JP2023098499A - 接合用シート、及び接合体の製造方法 - Google Patents

接合用シート、及び接合体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】Niを適切に接合する。【解決手段】接合用シート10は、銅粒子12と、カルボン酸、カルボン酸塩、アミンまたはアミン塩のうち少なくとも1種の添加剤30とを含み、添加剤30と銅粒子12との含有量比が、質量比で1:95~5:95であり、銅粒子12のBET径が500nm以下であり、添加剤30は、炭素の数が2個以上8個以下のカルボン酸、カルボン酸塩、アミンまたはアミン塩のうち少なくとも1種である。【選択図】図1

Description

本発明は、接合用シート、及び接合体の製造方法に関する。
電子部品の組立てや実装時などにおいて、2つ以上の部品を接合させる場合、接合材が用いられることがある。例えば特許文献1には、接合材として、銅粒子と、沸点が150℃以上の溶媒とを混合して常温でプレスして形成された接合用シートが記載されている。
特開2021-116463号公報
このような接合用シートは、Niを適切に接合することが求められている。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、Niを適切に接合可能な接合用シート、及び接合体の製造方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る接合用シートは、銅粒子と、カルボン酸、カルボン酸塩、アミンまたはアミン塩のうち少なくとも1種の添加剤とを含み、前記添加剤と前記銅粒子との含有量比が、質量比で1:95~5:95であり、前記銅粒子のBET径が500nm以下であり、前記添加剤は、炭素の数が2個以上8個以下の、カルボン酸、カルボン酸塩、アミンまたはアミン塩のうち少なくとも1種である。
前記添加剤は、クエン酸、エチルヘキサン酸、エチルヘキシルアミンのうち少なくとも1種であることが好ましい。
多価アルコールの溶媒を更に含むことが好ましい。
前記溶媒がポリエチレングリコールであることが好ましい。
前記溶媒と前記銅粒子との含有量比が、質量比で1:95~5:95であることが好ましい。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る接合体の製造方法は、前記接合用シートを第1の部材上に配置するステップと、前記接合用シート上に第2の部材を配置することで、第1の部材と第2の部材との間に、前記接合用シートが配置された積層体を得るステップと、前記積層体を加熱することで、前記第1の部材と前記第2の部材が接合された接合体を製造するステップと、を含む。
本発明によれば、Niを適切に接合することができる。
図1は、本実施形態に係る接合用シートの模式図である。 図2は、本実施形態に係る接合用シートの製造方法を説明するフローチャートである。 図3は、接合体の製造方法を説明するための模式図である。 図4は、各例の接合用シートの特性および評価結果を示す表である。
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
図1は、本実施形態に係る接合用シートの模式図である。図1に示すように、本実施形態に係る接合用シート10は、銅粒子12と、溶媒20と、添加剤30とを含む。
(銅粒子)
銅粒子12は、BET径が500nm以下であり、50nm以上300nm以下であることが好ましい。BET径は、銅粒子12を真球体もしくは立方体とみなして、BET法により求められる銅粒子のBET比表面積と真密度とから算出される粒子径である。具体的には、後述する実施例に記載の方法により求めることができる。
銅粒子12のBET径が500nm以下であることで、反応面積を大きくして、焼結性を高くして適切に接合できる。銅粒子12のBET径が50nm以上であると、強固な凝集体を形成しにくい。このため、仮焼結後の銅粒子12の表面を後述の溶媒20によって均一に被覆することができる。一方、銅粒子12のBET径が300nm以下であると、反応面積が大きく、加熱による焼結性が高くなるので、強固な接合層を形成可能となる。銅粒子12のBET径は、80nm以上200nm以下の範囲内にあることが好ましく、80nm以上170nm以下の範囲内にあることが特に好ましい。
銅粒子12のBET比表面積は、2.0m/g以上8.0m/g以下の範囲内にあることが好ましく、3.5m/g以上8.0m/g以下の範囲内にあることがより好ましく、4.0m/g以上8.0m/g以下の範囲内にあることが特に好ましい。また、銅粒子12の形状は、球状に限らず、針状、扁平な板状でもよい。
銅粒子12は、表面が、有機物の膜である有機保護膜で被覆されていることが好ましい。有機保護膜で被覆されていることにより、銅粒子12の酸化が抑制され、銅粒子12の酸化による焼結性の低下がさらに起こりにくくなる。なお、銅粒子12を被覆する有機保護膜は、溶媒20によって形成されるものでなく、溶媒20由来のものでないといえる。また、銅粒子12を被覆する有機保護膜は、銅の酸化により形成される酸化銅の膜ではないともいえる。
銅粒子12が有機保護膜で被覆されていることは、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)を用いて、銅粒子12の表面を分析することに確認することができる。このため、本実施形態において、銅粒子12は、飛行時間型二次イオン質量分析法を用いて、表面を分析することによって検出されるCuイオンの検出量に対するC イオンの検出量の比(C /Cu比)が0.001以上であることが好ましい。C /Cu比は、0.05以上0.2以下の範囲内にあることがさらに好ましい。なお、本分析における銅粒子12の表面とは、銅粒子12から有機保護膜を除去した際の銅粒子12の表面でなく、被覆している有機保護膜を含んだ銅粒子12の表面(すなわち有機保護膜の表面)を指す。
銅粒子12は、飛行時間型二次イオン質量分析法を用いて、表面を分析することによってC イオンやC以上のイオンが検出されてもよい。Cuイオンの検出量に対するC イオンの検出量の比(C /Cu比)は0.001以上であることが好ましい。また、Cuイオンの検出量に対するC以上のイオンの検出量の比(C以上のイオン/Cu比)は0.005未満であることが好ましい。
飛行時間型二次イオン質量分析法において検出されるC イオンとC イオンとC以上のイオンは、銅粒子12の表面を被覆している有機保護膜に由来する。このためC /Cu比とC /Cu比のそれぞれが0.001以上であると、銅粒子12の表面が酸化しにくくなり、かつ銅粒子12が凝集しにくくなる。また、C /Cu比及びC /Cu比が0.2以下であると、銅粒子12の焼結性を過度に低下させずに銅粒子12の酸化と凝集を抑制でき、さらに加熱時における有機保護膜の分解ガスの発生を抑えることができるので、ボイドが少ない接合層を形成することができる。銅粒子12の保存中の耐酸化性をより一層向上し、かつ低温度での焼結性をより一層向上させるために、C /Cu比及びC /Cu比は0.08以上0.16以下の範囲内にあることが好ましい。また、C以上のイオン/Cu比が0.005倍以上であると、粒子表面に脱離温度が比較的高い有機保護膜が多く存在するため、結果として焼結性が十分に発現せず強固な接合層が得られにくい。C以上のイオン/Cu比は0.003倍未満であることが好ましい。
有機保護膜は、クエン酸由来であることが好ましい。クエン酸由来の有機保護膜で被覆された銅粒子12の製造方法は後述する。銅粒子12の有機保護膜の被覆量は、銅粒子100質量%に対して0.5質量%以上2.0質量%以下の範囲内にあることが好ましく、0.8質量%以上1.8質量%以下の範囲内にあることがより好ましく、0.8質量%以上1.5質量%以下の範囲内にあることがさらに好ましい。有機保護膜の被覆量が0.5質量%以上であることによって、銅粒子12を有機保護膜により均一に被覆することができ、銅粒子12の酸化をより確実に抑制することができる。また、有機保護膜の被覆量が2.0質量%以下であることによって、加熱による有機保護膜の分解によって発生するガスにより、銅粒子の焼結体(接合層)にボイドが発生することを抑制することができる。有機保護膜の被覆量は、市販の装置を用いて測定することができる。例えば、差動型示差熱天秤TG8120-SL(RIGAKU社製)を用いて、被覆量を測定できる。この場合例えば、試料は、凍結乾燥により水分を除去した銅粒子を用いる。銅粒子の酸化を抑制するため窒素(G2グレード)ガス中で測定し、昇温速度は10℃/minとし、250℃から300℃まで加熱したときの重量減少率を、有機保護膜の被覆量と定義できる。すなわち、被覆量=(測定後の試料重量)/(測定前の試料重量)×100(wt%)である。測定は同一ロットの銅粒子で各々3回行い、相加平均値を被覆量としてよい。
銅粒子12は、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下、300℃の温度で30分加熱したときに、有機保護膜の50質量%以上が分解することが好ましい。クエン酸由来の有機保護膜は、分解時に二酸化炭素ガス、窒素ガス、アセトンの蒸発ガス及び水蒸気を発生する。
クエン酸由来の有機保護膜で被覆された銅粒子12は、例えば、以下のようにして製造することができる。先ず、クエン酸銅の水分散液を用意し、このクエン酸銅水分散液にpH調整剤を加えてpHを2.0以上7.5以下に調整する。次に、不活性ガス雰囲気下でこのpH調整したクエン酸銅水分散液に、還元剤として、銅イオンを還元できる1.0倍当量分以上1.2倍当量分以下のヒドラジン化合物を添加して混合する。得られた混合液を、不活性ガス雰囲気下で、得られた混合液を60℃以上80℃以下の温度に加熱し1.5時間以上2.5時間以下保持する。これにより、クエン酸銅から溶出した銅イオンを還元して銅粒子12を生成させると共に、この銅粒子12の表面にクエン酸由来の有機保護膜を形成させる。
クエン酸銅の水分散液は、蒸留水、イオン交換水のような純水に、粉末状のクエン酸銅を25質量%以上40質量%以下の濃度となるように添加し、撹拌羽を用いて撹拌し、均一に分散させることによって調製できる。pH調整剤としては、クエン酸三アンモニウム、クエン酸水素アンモニウム、クエン酸などが挙げられる。この中でマイルドにpH調整しやすいことからクエン酸三アンモニウムが好ましい。クエン酸銅水分散液のpHを2.0以上とするのは、クエン酸銅から溶出した銅イオンの溶出速度を速くして、銅粒子の生成を速やかに進行させ、目標とする微細な銅粒子12を得られるようにするためである。また、pHを7.5以下とするのは、溶出した銅イオンが水酸化銅(II)となることを抑制して、銅粒子12の収率を高くするためである。また、pHを7.5以下とすることによって、ヒドラジン化合物の還元力が過度に高くなることを抑制でき、目標とする銅粒子12が得られやすくなる。クエン酸銅水分散液のpHは4以上6以下の範囲内に調整することが好ましい。
ヒドラジン化合物によるクエン酸銅の還元は不活性ガス雰囲気下で行われる。液中に溶出した銅イオンの酸化を防止するためである。不活性ガスの例としては、窒素ガス、アルゴンガスなどが挙げられる。ヒドラジン化合物は、酸性下でクエン酸銅を還元するときに、還元反応後に残渣を生じないこと、安全性が比較的高いこと及び取扱いが容易であることなどの利点がある。このヒドラジン化合物としては、ヒドラジン一水和物、無水ヒドラジン、塩酸ヒドラジン、硫酸ヒドラジンなどが挙げられる。これらのヒドラジン化合物の中では、硫黄や塩素といった不純物となり得る成分を含まないヒドラジン一水和物、無水ヒドラジンが好ましい。
一般的にpH7未満の酸性液中で生成した銅は溶解してしまう。しかし本実施形態では、pH7未満の酸性液に還元剤であるヒドラジン化合物を添加混合し、得られた混合液中に銅粒子12を生成させる。このため、クエン酸銅から生成したクエン酸由来の成分が銅粒子12の表面を速やかに被覆するので、銅粒子12の溶解が抑制される。pHを調整した後のクエン酸銅の水分散液は、温度50℃以上70℃以下にして、還元反応を進行しやすくすることが好ましい。
不活性ガス雰囲気下でヒドラジン化合物を混合した混合液を60℃以上80℃以下の温度に加熱し1.5時間以上2.5時間以下保持するのは、銅粒子12を生成させると共に、生成した銅粒子12の表面に有機保護膜を形成し被覆するためである。不活性ガス雰囲気下で加熱保持するのは、生成した銅粒子12の酸化を防止するためである。出発原料であるクエン酸銅は通常35質量%程度の銅成分を含む。この程度の銅成分を含むクエン酸銅水分散液に還元剤であるヒドラジン化合物を添加して、上記の温度で昇温加熱し、上記の時間で保持することにより、銅粒子12の生成と、銅粒子12の表面での有機保護膜の生成とがバランスよく進行するので、銅粒子100質量%に対して、有機保護膜の被覆量が0.5質量%以上2.0質量%以下の範囲内にある銅粒子12を得ることができる。加熱温度が60℃未満で保持時間が1.5時間未満では、クエン酸銅が完全に還元せずに、銅粒子12の生成速度が遅くなりすぎて、銅粒子12を被覆する有機保護膜の量が過剰となるおそれがある。また加熱温度が80℃を超えかつ保持時間が2.5時間を超えると、銅粒子12の生成速度が速くなりすぎて、銅粒子12を被覆する有機保護膜の量が少なりすぎるおそれがある。好ましい加熱温度は65℃以上75℃以下であり、好ましい保持時間は2時間以上2.5時間以下である。
混合液で生成された銅粒子12を、不活性ガス雰囲気下で混合液から、例えば遠心分離機を用いて、固液分離して、凍結乾燥法、減圧乾燥法で乾燥することにより、表面が有機保護膜で被覆された銅粒子12を得る。この銅粒子12は、表面が有機保護膜で被覆されているため、接合用シート10として用いるまで、大気中に保存しても酸化しにくくなる。
(溶媒)
溶媒20は、銅粒子12に対するバインダーとして作用する。溶媒20は、任意のものであってよいが、有機溶媒であることが好ましく、多価アルコールであることがより好ましい。
溶媒20は、沸点が150℃以上であることが好ましく、沸点が200℃以下であることが好ましい。溶媒20の沸点は、150℃以上300℃以下であることがより好ましく、200℃以上250℃以下であることが更に好ましい。また、溶媒20は、分子量が100以上1000以下の範囲内であることが好ましく、200以上800以下の範囲内にあることがより好ましく、200以上600以下の範囲内にあることが特に好ましい。また、溶媒は、末端に還元性基を有する化合物であることが好ましい。還元性基は水酸基であることが好ましい。また、溶媒20は、誘電率が4以上80以下であることが好ましく、10以上45以下であることがより好ましく、20以上40以下であることが更に好ましい。なお、誘電率は、液体用誘電率測定計(日本ルフト社製、Model 871)で測定してよい。
溶媒20としては、例えば、ジオール化合物、トリオール化合物を用いることができる。ジオール化合物の例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコールを挙げることができる。トリオール化合物の例としては、グリセリン、ブタントリオール、ポリオキシプロピレントリオールを挙げることができる。これらの有機溶媒及び高分子溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、溶媒20は必須の成分でなく、接合用シート10に含まれていなくてよい。
(添加剤)
添加剤30は、カルボン酸、カルボン酸塩、アミンまたはアミン塩のうち少なくとも1種である。添加剤30は、炭素の数が2個以上8個以下のカルボン酸、カルボン酸塩、アミンまたはアミン塩のうち少なくとも1種である。すなわち、添加剤30は、炭素の数が2個以上8個以下のカルボン酸と、炭素の数が2個以上8個以下のカルボン酸塩と、炭素の数が2個以上8個以下のアミンと、炭素の数が2個以上8個以下のアミン塩との、少なくとも1つを含むといえる。ここでの炭素の数とは、添加剤の化学式におけるCの数を指す。また、添加剤30は、クエン酸、エチルヘキサン酸、エチルヘキシルアミンのうち少なくとも1種であることがより好ましい。添加剤30としてこのような材料を用いることで、Niを適切に接合できる。
(接合用シートの特性)
接合用シート10において、溶媒20と銅粒子12との含有量比が、質量比で1:95~5:95(=溶媒:銅粒子)であることが好ましく、1.5:95~4.5:95であることがより好ましく、2:95~4:95であることが更に好ましい。なお例えば、溶媒20と銅粒子12との含有量比が、質量比で1:95~5:95とは、溶媒20の含有量が90質量%以上95質量%以下の範囲内にあり、銅粒子12の含有量が1質量%以上5質量%以下の範囲内にあることを指し、他の含有量比についても同様の意味となる。
接合用シート10において、添加剤30と銅粒子12との含有量比が、質量比で1:95~5:95(=添加剤:銅粒子)であることが好ましく、1.5:95~4.5:95であることがより好ましく、2:95~4:95であることが更に好ましい。
接合用シート10において、添加剤30と溶媒20との含有量比が、質量比で1:5~3:3(=添加剤:溶媒)であることが好ましく、1.5:4.5~3:3であることがより好ましく、2:4~3:3であることが更に好ましい。
接合用シート10は、緻密度が50%以上90%以下の範囲内にあることが好ましい。緻密度は、銅粒子2が空間的に接合用シート1を占める割合である。緻密度が50%以上であると、銅粒子2同士の密着性が高くなるので、緻密でボイドが少ない接合層をより形成しやすくなる。また、緻密度が90%以下であると、銅粒子2の表面を溶媒3で覆うことができるので、銅粒子2の酸化が起こりにくくなり、銅粒子の酸化による焼結性の低下をより抑制することができる。緻密度は、55%以上75%以下の範囲内にあることがより好ましく、60%以上70%以下の範囲内にあることが特に好ましい。接合用シート1の緻密度は、接合用シート1の断面を、SEM(走査型電子顕微鏡)を観察し、得られたSEM画像を2値化して、銅粒子2の部分と溶媒3を含む空間部分とに分けることによって算出することができる。具体的には、後述する実施例に記載の方法により算出することができる。
接合用シート10の形状やサイズは、特に制限はない。接合用シート10は、例えば、直径が1mm以上50mmの円形シート、一辺が1mm以上50mm以下の矩形シートであってもよい。接合用シート10の厚さは、特に制限はないが、50μm以上1000μm以下の範囲内にあることが好ましい。
(接合用シートの製造方法)
図2は、本実施形態に係る接合用シートの製造方法を説明するフローチャートである。図2に示すように、本製造方法においては、銅粒子12と溶媒20と添加剤30を準備して(ステップS10)、準備した銅粒子12と溶媒20と添加剤30とを混合する(ステップS12)。本工程においては、銅粒子12と溶媒20と添加剤30との含有割合が、上記で規定した範囲となるように、銅粒子12と溶媒20と添加剤30とを混合してよい。銅粒子12と溶媒20と添加剤30との混合は任意の方法で行ってよいが、例えば、自転公転ミキサーやプラネタリーミキサーを用いることができる。
次に、銅粒子12と溶媒20と添加剤30との混合物を用いて、接合用シート10を成形する(ステップS14)。本工程では、銅粒子12と溶媒20と添加剤30との混合物を、常温下において所定圧力で所定時間の間加圧してシート状に成型することで、接合用シート10とする。常温とは室温を指してよいが、それに限られず、銅粒子12の焼結が進行しない程度の温度(例えば100℃以下)であってよい。またここでの所定圧力は、1MPa以上30MPa以下であることが好ましく、1MPa以上20MPa以下であることがより好ましく、1MPa以上10MPa以下であることが更に好ましい。またここでの所定温度は、40℃以上250℃以下であることが好ましく、40℃以上200℃以下であることがより好ましく、40℃以上150℃以下であることが更に好ましい。ここでの所定時間(所定圧力、所定温度で保持する時間)は、1分以上30分以下であることが好ましく、2分以上25分以下であることがより好ましく、3分以上15分以下あることが更に好ましい。
このような条件で接合用シート10を成形することで、接合用シート10を適切に製造できる。なお、混合物をシート状に成形する方法としては、加圧ローラを利用した圧延処理法、金型を利用したプレス処理法を用いることができる。なお、例えば混合物をシート状に成型した成形体を所定の形状に切断することで、接合用シート10としてもよい。
なお、接合用シート10は、以上の方法で製造されることに限られず、接合用シート10の製造方法は任意であってよい。
(接合体の製造方法)
次に、接合用シート10を用いて部材同士を接合することにより接合体100を製造する方法について説明する。図3は、接合体の製造方法を説明するための模式図である。本実施形態では、接合用シート10を接合層として、第1の部材Aと第2の部材Bとを接合して、接合体100を製造する。第1の部材Aと第2の部材Bは任意のものであってよいが、例えば、第1の部材Aと第2の基材Bとのうちの一方が基板で、他方が電子部品であってよい。すなわち、基板と電子部品とが接合層で接合された半導体モジュールを、接合体100として製造してよい。基板としては、特に限定されないが、例えば、無酸素銅板、銅モリブデン板、高放熱絶縁基板(例えば、DCB(Direct Copper Bond))、LED(Light Emitting Diode)パッケージなどの半導体素子搭載用基材等が挙げられる。また電子部品としては、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、ダイオード、ショットキーバリヤダイオード、MOS-FET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、サイリスタ、ロジック、センサー、アナログ集積回路、LED、半導体レーザー、発信器等の半導体素子が挙げられる。
なお、以下の説明では、1つの接合用シート10で第1の部材Aと第2の部材Bとを接合するが、それに限られず、複数の接合用シート10で第1の部材Aと第2の部材Bとを接合して接合体100としてもよいし、1つ又は複数の接合用シート10で3つ以上の部材を接合して接合体100としてもよい。
さらに言えば、本実施形態においては、第1の部材Aと第2の部材Bとの少なくとも一方は、表面にNiを有する。表面にNiを有するとは、部材全体がNiであってもよいし、表面にのみNiが被覆されていてもよい。また、ここでのNiは、Niの単体金属を指す。
接合体100は、第1の部材Aと第2の部材Bとの間に、接合用シート10を配置して、積層体を得て、得られた積層体を加熱して、接合用シート10の銅粒子12を焼結させて接合層を形成することにより製造することができる。積層体の加熱温度は、例えば、150℃以上300℃以下の範囲内にある。積層体の加熱時間としては、例えば、10分間以上1時間以下の範囲内にある。積層体の加熱は、不活性ガス雰囲気下、積層体の積層方向に積層体を加圧しながら行うことが好ましい。不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガスを用いることができる。積層体の加圧圧力は、0.5MPa以上30MPa以下の範囲内にあることが好ましい。
(効果)
以上説明したように、本実施形態に係る接合用シート10は、銅粒子12と、カルボン酸、カルボン酸塩、アミンまたはアミン塩のうち少なくとも1種の添加剤30とを含み、添加剤30と銅粒子12との含有量比が、質量比で1:95~5:95であり、銅粒子12のBET径が500nm以下であり、添加剤30は、炭素の数が2個以上8個以下のカルボン酸、カルボン酸塩、アミンまたはアミン塩のうち少なくとも1種である。本実施形態に係る接合用シート10は、炭素の数が2個以上8個以下の添加剤30を、この範囲含めることで、Niを適切に接合できる。また、500nm以下の銅粒子12とすることで、表面積を大きくして焼結性を向上させて、Niを適切に接合できる。
添加剤30は、クエン酸、エチルヘキサン酸、エチルヘキシルアミンのうち少なくとも1種であることが好ましい。このような添加剤30を用いることで、Niをより適切に接合できる。
接合用シート10は、多価アルコールの溶媒20を更に含むことが好ましい。溶媒20を用いることで、焼結を適切に進行させて、Niをより適切に接合できる。
溶媒20はポリエチレングリコールであることが好ましい。溶媒20としてポリエチレングリコール(PEG)を用いることで、焼結を適切に進行させて、Niをより適切に接合できる。
溶媒20と銅粒子12との含有量比は、質量比で1:95~5:95であることが好ましい。溶媒20がこの量含まれることで、焼結を適切に進行させて、Niをより適切に接合できる。
本実施形態に係る接合体100の製造方法は、接合用シート10を第1の部材A上に配置するステップと、接合用シート10上に第2の部材Bを配置することで、第1の部材と第2の部材との間に前記接合用シートが配置された積層体を得るステップと、積層体を加熱することで、第1の部材Aと第2の部材Bが接合された接合体100を製造するステップと、を含む。本製造方法によると、接合用シート10を用いることで、接合体100を適切に製造できる。
(実施例)
次に、実施例について説明する。図4は、各例の接合用シートの特性および評価結果を示す表である。
(実施例1)
(銅粒子の準備)
実施例1においては、クエン酸銅・2.5水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製)とイオン交換水とを、撹拌羽を用いて撹拌混合して、濃度30質量%のクエン酸銅の水分散液を調製した。次いで、得られたクエン酸銅水分散液に、pH調整剤としてのクエン酸アンモニウム水溶液を加えて、クエン酸銅水分散液のpHを5に調整した。次に、得られたクエン酸銅水分散液を50℃まで昇温し、その温度を保持しながら、窒素ガス雰囲気下で、銅イオンの還元剤としてのヒドラジン一水和物水溶液(2倍希釈)を一時に添加し、撹拌羽を用いて撹拌混合した。ヒドラジン一水和物水溶液の添加量は、銅イオン全量を還元させるのに必要な量に対して1.2倍当量分とした。得られた混合液を窒素ガス雰囲気下で70℃まで昇温し、その温度で2時間保持して、銅粒子を生成させた。生成した銅粒子を、遠心分離機を用いて回収した。回収した銅粒子を減圧乾燥法で乾燥して、銅粒子を作製した。
比表面積測定装置(カンタクローム・インスツルメンツ社製、QUANTACHROME AUTOSORB-1)を用いた。事前に脱気温度を50℃、脱気時間60分にて吸着ガスを除去した後、銅粒子の窒素ガスの吸着量を測定し、BET法により銅粒子の比表面積を求めた。得られた比表面積S(m/g)と、銅粒子の密度ρ(g/cm)とを用いて、下記の式よりBET径を算出した。
BET径(nm)=6000/(ρ(g/cm)×S(m/g))
(接合用シートの生成)
銅粒子と、溶媒としてのポリエチレングリコール(平均分子量200)と、添加剤としてのクエン酸とを混合した。図4に、銅粒子のBET径と、溶媒の種類と、添加剤の種類と、添加剤の炭素の数(添加剤の炭素数)とを示す。また、図4に、銅粒子と溶媒と添加剤との混合割合を、すなわち銅粒子と溶媒と添加剤との、質量比における含有比率(銅粒子:溶媒:添加剤)を、示す。
次いで、得られた混合物を、加圧ローラを有する粉末圧延機(大野ロール株式会社製、2RM-63K)を用いて、加圧ローラのギャップ幅500μmの条件で圧延処理することにより、厚さ500μmの接合用シートを得た。得られた接合用シートの緻密度を、下記の方法により測定した。
(接合用シートの緻密度)
接合用シートをエポキシ樹脂で封止した後、接合用シートの厚み方向に対して水平方向に、接合用シートを切断した。接合用シートの切断面に対して、機械研磨とクロスポリッシュ加工を施すことにより接合用シートの断面出しを行った。次いで、接合用シートの切断面を、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて50000倍で観察した。得られたSEM像を、画像処理ソフト(米国国立衛生研究所製ImageJ)を用いて2値化して、粒子部と空孔部とに分け、下記の式より緻密度を算出した。
緻密度(%)=(粒子部の総面積/(粒子部の総面積+空孔部の総面積))×100
緻密度は、無作為に撮影した10カ所のSEM像について測定した。図4に示した値は、10カ所のSEM像から算出された緻密度の平均値である。
(接合体の生成)
接合用シートを、市販のカッターナイフを用いて切断して、接合用シート片(2.5mm角×500μm厚)を作製した。30mm角×1mm厚のニッケルめっき無酸素銅基板の上に、上記の接合用シート片(2.5mm角×500μm厚)を配置した。次いで、その接合用シート片の上に、2.5mm角×1mm厚の無酸素銅ダミー素子を配置した。こうして、ニッケルめっき無酸素銅基板とり2.5mm角の無酸素銅ダミー素子とが接合用シート片を介して積層された積層体を得た。得られた積層体を、ダイボンダー(アルファーデザイン株式会社製、HTB-MM)を用いて、窒素ガス雰囲気下、加圧圧力5MPa、温度300℃の条件で、15分間保持することによりニッケルめっき無酸素銅基板とり2.5mm角の無酸素銅ダミー素子とが銅接合層を介して接合された接合体(サンプルA)を作製した。
(実施例2-7)
実施例2-7においては添加剤の種類、添加剤と溶剤の配合比、銅粒子の種類の少なくとも1つを図4のように変更した以外は実施例1と同様の方法で、接合体を得た。
(比較例1-4)
比較例1-4においては添加剤の種類、添加剤と溶剤の配合比、銅粒子の種類の少なくとも1つを図4のように変更した以外は実施例1と同様の方法で、接合体を得た。
(評価)
各例の接合体を評価した。評価としては、接合体のシェア強度を評価した。
接合体のシェア強度の評価においては、JIS Z 3198-7(鉛フリーはんだ試験方法-第7部:チップ部品のはんだ継手せん断試験方法)に準拠した方法によりシェア強度を測定した。具体的には、ボンドテスタ(Nordson DAGE社製、SERIES 4000)のツールを用いて無酸素銅ダミー素子に荷重を加え、無酸素銅ダミー素子が銅接合層から剥離したときの荷重(最大せん断荷重)を測定した。ツールの移動速度は50μm/secとし、ツールの先端と無酸素銅基板のギャップは50μmとした。得られた最大せん断荷重を、ニュートン換算し、銅接合層の面積(2.5mm×2.5mm)で除することに求めた値をシェア強度(単位:MPa)とした。接合体は7個作製し、それぞれの接合体についてシェア強度を測定した。その結果を図4に示す。
評価においては、接合体のシェア強度が30MPa以上を合格とし、シェア強度が30MPa未満を不合格とした。
図4に示すように、BET径が500nm以下の銅粒子に対して、炭素の数が2以上8以下となるカルボン酸、カルボン酸塩、アミンまたはアミン塩のうち少なくとも1種の添加剤を、添加剤と銅粒子との含有量比が質量比で1:95~5:95となるように加えた接合用シートを用いた実施例においては、シェア強度が30MPa以上であり、Niを適切に接合できることが分かる。一方、BET径が500nm以下を用いること、炭素の数が2以上8以下となるカルボン酸、カルボン酸塩、アミンまたはアミン塩のうち少なくとも1種の添加剤を用いること、添加剤と銅粒子との含有量比を上記範囲とすることとの、少なくとも1つを満たさない比較例においては、シェア強度が不合格であり、Niを適切に接合できないことが分かる。
(オプションの評価)
また、オプションの評価として、接合体のボイド率の評価を行った。
(接合体のボイド率)
得られた接合体(サンプルB)の銅接合層部分について、超音波探傷装置(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、FINE-SAT)を用いて超音波探傷像を測定した。得られた超音波探傷像を、画像処理ソフト(米国国立衛生研究所製ImageJ)を用いて2値化して、ボイド(空洞)と接合体(銅粒子焼結体)とに分け、下記の式よりボイド率を算出した。
ボイド率(%)=(ボイド部分の総面積/銅接合層の面積(10mm×10mm))×100
接合体は7個作製し、それぞれの接合体についてボイド率を測定した。その結果を図4に示す。
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
10 接合用シート
12 銅粒子
20 溶媒
30 添加剤

Claims (6)

  1. 銅粒子と、カルボン酸、カルボン酸塩、アミンまたはアミン塩のうち少なくとも1種の添加剤とを含み、
    前記添加剤と前記銅粒子との含有量比が、質量比で1:95~5:95であり、
    前記銅粒子のBET径が500nm以下であり、
    前記添加剤は、炭素の数が2個以上8個以下の、カルボン酸、カルボン酸塩、アミンまたはアミン塩のうち少なくとも1種である、接合用シート。
  2. 前記添加剤は、クエン酸、エチルヘキサン酸またはエチルヘキシルアミンのうち少なくとも1種である、請求項1に記載の接合用シート。
  3. 多価アルコールの溶媒を更に含む、請求項1又は請求項2に記載の接合用シート。
  4. 前記溶媒がポリエチレングリコールである、請求項3に記載の接合用シート。
  5. 前記溶媒と前記銅粒子との含有量比が、質量比で1:95~5:95である、請求項3又は請求項4に記載の接合用シート。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の接合用シートを第1の部材上に配置するステップと、
    前記接合用シート上に第2の部材を配置することで、第1の部材と第2の部材との間に、前記接合用シートが配置された積層体を得るステップと、
    前記積層体を加熱することで、前記第1の部材と前記第2の部材が接合された接合体を製造するステップと、
    を含む、
    接合体の製造方法。
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