む部分、結晶構造が乱れている部分等をいう。また、粒界は、面欠陥の一つとも言える。また、「粒界の近傍」とは、粒界から20nm以内、好ましくは10nm以内の領域をいうこととする。また、本明細書等において、「粒子」とは、球形(断面形状が円)のみを指すことに限定されず、個々の粒子の断面形状が楕円形、長方形、台形、三角形、角が丸まった四角形、非対称の形状などが挙げられ、さらに個々の粒子は不定形であってもよい。
(実施の形態1)
本実施の形態では、低温環境下においても優れた充電特性及び放電特性を有するリチウムイオン電池について説明する。
[リチウムイオン電池]
本発明の一態様のリチウムイオン電池は、正極と、負極と、電解質と、を有する。また、電解質として電解液を用いる場合は、正極と負極との間にセパレータを有する。さらに、正極、負極、及び電解質の周囲の少なくとも一部を覆う外装体を有していてもよい。
本実施の形態では、低温環境下(例えば、0℃以下、好ましくは-20℃以下、より好ましくは-30℃以下、さらに好ましくは-40℃以下、さらに好ましくは-50℃以下、最も好ましくは-60℃以下)においても優れた放電特性を有するリチウムイオン電池、および/または低温環境下においても優れた充電特性を有するリチウムイオン電池を実現するために必要とされるリチウムイオン電池の構成に焦点を当てて説明する。具体的には、正極に含まれる正極活物質と、電解質を中心に説明する。リチウムイオン電池の有する正極活物質の作製方法は実施の形態2で説明し、本発明の一態様のリチウムイオン電池に関する残りの構成の詳細については、実施の形態3で説明する。
図1(A)は、リチウムイオン電池10の内部構造を説明する断面模式図である。リチウムイオン電池10は、正極11と、負極12と、セパレータ13と、を有する。正極11は、正極集電体21、及び正極集電体21上の正極活物質層22を有し、負極12は、負極集電体31、及び負極活物質層32を有する。図示する通り、正極活物質層22と、負極活物質層32と、はセパレータ13を挟んで対向する。また、図1(A)では図示していないが、正極活物質層22が有する空隙、セパレータ13が有する空隙、及び負極活物質層32が有する空隙に、電解質を有する。
なお、図1(A)において、1枚の正極11、1枚の負極12、及び1枚のセパレータ13を図示しているが、本発明の一態様のリチウムイオン電池は、この構造に限られない。2枚の正極11、2枚の負極12、及び2枚のセパレータ13を有する構造であってもよく、これ以上の枚数を積層してもよい。また、図1(A)に示す積層型の構造ではなく、捲回型の構造であってもよい。
図1(B)は、図1(A)において破線で囲んだ部分Aの、拡大図である。
正極活物質層22は、正極活物質100と、導電材41と、を有する。また、図示していないが、正極活物質100及び導電材41の他、バインダを有していてもよい。
また、正極活物質層22が有する空隙は、図示するように電解質51で満たされているとよい。例えば、正極活物質層22が有する空隙の60%以上が電解質51で満たされていることが好ましく、空隙の70%以上がより好ましく、空隙の80%以上がより好ましく、空隙の90%以上がより好ましく、空隙の95%以上がより好ましく、空隙の99%以上が最も好ましい。なお、正極活物質層22が有する空隙とは、正極活物質層22において、固体成分(正極活物質、導電材など)以外の領域のことをいう。
また、詳細な説明は省くが、上記の正極活物質層22の説明と同様に、負極活物質層32が有する空隙においても、電解質51で満たされているとよい。例えば、負極活物質層32が有する空隙の60%以上が電解質51で満たされていることが好ましく、空隙の70%以上がより好ましく、空隙の80%以上がより好ましく、空隙の90%以上がより好ましく、空隙の95%以上がより好ましく、空隙の99%以上が最も好ましい。なお、負極活物質層32が有する空隙とは、負極活物質層32において、固体成分(負極活物質、導電材など)以外の領域のことをいう。
このように、正極活物質層22及び負極活物質層32の隅々まで電解質51を満たすことによって、正極活物質及び負極活物質と、電解質と、が接する領域を広くすることができる。つまり、低温環境下での充電特性及び放電特性に優れるリチウムイオン電池とすることができる。
また、低温環境の充電においては、正極活物質からリチウムイオンを脱離する際のエネルギー障壁が高くなる傾向がある。つまり、充電環境の温度が低いほど、正極活物質からリチウムイオンを脱離するために要する過電圧が大きくなるといえる。つまり、正極活物質は、低温環境での充電において、高電圧(リチウム電位に対し高電位)に晒される恐れがある。別言すると、低温環境での充電において、正極活物質を高電圧に晒さない場合は、充電容量が低くなってしまう恐れがある。
そのため、低温環境下においても優れた充電特性及び放電特性を有するリチウムイオン電池が有する正極活物質として、高電圧に耐え、低温環境の充電において高い充電容量を得ることが可能な正極活物質を用いることが好ましい。
また、低温環境下においても優れた充電特性及び放電特性を有するリチウムイオン電池が有する電解質は、低温環境下(例えば、0℃、好ましくは-20℃、より好ましくは-30℃、さらに好ましくは-40℃、さらに好ましくは-50℃、最も好ましくは-60℃)における充電および/または放電(充放電)であってもリチウムイオン伝導性に優れた材料を用いることが好ましい。
低温環境下においても優れた充電特性及び放電特性を有するリチウムイオン電池として好ましい正極活物質、及び電解質について、以下で詳細に説明する。
[正極]
正極は、正極活物質層及び正極集電体を有する。正極活物質層は正極活物質を有し、さらに導電材及びバインダの少なくとも一を有していてもよい。
<正極活物質>
正極活物質は、充放電に伴い、リチウムイオンを取り込む機能、および放出する機能を有する。本発明の一態様として用いる正極活物質は、高い充電電圧(以下、「高充電電圧」とも記す)としても、低温環境下における充電および/または放電に伴う劣化の少ない材料(または抵抗の増加の少ない材料)を用いることができる。具体的には、実施の形態1で説明した作製方法によって得られた、粒径(厳密には、メジアン径(D50))が12μm以下(好ましくは10.5μm以下、より好ましくは8μm以下)の正極活物質(複合酸化物)を用いることができる。この正極活物質は、添加元素X、添加元素Y、及び添加元素Zの内の何れか一又は複数を含むものである。添加元素X、添加元素Y、及び添加元素Zについては<含有元素>において、詳細を説明する。
なお、正極活物質の粒径は、小さすぎると正極作製時の塗工がしづらくなることがある。または、正極活物質の粒径が小さすぎると表面積が大きくなりすぎてしまい、正極活物質表面と電解質との反応が過剰になるおそれがある。または、正極活物質の粒径が小さすぎると、粒子間の電導パスとしての役割を有する導電材を大量に混合する必要が生じ、容量の低下を招くおそれがある。このため、正極活物質の粒径(メジアン径(D50))は、1μm以上であることが好ましい。
粒径は、レーザ回折・散乱法を用いた粒度分布計等によって測定することができる。D50とは、粒度分布測定結果の積算粒子量曲線において、その積算量が50%を占めるときの粒子径である。粒子の大きさの測定は、レーザー回折式粒度分布測定に限定されず、SEMまたはTEMなどの分析によって、粒子断面の長径を測定してもよい。なお、SEMまたはTEMなどの分析からD50を測定する方法として例えば、20個以上の粒子を測定し、積算粒子量曲線を作成し、その積算量が50%を占めるときの粒子径をD50とすることができる。
なお、本明細書等において特に言及しない場合、「充電電圧」は電池の充電中に正極と負極との間にかかる電圧の最大値のことを指す。また、正極活物質の結晶構造に関する説明において「充電電圧」は、リチウム金属の電位を基準として表すものとする。また、本明細書等において、「高充電電圧」とは、例えば4.5V以上の充電電圧とし、好ましくは4.55V以上、さらに好ましくは4.6V以上、4.65V以上、または4.7V以上とする。なお、正極活物質は、高充電電圧としても充放電に伴う劣化の少ない材料であれば、粒径および/または組成が異なる2種類以上の材料を用いることも可能である。本明細書等において、「組成が異なる」とは、材料に含まれる元素の構成が異なる場合に加えて、材料に含まれる元素の構成が同じであっても、含まれる元素の割合が異なる場合も含むものとする。
また、前述したとおり、本明細書等において、「高充電電圧」とは、負極がリチウム金属である場合の電位を基準として4.6V以上としたが、負極が炭素材料(例えば、黒鉛)である場合の電位を基準とした場合は、4.5V以上を「高充電電圧」と呼ぶものとする。端的には、負極としてリチウム金属が用いられるハーフセルの場合においては、4.6V以上の充電電圧を高充電電圧と呼び、負極として炭素材料(例えば、黒鉛)が用いられるフルセルの場合においては、4.5V以上の充電電圧を高充電電圧と呼ぶものとする。
高い充電電圧としても、低温環境下(例えば、0℃、好ましくは-20℃、より好ましくは-30℃、さらに好ましくは-40℃、さらに好ましくは-50℃、最も好ましくは-60℃)における充放電に伴う劣化の少ない材料(または抵抗の増加の少ない材料)を正極活物質として用いることにより、低温環境下の温度においても放電容量が大きいリチウムイオン電池を実現できる。または、低温環境下(例えば、0℃、好ましくは-20℃、より好ましくは-30℃、さらに好ましくは-40℃、さらに好ましくは-50℃、最も好ましくは-60℃)における放電容量の値が、20℃における放電容量の値に比して50%以上(好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上)であるリチウムイオン電池を実現できる。なお、上記の数値は、充電及び放電の両方を低温環境下において行う場合の数値であり、低温環境下における充電及び放電と、20℃における充電及び放電は、温度(以下、本明細書等において「充放電温度」と呼ぶことがある。)以外の測定条件は同じものとする。
より具体的には、20℃において充電及び放電をおこなうときの放電容量に対して、0℃において充電及び放電を行うときの放電容量が、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがより好ましく、98%以上であることがより好ましい。また、20℃において充電及び放電をおこなうときの放電容量に対して、-10℃において充電及び放電を行うときの放電容量が、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがより好ましい。また、20℃において充電及び放電をおこなうときの放電容量に対して、-20℃において充電及び放電を行うときの放電容量が、75%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがより好ましい。また、20℃において充電及び放電をおこなうときの放電容量に対して、-30℃において充電及び放電を行うときの放電容量が、70%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることがより好ましい。また、20℃において充電及び放電をおこなうときの放電容量に対して、-40℃において充電及び放電を行うときの放電容量が、60%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましく、70%以上であることがより好ましく、75%以上であることがより好ましい。なお、上記放電の条件として例えば、0.1C(ただし、1C=200mA/gとする)の電流レートで放電をおこなうことができる。なお、上記のCレートの計算に用いる質量は、正極活物質の質量とする。
または、低温環境下(例えば、0℃、好ましくは-20℃、より好ましくは-30℃、さらに好ましくは-40℃、さらに好ましくは-50℃、最も好ましくは-60℃)においても、放電エネルギー密度が大きいリチウムイオン電池を実現できる。または、低温環境下(例えば、0℃、好ましくは-20℃、より好ましくは-30℃、さらに好ましくは-40℃、さらに好ましくは-50℃、最も好ましくは-60℃)における放電エネルギー密度の値が、20℃における放電エネルギー密度の値に比して50%以上(好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上)であるリチウムイオン電池を実現できる。なお、低温環境下における充電及び放電と、20℃における充電及び放電は、温度以外の測定条件は同じものとする。
本明細書等に記載した、充電時または放電時の温度とは、リチウムイオン電池の温度のことをいう。種々の温度での電池特性の測定においては、一例として所望の温度で安定した恒温槽を用い、測定対象の電池(例えば、試験用電池またはハーフセル)を当該恒温槽内に設置後、試験セルが恒温槽の温度と同程度になるまで十分な時間(例えば、1時間以上)をおいてから測定を開始することができるが、必ずしもこの方法に限定されるものではない。
高充電電圧での充電と、放電と、の繰り返しに伴う劣化の少ない正極活物質100について、図2及び図3を用いて説明する。
図2(A)及び図2(B)は本発明の一態様である正極活物質100の断面図である。図2(B)中のA-B付近を拡大した図を図3(A)乃至図3(C)に示す。また、図2(B)中のC-D付近を拡大した図を図3(D)乃至図3(F)に示す。
図2(A)に示すように、正極活物質100は、表層部100aと、内部100bを有する。これらの図中に破線で表層部100aと内部100bの境界を示す。
正極活物質100の表層部100aとは、例えば、表面から内部に向かって50nm以内、より好ましくは表面から内部に向かって35nm以内、さらに好ましくは表面から内部に向かって20nm以内、最も好ましくは表面から内部に向かって、表面から垂直または略垂直に10nm以内の領域をいう。なお略垂直とは、80°以上100°以下とする。ひびおよび/またはクラックにより生じた面も表面といってよい。表層部100aは、表面近傍、表面近傍領域またはシェルと同義である。
また正極活物質の表層部100aより深い領域を、内部100bと呼ぶ。内部100bは、内部領域またはコアと同義である。
また、正極活物質100が空間群R-3mの層状岩塩型の結晶構造を有する場合、図2(B)に示すように、表層部100aは、エッジ領域100a1と、ベーサル領域100a2と、を有する。なお、図2(A)及び図2(B)において、(00l)と付した直線は、(00l)面と平行な直線を表している。ここで、エッジ領域100a1は、(00l)面と交差する方向に露出する表面を有しており、当該表面から内部に向かって50nm以内、より好ましくは表面から内部に向かって35nm以内、さらに好ましくは表面から内部に向かって20nm以内、最も好ましくは表面から内部に向かって、表面から垂直または略垂直に10nm以内の領域をエッジ領域100a1と呼ぶ。なお、ここでいう交差する、とは、第1の面((00l)面)の垂線と、第2の面(正極活物質100の表面)の法線と、が成す角度が、10度以上90度以下、より好ましくは30度以上90度以下であることをいう。
また、ベーサル領域100a2は、(00l)面と平行な表面を有しており、当該表面から内部に向かって50nm以内、より好ましくは表面から内部に向かって35nm以内、さらに好ましくは表面から内部に向かって20nm以内、最も好ましくは表面から内部に向かって、表面から垂直または略垂直に10nm以内の領域をベーサル領域100a2と呼ぶ。なお、ここでいう平行とは、第1の面((00l)面)の垂線と、第2の面(正極活物質100の表面)の法線と、が成す角度が、0度以上5度以下、より好ましくは0度以上2.5度以下であることをいう。
正極活物質100の表面とは、上記表層部100aおよび内部100bを含む複合酸化物の表面をいうこととする。そのため正極活物質100は、酸化アルミニウム(Al)をはじめとする充放電に寄与しうるリチウムサイトを有さない金属酸化物が付着したもの、正極活物質の作製後に化学吸着した炭酸塩、ヒドロキシ基等は含まないとする。なお付着した金属酸化物とは、たとえば内部100bと結晶の配向が一致しない金属酸化物をいう。
二つの領域の結晶の配向が概略一致することは、TEM(Transmission Electron Microscope、透過電子顕微鏡)像、STEM(Scanning Transmission Electron Microscope、走査透過電子顕微鏡)像、HAADF-STEM(High-angle Annular Dark Field Scanning TEM、高角散乱環状暗視野走査透過電子顕微鏡)像、ABF-STEM(Annular Bright-Field Scanning Transmission Electron Microscope、環状明視野走査透過電子顕微鏡)像、電子線回折パターン等から判断することができる。またTEM像のFFTパターン、およびSTEM像等のFFTパターンによっても判断することができる。さらに、XRD(X-ray Diffraction、X線回折)、電子線回折、中性子線回折等も判断の材料にすることができる。
また正極活物質100に付着した電解質、電解質の分解物、有機溶剤、バインダ、導電材、またはこれら由来の化合物も正極活物質に含まないものとする。
正極活物質100はリチウムの挿入脱離が可能な遷移金属と酸素を有する化合物であるため、リチウムの挿入脱離に伴い酸化還元する遷移金属M(たとえばCo、Ni、Mn、Fe等)および酸素が存在する領域と、存在しない領域の界面を、正極活物質の表面とする。スリップ、ひびおよび/またはクラックにより生じた面も正極活物質の表面といってよい。正極活物質を分析に供する際、表面に保護膜を付ける場合があるが、保護膜は正極活物質には含まれない。保護膜としては、炭素、金属、酸化物、樹脂などの単層膜又は多層膜が用いられる場合がある。
そのためSTEM-EDX線分析等における正極活物質の表面とは、上記遷移金属Mが、内部の検出量の平均値MAVEと、バックグラウンドの平均値MBGとの和の50%になる点、および酸素の内部の検出量の平均値OAVEと、バックグラウンドの平均値OBGとの和の50%になる点とする。なお、上記遷移金属Mと酸素で、内部とバックグラウンドの和の50%の点が異なる場合は、表面に付着する酸素を含む金属酸化物、炭酸塩等の影響と考えられるため、上記遷移金属Mの内部の検出量の平均値MAVEと、バックグラウンドの平均値MBGとの和の50%の点を採用することができる。また遷移金属Mを複数有する正極活物質の場合、内部100bにおけるカウント数が最も多い元素のMAVEおよびMBGを用いて表面を求めることができる。
上記遷移金属Mのバックグラウンドの平均値MBGは、たとえば遷移金属Mの検出量が増加を始める近辺を避けて外側の2nm以上、好ましくは3nm以上の範囲を平均して求めることができる。また内部の検出量の平均値MAVEは、遷移金属Mおよび酸素のカウントが飽和し安定した領域、たとえば遷移金属Mの検出量が増加を始める領域から深さ30nm以上、好ましくは50nmを超える部分で、2nm以上、好ましくは3nm以上の範囲を平均して求めることができる。酸素のバックグラウンドの平均値OBGおよび酸素の内部の検出量の平均値OAVEも同様に求めることができる。
また断面STEM像等における正極活物質100の表面とは、正極活物質の結晶構造に由来する像が観察される領域と、観察されない領域の境界であって、リチウムより原子番号の大きな金属元素の原子核に由来する原子カラムが確認される領域の最も外側とする。またはSTEM像の、表面からバルクに向かった輝度のプロファイルに引いた接線と、深さ方向の軸の交点とする。STEM像等における表面は、より空間分解能の高い分析と併せて判断してもよい。
なお、STEM-EDXの空間分解能は1nm程度である。そのためEDX線分析を行ったとき、特性X線強度のグラフに現れる凸形状が、半値幅が1nm以下の幅の凸形状である場合は、当該凸形状は測定ノイズの可能性がある。
<含有元素>
正極活物質100は、リチウムと、コバルトと、酸素と、添加元素と、を有する。または正極活物質100はコバルト酸リチウム(LiCoO)に添加元素が加えられたものを有することができる。ただし本発明の一態様の正極活物質100は後述する結晶構造を有すればよい。そのためコバルト酸リチウムの組成が厳密にLi:Co:O=1:1:2に限定されるものではない。
リチウムイオン二次電池の正極活物質は、リチウムイオンが挿入脱離しても電荷中性を保つために、酸化還元が可能な遷移金属を有する必要がある。本発明の一態様の正極活物質100は酸化還元反応を担う遷移金属として主にコバルトを用いることが好ましい。コバルトに加えて、ニッケルおよびマンガンから選ばれる少なくとも一以上を用いてもよい。正極活物質100が有する遷移金属のうち、コバルトが75原子%以上、好ましくは90原子%以上、さらに好ましくは95原子%以上であると、合成が比較的容易で取り扱いやすく優れたサイクル特性を有するなど利点が多く好ましい。
また正極活物質100の遷移金属のうちコバルトが75原子%以上、好ましくは90原子%以上、さらに好ましくは95原子%以上であると、ニッケル酸リチウム(LiNiO)等のニッケルが遷移金属の過半を占めるような複合酸化物と比較して、LiCoO中のxが小さいときの安定性がより優れる。これはニッケルよりもコバルトの方が、ヤーン・テラー効果による歪みの影響が小さいためと考えられる。遷移金属化合物におけるヤーン・テラー効果は、遷移金属のd軌道の電子の数により、その効果の強さが異なる。ニッケル酸リチウム等の8面体配位の低スピンニッケル(III)が遷移金属の過半を占めるような層状岩塩型の複合酸化物は、ヤーン・テラー効果の影響が大きく、ニッケルと酸素の8面体からなる層に歪みが生じやすい。そのため充放電サイクルにおいて結晶構造の崩れが生じる懸念が高まる。またニッケルイオンはコバルトイオンと比較して大きく、リチウムイオンの大きさに近い。そのためニッケル酸リチウムのようにニッケルが遷移金属の過半を占めるような層状岩塩型の複合酸化物ではニッケルとリチウムのカチオンミキシングが生じやすいという課題がある。
正極活物質100が有する添加元素としては、マグネシウム、フッ素、ニッケル、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、鉄、マンガン、クロム、ニオブ、ヒ素、亜鉛、ケイ素、硫黄、リン、ホウ素、バリウム、臭素、及びベリリウムから選ばれた一または二以上を用いることが好ましい。また添加元素のうち遷移金属の和は、25原子%未満が好ましく、10原子%未満がより好ましく、5原子%未満がさらに好ましい。
つまり正極活物質100は、マグネシウムを有するコバルト酸リチウム、マグネシウムおよびアルミニウムを有するコバルト酸リチウム、マグネシウム、アルミニウム、及びチタンを有するコバルト酸リチウム、マグネシウム、及びニッケルを有するコバルト酸リチウム、マグネシウム、アルミニウム、及びニッケルを有するコバルト酸リチウム、マグネシウムおよびフッ素を有するコバルト酸リチウム、マグネシウム、フッ素およびチタンを有するコバルト酸リチウム、マグネシウム、フッ素およびアルミニウムを有するコバルト酸リチウム、マグネシウム、フッ素、チタン、およびアルミニウムを有するコバルト酸リチウム、マグネシウム、フッ素およびニッケルを有するコバルト酸リチウム、マグネシウム、フッ素、ニッケルおよびアルミニウムを有するコバルト酸リチウム、等の内の何れか一又は複数を用いることができる。
また、正極活物質100として、コバルトと、酸素と、マグネシウムと、を有する正極活物質、コバルトと、酸素と、マグネシウムと、アルミニウムと、を有する正極活物質、コバルトと、酸素と、マグネシウムと、アルミニウムと、チタンと、を有する正極活物質、コバルトと、酸素と、マグネシウムと、ニッケルと、を有する正極活物質、コバルトと、酸素と、マグネシウムと、アルミニウムと、ニッケルと、を有する正極活物質、コバルトと、酸素と、マグネシウムと、フッ素と、を有する正極活物質、コバルトと、酸素と、マグネシウムと、フッ素と、チタンと、を有する正極活物質、コバルトと、酸素と、マグネシウムと、フッ素と、アルミニウムと、を有する正極活物質、コバルトと、酸素と、マグネシウムと、フッ素と、チタンと、アルミニウムと、を有する正極活物質、コバルトと、酸素と、マグネシウムと、フッ素と、ニッケルと、を有する正極活物質、コバルトと、酸素と、マグネシウムと、フッ素と、ニッケルと、アルミニウムと、を有する正極活物質、等の内の何れか一又は複数を、リチウムイオン電池に用いることができる、ともいえる。
添加元素は、正極活物質100に固溶していることが好ましい。例えば、STEM-EDXの線分析を行った際に、添加元素が検出される量が増加する深さは、遷移金属Mが検出される量が増加する深さよりも、深い位置すなわち正極活物質100の内部側に位置していることが好ましい。
これらの添加元素が、後述するように正極活物質100が有する結晶構造をより安定化させる。なお本明細書等において添加元素は混合物、原料の一部と同義である。
なお添加元素として、必ずしもマグネシウム、フッ素、ニッケル、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、鉄、マンガン、クロム、ニオブ、ヒ素、亜鉛、ケイ素、硫黄、リン、ホウ素、バリウム、臭素、またはベリリウムを含まなくてもよい。
たとえばマンガンを実質的に含まない正極活物質100とすると、合成が比較的容易で取り扱いやすく、優れたサイクル特性を有するといった上記の利点がより大きくなる。正極活物質100に含まれるマンガンの重量はたとえば600ppm以下、より好ましくは100ppm以下であることが好ましい。
表層部100aは充電時にリチウムイオンが最初に脱離する領域であり、内部100bよりもリチウム濃度が低くなりやすい領域である。また表層部100aが有する正極活物質100の粒子の表面の原子は、一部の結合が切断された状態ともいえる。そのため表層部100aは不安定になりやすく、結晶構造の劣化が始まりやすい領域といえる。一方で表層部100aを十分に安定にできれば、LiCoO中のxが小さいときでも、たとえばxが0.24以下でも内部100bのコバルトと酸素の8面体からなる層状構造を壊れにくくすることができる。さらには、内部100bのコバルトと酸素の8面体からなる層のずれを抑制することができる。
表層部100aを安定な組成および結晶構造とするために、表層部100aは添加元素を有することが好ましく、添加元素を複数有することがより好ましい。また表層部100aは内部100bよりも添加元素から選ばれた一または二以上の濃度が高いことが好ましい。また正極活物質100が有する添加元素から選ばれた一または二以上は濃度勾配を有していることが好ましい。また正極活物質100は添加元素によって分布が異なっていることがより好ましい。たとえば添加元素によって濃度ピークの表面からの深さが異なっていることがより好ましい。ここでいう濃度ピークとは、表層部100aまたは表面から50nm以下における濃度の極大値をいうこととする。
添加元素の分布について説明する。図3(A)乃至図3(C)は、図2(B)中のA-B付近を拡大した図であり、正極活物質100のエッジ領域100a1を説明する図である。また、図3(D)乃至図3(F)は、図2(B)中のC-D付近を拡大した図であり、正極活物質100のベーサル領域100a2を説明する図である。
たとえば添加元素の一部、マグネシウム、フッ素、チタン、ケイ素、リン、ホウ素、カルシウム等は図3(A)及び図3(D)にグラデーションで示すように、内部100bから表面に向かって高くなる濃度勾配を有することが好ましい。このような濃度勾配を有する添加元素を添加元素Xと呼ぶこととする。
別の添加元素、たとえばアルミニウム、マンガン等は図3(B)及び図3(E)にハッチの濃さで示すように、濃度勾配を有しかつ図3(A)及び図3(D)に示した添加元素Xの濃度のピークよりも深い領域に濃度のピークを有することが好ましい。濃度のピークは表層部100aに存在してもよいし、表層部100aより深くてもよい。たとえば表面から内部に向かって5nm以上30nm以下の領域にピークを有することが好ましい。このような濃度勾配を有する添加元素を添加元素Yと呼ぶこととする。
別の添加元素、たとえばニッケル、バリウム等は、図3(C)及び図3(F)にハッチの有無、及びハッチの濃さで示すように、エッジ領域100a1には明瞭に存在するものの、ベーサル領域100a2には、実質的に有さない場合がある。なお、ここで明瞭に存在する、とは、正極活物質100の断面STEM-EDXにおける分析において、当該元素の特性X線エネルギースペクトルが検出される場合をいう。
また、実質的に有さない、とは、正極活物質100の断面STEM-EDXにおける分析において、当該元素の特性X線エネルギースペクトルが検出されない場合をいう。この場合、STEM-EDXにおける分析において、当該元素が検出下限以下である、ともいう。このような分布を有する添加元素を添加元素Zと呼ぶこととする。
たとえば添加元素Xの一つであるマグネシウムは2価で、マグネシウムイオンは層状岩塩型の結晶構造におけるコバルトサイトよりもリチウムサイトに存在する方が安定であるため、リチウムサイトに入りやすい。マグネシウムが表層部100aのリチウムサイトに適切な濃度で存在することで、層状岩塩型の結晶構造を保持しやすくできる。これはリチウムサイトに存在するマグネシウムが、CoO層同士を支える柱として機能するためと推測される。またマグネシウムが存在することで、LiCoO中のxがたとえば0.24以下の状態においてマグネシウムの周囲の酸素の脱離を抑制することができる。またマグネシウムが存在することで正極活物質100の密度が高くなることが期待できる。また表層部100aのマグネシウム濃度が高いと、電解液が分解して生じたフッ酸に対する耐食性が向上することも期待できる。
マグネシウムは、適切な濃度であれば充放電に伴うリチウムの挿入および脱離に悪影響を及ぼさず上記のメリットを享受できる。しかしマグネシウムが過剰であるとリチウムの挿入および脱離に悪影響が出る恐れがある。さらに結晶構造の安定化への効果が小さくなってしまう場合がある。これはマグネシウムが、リチウムサイトに加えてコバルトサイトにも入るようになるためと考えられる。加えて、リチウムサイトにもコバルトサイトにも置換しない、余剰なマグネシウム化合物(酸化物又はフッ化物等)が正極活物質の表面等に偏析し、二次電池の抵抗成分となる恐れがある。また正極活物質のマグネシウム濃度が高くなるのに伴って正極活物質の放電容量が減少することがある。これはリチウムサイトにマグネシウムが入りすぎ、充放電に寄与するリチウム量が減少するためと考えられる。
そのため、正極活物質100全体が有するマグネシウムが適切な量であることが好ましい。たとえばマグネシウムの原子数はコバルトの原子数の0.001倍以上0.1倍以下が好ましく、0.01倍より大きく0.04倍未満がより好ましく、0.02倍程度がさらに好ましい。ここでいう正極活物質100全体が有するマグネシウムの量とは、例えばGD-MS、ICP-MS等を用いて正極活物質100の全体の元素分析を行った値であってもよいし、正極活物質100の作製の過程における原料の配合の値に基づいたものであってもよい。
また添加元素Yの一つであるアルミニウムは層状岩塩型の結晶構造におけるコバルトサイトに存在しうる。アルミニウムは3価の典型元素であり価数が変化しないため、充放電の際もアルミニウム周辺のリチウムは移動しにくい。そのためアルミニウムとその周辺のリチウムが柱として機能し、結晶構造の変化を抑制しうる。またアルミニウムは周囲のコバルトの溶出を抑制し、連続充電耐性を向上する効果がある。またAl-Oの結合はCo-O結合よりも強いため、アルミニウムの周囲の酸素の脱離を抑制することができる。これらの効果により、熱安定性が向上する。そのため添加元素としてアルミニウムを有すると、二次電池に正極活物質100を用いたときの安全性を向上できる。また充放電を繰り返しても結晶構造が崩れにくい正極活物質100とすることができる。
一方でアルミニウムが過剰であるとリチウムの挿入および脱離に悪影響が出る恐れがある。
そのため正極活物質100全体が有するアルミニウムが適切な量であることが好ましい。たとえば正極活物質100の全体が有するアルミニウムの原子数は、コバルトの原子数の0.05%以上4%以下が好ましく、0.1%以上2%以下が好ましく、0.3%以上1.5%以下がより好ましい。または0.05%以上2%以下が好ましい。または0.1%以上4%以下が好ましい。ここでいう正極活物質100全体が有する量とはたとえば、GD-MS、ICP-MS等を用いて正極活物質100の全体の元素分析を行った値であってもよいし、正極活物質100の作製の過程における原料の配合の値に基づいてもよい。
また添加元素Zの一つであるニッケルは、コバルトサイトとリチウムサイトのどちらにも存在しうる。コバルトサイトに存在する場合、コバルトと比較して酸化還元電位が低くなるため放電容量増加につながり好ましい。
またニッケルがリチウムサイトに存在する場合、コバルトと酸素の8面体からなる層状構造のずれが抑制されうる。また充放電に伴う体積の変化が抑制される。また弾性係数が大きくなる、つまり硬くなる。これはリチウムサイトに存在するニッケルも、CoO層同士を支える柱として機能するためと推測される。そのため特に高温、たとえば45℃以上での充電状態において結晶構造がより安定になることが期待でき好ましい。
一方でニッケルが過剰であるとヤーン・テラー効果による歪みの影響が強まり好ましくない。またニッケルが過剰であるとリチウムの挿入および脱離に悪影響が出る恐れがある。
そのため正極活物質100全体が有するニッケルが適切な量であることが好ましい。たとえば正極活物質100が有するニッケルの原子数は、コバルトの原子数の0%を超えて7.5%以下が好ましく、0.05%以上4%以下が好ましく、0.1%以上2%以下が好ましく、0.2%以上1%以下がより好ましい。または0%を超えて4%以下が好ましい。または0%を超えて2%以下が好ましい。または0.05%以上7.5%以下が好ましい。または0.05%以上2%以下が好ましい。または0.1%以上7.5%以下が好ましい。または0.1%以上4%以下が好ましい。ここで示すニッケルの量は例えば、GD-MS、ICP-MS等を用いて正極活物質の全体の元素分析を行った値であってもよいし、正極活物質の作製の過程における原料の配合の値に基づいてもよい。
また添加元素Xの一つであるフッ素は1価の陰イオンであり、表層部100aにおいて酸素の一部がフッ素に置換されていると、リチウム脱離エネルギーが小さくなる。これは、リチウム脱離に伴うコバルトイオンの価数の変化が、フッ素を有さない場合は3価から4価、フッ素を有する場合は2価から3価となり、酸化還元電位が異なることによる。そのため正極活物質100の表層部100aにおいて酸素の一部がフッ素に置換されていると、フッ素近傍のリチウムイオンの脱離および挿入がスムースに起きやすいと言える。そのため正極活物質100を二次電池に用いたときに充放電特性、大電流特性等を向上させることができる。また電解液に接する部分である表面を有する表層部100aにフッ素が存在することで、フッ酸に対する耐食性を効果的に向上させることができる。また後の実施の形態で述べるが、フッ化リチウムをはじめとするフッ化物の融点が、他の添加元素源の融点より低い場合、その他の添加元素源の融点を下げる融剤(フラックス剤ともいう)として機能しうる。
また添加元素Xの一つであるチタンの酸化物は超親水性を有することが知られている。そのため、表層部100aにチタン酸化物を有する正極活物質100とすることで、極性の高い溶媒に対して濡れ性がよくなる可能性がある。二次電池としたときに正極活物質100と、極性の高い電解液との界面の接触が良好となり、内部抵抗の上昇を抑制できる可能性がある。
さらに、図3(A)及び図3(C)に示すように、表層部100aにマグネシウムとニッケルを併せて有する場合、2価のマグネシウムの近くでは2価のニッケルがより安定に存在できる可能性がある。そのためLiCoO中のxが小さい状態でもマグネシウムの溶出が抑制されうる。そのため表層部100aの安定化に寄与しうる。
また添加元素X、添加元素Y、及び添加元素Zのように分布が異なる添加元素を併せて有すると、より広い領域の結晶構造を安定化でき好ましい。たとえば正極活物質100は添加元素Xの一であるマグネシウム、添加元素Yの一であるアルミニウムと、添加元素Zの一であるニッケルと、を共に有すると、添加元素X、添加元素Y、及び添加元素Zの何れか一又は二しか有さない場合よりも広い領域の結晶構造を安定化できる。このように正極活物質100が添加元素X、添加元素Y、及び添加元素Zを併せて有する場合は、表面の安定化はマグネシウム等の添加元素X、ニッケル等の添加元素Zによって十分に果たせるため、アルミニウムなどの添加元素Yは表面に必須ではない。むしろアルミニウムは、マグネシウム及びニッケルの分布より深い領域に広く分布することが好ましい。たとえば表面から深さ方向1nm以上25nm以下の領域では連続的にアルミニウムが検出されることが好ましい。表面から0nm以上50nm以下の領域、好ましくは表面から1nm以上50nm以内の領域に広く分布する方が、より広い領域の結晶構造を安定化でき好ましい。
また、添加元素Zが、図3(C)及び図3(F)で示した様に、エッジ領域100a1に多く含まれる(優先的に含まれる、選択的に含まれる、などともいう)場合、リチウムイオン電池の充電及び放電おいてリチウムイオンが正極活物質100から出入りするエッジ領域100a1の結晶構造の安定性が向上するため、好ましい。また、添加元素Zが上記のような分布を有する場合、例えば正極活物質100がコバルト酸リチウムであるとき、添加元素Zを加えることによる放電電圧の低下、または放電容量の低下などの影響を、最小限にとどめることができるため、好ましい。
上記のように複数の添加元素を有すると、それぞれの添加元素の効果が相乗し表層部100aのさらなる安定化に寄与しうる。特にマグネシウム、ニッケルおよびアルミニウムを有すると安定な組成および結晶構造とする効果が高く好ましい。なかでも、正極活物質100の表層部100aは、マグネシウムがアルミニウムよりも表面側に分布する領域を有することが好ましい。また、正極活物質100の表層部100aのうち、エッジ領域100a1は、上記のマグネシウムとアルミニウムの分布する領域を有するだけでなく、ニッケルの分布とマグネシウム分布と、が重なる領域を有することが、最も好ましい。マグネシウムがアルミニウムよりも表面側に分布する領域を有する、とは例えば、STEM-EDXによる線分析において、マグネシウムの濃度が極大値を示す位置が、アルミニウムの濃度が極大値を示す位置よりも表面側であることをいう。
<電解質>
本発明の一態様として用いる電解質は、低温環境下(例えば、0℃、好ましくは-20℃、より好ましくは-30℃、さらに好ましくは-40℃、さらに好ましくは-50℃、最も好ましくは-60℃)における充電および/または放電(充放電)であってもリチウムイオン伝導性に優れた材料を用いることができる。
電解質の一例について、以下に説明する。なお、一例として本実施の形態で説明する電解質は、有機溶媒にリチウム塩が溶解されたものであり、電解液と呼ぶこともできるが、電解質は、常温で液体である液体電解質(電解液)に限定されず、固体電解質を用いることも可能である。または、常温で液体である液体電解質と、常温で固体である固体電解質の双方を含む電解質(半固体の電解質)を用いることも可能である。
一例として本実施の形態で説明する有機溶媒は、エチレンカーボネート(EC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)と、ジメチルカーボネート(DMC)と、を含み、EC、EMC、及びDMCの全含有量を100vol%としたとき、EC、EMC、及びDMCの体積比が、x:y:100-x-y(ただし、5≦x≦35であり、0<y<65である。)であるものを用いることができる。より具体的には、ECと、EMCと、DMCと、を、EC:EMC:DMC=30:35:35(体積比)で含んだ有機溶媒を用いることができる。なお、上記の体積比は、有機溶媒の混合前における体積比であってもよく、有機溶媒を混合する際の外気は室温(代表的には、25℃)であってもよい。
ECは、環状カーボネートであり、高い比誘電率を有するため、リチウム塩の解離を促進させる効果を有する。一方で、ECは、粘度が高く、凝固点(融点)が38℃と高いので、有機溶媒としてEC単体を用いた場合、低温環境下での使用が難しい。そこで、本発明の一態様として具体的に説明する有機溶媒は、EC単体ではなく、EMCとDMCを更に含む。EMCは、鎖状カーボネートであり、電解液の粘度を下げる効果を有する上に、凝固点が-54℃である。また、DMCも、鎖状カーボネートであり、電解液の粘度を下げる効果を有する上に、凝固点が-43℃である。このような物性を有するEC、EMC、及びDMCを、これら3つの有機溶媒の全含有量を100vol%として、体積比が、x:y:100-x-y(ただし、5≦x≦35であり、0<y<65である。)となるように混合した有機溶媒を用いて作製された電解質は、凝固点が-40℃以下という特徴を有する。
リチウムイオン電池に用いられている一般的な電解質は、-20℃程度で凝固してしまうため、-40℃で充放電できる電池を作製することは困難である。本実施の形態において一例として説明した電解質は、凝固点が-40℃以下であるため、-40℃という極低温環境下においても充放電可能なリチウムイオン電池を実現できる。
また、上記の溶媒に溶解させる電解質は、リチウム塩を用いることが可能である。例えば、LiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiAlCl、LiSCN、LiBr、LiI、LiSO、Li10Cl10、Li12Cl12、LiCFSO、LiCSO、LiC(CFSO、LiC(CSO、LiN(CFSO、LiN(CSO)(CFSO)、LiN(CSO、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)のうち一種のリチウム塩、またはこれらのうちの二種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることが可能である。上記の溶媒に溶解させる電解質は、上記溶媒の体積に対して、0.5mol/L以上1.5mol/L以下であるとよく、0.7mol/L以上1.3mol/L以下であることが好ましく、0.8mol/L以上1.2mol/L以下であることがより好ましい。具体的な使用例としては、上記溶媒の体積に対してLiPFを、0.5mol/L以上1.5mol/L以下であるとよく、0.7mol/L以上1.3mol/L以下であることが好ましく、0.8mol/L以上1.2mol/L以下であることがより好ましい。
また、電解液は、粒状のごみ、または電解液の構成元素以外の元素(以下、単に「不純物」ともいう。)の含有量が少なく、高純度化されていることが好ましい。具体的には、電解液に対する不純物の重量比を1%以下、好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.01%以下とすることが好ましい。
また、安全性向上等を目的として、電極(活物質層)と電解液との界面に被膜(Solid Electrolyte Interphase Film)を形成するため、電解液に対し、ビニレンカーボネート(VC)、プロパンスルトン(PS)、tert-ブチルベンゼン(TBB)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)、またはスクシノニトリルもしくはアジポニトリルのジニトリル化合物の添加剤を添加してもよい。添加剤の濃度は、例えば溶媒に対して0.1wt%以上5wt%以下とすればよい。
以上のとおり、本発明の一態様のリチウムイオン電池に用いることが可能な電解質の一例について説明したが、本発明の一態様のリチウムイオン電池に用いることが可能な電解質は、この一例に限定解釈されるものではない。低温環境下における充放電であってもリチウムイオン伝導性に優れた材料であれば、他の材料を用いることも可能である。
本発明の一態様のリチウムイオン電池は、上述した正極活物質と電解質を少なくとも含むことにより、低温環境下においても優れた放電特性を有するリチウムイオン電池、および/または低温環境下においても優れた充電特性を有するリチウムイオン電池を実現することができる。より具体的には、上述した正極活物質と電解質を少なくとも含み、リチウム金属を負極として用いて試験用電池とした際に、試験用電池を20℃において充電及び放電をおこなうときの放電容量に対して、-40℃において充電及び放電を行うときの放電容量が、70%以上であるリチウムイオン電池を実現することができる。なお、上記放電の条件として例えば、0.1C(ただし、1C=200mA/gとする)の電流レートで放電をおこなうことができる。本明細書等において、20℃環境下における放電容量と比較して、T℃(Tは任意の温度(℃)とする。)における放電容量が50%以上を実現できる場合、そのリチウムイオン電池はT℃で動作可能であると表現することとする。
本実施の形態の内容は、他の実施の形態の内容と自由に組み合わせることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、図4乃至図6を用いて、低温環境下においても優れた放電特性を有するリチウムイオン電池に適用可能な正極活物質の作製方法を説明する。
<正極活物質の作製方法の例1>
図4(A)乃至図4(D)を用いて、本発明の一態様として利用可能な正極活物質の作製方法の一例(正極活物質の作製方法の例1)について説明する。なお、<正極活物質の作製方法の例1>では、実施の形態1において添加元素X、添加元素Y、及び添加元素Zとして説明した添加元素をまとめて添加元素Aと呼ぶ。
最初に、ステップS10として、出発材料となるコバルト酸リチウムを準備する。出発材料となるコバルト酸リチウムは、粒径(厳密には、メジアン径(D50))が10μm以下(好ましくは8μm以下)のものを用いることができる。メジアン径(D50)が10μm以下のコバルト酸リチウムは、公知または公用(端的には、市販)のコバルト酸リチウムを用いてもよいし、図4(B)に示すステップS11-ステップS14を経て作製したコバルト酸リチウムを用いてもよい。メジアン径(D50)が10μm以下である市販のコバルト酸リチウムの代表例としては、日本化学工業株式会社製のコバルト酸リチウム(商品名「C-5H」)が挙げられる。C-5Hは、メジアン径(D50)が約7μmである。また、ステップS11-ステップS14を経て、メジアン径(D50)が10μm以下のコバルト酸リチウムを得るための作製方法を以下に説明する。
<ステップS11>
図4(B)に示すステップS11では、出発材料であるリチウム及び遷移金属の材料として、それぞれリチウム源(Li源)及びコバルト源(Co源)を準備する。
リチウム源としては、リチウムを有する化合物を用いると好ましく、例えば炭酸リチウム、水酸化リチウム、硝酸リチウム、又はフッ化リチウム等を用いることができる。リチウム源は純度が高いと好ましく、例えば純度が99.99%以上の材料を用いるとよい。
コバルト源としては、コバルトを有する化合物を用いると好ましく、例えば四酸化三コバルト等の酸化コバルト、水酸化コバルト等を用いることができる。コバルト源は純度が高いと好ましく、例えば純度が3N(99.9%)以上、好ましくは4N(99.99%)以上、より好ましくは4N5(99.995%)以上、さらに好ましくは5N(99.999%)以上の材料を用いるとよい。高純度の材料を用いることで、正極活物質の不純物を制御することができる。その結果、二次電池の容量が高まり、二次電池の信頼性が向上する。
加えて、コバルト源は結晶性が高いと好ましく、例えば単結晶粒を有するとよい。コバルト源の結晶性の評価としては、TEM像、STEM(走査透過電子顕微鏡)像、HAADF-STEM像、ABF-STEM像等による評価、またはXRD、電子線回折、中性子線回折等の評価がある。なお、上記の結晶性の評価に関する手法は、コバルト源だけではなく、その他の結晶性の評価にも適用することができる。
<ステップS12>
次に、図4(B)に示すステップS12として、リチウム源及びコバルト源を粉砕及び混合して、混合材料を作製する。粉砕及び混合は、乾式または湿式で行うことができる。湿式での粉砕及び混合は、より小さく解砕することができるため、出発材料としてメジアン径(D50)が10μm以下のコバルト酸リチウムを得るためには好ましい。なお、湿式で行う場合は、溶媒を準備する。溶媒として、アセトン等のケトン、エタノール及びイソプロパノール等のアルコール、エーテル、ジオキサン、アセトニトリル、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等を用いることができるが、リチウムと反応が起こりにくい、非プロトン性溶媒を用いることが好ましい。本実施の形態では、純度が99.5%以上の脱水アセトンを用いることとする。水分含有量を10ppm以下まで抑えた、純度が99.5%以上の脱水アセトンにリチウム源及びコバルト源を混合して、粉砕及び混合を行うと好適である。上記のような純度の脱水アセトンを用いることで、混入しうる不純物を低減できる。
粉砕及び混合等の手段には、ボールミルまたはビーズミル等を用いることができる。ボールミルを用いる場合は、粉砕メディアとして酸化アルミニウムボール又は酸化ジルコニウムボールを用いるとよい。酸化ジルコニウムボールは、不純物の排出が少なく好ましい。また、ボールミルまたはビーズミル等を用いる場合、メディアからのコンタミネーションを抑制するために、周速を100mm/s以上2000mm/s以下とするとよい。
<ステップS13>
次に、図4(B)に示すステップS13として、上記の混合材料を加熱する。加熱は、800℃以上1100℃以下で行うことが好ましく、900℃以上1000℃以下で行うことがより好ましく、950℃程度1000℃以下がさらに好ましい。温度が低すぎると、リチウム源及びコバルト源の分解及び溶融が不十分となるおそれがある。一方、温度が高すぎると、リチウム源からリチウムが蒸散する、および/またはコバルトが過剰に還元される、などが原因となり、欠陥が生じるおそれがある。例えばコバルトが3価から2価へ変化し、酸素欠陥などが誘発されることがある。
加熱時間は、短すぎるとコバルト酸リチウムが合成されないが、長すぎると生産性が低下する。このため、加熱時間は、1時間以上100時間以下とすればよく、2時間以上20時間以下とすることが好ましく、2時間以上10時間以下がより好ましい。
昇温レートは、加熱温度の到達温度によるが、80℃/h以上250℃/h以下がよい。例えば1000℃で10時間加熱する場合、昇温レートは200℃/hとするとよい。
加熱は、乾燥空気等の水が少ない雰囲気で行うことが好ましく、例えば露点が-50℃以下、より好ましくは露点が-80℃以下の雰囲気がよい。本実施の形態においては、露点-93℃の雰囲気にて、加熱を行うこととする。また材料中に混入しうる不純物を抑制するためには、加熱雰囲気におけるCH、CO、CO、及びH等の不純物濃度が、それぞれ5ppb(parts per billion)以下にするとよい。
加熱雰囲気として、酸素を有する雰囲気が好ましい。例えば反応室に乾燥空気を導入し続ける方法がある。この場合、乾燥空気の流量は10L/minとすることが好ましい。酸素を反応室へ導入し続け、酸素が反応室内を流れている方法をフローと呼ぶ。
加熱雰囲気を、酸素を有する雰囲気とする場合、フローさせないやり方でもよい。例えば反応室を減圧してから酸素を充填し(パージし、といってもよい)、当該酸素が反応室から出入りしないようにする方法でもよい。例えば反応室を-970hPaまで減圧してから、50hPaまで酸素を充填すればよい。
加熱後の冷却は自然放冷でよいが、規定温度から室温までの降温時間が10時間以上50時間以下に収まると好ましい。ただし、必ずしも室温までの冷却は要せず、次のステップが許容する温度まで冷却されればよい。
本工程の加熱は、ロータリーキルン又はローラーハースキルンによる加熱を行ってもよい。ロータリーキルンによる加熱は、連続式、バッチ式いずれの場合でも攪拌しながら加熱することができる。
加熱の際に用いる容器は、酸化アルミニウム製のるつぼ、または酸化アルミニウム製のさやが好ましい。酸化アルミニウム製のるつぼは、不純物が殆ど混入しない材質である。本実施の形態においては、純度が99.9%の酸化アルミニウムのさやを用いる。なお、るつぼまたはさやは、蓋を配してから加熱すると材料の揮発を防ぐことができるため、好ましい。
加熱が終わった後、必要に応じて粉砕し、さらにふるいを実施してもよい。加熱後の材料を回収する際に、るつぼから乳鉢へ移動させたのち回収してもよい。また、当該乳鉢は酸化ジルコニウム製またはメノウ製の乳鉢を用いると好適である。なお、ステップS13以外の後述の加熱の工程においても、ステップS13と同等の加熱条件を適用できる。
<ステップS14>
以上の工程により、図4(B)に示すステップS14で示すコバルト酸リチウム(LiCoO)を合成することができる。ステップS14で示すコバルト酸リチウム(LiCoO)は、複数の金属元素を構造中に含む酸化物であるため、複合酸化物と呼ぶことができる。本明細書等において、「複合酸化物」とは、複数の金属元素を構造中に含む酸化物のことを指すものとする。なお、ステップS13の後、粉砕工程及び分級工程を行って粒度分布を調整してから、ステップS14で示すコバルト酸リチウム(LiCoO)を得る態様としてもよい。
ステップS11乃至ステップS14のように固相法で複合酸化物を作製する例を示したが、共沈法で複合酸化物を作製してもよい。また、水熱法で複合酸化物を作製してもよい。
ステップS11-ステップS14を経て、低温環境下においても優れた放電特性を有するリチウムイオン電池に適用可能な正極活物質を得るための出発材料となるコバルト酸リチウムを得ることができる。具体的には、出発材料のコバルト酸リチウムとして、メジアン径が10μm以下であるコバルト酸リチウムを得ることができる。
<ステップS15>
次に、図4(A)に示すステップS15として、出発材料のコバルト酸リチウムを加熱する。ステップS15の加熱は、コバルト酸リチウムに対する最初の加熱のため、本明細書等において初期加熱と呼ぶことがある。または、以下に示すステップS31の前に加熱するものであるため、予備加熱又は前処理と呼ぶことがある。
初期加熱により、コバルト酸リチウムの表面に意図せず残っているリチウム化合物などが脱離する。また、内部の結晶性を高める効果が期待できる。また、ステップS11等で準備したリチウム源および/またはコバルト源には不純物が混入していることがあるが、初期加熱により、出発材料のコバルト酸リチウムから不純物を低減させることが可能である。なお、内部の結晶性を高める効果とは、例えばステップS14で作製したコバルト酸リチウムが有する収縮差等に由来する歪み、ずれ等を緩和する効果である。
また、初期加熱を経ることで、コバルト酸リチウムの表面がなめらかになる効果がある。本明細書等において、表面が「なめらか」とは、凹凸が少なく、複合酸化物が全体的に丸みを帯び、さらに角部が丸みを帯びる様子をいう。または、表面に付着した異物が少ない状態も「なめらか」と呼ぶ。異物は凹凸の要因になると考えられ、表面に付着させない方が好ましい。
なお、この初期加熱にあたり、リチウム化合物源、添加元素源、または融剤として機能する材料を別途用意しなくてもよい。
本工程の加熱時間は、短すぎると十分な効果が得られないが、長すぎると生産性が低下する。適切な加熱時間の範囲は、例えば、ステップS13で説明した加熱条件から選択して実施できる。なお、ステップS15の加熱温度は、複合酸化物の結晶構造を維持するため、ステップS13の温度より低くするとよい。また、ステップS15の加熱時間は、複合酸化物の結晶構造を維持するため、ステップS13の時間より短くすることが好ましい。例えば700℃以上1000℃以下(より好ましくは、800℃以上900℃以下)の温度で、1時間以上20時間以下(より好ましくは、1時間以上5時間以下)の加熱を行うとよい。
コバルト酸リチウムは、ステップS13の加熱によって、コバルト酸リチウムの表面と内部に温度差が生じることがある。温度差が生じると収縮差が誘発されることがある。温度差により、表面と内部の流動性が異なるため収縮差が生じるとも考えられる。収縮差に関連するエネルギーは、コバルト酸リチウムに内部応力の差を与えてしまう。内部応力の差は歪みとも称され、当該エネルギーを歪みエネルギーと呼ぶことがある。内部応力はステップS15の初期加熱により除去され、別言すると歪みエネルギーはステップS15の初期加熱により均質化されると考えられる。歪みエネルギーが均質化されると、コバルト酸リチウムの歪みが緩和される。これに伴い、コバルト酸リチウムの表面がなめらかになる。または、表面が改善されたとも言える。すなわち、ステップS15を経ることで、コバルト酸リチウムに生じた収縮差が緩和され、複合酸化物の表面をなめらかにすることができる。
また、収縮差はコバルト酸リチウムにミクロなずれ、例えば結晶のずれを生じさせることがある。このずれを低減するためにも、ステップS15を実施することが好ましい。ステップS15を経ることで、複合酸化物のずれを均一化させる(複合酸化物に生じた結晶等のずれを緩和させる、または結晶粒の整列が行われる)ことが可能である。この結果、複合酸化物の表面がなめらかになる。
表面がなめらかなコバルト酸リチウムを正極活物質として用いると、二次電池として充放電した際の劣化が少なくなり、正極活物質の割れを防ぐことができる。
なお、上述したとおり、ステップS10として、予め合成された、メジアン径が10μm以下のコバルト酸リチウムを用いてもよい。この場合、ステップS11乃至ステップS13を省略することができる。予め合成されたコバルト酸リチウムに対してステップS15を実施することで、表面がなめらかなコバルト酸リチウムを得ることができる。
なお、ステップS15は、本発明の一態様において必須の構成ではないため、ステップS15を省略した態様も本発明の一態様に含まれる。
<ステップS20>
次に、A源として添加元素Aを用意するステップS20の詳細について、図4(C)及び図4(D)を用いて説明する。
<ステップS21>
図4(C)に示すステップS20は、ステップS21乃至ステップS23を有する。ステップS21は、添加元素Aを準備する。添加元素Aの具体例としては、マグネシウム、フッ素、ニッケル、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、鉄、マンガン、クロム、ニオブ、ヒ素、亜鉛、ケイ素、硫黄、リン及びホウ素から選ばれた一または二以上を用いることができる。または、臭素、及びベリリウムから選ばれた一または二を用いることもできる。図4(C)は、マグネシウム源(Mg源)及びフッ素源(F源)を用意した場合を例示している。なお、ステップS21において、添加元素Aに加えて、リチウム源を別途準備してもよい。
添加元素Aとしてマグネシウムを選んだとき、添加元素A源はマグネシウム源と呼ぶことができる。マグネシウム源としては、フッ化マグネシウム(MgF)、酸化マグネシウム(MgO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、又は炭酸マグネシウム(MgCO)等を用いることができる。マグネシウム源は、複数用いてもよい。
添加元素Aとしてフッ素を選んだとき、添加元素A源はフッ素源と呼ぶことができる。フッ素源としては、例えばフッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF)、フッ化アルミニウム(AlF)、フッ化チタン(TiF)、フッ化コバルト(CoF、CoF)、フッ化ニッケル(NiF)、フッ化ジルコニウム(ZrF)、フッ化バナジウム(VF)、フッ化マンガン、フッ化鉄、フッ化クロム、フッ化ニオブ、フッ化亜鉛(ZnF)、フッ化カルシウム(CaF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化カリウム(KF)、フッ化バリウム(BaF)、フッ化セリウム(CeF、CeF)、フッ化ランタン(LaF)、又は六フッ化アルミニウムナトリウム(NaAlF)等を用いることができる。なかでも、フッ化リチウムは融点が848℃と比較的低く、後述する加熱工程で溶融しやすいため、好ましい。
なお、フッ化マグネシウムは、フッ素源としてもマグネシウム源としても用いることができる。また、フッ化リチウムは、リチウム源としても用いることができる。ステップS21に用いられるその他のリチウム源としては、炭酸リチウムが挙げられる。
また、フッ素源は、気体でもよく、フッ素(F)、フッ化炭素、フッ化硫黄、又はフッ化酸素(OF、O、O、O、O、O、OF)等を用い、後述する加熱工程において雰囲気中に混合させてもよい。フッ素源は複数用いてもよい。
本実施の形態では、フッ素源としてフッ化リチウム(LiF)を準備し、フッ素源及びマグネシウム源としてフッ化マグネシウム(MgF)を準備する。フッ化リチウムとフッ化マグネシウムは、LiF:MgF=65:35(モル比)程度で混合すると、融点を下げる効果が最も高くなる。また、フッ化リチウムの割合を大きくしすぎると、リチウムが過剰になり、サイクル特性が悪化する懸念がある。そのため、フッ化リチウムとフッ化マグネシウムのモル比は、LiF:MgF=x:1(0≦x≦1.9)であることが好ましく、LiF:MgF=x:1(0.1≦x≦0.5)がより好ましく、LiF:MgF=x:1(x=0.33またはその近傍)がさらに好ましい。なお本明細書等において、ある値及びその近傍とは、特に断りがない限り、その値の0.9倍より大きく1.1倍より小さい値とする。
<ステップS22>
次に、図4(C)に示すステップS22では、マグネシウム源及びフッ素源を粉砕及び混合する。本工程は、ステップS12で説明した粉砕及び混合の条件から選択して実施することができる。
<ステップS23>
次に、図4(C)に示すステップS23では、上記で粉砕、混合した材料を回収して、添加元素A源(A源)を得ることができる。なお、ステップS23に示す添加元素A源は、複数の出発材料を有するものであり、混合物と呼ぶこともできる。
上記混合物の粒径は、メジアン径(D50)が100nm以上10μm以下であることが好ましく、300nm以上5μm以下であることがより好ましい。また、添加元素A源として、一種の材料を用いた場合においても、メジアン径(D50)が100nm以上10μm以下であることが好ましく、300nm以上5μm以下であることがより好ましい。
ステップS22により微粉化された混合物(添加元素が1種の場合も含む)は、後の工程でコバルト酸リチウムと混合したときに、コバルト酸リチウムの粒子の表面に混合物を均一に付着させやすい。コバルト酸リチウムの粒子の表面に混合物が均一に付着していると、加熱後に複合酸化物の表層部100aに均一に添加元素を分布又は拡散させやすいため、好ましい。
<ステップS21>
図4(C)とは異なる工程について、図4(D)を用いて説明する。図4(D)に示すステップS20は、ステップS21乃至ステップS23を有する。
図4(D)に示すステップS21では、コバルト酸リチウムに添加する添加元素A源を4種用意する。すなわち、図4(D)は図4(C)と添加元素A源の種類が異なる。また、添加元素A源に加えて、リチウム源を別途準備してもよい。
4種の添加元素A源として、マグネシウム源(Mg源)、フッ素源(F源)、ニッケル源(Ni源)、及びアルミニウム源(Al源)を準備する。マグネシウム源及びフッ素源としては、図4(C)で説明した化合物等から選択することができる。ニッケル源としては、酸化ニッケル、水酸化ニッケル等を用いることができる。アルミニウム源としては、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム等を用いることができる。
<ステップS22>及び<ステップS23>
図4(D)に示すステップS22及びステップS23は、図4(C)で説明したステップS22及びステップS23と同様である。
<ステップS31>
次に、図4(A)に示すステップS31では、ステップS15(初期加熱)を経たコバルト酸リチウムと、添加元素A源(A源)とを混合する。ここで、ステップS15を経たコバルト酸リチウム中のコバルトの原子数Coと、添加元素Aが有するマグネシウムの原子数Mgとの比は、Co:Mg=100:y(0.1≦y≦6)であることが好ましく、Co:Mg=100:y(0.3≦y≦3)であることがより好ましい。なお、初期加熱を経たコバルト酸リチウムに添加元素Aを加えると、添加元素Aをムラなく添加することができる。このため、添加元素Aを添加した後に初期加熱(ステップS15)する順ではなく、初期加熱(ステップS15)後に添加元素Aを添加する順が好ましい。
また、添加元素Aとしてニッケルを選択した場合、ニッケル源が有するニッケルの原子数が、ステップS15を経たコバルト酸リチウムが有するコバルトの原子数に対して0.05%以上4%以下となるようにステップS31の混合を行うことが好ましい。また、添加元素Aとしてアルミニウムを選択した場合、アルミニウム源が有するアルミニウムの原子数が、ステップS15を経たコバルト酸リチウムが有するコバルトの原子数に対して0.05%以上4%以下となるようにステップS31の混合を行うことが好ましい。
ステップS31の混合は、コバルト酸リチウムの粒子の形状を破壊させないために、ステップS12の混合よりも穏やかな条件とすることが好ましい。例えば、ステップS12の混合よりも回転数が少ない、または短時間の条件とすることが好ましい。また、湿式よりも乾式の方が穏やかな条件であると言える。混合には、例えばボールミル、ビーズミル等を用いることができる。ボールミルを用いる場合は、例えばメディアとして酸化ジルコニウムボールを用いることが好ましい。
本実施の形態では、直径1mmの酸化ジルコニウムボールを用いたボールミルで、150rpm、1時間、乾式で混合することとする。また該混合は、露点が-100℃以上-10℃以下のドライルームで行うこととする。
<ステップS32>
次に、図4(A)のステップS32において、上記で混合した材料を回収し、混合物903を得る。回収の際、必要に応じて解砕した後にふるいを実施してもよい。
<ステップS33>
次に、図4(A)に示すステップS33では、混合物903を加熱する。ステップS33における加熱は、800℃以上1100℃以下で行うことが好ましく、800℃以上950℃以下で行うことがより好ましく、850℃以上900℃以下がさらに好ましい。また、ステップS33における加熱時間は、1時間以上100時間以下とすればよいが、1時間以上10時間以下が好ましい。ステップS33の加熱温度の下限は、コバルト酸リチウムと添加元素A源との反応が進む温度以上である必要がある。反応が進む温度とは、コバルト酸リチウムと添加元素A源との有する元素の相互拡散が生じる温度であればよく、これらの材料の溶融温度よりも低くてもよい。例えば酸化物を例にして説明すると、溶融温度Tの0.757倍(タンマン温度T)から固相拡散が生じるため、ステップS33における加熱温度としては、500℃以上であればよい。
なお、混合物903が有する材料から選ばれた一または二以上が溶融する温度以上であると、より反応が進みやすい。例えば、添加元素A源として、LiF及びMgFを有する場合、LiFとMgFの共融点は742℃付近であるため、ステップS33の加熱温度の下限は742℃以上とすると好ましい。
また、LiCoO:LiF:MgF=100:0.33:1(モル比)となるように混合して得られた混合物903は、示差走査熱量測定(DSC測定)において830℃付近に吸熱ピークが観測される。よって、加熱温度の下限は830℃以上がより好ましい。
加熱温度は高い方が反応が進みやすく、加熱時間が短く済み、生産性が高く好ましい。
加熱温度の上限は、コバルト酸リチウムの分解温度(1130℃)未満とする。分解温度の近傍の温度では、微量ではあるがコバルト酸リチウムの分解が懸念される。そのため、1000℃以下であると好ましく、950℃以下であるとより好ましく、900℃以下であるとさらに好ましい。
さらに、混合物903を加熱する際、フッ素源等に起因するフッ素またはフッ化物の分圧を適切な範囲に制御することが好ましい。
本実施の形態で説明する作製方法では、一部の材料、例えばフッ素源であるLiFが融剤として機能する場合がある。この機能により、加熱温度をコバルト酸リチウムの分解温度未満、例えば742℃以上950℃以下にまで低温化でき、表層部にマグネシウムをはじめとする添加元素を分布させ、良好な特性の正極活物質を作製できる。
ところで、LiFは酸素よりも気体状態での比重が軽いため、加熱によりLiFが揮発又は昇華する可能性があり、揮発又は昇華すると混合物903中のLiFが減少してしまう。この場合、融剤としての機能が弱くなってしまう。したがって、LiFの揮発を抑制しつつ、加熱することが好ましい。なお、フッ素源等としてLiFを用いなかったとしても、LiCoO表面のLiとフッ素源のFが反応して、LiFが生じ、揮発する可能性もある。そのため、LiFより融点が高いフッ化物を用いたとしても、同じように揮発の抑制が必要である。
そこで、LiFを含む雰囲気で混合物903を加熱すること、すなわち、加熱炉内のLiFの分圧が高い状態で混合物903を加熱することが好ましい。このような加熱により混合物903中のLiFの揮発を抑制することができる。
また、本工程の加熱は、混合物903の粒子同士が固着しないように加熱することが好ましい。加熱中に混合物903の粒子同士が固着すると、雰囲気中の酸素との接触面積が減る、及び添加元素(例えばフッ素)が拡散する経路を阻害することにより、表層部への添加元素(例えばマグネシウム及びフッ素)の分布が悪化する可能性がある。
また、添加元素(例えばフッ素)が表層部に均一に分布すると、なめらかで凹凸が少ない正極活物質を得られる。そのため、本工程でステップS15の加熱を経た、表面がなめらかな状態を維持する又はより一層なめらかになるためには、混合物903の粒子同士が固着しない方がよい。
また、ロータリーキルンによって加熱する場合は、キルン内の酸素を含む雰囲気の流量を制御して加熱することが好ましい。例えば酸素を含む雰囲気の流量を少なくする、最初に雰囲気をパージしキルン内に酸素雰囲気を導入した後は雰囲気のフローはしない、等が好ましい。酸素をフローするとフッ素源が蒸散する可能性があり、表面のなめらかさを維持するためには好ましくない。
ローラーハースキルンによって加熱する場合は、例えば混合物903の入った容器に蓋を配することでLiFを含む雰囲気で混合物903を加熱することができる。
<ステップS34>
次に、図4(A)に示すステップS34では、加熱した材料を回収し、必要に応じて解砕して、正極活物質100を得る。このとき、回収された正極活物質100の粒子を、さらにふるいにかけると好ましい。以上の工程により、メジアン径が12μm以下(好ましくは10.5μm以下、より好ましくは8μm以下)の正極活物質100(複合酸化物)を作製することができる。なお、正極活物質100は添加元素Aを含むものである。
<正極活物質の作製方法の例2>
図5及び図6を用いて、本発明の一態様として利用可能な正極活物質の作製方法の別の一例(正極活物質の作製方法の例2)について説明する。<正極活物質の作製方法の例2>は、添加元素を加える回数及び混合方法が先に述べた<正極活物質の作製方法の例1>と異なるが、その他の記載は<正極活物質の作製方法の例1>の記載を適用することができる。なお、<正極活物質の作製方法の例2>において、実施の形態1で説明した添加元素Xを添加元素A1として示す。また、実施の形態1で説明した添加元素Y及び添加元素Zをまとめて、添加元素A2として示す。
図5において、図4(A)と同様にステップS10及びステップS15を行い、初期加熱を経たコバルト酸リチウムを準備する。なお、ステップS15は、本発明の一態様において必須の構成ではないため、ステップS15を省略した態様も本発明の一態様に含まれる。
<ステップS20a>
次に、ステップS20aに示すように、第1の添加元素A1源(A1源)を準備する。ステップS20aの詳細は、図6(A)を参照しながら説明する。
<ステップS21>
図6(A)に示すステップS21では、第1の添加元素A1源(A1源)を準備する。A1源としては、図4(C)に示すステップS21で説明した添加元素Aの中から選択して用いることができる。例えば、添加元素A1源としては、マグネシウム、フッ素、及びカルシウムの中から選ばれるいずれか一または複数を用いることができる。図6(A)では、添加元素A1源として、マグネシウム源(Mg源)、及びフッ素源(F源)を用いる場合を例示している。
図6(A)に示すステップS21乃至ステップS23は、図4(C)に示すステップS21乃至ステップS23と同様の条件で行うことができる。その結果、ステップS23で添加元素A1源(A1源)を得ることができる。
また、図5に示すステップS31乃至S33については、図4(A)に示すステップS31乃至S33と同様の条件で行うことができる。
<ステップS34a>
次に、ステップS33で加熱した材料を回収し、添加元素A1を有するコバルト酸リチウムを得る。ここでは、ステップS15を経たコバルト酸リチウム(第1の複合酸化物)と区別するため、第2の複合酸化物とも呼ぶ。
<ステップS40>
図5に示すステップS40では、第2の添加元素A2源(A2源)を用意する。ステップS40は、図6(B)及び図6(C)も参照しながら説明する。
<ステップS41>
図6(B)に示すステップS41では、第2の添加元素A2源(A2源)を用意する。A2源としては、図4(C)に示すステップS20で説明した添加元素Aの中から選択して用いることができる。例えば、添加元素A2源としては、ニッケル、チタン、ホウ素、ジルコニウム、及びアルミニウムの中から選ばれるいずれか一または複数を好適に用いることができる。図6(B)では、添加元素A2源として、ニッケル源(Ni源)及びアルミニウム源(Al源)を用いる場合を例示している。
図6(B)に示すステップS41乃至ステップS43は、図4(C)に示すステップS21乃至ステップS23と同様の条件で行うことができる。その結果、ステップS43で添加元素A2源(A2源)を得ることができる。
図6(C)に示すステップS41乃至ステップS43は、図6(B)の変形例である。図6(C)に示すステップS41ではニッケル源(Ni源)及びアルミニウム源(Al源)を準備し、ステップS42aではそれぞれ独立に粉砕する。その結果、ステップS43では、複数の第2の添加元素A2源(A2源)を準備することとなる。このように、図6(C)のステップS40はステップS42aにおいて添加元素源を独立に粉砕している点で、図6(B)のステップS40と異なる。
<ステップS51乃至ステップS53>
次に、図5に示すステップS51乃至ステップS53は、図4(A)に示すステップS31乃至ステップS34と同様の条件で行うことができる。加熱工程に関するステップS53の条件は、図5に示すステップS33よりも低い温度または/および短時間が好ましい。具体的には、加熱は、800℃以上950℃以下で行うことが好ましく、820℃以上870℃以下がより好ましく、850℃±10℃がさらに好ましい。また、加熱時間は、0.5時間以上8時間以下が好ましく、1時間以上5時間以下がより好ましい。
なお、添加元素A2としてニッケルを選択した場合、ニッケル源が有するニッケルの原子数が、ステップS15を経たコバルト酸リチウムが有するコバルトの原子数に対して0.05%以上4%以下となるようにステップS51の混合を行うことが好ましい。また、添加元素A2としてアルミニウムを選択した場合、アルミニウム源が有するアルミニウムの原子数が、ステップS15を経たコバルト酸リチウムが有するコバルトの原子数に対して0.05%以上4%以下となるようにステップS51の混合を行うことが好ましい。
<ステップS54>
次に、図5に示すステップS54では、加熱した材料を回収し、必要に応じて解砕して、正極活物質100を得る。以上の工程により、メジアン径が12μm以下(好ましくは10.5μm以下、より好ましくは8μm以下)の正極活物質100(複合酸化物)を作製することができる。または、低温環境下においても優れた放電特性を有するリチウムイオン電池に適用可能な正極活物質100を作製することができる。なお、正極活物質100は添加元素A1及び添加元素A2を含むものである。
以上に説明した作製方法の例2では、図5及び図6に示すように、コバルト酸リチウムへの添加元素を第1の添加元素A1と、第2の添加元素A2とに分けて導入する。分けて導入することにより、各添加元素の深さ方向のプロファイルを変えることができる。例えば、第1の添加元素を内部に比べて表層部で高い濃度となるようにプロファイルし、第2の添加元素を表層部に比べて内部で高い濃度となるようにプロファイルすることができる。図4(A)及び図4(D)のステップを経て作製する正極活物質100は、複数種類の添加元素Aを一度に添加するため、低コストで作製が可能という利点がある。一方、図5及び図6のステップを経て作製する正極活物質100は、複数種類の添加元素A源を複数のステップに分けて添加するため、作製コストが相対的に高くなるが、各添加元素Aの深さ方向のプロファイルをより正確に制御することが可能であるため、好ましい。
(実施の形態3)
本実施の形態では、リチウムイオン電池を構成する要素について、各々説明する。
[正極]
正極は、正極活物質層及び正極集電体を有する。正極活物質層は正極活物質を有し、さらに導電材及びバインダの少なくとも一を有していてもよい。正極活物質は、実施の形態1で説明したものを用いることができる。
図7(A)は、正極の断面の模式図の一例を示している。
正極集電体21は、例えば金属箔を用いることができる。正極は、金属箔上にスラリーを塗布して乾燥させることによって形成することができる。なお、乾燥後にプレスを加えてもよい。正極は、正極集電体21上に活物質層を形成したものである。
スラリーとは、正極集電体21上に活物質層を形成するために用いる材料液であり、活物質とバインダと溶媒を含有し、好ましくはさらに導電材を混合させたものを指している。なお、スラリーは、電極用スラリーまたは活物質スラリーと呼ばれることもあり、正極活物質層を形成する場合には正極用スラリーを用い、負極活物質層を形成する場合には負極用スラリーと呼ばれることもある。
正極活物質100は、充放電に伴い、リチウムイオンを取り込む機能、および放出する機能を有する。本発明の一態様として用いる正極活物質100は、高い充電電圧としても充放電に伴う劣化の少ない材料を用いることができる。なお、本明細書等において、特に言及しない場合、充電電圧はリチウム金属の電位を基準として表すものとする。
本発明の一態様として用いる正極活物質100は、高い充電電圧としても充放電に伴う劣化の少ない材料であれば何でも用いることが可能であり、実施の形態1または実施の形態2で説明したものを用いることができる。なお、正極活物質100は、高い充電電圧としても充放電に伴う劣化の少ない材料であれば、粒径が異なる2種類以上の材料を用いることができる。
図1(B)で示した正極活物質層の変形例を図7(A)乃至図7(D)に示す。
図7(A)は、導電材の一例であるカーボンブラック43と、正極活物質100の粒子同士の間に位置する空隙部に含まれる電解質51を図示しており、正極活物質100だけでなく第2の正極活物質110を更に有する例を示している。
二次電池の正極として、金属箔などの正極集電体21と、活物質と、を固着させるために、バインダ(樹脂)を混合してもよい。バインダは結着剤とも呼ばれる。バインダは高分子材料であり、バインダを多く含ませると正極における活物質の割合が低下して、二次電池の放電容量が小さくなる。そのため、バインダの量は最小限に混合させることが好ましい。
なお、図7(A)では正極活物質100を球形として図示した例を示しているが、特に限定されない。例えば、正極活物質100の断面形状は楕円形、長方形、台形、三角形、角が丸まった多角形、非対称の形状であってもよい。例えば、図7(B)では、正極活物質100が角が丸まった多角形の形状を有する例を示している。
また、図7(B)の正極では、導電材として用いられる炭素材料として、グラフェン42を用いている。図7(B)は、正極集電体21上に正極活物質100、グラフェン42、カーボンブラック43を有する正極活物質層を形成している。
なお、グラフェン42、カーボンブラック43を混合し、電極スラリーを得る工程において、混合するカーボンブラックの重量はグラフェンの1.5倍以上20倍以下、好ましくは2倍以上9.5倍以下の重量とすることが好ましい。
また、グラフェン42とカーボンブラック43の混合を上記範囲とすると、スラリー調製時に、カーボンブラック43の分散安定性に優れ、凝集部が生じにくい。また、グラフェン42とカーボンブラック43の混合を上記範囲とすると、カーボンブラック43のみを導電材に用いる正極よりも高い電極密度とすることができる。電極密度を高くすることで、単位重量当たりの容量を大きくすることができる。具体的には、重量測定による正極活物質層の密度は、3.5g/cc以上とすることができる。
また、グラフェンのみを導電材に用いる正極に比べると電極密度は低いが、第1の炭素材料(グラフェン)と第2の炭素材料(アセチレンブラック)の混合を上記範囲とすることで、急速充電に対応することができる。このため、車載用の二次電池として用いる場合に特に有効である。
図7(C)では、グラフェンに代えて炭素繊維44を用いる正極の例を図示している。図7(C)は、図7(B)と異なる例を示している。炭素繊維44を用いるとカーボンブラック43の凝集を防ぎ、分散性を高めることができる。
なお、図7(C)において、正極活物質100、炭素繊維44、カーボンブラック43で埋まっていない領域は、空隙またはバインダを指している。
また、他の正極の例として、図7(D)を図示している。図7(D)では、グラフェン42に加えて炭素繊維44を用いる例を示している。グラフェン42及び炭素繊維44の両方を用いると、カーボンブラック43などのカーボンブラックの凝集を防ぎ、分散性をより高めることができる。
なお、図7(D)において、正極活物質100、炭素繊維44、グラフェン42、カーボンブラック43で埋まっていない領域は、空隙またはバインダを指している。
図7(A)乃至図7(D)のいずれか一の正極を用い、正極上にセパレータを重ね、セパレータ上に負極を重ねた積層体を収容する容器(外装体、金属缶など)などに入れ、容器に電解液を充填させることで二次電池を作製することができる。
<バインダ>
バインダとしては、例えば、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、スチレン-イソプレン-スチレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体などのゴム材料を用いることが好ましい。またバインダとして、フッ素ゴムを用いることができる。
また、バインダとしては、例えば水溶性の高分子を用いることが好ましい。水溶性の高分子としては、例えば多糖類などを用いることができる。多糖類としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、再生セルロースなどのセルロース誘導体、または澱粉などを用いることができる。また、これらの水溶性の高分子を、前述のゴム材料と併用して用いると、さらに好ましい。
または、バインダとしては、ポリスチレン、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル(ポリメチルメタクリレート、PMMA)、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、エチレンプロピレンジエンポリマー、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース等の材料を用いることが好ましい。
バインダは上記のうち複数を組み合わせて使用してもよい。
例えば粘度調整効果の特に優れた材料と、他の材料とを組み合わせて使用してもよい。例えばゴム材料等は接着力及び弾性力に優れる反面、溶媒に混合した場合に粘度調整が難しい場合がある。このような場合には例えば、粘度調整効果の特に優れた材料と混合することが好ましい。粘度調整効果の特に優れた材料としては、例えば水溶性高分子を用いるとよい。また、粘度調整効果に特に優れた水溶性高分子としては、前述の多糖類、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びジアセチルセルロース、再生セルロースなどのセルロース誘導体、または澱粉を用いることができる。
なお、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体は、例えばカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩またはアンモニウム塩などの塩とすることにより溶解度が上がり、粘度調整剤としての効果を発揮しやすくなる。溶解度が高くなることにより電極のスラリーを作製する際に活物質または他の構成要素との分散性を高めることもできる。本明細書等においては、電極のバインダとして使用するセルロース及びセルロース誘導体としては、それらの塩も含むものとする。
水溶性高分子は水に溶解することにより粘度を安定化させ、活物質及びバインダとして組み合わせる他の材料、例えばスチレンブタジエンゴムを水溶液中に安定して分散させることができる。また、官能基を有するために活物質表面に安定に吸着しやすいことが期待される。また、例えばカルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体は、水酸基またはカルボキシル基などの官能基を有する材料が多く、官能基を有するために高分子同士が相互作用し、活物質表面を広く覆って存在することが期待される。
活物質表面を覆う、または表面に接するバインダが膜を形成する場合には、不動態膜としての役割を果たして電解液の分解を抑える効果も期待される。ここで、「不動態膜」とは、電気の伝導性のない膜、または電気伝導性の極めて低い膜であり、例えば活物質の表面に不動態膜が形成された場合には、電池反応電位において、電解液の分解を抑制することができる。また、不動態膜は、電気の伝導性を抑えるとともに、リチウムイオンは伝導できるとさらに望ましい。
<導電材>
導電材は、導電付与剤、導電助剤とも呼ばれ、炭素材料が用いられる。複数の活物質の間に導電材を付着させることで複数の活物質同士が電気的に接続され、導電性が高まる。なお、「付着」とは、活物質と導電材が物理的に密着していることのみを指しているのではなく、共有結合が生じる場合、ファンデルワールス力により結合する場合、活物質の表面の一部を導電材が覆う場合、活物質の表面凹凸に導電材がはまりこむ場合、互いに接していなくとも電気的に接続される場合などを含む概念とする。
正極活物質層、負極活物質層、等の活物質層は、導電材を有することが好ましい。
導電材としては、例えば、アセチレンブラック、およびファーネスブラックなどのカーボンブラック、人造黒鉛、および天然黒鉛などの黒鉛、カーボンナノファイバー、およびカーボンナノチューブなどの炭素繊維、ならびにグラフェン化合物、のいずれか一種又は二種以上を用いることができる。
炭素繊維としては、例えばメソフェーズピッチ系炭素繊維、等方性ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維を用いることができる。また炭素繊維として、カーボンナノファイバーまたはカーボンナノチューブなどを用いることができる。カーボンナノチューブは、例えば気相成長法などで作製することができる。
本明細書等においてグラフェン化合物とは、グラフェン、多層グラフェン、マルチグラフェン、酸化グラフェン、多層酸化グラフェン、マルチ酸化グラフェン、還元された酸化グラフェン、還元された多層酸化グラフェン、還元されたマルチ酸化グラフェン、グラフェン量子ドット等を含む。グラフェン化合物とは、炭素を有し、平板状、シート状等の形状を有し、炭素6員環で形成された二次元的構造を有するものをいう。該炭素6員環で形成された二次元的構造は炭素シートといってもよい。グラフェン化合物は官能基を有してもよい。またグラフェン化合物は屈曲した形状を有することが好ましい。またグラフェン化合物は丸まってカーボンナノファイバーのようになっていてもよい。
活物質層の総量に対する導電材の含有量は、1wt%以上10wt%以下が好ましく、1wt%以上5wt%以下がより好ましい。
活物質と点接触するカーボンブラック等の粒状の導電材と異なり、グラフェン化合物は接触抵抗の低い面接触を可能とするものであるから、通常の導電材よりも少量で粒状の活物質とグラフェン化合物との電気伝導性を向上させることができる。よって、活物質の活物質層における比率を増加させることができる。これにより、電池の放電容量を増加させることができる。
カーボンブラック、黒鉛、等の粒子状の炭素含有化合物または、カーボンナノチューブ等の繊維状の炭素含有化合物は微小な空間に入りやすい。微小な空間とは例えば、複数の活物質の間の領域等を指す。微小な空間に入りやすい炭素含有化合物と、複数の粒子にわたって導電性を付与できるグラフェンなどのシート状の炭素含有化合物と、を組み合わせて使用することにより、電極の密度を高め、優れた導電パスを形成することができる。本発明の一態様の作製方法で得られる電池は、高容量密度を有し、かつ安定性を備えることができ、車載用の電池として有効である。
<正極集電体>
正極集電体としては、ステンレス、金、白金、アルミニウム、チタン等の金属、及びこれらの合金など、導電性が高い材料を用いることができる。また正極集電体に用いる材料は、正極の電位で溶出しないことが好ましい。また、シリコン、チタン、ネオジム、スカンジウム、モリブデンなどの耐熱性を向上させる元素が添加されたアルミニウム合金を用いることができる。また、シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素で形成してもよい。シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル等がある。集電体は、箔状、板状、シート状、網状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状等の形状を適宜用いることができる。集電体は、厚みが5μm以上30μm以下のものを用いるとよい。
[負極]
負極は、負極活物質層及び負極集電体を有する。また、負極活物質層は負極活物質を有し、さらに導電材及びバインダを有していてもよい。
<負極活物質>
負極活物質としては、例えば合金系材料または炭素材料を用いることができる。
また、負極活物質は、リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な元素を用いることができる。例えば、シリコン、スズ、ガリウム、アルミニウム、ゲルマニウム、鉛、アンチモン、ビスマス、銀、亜鉛、カドミウム、インジウム等のうち少なくとも一つを含む材料を用いることができる。このような元素は炭素と比べて容量が大きく、特にシリコンは理論容量が4200mAh/gと高い。このため、負極活物質にシリコンを用いることが好ましい。また、これらの元素を有する化合物を用いてもよい。例えば、SiO、MgSi、MgGe、SnO、SnO、MgSn、SnS、VSn、FeSn、CoSn、NiSn、CuSn、AgSn、AgSb、NiMnSb、CeSb、LaSn、LaCoSn、CoSb、InSb、SbSn等がある。ここで、リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な元素、及び該元素を有する化合物等を合金系材料と呼ぶ場合がある。
本明細書等において、「SiO」は例えば一酸化シリコンを指す。あるいはSiOは、SiOと表すこともできる。ここでxは1及び1近傍の値を有することが好ましい。例えばxは、0.2以上1.5以下が好ましく、0.3以上1.2以下がより好ましい。
炭素材料としては、黒鉛、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、炭素繊維(カーボンナノチューブ)、グラフェン、カーボンブラック等を用いればよい。
黒鉛としては、人造黒鉛または天然黒鉛等が挙げられる。人造黒鉛としては例えば、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、コークス系人造黒鉛、ピッチ系人造黒鉛等が挙げられる。ここで人造黒鉛として、球状の形状を有する球状黒鉛を用いることができる。例えば、MCMBは球状の形状を有する場合があり、好ましい。また、MCMBはその表面積を小さくすることが比較的容易であり、好ましい場合がある。天然黒鉛としては、例えば、鱗片状黒鉛、球状化天然黒鉛等が挙げられる。
黒鉛は、リチウムイオンが黒鉛に挿入されたとき(リチウム-黒鉛層間化合物の生成時)にリチウム金属と同程度に低い電位を示す(0.05V以上0.3V以下 vs.Li/Li)。これにより、黒鉛を用いたリチウムイオン電池は高い作動電圧を示すことができる。さらに、黒鉛は、単位体積当たりの容量が比較的高い、体積膨張が比較的小さい、安価である、リチウム金属に比べて安全性が高い等の利点を有するため、好ましい。
また、負極活物質として、二酸化チタン(TiO)、リチウムチタン酸化物(LiTi12)、リチウム-黒鉛層間化合物(Li)、五酸化ニオブ(Nb)、酸化タングステン(WO)、酸化モリブデン(MoO)等の酸化物を用いることができる。
また、負極活物質として、リチウムと遷移金属の複窒化物である、LiN型構造をもつLi3-xN(M=Co、Ni、Cu)を用いることができる。例えば、Li2.6Co0.4は大きな放電容量(900mAh/g、1890mAh/cm)を示し好ましい。
リチウムと遷移金属の複窒化物を用いると、負極活物質中にリチウムイオンを含むため、正極活物質としてリチウムイオンを含まないV、Cr等の材料と組み合わせることができ好ましい。なお、正極活物質にリチウムイオンを含む材料を用いる場合でも、予め正極活物質に含まれるリチウムイオンを脱離させることで、負極活物質としてリチウムと遷移金属の複窒化物を用いることができる。
また、コンバージョン反応が生じる材料を負極活物質として用いることもできる。例えば、酸化コバルト(CoO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化鉄(FeO)等の、リチウムとの合金を作らない遷移金属酸化物を負極活物質に用いてもよい。コンバージョン反応が生じる材料としては、さらに、Fe、CuO、CuO、RuO、Cr等の酸化物、CoS0.89、NiS、CuS等の硫化物、Zn、CuN、Ge等の窒化物、NiP、FeP、CoP等のリン化物、FeF、BiF等のフッ化物が挙げられる。
また、負極の別の形態として、電池の作製終了時点において負極活物質を有さない負極であってもよい。負極活物質を有さない負極として、例えば電池の作製終了時点において負極集電体のみを有する負極であって、電池の充電によって正極活物質から脱離するリチウムイオンが、負極集電体上にリチウム金属として析出し負極活物質層を形成する負極、とすることができる。このような負極を用いた電池は、負極フリー(アノードフリー)電池、負極レス(アノードレス)電池、などと呼ぶことがある。
負極活物質を有さない負極を用いる場合、負極集電体上にリチウムの析出を均一化するための膜を有してもよい。リチウムの析出を均一化するための膜として、例えばリチウムイオン伝導性を有する固体電解質を用いることができる。固体電解質として、硫化物系固体電解質、酸化物系固体電解質、及び高分子系固体電解質などを用いることができる。なかでも、高分子系固体電解質は負極集電体上に均一に膜形成することが比較的容易であるため、リチウムの析出を均一化するための膜として好適である。また、リチウムの析出を均一化するための膜として、例えばリチウムと合金を形成する金属膜を用いることができる。リチウムと合金を形成する金属膜として、例えばマグネシウム金属膜を用いることができる。リチウムとマグネシウムとは広い組成範囲において固溶体を形成するため、リチウムの析出を均一化するための膜として好適である。
また、負極活物質を有さない負極を用いる場合、凹凸を有する負極集電体を用いることができる。凹凸を有する負極集電体を用いる場合、負極集電体の凹部は負極集電体が有するリチウムが析出し易い空洞となるため、リチウムが析出する際に、デンドライト状の形状となることを抑制することができる。
負極活物質層が有することのできる導電材及びバインダとしては、正極活物質層が有することのできる導電材及びバインダと同様の材料を用いることができる。
<負極集電体>
負極集電体には、正極集電体と同様の材料に加え、銅なども用いることができる。なお負極集電体は、リチウム等のキャリアイオンと合金化しない材料を用いることが好ましい。
[電解質]
電解質は、実施の形態1で説明したものを用いることができる。
[セパレータ]
電解質が電解液を含む場合、正極と負極の間にセパレータを配置する。セパレータとしては、例えば、紙をはじめとするセルロースを有する繊維、不織布、ガラス繊維、セラミックス、或いはナイロン(ポリアミド)、ビニロン(ポリビニルアルコール系繊維)、ポリエステル、アクリル、ポリオレフィン、ポリウレタンを用いた合成繊維等で形成されたものを用いることができる。セパレータは袋状に加工し、正極または負極のいずれか一方を包むように配置することが好ましい。
セパレータは多層構造であってもよい。例えばポリプロピレン、ポリエチレン等の有機材料フィルムに、セラミックス系材料、フッ素系材料、ポリアミド系材料、またはこれらを混合したもの等をコートすることができる。セラミックス系材料としては、例えば酸化アルミニウム粒子、酸化シリコン粒子等を用いることができる。フッ素系材料としては、例えばPVDF、ポリテトラフルオロエチレン等を用いることができる。ポリアミド系材料としては、例えばナイロン、アラミド(メタ系アラミド、パラ系アラミド)等を用いることができる。
セラミックス系材料をコートすると耐酸化性が向上するため、高電圧充放電の際のセパレータの劣化を抑制し、二次電池の信頼性を向上させることができる。またフッ素系材料をコートするとセパレータと電極が密着しやすくなり、出力特性を向上させることができる。ポリアミド系材料、特にアラミドをコートすると、耐熱性が向上するため、二次電池の安全性を向上させることができる。
例えば、ポリプロピレンのフィルムの両面に酸化アルミニウムとアラミドの混合材料をコートしてもよい。また、ポリプロピレンのフィルムの、正極と接する面に酸化アルミニウムとアラミドの混合材料をコートし、負極と接する面にフッ素系材料をコートしてもよい。
多層構造のセパレータを用いると、セパレータ全体の厚さが薄くても二次電池の安全性を保つことができるため、二次電池の体積あたりの容量を大きくすることができる。
[外装体]
二次電池が有する外装体としては、例えばアルミニウムなどの金属材料または樹脂材料を用いることができる。また、フィルム状の外装体を用いることもできる。フィルムとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アイオノマー、ポリアミド等の材料からなる膜上に、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケル等の可撓性に優れた金属薄膜を設け、さらに該金属薄膜上に外装体の外面としてポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の絶縁性合成樹脂膜を設けた三層構造のフィルムを用いることができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、先の実施の形態で説明した作製方法によって作製された正極を有する二次電池に関し、形状の例を説明する。
[コイン型二次電池]
コイン型の二次電池の一例について説明する。図8(A)はコイン型(単層偏平型)の二次電池の分解斜視図であり、図8(B)は、外観図であり、図8(C)は、その断面図である。コイン型の二次電池は主に小型の電子機器に用いられる。
なお、図8(A)では、わかりやすくするために部材の重なり(上下関係、及び位置関係)がわかるように模式図としている。従って図8(A)と図8(B)は完全に一致する対応図とはしていない。
図8(A)では、正極304、セパレータ310、負極307、スペーサ322、ワッシャー312を重ねている。これらを負極缶302と正極缶301とガスケットで封止している。なお、図8(A)において、封止のためのガスケットは図示していない。スペーサ322、ワッシャー312は、正極缶301と負極缶302を圧着する際に、内部を保護または缶内の位置を固定するために用いられている。スペーサ322、ワッシャー312はステンレスまたは絶縁材料を用いる。
正極集電体305上に正極活物質層306が形成された積層構造を正極304としている。
図8(B)は、完成したコイン型の二次電池の斜視図である。
コイン型の二次電池300は、正極端子を兼ねた正極缶301と負極端子を兼ねた負極缶302とが、ポリプロピレン等で形成されたガスケット303で絶縁シールされている。正極304は、正極集電体305と、これと接するように設けられた正極活物質層306により形成される。また、負極307は、負極集電体308と、これに接するように設けられた負極活物質層309により形成される。また、負極307は、積層構造に限定されず、リチウム金属箔またはリチウムとアルミニウムの合金箔を用いてもよい。
なお、コイン型の二次電池300に用いる正極304及び負極307は、それぞれ活物質層は片面のみに形成すればよい。
正極缶301、負極缶302には、電解液に対して耐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、若しくはこれらの合金又はこれらと他の金属との合金(例えばステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液などによる腐食を防ぐため、ニッケルまたはアルミニウム等を被覆することが好ましい。正極缶301は正極304と、負極缶302は負極307とそれぞれ電気的に接続する。
これら負極307、正極304及びセパレータ310を電解液に浸し、図8(C)に示すように、正極缶301を下にして正極304、セパレータ310、負極307、負極缶302をこの順で積層し、正極缶301と負極缶302とをガスケット303を介して圧着してコイン形の二次電池300を製造する。
上記の構成を有することで、高容量、且つ、放電容量が高く、且つ、サイクル特性に優れたコイン型の二次電池300とすることができる。
[円筒型二次電池]
円筒型の二次電池の例について図9(A)を参照して説明する。円筒型の二次電池616は、図9(A)に示すように、上面に正極キャップ(電池蓋)601を有し、側面及び底面に電池缶(外装缶)602を有している。これら正極キャップ601と電池缶602とは、ガスケット(絶縁パッキン)610によって絶縁されている。
図9(B)は、円筒型の二次電池の断面を模式的に示した図である。図9(B)に示す円筒型の二次電池は、上面に正極キャップ(電池蓋)601を有し、側面及び底面に電池缶(外装缶)602を有している。これら正極キャップ601と電池缶602とは、ガスケット(絶縁パッキン)610によって絶縁されている。
中空円柱状の電池缶602の内側には、帯状の正極604と負極606とがセパレータ605を間に挟んで捲回された電池素子が設けられている。図示しないが、電池素子は中心軸を中心に捲回されている。電池缶602は、一端が閉じられ、他端が開いている。電池缶602には、電解液に対して耐腐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの合金、これらと他の金属との合金(例えば、ステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケル及びアルミニウム等を電池缶602に被覆することが好ましい。電池缶602の内側において、正極、負極及びセパレータが捲回された電池素子は、対向する一対の絶縁板608、609により挟まれている。また、電池素子が設けられた電池缶602の内部は、非水電解液(図示せず)が注入されている。非水電解液は、コイン型の二次電池と同様のものを用いることができる。
円筒型の蓄電池に用いる正極及び負極は捲回するため、集電体の両面に活物質を形成することが好ましい。
実施の形態1、2等で得られる正極活物質100を正極604に用いることで、高容量、且つ、放電容量が高く、且つ、サイクル特性に優れた円筒型の二次電池616とすることができる。
正極604には正極端子(正極集電リード)603が接続され、負極606には負極端子(負極集電リード)607が接続される。正極端子603及び負極端子607は、ともにアルミニウムなどの金属材料を用いることができる。正極端子603は安全弁機構613に、負極端子607は電池缶602の底にそれぞれ抵抗溶接される。安全弁機構613は、PTC(Positive Temperature Coefficient)素子611を介して正極キャップ601と電気的に接続されている。安全弁機構613は電池の内圧の上昇が所定の閾値を超えた場合に、正極キャップ601と正極604との電気的な接続を切断するものである。また、PTC素子611は温度が上昇した場合に抵抗が増大する熱感抵抗素子であり、抵抗の増大により電流量を制限して異常発熱を防止するものである。PTC素子には、チタン酸バリウム(BaTiO)系半導体セラミックス等を用いることができる。
図9(C)は蓄電システム615の一例を示す。蓄電システム615は複数の二次電池616を有する。それぞれの二次電池の正極は、絶縁体625で分離された導電体624に接触し、電気的に接続されている。導電体624は配線623を介して、制御回路620に電気的に接続されている。また、それぞれの二次電池の負極は、配線626を介して制御回路620に電気的に接続されている。制御回路620として、充放電などを行う充放電制御回路、または過充電もしくは/及び過放電を防止する保護回路を適用することができる。
図9(D)は、蓄電システム615の一例を示す。蓄電システム615は複数の二次電池616を有し、複数の二次電池616は、導電板628及び導電板614の間に挟まれている。複数の二次電池616は、配線627により導電板628及び導電板614と電気的に接続される。複数の二次電池616は、並列接続されていてもよいし、直列接続されていてもよい。複数の二次電池616を有する蓄電システム615を構成することで、大きな電力を取り出すことができる。
複数の二次電池616が、並列に接続された後、さらに直列に接続されてもよい。
また、複数の二次電池616の間に温度制御装置を有していてもよい。二次電池616が過熱されたときは、温度制御装置により冷却し、二次電池616が冷えすぎているときは温度制御装置により加熱することができる。そのため蓄電システム615の性能が外気温に影響されにくくなる。
また、図9(D)において、蓄電システム615は制御回路620に配線621及び配線622を介して電気的に接続されている。配線621は導電板628を介して複数の二次電池616の正極に、配線622は導電板614を介して複数の二次電池616の負極に、それぞれ電気的に接続される。
[二次電池の他の構造例]
二次電池の構造例について図10及び図11を用いて説明する。
図10(A)に示す二次電池913は、筐体930の内部に端子951と端子952が設けられた捲回体950を有する。捲回体950は、筐体930の内部で電解液中に浸される。端子952は、筐体930に接し、端子951は、絶縁材などを用いることにより筐体930に接していない。なお、図10(A)では、便宜のため、筐体930を分離して図示しているが、実際は、捲回体950が筐体930に覆われ、端子951及び端子952が筐体930の外に延在している。筐体930としては、金属材料(例えばアルミニウムなど)又は樹脂材料を用いることができる。
なお、図10(B)に示すように、図10(A)に示す筐体930を複数の材料によって形成してもよい。例えば、図10(B)に示す二次電池913は、筐体930aと筐体930bが貼り合わされており、筐体930a及び筐体930bで囲まれた領域に捲回体950が設けられている。
筐体930aとしては、有機樹脂など、絶縁材料を用いることができる。特に、アンテナが形成される面に有機樹脂などの材料を用いることにより、二次電池913による電界の遮蔽を抑制できる。なお、筐体930aによる電界の遮蔽が小さければ、筐体930aの内部にアンテナを設けてもよい。筐体930bとしては、例えば金属材料を用いることができる。
さらに、捲回体950の構造について図10(C)に示す。捲回体950は、負極931と、正極932と、セパレータ933と、を有する。捲回体950は、セパレータ933を挟んで負極931と、正極932が重なり合って積層され、該積層シートを捲回させた捲回体である。なお、負極931と、正極932と、セパレータ933と、の積層を、さらに複数重ねてもよい。
また、図11に示すような捲回体950aを有する二次電池913としてもよい。図11(A)に示す捲回体950aは、負極931と、正極932と、セパレータ933と、を有する。負極931は負極活物質層931aを有する。正極932は正極活物質層932aを有する。
実施の形態1、2等で得られる正極活物質100を正極932に用いることで、高容量、且つ、放電容量が高く、且つ、サイクル特性に優れた二次電池913とすることができる。
セパレータ933は、負極活物質層931a及び正極活物質層932aよりも広い幅を有し、負極活物質層931a及び正極活物質層932aと重畳するように捲回されている。また正極活物質層932aよりも負極活物質層931aの幅が広いことが安全性の点で好ましい。またこのような形状の捲回体950aは安全性及び生産性がよく好ましい。
図11(B)に示すように、負極931は、超音波接合、溶接、または圧着により端子951と電気的に接続される。端子951は端子911aと電気的に接続される。また正極932は、超音波接合、溶接、または圧着により端子952と電気的に接続される。端子952は端子911bと電気的に接続される。
図11(C)に示すように、筐体930により捲回体950a及び電解液が覆われ、二次電池913となる。筐体930には安全弁、過電流保護素子等を設けることが好ましい。安全弁は、電池破裂を防止するため、筐体930の内部が所定の内圧で開放する弁である。
図11(B)に示すように二次電池913は複数の捲回体950aを有していてもよい。複数の捲回体950aを用いることで、より放電容量の大きい二次電池913とすることができる。図11(A)及び(B)に示す二次電池913の他の要素は、図10(A)乃至(C)に示す二次電池913の記載を参酌することができる。
<ラミネート型二次電池>
次に、ラミネート型の二次電池の例について、外観図の一例を図12(A)及び図12(B)に示す。図12(A)及び図12(B)は、正極503、負極506、セパレータ507、外装体509、正極リード電極510、及び負極リード電極511を有する。
図13(A)は正極503及び負極506の外観図を示す。正極503は正極集電体501を有し、正極活物質層502は正極集電体501の表面に形成されている。また、正極503は正極集電体501が一部露出する領域(以下、タブ領域という)を有する。負極506は負極集電体504を有し、負極活物質層505は負極集電体504の表面に形成されている。また、負極506は負極集電体504が一部露出する領域、すなわちタブ領域を有する。なお、正極及び負極が有するタブ領域の面積または形状は、図13(A)に示す例に限られない。
<ラミネート型二次電池の作製方法>
図12(A)に外観図を示すラミネート型二次電池の作製方法の一例について、図13(B)及び図13(C)を用いて説明する。
まず、負極506、セパレータ507及び正極503を積層する。図13(B)に積層された負極506、セパレータ507及び正極503を示す。ここでは負極を5組、正極を4組使用する例を示す。負極とセパレータと正極からなる積層体とも呼べる。次に、正極503のタブ領域同士の接合と、最表面の正極のタブ領域への正極リード電極510の接合を行う。接合には、例えば超音波溶接等を用いればよい。同様に、負極506のタブ領域同士の接合と、最表面の負極のタブ領域への負極リード電極511の接合を行う。
次に、外装体509上に、負極506、セパレータ507及び正極503を配置する。
次に、図13(C)に示すように、外装体509を破線で示した部分で折り曲げる。その後、外装体509の外周部を接合する。接合には例えば熱圧着等を用いればよい。この時、後に電解液を入れることができるように、外装体509の一部(または一辺)に接合されない領域(以下、導入口という)を設ける。
次に、外装体509に設けられた導入口から、電解液を外装体509の内側へ導入する。電解液の導入は、減圧雰囲気下、或いは不活性雰囲気下で行うことが好ましい。そして最後に、導入口を接合する。このようにして、ラミネート型の二次電池500を作製することができる。
実施の形態1、2等で得られる正極活物質100を正極503に用いることで、高容量、且つ、放電容量が高く、且つ、サイクル特性に優れた二次電池500とすることができる。
[電池パックの例]
アンテナを用いて無線充電が可能な本発明の一態様の二次電池パックの例について、図14を用いて説明する。
図14(A)は、二次電池パック531の外観を示す図であり、厚さの薄い直方体形状(厚さのある平板形状とも呼べる)である。図14(B)は、二次電池パック531の構成を説明する図である。二次電池パック531は、回路基板540と、二次電池513と、を有する。二次電池513には、ラベル529が貼られている。回路基板540は、シール515により固定されている。また、二次電池パック531は、アンテナ517を有する。
二次電池513の内部は、捲回体を有する構造にしてもよいし、積層体を有する構造にしてもよい。
二次電池パック531において、例えば図14(B)に示すように、回路基板540上に制御回路590を有する。また、回路基板540は、端子514と電気的に接続されている。また回路基板540は、アンテナ517、二次電池513の正極リード及び負極リードの一方551、正極リード及び負極リードの他方552と電気的に接続される。
または、図14(C)に示すように、回路基板540上に設けられる回路システム590aと、端子514を介して回路基板540に電気的に接続される回路システム590bと、を有してもよい。
なお、アンテナ517はコイル状に限定されず、例えば線状、板状であってもよい。また、平面アンテナ、開口面アンテナ、進行波アンテナ、EHアンテナ、磁界アンテナ、誘電体アンテナ等のアンテナを用いてもよい。又は、アンテナ517は、平板状の導体でもよい。この平板状の導体は、電界結合用の導体の一つとして機能することができる。つまり、コンデンサの有する2つの導体のうちの一つの導体として、アンテナ517を機能させてもよい。これにより、電磁界、磁界だけでなく、電界で電力のやり取りを行うこともできる。
二次電池パック531は、アンテナ517と、二次電池513との間に層519を有する。層519は、例えば二次電池513による電磁界を遮蔽することができる機能を有する。層519としては、例えば磁性体を用いることができる。
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様の二次電池を有する車両の例を示す。
車両として、代表的には自動車に二次電池を適用することができる。自動車としては、ハイブリッド車(HV)、電気自動車(EV)、又はプラグインハイブリッド車(PHEVまたはPHVともいう)等の次世代クリーンエネルギー自動車を挙げることができ、自動車に搭載する電源の一つとして二次電池を適用することができる。車両は自動車に限定されない。例えば、車両としては、電車、モノレール、船、潜水艇(深海探査艇、無人潜水艇)、飛行体(ヘリコプター、無人航空機(ドローン)、飛行機、ロケット、人工衛星)、電動自転車、電動バイクなども挙げることができ、これらの車両に本発明の一態様の二次電池を適用することができる。
電気自動車には、メインの駆動用の二次電池として第1のバッテリ1301a、1301bと、モータ1304を始動させるインバータ1312に電力を供給する第2のバッテリ1311が設置されている。第2のバッテリ1311はクランキングバッテリ(スターターバッテリとも呼ばれる)とも呼ばれる。第2のバッテリ1311は高出力できればよく、大容量はそれほど必要とされず、第2のバッテリ1311の容量は第1のバッテリ1301a、1301bと比較して小さい。
第1のバッテリ1301aの内部構造は、図10(C)または図11(A)に示した捲回型であってもよいし、図12(A)または図12(B)に示した積層型であってもよい。また、第1のバッテリ1301aは、実施の形態6の全固体電池を用いてもよい。第1のバッテリ1301aに実施の形態6の全固体電池を用いることで高容量とすることができ、安全性が向上し、小型化、軽量化することができる。
本実施の形態では、第1のバッテリ1301a、1301bを2つ並列に接続させている例を示しているが3つ以上並列に接続させてもよい。また、第1のバッテリ1301aで十分な電力を貯蔵できるのであれば、第1のバッテリ1301bはなくてもよい。複数の二次電池を有する電池パックを構成することで、大きな電力を取り出すことができる。複数の二次電池は、並列接続されていてもよいし、直列接続されていてもよいし、並列に接続された後、さらに直列に接続されていてもよい。複数の二次電池を組電池とも呼ぶ。
また、車載用の二次電池において、複数の二次電池からの電力を遮断するため、工具を使わずに高電圧を遮断できるサービスプラグまたはサーキットブレーカを有しており、第1のバッテリ1301aに設けられる。
また、第1のバッテリ1301a、1301bの電力は、主にモータ1304を回転させることに使用されるが、DCDC回路1306を介して42V系の車載部品(電動パワステ1307、ヒーター1308、デフォッガ1309など)に電力を供給する。後輪にリアモータ1317を有している場合にも、第1のバッテリ1301aがリアモータ1317を回転させることに使用される。
また、第2のバッテリ1311は、DCDC回路1310を介して14V系の車載部品(オーディオ1313、パワーウィンドウ1314、ランプ類1315など)に電力を供給する。
次に、第1のバッテリ1301aについて、図15(A)を用いて説明する。
図15(A)では9個の角型二次電池1300を一つの電池パック1415としている例を示している。また、9個の角型二次電池1300を直列接続し、一方の電極を絶縁体からなる固定部1413で固定し、もう一方の電極を絶縁体からなる固定部1414で固定している。本実施の形態では固定部1413、1414で固定する例を示しているが電池収容ボックス(筐体とも呼ぶ)に収納させる構成としてもよい。車両は外部(路面など)から振動または揺れが加えられることを想定されているため、固定部1413、1414及び電池収容ボックスなどで複数の二次電池を固定することが好ましい。また、一方の電極は配線1421によって制御回路部1320に電気的に接続されている。またもう一方の電極は配線1422によって制御回路部1320に電気的に接続されている。
また、制御回路部1320は、酸化物半導体を用いたトランジスタを含むメモリ回路を用いてもよい。酸化物半導体を用いたトランジスタを含むメモリ回路を有する充電制御回路、又は電池制御システムを、BTOS(Battery operating system、又はBattery oxide semiconductor)と呼称する場合がある。
酸化物半導体として機能する金属酸化物を用いることが好ましい。例えば、金属酸化物として、In-M-Zn酸化物(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、又はマグネシウム等から選ばれた一種、又は複数種)等の金属酸化物を用いるとよい。特に、金属酸化物として適用できるIn-M-Zn酸化物は、CAAC-OS(C-Axis Aligned Crystal Oxide Semiconductor)、CAC-OS(Cloud-Aligned Composite Oxide Semiconductor)であることが好ましい。また、金属酸化物として、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物を用いてもよい。CAAC-OSは、複数の結晶領域を有し、当該複数の結晶領域はc軸が特定の方向に配向している酸化物半導体である。なお、特定の方向とは、CAAC-OS膜の厚さ方向、CAAC-OS膜の被形成面の法線方向、またはCAAC-OS膜の表面の法線方向である。また、結晶領域とは、原子配列に周期性を有する領域である。なお、原子配列を格子配列とみなすと、結晶領域とは、格子配列の揃った領域でもある。
なお、「CAC-OS」は、第1の領域と、第2の領域と、に材料が分離することでモザイク状となり、当該第1の領域が、膜中に分布した構成(以下、クラウド状ともいう。)である。つまり、CAC-OSは、当該第1の領域と、当該第2の領域とが、混合している構成を有する複合金属酸化物である。ただし、第1の領域と第2の領域は、明確な境界が観察困難な場合がある。
例えば、In-Ga-Zn酸化物におけるCAC-OSでは、エネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy Dispersive X-ray spectroscopy)を用いて取得したEDXマッピングにより、Inを主成分とする領域(第1の領域)と、Gaを主成分とする領域(第2の領域)とが、偏在し、混合している構造を有することが確認できる。
CAC-OSをトランジスタに用いる場合、第1の領域に起因する導電性と、第2の領域に起因する絶縁性とが、相補的に作用することにより、スイッチングさせる機能(On/Offさせる機能)をCAC-OSに付与することができる。つまり、CAC-OSとは、材料の一部では導電性の機能と、材料の一部では絶縁性の機能とを有し、材料の全体では半導体としての機能を有する。導電性の機能と絶縁性の機能とを分離させることで、双方の機能を最大限に高めることができる。よって、CAC-OSをトランジスタに用いることで、高いオン電流(Ion)、高い電界効果移動度(μ)、及び良好なスイッチング動作を実現することができる。
酸化物半導体は、多様な構造をとり、それぞれが異なる特性を有する。本発明の一態様の酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a-like OS、CAC-OS、nc-OS、CAAC-OSのうち、二種以上を有していてもよい。
また、高温環境下で使用可能であるため、制御回路部1320は酸化物半導体を用いるトランジスタを用いることが好ましい。プロセスを簡略なものとするため、制御回路部1320は単極性のトランジスタを用いて形成してもよい。半導体層に酸化物半導体を用いるトランジスタは、動作周囲温度が単結晶Siよりも広く-40℃以上150℃以下であり、二次電池が過熱しても特性変化が単結晶に比べて小さい。酸化物半導体を用いるトランジスタのオフ電流は、150℃であっても温度によらず測定下限以下であるが、単結晶Siトランジスタのオフ電流特性は、温度依存性が大きい。例えば、150℃では、単結晶Siトランジスタはオフ電流が上昇し、電流オン/オフ比が十分に大きくならない。制御回路部1320は、安全性を向上することができる。また、実施の形態1、2等で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池と組み合わせることで安全性についての相乗効果が得られる。実施の形態1、2等で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池及び制御回路部1320は、二次電池による火災等の事故撲滅に大きく寄与することができる。
酸化物半導体を用いたトランジスタを含むメモリ回路を用いた制御回路部1320は、マイクロショート等の、不安定性の原因に対し、二次電池の自動制御装置として機能させることもできる。二次電池の不安定性の原因を解消する機能としては、過充電の防止、過電流の防止、充電時過熱制御、組電池でのセルバランス、過放電の防止、残量計、温度に応じた充電電圧及び電流量自動制御、劣化度に応じた充電電流量制御、マイクロショート異常挙動検知、マイクロショートに関する異常予測などが挙げられ、そのうちの少なくとも一つの機能を制御回路部1320が有する。また、二次電池の自動制御装置の超小型化が可能である。
また、「マイクロショート」とは、二次電池の内部の微小な短絡のことを指しており、二次電池の正極と負極が短絡して充放電不可能の状態になるというほどではなく、微小な短絡部でわずかに短絡電流が流れてしまう現象を指している。比較的短時間、且つ、わずかな箇所であっても大きな電圧変化が生じるため、その異常な電圧値がその後の推定に影響を与える恐れがある。
マイクロショートの原因の一つは、充放電が複数回行われることによって、正極活物質の不均一な分布により、正極の一部と負極の一部で局所的な電流の集中が生じ、セパレータの一部が機能しなくなる箇所が発生、または副反応による副反応物の発生によりミクロな短絡が生じていると言われている。
また、マイクロショートの検知だけでなく、制御回路部1320は、二次電池の端子電圧を検知し、二次電池の充放電状態を管理するとも言える。例えば、過充電を防ぐために充電回路の出力トランジスタと遮断用スイッチの両方をほぼ同時にオフ状態とすることができる。
次に、図15(A)に示す電池パック1415のブロック図の一例を図15(B)に示す。
制御回路部1320は、少なくとも過充電を防止するスイッチと、過放電を防止するスイッチを含むスイッチ部1324と、スイッチ部1324を制御する制御回路1322と、第1のバッテリ1301aの電圧測定部と、を有する。制御回路部1320は、使用する二次電池の上限電圧と下限電圧が設定されており、外部からの電流上限、または外部への出力電流の上限などを制限している。二次電池の下限電圧以上上限電圧以下の範囲内は、使用が推奨されている電圧範囲内であり、その範囲外となるとスイッチ部1324が作動し、保護回路として機能する。また、制御回路部1320は、スイッチ部1324を制御して過放電および/または過充電を防止するため、保護回路とも呼べる。例えば、過充電となりそうな電圧を制御回路1322で検知した場合にスイッチ部1324のスイッチをオフ状態とすることで電流を遮断する。さらに充放電経路中にPTC素子を設けて温度の上昇に応じて電流を遮断する機能を設けてもよい。また、制御回路部1320は、外部端子1325(+IN)と、外部端子1326(-IN)とを有している。
スイッチ部1324は、nチャネル型のトランジスタおよびpチャネル型のトランジスタを組み合わせて構成することができる。スイッチ部1324は、単結晶シリコンを用いるSiトランジスタを有するスイッチに限定されず、例えば、Ge(ゲルマニウム)、SiGe(シリコンゲルマニウム)、GaAs(ガリウムヒ素)、GaAlAs(ガリウムアルミニウムヒ素)、InP(リン化インジウム)、SiC(シリコンカーバイド)、ZnSe(セレン化亜鉛)、GaN(窒化ガリウム)、GaOx(酸化ガリウム;xは0より大きい実数)などを有するパワートランジスタでスイッチ部1324を形成してもよい。また、OSトランジスタを用いた記憶素子は、Siトランジスタを用いた回路上などに積層することで自由に配置可能であるため、集積化を容易に行うことができる。またOSトランジスタは、Siトランジスタと同様の製造装置を用いて作製することが可能であるため、低コストで作製可能である。即ち、スイッチ部1324上にOSトランジスタを用いた制御回路部1320を積層し、集積化することで1チップとすることもできる。制御回路部1320の占有体積を小さくすることができるため、小型化が可能となる。
第1のバッテリ1301a、1301bは、主に42V系(高電圧系HV)の車載機器に電力を供給し、第2のバッテリ1311は14V系(低電圧系LV)の車載機器に電力を供給する。第2のバッテリ1311は鉛蓄電池がコスト上有利のため採用されることが多い。鉛蓄電池はリチウムイオン電池と比べて自己放電が大きく、サルフェーションとよばれる現象により劣化しやすい欠点がある。第2のバッテリ1311をリチウムイオン電池とすることでメンテナンスフリーとするメリットがあるが、長期間の使用、例えば3年以上となると、製造時には判別困難な異常発生が生じる恐れがある。特にインバータを起動する第2のバッテリ1311が動作不能となると、第1のバッテリ1301a、1301bに残容量があってもモータを起動させることができなくなることを防ぐため、第2のバッテリ1311が鉛蓄電池の場合は、第1のバッテリから第2のバッテリに電力を供給し、常に満充電状態を維持するように充電されている。
本実施の形態では、第1のバッテリ1301aと第2のバッテリ1311の両方にリチウムイオン電池を用いる一例を示す(図15(C))。第2のバッテリ1311は、鉛蓄電池、全固体電池、または電気二重層キャパシタを用いてもよい。例えば、実施の形態6の全固体電池を用いてもよい。第2のバッテリ1311に実施の形態6の全固体電池を用いることで高容量とすることができ、小型化、軽量化することができる。
また、タイヤ1316の回転による回生エネルギーは、ギア1305を介してモータ1304に送られ、モータコントローラ1303、またはバッテリコントローラ1302から制御回路部1321を介して第2のバッテリ1311に充電される。またはバッテリコントローラ1302から制御回路部1320を介して第1のバッテリ1301aに充電される。またはバッテリコントローラ1302から制御回路部1320を介して第1のバッテリ1301bに充電される。回生エネルギーを効率よく充電するためには、第1のバッテリ1301a、1301bが急速充電可能であることが望ましい。
バッテリコントローラ1302は第1のバッテリ1301a、1301bの充電電圧及び充電電流などを設定することができる。バッテリコントローラ1302は、用いる二次電池の充電特性に合わせて充電条件を設定し、急速充電することができる。
また、図示していないが、電気自動車を外部の充電器と接続させる場合、充電器のコンセントまたは充電器の接続ケーブルは、バッテリコントローラ1302に電気的に接続される。外部の充電器から供給された電力はバッテリコントローラ1302を介して第1のバッテリ1301a、1301bに充電する。また、充電器によっては、制御回路が設けられており、バッテリコントローラ1302の機能を用いない場合もあるが、過充電を防ぐため制御回路部1320を介して第1のバッテリ1301a、1301bを充電することが好ましい。また、充電器のコンセントまたは充電器の接続ケーブルに制御回路を備えている場合もある。制御回路部1320は、ECU(Electronic Control Unit)と呼ばれることもある。ECUは、電動車両に設けられたCAN(Controller Area Network)に接続される。CANは、車内LANとして用いられるシリアル通信規格の一つである。また、ECUは、マイクロコンピュータを含む。また、ECUは、CPUまたはGPUを用いる。
充電スタンドなどに設置されている外部の充電器は、100Vコンセント-200Vコンセント、または3相200V且つ50kWなどがある。また、非接触給電方式等により外部の充電設備から電力供給を受けて、充電することもできる。
急速充電を行う場合、短時間での充電を行うためには、高電圧での充電に耐えうる二次電池が望まれている。
また、導電材としてグラフェンを用い、電極層を厚くして担持量を高くしても容量低下を抑え、高容量を維持することが相乗効果として大幅に電気特性が向上された二次電池を実現できる。特に車両に用いる二次電池に有効であり、車両全重量に対する二次電池の重量の割合を増加させることなく、航続距離が長い、具体的には一充電走行距離が500km以上の車両を提供することができる。
特に上述した本実施の形態の二次電池は、実施の形態1、2等で説明した正極活物質100を用いることで二次電池の動作電圧を高くすることができ、充電電圧の増加に伴い、使用できる容量を増加させることができる。また、実施の形態1、2等で説明した正極活物質100を正極に用いることでサイクル特性に優れた車両用の二次電池を提供することができる。
次に、本発明の一態様である二次電池を車両、代表的には輸送用車両に実装する例について説明する。
図9(D)、図11(C)、図15(A)のいずれか一に示した二次電池を車両に搭載すると、ハイブリッド車(HV)、電気自動車(EV)、又はプラグインハイブリッド車(PHV)等の次世代クリーンエネルギー自動車を実現できる。また、農業機械、電動アシスト自転車を含む原動機付自転車、自動二輪車、電動車椅子、電動カート、船舶、潜水艦、航空機、ロケット、人工衛星、宇宙探査機、惑星探査機、または宇宙船に二次電池を搭載することもできる。本発明の一態様の二次電池は高容量の二次電池とすることができる。そのため本発明の一態様の二次電池は、小型化、軽量化に適しており、輸送用車両に好適に用いることができる。
図16(A)乃至(D)において、本発明の一態様を用いた輸送用車両を例示する。図16(A)に示す自動車2001は、走行のための動力源として電気モータを用いる電気自動車である。または、走行のための動力源として電気モータとエンジンを適宜選択して用いることが可能なハイブリッド自動車である。二次電池を車両に搭載する場合、実施の形態4で示した二次電池の一例を一箇所または複数個所に設置する。図16(A)に示す自動車2001は、電池パック2200を有し、電池パックは、複数の二次電池を接続させた二次電池モジュールを有する。さらに二次電池モジュールに電気的に接続する充電制御装置を有すると好ましい。
また、自動車2001は、自動車2001が有する二次電池にプラグイン方式または非接触給電方式等により外部の充電設備から電力供給を受けて、充電することができる。充電に際しては、充電方法またはコネクタの規格等はCHAdeMO(登録商標)またはコンボ等の所定の方式で適宜行えばよい。充電設備は、商用施設に設けられた充電ステーションでもよく、また家庭の電源であってもよい。例えば、プラグイン技術によって、外部からの電力供給により自動車2001に搭載された蓄電装置を充電することができる。充電は、ACDCコンバータ等の変換装置を介して、交流電力を直流電力に変換して行うことができる。
また、図示しないが、受電装置を車両に搭載し、地上の送電装置から電力を非接触で供給して充電することもできる。この非接触給電方式の場合には、道路または外壁に送電装置を組み込むことで、停車中に限らず走行中に充電を行うこともできる。また、この非接触給電の方式を利用して、2台の車両どうしで電力の送受電を行ってもよい。さらに、車両の外装部に太陽電池を設け、停車時または走行時に二次電池の充電を行ってもよい。このような非接触での電力の供給には、電磁誘導方式または磁界共鳴方式を用いることができる。
図16(B)は、輸送用車両の一例として電気により制御するモータを有した大型の輸送車2002を示している。輸送車2002の二次電池モジュールは、例えば公称電圧3.0V以上5.0V以下の二次電池を4個セルユニットとし、48セルを直列に接続した170Vを最大電圧とする。電池パック2201の二次電池モジュールを構成する二次電池の数などが違う以外は、図16(A)と同様な機能を備えているので説明は省略する。
図16(C)は、一例として電気により制御するモータを有した大型の輸送車両2003を示している。輸送車両2003の二次電池モジュールは、例えば公称電圧3.0V以上5.0V以下の二次電池を百個以上直列に接続した600Vを最大電圧とする。従って、特性バラツキの小さい二次電池が求められる。実施の形態1、2等で説明した正極活物質100を正極に用いた二次電池を用いることで、安定した電池特性を有する二次電池を製造することができ、歩留まりの観点から低コストで大量生産が可能である。また、電池パック2202の二次電池モジュールを構成する二次電池の数などが違う以外は、図16(A)と同様な機能を備えているので説明は省略する。
図16(D)は、一例として燃料を燃焼するエンジンを有した航空機2004を示している。図16(D)に示す航空機2004は、離着陸用の車輪を有しているため、輸送車両の一種とも言え、複数の二次電池を接続させて二次電池モジュールを構成し、二次電池モジュールと充電制御装置とを含む電池パック2203を有している。
航空機2004の二次電池モジュールは、例えば4Vの二次電池を8個直列に接続した32Vを最大電圧とする。電池パック2203の二次電池モジュールを構成する二次電池の数などが異なる以外は、図16(A)と同様な機能を備えているので説明は省略する。
図16(E)は、一例として二次電池2204を備えた人工衛星2005を示している。人工衛星2005は極低温の宇宙空間で使用されるため、低温耐性に優れた本発明の一態様である二次電池2204を備えることが好ましい。また、人工衛星2005の内部において、保温部材に覆われた状態で二次電池2204が搭載されることがさらに好ましい。
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様である二次電池を建築物に実装する例について図17(A)及び図17(B)を用いて説明する。
図17(A)に示す住宅は、本発明の一態様である二次電池を有する蓄電装置2612と、ソーラーパネル2610を有する。蓄電装置2612は、ソーラーパネル2610と配線2611等を介して電気的に接続されている。また蓄電装置2612と地上設置型の充電装置2604が電気的に接続されていてもよい。ソーラーパネル2610で得た電力は、蓄電装置2612に充電することができる。また蓄電装置2612に蓄えられた電力は、充電装置2604を介して車両2603が有する二次電池に充電することができる。蓄電装置2612は、床下空間部に設置されることが好ましい。床下空間部に設置することにより、床上の空間を有効的に利用することができる。あるいは、蓄電装置2612は床上に設置されてもよい。
蓄電装置2612に蓄えられた電力は、住宅内の他の電子機器にも電力を供給することができる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置2612を無停電電源として用いることで、電子機器の利用が可能となる。
図17(B)に、本発明の一態様に係る蓄電装置の一例を示す。図17(B)に示すように、建物799の床下空間部796には、本発明の一態様に係る蓄電装置791が設置されている。また、蓄電装置791に実施の形態5に説明した制御回路を設けてもよく、実施の形態1、2等で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池を蓄電装置791に用いることで安全性についての相乗効果が得られる。実施の形態5に説明した制御回路及び実施の形態1、2等で説明した正極活物質100を正極に用いた二次電池は、二次電池を有する蓄電装置791による火災等の事故撲滅に大きく寄与することができる。
蓄電装置791には、制御装置790が設置されており、制御装置790は、配線によって、分電盤703と、蓄電コントローラ705(制御装置ともいう)と、表示器706と、ルータ709と、に電気的に接続されている。
商業用電源701から、引込線取付部710を介して、電力が分電盤703に送られる。また、分電盤703には、蓄電装置791と、商業用電源701と、から電力が送られ、分電盤703は、送られた電力を、コンセント(図示せず)を介して、一般負荷707及び蓄電系負荷708に供給する。
一般負荷707は、例えばテレビまたはパーソナルコンピュータなどの電気機器であり、蓄電系負荷708は、例えば、電子レンジ、冷蔵庫、空調機などの電気機器である。
蓄電コントローラ705は、計測部711と、予測部712と、計画部713と、を有する。計測部711は、一日(例えば、0時から24時)の間に、一般負荷707、蓄電系負荷708で消費された電力量を計測する機能を有する。また、計測部711は、蓄電装置791の電力量と、商業用電源701から供給された電力量と、を計測する機能を有していてもよい。また、予測部712は、一日の間に一般負荷707及び蓄電系負荷708で消費された電力量に基づいて、次の一日の間に一般負荷707及び蓄電系負荷708で消費される需要電力量を予測する機能を有する。また、計画部713は、予測部712が予測した需要電力量に基づいて、蓄電装置791の充放電の計画を立てる機能を有する。
計測部711によって計測された一般負荷707及び蓄電系負荷708で消費された電力量は、表示器706によって確認することができる。また、ルータ709を介して、テレビまたはパーソナルコンピュータなどの電気機器において、確認することもできる。さらに、ルータ709を介して、スマートフォンまたはタブレットなどの携帯電子端末によっても確認することができる。また、表示器706、電気機器、携帯電子端末によって、予測部712が予測した時間帯ごと(または一時間ごと)の需要電力量なども確認することができる。
(実施の形態7)
本実施の形態では、二次電池を車両に搭載する一例として、二輪車、自転車に本発明の一態様であるリチウムイオン電池を搭載する例を示す。
図18(A)は、本発明の一態様の蓄電装置を用いた電動自転車の一例である。図18(A)に示す電動自転車8700に、本発明の一態様の蓄電装置を適用することができる。本発明の一態様の蓄電装置は例えば、複数の蓄電池と、保護回路と、を有する。
電動自転車8700は、蓄電装置8702を備える。蓄電装置8702は、運転者をアシストするモータに電気を供給することができる。また、蓄電装置8702は、持ち運びができ、図18(B)に自転車から取り外した状態を示している。また、蓄電装置8702は、本発明の一態様の蓄電装置が有する蓄電池8701が複数内蔵されており、そのバッテリ残量などを表示部8703で表示できるようにしている。また蓄電装置8702は、実施の形態5に一例を示した二次電池の充電制御または異常検知が可能な制御回路8704を有する。制御回路8704は、蓄電池8701の正極及び負極と電気的に接続されている。また、実施の形態1、2等で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池と組み合わせることで、安全性についての相乗効果が得られる。実施の形態1、2等で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池及び制御回路8704は、二次電池による火災等の事故撲滅に大きく寄与することができる。
図18(C)は、本発明の一態様の蓄電装置を用いた二輪車の一例である。図18(C)に示すスクータ8600は、蓄電装置8602、サイドミラー8601、方向指示灯8603を備える。蓄電装置8602は、方向指示灯8603に電気を供給することができる。また、実施の形態1、2等で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池が複数収納された蓄電装置8602は高容量とすることができ、小型化に寄与することができる。
また、図18(C)に示すスクータ8600は、座席下収納8604に、蓄電装置8602を収納することができる。蓄電装置8602は、座席下収納8604が小型であっても、座席下収納8604に収納することができる。
(実施の形態8)
本実施の形態では、本発明の一態様である二次電池を電子機器に実装する例について説明する。二次電池を実装する電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、又はテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。携帯情報端末としてはノート型パーソナルコンピュータ、タブレット型端末、電子書籍端末、携帯電話機などがある。
図19(A)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機2100は、筐体2101に組み込まれた表示部2102の他、操作ボタン2103、外部接続ポート2104、スピーカ2105、マイク2106などを備えている。なお、携帯電話機2100は、二次電池2107を有している。実施の形態1、2等で説明した正極活物質100を正極に用いた二次電池2107を備えることで高容量とすることができ、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
携帯電話機2100は、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。
操作ボタン2103は、時刻設定のほか、電源のオン、オフ動作、無線通信のオン、オフ動作、マナーモードの実行及び解除、省電力モードの実行及び解除など、様々な機能を持たせることができる。例えば、携帯電話機2100に組み込まれたオペレーティングシステムにより、操作ボタン2103の機能を自由に設定することもできる。
また、携帯電話機2100は、通信規格された近距離無線通信を実行することが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。
また、携帯電話機2100は、外部接続ポート2104を備え、他の情報端末とコネクタを介して直接データのやりとりを行うことができる。また外部接続ポート2104を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は外部接続ポート2104を介さずに無線給電により行ってもよい。
また、携帯電話機2100は、センサを有することが好ましい。センサとしては、例えば、指紋センサ、脈拍センサ、体温センサ等の人体センサ、タッチセンサ、加圧センサ、または加速度センサ等が搭載されることが好ましい。
図19(B)は、複数のローター2302を有する無人航空機2300である。無人航空機2300はドローンと呼ばれることもある。無人航空機2300は、本発明の一態様である二次電池2301と、カメラ2303と、アンテナ(図示しない)を有する。無人航空機2300はアンテナを介して遠隔操作することができる。実施の形態1、2等で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池は高エネルギー密度であり、安全性が高いため、長期間に渡って長時間の安全な使用ができ、無人航空機2300に搭載する二次電池として好適である。
図19(C)は、ロボットの一例を示している。図19(C)に示すロボット6400は、二次電池6409、照度センサ6401、マイクロフォン6402、上部カメラ6403、スピーカ6404、表示部6405、下部カメラ6406及び障害物センサ6407、移動機構6408、演算装置等を備える。
マイクロフォン6402は、使用者の話し声及び環境音等を検知する機能を有する。また、スピーカ6404は、音声を発する機能を有する。ロボット6400は、マイクロフォン6402及びスピーカ6404を用いて、使用者とコミュニケーションをとることが可能である。
表示部6405は、種々の情報の表示を行う機能を有する。ロボット6400は、使用者の望みの情報を表示部6405に表示することが可能である。表示部6405は、タッチパネルを搭載していてもよい。また、表示部6405は取り外しのできる情報端末であっても良く、ロボット6400の定位置に設置することで、充電及びデータの受け渡しを可能とする。
上部カメラ6403及び下部カメラ6406は、ロボット6400の周囲を撮像する機能を有する。また、障害物センサ6407は、移動機構6408を用いてロボット6400が前進する際の進行方向における障害物の有無を察知することができる。ロボット6400は、上部カメラ6403、下部カメラ6406及び障害物センサ6407を用いて、周囲の環境を認識し、安全に移動することが可能である。
ロボット6400は、その内部領域に本発明の一態様に係る二次電池6409と、半導体装置または電子部品を備える。実施の形態1、2等で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池は高エネルギー密度であり、安全性が高いため、長期間に渡って長時間の安全な使用ができ、ロボット6400に搭載する二次電池6409として好適である。
図19(D)は、掃除ロボットの一例を示している。掃除ロボット6300は、筐体6301上面に配置された表示部6302、側面に配置された複数のカメラ6303、ブラシ6304、操作ボタン6305、二次電池6306、各種センサなどを有する。図示されていないが、掃除ロボット6300には、タイヤ、吸い込み口等が備えられている。掃除ロボット6300は自走し、ゴミ6310を検知し、下面に設けられた吸い込み口からゴミを吸引することができる。
掃除ロボット6300は、カメラ6303が撮影した画像を解析し、壁、家具または段差などの障害物の有無を判断することができる。また、画像解析により、配線などブラシ6304に絡まりそうな物体を検知した場合は、ブラシ6304の回転を止めることができる。掃除ロボット6300は、その内部領域に本発明の一態様に係る二次電池6306と、半導体装置または電子部品を備える。実施の形態1、2等で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池は高エネルギー密度であり、安全性が高いため、長期間に渡って長時間の安全な使用ができ、掃除ロボット6300に搭載する二次電池6306として好適である。
図20(A)は、ウェアラブルデバイスの例を示している。ウェアラブルデバイスは、電源として二次電池を用いる。また、使用者が生活または屋外で使用する場合において、防沫性能、耐水性能または防塵性能を高めるため、接続するコネクタ部分が露出している有線による充電だけでなく、無線充電も行えるウェアラブルデバイスが望まれている。
例えば、図20(A)に示すような眼鏡型デバイス4000に本発明の一態様である二次電池を搭載することができる。眼鏡型デバイス4000は、フレーム4000aと、表示部4000bを有する。湾曲を有するフレーム4000aのテンプル部に二次電池を搭載することで、軽量であり、且つ、重量バランスがよく継続使用時間の長い眼鏡型デバイス4000とすることができる。実施の形態1、2等で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池は高エネルギー密度であり、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
また、ヘッドセット型デバイス4001に本発明の一態様である二次電池を搭載することができる。ヘッドセット型デバイス4001は、少なくともマイク部4001aと、フレキシブルパイプ4001bと、イヤフォン部4001cを有する。フレキシブルパイプ4001b内またはイヤフォン部4001c内に二次電池を設けることができる。実施の形態1、2等で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池は高エネルギー密度であり、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
また、身体に直接取り付け可能なデバイス4002に本発明の一態様である二次電池を搭載することができる。デバイス4002の薄型の筐体4002aの中に、二次電池4002bを設けることができる。実施の形態1、2等で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池は高エネルギー密度であり、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
また、衣服に取り付け可能なデバイス4003に本発明の一態様である二次電池を搭載することができる。デバイス4003の薄型の筐体4003aの中に、二次電池4003bを設けることができる。実施の形態1、2等で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池は高エネルギー密度であり、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
また、ベルト型デバイス4006に本発明の一態様である二次電池を搭載することができる。ベルト型デバイス4006は、ベルト部4006a及びワイヤレス給電受電部4006bを有し、ベルト部4006aの内部領域に、二次電池を搭載することができる。実施の形態1、2等で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池は高エネルギー密度であり、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
また、腕時計型デバイス4005に本発明の一態様である二次電池を搭載することができる。腕時計型デバイス4005は表示部4005a及びベルト部4005bを有し、表示部4005aまたはベルト部4005bに、二次電池を設けることができる。実施の形態1、2等で得られる正極活物質100を正極に用いた二次電池は高エネルギー密度であり、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
表示部4005aには、時刻だけでなく、メールまたは電話の着信等、様々な情報を表示することができる。
また、腕時計型デバイス4005は、腕に直接巻きつけるタイプのウェアラブルデバイスであるため、使用者の脈拍、血圧等を測定するセンサを搭載してもよい。使用者の運動量及び健康に関するデータを蓄積し、健康を管理することができる。
図20(B)に腕から取り外した腕時計型デバイス4005の斜視図を示す。
また、側面図を図20(C)に示す。図20(C)には、内部領域に二次電池913を内蔵している様子を示している。二次電池913は実施の形態4に示した二次電池である。二次電池913は表示部4005aと重なる位置に設けられており、高密度、且つ、高容量とすることができ、小型、且つ、軽量である。
腕時計型デバイス4005においては、小型、且つ、軽量であることが求められるため、実施の形態1、2等で得られる正極活物質100を二次電池913の正極に用いることで、高エネルギー密度、且つ、小型の二次電池913とすることができる。
<サンプル1の作製方法>
本実施例では、実施の形態1における説明、及び図5乃至図6等に基づき、メジアン径が12μm以下の正極活物質100(サンプル1)が得られることを説明する。
図5のステップS10に示す出発材料のコバルト酸リチウム(LiCoO)として、添加元素を特に有さない市販のコバルト酸リチウム(日本化学工業株式会社製、C-5H)を用意した。以下、本明細書等において、単に「C-5H」と記す。C-5Hは、メジアン径が約7.0μmであり、メジアン径が10μm以下という条件を満たす。
次に、ステップS15の加熱として、C-5Hをさや(容器)に入れ、蓋をした後、850℃、2時間、マッフル炉にて加熱した。マッフル炉内は酸素雰囲気とした後、フローしなかった(Oパージ)。
次に、図6(A)で示したステップS20aに従い、添加元素A1源を作製した。まず最初に、F源としてフッ化リチウム(LiF)を用意し、Mg源としてフッ化マグネシウム(MgF)を用意した。LiFとMgFの割合は、LiF:MgFを1:3(モル比)となるように秤量した。次に、脱水アセトン中でLiF及びMgFを混合し、500rpmの回転速度で20時間攪拌した。混合にはボールミルを用い、粉砕メディアとして酸化ジルコニウムボールを用いた。混合用ボールミルの容器の容量45mLに対し、脱水アセトン20mL、酸化ジルコニウムボール(1mmφ)22gと共に合計約10gの添加元素A1源を入れて混合した。その後300μmの目を有するふるいでふるい、添加元素A1源を得た。
次に、図5で示したステップS31に従い、ステップS15の加熱によって得られたコバルト酸リチウム(初期加熱後のコバルト酸リチウム)と、ステップS20aによって得られた添加元素A1源を混合した。具体的には、コバルト酸リチウムの有するコバルトの原子数に対してマグネシウムの原子数が1原子%となるように秤量した後、初期加熱後のコバルト酸リチウムと添加元素A1源を乾式で混合した。このとき、150rpmの回転速度で1時間攪拌した。その後、300μmの目を有するふるいでふるい、混合物903を得た(ステップS32)。
次に、ステップS33として、混合物903を加熱した。加熱条件は、900℃、5時間とした。加熱の際、混合物903を入れたさやに蓋を配した。さや内は酸素を有する雰囲気とし、当該酸素の出入りは遮断した(パージ)。加熱により、Mg及びFを有する複合酸化物(Mg及びFを有するコバルト酸リチウム)を得た(ステップS34a)。
次に、図6(C)で示したステップS40に従い、添加元素A2源を作製した。まず最初に、Ni源として水酸化ニッケル(Ni(OH))を用意し、Al源として水酸化アルミニウム(Al(OH))を用意した。次に、脱水アセトン中で水酸化ニッケル及び水酸化アルミニウムをそれぞれ別々に500rpmの回転速度で20時間撹拌した。また、混合にはボールミルを用い、粉砕メディアとして酸化ジルコニウムボールを用いた。混合用ボールミルの容器の容量45mLに対し、脱水アセトン20mL、酸化ジルコニウムボール(1mmφ)22gと共に約10gの水酸化ニッケル及び水酸化アルミニウムをそれぞれ別々に入れて撹拌した。その後300μmの目を有するふるいでそれぞれふるい、添加元素A2源を得た。
次に、ステップS51として、Mg及びFを有する複合酸化物と添加元素A2源を乾式で混合した。具体的には、150rpmの回転速度で1時間攪拌することで混合した。混合比は、添加元素A2源に含まれている水酸化ニッケルのモル数及び水酸化アルミニウムのモル数がコバルト酸リチウムのモル数に対して各々0.5モル%となるようにした。混合にはボールミルを用い、粉砕メディアとして酸化ジルコニウムボールを用いた。混合用ボールミルの容器の容量45mLに対し、酸化ジルコニウムボール(1mmφ)22gと共に合計約7.5gのNi源、Al源、及びステップS34で得られた複合酸化物(Mg及びFを有するコバルト酸リチウム)を入れて混合した。最後に300μmの目を有するふるいでふるい、混合物904を得た(ステップS52)。
次に、ステップS53として、混合物904を加熱した。加熱条件は、850℃、2時間とした。加熱の際、混合物904を入れたさやに蓋を配し、マッフル炉にて加熱した。マッフル炉内は酸素雰囲気とした後、フローしなかった(Oパージ)。加熱により、Mg、F、Ni、及びAlを有するコバルト酸リチウム(複合酸化物)を得た(ステップS54)。本明細書等において、本実施例で得られたMg、F、Ni、及びAlを有するコバルト酸リチウムを、以後、サンプル1と表記することがある。なお、サンプル1をSTEM-EDX分析したところ、Mgは図3(A)及び図3(D)に示すような分布を有しており、Alは図3(B)及び図3(E)に示すような分布を有しており、Niは図3(C)及び図3(F)に示すような分布を有していた。
<サンプル1のメジアン径>
図21に、サンプル1の粒度分布を実線で示す。サンプル1のメジアン径(D50)は、約9.7μmであった。この結果、サンプル1のメジアン径は12μm以下(10.5μm以下)を満たしていることが確認された。なお、メジアン径(D50)は、例えばSEM(走査電子顕微鏡)もしくはTEMによる観察、またはレーザ回折・散乱法を用いた粒度分布計等によって測定することができる。本実施例では、島津製作所製のレーザ回折式粒度分布測定装置SALD-2200を用いて測定した。
なお、図21には、参考例1として、本実施例において出発材料として用いた、添加元素を特に有さない市販のコバルト酸リチウム(日本化学工業株式会社製、C-5H)の粒度分布を点線で示している。C-5Hのメジアン径(D50)は、約7.0μmであった。
<サンプル1を正極活物質として用いたハーフセルの作製>
本実施例では、実施例1で作製したサンプル1を正極活物質として用いたコイン型のハーフセル(ハーフセル1及びハーフセル2)の作製条件を説明する。
まず、正極活物質としてサンプル1を用意し、導電材としてアセチレンブラック(AB)を用意し、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用意した。次に、正極活物質:AB:PVDF=95:3:2(重量比)で混合してスラリーを作製し、該スラリーをアルミニウムの正極集電体に塗工した。スラリーの溶媒として、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)を用いた。
次に、正極集電体にスラリーを塗工した後、溶媒を揮発させ、正極集電体上に正極活物質層を形成した。
その後、上記の正極集電体上の正極活物質層の密度を高めるため、ロールプレス機によってプレス処理を行った。プレス処理の条件は、線圧210kN/mとした。なお、ロールプレス機の上部ロール及び下部ロールは、いずれも120℃とした。
以上の工程により、正極を得た。正極の活物質担持量はおよそ7mg/cmとした。
ハーフセル1及びハーフセル2に用いた電解液は、有機溶媒を含む。有機溶媒は、エチレンカーボネート(EC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)と、ジメチルカーボネート(DMC)と、を含み、EC、EMC、及びDMCの全含有量を100vol%としたとき、EC、EMC、及びDMCの体積比が、x:y:100-x-y(ただし、5≦x≦35であり、0<y<65である。)であるものを用いた。より具体的には、ECと、EMCと、DMCとをEC:EMC:DMC=30:35:35(体積比)で含む有機溶媒を用意した。この有機溶媒に対し、1mol/Lとなるように六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を溶解したものを電解液として用いた。
リチウムイオン電池に用いられている一般的な電解液は、-20℃程度で凝固してしまうため、-40℃で充放電できる電池を作製することは困難である。本実施例で用いた電解液は、凝固点が-40℃以下であり、-40℃という極低温環境下においても充放電可能なリチウムイオン電池を実現するのに必要な一条件である。
セパレータは、ポリプロピレンの多孔質フィルムを用いた。また、負極(対極)はリチウム金属を用いた。これらを用いて、コイン型のハーフセル(ハーフセル1及びハーフセル2)を作製した。
本実施例では、実施例2で作製したハーフセル1及びハーフセル2を測定した結果について説明する。
<ハーフセルのエージング>
ハーフセル1及びハーフセル2のエージングとして、25℃において、充電と放電を3回繰り返した。充電は4.60Vの電圧になるまで0.1C(1C=200mA/gとした)の充電電流で定電流充電を行い、続けて4.60Vでの定電圧充電を、充電電流が0.01C以下になるまで行った。また、放電は、2.5V(カットオフ電圧)になるまで0.1Cの放電レートで定電流放電する条件とした。なお、0.1Cの電流は正極活物質の重量あたり20mA/gの電流ということができ、また、0.01C電流は正極活物質の重量あたり2mA/gの電流ということができる。
<温度別放電容量測定>
上記のエージング処理を行ったハーフセル1を用いて、温度別放電容量測定として、低温環境下での充電容量、及び放電容量の測定をおこなった。測定としては、20℃環境下での充放電、マイナス40℃環境下での充放電、マイナス30℃環境下での充放電、マイナス20℃環境下での充放電、マイナス10℃環境下での充放電、及び0℃環境下での充放電、の順に、各温度環境下での充電容量及び放電容量を測定した。
各温度環境下において、充電は4.60Vの電圧になるまで0.1Cの充電電流で定電流充電を行い、続けて4.60Vでの定電圧充電を、充電電流が0.01C以下になるまで行った。また、放電は、2.5V(カットオフ電圧)になるまで0.1Cの放電レートで定電流放電する条件とした。なお、0.1Cの電流は正極活物質の重量あたり20mA/gの電流ということができ、また、0.01C電流は正極活物質の重量あたり2mA/gの電流ということができる。
測定の結果を表1に示す。表1において、第1列は温度条件を示し、第2列は正極活物質重量当たりの充電容量を示し、第3列は正極活物質重量当たりの放電容量を示し、第4列はハーフセル1の放電容量を示している。また、第5列は、20℃における放電容量を100%とした場合の、各温度環境下における放電容量を、放電容量比率(%)として示している。また、各温度環境下における放電カーブを図22に示す。
低温環境下での充放電測定の結果、本発明の一態様の二次電池であるハーフセル1は、20℃環境下での充電及び放電において測定された放電容量値を100%としたとき、以下の良好な結果を得た。-40℃環境下での充電及び放電において測定された放電容量値は、77.2%であり、75%を超える良好な結果であった。また、-30℃環境下での充電及び放電において測定された放電容量値は、88.1%であり、85%を超える良好な結果であった。また、-20℃環境下での充電及び放電において測定された放電容量値は、94.2%であり、90%を超える良好な結果であった。また、-10℃環境下での充電及び放電において測定された放電容量値は、96.9%であり、95%を超える良好な結果であった。また、0℃環境下での充電及び放電において測定された放電容量値は、98.1%であり、98%を超える良好な結果であった。
<レート別放電容量測定>
上記のエージング処理を行ったハーフセル2を用いて、レート別(放電電流値別、放電速度別、等ともいう)の放電容量測定として、-40℃環境下での充電容量、及び放電容量の測定を、6種類の放電条件でおこなった。6種類の放電条件としては放電電流値を異ならせており、0.02C、0.1C、0.2C、0.3C、0.5C、及び1Cの順に、各放電条件での測定をおこなった。各放電条件における放電の前に、共通の充電条件での充電を実施した。なお、0.02Cの電流は正極活物質の重量あたり4mA/gの電流ということができ、0.1Cの電流は正極活物質の重量あたり20mA/gの電流ということができ、0.2Cの電流は正極活物質の重量あたり40mA/gの電流ということができ、0.3Cの電流は正極活物質の重量あたり60mA/gの電流ということができ、0.5Cの電流は正極活物質の重量あたり100mA/gの電流ということができ、1Cの電流は正極活物質の重量あたり200mA/gの電流ということができる。
充電は4.60Vの電圧になるまで0.1Cの充電電流で定電流充電を行い、続けて4.60Vでの定電圧充電を、充電電流が0.01C以下になるまで行った。また、放電は、2.5V(カットオフ電圧)になるまで、上記の6種類の放電電流条件で定電流放電する条件とした。
測定の結果を表2に示す。表2において、第1列は放電電流条件を示し、第2列は正極活物質重量当たりの充電容量を示し、第3列は正極活物質重量当たりの放電容量を示し、第4列はハーフセル2の放電容量を示している。また、第5列は、0.1Cにおける放電容量を100%とした場合の、各放電電流条件における放電容量を、放電容量比率(%)として示している。また、各放電レートにおける放電容量のグラフを図23に示す。
-40℃環境下での充放電測定の結果、本発明の一態様の二次電池であるハーフセル2は、0.1Cの放電電流条件において測定された放電容量値を100%としたとき、以下の良好な結果を得た。0.2Cの放電電流条件において測定された放電容量値は、82.7%であり、80%を超える良好な結果であった。また、0.3Cの放電電流条件において測定された放電容量値は、72.7%であり、70%を超える良好な結果であった。また、0.5Cの放電電流条件において測定された放電容量値は、57.3%であり、50%を超える良好な結果であった。なお、1Cの放電電流条件においてもハーフセル2は放電が可能であり、その放電容量値は、18.8%であった。つまり、本発明の一態様の二次電池は、-40℃の低温環境において、高い放電特性を有すると言える結果となった。
また、上記の-40℃環境下での充放電測定において、0.02Cの放電電流条件においては、充放電効率(充電容量に対する放電容量の割合)も良いことが明らかとなった。
以上の実施例にて示した通り、実施の形態2等に記載の作製方法により得られた正極活物質を備えたリチウムイオン電池は、少なくとも-40℃以上20℃以下の温度範囲で充電動作及び放電動作が可能であることが明らかとなった。また、且つ実施の形態1に記載の電解質を備えることで、-40℃以上20℃以下の温度範囲で、非常に優れた充電動作及び放電動作が可能であることが明らかとなった。
10 リチウムイオン電池
11 正極
12 負極
13 セパレータ
21 正極集電体
22 正極活物質層
31 負極集電体
32 負極活物質層
41 導電材
42 グラフェン
43 カーボンブラック
44 炭素繊維
51 電解質
100a 表層部
100a1 エッジ領域
100a2 ベーサル領域
100b 内部
100 正極活物質
2001 自動車
2200 電池パック
2100 携帯電話機
2107 二次電池

Claims (9)

  1. 正極活物質と、電解質と、を備えたリチウムイオン電池であって、
    前記正極活物質は、コバルトと、酸素と、マグネシウムと、アルミニウムと、ニッケルと、を有し、
    前記電解質は、六フッ化リン酸リチウムと、エチレンカーボネートと、エチルメチルカーボネートと、ジメチルカーボネートと、を含み、
    前記リチウムイオン電池は、20℃において第1の充電を行った後、20℃において第1の放電をおこなうときの第1の放電容量に対して、-40℃において第2の充電を行った後、-40℃において第2の放電をおこなうときの第2の放電容量が70%以上であり、
    前記第1の放電及び前記第2の放電は、前記正極活物質の重量あたり20mA/gの定電流放電である、リチウムイオン電池。
  2. 請求項1において、
    前記正極活物質は、前記マグネシウムと、前記アルミニウムと、を表層部に有し、
    前記表層部は前記正極活物質の表面から50nmまでの領域であり、
    前記正極活物質は、前記マグネシウムが前記アルミニウムより前記正極活物質の表面側に分布する領域を有する、リチウムイオン電池。
  3. 請求項2において、
    前記正極活物質は、空間群R-3mに属する層状岩塩型の結晶構造を有し、
    前記表層部は、前記結晶構造の(00l)面と平行な前記正極活物質の表面を有するベーサル領域と、前記(00l)面と交差する方向に露出する前記正極活物質の表面を有するエッジ領域と、を有し、
    前記エッジ領域は、前記ニッケルを有し、
    前記エッジ領域において、前記マグネシウムの分布と、前記ニッケルの分布とが重なる領域を有する、リチウムイオン電池。
  4. 請求項3において、
    前記ベーサル領域は、前記ニッケルを実質的に有さない、リチウムイオン電池。
  5. 請求項3において、
    前記正極活物質は、メジアン径が1μm以上12μm以下である、リチウムイオン電池。
  6. 請求項1乃至請求項5の何れか一に記載のリチウムイオン電池において、
    前記電解質は、前記エチレンカーボネート、前記エチルメチルカーボネート、及び前記ジメチルカーボネートの全含有量の体積を100vol%としたとき、前記エチレンカーボネート、前記エチルメチルカーボネート、及び前記ジメチルカーボネートの体積比が、x:y:100-x-y(ただし、5≦x≦35であり、0<y<65である)である、リチウムイオン電池。
  7. 請求項6に記載のリチウムイオン電池において、
    前記電解質は、前記エチレンカーボネート、前記エチルメチルカーボネート、及び前記ジメチルカーボネートの全含有量の体積に対して、0.5mol/L以上1.5mol/L以下の前記六フッ化リン酸リチウムを有する、リチウムイオン電池。
  8. 請求項1に記載のリチウムイオン電池を有する、電子機器。
  9. 請求項1に記載のリチウムイオン電池を有する、車両。
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