JP2023061702A - 弦楽器励振装置および弦楽器励振システム - Google Patents
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Abstract
Description
そして、各弦は、ブリッジの上部を超えて一端部をブリッジベース部材に取り付けられたブリッジピンに係止されている。この弦のそれぞれは、他端部をヘッド側(テール側)に設けられている張力調整機構によって張力を与えられることにより、ブリッジの上面に押し付けられ、ブリッジによって有効な位置に規定される。
このような弦楽器を用いて、弦楽器のブリッジを外部から、例えば圧電振動子やスピーカのような振動手段により響鳴させるシステムが提案されている。
その他の手段については、発明を実施するための形態のなかで説明する。
(第1の実施形態)
本実施形態は、弦楽器として例えばチェロやヴィオラなどに適用することができるが、ここではバイオリンに適用した例として説明する。
[全体構成]
弦楽器励振装置100と弦楽器励振装置100-1とは、弦の取り付け位置が異なり、同一構成である。以下、図2に示すネック側の弦に取り付けた弦楽器励振装置100を例に取る。なお、図2および図3の要部拡大図は、G弦(音の低い弦15g)取り付けられた弦楽器励振装置100の構成を示している。
弦楽器励振装置100は、振動装置30の音響振動を、バイオリン1に伝えて当該バイオリン1を響鳴させる。
バイオリン1は、表板2、裏板3および側板4からなる胴体5と、表板2上からヘッド側(テール側)に延びる指板6と、胴体5のヘッド側頂部および指板6の背面に固定されたネック7と、を備える。ネック7のヘッド8は、渦巻き9を形成し、糸巻き(ペグ)10を備える。表板2のテール側には、テールピース11が固定されテールピース11にはアジャスタ12が取り付けられる。表板2には、胴体5内部に開口する一対のf字孔13が形成される。そして、胴体5は、ヘルムホルツ共鳴器を構成している。
弦15は、正面から見て左が低音、右が高音の弦であり、高音の弦から順にE弦,A弦,D弦,G弦である。4本の弦15e,15a,15d,15g(図2参照)は、胴体5に固定されたテールピース11から駒20の上を通り、指板6の先にある上駒(ナット)16に引っ掛けてその先の糸巻き10に巻き取られる。
バイオリン1の表板2(図1参照)に設置される駒20について述べる。
図2に示すように、駒20は、弦15を支持する上面部20aと、上面部20a上に所定間隔で形成された弦溝20bと、を有する。上面部20aは、上に凸となる緩やかな曲面で形成されている。駒20は、4本の弦15e,15a,15d,15gを弦溝20bによって所定の位置に支え、弦15e,15a,15d,15gの振動を表板2(図2参照)に伝える。駒20は、指板6とテールピース11(図1参照)の間の表板2上に、表板2に対してほぼ垂直となるように設置され、取り外し可能である。
駒20は、一例として楓材が用いられる。楓材は、有効に音を伝達できるよう密度が高く、木の繊維も規則正しく詰まっている。
音源装置50は、音信号を再生する音源である。音源装置50は、振動装置30に音信号を出力するものであればどのような電子機器でもよい。音源装置50は、バイオリンなどの弦楽器の音を音源として出力している。弦楽器の音を音源として出力した場合、実演奏に近く、リアリティ度の高い楽音を再生することができる。
CPU51は、ROMまたは電気的に書換可能な不揮発性メモリであるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)に記憶された弦加振音プログラム52aを読み出してRAMに展開し、弦加振制御を行う。CPU51は、入力回路53を介して入力される入力信号に基づいて、各部を制御するための制御信号を、出力回路54を介して出力する。
出力回路54は、音信号出力結果等を出力するための信号(例えば表示部56に表示するための表示信号)を出力する。また、出力回路54は、振動装置30を駆動するためのドライバを有していてもよく、この場合は、音源装置50の音信号を直接振動装置30に出力することも可能である。
・増幅機能
位相反転回路60は、音源装置50から出力された音信号を、スピーカ20を駆動する音信号に増幅する。
・位相反転機能
位相反転回路60は、上記音源装置50から出力された音信号のうち一方の極性の信号を反転させて、振動装置30Aまたは振動装置30B(後記図19等参照)に出力する。
・プロセス回路機能
本発明者の実験によれば、音響測定では各弦加振の特性に大きな差はない知見を得ている。しかし、実際の演奏では、各弦が受け持つ音階がある。そこで、位相反転回路60は、プロセス回路機能を備える。プロセス回路機能は、各弦が受け持つ音階に合わせて弦ごとに音信号をイコライズする。プロセス回路機能は、2弦以上の同時加振ではどのような特性にするかを調整する。また、プロセス回路機能では、イコライズに加えて左右の極性を反転する処理も行う。
振動装置30は、音源装置50から出力され、位相反転回路60により増幅された音信号により振動する。
振動装置30は、小型スピーカを使用する(図1~図23参照)。振動装置30は、超磁歪スピーカを利用する(図24~図26参照)。
・小型スピーカ(図1~図23参照)
一般に、スピーカは、電気信号を前後方向に振動するボイスコイルと、ボイスコイルに直結された振動板(いずれも図示省略)と、を備え、この振動板が振動することで音信号と等しい波形の音が空気中に放射される。振動装置30の振動板である円形のコーン紙に、本体基板110の振動装置接続面130(図2参照)を接着剤により直付する。これにより、振動装置30の振動板(コーン紙)の振動は、接続部210を介して本体基板110に直接伝わる。
超磁歪スピーカは、超磁歪材料の振動子を用いたフラットパネルスピーカである。超磁歪材料の振動子は、円柱状の超磁歪素子にコイルを巻いた構造であり、コイルに音電流が流れると、超磁歪素子が伸縮し、その力によって厚いアクリル板を振動させて音を再生する。超磁歪スピーカの適用例は、両サイド加振スピーカ45を用いて後記する(図24~図26参照)。
また、振動装置30本体は、軽量であるため振動装置30本体を支持する支持部材(図示省略)は特に設置しなくてもよい。
図2に示すように、弦楽器励振装置100は、駒20に近い弦15(ここでは、G弦15g)に取り付けられる。なお、後記するように、弦楽器励振装置100は、バイオリン1の4本の弦15e,15a,15d,15gのうち、どの弦15に取り付けてもよい。ただし、G弦(弦15g)またはE弦(15e)への取り付けは、弦15に対して外方からの取り付けとなるため装着が容易である利点がある。また、各弦15e,15a,15d,15gに取り付けた場合の音響的効果の差異については、後記する。
本体基板110は、本実施形態では弦15が延びる方向に辺が長い長方体状部材である。本体基板110は、例えば、断面が10mm×10mmで、長さが15mmの角棒である。
本体基板110の形状を直方体形状にすると加工が容易で、材料に無駄が生じない。また、直方体形状を採ると、直方体面に取付面110aと振動装置接続面130を形成しやすい。すなわち、振動装置接続面130は、弦15に対して横方向から、音の振動を伝えようとする。一方で、取付面110aに形成された係合部120は、弦15の脱落を抑制するため、弦15の振動方向ではないことが好ましい。したがって、取付面110aと振動装置接続面130とを直交配置することで、音の振動を最もよく伝達しつつ、本体基板110を弦15に恒久的に安定して取り付けることができる。
係合部120は、弦15に係合し、係合部120に伝えられた振動を正確に効率よく弦15に伝える機能を有する。
係合部120は、弦15の撓み力を利用して弦15に係合する。ここで、弦15の撓み力とは、弦15を局所的に曲げたり変形させたりした場合に元に戻ろうとする復元力をいう。
本発明者が実験に用いたバイオリン1の弦の太さは、G弦:0.79mm、D弦:0.72mm、A弦:0.66mm、E弦:0.29mmである。本実施形態では、係合部120は、S字形状の弦取り付け溝である。溝を有する係合部120の場合、溝幅がわずかに狭ければ弦15を挿入できず、溝幅が広ければ当たりが緩くなったりビリツキが生じたりする。
・溝の深さ
係合部120は、取付面110aから深さ方向(本体基板110の内側方向)に溝堀されたS字形状の弦取り付け溝である。この溝の深さは、弦15に対して真横となるような深さまで溝堀される。本実施形態では、係合部120は、本体基板110の高さの略半分まで溝堀される。図2に示すように、弦楽器励振装置100を弦15に装着したとき、弦15が係合部120の底部に嵌まり込む。装着完了時には、弦楽器励振装置100は、振動装置接続面130の中央部分が、弦15に対し真横に位置する。
係合部(S字形状の弦取り付け溝)120は、長方体状の本体基板110の長尺方向の全長に亘って形成される。図2および図4(b)に示すように、係合部120を適度な長さとすることで、弦楽器励振装置100は、弦15に対して、弦15の軸方向および周方向でずれることなく、確実に安定して取り付けることができる。また、溝の形状をS字形状とすることで、より短い長さでも十分に弦楽器励振装置100を弦15に安定して取り付けることができる。
係合部(S字形状の弦取り付け溝)120は、弦直径の幅に対応する溝が掘られる。
係合部120は、溝の両端の壁で弦15を左右方向から挟み込んで係合する。このため、弦15の太さに対応する溝幅とする。例えば、G弦(弦15g)に取り付ける場合には、係合部120の溝幅は、太いG弦(弦15g)に対応した広い溝幅とする。また、装着した弦楽器励振装置100がずれないようにするため、係合部120の溝幅は、弦15の太さと同等程度とし、取り付け時には、弦15を係合部120に押し込んで取り付ける。
本体基板110の材質が、楓材等の木材であれば、溝幅を弦15の太さと同等程度とすることで、係合部120をわずかに変形させながら底部まで押し込むことができる。その後、わずかに変形した溝が元に戻ることで、底部に装着された弦15がその位置で係合される。
S字形状の弦取り付け溝は、凸部と凹部とがあり、弦15と溝両側面との密着状態が対称となるようS字曲線が形成される。溝の曲線が凸部のみ凹部のみの場合は、弦15が凸壁面に強く当たるため、溝両端の密着が不均衡となる。S字形状の弦取り付け溝とすることで弦15と溝両側面との密着状態が対称にすることができる。
振動装置接続面130は、本体基板110の側面に形成された、振動装置30を取り付ける平らな面である。振動装置接続面130は、図2および図4(b)に示すように、弦15に対して横方向(バイオリン1の表板2に張られた弦15に対して直交する方向)の本体基板110の側面に形成される。本体基板110は、長方体状部材であるため、弦15に対して横方向となる側面は、裏と表の二面あるが、そのどちら側でもよい。
振動装置接続面130は、振動装置30を接続し、振動装置30の振動板の振動(音振動)を本体基板110を介して、係合部120に挟まれた弦15に伝える。
<取り付け時>
図1に示す弦楽器励振装置100は、バイオリン1に張られた弦15に対し、本体基板110の取付面110aに設けられた係合部120の一方の溝端部を当て、そのまま本体基板110を上方から押し込んで、係合部120の全長に亘って弦15に押し込む。係合部120は、装着する弦15の太さより幅広に形成されているため、取り付けは容易である。
図2および図3に示すように、弦楽器励振装置100は、駒20に近いG弦(弦15g)に取り付けられる。弦楽器励振装置100は、振動装置接続面130に、接続部31を介して振動装置30が取り付けられている。図1に示すように、振動装置30には、音源装置50からの音信号が位相反転回路60で増幅されて供給される。位相反転回路60は、第1の実施形態では、信号の位相反転はせずに増幅のみを行う。
<変形例1>
図6(a)~(c)に示すように、変形例1の弦楽器励振装置100Aは、係合部120Aの開口部にテーパ125を設けている。
弦楽器励振装置100Aは、テーパ125を設けることで、本体基板110を弦15と平行に合わせて上から押し込めば自然と弦15はS字溝に規制され押し込まれる。このため、弦楽器励振装置100Aは、弦楽器励振装置100に比べてS字形状の振幅を大きくすることができる。その結果、押し込んだ本体基板110を弦15と平行にスライドさせるときの抵抗も大きく、本体基板110を弦15から抜き取る抵抗も大きくなる。弦挿入後の本体基板110は、弦15に安定に保持され、励振による振動でもずれたり弦15から外れたりすることはない。
図7(a)~(c)に示すように、変形例2の弦楽器励振装置100Bは、溝と直交する方向の断面形状が溝底から溝開口に向かって溝幅が拡がるように溝を形成する係合部120Bを備える。また、係合部120Bの開口部にテーパ125を設けている。また、本体基板110の振動装置接続面130に対向する面には、ばね板126を貼り付けている。ばね板126は、溝開口の溝幅を狭める方向にばね撓み力を加える。
ここで、本体基板110の振動装置接続面130に対向する面には、ばね板126が貼り付けられているので、弦15はばね板126の撓み力によって常に軽く押されながら挿入されることになる。このため、S字形状の係合部120Bで抜き差しを繰り返すことで、溝に摩耗が生じても、より安定な係合を確保することができる。
図8(a)~(c)に示すように、変形例3の弦楽器励振装置100Cは、直線の溝で、かつ溝と直交する方向の断面形状が溝底から溝開口に向かって溝幅が広がる溝を有する係合部120Cを備える。また、係合部120Cの開口部にテーパ125を設けている。ここでの溝底側の溝幅は、弦15の直径よりも若干小さくなるように形成され、弦15を溝底側の溝幅で係合できるように形成されている。また、ばね板126の撓み力によって、溝に摩耗が生じても、より安定な係合を長く確保することができる。
図9および図10(a)~(c)に示すように、変形例4の弦楽器励振装置100Dは、本体基板110の振動装置接続面130側の外周および接続部31の振動装置30を接続する位置を除き接続部31の外周を覆う制振部材190を備える。制振部材190は、シリコンゴム等のゴム製弾性部材である。図9(b)に示すように、制振部材190は、本体基板110と振動装置30との組立・接合時に、本体基板110の外周および接続部31の外周を覆うように装着される。なお、制振部材190は、振動装置接続面130に対面して接続部31を除く接続面に当接するように、平面視が矩形で中央に丸穴の貫通した状態の接続係合面を形成している。
図11に示すように、弦楽器励振装置100をネック側の弦に、また、弦楽器励振装置100-1をテール側の弦に取り付ける。弦楽器励振装置100と弦楽器励振装置100-1とは、同一構成である。
以上説明したように、本実施形態の弦楽器励振装置100~100Dは、バイオリン1の弦15への取付面110aを有する本体基板110と、取付面110aに設けられ、弦15の撓み力を用いて弦15に係合する係合部120と、取付面110aとは異なる面に設けられ、振動装置30を接続する振動装置接続面130と、を備える。
弦加振用前置イコライザについて説明する。
弦加振用前置イコライザは、本実施形態では、図1の位相反転回路60に設置される。
弦楽器励振装置100~100Dにおける弦加振では、バイオリンの4弦ごと個別に加振できるようになっている。各弦を個別に周波数特性用のスイープ信号で加振し再生音を測定した結果は、G,D,A,E弦による差は少なくほぼ200Hzから20kHzをカバーしている。4弦を個別に加振し再生音を測定した結果、各弦の伝達特性がよく似ており200Hzから20KHzをカバーしていることが分かる。
G弦;200Hzから6kHz
D弦;300Hzから12kHz
A弦;400Hzから15kHz
E弦;650Hzから18kHz
以上により、本実施形態の弦楽器励振装置100~100Dにより、バイオリンの生演奏に近い再生音楽を楽しむ目的に照らせば、各弦を加振する信号は、演奏時に各弦を加振する周波数範囲に制限することが好ましい。
まとめると、弦加振用前置イコライザが各弦を加振する組合せは下記である。
G弦;200Hz~6kHz
D弦;300Hz~12kHz
A弦;400Hz~15kHz
E弦;650Hz~18kHz
2弦の音階再生の最低音から最高音
G+D弦;200Hz~12kHz
A+E弦;400Hz~18kHz
D+A弦;300Hz~15kHz
G+A、G+E、D+E弦は、設定しない。
4弦の音階再生の最低音から最高音;200Hz~18kHz
図14に示すように、弦楽器励振装置100,100-1,100-2,100-3をG,D,A,E弦にそれぞれ取り付ける。弦楽器励振装置100,100-1,100-2,100-3は、1弦励振である。隣り合った弦楽器励振装置100,100-1,100-2,100-3が、互いに接触しないように配置し4弦独立に励振する。弦楽器励振装置100,100-1,100-2,100-3は、同一構成である。なお、弦楽器励振装置100に代えて、図6に示す弦楽器励振装置100A、図7に示す弦楽器励振装置100B、図8に示す弦楽器励振装置100C、図9に示す弦楽器励振装置100Dであってもよい。また、弦楽器励振装置100,100-1,100-2,100-3の一部または全部をテール側に取り付ける態様でもよい。
弦15の振動は、駒20を介してバイオリン1の本体を響鳴させる。4弦のうち、いずれか一つの弦15への弦楽器励振装置100,100-1,100-2,100-3の装着であってもバイオリン1を良好に響鳴させることができる。本発明者は、さらに各弦に対し励振のための最もよい周波数を見出した。例えば、G弦に取り付けた弦楽器励振装置100には、弦加振用前置イコライザから200Hz~6kHzで励振し、D弦に取り付けた弦楽器励振装置100-1には、弦加振用前置イコライザから400Hz~12kHzで励振する。A弦に取り付けた弦楽器励振装置100-2には、弦加振用前置イコライザから400Hz~15kHzで励振し、E弦に取り付けた弦楽器励振装置100-3には、弦加振用前置イコライザから650Hz~18kHzで励振する。
各弦の特徴と本弦楽器励振装置100~100D,100-1,100-2,100-3について補足して説明する。
弦加振(励振)の対象となるバイオリン弦は、楽器バイオリンの重要な構成部品である。一般の弦あるいは紐と異なり、本弦楽器励振装置を適用するにあたっては、下記バイオリン弦の特徴に留意する。
現在使われているバイオリン弦の素材は、大きく分けてスチール、ナイロンがある。さらに、スチール、ナイロンを芯としてシルバー、アルミニウム、チタニウムの細線を巻き付けたものなど、演奏時のボウイングの感触や再生音質の好みに合わせて選択されるよう多くの種類がある。
G弦:0.8mmφ 4~5Kg重、D弦;0.7~0.8mmφ 4~6Kg重
A弦:0.7mmφ 5~6Kg重、E弦:0.25mmφ 7~9Kg重
上記データで分かるように一言でバイオリン弦といっても素材も異なるし、太さではE弦はG弦の3分の1、張力ではE弦はG弦の2倍もあるなど物理条件が大きく異なる。
上記特有の効果に加え、本弦楽器励振装置100~100D,100-1,100-2,100-3は、下記の特徴を有する。
図2と同一構成部分には同一番号を付して重複箇所の説明を省略する。
本実施形態は、G弦(弦15g)およびD弦(弦15d)に取り付けられた弦楽器励振装置200Aと、E弦(弦15e)およびA弦(弦15a)に取り付けた弦楽器励振装置200Bとの、2つの弦楽器励振装置200を備える例を示す。
図15に示すように、弦楽器励振装置200は、弦15への第1取付面210aおよび第2取付面210bを有する本体基板210と、本体基板210に設けられ、弦15の撓み力を用いて第1の弦15に係合する第1係合部221と、本体基板210の取付面210aに設けられ、弦15の撓み力を用いて第2の弦15に係合する第2係合部222と、第1取付面210aおよび第2取付面210bとは異なる面(第1取付面210aおよび第2取付面210bにそれぞれ直交する面)に設けられ、振動装置30の振動板(スピーカ振動板;ボイスコイル)を接続する振動装置接続面230と、を備える。
図15および図16(a)に示すように、本体基板210は、第1取付面210aと、第1取付面210aに対向(対面)配置された第2取付面210bと、第1取付面210aおよび第2取付面210bに共に直交する面に設けられた振動装置接続面230と、を備える。
本実施形態では、弦楽器励振装置200の弦15への取り付け時には、第1取付面210aがバイオリン1の表板2に対向し、第2取付面210bがバイオリン1の表板2と反対方向に位置する。
本体基板210は、本実施形態では2つの弦に係止するよう内側に延びる長方体状部材である。図2の本体基板110と同様に、本体基板210の形状を直方体形状にすると加工が容易で、材料に無駄が生じない。また、直方体形状を採ると、直方体面に第1取付面210aおよび第2取付面210bと振動装置接続面230を形成しやすい。すなわち、図2の本体基板110と同様に、振動装置接続面230は、弦15に対して横方向から、音の振動を伝えようとする。一方で、取付面210aに形成された第1係合部221,222は、弦15の脱落を抑制するため、弦15の振動方向ではないことが好ましい。したがって、第1取付面210aおよび第2取付面210bと振動装置接続面230とをそれぞれ直交配置することで、音の振動を最もよく伝達しつつ、本体基板210を弦15に恒久的に安定して取り付けることができる。
・溝の溝堀方向
図15および図16(a)(b)に示すように、第1係合部221は、第1取付面210aの一方の端部近傍から深さ方向(本体基板210の内側方向)に溝堀され、第2係合部222は、第2取付面210bの他方の端部近傍から深さ方向(本体基板210の内側方向)に溝堀される。第1係合部221と第2係合部222との間隔は、本体基板210の長さ方向で弦15の間隔分離隔している。
第1係合部221と第2係合部222とは、対向する方向(180°異なる方向)から溝堀される。また、第1係合部221と第2係合部222とは、本体基板210の長さ方向で弦15の間隔分離隔し、かつ平行に溝堀される。
図15および図16(a)に示すように、第1係合部221は、第1取付面210aから深さ方向(本体基板210の内側方向)に溝堀されたS字形状の溝である。第2係合部222は、第2取付面210bから深さ方向(本体基板210の内側方向)に溝堀されたS字形状の溝である。
この溝の深さは、2つの弦15に対して真横となるような深さまで溝堀される。本実施形態では、第1係合部221,第2係合部222は、本体基板210の高さの略半分まで溝堀される。図15に示すように、弦楽器励振装置200を2つの弦15に装着したとき、これら弦15が第1係合部221,第2係合部222の底部に嵌まり込む。装着完了時には、弦楽器励振装置200は、振動装置接続面230の中央部分が、2つの弦15に対し真横に位置する。
図15および図16(b)に示すように、第1係合部221,222は、長方体状の本体基板210の短尺方向の全長に亘って形成される。本実施形態では、弦楽器励振装置200は、2つの弦15に対し、第1係合部221,第2係合部222に上下の2方向から取り付けられる。図2に示す本体基板110に比べて、本体基板210の取り付け状態がより安定する構成であるため、第1係合部221,222は、本体基板210の短尺方向で係止する程度の長さでよい。
図15および図16(a)(b)に示すように、第1係合部221,第2係合部222は、溝の両端の壁で弦15を左右方向から挟み込んで係合する。このため、弦15の太さに対応する溝幅とする。例えば、G弦(弦15g)に取り付ける場合には、第1係合部221,222の溝幅は、太いG弦(弦15g)に対応した広い溝幅とする。また、装着した弦楽器励振装置200がずれないようにするため、第1係合部221,第2係合部222の溝幅は、弦15の太さと同等程度とし、取り付け時には、弦15を第1係合部221,第2係合部222に押し込んで取り付ける。
本体基板210の材質が、楓材等の木材であれば、溝幅を弦15の太さと同等程度とすることで、第1係合部221,第2係合部222をわずかに変形させながら底部まで押し込むことができる。その後、わずかに変形した溝が元に戻ることで、底部に装着された弦15がその位置で係合される。
図15および図16(b)に示すように、第1係合部221,第2係合部222は、第1取付面210aおよび第2取付面210bからみてS字形状の溝である。溝の形状をS字形状とすることで、図4(b)に示すように、弦15は、第1係合部221,第2係合部222の一方の凸部の壁と、他方の凸部の壁との2点において、2つの凸部間で捩じり応力を付与されながら、強く当接し固定される。これにより、弦楽器励振装置200を弦15に安定して取り付けることができる。
振動装置接続面230は、本体基板210の側面に形成された、振動装置30を取り付ける平らな面である。振動装置接続面230は、図15および図16(a)に示すように、弦15に対して横方向(バイオリン1の表板2に張られた弦15に対して直交する方向)の本体基板210の側面に形成される。
本実施形態では、弦楽器励振装置200Aの振動装置接続面230には、振動装置30Aを接続し、弦楽器励振装置200Bの振動装置接続面230には、振動装置30Bを接続する。
図2と同一構成部分には同一番号を付して重複箇所の説明を省略する。
上述したように、<4弦同時加振>において、弦楽器励振装置300は、G,D,A,E弦の、4弦に取り付ける。また、弦加振用前置イコライザ(図1の位相反転回路60に設置)は、4弦の音階再生の最低音から最高音を、200Hz~18kHzとすることが好ましい。
本実施形態では、振動装置接続面331,332(接続部)に、更に接続部31を取り付けている。
接続部31は、弦楽器励振装置100の必須の構成要素ではなく、省略は可能である。
なお、接続部31は、本体基板310ではなく、振動装置30側に取り付けられるものでもよい。また、接続部31は、円柱形状としたが角柱形状であっても構わない。
本体基板310は、図2の本体基板110と同様に、振動を伝えやすい材料、例えば駒20の材料と同じ材料(例えば楓材)が好適である。
・溝の溝堀方向
図17および図18(a)(b)に示すように、弦取り付け溝321~324は、湾曲状の取付面310aに、各弦15の間隔分で離隔しで溝堀される。弦取り付け溝321~324は、各弦15の間隔分離隔し、かつ平行に溝堀される。
図17および図18(a)に示すように、弦取り付け溝321~324は、取付面310aから深さ方向(本体基板310の内側方向)に溝堀されたS字形状の溝である。
この溝の深さは、4つの弦15に対して真横となるような深さまで溝堀される。本実施形態では、弦取り付け溝321~324は、本体基板210の高さの略半分まで溝堀される。図17および図18(a)に示すように、弦楽器励振装置300を4つの弦15に装着したとき、これら弦15が弦取り付け溝321~324の底部に嵌まり込む。装着完了時には、弦楽器励振装置300は、振動装置接続面330の中央部分が、4つの弦15に対し真横に位置する。
図17および図18(b)に示すように、弦取り付け溝321~324は、長方体状の本体基板310の短尺方向の全長に亘って形成される。弦楽器励振装置300は、4つの弦15に対し取り付けられる。図2に示す本体基板110に比べて、本体基板210の取り付け状態がより安定する構成である。
図17および図18(a)(b)に示すように、弦取り付け溝321~324は、溝の両端の壁で弦15を左右方向から挟み込んで係合する。このため、弦15の太さに対応する溝幅とする。例えば、G弦(弦15g)に取り付ける場合には、弦取り付け溝321の溝幅は、太いG弦(弦15g)に対応した広い溝幅とする。D弦(弦15d)、E弦(弦15e)およびA弦(弦15a)についても同様に、弦15の太さに対応する溝幅とする。
図17および図18(b)に示すように、弦取り付け溝321~324は、S字形状の溝である。溝の形状をS字形状とすることで、弦楽器励振装置300を各弦15に安定して取り付けることができる。また、弦取り付け溝321~324の4つの溝の形状すべてをS字形状に揃えることで、取り付け時の方向性を揃えることができ、取り付けが容易である利点がある。
振動装置接続面331,332は、本体基板310の側面に形成された、振動装置30A,30Bを取り付ける平らな面である。本実施形態では、振動装置接続面331には、振動装置30Aを接続し、振動装置接続面332には、振動装置30Bを接続する。
振動装置接続面331,332は、図17および図18(a)に示すように、弦15に対して横方向(バイオリン1の表板2に張られた弦15に対して直交する方向)の本体基板310の側面に形成される。
振動装置接続面331,332は、振動装置30A,30Bの振動板の振動(音振動)を本体基板310を介して、弦取り付け溝321~324に挟まれた4つの弦15に伝える。
弦楽器励振装置300は、振動装置30Aおよび振動装置30Bの音響振動を、バイオリン1に伝えて当該バイオリン1を響鳴させる。
図2と同一構成部分には同一番号を付して重複箇所の説明を省略する。
図19および図20(a)(b)に示すように、弦楽器励振装置400は、図2の弦楽器励振装置100を2つ組合わせた構成を採る。
弦楽器励振装置400は、本体基板110(図20(b)の右側)に接続された振動装置30Aの背面と、本体基板110(図20(b)の左側)に接続された振動装置30Bの背面とを貼り合わせて、図19および図20(a)に示すような一体構成とする。
図19および図20(a)に示すように、一方の本体基板110の係合部120から他方の本体基板110の係合部120までの距離は、弦15と弦15の間隔と同じに構成される。図19では、弦楽器励振装置400は、2つの弦15(弦15g,弦15d)に取り付けられる。
弦楽器励振装置400は、振動装置30Aおよび振動装置30Bの音響振動を、バイオリン1に伝えて当該バイオリン1を響鳴させる。
図20と同一構成部分には同一番号を付して重複箇所の説明を省略する。
図21に示すように、弦楽器励振装置400Aは、振動装置30Aの背面と振動装置30Bの背面とがスペーサ35を介して貼り合わされる。スペーサ35は、振動装置30A、振動装置30B間の振動の干渉を軽減する。スペーサ35は、2弦加振において、2弦の独立性を実用的に確保するのが目的である。
図19および図20(a)(b)と同一構成部分には同一番号を付して重複箇所の説明を省略する。
図22および図23(a)(b)に示すように、弦楽器励振装置400Bは、図19および図20(a)(b)に示す振動装置30A,30Bに代えて、両サイド加振スピーカ40(振動装置)を備える。
両サイド加振スピーカ40は、スピーカの中心を前面から背面に貫く振動伝達棒を備え、その両端面(図23の接続部41,42)が振動面となるスピーカである。
弦楽器励振装置400Bの2つの本体基板110は、接続部41,42を介して両サイド加振スピーカ40に接続される。
図2と同一構成部分には同一番号を付して重複箇所の説明を省略する。
弦楽器励振装置600は、図23に示す両サイド加振スピーカ40に代えて、超磁歪素材を用いた振動体を利用した両サイド加振スピーカ45(振動装置)を備える。
係合部620は、取付面610aから水平方向に溝堀されたS字形状の弦取り付け溝である。
左右の係合部620の間隔は、2弦の間隔に比べて1~1.5mm広くする。弦15の撓み力と2弦の復元力で、弦15と係合部620は安定に結合される。
図24および図25に示すように、弦楽器励振装置600は、一方の本体基板610の弦取り付け溝620から他方の本体基板610の弦取り付け溝620までの距離は、弦15と弦15の間隔に比べて所定幅(例えば1~1.5mm広く)に構成される。図24では、弦楽器励振装置600は、2つの弦15(弦15g,弦15d)に取り付けられる。接続部46,47は、両サイド加振スピーカ45の厚みに合わせて、弦取り付け溝620と弦取り付け溝620との距離が、弦15と弦15の間隔に比べて所定幅広くなるように調整される。
本実施形態では、振動装置接続面630(接続部)に、更に接続部46,47を取り付けている。接続部46,47は、弦楽器励振装置600の必須の構成要素ではなく、省略は可能である。
図26に示すように、変形例9の弦楽器励振装置600Aは、弦取り付け溝620の開口部にテーパ625を設けている。
2 表板
15,15e,15a,15d,15g 弦
20 駒
30,30A,30B 振動装置
40,45 両サイド加振スピーカ(振動装置)
50 音源装置
60 位相反転回路(弦加振用前置イコライザ)
100,100-1~100-3,100A~100D,200,200A,200B,300,400,400A,400B,600,600A 弦楽器励振装置
110,210,310,410,610 本体基板
110a,310a,610a 取付面
120,120A~120C,220,321~324,420,620 係合部(弦取り付け溝;係合部)
125,265 テーパ
126 ばね板
130,331,332,630 振動装置接続面
210a 第1取付面
210b 第2取付面
221 第1係合部
222 第2係合部
S 弦楽器励振システム
その他の手段については、発明を実施するための形態のなかで説明する。
Claims (14)
- 振動装置からの振動を弦楽器に伝えて当該弦楽器を響鳴させる弦楽器励振装置であって、
前記弦楽器の弦への取付面を有する本体基板と、
前記取付面に設けられ、前記弦に係合する係合部と、
前記取付面とは異なる面に設けられ、前記振動装置を接続する振動装置接続面と、を備える
弦楽器励振装置。 - 振動装置からの振動を弦楽器に伝えて当該弦楽器を響鳴させる弦楽器励振装置であって、
前記弦楽器の弦への取付面を有する本体基板と、
前記取付面に設けられ、前記弦の撓み力を用いて第1の弦に係合する第1係合部と、
前記取付面に設けられ、前記弦の撓み力を用いて第2の弦に係合する第2係合部と、
前記取付面とは異なる面に設けられ、前記振動装置を接続する振動装置接続面と、を備える
弦楽器励振装置。 - 前記係合部は、前記弦の撓み力を用いて前記弦に係合する
請求項1に記載の弦楽器励振装置。 - 前記係合部は、溝底から溝開口に向かって溝幅が広がる溝を有し、前記弦を溝底側の溝幅で係合する
請求項1に記載の弦楽器励振装置。 - 前記取付面は、第1取付面と、前記第1取付面と対向配置された第2取付面とを有し、
前記第1係合部は、前記第1取付面に設けられ、前記第2係合部は、前記第2取付面に設けられる
請求項2に記載の弦楽器励振装置。 - 前記本体基板および前記振動装置は、前記第1の弦と前記第2の弦の間に配置され、前記第1の弦と前記第2の弦との張力を用いて、係合される
請求項2に記載の弦楽器励振装置。 - 前記係合部は、前記取付面から深さ方向に形成された緩やかな曲線状の溝である
請求項1に記載の弦楽器励振装置。 - 前記溝は、複数の前記弦に対向する位置に、前記取付面に隣り合って複数形成されている請求項4または請求項7に記載の弦楽器励振装置。
- 前記曲線状の溝は、S字形状の溝である
請求項7に記載の弦楽器励振装置。 - 前記係合部が係合する前記弦の位置は、前記弦楽器の表板に設置される駒の近傍である
請求項1に記載の弦楽器励振装置。 - 前記振動装置を接続する接続部を除く前記振動装置接続面の周囲を覆って不要振動を抑制する制振部材を備える
請求項1または請求項2に記載の弦楽器励振装置。 - 請求項1ないし請求項11のいずれか一項に記載の弦楽器励振装置を備え、
前記弦楽器励振装置は、音階演奏例から見た各弦の特徴周波数で、各弦を独立して励振させる
弦楽器励振システム。 - 請求項1ないし請求項11のいずれか一項に記載の弦楽器励振装置と、
前記弦楽器励振装置の前記振動装置接続面に取り付けられる振動装置と、備える
弦楽器励振システム。 - 音源装置と、
前記音源装置からの音信号を、各弦が受け持つ音階に合わせて弦ごとにイコライズする、および/または、音源装置からの音信号を、反転出力するプロセス回路と、を備える
請求項12または請求項13に記載の弦楽器励振システム。
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JP7098219B1 (ja) | 2022-07-11 |
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