JP2023108717A - 窒化ホウ素粉末、樹脂組成物、樹脂組成物の硬化物及び窒化ホウ素粉末の製造方法 - Google Patents

窒化ホウ素粉末、樹脂組成物、樹脂組成物の硬化物及び窒化ホウ素粉末の製造方法 Download PDF

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豪 竹田
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Abstract

【課題】樹脂への充填性に優れ、放熱性に優れる伝熱シートを作製可能な樹脂組成物を調製し得る窒化ホウ素粉末、かかる窒化ホウ素粉末を含有する樹脂組成物及び樹脂組成物の硬化物、並びに及び窒化ホウ素粉末の製造方法を提供すること。【解決手段】本開示の一側面は、窒化ホウ素の一次粒子が凝集して構成される凝集粒子を含み、タップ密度が0.9g/cm3超であり、平均粒子径が20μm以下であり、上記凝集粒子の圧壊強さが10MPa以上である、窒化ホウ素粉末を提供する。【選択図】なし

Description

本開示は、窒化ホウ素粉末、樹脂組成物、樹脂組成物の硬化物及び窒化ホウ素粉末の製造方法に関する。
窒化ホウ素粉末は、潤滑性、高熱伝導性、及び絶縁性等を有しており、固体潤滑材、熱伝導性フィラー、絶縁性フィラー等の用途に幅広く利用されている。近年、電子機器の高性能化等によって上述のような窒化ホウ素には熱伝導性に優れることが求められている。
例えば、特許文献1では、樹脂等の絶縁性放熱材の充填材として用いた場合に、上記樹脂等の熱伝導率及び耐電圧(絶縁破壊電圧)を高めることができる六方晶窒化ホウ素粉末及びその製造方法が提案されている。
六方晶窒化ホウ素粉末は、例えば、窒素を含む加圧雰囲気下で炭化ホウ素を窒化させ窒化物を得る加圧窒化工程と、上記窒化物をホウ素源等と混合し加熱処理することで、脱炭すると共に結晶化を進行させ、六方晶窒化ホウ素を得る脱炭結晶化工程とを有する製造方法によって製造される(例えば、特許文献2等)。上述の製造方法は、炭化ホウ素を一度窒化させることによって、後の工程における脱炭の性能の改善を図るものとなっている。
特開2019-116401号公報 国際公開第2019/073690号
本開示は、樹脂への充填性に優れ、放熱性に優れる伝熱シートを作製可能な樹脂組成物を調製し得る窒化ホウ素粉末、かかる窒化ホウ素粉末を含有する樹脂組成物及び樹脂組成物の硬化物、並びに窒化ホウ素粉末の製造方法を提供することを目的とする。
本開示の一側面は、窒化ホウ素の一次粒子が凝集して構成される凝集粒子を含み、タップ密度が0.9g/cm超であり、平均粒子径が20μm以下であり、上記凝集粒子の圧壊強さが10MPa以上である、窒化ホウ素粉末を提供する。
上記窒化ホウ素粉末は、平均粒子径が比較的小さいことに加えて、タップ密度が大きなものとなっている。このことは、塊状粒子中の空隙が少ないことを意味し、これによって、同体積の樹脂に充填する際の充填量を従来の窒化ホウ素粉末よりも増やすことができる。上記窒化ホウ素粉末はまた、圧壊強さに優れる凝集粒子を含む。このことから、樹脂等との混練の際にも凝集粒子が崩れ、一次粒子又はその粉砕物が発生することが抑制されている。その結果、樹脂との混練に伴う粘度の上昇を抑制できる。換言すれば、樹脂との混練によって得られる樹脂組成物の粘度が過剰になるまでの窒化ホウ素粉末の配合量を従来の窒化ホウ素粉末に比べて増加させ得る。これらの作用によって、上記窒化ホウ素粉末は、樹脂への充填性に優れ、窒化ホウ素粉末の充填率を高められることから伝熱シートを作製した際の放熱性を向上させ得る。
上記窒化ホウ素粉末において、平均粒子径は2μm以上であってよい。平均粒子径の下限値が上記範囲内であることで、樹脂と混練した際の粘度上昇をより低減することができる。
上記窒化ホウ素粉末において、配向性指数は10以下であってよい。配向性指数が上記範囲内であることは、窒化ホウ素の一次粒子の形状に伴う熱伝導率異方性を抑制し得る凝集粒子の割合が大きいことを意味する。これによって、当該窒化ホウ素粉末を用いて作製される伝熱シート等において、一次粒子がシート内で面内方向に配向することを抑制し、窒化ホウ素粉末の高熱伝導率を活かすことができ、より高い放熱性を発揮し得る。
本開示の一側面は、樹脂と、上述の窒化ホウ素粉末と、を含有する、樹脂組成物を提供する。
上記樹脂組成物は、上述の窒化ホウ素粉末を含有することから、窒化ホウ素粉末の含有量の調整が容易であり、放熱性に優れる伝熱シートを製造する際に有用である。
本開示の一側面は、樹脂と、上述の窒化ホウ素粉末と、を含有する、樹脂組成物の硬化物を提供する。
上記硬化物は、上述の窒化ホウ素粉末を含有する樹脂組成物の硬化物であることから、窒化ホウ素粉末の含有量の調整が容易であり、放熱性に優れる伝熱シートとして好適に使用できる。
本開示の一側面は、平均粒子径が15μm以下の炭化ホウ素粉末を、窒素加圧雰囲気下で焼成して焼成物を得る加圧窒化工程と、上記焼成物を、酸素分圧が20%以上である雰囲気下において加熱して加熱処理物を得る酸化工程と、上記加熱処理物とホウ素源とを含む混合物を加熱することによって、窒化ホウ素の一次粒子を生成し、上記一次粒子が凝集して構成される凝集粒子を得る結晶化工程と、を有し、上記ホウ素源の含有量が、上記加熱処理物100質量部に対して、50質量部未満である、窒化ホウ素粉末の製造方法を提供する。
上記窒化ホウ素粉末の製造方法は、加圧窒化工程の後に、酸素分圧が20%以上である雰囲気下(例えば、大気下)において加熱する酸化工程を有することで、窒化後の焼成物における炭素量を予め低減することが可能となる。これによって、続く結晶化工程におけるホウ素源の配合量を低減することができる。ホウ素源は、結晶化工程において、溶融し液相を形成して、焼成物中の窒化ホウ素の溶解、再結晶化を促すが、窒化ホウ素の一次粒子の凝集によって形成される凝集粒子内に上記液相が取り込まれ得る。凝集粒子内に取り込まれた当該液相部分が除去されると、凝集粒子に空隙が生じることになる。したがって、液相部分が多くなると、空隙率の高い凝集粒子が形成され、タップ密度の小さな粉末となり得る。この場合、また樹脂と混練する際には、凝集粒子内部への樹脂含浸も生じ、これに伴う粘度上昇から取扱い性の低下が懸念され、期待し得る量にまで充填率を高めることが困難となり得る。これに対して、本開示に係る製法では、ホウ素源の配合量を低減することが可能であり、タップ密度に優れ、凝集粒子の圧壊強さに優れる窒化ホウ素粉末を製造できる。
上記製造方法ではまた、炭化ホウ素粉末として平均粒子径の比較的小さな粉末を用いることによって、加圧窒化工程で得られる焼成物の粒子径を小さなものに留め、粒子の表面積を大きなものに維持できる。これによって、酸化工程における酸素と接触面を増やすことができ、脱炭効率を向上させることができ、続く結晶化工程において使用するホウ素源の含有量を比較的少ないものとすることが可能である。このため、平均粒子径が適度な凝集粒子を得ることができ、樹脂との混練の際の粘度上昇が抑制された窒化ホウ素粉末を調製できる。
上記加熱処理物の酸素量は、上記加熱処理物の全量を基準として、4質量%以下であってよい。上記加熱処理物の酸素量を上記範囲内とすることで、得られる窒化ホウ素粉末の樹脂への充填性をより向上させることができる。
本開示によれば、樹脂への充填性に優れ、放熱性に優れる伝熱シートを作製可能な樹脂組成物を調製し得る窒化ホウ素粉末、かかる窒化ホウ素粉末を含有する樹脂組成物及び樹脂組成物の硬化物、並びに窒化ホウ素粉末の製造方法を提供できる。
以下、本開示の実施形態を説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。
本明細書において例示する材料は特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。組成物中の各成分の含有量は、組成物中の各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本開示に係る窒化ホウ素粉末の一実施形態は、窒化ホウ素の一次粒子が凝集して構成される凝集粒子を含む。当該窒化ホウ素粉末は、タップ密度が0.9g/cm超であり、平均粒子径が20μm以下である。上記窒化ホウ素粉末において、上記凝集粒子の圧壊強さが10MPa以上である。上記窒化ホウ素の一次粒子は六方晶窒化ホウ素の一次粒子であってよい。六方晶窒化ホウ素は一次粒子の粒子形状のばらつきが小さなものであってよい。六方晶窒化ホウ素の一次粒子の形状は、例えば、鱗片状及び円盤状等であってよい。
上記窒化ホウ素粉末は凝集粒子における空隙が十分に抑制されており、タップ密度の大きなものとなっている。なお、凝集粒子の空隙率の測定は測定によるばらつきもあり、蛍光体粉末のタップ密度との相関は必ずしも良いとはいえない。
上記窒化ホウ素粉末のタップ密度の下限値は0.9g/cm超であるが、例えば、0.91g/cm以上、0.92g/cm以上、0.93g/cm以上、0.94g/cm以上、又は0.95g/cm以上であってよい。上記タップ密度の下限値が上記範囲内であることで、窒化ホウ素粉末の樹脂への充填性をより向上させることができる。上記窒化ホウ素粉末のタップ密度の上限値は、特に制限されるものではないが、窒化ホウ素の理論密度(2.26g/cm)から考えて、例えば、1.5g/cm程度の値であってよく、1.3g/cm以下、又は1g/cm以下であってよい。上記窒化ホウ素粉末のタップ密度は上述の範囲内で調整してよく、例えば、0.9g/cm超1.5g/cm以下、又は0.91~1g/cmであってよい。
本明細書における「タップ密度」は、JIS R 1628:1997「ファインセラミックス粉末の嵩密度測定方法」に記載の方法に準拠して求められる値を意味する。具体的には、窒化ホウ素粉末を100cmの専用容器に充填し、タッピングタイム180秒、タッピング回数180回、及びタップリフト18mmの条件でタッピングを行った後のかさ密度を測定し、得られた値をタップ密度とする。測定には、市販の装置を用いることができ、例えば、ホソカワミクロン製の「パウダテスタ」(製品名)等を用いることができる。
上記窒化ホウ素粉末の平均粒子径の上限値は20μm以下であるが、例えば、19μm以下、又は18μm以下であってよい。上記平均粒子径の上限値が上記範囲内であることで、例えば、窒化ホウ素粉末を樹脂に充填し、厚みが数十μmであるシート状の成形体に成形する際、成形体の厚みと、窒化ホウ素の粒子の粒径との差を十分に大きくすることができ、成形体を欠陥なく製造し得る。上記窒化ホウ素粉末の平均粒子径の下限値は、例えば、2μm以上、3μm以上、5μm以上、7μm以上、又は10μm以上であってよい。上記平均粒子径の下限値が上記範囲内であることで、充填性により優れた窒化ホウ素粉末とすることができる。これによって、当該窒化ホウ素粉末と樹脂と混合する際の粘度上昇をより抑制することができる。上記窒化ホウ素粉末の平均粒子径は上述の範囲内で調整してよく、例えば、2~20μm、5~19μm、又は7~18μmであってよい。
本明細書における凝集粒子の平均粒子径は、体積基準の累積粒度分布における50%累積径(メジアン径)を意味する。より具体的には、窒化ホウ素粉末に対するレーザー回折散乱法で得られる体積基準の累積粒度分布における累積値が50%となったときの粒子径(D50)を意味する。レーザー回折散乱法は、JIS Z 8825:2013「粒子径解析-レーザー回折・散乱法」に記載の方法に準拠して測定する。測定には、レーザー回折散乱法粒度分布測定装置等を使用することができる。レーザー回折散乱法粒度分布測定装置は、例えば、ベックマンコールター社製の「LS-13 320」(製品名)等を使用できる。なお、測定の際はホモジナイザーによる処理を行わずに、凝集粒子が存在する状況で測定を行うものとする。
凝集粒子の圧壊強さの下限値は10MPa以上であるが、例えば、11MPa以上、12MPa以上、又は13MPa以上であってよい。圧壊強さの下限値が上記範囲内であることで、樹脂との混練によって得られる樹脂組成物及び成形体の放熱性をより向上させることができる。凝集粒子の圧壊強さの上限値は、例えば、30MPa以下、28MPa以下、25MPa以下、又は20MPa以下であってよい。圧壊強さの上限値が上記範囲内であることで、樹脂との混練の際に凝集粒子の少なくとも一部が適度に崩壊し、ボイドの発生を抑制することによって得られる樹脂組成物及び成形体の絶縁性をより向上させることができる。凝集粒子の圧壊強さは上述の範囲内で調整してよく、例えば、10~30MPa、11~25MPa、又は13~20MPaであってよい。
本明細書における圧壊強さは、JIS R 1639-5:2007「ファインセラミックス-か(顆)粒特性の測定方法-第5部:単一か粒圧壊強さ」の記載に準拠して測定される値を意味する。凝集粒子1個の圧壊強さσ(単位:MPa)は、凝集粒子内の位置によって変化する無次元数α(α=2.48)、圧壊試験力P(単位:N)及び粒子径d(単位:μm)の値から、σ=α×P/(π×d)という式を用いて算出される。測定は、20個以上の凝集粒子に対して行い、累積破壊率63.2%時点の値を算出した。測定には、微小圧縮試験器を用いることができる。微小圧縮試験器としては、例えば、株式会社島津製作所製の「MCT-W500」(製品名)等を使用することができる。
上記窒化ホウ素粉末は一次粒子の配向が十分に抑制されたものとなっている。上記窒化ホウ素粉末の配向性指数の上限値は、例えば、10以下、9.8以下、9.6以下、9.5以下、又は9以下であってよい。配向性指数の上限値が上記範囲内であることで、樹脂組成物及び成形体として実用上より十分な放熱性を発揮することができる。窒化ホウ素粉末の配向性指数の下限値は、限定されるものではないが、6未満で製造することは容易ではなく、例えば、6以上、6.2以上、6.5以上、又は6.7以上であってよい。窒化ホウ素粉末の配向性指数は上述の範囲内で調整してよく、例えば、6.0~10、6.2~9.5、又は6.5~9であってよい。
本明細書における配向性指数は、以下の方法に沿って測定される値を意味する。窒化ホウ素粉末に対するX線回折測定を行うことによって、窒化ホウ素粉末のX線回折スペクトルを取得し、当該X線回折スペクトルから、(002)面及び(100)面に対応するピーク強度I(002)及びI(100)を取得する。得られたピーク強度を用いて、窒化ホウ素粉末の配向性指数[I(002)/I(100)]を算出する。X線回折装置としては、例えば、株式会社リガク製の「ULTIMA-IV」(製品名)等を使用することができる。
窒化ホウ素粉末の比表面積の上限値は、例えば、7m/g以下、6.5m/g以下、6m/g以下、又は5.5m/g以下であってよい。比表面積の上限値が上記範囲内であると、窒化ホウ素の一次粒子径が十分に大きく、樹脂組成物及び成形体とした際に、より優れた放熱性を発揮し得る。窒化ホウ素粉末の比表面積の下限値は、例えば、1.5m/g以上、2m/g以上、2.5m/g以上、又は3m/g以上であってよい。比表面積の下限値が上記範囲内であることで、窒化ホウ素の一次粒子の凝集が緻密であり、凝集粒子の圧壊強さが十分に高い傾向にある、これによって窒化ホウ素粉末を樹脂と混錬し、又は成型する際に凝集粒子の崩壊をより抑制することができる。窒化ホウ素粉末の比表面積は上述の範囲内で調整してよく、例えば、1.5~7m/g、2~6.5m/g、又は2.5~6m/gであってよい。
本明細書における比表面積は、JIS Z 8830:2013「ガス吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法」の記載に準拠し、比表面積測定装置を用い測定される値を意味し、窒素ガスを使用したBET一点法を適用して算出される値である。比表面積測定装置としては、例えば、QUANTACHROME社製の「MONOSORB MS-22型」(製品名)等を使用することができる。
上述の窒化ホウ素粉末は、例えば、以下のような方法で製造することができる。窒化ホウ素粉末の製造方法の一実施形態は、平均粒子径が15μm以下の炭化ホウ素粉末を、窒素加圧雰囲気下で焼成して焼成物を得る加圧窒化工程と、上記焼成物を、酸素分圧が20%以上である雰囲気下において加熱して加熱処理物を得る酸化工程と、上記加熱処理物とホウ素源とを含む混合物を加熱することによって、窒化ホウ素の一次粒子を生成し、上記一次粒子が凝集して構成される凝集粒子を得る結晶化工程と、を有する。上記混合物において、上記ホウ素源の含有量は、上記加熱処理物100質量部に対して、50質量部未満である。
加圧窒化工程において使用する炭化ホウ素粉末(BC粉末)は平均粒子径が15μm以下のものである。炭化ホウ素粉末の平均粒子径の上限値は、例えば、14μm以下、13μm以下、12μm以下、又は11μm以下であってよい。炭化ホウ素粉末の平均粒子径の上限値が上記範囲内であることで、加圧窒化工程で得られる焼成物の粒子径を小さなものに留め得る。このため、粒子の表面積を大きなものに維持し、酸化工程における酸素との接触面を増やすことができ、よって脱炭効率を向上させることができる。炭化ホウ素粉末の平均粒子径の下限値は、例えば、1μm以上、2μm以上、4μm以上、又は5μm以上であってよい。炭化ホウ素粉末の平均粒子径の下限値が上記範囲内であることで、得られる凝集粒子の粒子径を適度に増大させることで、窒化ホウ素粉末を樹脂に混練し、樹脂組成物とした際の粘度の増加をより抑制できる。炭化ホウ素粉末の平均粒子径は、上述の窒化ホウ素粉末における凝集粒子の平均粒子径の測定方法と同一の方法によって測定される値を意味する。
加圧窒化工程では、炭化ホウ素粉末を、窒素加圧雰囲気下で焼成して炭窒化ホウ素粉末(BCN粉末)を含む焼成物を得る。加圧窒化工程における焼成温度の下限値は、2000℃以上、又は2100℃以上であってよい。上記焼成温度の下限値を上記範囲内とすることで、得られる炭窒化ホウ素の結晶性を高め、六方晶炭窒化ホウ素の割合を高めることができる。加圧窒化工程において、六方晶炭窒化ホウ素の割合を高めておくことによって、後に得られる窒化ホウ素粉末の熱伝導率をより向上させることができる。加圧窒化工程における焼成温度の上限値は、2300℃以下、又は2250℃以下であってよい。当該焼成温度は上述の範囲内で調整してよく、例えば、2000~2300℃であってよい。
加圧窒化工程における圧力(雰囲気圧力)の下限値は、例えば、0.6MPa以上、0.7MPa以上、又は0.8MPa以上であってよい。加圧窒化工程における圧力の下限値を上記範囲内とすることで、炭化ホウ素の窒化を十分に進行させることができる。加圧窒化工程における圧力(雰囲気圧力)の上限値は、例えば、1MPa以下、又は0.9MPa以下であってよい。加圧窒化工程における圧力の上限値を上記範囲内とすることで、窒化ホウ素粉末の製造コストの上昇を抑制することができる。当該圧力は上述の範囲内で調整してよく、例えば、0.6~1MPa、又は0.8~0.9MPaであってよい。
加圧窒化工程における窒素加圧雰囲気の窒素ガス濃度は、例えば、95体積%以上、98体積%以上、又は99.9体積%以上であってよい。加圧窒化工程における焼成時間は、窒化が十分進む範囲であれば特に限定されず、例えば、6~30時間、8~25時間、又は10~20時間であってよい。
酸化工程では、炭窒化ホウ素粉末を含む焼成物を、酸素を含む雰囲気下で焼成することによって、焼成物に含まれる炭素の一部を脱炭する工程である。この脱炭によって、続く結晶化工程におけるホウ素源の使用量を低減することができる。その結果、結晶化工程における液相の割合を抑えることができ、タップ密度が大きく、凝集粒子の圧壊強さに優れる窒化ホウ素粉末を得ることができる。
酸化工程における酸素を含む雰囲気は、酸素分圧が20%以上である雰囲気であってよく、例えば、大気等であってよい。酸化工程における圧力(雰囲気圧力)は、例えば、0.1~0.5MPa、0.1~0.3MPa、又は0.1~0.2MPaであってよく、大気圧(0.1MPa)であってよい。
酸化工程における焼成温度の下限値は、例えば、600℃以上、650℃以上、又は700℃以上であってよい。当該焼成温度の下限値が上記範囲内であることで、炭窒化ホウ素中の炭素の含有量をより低減することができる。酸化工程における焼成温度の上限値は、例えば、1000℃以下、又は950℃以下であってよい。当該焼成温度の上限値が上記範囲内であることで焼成後の炭窒化ホウ素の酸化を抑制できる。
酸化工程における焼成時間の下限は、例えば、6時間以上、又は7時間以上であってよい。当該焼成時間の下限値が上記範囲内であることで、炭窒化ホウ素中の炭素含有量を充分に低減することが可能となる。また、酸化工程における焼成時間の上限は特に限定されないが、例えば、20時間以下、又は15時間以下であってよい。当該焼成時間の上限が上記範囲内であると、当該工程の処理効率が低下することをより十分に抑制できる。焼成時間が少なすぎると炭素量の低減が不十分となる。当該焼成時間の上限を上記範囲内とすることで、上記加熱処理物中のホウ素原子の一部が酸化されホウ酸が生成することをより十分に抑制することができ、よって、ホウ酸量の増大に伴う窒化ホウ素粉末のタップ密度の低下をより抑制することができる。
酸化工程で得られる加熱処理物は、加熱処理前の焼成物における酸素量に比べて、酸素量が低減されたものとなっている。上記加熱処理物の酸素量の上限値は、加熱処理物の全量を基準として、例えば、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、又は1.5質量%以下であってよい。上記加熱処理物の酸素量が上記範囲内であることで、続く結晶化工程における焼成中の液相量の増加を抑制することができ、得られる窒化ホウ素粉末のタップ密度をより上昇させることができる。上記加熱処理物の酸素量の下限値は、特に制限されるものではないが、加熱処理物の全量を基準として、例えば、0.1質量%以上、又は0.5質量%以上であってよい。
本明細書における酸素量は、酸素/窒素同時分析計によって測定される値を意味する。酸素/窒素同時分析計としては、例えば、株式会社堀場製作所製の「EMGA-910型」(商品名)等を使用できる。
結晶化工程は、酸化工程で得られた上記加熱処理物とホウ素源とを含む混合物を加熱することによって、窒化ホウ素の一次粒子を生成し、上記一次粒子が凝集して構成される凝集粒子を得る。すなわち、結晶化工程では、炭窒化ホウ素を脱炭化させるとともに、窒化ホウ素の結晶化度を高め、所定の窒化ホウ素一次粒子が凝集した凝集粒子を含む窒化ホウ素粉末を得る。
ホウ素源は、例えば、ホウ酸及び酸化ホウ素からなる群より選択される少なくとも一種を含んでよい。ホウ素源は、より具体的には、ホウ酸、酸化ホウ素、又はこれらの混合物が挙げられる。結晶化工程で加熱する混合物は、炭窒化ホウ素及びホウ素源に加えて、BC法において使用される公知の添加物を含有してもよい。
混合物におけるホウ素源の配合量の上限値は、上記加熱処理物100質量部に対して、50質量部未満であるが、例えば、45質量部以下、43質量部以下、又は40質量部以下であってよい。ホウ素源の配合量の上限値を上記範囲内とすることで、得られる窒化ホウ素粉末のタップ密度をより上昇させることができ、また凝集粒子の圧壊強さをより向上させることができる。混合物におけるホウ素源の配合量は、上記加熱処理物100質量部に対して、30質量部以上、32質量部以上、34質量部以上、又は36質量部以上であってよい。ホウ素源の配合量の下限値を上記範囲内とすることで、窒化ホウ素の一次粒子の粒子成長を促進することができる。混合物におけるホウ素源の配合量は上述の範囲内で調整してよく、上記加熱処理物100質量部に対して、例えば、30質量部以上50質量部未満、34~45質量部、又は36~40質量部であってよい。
結晶化工程において混合物を加熱する焼成温度の下限値は、例えば、1900℃以上、又は2000℃以上であってもよい。当該焼成温度の下限値を上記範囲内とすることで、粒子成長を十分に進行させることができる。結晶化工程において混合物を加熱する焼成温度の上限値は、例えば、2200℃以下、又は2150℃以下であってよい。当該焼成温度の上限値を上記範囲内とすることで、窒化ホウ素粉末の黄色化を抑制ことができる。結晶化工程における焼成温度は上述の範囲内で調整してよく、例えば、1900~2200℃、又は2000~2150℃であってよい。結晶化工程における混合物を加熱する焼成温度は、加圧窒化工程における炭化ホウ素粉末の焼成温度よりも低いことが好ましい。
結晶化工程は、常圧下で行ってもよく、また大気圧以上の圧力下で行ってもよい。なお、本明細書中における雰囲気圧力は全てゲージ圧を示している。結晶化工程における圧力(雰囲気圧力)の下限値は、例えば、10kPa以上、15kPa以上、又は20kPa以上であってよい。上記圧力の下限値を上記範囲内とすることで、ホウ酸等の助剤が系外に除去されることを抑制し、窒化ホウ素粒子の反応場をより一層均一なものとすることができる。結晶化工程における圧力(雰囲気圧力)の上限値は、例えば、80kPa以下、60kPa以下、又は40kPa以下であってよい。上記圧力の上限値を上記範囲内とすることで、結晶化工程中に凝集粒子が崩壊することをより十分に抑制することができる。結晶化工程における圧力(雰囲気圧力)は上述の範囲内で調整してよく、例えば、10~80kPa、10~60kPa、又は20~40kPaであってよい。
結晶化工程における焼成時間の下限値は、例えば、0.5時間以上、1時間以上、又は3時間以上であってよい。当該焼成時間の下限値を上記範囲内とすることで、粒子成長を十分に進行させることができる。結晶化工程における焼成時間の上限値は、例えば、40時間以下、30時間以下、20時間以下、又は10時間以下であってよい。当該焼成時間の上限値を上記範囲内とすることで、製造コストの上昇を抑制することができる。当該焼成時間は上述の範囲内で調整してよく、例えば、0.5~40時間、又は1.0~30時間であってよい。
窒化ホウ素粉末の製造方法は、その他の工程を有してもよい。その他の工程としては、例えば、粉砕工程、及び分級工程等が挙げられる。窒化ホウ素粉末の製造方法では、例えば、結晶化工程の後に、粉砕工程を行ってもよい。粉砕工程においては、一般的な粉砕機又は解砕機を用いることができる。例えば、ボールミル、振動ミル、ジェットミル等を用いることができる。なお、本明細書における「粉砕」には「解砕」も含むものとする。
本開示に係る窒化ホウ素粉末は、平均粒子径が小さく、タップ密度が比較的大きなものとなっており、粉末中に含まれる凝集粒子の圧壊強さが高いものとなっていることから、樹脂等に混練して用いられる充填材として好適に使用できる。また上記窒化ホウ素粉末であれば、樹脂と混練した際の粘度上昇も抑制され得ることから、窒化ホウ素粉末の充填量を従来よりも大きなものとすることができ、当該樹脂組成物を用いて形成される成形体(例えば、伝熱シート等)等には優れた放熱性を期待し得る。樹脂組成物の一実施形態は、樹脂と、上述の窒化ホウ素粉末と、を含有する。
上記樹脂組成物は、成形、硬化等して使用することができる。硬化物の一実施形態は、樹脂と、上述の窒化ホウ素粉末と、を含有する、樹脂組成物の硬化物である。硬化物の形状は、特に限定されるものではなく、ブロック状、シート状、又はフィルム状であってよい。シート状の硬化物(シート)の場合、シートの厚さは、例えば、0.5mm以下、0.2mm以下、又は0.1mm以下であってよい。上記シートは、比較的粒子径の小さい、上述の窒化ホウ素を含むものであることから、比較的薄膜のシートを作製できる。上述の硬化物は、上述の窒化ホウ素を含むことから、例えば、放熱部材等に有益である。
樹脂は、例えば、液晶ポリマー、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、アクリル樹脂、ポリオレフィン(ポリエチレン等)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、全芳香族ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、マレイミド変性樹脂、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)樹脂、AAS(アクリロニトリル-アクリルゴム・スチレン)樹脂、及びAES(アクリロニトリル・エチレン・プロピレン・ジエンゴム-スチレン)樹脂等が挙げられる。
樹脂の含有量の下限値は、樹脂組成物の全体積を基準として、例えば、15体積%以上、20体積%以上、又は30体積%以上であってよい。樹脂の含有量の下限値が上記範囲内であることで、樹脂組成物の成形性が低下することをより十分に抑制できる。樹脂の含有量の上限値は、樹脂組成物の全体積を基準として、例えば、60体積%以下、50体積%以下、又は40体積%以下であってよい。樹脂の含有量の下限値が上記範囲内であることで、樹脂組成物の熱伝導率をより向上できる。
本開示の樹脂組成物においては、上述の窒化ホウ素粉末を用いることから、比較的多くの窒化ホウ素粉末を含有させることができる。窒化ホウ素粉末の含有量の下限値は、樹脂組成物の全体積を基準として、例えば、40体積%以上、50体積%以上、60体積%以上、又は65体積%以上であってよい。窒化ホウ素粉末の含有量の下限値が上記範囲内であることで、樹脂組成物の熱伝導率を向上させ、優れた放熱性を有する成形体を得られ得る。窒化ホウ素粉末の含有量の上限値は、樹脂組成物の全体積を基準として、例えば、85体積%以下、80体積%以下、又は70体積%以下であってよい。窒化ホウ素粉末の含有量の上限値が上記範囲内であることで、樹脂組成物の成形性が低下することを抑制できる。
樹脂組成物は、樹脂及び窒化ホウ素粉末に加えて、上記樹脂を硬化させる硬化剤を更に含有してよい。硬化剤は、樹脂の種類によって適宜選択することができる。樹脂がエポキシ樹脂である場合、硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック化合物、酸無水物、アミノ化合物、及びイミダゾール化合物等が挙げられる。硬化剤の含有量の下限値は、樹脂100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、又は1質量部以上であってよい。硬化剤の含有量の上限値は、樹脂100質量部に対して、例えば、15質量部以下、又は10質量部以下であってよい。
以上、本開示の幾つかの実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。また、上述した実施形態についての説明内容は、互いに適用することができる。
以下、本開示について、実施例及び比較例を用いてより詳細に説明する。なお、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
[炭化ホウ素粉末の作製]
オルトホウ酸(日本電工株式会社製、以下、単に「ホウ酸」という。)100質量部と、アセチレンブラック(HS100、デンカ株式会社製)35質量部とをヘンシェルミキサーを用いて混合したのち、黒鉛ルツボ中に充填した。この黒鉛ルツボをアーク炉に入れ、アルゴン雰囲気で、2200℃にて5時間加熱し、塊状の炭化ホウ素(BC)粉末を合成した。合成した塊状の炭化ホウ素粉末をボールミルで1時間粉砕し、篩目63μmの篩網を用いて分級を実施した。篩下に得られた炭化ホウ素粉末を更に硝酸水溶液で洗浄して鉄分等の不純物を除去し、濾過及び乾燥させることによって、平均粒子径が15μmの炭化ホウ素粉末(BC粉末)を作製した。
[炭窒化ホウ素粉末の作製]
作製した炭化ホウ素粉末を窒化ホウ素ルツボに充填した。抵抗加熱炉を用い、0.85MPaの窒素ガスの雰囲気下で、2100℃、25時間、炭化ホウ素粉末を加熱することによって、炭窒化ホウ素(BCN)粉末を得た(加圧窒化工程)。
得られた炭窒化ホウ素粉末を、マッフル炉内に静置し、大気雰囲気下で、700℃、5時間加熱すること(酸化工程)によって、加熱処理物を得た。上記加熱処理物の酸素量は1.8質量%であった。酸素量の測定は、酸素/窒素同時分析計(堀場製作所社製、EMGA-910型)を使用して行った。
[窒化ホウ素粉末の作製]
上記加熱処理物100質量部に対して、ホウ素源であるホウ酸の含有量が40質量部となるようにホウ酸を添加し、ヘンシェルミキサーによって混合して、混合物を得た。混合物を窒化ホウ素ルツボに充填し、抵抗加熱炉を用いて加熱することによって脱炭して、一次粒子が凝集した凝集粒子を含む窒化ホウ素粉末を合成した(結晶化工程)。結晶化工程における条件としては、圧力13kPaの窒素ガスの雰囲気で、室温から2000℃まで昇温し、2000℃において5時間保持した。合成した窒化ホウ素粉末を乳鉢によって10分間解砕した後、篩目75μmのナイロン篩にて分級を行った。
(実施例2)
炭化ホウ素粉末として、平均粒子径を10μmの粉末を使用するように変更し、加熱処理物の酸素量が2.3であったこと以外は実施例1と同様にして、窒化ホウ素粉末を調製した。
(実施例3)
炭化ホウ素粉末として、平均粒子径を3μmの粉末を使用するように変更し、加熱処理物の酸素量が2.5%であったこと以外は実施例1と同様にして、窒化ホウ素粉末を調製した。
(比較例1)
炭化ホウ素粉末として、平均粒子径が16μmの粉末を使用し、加熱処理物の酸素量が2.2であり、ホウ酸の含有量を加熱処理物100質量部に対して55質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、窒化ホウ素粉末を調製した。
(比較例2)
炭化ホウ素粉末として、平均粒子径が10μmの粉末を使用し、加熱処理物の酸素量が1.9であり、ホウ酸の含有量を加熱処理物100質量部に対して55質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、窒化ホウ素粉末を調製した。
(比較例3)
炭化ホウ素粉末として、平均粒子径が26μmの粉末を使用し、加熱処理物の酸素量が2.2であり、ホウ酸の含有量を加熱処理物100質量部に対して40質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、窒化ホウ素粉末を調製した。
(比較例4)
炭化ホウ素粉末として、平均粒子径が16μmの粉末を使用し、加熱処理物の酸素量が2.0であり、ホウ酸の含有量を加熱処理物100質量部に対して75質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、窒化ホウ素粉末を調製した。
(比較例5)
炭化ホウ素粉末として、平均粒子径が16μmの粉末を使用し、ホウ酸の含有量を加熱処理物100質量部に対して55質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、窒化ホウ素粉末を調製した。
(比較例5)
比較のため、いわゆるホウ酸メラミン法によって窒化ホウ素を調製し造粒する方法で、凝集粒子を含む窒化ホウ素粉末を調製した。具体的には、ホウ酸粉末(純度99.8質量%以上、関東化学社製)100質量部、及びメラミン粉末(純度99.0質量%以上、和光純薬社製)90質量部を、アルミナ製乳鉢を用いて10分間混合し混合原料を得た。乾燥後の混合原料を、六方晶窒化ホウ素製の容器に入れ、電気炉内に配置した。電気炉内に窒素ガスを流通させながら、10℃/分の速度で室温から1000℃に昇温した。1000℃で4時間保持した後、加熱を止めて自然冷却した。温度が100℃以下になった時点で電気炉を開放した。このようにして、低結晶性の窒化ホウ素を含む仮焼物を得た。
次に、上記仮焼物100質量部に、ホウ酸を20質量部、及び助剤として炭酸ナトリウム(純度99.5質量%以上)を3質量部添加し、アルミナ製乳鉢を用いて10分間混合した。混合物を、上述の電気炉内に配置した。電気炉内に窒素ガスを流通させながら、10℃/分の速度で室温から2000℃に昇温した。2000℃の焼成温度で4時間保持した後、加熱を止めて自然冷却した。温度が100℃以下になった時点で電気炉を開放した。得られた焼成物を回収し、アルミナ製乳鉢で3分間粉砕して、窒化ホウ素の粗粉を得た。
上述のようにして得られた窒化ホウ素の粗粉100質量部に対して、助剤として、炭酸カルシウム3質量部、及び水140質量部を添加し、ヘンシェルミキサーを用いて混合した後、ボールミルにて5時間粉砕処理することで、スラリーを得た。得られたスラリー100質量部に対して、ポリビニルアルコール樹脂0.5質量部、アニオン界面活性剤0.5質量部を加え、溶解するまで50℃で撹拌させ、溶液を得た。回転式アトマイザーを用いて、回転数:17000rpmで、温度:230℃に調製された噴霧乾燥機中に得られた溶液を噴霧することで、窒化ホウ素の一次粒子を緩く凝集させた粉末を得た。得られた粉末を、バッチ式高周波炉にて、窒素雰囲気下、1850℃で、4時間さらに加熱処理することで、窒化ホウ素粉末を調製した。
<窒化ホウ素粉末の性状評価>
実施例1~2、及び比較例1~5で得られた窒化ホウ素粉末のそれぞれについて、タップ密度、平均粒子径、圧壊強さ、及び配向性指数を評価した。結果を表1に示す。
<窒化ホウ素粉末の充填材としての評価>
実施例1~2、及び比較例1~5で得られた窒化ホウ素粉末のそれぞれを用いて樹脂組成物を調製し、後述する方法によって、窒化ホウ素粉末の樹脂に対する充填材としての評価を行った。なお、表1には、粘度及び熱伝導率は、比較例1の窒化ホウ素粉末の測定値を基準とする相対値を記載した。
[製膜性]
ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製、HP4032)100質量部と、硬化剤としてイミダゾール化合物(四国化成社製、2E4MZ-CN)10質量部との混合物に対し、窒化ホウ素粉末が60体積%となるように、窒化ホウ素粉末を混合して樹脂組成物を得た。樹脂との混練には株式会社シンキー製の「あわとり練太郎」(製品名)を用いた。混練の条件は、1600rpmで3分間とした。得られた樹脂組成物をPETフィルム上に厚さが500μmになるように塗布した。その後、温度150℃、50kgf/cmの条件で60分間の比較的温和な条件で加熱及び加圧を行うことによって、上述の樹脂を硬化させることで、50μmの樹脂シート(評価用シート)を作製した。上述のようにして得られた膜に対する目視観察を行い、以下の基準で評価した。
A:膜に欠陥が観測されなかった。
B:膜に欠陥が観測された。
[樹脂組成物の粘度]
シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製、製品名:KF-96L)に対して窒化ホウ素粉末を混合して組成物を得た。この際、窒化ホウ素粉末の配合量が樹脂組成物中に25体積%となるように調整した。樹脂との混練には株式会社シンキー製の「あわとり練太郎」(製品名)を用いた。混練の条件は、1600rpmで3分間とした。得られた組成物を回転型粘度計(アントンパール・ジャパン社製、製品名:MCR302)によって粘度測定を行い、粘度のせん断速度依存性を確認した。測定は25℃にてせん断速度0.01~100sec-1の範囲で実施した。結果を表1に示す。表1では、比較例1で調製した窒化ホウ素粉末を用いた樹脂組成物についてせん断速度が1sec-1の時の粘度を1とした時の相対値を記載した。
[樹脂シートの熱伝導率]
上記製膜性の評価のために使用した樹脂シートと同様にして製造した樹脂シート(評価用シート)を対象として、熱伝導率の評価を行った。熱伝導率H(単位:W/(m・K))は、熱拡散率A(単位:m/秒)、密度B(単位:kg/m)、及び比熱容量C(単位:J/(kg・K))の値から、H=A×B×Cの式に基づいて算出した。熱拡散率Aは、評価用シートを縦:10mm、横:10mm、厚さ:0.3mmに加工し、レーザーフラッシュ法によって求めた。測定装置は、キセノンフラッシュアナライザ(NETZSCH社製、製品名:LFA447NanoFlash)を用いた。密度Bは、アルキメデス法を用いて求めた。比熱容量Cは、DSC(株式会社リガク製、製品名:ThermoPlusEvoDSC8230)を用いて求めた。
Figure 2023108717000001
本開示によれば、樹脂への充填性に優れ、放熱性に優れる伝熱シートを作製可能な樹脂組成物を調製し得る窒化ホウ素粉末、かかる窒化ホウ素粉末を含有する樹脂組成物及び樹脂組成物の硬化物、並びに窒化ホウ素粉末の製造方法を提供できる。

Claims (7)

  1. 窒化ホウ素の一次粒子が凝集して構成される凝集粒子を含み、
    タップ密度が0.9g/cm超であり、平均粒子径が20μm以下であり、
    前記凝集粒子の圧壊強さが10MPa以上である、窒化ホウ素粉末。
  2. 平均粒子径が2μm以上である、請求項1に記載の窒化ホウ素粉末。
  3. 配向性指数が10以下である、請求項1又は2に記載の窒化ホウ素粉末。
  4. 樹脂と、請求項1~3のいずれか一項に記載の窒化ホウ素粉末と、を含有する、樹脂組成物。
  5. 樹脂と、請求項1~3のいずれか一項に記載の窒化ホウ素粉末と、を含有する、樹脂組成物の硬化物。
  6. 平均粒子径が15μm以下の炭化ホウ素粉末を、窒素加圧雰囲気下で焼成して焼成物を得る加圧窒化工程と、
    前記焼成物を、酸素分圧が20%以上である雰囲気下において加熱して加熱処理物を得る酸化工程と、
    前記加熱処理物とホウ素源とを含む混合物を加熱することによって、窒化ホウ素の一次粒子を生成し、前記一次粒子が凝集して構成される凝集粒子を得る結晶化工程と、を有し、
    前記ホウ素源の含有量が、前記加熱処理物100質量部に対して、50質量部未満である、窒化ホウ素粉末の製造方法。
  7. 前記加熱処理物の酸素量が、前記加熱処理物の全量を基準として、4質量%以下である、請求項6に記載の製造方法。
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