JP2023072373A - 内燃機関用のカバー部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】消音性能を向上させることができる内燃機関用のカバー部材を提供する。【解決手段】カバー部材1は、樹脂により板状に形成されるとともに、固定対象物に固定される複数の固定部21を有する板本体2を備え、板本体2には、複数の固定部21を固定端として板厚方向に沿って変位する振動によって生じるひずみの節Aに隣り合う位置に、薄肉部3が形成されている。【選択図】図2
Description
本発明は、内燃機関用のカバー部材に関する。
従来、自動車のエンジン等に取り付けられる制振プレートとして、複数枚の鋼板が積層されたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された制振プレートでは、振動時に鋼板間に生じる摩擦によって振動エネルギーが消費されるようになっており、放射音の抑制が図られている。
振動エネルギーを消費させる方法としては、特許文献1に記載されたように部材間に摩擦を生じさせるものだけでなく、板状の部材を樹脂によって構成し、部材の内部に動的ひずみ(以下、単に「ひずみ」と呼ぶ)を生じさせるものも考えられる。このとき、板状の部材を変形しやすくし、ひずみ量を大きくすれば振動エネルギーの消費が大きくなるものの、この部材自体の振幅が大きくなり、音が発生する要因になり得る。一方、板状の部材を変形しにくくすると、この部材自体の振動は抑えられるものの、生じるひずみ量は小さく、振動の減衰効果が得られにくい。このように、振動の減衰効果と、部材自体の振動の抑制と、を両立させることは困難であった。
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、消音性能を向上させることができる内燃機関用のカバー部材を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明に係る内燃機関用のカバー部材は、樹脂により板状に形成されるとともに、固定対象物に固定される複数の固定部を有する板本体を備え、前記板本体には、前記複数の固定部を固定端として板厚方向に沿って変位する振動によって生じるひずみの節に隣り合う位置に、薄肉部が形成されていることを特徴とする。
この態様によれば、ひずみの節(振動の際にひずみ量が0となる位置)に隣り合う位置において、薄肉部によって板本体を変形しやすくすることができる。これにより、ひずみ量を大きくして振動エネルギーの消費を増大させ、振動を減衰させやすくすることで消音効果を向上させることができる。このとき、ひずみ量を大きくするために板本体の全体を薄型化する必要はなく、カバー部材自体の振幅が大きくなることを抑制することができ、消音効果を得やすい。
前記ひずみの節を挟む位置に、一対の前記薄肉部が形成されていてもよい。この態様によれば、ひずみの節の両側においてひずみ量を大きくし、消音効果をさらに向上させることができる。
前記板本体の両面に凹部が形成されることにより、前記薄肉部が形成されていてもよい。この態様によれば、各々の凹部の深さを小さくし、加工性を向上させることができる。また、凹部の形成によって板本体に非対称性が生じることを抑制し、薄肉部を設けることによる振動特性の変化を抑制することができる。
700~1300Hzにおける前記板本体の固有振動によって生じるひずみの節に対し、隣り合う位置に前記薄肉部が形成されていてもよい。この態様によれば、カバー部材が、例えばエンジンのフロントカバーである場合に、エンジンによって生じる音やエンジンの振動によるフロントカバーからの放射音を低減しやすくすることができる。
本発明に係る内燃機関用のカバー部材によれば、ひずみの節に隣り合う位置に薄肉部が形成されていることで、消音性能を向上させることができる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る内燃機関用のカバー部材1を示す斜視図である。
本発明の実施形態に係る内燃機関用のカバー部材1は、樹脂により板状に形成されるとともに、固定対象物(エンジン)に固定される複数の固定部21を有する板本体2を備える。板本体2には、複数の固定部21を固定端として板厚方向に沿って変位する振動によって生じるひずみの節Aに隣り合う位置に、薄肉部3が形成されている。
カバー部材1は、例えばエンジンのタイミングチェーンカバーなど、エンジン本体に取り付けられるフロントカバーである。図示の例では、カバー部材1に、クランクシャフトが通過するための貫通孔Oが形成されている。
カバー部材1は、例えば全体がPA(ポリアミド)やPP(ポリプロピレン)等の樹脂によって平板状に構成された板本体2を備える。板本体2は、平面に沿って延びるものであってもよいし、自然状態(変形が加えられていない状態)において平面に対し多少の撓み等を有するものであってもよい。このような平面に対して直交する方向を「板厚方向」と呼ぶ。板本体2には、その外周縁に沿って複数の固定部21が形成されている。固定部21は貫通孔状に形成され、例えばねじ等の固着部材が挿通され、この固着部材によって板本体2が固定対象物に固定されるようになっている。尚、固定部21の固定構造はこれに限定されるものではなく、種々の固定構造が採用可能である。
カバー部材1が固定対象物に固定された状態でエンジン等の音源から音が放射されたりエンジンの振動が伝わったりすると、カバー部材1が振動して放射音が生じる。即ち、固定部21が固定端となり、板本体2の各部が板厚方向に沿って変位する振動が発生し、図1では、板本体2の外周縁が固定端となり、この外周縁に囲まれた部分が変位する。このときの振動モードは放射音の波長に応じたものとなるが、以下では基本振動に対応したひずみの節A及び薄肉部3を図示するとともに説明する。板本体2には、基本振動のひずみの節Aに対応した薄肉部3だけでなく、他の振動モード(特に、後述する700~1300Hzの周波数領域の固有振動)によって生じるひずみの節に対応した薄肉部も形成されている。
図2は、カバー部材1を模式的に示す断面図及びひずみ分布のグラフである。図2は、上から順に、自然状態の板本体2と、板本体2が基本振動している様子と、そのときのひずみ量と、を示す。板本体2が基本振動すると、両端が固定端(振動の節)となるとともに中央部が振動の腹となる。このとき、固定端の近傍では圧縮のモーメント(負のひずみ)が生じ、中央部では引っ張りのモーメント(正のひずみ)が生じ、これらが切り換わる位置においてひずみ量が0となる(ひずみが発生しない)。即ち、このようにひずみが発生しない位置が、ひずみの節Aとなる。ひずみの節とはひずみ量が0となる位置であり、変位量が0となる振動の節とは異なる。
図2に示す断面図は、2つの固定部21を通過するとともにひずみの節Aを横切るように板本体2を切断した様子を示す。ひずみの節Aは、図1に示すように円弧状であり、断面図である図2においては2箇所に現れる。
板本体2には、ひずみの節Aに対して隣り合う位置に、両面に凹部22,23が形成されている。凹部22,23は、ひずみの節Aに対して中央側(固定端とは反対側)に配置されている。凹部22は、板厚方向に沿った一対の側面221と、これらの面を接続する底面222と、によって形成され、3つの直線によって囲まれた断面形状を有する。凹部23も凹部22と同様の形状を有する。凹部22,23は、円弧状のひずみの節Aの内側において、円弧状の溝となっている。尚、凹部22,23及び後述する薄肉部3は、連続した円弧状となっていてもよいし、断続的な円弧状となっていてもよい。
板本体2は、凹部22,23が形成された部分以外においては、略一定の板厚を有している。これにより、板本体2において、凹部22,23の間の部分(これらの底面に挟まれた部分)が、他の部分よりも板厚が小さくなり、薄肉部3となる。薄肉部3は、ひずみの節Aに対して隣り合う位置に形成されている。ここで、「隣り合う位置」とは、例えばひずみの節Aから5mm以内(固定端同士の間隔に対して例えば2%以内)の範囲を意味する。
板本体2は、板厚が小さい部分ほど変形しやすくなり、ひずみ量も大きくなりやすい。従って、図2のグラフにも示されるように、薄肉部3が形成された位置(ひずみの節Aに隣り合う位置)においてひずみ量が大きくなる。
ここで、薄肉部が形成されない(板本体の全体が略一定の板厚を有する)比較例について説明する。図3は、比較例1の内燃機関用のカバー部材を模式的に示す断面図及びひずみ分布のグラフである。図3は、板本体4の板厚が比較的大きい比較例1のカバー部材について、自然状態の板本体4と、板本体4が基本振動している様子と、そのときのひずみ量と、を示す。図4は、比較例2の内燃機関用のカバー部材を模式的に示す断面図及びひずみ分布のグラフである。図4は、板本体5の板厚が比較的小さい比較例2のカバー部材について、自然状態の板本体5と、板本体5が基本振動している様子と、そのときのひずみ量と、を示す。
比較例1では、板本体4の振幅を抑えることはできるものの、ひずみ量は比較的小さくなり、振動エネルギーを消費しにくい。一方、比較例2では、ひずみ量が比較的大きくなり振動エネルギーを消費しやすいものの、板本体5の振幅が大きくなり、板本体5自体の振動が、音が発生する要因になり得る。
このような比較例1,2に対し、本実施形態のカバー部材1では、板本体2の振幅を抑えつつひずみ量を大きくすることができる。これにより、振動エネルギーを消費しやすくし、振動を減衰させやすい。
図5は、カバー部材1及び比較例3の内燃機関用のカバー部材の振動の伝達率特性のグラフである。図5のグラフは、本実施形態のカバー部材1、及び、比較例3のカバー部材の振動の伝達率(振幅)特性を示す。比較例3のカバー部材は、薄肉部が形成されておらず、それ以外の点(板厚等)については本実施形態のカバー部材1と同様である。本実施形態のカバー部材1では、比較例3のカバー部材に対し、特に共振周波数において振幅が低減されていることが読み取れる。
図6は、カバー部材1及び比較例3の内燃機関用のカバー部材の騒音特性のグラフである。図6は、本実施形態のカバー部材1、及び、比較例3のカバー部材の騒音特性を示す。本実施形態のカバー部材1では、上記のように振幅を低減することにより、比較例3のカバー部材に対し、特に破線で囲まれた領域(700~1300Hz)において騒音低減効果が得られる。
このように、本発明の実施形態に係るカバー部材1によれば、ひずみの節Aに隣り合う位置に薄肉部3が形成されていることで、板本体2を変形しやすくしてひずみ量を大きくすることができる。これにより、振動を減衰しやすくして消音効果を向上させることができる。また、薄肉部3がひずみの節Aに隣り合う位置に形成されていることで、他の位置に形成する場合と比較して、カバー部材1全体の剛性の低下を抑制することができる。さらに、板本体2が樹脂により形成されていることで、カバー部材1を軽量化することができる。
また、板本体2の両面に凹部22,23が形成されていることで、各々の凹部22,23の深さを小さくし、加工性を向上させることができる。また、凹部22,23の形成によって板本体2に非対称性が生じることを抑制し、薄肉部3を設けることによる振動特性の変化を抑制することができる。
また、700~1300Hzにおける板本体2の固有振動によって生じるひずみの節に隣り合う位置に薄肉部が形成されていることで、カバー部材1が例えばエンジンのフロントカバーである場合に、エンジンによって生じる音やエンジンの振動によるフロントカバーからの放射音を低減しやすくすることができる。
尚、本発明は上記の実施形態に限定されず、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。例えば、上記の本発明の実施形態では、ひずみの節Aに対して中央部側にのみ薄肉部3が形成されるものとしたが、固定端側にのみ薄肉部を形成してもよい。
図7は、本発明の変形例の内燃機関用のカバー部材を模式的に示す断面図及びひずみ分布のグラフである。この変形例では、ひずみの節Aを挟む位置に一対の薄肉部3,3Aが形成されている。尚、薄肉部3Aは、薄肉部3と同様に、両面の凹部によって形成されればよい。また、他の振動モードについても、ひずみの節の両側に薄肉部が形成されていてもよい。このような構成によれば、ひずみの節Aの両側においてひずみ量を大きくして振動を減衰しやすくし、消音効果をさらに向上させることができる。さらに、ひずみの節Aの両側において、正及び負のひずみの両方を大きくすることができ、正又は負のいずれか一方のひずみを2箇所で生じさせる構成と比較して、合計のひずみ量を確保しやすくすることができる。
また、上記の本発明の実施形態では、凹部22,23が両面に形成されることにより、薄肉部3が形成されているものとしたが、図8に示すように、板本体2の片面にのみ凹部24が形成されることにより、薄肉部3Bが形成されてもよい。このとき、凹部24が形成される面は、音源に向けられた面であってもよいし、その反対側の面であってもよい。
また、上記の本発明の実施形態では、凹部22,23が、一対の側面及び底面を有し3つの直線によって囲まれた断面形状を有するものとしたが、凹部は他の形状を有していてもよい。例えば、図9に示すように、V字状の(2つの直線によって囲まれた)断面形状を有する凹部25,26が形成されることで、薄肉部3Cが形成されてもよい。また、図10に示すように、上記の実施形態における凹部22に対し、側面221と底面222との間にテーパ部223を追加してもよい(凹部23に対しても同様)。また、図11に示すように、複数の凹状の部分が連続的に形成されることで、凹部27,28が構成され、薄肉部3Dが形成されてもよい。図11に示す例では、各々の凹状の部分が図9の凹部25,26同様に断面V字状となっている。
また、薄肉部は、局所的な凹部によって形成されるものに限定されない。即ち、肉厚が徐々に小さくなる部分が形成されることで、薄肉部が形成されてもよい。また、薄肉部は、少なくともひずみの節に隣り合う位置に形成されていればよく、薄肉部がひずみの節を跨ぐように形成されていてもよい(即ち、ひずみの節にも薄肉部が形成されていてもよい)。
本発明の実施の形態及び図7~図11の変形例において、薄肉部及び凹部の位置や個数、形状等について例示したが、これらの各要素は適宜に組み合わせられていてもよい。
また、上記の本発明の実施形態では、700~1300Hzにおける板本体2の固有振動によって生じるひずみの節に隣り合う位置に薄肉部が形成されているものとしたが、カバー部材の用途等に応じて、適宜な周波数領域のひずみの節に隣り合う位置に薄肉部を形成すればよい。例えば、カバー部材がエンジンのオイルパンである場合には、300~1500Hzにおける固有振動によって生じるひずみの節に隣り合う位置に薄肉部が形成されていることが好ましい。また、カバー部材がエンジンのシリンダヘッドカバーである場合には、300~1500Hzにおける固有振動によって生じるひずみの節に隣り合う位置に薄肉部が形成されていることが好ましい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に係る内燃機関用のカバー部材に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施形態における、各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
1…カバー部材、2…板本体、21…固定部、22~28…凹部、3,3A,3B,3D…薄肉部、A…ひずみの節
Claims (4)
- 樹脂により板状に形成されるとともに、固定対象物に固定される複数の固定部を有する板本体を備え、
前記板本体には、前記複数の固定部を固定端として板厚方向に沿って変位する振動によって生じるひずみの節に隣り合う位置に、薄肉部が形成されていることを特徴とする、内燃機関用のカバー部材。 - 前記ひずみの節を挟む位置に、一対の前記薄肉部が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関用のカバー部材。
- 前記板本体の両面に凹部が形成されることにより、前記薄肉部が形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の内燃機関用のカバー部材。
- 700~1300Hzにおける前記板本体の固有振動によって生じるひずみの節に対し、隣り合う位置に前記薄肉部が形成されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の内燃機関用のカバー部材。
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