JP2023129477A - 硬化物、硬化物の製造方法、硬化性樹脂組成物および硬化物の利用 - Google Patents

硬化物、硬化物の製造方法、硬化性樹脂組成物および硬化物の利用 Download PDF

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雅幸 藤田
Masayuki Fujita
博紀 澤田
Hironori Sawada
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Abstract

【課題】耐アルカリ性および優れた低屈折率を有する硬化物を提供すること。【解決手段】硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物であり、耐アルカリ性を有し、屈折率が1.25~1.45である、硬化物を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、硬化物、硬化物の製造方法、硬化性樹脂組成物および硬化物の利用技術に関する。
車等に搭載される内蔵型情報表示機器の表示部に用いられるガラス板または透明なプラスチック板には、従来、耐摩耗性が求められてきた。さらに、視認性および意匠性等の観点から、上記表示部には低反射率も求められている。表示部の低反射率は、表示部の最も表面(ユーザー側)に、低屈折率を有する層(低屈折率層とも称する。)を設けることで達成され得る。ガラス板またはプラスチック板に対して耐摩耗性を付与することを目的としたハードコート層、および低屈折率層が種々開発されている(例えば、特許文献1)。
近年、内蔵型情報表示機器にタッチパネルが搭載される傾向がある。これに伴い、内蔵型情報表示機器の表示部に用いられるガラス板またはプラスチック板に対して、耐アルカリ性が求められている。
特開2016-20049号公報
しかしながら、上述のような従来技術は、耐アルカリ性および低屈折率という観点からは十分なものでなく、さらなる改善の余地があった。
本発明の一実施形態は、上記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、耐アルカリ性および優れた低屈折率を有する、新規の硬化物を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、耐アルカリ性および優れた低屈折率を有する新規の硬化物を得るに至り、本発明を完成した。
すなわち本発明の一実施形態は、以下の構成を含むものである。
〔1〕硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物であり、耐アルカリ性を有し、屈折率が1.25~1.45である、硬化物:ここで、耐アルカリ性を有するとは、55℃である0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液中に上記硬化物を4時間浸漬したとき、屈折率が1.45以下であることをいう。
〔2〕〔1〕に記載の硬化物を含む、反射防止コーティング膜。
〔3〕〔1〕に記載の硬化物および少なくとも1つの基材を含む積層体。
〔4〕55℃である0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液中に上記積層体を4時間浸漬したとき、最低反射率が1.5%以下である、〔3〕に記載の積層体。
〔5〕加水分解性シリル基を有するシラン化合物の加水分解・縮合反応生成物である縮合物(A)と、光酸発生剤(B)と、シリカ(C)とを含有する硬化性樹脂組成物に対して活性エネルギー線を照射することにより、硬化性樹脂組成物を硬化させ第1の硬化物を得る工程、および得られた第1の硬化物をアルカリ性溶液に浸漬することにより、シリカ(C)を除去して第2の硬化物を得る工程を有する、硬化物の製造方法。
〔6〕上記シリカ(C)は中空シリカである、〔5〕に記載の硬化物の製造方法。
〔7〕上記第2の硬化物は耐アルカリ性を有し、屈折率が1.25~1.45である、〔5〕または〔6〕に記載の硬化物の製造方法:ここで、耐アルカリ性を有するとは、55℃である0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液中に上記第2の硬化物を4時間浸漬したとき、屈折率が1.45以下であることをいう。
〔8〕加水分解性シリル基を有するシラン化合物の加水分解・縮合反応生成物である縮合物(A)と、光酸発生剤(B)と、シリカ(C)とを含有し、上記加水分解性シリル基を有するシラン化合物は下記一般式(I)で表されるシラン化合物(I)を含む、硬化性樹脂組成物:
-(SiR (OR3-a)・・・一般式(I)
(式中、Rは末端がエポキシ構造含有基で置換された炭素数1~10のアルキル基であり、Rはそれぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~25のアリール基および炭素数7~12のアラルキル基からなる群から選ばれる1価の炭化水素基または水素原子であり、Rはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1~10のアルキル基であり、aは0~2の整数である。)。
本発明の一実施形態によれば、耐アルカリ性および優れた低屈折率を有する硬化物を提供することができる。
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
〔1.硬化性樹脂組成物〕
本発明の一実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、加水分解性シリル基を有するシラン化合物の加水分解・縮合反応生成物である縮合物(A)と、光酸発生剤(B)と、シリカ(C)とを含有し、上記加水分解性シリル基を有するシラン化合物は上記一般式(I)で表されるシラン化合物(I)を含む。本明細書において、「本発明の一実施形態に係る硬化性樹脂組成物」を「本硬化性樹脂組成物」とも称する。本硬化性樹脂組成物は、硬化させることにより硬化物となる。また、本硬化性樹脂組成物は、基材上で当該硬化性樹脂組成物を硬化させることにより、硬化物および基材を含む積層体となる。
内蔵型情報表示機器の表示部について、多種多様な薬剤への耐久性が望まれている。例えば、日焼け止めクリーム、昆虫忌避剤、酸およびアルカリ等の耐久性が必須になりつつある。カビ取り剤(例えばカビキラー)等の強アルカリへの耐久性も求められている。
上記表示部に適用されていた従来のハードコート層および低屈折率層は、耐アルカリ性の市場要求スペックを満たすものではなかった。本硬化性樹脂組成物は、上記構成を有するために、耐アルカリ性の市場要求スペックを満たし得る硬化物、例えば後述する反射防止コーティング膜を提供できる。
また、表示部には従前よりもさらに低反射率が要求されている。表示部の低反射率は、表示部の最も表面に設けられる低屈折率層の性能(低屈折率)に依存する。当該低屈折率層が低屈折率であるほど、表示部は低反射率を示し得る。
従来の低屈折率層は、低屈折率の点で改善の余地があった。本硬化性樹脂組成物は、上記構成を有するために、従来よりも低い屈折率を有する硬化物、例えば後述する反射防止コーティング膜を提供できる。なお、低い屈折率(低屈折率)であるとは、屈折率が1.45以下であることをいう。
本明細書において、「縮合物(A)」を「成分(A)」とも称し、「光酸発生剤(B)」を「成分(B)」とも称し、「中空シリカ(C)」を「成分(C)」とも称する。
(1-1.縮合物(A))
(シラン化合物(I))
一般式(I)のRにおけるエポキシ構造含有基としては、エポキシ構造を含有してさえすればよく、例えば、エポキシ基、グリシジルエーテル基、エポキシシクロヘキシル基等が挙げられる。エポキシ構造含有基としては、光酸発生剤(B)を用いたカチオン重合に伴うエポキシ構造の開環反応が速く、得られる硬化物において、表面硬度および耐熱性が向上するとの利点を有することから、3,4-エポキシシクロヘキシル基が好ましい。
一般式(I)のRにおける、炭素数1~10のアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、等が挙げられる。なお、「ペンチル基」および「イソペンチル基」は、それぞれ「アミル基」および「イソアミル基」と称される場合もある。
一般式(I)のRは、末端が3,4-エポキシシクロヘキシル基で置換された炭素数1~10のアルキル基であることが好ましい。一般式(I)のRは、例えば、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル基、(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピル基、(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチル基、(3,4-エポキシシクロヘキシル)ペンチル基、及び、(3,4-エポキシシクロヘキシル)ヘキシル基等が好ましい。上記構成によると、光酸発生剤(B)を用いたカチオン重合に伴うエポキシ構造の開環反応が速く進行するという利点を奏する。
一般式(I)のRにおける炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ベンジル基およびフェネチル基が挙げられる。
一般式(I)のRにおけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基およびデシル基が挙げられる。加水分解性シリル基を有するシラン化合物を加水分解・縮合させやすいという観点から、Rのアルキル基の炭素数は1~3が好ましく、1が最も好ましい。
一般式(I)のaは、硬化性樹脂組成物に要求される物性に応じて適宜選択され得る。
シラン化合物(I)の具体例としては、例えば、1-グリシジルオキシメチルトリメトキシシラン、1-グリシジルオキシメチルメチルジメトキシシラン、1-グリシジルオキシメチルトリエトキシシラン、1-グリシジルオキシメチルメチルジエトキシシラン、2-グリシジルオキシエチルトリメトキシシラン、2-グリシジルオキシエチルメチルジメトキシシラン、2-グリシジルオキシエチルトリエトキシシラン、2-グリシジルオキシエチルメチルジエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、4-グリシジルオキシブチルトリメトキシシラン、4-グリシジルオキシブチルメチルジメトキシシラン、4-グリシジルオキシブチルトリエトキシシラン、4-グリシジルオキシブチルメチルジエトキシシラン、6-グリシジルオキシヘキシルトリメトキシシラン、6-グリシジルオキシヘキシルメチルジメトキシシラン、6-グリシジルオキシヘキシルトリエトキシシラン、6-グリシジルオキシヘキシルメチルジエトキシシラン、8-グリシジルオキシオクチルトリメトキシシラン、8-グリシジルオキシオクチルメチルジメトキシシラン、8-グリシジルオキシオクチルトリエトキシシラン、8-グリシジルオキシオクチルメチルジエトキシシラン、1-(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルシラン類、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルシラン類、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルシラン類、4-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチルシラン類、5-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ペンチルシラン類、6-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ヘキシルシラン類、7-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ヘプチルシラン類、8-(3,4-エポキシシクロヘキシル)オクチルシラン類、エポキシトリメトキシシラン、エポキシメチルジメトキシシラン、エポキシトリエトキシシラン、エポキシメチルジエトキシシラン、1-エポキシメチルトリメトキシシラン、1-エポキシメチルメチルジメトキシシラン、1-エポキシメチルトリエトキシシラン、1-エポキシメチルメチルジエトキシシラン、2-エポキシエチルトリメトキシシラン、2-エポキシエチルメチルジメトキシシラン、2-エポキシエチルトリエトキシシラン、2-エポキシエチルメチルジエトキシシラン、3-エポキシプロピルトリメトキシシラン、3-エポキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-エポキシプロピルトリエトキシシラン、3-エポキシプロピルメチルジエトキシシラン、4-エポキシブチルトリメトキシシラン、4-エポキシブチルメチルジメトキシシラン、4-エポキシブチルトリエトキシシラン、4-エポキシブチルメチルジエトキシシラン、6-エポキシヘキシルトリメトキシシラン、6-エポキシヘキシルメチルジメトキシシラン、6-エポキシヘキシルトリエトキシシラン、6-エポキシヘキシルメチルジエトキシシラン、8-エポキシオクチルトリメトキシシラン、8-エポキシオクチルメチルジメトキシシラン、8-エポキシオクチルトリエトキシシラン、8-エポキシオクチルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
1-(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルシラン類としては、1-(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、1-(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルメチルジメトキシシラン、1-(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルジメチルメトキシシラン、1-(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、1-(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルメチルジエトキシシラン、1-(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルジメチルエトキシシラン、1-(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルトリプロポキシシラン、1-(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルメチルジプロポキシシラン、1-(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルジメチルプロポキシシラン等が挙げられる。
2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルシラン類としては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルジメチルメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルジメチルエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジプロポキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルジメチルプロポキシシラン等が挙げられる。
3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルシラン類としては、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルメチルジメトキシシラン、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルジメチルメトキシシラン、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルメチルジエトキシシラン、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルジメチルエトキシシラン、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルトリプロポキシシラン、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルメチルジプロポキシシラン、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルジメチルプロポキシシラン等が挙げられる。
4-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチルシラン類としては、4-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチルトリメトキシシラン、4-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチルメチルジメトキシシラン、4-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチルジメチルメトキシシラン、4-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチルトリエトキシシラン、4-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチルメチルジエトキシシラン、4-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチルジメチルエトキシシラン、4-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチルトリプロポキシシラン、4-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチルメチルジプロポキシシラン、4-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチルジメチルプロポキシシラン等が挙げられる。
5-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ペンチルシラン類としては、5-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ペンチルトリメトキシシラン、5-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ペンチルメチルジメトキシシラン、5-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ペンチルジメチルメトキシシラン、5-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ペンチルトリエトキシシラン、5-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ペンチルメチルジエトキシシラン、5-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ペンチルジメチルエトキシシラン、5-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ペンチルトリプロポキシシラン、5-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ペンチルメチルジプロポキシシラン、5-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ペンチルジメチルプロポキシシラン等が挙げられる。
6-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ヘキシルシラン類としては、6-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ヘキシルトリメトキシシラン、6-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ヘキシルメチルジメトキシシラン、6-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ヘキシルジメチルメトキシシラン、6-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ヘキシルトリエトキシシラン、6-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ヘキシルメチルジエトキシシラン、6-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ヘキシルジメチルエトキシシラン、6-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ヘキシルトリプロポキシシラン、6-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ヘキシルメチルジプロポキシシラン、6-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ヘキシルジメチルプロポキシシラン等が挙げられる。
7-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ヘプチルシラン類としては、7-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ヘプチルトリメトキシシラン、7-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ヘプチルメチルジメトキシシラン、7-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ヘプチルジメチルメトキシシラン、7-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ヘプチルトリエトキシシラン、7-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ヘプチルメチルジエトキシシラン、7-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ヘプチルジメチルエトキシシラン、7-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ヘプチルトリプロポキシシラン、7-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ヘプチルメチルジプロポキシシラン、7-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ヘプチルジメチルプロポキシシラン等が挙げられる。
8-(3,4-エポキシシクロヘキシル)オクチルシラン類としては、8-(3,4-エポキシシクロヘキシル)オクチルトリメトキシシラン、8-(3,4-エポキシシクロヘキシル)オクチルメチルジメトキシシラン、8-(3,4-エポキシシクロヘキシル)オクチルジメチルメトキシシラン、8-(3,4-エポキシシクロヘキシル)オクチルトリエトキシシラン、8-(3,4-エポキシシクロヘキシル)オクチルメチルジエトキシシラン、8-(3,4-エポキシシクロヘキシル)オクチルジメチルエトキシシラン、8-(3,4-エポキシシクロヘキシル)オクチルトリプロポキシシラン、8-(3,4-エポキシシクロヘキシル)オクチルメチルジプロポキシシラン、8-(3,4-エポキシシクロヘキシル)オクチルジメチルプロポキシシラン等が挙げられる。
硬化時におけるエポキシ構造含有基の反応性(モビリティとも称する。)に優れることから、エポキシ構造含有基とケイ素原子とを結合するアルキル基、すなわちRのアルキル基、の炭素数が重要である。Rのアルキル基の炭素数は1~4が好ましく、2または3がさらに好ましい。
上記Rのアルキル基の炭素数および上述したRのアルキル基の炭素数の好ましい態様を考慮すると、シラン化合物(I)としては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルジメチルメトキシシラン、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルメチルジメトキシシラン、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルジメチルメトキシシラン、2-グリシジルオキシエチルトリメトキシシラン、2-グリシジルオキシエチルメチルジメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシランが好ましい。シラン化合物(I)としては、上述した中でも、Rが、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、および3-グリシジルオキシプロピル基である化合物が好ましい。
(シラン化合物(II))
上記加水分解性シリル基を有するシラン化合物は、下記一般式(II)で表されるシラン化合物(II)をさらに含むことが好ましい:
-(SiR (OR3-a)・・・一般式(II)
(式中、Rはそれぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~25のアリール基および炭素数7~12のアラルキル基からなる群から選ばれる1価の炭化水素基または水素原子であり、Rはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1~10のアルキル基であり、Rは炭素数1~10の置換もしくは非置換のアルキル基およびアルケニル基、並びに置換アリール基からなる群から選ばれ、エポキシ構造含有基を有さない基であり、aは0~2の整数である。)。
上記加水分解性シリル基を有するシラン化合物がシラン化合物(II)をさらに含む場合には、シラン化合物(I)由来の性能に加え、シラン化合物(II)由来の性能を付与することが可能である。例えば、シラン化合物(I)のエポキシ基が示すカチオン反応性に加え、シラン化合物(II)のアルケニル基が示すラジカル反応性を利用することにより、得られる硬化性樹脂組成物による硬化が促進されるという利点を有する。また、フェニル基を有するシラン化合物(II)を含む場合には、得られる硬化物に耐熱性および柔軟性が付与できるという利点を有する。
一般式(II)のR、Rおよびaの態様は、好ましい態様を含み、上述した一般式(I)のR、Rおよびaの態様と同じであってもよい。
一般式(II)のRにおけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基およびデシル基等が挙げられる。
一般式(II)のRにおけるアルキル基の置換基としては、特に限定されない。一般式(II)のRにおけるアルキル基の置換基としては、入手しやすいことから、グリシジル基、チオール基、アミノ基、イソシアネート基、(メタ)アクリロイル基、フェニル基、シクロヘキシル基およびクロロ基等が好ましい。ここで、本明細書において、X基で置換されたY基を、「X基置換Y基」とも表記する。
上述した置換基のうち、チオール(メルカプト)基は加水分解性シリル基を有するシラン化合物を加水分解・縮合反応させている最中にエポキシ構造含有基と反応する可能性がある。そのため、Rとしてチオール(メルカプト)基換アルキル基を有するシラン化合物(II)を用いる場合、シラン化合物(I)としては、求核攻撃を受けにくいエポキシシクロヘキシル基をRにて有するエポキシシラン化合物を選択することが好ましい。他方、置換基のうち、アミノ基および酸無水物基は、チオール(メルカプト)基以上に、加水分解性シリル基を有するシラン化合物を加水分解・縮合反応させている最中にエポキシ構造含有基と反応する可能性が高く、加水分解・縮合反応を阻害し、エポキシ構造含有基の開環反応を促進する効果があると考えられる。そのため、本発明の一実施形態では、シラン化合物(II)として、Rとしてアミノ基置換アルキル基または酸無水物基置換アルキル基を有するシラン化合物(II)を用いることは好ましくない。
一般式(II)のRにおけるアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1-メチルエテニル基、2-メチルエテニル基、2-プロペニル基、1-メチル-3-プロペニル基、3-ブテニル基、4-ペンテニル基、5-ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、ビシクロヘキセニル基、6-ヘプテニル基、7-オクテニル基、デセニル基、ペンタデセニル基、エイコセニル基およびトリコセニル基等が挙げられる。一般式(II)のRにおける置換アリール基としては、スチリル基が挙げられる。
が非置換のアルキル基である場合、Rは、炭素数3~10のアルキル基であることが好ましく、炭素数3~6のアルキル基であることがより好ましい。Rが上記構成である場合、貯蔵安定性がよく、硬化時の硬化速度が速く、さらに得られた塗膜のクラック発生が抑制できるという利点を有する。
が置換アルキル基である場合、Rにおいて、(a)アルキル基は炭素数3~10であることが好ましく、炭素数3~6であることがより好ましく、(b)置換基はフェニル基、シクロヘキシル基および(メタ)アクリロイル基が好ましい。Rがアルケニル基である場合、Rはビニル基またはアリル基が好ましい。Rが置換アリール基である場合、Rはスチリル基が好ましい。
が、(a)非置換アルキル基であり、アルキル基の炭素数が2以下である場合、または、(b)置換アルキル基であり、置換基がフェニル基、シクロヘキシル基または(メタ)アクリロイル基より嵩高くない場合、について説明する。この場合、硬化時に硬化物は緻密な架橋構造を形成し、硬化物がゲル化することがある。「硬化時」は、「架橋時」ともいえる。
また、Rが、(a)非置換アルキル基であり、アルキル基の炭素数が11以上である場合、または、(b)置換アルキル基であり、置換基がフェニル基、シクロヘキシル基または(メタ)アクリロイル基よりも嵩高い場合、について説明する。この場合、加水分解性シリル基を有するシラン化合物の疎水性が高くなり当該シラン化合物の加水分解速度が極端に低下すること、および/または、得られる硬化性樹脂組成物の硬化速度が低下することがある。
シラン化合物(II)の中で、一般式(II)におけるRが非置換のアルキル基であるものとしては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルメチルジメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルメチルジエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルメチルジメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルメチルジエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルメチルジメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルメチルジエトキシシラン、ブチルトリプロポキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルメチルジメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ペンチルメチルジエトキシシラン、ペンチルトリプロポキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルメチルジメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルメチルジエトキシシラン、ヘキシルトリプロポキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、ヘプチルメチルジメトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、ヘプチルメチルジエトキシシラン、ヘプチルトリプロポキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルメチルジメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、オクチルメチルジエトキシシラン、オクチルトリプロポキシシラン、ノニルトリメトキシシラン、ノニルメチルジメトキシシラン、ノニルトリエトキシシラン、ノニルメチルジエトキシシラン、ノニルトリプロポキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルメチルジメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、デシルメチルジエトキシシラン、デシルトリプロポキシシラン等が挙げられる。
がグリシジル基置換アルキル基であるシラン化合物(II)としては、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、2-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、4-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、4-グリシドキシブチルトリエトキシシラン、5-グリシドキシペンチルトリメトキシシラン、5-グリシドキシペンチルトリエトキシシラン、6-グリシドキシヘキシルトリメトキシシラン、6-グリシドキシヘキシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
がチオール基置換アルキル基であるシラン化合物(II)としては、1-メルカプトメチルトリメトキシシラン、1-メルカプトメチルメチルジメトキシシラン、1-メルカプトメチルトリエトキシシラン、1-メルカプトメチルメチルジエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルメチルジメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルメチルジエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、
4-メルカプトブチルトリメトキシシラン、4-メルカプトブチルメチルジメトキシシラン、4-メルカプトブチルトリエトキシシラン、4-メルカプトブチルメチルジエトキシシラン、5-メルカプトペンチルトリメトキシシラン、5-メルカプトペンチルメチルジメトキシシラン、5-メルカプトペンチルトリエトキシシラン、5-メルカプトペンチルメチルジエトキシシラン、6-メルカプトヘキシルトリメトキシシラン、6-メルカプトヘキシルメチルジメトキシシラン、6-メルカプトヘキシルトリエトキシシラン、6-メルカプトヘキシルメチルジエトキシシラン、7-メルカプトヘプチルトリメトキシシラン、7-メルカプトヘプチルメチルジメトキシシラン、7-メルカプトヘプチルトリエトキシシラン、7-メルカプトヘプチルメチルジエトキシシラン、8-メルカプトオクチルトリメトキシシラン、8-メルカプトオクチルメチルジメトキシシラン、8-メルカプトオクチルトリエトキシシラン、8-メルカプトオクチルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
がアミノ基置換アルキル基である化合物としては、N-2-(アミノエチル)アミノメチルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)アミノメチルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-2-アミノエチルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-2-アミノエチルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-4-アミノブチルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-4-アミノブチルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-5-アミノペンチルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-5-アミノペンチルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-6-アミノヘキシルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-6-アミノヘキシルトリエトキシシラン、アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルトリエトキシシラン、2-アミノエチルトリメトキシシラン、2-アミノエチルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、4-アミノブチルトリメトキシシラン、4-アミノブチルトリエトキシシラン、5-アミノペンチルトリメトキシシラン、5-アミノペンチルトリエトキシシラン、6-アミノヘキシルトリメトキシシラン、6-アミノヘキシルトリエトキシシラン、N-フェニルアミノメチルトリメトキシシラン、N-フェニルアミノメチルトリエトキシシラン、N-フェニル-2-アミノエチルトリメトキシシラン、N-フェニル-2-アミノエチルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-4-アミノブチルトリメトキシシラン、N-フェニル-4-アミノブチルトリエトキシシラン、N-フェニル-5-アミノペンチルトリメトキシシラン、N-フェニル-5-アミノペンチルトリエトキシシラン、N-フェニル-6-アミノヘキシルトリメトキシシラン、N-フェニル-6-アミノヘキシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
がイソシアネート基置換アルキル基である化合物としては、1-イソシアネートメチルトリメトキシシラン、1-イソシアネートメチルメチルジメトキシシラン、1-イソシアネートメチルトリエトキシシラン、1-イソシアネートメチルメチルジエトキシシラン、2-イソシアネートエチルトリメトキシシラン、2-イソシアネートエチルメチルジメトキシシラン、2-イソシアネートエチルトリエトキシシラン、2-イソシアネートエチルメチルジエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、4-イソシアネートブチルトリメトキシシラン、4-イソシアネートブチルメチルジメトキシシラン、4-イソシアネートブチルトリエトキシシラン、4-イソシアネートブチルメチルジエトキシシラン、6-イソシアネートヘキシルトリメトキシシラン、6-イソシアネートヘキシルメチルジメトキシシラン、6-イソシアネートヘキシルトリエトキシシラン、6-イソシアネートヘキシルメチルジエトキシシラン、8-イソシアネートオクチルトリメトキシシラン、8-イソシアネートオクチルメチルジメトキシシラン、8-イソシアネートオクチルトリエトキシシラン、8-イソシアネートオクチルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
が(メタ)アクリロイル基置換アルキル基である化合物としては、1-(メタ)アクリロイルオキシメチルトリメトキシシラン、1-(メタ)アクリロイルオキシメチルメチルジメトキシシラン、1-(メタ)アクリロイルオキシメチルトリエトキシシラン、1-(メタ)アクリロイルオキシメチルメチルジエトキシシラン、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルメチルジメトキシシラン、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、4-(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメトキシシラン、4-(メタ)アクリロイルオキシブチルメチルジメトキシシラン、4-(メタ)アクリロイルオキシブチルトリエトキシシラン、4-(メタ)アクリロイルオキシブチルメチルジエトキシシラン、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチルトリメトキシシラン、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチルメチルジメトキシシラン、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチルトリエトキシシラン、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチルメチルジエトキシシラン、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルトリメトキシシラン、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルメチルジメトキシシラン、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルトリエトキシシラン、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルメチルジエトキシシラン、7-(メタ)アクリロイルオキシヘプチルトリメトキシシラン、7-(メタ)アクリロイルオキシヘプチルメチルジメトキシシラン、7-(メタ)アクリロイルオキシヘプチルトリエトキシシラン、7-(メタ)アクリロイルオキシヘプチルメチルジエトキシシラン、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルトリメトキシシラン、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルメチルジメトキシシラン、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルトリエトキシシラン、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
がフェニル基置換アルキル基である化合物としては、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、2-フェニルエチルトリメトキシシラン、2-フェニルエチルトリエトキシシラン、3-フェニルプロピルトリメトキシシラン、3-フェニルプロピルトリエトキシシラン、4-フェニルブチルトリメトキシシラン、4-フェニルブチルトリエトキシシラン、5-フェニルペンチルトリメトキシシラン、5-フェニルペンチルトリエトキシシラン、6-フェニルヘキシルトリメトキシシラン、6-フェニルヘキシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
がシクロヘキシル基置換アルキル基である化合物としては、シクロヘキシルメチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルメチルトリエトキシシラン、2-シクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、2-シクロヘキシルエチルトリエトキシシラン、3-シクロヘキシルプロピルトリメトキシシラン、3-シクロヘキシルプロピルトリエトキシシラン、4-シクロヘキシルブチルトリメトキシシラン、4-シクロヘキシルブチルトリエトキシシラン、5-シクロヘキシルペンチルトリメトキシシラン、5-シクロヘキシルペンチルトリエトキシシラン、6-シクロヘキシルヘキシルトリメトキシシラン、6-シクロヘキシルヘキシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
がクロロ基置換アルキル基である化合物としては、例えば、クロロメチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、2-クロロエチルトリメトキシシラン、2-クロロエチルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、4-クロロブチルトリメトキシシラン、4-クロロブチルトリエトキシシラン、5-クロロペンチルトリメトキシシラン、5-クロロペンチルトリエトキシシラン、6-クロロヘキシルトリメトキシシラン、6-クロロヘキシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
がアルケニル基である化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルメチルジメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルメチルジエトキシシラン、1-オキセタニルオキシメチルトリメトキシシラン、1-オキセタニルオキシメチルメチルジメトキシシラン、1-オキセタニルオキシメチルトリエトキシシラン、1-オキセタニルオキシメチルメチルジエトキシシラン、2-オキセタニルオキシエチルトリメトキシシラン、2-オキセタニルオキシエチルメチルジメトキシシラン、2-オキセタニルオキシエチルトリエトキシシラン、2-オキセタニルオキシエチルメチルジエトキシシラン、3-オキセタニルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-オキセタニルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-オキセタニルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-オキセタニルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、4-オキセタニルオキシブチルトリメトキシシラン、4-オキセタニルオキシブチルメチルジメトキシシラン、4-オキセタニルオキシブチルトリエトキシシラン、4-オキセタニルオキシブチルメチルジエトキシシラン、6-オキセタニルオキシヘキシルトリメトキシシラン、6-オキセタニルオキシヘキシルメチルジメトキシシラン、6-オキセタニルオキシヘキシルトリエトキシシラン、6-オキセタニルオキシヘキシルメチルジエトキシシラン、8-オキセタニルオキシオクチルトリメトキシシラン、8-オキセタニルオキシオクチルメチルジメトキシシラン、8-オキセタニルオキシオクチルトリエトキシシラン、8-オキセタニルオキシオクチルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
が置換アリール基である化合物としては、p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシラン等が挙げられる。
加水分解性シリル基を有するシラン化合物がシラン化合物(II)を含む場合、シラン化合物(II)として、一般式(II-1)で表されるシラン化合物(II-1)を用い、必要に応じて一般式(II-2)で表されるシラン化合物(II-2)をさらに用いることが好ましい。上記構成によると、本硬化性樹脂組成物を用いて積層体を製造するとき、基材上における硬化物の反りの発生を抑制することができる。上記構成(態様)において、より好ましくは、縮合物(A)は、以下の条件を満たすようにシラン化合物(I)およびシラン化合物(II-1)、さらに任意でシラン化合物(II-2)を含む加水分解性シリル基を有するシラン化合物を、加水分解・縮合反応させて得られる反応生成物であることが好ましい。:シラン化合物(I)に対するシラン化合物(II-1)のモル比(シラン化合物(II-1)のモル数/シラン化合物(I)のモル数)が0.03~1.00であり、シラン化合物(I)に対するシラン化合物(II-2)のモル比(シラン化合物(II-2)のモル数/シラン化合物(I)のモル数)が0~1.0である。
シラン化合物(II-1)は、下記一般式(II-1)で表される:
-(SiR (OR3-a)・・・一般式(II-1)
(式中、Rはそれぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~25のアリール基および炭素数7~12のアラルキル基からなる群から選ばれる1価の炭化水素基または水素原子であり、Rはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1~10のアルキル基であり、Rは(メタ)アクリロイル基、グリシジル基、または、チオール基で置換された炭素数1~10のアルキル基および炭素数2~10のアルケニル基、並びに置換アリール基からなる群から選ばれ、エポキシ構造含有基を有さない基であり、aは0~2の整数である。)。
シラン化合物(II-2)は、下記一般式(II-2)で表される:
-(SiR (OR3-a)・・・一般式(II-2)
(式中、Rはそれぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~25のアリール基および炭素数7~12のアラルキル基からなる群から選ばれる1価の炭化水素基または水素原子であり、Rはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1~10のアルキル基であり、Rはアミノ基、フェニル基、シクロヘキシル基、またはクロロ基で置換された炭素数1~10のアルキル基、および、炭素数1~10の非置換アルキル基から選ばれ、3,4-エポキシシクロヘキシル基を有さない基であり、aは0~2の整数である。)。
本硬化性樹脂組成物を用いて積層体を製造するときの、基材上における硬化物の反りの発生を抑制する抑制するという観点では、シラン化合物(I)は硬化時における膨張成分、シラン化合物(II-1)は硬化時における収縮成分、として捉えることができる。上記膨張成分と上記収縮成分とのバランスを調整することにより、硬化収縮に起因する基材上における硬化物の反りを抑制することができる。シラン化合物(I)に対するシラン化合物(II-1)のモル比は、0.05以上がより好ましく、0.075以上がさらに好ましく、0.10以上が特に好ましい。シラン化合物(I)に対するシラン化合物(II-1)のモル比は0.90以下がより好ましく、0.80以下がさらに好ましく、0.60以下が特に好ましい。シラン化合物(I)に対するシラン化合物(II-1)のモル比が、(a)0.03未満である場合、硬化膨張に起因する基材上における硬化物の反りを抑制することができないことがあり、(b)1.00より大きい場合、ハードコート性が低下することがある。本明細書において、「ハードコート性」とは、硬度および/または耐摩耗性を意図する。また、「耐摩耗性」は「耐擦傷性」と称される場合もある。
シラン化合物(II-2)は、硬化時における膨張成分および収縮成分のいずれとしても捉えられるものでない。シラン化合物(II-2)は、一種の希釈成分として作用するものであり、膨張成分と収縮成分との影響をより小さくすることができる。シラン化合物(I)に対するシラン化合物(II-2)のモル比は、0.8以下であることがより好ましく、0.6以下であることがさらに好ましく、0.5以下であることが特に好ましい。シラン化合物(I)に対するシラン化合物(II-2)のモル比が1.0より大きい場合、ハードコート性が低下することがある。
本硬化性樹脂組成物において、加水分解性シリル基を有するシラン化合物は、シラン化合物(I)を1種のみ含んでいてもよく、2種以上組み合わせて含んでいてもよい。当該加水分解性シリル基を有するシラン化合物は、シラン化合物(II)を1種のみ含んでいてもよく、2種以上組み合わせて含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
本硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の物性として、耐摩耗性および/または耐薬品性が求められる場合は、当該硬化性樹脂組成物に含まれる縮合物(A)中におけるエポキシ構造含有基の架橋が十分に進行していることが重要となり得る。そのため、縮合物(A)は、以下の条件を満たすようにシラン化合物(I)および任意でシラン化合物(II)を含む加水分解性シリル基を有するシラン化合物を、加水分解・縮合反応させて得られる反応生成物であることが好ましい:シラン化合物(I)に対するシラン化合物(II)のモル比(シラン化合物(II)のモル数/シラン化合物(I)のモル数)が0~9である。
シラン化合物(II)がRに置換アルキル基、置換アルケニル基または置換アリール基を有し、かつ、シラン化合物(I)に対するシラン化合物(II)のモル比が9を超える場合、シラン化合物(I)に含まれるエポキシ構造含有基に対するシラン化合物(II)に含まれるエポキシ構造含有基以外の官能基のモル比は9を超える。この場合、得られる硬化性樹脂組成物は、耐摩耗性および耐薬品性の高い硬化物を提供することはできるが、硬化収縮など他の特性において問題が生じる虞がある。
例えば、シラン化合物(II)がRに(メタ)アクリロイル基で置換されたアルキル基、アルケニル基またはアリール基を有し、かつ、シラン化合物(I)に対するシラン化合物(II)のモル比が9を超える場合(場合Aとする)、エポキシ構造含有基に対する(メタ)アクリロイル基のモル比は9を超える。場合Aでは、得られる硬化性樹脂組成物は、耐摩耗性および耐薬品性を有する硬化物を提供することはできる。しかし、(メタ)アクリロイル基による架橋は、エポキシ構造含有基による架橋と比較して硬化収縮が大きくなる。そのため、場合Aでは、硬化物に熱および/または湿度などによる環境負荷がかかったときに、硬化物にクラックが生じ得る。また、場合Aでは、硬化物を備える積層体を作製した場合、当該積層体に反りが生じる場合がある。(メタ)アクリロイル基と同様に硬化収縮を示すシラン化合物(II)中のRとしては、アルケニル基が挙げられる。
(メタ)アクリロイル基およびアルケニル基による硬化(架橋)と比較して、エポキシ構造含有基による硬化は、開環反応を伴う。そのため、エポキシ構造含有基による硬化は、収縮が少なく、硬化収縮をほとんど生じない硬化物を得ることが可能であり、場合によっては、硬化膨張する硬化物を得ることも可能である。
また、縮合物(A)におけるエポキシ構造含有基の含有量が低い場合、得られる硬化性樹脂組成物を硬化させるとき、分子間架橋が不十分となり、得られる硬化物の硬度および/または耐摩耗性が低下する虞がある。そのため、硬化物におけるハードコート性(すなわち、硬度および/または耐摩耗性)と耐クラック性との両立を考慮すると、シラン化合物(I)に対するシラン化合物(II)のモル比は、0~5であることがより好ましく、0~3であることがより好ましく、0~2であることがより好ましく、0~1であることがより好ましく、0~0.8であることがより好ましく、0~0.6であることがさらに好ましく、0~0.4であることがよりさらに好ましく、0~0.2であることが特に好ましい。
本硬化性樹脂組成物における縮合物(A)の縮合度としては、加水分解性シリル基を有するシラン化合物が加水分解・縮合して、シロキサン結合を形成した2~200量体が好ましく、4~100量体がより好ましい。縮合物(A)の縮合度が2量体以上である場合、高温下および/または高減圧下で硬化性樹脂組成物が揮発する虞がない。ただし、縮合物(A)がシラン化合物(II)を含む加水分解性シリル基を有するシラン化合物を加水分解・縮合してなる場合には、縮合物(A)1分子あたりの平均エポキシ基数が2個以上であることが好ましい。また、縮合物(A)の縮合度が200量体以下である場合、有機溶剤および硬化物等と縮合物(A)との相溶性が低下する虞がない。
縮合物(A)は、1分子中に多数のエポキシ構造含有基を有することが好ましい。1分子中のエポキシ構造含有基の個数は、硬化時の架橋密度を高め、硬化物の物性が高くなることから、4個以上が好ましく、5個以上がより好ましく、6個以上がさらに好ましい。1分子中におけるエポキシ構造含有基の個数が多くなる程、縮合物(A)は高分子量体となる。縮合物(A)の分子量が大きいほど、エポキシ構造含有基は、硬化時における分子間架橋には寄与せずに分子内架橋を生じる可能性、および、架橋には一切関与せずに分子内に埋没してしまう官能基となる可能性が高くなる。そのため、1分子中のエポキシ構造含有基の個数は、100個以下が好ましく、90個以下がより好ましく、80個以下がさらに好ましく、70個以下がよりさらに好ましく、60個以下が特に好ましい。
縮合物(A)の重量平均分子量は、500以上が好ましく、1,000以上がより好ましく、1,500以上がさらに好ましく、2,000以上がよりさらに好ましく、2,800以上が特に好ましい。また、重量平均分子量は、30,000以下が好ましく、28,000以下がより好ましく、25,000以下がより好ましく、20,000以下がより好ましく、18,000以下がより好ましく、16,000以下がさらに好ましく、14,000以下がよりさらに好ましく、12,000以下が特に好ましい。縮合物(A)の重量平均分子量が500未満である場合、縮合物(A)は揮発性を有し、高温下および/または高減圧下において、硬化前に縮合物(A)の一部または全量が揮発してしまう虞がある。縮合物(A)の重量平均分子量が低いほど、硬化物の耐衝撃性は低くなる。そのため、縮合物(A)の重量平均分子量が500未満である場合、耐衝撃性が低下しすぎて、十分でなくなる虞がある。重量平均分子量が30,000を超える場合、その他の配合物(例えば、後述するアクリレート化合物および有機溶剤)並びに硬化物等と縮合物(A)との相溶性が低下するため、塗膜形成時に硬化性樹脂組成物(硬化物)が白濁する虞がある。本明細書において、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel permeation chromatography;GPC)で測定した重量平均分子量である。
ここで、縮合物(A)の重量平均分子量は、反応に用いる水の量、並びに触媒の種類および量を適切に選択することにより、コントロールすることができる。例えば、最初に仕込む水の量を増やすことにより、縮合物(A)の重量平均分子量を高くすることができる。
縮合物(A)の原料であるシラン化合物(I)およびシラン化合物(II)が有するケイ素原子に直接結合したOR基のモル数Xに対する、得られた縮合物(A)が有するケイ素原子に直接結合したOR基のモル数Yの比(Y/X)は、0.20以下であることが好ましく、0.10以下がより好ましく、0.05以下がさらに好ましく、実質的に0であることが最も好ましい。Y/Xが0.2を超える場合、硬化後に経時で硬化物が収縮し硬化物にクラックが発生すること、およびエポキシ構造含有基の貯蔵安定性を損ねることがある。本明細書において、Y/Xは、H-NMRおよび29Si-NMRで測定することによって求めることができる。
ここで、加水分解・縮合反応に用いる水の量、触媒の種類・量を適切に選択することより、Y/Xを0.2以下にすることができる。例えば、加水分解・縮合反応に用いる水の量が多いほど加水分解が促進され、Y/Xは低い値となる。
縮合物(A)中に残存するOR基の個数は、1分子中に2.0個以下であることが好ましく、1.0個以下であることがより好ましく、0.5個以下であることがさらに好ましく、0.1個以下であることが特に好ましく、実質的に残存していないことが最も好ましい。
縮合物(A)におけるエポキシ構造含有基の残存率、すなわち、原料であるシラン化合物(I)が有するエポキシ構造含有基のモル数に対する、縮合物(A)におけるエポキシ構造含有基のモル数の割合は高い方が好ましい。縮合物(A)におけるエポキシ構造含有基の残存率が高いほど、硬化物内のエポキシ構造含有基に起因する架橋密度を高めることにより、硬化物の硬度および耐摩耗性を向上させることができる。
縮合物(A)におけるエポキシ構造含有基の残存率は、具体的には、20%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、60%以上であることがさらに好ましい。本明細書において、エポキシ構造含有基の残存率はH-NMR測定によって求めることができる。
縮合物(A)におけるエポキシ構造含有基の残存率が小さい場合、さらには、縮合物(A)1分子中のエポキシ構造含有基の数が小さい場合であっても、R、RおよびRが嵩高い基でない場合には、硬化物内のエポキシ構造含有基に起因する架橋密度を高めることができる。そのため、R、RおよびRとしては嵩高くない基であることが好ましい。
(縮合物(A)の合成方法(加水分解・縮合反応))
<加水分解・縮合反応>
縮合物(A)の合成、すなわち加水分解性シリル基を有するシラン化合物の加水分解・縮合反応は、中性塩あるいは塩基性化合物を触媒として実施することが好ましい。中性塩あるいは塩基性化合物を触媒として加水分解性シリル基を有するシラン化合物の加水分解・縮合反応を実施することにより、加水分解・縮合反応の前後および得られた縮合物(A)の貯蔵中に、縮合物(A)中のエポキシ基を失活させることがない。そのため、得られる硬化性樹脂組成物を用いて、シロキサン樹脂を得ることができる。
また、酸性化合物を触媒として加水分解性シリル基を有するシラン化合物の加水分解・縮合反応を実施した場合(場合Bとする)、得られる縮合物(A)は酸性となる。場合Bのように縮合物(A)が酸性である場合、得られた縮合物(A)の保存容器が、(a)金属の場合は錆びの原因となりやすく、(b)樹脂の場合は加水分解による劣化を引き起こしやすい。そのため、場合Bでは、酸の除去工程または中和工程を経る必要がある。これに対し、中性塩または塩基性化合物を触媒として得られる縮合物(A)は、汎用な保存容器として用いられる材質に対する腐食作用が低い、好適に用いることができる。
(中性塩)
縮合物(A)の合成に用いられる中性塩とは、強酸と強塩基とからなる正塩のことであり、例えば、カチオンとして第一族元素イオン、第二族元素イオン、テトラアルキルアンモニウムイオン、グアニジウムイオンよりなる群から選ばれるいずれか1種と、アニオンとしてフッ化物イオンを除く第十七族元素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、過塩素酸イオンよりなる群から選ばれるいずれか1種との組合せからなる塩のことである。
上記中性塩の具体的な化合物としては、例えば、(a)塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化ラビジウム、塩化セシウム、塩化フランシウム、塩化ベリリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ストロンチウム、塩化バリウム、塩化ラジウム、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラプロピルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラペンチルアンモニウム、塩化テトラヘキシルアンモニウム、塩化グアニジウム;(b)臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化ラビジウム、臭化セシウム、臭化フランシウム、臭化ベリリウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、臭化ストロンチウム、臭化バリウム、臭化ラジウム、臭化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラプロピルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラペンチルアンモニウム、臭化テトラヘキシルアンモニウム、臭化グアニジウム;(c)ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ラビジウム、ヨウ化セシウム、ヨウ化フランシウム、ヨウ化ベリリウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化ストロンチウム、ヨウ化バリウム、ヨウ化ラジウム、ヨウ化テトラメチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラプロピルアンモニウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、ヨウ化テトラペンチルアンモニウム、ヨウ化テトラヘキシルアンモニウム、ヨウ化グアニジウム;(d)硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸ラビジウム、硫酸セシウム、硫酸フランシウム、硫酸ベリリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウム、硫酸バリウム、硫酸ラジウム、硫酸テトラメチルアンモニウム、硫酸テトラエチルアンモニウム、硫酸テトラプロピルアンモニウム、硫酸テトラブチルアンモニウム、硫酸テトラペンチルアンモニウム、硫酸テトラヘキシルアンモニウム、硫酸グアニジウム;(e)硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸ラビジウム、硝酸セシウム、硝酸フランシウム、硝酸ベリリウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸バリウム、硝酸ラジウム、硝酸テトラメチルアンモニウム、硝酸テトラエチルアンモニウム、硝酸テトラプロピルアンモニウム、硝酸テトラブチルアンモニウム、硝酸テトラペンチルアンモニウム、硝酸テトラヘキシルアンモニウム、硝酸グアニジウム;(f)過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、過塩素酸ラビジウム、過塩素酸セシウム、過塩素酸フランシウム、過塩素酸ベリリウム、過塩素酸マグネシウム、過塩素酸カルシウム、過塩素酸ストロンチウム、過塩素酸バリウム、過塩素酸ラジウム、過塩素酸テトラメチルアンモニウム、過塩素酸テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラプロピルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、過塩素酸テトラペンチルアンモニウム、過塩素酸テトラヘキシルアンモニウム、過塩素酸グアニジウム、等が挙げられる。これら中性塩は、1種のみを単独でも使用しても良く、2種以上を併用しても良い。
これら中性塩の中でも、触媒として用いるという観点から、アニオンとしては求核性が高い第十七族元素イオンがより好ましく、カチオンとしては、求核作用を阻害しないように、嵩高くないことが求められ、第一族元素イオン、第二族元素イオンがより好ましい。
更に、入手性および取扱い時の安全性に優れることから、中性塩としては、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化ラビジウム、塩化セシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ストロンチウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化ラビジウム、臭化セシウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、臭化ストロンチウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ラビジウム、ヨウ化セシウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化ストロンチウムが特に好ましい。
中性塩の使用量が多い程、加水分解性シリル基を有するシラン化合物の加水分解・縮合反応は促進されるが、得られる縮合物(A)の透明性および精製工程などを考慮した場合には、中性塩の使用量は少ない程よい。本明細書において、「使用量」、「添加量」および「配合量」は同じ意味を示し、それぞれ相互置換可能である。
中性塩の使用量は、加水分解性シリル基を有するシラン化合物の加水分解性シリル基1モルに対して、0.000001モル以上0.1モル以下が好ましく、0.000001モル以上0.01モル以下がより好ましく、0.000005モル以上0.05モル以下が特に好ましく、0.000005モル以上0.01モル以下が最も好ましい。
(塩基性化合物)
縮合物(A)の合成に用いられる塩基性化合物としては、塩基性であれば特に限定されない。上記塩基性化合物としては、例えば、(a)水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、アンモニア等の無機塩基;(b)トリエチルアミン、ジエチレントリアミン、n-ブチルアミン、ジメチルアミノエタノール、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等の有機塩基を使用することができる。これら塩基性化合物は、1種のみを単独で使用しても良く、2種以上を併用しても良い。これら塩基性化合物の中でも、縮合物(A)からの除去がし易いことから、無機塩基が好ましい。
塩基性化合物の使用量が多い程、加水分解性シリル基を有するシラン化合物の加水分解・縮合反応は促進されるが、得られる縮合物(A)の透明性および精製工程などを考慮した場合には、塩基性化合物の使用量は少ない程よい。
塩基性化合物の使用量は、加水分解性シリル基を有するシラン化合物の加水分解性シリル基1モルに対して、0.000001モル以上0.1モル以下が好ましく、0.000001モル以上0.01モル以下がより好ましく、0.000005モル以上0.05モル以下が特に好ましく、0.000005モル以上0.01モル以下が最も好ましい。
エポキシ構造含有基を含有する加水分解性シリル基を有するシラン化合物に対する加水分解・縮合反応触媒として考えた場合、(a)加水分解・縮合反応後におけるエポキシ構造含有基の残存率が高く、(b)得られる縮合物(A)の保存容器に対する腐食性がより低く、かつ(c)取り扱うときに人体に対する悪影響も低い場合が多いことから、塩基性化合物より中性塩の方が好ましい。
縮合物(A)の合成における、加水分解・縮合反応に必要な水の量は、ケイ素原子に直接結合したOR基に対して0.40当量~20.00当量が好ましく、0.45当量~3.00当量がより好ましく、0.45当量~2.00当量がさらに好ましい。上記水の量が0.40当量以上である場合、OR基の一部が加水分解せずに残存してしまう虞がない。上記水の量が20当量以下である場合、加水分解・縮合反応の速度が大きすぎて高分子量の縮合物が生成され、塗膜の物性、透明性を低下させる場合がある。
(溶剤)
縮合物(A)の合成(製造)においては、製造上の安全性を考慮し、希釈溶剤および、加水分解により発生するアルコール等を還流しながら、行うことが好ましい。
縮合物(A)製造において用いられる希釈溶剤としては、アルコールおよびエーテル化合物が好ましく、更に水溶性であることが好ましい。その理由としては、シラン化合物(I)および(II)は、中性塩および加水分解に用いる水との相溶性が低いものが多いため、反応を円滑に進める上で、反応溶液としては相溶していることが好ましいでためである。アルコールおよびエーテル化合物に対して、ケトンおよびエステル系の溶剤は、カルボニル基を有し、反応を阻害しやすいため、適切ではない。
縮合物(A)の製造において用いられる希釈溶剤の沸点としては、40℃~200℃が好ましく、50℃~200℃がより好ましく、60℃~250℃がさらに好ましく、60℃~230℃が特に好ましい。希釈溶剤の沸点が40℃以上である場合、低温で還流状態となって、反応の妨げとなる虞が無く、200℃以下である場合、高すぎないため反応後に取り除くことが容易であり、分液抽出等の煩雑な工程を組み込む必要が無いという利点を有する。
縮合物(A)製造において用いられる希釈溶剤の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、2-ブタノール、2-メチル-2-プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノール(PGMEとも称する。)、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテルなどが挙げられる。これら希釈溶剤は、1種のみを単独で使用しても良く、2種以上を併用しても良い。
縮合物(A)製造における希釈溶剤の使用量は、水および希釈溶剤の合計量100重量%として、シラン化合物(I)および(II)合計量が90重量%以下となる量であることが好ましく、30重量%~80重量%となる量がより好ましく、40重量%~80重量%となる量であることが特に好ましい。希釈溶剤の使用量が上記範囲内であれば、反応系中におけるシラン化合物の濃度が低下することなく、反応速度が低下する虞がない。加水分解性シリル基を有するシラン化合物と水との相溶性を向上させる効果、および反応の進行に伴う系中の粘度上昇を抑え反応速度の低下を抑制する効果が期待できるため、希釈溶剤の使用量としては、適切な量を選択することが重要である。
(温度)
縮合物(A)製造における反応温度は、40~200℃の範囲が好ましく、50~250℃の範囲がより好ましく、60~230℃の範囲がさらに好ましい。反応温度が40℃以上である場合、中性塩の触媒活性が低下することなく、反応時間が大幅に増加する虞がない。反応温度が200℃以下である場合、有機置換基が副反応を起こして失活してしまう虞がない。
(1-2.光酸発生剤(B))
光酸発生剤(B)は、活性エネルギー線に暴露されることにより酸を発生する化合物である。光酸発生剤(B)は、たとえば、強酸、オニウム塩類、鉄-アレン錯体類、シラノール-金属キレート錯体類、スルホン酸誘導体、有機ハロゲン化合物類などが挙げられる。強酸としては、トルエンスルホン酸または四フッ化ホウ素などが挙げられる。オニウム塩類としては、スルホニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、セレニウム塩などが挙げられる。光酸発生剤(B)としては、また、特開平5-134412号公報に示される放射線の照射により酸を発生する化合物が挙げられる。
スルホン酸誘導体としては、ジスルホン類、ジスルホニルジアゾメタン類、ジスルホニルメタン類、スルホニルベンゾイルメタン類、イミドスルホネート類、ベンゾインスルホネート類などが挙げられる。スルホン酸誘導体としては、また、例えば、(a)米国特許第4618564号明細書に示されるベンゾイントシレート、ニトロベンジルトシレート、コハク酸イミドトシルスルホネートなどのスルホン酸エステル類;(b)米国特許第4540598号明細書および特開平6-67433号公報に示されるα-(4-トシルオキシイミノ)-4-メトキシベンジルシアニドなどのオキシムスルホネート類;(c)特開平6-348015号公報に示されるトリス(メタンスルホニルオキシ)ベンゼンなど;(d)特開昭64-18143号公報に示される9,10-ジアルコキシアントラセンスルホン酸ニトロベンジルエステルなど;並びに(e)N-(p-ドデシルベンゼンスルホニルオキシ)-1,8-ナフタルイミドなどが挙げられる。スルホン酸誘導体としては、市販品を用いることもでき、例えばトリアリールスルホニウム・SbF塩である、CPI-101A(サンアプロ株式会社製)を用いることもできる。
有機ハロゲン化合物類としては、例えば、(a)2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(3,4-ジメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-(5-メチルフラン-2-イル)ビニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジンなどの特開昭55-32070号公報、特開昭48-36281号公報および特開昭63-238339号公報に示されるハロゲン含有トリアジン化合物;(b)特開平2-304059号公報に示される2-ピリジル-トリブロモメチルスルホンなどのハロゲン含有スルホン化合物;(c)トリス(2-クロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3-ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3-ジブロモプロピル)ホスフェートなどのハロゲン化アルキルリン酸エステル;(d)2-クロロ-6-(トリクロロメチル)ピリジンなどのハロゲン含有へテロ環状化合物;並びに(e)1,1-ビス[p-クロロフェニル]-2,2,2-トリクロロエタン、塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル共重合体、塩素化ポリオレフィンなどのハロゲン含有炭化水素化合物などが挙げられる。
エポキシ構造含有基および加水分解性シリル基を有するシラン化合物の縮合物である縮合物(A)を含有する硬化性樹脂組成物における安定性が高く、かつ入手し易いことから、上述した光酸発生剤の中でも、芳香族スルホニウム塩または芳香族ヨードニウム塩が好ましい。硬化が速く、プラスチック基材への付着性に優れることから、芳香族スルホニウム塩または芳香族ヨードニウム塩のカウンターアニオンがフルオロフォスフェート系アニオン、フルオロアンチモネート系アニオン、または、フルオロボレート系アニオンであることが好ましい。特に、芳香族スルホニウム塩または芳香族ヨードニウム塩のカウンターアニオンがフルオロフォスフェート系アニオンまたはフルオロアンチモネート系アニオンであることが好ましい。このような光酸発生剤(B)としては、ジフェニル(4-フェニルチオフェニル)スルホニウム・ヘキサフルオロフォスフェート、または、ジフェニル(4-フェニルチオフェニル)スルホニウム・ヘキサフルオロアンチモネートが好ましい。
光酸発生剤(B)の添加量は、生成する酸の発生量、および発生速度に応じて適宜調整され得る。縮合物(A)(固形分)100重量部に対する光酸発生剤(B)の添加量は、0.05~30.00重量部であることが好ましく、0.10~10.00重量部であることがより好ましい。光酸発生剤(B)の上記添加量が、(a)0.05重量部以上である場合、生成する酸が不足することなく、得られる硬化物の硬度および/または耐摩耗性が充分となり、(b)30.00重量部以下である場合、硬化物の外観の低下および/または硬化物の着色などの問題が発生しないという利点がある。
(1-3.シリカ(C))
シリカ(C)としては、シリカ(SiO)である限り特に限定されない。
シリカは、粉体状(粉末)、または、溶剤分散ゾルであってもよい。金属酸化物粒子(F)が溶剤分散ゾルである場合、シリカ(C)と他の成分との相溶性、および分散性に優れることから、分散媒(溶剤)は、有機溶剤が好ましい。シリカ(C)の溶剤分散ゾルに使用され得る有機溶剤としては、例えば、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、芳香族炭化水素類およびアミド類を挙げることができる。当該アルコール類としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等が挙げられる。当該ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。当該エステル類としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、δ-ブチロラクトン等が挙げられる。当該エーテル類としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。当該芳香族炭化水素類としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。当該アミド類としては、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。これら有機溶剤は、1種のみを使用しても良く、2種以上を併用しても良い。シリカ(C)の溶剤分散ゾルに使用され得る有機溶剤としては、これらの中でも、アルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチルおよび酢酸ブチルが好ましい。
シリカ(C)の平均粒子径(平均一次粒子径)は、10nm~100nm以下であることが好ましく、10nm~40nm以下であることがより好ましく、10nm~30nm以下であることがさらに好ましく、10nm~20nm以下であることが特に好ましい。シリカ(C)の平均粒子径が100nm以下である場合、得られる硬化物の透明性が損なわれる虞がない。シリカ(C)は、上述のように平均粒子径が小さいことが好ましく、換言すれば、微粒子であることが好ましい。シリカ(C)の平均粒子径は、例えば、動的光散乱式粒度分布計を用いて、測定できる。
市販されているシリカ粒子の分散品(溶剤分散ゾル)としては、コロイダルシリカとして、メタノールシリカゾル、IPA-ST、MEK-ST、NBA-ST、XBA-ST、DMAC-ST、MIBK-ST、ST-UP、ST-OUP、ST-20、ST-40、ST-C、ST-N、ST-O、ST-50、ST-OL等[以上、日産化学工業(株)製]、並びにOSCALシリーズおよびELECOMシリーズ[以上、日揮触媒化成(株)製]等を挙げることができる。
市販されている粉体状のシリカ粒子としては、アエロジル130、アエロジル300、アエロジル380、アエロジルTT600、アエロジルOX50等[以上、日本アエロジル(株)製]、シルデックスH31、H32、H51、H52、H121、H122等[以上、旭硝子(株)製]、E220A、E220等[以上、日本シリカ工業(株)製]、SYLYSIA470[富士シリシア(株)製]、並びにSGフレ-ク[日本板硝子(株)製]等を挙げることができる。
シリカ(C)は、中空シリカであることが好ましい。中空シリカとは、外殻および外殻内に中空部を有するシリカ(二酸化珪素、SiO2)である。中空シリカの形状は、特に限定されないが、略球状または球状であることが好ましい。
中空シリカの外殻の厚さは、特に限定されないが、1nm~60nmであることが好ましい。中空シリカは、中空部に空気を含んでいる。空気の屈折率は1.0であることから、中空シリカの屈折率は、1.20~1.29と低い値となり得る。そのため、本硬化性樹脂組成物がシリカ(C)として中空シリカを含む場合、硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物が、低屈折率を有するという利点を有する。換言すれば、本硬化性樹脂組成物がシリカ(C)として中空シリカを含む場合、硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物から、後述するようにアルカリ性溶液に硬化物を浸漬することにより、シリカ(C)を除去することなく、低屈折率を有する硬化物を提供できる。
中空シリカの空隙率は、40%~45%であることが好ましい。中空シリカの空隙率が、(a)40%以上である場合、中空部の空気量が十分な量となり、低屈折率を有する硬化物、および低反射率を有する積層体を提供できるという利点を有し、(b)45%以下である場合、空隙率を大きくするために外殻を薄くする必要性が低下し、中空シリカの製造が容易であるという利点を有する。
本硬化性樹脂組成物におけるシリカ(C)の添加量は、硬化物および積層体の硬度(強度ともいえる。)、硬化物の屈折率および積層体の反射率に影響を与え得る。縮合物(A)およびシリカ(C)の合計100重量部に対するシリカ(C)の添加量は、30重量部~80重量部であることが好ましく、35重量部~80重量部であることがより好ましく、35重量部~75重量部であることがさらに好ましく、40重量部~70重量部であることが特に好ましい。シリカ(C)の上記添加量が、(a)30重量部以上である場合、得られる硬化性樹脂組成物は、低屈折率を有する硬化物、および低反射率を有する積層体を提供でき、(b)80重量部以下である場合、縮合物(A)と反応できない過剰のシリカ(C)が残存することがなく、硬化物の耐摩耗性が低下する虞がない。
(1-4.ラジカル発生剤(D))
本硬化性樹脂組成物は、ラジカル発生剤(D)をさらに含んでいてもよい。加水分解性シリル基を有するシラン化合物が、シラン化合物(II)としてシラン化合物(II-1)を含み、かつ、Rに含まれる置換基がラジカル発生剤によって反応性を発現する場合、硬化性樹脂組成物はラジカル発生剤(D)を含んでいることが好ましい。シラン化合物(II-1)のRに含まれる置換基がラジカル重合性を有する場合、ラジカル発生剤(D)は、シラン化合物(II-1)の重合開始剤として作用する。本明細書において、「ラジカル発生剤(D)」を「成分(D)」とも称する。
ラジカル発生剤(D)としては、特に限定されるものではなく、一般的に光および/または熱エネルギーを与えることでラジカルを発生させる化合物として知られているものはすべて使用できる。
発生させるラジカル種として使用できるものは、炭素ラジカル、酸素ラジカル、チイルラジカル、等がある。チイルラジカルを発生させる化合物は貯蔵安定性に乏しく、また一般的な重合禁止剤を用いて重合を禁止(停止)し難い。そのため、ラジカル種としては炭素ラジカルまたは酸素ラジカルが好ましく、ラジカル源としては、炭素ラジカルまたは酸素ラジカルを発生させるものが好ましい。ラジカル発生剤(D)としては、例えば、光ラジカル発生剤、熱ラジカル発生剤等を用いることができる。
(光ラジカル発生剤(D-1))
光ラジカル発生剤(D-1)は、活性エネルギー線に暴露されることによりラジカルを発生する化合物である。光ラジカル発生剤(D-1)は、例えばシラン化合物(II-1)に対する重合開始剤として作用する。
光ラジカル発生剤(D-1)の具体例としては、カルボニル化合物、硫黄化合物、およびアシルフォスフィンオキサイド等を挙げることができる。カルボニル化合物としては、ベンゾイン、ベンゾインモノメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アセトイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p-メトキシベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2,2-ジエトキシアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等が挙げられる。硫黄化合物としては、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。アシルフォスフィンオキサイドとしては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。これら光ラジカル発生剤(D-1)は1種のみを使用しても良く、硬化速度等を考慮して2種以上を併用しても良い。
光ラジカル発生剤(D-1)は、市販品として入手することができる。例えば、IRGACURE127、IRGACURE184、IRGACURE819などのIRGACUREシリーズ、並びに、DAROCUR1173、DAROCUR TPOなどのDAROCURシリーズ[以上、BASF社製]、KAYACURE DETX-S、KAYACURE CTXなどのKAYACUREシリーズ[以上、日本化薬(株)製]、TAZ-101、TAZ-110などのTAZシリーズ[以上、みどり化学(株)製]等が市販されている。
光ラジカル発生剤(D-1)の添加量は、生成するラジカルの発生量、および目的の分子量に応じて適宜調整され得る。縮合物(A)100重量部に対する光ラジカル発生剤(D-1)の添加量は、0.05重量部~50.00重量部が好ましく、0.10重量部~30.00重量部がより好ましい。光ラジカル発生剤(D-1)の上記添加量が、(a)0.05重量部以上である場合、生成するラジカルが不足することなく、縮合物(A)が充分に硬化するため、タックが生じることがなく、(b)50.00重量部以下である場合、硬化物の着色性および耐候性が低下するなどの問題が発生する虞がない。
(熱ラジカル発生剤(D-2))
熱ラジカル発生剤(D-2)は、加熱することによりラジカルを発生する化合物である。熱ラジカル発生剤(D-2)は、例えばシラン化合物(II-1)に対する重合開始剤として作用する。
熱ラジカル発生剤(D-2)の具体例としては、代表的な重合開始剤を例示すると、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーカーボネート、アゾ化合物等を挙げることができる。ジアシルパーオキサイドとしては、ベンゾイルパーオキサイド、p-クロロベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド等が挙げられる。パーオキシエステルとしては、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサネート、t-ブチルパーオキシネオデカネート、クミルパーオキシネオデカネート、t-ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。パーカーボネートとしては、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート等が挙げられる。アゾ化合物としては、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。これら熱ラジカル発生剤(D-2)は1種のみを使用しても良く、硬化速度等を考慮して2種以上を併用しても良い。
熱ラジカル発生剤(D-2)の添加量は、生成するラジカルの発生量、および目的の分子量に応じて適宜調整され得る。縮合物(A)100重量部に対する熱ラジカル発生剤(D-2)の添加量は、0.05重量部~50.00重量部が好ましく、0.10重量部~30.00重量部がより好ましい。熱ラジカル発生剤(D-2)の上記添加量が、(a)0.05重量部以上である場合、生成するラジカルが不足することなく、縮合物(A)が充分に硬化するため、タックが生じることがなく、(b)50.00重量部以下である場合、硬化物の着色性および耐候性が低下するなどの問題が発生する虞がない。
また、光ラジカル発生剤(D-1)と熱ラジカル発生剤(D-2)とは混合して用いても構わない。光ラジカル発生剤(D-1)を用いる場合には、3級アミン等の公知の重合促進剤を光ラジカル発生剤(D-1)と併用することができる。
(1-5.脂環式エポキシ化合物(E))
本硬化性樹脂組成物は、脂環式エポキシ化合物(E)をさらに含んでいてもよい。本明細書において、「脂環式エポキシ化合物(E)」を「成分(E)」とも称する。成分(E)は、反応性希釈剤として使用することができ、活性エネルギー線照射前の硬化性樹脂組成物の取り扱い性および作業性を上げることができる。脂環式エポキシ化合物(E)としては、例えば、(a)3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(例えば、ダイセル化学工業株式会社製:商品名「セロキサイド2021P」)、イプシロン-カプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(例えば、ダイセル化学工業株式会社製:商品名「セロキサイド2081」)、1,2,8,9-ジエポキシリモネン(例えば、ダイセル化学工業株式会社製:商品名「セロキサイド3000」)、ビニルシクロヘキセンモノオキサイド1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン(例えば、ダイセル化学工業株式会社製:商品名「セロキサイド2000」)、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物(例えば、ダイセル化学工業株式会社製:商品名「EHPE-3150」)、ビス-(3,4-エポキシシクロヘキシル)アジペート等の脂環式エポキシ化合物、(b)環状脂肪族炭化水素に直接または炭化水素を介してエポキシが付加したエポキシ化合物、および(c)トリグリシジルイソシアヌレート等のヘテロ環含有のエポキシ化合物、等の脂環式エポキシド等を挙げることができる。脂環式エポキシ化合物(E)としては、これらの中では、エポキシシクロヘキシル基を有するエポキシ化合物が好ましく、低粘度の液状化合物である3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートがより好ましい。
縮合物(A)100重量部に対する脂環式エポキシ化合物(E)の添加量は、0重量部~100重量部が好ましく、0重量部~50重量部がより好ましい。脂環式エポキシ化合物(E)の上記添加量が100重量以下である場合、硬化物の硬度および/または耐摩耗性が低下する虞がない。
(1-6.金属酸化物粒子(F))
本硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、金属酸化物粒子(F)をさらに含んでいてもよい。硬化性樹脂組成物が金属酸化物粒子(F)を含む場合、硬化物の耐摩耗性がさらに向上するという利点を有する。
金属酸化物粒子(F)としては、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、酸化スズ(SnO)、ジルコニア(ZrO)、酸化亜鉛(ZnO)、チタニア(TiO)、ITO(スズ・酸化インジウム)、酸化アンチモン(Sb、Sb)および、これらの複合粒子等を挙げることができる。これら金属酸化物粒子(F)は、1種のみを使用しても良く、2種以上を併用しても良い。
金属酸化物粒子(F)としては、これら金属酸化物粒子の中でも高硬度であることから、シリカ、アルミナ、ジルコニアおよび酸化アンチモンが好ましい。入手のしやすさ、コストおよび表面硬度などからシリカ粒子およびアルミナ粒子がさらに好ましく、シリカ粒子が特に好ましい。
金属酸化物粒子(F)は、粉体状(粉末)、または、溶剤分散ゾルであることが好ましい。金属酸化物粒子(F)が溶剤分散ゾルである場合、金属酸化物粒子(F)と他の成分との相溶性、および分散性に優れることから、分散媒(溶剤)は、有機溶剤が好ましい。金属酸化物粒子(F)の溶剤分散ゾルに使用され得る有機溶剤の態様としては、好まし態様を含み、上記(5-3.シリカ(C))の項で説明した、シリカ(C)の溶剤分散ゾルに使用され得る有機溶剤の態様と同じであってもよい。
金属酸化物粒子(F)の平均粒子径(平均一次粒子径)は、100nm以下であることが好ましく、40nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることがさらに好ましく、20nm以下であることが特に好ましい。金属酸化物粒子(F)の平均粒子径が100nm以下である場合、得られる硬化物の透明性が損なわれる虞がない。金属酸化物粒子(F)は、上述のように平均粒子径が小さいことが好ましく、換言すれば、微粒子であることが好ましい。
シリカとしては、上記(5-3.シリカ(C))の項で説明した各種シリカを使用できる。
アルミナ粒子の分散品としてはNANOBYK-3601、NANOBYK-3602、NANOBYK-3610等[以上、ビックケミー・ジャパン(株)製]、アルミナ粒子のイソプロパノール分散品としてはAS-150I等[住友大阪セメント(株)製]、アルミナ粒子のトルエン分散品としてはAS-150T[住友大阪セメント(株)製]、ジルコニア粒子のトルエン分散品としてはHXU-110JC[住友大阪セメント(株)製]、アルミナ粒子、チタニア粒子、酸化スズ粒子、酸化インジウム粒子、酸化亜鉛粒子等の粉末および溶剤分散品としては、商品名ナノテック[シーアイ化成(株)製]等を挙げることができる。
これらの中でも、ELECOM V-8802およびELECOM V-8804[以上、日揮触媒化成(株)製]は、硬化性樹脂組成物における金属酸化物粒子の分散性が高く、得られる硬化物の透明性、硬度および耐摩耗性がより向上するため、好ましい。
縮合物(A)100重量部に対する金属酸化物粒子(F)の添加量は、0重量部~100重量部が好ましく、0重量部~50重量部がより好ましい。金属酸化物粒子(F)の上記添加量が100重量部以内である場合、硬化物を形成できない虞、および硬化物の透明性が低下する虞がない。
本発明において、脂環式エポキシ化合物(E)および金属酸化物粒子(F)は、硬化物の硬度(強度)に悪影響を与えないため、縮合物(A)と共に存在しても問題ない。しかし、シリカ粒子表面のシラノール基などによって、一部の金属水酸化物は、酸性度が高く、エポキシ基などのオキシラン環およびビニルエーテルなどをカチオン重合させることがあり得る。そのため、硬化性樹脂組成物中のマトリックスとなる濃度[縮合物(A)、シリカ(C)、脂環式エポキシ化合物(E)および金属酸化物粒子(F)のそれぞれの配合量の和を、硬化性樹脂組成物の全重量で除したもの]を0.0001~0.6に調整することが好ましい。硬化性樹脂組成物中のマトリックスとなる濃度が0.6以下である場合、硬化性樹脂組成物を貯蔵中にゲル化する虞がない。
金属水酸化物(F)の濃度を高めたい場合には、金属水酸化物(F)の表面をアルコキシ化するなど、シラノール基を封止するなどの化学的変性が有効な手法となる。なお、上述のELECOM V-8802、ELECOM V-8804などは、シラノール基を封止することにより、有機成分中への分散を改良した製品であり、金属水酸化物(F)の濃度を高めたい場合に好適に用いられ得る。
(1-7.光増感剤(G))
本硬化性樹脂組成物は、成分(B)の感光性を向上させる目的で、必要に応じて、光増感剤(G)をさらに含んでいてもよい。硬化性樹脂組成物が成分(D)を含み、成分(D)が活性エネルギー線を照射することで性能を発現する場合には、硬化性樹脂組成物は、成分(D)の感光性を向上させる目的で、必要に応じて、光増感剤(G)を含んでいてもよい。光増感剤(G)は、使用する成分(B)および成分(D)では吸収できない波長域の光を吸収できるものがより効率的であるため、成分(B)および成分(D)の吸収波長域と重なりが少ない吸収波長域を有するものが好ましい。本明細書において、「光増感剤(G)」を「成分(G)」とも称する。
光増感剤(G)としては、特に限定されない。光増感剤(G)としては、例えば、アントラセン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体、アントラキノン誘導体、ベンゾイン誘導体等が挙げられる。光増感剤(G)としては、これらの中でも、酸化電位が低く、電子移動に関与する一重項あるいは三重項状態の励起エネルギーの高いものが理想的である。光増感剤(G)としては、光誘起電子供与性の観点から、アントラセン誘導体、チオキサントン誘導体、および、ベンゾフェノン誘導体が好ましい。光増感剤(G)としては、より詳しくは、9,10-ジアルコキシアントラセン、2-アルキルチオキサントン、2,4-ジアルキルチオキサントン、2-アルキルアントラキノン、2,4-ジアルキルアントラキノン、p,p’-アミノベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-アルコキシベンゾフェノン、ベンゾインエーテル等が挙げられる。光増感剤(G)としては、さらに具体的には、アントロン、アントラセン、9,10-ジフェニルアントラセン、9-エトキシアントラセン、ピレン、ペリレン、コロネン、フェナントレン、ベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、2-ベンゾイル安息香酸メチル、2-ベンゾイル安息香酸ブチル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾイン-i-ブチルエーテル、9-フルオレノン、アセトフェノン、p,p’-テトラメチルジアミノベンゾフェノン、p,p’-テトラエチルアミノベンゾフェノン、2-クロロチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、フェノチアジン、アクリジンオレンジ、ベンゾフラビン、セトフラビン-T、2-ニトロフルオレン、5-ニトロアセナフテン、ベンゾキノン、2-クロロ-4-ニトロアニリン、N-アセチル-p-ニトロアニリン、p-ニトロアニリン、N-アセチル-4-ニトロ-1-ナフチルアミン、ピクラミド、アントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、3-メチル-1,3-ジアザ-1,9-ベンズアンスロン、ジベンザルアセトン、1,2-ナフトキノン、3,3’-カルボニル-ビス(5,7-ジメトキシカルボニルクマリン)、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジプロポキシアントラセン等が挙げられる。これら光増感剤(G)は、1種のみを使用しても良く、2種以上を併用しても良い。
光増感剤(G)を使用する場合の光増感剤(G)の添加量は、目的とする硬化速度に応じて適宜調整すればよい。光酸発生剤(B)100重量部に対する光増感剤(G)の添加量は、0.1重量部以上が好ましく、0.5重量部以上がより好ましく、また、10重量部以下が好ましく、5重量部以下がより好ましい。光増感剤(G)の上記添加量が、(a)0.1重量部以上である場合、目的とする光増感剤の効果を十分に得ることができ、10重量部以下である場合、硬化物が着色する虞、およびコストアップに繋がる虞がない。
(1-8.その他添加剤)
本硬化性樹脂組成物は、上記成分(A)、成分(B)および成分(C)を含有し、さらに必要に応じて、成分(D)、成分(E)、成分(F)および成分(G)を含有する。本硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂組成物および/または得られる硬化物の物性を調整するために、さらに各種の添加剤を適宜含んでいてもよい。本硬化性樹脂組成物は、例えば、無機フィラー、無機顔料、有機顔料、可塑剤、分散剤、湿潤剤、増粘剤、消泡剤等の通常塗料に用いられる添加剤をさらに含有することができる。
(1-9.溶剤)
本硬化性樹脂組成物は、溶剤を含んでいてもよい。本発明の一実施形態において用いられる溶剤としては特に制限はない。硬化性樹脂組成物を適用する対象の基材がプラスチックの場合(場合Dとする)を例に挙げて、溶剤の態様について説明する。場合Dでは、基材の耐溶剤性が低いことが多いため、溶剤としては、ケトン類、アルコール類、エステル類、およびエーテル類が好ましい。ケトン類としては、メチルイソブチルケトンおよびジイソブチルケトン等が挙げられる。アルコール類としては、ブタノールおよびイソプロピルアルコール等が挙げられる。エステル類としては、酢酸ブチルおよび酢酸イソプロピル等が挙げられる。エーテル類としては、ジエチレングリコールメチルエーテルおよびプロピレングリコールメチルエーテルが挙げられる。本発明の一実施形態では、特に、エーテル系溶剤を全溶剤の30重量%以上使用することが、基材を傷めない点で好ましい。
成分(A)、成分(B)および成分(C)、並びに、必要に応じて含まれる成分(D)、成分(E)、成分(F)および成分(G)の総量100重量部に対する溶剤の添加量は、0重量部~400重量部が好ましく、0重量部~200重量部がより好ましい。溶剤の上記添加量が、400重量部以下である場合、上述したように基材を傷める可能性がない。
(1-10.硬化性樹脂組成物の製造方法)
本硬化性樹脂組成物の製造方法としては、特に限定されない。本硬化性樹脂組成物の製造方法としては、例えば、(1)上述した各成分を配合し、必要であれば遮光して、ハンドミキサーおよびスタティックミキサー等を用いて配合物を混合する方法;(2)プラネタリーミキサー、ディスパー、ロール、およびニーダーなどを用いて、常温または加熱下で得られた混合物を混練する方法;および(3)任意の適した溶剤を少量使用して上述した各成分を溶解させ、それら各成分の溶液を混合する、等の通常の方法が挙げられる。
(用途)
本硬化性樹脂組成物は、様々な用途に使用できる。本硬化性樹脂組成物は、例えば後述する用途に用いられる硬化物および積層体を製造するために好適に用いられる。また、本硬化性樹脂組成物は、金属、セラミックス、ガラス、セメント、窯業系基材、プラスチック、フィルム、シート、木材、紙および繊維などからなる建築物、家電用品並びに産業機器などの塗装に好適に使用できる。
〔2.硬化物〕
本発明の一実施形態に係る硬化物は、硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物であり、耐アルカリ性を有し、屈折率が1.25~1.45である。ここで、耐アルカリ性を有するとは、55℃である0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液中に上記硬化物を4時間浸漬したとき、屈折率が1.45以下であることをいう。本明細書において、「本発明の一実施形態に係る硬化物」を「本硬化物」とも称する。
本硬化物は、上記構成を有するために、耐アルカリ性の市場要求スペックを満たすことができる。また、本硬化物は、上記構成を有するために、従来よりも低い屈折率を有する。そのため、本硬化物は、従来よりも低い屈折率を有する低屈折率層を提供できる。
(硬化性樹脂組成物)
本硬化物を提供し得る硬化性樹脂組成物としては、上述した物性を有する硬化物を提供する限り特に限定されない。硬化性樹脂組成物としては、上記〔1.硬化性樹脂組成物〕の項に記載の硬化性樹脂組成物が好適に用いられ得る。
(耐アルカリ性)
本硬化物は、耐アルカリ性を有する。硬化物が耐アルカリ性を有するとは、55℃である0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液中に上記硬化物を4時間浸漬したあとに、硬化物の屈折率が1.45以下であることに加え、硬化物を構成している縮合物(A)に由来する成分の化学結合がアルカリで破壊されずに残っていることともいえる。
(屈折率)
本硬化物は、屈折率が1.25~1.40であることが好ましく、1.25~1.35であることがより好ましく、1.25~1.33であることがさらに好ましく、1.25~1.30であることが特に好ましい。
本明細書において、屈折率とは、基材樹脂と硬化物とからなる積層体を用いて測定される屈折率を意図する。上記基材樹脂としては、例えばアクリル樹脂が挙げられる。具体的には、本明細書において、硬化物の屈折率は、以下のようにして測定した値である。
(1)屈折率1.49のアクリル樹脂板(旭化成ケミカルズ社製、デラグラスA)の上に、バーコーターにより硬化性樹脂組成物をコーティングした。ここで、硬化性樹脂組成物の厚さは、乾燥膜厚で光学膜厚が550nmになる様に、調整された。
(2)硬化性樹脂組成物に含まれる希釈溶媒を乾燥後、紫外線照射装置(へレウス社製)により窒素雰囲気下で無電極UVランプを用いて、500mJ/cmの紫外線を硬化性樹脂組成物に照射して、硬化性樹脂組成物を硬化させた。
(3)アクリル樹脂板の、硬化性樹脂組成物がコーティングおよび硬化された面とは逆の面をサンドペーパーで荒らし、さらに黒色塗料で塗りつぶした。
(4)上記(4)で得られたアクリル樹脂について、分光光度計(UV-2600、島津株式会社製)を用いて、光の波長400nmから650nmにおける5°、-5°正反射率を測定し、その反射率の極小値または極大値を読みとった。
(5)反射率の極小値または極大値から、以下の式を用いてアクリル樹脂板状に形成された硬化物の屈折率を計算した。
反射率の極小値または極大値(%)=[(アクリル板の屈折率(1.49))-(硬化物の屈折率)/(アクリル板の屈折率(1.49))+(硬化物の屈折率)×100
(用途)
本硬化物は、様々な用途に使用できる。本硬化物は、例えば低屈折率層、反射防止コーティング膜として使用できる。また本硬化物は、既存の技術、具体的には、防汚層、撥水層、撥油層、防曇層、保護フィルム層、印刷層、導電層、電磁波シールド層、紫外線吸収層、赤外線吸収層、ブルーライトカット層と組み合わせた機能を有していてもよい。本硬化物単独の、または本硬化物と上記既存技術とを組み合わせたコーティング剤およびコーティングされたフィルムは、建築材、並びに、自動車および家電に用いられる部材への応用が想定され、特にスマートフォン、タブレット端末、腕時計型端末(スマートウオッチ)、携帯ゲーム機、カーナビゲーションシステム、ノートパソコン、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどの装置(ディスプレイ装置)に備えられるディスプレイ用途として、特に好適に使用できる。
(製造方法)
本硬化物の製造方法、換言すれば、硬化性樹脂組成物の硬化方法としては特に限定されない。本硬化物の製造方法としては、下記〔3.硬化物の製造方法〕の項に記載の硬化物の製造方法が好適に用いられ得る。本硬化物の製造方法としては、具体的には、下記〔3.硬化物の製造方法〕の項に記載の第1の硬化物を得る工程を含む製造方法、および第1の硬化物を得る工程と第2の硬化物を得る工程とを含む製造方法が挙げられる。換言すれば、下記〔3.硬化物の製造方法〕の項に記載の第1の硬化物および第2の硬化物の両方が、本発明の一実施形態に含まれ得る。
〔3.硬化物の製造方法〕
本発明の一実施形態に係る硬化物の製造方法は、加水分解性シリル基を有するシラン化合物の加水分解・縮合反応生成物である縮合物(A)と、光酸発生剤(B)と、シリカ(C)とを含有する硬化性樹脂組成物に対して活性エネルギー線を照射することにより、硬化性樹脂組成物を硬化させ第1の硬化物を得る工程、および得られた第1の硬化物をアルカリ性溶液に浸漬することにより、シリカ(C)を除去して第2の硬化物を得る工程を有する。本明細書において、「本発明の一実施形態に係る硬化物の製造方法」を、「本製造方法」とも称する。本製造方法は、上記構成を有するため、耐アルカリ性および優れた低屈折率を有する硬化物を提供できるという利点を有する。
(第1の硬化物を得る工程)
本製造方法における硬化性樹脂組成物は、上記〔1.硬化性樹脂組成物〕の項に記載の硬化性樹脂組成物であることが好ましい。そのため、本製造方法における縮合物(A)、光酸発生剤(B)、シリカ(C)および硬化性樹脂組成物の態様としては、好ましい態様を含み、それぞれ、上記〔1.硬化性樹脂組成物〕の項に記載の縮合物(A)、光酸発生剤(B)、シリカ(C)および硬化性樹脂組成物の態様と同じであってもよい。
本製造方法において、上記シリカ(C)は中空シリカであることが好ましい。上記構成によると、第2の硬化物を得る工程においてアルカリ性溶液により溶かすシリカ(C)の量が少なくなるという利点、および屈折率を下げる効果のある空隙を作り易いという利点を有する。
第1の硬化物を得る工程では、硬化性樹脂組成物に対して活性エネルギー線を照射することにより、硬化性樹脂組成物を硬化させる。活性エネルギー線としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、δ線などを挙げることができるが、反応速度が速く、活性エネルギー線発生装置が比較的安価であるという点からは、紫外線が最も好ましい。
活性エネルギー線の照射量としては、50mJ/cm~10,000mJ/cmの積算光量が好ましく、100mJ/cm~2,000mJ/cmの積算光量がより好ましい。活性エネルギー線の照射量が50mJ/cm以上である場合、光量が十分量であるために、硬化に時間がかかりすぎることがなく、生産性が良好となる。活性エネルギー線の照射量が10,000mJ/cm以下である場合、綺麗に硬化し、基材を傷める虞がない。
なお、下記の第2の硬化物を得る工程を経ずに、第1の硬化物を得る工程を経て得られる硬化物もまた、本発明の一実施形態に含まれ得る。
(第2の硬化物を得る工程)
第2の硬化物を得る工程では、第1の硬化物をアルカリ性溶液に浸漬することにより、シリカ(C)を除去する。第1の硬化物に含まれるシリカ(C)は、全て除去されなくてもよく、少なくとも一部除去されていればよい。第1の硬化物をアルカリ性溶液に浸漬することを、アルカリ処理する、とも称する。第2の硬化物を得る工程は、第1の硬化物をアルカリ処理する工程ともいえる。
アルカリ性溶液としては、第1の硬化物に含まれるシリカ(C)の少なくとも一部を除去できるものであればよい。アルカリ性溶液に用いられるアルカリ性化合物(塩基性化合物ともいえる)としては、例えば、(a)水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、アンモニア等の無機塩基;(b)トリエチルアミン、ジエチレントリアミン、n-ブチルアミン、ジメチルアミノエタノール、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等の有機塩基を挙げることができる。これらアルカリ性化合物の中でも、シリカ(C)の除去効率に優れることから、水酸化ナトリウムおよび酸化カリウムが好ましい。
アルカリ性溶液に浸漬するときの条件、例えば温度および時間、などは、第1の硬化物に含まれるシリカ(C)の少なくとも一部を除去できるものであれば特に限定されない。アルカリ性溶液の温度は高温であるほど好ましく、アルカリ性溶液に浸漬する時間は短いほど好ましい。第1の硬化物をアルカリ性溶液に浸漬するときの好ましい態様としては、例えば、55℃のアルカリ性溶液に4時間以上浸漬する態様が挙げられる。
第2の硬化物を得る工程では、第1の硬化物に含まれるシリカ(C)が多く除去される程好ましく、第1の硬化物に含まれるシリカ(C)のほぼ全て、または全てが除去されることが特に好ましい。
本製造方法において得られる第2の硬化物は、耐アルカリ性を有し、屈折率が1.25~1.45であることが好ましい。ここで、耐アルカリ性を有するとは、55℃である0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液中に上記第2の硬化物を4時間浸漬したとき、屈折率が1.45以下であることをいう。
第2の硬化物の耐アルカリ性および屈折率の態様について、好ましい態様を含み、それぞれ、上記〔2.硬化物〕の項の(耐アルカリ性)および(屈折率)の項の態様と同じであってもよい。
〔4.反射防止コーティング膜〕
本発明の一実施形態に係る反射防止コーティング膜は、〔2.硬化物〕の項に記載の硬化物を含む。本発明の一実施形態に係る反射防止コーティング膜は、上記構成を有するため、耐アルカリ性および優れた低屈折率を有するという利点を有する。
本発明の一実施形態に係る反射防止コーティング膜は、任意の基材の上に形成されていてもよい。本発明の一実施形態に係る反射防止コーティング膜および少なくとも1つの基材を含む積層体もまた、本発明の一態様である。
〔5.積層体〕
本発明の一実施形態に係る積層体は、上記〔2.硬化物〕の項に記載の硬化物および少なくとも1つの基材を含む。本明細書において、「本発明の一実施形態に係る積層体」を「本積層体」とも称する。本積層体は、上記構成を有するため、耐アルカリ性および優れた低屈折率を有するという利点を有する。
(基材)
本硬化性樹脂組成物を、活性エネルギー線照射により硬化させて硬化物を製造する場合を例に挙げて、好適な基材を説明する。この場合、硬化時に高熱を必要としないという点を生かすという観点から、基材としては、樹脂性基材が好ましく、例えばアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート(以降、「PET」と称する)樹脂、およびそれらの混合樹脂等のプラスチック、フィルム、シートなどの基材が挙げられる。
アクリル樹脂基材としては、例えば、スミペックス、テクノロイ[以上、住化アクリル販売(株)製]、アクリプレン、アクリライト[以上、三菱レイヨン(株)製]、パラグラス、コモグラス[以上、(株)クラレ製]、デラグラス、デラプリズム[以上、旭化成テクノプラス(株)製]、カナセライト[カナセ工業(株)製]等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂基材としては、例えば、カーボグラス[旭硝子株(株)製]、アイリスポリカシート[アイリスシンヨー(株)製]、ユーピロン[三菱ガス化学(株)製]、パンライト[帝人化成(株)製]、ポリカーボネートプレート[タキロン(株)製]、ポリカエース[住友ベークライト(株)製]、ポリカプレート[積水成型工業(株)製]、PCミラー[(株)菱晃製]等が挙げられる。
PET樹脂基材としては、例えば、ペットエース[住友ベークライト(株)製]、エステラ、エステラ・スーパー[積水成型工業(株)製]、ペテルス[三菱樹脂(株)]、ペテック[タキロン(株)製]、ミネロン[ミネロン化成工業(株)製]、ポリテックAPETシート[ポリテック(株)製]、A-PET樹脂シート[帝人化成(株)製]、ルミラー[東レ(株)製]、コスモシャイン[東洋紡(株)製]等が挙げられる。
本積層体は、少なくとも1つの基材を含んでいればよく、2つ以上の基材を含んでいてもよい。本発明の一実施形態に係る積層体が2つ以上の基材を含んでいる場合、それら基材は、それぞれ、同一種類の基材であってもよく、異なる種類の基材であってもよい。
本積層体は、さらにその他の層(膜ともいえる)を含んでいてもよい。その他の層としては、例えば、ハードコート膜が挙げられる。ハードコート膜は、積層体に強度を付与するために好適に設けられる。当該ハードコート膜は、基材と硬化物との間に積層されることが好ましい。すなわち、上記〔2.硬化物〕の項に記載の硬化物は、積層体の最外層に設けられることが好ましい。
本積層体は、55℃である0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液中に上記積層体を4時間浸漬したとき、最低反射率が1.5%以下であることが好ましい。上記構成を満たす場合、積層体は、強アルカリに対する優れた耐久性を有するとともに、優れた低反射率を有するものである。本積層体は、好ましくは55℃、0.2MのNaOH液中に当該硬化物を4時間浸漬したとき、より好ましくは55℃、0.5MのNaOH液中に当該硬化物を4時間浸漬したとき、さらに好ましくは55℃、0.8MのNaOH液中に当該硬化物を4時間浸漬したとき、特に好ましくは55℃、1.0MのNaOH液中に当該硬化物を4時間浸漬したときに、最低反射率が1.5%以下であることが好ましい。最低反射率の測定方法について、下記実施例にて詳述する。積層体が、55℃である0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液中に上記積層体を4時間浸漬したとき、最低反射率が1.5%以下であるとの構成を満たす場合、当該積層は、耐アルカリ性を有するともいえる。
積層体に含まれる基材は耐アルカリ性を有していることが好ましい。上記構成によると、得られる積層体は耐アルカリ性を有する。具体的には、積層体に含まれる基材は、55℃である0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液中に上記積層体を4時間浸漬したとき、溶解しないことが好ましい。耐アルカリ性を有する基材としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、PET樹脂、およびそれらの混合樹脂等が挙げられる。
また、本積層体が硬化物および基材に加えてその他の層を有する場合、当該その他の層は、耐アルカリ性を有していることが好ましい。上記構成によると、得られる積層体は耐アルカリ性を有する。具体的には、積層体に含まれるその他の層は、55℃である0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液中に上記積層体を4時間浸漬したとき、溶解しないことが好ましい。上記〔1.硬化性樹脂組成物〕の項で説明した縮合物(A)および光酸発生剤(B)を含む硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物(層)は、耐アルカリ性を有し得る。従って、例えば上述したハードコート膜は、縮合物(A)および光酸発生剤(B)を含む硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物を含むことが好ましい。
(用途)
本発明の一実施形態に係る積層体は、様々な用途に使用できる。本発明の一実施形態に係る積層体は、例えばパソコン、スマートフォンおよびタブレット等の前面板、自動車等の窓ガラス、自動車等のランプの保護具材、自動車等の内蔵型情報表示機器の表示部、並びにフィルム等に好適に使用できる。
(製造方法)
本積層体の製造方法としては特に限定されない。本積層体は、少なくとも1つの基材、〔2.硬化物〕の項に記載の硬化物、並びに任意で他の基材およびハードコート層等などを積層することにより、製造することができる。本積層体の製造方法としては、例えば、本硬化性樹脂組成物を基材に塗布する工程および、活性エネルギー線を用いて当該硬化性樹脂組成物を硬化させ、硬化被膜を形成する工程、を含む製造方法が挙げられる。
本硬化性樹脂組成物を基材に塗布する工程について説明する。硬化性樹脂組成物を基材塗布するときの、硬化性樹脂組成物の厚さ、換言すれば塗膜の厚さとしては1μm~100μmであることが好ましい。塗膜の厚さが1μm以上である場合、プラスチック、フィルム、シート等の基材自体の硬度の影響を受けにくく、十分な硬度が得られるという利点がある。塗膜厚みが100μm以下である場合、活性エネルギー線が深部まで到達するため、硬化が遅くなる虞がない。但し、塗膜の厚さは100μmより厚くもよい。塗膜の厚さを100μmより厚くする場合には、数回に分けて、硬化性樹脂組成物の塗布と活性エネルギー線の照射とを繰り返す方法を採用することが好ましい。
硬化被膜を形成することとは、硬化物を得ることともいえる。そのため、活性エネルギー線を用いて当該硬化性樹脂組成物を硬化させ、硬化被膜を形成する工程の態様としては、上記〔3.硬化物の製造方法〕の項に記載の態様を適宜援用できる。
以下、実施例および比較例によって本発明の一実施形態をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例・比較例で用いた物質は、以下のとおりである。
●加水分解性シリル基を有するシラン化合物
<シラン化合物(I)>
A-186:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、分子量246.3
A-187:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、分子量236.3
<シラン化合物(II)>
A-1630:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、メチルトリメトキシシラン、分子量136.2
●中性塩
塩化マグネシウム(和光純薬工業株式会社製、特級、分子量95.2)
●光酸発生剤(B)
CPI-101A:サンアプロ株式会社製、トリアリールスルホニウム・SbF塩(有効成分50%の炭酸プロピレン溶液)
●シリカ(C)
A2SL-02KA:日揮触媒化成株式会社製(平均粒子径が60nmの中空シリカのPGME分散液(粒子分20%))
●(メタ)アクリレート化合物
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業株式会社製、分子量578)
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学工業株式会社製、分子量296)
HDDA:ヘキサンジオールジアクリレート(新中村化学工業株式会社製、分子量226)
●光ラジカル発生剤(D-1)
IRGACURE127:BASF株式会社製
●希釈溶剤
PGME:1-メトキシ-2-プロパノール(株式会社ダイセル製、分子量90)
メタノール(三菱ガス化学株式会社製、分子量32)
●シリコン系添加剤
BYK-300:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(ビッグケミージャパン株式会社製)
●アルミナ添加剤
NANOBYKUV-3601: アルミナ系ナノ粒子ディスパージョン(ビッグケミージャパン株式会社製)
●基材
PET樹脂基材(PET)[東洋紡製、A4300、厚み188μm]
ポリカーボネート樹脂基材(PC)[帝人製、PC-2151、厚み188μm]
アクリル樹脂基材(PMMA)[カネカ製、952XK32、厚み175μm]
ポリカーボネート樹脂/アクリル樹脂の混合樹脂基材(PC/PMMA)[住友化学株式会社製、C001、厚み175μm]
●アルカリ性化合物
水酸化ナトリウム(富士フィルム和光純薬株式会社製、0.1M水溶液)
各合成例で得られた縮合物(A)に対する評価方法は、以下のとおりである。
(ケイ素原子に直接結合したOR基の定量)
以下の方法により、縮合物(A)の原料であるシラン化合物(I)およびシラン化合物(II)が有するケイ素原子に直接結合したOR基のモル数Xに対する、得られた縮合物(A)が有するケイ素原子に直接結合したOR基のモル数Yの比(Y/X)を算出した。日本電子製JNM-LA400を用いて、重アセトンを溶媒としてH-NMRおよび29Si-NMR測定を行った。
(重量平均分子量の測定)
重量平均分子量は、GPCで測定した。すなわち、送液システムとして東ソー(株)製HLC-8220GPCを用い、カラムとして東ソー(株)製TSK-GEL Hタイプを用い、溶媒としてTHFを用いて、GPCを行った。重量平均分子量は、ポリスチレン換算で算出した。
(縮合物(A)におけるエポキシ構造含有基の残存率(%)の評価)
得られた縮合物(A)に対して、日本電子製JNM-LA400を用いて、重アセトンを溶媒としてH-NMR測定を行った。
(硬化物(反射防止コーティング膜)の屈折率)
硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物、具体的には以下に示す製造例で調整した反射防止コーティング膜形成用組成物を硬化して得られる反射防止コーティング膜の屈折率は、以下の様に測定した。
(1)屈折率1.49のアクリル樹脂板(旭化成ケミカルズ社製、デラグラスA)の上に、バーコーターにより硬化性樹脂組成物をコーティングした。ここで、硬化性樹脂組成物の厚さは、乾燥膜厚で光学膜厚が550nmになる様に、調整された。
(2)硬化性樹脂組成物に含まれる希釈溶媒を乾燥後、紫外線照射装置(へレウス社製)により窒素雰囲気下で無電極UVランプを用いて、500mJ/cmの紫外線を硬化性樹脂組成物に照射して、硬化性樹脂組成物を硬化させた。
(3)アクリル樹脂板の、硬化性樹脂組成物がコーティングおよび硬化された面とは逆の面をサンドペーパーで粗し、さらに黒色塗料で塗りつぶした。
(4)上記(3)で得られたアクリル樹脂について、分光光度計(UV-2600、島津株式会社製)を用いて、光の波長400から650nmにおける5°、-5°正反射率を測定し、得られた反射率の極小値または極大値を読みとった。
(5)反射率の極小値または極大値から、以下の式を用いてアクリル樹脂板状に形成された硬化物の屈折率を計算した。
反射率の極小値または極大値(%)=[(アクリル板の屈折率(1.49))-(硬化物の屈折率)2/(アクリル板の屈折率(1.49))+(硬化物の屈折率)2]2×100。
(最低反射率)
以下の製造例で得られた積層体について、硬化物が積層された面を測定面とした。積層体の測定面の裏面(すなわち、側底面の反対側の面)の反射を防ぐため、当該裏面をサンドペーパーで粗し、黒色塗料で塗りつぶした。得られた積層体について、島津製作所(株)製分光光度計(UV-2600)を用いて、380~780nmの波長領域における、積分球を用いた反射率を測定し、380~780nmの波長領域における最低反射率を測定した。
(全光線透過率およびヘイズ)
以下の製造例で得られた積層体について、JIS K7361に準拠した色差計(日本電色工業株式会社製、COH-400)のD65光源を用いて、全光線透過率、ヘイズを測定した。
(硬化物の耐アルカリ性)
前記(硬化物(反射防止コーティング膜)の屈折率)の項の(2)で得られた、硬化性樹脂組成物の硬化物を含むアクリル樹脂板を、55℃である0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液中に4時間浸漬した。その後、得られたアクリル樹脂板について、前記(硬化物(反射防止コーティング膜)の屈折率)の項の(3)~(5)の操作を行い、アルカリ処理後の硬化物の屈折率を算出した。
(積層体の耐アルカリ性)
以下の製造例で得られた積層体を、55℃である0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液中に4時間浸漬した。その後、得られた積層体について、上述した方法で最低反射率を測定した。得られた最低反射率が1.5%以下の場合を〇、1.5%より高い場合を×とした。
[合成例1]
反応器として、撹拌機、温度計および還流冷却器を備えた4つ口フラスコ等を使用した。反応器に、加水分解性シリル基を有するシラン化合物としてA-186[2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン]100重量部を仕込んだ。さらに、加水分解性シリル基を有するシラン化合物100重量部に対して、中性塩(触媒)として塩化マグネシウム0.12重量部(加水分解性シリル基を有するシラン化合物中の加水分解性シリル基1モルに対して0.001モル)、水11.0重量部(加水分解性シリル基を有するシラン化合物中の加水分解性シリル基1モルに対して0.5モル)および希釈溶剤としてPGME[1-メトキシ-2-プロパノール]11.0重量部を反応器に仕込んだ。次に、反応温度130℃にて3時間、反応器中の原料を攪拌させながら反応(加水分解・縮合反応)させ、縮合物(A)を含む溶液を得た。得られた縮合物(A)はエバポレーターを用いて減圧脱揮および濃縮し、希釈溶剤としてPGMEを用いて50%溶液に調整した。得られた縮合物(A)(シロキサン樹脂)の重量平均分子量、Y/X、およびエポキシ構造含有基残存率の結果は表1に示す。
[合成例2]
用いる加水分解性シリル基を有するシラン化合物をA-187[3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン]100重量部に変更し、かつ、加水分解・縮合反応に用いる希釈溶剤をメタノール11.0重量部に変更した以外は、合成例1と同様の操作により、縮合物(A)を含む溶液を得た。得られた縮合物(A)はエバポレーターを用いて減圧脱揮および濃縮し、希釈溶剤としてPGMEを用いて50%溶液に調整した。得られた縮合物(A)(シロキサン樹脂)の重量平均分子量、Y/X、およびエポキシ構造含有基残存率の結果は表1に示す。
[合成例3]
用いる加水分解性シリル基を有するシラン化合物をA-186[2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン]73重量部、およびA-1630[メチルトリメトキシシラン]27重量部に変更し、かつ用いる中性塩を塩化マグネシウム0.10重量部に変更した以外は、合成例1と同様の操作により、縮合物(A)を含む溶液を得た。得られた縮合物(A)はエバポレーターを用いて減圧脱揮および濃縮し、希釈溶剤としてPGMEを用いて50%溶液に調整した。得られた縮合物(A)(シロキサン樹脂)の重量平均分子量、Y/X、およびエポキシ構造含有基残存率の結果は表1に示す。
Figure 2023129477000001
[ハードコート膜形成用組成物(硬化性樹脂組成物)の調整]
ハードコート膜形成用組成物として、合成例1の縮合物(A)100部、光酸発生剤CPI-101Aを3部、希釈溶剤PGMEを混合し、ハードコート膜形成用組成物を得た。ここで、ハードコート膜は硬化物ともいえ、ハードコート膜形成用組成物は硬化性樹脂組成物ともいえる。
[反射防止コーティング膜形成用組成物(硬化性樹脂組成物)、L-1~L-9の調整]
合成例1~3の縮合物(A)、(メタ)アクリレート化合物、光酸発生剤(B)(CPI-101A)または光ラジカル発生剤(D-1)IRGACURE127、粒子径60nmのシリカ(C)(A2SL-02KA)、および各原料を使用し、表2に記載した組成にてそれら原料を混合し、硬化性樹脂組成物である、反射防止コーティング膜形成用組成物L-1~L-9を調整した。
得られた反射防止コーティング膜形成用組成物L-1~L-9について、上述した方法により、反射防止コーティング膜形成用組成物を硬化させて得られる反射防止コーティング膜の屈折率を測定し、結果を表2に記載した。さらに、屈折率の測定に用いられた、反射防止コーティング膜およびアクリル樹脂板からなる積層体を用いて、上述した方法により耐アルカリ性を評価した。ここで、反射防止コーティング膜は硬化物ともいえ、反射防止コーティング膜形成用組成物は硬化性樹脂組成物ともいえる。
Figure 2023129477000002
表2より以下のことが分かる。反射防止コーティング膜形成用組成物L-1~L-3を硬化させて得られる反射防止コーティング膜は、屈折率が1.45以下であり、耐アルカリ性を有するものである。一方、反射防止コーティング膜形成用組成物L-4~L-6はシリカ(C)を含んでいない。そのため、反射防止コーティング膜形成用組成物L-4~L-6を硬化させて得られる反射防止コーティング膜は、屈折率が1.45より大きい。また、反射防止コーティング膜形成用組成物L-7~L-9を硬化させて得られる反射防止コーティング膜は、屈折率が1.45以下であるが、耐アルカリ性を有していない。具体的には、反射防止コーティング膜形成用組成物L-7~L-9を硬化させて得られる反射防止コーティング膜は、55℃である0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液中に4時間浸漬したとき、溶解した。そのため、浸漬後に屈折率を評価できず、表2では結果を「-」で示している。
<実施例1>
基材である、厚さ188μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡株式会社製A4300)の片面に、ハードコート膜形成用組成物をロールコーターで乾燥膜厚が5μmとなるように塗布した。その後、ハードコート膜形成用組成物が塗布された基材を80℃で2分間乾燥した。その後、窒素雰囲気下で無電極UVランプにより、基材に紫外線を照射(積算光量500mJ/cm)し、ハードコート膜形成用組成物を硬化させてハードコート膜を形成した。本明細書において、「乾燥膜厚」とは、塗布された組成物の乾燥後に、当該組成物が示す厚さを意図する。
次いで、このハードコート膜上に反射防止コーティング膜形成用組成物L-1をロールコーターで乾燥膜厚が100nmとなるように塗布した。その後、反射防止コーティング膜形成用組成物が塗布された基材を80℃で2分間乾燥した。その後、窒素雰囲気下で無電極UVランプにより、基材に紫外線を照射(積算光量500mJ/cm)し、反射防止コーティング膜形成用組成物を硬化させて、反射防止コーティング膜を形成した。これにより、ハードコート膜と反射防止コーティング膜とが積層されたPETフィルムを得た。
続いて、得られたPETフィルムを、用いてアルカリ処理0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液が満たされた、55℃に保温された水浴に4時間の浸漬処理を行った。これにより、ハードコート膜とシリカが除去された反射防止コーティング膜とを有するPETフィルムを得た。
<実施例2>
反射防止コーティング膜形成用組成物をL-2に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、ハードコート膜と反射防止コーティング膜とが積層されたPETフィルム、およびシリカが除去された反射防止コーティング膜を有するPETフィルムを得た。
<実施例3>
反射防止コーティング膜形成用組成物L-3を用いる以外は、実施例1と同様の方法により、ハードコート膜と反射防止コーティング膜とが積層されたPETフィルム、およびシリカが除去された反射防止コーティング膜を有するPETフィルムを得た。
<実施例4>
基材を厚み188μmのPCフィルム[帝人製、PC-2151]に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、ハードコート膜と反射防止コーティング膜とが積層されたPETフィルム、およびシリカが除去された反射防止コーティング膜を有するPETフィルムを得た。
<実施例5>
基材を、厚み175μmのPMMAフィルム[カネカ製、952XK32]に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、ハードコート膜と反射防止コーティング膜とが積層されたPETフィルム、およびシリカが除去された反射防止コーティング膜を有するPETフィルムを得た。
<実施例6>
基材を、厚み175μmのPC/PMMAフィルム[住友化学株式会社製、C001]に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、ハードコート膜と反射防止コーティング膜とが積層されたPETフィルム、およびシリカが除去された反射防止コーティング膜を有するPETフィルムを得た。
<実施例7>
基材を、厚み188μmのPCフィルム[帝人製、PC-2151]に変更した以外は、実施例2と同様の方法で反射防止コーティング材を塗布、硬化されたフィルムを作製した。
<実施例8>
基材を、厚み175μmのPMMAフィルム[カネカ製、952XK32]に変更した以外は、実施例2と同様の方法により、ハードコート膜と反射防止コーティング膜とが積層されたPETフィルム、およびシリカが除去された反射防止コーティング膜を有するPETフィルムを得た。
<実施例9>
基材を、厚み175μmのPC/PMMAフィルム[住友化学株式会社製、C001]に変更した以外は、実施例2と同様の方法により、ハードコート膜と反射防止コーティング膜とが積層されたPETフィルム、およびシリカが除去された反射防止コーティング膜を有するPETフィルムを得た。
<実施例10>
基材を、厚み188μmのPCフィルム[帝人製、PC-2151]に変更した以外は、実施例3と同様の方法により、ハードコート膜と反射防止コーティング膜とが積層されたPETフィルム、およびシリカが除去された反射防止コーティング膜を有するPETフィルムを得た。
<実施例11>
基材を、厚み175μmのPMMAフィルム[カネカ製、952XK32]に変更した以外は、実施例3と同様の方法により、ハードコート膜と反射防止コーティング膜とが積層されたPETフィルム、およびシリカが除去された反射防止コーティング膜を有するPETフィルムを得た。
<実施例12>
基材を、厚み175μmのPC/PMMAフィルム[住友化学株式会社製、C001]に変更した以外は、実施例3と同様の方法により、ハードコート膜と反射防止コーティング膜とが積層されたPETフィルム、およびシリカが除去された反射防止コーティング膜を有するPETフィルムを得た。
<比較例1>
反射防止コーティング膜形成用組成物をL-4に変更した以外は、実施例1と同様の方法でハードコート膜と反射防止コーティング膜とが積層されたPETフィルム、およびアルカリ処理された当該PETフィルムを得た。
<比較例2>
反射防止コーティング膜形成用組成物をL-5に変更した以外は、実施例1と同様の方法でハードコート膜と反射防止コーティング膜とが積層されたPETフィルム、およびアルカリ処理された当該PETフィルムを得た。
<比較例3>
反射防止コーティング膜形成用組成物をL-6に変更した以外は、実施例1と同様の方法でハードコート膜と反射防止コーティング膜とが積層されたPETフィルムおよびアルカリ処理された当該PETフィルムを得た。
<比較例4>
反射防止コーティング膜形成用組成物をL-7に変更した以外は、実施例1と同様の方法でハードコート膜と反射防止コーティング膜とが積層されたPETフィルム、およびアルカリ処理された当該PETフィルムを得た。
<比較例5>
反射防止コーティング膜形成用組成物をL-8に変更した以外は、実施例1と同様の方法でハードコート膜と反射防止コーティング膜とが積層されたPETフィルム、およびアルカリ処理された当該PETフィルムを得た。
<比較例6>
反射防止コーティング膜形成用組成物をL-9に変更した以外は、実施例1と同様の方法でハードコート膜と反射防止コーティング膜とが積層されたPETフィルム、およびアルカリ処理された当該PETフィルムを得た。
実施例1~12および比較例1~6において、得られたPETフィルムは、積層体ともいえる。得られた各PETフィルムおよびアルカリ処理された各PETフィルムについて、各種光学特性を上述の方法により測定および評価し、その結果を、各実施例および比較例の構成と共に、表3、~5に示す。
Figure 2023129477000003
Figure 2023129477000004
Figure 2023129477000005
実施例1~12では、ハードコート膜と反射防止コーティング膜とが積層されたPETフィルムに対して、具体的には基材上に設けられた反射防止用コーティング膜に対してアルカリ処理を行った場合でも、最低反射率が1.5%以下であった。すなわち、実施例1~12で得られたPETフィルムは、耐アルカリ性に優れ、良好な反射防止性能を保持し得る積層体であった。
これに対し、比較例1~3では、得られたハードコート膜と反射防止コーティング膜とが積層されたPETフィルムに対して、アルカリ処理を行った場合、アルカリ処理前後で外観および最低反射率は変化しない。しかし、反射防止用コーティング膜形成用組成物L-4、L-5、L-6にはシリカ(C)が含まれていない。そのため、反射防止用コーティング膜形成用組成物L-4、L-5、L-6を硬化させて得られる反射防止コーティング膜を含むPETフィルムは、最低反射率が1.5%を超えるため、反射防止性能を有するフィルムとしては不十分である。
また、比較例4~6は、塗膜のアルカリ処理を行うと、最低反射率が1.5%を超え、4%まで上昇する結果となり、反射防止性能が損なわれる結果となった。すなわち、比較例4~6のPETフィルムは、耐アルカリ性に優れるものではなく、反射防止性能を有するフィルムとしては不十分であった。
本発明の一実施形態は、耐アルカリ性および優れた低屈折率を有する硬化物を提供することができる。そのため、本発明の一実施形態に係る硬化物および積層体は、パソコン、スマートフォンおよびタブレット等の前面板、自動車等の窓ガラス、自動車等のランプの保護具材、自動車等の内蔵型情報表示機器の表示部、並びにフィルム等に好適に利用できる。また、本発明の一実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、金属、セラミックス、ガラス、セメント、窯業系基材、プラスチック、フィルム、シート、木材、紙および繊維などからなる建築物、家電用品並びに産業機器などの塗装に好適に使用できる。

Claims (4)

  1. 加水分解性シリル基を有するシラン化合物の加水分解・縮合反応生成物である縮合物(A)と、光酸発生剤(B)と、シリカ(C)とを含有する硬化性樹脂組成物に対して活性エネルギー線を照射することにより、硬化性樹脂組成物を硬化させ第1の硬化物を得る工程、および
    得られた第1の硬化物をアルカリ性溶液に浸漬することにより、シリカ(C)を除去して第2の硬化物を得る工程を有する、硬化物の製造方法。
  2. 上記シリカ(C)は中空シリカである、請求項1に記載の硬化物の製造方法。
  3. 上記第2の硬化物は耐アルカリ性を有し、屈折率が1.25~1.45である、請求項1または2に記載の硬化物の製造方法:
    ここで、耐アルカリ性を有するとは、55℃である0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液中に上記第2の硬化物を4時間浸漬したとき、屈折率が1.45以下であることをいう。
  4. 上記加水分解性シリル基を有するシラン化合物は下記一般式(I)で表されるシラン化合物(I)を含む、請求項1~3の何れか1項に記載の硬化物の製造方法:
    -(SiR (OR3-a)・・・一般式(I)
    (式中、Rは末端がエポキシ構造含有基で置換された炭素数1~10のアルキル基であり、Rはそれぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~25のアリール基および炭素数7~12のアラルキル基からなる群から選ばれる1価の炭化水素基または水素原子であり、Rはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1~10のアルキル基であり、aは0~2の整数である。)。
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