JP2023093144A - 導電性積層体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】基材/ITO層/Ag層の積層構成を有する導電性積層体であって、ITO層とAg層との密着性に優れたものを提供する。【解決手段】本発明は、基材及び前記基材の片面上又は両面上の少なくとも一部に形成された酸化インジウムスズからなるITO層と、前記ITO層上の少なくとも一部に形成されたAgからなるAg層を含む導電性積層体であって、前記ITO層と前記Ag層との間にポリマーからなるバインダー層を備え、前記ポリマーは、主鎖が直鎖であり、且つ、OH基及び/又はCOOH基を側鎖として有するポリマーを含む導電性積層体である。この導電性積層体は、ITO層上にポリアクリル酸等のポリマーを塗布してバインダー層を形成し、Ag粒子を含むAgインクを塗布及び焼成してAg層とすることで製造される。【選択図】図1

Description

本発明は、適宜の基材上に形成された酸化インジウムスズからなるITO層にAg金属層が形成された導電性積層体に関する。特に、ITO層とAg金属層との接合性・密着性に優れた導電性積層体に関する。
スマートフォン、タブレット、PCディスプレイ等のタッチパネル等の電極基板として、透明性を有する導電性積層体が使用されている。この導電性積層体は、ガラスや樹脂等の基材上に電極層が形成する積層構造を有する。前記の各種用途においては、電極層に透光性と導電性が必要であり、電極層には酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide:ITO)が適用されることが多い。こうした導電性積層体は、基材に単層のITO層が形成されたものを基本構成とする(以下、基材にITO層が形成された導電性積層体について、ITO基板と称することがある)。そして、導電性積層体としては、ITO基板のITO層の上に更に1層以上の電極層が必要となる場合がある。
例えば、近年、スマートフォン等において、タッチパネル画面を折畳み可能としてコンパクト化する機器が公表されている。また、ウエアラブルデバイスにおいては、身に着けるための着け心地やファッション性を考慮し、曲面デザインの採用や身体の運動に追従させるために変形可能とすることが求められている。こうした電子機器におけるタッチパネル画面は、PETフィルム等の可撓性のある有機材料を基材としつつ、屈曲しない平面領域の電極にITO層を適用し、屈曲部の電極には曲げ変形への耐性に優れた金属配線を適用することがある。ITOのような酸化物材料は、金属に対して比較的脆い材料であり、曲げ変形の耐性に乏しく断線のおそれがあるからである。また、曲げ変形に対応するためには電極を薄くする必要があるが、ITOは比較的抵抗値が高い材料であり、薄化による抵抗値の上昇が懸念される。こうした、ITO層と金属電極とを併用するとき、それらの電気的接続のため、ITO層上に金属層を積層する構造が必要となる。
ところで、本願出願人は、以前より金属電極・配線の形成手法として、Agインク(Agペースト)を用いたプリンテッドエレクトロニクス技術に基づく金属層(Ag層)の適用を提案している。Agは、低抵抗の金属であることが知られており電極材料として最適である。また、Agインクの塗布及び焼成により形成される銀層は、Ag粒子の焼結体で構成され、比較的柔軟であり曲げ耐性も有する。更に、Ag層を人間の可視領域を超えた極細線とすることで、実質的な透光性を獲得することができる。そして、プリンテッドエレクトロニクス技術は、Agインクの塗布及び焼成によってAg層を形成する方法であり、効率性及び生産性(連続生産性)に優れている。AgインクによるAg層の形成は、大面積のAg層の形成が可能であり、更に、金属インクの構成や塗布条件の制御により、上記した透光性を有する極細線のAg層も形成できるという利点もある。
本願出願人は、上述のようなプリンテッドエレクトロニクス技術に基づく金属配線・金属層の適用範囲を拡大すべく、各種のAgインク及び金属配線に関する多くの先行技術を明らかにしている(特許文献1~特許文献4)。これらの本願出願人による先行技術におけるAgインクの基本的態様としては、アミン等の保護剤により保護されたAg粒子を適宜の溶剤に分散させる。このAgインクは比較的低温で焼結可能であり、低抵抗のAg配線を製造可能である(特許文献1、2)。また、本願出願人よる金属配線の形成技術によれば、極細で高精細なAg層のパターンであって透光性を有するものが形成可能である(特許文献3、4)。
特許5795096号明細書 特許6491753号明細書 特許5916159号明細書 特許6496775号明細書
上記の本願出願人によるAgインクによるAg層の製造プロセスは、基本的に基材の種類を限定するものではない。よって、AgインクをITO層上へ塗布することで導電性積層体の製造も可能であると考えられる。但し、こうした積層体においては、ITO層とAg層との密着性が要求される。この点、本発明者等は、ITO層上にAgインクによるAg層を形成する予備的検討を実施したところ、一応のAg層の固定は確認されたものの、基材の変形や軽微な引掻きによってAg層の剥離が生じることが確認されている。
本発明は、以上のような背景の下になされたものであり、適宜の基材及びITO層上にAgからなるAg層が形成された導電性積層体について、ITO層とAg層との密着性に優れたものを提供する。また、この導電性積層体の製造方法であって、Agインクを適用するプリンテッドエレクトロニクス技術によりAg層を好適に形成する方法を明らかにする。
上記課題を解決する本発明は、基材及び前記基材の片面上又は両面上の少なくとも一部に形成された酸化インジウムスズからなるITO層と、前記ITO層上の少なくとも一部に形成されたAgからなるAg層を含む導電性積層体であって、前記ITO層と前記Ag層との間にポリマーからなるバインダー層を備え、前記ポリマーは、主鎖が直鎖であり、且つ、前記ポリマーは、主鎖が直鎖であり、且つ、OH基及び/又はCOOH基を側鎖として有するポリマーを含む導電性積層体である。
塗布対象物(本発明ではITO層)へのAgインクの密着性改善の手法としては、Agインクに密着性向上のための添加剤を添加する手法も挙げられる。もっとも、Agインク中の添加剤は、塗布・焼成後にAg層に残留するおそれがある。そのような残留物は、Ag層の抵抗値を上昇させるため、電極・配線としての利用を考慮すれば好ましくはない。また、添加剤がAg粒子の焼結を阻害して、低温焼結性を損なう可能性もある。本発明ではこれらを考慮し、Agインクの構成は従来技術の範囲内とし、ITO層の表面を所定のポリマーにより修飾することで、Agインク及び焼成後の焼結体との密着性を向上させている。以下、本発明に係る導電性積層体及びその製造方法について説明する。
(A)本発明に係る導電性積層体の構成
(a)基材
本発明に適用される基材は、特に限定する必要はなく、金属、セラミックからなる基材が適用でき、更に、樹脂、プラスチック等の有機材料からなる基材も適用可能である。また、各種のガラスを使用することも可能である。本発明は、タッチパネル、ディスプレイ等の表示装置に好適に使用可能であり、そのような用途においては透明体からなる基材を使用するのが好ましい。具体的な材質としては、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリアミド、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリウレタン等が挙げられる。
(b)ITO層
酸化インジウムスズは、酸化インジウム(In)と酸化スズ(SnO)との混合からなる酸化物材料である。本発明におけるITO層は、これまで公知となっている酸化インジウムスズで構成される。酸化インジウムと酸化スズとの混合比は自由に設定可能である。酸化インジウムスズは、Snの含有割合(Sn/(In+Sn))が質量%で5~15%のものが良く知られているが、本発明では混合比に制約はない。また、ITO層となる酸化インジウムスズは、非晶質及び結晶質の双方の構造のものが知られているが、本発明ではいずれであっても良い。尚、非晶質のITO薄膜は、加熱(約150℃以上)により結晶質に変化することが知られている。
また、ITO層の特性は、製造方法や製造条件によって変化するが、本発明でITO層の製造方法に制限はない。ITO層の製造方法としては、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法のような薄膜製造プロセスが良く知られている。また、粉末状の酸化インジウムスズのスラリーをスプレー法、スピンコート法、ディップコート法等で塗布してITO層を形成する方法も知られている。
本発明の導電性積層体におけるITO層の膜厚は、特に制限されることはないが、0.01μm以上1.0μm以下とすることが好ましい。0.01より薄いと抵抗値が高くなってしまい、また1.0μより厚いと透過率の観点で透明電極としての用途に適さない。また、ITO層は、基材表面の少なくとも一部に形成されていれば良く、必ずしも基材全面に形成されることを要しない。
(c)Ag層
上記のITO層を備える基材上にAg層を形成することで本発明に係る導電性積層体となる。Ag層は、ITO層に対して少なくとも一部で重畳して積層構造をとっていれば良い。Ag層の平面寸法においては特に制限はない。一方、Ag層の厚さに関しては、0.02μm以上10μm以下のものが好ましい。過度に厚いAg層は、柔軟性に劣り曲げ等の変形に対して破損や抵抗値の上昇が生じることがある。一方、厚さを過小とすると、抵抗値の均一性が悪化するおそれがある。Ag層の厚さについては、より好ましくは1μm以下とする。
そして、本発明においては、Ag層はAg粒子の焼結体からなるものが好ましい。本発明における焼結体とは、隣接するAg粒子同士が結合した状態であって、焼結体が自重にて崩壊しない程度以上の力で結合した状態を示す意義である。通常の粉末冶金法により形成される「焼結体」のように、構成粒子間の塑性変形やネッキングにより、粒子同士が強固に結合した状態に限定されることはない。焼結体であるAg層を構成するAg粒子は、平均粒径が10nm以上300nm以下であることが好ましい。10nm以下のAg粒子の焼結体は、過度に緻密なものとなり柔軟性に劣るおそれがある。また、300nmを超えるAg粒子の焼結体は空隙が多くなり抵抗値が高くなる場合がある。
また、本発明におけるAg層を構成するAg粒子の純度は97質量%以上が好ましい。97質量%未満になると焼結温度の上昇、電気抵抗値の上昇等の可能性があるからである。このAg粒子の純度は、電子顕微鏡(SEM)等による断面観察を行いつつ、Ag粒子部分についてEPMA(電子線プローブマイクロ分析)やEDX(エネルギー分散型X線分析)を行うことで測定できる。
そして、Ag層を構成する焼結体は、Ag粒子が適度に結合した状態であるものが好ましい。この結合状態については、Ag層の硬度により推定することができ、Ag層の硬度は、0.1GPa以上0.5GPa以下が好ましい。Ag層の硬度は、ナノインデンテーション法により測定できる。ナノインデンテーション法は、特定の測定装置(ナノインデンター)を使用する測定方法であり、当該測定装置に備えられた押し込みヘッドを、測定対象に押し込んだときの荷重と押し込み深さから硬度を測定する方法である。ナノインデンターの押し込みヘッドによる荷重は電磁制御により精密に制御され、ヘッドの移動量も電気的に精密に計測される。ナノインデンター測定では、サンプルの接触剛性(スチフネス)と接触深さを求めることができ、これらによって硬度とヤング率を算出することができる。ナノインデンテーション法は、微小押しこみ試験の国際標準化機構(ISO)による規格化がなされている(ISO14577)。
(d)バインダー層
そして、本発明に係る導電性積層体は、ITO層とAg層との接合界面にポリマーからなるバインダー層を備える。バインダー層は、Ag層とITO層との密着性を向上させるための本発明の必須の構成である。バインダー層はAg層とITO層との接触領域に対し全面的に形成されていることが好ましい。
バインダー層を構成するポリマーは、その化学構造において、主鎖が直鎖であり、且つ、OH基及び/又はCOOH基を側鎖として有するポリマーを含むものである。ITO層は親水性を示すことから、側鎖にOH基及び/又はCOOH基を有するポリマーを適用することで、水素結合等の静電的相互作用を形成しITO層とAg層との密着性を確保する。そして、主鎖が直鎖のポリマーを適用するのは、曲げ変形等を受ける可能性のある基材及びITO層に対して、密着性を維持しながら変形に追従するフレキシブル性を確保するためである。
このポリマーの構成の詳細については、C、Hで構成される炭素数が2以上5以下の飽和炭化水素鎖を主鎖とし、且つ、OH基及び/又はCOOH基を側鎖として有する単量体単位を含むポリマーが好ましい。このポリマーの例示としては、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルアセタールのいずれかが挙げられる。本発明者等による検討から、これらのポリマーにおいて、Ag層に極めて高い密着性を付与することができることが確認されている。尚、下記式によるポリマーの例示において、ポリビニルアセタールについては、ポリビニルアセトアセタール(R=CH)、ポリビニルブチラール(R=C)が好ましく、水酸基の配合比が20mol%以上40mol%以下でアセタール化度60mol%以上75mol%以下のものが好ましい。
Figure 2023093144000002
バインダー層を構成するポリマーの平均分子量が小さ過ぎると流動性が高くなり、Agインクの塗布工程や焼成工程等の際に飛散してITO層上のバインダー層の形成が不十分となるのでAg層の密着性が低下するおそれがある。また、ポリマーの平均分子量が大きい場合、ITO層表面での動きが制限され、バインダー層が不均一となる可能性がある。これらの観点から、ポリマーの平均分子量は、1000以上1000000以下が好ましく、1000以上500000以下がより好ましく、1000以上200000以下が特に好ましい。もっとも、ポリマーの平均分子量は、密着性そのものに悪影響を与えることがないので分子量が大きいポリマーであっても、塗布された領域にAg層との密着性向上効果を付与し得る。尚、本発明において、ポリマーの平均分子量とは質量平均分子量(MW)である。
バインダー層は、上記したポリマーのみからなるものが好ましいが、上記のポリマーを主成分とし、他のポリマーやモノマーを含んでいても良い。例えば、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタールのいずれかを主成分としつつ、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸メチル、ポリエチレンイミン、等のポリマーを含んでいても良い。但し、上記で主成分としたように、バインダー層は、上述のポリマーを80mol%以上含んでいることが好ましい。
本発明の導電性積層体のバインダー層を構成するポリマーは、各種の分析方法で検出可能である。バインダー層に対する分析方法としては、TOF-SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析法)により、バインダー層を構成する各元素の比率やポリマーの化学構造情報を得ることができる。MALDI-TOF-MS(マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型二次イオン質量分析法)では、ポリマーの分子量の評価が可能である。また、汎用ポリマーに対してはフラグメントパターン又は単量体分子量についてデータベースを参照しつつ確認できる。更に、FT-IR(フーリエ変換赤外分光分析)やTG-DTA-MS(示差熱天秤-質量分析)により、ポリマーの側鎖の官能基の評価をすることができる。これらの分析法の一つ以上を適宜に行うことで、バインダー層の構成を推定可能となる。
そして、バインダー層の厚さは、導電性積層体を電子顕微鏡(SEM、TEM)により断面観察することで評価できる。SEM又はTEMによる断面観察像では、ITO層とAgとの間にクリアランスが観察され、これがバインダー層の厚さに相当するのでクリアランス幅を測定する。本発明において、バインダー層の厚さは、0.5nm以上50nm以下が好ましい。0.5nm未満ではバインダー層としての機能が不十分となる。また、50nmを超えるとAg層とITO層との導電性を確保することが困難となる。
以上説明したITO層、バインダー層、Ag層は、基材に対して片面又は両面に形成されていれば良い。
(B)本発明に係る導電性積層体の製造方法
次に、本発明に係る導電性積層体の製造方法について説明する。本発明の導電性積層体は、新規なものであるが、ITO層を備える基材(ITO基板)については公知のものを適用でき、その製造方法も上記したスパッタリング法等で製造できる。また、Ag層の形成についても、上記した本出願人によるAgインク等の公知のAgインクを利用したプリンテッドエレクトロニクス技術が適用できる。本発明の導電性積層体の製造においては、Ag層の形成前に上述のポリマーを塗布してバインダー層を形成する点についてのみ特徴を有する。即ち、本発明に係る導電性積層体の製造方法は、基材の片面上又は両面上の少なくとも一部にITO層が形成されたITO基板を用意する工程、前記ITO基板の前記ITO層の表面にポリマーを含むポリマー溶液を塗布してバインダー層を形成する工程、前記バインダー層の表面に、Ag粒子と溶剤とを必須的に含むAgインクを塗布した後、80℃以上150℃以下で焼成してAg層を形成する工程、を含むものである。以下、導電性積層体の製造方法の各工程について詳細に説明する。
(a)ITO基板の用意
ITO基板は、上記のとおり公知のものを用意すればよい。ITO基板の製造は、上述の基材に対しスパッタリング法等によりITO層を形成することができる。
(b)バインダー層の形成
ITO層上へのバインダー層の形成は、上述したポリマーを含むポリマー溶液をITO基板に塗布することでなされる。ポリマー溶液の溶剤は特に限定されることはなく、ポリマーの種類に応じたものが選択される。市販品のポリマー溶液を使用しても良く、適宜に希釈して濃度調整をしても良い。ポリマー溶液のポリマーの濃度は、0.5質量%以上10質量%以下が好ましい。ポリマー濃度が0.5質量%未満の場合、ITO層上の必要な領域にポリマー分子を配置できないおそれがある。バインダー層は、厚さ0.5nm以上の単分子~数分子程度のポリマーで構成されていても密着性を発揮し得る。但し、ポリマー溶液のポリマー濃度が低過ぎると、部分的にポリマーの無い領域が形成されるおそれがある。一方、ポリマー濃度が10質量%を超えるポリマー溶液では、過剰にポリマーを付着させてAg層とITO層と間の抵抗値を増大させることとなる。
ポリマー溶液は、溶剤に上述のポリマーのみを上記濃度で溶解又は分散させたものが好ましいが、他のポリマー等を添加しても良い。但し、そのような他のポリマーの添加は、上述のポリマーに対して20質量%以下に止めることが好ましい。
ポリマー溶液の塗布方法は、特に限定されず、スピンコート法、ディッピング法、滴下法、スキージ・刷毛等による塗布の他、インクジェット等の印刷法を適用しても良い。バインダー層及びAg層を形成する領域にポリマー溶液を均一に塗布できる方法であれば、塗布方法はいずれでも良い。また、フォトレジスト等によりマスキングを行った上でポリマー溶液を塗布しても良い。
ポリマー溶液の塗布後は、ポリマー溶液の溶剤を揮発させるため必要に応じて乾燥を行っても良い。但し、揮発性の高い溶剤を使用している場合等においては、乾燥工程を別途に設定する必要はない。また、ポリマーの種類によっては、ポリマー溶液の塗布後の処理として焼成処理を行っても良い。焼成により溶剤を揮発させると共に、ポリマーをITO層表面に行き渡させ、所望の領域にバインダー層を形成してAg層との密着性を向上させることができることがある。このようなポリマーの予備焼成処理を行う場合には、50℃以上150℃以下で1分以上300分以下加熱することが好ましい。但し、ポリマーの予備焼成も任意の工程である。例えば、ポリマーとしてポリアクリル酸を適用する場合には、予備焼成処理は不要である。
(c)Ag層の形成
バインダー層の形成後、Agインクの塗布と焼成によりAg層を形成することで本発明に係る導電性積層体が製造される。
(i)Agインク
Agインクは、Ag粒子からなる固形分を溶剤に分散させたインクを基本構成とし、任意に添加剤が含まれる。固形分であるAg粒子は、平均粒径が10nm以上300nm以下であり、保護剤として炭素数が4以上8以下のアミン化合物が少なくとも1種結合したAg粒子である。Ag粒子の粒径範囲として、平均粒径を10nm以上300nm以下とするのは、ITOの分解温度以下のもとで割れの無いAg焼結体を形成できるからである。平均粒径が10nm未満と微細過ぎるAg粒子は、焼結時の体積収縮率が高くAg膜にひび割れが生じ、断線の原因となるおそれがある。平均粒径300nmを超えるAg粒子は、焼結温度を高めに設定する必要があり、低温で焼成すると電気抵抗値が高くなる。Ag粒子の平均粒径は、20nm以上200nm以下が好ましく、30nm以上120nm以下がより好ましく、40nm以上80nm以下が更に好ましい。
また、Ag粒子の粒径分布としては、粒子径の標準偏差と平均粒径との比である変動係数(標準偏差/平均粒子径)が0.05以上0.5以下であるものが好ましい。バインダー層を介したAg層とITO層との密着性とAg層の柔軟性とを確保する上で、Ag粒子の粒径分布には適度なばらつきと収束性をもたせている。また、基板上へ数十nmの厚みでAg層を形成することを想定したとき、Ag粒子の粒子径のばらつきが直接的にAg層の厚さのばらつきに繋がり、表面粗さの増大にも繋がる。表面粗さが増大すると、Ag層の表面に絶縁材料等を塗布又は積層する際に欠陥を生じるおそれがある。この点も考慮した粒径分布である。
そして、Agインク中のAg粒子は、保護剤として炭素数の平均が4~8のアミン化合物と結合した状態で溶剤中に分散される。保護剤とは、Ag粒子の一部又は全面に結合する化合物であって、インク中のAg粒子の凝集を抑制するためのものである。1種又は複数種のアミン化合物が保護剤としてAg粒子と結合する。このとき、Ag粒子と結合する保護剤は、全体の平均で炭素数が4~8のアミン化合物が好ましい。全体の平均の炭素数とは、金属ペーストに含まれる1種又は複数種のアミン化合物について、それらの炭素数を添加量(モル分率)で案分して算出される炭素数である。これは、金属ペーストに含まれるアミン化合物が均等にAg粒子に結合したと仮定したとき、それら炭素数を平均した値である。
本発明で適用する保護剤としてアミン化合物に限定されるのは、Agインクの低温焼結性を確保するためである。アミン化合物は、比較的低温で揮発し、Ag粒子同士の焼結を促すことができる。上記で保護剤であるアミン化合物について、その炭素数の平均が4~8であるのが好ましいとしたのは、炭素数の平均が4未満のアミンは、保護作用に乏しく、Ag粒子を安定的に存在させるのが困難であるからであ。一方、炭素数の平均が8を超えるアミンは、所定の低い抵抗値の配線を形成するのに焼結温度を高温にする必要があるからである。尚、保護剤分子の平均炭素数が8以下であれば、炭素数9以上の比較的平均分子量の大きいアミンも適用添加可能である。例えば、炭素数4のアミンと炭素数12のアミンを混合して保護剤として用いることも可能である。その場合には、平均炭素数が1分子当たり8以下であれば良い。
アミン化合物は、アミノ基が1つである(モノ)アミンや、アミノ基を2つ有するジアミンを適用できる。また、アミノ基に結合する炭化水素基の数は、1つ又は2つが好ましく、1級アミン(RNH)、又は2級アミン(RNH)が好ましい。そして、保護剤としてジアミンを適用する場合、少なくとも1以上のアミノ基が1級アミン又は2級アミンのものが好ましい。アミノ基に結合する炭化水素基は、直鎖構造又は分枝構造を有する鎖式炭化水素の他、環状構造の炭化水素基であっても良い。また、一部に酸素を含んでいても良い。
本発明で適用する保護剤の好適な具体例としては、ブチルアミン(炭素数4)、1,4-ジアミノブタン(炭素数4)、3-メトキシプロピルアミン(炭素数4)、ペンチルアミン(炭素数5)、2,2-ジメチルプロピルアミン(炭素数5)、3-エトキシプロピルアミン(炭素数5)、N,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン(炭素数5)、ヘキシルアミン(炭素数6)、ヘプチルアミン(炭素数7)、ベンジルアミン(炭素数7)、N,N-ジエチル-1,3-ジアミノプロパン(炭素数7)、オクチルアミン(炭素数8)、2-エチルヘキシルアミン(炭素数8)、ノニルアミン(炭素数9)、デシルアミン(炭素数10)、ドデシルアミン(炭素数12)等のアミン化合物が挙げられる。
本発明に係るAgインクにおける保護剤(アミン化合物)の量は、Agインクの重量基準で1000ppm以上30000ppm以下が好ましい。500ppm未満ではAg粒子への保護効果が不足して、Agインク中のAg粒子の分散性が低下する。30000ppmを超えると、焼結体への残存が懸念され、焼結体の硬度、ヤング率に影響を及ぼすおそれがある。
以上説明した保護剤を含むAg粒子の製造方法としては、熱分解性を有する銀化合物を原料とした熱分解法が好適である。熱分解法では、シュウ酸銀(Ag)、ギ酸銀(AgHCO)炭酸銀(AgCO)、酸化銀(AgO)等の加熱により分解して銀を析出可能な銀化合物を原料とし、この原料にアミン等の有機化合物を混合して銀-アミン錯体を形成し、これを加熱・分解してAg粒子を析出させる方法である。Agインクは、このようにして析出したAg粒子を回収して、溶剤に添加することで製造可能である。Ag粒子の保護剤であるアミン化合物は、上記の銀-アミン錯体の生成段階で添加済みとなる。
また、Ag粒子を分散させるAgインクの溶剤としては、炭素数0~16で沸点280℃以下の有機溶剤が好ましい。溶剤は、Agインク塗布後のAg粒子を焼結する際には揮発・除去する必要がある。Ag粒子の焼結と溶剤の除去を比較的低温とするため、沸点が280℃以下の溶剤が好ましい。溶剤の好ましい具体例としては、メタノール(C1、沸点65℃)、エタノール(C2、沸点78℃)、1-プロパノール
(C3、沸点97℃)、2-プロパノール (C3、沸点90℃)、1-ブタノール (C4、沸点118℃)、アセトン(C3、沸点56℃)、トルエン(C3、沸点110℃)、ターピネオール(C10、沸点219℃)、ジヒドロターピネオール(C10、沸点220℃)、テキサノール(C12、沸点260℃)、2,4-ジメチル-1,5-ペンタジオール(C9、沸点150℃)、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート(C16、沸点280℃)が挙げられる。溶剤は複数種を混合して使用しても良く、単品で使用しても良い。
AgインクにおけるAg粒子の含有量は、Agインク全体の質量に対して5質量%以上80質量%以下とするのが好ましい。Agインク中のAg粒子含有量を調整することで、Ag層の厚さを制御することができる。但し、5質量%未満の含有量は、Ag層が薄くなり過ぎることや厚さが不均一となることがある。一方、80質量%を超えたAg粒子を含むAgインクでは粘度が高くなりすぎ、10μm以下の均一な塗膜が困難となる為である。
尚、本発明で使用されるAgインクは、任意的添加剤として有機化合物を含むことができる。具体的には、印刷基材との密着性を向上させるためのプライマー等を添加することができる。スクリーン印刷など比較的高粘度での印刷を実施する場合、印刷性向上の目的でチキソ剤を添加する事がある。これらの任意の有機添加剤の添加量は、添加剤合計としてインク重量に対して2重量%以下とすることが好ましい。
(ii)Agインクの塗布工程
以上説明したAgインクをITO層上に塗布するときの塗布方法には特に制限はない。プリンテッドエレクトロニクス技術における微細パターンでAg層を形成する場合においてはスクリーン印刷やインクジェット等の印刷法が適用できる。もっとも、これに限定されることはなく、ディッピング、スピンコート、ロールコーターやブレード・スキージ等の塗布部材を用いた滴下法を使用しても良い。印刷塗布手法は目的とするパターン形状やAg層厚に応じて適宜選定される。
(iii)焼成工程(Ag粒子の焼結工程)
AgインクをITO基板に塗布した後、焼成処理を行ってAg粒子を焼結してAg層を形成する。焼成処理では、Ag粒子の焼結を進行させると共に、金属膜中に残存し得る保護剤成分等を除去する。焼成処理は、80℃以上180℃で行う。80℃未満では保護剤の脱離や揮発に長時間を要し、焼結の進行も不十分となる傾向がある。一方、また、180℃を超えるとITO層への影響が懸念され、材質によっては基材へも影響が生じ得る。好ましい焼成温度は、80℃以上150℃以下であり、80℃以上120℃以下がより好ましい。焼成時間は、1分以上600分以下が好ましい。尚、焼成工程は、大気雰囲気で行っても良いし、不活性ガス雰囲気または真空雰囲気でも良い。
焼成処理によりAgインク中のAg粒子は結合・焼結してAg層が形成され、本発明に係る導電性積層体が製造される。
以上説明したように、本発明に係る導電性積層体は、ITO層を有するITO基板上にAgからなるAg層を積層した導電材料である。そして、本発明は、ITO層とAg層との間に所定のポリマーからなるバインダー層を備えAg層の密着性が良好となっている。
第1実施形態の実施例1で製造した導電性積層体の表面(Ag層)の形態及び断面形態を示す写真。
第1実施形態:以下、本発明の好適な実施形態について説明する。本実施形態では、ITO基板に各種のポリマーを塗布してバインダー層を形成した後、Agインクを塗布・焼成してAg層を形成して導電性積層体を製造した。そして、Ag層の抵抗値測定と密着性の評価試験を行った。
[ITO基板の準備]
ガラス製基材(30mm×30mm)の全面にスパッタリング法によりITO膜を成膜したITO基板を作製した。ITO層の厚さは200nmである。また、このITO層は、酸化スズ含有率10%の酸化インジウムスズで構成されている。
[バインダー層の形成]
上記ITO基板にポリマー溶液を塗布してバインダー層を形成した。使用したポリマーは、ポリアクリル酸(平均分子量150000)、ポリビニルブチラール(平均分子量110000)、ポリビニルアルコール(平均分子量20000)とした。これらのポリマーは市販品であり、溶剤(2-プロパノール、トルエン)で希釈してポリマー濃度が1.0質量%のポリマー溶液とした。
ポリマー溶液の塗布はスピンコート法で行った。スピンコート条件は、ITO基板の回転数3000rpm、キープ時間30secとした。ポリマー溶液の塗布後、ITO基板を大気中で120℃、30分間加熱して予備焼成してバインダー層を形成した。
[Ag層の形成]
Agインクとして、熱分解法で製造したAg粒子を溶剤としてIPAに分散させた溶液を作製した。Ag粒子の製造では、原料となる銀化合物として炭酸銀102.2g(銀含有量80.0g)を使用した。この銀化合物は、イオン交換水37.3g(炭酸銀100質量部に対して36.4wt%)を加えて湿潤状態にしたものを用意した。そして、銀化合物に保護剤のアミン化合物として3-メトキシプロピルアミンを(銀化合物の銀質量に対するモル比で6倍)加えて銀-アミン錯体を製造した。この銀-アミン錯体を室温から加熱しながら攪拌し、銀-アミン錯体を分解し銀粒子を析出させた。このときの加熱温度は140℃とした。加熱後は反応液を室温まで降下させて冷却し、反応液に有機溶剤(日香NG-120)を添加して洗浄し加圧ろ過してAg粒子を回収した。
本実施形態で製造したAg粒子について、Ag粒子の平均粒径及び粒径分布を測定した。この測定は、金属ペーストを適宜にサンプリングしてSEM観察を行い、得られたSEM像について、500個の銀粒子について2軸平均法にて個々の銀粒子の粒径を測定し、平均値(メジアン径)と標準偏差を算出した。本実施形態で製造したAg粒子の平均粒径は80nmであり、標準偏差は30nmであった(変動係数0.4)。そして、Ag粒子をAg濃度20質量%となるようにIPAに分散させてAgインクとした。
そして、上記Agインクによりバインダー層を形成したITO基板に塗布した。Agインクの塗布はスピンコート法で行った。スピンコート条件は、ITO基板の回転数3000rpm、溶液の滴下時間30secとした。Agインクの塗布後は、大気中で120℃、30分間加熱する焼成処理を行ってAg層を形成し、導電性積層体を製造した。
図1は、実施例1の導電性積層体(バインダー層:ポリアクリル酸)のAg層表面のSEM像(図1(a))と、断面SEM像(図1(b))である。表面SEM像からAg層がAg粒子の焼結体で構成されることが確認される。また、断面SEM像から、Ag層とITO層との間のクリアランスからバインダー層の形成が確認され、その厚さは10nmと推定される。尚、実施例2、3の導電性積層体においても同様の断面形態が観察され、バインダー層の厚さは、10nm程度であった。
比較例:本実施形態の各実施例に対する比較例として、他種ポリマー及びモノマーをITO基板に塗布し、Ag層を形成して導電性積層体を製造した。比較例として塗布したのは、ポリマーとしてポリアクリル酸ナトリウム(平均分子量40000)、ポリビニルピロリドン(平均分子量20000)、エチルセルロース(平均分子量50000)と、モノマーとして、クエン酸、酢酸ナトリウム、オレイン酸、シュウ酸、オレイルアミン、ヘキシルアミン、ジアミンN,N-ジメチル-1,3-プロパンアミンである(いずれも濃度を1.0質量%とした)。塗布方法・条件は本実施形態と同じとした。そして、本実施形態と同様のAgインクを塗布・焼成してAg層を形成し導電性積層体を製造した。
更に、ブランクとなる比較例として、ITO基板に何も塗布せずにAgインクを塗布した導電性積層体も製造した。
参考例:本実施形態におけるバインダー層となるポリマーに関し、ITO基板以外の基材に対するAg層の密着性を確認するため、基材としてガラス板を用いたサンプルを作製した。本実施形態で使用した基材にITO層を形成することなくバインダー層となるポリマー(ポリアクリル酸、ポリビニルブチラール)を塗布し、Agインクを塗布・予備焼成した。ポリマー溶液とAgインクの塗布方法と予備焼成・焼成の条件は第1実施形態と同じとした。
以上の各実施例、比較例、参考例で製造した導電性積層体について、外観の評価、抵抗値測定、密着性の評価を行った。外観評価は、肉眼にてAg層の表面を観察し、Ag層の剥離の有無や金属光沢の有無を確認した。このとき、全面において剥離がなく、均一な金属光沢が認められたものを「優良(◎)」とし、多少濁りがありながらも全面に金属膜が形成されているものを「良(〇)」として合格とした。一方、金属光沢が認めらないまたは前面にAg膜が形成されていないものを「不合格(×)」と評価した。また、各サンプルのAg層について、デジタルテスターを用いてシート抵抗(Ω/□)を測定した。尚、好適なAg層の抵抗値の目安として15Ω/□以下を想定した。
密着性の評価は、各導電性積層体のAg層に対するクロスカット試験にて行った。クロスカット試験では、各サンプルのAg層表について、1mm×1mmの正方形が25個形成するように、カッターにて碁盤目状にクロスカットした。そして、クロスカット領域の上から粘着性のある剥離用のテープ(スリーエム社製、商品名Scоtch#610)を貼り付けて、剥がしたときに剥離した面積割合(剥離後に残った膜面積/剥離前の膜面積×100(%))を求めた。この割合について、下記判定基準に基づきAg層の密着性を判定し、5Bを「優良(◎)」、4Bを「良(〇)」とする一方、3B以下を「不合格(×)」と判定した。
判定基準
・5B:0%剥離(剥離なし)
・4B:5%未満の剥離
・3B:5%以上15%未満の剥離
・2B:15%以上35%未満の剥離
・1B:35%以上65%未満の剥離
・0B:65%以上100%の剥離
本実施形態で製造した実施例、比較例、参考例の導電性積層体について、各評価項目における判定結果を表1に示す。
Figure 2023093144000003
表1から、ポリアクリル酸(実施例1)、ポリビニルブチラール(実施例2)、ポリビニルアルコール(実施例3)によりバインダー層を形成して製造された導電性積層体においては、Ag層の密着性が良好(評価:5B)となることが確認できる。これら実施例で適用されるポリマーは、主鎖が直鎖であり、側鎖にOH基及び/又はCOOH基を含むポリマーである。そして、ポリアクリル酸ナトリウム(比較例1)のような側鎖にカルボキシル基がNaで修飾されたポリマーを適用すると密着性が劣ることとなる。また、のようにポリビニルピロリドン(比較例2)やエチルセルロース(比較例3)のような主鎖が直鎖ではないポリマーについても密着性を確保し難い。そして、比較例4~10の酸やアミン等のモノマーでは、Ag層を密着させるバインダー層を得ることはできない。
また、Ag層の電気抵抗値(シート抵抗)に関しては、いずれも10Ω/□以下であった。各実施例の導電性積層体のAg層は、バインダー層(ポリマー)の構成に依らず、Agが有する良好な電気特性を有すると考えられる。
尚、参考例1、2を参照すると、本発明でバインダー層として有効なポリマーは、基本的に、ITO層に対しては密着性を向上させるが、ガラス基材に対しては効果がない。ポリビニルブチラール(参考例2)のみガラスにも有効である。
第2実施形態:本実施形態では、第1実施形態でバインダー層を構成するポリマーとして有効であったポリアクリル酸、ポリビニルブチラールをバインダー層とする導電性積層体をした。そして、ポリマーの平均分子量、ポリマー溶液のポリマー濃度、ポリマー塗布後の予備焼成の有無、Ag層形成の際の焼成温度に関する条件を変更した。
本実施形態における導電性積層体の製造工程は、第1実施形態と同じとした。そして、第1実施形態同様にして、Ag層表面の外観評価、抵抗値測定を行い、Ag層の密着性を評価した。この評価結果を表2に示す。
Figure 2023093144000004
本実施形態の結果について、まず、ポリマーの平均分子量に関してみると、平均分子量1000000のポリアクリル酸であっても良好な密着性が得られる(No.3、5)。また、バインダー層形成のためのポリマー溶液の濃度に関しては、0.5質量%とすることで全面的に密着性が良好なバインダー層が形成できるといえる。これは、ポリマー濃度が0.1質量%の場合、剥離領域が大きく密着性が不十分であったことから確認される(No.6、13)。ポリマー濃度が低過ぎると基板全面にポリマーを行き渡らせることが困難となり、バインダー層のない領域があったためと考えられる。よって、Ag層を形成する領域の広狭も考慮しながら、ポリマー溶液の濃度を適切に調整してバインダー層を形成することが好ましいといえる。
また、Agインク塗布後の焼成処理における焼成温度に関しては、80℃以上とすることが好ましいと考えられる(No.10、16)。これはAg層の密着性の観点に加えて、Ag層の抵抗値から推察される。焼成温度は、Ag粒子の焼結体であるAg層の焼結の進行に影響を及ぼすと考えられる。焼結温度の増大により、Ag粒子の焼結が進行して低抵抗なAg層になる。Ag層形成の焼成温度が60℃の場合、Ag層の密着性はある程度認められるものの抵抗値が高くなり(No.9)、焼成温度40℃では抵抗値に加えて密着性も悪化する(No.8)
尚、ポリマー塗布後の予備焼成に関しては、予備焼成を行うことなく密着性を有するバインダー層を形成できる(No.12)。予備焼成は、任意的なものであることが確認できた。
以上説明したように、本発明に係る導電性積層体(基材/ITO層/Ag層)においては、ITO層とAg層と界面に密着性向上のためのポリマーからなるバインダー層を備える。本発明に係る導電性積層体は、Ag層の密着性に基材の変形等によっても容易に剥離することなくITO層との積層状態を維持できる。本発明は、透明電極としてITOを適用するスマートフォン、タブレット等のタッチパネル等の電極基板として有用である。

Claims (4)

  1. 基材及び前記基材の片面上又は両面上の少なくとも一部に形成された酸化インジウムスズからなるITO層と、前記ITO層上の少なくとも一部に形成されたAgからなるAg層を含む導電性積層体であって、
    前記ITO層と前記Ag層との間にポリマーからなるバインダー層を備え、
    前記ポリマーは、主鎖が直鎖であり、且つ、OH基及び/又はCOOH基を側鎖として有するポリマーを含む導電性積層体。
  2. Ag層は、平均粒径10nm以上300nm以下のAg粒子の焼結体からなる請求項1記載の導電性積層体。
  3. ポリマーは、ポリアクリル酸、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコールのいずれかである請求項1又は請求項2記載の導電性積層体。
  4. 請求項1~請求項3のいずれかに記載の導電性積層体の製造方法であって、
    基材の片面上又は両面上の少なくとも一部にITO層が形成されたITO基板を用意する工程、
    前記ITO基板の前記ITO層の表面にポリマーを含むポリマー溶液を塗布してバインダー層を形成する工程、
    前記バインダー層の表面に、Ag粒子と溶剤とを必須的に含むAgインクを塗布した後、80℃以上180℃以下で焼成してAg層を形成する工程、を含む導電性積層体の製造方法。
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