JP6866857B2 - V型6気筒エンジンのクランクシャフト - Google Patents

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Description

本発明は、V型6気筒エンジンのクランクシャフトに関する。
特開2014−40856号公報には、直列4気筒エンジンのクランクシャフトが開示されている。このクランクシャフトは、2つのフランジと、5つのクランクジャーナルと、4つのクランクピンと、クランクジャーナルとクランクピンを接続する8つのクランクアームと、を備えている。フランジの一方には、フライホイールが取り付けられる。このクランクシャフトでは、フライホイールの取り付け部に近いクランクアームほどその剛性(曲げ剛性およびねじり剛性)が高くなるように、各クランクアームの幅および厚みが設計されている。
特開2014−40856号公報 特開2008−224015号公報
上記クランクシャフトによれば、フライホイールの面振れ変形を抑えてエンジンの騒音・振動を低減できる。しかし、V型6気筒エンジンでは、クランクシャフト全体が変形する振動モードが存在する。従って、フライホイールの面振れ変形を抑えるだけでは、エンジンの騒音・振動の低減が不十分となる。
本発明は、上述のような課題に鑑みてなされたものであり、V型6気筒エンジンの騒音・振動を低減することのできるクランクシャフトを提供することを目的とする。
第1の発明は、上述した課題を解決するためのV型6気筒エンジンのクランクシャフトであり、次の特徴を有する。
前記クランクシャフトは、前記V型6気筒エンジンの前方から後方に向かう順に設けられた第1ジャーナル、第2ジャーナル、第3ジャーナルおよび第4ジャーナルを備える。
前記クランクシャフトは、第1ピン、第2ピン、第3ピン、第4ピン、第5ピンおよび第6ピンを備える。
前記第1ピンおよび前記第2ピンは、前記第1ジャーナルと前記第2ジャーナルの間に設けられる。
前記第3ピンおよび前記第4ピンは、前記第2ジャーナルと前記第3ジャーナルの間に設けられる。
前記第5ピンおよび前記第6ピンは、前記第3ジャーナルと前記第4ジャーナルの間に設けられる。
前記クランクシャフトは、第1ウェブ、第2ウェブ、第3ウェブ、第4ウェブ、第5ウェブ、第6ウェブ、第7ウェブ、第8ウェブおよび第9ウェブを備える。
前記第1ウェブは、前記第1ジャーナルと前記第1ピンを接続する。
前記第2ウェブは、前記第1ピンと前記第2ピンを接続する。
前記第3ウェブは、前記第2ピンと前記第2ジャーナルを接続する。
前記第4ウェブは、前記第2ジャーナルと前記第3ピンを接続する。
前記第5ウェブは、前記第3ピンと前記第4ピンを接続する。
前記第6ウェブは、前記第4ピンと前記第3ジャーナルを接続する。
前記第7ウェブは、前記第3ジャーナルと前記第5ピンを接続する。
前記第8ウェブは、前記第5ピンと前記第6ピンを接続する。
前記第9ウェブは、前記第6ピンと前記第4ジャーナルを接続する。
前記第1ウェブ、前記第2ウェブ、前記第3ウェブ、前記第4ウェブ、前記第5ウェブ、前記第6ウェブ、前記第7ウェブ、前記第8ウェブおよび前記第9ウェブは、ウェブ形状に基づいて3つのグループに分類される。
前記第2ウェブ、前記第5ウェブおよび前記第8ウェブは、第1グループに分類される。
前記第1ウェブおよび前記第9ウェブは、第2グループに分類される。
前記第3ウェブ、前記第4ウェブ、前記第6ウェブおよび前記第7ウェブは、第3グループに分類される。
前記第1グループにおいて、前記第2ウェブおよび前記第8ウェブの剛性が、前記第5ウェブの剛性よりも高い。
第2の発明は、第1の発明において、更に次の特徴を有する。
前記第2グループにおいて、前記第9ウェブの剛性が、前記第1ウェブの剛性よりも高い。
本発明者は、第1グループにおいては、第2ウェブおよび第8ウェブの剛性の相対的な増加が、3節曲げモードのモード周波数を大きく上げること、および、モード周波数が大きく上がるとクランクシャフトの中心軸方向における振れが小さくなることを見出した。この知見に基づいたものが第1の発明である。第1の発明によれば、第1グループにおいて、第2ウェブおよび第8ウェブの剛性が、第5ウェブの剛性よりも高い。従って、V型6気筒エンジンの騒音・振動を低減することができる。
本発明者は、第2グループにおいては、第9ウェブの剛性の相対的な増加がモード周波数を僅かに上げること、および、この第9ウェブの剛性の相対的な増加を、第1グループにおけるそれと組み合わせると、クランクシャフトの中心軸方向における振れが更に小さくなることを見出した。この知見に基づいたものが第2の発明である。第2の発明によれば、第2グループにおいて、第9ウェブの剛性が第1ウェブの剛性よりも高い。従って、V型6気筒エンジンの騒音・振動をより一層、低減することができる。
本発明の実施の形態に係るクランクシャフトの側面図である。 図1のII−II線における断面図である。 図1のIII−III線における断面図である。 従来型のクランクシャフトが適用されたV型6気筒エンジンの筒内圧レベルの一例を示した図である。 従来型のクランクシャフトの軸受に掛かる起振力の解析結果の一例を示した図である。 各クランクウェブの剛性の変化量と、3節曲げモードのモード周波数の変化割合と、の関係を示した図である。 モード周波数の変更前後における3節曲げモードの節の予測位置を説明する図である。 本発明に係るクランクシャフトが適用されたV型6気筒エンジンのボトムレール振動の測定結果を示す図である。 本発明に係るクランクシャフトの軸受に掛かる起振力の解析結果を示した図である。 第8ウェブの幅の拡大方向の一例を示す図である。 第9ウェブの幅の拡大方向の一例を示す図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に示す実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に、この発明が限定されるものではない。また、以下に示す実施の形態において説明する構造やステップ等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この発明に必ずしも必須のものではない。
1.クランクシャフトの構成の説明
図1は、本発明の実施の形態に係るクランクシャフトの側面図である。図1に示すクランクシャフト10は、車両に搭載されるバンク角60°のV型6気筒エンジンに適用される。クランクシャフト10は、4つのクランクジャーナル(第1ジャーナル〜第4ジャーナル)J1〜J4と、6つのクランクピン(第1ピン〜第6ピン)P1〜P6と、9つのクランクウェブ(第1ウェブ〜第9ウェブ)W1〜W9と、を備えている。
クランクジャーナルJ1〜J4は、略円筒形である。クランクジャーナルJ1〜J4は、この順に配置されている。クランクジャーナルJ1〜J4は同一の軸上に位置している。この軸が、クランクシャフト10の中心軸CAである。クランクジャーナルJ1〜J4は、ジャーナルベアリング(不図示)を介してシリンダブロック(不図示)に支持される。これにより、クランクシャフト10がシリンダブロックに回転自在に支持される。以下、中心軸CAの軸方向における第1ジャーナルJ1側をエンジンのフロント側とし、第4ジャーナルJ4側をエンジンのリア側として説明する。
クランクジャーナルJ1〜J4同様、クランクピンP1〜P6は、略円筒形である。第1ピンP1と第2ピンP2は、第1ジャーナルJ1と第2ジャーナルJ2の間にこの順で配置される。第3ピンP3と第4ピンP4は、第2ジャーナルJ2と第3ジャーナルJ3の間にこの順で配置される。第5ピンP5と第6ピンP6は、第3ジャーナルJ3と第4ジャーナルJ4の間にこの順で配置される。クランクピンP1〜P6には、それぞれコンロッド(不図示)が取り付けられる。コンロッドは、V型6気筒エンジンの各気筒に対応している。具体的に、第1ピンP1は1番気筒のコンロッドに対応し、第2ピンP2は2番気筒のコンロッドに対応している。つまり、ピンの順番と気筒の番号は一致している。
クランクウェブW1〜W9は、クランクジャーナルJ1〜J4の間にこの順で配置される。第1ウェブW1は、第1ジャーナルJ1と第1ピンP1を接続する。第2ウェブW2は、第1ピンP1と第2ピンP2を接続する。第3ウェブW3は、第2ピンP2と第2ジャーナルJ2を接続する。第4ウェブW4は、第2ジャーナルJ2と第3ピンP3を接続する。第5ウェブW5は、第3ピンP3と第4ピンP4を接続する。第6ウェブW6は、第4ピンP4と第3ジャーナルJ3を接続する。第7ウェブW7は、第3ジャーナルJ3と第5ピンP5を接続する。第8ウェブW8は、第5ピンP5と第6ピンP6を接続する。第9ウェブW9は、第6ピンP6と第4ジャーナルJ4を接続する。
クランクウェブW1〜W9は、3つのグループに大別される。第1グループG1は、第2ウェブW2、第5ウェブW5および第8ウェブW8である。これらのクランクウェブは、類似した形状を有している。図2に、これらのクランクウェブの代表として、第8ウェブW8の形状を示す。図2は、図1のII−II線における断面図である。図2に示すように、第8ウェブW8は、第5ピンP5を支持する支持部W81と、第8ウェブW8の所定の位置に所定の質量を付加する質量部W82と、を備えている。支持部W81は、第5ピンP5の外周を囲むように配置されている。この外周を囲む部分の中心線は、第5ピンP5の中心軸CP5と一致している。質量部W82は、支持部W81の外周の一部と接続している。
なお、図2では、第5ピンP5側から見た第8ウェブW8の形状を説明した。この図2に基づけば、第6ピンP6側から第8ウェブW8を見た場合に、第6ピンP6を支持する支持部W83が別途存在することを容易に理解できる。つまり、第8ウェブW8は、支持部W81と質量部W82に加えて、支持部W83を更に備えている。支持部W83は、第6ピンP6の外周を囲むように配置されている。この外周を囲む部分の中心線は、第6ピンP6の中心軸CP6と一致している。
第2グループG2は、第1ウェブW1および第9ウェブW9である。これらのクランクウェブは、類似した形状を有している。図3に、これらのクランクウェブの代表として、第9ウェブW9の形状を示す。図3は、図1のIII−III線における断面図である。図3に示すように、第9ウェブW9は、第4ジャーナルJ4を支持する支持部W91と、第9ウェブW9の所定の位置に所定の質量を付加する質量部W92およびW93と、を備えている。支持部W91は、第4ジャーナルJ4の外周を囲むように配置されている。この外周を囲む部分の中心線は、第4ジャーナルJ4の中心軸(つまり、中心軸CA)と一致している。質量部W92およびW93は、支持部W91の外周の一部と接続している。
なお、図3では、第4ジャーナルJ4側から見た第9ウェブW9の形状を説明した。この図3に基づけば、第6ピンP6側から第9ウェブW9を見た場合に、第6ピンP6を支持する支持部W94が別途存在することを容易に理解できる。つまり、第9ウェブW9は、支持部W91と質量部W92およびW93に加えて、支持部W94を更に備えている。支持部W94は、第6ピンP6の外周を囲むように配置されている。この外周を囲む部分の中心線は、中心軸CP6と一致している。
第3グループG3は、第3ウェブW3、第4ウェブW4、第6ウェブW6および第7ウェブW7である。これらのクランクウェブは、類似した形状を有している。なお、これらのクランクウェブの形状は、本発明では特に限定されないことから、説明を省略する。
2.クランクシャフト10の特徴
上述したように、第1グループG1に属するクランクウェブの形状は互いに類似する。ただし、クランクシャフト10では、これらのクランクウェブの形状が、下記の剛性条件1を満たすように調整されている。
剛性条件1:第2ウェブW2および第8ウェブW8>第5ウェブW5
また、第2グループG2に属するクランクウェブの形状は互いに類似する。ただし、クランクシャフト10では、これらのクランクウェブの形状が、下記の剛性条件2を満たすように調整されていてもよい。
剛性条件2:第9ウェブW9>第1ウェブW1
つまり、クランクシャフト10では、剛性条件1および2を同時に満たすように、第1グループG1に属するクランクウェブの形状、および、第2グループG2に属するクランクウェブの形状が調整されていてもよい。
3.発明の原理
剛性条件1が満たされると、クランクシャフト10の全体が変形する3節曲げモード(クランクシャフトの中心軸CAを含むシリンダブロックの鉛直面方向における2次曲げモード)における節の位置が移動し、エンジン振動が抑えられる。また、剛性条件1および2が同時に満たされると、エンジン振動がより一層抑えられる。以下、このクランクシャフト10の構成による効果について詳細に説明する。
3.1 燃焼起振力と騒音・振動(以下単に「NV」ともいう。)の関係
V型6気筒エンジンの筒内で燃料が燃焼すると、起振力が発生する。筒内で発生した起振力は、クランクシャフトに伝達してエンジンの各部の振動を励起する。エンジンの各部には、シリンダブロックのボトムレールやVバンク開き部、シリンダヘッドなどが含まれる。エンジンの各部が振動すると、トランスミッション、クラッチダンパ、ドライブシャフト等の駆動系の振動を励起する。これらの振動は、練成して車体に入力される。車体に入力された振動は、更に、ボディシェル、各種のふた物、車室内空洞の共鳴等と錬成して乗員位置の騒音や振動となる。
図4は、従来型のクランクシャフトが適用されたV型6気筒エンジンの筒内圧レベルの一例を示した図である。従来型のクランクシャフトは、クランクウェブの剛性の点で本発明に係るクランクシャフトと異なる。すなわち、従来型のクランクシャフトは、第1グループG1〜第3グループG3の各グループに属するクランクウェブの剛性が、グループごとに等しい。図4に示す筒内圧レベルは、2種類の点火時期に基づいてV型6気筒エンジンを運転したときに得られた筒内圧力を、フーリエ変換することにより算出したものである。2種類の点火時期は、具体的には(i)MBTおよび(ii)試燃焼時期(以下、「テストIT」ともいう。)である。(ii)テストITは、(i)MBTよりも所定クランク角だけ遅角側の点火時期である。
筒内圧レベルが高いほど起振力が大きく、筒内圧レベルが低いほど起振力が小さくなる。従って、図4の筒内圧レベルから、次のことが理解できる。すなわち、(ii)テストITでの5番気筒および6番気筒の燃焼は起振力が小さく、(ii)テストITでの1番気筒〜4番気筒の燃焼は起振力が大きい。また、(i)MBTでの各気筒の燃焼も起振力が大きい。
図5は、従来型のクランクシャフトの軸受に掛かる起振力の解析結果の一例を示した図である。図5に示す(i)MBTおよび(ii)テストITは、図4に示した2種類の点火時期と同じである。図5の結果から、次のことが理解できる。すなわち、(ii)テストITの燃焼は、(i)MBTでの燃焼よりも振動・騒音のレベルが低い。
そして、図4および図5に示した結果から、次のことが理解できる。すなわち、起振力が小さい5番気筒および6番気筒の燃焼を含む(ii)テストITの燃焼は、(i)MBTでの燃焼よりも振動・騒音の観点から望ましい。換言すると、NVを抑えることに重点を置くのであれば、点火時期を遅角することが望ましい。しかしながら、NVを抑えるために燃焼(トルク)を犠牲することは、必ずしも適切とはいえない。
3.2 クランクウェブの剛性がNVに与える影響
そこで、本発明者は、クランクウェブの剛性がNVに与える影響についてCAE(Computer Aided Engineering)による調査を行った。図6は、この調査結果を示した図である。図6は、各クランクウェブの剛性の変化量と、3節曲げモードのモード周波数の変化割合と、の関係を示した図である。図6に示すように、剛性変化量に対するモード周波数の変化割合の感度(以下、「剛性感度」ともいう。)が高いのは、第2ウェブW2および第8ウェブW8である。これらのクランクウェブでは、剛性の変化方向とモード周波数の変化方向が一致している。
第2ウェブW2および第8ウェブW8は、第1グループG1に属するクランクウェブである。一方、これらのクランクウェブと同じグループに属するにも関わらず、第5ウェブW5の剛性感度は低い。また、第1ウェブW1と第9ウェブW9を比較すると、第9ウェブW9の剛性感度は、第1ウェブW1の剛性感度よりも高くなる。第2ウェブW2および第8ウェブW8と同様に、第9ウェブW9では、剛性の変化方向とモード周波数の変化方向が一致している。
図6に示した調査結果から、次のことが分かる。すなわち、第1グループG1において第2ウェブW2または第8ウェブW8の剛性を相対的に上げると、モード周波数が大きく上がる。また、第1グループG1において第2ウェブW2または第8ウェブW8以外の剛性を相対的に下げると、モード周波数が大きく下がる。また、第2グループG2において第9ウェブW9の剛性を相対的に上げると、モード周波数が僅かに上がる。また、第2グループG2において第9ウェブW9の剛性を相対的に下げると、モード周波数が僅かに下がる。
モード周波数が変われば、3節曲げモードの節の位置が変化すると予測される。図7は、モード周波数の変更前後における3節曲げモードの節の予測位置を説明する図である。図7の上段(変更前)と下段(変更後)を比較すると分かるように、モード周波数が高くなると、節の位置が第4ジャーナルJ4に近づく。そのため、クランクシャフトの中心軸CA方向における振れが小さくなる。なお、モード周波数を低くした場合は、節の位置が第4ジャーナルJ4から離れることになる。そのため、クランクシャフトの中心軸CA方向における振れは大きくなる。
3.3 剛性の変更による効果
図6の調査結果と、節の予測位置とを踏まえ、本発明者は、剛性条件1を満たすクランクシャフトの試作品(実施例1)について4番気筒のボトムレールでの振動(以下、「ボトムレール振動」ともいう。)を測定した。また、剛性条件2を満たす試作品(実施例2)についても、ボトムレール振動を測定した。図8に、これらの測定結果を示す。
図8に示す測定結果から、次のことが分かる。すなわち、実施例1のクランクシャフトによれば、比較例のクランクシャフト(上述した従来型のクランクシャフト)に比べてボトムレール振動を抑えることができる。また、実施例2のクランクシャフトによれば、実施例1のクランクシャフトよりも更に、ボトムレール振動を抑えることができる。ここで、ボトムレール振動は、実車試験によりNV(より具体的には、車内音)との高い相関が確認されたものである。つまり、ボトムレール振動は、NVの有力な指標と言うことができる。そして、ボトムレール振動を抑えることができるということは、実施例1または実施例2のクランクシャフトは、有効なNV対策であると言うことができる。
図9は、本発明に係るクランクシャフトの軸受に掛かる起振力の解析結果を示した図である。図9に示す(iii)対策クランクが、上述した実施例2のクランクシャフトの解析結果である。図9に示す(i)MBTおよび(ii)テストITは、図5で説明した起振力の解析結果である。(iii)対策クランクの解析に際しての点火時期条件は、MBTである。
図9に示した解析結果から、次のことが理解できる。すなわち、(iii)対策クランクの燃焼は、(i)MBTでの燃焼よりも振動・騒音のレベルが低い。また、(iii)対策クランクの燃焼は、特定の周波数帯(より具体的には、600〜700Hz)においては、(ii)テストITの燃焼と同等の振動・騒音のレベルとなる。つまり、(iii)対策クランクによれば、(ii)テストITのように燃焼(トルク)を犠牲することなくNVを抑えることが可能になる。また、(iii)対策クランクによれば、特定の周波数帯において、(ii)テストITでの燃焼と同程度にNVを抑えることができる。
4.剛性条件を満たすためのクランクウェブの設計例
剛性条件1を満たすためのクランクウェブの形状の設計例について説明する。剛性条件1を満たすには、例えば、第2ウェブW2および第8ウェブW8の厚みまたは幅を、第5ウェブW5のそれよりも拡大させればよい。ここでいう「厚み」は、軸CA方向を基準とした支持部または質量部のサイズを意味する。「幅」は、クランクシャフトの中心軸CAに直交する方向を基準とした支持部または質量部のサイズを意味する。
図10に、第8ウェブW8の幅の拡大方向の一例を示す。図10に示す例では、中心軸CP5から中心軸CAに向かう方向とは反対の方向に、支持部W81(第6ピンP6側から第8ウェブW8を見た場合は、支持部W83)および質量部W82のサイズが拡大される。図10に示した矢印の方向にサイズを拡大することで、剛性の増加に伴う第8ウェブW8の重心位置の変化を最小限に抑えることができる。第2ウェブW2の幅を拡大する場合も、この例に倣えばよい。
剛性条件1および2を同時に満たすには、第2ウェブW2および第8ウェブW8の厚みまたは幅を上述したように拡大させ、更に、第9ウェブW9の厚みまたは幅を第1ウェブW1のそれよりも拡大させればよい。図11に、第9ウェブW9の幅の拡大方向の一例を示す。図11に示す例では、中心軸CAよりも質量部W93側において、支持部W91((第6ピンP6側から第9ウェブW9を見た場合は、支持部W94)および質量部W93のサイズが拡大される。図11に示した矢印の方向にサイズを拡大することで、剛性の増加に伴う第9ウェブW9の重心位置の変化を最小限に抑えることができる。
10 クランクシャフト
CA、CP5、CP6 中心軸
J1〜J4 クランクジャーナル
P1〜P6 クランクピン
W1〜W9 クランクウェブ
W81、W81、W91、W94 支持部
W82、W92、W93 質量部

Claims (2)

  1. V型6気筒エンジンのクランクシャフトであって、
    前記クランクシャフトは、
    前記V型6気筒エンジンの前方から後方に向かう順に設けられた第1ジャーナル、第2ジャーナル、第3ジャーナルおよび第4ジャーナルと、
    前記第1ジャーナルと前記第2ジャーナルの間に設けられた第1ピンおよび第2ピン、前記第2ジャーナルと前記第3ジャーナルの間に設けられた第3ピンおよび第4ピン、および、前記第3ジャーナルと前記第4ジャーナルの間に設けられた第5ピンおよび第6ピンと、
    前記第1ジャーナルと前記第1ピンを接続する第1ウェブ、前記第1ピンと前記第2ピンを接続する第2ウェブ、前記第2ピンと前記第2ジャーナルを接続する第3ウェブ、前記第2ジャーナルと前記第3ピンを接続する第4ウェブ、前記第3ピンと前記第4ピンを接続する第5ウェブ、前記第4ピンと前記第3ジャーナルを接続する第6ウェブ、前記第3ジャーナルと前記第5ピンを接続する第7ウェブ、前記第5ピンと前記第6ピンを接続する第8ウェブ、および、前記第6ピンと前記第4ジャーナルを接続する第9ウェブと、
    を備え、
    前記第1ウェブ、前記第2ウェブ、前記第3ウェブ、前記第4ウェブ、前記第5ウェブ、前記第6ウェブ、前記第7ウェブ、前記第8ウェブおよび前記第9ウェブは、ウェブ形状に基づいて3つのグループに分類され、
    前記第2ウェブ、前記第5ウェブおよび前記第8ウェブは、第1グループに分類され、
    前記第1ウェブおよび前記第9ウェブは、第2グループに分類され、
    前記第3ウェブ、前記第4ウェブ、前記第6ウェブおよび前記第7ウェブは、第3グループに分類され、
    前記第1グループにおいて、前記第2ウェブおよび前記第8ウェブの剛性が、前記第5ウェブの剛性よりも高いことを特徴とするV型6気筒エンジンのクランクシャフト。
  2. 前記第2グループにおいて、前記第9ウェブの剛性が、前記第1ウェブの剛性よりも高いことを特徴とする請求項1に記載のV型6気筒エンジンのクランクシャフト。
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