JP2023076122A - 磁気センサ - Google Patents

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Abstract

【課題】可飽和コイルの磁気飽和時における磁気センサの動作不安定化を防止する。【解決手段】電流検出回路が検出した励起電流の遷移に基づいて算出される可飽和コイルの励起時間に基づいて、可飽和コイルの周囲の磁気を測定する磁気測定部70を備える。磁気測定部70は、第1の励起電流に基づく第1の励起時間Tcwと、第2の励起電流に基づく第2の励起時間Tccwとを加算した加算値Tsumと、励起前の磁気飽和状態を検知する加算値用の磁気飽和検知閾値Tthとに基づいて、励起前の磁気飽和状態を検知し、また、第1の励起時間Tcwと第2の励起時間Tccwとの差分値Tsubと、磁性体の接近を検知する閾値Tdisと、励起前の磁気飽和状態の検知結果とに基づいて、磁性体の接近を検知する。【選択図】図14

Description

本発明は、例えば、磁界の大きさや向きを電気信号に変換する磁気センサに関し、特に、可飽和コイルを用いた磁気センサの回路技術に関するものである。
従来、磁界の大きさや向きを検知して電気信号に変換する磁気センサが知られている。例えば、特許文献1に、磁気センサの回路技術として、可飽和コイルを応用した磁気検出方法が開示されている。
特開2003-215221号公報
特許文献1に記載された可飽和コイル(以下、「コイル」と略称することがある)を応用した磁気検出方法では、電流励起による可飽和コイルの電流励起開始から磁気飽和直後に励起を停止するまでの時間T(励起時間)が、可飽和コイルにかかる外部磁界の向き、大きさによって線形に変化する現象を応用して測定を実施していた(例えば、特許文献1の段落[0017]~[0050]、及び図2参照)。このとき、測定する外部磁界の向き、大きさの程度の差はあるとしても、可飽和コイルに電流励起をする前の段階では、可飽和コイルは飽和していない(非飽和)状態であることが前提としてあった。もし、電流励起する前の段階で可飽和コイル自体が飽和していた場合、特許文献1に記載の磁気センサで想定されていた現象どおりには可飽和コイルの状態が遷移せず、正常に測定できないという問題があった。
本発明は、上記の状況に鑑み、可飽和コイルの磁気飽和時における磁気センサの動作不安定化を防止することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の一態様の磁気センサは、可飽和コイルと、第1の方向の第1の励起電流と、第1の方向とは逆向きの第2の方向の第2の励起電流とを可飽和コイルに供給することができる励起回路と、可飽和コイルにかかる外部磁界と、可飽和コイルの自己誘導磁界とに基づいて可飽和コイルに発生する励起電流を検出する電流検出回路と、電流検出回路が検出した励起電流の遷移に基づいて算出される可飽和コイルの励起時間に基づいて、可飽和コイルの周囲の磁気を測定する磁気測定部と、を備える。
磁気測定部は、第1の励起電流に基づく第1の励起時間と、第2の励起電流に基づく第2の励起時間とを加算した加算値と、励起前の磁気飽和状態を検知する加算値用の磁気飽和検知閾値とに基づいて、励起前の磁気飽和状態を検知し、
第1の励起時間と第2の励起時間との差分値と、磁性体の接近を検知する閾値と、励起前の磁気飽和状態の検知結果とに基づいて、磁性体の接近を検知する。
また、本発明の他の態様の磁気センサは、可飽和コイルと、第1の方向の第1の励起電流と、第1の方向とは逆向きの第2の方向の第2の励起電流とを可飽和コイルに供給することができる励起回路と、可飽和コイルにかかる外部磁界と、可飽和コイルの自己誘導磁界とに基づいて可飽和コイルに発生する励起電流を検出する電流検出回路と、電流検出回路が検出した励起電流の遷移に基づいて算出される可飽和コイルの励起時間に基づいて、可飽和コイルの周囲の磁気を測定する磁気測定部と、を備える。
磁気測定部は、第1の励起電流に基づく第1の励起時間と、励起前の磁気飽和状態を検知する個別用の磁気飽和検知閾値とを比較した第1の個別比較結果と、第2の励起電流に基づく第2の励起時間と、個別用の磁気飽和検知閾値とを比較した第2の個別比較結果との論理和を演算し、論理和の演算結果に基づいて、励起前の磁気飽和状態を検知し、
第1の励起時間と第2の励起時間との差分値と、磁性体の接近を検知する閾値と、励起前の磁気飽和状態の検知結果とに基づいて、磁性体の接近を検知する。
さらに、本発明の他の態様の磁気センサは、可飽和コイルと、第1の方向の第1の励起電流と、第1の方向とは逆向きの第2の方向の第2の励起電流とを可飽和コイルに供給することができる励起回路と、可飽和コイルにかかる外部磁界と、可飽和コイルの自己誘導磁界とに基づいて可飽和コイルに発生する励起電流を検出する電流検出回路と、電流検出回路が検出した励起電流の遷移に基づいて算出される可飽和コイルの励起時間に基づいて、可飽和コイルの周囲の磁気を測定する磁気測定部と、を備える。
磁気測定部は、第1の励起電流に基づく第1の励起時間と、励起前の磁気飽和状態を検知する個別用の磁気飽和検知閾値とを比較した第1の個別比較結果と、第2の励起電流に基づく第2の励起時間と、個別用の磁気飽和検知閾値とを比較した第2の個別比較結果との論理和を演算し、論理和の演算結果に基づいて、励起前の第1の磁気飽和状態を検知し、
第1の励起時間と第2の励起時間との差分値と、磁性体の接近を検知する閾値と、励起前の第1の磁気飽和状態の検知結果とに基づいて、磁性体の接近を検知し、
第1の励起時間と第2の励起時間とを加算した加算値と、励起前の磁気飽和状態を検知する加算値用の磁気飽和検知閾値とを比較し、当該比較結果から励起前の第2の磁気飽和状態を検知し、励起前の第2の磁気飽和状態の検知結果と励起前の第1の磁気飽和状態の検知結果の論理積を演算し、論理積の演算結果に基づいて、励起前の第3の磁気飽和状態を検知する。
本発明の少なくとも一態様によれば、外部磁界により電流励起前の時点で可飽和コイルが磁気飽和していた場合における励起電流の推移を検知することが可能となり、可飽和コイルの磁気飽和時における磁気センサの動作不安定化を防止することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
可飽和コイルのインダクタンスの変動と可飽和コイル内部の磁束密度の関係を示す図である。 可飽和コイルの電流励起する基本的な回路構成例を示す図である。 可飽和コイルの励起電流の向きを2方向(CW、CCW方向)に出力可能な励起回路を用いて電流励起を行う際の回路構成例を示す図である。 Hブリッジ回路を用いて交互に電流励起した際のコイル電流の遷移を示す図である。 磁気飽和状態の可飽和コイルにおける外部磁界Hexの強さ度合い別の励起電流の遷移例を示す図である。 外部磁界Hexと自己誘導磁界Hdrv(t)が同方向ベクトルの場合の電流遷移例を示す図である。 外部磁界Hexと自己誘導磁界Hdrv(t)が逆方向ベクトルであって、外部磁界の強さ度合いが小さい場合の電流遷移例を示す図である。 外部磁界Hexと自己誘導磁界Hdrv(t)が逆方向ベクトルであって、外部磁界の強さ度合いが中くらいの場合の電流遷移例を示す図である。 外部磁界Hexと自己誘導磁界Hdrv(t)が逆方向ベクトルであって、外部磁界の強さ度合いが大きい場合の電流遷移例を示す図である。 外部磁界Hexの強さと向きにより変化する励起時間Tの遷移例を示す図である。 Hブリッジ回路においてCW方向とCCW方向に電流励起した場合のそれぞれの励起時間の推移と、それぞれの励起時間の差分の推移と、外部磁界Hexの強さ度合いとの関係を示す図である。 Hブリッジ回路においてCW方向とCCW方向に電流励起した場合のそれぞれの励起時間の推移と、それぞれの励起時間の和の推移と、外部磁界Hexの強さ度合いとの関係を示す図である。 本発明の一実施形態に係る加算方式と個別判定方式の磁気飽和判定の違いを示す図である。 本発明の一実施形態に係る加算方式の判定ブロックの構成例を示す図である。 本発明の一実施形態に係る個別判定方式の判定ブロックの構成例を示す図である。 本発明の一実施形態に係る複合方式の判定ブロックの構成例を示す図である。 本発明の一実施形態に係る磁気センサの測定システムのブロック構成例を示す図である。 本発明の一実施形態に係る磁気センサの測定システムによるワンパルス測定の手順例を示すフローチャートである。 本発明の一実施形態に係る磁気センサの測定システムによる測定動作全体の手順例を示すフローチャートである。
以下、本発明を実施するための形態の例について、添付図面を参照して説明する。本明細書及び添付図面において実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
はじめに、本発明の実施の形態を説明する前に一般的な磁気センサの測定原理について図1~図4を参照して説明する。
図1は、可飽和コイルのインダクタンスの変動と可飽和コイル内部の磁束密度の関係を示す図である。
図1は、外部から可飽和コイル1の軸方向に対し平行な2方向のベクトル成分の外部磁界(磁場H)をかけた際の、当該可飽和コイル1のインダクタンスLの変化と、可飽和コイル1内部の磁束密度Bの変化との対応をグラフ化したものである。“Lo”は磁気飽和していない場合(非飽和状態)のインダクタンス、“Lsat”は磁気飽和した場合のインダクタンスである。
可飽和コイル1内部の磁界強さがどちらかの方向で一定値(=|Hsat|)を上回ると可飽和コイル1は磁気飽和を起こす。そして、図1に示すように、インダクタンスLが“Lo”から“Lsat”に急峻に低下する。この可飽和コイル1内部の磁界強さにより急峻にインダクタンスLが変動する現象を応用し、磁界強さをセンシングする方法を示したのが、特許文献1に記載の技術である。
図2は、可飽和コイル1の電流励起を起こす基本的な回路構成例を示す図である。
図2に示す電流励起回路10は、例えば、駆動回路11と、可飽和コイル1を介して駆動回路11と接続される電流検出回路12とを備える。例えば、駆動回路11は、定電圧電源Eに接続されて、励起ON信号によりスイッチング駆動するスイッチング素子(例えば、電界効果トランジスタ)を用いたスイッチング回路を含む。駆動回路11は、特許文献1の駆動回路に相当する。電流検知抵抗R及びコンパレータ入力(電流Id)から構成される電流検出回路12は、特許文献1の電流検出回路に相当する。
駆動回路11から電流検出回路12に励起電流i(t)が入力されることで、可飽和コイル1に自己誘導磁界Hdrv(t)が発生する。一方向の励起電流i(t)により、一方向の自己誘導磁界Hdrv(t)が生じる。
図3は、可飽和コイル1の励起電流の向きを2方向(CW方向、CCW方向)に出力可能な励起回路を用いて電流励起を行う際の回路構成例を示す図である。CW方向(第1の方向)とCCW方向(第2の方向)は平行で、お互いに逆向きである。
図3に示す電流励起回路20では、Hブリッジ回路21を用いて電流励起の方向を制御できるように構成されており、自己誘導磁界Hdrv(t)の発生方向を可変することで、可飽和コイル1を逆向きに取り付けた場合と同じ効果を得る。双方向の励起電流i(t)により、お互いに逆方向ベクトルの自己誘導磁界Hdrv(t)が生じる。特許文献1の段落[0012]にも記載されているように、本発明では、この電流励起回路20のCW方向、CCW方向の励起結果の差分(励起時間差)をとってセンシングを行う。
図4は、Hブリッジ回路21を用いて交互に電流励起した際のコイル電流の遷移を示す図である。
可飽和コイル1にかかる外部磁界Hexの大きさと、電流励起により可飽和コイル1自身から自己誘導により発生する励起磁界(自己誘導磁界Hdrv(t))との向きの組合せにより、可飽和コイル1が磁気飽和するまでに必要な励起時間Tが前後していることは、特許文献1の段落[0036]~[0049]に記載された原理のとおりである。図4左側のグラフ(1)は外部磁界Hexが正方向の場合、図4中央のグラフ(2)は外部磁界Hexの強さが0の場合、そして、図4右側のグラフ(3)は外部磁界Hexが負方向の場合における磁束密度Bと励起電流i(t)の遷移をそれぞれ示している。
このように、図4では、外部磁界Hexの向き及びオフセット量(ガウス)“一定”と、自己誘導磁界Hdrvの向き及びオフセット量に応じて、励起時間Tが異なる例を示している。磁気センサでは、外部磁界Hexと自己誘導磁界Hdrv(t)を足した合成磁界の大きさが、一点鎖線で示した|Hsat|を超えるように電流励起する。例えば、|Hsat|が20Gである場合には、外部磁界Hexが“+5G”のとき自己誘導磁界Hdrv(t)を“+15G”加算し、又は自己誘導磁界Hdrv(t)を“-25G”加算することで、可飽和コイル1は磁気飽和し、励起電流i(t)が即座に閾値Ithまで急上昇する。そして、励起電流i(t)が閾値Ithに達すると電流励起が停止する。
ここで、特許文献1に記載の原理では、暗黙の了解として外部磁界Hexのスカラー値|Hex|に関して、|Hex|≦|Hsat|であることが電流励起前の可飽和コイル1の初期状態の前提条件としてあった。なぜなら、この条件が成り立たない場合、つまり|Hex|>|Hsat|の状態は、自己誘導磁界Hdrv(t)をかける前に最初から可飽和コイル1が外部磁界Hexによって磁気飽和していることを示しているからである。この場合、自己誘導磁界Hdrv(t)をかけて磁気飽和するまでの時間を測定することができない。
従来の方式では、この前提条件が成り立たない場合、つまり|Hex|>|Hsat|となるような強い外部磁界Hexが可飽和コイル1に加わった場合についての挙動は示されていない。かつ、従来の原理どおりの機構で磁気センサを構成した場合、後述する現象により磁気センサとしての運用に課題が残っていた。
図5は、磁気飽和状態の可飽和コイル1における外部磁界Hexの強さ度合い別の励起電流の遷移例を示す図である。
図5のグラフ(1)~(3)は、特許文献1では言及されていない、外部磁界Hexにより電流励起前から可飽和コイル1が磁気飽和している場合(|Hex|>|Hsat|)の励起電流の遷移(以下「電流遷移」と記載することがある)を外部磁界Hexの強さ度合い別に示している。図5に示すように、外部磁界Hexのスカラー値が同程度でも、外部磁界Hexの磁気ベクトルの向き(図5上側又は図5下側のいずれか)によって、その電流遷移は大きく異なることがわかる。
例えば、外部磁界Hexと自己誘導磁界Hdrv(t)の磁気ベクトルの向きが同一の場合は、励起時間Tに大きな差は見られない(図5上側)。しかし、外部磁界Hexと自己誘導磁界Hdrv(t)の磁気ベクトルの向きが逆の場合には、外部磁界Hexの強さ度合いが大きいほど、短い励起時間Tで励起電流i(t)が閾値Ithに達して電流励起が停止する(図5下側)。
図6は、外部磁界Hexと自己誘導磁界Hdrv(t)が同方向ベクトルの場合の電流遷移例を示す図である。
外部磁界Hexと自己誘導磁界Hdrv(t)の向きが同方向(図5上側)であれば可飽和コイル1は常に飽和した状態であり、電流励起中は、図6に示すように常に低インダクタンスのままで、電流励起を終えている。これは、可飽和コイル1内部の磁界が磁気飽和の閾値(Hsat)以上の強さであれば、低インダクタンスのまま一定値で安定するからである。これは通常知られている芯材入り可飽和コイル1の磁気飽和現象と同様である。可飽和コイル1のインダクタンスが変化しないため、電流励起の電流増加の割合も一定であり、したがって、励起時間Tも最短の状態で一定である。この安定状態にある最短の励起時間Tを“Tmin”とおく。
互いに逆ベクトルの場合、図5下側のグラフから理解されるように、外部磁界Hexの強さによって励起電流の遷移の仕方は大きく異なる。
このような遷移になる原因は、外部磁界Hexを自己誘導磁界Hdrv(t)が相殺するように作用する点にある。外部磁界Hexで磁気飽和している可飽和コイル1に逆向きの自己誘導磁界Hdrv(t)が加わると、外部磁界Hexが相殺されて可飽和コイル1内部にかかる磁界の強さが小さくなる。可飽和コイル1は可飽和コイル1内部に一定以上の強さの磁界が発生すると磁気飽和するので、逆に内部磁界が一定の強さ以下になると磁気飽和が非飽和状態に遷移してインダクタンスが急峻に上昇する。この現象の起こり方が外部磁界Hexの強さ度合いにより変化するため、励起電流の遷移の仕方が変化する。この変化を正確に把握することが本発明の重要なポイントである。
以下に、図7~図9を参照して外部磁界Hexの強さ度合いによる電流遷移の変化を順に説明する。ただし、図7~図9の各図右側に示すいずれのグラフの場合も|Hex|>|Hsat|とする(グラフ(2))。比較対象として、強さ度合いごとの電流遷移の状態を表すグラフの左側に、外部磁界Hexの強さが磁気飽和の閾値Hsatと同じ(|Hex|=|Hsat|)である場合のグラフ(1)を記載する。
[外部磁界Hexが小さい場合]
図7は、外部磁界Hexと自己誘導磁界Hdrv(t)が逆方向ベクトルであって、外部磁界の強さ度合いが小さい場合の電流遷移例を示す図である。図中の励起電流i(t)上に記載した等号は、図7右側(グラフ(2))と左側(グラフ(1))とで非飽和状態における励起電流i(t)の線形部分の長さと傾きがほぼ同じであることを表し、不等号は、飽和状態における励起電流i(t)の傾きがほぼ同じであることを表している。
ここでは、可飽和コイル1に対し、比較的小さな自己誘導磁界Hdrv(t)で非飽和状態に戻る程度の、CCW方向の外部磁界Hexがかかっている場合の電流遷移を述べる。電流遷移の様子は図7に示すとおりであり、電流励起直後は磁気飽和しているので急峻な傾き(実線部分)で励起電流i(t)が増加しているが、合成磁界の強さがマイナス側のHsatを閾値として非飽和状態に戻りインダクタンスが急峻に上昇するため、電流増加の傾き(破線部分)は小さくなる。
自己誘導磁界Hdrv(t)は電流励起を続ける限り増大するため、やがて増え続ける自己誘導磁界Hdrv(t)により今度は外部磁界Hexと逆方向の合成磁界が可飽和コイル1の中を流れるようになる。そして、合成磁界の強さが反対側(プラス側)のHsatを上回ると、再び磁気飽和を起こしてインダクタンスが低下する。
この(Hex:小)状態の基準としては、励起開始直後と、励起停止直前の2カ所において可飽和コイル1が磁気飽和を起こしているか否かが基準になる。この状態の励起時間Tの長さは、|Hex|=|Hsat|の場合と同じであると近似できる。その理由は、どちら側のベクトル方向で磁気飽和していてもインダクタンスの値が同じ、すなわち励起電流i(t)の傾きが同じだからである。図7左側のグラフ(1)に示す|Hex|=|Hsat|の場合と、図7右側のグラフ(2)に示す|Hex|>|Hsat|の場合とを比較するとわかるように、どちらの場合も非飽和状態で2×Hsat分の自己誘導磁界Hdrv(t)を共通して発生させている。
残りの磁気飽和後の自己誘導磁界Hdrv(t)に関しては、片側で一気に磁界を増やしているか、両側で分散して2箇所で増やしているかの違いだけである。正確には、飽和-非飽和の遷移の際、励起電流i(t)のグラフに屈折点ができるため、グラフ(2)の屈折点が一つ多い(Hex:小)状態の方が、全体の励磁時間Tはわずかに長くなる。
外部磁界Hexがさらに大きくなり、励起停止直前に磁気飽和が起こらなくなる次の(Hex:中)状態になると、励起時間Tに関する上記の平衡条件が崩れる。
[外部磁界Hexが中くらいの場合]
図8は、外部磁界Hexと自己誘導磁界Hdrv(t)が逆方向ベクトルであって、外部磁界の強さ度合いが中くらいの場合の電流遷移例を示す図である。
外部磁界Hexがある程度以上大きくなると、図8右側のグラフ(2)に示すように、励起時間Tは外部磁界Hexが大きくなるほど短くなっていく。図8右側のグラフ(2)を見るとわかるように、実線の磁気飽和状態から非飽和状態に遷移する前に閾値Ith近くまで励起電流i(t)を流すため、図7右側のグラフ(2)のように終端で再び磁気飽和する前に、励起電流i(t)が閾値Ithまで達して電流励起が停止する。厳密には、上記外部磁界Hexが小さい場合及び|Hex|=|Hsat|の場合よりも実線分の励起時間は増えるのだが、インダクタンス(=励起時間単位の電流の増加量)の都合上、破線領域の減少分に比べて微々たる増加である。そのため、全体としては、実線の磁気飽和状態の領域が増える(すなわち|Hex|が大きくなる)ほど励起時間は短くなる。
外部磁界Hexの強さ度合いがさらに大きくなると、終端状態(Hex:大)に移行する。
[外部磁界Hexが大きい場合]
図9は、外部磁界Hexと自己誘導磁界Hdrv(t)が逆方向ベクトルであって、外部磁界の強さ度合いが大きい場合の電流遷移例を示す図である。
外部磁界Hexがさらに大きくなり、閾値Ithの電流を流して発生する自己誘導磁界Hdrv(t)よりも大きくなると、電流励起の間、常に可飽和コイル1は低インピーダンスのままである。そのため、電流遷移は、外部磁界Hexと自己誘導磁界Hdrv(t)の向きが同方向の遷移と同一の状態になり、励起時間Tもまた最小値(Tmin)で一定になる。外部磁界Hexが一定以上の強さになり、この状態に遷移したら外部磁界Hexがこれ以上大きくなってもここから先は大きな特性の変化はない(終端状態)。図9右側のグラフ(2)に示す(Hex:大)状態と、図9左側のグラフ(1)に示す外部磁界Hexと自己誘導磁界Hdrv(t)同士が同ベクトルである場合の遷移とを比べると、どちらも電流励起中は常に低インピーダンス状態であることがわかる。
図7~図9に示したように、可飽和コイル1が外部磁界Hexにより予め磁気飽和した状態において、その向きによって電流励起時の遷移が異なる。特に外部磁界Hexと自己誘導磁界Hdrv(t)のベクトルの向きが逆の場合は、終端状態に至るまでの励起電流i(t)の変化が外部磁界Hexの強さにより大きく異なる。
図10は、外部磁界Hexの強さと向きにより変化する励起時間Tの遷移例を示す図である。
ここでは、電流励起で発生する自己誘導磁界Hdrv(t)のベクトルは、グラフの外部磁界Hex軸(横軸)のプラス方向と同一とする。そして、外部磁界Hexと自己誘導磁界Hdrv(t)の向きが逆方向となる領域(a)~(c)に着目して説明する。領域(a)の状態における|Hex|=|Hsat|の励起時間の近似値を“Tl”、Hex=0の場合の励起時間を“T0”とおく。外部磁界Hexの強さ度合いの推移(領域(a)~(c))を見るとわかるように、磁気飽和後の推移はある程度の強さまでは平衡状態である。しかし、マイナス方向の外部磁界Hexの強さ度合いが領域(a)よりも大きい領域(b)の状態から励起時間が短くなり、さらに領域(c)では最短励起時間Tminに収束することがわかる。
図11は、Hブリッジ回路においてCW方向とCCW方向に電流励起した場合のそれぞれの励起時間の推移と、それぞれの励起時間の差分の推移と、外部磁界Hexの強さ度合いとの関係を示す図である。
図11において、縦軸(励起時間T軸)を境に、片側の自己誘導磁界Hdrv(t)と外部磁界Hexのベクトル向きが同じであればもう片側は逆になるため、励起時間Tの遷移は互いに対称になる。
特許文献1のように、通常、磁気センサとして差動方式の磁気センサを用いた場合、図11の励起時間Tの遷移を見てもわかるとおり、磁気飽和後はCW方向励起時間とCCW方向励起時間のうち、片側の励起時間だけが短くなって差分が縮まる。このため、外部磁界Hexが図10の領域(b)~(c)のように大きすぎる場合、差動出力が無磁界の状態に近くなる。それにより、磁気センサは、検査対象磁性体が過接近しているにも関わらず検査対象磁性体が離れているとみなして磁気センサのスイッチがON状態からOFF状態に戻ってしまう問題があった。また、差動ではなく図10のように、単極で用いた場合でも外部磁界Hexの向きにより励起時間Tの遷移が大きく変わってしまうため、状態の推定ができなかった。特に自己誘導磁界Hdrv(t)と外部磁界Hexの向きが逆の場合、図11と同様、励起時間Tの長さが無磁界と変わらない領域(領域(b))があるため、過接近によるスイッチONからOFFへの切替えが起こってしまう。
<本発明の一実施形態>
そこで、本発明では、上述した問題に対し、可飽和コイル1が電流励起前から磁気飽和していることを検知して、磁気センサの誤判定を防ぎ、磁気近接スイッチセンサとしての運用に安全性を持たせる。すなわち、本発明は、可飽和コイル1が電流励起前に磁気飽和している場合において、励起時間Tの差分が図11に示すスイッチオン閾値ΔTthを下回っていても、強磁界を受けていると判定して変わらずにON状態を維持できるということである。
[加算方式による判定]
差動出力の読み取りでは磁気センサの磁気飽和を一意に検知するのは難しいことは既に述べたとおりである。図11を見ればわかるとおり、縦軸(励起時間T軸)に対して対称な領域(c)において差分が極小になっていくため、無磁界との判別ができなくなるためである。
一方で、磁気飽和後の励起時間Tの特性変化を図11から見ると、磁界の向き(ベクトル)が同方向側は最短励起時間Tminで固定になる。一方、逆方向側は外部磁界Hexで固定になり、逆方向側は外部磁界Hexの大きさに従って、外部磁界Hexの各強さ度合いどおりに推移している。つまり、片側だけが変化してもう片側が固定なパラメータであるので、CW方向励起時間TcwとCCW方向励起時間Tccwの和をとると磁気飽和後の励起時間Tは、特に(Hex:中)~(Hex:大)間において一意な変化を示すパラメータとなる。
ここで、同方向と逆方向の励起時間T同士の加算値Tsumを考えると、同方向側では最短励起時間Tminが固定値で動かないため、実質逆方向側の励起時間Tの変動だけが加算値Tsumの変数成分として残る。図11のHブリッジ回路の励起時間Tcwと励起時間Tccwの和を加算値Tsumとした場合の外部磁界Hexとの関係を図12に示す。
図12は、Hブリッジ回路においてCW方向とCCW方向に電流励起した場合のそれぞれの励起時間の推移と、それぞれの励起時間の和の推移と、外部磁界Hexの強さ度合いとの関係を示す図である。
図12内における加算値Tsumの変化を見るとわかるとおり、磁気飽和後の加算値Tsumは、領域(b)~(c)において加算値Tsumが下がるため、図10に示す励起時間Tcwと励起時間Tccwの差分のように磁気飽和前後で閾値をまたぐことがなくなる。図12より、加算値Tsum軸(縦軸)上に閾値Tthを1点だけ設定すれば、領域(b)~(c)において容易に磁気飽和を検知できることがわかる。
この方式のよいところは、外部磁界Hexの向きにかかわらず加算値Tsumの挙動が励起時間T軸(縦軸)を中心に対称的であるため、2つの値(励起時間Tcwと励起時間Tccw)を加算するだけで磁気飽和の判定が可能である点である。また、従来方式(差動出力を計算するための減算回路)から追加する回路として、2つの励起時間T(励起時間Tcw、励起時間Tccw)の和を求める加算回路が1つと、従来の差動回路の磁気検知出力結果とのOR回路(論理和回路)のみでよい。後述する個別判定方式と比較して、どの回路もアナログ演算回路としては比較的ありふれた回路であるため、実装が容易である。
加算値Tsumの閾値の基準としては、領域(b)~(c)における加算値Tsumが目減りする領域に設定するようにする。また、図12より可飽和コイル1の電流励起が正常に行えている間は、最大でも加算値Tsumの値は2T程度の範囲に収まる。可飽和コイル1の断線などで電流励起が正常に行えない場合、励起電流が流せないため、特許文献1の段落[0046]のように励起パルス停止のトリガ信号がかからず、励起信号がいつまでも停止しない、つまり励起時間Tは正常な挙動ではあり得ないほど長くなる(実際の回路では一定時間後にOFFするように通常設定しているので、このこと自体は回路動作上、問題にはならない)。
この極端に長い加算値Tsumを閾値として検知できるようにすれば(図12中における閾値Tdis)、可飽和コイル1の断線検知を容易に自己診断できる副次的作用がある。従来の差動では、極端に長い励起時間Tも、差分をとると同程度の大きさ同士でゼロになるので検知することができない。
[個別判定方式による判定]
加算方式による磁気飽和測定では、回路機能が単純化できる反面、(Hex:小)の領域は仕組み上、磁気飽和しているとはみなされない。図12の領域(a)~(c)に共通していることは、縦軸(励起時間T軸)を挟んで片側(CW方向又はCCW方向)の励起時間Tが最短励起時間Tminで固定されている点である。可飽和コイル1が磁気飽和している状態で両方の方向で励起すれば、どちらかの方向の励起時間は最短励起時間Tminになる。そこで、個別に判定する必要があるものの、双方向の測定結果のうち、1つ(単方向)でも最短励起時間Tminがあれば磁気飽和しているとみなす方式を提案する。
この方式の優れている点は、可飽和コイル1が飽和した状態を即座に捕捉することができるため、アナログデータの正確性が大きな意味を持つソリューションにおいて有利となることである。つまり、可飽和コイル1が(Hex:小)状態(=領域(a))のように中途半端に磁気飽和して、見かけ上磁気飽和していないように見えるというケースがなくなる。この点は図13に示す加算方式による判定と比較すると明らかである。実用上、磁気飽和検知の励起時間閾値tthは、最短励起時間Tminよりもわずかに長く設定する。
[加算方式と個別判定方式の磁気飽和判定の違い]
図13は、本発明の一実施形態に係る加算方式と個別判定方式の磁気飽和判定の違いを示す図である。
図13において、加算方式の領域Ar1及び個別判定方式の領域Ar2はそれぞれ、各判定で可飽和コイル1が磁気飽和していないとみなされる領域を表している。図13下側における加算方式の判定では、CW方向及びCCW方向の外部磁界Hexの強さ度合いが図12に示した領域(b)に食い込むレベルかどうかを判定する。励起時間Tcwと励起時間Tccwを加算した加算値Tsumが励起時間閾値Tsumを超えていれば、外部磁界Hexの強さ度合いが領域Ar1内であり、可飽和コイル1は磁気飽和していない。なお、安定的な判定のために、励起時間閾値Tthは、領域Ar1が所定のマージンを有して領域(b)にかかるように設定するとよい。
また、図13上側における個別判定方式での判定では、CW方向及びCCW方向の外部磁界Hexの強さ度合いが閾値|Hsat|を超えて領域(a)に食い込むレベルかどうかを判定する。個別の励起時間Tcw及び励起時間Tccwがそれぞれ励起時間閾値tthを超えていれば、外部磁界Hexの強さ度合いが領域Ar2内であり、可飽和コイル1は磁気飽和していない。なお、安定的な判定のために、励起時間閾値tthは、領域Ar2が所定のマージンを有して閾値|Hsat|の内側となるように設定するとよい。
[加算方式による具体例な処理]
以下に、加算方式による処理の具体例について図14を参照して説明する。
図14は、本発明の一実施形態に係る加算方式の判定ブロックの構成例を示す図である。
既述の[加算方式による判定]で述べたように、本実施形態の加算方式では、従来のCW及びCCWの双方向出力時の励起時間Tcw、Tccwの差動アナログデータ(Tsub=Tcw-Tccwとおく)の閾値判定(アナログスイッチ判定)に優先する形で、出力の和(Tsum=Tcw+Tccwとおく)による磁気飽和検知によるスイッチオン判定(磁気飽和スイッチ判定)を追加する。具体的には、アナログスイッチ判定と磁気飽和スイッチ判定との論理和を演算することで、どちらかのスイッチ判定でONであれば、スイッチ出力はON(論理和が真値)になるという構成にする。
また、加算値Tsumによる判定では、磁気飽和スイッチ判定とは別に、可飽和コイル1に電流が流れていれば取り得ないほど励起時間Tが長い場合には([加算方式による判定]における閾値Tdis)、可飽和コイル1が断線したものと判定するエラー判定(断線検知判定)も同時に行うものとする。
図14に示す加算方式の判定ブロック30は、第1比較器31、第2比較器32、第3比較器33、及び論理和回路34を備える。第1比較器31は、従来のアナログスイッチ判定を行うものであり、励起時間Tcw,Tccwの差分値Tsubとスイッチオン閾値ΔTthを比較し、|Tsub|>ΔTthのときON信号を出力する。
第2比較器32は、本発明で追加したブロックであり、励起時間Tcw,Tccwの和である加算値Tsumと閾値Tthを比較し、Tsum<TthのときON信号を出力する。第2比較器32のON信号は磁気飽和検知出力であり、例えば磁性体の過接近が疑われる。
第3比較器33は、本発明で追加したブロックであり、2方向の励起時間Tの和である加算値Tsumと閾値Tdisを比較し、Tsum>TdisのときON信号を出力(断線検知のエラー出力)する。
論理和回路34は、 第1比較器31と第2比較器32のそれぞれの出力を比較し、いずれかの比較器がON信号を出力していれば、ON信号を出力する(スイッチ出力)。
[個別判定方式による具体的な処理]
次に、個別判定方式による処理の具体例について図15を参照して説明する。
図15は、本発明の一実施形態に係る個別判定方式の判定ブロックの構成例を示す図である。
上記[個別判定方式による判定]で述べたように、[加算方式による具体的な処理]におけるアナログスイッチ判定に優先する形で、励起時間Tcw,Tccwのどちらか片側だけでも最短励起時間Tminと近い閾値tth未満であった場合、磁気飽和したとみなす判定(単方向磁気飽和スイッチ判定)を追加する。具体的には、アナログスイッチ判定と、励起時間Tcw,Tccwにおける単方向磁気飽和スイッチ判定の結果からそれぞれ論理和を演算する構成とする。
図15に示す個別判定方式の判定ブロック40は、第1比較器41、第2比較器42、第3比較器43、論理和回路44、及び論理和回路45を備える。第1比較器41は、図14に示した第1比較器31と同様に従来のアナログスイッチ判定を行うものであり、励起時間Tcw,Tccwの差分値Tsubとスイッチオン閾値ΔTthを比較し、|Tsub|>ΔTthのときON信号を出力する。
第2比較器42は、本発明で追加したブロックであり、励起時間Tcwと閾値tthを比較し、Tcw<tthのときON信号を出力する。第2比較器32のON信号は磁気飽和検知出力であり、例えば磁性体の過接近が疑われる。
第3比較器43は、本発明で追加したブロックであり、励起時間Tccwと閾値tthを比較し、Tccw<tthのときON信号を出力する。
論理和回路44は、第2比較器42と第3比較器43のそれぞれの出力を比較し、いずれかの比較器がON信号を出力していれば、ON信号を出力する。論理和回路44のON信号は単方向磁気飽和検知出力であり、例えば磁性体の過接近が疑われる。
論理和回路45は、第1比較器41と論理和回路44のそれぞれの出力を比較し、いずれかの出力がONであればON信号を出力する(スイッチ出力)。
[複合方式による具体的な処理]
次に、加算方式と個別判定方式の双方の機能を取り入れた処理の具体例について図16を参照して説明する。
図16は、本発明の一実施形態に係る複合方式の判定ブロックの構成例を示す図である。
このような複合方式が用いられるケースとして、図12のように可飽和コイル1の磁気飽和を鋭敏に捉えつつ、かつ可飽和コイル1のエラー診断も同時に行いたい場合が想定される。この場合は、個別判定方式の出力を磁気飽和検知の判定で用いつつ、加算判定方式のエラー検知機能を併用する形になる。
また、図13に示したように、加算方式と個別判定方式における磁気飽和検知の領域Ar1,Ar2の違いを利用して、磁気飽和を起こしている外部磁界Hexの強さを段階的に評価することも、この複合方式は可能になる。つまり、加算方式にのみ判定で引っかかる程度の軽度の磁気飽和であるのか、個別判定方式でも引っかかる重度の磁気飽和であるのかが新たに測定情報として出力が可能になる。この判定は、図16で示した破線箇所のように、加算方式と個別判定方式の論理積をとれば容易に実装が可能になる。このような可飽和コイル1の磁気飽和の程度といった細かな測定情報は、従来の1本の信号線が1bitのH(ハイ)/L(ロー)情報に対応するようなバイナリーセンサにおいては信号線の本数が増えるため、必ずしも用いられるものではない。ただし、シリアル出力方式のような情報密度の高い方式においては有用になり得る。
図16に示す複合方式の判定ブロック50は、第1比較器51、第2比較器52、第3比較器53、第4比較器54、第5比較器55、論理和回路56、論理和回路57、及び論理積回路58を備える。
第1比較器51、第2比較器52、及び第3比較器53は、図15に示した個別判定方式で用いられるブロックと同じである。第1比較器51、第2比較器52、及び第3比較器53はそれぞれ、図15に示した第1比較器41、第2比較器42、及び第3比較器43と同じ構成であるので、詳細な説明を省略する。
第4比較器54、及び第5比較器55は、図14に示した加算方式で用いられるブロックと同じである。第4比較器54、及び第5比較器55はそれぞれ、図14に示した第2比較器32、及び第3比較器33と同じ構成であるので、詳細な説明を省略する。
論理和回路56、及び論理和回路57は、図15に示した個別判定方式で用いられるブロックと同じである。論理和回路56、及び論理和回路57はそれぞれ、図15に示した論理和回路44、及び論理和回路45と同じ構成であるので、詳細な説明を省略する。
論理積回路58は、第4比較器54と論理和回路56のそれぞれの出力を比較し、両方の出力がONであればON信号を出力する。このON出力は、強磁界に起因する磁気飽和検知出力である。
[測定システムの構成]
次に、実際の磁気センサの測定システムについて図17を参照して説明する。
図17は、本発明の一実施形態に係る磁気センサの測定システムのブロック構成例を示す図である
実際の磁気センサの測定システムにおいては、特許文献1における段落[0053]~[0054]に記載された応用のように、いったん励起時間Tをサンプルホールド回路などで電圧値に変換後、ADCなどでデジタルデータに変換し、マイクロコントローラ(以下「マイコン」と略記)内部に測定データとして取り込み、マイコンに予め記録されたデジタルデータの閾値と比較判定する方式を用いている。
マイコンにとって、デジタルデータの加算、減算、又は個別の値の比較判定処理はいずれも容易である。処理時間が許す範囲で、[複合方式による具体的な処理]に記載したように、複合的に判定を行っている。つまり、図13において、磁気飽和検知の判定として個別判定方式を採用して、加算方式を可飽和コイル1の自己診断機能として応用する。
図17に示す磁気センサ60の測定システムは、マイコン70、RSフリップフロップ回路80、デマルチプレクサ(図中「DEMUX」)90、励起回路100、電流検出回路110、サンプルホールド回路120、及び論理和回路130を備える。
RSフリップフロップ回路80は、特許文献1の図1におけるRSフリップフロップ回路と同じ役割を有する。すなわち、RSフリップフロップ回路80の役割は、マイコン70から入力される励起開始トリガ信号により電流励起を開始すること(Set)と、電流検出回路110からの閾値電流検知、又は一定時間経過後にシーケンシャルに発する励起停止トリガ信号により励起パルスを停止すること(Reset)である。このRSフリップフロップ回路80の出力Qは、CW又はCCWの向きにデマルチプレクサ90で分岐されて、Hブリッジ回路からなる励起回路100を駆動させる。また、出力Q自体のSet-Resetまでのパルス幅が1測定分の励起時間Tに相当する。
励起回路100は、例えば、Hブリッジ回路から構成される。励起回路100は、RSフリップフロップ回路の出力Qに基づいて、可飽和コイル1をCW方向又はCCW方向に電流励起する。可飽和コイル1には、外部磁界Hexの大きさと向き、及び電流励起の方向に応じた強さ度合いと方向を持つ自己誘導磁界Hdrv(t)が発生する。
電流検出回路110は、Hブリッジ回路(励起回路100)に流れる駆動電流を監視し、閾値電流Ith以上の電流が流れた場合に電流励起停止のトリガパルスを出力する。例えば、電流検出回路110は、電流検知抵抗Rと不図示のコンパレータ(図3参照)とで構成される。
サンプルホールド回路120は、RSフリップフロップ回路80からの出力信号T(励起時間Tの情報に相当)を時間情報から電圧情報に変換し、マイコン70のADC740による電圧値読み取りが実施される保持する。保持した電圧値は、マイコン70からのリセットトリガ信号によりリセットされる。
論理和回路130は、電流検出回路110からの励起停止トリガ信号、又は、マイコン70からの励起停止トリガ信号のいずれかが入力された場合に、RSフリップフロップ回路80にリセット信号を出力する。
[マイコンの内部構成]
マイコン70は、クロック700、プロセッサ710、フラッシュROM720、CW/CCWセレクタ730、ADC740、デマルチプレクサ750、RAM760、比較演算回路770、フラッシュROM780、及びI/F回路790を備える。クロック700のクロック信号により、マイコン70の各ブロックの動作が同期される。また、クロック数を計数することで、クロック数に応じて時間を計測することができる。
プロセッサ710(制御部の一例)は、フラッシュROM720に記録されている制御プログラムをRAM760に読み出して実行することで、センシング動作の全体的な進行制御(例えばシーケンス制御)を行う。プロセッサ710は、図18及び図19に示すフローチャートの処理を実行するため、CW/CCWセレクタ730への方向指示、サンプルホールド回路120の保持値リセット、励起パルスの開始から停止までの制御、ADC740のアナログデータの取り込み、Tcw記憶メモリ761及びTccw記憶メモリ762への測定結果の保存などの処理を適宜実行する。
フラッシュROM720は、プロセッサ710によって実行されるプログラムを格納したコンピューター読取可能な非一過性の記録媒体の一例として用いられる。なお、プロセッサ710として、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等を用いることができる。
CW/CCWセレクタ730は、励起回路100(Hブリッジ回路)の励起方向と、サンプルホールド回路120の読み取り結果を、Tcw記憶メモリ761又はTccw記憶メモリ762のどちらに保存するかを制御する。実際は、CW/CCWセレクタ730はプロセッサ710のシーケンス動作内に組み込まれるため、概念的なものと考えて差し支えない。
ADC740は、サンプルホールド回路120で保持された出力信号Tの電圧情報(測定データ)を取得し、アナログ信号からデジタルデータに変換する。デジタルに変換された測定データは、CW/CCWセレクタ730からの指示に応じて、マイコン70内部のデマルチプレクサ750を介してCW又はCCW用の記憶メモリに割り振られて保存される。
Tcw記憶メモリ761及びTccw記憶メモリ762は、RAM760の所定のメモリ領域として構成され、磁気センサ60の測定システムによる測定結果を一時的に保存する。測定結果は、比較演算回路770での入力変数に用いられる。
フラッシュROM780は、従来技術の差分演算、及び本実施形態により追加した加算演算及び加算方式の判定、及び個別判定方式の各判定を行うための設定閾値を保存している。設定閾値は、比較演算回路770に読み込まれて各判定の基準値になる。
比較演算回路770は、加算方式及び個別判定方式の磁気飽和判定と、従来技術の差分値による磁気検知判定を行う。内部の処理ロジックは、図16に示した複合方式の判定ブロックの構成に準じる。比較演算回路770の入力パラメータとしては、RAM760から取得した測定データである励起時間Tcw及び励起時間Tccwと、それらの測定データから内部の演算回路で導出された加算値Tsum及び差分値Tsubとに対する計4つの判定パラメータと、フラッシュROM780に記憶された判定ロジック(図14~図16)に対応する4つの閾値パラメータとがある。
比較演算回路770内部の演算回路の判定結果及び演算により、図14~図16の各スイッチング判定結果と、外部磁界Hexのアナログ測定データとして差分値Tsubを得られる。演算結果は、センサ構成に応じて次段のI/F回路790において、デジタルの情報データからセンサ出力として加工される。なお、本実施形態では、比較演算回路770には、加算方式(図14)、個別判定方式(図15)、又は複合方式(図16)のいずれかの判定ブロックが実装されるが、比較演算回路770に全ての方式の判定ブロックを実装し、プロセッサ710が任意に又はユーザの指示により判定ブロックを切り替えられるように構成してもよい。
I/F回路790(インターフェース回路)は、マイコン70内の判定結果を電気信号に変換してセンサ出力とする。スイッチ出力であればGPIO、アナログ出力であればDACなどを用いることができる。実際の磁気センサでは、マイコン70の周辺機器においては電気的特性に劣る場合や、シリアル通信規格RS-485など特殊な電気的制御が必要な場合が多い。このため、通常さらにもう1段アナログ素子や専用通信ICによるI/F回路を経由してセンサ出力としてもよい。
例えば、磁気センサ60においては、IEC61131-9で規定されたIO-Linkという1本のセンサ出力信号線が、シリアル通信出力及びスイッチング出力に任意で切り替えられるインターフェースを採用することができる。この場合、通信モードにおいてはスイッチング出力、外部磁界Hexの強さと向き、可飽和コイル1の磁気飽和の有無、可飽和コイル1の断線エラーの有無を同一のパケットデータに封入してシリアル通信データ、スイッチセンサーモードにおいてはスイッチング出力のON/OFF信号を1本の信号線から出力することができる。比較演算回路770において、スイッチングセンサであるがアナログ出力も得られるとしているのは、つまりはシリアル通信方式など、情報密度を多く発信できる出力形態に対応可能であるからである。
[磁気センサのワンパルス測定]
次に、磁気センサ60の測定システムによる測定動作の手順について説明する。
図18に示すワンパルス測定は、CW又はCCW方向における1回分の測定動作を示し、図19が磁器センサとしての動作全体のフローチャートになる。図19に示すフローチャートのとおり、CW/CCWセレクタ730による励起方向の設定をCW又はCCW方向に変更しつつワンパルス測定を複数回行い、測定結果を保存している。
はじめに、磁気センサ60の測定システムによるワンパルス測定の手順について図18を参照して説明する。
図18は、本発明の一実施形態に係る磁気センサ60の測定システムによるワンパルス測定の手順例を示すフローチャートである。
まず、マイコン70のプロセッサ710は、ワンパルス測定処理を開始するとサンプルホールド回路120にリセットトリガ信号を出力し、サンプルホールド回路120をリセットする(S1)。次いで、プロセッサ710は、励起開始トリガパルスをRSフリップフロップ回路80に入力する(S2)。次いで、プロセッサ710は、励起開始から一定時間が経過したかどうかを判定し(S3)、一定時間が経過していない場合は(S3のNO)、ステップS3の判定処理を繰り返す。
一方、プロセッサ710は、励起開始から一定時間が経過した場合(S3のYES)、励起停止トリガパルスをRSフリップフロップ回路80に入力する(S4)。次いで、プロセッサ710は、ADC740にサンプルホールド回路120から出力される測定データを取り込み、デマルチプレクサ750を介してRAM760のTcw記憶メモリ761又はTccw記憶メモリ762に記憶する。ステップS5の処理後、本フローチャートの処理を終了する。
[磁気センサの測定動作全体]
次に、磁気センサ60の測定システムによる測定動作全体の手順について図19を参照して説明する。
図19は、本発明の一実施形態に係る磁気センサ60の測定システムによる測定動作全体の手順例を示すフローチャートである。
まず、マイコン70のプロセッサ710は、CW/CCWセレクタ730をCW方向に設定する(S11)。次いで、プロセッサ710は、図18に示したワンパルス測定を実施する(S12)。図18のワンパルス測定が終了したら処理を図19のステップS13に進める。
次いで、プロセッサ710は、ワンパルス測定の測定結果をRAM760に保存する(S13)。次いで、プロセッサ710は、CW/CCWセレクタ730を前回と逆の判定方向、ここではCCW方向に設定する(S14)。
次いで、プロセッサ710は、CW、CCWともに測定が完了したかどうかを判定する(S15)。CW又はCCWのいずれかの測定が完了していない場合には(S15のNO)、ステップS12のワンパルス測定に戻る。
一方、CW、CCWともに測定が完了した場合には(S15のYES)、比較演算回路770で加算方式、個別判定方式、又は複合方式による判定を実施する(S16)。次いで、比較演算回路770は、判定結果を演算結果としてI/F回路790に出力する(S17)。そして、I/F回路790は、比較演算回路770から入力された演算結果を電気信号に変換してセンサ出力とする。ステップS17の処理後、本フローチャートの処理を終了する。
以上のとおり、本発明の一実施形態に係る磁気センサは、特許文献1における磁気センサの測定原理を踏襲しつつ、磁気検出式スイッチセンサへの応用において運用上の制約であった可飽和コイルの磁気飽和時における磁気センサの動作不安定化の課題を解消することができた。すなわち、本願の発明者は、従来技術で言及されていなかった、外部磁界により電流励起前の時点で可飽和コイルが磁気飽和していた場合における、外部磁界と自己誘導磁界との向き及び大きさの組合せによる励起電流の推移の特異性に着目し、これを積極的に応用することで、可飽和コイルの磁気飽和検知機能を新たに付加することができた。
上記構成の本実施形態に係る磁気センサによれば、このような外部磁界により電流励起前の時点で可飽和コイルが磁気飽和していた場合における励起電流の推移を検知することで、可飽和コイルの磁気飽和時における磁気センサの動作不安定化を防止し、スイッチセンサへの応用において安全性を担保することが可能となる。例えば、可飽和コイルに対する磁性体の過接近時、又は、強磁性体の接近時においても、正常なスイッチ動作の継続が可能となる。かつ、本実施形態に係る磁気センサは、可飽和コイル自身の詳細な状態(磁気飽和、断線故障)を測定パラメータとして新たに得ることを可能にしている。
なお、本発明の一実施形態として、以下のような構成もとることができる。
本発明の一実施形態は、可飽和コイルと、パルス発生器と、2方向の電流励起部と、パルス幅変調部と、電流検出部と、2つのパルス幅の差(差分値)と和(加算値)を演算できる演算部と、を備える。
電流励起部は、可飽和コイルに対して2方向からの電流を励起し、電流励起により発生する自己誘導磁界Hdrv(t)の磁気ベクトル方向を任意に設定できるように構成される。例えば、電流励磁部は、CW/CCWセレクタ730と励起回路100を用いて構成することができる。
パルス発生器は、任意のパルス開始トリガによりOFF-ONの立ち上がり信号を生成し、任意のパルス停止トリガによりON-OFFの立ち下がり信号を生成し、2つのトリガ入力により1つの矩形波パルス信号を生成する機構を持つものとする。例えば、パルス発生器は、RSフリップフロップ回路80を用いて構成することができる。
電流検出部は、可飽和コイルに流れる電流を検知し、その電流量が一定の閾値を超えた時にパルス発生器のパルス停止トリガを発して励起を停止するように構成される。その閾値は、励起電流量が著しく増加し、可飽和コイルが磁気飽和したと判断できる電流値とする。例えば、電流検出部は、電流検出回路110を用いて構成することができる。
パルス幅変調部は、可飽和コイルを励振し、上記パルス発生器のパルス停止トリガにより励起を停止するまでの時間をパルス幅とするパルス幅変調信号を出力する。例えば、パルス幅変調部は、サンプルホールド回路120を用いて構成することができる。
パルス幅変調信号は、可飽和コイルを電流励起して発生する自己誘導磁界と外部磁界Hexによる合成磁界の強さにより変化するインダクタンスと、励起電流量の遷移の違いにより生ずる閾値電流に達するまでの励起時間の違いとによりパルス幅が変化する。
2つのパルス幅の差(差分値)と和(加算値)を演算できる演算部は、可飽和コイルを励起した電流の向きごとにその励起によるパルス幅を記憶する。そして、上記演算部は、当該2つのパルス幅の和と差を演算し、その判定結果により可飽和コイルの強磁性体接近による、励起前から磁気飽和状態になり正常な測定ができない状態、又は可飽和コイルに励起電流が流せない断線故障のエラーを検知するエラー検知機能を備えるように構成される。かつ、上記演算部は、強磁性体による磁気飽和を含めた、磁性体接近を検知してスイッチ出力信号として出力する。例えば、この演算部は、比較演算回路770を用いて構成することができる。
さらに、本発明の一実施形態として、以下のような構成もとることができる。
(1)(加算方式)
可飽和コイルと、
第1の方向の第1の励起電流と、上記第1の方向とは逆向きの第2の方向の第2の励起電流とを上記可飽和コイルに供給することができる励起回路と、
上記可飽和コイルにかかる外部磁界と、上記可飽和コイルの自己誘導磁界とに基づいて上記可飽和コイルに発生する励起電流を検出する電流検出回路と、
上記電流検出回路が検出した励起電流の遷移に基づいて算出される上記可飽和コイルの励起時間に基づいて、上記可飽和コイルの周囲の磁気を測定する磁気測定部(例えば、マイコン70)と、を備え、
上記磁気測定部は、
上記第1の励起電流に基づく第1の励起時間と、上記第2の励起電流に基づく第2の励起時間とを加算した加算値と、励起前の磁気飽和状態を検知する加算値用の磁気飽和検知閾値とに基づいて、上記励起前の磁気飽和状態を検知し、
上記第1の励起時間と上記第2の励起時間との差分値と、磁性体の接近を検知する閾値と、上記励起前の磁気飽和状態の検知結果とに基づいて、上記磁性体の接近を検知する
磁気センサ。
(2)(断線検知)
上記磁気測定部は、上記第1の励起時間と上記第2の励起時間との加算値と、上記可飽和コイルの断線を検知する閾値とを比較した結果に基づいて、上記可飽和コイルの断線を検知する
上記(1)に記載の磁気センサ。
(3)(個別判定方式)
可飽和コイルと、
第1の方向の第1の励起電流と、上記第1の方向とは逆向きの第2の方向の第2の励起電流とを上記可飽和コイルに供給することができる励起回路と、
上記可飽和コイルにかかる外部磁界と、上記可飽和コイルの自己誘導磁界とに基づいて上記可飽和コイルに発生する励起電流を検出する電流検出回路と、
上記電流検出回路が検出した励起電流の遷移に基づいて算出される上記可飽和コイルの励起時間に基づいて、上記可飽和コイルの周囲の磁気を測定する磁気測定部(例えば、マイコン70)と、を備え、
上記磁気測定部は、
上記第1の励起電流に基づく第1の励起時間と、励起前の磁気飽和状態を検知する個別用の磁気飽和検知閾値とを比較した第1の個別比較結果と、上記第2の励起電流に基づく第2の励起時間と、上記個別用の磁気飽和検知閾値とを比較した第2の個別比較結果との論理和を演算し、上記論理和の演算結果に基づいて、上記励起前の磁気飽和状態を検知し、
上記第1の励起時間と上記第2の励起時間との差分値と、磁性体の接近を検知する閾値と、上記励起前の磁気飽和状態の検知結果とに基づいて、上記磁性体の接近を検知する
磁気センサ。
(4)(複合方式)
可飽和コイルと、
第1の方向の第1の励起電流と、上記第1の方向とは逆向きの第2の方向の第2の励起電流とを上記可飽和コイルに供給することができる励起回路と、
上記可飽和コイルにかかる外部磁界と、上記可飽和コイルの自己誘導磁界とに基づいて上記可飽和コイルに発生する励起電流を検出する電流検出回路と、
上記電流検出回路が検出した励起電流の遷移に基づいて算出される上記可飽和コイルの励起時間に基づいて、上記可飽和コイルの周囲の磁気を測定する磁気測定部(例えば、マイコン70)と、を備え、
上記磁気測定部は、
上記第1の励起電流に基づく第1の励起時間と、励起前の磁気飽和状態を検知する個別用の磁気飽和検知閾値とを比較した第1の個別比較結果と、上記第2の励起電流に基づく第2の励起時間と、上記個別用の磁気飽和検知閾値とを比較した第2の個別比較結果との論理和を演算し、上記論理和の演算結果に基づいて、上記励起前の第1の磁気飽和状態を検知し、
上記第1の励起時間と上記第2の励起時間との差分値と、磁性体の接近を検知する閾値と、上記励起前の上記第1の磁気飽和状態の検知結果とに基づいて、上記磁性体の接近を検知し、
上記第1の励起時間と上記第2の励起時間とを加算した加算値と、励起前の磁気飽和状態を検知する加算値用の磁気飽和検知閾値とを比較し、当該比較結果から上記励起前の第2の磁気飽和状態を検知し、上記励起前の上記第2の磁気飽和状態の検知結果と上記励起前の上記第1の磁気飽和状態の検知結果の論理積を演算し、上記論理積の演算結果に基づいて、上記励起前の第3の磁気飽和状態を検知する
磁気検知センサ。
(5)(断線検知)
上記磁気測定部は、上記第1の励起時間と上記第2の励起時間との加算値と、上記可飽和コイルの断線を検知する閾値とを比較した結果に基づいて、上記可飽和コイルの断線を検知する
上記(4)に記載の磁気センサ。
なお、本発明は上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、その他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために磁気センサの測定システムの構成を詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成要素を備えるものに限定されない。
また、上記の各構成、機能、処理部等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計するなどによりハードウェアで実現してもよい。ハードウェアとして、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの広義のプロセッサデバイスを用いてもよい。また、ある処理部により実施される処理が、1つのハードウェアにより実現されてもよいし、複数のハードウェアによる分散処理により実現されてもよい。
1…可飽和コイル、 10…電流励起回路、 11…駆動回路、 12…電流検出回路、 20…電流励起回路、 21…Hブリッジ回路、 30…加算方式の判定ブロック、 31…第1比較器、 32…第2比較器、 33…第3比較器、 34…論理和回路、 40…個別判定方式の判定ブロック、 41…第1比較器、 42…第2比較器、 43…第3比較器、 44…論理和回路、 45…論理和回路、 50…複合方式の判定ブロック、 51…第1比較器、 52…第2比較器、 53…第3比較器、 54…第4比較器、 55…第5比較器、 56…論理和回路、 57…論路和回路、 58…論理積回路、 60…磁気センサ、 70…マイコン、 80…RSフリップフロップ回路、 90…デマルチプレクサ、 100…励起回路、 110…電流検出回路、 120…サンプルホールド回路、 130…論理和回路、 700…クロック、 710…プロセッサ、 720…フラッシュROM、 730…CW/CCWセレクタ、 740…ADC、 750…デマルチプレクサ、 760…RAM、 761…Tcw記憶メモリ、 762…Tccw記憶メモリ、 770…比較演算回路、 780…フラッシュROM、 790…I/F回路、 Ar1…領域、 Ar2…領域、 Hex…外部磁界、 Hdrv(t)…自己誘導磁界(励起磁界)、 i(t)…励起電流

Claims (5)

  1. 可飽和コイルと、
    第1の方向の第1の励起電流と、前記第1の方向とは逆向きの第2の方向の第2の励起電流とを前記可飽和コイルに供給することができる励起回路と、
    前記可飽和コイルにかかる外部磁界と、前記可飽和コイルの自己誘導磁界とに基づいて前記可飽和コイルに発生する励起電流を検出する電流検出回路と、
    前記電流検出回路が検出した励起電流の遷移に基づいて算出される前記可飽和コイルの励起時間に基づいて、前記可飽和コイルの周囲の磁気を測定する磁気測定部と、を備え、
    前記磁気測定部は、
    前記第1の励起電流に基づく第1の励起時間と、前記第2の励起電流に基づく第2の励起時間とを加算した加算値と、励起前の磁気飽和状態を検知する加算値用の磁気飽和検知閾値とに基づいて、前記励起前の磁気飽和状態を検知し、
    前記第1の励起時間と前記第2の励起時間との差分値と、磁性体の接近を検知する閾値と、前記励起前の磁気飽和状態の検知結果とに基づいて、前記磁性体の接近を検知する
    磁気センサ。
  2. 前記磁気測定部は、前記第1の励起時間と前記第2の励起時間との加算値と、前記可飽和コイルの断線を検知する閾値とを比較した結果に基づいて、前記可飽和コイルの断線を検知する
    請求項1に記載の磁気センサ。
  3. 可飽和コイルと、
    第1の方向の第1の励起電流と、前記第1の方向とは逆向きの第2の方向の第2の励起電流とを前記可飽和コイルに供給することができる励起回路と、
    前記可飽和コイルにかかる外部磁界と、前記可飽和コイルの自己誘導磁界とに基づいて前記可飽和コイルに発生する励起電流を検出する電流検出回路と、
    前記電流検出回路が検出した励起電流の遷移に基づいて算出される前記可飽和コイルの励起時間に基づいて、前記可飽和コイルの周囲の磁気を測定する磁気測定部と、を備え、
    前記磁気測定部は、
    前記第1の励起電流に基づく第1の励起時間と、励起前の磁気飽和状態を検知する個別用の磁気飽和検知閾値とを比較した第1の個別比較結果と、前記第2の励起電流に基づく第2の励起時間と、前記個別用の磁気飽和検知閾値とを比較した第2の個別比較結果との論理和を演算し、前記論理和の演算結果に基づいて、前記励起前の磁気飽和状態を検知し、
    前記第1の励起時間と前記第2の励起時間との差分値と、磁性体の接近を検知する閾値と、前記励起前の磁気飽和状態の検知結果とに基づいて、前記磁性体の接近を検知する
    磁気センサ。
  4. 可飽和コイルと、
    第1の方向の第1の励起電流と、前記第1の方向とは逆向きの第2の方向の第2の励起電流とを前記可飽和コイルに供給することができる励起回路と、
    前記可飽和コイルにかかる外部磁界と、前記可飽和コイルの自己誘導磁界とに基づいて前記可飽和コイルに発生する励起電流を検出する電流検出回路と、
    前記電流検出回路が検出した励起電流の遷移に基づいて算出される前記可飽和コイルの励起時間に基づいて、前記可飽和コイルの周囲の磁気を測定する磁気測定部と、を備え、
    前記磁気測定部は、
    前記第1の励起電流に基づく第1の励起時間と、励起前の磁気飽和状態を検知する個別用の磁気飽和検知閾値とを比較した第1の個別比較結果と、前記第2の励起電流に基づく第2の励起時間と、前記個別用の磁気飽和検知閾値とを比較した第2の個別比較結果との論理和を演算し、前記論理和の演算結果に基づいて、前記励起前の第1の磁気飽和状態を検知し、
    前記第1の励起時間と前記第2の励起時間との差分値と、磁性体の接近を検知する閾値と、前記励起前の前記第1の磁気飽和状態の検知結果とに基づいて、前記磁性体の接近を検知し、
    前記第1の励起時間と前記第2の励起時間とを加算した加算値と、励起前の磁気飽和状態を検知する加算値用の磁気飽和検知閾値とを比較し、当該比較結果から前記励起前の第2の磁気飽和状態を検知し、前記励起前の前記第2の磁気飽和状態の検知結果と前記励起前の前記第1の磁気飽和状態の検知結果の論理積を演算し、前記論理積の演算結果に基づいて、前記励起前の第3の磁気飽和状態を検知する
    磁気センサ。
  5. 前記磁気測定部は、前記第1の励起時間と前記第2の励起時間との加算値と、前記可飽和コイルの断線を検知する閾値とを比較した結果に基づいて、前記可飽和コイルの断線を検知する
    請求項4に記載の磁気センサ。
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