JP2023135904A - フェノール樹脂組成物、当該組成物から得られる硬化体、成形材料および成形体 - Google Patents

フェノール樹脂組成物、当該組成物から得られる硬化体、成形材料および成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】曲げ強度や曲げ弾性率等の機械的強度に優れた成形体が得られるフェノール樹脂組成物を提供する。【解決手段】本発明のフェノール樹脂組成物は、フェノール樹脂(A)と、球状フェノール樹脂硬化物(B)と、を含み、球状フェノール樹脂硬化物(B)はレゾール樹脂の硬化物である。【選択図】なし

Description

本発明は、フェノール樹脂組成物、当該組成物から得られる硬化体、成形材料および成形体に関する。
フェノール樹脂の硬化物は、耐熱性等の物理的特性が優れていることから、従来から、機械構造部品、自動車用部品、電気機器部品、通信機器部品等の各種製品に広く採用されている。このような製品は、一般に、フェノール樹脂に各種添加剤や充填材等を配合してなる樹脂組成物を用いて、公知の成形方法により製造されている。
特許文献1には、低表面張力物質によって被覆された自己硬化性を有する粒状変性ノボラック樹脂と、粒状変性ノボラック樹脂をCステージまで硬化させた粒状フェノール樹脂とを、所定の量で含有するフェノール樹脂成形材料が開示されている。
特許文献2には、所定の重量平均分子量のベンジリックエーテル型レゾールからなるフェノール樹脂と、所定の重量平均分子量および溶解度を有する熱硬化性のフェノール樹脂とを、含有する熱硬化性樹脂組成物が開示されている。
特許文献3には、繊維で形成された基材と、粒状樹脂と、前記繊維に含浸され、前記粒状樹脂と前記基材とを結合するバインダー樹脂とを含むアブレータが開示されている。
特開平11-60897号公報 特開2006-307186号公報 国際公開第2015/156368号
しかしながら、特許文献1~3に記載のフェノール樹脂組成物から得られた成形体は、曲げ強度や曲げ弾性率に改善の余地があった。
本発明者らは、フェノール樹脂と、特定の球状フェノール樹脂硬化物を含むことにより曲げ強度および曲げ弾性率等の機械的強度を改善できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下に示すことができる。
本発明によれば、
(A)フェノール樹脂と、
(B)球状フェノール樹脂硬化物と、を含み、
球状フェノール樹脂硬化物(B)はレゾール樹脂の硬化物である、フェノール樹脂組成物を提供することができる。
本発明によれば、
前記フェノール樹脂組成物の硬化体を提供することができる。
本発明によれば、曲げ強度や曲げ弾性率等の機械的強度に優れた成形体が得られるフェノール樹脂組成物を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。また、例えば「1~10」は特に断りがなければ「1以上」から「10以下」を表す。
本実施形態のフェノール樹脂組成物は、フェノール樹脂(A)と、球状フェノール樹脂硬化物(B)と、を含む。この球状フェノール樹脂硬化物(B)はレゾール樹脂の硬化物である。
本実施形態のフェノール樹脂組成物によれば、曲げ強度や曲げ弾性率等の機械的強度に優れた成形体を得ることができる。
以下、各成分について説明する。
[フェノール樹脂(A)]
本実施形態のフェノール樹脂(A)としては、本発明の効果を奏する範囲で公知のフェノール樹脂を用いることができる。
フェノール樹脂(A)は、例えば、フェノール樹脂、クレゾール樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール、ブチルフェノール、オクチルフェノール、カルダノール、α-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のフェノール類とホルムアルデヒドやケトン類とを酸性触媒、遷移金属触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂、塩基性触媒下で粛降または今日縮合させて得られるレゾール樹脂、上記したフェノール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂などのフェノールアラルキル樹脂、トリスフェニルメタン骨格を有するフェノール樹脂などが挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態において、フェノール樹脂(A)は、本発明の効果の観点から、フェノールノボラック樹脂、フェノールレゾール樹脂、クレゾールノボラック樹脂、クレゾールレゾール樹脂、フェノール・クレゾールノボラック樹脂、フェノールクレゾールレゾール樹脂、フェノール・ビスフェノールAノボラック樹脂、フェノール・ビスフェノールAレゾール樹脂が好ましい。
本実施形態のフェノール樹脂組成物100質量%は、フェノール樹脂(A)を5質量%以上95質量%以下、好ましくは20質量%以上90質量%以下、より好ましくは30質量%以上80質量%以下の量で含むことができる。
[球状フェノール樹脂硬化物(B)]
球状フェノール樹脂硬化物(B)はレゾール樹脂の硬化物である。
前記レゾール樹脂は含窒素構造を含むことが好ましく、具体的には、分子中に、下記の化学式(1)で表されるアルキレンアミン由来の構造単位を、少なくとも1個以上有する。
Figure 2023135904000001
上記一般式(1)中、Rは、それぞれ独立して、炭素数1~10の直鎖状または分岐状のアルキレン基を表す。Rのアルキレン基の炭素数は、例えば、1~10、好ましくは2~6、より好ましくは2~4ある。上記範囲内とすることで、硬化体の曲げ強度や曲げ弾性率等の機械的強度を向上することができる。
レゾール樹脂は、分子中に、下記の化学式(2)で表されるエチレンアミン由来の構造単位を、少なくとも1個以上有するものを含んでもよい。
Figure 2023135904000002
本実施形態において、前記レゾール樹脂は、化学式(2)で表されるエチレンアミン由来の構造単位で架橋されていることが好ましく、すなわちエチレン架橋体であることが好ましい。
レゾール樹脂中におけるエチレンアミン由来の構造単位の含有比率の下限は、例えば、3重量%以上、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上である。これにより、球状フェノール樹脂硬化物とレゾール樹脂との界面接着が良好となり曲げ強度や曲げ弾性率等の機械的強度を向上することができる。一方、フェノール樹脂中におけるエチレンアミン由来の構造単位の含有比率の上限は、例えば、50重量%以下、好ましくは45重量%以下、より好ましくは40重量%以下でもよい。これにより、球状フェノール樹脂硬化物の固さを適当に調整することができる。
エチレンアミン由来構造の含有率は、以下の式に基づいて算出できる。式中の含窒素量(重量%)は、元素分析法により測定できる。
エチレンアミン由来構造の含有率=含窒素量×(43/14)
本実施形態の球状フェノール樹脂硬化物(B)の平均粒子径は、用途によってその最適な範囲が異なり、用途に応じて適宜選択することができる。
本実施形態の球状フェノール樹脂硬化物(B)の平均粒子径の下限値は、例えば、0.1μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、5μm以上がさらに好ましい。
また、本実施形態の球状フェノール樹脂硬化物(B)の平均粒子径の上限値は、例えば、1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましい。
球状フェノール樹脂硬化物(B)の平均粒子径が上記数値範囲内であることで、フェノール樹脂組成物中および硬化体中の球状フェノール樹脂硬化物(B)の分散性を改善することができ、硬化体の曲げ強度や曲げ弾性率等の機械的強度に優れる。
球状フェノール樹脂硬化物(B)は、本発明の効果の観点から、平均粒子径の異なる球状フェノール樹脂硬化物を少なくとも1種含むことができる。
球状フェノール樹脂硬化物(B)の平均粒子径はレーザー散乱式粒度分布計で測定することができる。
球状フェノール樹脂硬化物(B)のかさ比重の下限値は、例えば、0.10g/ml以上が好ましく、0.15g/ml以上がより好ましく、0.20g/ml以上が更に好ましい。
球状フェノール樹脂硬化物(B)のかさ比重の上限値は、例えば、1.00g/ml以下が好ましく、0.90g/ml以下がより好ましく、0.80g/ml以下が更に好ましい。
なお、本実施形態において、球状フェノール樹脂硬化物(B)のかさ比重は、例えば、ホソカワミクロン株式会社製パウダーテスターPT-Xを用いて評価することができる。
本実施形態のフェノール樹脂組成物100質量%は、球状フェノール樹脂硬化物(B)を5質量%以上95質量%以下、好ましくは10質量%以上80質量%以下、より好ましくは20質量%以上50質量%以下の量で含むことができる。
[球状フェノール樹脂硬化物(B)の製造方法]
球状フェノール樹脂硬化物(B)は以下の方法で製造することができる。
本実施形態の球状フェノール樹脂硬化物(B)の製造方法は、
フェノール類と、アルデヒド類と、親水性高分子とを含む混合液を作製する準備工程と、
混合液を撹拌し、フェノール類と、アルデヒド類とを反応させ、懸濁粒子を形成する反応工程、硬化させる工程と、を含む。
以下、各工程について詳細を説明する。
(準備工程)
準備工程では、フェノール類と、アルデヒド類と、親水性高分子と、親水性溶媒とを含む混合液を作製する。
以下、混合液の各成分について詳細を説明する。
(フェノール類)
フェノール類としては限定されず、具体的には、フェノール;o-ジヒドロキシベンゼン(すなわち、カテコール)、m-ジヒドロキシベンゼン(すなわち、レゾルシノール、すなわち、レゾルシン)、p-ジヒドロキシベンゼン(すなわち、ヒドロキノン)などのジヒドロキシベンゼン;1,2,3-トリヒドロキシベンゼン(すなわち、ピロガロール)などのトリヒドロキシベンゼン;o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、オキソクレゾールなどのクレゾール;エチルフェノール、ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノールなどのアルキルフェノール;キシレノール;3-ペンタデシルフェノール、3-ペンタデシルフェノールモノエン、3-ペンタデシルフェノールジエン、3-ペンタデシルフェノールトリエンなどのカシューオイルの含有成分;1,3-ジヒドロキシ-5-ペンタデシルベンゼン、1,3-ジヒドロキシ-5-ペンタデシルベンゼンモノエン、1,3-ジヒドロキシ-5-ペンタデシルベンゼンジエン、1,3-ジヒドロキシ-5-ペンタデシルベンゼントリエンといったカルドールの含有成分;2-メチル-1,3-ジヒドロキシ-5-ペンタデシルベンゼン、2-メチル-1,3-ジヒドロキシ-5-ペンタデシルベンゼンモノエン、2-メチル-1,3-ジヒドロキシ-5-ペンタデシルベンゼンジエン、2-メチル-1,3-ジヒドロキシ-5-ペンタデシルベンゼントリエンといったメチルカルドールの含有成分;ウルシオール;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSといったビスフェノール類;p-フェニルフェノール;スチレン化フェノールなどが挙げられる。フェノール類としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。フェノール類としては、上記具体例のうち例えば、フェノール、クレゾール及びアルキルフェノールからなる群から選択される1種以上を用いることが好ましく、フェノールを用いることがより好ましい。これにより、硬化体の曲げ強度や曲げ弾性率等の機械的強度を向上することができる。
(アルデヒド類)
アルデヒド類としては限定されず、具体的には、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、パラアルデヒド、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒド、サリチルアルデヒド、フルフラール、グリオキザールなどが挙げられる。アルデヒド類としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、ヘキサメチレンテトラミンといったアルデヒド化合物の発生源となる化合物を用いてもよい。アルデヒド類としては、上記具体例のうち例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドからなる群から選択される1種以上を用いることが好ましく、ホルムアルデヒドを用いることがより好ましい。これにより、硬化の程度を制御しやすくなる。
混合液中のフェノール類と、アルデヒド類との仕込み量としては、例えば、フェノール類に対するアルデヒド類のモル比(アルデヒド類/フェノール類)が0.8以上4.0以下となるようにすることができる。これにより、フェノール類と、アルデヒド類とが反応することで、レゾール型フェノール樹脂、さらに、一部がレゾール型フェノール樹脂の架橋体となり、混合液中で、粒子状に分散できる。
(親水性高分子)
本実施形態の球状フェノール樹脂硬化物(B)の製造方法は湿式法である。親水性高分子は、フェノール類及びアルデヒド類の表面に付着し、フェノール類及びアルデヒド類を親水性溶媒中の中で球状に分散させ、あたかも、フェノール類及びアルデヒド類と、親水性溶媒とをO/Wエマルションのように分散させるために必要である。これにより、所望の形状の懸濁粒子を作製することができる。
親水性高分子としては限定されず、具体的には、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースカチオン化物などの水溶性セルロース誘導体;ポリビニルアルコール;アルギン酸;グアガム:アラビアガムなどを挙げることができる。親水性高分子としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。親水性高分子としては、上記具体例のうち例えば、ヒドロキシエチルセルロース、グアガム及びアラビアガムからなる群より選択される1種以上を用いることが好ましく、ヒドロキシエチルセルロースを用いることがより好ましい。これにより、球状フェノール樹脂硬化物(B)の粒径を所望の数値範囲内とすることができる。
(反応工程)
反応工程では、混合液を撹拌し、フェノール類と、アルデヒド類とを反応させ、懸濁粒子を形成する。
フェノール類と、アルデヒド類とを反応させ、懸濁粒子を形成する方法としては、混合液を撹拌することによって行うことができる。
フェノール類と、アルデヒド類との反応は、例えば、塩基性触媒下で行う。反応工程では、フェノール類と、アルデヒド類とが反応してレゾール型フェノール樹脂となり、さらに、レゾール型フェノール樹脂の一部が互いに架橋し架橋体となる。反応工程では架橋は完全には進行せず、後述する硬化工程においてさらに架橋が進行し、硬化する。すなわち、懸濁粒子は、例えば、レゾール型フェノール樹脂と、レゾール型フェノール樹脂の架橋体とを含む。
なお、懸濁粒子を形成した後、例えば、懸濁粒子を洗浄し、懸濁粒子表面の親水性高分子を除去してもよい。球状フェノール樹脂硬化物(B)の粒子同士の凝集、付着による取り扱い性をさらに向上させることができる。
洗浄する方法としては限定されないが、例えば、懸濁粒子を大量の純水といった親水性溶媒中に分散させる方法を用いることができる。これにより、懸濁粒子表面の親水性溶媒を除去できる。洗浄する方法としては、例えば、懸濁粒子の質量に対して、1倍以上2倍以下の親水性溶媒によって、3回以上の洗浄を行うことが好ましく、5回以上の洗浄を行うことがより好ましい。これにより、不純物の含有量を所望の数値範囲まで低減することができ、高いクリーン度の要求される用途にも展開できる点で好ましい。
なお、洗浄回数は生産工程が煩雑にならない範囲で多くすることが好ましいが、洗浄回数の上限値としては、例えば、10回以下としてもよい。
(塩基性触媒)
塩基性触媒としては、従来レゾール型フェノール樹脂を作製するために、フェノール類と、アルデヒド類との反応に用いられているものであれば限定されない。塩基性触媒としては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;カルシウム、マグネシウム、バリウムなどアルカリ土類金属の酸化物及び水酸化物;炭酸ナトリウム、アンモニア水、N-(2-アミノエチル)プロパノールアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンテトラミン(すなわち、ヘキサミン)などのアミン類などを用いることができる。塩基性触媒としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
塩基性触媒としては、アミン類が好ましく、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンテトラミンがより好ましい。
(硬化工程)
硬化工程では、懸濁粒子(フェノール樹脂粒子)を、温度50℃を越え200℃未満で熱処理することで、懸濁粒子を硬化して球状フェノール樹脂硬化物(B)を得る。
具体的には、熱処理によって、懸濁粒子中のレゾール型フェノール樹脂をさらに架橋し、架橋体とすることで硬化させる。なお、球状フェノール樹脂硬化物(B)を好適に低密度化させる観点から、例えば、一部のレゾール型フェノール樹脂は架橋しないで残存することが好ましい。すなわち、球状フェノール樹脂硬化物(B)は、例えば、レゾール型フェノール樹脂と、レゾール型フェノール樹脂の架橋体とを含むことが好ましい。
熱処理する方法としては限定されず、大気圧下、減圧下、気体中、液体中等、従来公知の方法で行うことができる。また、反応工程でそのまま加熱を継続し、硬化させても良い。
硬化工程における熱処理の温度の上限値としては、200℃未満であり、例えば、170℃未満であることが好ましく、150℃以下であることが好ましく、135℃以下であることがより好ましく、130℃以下であることが更に好ましい。これにより、球状フェノール樹脂硬化物(B)の酸化を抑制でき、フェノール樹脂との馴染みをよくすることができる。
また、硬化工程における熱処理の温度の下限値としては、50℃を越えるものであり、例えば、80℃以上であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましい。これにより、フェノール樹脂粒子同士の融着を抑制し、取り扱い性を向上させることができる。
硬化工程における熱処理の時間の上限値としては、例えば、24時間以下であり、12時間以下であることが好ましく、8時間以下であることが更に好ましく、6時間以下であることが一層好ましい。これにより、フェノール樹脂粒子の硬度を適切な範囲に調整することができる。
硬化工程における熱処理時間の下限値としては、例えば、0分を超える時間であり、30分間以上であることが好ましく、1時間以上であることがより好ましく、2時間以上であることがさらに好ましい。これにより、フェノール樹脂粒子中のレゾール型フェノール樹脂同士が架橋し、球状フェノール樹脂硬化物(B)が適切に硬化が進行する。
また、必要に応じて乾燥工程を設けてもかまわない。懸濁粒子(フェノール樹脂粒子)を、温度60℃以上150℃以下で熱処理することで、懸濁粒子から親水性溶媒を取り除く。熱処理する方法としては限定されず、大気圧下で気体中、または、減圧下で行う方法であれば、従来公知の方法で行うことができる。
上述したように硬化工程、乾燥工程は、連続して大気下で気体中、または、減圧下で行われる限り従来公知の方法を採用することができる。乾燥工程、硬化工程を連続して行う観点から、乾燥工程、硬化工程を行う方法としては、例えば、熱風乾燥機、減圧撹拌乾燥装置を用いることが好ましい。
また、組成物としたときの均一性を向上させるため、必要に応じて乾燥後の球状フェノール樹脂硬化物(B)をさらに解砕してもかまわない。解砕する方法としては、例えばピンミル、ナイフミル、ハンマーミル等の衝撃式の粉砕機、ジェットミル、カウンタージェットミル等の気流式粉砕機などが挙げられる。
[硬化剤]
本実施形態のフェノール樹脂組成物は、硬化剤を含むことができる。
硬化剤は、フェノール樹脂(A)の種類に応じて適宜選択することができ、へキサメチレンテトラミン、イソシアネート樹脂、エポキシ樹脂及びヘキサメトキシメチロールメラミン、レゾール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。これらの中では、ヘキサメチレンテトラミン、レゾール樹脂を用いることが好ましい。
[その他の成分]
本実施形態の樹脂組成物は、用途や必要に応じてその他の成分を含んでもよい。
その他の成分としては、硬化促進剤、その他の樹脂成分、離型剤、顔料、染料、難燃剤、密着向上剤、カップリング剤、靭性付与材、発泡剤等を挙げることができる。
上記硬化促進剤としては、特に限定されず、通常の硬化促進剤を用いることが出来、例えば、酸化マグネシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどのアルカリ土類金属の酸化物又は水酸化物、コハク酸、サリチル酸、安息香酸、パラトルエンスルホン酸などの有機酸、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸を例示することができる。
上記その他の樹脂成分としては、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂等のトリアジン環を有する樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、シアネートエステル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂が挙げられる。また必要によりこれらの複数種を組み合わせて用いることもできる。
上記離型剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ポリエチレンなどが挙げられる。
上記顔料としては、例えば、カーボンブラックなどが挙げられる。
<フェノール樹脂組成物・硬化体>
本実施形態のフェノール樹脂組成物は、フェノール樹脂(A)と、球状フェノール樹脂硬化物(B)と、必要に応じて硬化剤と、その他の成分とを混合して得ることができる。混合する方法としては例えば、撹拌翼を備えたバッチ式容器で溶剤を添加し溶解混合あるいは溶剤無しで加熱溶融混合したり、ニーダー、ロール、単軸混錬機、二軸混錬機等で溶融混練して均一に混合しても良い。あるいは原料をミキサーや粉砕機で乾式混合しても良い。溶解混合や溶融混合等の湿式の方法で混合することが特に好ましい。これによりフェノール樹脂(A)と、球状フェノール樹脂硬化物(B)の界面をより強固に接着することができる。本実施形態において、フェノール樹脂組成物は、例えば、粉粒状、顆粒状、タブレット状またはシート状等の形態で提供される。
本実施形態のフェノール樹脂組成物は、本発明の効果の観点から、フェノール樹脂(A)100質量部に対して、球状フェノール樹脂硬化物(B)を好ましくは1質量部以上98質量部以下、より好ましくは2質量部以上95質量部以下、さらに好ましくは5質量部以上80質量部以下の量で含むことができる。
本実施形態のフェノール樹脂組成物を加熱処理して硬化体(架橋体)を得ることができ、当該硬化体は、フェノール樹脂(A)の硬化物(A1)と、球状フェノール樹脂硬化物(B)とを含む。
球状フェノール樹脂硬化物(B)のモース硬度は、硬化物(A1)のモース硬度よりも低いことが好ましい。これにより当該硬化体は曲げ強度や曲げ弾性率等の機械的強度により優れ、当該硬化体を含む成形体は曲げ強度や曲げ弾性率等の機械的強度により優れる。
球状フェノール樹脂硬化物(B)のモース硬度は、好ましくは1以上4以下、より好ましくは1以上2以下である。硬化物(A1)のモース硬度は、好ましくは2以上5以下、より好ましくは2以上4以下である。
前記硬化体中において、硬化物(A1)と球状フェノール樹脂硬化物(B)との界面が消失していることも好ましい。これにより硬化体に可撓性が付与され、より曲げ弾性率に優れる。
[成形材料・成形体]
本実施形態の成形材料は、上述のフェノール樹脂組成物を含み、さらに充填剤を含むことができる。
前記充填材としては、例えば、繊維基材、有機充填材、無機充填材等を用いることができる。繊維基材は、繊維状の形態を有する充填材である。有機充填材および無機充填材は、それぞれ、粒状充填材または板状充填材のいずれでもよい。板状充填材はその形状が板状である充填材である。粒状充填材は、不定形状を含む繊維状・板状以外の形状の充填材である。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記粒状充填材としては、例えば、粒形の無機充填材を用いることができ、ガラスビーズ、ガラスパウダー、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、水酸化アルミニウム、クレーおよびマイカなどを用いることができる。
前記繊維状充填材としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維、金属繊維、ワラストナイト、アタパルジャイト、セピオライト、ロックウール、ホウ酸アルミニウムウイスカー、チタン酸カリウム繊維、炭酸カルシウムウィスカー、酸化チタンウィスカー、セラミック繊維などの繊維状無機充填材;アラミド繊維、ポリイミド繊維、ポリ(パラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維などの繊維状有機充填材;が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。
また、前記板状充填材、粒状充填材としては、例えば、タルク、カオリンクレー、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、ケイ酸カルシウム水和物、マイカ、ガラスフレーク、ガラス粉、炭酸マグネシウム、シリカ、酸化チタン、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、前記繊維状充填材の粉砕物などが挙げられる。
本実施形態の成形材料100質量%は、本発明の効果の観点から、上述のフェノール樹脂組成物を好ましくは1~30質量%、より好ましくは2~25質量%、さらに好ましくは3~20質量%含むことができる。
本実施形態の成形材料100質量%は、前記充填材を好ましくは50~98質量%、より好ましくは60~95質量%、さらに好ましくは70~93質量%含むことができる。
本実施形態の成形材料は、さらに樹脂を含むことができる。
前記樹脂としては、本発明の効果を奏しない範囲で公知の樹脂を用いることができるが、フェノール樹脂を用いることが好ましい。フェノール樹脂としては、上述のフェノール樹脂(A)で例示された樹脂を用いることができる。
本実施形態の成形材料は、前記フェノール樹脂組成物および前記充填剤を従来公知の方法で混合することにより得ることができる。
本実施形態においては、フェノール樹脂組成物を含む成形材料を硬化成形することにより、この樹脂組成物の硬化体(架橋体)を含む成形体を得ることができる。
これにより、曲げ強度や曲げ弾性率等の機械的強度に優れた成形体を得ることができる。
成形体の成形方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、トランスファー成形、コンプレッション成形、射出成形等を用いることができる。
本実施形態の成形体としては、例えば、自動車、航空機、鉄道車両、船舶、汎用機械、家庭用電化製品やこれらの周辺部品に用いられる成形品、またはこれらの筺体、構造・機構部品、電気・電子部品に用いられる成形品、砥石、摩擦材、等が挙げられる。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の様々な構成を採用することができる。
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(製造例1)
まず、フェノール類であるフェノール1000質量部、アルデヒド類である37%ホルムアルデヒド水溶液1120質量部、親水性高分子である2%ヒドロキシエチルセルロース水溶液200質量部、親水性溶媒であるメタノール41質量部及び純水235質量部を混合液の原料成分として準備した。次いで、上記原料成分を反応容器に投入し、均一に混合することで混合液を作製した。次いで、フェノールと、ホルムアルデヒドとを反応させるために、混合液に、温度95℃に昇温して塩基性触媒である33%トリエチレンテトラミン水溶液270質量部を60分間で逐次添加し、次いで、混合液を6時間反応、硬化させた。なお、フェノールと、ホルムアルデヒドとの反応は、混合液を撹拌しながら行った。これにより、フェノール及びホルムアルデヒドの懸濁粒子を作製した。
次いで、得られた懸濁粒子を吸引漏斗にてろ過し、さらに純水で洗浄、吸引ろ過を3回繰り返した後、箱型容器に入れ、温風循環式にて110℃で24時間乾燥、硬化させた。乾燥硬化した懸濁粒子の含水率は0.5%であった。
なお、含水率とは、乾燥した懸濁粒子を、温度135℃で1時間処理した際の重量変化率をX%としたとき、(100-X)%が含水率である。含水率の測定は、実施例1のフェノール樹脂粒子を作製する工程とは別に行った。
さらにハンマーミルで解砕を行い、球状フェノール樹脂硬化物Aを得た。平均粒子径は15μm、含窒素量は3.0%であった。これをノボラック型フェノール樹脂(PR-53195、住友ベークライト株式会社製)90部と球状フェノール樹脂硬化物A 10部をニーダーを用いて100℃で溶融混合した。冷却して固形化し、フェノール樹脂組成物Aを得た。
(製造例2)
製造例1の37%ホルムアルデヒド水溶液を1293質量部、純水415質量部とし、33%トリエチレンテトラミン水溶液の代わりに33%トリエチルアミン水溶液を90部とした他は同様の方法で球状フェノール樹脂硬化物Bを得た。平均粒子径は22μm、含窒素量は0%であった。同様にノボラック型フェノール樹脂(PR-53195、住友ベークライト株式会社製)90部と球状フェノール樹脂硬化物B 10部をニーダーを用いて100℃で溶融混合し、フェノール樹脂組成物Bを得た。
[実施例1]
フェノール樹脂組成物A 100部をヘキサメチレンテトラミン10部とともに粉砕機にて乾式混合を行い、粉末樹脂A(フェノール樹脂組成物A')を得た。粉末樹脂Aのゲル化時間、流れを表1に示す。
また、表2の配合に従いあらかじめ品川式混錬機で常温にてアルミナ粉末(A砥粒、粒度#60)とレゾール型フェノール樹脂(PR-940、住友ベークライト株式会社製)を混合したところに、得られた粉末樹脂Aを添加混合し、プレミックス(成形材料A)を得た。得られたプレミックスを長さ100mm、幅25mm、厚み15mmの金型で常温圧縮成形した。得られた予備成型体を温風循環式乾燥機で80℃・5時間保持後さらに5℃/時間の速度で昇温していき170℃到達後10時間保持して硬化させ、試験片(成形体A)を得た。得られた試験片の曲げ強度および曲げ弾性率を表2に示す。
SEM観察したところ、ノボラック型フェノール樹脂の硬化物と球状フェノール樹脂硬化物Aとの界面が消失していた。また、球状フェノール樹脂硬化物Aのモース硬度は2、フェノール樹脂の硬化物のモース硬度は3であった。
[実施例2]
フェノール樹脂組成物Aの代わりにフェノール樹脂組成物Bを用いた以外は、実施例1と同様な方法で粉末樹脂B(フェノール樹脂組成物B')を得た。粉末樹脂Bのゲル化時間、流れを表1に示す。
さらに、得られた粉末樹脂Bを用いた以外は、実施例1と同様な方法でプレミックス(成形材料B)および試験片(成形体B)を得た。得られた試験片の曲げ強度および曲げ弾性率を表2に示す。
[比較例1]
フェノール樹脂組成物Aの代わりにノボラック型フェノール樹脂(PR-50731、住友ベークライト株式会社製)を用いた他は、実施例1と同様な方法で粉末樹脂C(フェノール樹脂組成物C')を得た。粉末樹脂Cのゲル化時間、流れを表1に示す。
さらに、得られた粉末樹脂Cを用いた以外は、実施例1と同様な方法でプレミックス(成形材料C)および試験片(成形体C)を得た。得られた試験片の曲げ強度および曲げ弾性率を表2に示す。
(ゲル化時間(150℃)、樹脂流れ)
実施例1~2、比較例1で得られたヘキサメチレンテトラミンを混合した粉末樹脂A、B、Cを、JIS K 6911に準拠して測定した。
Figure 2023135904000003
(曲げ強度および曲げ弾性率)
実施例1~2、比較例1で得られた試験片の室温(25℃)おける曲げ強度(N/mm)および曲げ弾性率(N/mm)を三点曲げ試験、スパン80mm、ヘッドスピード2mm/分にて測定した。
Figure 2023135904000004
表1に記載のように、実施例1、2および比較例1で得られた粉末樹脂A、BおよびCは、強度に影響する流れ、ゲル化時間は同等であるにもかかわらず、表2に記載のように、球状フェノール樹脂硬化物を含む粉末樹脂A、Bから得られた試験片(実施例1、2)は球状フェノール樹脂硬化物を含まない粉末樹脂Cから得られた試験片(比較例1)よりも、曲げ強度および曲げ弾性率が高く機械的強度に優れていた。

Claims (11)

  1. (A)フェノール樹脂と、
    (B)球状フェノール樹脂硬化物と、を含み、
    球状フェノール樹脂硬化物(B)はレゾール樹脂の硬化物である、フェノール樹脂組成物。
  2. 前記レゾール樹脂は含窒素構造を含む、請求項1に記載のフェノール樹脂組成物。
  3. 前記レゾール樹脂はエチレン架橋体である、請求項1または2に記載のフェノール樹脂組成物。
  4. フェノール樹脂(A)100質量部に対して、球状フェノール樹脂硬化物(B)を1~98質量部の量で含む、請求項1~3のいずれかに記載のフェノール樹脂組成物。
  5. 前記フェノール樹脂組成物を温度170℃で硬化させたときに、フェノール樹脂(A)の硬化物(A1)と球状フェノール樹脂硬化物(B)との界面が消失する、請求項1~4のいずれかに記載のフェノール樹脂組成物。
  6. 請求項1~5のいずれかに記載のフェノール樹脂組成物の硬化体。
  7. フェノール樹脂(A)の硬化物(A1)と、球状フェノール樹脂硬化物(B)とを含み、
    球状フェノール樹脂硬化物(B)のモース硬度は、硬化物(A1)のモース硬度よりも低い、請求項6に記載の硬化体。
  8. 前記硬化体中において、硬化物(A1)と球状フェノール樹脂硬化物(B)との界面が消失している、請求項6または7に記載の硬化体。
  9. 請求項1~5のいずれかに記載のフェノール樹脂組成物を含む成形材料。
  10. さらに充填剤を含む、請求項9に記載の成形材料。
  11. 請求項10に記載の成形材料を加熱硬化してなる、請求項6~8のいずれかに記載の硬化体を含む成形体。
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