JP2023084400A - シート状物 - Google Patents

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Abstract

【課題】たて方向の糸条に沿って綺麗な切り口の手切れができ、且つ製織以降の工程が不要で非常に低コストで製造できるシート状物を提供する。【解決手段】平均繊維長が10~100mmの繊維を主成分として構成される糸条を一方向に一列に引き揃えた状態で樹脂組成物により糸条同士が接着されているシート状物。このシート状物は、例えばポリエステル繊維又はセルロース繊維のいずれかから選択される繊維を主成分として構成される糸条を2000~20000本引き揃えた状態でスラッシャー糊付け機にて一斉に樹脂含浸した後、シリンダー乾燥機で乾燥させることによって得られる。【選択図】図1

Description

本発明は、たて方向の手切れ性に優れたシート状物に関する。
従来より手裂きが容易な布帛としては、梱包用、マスキング用の粘着テープに用いられている織物が良く知られている。この織物は、経糸及び又は緯糸に強力の低い糸を用いることで、低強力糸でない方の糸に沿って、織物を裂けやすくしている。そのような織物の一例としては、粘着テープとして優れた手切れ性能を有し、その切口がきれいでかつ鉤裂が発生しにくくするための織物基布として、該経糸がフラットヤーンであり、且つ該緯糸が経糸よりも繊度の大きい複合仮撚糸、又は部分融着複合仮撚糸とした織物が提案されている(特許文献1)。また、包装材、被覆材等として好適な織物の例として、緯糸に熱融着糸を用い、染色加工中に熱で経糸と緯糸の交差部を融着固定させることで、手切れ性に優れ、引裂いた後の切り口にほつれが生じず、切れ目がきれいな織物が提案されている(特許文献2)。
これらの織物の手裂きした切断面をみると、切断された糸が織物切断面に浮き出てしまって切り口の見栄えが悪くなること、更には糸を切断するのに強い力が必要なため、切断辺が波立ったり伸ばされたりして、とても綺麗な切り口とは言えないものであった。また、これらの技術は、たて方向に手裂きができるよう少なくとも緯糸に特別な糸を用いる必要があり、織物まで製造した上に整理加工まで行う必要があるため、製造コストが多くかかる問題があった。
特開平11-61592号公報 特開2010-281004号公報
本発明は、上記の従来技術の問題を解決するために創案されたものであり、その目的は、たて方向の糸条に沿って綺麗な切り口の手切れができ、且つ製織以降の工程が不要で非常に低コストで製造できるシート状物を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、低強度の糸条を使って織物にするのではなく、糸条を一方向に一列に引き揃えた状態で隣接する糸条同士を接着することにより、手裂きしたときに糸条同士の接着を剥離することで、織物特有の切り口に切断された糸条が残るという従来の問題を克服して、綺麗な切り口の手裂きシートを提供できることを見出し、本発明の完成に至った。
即ち、本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、以下の(1)~(7)の構成を有するものである。
(1)平均繊維長が10~100mmの繊維を主成分として構成される糸条を一方向に一列に引き揃えた状態で樹脂組成物により糸条同士が接着されていることを特徴とするシート状物。
(2)糸条が、木綿、麻等の植物繊維、又はレーヨン、ポリノジック、キュプラ、リヨセル等の再生繊維のいずれかから選択される繊維を主成分として構成されることを特徴とする(1)に記載のシート状物。
(3)糸条が、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、又はポリ乳酸繊維のいずれかから選択される繊維を主成分として構成されることを特徴とする(1)に記載のシート状物。
(4)樹脂組成物が、ポリビニルアルコール、アクリル系糊剤、デンプン、加工デンプン、カルボキシメチルセルロース、及びコーンスターチからなる群から選択される少なくとも1種を主成分とすることを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載のシート状物。
(5)JIS L1096 C法(トラベゾイド法)における引裂強さにおいて、シートのよこ方向の引裂強さが0.2~4.5Nであることを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載のシート状物。
(6)ポリエステル繊維又はセルロース繊維のいずれかから選択される繊維を主成分として構成される糸条を2000~20000本引き揃えた状態でスラッシャー糊付け機にて一斉に樹脂含浸した後、シリンダー乾燥機で乾燥させることによって得られることを特徴とするシート状物の製造方法。
(7)(1)~(5)のいずれかに記載のシート状物が1層のみで用いられていることを特徴とする繊維製品。
本発明のシート状物は、たて方向の手切れが容易にでき、且つ手切れ面が恰もカッターでカットしたように綺麗な切断面を得ることができる。また、切断するよこ巾を糸一本毎に設定することができるため、カット幅を細かくコントロールしてテープを作ることも可能である。
図1は、本発明のシート状物の構造の説明図である。 図2は、本発明のシート状物の一例の手裂き後の平面写真を示す。 図3は、従来の手裂き織物の一例の手裂き後の平面写真を示す。
本発明のシート状物の実施形態について以下詳細に説明する。本発明のシート状物は、糸条を一方向に一列に引き揃えた状態で樹脂組成物により隣接する糸条同士が接着されていることを特徴とする。具体的には、本発明のシート状物は、図1に示すように厚み方向には糸条が積層されず、一方向に延びた糸条が横方向に一列に並列配置して互いに樹脂接着することにより一つの層を形成してシート状物になったものであり、一方向に延びた糸条が束状又は厚み方向に積層されて接着したものは含まれない。本発明のシート状物では、このように糸条が厚さ方向に積層されずに隣接する糸同士が樹脂で接着している形態をとることにより、両隣の糸-糸間の接合面のみが引き剥がされることで、容易に綺麗にたて裂きすることが可能となる。糸条を一方向に一列に引き揃えた状態は、例えばクリールから引き出された複数本の糸条が引き揃えられてビームに巻き取られることで、糸条が長手方向に引き揃えられて横方向に並列して配列されることにより得られる。本発明では、これらの引き揃えられた糸条が2000~20000本横方向に並列された状態で、樹脂含浸を行い、隣接する糸条同士を接着させることでシートを形成していることが好ましい。
上記のように、本発明のシート状物は、糸条がタテ方向に沿った一層の糸条の集合体しかなく、織物のような緯糸が存在しないため、手でたて裂きしたときに糸条に沿って引き裂かれるとともに、切断面に緯糸の切れ端が残らないため、図2に示すように綺麗な切断面を形成することができる。一方、従来の手裂き織物は、緯糸によって経糸を接続しているため、手裂きしたときに図3に示すように裂かれた糸が糸条から飛び出て切り口の見栄えが悪くなる。
糸条は、平均繊維長が10~100mmの繊維を主成分として構成される。ここで主成分とは、糸条全体の50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上を占める成分を言う。平均繊維長が10~100mmの繊維としては、例えば、木綿、麻等のセルロース繊維、絹、羊毛等の動物繊維等の天然繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、アクリル系繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリエチレン繊維、ビニリデン繊維、ポリウレタン繊維、アラミド繊維、ポリアリレート系繊維、ポリ-パラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、エチレンビニルアルコール繊維、アクリレート系繊維、ポリ乳酸等の合成繊維、アセテート、トリアセテート、プロミックス等の半合成繊維、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、リヨセル等の再生繊維(セルロース繊維)、ガラス繊維、金属繊維、炭素繊維等の無機繊維等の化学繊維を用いることができる。尚、これらの繊維は、単一種類で使用しても2種類以上混合して使用してもよい。
上記の繊維の中では、セルロース繊維又はポリエステル繊維が好ましく用いられる。セルロース繊維は、吸放湿性に優れており、入手し易く、比較的安価なので好ましい。セルロース繊維としては、木綿、麻等の植物繊維、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、リヨセル等の再生繊維のいずれかから選択されることが好ましく、特に木綿が好ましい。ポリエステル繊維は、強度が高く、染色し易く、安価で品質が安定していることから好ましい。ポリエステル繊維としては、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリ乳酸繊維のいずれかから選択されることが好ましく、特にポリエチレンテレフタレート繊維が好ましい。
本発明のシート状物は、十分な強度を持つため、使用する糸条の繊維長(天然繊維の場合は有効繊維長)が10~100mmであることが必要である。好ましくは20~60mmであり、より好ましくは25mm~50mmである。繊維長が上記範囲未満になると、シートが綺麗に経糸に沿って縦裂きできずに斜めに裂けやすくなる。また、上記範囲を超えると、紡績が難しくなったり、糸条同士の接着性が低下し易くなる。
また、糸条表面に存在する長さ1mm以上の毛羽数は、糸長10mあたり、300~2000個が好ましく、より好ましくは500~1600個である。毛羽数をこの範囲にすることにより、糸-糸間にある樹脂と毛羽が絡み合って、実用レベルの接着強度を得ることができる。糸長10m当たりの長さ1mm以上の毛羽数が上記範囲未満の場合は、接着強度が低くなって、不必要なときに裂けやすくなり、上記範囲を超えると、糸自身の強度が低下し易くなるおそれがある。糸条表面に存在する長さ3mm以上の毛羽数は、糸長10mあたり、10~150個であることが好ましい。
上記繊維を用いた糸条は、毛羽がある紡績糸が好ましい。糸条がフィラメント糸であると、出来上がったシート状物に実用上十分な強度を持たせることが難しいおそれがある。しかし、紡績糸であれば、フィラメントと混紡した長短複合糸であっても構わない。これらの糸条を2種類以上混紡したものや混撚したものであってもよい。また、これらの糸は、単糸、双糸、三子糸あるいは4本以上の糸を撚り合わせたものでもよい。糸条の総繊度としては、特に制限されないが、英式番手換算で通常5~240番手、好ましくは7~200番手、より好ましくは7~100番手、更に好ましくは9~80番手である。また、紡績糸の撚係数は、2.8~5.5であることが好ましい。撚係数が2.8未満になると糸の強力が低下しやすくなり、5.5を超えると糸-糸間の接着強度が低下しやすくなる。
本発明のシート状物は、上記の糸条を一方向に一列に引き揃えた後、隣接する糸条同士を接着させて一体となったシートを作成することによって得られる。この糸条を一方向に一列に引き揃える方法としては、紡績糸300本~1000本をクリールに乗せて整経機を用いて一方向に一列に糸条を並列させた状態で樹脂含浸して整経ビームに巻き取る方法が挙げられる。また、樹脂含浸せずに巻き取った整経ビームを数本から10本揃えて、各ビームから一斉に引き出して合わせた数千本(例えば、2000~20000本)の糸条を更に一方向に一列に並列させて配列させて一斉に樹脂含浸する方法も採用することができる。この方法では、面積の大きなシートを効率よく製造できる点で好ましい。
上記のようにシート状になった糸条に樹脂を含浸させる手段としては、糸条に樹脂液を含浸させる工程、脱水工程、乾燥工程を経ることにより行うことができる。以下、この一例における各工程を説明する。
樹脂の含浸方法としては、糸条を一方向に一列に引き揃えてシート状にした状態で樹脂液に含浸する方法が好ましい。そうすることでテンションむらがなく、糸に対して均一で、また糸条間に十分に樹脂を含ませることができる。これにより均一で強固なシートを作ることができる。糸条を樹脂含浸させるためには、サイジングの際に糸条と糊液とを接触させるために従来使用されている機械を利用することができる。かかる機械としては、例えばスラッシャー糊付機、整経糊付機、ローラ糊付機、スプレー糊付機等の糊付機を用いることができるが、表面が均一なシートにするためにスラッシャー糊付機や整経糊付機で行うことが好ましい。特に好ましくはスラッシャー糊付機である。樹脂液を含浸された糸は、次に脱水工程に供される。脱水の方法としては、特に限定されず、エアー脱水、遠心脱水、マングル脱水等を用いることができる。
上記脱水後の糸は、その後乾燥工程に供される。乾燥方法としては、シリンダー乾燥、熱風乾燥、高周波誘電加熱、自然乾燥等の方式を採用することができるが、シリンダー乾燥が好ましい。シリンダー乾燥を行うと、シートの表面が平滑で厚みの均一なシートを作ることができる。上記乾燥温度および乾燥時間は、乾燥方法や糸の種類によって異なるが、例えば、熱風乾燥であれば80~140℃で2~120分間であり、シリンダー乾燥であれば80~120℃で0.5~3分間である。このようにして本発明のシート状物を得ることができる。
通常の織物でサイジングするのは、製織時に織機の運動によって受ける大きな張力や摩擦などの外力に対して経糸が耐えられるようにするためである。また通常、製織した後には付着しているサイジング剤を簡単に除去できることが必要であり、そのため、サイジング剤には精練除去性も要求される。これに対して、本発明のシート状物は、製織を行わないため、糸条同士を接着するための樹脂組成物には、必ずしも毛羽伏せや抱合力、平滑性の向上効果が要求されない。そのため、本発明では糊剤と言わず樹脂組成物と呼んでいる。しかし、十分な接着効果を有していれば、通常の経糸糊剤を本発明における樹脂組成物として用いても一向に構わない。
本発明で使用する樹脂組成物としては、ポリビニルアルコール、アクリル酸エステル、デンプン、酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の水溶性セルロース化合物、アクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、エポキシ樹脂系等を用いることができる。上記デンプンとしては、例えば、コーンスターチ、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉、甘藷澱粉等の生澱粉、α化澱粉、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、グラフト化澱粉、カルボキシメチル化澱粉等の加工澱粉が挙げられる。糸条の主たる繊維がセルロース繊維の場合には、ポリビニルアルコール、デンプン、カルボキシメチルセルロースのうち少なくとも一種を主成分とするものを用いることが好ましい。また、糸条の主たる繊維がポリエステル繊維である場合には、ポリビニルアルコール、酢酸ビニル、EVA、アクリル酸エステル系のうち少なくとも一つを主成分にすることが好ましい。尚、本発明における主成分とは、一方向に引き揃えられた糸条に付着させた後、溶媒分を除去したシート状物に付着した樹脂組成物のうち50重量%以上を占めるものを言う。
本発明で使用する樹脂組成物として特に好ましいものは、ポリビニルアルコールである。ポリビニルアルコールを配合することにより、隣接する糸条間の接着性を高めることができる。また、糸条の強度および抱合力を向上させることができる。上記ポリビニルアルコールとしては、従来の織物用糊剤に用いられている公知のものを使用することができる。
上記ポリビニルアルコールの平均ケン化度は、通常60~99モル%、好ましくは65~99モル%、特に好ましくは70~90モル%である。平均ケン化度が低すぎると、樹脂液の粘度が低くなり、繊維への付着率が低下する傾向があり、平均ケン化度が高すぎると、糊液の粘度が高くなり、繊維への付着性が不安定となることから作業性が悪くなる傾向がある。なお、上記の平均ケン化度は、JIS K 6726 3.5に準拠して測定される値である。また、上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、通常100~6000、好ましくは200~5000、特に好ましくは300~4500である。平均重合度が低すぎると、繊維への接着力が不充分となる傾向があり、平均重合度が高すぎると、糊液とした時の粘度が高くなり作業性が悪くなる傾向がある。なお、上記の平均重合度は、JIS K 6726 3.7に準拠して測定される値である。上記ポリビニルアルコールは、未変性ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールのいずれを用いてもよく、変性種、変性量、平均ケン化度、平均重合度が互いに異なる2種以上のものを併用してもよい。
上記ポリビニルアルコールとしては、固体のポリビニルアルコールを水で溶解させた液体状のポリビニルアルコールを用いると、糊液に直接配合することができる点で好ましいが、固形状のものも用いることもできる。不揮発分におけるポリビニルアルコールの配合割合は、不揮発分として、通常0.1~99.999重量%、好ましくは10~99.99重量%、より好ましくは30~99.9重量%である。
また、樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲において、一般に織物用糊剤に配合されている配合剤、例えば、平滑剤、界面活性剤、消泡剤、帯電防止剤、防腐剤、防黴剤等を含有してもよい。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。樹脂組成物は、溶媒に溶解させて樹脂液として用いられることが好ましい。溶媒としては、通常は水であるが、必要に応じて、メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1~4の低級アルコールを用いてもよい。また、これらは、単独でもしくは2種類以上併せて用いることができる。
上記樹脂液の調製方法としては、特に制限はなく、公知一般の方法を採用することができる。例えば、溶媒と樹脂組成物とを配合し、ミキサー等で撹拌しながら、必要に応じて加熱することにより樹脂液を得ることができる。また、樹脂組成物は、前記の各成分を予め混合し、一剤とした状態で溶媒と配合してもよく、また、それぞれの成分を個別に溶媒に配合して溶解させてもよい。
樹脂組成物として液体状のものを用いる場合は、上記調製の際の樹脂液温度としては、通常60℃以下、好ましくは15~50℃、より好ましくは20~45℃とすればよい。固体状の糊剤を用いる場合は、繊維用糊剤の成分を溶媒に分散させた後、80~95℃で30~60分間、加熱撹拌するのが好ましい。
本発明のシート状物における樹脂の付着率は、糸の種類や太さによって異なるため特に限定されないが、通常0.1~80重量%、好ましくは1.0~50重量%、より好ましくは5.0~30重量%である。付着率が少なすぎると、糸条間の接着力が不足する傾向があり、付着率が多すぎると、シート状物が硬くなり過ぎたり、手切れ性が低下する。尚、「付着率」とは、樹脂付け前の糸条の重量に対する、糸条に付着した樹脂組成物の重量の割合を言う。
本発明のシート状物は、上述のように糸条に沿って手切れがしやすいことに特徴がある。手切れがしやすいとは、成人男子が容易に手で切ることができ、更に糸条に沿って綺麗な切断面を有することを言う。糸条に沿わずに斜めに切れたり、カギ裂きするものは含まない。手切れするのに容易ざる力を要したり、逆に不必要なときに裂けてしまうものは不適とする。このような性能を有するためには、トラベゾイド法によるシート状物のよこ方向の引裂強さが0.1~20.0Nであることが好ましく、より好ましくは0.2~10.0N,更に好ましくは0.2~4.5Nである。加えてストリップ法によるたて方向(糸条に沿った方向)の引張強さが、糸条1本当たりに換算して0.5~200Nであることが好ましい。より好ましくは1.0N以上であり、更に好ましくは3.0N以上である。このよこ方向の引裂強さと経方向の糸条1本当たりの引張強さが上記の範囲にあれば、容易にかつ綺麗に手切れすることが可能となる。本発明のシート状物は、上述のように低強度の糸条を使って織物にするのではなく、糸条を一方向に一列に引き揃えた状態で隣接する糸条同士を接着しているので、この範囲のよこ方向の引裂強さと経方向の糸条1本当たりの引張強さを達成することができ、手切れ性に極めて優れる。
本発明のシート状物は、紙や不織布を貼り付けて、意匠性を高めたり、厚みを高めたり、引裂強度を調整してもよい。また、本発明のシート状物の裏面に接着剤を塗布したり接着シートを貼り付けたりして、壁紙や、天井材等の建材、おもちゃや模型等の各種工作物に用いてもよい。また、本発明のシート状物は、テープ状に裂いて各種の被覆材として用いてもよく、多様な用い方が想定される。これらの繊維製品中において、本発明のシート状物は、1層のみで用いられることが、その優れた手切れ性を十分に発揮させるうえで好ましい。
次に、実施例を以下に挙げて本発明の効果を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例における各性能評価は以下の方法により行った。
<単繊維繊度>
化学繊維はJIS L1015 8.5.1正量繊度A法に基づいて、単繊維繊度を求めた。天然繊維はJIS L1019 7.4.2ソータ法による方法に基づいて単繊維繊度を求めた。
<繊維長>
化学繊維の繊維長はJIS L1015 8.4.1ステープルダイヤグラム法(A法)に基づいて平均繊維長を求めた。天然繊維の繊維長はJIS L1019 7.2.1ダブルソータ法(A法)に基づいて有効繊維長を求めた。
<英式番手>
JIS L 1095 9.4.2に準じて、見掛け綿番手を測定し、これを英式番手とした。
<繊維混率>
JIS L1030-2 5.9.2(正量混用率)に準じて測定した。
<糸条の引張強力>
JIS L1015 8.7に準じて、単繊維の引張強度を求めた。
<紡績糸の毛羽数>
紡績糸の毛羽数は、シキボウ株式会社製のF-インデックステスターを用いて測定した。糸長は10mとし、1mm以上の毛羽数及び3mm以上の毛羽数をそれぞれ測定した。
<紡績糸の撚係数>
JIS L1095 9.15.1 A法に準じて撚り数を求め、下記式に基づき撚係数Kを算出した。
撚係数K=[T]/[NE]1/2
(上記式中、[T]は撚り数(回/2.54cm)、[NE]は英式番手である。)
<シート状物のよこ方向の引裂強さ>
JIS L1096 C法(トラベゾイド法)を用いて、シート状物のよこ方向(糸条に沿って手切れする方向)の引裂強さを求めた。
<シート状物の経方向の引張強さ>
JIS L1096 A法(ストリップ法)に準じてたて方向(糸条に沿って引っ張る方向)の引張強さを求めた後、測定試料のつかみ幅に存在する糸条本数で除することで、糸条1本当たりの引張強さを算出した。
<樹脂付着量>
出来上がったシート状物を経10.0cm×緯10.0cmの正方形に採取して、恒温ボックス内で120℃×3時間、乾燥させた後、秤量瓶に入れて、シリカゲル入りデシケータで室温まで冷却したのち、秤量瓶ごと秤量して、シート状物の絶乾重量Aを測定した。その後、樹脂成分の除去処理を行って洗浄したのち、更に先と同じ絶乾処理を行い、樹脂成分が除かれた糸条の絶乾重量Bを測定して、下記式により樹脂付着量を算出した。
樹脂付着量(重量%)=(A-B)/A×100
尚、本実施例の場合、下記の精練処理にて除去処理を行ったが、樹脂の種類により酵素処理や溶剤処理等、適切な方法で樹脂を除けばよい。
精練処理:苛性ソーダ2g/L、非イオン活性剤1g/L(ノニオンHC)の水溶液に浴比1:100で浸漬しながら、70℃にて1時間撹拌処理を行い、その後イオン交換水で洗浄する。尚、精練により分解された糸条及び繊維は全てフィルターで回収して全繊維重量を測定する。
(実施例1)
米国綿(スピーマ、有効繊維長35mm、単繊維繊度1.5dtex)を100%用いて、OHARA製混綿機を用いて混打綿した後、石川製作所製カード機を用いてカードスライバーを作った。コーマ機にかけた後、原織機製練条機に2回通して、210ゲレン/6yd(ヤード)のスライバーとした。更に豊田自動織機製粗紡機に通して、粗糸ゲレンが60ゲレン/15ydの粗糸を製造した。次に、精紡機でこの粗糸に約33倍のドラフトを掛けて、英式番手50/1(50番単糸)の紡績糸(撚係数4.1Twist/inch)を得た。この紡績糸の強力は191.2gfであり、1mm以上の毛羽数が1055個、3mm以上の毛羽数が56個であった。
この紡績糸を津田駒工業製整経機TW1000Sに仕掛け、糸本数590本×整経長350ydを整経用(荒巻)ビームに巻き上げた。同様にしてビームを合計16本作製した。次いで、このビームを16本重ねて、津田駒工業製糊付機HS20に仕掛け、以下の処方の樹脂液(温度50℃)に浸漬後、樹脂付けされた経糸シートを分割せずにシリンダーにて乾燥を行い(シリンダー温度130℃)、隣接する9440本の糸同士が接着した状態で、巻取部でシート状のままロール型に巻き取った。出来上がったシートは幅1700mm、密度141本/inch(2.54cm)となった。
樹脂液:溝端化学(株)製JETSIZE No.200CA(PVA98重量%)濃度14%sol.(%solution水溶液),大阪ガスケミカル(株)製 防腐防カビ剤(コートサイドD2)濃度0.05%sol.
完成したシート状物の樹脂付着量は27.2重量%であった。このシート状物のたて方向の手切れ性は良好であった。具体的には、このシート状物のよこ引裂強さ(糸条同士を引き剥がす方向)を測定したところ0.504Nであった。また経方向の引張強さは糸条1本当たり3.28Nであった。
(実施例2)
1.3デシテックス,カット長38mmのポリエチレンテレフタレート繊維を100重量%として常法の紡績工程を通して英式綿番手10番手、撚り係数4.1の紡績糸を得た。この紡績糸の強力は2363gfであり、1mm以上の毛羽数が1520個、3mm以上の毛羽数が103個であった。この紡績糸を津田駒工業製整経機TW1000Sに仕掛け、糸本数630本×整経長150ydを整経用ビームに巻き上げた。同様に合計10本作成した。次いで、整経されたビームを10本重ねて、津田駒工業(株)製糊付機HS20に仕掛け、以下の処方の樹脂液(温度90℃)に浸漬後、糸条を分割せずにシリンダー乾燥部115℃にて乾燥を行い、隣接する6300本の糸同士が接着した状態で、巻取部でシート状のままロール型に巻き取った。出来上がったシートは幅1700mm、密度94本/inchとなった。完成したシート状物の樹脂付着量は22.1%であった。
樹脂液:溝端化学(株)製1670(PVA:澱粉:アクリル樹脂他=75重量%:10重量%:15重量%)濃度10.1重量%sol.
このシート状物のたて方向の手切れ性は良好であった。具体的には、このシート状物のよこ引裂強さ(糸条同士を引き剥がす方向)を測定したところ2.381Nであった。また経方向の引張強さは糸条1本当たり34.99Nであった。
(実施例3)
オーガニックコットン(有効繊維長31.5mm)を100重量%用いたVARDHMANN社製(インド共和国)英式番手30/1を用いた。この紡績糸の強力は458gfであり、1mm以上の毛羽数が982個、3mm以上の毛羽数が65個であった。津田駒工業製整経機TW1000Sに仕掛け、糸本数630本×整経長300ydを整経用ビームに巻き上げた。同様に合計10本作成した。次いで、整経されたビームを10本重ねて、津田駒工業製糊付機HS-20に仕掛け、温度50℃の樹脂液に浸漬後、糸条を分割せずにシリンダー乾燥部130℃にて乾燥を行い、隣接する6300本の糸同士が接着した状態で、巻取部でシート状のまま巻き取った。出来上がったシートは幅1700mm、密度94本/inchとなった。
樹脂液:溝端化学製JETSIZE No.200CA(PVA98重量%)濃度14%sol.,大阪ガスケミカル(株)製 防腐防カビ剤(コートサイドD2)濃度0.05%sol.
完成したシート状物の樹脂付着量は25.17重量%であった。
このシート状物のたて方向の手切れ性は良好であった。具体的には、このシート状物のよこ引裂強さ(糸条同士を引き剥がす方向)を測定したところ1.385Nであった。また経方向の引張強さは糸条1本当たり22.99Nであった。
本発明のシート状物は、たて方向の糸条に沿って綺麗な切り口の手切れができ、且つ従来の手裂き織物とは異なり、製織以降の工程が不要で非常に低コストで製造できるため、当業界において極めて有用である。

Claims (7)

  1. 平均繊維長が10~100mmの繊維を主成分として構成される糸条を一方向に一列に引き揃えた状態で樹脂組成物により糸条同士が接着されていることを特徴とするシート状物。
  2. 糸条が、木綿、麻等の植物繊維、又はレーヨン、ポリノジック、キュプラ、リヨセル等の再生繊維のいずれかから選択される繊維を主成分として構成されることを特徴とする請求項1に記載のシート状物。
  3. 糸条が、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、又はポリ乳酸繊維のいずれかから選択される繊維を主成分として構成されることを特徴とする請求項1に記載のシート状物。
  4. 樹脂組成物が、ポリビニルアルコール、アクリル系糊剤、デンプン、加工デンプン、カルボキシメチルセルロース、及びコーンスターチからなる群から選択される少なくとも1種を主成分とすることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のシート状物。
  5. JIS L1096 C法(トラベゾイド法)における引裂強さにおいて、シートのよこ方向の引裂強さが0.2~4.5Nであることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のシート状物。
  6. ポリエステル繊維又はセルロース繊維のいずれかから選択される繊維を主成分として構成される糸条を2000~20000本引き揃えた状態でスラッシャー糊付け機にて一斉に樹脂含浸した後、シリンダー乾燥機で乾燥させることによって得られることを特徴とするシート状物の製造方法。
  7. 請求項1~5のいずれかに記載のシート状物が1層のみで用いられていることを特徴とする繊維製品。
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