JP2023093198A - 車両の制動制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】制動制御装置の異常を早期に補償すること。【解決手段】制動制御装置は、制動操作部材の操作量に応じて供給圧を出力する第1ユニットと、第1ユニットとホイールシリンダとの間に設けられ、供給圧を増加してホイール圧を出力する第2ユニットと、第1ユニットと第2ユニットとの間で信号伝達を行う通信バスと、を備える。第1ユニットは、操作量と供給圧とが独立する第1モードと連動する第2モードとのうちの何れか一方を選択する。第1ユニットが正常である場合には、第1ユニットは第1モードを選択し、供給圧の増加でホイール圧を増加する。第1ユニットの異常が確定する場合には、第1ユニットは第2モードを選択し、第2ユニットはホイール圧を供給圧から増加する。異常確定ではないが第1ユニットの異常が疑われる場合には、第1ユニットは第1モードを選択して正常状態の作動を継続し、第2ユニットはホイール圧を供給圧から増加する。【選択図】図4
Description
本開示は、車両の制動制御装置に関する。
特許文献1には、「液圧発生装置に何らかの異常が生じた場合であっても、運転者による制動操作感を良好に維持する」ことを目的に、「車両用制動力発生装置10は、ESB-ECU29を含むESB装置16と、VSA-ECU31を含むVSA装置18と、CAN通信媒体33と、を備える。VSA-ECU31は、ESB-ECU29を含むESB装置16の異常診断を行う第1の診断部75を備える。VSA-ECU31は、ESB装置16が異常状態にある旨の異常状態情報を取得した際に、VSA装置18により制動力を助ける助勢制御を行うと共に、この助勢制御を行うにあたり、異常状態情報が不確かな場合、VSA装置18によるブレーキ液圧に係る増加量を、異常状態情報が確かな場合の失陥時増加量と比べて低減させる」ことが記載されている。
特許文献1では、異常状態情報が確かな場合、及び、不確かな場合として、「装置が正常ではない旨の判定が下され、且つ、助勢要求に係る情報を取得した場合」、及び、「装置が正常ではない旨の判定が下されるが、助勢要求に係る情報を取得しない場合」が、夫々、例示されている。つまり、特許文献1では、装置の異常状態の判定は確定されているが、装置異常をバックアップする助勢要求が取得されていない場合には、該助勢要求が取得される場合に比較して、助勢制御(「バックアップ制御」ともいう)の制御量が低減されている。
ところで、制動制御装置の異常判定において、異常発生が確実であり、異常判定が確定されるまでには、或る程度の判定時間が必要となる。このため、制動制御装置の異常が早期に補償されることが望まれている。
本発明の目的は、車両の制動制御装置において、装置異常の補償が早期に行われ得るものを提供することである。
本発明に係る車両の制動制御装置(SC)は、制動操作部材(BP)の操作量(Sp)に応じて供給圧(Pm)を出力する第1ユニット(SA)と、前記第1ユニット(SA)とホイールシリンダ(CW)との間に設けられ、前記供給圧(Pm)を増加して前記ホイールシリンダ(CW)にホイール圧(Pw)を出力する第2ユニット(SB)と、前記第1ユニット(SA)と前記第2ユニット(SB)との間で信号伝達を行う通信バス(BS)と、を備える。
本発明に係る車両の制動制御装置(SC)では、前記第1ユニット(SA)は、前記操作量(Sp)と前記供給圧(Pm)とが独立する第1モード、及び、前記操作量(Sp)と前記供給圧(Pm)とが連動する第2モードのうちの何れか一方を選択する。そして、前記第1ユニット(SA)が正常である正常状態の場合には、前記第1ユニット(SA)は前記第1モードを選択するとともに前記供給圧(Pm)を増加することで前記ホイール圧(Pw)を増加する。また、前記第1ユニット(SA)が異常であることが確定する確定状態の場合には、前記第1ユニット(SA)は前記第2モードを選択し、前記第2ユニット(SB)は前記ホイール圧(Pw)を前記供給圧(Pm)から増加する。更に、前記確定状態ではないが前記第1ユニット(SA)の異常が疑われる特定状態の場合には、前記第1ユニット(SA)は前記第1モードを選択するとともに前記正常状態の作動を継続し、前記第2ユニット(SB)は前記ホイール圧(Pw)を前記供給圧(Pm)から増加する。
本発明に係る車両の制動制御装置(SC)は、前記操作量(Sp)を検出する操作量センサ(SP)と、前記供給圧(Pm)を検出する供給圧センサ(PM)と、を備える。そして、前記正常状態の場合には、前記第1ユニット(SA)は前記操作量(Sp)に基づいて目標圧(Pt)を演算し、前記供給圧(Pm)を前記目標圧(Pt)に近付けるように増加し、前記特定状態の場合には、前記第2ユニット(SB)は前記目標圧(Pt)、及び、前記供給圧(Pm)との偏差(hP)に相当する分だけ前記ホイール圧(Pw)を増加する。
制動制御装置SCでは、バックアップ制御に遷移する前に、補完制御が実行される。補完制御では、通常制御における第1制動ユニットSAの作動が継続されるとともに、第2制動ユニットSBでは、目標圧Ptと供給圧Pmとの偏差hPに基づいて、ホイール圧Pwが供給圧Pmから増加される。上記構成によれば、第1制動ユニットSAの異常確定の前に、その異常が疑われる時点で、補完制御の実行が開始されるので、異常が迅速に補償される。加えて、補完制御では、第1モードが選択されるので、運転者への違和が抑制される。
<構成部材等の記号、及び、記号末尾の添字>
以下の説明において、「CW」等の如く、同一記号を付された構成部材、演算処理、信号、特性、及び、値は、同一機能のものである。各車輪に係る記号末尾に付された添字「f」、「r」は、それが前後輪の何れの系統に関するものであるかを示す包括記号である。例えば、各車輪に設けられたホイールシリンダCWにおいて、「前輪ホイールシリンダCWf」、「後輪ホイールシリンダCWr」と表記される。更に、記号末尾の添字「f」、「r」は省略され得る。添字「f」、「r」が省略された場合には、各記号は総称を表す。例えば、「CW」は、車両の前後車輪に設けられたホイールシリンダの総称である。
以下の説明において、「CW」等の如く、同一記号を付された構成部材、演算処理、信号、特性、及び、値は、同一機能のものである。各車輪に係る記号末尾に付された添字「f」、「r」は、それが前後輪の何れの系統に関するものであるかを示す包括記号である。例えば、各車輪に設けられたホイールシリンダCWにおいて、「前輪ホイールシリンダCWf」、「後輪ホイールシリンダCWr」と表記される。更に、記号末尾の添字「f」、「r」は省略され得る。添字「f」、「r」が省略された場合には、各記号は総称を表す。例えば、「CW」は、車両の前後車輪に設けられたホイールシリンダの総称である。
マスタシリンダCMからホイールシリンダCWに至るまでの流体路において、マスタシリンダCMに近い側(ホイールシリンダCWから遠い側)が「上部」と称呼され、ホイールシリンダCWに近い側(マスタシリンダCMから遠い側)が「下部」と称呼される。また、第1、第2流体ユニットYA、YBにおける制動液BFの循環流KN、KLにおいて、第1、第2流体ポンプQA、QBの吐出部に近い側(吸入部から離れた側)が「上流側」と称呼され、第1、第2流体ポンプQA、QBの吸入部に近い側(吐出部から離れた側)が「下流側」と称呼される。
第1制動ユニットSAの第1流体ユニットYA、第2制動ユニットSBの第2流体ユニットYB、及び、ホイールシリンダCWは、流体路(連絡路HS)にて接続される。更に、第1、第2流体ユニットYA、YBでは、各種構成要素(UA等)が流体路にて接続される。ここで、「流体路」は、制動液BFを移動するための経路であり、配管、アクチュエータ内の流路、ホース等が該当する。以下の説明で、連絡路HS、還流路HK、戻し路HL、リザーバ路HR、入力路HN、サーボ路HV、減圧路HG等は流体路である。
<制動制御装置SCを搭載した車両JV>
図1の概略図を参照して、本発明に係る制動制御装置SCを搭載した車両JVの全体構成について説明する。車両JVは、駆動用の電気モータを備えたハイブリッド車両、又は、電気自動車である。車両JVには、回生装置KGが備えられる。回生装置KGは、ジェネレータGN、及び、回生装置用の制御ユニットEG(「回生コントローラ」ともいう)にて構成される。ジェネレータGNは、駆動用の電気モータでもある。回生制動では、電気モータ/ジェネレータGNが発電機として作動し、発電された電力が、回生コントローラEGを介して、蓄電池BGに蓄えられる。例えば、回生装置KGは、前輪WHfに備えられる。該構成では、回生装置KGによって、前輪WHfに回生制動力Fgが発生される。
図1の概略図を参照して、本発明に係る制動制御装置SCを搭載した車両JVの全体構成について説明する。車両JVは、駆動用の電気モータを備えたハイブリッド車両、又は、電気自動車である。車両JVには、回生装置KGが備えられる。回生装置KGは、ジェネレータGN、及び、回生装置用の制御ユニットEG(「回生コントローラ」ともいう)にて構成される。ジェネレータGNは、駆動用の電気モータでもある。回生制動では、電気モータ/ジェネレータGNが発電機として作動し、発電された電力が、回生コントローラEGを介して、蓄電池BGに蓄えられる。例えば、回生装置KGは、前輪WHfに備えられる。該構成では、回生装置KGによって、前輪WHfに回生制動力Fgが発生される。
車両JVには、前輪、後輪制動装置SXf、SXr(=SX)が備えられる。制動装置SXは、ブレーキキャリパCP、摩擦部材MS(例えば、ブレーキパッド)、及び、回転部材(例えば、ブレーキディスク)KTにて構成される。ブレーキキャリパCPには、ホイールシリンダCWが設けられる。ホイールシリンダCW内の液圧Pw(「ホイール圧」という)によって、摩擦部材MSが、各車輪WHに固定された回転部材KTに押し付けられる。これにより、車輪WHには制動力Fmが発生される。ホイール圧Pwによって発生される制動力が「摩擦制動力Fm」と称呼される。
車両JVには、制動操作部材BP、及び、各種センサ(SP等)が備えられる。制動操作部材(例えば、ブレーキペダル)BPは、運転者が車両JVを減速するために操作する部材である。車両JVには、制動操作部材BPの操作変位Spを検出する操作変位センサSPが設けられる。操作変位Spは、制動操作部材BPの操作量(制動操作量)を表示する状態量(状態変数)の1つであり、ブレーキバイワイヤ型の制動制御装置SCにおいては、運転者の制動意志を表す信号(即ち、制動指示)である。
操作変位センサSP(「操作量センサ」に相当)には、2つの検出部SPa、SPb(「第1、第2検出部」という)が含まれる。即ち、操作変位Spの検出が二重で行われ、操作変位センサSPが冗長化されてる。操作変位センサSPの第1検出部SPa(「第1変位検出部」という)は、第1変位信号線LSpaによって第1制動ユニットSA(特に、第1制御ユニットEA)に接続される。一方、操作変位センサSPの第2検出部SPb(「第2変位検出部」という)は、第2変位信号線LSpbによって第2制動ユニットSB(特に、第2制御ユニットEB)に接続される。従って、第1変位検出部SPaの信号Spa(「第1操作変位」という)は、直接的には、第1制御ユニットEAに入力される。一方、第2変位検出部SPbの信号Spb(「第2操作変位」という)は、直接的には、第2制御ユニットEBに入力される。例えば、「信号線LSpa、LSpb」は、信号伝達用の電線(ワイヤハーネス)である。
操作変位センサSPの他に、制動操作量を表す他の状態量として、ストロークシミュレータSSの液圧Ps(「シミュレータ圧」という)が採用される。シミュレータ圧Psは、シミュレータ圧センサPSによって検出される。シミュレータ圧センサPSは、シミュレータ圧信号線LPsによって第1制動ユニットSA(特に、第1制御ユニットEA)に接続される。従って、シミュレータ圧Psは、直接的には、第1制御ユニットEAに入力される。なお、シミュレータ圧Psは、制動操作部材BPの操作力に相当する状態量である。
車両JVには、各種センサが備えられる。アンチロックブレーキ制御、横滑り防止制御等の各車輪WHのホイール圧Pwを個別に制御する制動制御(「各輪独立制御」という)のために、車輪WHには、その回転速度(車輪速度)Vwを検出する車輪速度センサVWが備えられる。また、操舵量Sa(例えば、ステアリングホイールの操作角)を検出する操舵量センサ、車両のヨーレイトYrを検出するヨーレイトセンサ、車両の前後加速度Gxを検出する前後加速度センサ、及び、車両の横加速度Gyを検出する横加速度センサが備えられる(以上、非図示)。車輪速度Vw、操舵量Sa、ヨーレイトYr、前後加速度Gx、及び、横加速度Gyの各信号は、夫々の信号線を介して、第2制動ユニットSB(特に、第2制御ユニットEB)に入力される。
車両JVには、制動制御装置SCが備えられる。制動制御装置SCでは、2系統の制動系統として、所謂、前後型(「II型」ともいう)のものが採用される。制動制御装置SCによって、実際のホイール圧Pwが調整される。
制動制御装置SCは、2つの制動ユニットSA、SBにて構成される。第1制動ユニットSAは、第1流体ユニットYA、及び、第1制御ユニットEAにて構成される。第1流体ユニットYAは、駆動用蓄電池BGとは別の蓄電池BT(制動用蓄電池)を電力源として、第1制御ユニットEAによって制御される。第2制動ユニットSBは、第2流体ユニットYB、及び、第2制御ユニットEBにて構成される。第2流体ユニットYBは、第1制動ユニットSAと同様に、蓄電池BTを電力源として、第2制御ユニットEBによって制御される。
第1制動ユニットSA(特に、第1制御ユニットEA)、及び、第2制動ユニットSB(特に、第2制御ユニットEB)は、通信バスBSに接続される。また、通信バスBSには、回生装置KG(特に、回生制御ユニットEG)が接続される。「通信バスBS」は、両端が終端とされる通信線に複数の制御ユニット(「コントローラ」ともいう)がぶら下がるネットワーク構造を有している。通信バスBSによって、複数のコントローラ(EA、EB、EG等)の間で信号伝達が行われる。つまり、複数のコントローラは、通信バスBSに信号(検出値、演算値、制御フラグ等)を送信することができるとともに、通信バスBSから信号を受信することができる。例えば、通信バスBSとして、ビークルバス(車両内のコントローラを相互接続する内部通信ネットワーク)が採用され、CANがシリアル通信プロトコルに用いられる。通信バスBSは、通信線(例えば、CANバスケーブル)、及び、各コントローラにおける送受信用マイクロコントローラにて構成される。
<第1制動ユニットSA>
図2の概略図を参照して、制動制御装置SCの第1制動ユニットSA(「第1ユニット」に相当)の構成例について説明する。第1制動ユニットSAは、制動操作部材BP(ブレーキペダル)の操作に応じて、供給圧Pmを発生する。供給圧Pmは、連絡路HS(流体路)、及び、第2制動ユニットSBを介して、最終的には、ホイールシリンダCWに供給される。第1制動ユニットSAは、第1流体ユニットYA、及び、第1制御ユニットEAにて構成される。
図2の概略図を参照して、制動制御装置SCの第1制動ユニットSA(「第1ユニット」に相当)の構成例について説明する。第1制動ユニットSAは、制動操作部材BP(ブレーキペダル)の操作に応じて、供給圧Pmを発生する。供給圧Pmは、連絡路HS(流体路)、及び、第2制動ユニットSBを介して、最終的には、ホイールシリンダCWに供給される。第1制動ユニットSAは、第1流体ユニットYA、及び、第1制御ユニットEAにて構成される。
≪第1流体ユニットYA≫
第1流体ユニットYA(「第1アクチュエータ」ともいう)は、アプライ部AP、調圧部CA、及び、入力部NRにて構成される。
第1流体ユニットYA(「第1アクチュエータ」ともいう)は、アプライ部AP、調圧部CA、及び、入力部NRにて構成される。
[アプライ部AP]
制動操作部材BPの操作に応じて、アプライ部APから供給圧Pmが出力される。アプライ部APは、タンデム型のマスタシリンダCM、及び、プライマリ、セカンダリマスタピストンNM、NSにて構成される。
制動操作部材BPの操作に応じて、アプライ部APから供給圧Pmが出力される。アプライ部APは、タンデム型のマスタシリンダCM、及び、プライマリ、セカンダリマスタピストンNM、NSにて構成される。
タンデム型マスタシリンダCMには、プライマリ、セカンダリマスタピストンNM、NSが挿入される。マスタシリンダCMの内部は、2つのマスタピストンNM、NSによって、4つの液圧室Rmf、Rmr、Ru、Rsに区画される。前輪、後輪マスタ室Rmf、Rmr(=Rm)は、マスタシリンダCMの一方側底部、及び、マスタピストンNM、NSによって区画される。更に、マスタシリンダCMの内部は、マスタピストンNMのつば部Tuによって、サーボ室Ruと反力室Rsとに仕切られる。マスタ室Rmとサーボ室Ruとは、つば部Tuを挟んで、相対するように配置される。ここで、マスタ室Rmの受圧面積rmとサーボ室Ruの受圧面積ruとは等しくされる。
非制動時には、マスタピストンNM、NSは、最も後退した位置(即ち、マスタ室Rmの体積が最大になる位置)にある。該状態では、マスタシリンダCMのマスタ室Rmは、マスタリザーバRVに連通している。マスタリザーバRV(大気圧リザーバであり、単に「リザーバ」ともいう)の内部に制動液BFが貯蔵される。制動操作部材BPが操作されると、マスタピストンNM、NSが前進方向Ha(マスタ室Rmの体積が減少する方向)に移動される。該移動により、マスタ室RmとリザーバRVとの連通は遮断される。そして、マスタピストンNM、NSが、更に、前進方向Haに移動されると、前輪、後輪供給圧Pmf、Pmr(=Pm)が「0(大気圧)」から増加される。これにより、マスタシリンダCMのマスタ室Rmから、供給圧Pmに加圧された制動液BFが出力(圧送)される。供給圧Pmは、マスタ室Rmの液圧であるため、「マスタ圧」とも称呼される。
[調圧部CA]
調圧部CAによって、アプライ部APのサーボ室Ruに対して、サーボ圧Puが供給される。調圧部CAは、第1電気モータMA、第1流体ポンプQA、及び、調圧弁UAにて構成される。
調圧部CAによって、アプライ部APのサーボ室Ruに対して、サーボ圧Puが供給される。調圧部CAは、第1電気モータMA、第1流体ポンプQA、及び、調圧弁UAにて構成される。
第1電気モータMAによって、第1流体ポンプQAが駆動される。第1流体ポンプQAにおいて、吸入部と吐出部とは、還流路HK(流体路)によって接続される。また、第1流体ポンプQAの吸入部は、リザーバ路HRを介して、マスタリザーバRVとも接続される。第1流体ポンプQAの吐出部には、逆止弁が設けられる。
還流路HKには、常開型の調圧弁UAが設けられる。調圧弁UAは、通電状態(例えば、供給電流)に基づいて開弁量が連続的に制御されるリニア型の電磁弁である。調圧弁UAは、その上流側と下流側との液圧差(差圧)を調整するので、「差圧弁」とも称呼される。
第1流体ポンプQAから制動液BFが吐出されると、還流路HKには、制動液BFの循環流KN(破線矢印で示す)が発生される。調圧弁UAが全開状態にある場合(調圧弁UAは常開型であるため、非通電時)には、還流路HKにおいて、第1流体ポンプQAの吐出部と調圧弁UAとの間の液圧Pu(「サーボ圧」という)は、「0(大気圧)」である。調圧弁UAへの通電量(供給電流)が増加されると、調圧弁UAによって循環流KN(還流路HK内で循環する制動液BFの流れ)が絞られる。換言すれば、調圧弁UAによって、還流路HKの流路が狭められて、調圧弁UAによるオリフィス効果が発揮される。これにより、調圧弁UAの上流側の液圧Puが「0」から増加される。つまり、循環流KNにおいて、調圧弁UAに対して、上流側の液圧Pu(サーボ圧)と下流側の液圧(大気圧)との液圧差(差圧)が発生される。該差圧は、調圧弁UAへの通電量によって調節される。
還流路HKは、第1流体ポンプQAの吐出部と調圧弁UAとの間の部位にて、サーボ路HV(流体路)を介してサーボ室Ruに接続される。従って、サーボ圧Puは、サーボ室Ruに導入(供給)される。サーボ圧Puの増加によって、マスタピストンNM、NSが前進方向Ha(マスタ室Rmの体積が減少する方向)に押圧され、前輪、後輪マスタ室Rmf、Rmr内の液圧Pmf、Pmr(前輪、後輪供給圧)が増加される。
前輪、後輪マスタ室Rmf、Rmr(=Rm)には、前輪、後輪連絡路HSf、HSr(=HS)が接続される。前輪、後輪連絡路HSf、HSrは、第2制動ユニットSB(特に、第2流体ユニットYB)を経由して、前輪、後輪ホイールシリンダCWf、CWr(=CW)に接続される。従って、前輪、後輪供給圧Pmf、Pmrは、第1制動ユニットSAから前輪、後輪ホイールシリンダCWf、CWrに対して供給される。ここで、前輪供給圧Pmfと後輪供給圧Pmrとは等しい(即ち、「Pmf=Pmr」)。
[入力部NR]
入力部NRによって、回生協調制御を実現するよう、制動操作部材BPは操作されるが、ホイール圧Pwが発生しない状態が生み出される。「回生協調制御」は、制動時に、車両JVが有する運動エネルギを効率良く電気エネルギに回収できるよう、摩擦制動力Fm(ホイール圧Pwによる制動力)と回生制動力Fg(ジェネレータGNによる制動力)とを協働させるものである。入力部NRは、入力シリンダCN、入力ピストンNN、導入弁VA、開放弁VB、ストロークシミュレータSS、及び、シミュレータ液圧センサPSにて構成される。
入力部NRによって、回生協調制御を実現するよう、制動操作部材BPは操作されるが、ホイール圧Pwが発生しない状態が生み出される。「回生協調制御」は、制動時に、車両JVが有する運動エネルギを効率良く電気エネルギに回収できるよう、摩擦制動力Fm(ホイール圧Pwによる制動力)と回生制動力Fg(ジェネレータGNによる制動力)とを協働させるものである。入力部NRは、入力シリンダCN、入力ピストンNN、導入弁VA、開放弁VB、ストロークシミュレータSS、及び、シミュレータ液圧センサPSにて構成される。
入力シリンダCNは、マスタシリンダCMに固定される。入力シリンダCNには、入力ピストンNNが挿入される。入力ピストンNNは、制動操作部材BP(ブレーキペダル)に連動するよう、クレビス(U字リンク)を介して、制動操作部材BPに機械的に接続される。入力ピストンNNの端面とプライマリピストンNMの端面とは隙間Ks(「離間変位」ともいう)を有している。離間距離Ksがサーボ圧Puによって調節されることで、回生協調制御が実現される。
入力部NRの入力室Rnは、入力路HN(流体路)を介して、アプライ部APの反力室Rsに接続される。入力路HNには、常閉型の導入弁VAが設けられる。入力路HNは、導入弁VAと反力室Rsとの間にて、リザーバ路HRを介して、マスタリザーバRVに接続される。リザーバ路HRには、常開型の開放弁VBが設けられる。導入弁VA、及び、開放弁VBは、オン・オフ型の電磁弁である。導入弁VAと反力室Rsとの間で、入力路HNにストロークシミュレータSS(単に、「シミュレータ」ともいう)が接続される。
導入弁VA、及び、開放弁VBに電力供給(給電)が行われない場合には、導入弁VAは閉弁され、開放弁VBは開弁される。導入弁VAの閉弁により、入力室Rnは封止され、流体ロックされる。これにより、マスタピストンNM、NSは、制動操作部材BPと一体で変位する。また、開放弁VBの開弁により、シミュレータSSは、マスタリザーバRVに連通される。導入弁VA、及び、開放弁VBに電力供給(給電)が行われる場合には、導入弁VAは開弁され、開放弁VBは閉弁される。これにより、マスタピストンNM、NSは、制動操作部材BPとは別体で変位することが可能である。このとき、入力室RnはストロークシミュレータSSに接続されるので、制動操作部材BPの操作力FpはシミュレータSSによって発生される。
マスタピストンNM、NSと制動操作部材BPとが別体で変位する状態(電磁弁VA、VBの通電時)が「第1モード(又は、バイワイヤモード)」と称呼される。第1モードでは、制動制御装置SCはブレーキバイワイヤ型の装置(即ち、運転者の制動操作に対して、摩擦制動力Fmが独立で発生可能な装置)として機能する。このため、第1モードでは、制動操作部材BPの操作とは独立でホイール圧Pwは発生される。一方、マスタピストンNM、NSと制動操作部材BPとが一体で変位する状態(電磁弁VA、VBの非通電時)が「第2モード(又は、マニュアルモード)」と称呼される。第2モードでは、ホイール圧Pwは運転者の制動操作に連動する。入力部NRでは、導入弁VA、及び、開放弁VBへの給電の有無によって、第1モード(バイワイヤモード)、及び、第2モード(マニュアルモード)のうちの一方の作動モードが選択される。なお、制動制御装置SCで電力失陥が生じた場合(例えば、蓄電池BTの故障等)には、入力部NRは第2モードになる。
シミュレータSS内の液圧Ps(シミュレータ圧)を検出するよう、入力路HNには、導入弁VAと反力室Rsとの間で、シミュレータ圧センサPSが設けられる。シミュレータ圧センサPSは、シミュレータ圧信号線LPsによって、第1制御ユニットEAに接続される。従って、シミュレータ圧Psは、シミュレータ圧信号線LPsを介して第1制御ユニットEAに直接入力される。
≪第1制御ユニットEA≫
第1制御ユニットEA(「第1コントローラ」ともいう)によって、第1アクチュエータYAが制御される。第1コントローラEAは、第1マイクロプロセッサMPa、及び、第1駆動回路DRaにて構成される。第1コントローラEAは、他のコントローラ(EB、EG等)との間で信号(検出値、演算値、制御フラグ等)を共有できるよう、通信バスBSに接続される。
第1制御ユニットEA(「第1コントローラ」ともいう)によって、第1アクチュエータYAが制御される。第1コントローラEAは、第1マイクロプロセッサMPa、及び、第1駆動回路DRaにて構成される。第1コントローラEAは、他のコントローラ(EB、EG等)との間で信号(検出値、演算値、制御フラグ等)を共有できるよう、通信バスBSに接続される。
第1コントローラEAと操作変位センサSPの第1検出部SPaとは、第1検出部SPa用の信号線LSpaを介して接続される。また、第1コントローラEAとシミュレータ圧センサPSとは、シミュレータ圧センサPS用の信号線LPsを介して接続される。第1コントローラEAには、これらの信号線LSpa、LPsを通して、第1操作変位Spa、及び、シミュレータ圧Psが、直接入力される。
第1コントローラEA(特に、第1マイクロプロセッサMPa)には、調圧制御のアルゴリズムがプログラムされている。「調圧制御」は、供給圧Pm(結果、ホイール圧Pw)を調節するための制御であり、回生協調制御を含んでいる。調圧制御は、第1、第2操作変位Spa、Spb、シミュレータ圧Ps、供給圧Pm、及び、最大回生制動力Fxに基づいて実行される。
調圧制御のアルゴリズムに基づいて、第1駆動回路DRaによって、第1アクチュエータYAを構成する第1電気モータMA、及び、各種電磁弁(UA等)が駆動される。第1駆動回路DRaには、第1電気モータMAを駆動するよう、スイッチング素子(例えば、MOS-FET)にてHブリッジ回路が構成される。また、第1駆動回路DRaには、各種電磁弁(UA等)を駆動するよう、スイッチング素子が備えられる。加えて、第1駆動回路DRaには、第1電気モータMAへの供給電流Im(実際値)を検出するモータ電流センサ(非図示)、及び、調圧弁UAへの供給電流Ia(実際値であり、「第1供給電流」という)を検出する第1電流センサ(非図示)が含まれる。なお、第1電気モータMAには、その回転数Na(実際値)を検出する回転数センサ(非図示)が設けられる。第1電気モータMAに回転角Ka(実際値)を検出する回転角センサ(非図示)が設けられ、モータ回転角Kaに基づいて、モータ回転数Naが演算されてもよい。
第1コントローラEAでは、操作変位Sp(操作量)に基づいて、第1供給電流Iaに対応する第1目標電流Ita(目標値)が演算される。そして、第1供給電流Iaが、第1目標電流Itaに近付き、一致するように制御される(所謂、電流フィードバック制御)。また、第1コントローラEAでは、操作変位Spに基づいて、実際の回転数Naに対応する目標回転数Nta(目標値)が演算される。そして、実際の回転数Naが、目標回転数Ntaに近付き、一致するように、モータ供給電流Imが制御される(所謂、回転数フィードバック制御)。これらの制御アルゴリズムに基づいて、第1電気モータMAを制御するための駆動信号Ma、及び、各種電磁弁UA、VA、VBを制御するための駆動信号Ua、Va、Vbが演算される。そして、駆動信号(Ma等)に応じて、第1駆動回路DRaのスイッチング素子が駆動され、第1電気モータMA、及び、電磁弁UA、VA、VBが制御される。
<第2制動ユニットSB>
図3の概略図を参照して、制動制御装置SCの第2制動ユニットSB(「第2ユニット」に相当)の構成例について説明する。第2制動ユニットSBは、アンチロックブレーキ制御、トラクション制御、横滑り防止制御等の各輪独立制御を実行するための汎用のユニット(装置)である。加えて、第2制動ユニットSBでは、バックアップ制御、及び、補完制御が実行される。「バックアップ制御」は、不測の事態に備えた予備的な制御である。例えば、第1制動ユニットSAの作動に異常がある場合に、バックアップ制御によって、第1制動ユニットSAの機能が代替され、その性能低下が補われる。また、「補完制御」は、第1制動ユニットSAの異常に起因する供給圧Pmの過不足を補うものである。
図3の概略図を参照して、制動制御装置SCの第2制動ユニットSB(「第2ユニット」に相当)の構成例について説明する。第2制動ユニットSBは、アンチロックブレーキ制御、トラクション制御、横滑り防止制御等の各輪独立制御を実行するための汎用のユニット(装置)である。加えて、第2制動ユニットSBでは、バックアップ制御、及び、補完制御が実行される。「バックアップ制御」は、不測の事態に備えた予備的な制御である。例えば、第1制動ユニットSAの作動に異常がある場合に、バックアップ制御によって、第1制動ユニットSAの機能が代替され、その性能低下が補われる。また、「補完制御」は、第1制動ユニットSAの異常に起因する供給圧Pmの過不足を補うものである。
第2制動ユニットSBには、第1制動ユニットSAから、前輪、後輪供給圧Pmf、Pmr(=Pm)が供給される。そして、第2制動ユニットSBにて、前輪、後輪供給圧Pmf、Pmrが調整(増減)され、前輪、後輪ホイールシリンダCWf、CWrの液圧Pwf、Pwr(前輪、後輪ホイール圧)として出力される。第2制動ユニットSBは、第2流体ユニットYB、及び、第2制御ユニットEBにて構成される。
≪第2流体ユニットYB≫
第2流体ユニットYB(「第2アクチュエータ」ともいう)は、連絡路HSにおいて、第1アクチュエータYAとホイールシリンダCWとの間に設けられる。第2アクチュエータYBは、供給圧センサPM、制御弁UB、第2流体ポンプQB、第2電気モータMB、調圧リザーバRB、インレット弁VI、及び、アウトレット弁VOにて構成される。
第2流体ユニットYB(「第2アクチュエータ」ともいう)は、連絡路HSにおいて、第1アクチュエータYAとホイールシリンダCWとの間に設けられる。第2アクチュエータYBは、供給圧センサPM、制御弁UB、第2流体ポンプQB、第2電気モータMB、調圧リザーバRB、インレット弁VI、及び、アウトレット弁VOにて構成される。
前輪、後輪制御弁UBf、UBr(=UB)が、前輪、後輪連絡路HSf、HSr(=HS)に設けられる。制御弁UBは、調圧弁UAと同様に、常開型のリニア電磁弁(差圧弁)である。制御弁UBによって、ホイール圧Pwは、前後車輪系統で供給圧Pmから個別に増加されることが可能である。
前輪、後輪供給圧センサPMf、PMr(=PM)が、第1アクチュエータYA(特に、前輪、後輪マスタ室Rmf、Rmr)から供給される実際の液圧Pmf、Pmr(前輪、後輪供給圧)を検出するよう、前輪、後輪制御弁UBf、UBrの上部(第1アクチュエータYAに近い側の連絡路HSの部位)に設けられる。供給圧センサPMは、「マスタ圧センサ」とも称呼され、第2アクチュエータYBに内蔵される。前輪、後輪供給圧センサPMf、PMrは、前輪、後輪供給圧信号線LPmf、LPmr(=LPm)によって、第2制動ユニットSB(特に、第2制御ユニットEB)に接続される。つまり、前輪、後輪供給圧Pmf、Pmr(=Pm)の信号は、第2制御ユニットEBに直接入力される。なお、前輪供給圧Pmfと後輪供給圧Pmrとは実質的には同じであるため、前輪、後輪供給圧センサPMf、PMrのうちの何れか一方は省略されてもよい。例えば、後輪供給圧センサPMrが省略される構成では、前輪供給圧センサPMfによって前輪供給圧Pmfのみが検出され、第2制御ユニットEBにダイレクトに入力される。
前輪、後輪戻し路HLf、HLr(=HL)によって、前輪、後輪制御弁UBf、UBrの上部(第1アクチュエータYAに近い側の連絡路HSの部位)と、前輪、後輪制御弁UBf、UBrの下部(ホイールシリンダCWに近い側の連絡路HSの部位)とが接続される。前輪、後輪戻し路HLf、HLrには、前輪、後輪流体ポンプQBf、QBr(=QB)、及び、前輪、後輪調圧リザーバRBf、RBr(=RB)が設けられる。第2流体ポンプQBは、第2電気モータMBによって駆動される。
第2電気モータMBが駆動されると、第2流体ポンプQBによって、制動液BFが、制御弁UBの上部から吸い込まれ、制御弁UBの下部に吐出される。これにより、連絡路HS、及び、戻し路HLには、調圧リザーバRBを含んだ、制動液BFの循環流KL(即ち、前輪、後輪循環流KLf、KLrであり、破線矢印で示す)が発生する。制御弁UBによって、連絡路HSの流路が狭められ、制動液BFの循環流KLが絞られると、その際のオリフィス効果によって、制御弁UBの下部の液圧Pq(「調整圧」という)が、制御弁UBの上部の液圧Pm(供給圧)から増加される。換言すれば、循環流KLにおいて、制御弁UBに対して、下流側の液圧Pm(供給圧)と上流側の液圧Pq(調整圧)との液圧差(差圧)が、制御弁UBによって調整される。なお、供給圧Pmと調整圧Pqとの大小関係では、調整圧Pqは供給圧Pm以上である(即ち、「Pq≧Pm」)。以上で説明したように、第2アクチュエータYBでの調整圧Pqの発生メカニズムは、第1アクチュエータYAでのサーボ圧Puの発生メカニズムと同じである。
第2アクチュエータYBの内部にて、前輪、後輪連絡路HSf、HSrは、夫々、2つに分岐されて、前輪、後輪ホイールシリンダCWf、CWrに接続される。各ホイール圧Pwを個別に調節できるよう、ホイールシリンダCW毎に、常開型のインレット弁VI、及び、常閉型のアウトレット弁VOが設けられる。具体的には、インレット弁VIは、分岐された連絡路HS(即ち、連絡路HSの分岐部に対してホイールシリンダCWに近い側)に設けられる。連絡路HSは、インレット弁VIの下部(ホイールシリンダCWに近い側の連絡路HSの部位)にて、減圧路HGを介して、調圧リザーバRBに接続される。そして、減圧路HGには、アウトレット弁VOが配置される。インレット弁VI、及び、アウトレット弁VOとして、オン・オフ型の電磁弁が採用される。インレット弁VI、及び、アウトレット弁VOによって、ホイール圧Pwは、各車輪で供給圧Pmから個別に減少されることが可能である。
インレット弁VI、及び、アウトレット弁VOに給電が行われず、それらの作動が停止している場合には、インレット弁VIは開弁され、アウトレット弁VOは閉弁される。この状態では、ホイール圧Pwは、調整圧Pqに等しい。インレット弁VI、及び、アウトレット弁VOの駆動によって、ホイール圧Pwが、ホイールシリンダCW毎に独立して調整される。ホイール圧Pwを減少するためには、インレット弁VIが閉弁され、アウトレット弁VOが開弁される。ホイールシリンダCWへの制動液BFの流入が阻止されるとともに、ホイールシリンダCW内の制動液BFが調圧リザーバRBに流出するので、ホイール圧Pwは減少される。ホイール圧Pwを増加するため(但し、増加の上限は調整圧Pqまで)には、インレット弁VIが開弁され、アウトレット弁VOが閉弁される。制動液BFの調圧リザーバRBへの流出が阻止され、調圧弁UBからの調整圧PqがホイールシリンダCWに供給されるので、ホイール圧Pwが増加される。ホイール圧Pwを保持するためには、インレット弁VI、及び、アウトレット弁VOが共に閉弁される。ホイールシリンダCWは流体的に封止されるので、ホイール圧Pwが一定に維持される。
≪第2制御ユニットEB≫
第2制御ユニットEB(「第2コントローラ」ともいう)によって、第2アクチュエータYBが制御される。第2コントローラEBは、第1コントローラEAと同様に、第2マイクロプロセッサMPb、及び、第2駆動回路DRbにて構成される。第2コントローラEBは、通信バスBSに接続される。従って、第1コントローラEAと第2コントローラEBとは、通信バスBSを介して信号を共有することができる。
第2制御ユニットEB(「第2コントローラ」ともいう)によって、第2アクチュエータYBが制御される。第2コントローラEBは、第1コントローラEAと同様に、第2マイクロプロセッサMPb、及び、第2駆動回路DRbにて構成される。第2コントローラEBは、通信バスBSに接続される。従って、第1コントローラEAと第2コントローラEBとは、通信バスBSを介して信号を共有することができる。
第2コントローラEB(特に、第2マイクロプロセッサMPb)には、車輪速度Vw、操舵量Sa、ヨーレイトYr、前後加速度Gx、及び、横加速度Gyが入力される。第2コントローラEBにて、車輪速度Vwに基づいて、車体速度Vxが演算される。第2コントローラEBでは、以下に列挙する各輪独立制御が実行される。具体的には、各輪独立制御として、車輪WHのロックを抑制するアンチロックブレーキ制御(所謂、ABS制御)、駆動車輪の空転を抑制するトラクション制御、及び、アンダステア・オーバステアを抑制して車両の方向安定性を向上する横滑り防止制御(所謂、ESC)が実行される。
第2マイクロプロセッサMPbにプログラムされた制御アルゴリズムに応じて、第2駆動回路DRbによって、第2アクチュエータYBを構成する第2電気モータMB、及び、各種電磁弁(UB等)が駆動される。第2駆動回路DRbには、第2電気モータMBを駆動するよう、スイッチング素子(例えば、MOS-FET)にてHブリッジ回路が構成される。また、第2駆動回路DRbには、各種電磁弁(UB等)を駆動するよう、スイッチング素子が備えられる。加えて、第2駆動回路DRbには、第2電気モータMBへの供給電流In(実際値)を検出するモータ電流センサ(非図示)、及び、制御弁UBへの供給電流Ib(実際値であり、「第2供給電流」という)を検出する第2電流センサ(非図示)が含まれる。第2マイクロプロセッサMPbの制御アルゴリズムに基づいて、制御弁UBの駆動信号Ub、インレット弁VIの駆動信号Vi、アウトレット弁VOの駆動信号Vo、第2電気モータMBの駆動信号Mbが演算される。そして、駆動信号(Ub等)に基づいて、第2駆動回路DRbによって、第2電気モータMB、及び、電磁弁UB、VI、VOが制御される。
第2コントローラEBと操作変位センサSPの第2検出部SPbとは、第2検出部SPb用の信号線LSpbを介して接続される。また、第2コントローラEBと供給圧センサPMとは、供給圧センサPM用の信号線LPm(例えば、信号ピン)を介して接続される。従って、第2コントローラEBには、第2操作変位Spbが信号線LSpbを通して直接入力され、供給圧Pmが信号線LPmを通して直接入力される。そして、第2操作変位Spb、及び、供給圧Pmは、通信バスBSを通して、第2コントローラEBから第1コントローラEAに送信される。つまり、第1コントローラEAでは、第2操作変位Spb、及び、供給圧Pmが、第2コントローラEBから、通信バスを通して取得される。
第2コントローラEBでは、上記の各輪独立制御に加え、制動制御装置SCの異常に対応するよう、バックアップ制御、及び、補完制御が実行される。これらの制御では、第1制動ユニットSAの機能・性能の低下が、第2制動ユニットSBによって補われる。具体的には、補完制御、及び、バックアップ制御によって、ホイール圧Pwの低下補償、制動操作部材BPの操作力Fpの軽減等が図られる。
<調圧制御の処理>
図4~6を参照して、調圧制御の処理例について説明する。調圧制御には、回生協調制御に加え、第1制動ユニットSAの異常に対応して、補完制御、及び、バックアップ制御が含まれる。調圧制御のアルゴリズムは、第1、第2コントローラEA、EBのマイクロプロセッサMPa、MPbにプログラムされている。
図4~6を参照して、調圧制御の処理例について説明する。調圧制御には、回生協調制御に加え、第1制動ユニットSAの異常に対応して、補完制御、及び、バックアップ制御が含まれる。調圧制御のアルゴリズムは、第1、第2コントローラEA、EBのマイクロプロセッサMPa、MPbにプログラムされている。
処理例の説明では、以下のことが想定されている。
-回生装置KGは、前輪WHfのみに備えられる。従って、回生制動力Fgは、前輪WHfには作用するが、後輪WHrには作用しない。
-制動制御装置SCが正常に作動する場合には、第2アクチュエータYBは駆動されず、第1アクチュエータYAのみが駆動される。従って、制動制御装置SCの正常作動時には、ホイール圧Pwは、第1アクチュエータYAのみによって調整されるので、ホイール圧Pwと供給圧Pmとは一致する(即ち、「Pm=Pw」)。
-第1アクチュエータYAでは、マスタ室Rmの受圧面積rm(「マスタ面積」ともいう)とサーボ室Ruの受圧面積ru(「サーボ面積」ともいう)とが等しく設定される。従って、「rm=ru」であり、静的な状態では、「Pm=Pu」である(ここで、シール部材SLの摩擦は無視している)。
-供給圧センサPMは、第2アクチュエータYBに内蔵され、第2コントローラEBに信号線LPmによって接続される。第1コントローラEAは、供給圧Pmを、通信バスBSを通して、第2コントローラEBから取得する。
-第2アクチュエータYBでは、後輪供給圧センサPMrが省略され、供給圧センサPMとして、前輪供給圧センサPMfのみが設けられる。従って、供給圧Pmの信号として、前輪供給圧Pmfのみが採用される。
-回生装置KGは、前輪WHfのみに備えられる。従って、回生制動力Fgは、前輪WHfには作用するが、後輪WHrには作用しない。
-制動制御装置SCが正常に作動する場合には、第2アクチュエータYBは駆動されず、第1アクチュエータYAのみが駆動される。従って、制動制御装置SCの正常作動時には、ホイール圧Pwは、第1アクチュエータYAのみによって調整されるので、ホイール圧Pwと供給圧Pmとは一致する(即ち、「Pm=Pw」)。
-第1アクチュエータYAでは、マスタ室Rmの受圧面積rm(「マスタ面積」ともいう)とサーボ室Ruの受圧面積ru(「サーボ面積」ともいう)とが等しく設定される。従って、「rm=ru」であり、静的な状態では、「Pm=Pu」である(ここで、シール部材SLの摩擦は無視している)。
-供給圧センサPMは、第2アクチュエータYBに内蔵され、第2コントローラEBに信号線LPmによって接続される。第1コントローラEAは、供給圧Pmを、通信バスBSを通して、第2コントローラEBから取得する。
-第2アクチュエータYBでは、後輪供給圧センサPMrが省略され、供給圧センサPMとして、前輪供給圧センサPMfのみが設けられる。従って、供給圧Pmの信号として、前輪供給圧Pmfのみが採用される。
各種の制動力は、以下の通りである。
-「車体総制動力Fu」は、車両JVの全体に作用する実際の制動力である。車体総制動力Fuに対応する目標値が、「目標車体制動力Fv」である。
-「摩擦制動力Fm」は、ホイール圧Pwに応じて実際に発生する制動力である。摩擦制動力Fmに対応する目標値が、「目標摩擦制動力Fn」である。
-「回生制動力Fg」は、回生装置KGによって実際に発生される制動力である。回生制動力Fgに対応する目標値が「目標回生制動力Fh」である。目標回生制動力Fhは、第1制動ユニットSA(特に、第1コントローラ)にて演算され、通信バスBSを介して、回生装置KG(特に、回生コントローラEG)に送信される。回生装置KGでは、回生コントローラEGによって、実際の回生制動力Fgが、目標回生制動力Fhに近付き、一致するように、ジェネレータGNが制御される。
-「限界回生制動力Fx」は、回生装置KGが発生し得る回生制動力Fgの最大値(限界値)である。従って、回生装置KGでは、限界回生制動力Fxまでの範囲(限度)で、回生制動力Fgが発生される。限界回生制動力Fxは、回生装置KG(特に、回生コントローラEG)にて演算され、通信バスBSを介して、第1制動ユニットSA(特に、第1コントローラEA)に送信される。
-「車体総制動力Fu」は、車両JVの全体に作用する実際の制動力である。車体総制動力Fuに対応する目標値が、「目標車体制動力Fv」である。
-「摩擦制動力Fm」は、ホイール圧Pwに応じて実際に発生する制動力である。摩擦制動力Fmに対応する目標値が、「目標摩擦制動力Fn」である。
-「回生制動力Fg」は、回生装置KGによって実際に発生される制動力である。回生制動力Fgに対応する目標値が「目標回生制動力Fh」である。目標回生制動力Fhは、第1制動ユニットSA(特に、第1コントローラ)にて演算され、通信バスBSを介して、回生装置KG(特に、回生コントローラEG)に送信される。回生装置KGでは、回生コントローラEGによって、実際の回生制動力Fgが、目標回生制動力Fhに近付き、一致するように、ジェネレータGNが制御される。
-「限界回生制動力Fx」は、回生装置KGが発生し得る回生制動力Fgの最大値(限界値)である。従って、回生装置KGでは、限界回生制動力Fxまでの範囲(限度)で、回生制動力Fgが発生される。限界回生制動力Fxは、回生装置KG(特に、回生コントローラEG)にて演算され、通信バスBSを介して、第1制動ユニットSA(特に、第1コントローラEA)に送信される。
図4のフロー図を参照して、調圧制御の全体について説明する。調圧制御には、第1制動ユニットSAの作動状態に応じた、以下の3つが含まれる。第1は、第1制動ユニットSAの作動が正常である場合(「正常状態」という)の調圧制御であり、「通常制御」と称呼される。第2は、第1制動ユニットSAの作動が異常であることが確定した場合(「確定状態」という)の調圧制御であり、バックアップ制御である。そして、第3は、第1制動ユニットSAの異常は確定していないが異常が疑われる場合(「特定状態」という)の調圧制御であり、「補完制御」と称呼される。
「バックアップ制御」は、不測の事態に備えた予備的な制御であり、第1制動ユニットSAの機能を代替するものである。しかしながら、確定状態が判定され、バックアップ制御が開始されるまでには、或る程度の時間を要する。加えて、異常が短期的なものであり、確定状態の前に正常に戻る場合もある。正常状態から確定状態に遷移するまでの期間(即ち、特定状態の期間)に、バックアップ制御とは別の補完制御が実行され、第1制動ユニットSAの機能・性能の低下補償が図られる。以下、通常制御、補完制御、及び、バックアップ制御の夫々について説明する。
ステップS110にて、第1コントローラEAによって、導入弁VA、及び、開放弁VBに電力供給(給電)が行われる。これにより、常閉型の導入弁VAが開弁され、常開型の開放弁VBが閉弁され、マスタピストンNM、NSと制動操作部材BPとが別体で変位可能な第1モードが選択される。第1モードでは、供給圧Pm(即ち、ホイール圧Pw)は、制動操作部材BPの操作とは独立で調整される。このとき、制動操作部材BPの操作力Fpは、ストロークシミュレータSSによって発生される。
ステップS120にて、第1コントローラEAにて、第1、第2操作変位Spa、Spb、供給圧Pm(=Pmf)等の信号が読み込まれる。操作変位センサSPには、2つの操作変位検出部SPa、SPb(第1、第2検出部)が備えられる。第1操作変位Spa(第1検出部SPaの検出値)は、第1変位信号線LSpaを通して、直接取得される。第2操作変位Spb(第2検出部SPbの検出値)、及び、供給圧Pm(供給圧センサPMの検出値)は、通信バスBSを介して、第2コントローラEBから取得される。
ステップS120では、第1コントローラEAにて、取得された第1、第2操作変位Spa、Spbに基づいて、操作変位Spが演算される。具体的には、第1、第2操作変位Spa、Spbの平均値が、操作変位Spとして決定される(即ち、「Sp=(Spa+Spb)/2」)。また、第1、第2操作変位Spa、Spbのうちの一方側が取得できない場合には、取得できる他方側によって操作変位Spが決定される(即ち、「Sp=Spa」、又は、「Sp=Spb」)。操作変位センサSPは冗長化されているので、操作変位Spには、第1、第2操作変位Spa、Spbのうちの少なくとも1つに基づいて演算される。演算された操作変位Spは、通信バスBSを介して、第1コントローラEAから第2コントローラEBに送信される。
ステップS130にて、操作変位Sp、及び、演算マップZfvに基づいて、目標車体制動力Fv(車両全体に作用する制動力の目標値)が演算される。目標車体制動力Fvは、演算マップZfvに応じて、操作変位Spが所定変位so未満の場合には「0」に決定される。そして、操作変位Spが所定変位so以上の場合には、操作変位Spが「0」から増加するに従い、目標車体制動力Fvが「0」から増加するように決定される。ここで、「所定変位so」は、制動操作部材BPの遊びを表す、予め設定された所定値(定数)である。
ステップS140にて、第1コントローラEAにて、「第1制動ユニットSAが正常であるか、否か」が判定される。該判定処理が、「適否判定」と称呼される。第1制動ユニットSAの適否は、第1制動ユニットSAを構成する各要素(MA、UA、MPa、DRa等)の動作(振る舞い)が常時監視される。そして、第1制動ユニットSAが正常ではない状態(「不適状態」という)が継続する時間Tj(継続時間)が演算される。不適状態の継続時間Tjが、所定時間tjに亘って継続された時点で、「正常状態であること」が初めて否定される(即ち、「不適状態であること」が肯定される)。ここで、所定時間tj(「適否判定時間」ともいう)は、予め設定された所定値(定数)である。なお、ステップS140の適否判定が否定された場合に、直ちに、第1制動ユニットSAの作動異常の判定が確定されるわけではない。
ステップS140では、第1制動ユニットSAの動作に基づく判定に加え、第1制動ユニットSAで電気的に作動する構成要素(MA、UA等)の電源電圧Vd(供給可能電圧)に基づいて適否が判定される。例えば、「第1電気モータMAの電源電圧Vdが所定電圧vd以上の場合(即ち、「Vd≧vd」の場合)」、又は、「電源電圧Vdが所定電圧vd未満ではあるが該状態の継続時間Tjが適否判定時間tj未満である場合」には、第1制動ユニットSA(特に、第1電気モータMA)についての適否判定は肯定され、正常状態が判定される。一方、「第1電気モータMAの電源電圧Vdが所定電圧vd未満、且つ、該状態が適否判定時間tjに亘って継続される場合」に適否判定は否定され、不適状態が判定される。ここで、電源電圧Vdは、電源電圧センサ(非図示)によって検出される。また、所定電圧vdは、適否判定用のしきい値であり、予め設定された所定値(定数)である。
第1制動ユニットSAが正常状態である場合、又は、不適状態の継続時間Tjが適否判定時間tj(所定時間)よりも短い場合(即ち、「Tj<tj」の場合)には、適否判定は肯定され、処理はステップS150に進められる。一方、不適状態の継続時間Tjが所定時間tj以上である場合(即ち、「Tj≧tj」の場合)には、適否判定は否定され、処理はステップS180に進められる。
ステップS140では、適否判定が肯定される場合には、判定フラグFJ(「適否フラグ」ともいう)が「0」に決定される。一方、適否判定が否定される場合には、適否フラグFJが「1」に決定される。「適否フラグFJ」は、第1制動ユニットSAの適否を表示する制御フラグである。適否フラグFJでは、「0」が正常状態を表し、「1」が不適状態を表す。適否フラグFJは、通信バスBSを介して、第1コントローラEAから第2コントローラEBに送信される。
≪通常制御の処理≫
ステップS150~S170の処理が通常制御に該当する。該処理は、第1コントローラEAにて実行される。例えば、通常制御では、第1アクチュエータYAのみが駆動される。
ステップS150~S170の処理が通常制御に該当する。該処理は、第1コントローラEAにて実行される。例えば、通常制御では、第1アクチュエータYAのみが駆動される。
ステップS150にて、目標車体制動力Fv、及び、限界回生制動力Fxに基づいて、目標回生制動力Fh、及び、目標摩擦制動力Fnが演算される。具体的には、目標回生制動力Fhが、限界回生制動力Fx以下の値として決定される。例えば、目標車体制動力Fvが限界回生制動力Fx以下である場合には、目標回生制動力Fhが目標車体制動力Fvに等しくされ、目標摩擦制動力Fnが「0」に決定される(即ち、「Fv≦Fx」の場合には「Fh=Fv、Fn=0」)。一方、目標車体制動力Fvが限界回生制動力Fxよりも大きい場合には、目標回生制動力Fhが限界回生制動力Fxに等しくされ、目標摩擦制動力Fnが「目標車体制動力Fvから限界回生制動力Fx(=Fh)を減した値」に決定される(即ち、「Fv>Fx」の場合には「Fh=Fx、Fn=Fv-Fx=Fv-Fh」)。目標回生制動力Fhは、通信バスBSを介して、第1コントローラEAから回生コントローラEGに送信される。そして、回生コントローラEGによって、実際の回生制動力Fgが、目標回生制動力Fhに近付き、一致するように、ジェネレータGNが制御される。
ステップS160にて、目標摩擦制動力Fnに基づいて、目標圧Pt(=Ptf、Ptr)が演算される。「目標圧Pt」は、供給圧Pmに対応する目標値である。また、制動制御装置SCの正常作動時には、「Pm=Pw」であるため、目標圧Ptは、ホイール圧Pwに対応する目標値でもある。具体的には、目標圧Ptは、制動装置SX等の諸元(ホイールシリンダCWの受圧面積、回転部材KTの有効制動半径、摩擦部材MSの摩擦係数、車輪(タイヤ)の有効半径等)に基づいて、目標摩擦制動力Fnが、供給圧Pm(即ち、ホイール圧Pw)の次元に変換されることで決定される。なお、「Pmf=Pmr」であるため、前輪目標圧Ptfと後輪目標圧Ptrとは等しい値として決定される(即ち、「Ptf=Ptr」)。
ステップS170にて、供給圧Pm(実際値)が目標圧Pt(目標値)に近付き、一致するように、第1コントローラEAによって、第1アクチュエータYAが制御される。具体的には、第1電気モータMAが駆動され、第1流体ポンプQAから制動液BFが吐出される。これにより、還流路HKに制動液BFの循環流KNが発生される。そして、調圧弁UAが駆動され、循環流KNが絞られることによって、サーボ圧Puが発生される。第1アクチュエータYAの駆動では、供給圧Pmが目標圧Ptに近付くよう、供給圧Pmに基づくフィードバック制御によって、調圧弁UAが制御される。
≪第1制動ユニットSAの不調時の調圧制御≫
第1制動ユニットSAが正常に機能しない場合の調圧制御について説明する。第1制動ユニットSAの不調時に対応する調圧制御には、補完制御、及び、バックアップ制御の2種類が含まれる。
第1制動ユニットSAが正常に機能しない場合の調圧制御について説明する。第1制動ユニットSAの不調時に対応する調圧制御には、補完制御、及び、バックアップ制御の2種類が含まれる。
ステップS140の適否判定が否定されると、ステップS180にて、回生装置KGの作動が停止される。例えば、「Fh=0」又は「FJ=1」が、第1コントローラEAから回生コントローラEGに送信されて、回生装置KGでは、ジェネレータGNによる発電が停止される。これにより、回生制動力Fgは「0」にされ、回生協調制御は終了される。
ステップS190にて、第1コントローラEAによって、「第1制動ユニットSAの異常を確定するか、否か」が判定される。該判定が「確定判定」と称呼される。ステップS190の確定判定では、第1制動ユニットSAの不適状態の継続時間Tjが、所定時間tkに亘って継続された時点で初めて肯定され、第1制動ユニットSAの異常が確定される。ここで、所定時間tk(「確定判定時間」ともいう)は、所定時間tj(適否判定時間)よりも大きい値である。従って、継続時間Tjが、適否判定時間tj以上ではあるが、確定判定時間tk未満である場合(即ち、「tj≦Tj<tk」の場合)には、第1制動ユニットSAの異常が疑われるが、異常は確定されていない状態(即ち、特定状態)である。
第1制動ユニットSAの不適状態の継続時間Tjが所定の確定判定時間tkよりも短く、確定判定が否定される場合(即ち、特定状態であり、「Tj<tk」の場合)には、処理はステップS200に進められる。一方、第1制動ユニットSAの不適状態の継続時間Tjが確定判定時間tk以上となり、確定判定が肯定される場合(即ち、「Tj≧tk」の場合)には、処理はステップS220に進められる。
ステップS190では、確定判定が否定される場合(即ち、特定状態)には、判定フラグFK(「確定フラグ」ともいう)が「0」に決定される。一方、確定判定が肯定される場合(即ち、確定状態)には、確定フラグFKが「1」に決定される。「確定フラグFK」は、第1制動ユニットSAの異常確定を表示する制御フラグである。確定フラグFKでは、「0」が異常の未確定状態を表し、「1」が異常の確定状態を表す。確定フラグFKは、通信バスBSを介して、第1コントローラEAから第2コントローラEBに送信される。
≪補完制御の処理≫
「FJ=1、FK=0」によって、特定状態(第1制動ユニットSAの異常が疑われるが、それが確実ではない状態)が表示される。特定状態では、バックアップ制御に先立って、ステップS200、S210にて、第1制動ユニットSAの性能低下を補完するために補完制御が実行される。即ち、第2制動ユニットSBによるステップS200、S210の処理が補完制御に該当する。特定状態では、第1、第2アクチュエータYA、YBの両方が駆動される。
「FJ=1、FK=0」によって、特定状態(第1制動ユニットSAの異常が疑われるが、それが確実ではない状態)が表示される。特定状態では、バックアップ制御に先立って、ステップS200、S210にて、第1制動ユニットSAの性能低下を補完するために補完制御が実行される。即ち、第2制動ユニットSBによるステップS200、S210の処理が補完制御に該当する。特定状態では、第1、第2アクチュエータYA、YBの両方が駆動される。
ステップS200では、目標圧Ptが取得される。ここで、第1コントローラEAの目標圧Pt、及び、第2コントローラEBの目標圧Ptは同様の値として決定される。ステップS200では、「Fh=0、Fg=0」であるため、目標摩擦制動力Fnは目標車体制動力Fvに等しい(即ち、「Fn=Fv」)。このため、操作変位Sp、及び、演算マップZfvに従って演算された目標摩擦制動力Fnが、制動装置SXの諸元等に基づいて、目標圧Ptに換算されて決定される。例えば、目標圧Ptは、第1、第2コントローラEA、EBの夫々で、操作変位Spに基づいて、同様の方法で演算される。「同様の方法」では、回生制動力Fgが発生されない状態において、同様の演算マップZfvが採用されて目標圧Ptが演算される。但し、第1コントローラEAで用いられる演算マップZfvと第2コントローラEBで用いられる演算マップZfvとは完全に一致している必要はなく、それらが近似していればよい。また、第1コントローラEAで演算された目標圧Ptが、通信バスBSを介して、第2コントローラEBにて取得されてもよい。或いは、第2コントローラEBで演算された目標圧Ptが、通信バスBSを介して、第1コントローラEAにて取得されてもよい。
第1制動ユニットSAの不適状態が通信機能に及んでいる場合には、通信バスBSを介した、第1、第2操作変位Spa、Spbの信号伝達を行うことができない。この場合には、第1コントローラEAでは、第2操作変位Spbが取得できないので、第1操作変位Spaが操作変位Spとして決定される。同様に、第2コントローラEBでは、第1操作変位Spaが取得できないので、第2操作変位Spbが操作変位Spとして決定される。第1操作変位Spaと第2操作変位Spbとは実質的に等しいので、第1コントローラEAにて用いられる操作変位Spと第2コントローラEBにて用いられる操作変位Spは同じである。
以上のことから、ステップS200では、上記の何れかの方法で、第1、第2コントローラEA、EBの両方にて、目標圧Ptが取得(又は、演算)される。つまり、第1、第2制動ユニットSA、SBの目標圧Ptの夫々は、通常制御で「Fh=0」の場合と、同一又は近似の演算マップを用いて演算されたものである。従って、何れの場合でも、第1制動ユニットSAの目標圧Ptと第2制動ユニットSBの目標圧Ptとは実質的に等しい値である。
ステップS210にて目標圧Ptに基づいて、第1アクチュエータYA、及び、第2アクチュエータYBが共に駆動される。具体的には、第1アクチュエータYAは、第1コントローラEAによって、ステップS170と同様の方法で制御される。従って、第1アクチュエータYAの駆動方法の説明は省略する。
ステップS210では、目標圧Pt、及び、供給圧Pmに基づいて、目標圧Ptと供給圧Pmとの偏差hP(「液圧偏差」という)が演算される。具体的には、目標圧Ptから供給圧Pmが減算されて、液圧偏差hPが決定される(即ち、「hP=Pt-Pm」)。そして、ステップS210では、第2アクチュエータYBが、第2コントローラEBによって、液圧偏差hPに基づいて制御される。「液圧偏差hP」は、第1制動ユニットSAから出力されるべき供給圧(即ち、目標圧Pt)と実際に発生した供給圧Pmとの差を表す状態量である。このため、供給圧Pmが目標圧Ptよりも小さく、供給圧Pmの増加が必要である場合(即ち、液圧偏差hPが「0」よりも大きい場合)には、液圧偏差hPは、供給圧Pmの不足を補い、ホイール圧Pwを増加するための目標値であり、制御弁UBの差圧に係る目標値でもある。
供給圧Pmの増加が必要な場合には、ステップS210にて、第2電気モータMB、及び、制御弁UBが駆動される。具体的には、第2電気モータMBが駆動され、第2流体ポンプQBから制動液BFが吐出される。これにより、連絡路HS、及び、戻し路HLに制動液BFの循環流KLが発生される。そして、液圧偏差hPが所定偏差hp以上である場合に、制御弁UBによって、供給圧Pmが液圧偏差hPに相当する分だけ増加される。ここで、「所定偏差hp」は、予め設定された正符号の定数であり、補完制御の不感帯を設定するための所定値である。
補完制御では、制御弁UBが駆動され、循環流KLが絞られることによって、制御弁UBの上流側と下流側とで液圧差が発生する。これにより、上流側液圧である調整圧Pqが、下流側液圧である供給圧Pmから増加される。つまり、第2アクチュエータYBの駆動では、調整圧Pqと供給圧Pmとの差圧(即ち、液圧「Pq-Pm」)が、液圧偏差hPになるように、制御弁UBが制御される。調整圧Pqはホイール圧Pwに等しいので、第2アクチュエータYBからは、供給圧Pm(実際値)に対して、液圧偏差hP(目標値)に対応する実際の液圧が加えられた液圧が、ホイール圧Pw(実際値)として出力される(即ち、「Pw=Pm+hP」)。補完制御では、供給圧Pmが目標圧Ptよりも小さい場合に、制御弁UBが適宜駆動されることで、ホイール圧Pwが供給圧Pmから液圧偏差hPに相当する分だけ増加される。
一方、ステップS210では、供給圧Pmが目標圧Ptよりも大きい場合(詳細には、液圧偏差hPが所定偏差hp未満である場合)には、補完制御は実行されず、第2アクチュエータYBは駆動されない。従って、第2アクチュエータYBからは、ホイール圧Pwとして供給圧Pmが出力される。補完制御は、供給圧Pmが目標圧Ptよりも小さい場合(即ち、「Pm<Pt」であり、詳細には、液圧偏差hPが所定偏差hp以上である場合)に限って実行される。
≪バックアップ制御の処理≫
「FK=1(FJ=1)」によって、確定状態(第1制動ユニットSAの異常が確実である状態)が表示される。確定状態では、補完制御に代わり、ステップS230、S240にて、第1制動ユニットSAの機能を代替するためにバックアップ制御が実行される。即ち、第2制動ユニットSBによるステップS230、S240の処理がバックアップ制御に該当する。なお、確定状態では、第1アクチュエータYAの作動が停止され、第2アクチュエータYBのみが駆動される。
「FK=1(FJ=1)」によって、確定状態(第1制動ユニットSAの異常が確実である状態)が表示される。確定状態では、補完制御に代わり、ステップS230、S240にて、第1制動ユニットSAの機能を代替するためにバックアップ制御が実行される。即ち、第2制動ユニットSBによるステップS230、S240の処理がバックアップ制御に該当する。なお、確定状態では、第1アクチュエータYAの作動が停止され、第2アクチュエータYBのみが駆動される。
ステップS220にて、第1コントローラEAによって、第1アクチュエータYAへの給電が停止される。第1コントローラEAによって、導入弁VA、及び、開放弁VBに給電が停止され、導入弁VAが閉弁され、開放弁VBが開弁される。これにより、入力部NRでは、マスタピストンNM、NSと制動操作部材BPとが一体で変位する第2モードが選択される。第2モードでは、ホイール圧Pwは制動操作部材BPの操作と連動して調整される。入力室RnはストロークシミュレータSSから切り離され、流体ロックされるので、制動操作部材BPの操作力Fpは、制動装置SX等の剛性によって発生される。更に、第1コントローラEAによって、第1電気モータMA、及び、調圧弁UAへの給電が停止され、サーボ圧Puが「0」にされる。即ち、第1制動ユニットSAでは、第1アクチュエータYAの作動が停止される。
ステップS230にて、第2コントローラEBによって、供給圧Pmに基づいて、助勢圧Pcが演算される。「助勢圧Pc」は、供給圧Pmを増加するための制御弁UBの差圧に係る目標値である。具体的には、助勢圧Pc(目標値)によって、ホイール圧Pw(実際値)が、供給圧Pm(実際値)から助勢圧Pcに相当する分だけ増加される。
ステップS240にて、第2コントローラEBによって、助勢圧Pcに基づいて第2アクチュエータYBが駆動される。具体的には、第2電気モータMBが駆動され、第2流体ポンプQBから制動液BFが吐出される。これにより、連絡路HS、及び、戻し路HLに制動液BFの循環流KLが発生される。そして、制御弁UBが駆動され、循環流KLが絞られることによって、制御弁UBの上流側と下流側とで液圧差が発生する。これにより、上流側液圧である調整圧Pqが、下流側液圧である供給圧Pmから増加される。つまり、第2アクチュエータYBの駆動では、調整圧Pqと供給圧Pmとの差圧(即ち、液圧「Pq-Pm」)が、助勢圧Pcになるように、制御弁UBが制御される。調整圧Pqはホイール圧Pwに等しいので、第2アクチュエータYBからは、供給圧Pm(実際値)に対して、助勢圧Pc(目標値)に対応する実際の液圧が加えられた液圧が、ホイール圧Pw(実際値)として出力される(即ち、「Pw=Pm+Pc」)。換言すれば、第2アクチュエータYBの駆動によって、ホイール圧Pwを発生するために必要な供給圧Pmが、助勢圧Pcに相当する分だけ減少される。これにより、制動操作部材BPの操作力Fpが軽減される。
制動制御装置SCは、制動操作部材BP(ブレーキペダル)の操作とホイールシリンダCWの液圧(ホイール圧Pw)とが独立して制御可能なブレーキバイワイヤ型の装置である。具体的には、第1制動ユニットSAでは、入力部NRによって、マスタピストンNMと制動操作部材BPとが別体で変位する第1モード(バイワイヤモード)、及び、マスタピストンNMと制動操作部材BPとが一体で変位する第2モード(マニュアルモード)のうちの何れか一方が選択される。これにより、第1モードでは操作変位Spと供給圧Pmとが独立し、第2モードでは操作変位Spと供給圧Pmとが連動する。供給圧Pmは、ホイール圧Pwとして供給されるので、第1モードが選択されることで、制動操作部材BPの操作に対して、ホイール圧Pwは独立して制御される。
正常状態(例えば、不適状態の継続時間Tjが、所定の適否判定時間tj未満である場合)では、第1制動ユニットSAにて、第1モードが選択され、通常制御が実行される。通常制御では、操作変位Sp(例えば、第1、第2操作変位Spa、Spbの平均値)に基づいて目標圧Ptが演算され、供給圧Pmが目標圧Ptに近付くように制御される。つまり、通常制御では、操作変位Spを入力として演算された目標圧Ptに、出力である供給圧Pmが近付き一致するよう、供給圧Pmに基づく液圧フィードバック制御が実行される。
例えば、第1制動ユニットSAには、マスタシリンダCM、及び、マスタシリンダCMに挿入されるマスタピストンNMによって仕切られるマスタ室Rm、及び、サーボ室Ruが設けられる。そして、サーボ室Ruに供給されるサーボ圧Puが増加されることによって、供給圧Pmが制御される。該構成では、供給圧Pmが目標圧Ptに近付き一致するように、サーボ圧Puが、供給圧Pmに基づいてフィードバック制御される。
特定状態(即ち、不適状態の継続時間Tjが適否判定時間tj以上、且つ、確定判定時間tk未満である場合)では、第1制動ユニットSAにて、第1モードが継続して選択される。そして、第1制動ユニットSA、及び、第2制動ユニットSBが共に駆動される。第1制動ユニットSAでは、上記の通常制御が継続される。即ち、第1制動ユニットSAでは、供給圧Pmが目標圧Ptに近付き、一致するように、供給圧Pmに基づくフィードバック制御が実行される。該フィードバック制御によって、供給圧Pmは目標圧Ptに略一致するはずである。しかしながら、第1制動ユニットSAの不調時には供給圧Pmが十分に発生されず、目標圧Ptが満足されない状況が生じ得る。そこで、供給圧Pmの低下を補償するよう、第2制動ユニットSBにて、補完制御が実行される。
補完制御では、第2制動ユニットSBによって、目標圧Pt、及び、供給圧Pmの偏差hPに基づいてホイール圧Pwが増加される。第1コントローラEAでの液圧偏差hPと第2コントローラEBでの液圧偏差hPは等しいので、液圧偏差hPによって、第1制動ユニットSAから出力されるべき供給圧Pmの低下分が表される。このため、供給圧Pmが目標圧Ptよりも小さい場合(「hP≧hp」の場合)には、供給圧Pmが不足しているので、ホイール圧Pwが不足分(即ち、液圧偏差hP)だけ増加される(即ち、「Pw=Pm+hP」)。これにより、第1制動ユニットSAの不調に起因する供給圧Pmの低下が適切に補われる。なお、第1制動ユニットSAが不調であっても、供給圧Pmが低下していなければ、「hP=0」であるため、補完制御によるホイール圧Pwの増加は実質的には行われない。
確定状態(即ち、不適状態の継続時間Tjが、所定の確定判定時間tk以上である場合)では、第1制動ユニットSAにて、第1モードに代えて、第2モードが選択される。そして、第2制動ユニットSBによってバックアップ制御が実行される。バックアップ制御では、供給圧Pmに基づいてホイール圧Pwが増加される。具体的には、第2制動ユニットSBでは、供給圧Pmを入力として助勢圧Pcが演算され、助勢圧Pcに基づいてホイール圧Pwが増加される。助勢圧Pcは、供給圧Pmを増加して、ホイール圧Pwとする際の、供給圧Pmの増加量(ホイール圧Pwと供給圧Pmとの差)に対応する目標値である。なお、確定状態では、第1制動ユニットSAでは、第1アクチュエータYAを構成する要素(UA、MA等)への給電が停止され、サーボ圧Puが発生されない。即ち、サーボ圧Puが「0(ゼロ)」にされ、供給圧Pmは運転者の筋力のみで発生される。しかしながら、バックアップ制御では、供給圧Pmを入力として、それが増加され、ホイール圧Pwとして出力されるので、ホイール圧Pwを得るために必要な操作力Fpが軽減される。
制動制御装置の異常を早期に補償できるよう、バックアップ制御の開始を早めるための方法の1つは、上記の確定判定時間tk(予め設定された所定時間)を短く設定することである。しかしながら、第1制動ユニットSAの不調が短期的であって、正常に直ちに復帰する場合もある。ブレーキバイワイヤ型の制動制御装置SCでは、通常制御とバックアップ制御とでは、制動操作部材BPの操作特性の発生方法が変化する。つまり、正常状態での通常制御では、第1モードが選択され、制動操作部材BPの操作力Fpは、シミュレータSSによって発生される。一方、異常確定状態でのバックアップ制御では、第2モードが選択され、制動操作部材BPの操作力Fpは、制動装置SX等の剛性によって発生される。従って、通常制御の操作特性とバックアップ制御の操作特性とは異なる。運転者への違和感、及び、短期的な第1制動ユニットSAの不調を考慮すると、確定判定時間tkの短縮は困難となる。
制動制御装置SCでは、第1制動ユニットSAの異常を早期に補償できるよう、通常制御から、補完制御を介して、バックアップ制御に切り替えられる。補完制御では第1モードが選択されるので、短期的な不調の場合には、第2モードに切り替えられることがない。また、補完制御では、第1制動ユニットSAからの供給圧Pmが低下している場合に限って、その低下分の補償が行われる。第1制動ユニットSAの異常が確定する前に補完制御が設けられることで、運転者への違和感が抑制されつつ、第1制動ユニットSAの性能低下が早期に補償される。加えて、第1制動ユニットSAの異常が確定される場合には、補完制御からバックアップ制御に切り替えられる。異常確定の後は、第1制動ユニットSAの機能が失われていても、第1制動ユニットSAの機能が、第2制動ユニットSBによって代替される。つまり、バックアップ制御によって、ホイール圧Pwを確保するために必要な制動操作部材BPの操作力Fpが軽減され、車両減速度が適切に確保され得る。
制動制御装置SCでは、供給圧センサPMは第2アクチュエータYBに内蔵される。そして、通常制御、及び、補完制御において、供給圧センサPMは液圧フィードバック制御の出力情報の検出に利用される。一方、バックアップ制御では、供給圧センサPMは、助勢圧Pc(目標値)を演算するための入力情報の検出に利用される。1つの供給圧センサPMが、各種の調圧制御において、使い分けられることで、装置全体が簡素化される。
<調圧弁UAの駆動制御>
図5のブロック図を参照して、調圧弁UAの駆動制御の詳細(特に、ステップS170、S210の処理)について説明する。該駆動制御の処理は、通常制御、及び、補完制御において、第1コントローラEAによって実行される。調圧弁UAによって、サーボ圧Puが調節され、最終的には、供給圧Pmが調節される。調圧弁UAの駆動制御は、指示電流演算ブロックIS、液圧偏差演算ブロックHP、補償電流演算ブロックIH、及び、第1電流フィードバック制御ブロックIFAにて構成される。
図5のブロック図を参照して、調圧弁UAの駆動制御の詳細(特に、ステップS170、S210の処理)について説明する。該駆動制御の処理は、通常制御、及び、補完制御において、第1コントローラEAによって実行される。調圧弁UAによって、サーボ圧Puが調節され、最終的には、供給圧Pmが調節される。調圧弁UAの駆動制御は、指示電流演算ブロックIS、液圧偏差演算ブロックHP、補償電流演算ブロックIH、及び、第1電流フィードバック制御ブロックIFAにて構成される。
指示電流演算ブロックISでは、目標圧Pt、及び、予め設定された演算マップZisに基づいて、指示電流Isaが演算される。「指示電流Isa」は、目標圧Ptが達成されるために必要な、調圧弁UAの供給電流Ia(第1供給電流)に係る目標値である。演算マップZisに応じて、目標圧Ptの増加に従って、指示電流Isaが増加するように決定される。指示電流演算ブロックISは、目標圧Ptに基づくフィードフォワード制御に相当する。
液圧偏差演算ブロックHPでは、目標圧Ptと供給圧Pmとの偏差hP(液圧偏差)が演算される。具体的には、目標圧Ptから供給圧Pmが減算されて、液圧偏差hPが決定される(即ち、「hP=Pt-Pm」)。
補償電流演算ブロックIHでは、液圧偏差hP、及び、予め設定された演算マップZihに基づいて、補償電流Ihが演算される。指示電流Isaは、目標圧Ptに対応して演算されるが、目標圧Ptと供給圧Pmとの間に誤差が生じる場合がある。「補償電流Ih」は、この誤差を補償(減少)するためのものである。補償電流Ihは、演算マップZihに応じて、液圧偏差hPの増加に従って、増加するように決定される。具体的には、目標圧Ptが供給圧Pmよりも大きく、液圧偏差hPが正符号の場合には、指示電流Isaが増加されるよう、正符号の補償電流Ihが決定される。一方、目標圧Ptが供給圧Pmよりも小さく、液圧偏差hPが負符号の場合には、指示電流Isaが減少されるよう、負符号の補償電流Ihが決定される。ここで、演算マップZihには、不感帯が設けられる。また、補償電流演算ブロックIHは、供給圧Pmに基づくフィードバック制御に相当する。
指示電流Isaに対して、補償電流Ihが加えられて、第1目標電流Itaが演算される(即ち、「Ita=Isa+Ih」)。「第1目標電流Ita」は、調圧弁UAに供給される電流の最終的な目標値である。つまり、第1目標電流Itaは、フィードフォワード項Isaとフィードバック項Ihとの和として決定される。従って、調圧弁UAの駆動制御は、液圧において、フィードフォワード制御(指示電流演算ブロックISの処理)、及び、フィードバック制御(補償電流演算ブロックIHの処理)によって構成される。
第1電流フィードバック制御ブロックIFAでは、第1目標電流Ita(目標値)、及び、第1供給電流Ia(実際値)に基づいて、第1供給電流Iaが、第1目標電流Itaに近付き、一致するように、第1駆動信号Uaが演算される。ここで、第1供給電流Iaは、第1駆動回路DRaに設けられた第1供給電流センサIAによって検出される。第1電流フィードバック制御ブロックIFAでは、「Ita>Ia」であれば、第1供給電流Iaが増加するように第1駆動信号Uaが決定される。一方、「Ita<Ia」であれば、第1供給電流Iaが減少するように第1駆動信号Uaが決定される。つまり、第1電流フィードバック制御ブロックIFAでは、電流に係るフィードバック制御が実行される。従って、調圧弁UAの駆動制御では、液圧に係るフィードバック制御に加え、電流に係るフィードバック制御が備えられる。
<制御弁UBの駆動制御>
図6のブロック図を参照して、補完制御、及び、バックアップ制御での制御弁UBの駆動制御の詳細(特に、ステップS210、S230、S240の処理)について説明する。補完制御、及び、バックアップ制御における駆動制御の処理は、第2コントローラEBによって実行される。
図6のブロック図を参照して、補完制御、及び、バックアップ制御での制御弁UBの駆動制御の詳細(特に、ステップS210、S230、S240の処理)について説明する。補完制御、及び、バックアップ制御における駆動制御の処理は、第2コントローラEBによって実行される。
≪補完制御の場合≫
補完制御における駆動制御について説明する。特定状態が判定される前(即ち、「FJ=0」の場合)には、第2アクチュエータYBの作動は停止され、第2電気モータMB、及び、制御弁UBには給電が行われていない。ステップS140の適否判定が否定され、特定状態が判定される時点(即ち、「FJ=0」から「FJ=1」への切り替え時点)で、第2アクチュエータYBにおいて、第2電気モータMB、及び、制御弁UBが駆動され、補完制御が開始される。補完制御での制御弁UBの駆動制御は、液圧偏差取得ブロックHQ、第2目標電流演算ブロックIBT、及び、第2電流フィードバック制御ブロックIFBにて構成される。
補完制御における駆動制御について説明する。特定状態が判定される前(即ち、「FJ=0」の場合)には、第2アクチュエータYBの作動は停止され、第2電気モータMB、及び、制御弁UBには給電が行われていない。ステップS140の適否判定が否定され、特定状態が判定される時点(即ち、「FJ=0」から「FJ=1」への切り替え時点)で、第2アクチュエータYBにおいて、第2電気モータMB、及び、制御弁UBが駆動され、補完制御が開始される。補完制御での制御弁UBの駆動制御は、液圧偏差取得ブロックHQ、第2目標電流演算ブロックIBT、及び、第2電流フィードバック制御ブロックIFBにて構成される。
液圧偏差取得ブロックHQでは、目標圧Ptと供給圧Pmとの偏差hPが取得される。例えば、液圧偏差hPは、第1コントローラEA(特に、液圧偏差演算ブロックHP)にて演算された値が、通信バスBSを介して第2コントローラEBに入力される。また、第1コントローラEAから送信される操作変位Sp(又は、目標圧Pt)に基づいて、第1コントローラEAと同じ方法(即ち、同様の演算マップを用いた演算)で、第2コントローラEBにて演算されてもよい。何れの場合でも、液圧偏差取得ブロックHQでは、第1コントローラEAにて用いられる液圧偏差hPと同様の液圧偏差hPが、第2コントローラEBにて取得される。補完制御では、液圧偏差hPが、供給圧Pmと調整圧Pq(即ち、ホイール圧Pw)との差圧の目標値として取り扱われる。
供給圧Pmが目標圧Ptよりも小さい場合(詳細には、液圧偏差hPが所定偏差hp以上であり、補完制御の不感帯を超える場合)には、第2目標電流演算ブロックIBTにて、液圧偏差hP、及び、予め設定された演算マップZibに基づいて、第2目標電流Itbが演算される。「第2目標電流Itb」は、制御弁UBによって液圧偏差hPに相当する分の差圧を発生させるために必要な、制御弁UBの供給電流Ib(第2供給電流)に係る目標値である。演算マップZibに応じて、液圧偏差hPの増加に従って、第2目標電流Itbが増加するように決定される。第2目標電流演算ブロックIBTの処理は、前述の指示電流演算ブロックISと同様の処理(即ち、液圧に基づくフィードフォワード制御)である。
第2電流フィードバック制御ブロックIFBでは、第2目標電流Itb(目標値)、及び、第2供給電流Ib(実際値)に基づいて、第2供給電流Ibが、第2目標電流Itbに近付き、一致するように、第2駆動信号Ubが演算される。ここで、第2供給電流Ibは、第2駆動回路DRbに設けられた第2供給電流センサIBによって検出される。第2電流フィードバック制御ブロックIFBでは、「Itb>Ib」であれば、第2供給電流Ibが増加するように第2駆動信号Ubが決定される。一方、「Itb<Ib」であれば、第2供給電流Ibが減少するように第2駆動信号Ubが決定される。第2電流フィードバック制御ブロックIFBでは、前述の第1電流フィードバック制御ブロックIFAと同様の電流に係るフィードバック制御が実行される。
上述した制御弁UBの駆動制御は開ループ制御であるが、液圧に係るフィードバック制御を含む閉ループ制御として構成されてもよい。該構成では、調整圧Pqを検出するよう、制御弁UBの下部に調整圧センサ(非図示)が設けられる。そして、上記の補償電流演算ブロックIHと同様の方法で、供給圧Pmと調整圧Pqとの偏差に基づいて、第2目標電流Itbが微調整される。
≪バックアップ制御の場合≫
バックアップ制御における駆動制御について説明する。確定状態が判定される前(即ち、「FK=0」の場合)には、第1、第2アクチュエータYA、YBは共に駆動されている。ステップS190の確定判定が肯定され、第1制動ユニットSAの異常が確定される時点(即ち、「FK=0」から「FK=1」への切り替え時点)で、第1アクチュエータYAの作動が停止される。導入弁VA、及び、開放弁VBの給電が停止され、入力部NRの作動モードは、第1モードから第2モードに切り替えられる。調圧弁UAへの給電が停止され、サーボ圧Puは「0」にされる。このとき、第2制動ユニットSBでは、補完制御からバックアップ制御に切り替えられる。バックアップ制御での制御弁UBの駆動制御は、助勢圧演算ブロックPC、第2目標電流演算ブロックIBT、及び、第2電流フィードバック制御ブロックIFBにて構成される。
バックアップ制御における駆動制御について説明する。確定状態が判定される前(即ち、「FK=0」の場合)には、第1、第2アクチュエータYA、YBは共に駆動されている。ステップS190の確定判定が肯定され、第1制動ユニットSAの異常が確定される時点(即ち、「FK=0」から「FK=1」への切り替え時点)で、第1アクチュエータYAの作動が停止される。導入弁VA、及び、開放弁VBの給電が停止され、入力部NRの作動モードは、第1モードから第2モードに切り替えられる。調圧弁UAへの給電が停止され、サーボ圧Puは「0」にされる。このとき、第2制動ユニットSBでは、補完制御からバックアップ制御に切り替えられる。バックアップ制御での制御弁UBの駆動制御は、助勢圧演算ブロックPC、第2目標電流演算ブロックIBT、及び、第2電流フィードバック制御ブロックIFBにて構成される。
助勢圧演算ブロックPCでは、供給圧Pm、及び、予め設定された演算マップZpcに基づいて、助勢圧Pcが演算される。「助勢圧Pc」は、ホイール圧Pwを供給圧Pmから増加するための目標値である。詳細には、供給圧Pmと調整圧Pq(即ち、ホイール圧Pw)との差圧の目標値である。演算マップZpcに応じて、供給圧Pmの増加に従って、助勢圧Pcが増加するように決定される。供給圧Pmが助勢圧Pcによって増加されることで、制動操作部材BPの操作力Fpが軽減される。
第2目標電流演算ブロックIBTでは、助勢圧Pc(目標値)、及び、予め設定された演算マップZibに基づいて、第2目標電流Itbが演算される。「第2目標電流Itb」は、助勢圧Pcが達成されるために必要な、制御弁UBの供給電流Ib(第2供給電流)に係る目標値である。演算マップZibに応じて、助勢圧Pcの増加に従って、第2目標電流Itbが増加するように決定される。なお、第2電流フィードバック制御ブロックIFBでの処理は補完制御の場合と同様であるため、説明を省略する。また、調整圧センサが設けられる構成では、バックアップ制御でも制御弁UBの駆動制御にて液圧フィードバック制御が実行されてもよい。
上記の処理例では、助勢圧演算ブロックPCにて、助勢圧Pc(バックアップ制御における供給圧Pmからの液圧増加量の目標値)が、供給圧Pm、及び、演算マップZpcに基づいて演算された。これに代えて、助勢圧Pcは、液圧偏差hPに基づいて演算されてもよい。例えば、助勢圧演算ブロックPCでは、液圧偏差hPが、助勢圧Pcとして決定される。確定状態では、回生装置KG、及び、第1アクチュエータYAの作動が停止され、第1制動ユニットSAの入力部NRでは、第2モードが選択される。第2モードでは、操作変位Spと供給圧Pmとの関係が一義的に定まる。目標圧Ptは、操作変位Spに基づいて演算されるので、供給圧Pmと液圧偏差hPとの関係は、演算マップZpcに相当する。このことから、「助勢圧Pcが、供給圧Pm、及び、演算マップZpcに基づいて演算されること」と「助勢圧Pcが液圧偏差hPに基づいて演算されること」とは等価である。何れの処理でも、助勢圧演算ブロックPCでは、供給圧Pmに基づいて、助勢圧Pcが演算される。
補完制御、及び、バックアップ制御のうちの少なくとも一方では、車両安定性が向上されるよう、前輪ホイール圧Pwfが後輪ホイール圧Pwrよりも大きくなるように調節されてもよい。具体的には、前輪供給電流Ibfが後輪供給電流Ibrよりも大きくなるよう、前輪、後輪供給電流Ibf、Ibrが個別に調整される。
<2系統調圧の構成>
上述した実施形態では、第1制動ユニットSAの正常状態では、第2アクチュエータYBの作動は停止され、第1アクチュエータYAのみが駆動された。この場合、前輪、後輪供給圧Pmf、Pmr(=Pm)は等しいので、前輪、後輪ホイール圧Pwf、Pwr(=Pw)は等しい。このような調圧制御が「1系統調圧」と称呼される。1系統調圧の構成では、通常制御において、第2アクチュエータYBは駆動されないので、供給圧Pmに対応する目標圧Ptm(「目標供給圧」という)とホイール圧Pwに対応する目標圧Ptw(「目標ホイール圧」という)とが一致する(即ち、「Pt=Ptm=Ptw」)。
上述した実施形態では、第1制動ユニットSAの正常状態では、第2アクチュエータYBの作動は停止され、第1アクチュエータYAのみが駆動された。この場合、前輪、後輪供給圧Pmf、Pmr(=Pm)は等しいので、前輪、後輪ホイール圧Pwf、Pwr(=Pw)は等しい。このような調圧制御が「1系統調圧」と称呼される。1系統調圧の構成では、通常制御において、第2アクチュエータYBは駆動されないので、供給圧Pmに対応する目標圧Ptm(「目標供給圧」という)とホイール圧Pwに対応する目標圧Ptw(「目標ホイール圧」という)とが一致する(即ち、「Pt=Ptm=Ptw」)。
1系統調圧の構成に代えて、第1制動ユニットSAの正常時に、第1アクチュエータYAに加え、第2アクチュエータYBが駆動されて、前輪、後輪ホイール圧Pwf、Pwrが別々に調節されてもよい。具体的には、第1アクチュエータYAから、同一の供給圧Pmf、Pmr(=Pm)が、第2アクチュエータYBに供給される。そして、第2アクチュエータYBによって、回生装置KGが備えられる車輪に対応する一方側系統のホイール圧(例えば、前輪ホイール圧Pwf)が、回生装置KGが備えられない車輪に対応する他方側系統のホイール圧(例えば、後輪ホイール圧Pwr)よりも小さくなるように調整される。第2アクチュエータYBの駆動によって、前輪、後輪ホイール圧Pwf、Pwrが、独立且つ個別に調節される調圧制御が「2系統調圧」と称呼される。回生協調制御において、2系統調圧は、1系統調圧に比較して、回生効率が向上されるとともに、前後車輪間の制動力配分が適正化される。
2系統調圧の構成では、正常状態でも第2アクチュエータYBが駆動されるので、供給圧Pmに対応する目標圧Ptm(目標供給圧)とホイール圧Pwに対応する目標圧Ptw(目標ホイール圧)とが異なる。このため、第1アクチュエータYAでは、供給圧Pm(=Pmf、Pmr)が、目標供給圧Ptmに近付き、一致するように、フィードフォワード制御、及び、フィードバック制御が実行される。そして、第2アクチュエータYBでは、前輪、後輪目標ホイール圧Ptwf、Ptwrと目標供給圧Ptm(又は、実際の供給圧Pm)との差圧hPf、hPr(「前輪、後輪目標差圧」という)に基づいて、フィードフォワード制御が実行される。
2系統調圧の構成においても、補完制御、及び、バックアップ制御が適用される。第1制動ユニットSAの異常が疑われる時点(即ち、適否フラグFJが「1」に切り替えられる時点)にて、回生協調制御が終了され、回生制動力Fgの発生が停止される。第1コントローラEAでは通常制御が継続され、第2コントローラEBでは補完制御が開始される。なお、入力部NRでは第1モードの選択が継続される。補完制御では、第1制動ユニットSAから出力される供給圧Pmの低下が補われるよう、液圧偏差hPに基づいて、第2アクチュエータYBによって、ホイール圧Pw(実際値)が液圧偏差hP(目標値)に相当する分だけ、供給圧Pm(実際値)から増加される。第1制動ユニットSAの異常状態が確定される時点(即ち、確定フラグFKが「1」に切り替えられる時点)にて、バックアップ制御が開始される。バックアップ制御では、運転者の操作力Fpが軽減されるよう、第2アクチュエータYBによって、ホイール圧Pw(実際値)が助勢圧Pc(目標値)に相当する分だけ、供給圧Pm(実際値)から増加される。2系統調圧の構成であっても、1系統調圧の構成と同様に、補完制御によって、第1制動ユニットSAの異常に対する補償が早期に行われる。
<他の実施形態>
以下、他の実施形態について説明する。他の実施形態においても、上記同様の効果(装置異常の早期補償、装置構成の簡素化、等)を奏する。
以下、他の実施形態について説明する。他の実施形態においても、上記同様の効果(装置異常の早期補償、装置構成の簡素化、等)を奏する。
上述の実施形態では、各種制動力の目標値(Fv、Fx、Fh、Fn等)が車両JVに作用する前後力の次元で演算された。これに代えて、車両JVの減速度の次元、或いは、車輪WHのトルクの次元で演算されてもよい。これは、前後力から車両減速度に至る状態量(「力に係る状態量」という)は、等価であることに基づく。従って、目標圧Ptは、車両JVに作用する前後力から車両JVの減速度に至るまでの力に係る状態量に基づいて演算される。
上述の実施形態では、2系統の制動系統として、前後型のものが採用された。これに代えて、2系統の制動系統として、ダイアゴナル型(「X型」ともいう)のものが採用されてもよい。該構成では、2つのマスタ室Pmのうちの一方が、左前輪ホイールシリンダ、及び、右後輪ホイールシリンダに接続され、2つのマスタ室Pmのうちの他方が、右前輪ホイールシリンダ、及び、左後輪ホイールシリンダに接続される。但し、2系統調圧が採用される構成では、制動系統は、前後型に限られる。
上述の実施形態では、供給圧センサPMは、第2アクチュエータYBに内蔵され、第2コントローラEBに接続された。そして、第1コントローラEAは、通信バスBSを通して供給圧Pmを取得した。これとは逆に、供給圧センサPMが、第1アクチュエータYAに内蔵され、第1コントローラEAに接続されてもよい。該構成では、補完制御、及び、バックアップ制御の実行に際して、第2コントローラEBは、通信バスBSを通して供給圧Pmを取得する。しかしながら、前者構成の方が、後者構成に比較して、機能分散、及び、フェイルセーフの観点で有利である。例えば、第1制動ユニットSAの不適状態が通信異常に及ぶ場合には、後者構成では、第2制動ユニットSB(特に、第2コントローラEB)は供給圧Pmを取得できない。このため、供給圧Pmに基づく、補完制御、及び、バックアップ制御が実行できない。また、第2制動ユニットSBでのアンチロックブレーキ制御、横滑り防止制御等の各輪独立制御は供給圧Pmに基づいて実行されるが、供給圧Pmを取得できない場合には各輪独立制御が実行できない。従って、前者構成が、第1制動ユニットSAの不適状態に対応し得る最も簡素な構成である。
上述の実施形態では、調圧部CAとして、流体ポンプQAが吐出する制動液BFの循環流KNを調圧弁UAで絞ることによってサーボ圧Puを調節するもの(所謂、還流型の構成)が例示された。これに代えて、調圧部CAでは、アキュムレータに蓄圧された圧力がリニア型電磁弁によって調節されてもよい(所謂、アキュムレータ型の構成)。また、電気モータで直接駆動されるピストンによって、シリンダ内の体積が増減されて、サーボ圧Puが調整されてもよい(所謂、電動シリンダ型の構成)。何れの構成でも、調圧部CAによって、供給圧Pmが出力信号としてフィードバックされて、サーボ室Ruの液圧Pu(サーボ圧)が電気的に調整される。
上述の実施形態では、マスタシリンダCMとして、タンデム型のものが例示された。これに代えて、シングル型のマスタシリンダCMが採用されてもよい。該構成では、セカンダリマスタピストンNSが省略される。そして、1つのマスタ室Rmが、4つのホイールシリンダCWに接続される。該構成では、マスタシリンダCMから、同一の供給圧Pmf、Pmr(=Pm)が出力される。
シングル型のマスタシリンダCMが採用される構成では、マスタ室Rmが前輪ホイールシリンダCWfに接続され、後輪ホイールシリンダCWrには、調圧部CAからサーボ圧Puが直接供給されてもよい。該構成では、マスタシリンダCMから、前輪供給圧Pmfが出力される。一方、調圧部CAから、サーボ圧Puが、後輪供給圧Pmrとして出力される。
上述の実施形態では、バックアップ制御において、第1アクチュエータYAの作動が停止された。これに代えて、バックアップ制御においても、「調圧部CAに含まれ、供給圧Pmを増加するための構成要素(即ち、第1電気モータMA、調圧弁UA)」が、通常制御の場合に比較して、その出力を減少(低下)させた上で、駆動が継続されてもよい。これにより、バックアップ制御においても僅かにサーボ圧Puが発生されるので、操作力Fpを軽減する効果がある。或いは、調圧弁UAへの給電は完全に停止されるが、第1電気モータMAへの給電は継続されてもよい。この場合、バックアップ制御では、第1電気モータMAは低回転数nxで駆動され続ける。ここで、「低回転数nx」は、予め設定された所定値(定数)であり、通常制御における第1電気モータMAの回転数に比較して、極めて小さい値(電気モータMAの起動応答性を確保するためには十分な所定回転数)である。第1電気モータMAの駆動が継続されることで、正常状態に復帰した際に、通常制御が迅速に再開され得る。なお、バックアップ制御では、第1電気モータMA等への給電は継続されても、導入弁VA、及び、開放弁VBへの給電は停止され、入力部NRの作動モードは第2モードにされる。
上述の実施形態では、アプライ部APにおいて、マスタ室Rmの受圧面積rm(マスタ面積)とサーボ室Ruの受圧面積ru(サーボ面積)とが等しく設定された。マスタ面積rmとサーボ面積ruとは等しくなくてもよい。マスタ面積rmとサーボ面積ruとが異なる構成では、サーボ面積ruとマスタ面積rmとの比率に基づいて、供給圧Pmとサーボ圧Puとの変換演算が可能である(即ち、「Pm・rm=Pu・ru」に基づく換算)。
上述の実施形態では、第1制動ユニットSAにおいて、供給圧PmがマスタシリンダCMを介して出力された。即ち、液圧の伝達経路においてアプライ部APと調圧部CAとが直列に配置され、調圧部CAから供給されたサーボ圧Puが、マスタピストンNMを介して、供給圧Pmとして伝達された。これに代えて、アプライ部APと調圧部CAとが並列に配置されてもよい。具体的には、アプライ部AP(特に、マスタシリンダCM)、及び、調圧部CAの夫々は、第2アクチュエータYBに直に接続される。そして、第1モードでは「調圧部CAと第2アクチュエータYBとの接続」が選択され、第2モードでは「アプライ部APと第2アクチュエータYBとの接続」が選択される。例えば、該選択は、オン・オフ電磁弁(「切替弁」という)によって達成される。該構成における第1モードでは、調圧部CAにて発生されたサーボ圧Puが、アプライ部APを介さずに、供給圧Pmとして直接出力される。このとき、アプライ部APはストロークシミュレータSSに接続され、制動操作部材BPの操作力FpはシミュレータSSによって発生される。一方、第2モードでは、制動操作部材BPの操作によって発生されたマスタ室Rmの液圧が、供給圧Pmとして出力される。このとき、アプライ部APはシミュレータSSから切り離される。
上述の実施形態では、制動制御装置SCは、後輪WHrに回生装置KGが備えらない車両JVに適用された。制動制御装置SCは、後輪WHrに回生装置KGが備えられる車両JVに適用されてもよい。
<実施形態のまとめ>
以下、制動制御装置SCの実施形態についてまとめる。制動制御装置SCは、制動操作部材BPの操作変位Sp(操作変位)とホイールシリンダCWの液圧Pw(ホイール圧)とを独立で調整可能なブレーキバイワイヤ型の装置である。
以下、制動制御装置SCの実施形態についてまとめる。制動制御装置SCは、制動操作部材BPの操作変位Sp(操作変位)とホイールシリンダCWの液圧Pw(ホイール圧)とを独立で調整可能なブレーキバイワイヤ型の装置である。
制動制御装置SCには、「制動操作部材BPの操作変位Spに応じて供給圧Pmを出力する第1制動ユニットSA(第1ユニット)」と、「第1制動ユニットSAとホイールシリンダCWとの間に設けられ、供給圧Pmを増加してホイールシリンダCWにホイール圧Pwを出力する第2制動ユニットSB(第2ユニット)」と、「第1制動ユニットSAと第2制動ユニットSBとの間で信号伝達を行う通信バスBS」と、が備えられる。ここで、第1制動ユニットSAでは、操作変位Spと供給圧Pmとが独立する第1モード、及び、操作変位Spと供給圧Pmとが連動する第2モードのうちの何れか一方が選択される。
制動制御装置SCでは、第1制動ユニットSAが正常である場合(正常状態の場合)には、第1制動ユニットSAによって、第1モードが選択されるとともに、供給圧Pmの増加でホイール圧Pwが増加される(即ち、通常制御が実行される)。また、第1制動ユニットSAが異常であることが確定する場合(確定状態の場合)には、第1制動ユニットSAによって第2モードが選択され、第2制動ユニットSBによってホイール圧Pwが供給圧Pmから増加される(即ち、バックアップ制御が実行される)。加えて、確定状態ではないが、第1制動ユニットSAの異常が疑われる場合(特定状態の場合)には、第1制動ユニットSAによって、第1モードが選択されるとともに正常状態の作動が継続される。また、第2制動ユニットSBによって、ホイール圧Pwが供給圧Pmから増加される(即ち、補完制御が実行される)。
制動制御装置SCには、「操作変位Sp(操作量)を検出する操作変位センサSP(操作量センサ)」と、「供給圧Pmを検出する供給圧センサPM」と、が備えられる。そして、正常状態の場合には、第1制動ユニットSAによって、操作変位Spに基づいて目標圧Ptが演算され、供給圧Pmが目標圧Ptに近付くように増加される。また、特定状態の場合には、第2制動ユニットSBによって、目標圧Pt、及び、供給圧Pmとの偏差hP(液圧偏差)の分だけ、ホイール圧Pwが供給圧Pmから増加される。特定状態の液圧偏差hPは、第1、第2制動ユニット(特に、第1、第2コントローラEA、EB)で同様の値として決定される。
制動制御装置SCでは、通常制御に加え、通常制御の機能を代替するバックアップ制御が実行される。バックアップ制御は、第1制動ユニットSAの異常が確定した時点(即ち、第1制動ユニットSAが確実に異常であることが判定される時点)で開始されるので、その開始までには或る程度の時間を要する。加えて、バックアップ制御ではブレーキバイワイヤの状態が解消されるので、制動操作部材BPの操作特性は、通常制御から変化する。
制動制御装置SCでは、通常制御からバックアップ制御に遷移する間に、補完制御が実行される。補完制御は、第1制動ユニットSAの異常は確定されないが、第1制動ユニットSAの異常が疑わしい時点で開始される。補完制御では、通常制御における第1制動ユニットSAの作動が継続される。第1制動ユニットSAでは、供給圧Pmが目標圧Ptに一致するようにフィードバック制御が行われるので、本来は、供給圧Pmは目標圧Ptに一致するはずである。しかしながら、第1制動ユニットSAの不調に起因して、供給圧Pmが十分に発生されない場合がある。このような場合に対応するよう、第2制動ユニットSBでは、目標圧Ptと供給圧Pmとの偏差hPに基づいて、ホイール圧Pw(=Pq)が、液圧偏差hPの分だけ供給圧Pmから増加される。これは、液圧偏差hPは、制動制御装置SCが正常であれば、本来出力されるはずである供給圧(即ち、目標圧Pt)と実際に発生した供給圧Pmとの乖離(即ち、供給圧Pmの不足分)を表すことに基づく。
制動制御装置SCでは、補完制御によって、第1制動ユニットSAの異常が迅速に補償される。また、補完制御では、第1モードが選択され、ブレーキバイワイヤの状態が維持される。このため、第1制動ユニットSAの異常が短期的であり(例えば、第1電気モータMAの電源電圧Vdの低下)、それが直ちに解消される場合には、制動操作部材BPの操作特性が変化されない。補完制御によって、運転者への違和が抑制されつつ、第1制動ユニットSAの性能低下が補償される。
制動制御装置SCでは、第1制動ユニットSAの異常が確定した場合(FK=1)には、第1制動ユニットSAに含まれ、供給圧Pmの発生源である調圧部CAの出力が、完全に停止されるのではなく、第1制動ユニットSAが正常である場合に比較して、減少されてもよい。異常状態の場合には、第1制動ユニットSAでは第2モードが選択されるので、供給圧Pmは、運転者の筋力で発生される。異常の確定状態であっても、調圧部CAの駆動が可能であれば、調圧部CAの出力が低下されて、その駆動が継続される。例えば、供給圧Pmの発生源である第1電気モータMAが、低回転数nxで駆動される。これにより、異常が解消された場合の第1電気モータMAの起動が速やかに行われる。また、運転者の操作力Fpが、僅かではあるが補助される。
SC…制動制御装置、KG…回生装置、BP…制動操作部材(ブレーキペダル)、SA…第1制動ユニット(第1ユニット)、SB…第2制動ユニット(第2ユニット)、YA…第1流体ユニット(第1アクチュエータ)、YB…第2流体ユニット(第2アクチュエータ)、EA…第1制御ユニット(第1コントローラ)、EB…第2制御ユニット(第2コントローラ)、BS…通信バス、CM…マスタシリンダ、CW…ホイールシリンダ、AP…アプライ部、NR…入力部、CA…調圧部、UA…調圧弁、UB…制御弁、MA、MB…第1、第2電気モータ、QA、QB…第1、第2流体ポンプ、VA…導入弁、VB…開放弁、SP…操作変位センサ(操作量センサ)、PM…供給圧センサ、Sp…操作変位(操作量)、Pm…供給圧、Pu…サーボ圧、Pq…調整圧、Pw…ホイール圧、Pt…目標圧(Pmに対応する目標値)、Pc…助勢圧(PwとPmとの差圧に対応する目標値)、hP…液圧偏差(PtとPmとの液圧差)、FJ…適否フラグ(ステップS140の判定結果)、FK…確定フラグ(ステップS190の判定結果)。
Claims (2)
- 制動操作部材の操作量に応じて供給圧を出力する第1ユニットと、
前記第1ユニットとホイールシリンダとの間に設けられ、前記供給圧を増加して前記ホイールシリンダにホイール圧を出力する第2ユニットと、
前記第1ユニットと前記第2ユニットとの間で信号伝達を行う通信バスと、
を備える車両の制動制御装置であって、
前記第1ユニットは、前記操作量と前記供給圧とが独立する第1モード、及び、前記操作量と前記供給圧とが連動する第2モードのうちの何れか一方を選択し、
前記第1ユニットが正常である正常状態の場合には、前記第1ユニットは前記第1モードを選択するとともに前記供給圧を増加することで前記ホイール圧を増加し、
前記第1ユニットが異常であることが確定する確定状態の場合には、前記第1ユニットは前記第2モードを選択し、前記第2ユニットは前記ホイール圧を前記供給圧から増加し、
前記確定状態ではないが前記第1ユニットの異常が疑われる特定状態の場合には、前記第1ユニットは前記第1モードを選択するとともに前記正常状態の作動を継続し、前記第2ユニットは前記ホイール圧を前記供給圧から増加する、車両の制動制御装置。 - 請求項1に記載される車両の制動制御装置であって、
前記操作量を検出する操作量センサと、
前記供給圧を検出する供給圧センサと、
を備え、
前記正常状態の場合には、前記第1ユニットは前記操作量に基づいて目標圧を演算し、前記供給圧を前記目標圧に近付けるように増加し、
前記特定状態の場合には、前記第2ユニットは前記目標圧、及び、前記供給圧との偏差に相当する分だけ前記ホイール圧を増加する、車両の制動制御装置。
Priority Applications (1)
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JP2021208681A JP2023093198A (ja) | 2021-12-22 | 2021-12-22 | 車両の制動制御装置 |
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JP2021208681A JP2023093198A (ja) | 2021-12-22 | 2021-12-22 | 車両の制動制御装置 |
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ID=87001014
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-
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- 2021-12-22 JP JP2021208681A patent/JP2023093198A/ja active Pending
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