JP2024022830A - 窒化ホウ素粉末、及び、窒化ホウ素粉末の製造方法 - Google Patents

窒化ホウ素粉末、及び、窒化ホウ素粉末の製造方法 Download PDF

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豪 竹田
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Abstract

【課題】樹脂に対する充填材として用いることによって、充填性に優れ、且つ放熱性に優れる樹脂成形体を調製可能な窒化ホウ素粉末を提供すること。【解決手段】本開示の一側面は、六方晶窒化ホウ素の一次粒子と、六方晶窒化ホウ素の一次粒子が凝集して構成される凝集粒子と、を含み、上記凝集粒子の平均面積包絡度が0.93以上である、窒化ホウ素粉末を提供する。【選択図】なし

Description

本開示は、窒化ホウ素粉末、及び、窒化ホウ素粉末の製造方法に関する。
パワーデバイス、トランジスタ、サイリスタ、及びCPU等の電子部品においては、使用時に発生する熱を効率的に放熱することが課題となっている。この課題に対して、従来、電子部品を実装するプリント配線板の絶縁層の高熱伝導化や、電子部品又はプリント配線板を電気絶縁性の熱インターフェース材(Thermal Interface Materials)を介してヒートシンクに取り付けることが行われてきた。このような絶縁層及び熱インターフェース材には、熱伝導率が高いセラミックス粉末が用いられる。
セラミックス粉末としては、高熱伝導率、高絶縁性、低比誘電率等の特性を有している窒化ホウ素粉末が注目されている。六方晶窒化ホウ素粒子は、面内方向(a軸方向)の熱伝導率が400W/(m・K)であるのに対して、厚み方向(c軸方向)の熱伝導率が2W/(m・K)であり、結晶構造と鱗片状に由来する熱伝導率の異方性が大きい。さらに、六方晶窒化ホウ素粉末を樹脂に充填すると、粒子同士が同一方向に揃って配向する。そのため、例えば、熱インターフェース材の製造時に、六方晶窒化ホウ素粒子の面内方向(a軸方向)と熱インターフェース材の厚み方向が垂直になり、六方晶窒化ホウ素粒子の面内方向(a軸方向)の高熱伝導率を十分に活かすことができなかった。
上述のような形状に基づく異方性を低減する観点から、複数の一次粒子を凝集させた凝集粒子を形成する方法が検討されている。特許文献1では、窒化ホウ素一次粒子が凝集してなる窒化ホウ素凝集粒子が開示されており、所定の成形圧力を加えた場合でも凝集粒子の崩壊が抑制できる程度に上記凝集粒子の強度を高めることによって、窒化ホウ素一次粒子が同一方向に揃って配向することを抑制する旨が記載されている。
特開2016-135731号公報
凝集粒子を用いることによって、熱異方性の発生を低減できるものの、従前の凝集粒子を含む窒化ホウ素粉末の場合、樹脂への充填量の増加に伴って、粘度上昇が著しく思うように充填量を増やせない場合がある。このため、窒化ホウ素粉末の充填量を増やして放熱性を向上させる観点からは、改善の余地がある。
本開示は、樹脂に対する充填材として用いることによって、充填性に優れ、且つ放熱性に優れる樹脂成形体を調製可能な窒化ホウ素粉末、及びその製造方法を提供することを目的とする。
本開示は、以下の[1]~[7]を提供する。
[1]六方晶窒化ホウ素の一次粒子と、六方晶窒化ホウ素の一次粒子が凝集して構成される凝集粒子と、を含み、
上記凝集粒子の平均面積包絡度が0.93以上である、窒化ホウ素粉末。
[2]配向性指数が12以下である、[1]に記載の窒化ホウ素粉末。
[3]上記凝集粒子の圧壊強さが8MPa以上である、[1]又は[2]に記載の窒化ホウ素粉末。
[4]平均粒子径が25~65μmである、[1]~[3]のいずれかに記載の窒化ホウ素粉末。
[5]炭化ホウ素粉末を、窒素加圧雰囲気下で焼成して、炭窒化ホウ素を含む焼成物を得ることと、
上記焼成物と、ホウ酸を含むホウ素含有化合物とを含む混合粉末を加熱して六方晶窒化ホウ素の一次粒子を生成し、一次粒子が凝集して構成される凝集粒子を含む粉末を得ることと、
上記粉末を解砕することと、を有し、
上記炭化ホウ素粉末は、体積基準の累積粒度分布曲線における10%累積径が3μm以上であり、且つ、上記累積粒度分布曲線における10%累積径をD10とし、50%累積径をD50とし、90%累積径をD90としたときに、(D90-D10)/D50の値が2以上である、窒化ホウ素粉末の製造方法。
[6][1]~[4]のいずれかに記載の窒化ホウ素粉末と、樹脂と、を含む、樹脂組成物。
[7]樹脂と、充填材と、を含み、
前記充填材が[1]~[4]のいずれかに記載の窒化ホウ素粉末を含む、樹脂シート。
本開示によれば、樹脂に対する充填材として用いることによって、充填性に優れ、且つ放熱性に優れる樹脂成形体を調製可能な窒化ホウ素粉末、及びその製造方法を提供できる。
図1は、面積包絡度を説明するための模式図である。 図2は、実施例1で調製した窒化ホウ素粉末のSEM画像である。 図3は、比較例1で調製した窒化ホウ素粉末のSEM画像である。
以下、本開示の実施形態を説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。
本明細書において例示する材料は特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。組成物中の各成分の含有量は、組成物中の各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
窒化ホウ素粉末の一実施形態は、六方晶窒化ホウ素の一次粒子と、六方晶窒化ホウ素の一次粒子が凝集して構成される凝集粒子と、を含む。上記凝集粒子の平均面積包絡度が0.93以上である。本開示において、上記凝集粒子には、複数の六方晶窒化ホウ素の一次粒子が凝集して構成される2次粒子の他、上記2次粒子同士が凝集又は融着して構成される高次粒子(例えば、3次粒子等)を含んでもよい。
図1は、面積包絡度を説明するための模式図である。図1における凝集粒子2の面積包絡度とは、凝集粒子2の全体像の画像を取得し、その画像において凝集粒子2の投影面積をAとし、凝集粒子2の周囲を囲む包絡仮想線Lで囲まれた包絡面積をAとした際に、A/Aで与えられる値を意味する。すなわち、凝集粒子2の面積包絡度が1に近づくことで、凝集粒子2の表面の凹凸が少ないことを意味する。例えば、3次粒子は、粒子の融着の方向性が定まりづらく全体として表面の凹凸が生じやすいため、3次粒子の面積包絡度の値が小さくなる傾向にある。面積包絡度の値の小さな3次粒子等を含む場合、窒化ホウ素粉末を樹脂に配合すると、樹脂組成物の粘度の上昇幅が大きく、また、樹脂組成物中での凝集粒子の分布も不均一なものとなる傾向にある。
上記窒化ホウ素粉末においては凝集粒子の平均面積包絡度が所定値以上となっている。このことは、凝集粒子の表面における凹凸が小さく抑制されたものとなっていることを意味し、例えば、3次粒子の割合が少ないことの指標と見ることもできる。3次粒子の割合が低減されていることによって、窒化ホウ素粉末を樹脂に対して充填した際の樹脂組成物の粘度上昇を抑制することができる。そのため、樹脂組成物に対する窒化ホウ素粉末の配合量を増加させることができ、当該樹脂組成物を成形して得られる成形体(例えば、樹脂シートなど)の放熱性を向上し得る。
上記凝集粒子の平均面積包絡度の下限値は、例えば、0.94以上、0.95以上、又は0.96以上であってよい。上記平均面積包絡度の下限値が上記範囲内であることで、得られる窒化ホウ素粉末の樹脂への充填性をより向上させることができる。上記凝集粒子の平均面積包絡度の上限値は特に限定されるものではなく、1以下であってよいが、例えば、0.99以下、又は0.98以下であってよい。上記凝集粒子の平均面積包絡度は上述の範囲内で調整してよく、例えば、0.93~1、又は0.94~0.98であってよい。
本明細書における平均面積包絡度は、以下の方法に沿って算出される値を意味する。まず、画像式粒度分布測定装置を用いて、当該測定装置に付属のサンプル分散ユニット(Sample Dispersion unit:SDU)にて、ガラス板上に窒化ホウ素粉末を分散させる。その後、画像式粒度分布測定装置にて窒化ホウ素粉末の画像を取得する。そして、粒子の全体が確認できる凝集粒子について、解析ソフトによって各凝集粒子の投影面積A及び包絡面積Aの値を測定する。測定された投影面積A及び包絡面積Aの値に基づいて、面積包絡度(A/Aの値)を算出する。粒子の全体が確認できる凝集粒子を任意に10000個選択し、得られた面積包絡度の算術平均値を平均面積包絡度とする。画像式粒度分布測定装置としては、例えば、Malvern Panalytical社製の「Morphologi 4」(商品名)等を使用できる。解析ソフトとしては、例えば、Malvern Panalytical社製の「Morphologi」(商品名)等を使用できる。
上記窒化ホウ素粉末は、凝集粒子を含み、一次粒子の含有割合も低く抑制されたものとなっていてよい。上記窒化ホウ素粉末の配向性指数の上限値は、例えば、12以下、10以下、9.5以下、9以下、8.5以下、8以下、又は7.5以下であってよい。上記配向性指数の上限値が上記範囲内となることは、得られる窒化ホウ素粉末における一次粒子の配向が抑制されることを意味する。よって、当該窒化ホウ素粉末を充填材とする樹脂組成物を使用して成形体を成形した場合、この成形体における放熱性をより向上させることができる。上記窒化ホウ素粉末の配向性指数の値がより低いほど、樹脂と配合した際により高い放熱性の付与を期待し得るが、製法上6未満とすることは難しく、例えば、6以上、6.3以上、又は6.6以上であってよく、十分高い放熱性を付与し得る。上記窒化ホウ素粉末の配向性指数は上述の範囲内で調整してよく、例えば、6~12、又は6~9であってよい。
本明細書における配向性指数は、以下の方法に沿って測定される値を意味する。窒化ホウ素粉末に対するX線回折測定を行うことによって、窒化ホウ素粉末のX線回折スペクトルを取得する。そして、当該X線回折スペクトルから、(002)面及び(100)面に対応するピーク強度I(002)及びI(100)を取得する。得られたピーク強度を用いて、窒化ホウ素粉末の配向性指数[I(002)/I(100)]を算出する。X線回折装置としては、例えば、株式会社リガク製の「ULTIMA-IV」(製品名)等を使用することができる。
なお、配向性指数の測定対象は窒化ホウ素粉末であることから、粉末において、実質的に一次粒子が配向していない凝集粒子(塊状粒子)が存在し、この存在割合が大きい場合、配向性指数の値は6~7程度の値に近づく傾向にある。一方で、凝集粒子を含まない一次粒子で構成され、若しくは、上記一次粒子の存在割合が大きくなると、配向性指数の値は大きくなる傾向にある。
上記凝集粒子の圧壊強さの下限値は、例えば、8MPa以上、9MPa以上、10MPa以上、又は11MPa以上であってよい。上記圧壊強さの下限値が上記範囲内であることで、六方晶窒化ホウ素の一次粒子が凝集してなる2次粒子が樹脂との混練の際に容易に崩壊すること、及びこれによる一次粒子の存在割合が増加することを抑制できる。よって、得られる窒化ホウ素粉末を充填材とする樹脂成形体における熱異方性をより低減できる。上記凝集粒子の圧壊強さの上限値は、例えば、20MPa以下、18MPa以下、16MPa以下、又は14MPa以下であってよい。上記圧壊強さの上限値が上記範囲内であることで、樹脂との混練の際に凝集粒子の少なくとも一部が適度に崩壊し、ボイドの発生を抑制することによって得られる樹脂組成物及び成形体の絶縁性をより向上させることができる。上記凝集粒子の圧壊強さは上述の範囲内で調整してよく、例えば、8~20MPa、又は10~14MPaであってよい。
本明細書における圧壊強さは、JIS R 1639-5:2007「ファインセラミックス-か(顆)粒特性の測定方法-第5部:単一か粒圧壊強さ」の記載に準拠して測定される値を意味する。凝集粒子1個の圧壊強さσ(単位:MPa)は、凝集粒子内の位置によって変化する無次元数α(α=2.48)、圧壊試験力P(単位:N)及び粒子径d(単位:μm)の値から、σ=α×P/(π×d)という式を用いて算出される。測定は、20個以上の凝集粒子に対して行い、累積破壊率63.2%時点の値を算出するものとする。測定には、微小圧縮試験器を用いることができる。微小圧縮試験器としては、例えば、株式会社島津製作所製の「MCT-W500」(製品名)等を使用することができる。
上記窒化ホウ素粉末の平均粒子径の上限値は、樹脂と混合し、成形する厚さに応じて調整してよく、例えば、65μm以下、64μm以下、又は63μm以下であってよい。上記窒化ホウ素粉末の平均粒子径の下限値は、例えば、25μm以上、30μm以上、35μm以上、又は38μm以上であってよい。上記平均粒子径の下限値が上記範囲内であることで、充填性により優れた窒化ホウ素粉末とすることができる。これによって、当該窒化ホウ素粉末と樹脂と混合する際の粘度上昇をより抑制することができる。上記窒化ホウ素粉末の平均粒子径は上述の範囲内で調整してよく、例えば、25~65μm、又は35~63μmであってよい。
本明細書における窒化ホウ素粉末の平均粒子径は、体積基準の累積粒度分布における50%累積径(メジアン径)を意味する。より具体的には、窒化ホウ素粉末に対するレーザー回折散乱法で得られる体積基準の累積粒度分布における累積値が50%となったときの粒子径(D50)を意味する。レーザー回折散乱法は、JIS Z 8825:2013「粒子径解析-レーザー回折・散乱法」に記載の方法に準拠して測定する。測定には、レーザー回折散乱法粒度分布測定装置等を使用することができる。レーザー回折散乱法粒度分布測定装置は、例えば、ベックマンコールター社製の「LS-13 320」(製品名)等を使用できる。なお、測定の際はホモジナイザーによる処理を行わずに、凝集粒子が存在する状況で測定を行うものとする。
窒化ホウ素粉末の製造方法の一実施形態は、炭化ホウ素粉末を、窒素加圧雰囲気下で焼成して、炭窒化ホウ素を含む焼成物を得ること(以下、窒化工程ともいう)と、上記焼成物と、ホウ酸を含むホウ素含有化合物とを含む混合粉末を加熱して六方晶窒化ホウ素の一次粒子を生成し、一次粒子が凝集して構成される凝集粒子を含む粉末を得ること(以下、結晶化工程ともいう)と、上記粉末を解砕すること(以下、解砕工程ともいう)と、を有する。
上記製造方法においては、上記炭化ホウ素粉末として小粒径分(例えば、粒子径が3μm未満の粒子)の割合が少なく、比較的広い粒度分布を有する粉末を用いる。すなわち、上記炭化ホウ素粉末は、体積基準の累積粒度分布曲線における10%累積径が3μm以上であり、且つ、上記累積粒度分布曲線における10%累積径をD10とし、50%累積径をD50とし、90%累積径をD90としたときに、(D90-D10)/D50の値が2以上である。
本発明者らは、検討によって、次のような知見を確認した。すなわち、原料粉末である炭化ホウ素粉末における小粒径分が多い場合には、粒子同士の接点が多くなることから、窒化工程における系内の発熱量が高くなる傾向にある。このため、反応系の制御が難しく、これに伴って炭化ホウ素同士及びその窒化物同士の融着が促進され得る。これによって、2次凝集にとどまらず粒子の3次凝集を誘発し、続く結晶化工程でもこの凝集体の形状が維持される。その結果、得られる窒化ホウ素粉末中に含まれる3次粒子等の割合が多くなり得る。3次粒子を解砕することは可能であるものの、3次粒子を解砕可能な程度の力を加えた場合、2次粒子の崩壊も招き易い。これは、六方晶窒化ホウ素の一次粒子の割合を増加させ、結果として、所望の充填性、放熱性を期待できず、窒化ホウ素粉末としての配向性指数も上昇する傾向にある。また、本発明者らの検討によれば、次のような知見も見出した。すなわち、原料粉末として粒度分布の広い炭化ホウ素粉末を使用することで、窒化工程における原料粉末の高次凝集を抑制することが可能である。ひいては、得られる窒化ホウ素粉末における3次粒子等の高次粒子の割合を低減できる。本発明者らはこれらの知見に基づいて、原料粉末における小粒径分を減じ、さらには粒度分布の広い炭化ホウ素粉末を用いることによって、3次凝集の発生自体を抑制することで、上述のような窒化ホウ素粉末の製造方法に想到した。
窒化工程において用いる炭化ホウ素粉末(BC粉末)は、解砕、分級及び混合等の手段によって、上述の条件を充足するように調整して用いてよい。例えば、解砕及び分級の条件を調整し、粒度の異なる複数の炭化ホウ素粉末を調製し、これを混合することで得られる混合粉末を、窒化工程において用いる炭化ホウ素粉末としてもよい。
窒化工程において用いる炭化ホウ素粉末のD10の下限値は、例えば、4μm以上、5μm以上、5.5μm以上、6μm以上、7μm以上、8μm以上、8.5μm以上、9μm以上、又は10μm以上であってよい。炭化ホウ素粉末のD10の下限値を上記範囲内とすることによって、窒化工程における反応制御をより容易なものとなる。その結果、焼成物中の3次凝集等の発生をより抑制することができ、ひいては得られる窒化ホウ素粉末の充填性をより向上させることができる。窒化工程において用いる炭化ホウ素粉末のD10の上限値は、例えば、15μm以下、14μm以下、又は13μm以下であってよい。炭化ホウ素粉末のD10の上限値を上記範囲内とすることで、粒度分布が狭くなることを抑制し、2次粒子の成長をより促進できる。炭化ホウ素粉末のD10は上述の範囲内で調整してよく、例えば、3~15μmであってよい。
窒化工程において用いる炭化ホウ素粉末のD50の下限値は、例えば、20μm以上、22μm以上、24μm以上、25μm以上、26μm以上、28μm以上、30μm以上、又は32μm以上であってよい。炭化ホウ素の粉末のD50の下限値を上記範囲内とすることで、炭化ホウ素の粒子同士の接触が低減されるため、窒化工程中に発生する融着を抑制することができる。窒化工程において用いる炭化ホウ素粉末のD50の上限値は、例えば、70μm以下、65μm以下、62μm以下、又は60μm以下であってよい。炭化ホウ素の粉末のD50の上限値を上記範囲内とすることで、比較的短い焼成時間で粒子内部まで窒化反応を進行させることができる。
窒化工程において用いる炭化ホウ素粉末のD90の下限値は、例えば、50μm以上、55μm以上、60μm以上、65μm以上、70μm以上、75μm以上、80μm以上、85μm以上、又は90μm以上であってよい。炭化ホウ素の粉末のD90の下限値を上記範囲内とすることで、炭化ホウ素の粒子同士の接触が低減されるため、窒化工程中に発生する融着を抑制することができる。窒化工程において用いる炭化ホウ素粉末のD90の上限値は、例えば、200μm以下、190μm以下、185μm以下、又は180μm以下であってよい。炭化ホウ素の粉末のD90の上限値を上記範囲内とすることで、比較的短い焼成時間で粒子内部まで窒化反応を進行させることができる。
窒化工程において用いる炭化ホウ素粉末の(D90-D10)/D50の値の下限値は、例えば、2.2以上、2.3以上、2.4以上、2.42以上、2.44以上、2.48以上、2.5以上、2.6以上、又は2.65以上であってよい。上記(D90-D10)/D50の値の下限値を上記範囲内とすることで、粒子ごとの反応速度の違いがより大きくなる。よって、単位時間当たりの発熱量が小さくなるため、窒化工程中に発生する粒子同士の融着をより抑制することができる。このような作用によって、得られる窒化ホウ素粉末の樹脂に対する充填性をより向上しつつ、放熱性により優れる樹脂成形体を調製し得る。窒化工程において用いる炭化ホウ素粉末の(D90-D10)/D50の値の上限値は、例えば、2.75以下、2.73以下、又は2.7以下であってよい。上記(D90-D10)/D50の値の上限値を上記範囲内とすることで、比較的短い焼成時間で、炭化ホウ素中の粒子径が大きい粒子においても、内部まで窒化反応を進行させることができる。炭化ホウ素粉末の(D90-D10)/D50の値は上述の範囲内で調整してよく、例えば、2~2.75、又は2.4~2.75であってよい。
本明細書における窒化ホウ素粉末についての、D10、D50、及びD90は、JIS Z 8825:2013「粒子径解析-レーザー回折・散乱法」に記載の方法に準拠して測定した値を意味する。測定には、レーザー回折散乱法粒度分布測定装置を使用する。なお、測定の際はホモジナイザーによる処理を行わずに、凝集粒子が存在する状況で測定を行うものとする。レーザー回折散乱法粒度分布測定装置としては、例えば、ベックマンコールター社製の「LS-13 320」(商品名)、及びマイクロトラック・ベル社製のマイクロトラック「MT-3300EXII」(商品名)等を使用できる。
窒化工程では、炭化ホウ素粉末を、窒素加圧雰囲気下で焼成して炭窒化ホウ素粉末(BCN粉末)を含む焼成物を得る。窒化工程における焼成温度の下限値は、2000℃以上、又は2100℃以上であってよい。上記焼成温度の下限値を上記範囲内とすることで、得られる炭窒化ホウ素の結晶性を高め、六方晶炭窒化ホウ素の割合を高めることができる。窒化工程において、六方晶炭窒化ホウ素の割合を高めておくことによって、後に得られる窒化ホウ素粉末の熱伝導率をより向上させることができる。窒化工程における焼成温度の上限値は、2300℃以下、又は2250℃以下であってよい。当該焼成温度は上述の範囲内で調整してよく、例えば、2000~2300℃であってよい。
窒化工程における圧力(雰囲気圧力)の下限値は、例えば、0.6MPa以上、0.7MPa以上、又は0.8MPa以上であってよい。窒化工程における圧力の下限値を上記範囲内とすることで、炭化ホウ素の窒化を十分に進行させることができる。窒化工程における圧力(雰囲気圧力)の上限値は、例えば、1MPa以下、又は0.9MPa以下であってよい。窒化工程における圧力の上限値を上記範囲内とすることで、窒化ホウ素粉末の製造コストの上昇を抑制することができる。当該圧力は上述の範囲内で調整してよく、例えば、0.6~1MPa、又は0.8~0.9MPaであってよい。
窒化工程における窒素加圧雰囲気の窒素ガス濃度は、例えば、95体積%以上、98体積%以上、又は99.9体積%以上であってよい。窒化工程における焼成時間は、窒化が十分進む範囲であれば特に限定されず、例えば、6~30時間、8~25時間、又は10~20時間であってよい。
結晶化工程では、窒化工程で得られた上記焼成物と、ホウ酸を含むホウ素含有化合物とを含む混合粉末を加熱して、六方晶窒化ホウ素の一次粒子を生成し、一次粒子が凝集して構成される凝集粒子を含む粉末を得る。すなわち、結晶化工程において、炭窒化ホウ素を脱炭化させるとともに、所定の大きさの鱗片状の一次粒子を生成させつつ、これらを凝集させて凝集粒子を含む粉末を得る。なお、窒化ホウ素の成長は、炭窒化ホウ素の一次粒子内で発生することから、窒化工程において形成された粒子の凝集状態は、結晶化工程において維持され得る。
ホウ素含有化合物としては、ホウ酸に加えて、酸化ホウ素等が挙げられる。結晶化工程で加熱する混合粉末は、公知の添加物を含有してもよい。
混合粉末において、炭窒化ホウ素を含む上記焼成物とホウ素含有化合物との配合割合は、モル比に応じて適切に調整可能である。混合粉末におけるホウ素含有化合物の含有量は、上記焼成物100質量部に対して、例えば、50~300質量部、100~300質量部、100~250質量部、又は150~250質量であってよい。ホウ素含有化合物を上記焼成物中の炭窒化ホウ素に対して過剰量となるように含有させ、加熱処理することで炭化ホウ素の未反応物及び炭窒化ホウ素を十分に反応させて、上記未反応物等の含有量をより低減することができる。
結晶化工程において混合粉末を加熱する加熱温度は、例えば、1800~2200℃、2000~2200℃、又は2000~2100℃であってよい。加熱温度を上記範囲内とすることで、粒成長をより十分に進行させることができる。結晶化工程は、常圧(大気圧)の雰囲気下で加熱してもよく、加圧して大気圧を超える圧力で加熱してもよい。加圧する場合には、例えば0.5MPa以下、又は0.3MPa以下であってよい。
結晶化工程における加熱時間は、例えば、0.5~40時間、0.5~35時間、又は1~30時間であってよい。加熱時間が短すぎると粒成長が十分に進行しない傾向にある。一方、加熱時間が長すぎると工業的に不利になる傾向にある。
解砕工程では、結晶化工程で得られた粉末を解砕することで、窒化ホウ素粉末を得る。本開示に係る製造方法では、原料粉末として粒度を調製した炭化ホウ素粉末を用いることで3次凝集等の抑制が可能となっていることから、解砕工程における条件を比較的緩やかなものとすることができる。これによって、解砕工程における2次粒子の崩壊を抑制し、充填材としての充填性に優れたものとすることができる。また、2次粒子を十分に保持できることから、六方晶窒化ホウ素の一次粒子の形状に由来する異方性を抑制し、放熱フィラーとしてより優れたものとすることができる。
解砕工程では、一般的な粉砕機又は解砕機を用いることができる。粉砕機又は解砕機としては、例えば、グラインダーミル、ボールミル、振動ミル、及びジェットミル等を用いることができる。解砕は、2次粒子の崩壊をより抑制する観点から、媒体等を用いた衝撃による粉砕よりも、せん断力を加えることによる粉砕であることが望ましい。このような観点から、粉砕機又は解砕機としては、より緩やかな条件での解砕が可能なグラインダーミルを用いることが好ましい。
上述の製造方法は、窒化工程、結晶化工程及び解砕工程に加えて、他の工程を更に有してもよい。他の工程としては、例えば、酸化工程、及び分級工程等が挙げられる。
酸化工程は、窒化工程で得られる上記焼成物を、酸素分圧が20%以上である雰囲気下において加熱処理する。酸化工程によって、上記焼成物に含まれる炭素の一部を脱炭し、続く結晶化工程におけるホウ素源の使用量を低減させることができる。
酸化工程における酸素を含む雰囲気は、酸素分圧が20%以上である雰囲気であってよく、例えば、大気等であってよい。酸素分圧の上限値は、例えば、70%以下、60%以下、又は50%以下であってよい。なお、本明細書における酸素分圧は、雰囲気を占めるガスの標準状態における酸素の分圧を意味し、酸素濃度計によって測定される値である。酸素分圧計としては、例えば、株式会社さ下記コーポレーション製の「G1690」(製品名)等を使用できる。
酸化工程における圧力(雰囲気圧力)は、例えば、0.1~0.5MPa、0.1~0.3MPa、又は0.1~0.2MPaであってよく、大気圧(0.1MPa)であってよい。
酸化工程における加熱温度の下限値は、例えば、600℃以上、650℃以上、又は700℃以上であってよい。当該加熱温度の下限値が上記範囲内であることで、上記焼成物中の炭素の含有量をより低減することができる。酸化工程における加熱温度の上限値は、例えば、1000℃以下、又は950℃以下であってよい。当該加熱温度の上限値が上記範囲内であることで、上記焼成物中の炭窒化ホウ素の酸化をより抑制できる。
酸化工程における加熱時間の下限は、例えば、6時間以上、又は7時間以上であってよい。当該加熱時間の下限値が上記範囲内であることで、上記焼成物中の炭素含有量を充分に低減することが可能となる。また、酸化工程における加熱時間の上限は特に限定されないが、例えば、20時間以下、又は15時間以下であってよい。当該加熱時間の上限が上記範囲内であると、当該工程の処理効率が低下することをより十分に抑制できる。
分級工程は、解砕工程において解砕されて得られた窒化ホウ素粉末を更に分級する。分級工程は、上記窒化ホウ素粉末に対して、1又は2以上の分級処理を行ってもよく、小粒子径の粉末分の過粉砕を抑制する観点から、望ましくは、2以上の分級処理を行う。分級処理を2回行う場合には、例えば、篩目の小さな篩によって1回目の分級を行い、篩上品に対して再度解砕処理を行ったうえで、1回目よりも篩目の大きな篩によって分級を行い、1回目と2回目との通篩した粉体を混合することで、所望の窒化ホウ素粉末を得てもよい。このような方法で窒化ホウ素付末の調製を行うことで、小粒子径の粉末分の過粉砕を抑制しつつ、粗大粒子の解砕をより確実に行うことができる。3回以上の分級処理を行う場合には、上述の2回目の分級操作によって得られる篩上品に対して再度解砕処理を行い、2回目と同じかそれよりも篩目の大きな篩を用いて分級を行うといった操作を繰り返し、最終的に、通篩した粉体を混合することで、所望の窒化ホウ素粉末とすることができる。
上述のようにして得られる窒化ホウ素粉末は、樹脂への充填性に優れることから充填材として好適に使用できる。樹脂組成物の一実施形態は、上述の窒化ホウ素粉末と樹脂とを含む。当該樹脂組成物は、放熱性に優れる樹脂シート等の樹脂成形体を調製するために好適に使用できる。上記樹脂シートは、例えば、放熱シートとして使用できる。樹脂シートの一実施形態は、樹脂と、充填材と、を含み、上記充填材が上述の窒化ホウ素粉末を含む。
窒化ホウ素粉末の含有量の下限値は、樹脂組成物の全体積を基準として、例えば、50体積%以上、55体積%以上、又は60体積%以上であってよい。窒化ホウ素粉末の含有量の下限値が上記範囲内であることで、樹脂組成物を成形して得られる樹脂シートの放熱性を向上させ、優れた放熱シートが得られ得る。窒化ホウ素粉末の含有量の上限値は、樹脂組成物の全体積を基準として、例えば、85体積%以下、80体積%以下、又は70体積%以下であってよい。窒化ホウ素粉末の含有量の上限値が上記範囲内であることで、樹脂組成物の成形時に内部に空隙が発生することをより抑制することができ、また絶縁性及び機械強度の低下を抑制することができる。
樹脂は、例えば、液晶ポリマー、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、アクリル樹脂、ポリオレフィン(ポリエチレン等)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、全芳香族ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、マレイミド変性樹脂、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)樹脂、AAS(アクリロニトリル-アクリルゴム・スチレン)樹脂、及びAES(アクリロニトリル・エチレン・プロピレン・ジエンゴム-スチレン)樹脂が挙げられる。
樹脂の含有量の下限値は、樹脂組成物の全体積を基準として、例えば、15体積%以上、20体積%以上、又は30体積%以上であってよい。樹脂の含有量の上限値は、樹脂組成物の全体積を基準として、例えば、50体積%以下、55体積%以下、又は45体積%以下であってよい。
樹脂組成物は、樹脂を硬化させる硬化剤を更に含有していてよい。硬化剤は、樹脂の種類によって適宜選択してよい。例えば、樹脂がエポキシ樹脂である場合、硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック化合物、酸無水物、アミノ化合物、及びイミダゾール化合物等が挙げられる。硬化剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上又は1質量部以上であってよく、15質量部以下又は10質量部以下であってよい。
以上、幾つかの実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。また、上述した実施形態についての説明内容は、互いに適用することができる。
以下、本開示について、実施例及び比較例を用いてより詳細に説明する。なお、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
[炭化ホウ素粉末の調製]
オルトホウ酸(日本電工株式会社製、以下、単に「ホウ酸」という。)100質量部と、アセチレンブラック(HS100、デンカ株式会社製)35質量部とをヘンシェルミキサーを用いて混合したのち、黒鉛ルツボ中に充填した。この黒鉛ルツボをアーク炉に入れ、アルゴン雰囲気で、2200℃にて5時間加熱し、塊状の炭化ホウ素(BC)粉末を合成した。合成した塊状の炭化ホウ素粉末をボールミルで15分間粉砕し、篩目が500μmの篩網を用いて篩分けし粗大粒子を除いた塊状の炭化ホウ素(BC)の粉末Aを調製した。
また、上記粉末Aの調製と同様にしてまず塊状の炭化ホウ素粉末を合成し、得られた塊状の炭化ホウ素粉末をボールミルで1時間粉砕し、篩目が250μmの篩網を用いて篩分けし粗大粒子を除いた塊状の炭化ホウ素(BC)の粉末Bを調製した。さらに、上記粉末Aの調製と同様にしてまず塊状の炭化ホウ素粉末を合成し、得られた塊状の炭化ホウ素粉末をボールミルで3時間粉砕し、篩目が75μmの篩網を用いて篩分けし粗大粒子を除いた塊状の炭化ホウ素(BC)の粉末Cを調製した。
上述のようにして得られた3種類のBCの粉末A、粉末B、及び粉末Cを質量比率で40:40:20となるような比率で混合することで、原料粉末となる炭化ホウ素粉末を調製した。混合して得られた炭化ホウ素粉末について測定したD10、D50、及びD90を表1に示す。
[炭窒化ホウ素粉末の調製]
得られた炭化ホウ素粉末を窒化ホウ素ルツボに充填した。当該ルツボを抵抗加熱炉内に静置し、0.85MPaの窒素ガスの雰囲気下で、2100℃、25時間、加熱することによって、炭窒化ホウ素(BCN)粉末を含む焼成物を得た(窒化工程)。
得られた焼成物を、マッフル炉内に静置し、大気雰囲気下で、700℃、5時間加熱すること(酸化工程)によって、加熱処理物を得た。
[窒化ホウ素粉末の作製]
上記加熱処理物及びホウ酸(ホウ素源)の合計量を基準として、ホウ素源であるホウ酸の含有量が30質量部となるようにホウ酸を添加し、ヘンシェルミキサーによって混合して、混合物を得た。次に、混合物を窒化ホウ素製のルツボに充填し、当該ルツボを抵抗加熱炉内に静置して、圧力13kPaの窒素ガスの雰囲気で、室温から2000℃まで昇温し、2000℃において5時間保持することで加熱処理を行った(結晶化工程)。これによって脱炭して、一次粒子が凝集した凝集粒子を有する粉末を合成した。
得られた粉末をグラインダーミルによって解砕することによって、窒化ホウ素粉末を得た(解砕工程)。得られた粉末を、まず、篩目が45μmの篩網を用いて分級し、篩上に残った粉末をグラインダーミルによって再度解砕した。解砕した粉末を篩目が90μmの篩網を用いて分級した。2度の通篩で篩下に得られた粉末を混合し、窒化ホウ素粉末を得た(分級工程)。参考のため、実施例1で調製した窒化ホウ素粉末のSEM画像を図2に示す。
(実施例2)
炭化ホウ素の粉末Aを調製するための粉砕時間を5分間に変更し、炭化ホウ素の粉末Bを調製するための粉砕時間を30分間とし、用いた篩網の篩目を500μmに変更し、さらに炭化ホウ素の粉末Cを調製するための粉砕時間を1時間に変更することによって、表1に示される粒度分布を有する炭化ホウ素粉末を調製し、これを原料粉末として使用したこと、及び、分級工程における2回目の分級を篩目が150μmの篩網を用いて行ったこと以外は、実施例1と同様にして、窒化ホウ素粉末を得た。
(実施例3)
解砕工程においてグラインダーミルに替えてボールミルを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、窒化ホウ素粉末を得た。
(比較例1)
合成した塊状の炭化ホウ素粉末をボールミルで1時間粉砕し、篩目が250μmの篩網を用いて篩分けし粗大粒子を除くことで、表1に示される粒度分布を有する炭化ホウ素粉末を調製し、これを原料粉末として使用したこと以外は、実施例1と同様にして、窒化ホウ素粉末を得た。参考のため、比較例1で調製した窒化ホウ素粉末のSEM画像を図3に示す。
(比較例2)
合成した塊状の炭化ホウ素粉末をボールミルで30分間粉砕し、篩目が500μmの篩網を用いて篩分けし粗大粒子を除くことで、表1に示される粒度分布を有する炭化ホウ素粉末を調製し、これを原料粉末として使用したこと、及び、篩目が45μmの篩網を用いた分級は実施せず1回目の解砕後に篩目が150μmの篩網を用いて分級し窒化ホウ素粉末を得たこと以外は、実施例1と同様にして、窒化ホウ素粉末を得た。
(比較例3)
実施例1と同様に調製した炭化ホウ素の粉末A、粉末B、及び粉末Cを、質量比で30:30:40(平均粒子径がより小さな粉末Cの混合比が増大)となるような比率で混合することで、表1に示される粒度分布を有する炭化ホウ素粉末を調製し、これを原料粉末として使用したこと以外は、実施例1と同様にして、窒化ホウ素粉末を得た。
<窒化ホウ素粉末の評価>
実施例1~3、及び比較例1~3で得られた窒化ホウ素粉末のそれぞれについて、後述する方法によって、凝集粒子の平均面積包絡度、配向性指数、凝集粒子の圧壊強さ、及び平均粒子径を評価した。結果を表1に示す。
[平均面積包絡度]
凝集粒子の平均面積包絡度は、以下の方法に沿って測定した。測定には、画像式粒度分布測定装置(Malvern Panalytical社製、商品名:Morphologi 4)を用いた。まず、当該測定装置に付属のサンプル分散ユニット(Sample Dispersion unit:SDU)にて、ガラス板上に窒化ホウ素粉末を分散させた。上記装置によって、分散した窒化ホウ素粉末の画像を取得した。そして、粒子の全体が確認できる凝集粒子について、解析ソフト(Malvern Panalytical社製、商品名:Morphologi)によって各凝集粒子の投影面積A及び包絡面積Aの値を測定した。測定された投影面積A及び包絡面積Aの値に基づいて、面積包絡度(A/Aの値)を算出した。粒子の全体が確認できる凝集粒子10000個について同様の測定を行い、その算術平均値を平均面積包絡度とした。
[配向性指数]
窒化ホウ素粉末の配向性指数は、以下の方法に沿って測定した。測定には、X線回折装置(株式会社リガク製、商品名:「ULTIMA-IV」)を用いた。まず、X線回折装置に付属している深さ0.2mmの凹部を有するガラスセルの凹部に六方晶窒化ホウ素粉末を充填し固めることで測定試料を作製した。測定試料にX線を照射して、ベースライン補正を行った後の、測定資料の(002)面と(100)面とのピーク強度を決定し、この比[I(002)/I(100)]を配向性指数とした。
[凝集粒子の圧壊強さ]
凝集粒子の圧壊強さは、JIS R 1639-5:2007「ファインセラミックス-か(顆)粒特性の測定方法-第5部:単一か粒圧壊強さ」の記載に準拠して測定した。測定には、微小圧縮試験器(株式会社島津製作所製、製品名「MCT-W500」)を用いた。なお、測定は、20個以上の凝集粒子に対して行い、累積破壊率63.2%時点の値を算出した。
[平均粒子径]
窒化ホウ素粉末の平均粒子径は、JIS Z 8825:2013「粒子径解析-レーザー回折・散乱法」に記載の方法に準拠して測定した。測定には、レーザー回折散乱法粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製、製品名:「LS-13 320」)を使用した。なお、測定の際はホモジナイザーによる処理を行わずに、凝集粒子が存在する状況で測定を行った。
<窒化ホウ素粉末の充填材としての評価>
実施例1~3、及び比較例1~3で得られた窒化ホウ素粉末のそれぞれについて、樹脂に充填して使用する充填材としての性能を後述する方法に沿って評価した。結果を表1に示す。なお、表1では、各実施例及び比較例の性能を、比較例1の性能を基準としてみるように、比較例1の評価結果を1.0とする相対値で示した。
[充填性の評価:樹脂組成物の粘度]
窒化ホウ素粉末を充填材として用いた際の充填性の評価を行った。具体的には、シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製、商品名:KF96-100)に対して、樹脂組成物全量を基準として20体積%となるように上記窒化ホウ素粉末を配合し、自転・公転ミキサー(シンキー社製、商品名:あわとり廉太郎RE-310)を使用し、2000rpmで3分間撹拌することによってスラリーを調製した。レオメーター(日本シグナルヘグナー社製、商品名:MCR300、円形平板(直径:25mmφ)、ギャップ:1m)を用いて、上記スラリーの粘度を測定した。なお、粉末を配合した場合の樹脂組成物の粘度が高いと取扱い性や成形性に劣ることから、粉末の配合量を減少させる必要が生じ、成形体中に充填可能な粉末の量を増加させることが困難になる傾向にある。そのため、本評価によって得られるせん断粘度は低い方が充填性の観点から望ましい。
[放熱性の評価:樹脂シートの熱伝導率]
窒化ホウ素粉末を充填材とする樹脂組成物から樹脂シートを調製し、樹脂シートを対象として、放熱性の評価を行った。まず、ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製、HP4032)100質量部と、硬化剤としてイミダゾール化合物(四国化成社製、2E4MZ-CN)10質量部との混合物に対し、窒化ホウ素粉末が60体積%となるように、窒化ホウ素粉末を混合して樹脂組成物を得た。樹脂との混練には株式会社シンキー製の「あわとり練太郎」(商品名)を用いた。混練の条件は、1600rpmで5分間とした。得られた混合物をポリエチレンテレフタレート(PET)製シートの上に塗布した後、500Paの減圧条件で、脱泡を10分間行った。次に、エポキシ樹脂組成物を、厚さ0.05mmのPET製フィルム上に、硬化後の厚さが0.10mmになるように塗布し、100℃で15分間加熱し乾燥させた。上述のPET製シートの混合物の塗布面と、上記PET製フィルムのエポキシ樹脂組成物の塗布面とが向かい合うように積層して、プレス機によって面圧160kgf/cmをかけながら180℃で180分間加熱し、硬化することで、厚さ0.1mmの放熱シートを得た。
上述の放熱シートを対象として、熱伝導率の評価を行った。熱伝導率H(単位:W/(m・K))は、熱拡散率A(単位:m/秒)、密度B(単位:kg/m)、及び比熱容量C(単位:J/(kg・K))の値から、H=A×B×Cの式に基づいて算出した。熱拡散率Aは、放熱シートを縦:10mm、横:10mm、厚さ:0.3mmになるように作製し、レーザーフラッシュ法によって求めた。測定装置は、キセノンフラッシュアナライザ(NETZSCH社製、商品名:LFA447NanoFlash)を用いた。密度Bは、アルキメデス法を用いて求めた。比熱容量Cは、DSC(株式会社リガク製、商品名:ThermoPlusEvoDSC8230)を用いて求めた。放熱シートとしては優れたものなり得るため、熱伝導率が高いことで望ましい。
Figure 2024022830000001
本開示によれば、樹脂に対する充填材として用いることによって、充填性に優れ、且つ放熱性に優れる樹脂成形体を調製可能な窒化ホウ素粉末、及びその製造方法を提供できる。
2…凝集粒子。

Claims (5)

  1. 六方晶窒化ホウ素の一次粒子と、六方晶窒化ホウ素の一次粒子が凝集して構成される凝集粒子と、を含み、
    前記凝集粒子の平均面積包絡度が0.93以上である、窒化ホウ素粉末。
  2. 配向性指数が12以下である、請求項1に記載の窒化ホウ素粉末。
  3. 前記凝集粒子の圧壊強さが8MPa以上である、請求項1又は2に記載の窒化ホウ素粉末。
  4. 平均粒子径が25~65μmである、請求項1又は2に記載の窒化ホウ素粉末。
  5. 炭化ホウ素粉末を、窒素加圧雰囲気下で焼成して、炭窒化ホウ素を含む焼成物を得ることと、
    前記焼成物と、ホウ酸を含むホウ素含有化合物とを含む混合粉末を加熱して六方晶窒化ホウ素の一次粒子を生成し、一次粒子が凝集して構成される凝集粒子を含む粉末を得ることと、
    前記粉末を解砕することと、を有し、
    前記炭化ホウ素粉末は、体積基準の累積粒度分布曲線における10%累積径が3μm以上であり、且つ、前記累積粒度分布曲線における10%累積径をD10とし、50%累積径をD50とし、90%累積径をD90としたときに、(D90-D10)/D50の値が2以上である、窒化ホウ素粉末の製造方法。
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