JP2023144384A - Ni基自溶合金 - Google Patents

Ni基自溶合金 Download PDF

Info

Publication number
JP2023144384A
JP2023144384A JP2022051325A JP2022051325A JP2023144384A JP 2023144384 A JP2023144384 A JP 2023144384A JP 2022051325 A JP2022051325 A JP 2022051325A JP 2022051325 A JP2022051325 A JP 2022051325A JP 2023144384 A JP2023144384 A JP 2023144384A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
mass
less
based self
fluxing alloy
double
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2022051325A
Other languages
English (en)
Inventor
友紀 廣野
Tomoki Hirono
俊之 澤田
Toshiyuki Sawada
滉大 三浦
Kodai Miura
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sanyo Special Steel Co Ltd
Original Assignee
Sanyo Special Steel Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sanyo Special Steel Co Ltd filed Critical Sanyo Special Steel Co Ltd
Priority to JP2022051325A priority Critical patent/JP2023144384A/ja
Publication of JP2023144384A publication Critical patent/JP2023144384A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Powder Metallurgy (AREA)

Abstract

【課題】耐摩耗性、フュージング性及び耐食性に優れた皮膜6が得られうる、Ni基自溶合金の提供。【解決手段】金属製品2は、主部4及び皮膜6を有している。皮膜6の材質は、Ni基自溶合金である。このNi基自溶合金は、C:0.40質量%以上1.00質量%以下、Si:3.0質量%以上5.0%質量%以下、Cr:10.0質量%以上20.0%質量%以下、Mo:4.0質量%以下、Cu:4.0質量%を超えて12.0質量%以下、Fe:5.0質量%以下、及びB:2.0質量%以上4.0質量%以下を含有する。残部は、Ni及び不可避的不純物である。【選択図】図1

Description

本明細書は、自溶性を有する合金を開示する。詳細には、本明細書は、ベース金属がNiである自溶合金を開示する。
金属製品の主部の表面に皮膜が形成される方法として、溶射法、肉盛溶接法、遠心鋳造法等が知られている。この皮膜には、Ni基自溶合金が適している。典型的なNi基自溶合金が、「JIS H8303 2010」に規定されている。このNi基自溶合金は、皮膜の耐食性及び耐摩耗性に寄与する。
この皮膜には通常、フュージング処理がなされる。フュージング処理では、皮膜が加熱され、皮膜に液相が出現する。この液相は、冷却によって凝固する。フュージング処理は、皮膜の緻密性を高めうる。特開2015-143372公報には、フュージング性に優れたNi基自溶合金が開示されている。このNi基自溶合金は、適正な量のSi及びBを含有する。この合金は、BやSiなどのフラックス成分を含み、かつSi/B:1.2~1.7を満たすようにSiとBのバランスを最適化することで、Ni固溶体の固液幅が広がり、溶射時の再溶融処理時の湯流れ性を抑えられ良好なフュージング性が得られることを見出している。
特開2015-143372公報
近年、過酷な腐食環境の用途において、皮膜を有する金属製品が使用されている。例えば、硫化雰囲気や、フッ酸が存在する環境下にて、この金属製品が使用されている。皮膜の耐食性の改善が、望まれている。特開2015-143372公報において、耐食性に関して述べられている部分は少ない。この公報では、Cr、Fe及びOが耐食性に与える影響について少し述べられているが、CuについてはNiマトリックス中に固溶して溶射皮膜全体の強度を高め、複炭化物や複硼化物の形成を促し組成を安定させる元素との記述だけであり、耐食性については一切述べられていない。
本出願人の意図するところは、耐摩耗性、フュージング性及び耐食性に優れた皮膜が得られうる、Ni基自溶合金の提供にある。
本実施形態に係るNi基自溶合金は、
C:0.40質量%以上1.00質量%以下、
Si:3.0質量%以上5.0%質量%以下、
Cr:10.0質量%以上20.0%質量%以下、
Mo:4.0質量%以下、
Cu:4.0質量%を超えて12.0質量%以下、
Fe:5.0質量%以下、
及び
B:2.0質量%以上4.0質量%以下
を含有する。残部は、Ni及び不可避的不純物である。好ましくは、Cr及びCuの合計含有率は、21.0質量%を超える。
他の観点による開示は、その材質がNi基自溶合金である粉末である。このNi基自溶合金は、
C:0.40質量%以上1.00質量%以下、
Si:3.0質量%以上5.0%質量%以下、
Cr:10.0質量%以上20.0%質量%以下、
Mo:4.0質量%以下、
Cu:4.0質量%を超えて12.0質量%以下、
Fe:5.0質量%以下、
及び
B:2.0質量%以上4.0質量%以下
を含有する。残部は、Ni及び不可避的不純物である。好ましくは、Cr及びCuの合計含有率は、21.0質量%を超える。
このNi基自溶合金は、フュージング性に優れる。このNi基自溶合金から、高硬度な皮膜が得られうる。この皮膜は、耐摩耗性に優れる。この皮膜はさらに、耐食性にも優れる。
図1は、一実施形態に係る金属製品の一部が模式的に示された断面図である。 図2は、図1の金属製品の皮膜が示された顕微鏡写真である。 図3は、他の実施形態に係る金属製品の皮膜が示された顕微鏡写真である。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態が説明される。
図1に示された金属製品2は、主部4と皮膜6とを有している。皮膜6は、主部4の表面を覆っている。皮膜6が、主部4の表面の全体を覆ってもよく、一部を覆ってもよい。主部4の典型的な材質は、金属材料である。種々の金属材料が、主部4に適している。皮膜6は、後に詳説される溶射法によって得られうる。皮膜6が、肉盛溶接法、遠心鋳造法等によって得られてもよい。これらの方法では、粉末が用いられる。後に詳説されるフュージング処理を経て、皮膜6が得られてもよい。
この粉末は、多数の粒子の集合である。これらの粒子の材質は、Ni基自溶合金である。このNi基自溶合金は、
C:0.40質量%以上1.00質量%以下、
Si:3.0質量%以上5.0%質量%以下、
Cr:10.0質量%以上20.0%質量%以下、
Mo:4.0質量%以下、
Cu:4.0質量%を超えて12.0質量%以下、
Fe:5.0質量%以下、
及び
B:2.0質量%以上4.0質量%以下
を含有する。残部は、Ni及び不可避的不純物である。
塩酸及び硫酸のような強い非酸化性酸の環境下において、Moが耐食性を示すことが、知られている。硝酸のような強い酸化性酸の環境下において、Crが優れた耐食性を示すことが、知られている。従来のNi基自溶合金は、Cr及びMoを含有する。従来のNi基自溶合金から得られた皮膜において、Cr及びMoは、耐食性に寄与する。従来のNi自溶性合金は、硬さ50~60HRC、凝固が完了する擬三元共晶晶出(Ni+NiB+NiSi)温度はおよそ970~980℃、高融点硼化物であるCrB晶出温度はおよそ1300~1450℃であることが知られている。また、耐食性については、塩酸、硫酸、弗酸、苛性ソーダなどの各種腐食環境に対して優れた耐食性を示し、塩酸や硫酸のような強い非酸化性酸には、Moが耐食性に優れ、硝酸のような強い酸化性酸には、Crが優れた耐食性を示すことが知られている。また、他にもベースとなる金属がFe基よりもNi基の方が酸化性酸や非酸化性酸の両方で耐食性に優れることがよく知られている。
従来のNi基自溶合金における、さらなる耐食性の観点からのCr及びMoの増量は、複炭化物及び複ホウ化物の過剰の生成を招く。この生成は、Cr欠乏相及びMo欠乏相を顕在させる。これら欠乏相は、腐食の進行を促す。Cr及びMoの過剰の添加は、かえって皮膜の耐食性を阻害しうる。
過剰のMoはγNi中に固溶する。この固溶は、γNi中のSi及びBの濃度を低下させ、合金の液相線温度を上昇させる。この合金の液相線温度と固相線温度との差は、大きい。この合金は、フュージング性に劣る。
本発明者は、Ni基自溶合金において、Cuの含有率に着目した。その役割は特開2015-143372公報にも記載されているように、溶射皮膜全体の強度を高め、複炭化物や複硼化物の形成を促し、組成を安定させるためである。そのため、SFNi4や特許事例の添加量としては、たかだか4%にとどまっている。新たに開発したNi自溶性合金組成において、4%を超えるCuを添加した場合においても、SFNi4の基礎特性を維持したままで、特に懸念される硬さ特性(50~60HRC)を損なわない上、耐食性に寄与することを見出した。Cuが耐食性に寄与するので、このNi基自溶合金が多量のCr及びMoを含有する必要は、ない。従ってこのNi基自溶合金は、フュージング性に優れる。このNi基自溶合金から、耐食性に優れた皮膜6が得られうる。
図2は、図1の皮膜6の顕微鏡写真である。この皮膜6におけるCuの含有率は、5.0質量%である。この皮膜6は、マトリックス8と、このマトリックス8に分散する複数の複ホウ化物10とを有している。それぞれの複ホウ化物10は、B、Cr及びMoを含んでいる。
図3には、他の皮膜6が示されている。この皮膜6におけるCuの含有率は、12.0質量%である。この皮膜6は、マトリックス8と、このマトリックス8に分散する複数の複ホウ化物10とを有している。図2との対比から明らかなように、図3の皮膜6では、複ホウ化物10の量が多い。図3に示されたそれぞれの複ホウ化物10のサイズは、大きい。
一般的なCu合金の硬度は、小さい。汎用のCu合金である黄銅、青銅及びコルソン合金の硬さは、それぞれ、80~150HBW、50~100HBW、50~100HBW及び247HBWと低く、Cuの添加量を増加させると硬さが低下することも容易に想定できる。また、一般的なCu合金は、耐摩耗性に劣る。本発明者は、Ni基自溶合金においてCuがγNi中に固溶すること、そして、この固溶により本来的にはγNi中に固溶されているCr及びMoがCuと置換されることを、見出した。十分なCuが添加されることにより、十分な量のCr及びMoが置換され、十分なサイズの複ホウ化物が十分に析出する。この複ホウ化物は、皮膜6の耐摩耗性に寄与しうる。つまり、本発明では、Cu添加は耐食性への効果が顕著であったが、複炭化物や複硼化物は耐摩耗性に効果的であることは一般に知られていることからも、複硼化物の形成量とサイズを調整可能な本発明材は、耐摩耗性においても有効である。また、硬さやフュージング性は維持したままで、複硼化物の形成量とサイズを調整可能であることも初めて見出した。このような、Ni基自溶合金におけるCuの役割は、本発明者が初めて見出したものである。また、上述の通り、耐食性をあげるためにCr及びMoに着目する特許や文献は存在しても、4%を超えるCuを添加したNi自溶性合金や特許は未だかつて存在しない。
以下、このNi基自溶合金の組成が詳説される。
[炭素(C)]
CはCrと結合し,クロム炭化物(Cr系炭化物)を形成する。Ni基自溶合金がMoを含む場合、Cは、クロム炭化物にMoが固溶した複炭化物も、形成しうる。クロム炭化物及び複炭化物は、硬質である。十分なCを含むNi基自溶合金から、硬度が大きくかつ耐摩耗性に優れた皮膜6が得られうる。耐摩耗性の観点から、Cの含有率は0.40質量%以上が好ましく、0.50質量%以上がより好ましく、0.60質量%以上が特に好ましい。過剰のCは、過剰の複炭化物の生成を招く。過剰の複炭化物を含む皮膜6は、靱性に劣る。さらに、過剰の複炭化物の生成は、Cr欠乏相の生成を招き、皮膜6の耐食性を損なう。靱性及び耐食性の観点から、Cの含有率は1.00質量%以下が好ましく、0.95質量%以下がより好ましく、0.90質量%以下が特に好ましい。
[ケイ素(Si)]
Siは、フュージング処理における自溶性に寄与しうる。Siは、フュージング処理において、金属酸化物を還元しうる。さらにSiは、マトリックス中で、擬三元共晶組織であるNiSiとして存在し、皮膜6の硬度及び耐摩耗性に寄与する。これらの観点から、Siの含有率は3.0質量%以上が好ましく、3.1質量%以上がより好ましく、3.3質量%以上が特に好ましい。過剰のSiは、皮膜6の靱性を阻害する。この観点から、Siの含有率は5.0質量%以下が好ましく、4.8質量%以下がより好ましく、4.6質量%以下が特に好ましい。
[クロム(Cr)]
CrはCと結合し、クロム炭化物(Cr系炭化物)を形成する。Crは、Bと結合し、クロムホウ化物(CrB)を形成する。Ni基自溶合金がMoを含む場合、Crは、クロム炭化物にMoが固溶した複炭化物、及びクロムホウ化物にMoが固溶した複ホウ化物も、形成しうる。この炭化物、ホウ化物、複炭化物及び複ホウ化物は、硬質である。十分なCr含むNi基自溶合金から、硬度が大きくかつ耐摩耗性に優れた皮膜6が得られうる。さらにCrは、マトリックスに固溶して、皮膜6の耐食性に寄与する。これらの観点から、Crの含有率は10.0質量%以上が好ましく、12.0質量%以上がより好ましく、14.0質量%以上が特に好ましい。過剰のCrは、過剰の複炭化物又は複ホウ化物の生成を招く。過剰の複炭化物又は複ホウ化物を含む皮膜6は、靱性に劣る。さらに、過剰の複炭化物及び複ホウ化物の生成は、Cr欠乏相の生成を招き、皮膜6の耐食性を損なう。靱性及び耐食性の観点から、Crの含有率は20.0質量%以下が好ましく、19.5質量%以下がより好ましく、19.0質量%以下が特に好ましい。
[モリブデン(Mo)]
Moは、Cと結合して複炭化物を形成する。Moはさらに、Bと結合して複ホウ化物を形成する。複炭化物及び複ホウ化物は、皮膜6の硬度及び耐摩耗性に寄与しうる。耐摩耗性の観点から、Moの含有率は0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、0.9質量%以上が特に好ましい。かかるMoの役割は、Crの役割に近い。本実施形態に係るNi基自溶合金はCrを十分に含有するので、このNi基自溶合金がMoを含まない組成を有してよい。換言すれば、Moの含有率が実質的にゼロ(検出限界未満)であってよい。過剰のMoは、過剰の複ホウ化物の生成を招く。過剰の複ホウ化物を含む皮膜6は、靱性に劣る。さらに、過剰の複ホウ化物の生成は、Mo欠乏相の生成を招き、皮膜6の耐食性を損なう。さらに、粉末の製造がアトマイズでなされる場合、過剰のMoは、粗大なホウ化物に起因するノズルの閉塞を招来する。靱性、耐食性及び取り扱い容易性の観点から、Moの含有率は4.0質量%以下が好ましく、3.8質量%以下がより好ましく、3.5質量%以下が特に好ましい。
[銅(Cu)]
本実施形態においてCuは、極めて重要な元素である。Cuは、γNi中に固溶する。Cuは、皮膜6の耐摩耗性に寄与しうる。Cuは、もしNi基自溶合金がCuを含有しない場合にγNi中に固溶するであろうCr及びMoと置換して、γNi中に固溶する。従ってCuは、γNi中のB及びSiに大きな影響を与えない。このNi基自溶合金では、適度な液相線温度(例えば1000℃から1100℃)が達成されうる。このNi基自溶合金は、フュージング性に優れる。Cuと置換されたCr及びMoは、複炭化物及び複硼化物を形成する。この複炭化物及び複硼化物は、皮膜6の耐摩耗性に寄与する。複炭化物及び複硼化物は皮膜6の高硬度にも寄与しうる。このNi基自溶合金から、元来軟質であるCuを含むにもかかわらず適切な硬度(例えば50から60HRC)を有する皮膜6が、得られうる。Cr及びMoとの置換の観点から、Cuの含有率は4.0質量%を超えることが好ましく、4.5質量%以上がより好ましく、4.8質量%以上が特に好ましい。硬度及び耐摩耗性の観点から、Cuの含有率は12.0質量%以下が好ましく、11.5質量%以下がより好ましく、10.0質量%以下が特に好ましい。
[鉄(Fe)]
Feは、Niマトリックス中に固溶し、皮膜6の強度に寄与する。Feがマトリックスに固溶した皮膜6は、耐食性にも優れる。Feの固溶により、FeがFe化合物として存在しないため、Fe析出物が起点であるクラックに起因する、破損が生じにくい。これらの観点から、Feの含有率は0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上が特に好ましい。本実施形態において、Feは必須の元素ではない。従って、Feの含有率が実質的にゼロ(検出限界未満)であってよい。皮膜6の硬度、耐食性及び耐摩耗性の観点から、Feの含有率は5.0質量%以下が好ましく、4.0質量以下がより好ましく、3.0質量%以下が特に好ましい。
[ホウ素(B)]
Bを含むNi基自溶合金では、低い固相線温度及び低い液相線温度が達成されうる。従ってBは、フュージング処理における自溶性に寄与しうる。Bは、フュージング処理において、金属酸化物を還元しうる。Bは、Moと結合して複ホウ化物を形成する。この複ホウ化物は、皮膜6の硬度及び耐摩耗性に寄与する。さらにBは、マトリックス中で、擬三元共晶組織であるNiBとして存在し、マトリックスの硬度及び耐摩耗性に寄与する。これらの観点から、Bの含有率は2.0質量%以上が好ましく、2.3質量%以上がより好ましく、2.4質量%以上が特に好ましい。Bの含有率が過剰であると、過剰の複ホウ化物が生成される。過剰の複ホウ化物は、皮膜6の靱性を阻害する。粉末の製造がアトマイズでなされる場合、過剰のBは、粗大なホウ化物に起因するノズルの閉塞を招来する。さらに、過剰の複ホウ化物の生成は、Cr欠乏相及びMo欠乏相の生成を招き、皮膜6の耐食性を損なう。皮膜6の靱性、生産性及び耐食性の観点から、Bの含有率は4.0質量%以下が好ましく、3.9質量%以下がより好ましく、3.7質量%以下が特に好ましい。
[ニッケル(Ni)]
この合金の基材は、Niである。Niは、合金の低融点に寄与しうる。Niはさらに、皮膜6の耐食性及び靱性に寄与しうる。これらの観点から、Niの含有率は50質量%以上が好ましく、55質量%以上が特に好ましい。
[Cr+Cu]
Cr及びCuの合計含有率は、好ましくは、21.0質量%を超える。このNi基自溶合金から、対硫化性及び対フッ酸性に優れた皮膜が得られうる。この観点から、この合計含有率は21.1質量%以上がより好ましく、21.2質量%以上が特に好ましい。この合計含有率は、32.0質量%以下が好ましい。
[粉末の製造]
粉末は、好ましくは、アトマイズ法によって得られる。ガスアトマイズ法、ディスクアトマイズ法、水アトマイズ法、遠心アトマイズ法等が、採用される。好ましいアトマイズは、ガスアトマイズ法及びディスクアトマイズ法である。アトマイズによって得られた粉末に、メカニカルミリング等が施されてもよい。
[皮膜の形成]
皮膜6は、種々の方法によって形成されうる。皮膜6に適した方法として、肉盛溶接法、遠心鋳造法溶射法及び溶射法が挙げられる。フュージング処理を経て、皮膜6が形成されてもよい。
以下、実施例に係るNi基自溶合金の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本明細書で開示された範囲が限定的に解釈されるべきではない。
[実施例1]
表1に示された組成を有する原料を、耐火物製坩堝に投入した。この原料を、アルゴンガス中にて誘導溶解し、溶湯を得た。この溶湯を坩堝のノズルから出し、これに高圧窒素ガスを噴霧して、粉末を得た。この粉末を篩によって分級し、粒子径を45μm以上125μm以下に調整して、実施例1の粉末を得た。
[実施例2-15及び比較例1-2、4-7及び9-12]
組成を下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2-19並びに比較例1-7及び10-12の金属製品を得た。
[比較例3及び8]
組成を下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、アトマイズを試みた。溶湯がノズルを閉塞させたため、アトマイズを中止した。
Figure 2023144384000002
各実施例及び各比較例の合金は、表1に示された元素以外に、Ni及び不可避的不純物を含有している。
[晶出温度及び凝固完了温度の測定]
原料を耐火物製坩堝に投入し、真空中で誘導加熱した。原料の溶け始めを確認した後、雰囲気をArガスに置換した。誘導加熱を続け、原料の溶融の完了を確認した。さらに誘導加熱を続け、1600℃に達した時点で加熱を止めた。この原料を炉冷し、インゴットを得た。炉冷中の、時間に対する温度変化を観察して、高融点硼化物の晶出温度と、凝固完了温度とを測定した。晶出温度及び凝固完了温度において、温度変化曲線はプラトーを示す。最も低温のプラトーの温度は、凝固完了温度である。測定結果が、下記の表2に示されている。
[硬さ]
前述の温度の測定で得られたインゴットから、サイズが15mm×15mm×15mmであるブロック状試験片を切り出した。この試験片の表面を研磨した後、ロックウェル硬さを測定した。5回の測定の平均値が、下記の表2に示されている。
[耐フッ酸性]
前述の温度の測定で得られたインゴットから、サイズが10mm×14mm×4mmである板状試験片を切り出した。この試験片を、下記の条件の耐食試験に供した。
腐食液:10%フッ酸水溶液
温度:40℃
時間:10時間
この試験の後の腐食度が、下記の表2に、指数として示されている。
[耐硫化性]
前述の温度の測定で得られたインゴットから、サイズが10mm×14mm×4mmである板状試験片を切り出した。この試験片を、硫化水素ガス腐食試験に供した。この試験の後の腐食度が、下記の表2に、指数として示されている。
Figure 2023144384000003
表1及び2に示される通り、各実施例に係るNi基自溶合金は、対称性に優れている。このNi基自溶合金の凝固完了温度は、「JIS H8303 2010」に規定されている合金のそれと比べ、遜色ない。このNi基自溶合金のホウ化物晶出温度は、「JIS H8303 2010」に規定されている合金のそれと比べ、遜色ない。このNi基自溶合金から得られる皮膜の硬度は、「JIS H8303 2010」に規定されている合金のそれと比べ、遜色ない。これらの評価結果から、このNi基自溶合金の優位性は明らかである。
以上説明されたNi基自溶合金は、機械部品等に適している。この合金は特に、航空機、自動車、製造装置等の皮膜に適している。
2・・・製品
4・・・主部
6・・・皮膜
8・・・マトリックス
10・・・複ホウ化物

Claims (4)

  1. C:0.40質量%以上1.00質量%以下、
    Si:3.0質量%以上5.0%質量%以下、
    Cr:10.0質量%以上20.0%質量%以下、
    Mo:4.0質量%以下、
    Cu:4.0質量%を超えて12.0質量%以下、
    Fe:5.0質量%以下、
    及び
    B:2.0質量%以上4.0質量%以下
    を含有しており、
    残部がNi及び不可避的不純物である、Ni基自溶合金。
  2. Cr及びCuの合計含有率が21.0質量%を超える、請求項1に記載のNi基自溶合金。
  3. その材質がNi基自溶合金であり、
    上記Ni基自溶合金が、
    C:0.40質量%以上1.00質量%以下、
    Si:3.0質量%以上5.0%質量%以下、
    Cr:10.0質量%以上20.0%質量%以下、
    Mo:4.0質量%以下、
    Cu:4.0質量%を超えて12.0質量%以下、
    Fe:5.0質量%以下、
    及び
    B:2.0質量%以上4.0質量%以下
    を含有しており、
    残部がNi及び不可避的不純物である、粉末。
  4. Cr及びCuの合計含有率が21.0質量%を超える、請求項3に記載の粉末。
JP2022051325A 2022-03-28 2022-03-28 Ni基自溶合金 Pending JP2023144384A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022051325A JP2023144384A (ja) 2022-03-28 2022-03-28 Ni基自溶合金

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022051325A JP2023144384A (ja) 2022-03-28 2022-03-28 Ni基自溶合金

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023144384A true JP2023144384A (ja) 2023-10-11

Family

ID=88252835

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2022051325A Pending JP2023144384A (ja) 2022-03-28 2022-03-28 Ni基自溶合金

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2023144384A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR101843070B1 (ko) Ni-Fe-Cr계 합금이 덧씌워진 엔진밸브
US7803223B2 (en) Formation of metallic thermal barrier alloys
JP5486093B2 (ja) 耐摩耗性コバルト基合金とそれを盛金したエンジンバルブ
US11597992B2 (en) Ni-based thermal spraying alloy powder and method for manufacturing alloy coating
JPS6054389B2 (ja) 合金被覆をした鉄金属基体
WO2012063511A1 (ja) 高靭性コバルト基合金とそれを盛金したエンジンバルブ
JP4463763B2 (ja) 耐摩耗性、耐食性コバルト系合金
JP2007527952A5 (ja)
KR20200063383A (ko) 저융점 및 고내식성을 갖는 Ni-Cr-Fe-P계 브레이징용 합금분말 및 이의 제조 방법
JP2023144384A (ja) Ni基自溶合金
CN110484916A (zh) 一种高速及超高速激光熔覆用镍基合金粉末
JP5699774B2 (ja) アルミニウム合金材及びその製造方法
JP4762583B2 (ja) Ni基自溶合金粉末およびその粉末を用いた耐食性、耐摩耗部品
JP2004162100A (ja) 肉盛用銅合金粉末
CN102672166A (zh) 一种新型高温耐磨铁基合金粉末
JP2023130647A (ja) Ni基自溶合金
JP5292007B2 (ja) 溶射合金、表面層を備えた部材およびその製造方法
JP7406329B2 (ja) Ni-Cr-Mo系析出硬化型合金
JP2024094761A (ja) Ni基自溶合金
JP6179325B2 (ja) 連続鋳造用モールド材
JP3480698B2 (ja) 高温における強度−延性バランスに優れるCr基合金
JP5855357B2 (ja) Ni基ホウ化物分散耐食耐摩耗合金
JP5449936B2 (ja) 耐摩耗性、潤滑性に優れるCo基合金とその製造法およびその焼結体
JP2023031420A (ja) Ni基自溶合金
JP4279029B2 (ja) Ni基ホウ化物分散耐食、耐摩耗性合金の複合化方法