JP2023059426A - 医療用マスク - Google Patents

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Abstract

【課題】品質基準を満たしつつ、顔に接する面が良好な肌触りを有する医療用マスクを提供する。【解決手段】医療用マスク1は、内側シート21、フィルターシート22及び外側シート23の三層の不織布で構成されたマスク本体部2を備える。外側シートの坪量は内側シートの坪量より多く、外側シートの坪量は46~70g/m2である。内側シートは、長繊維の不織布で形成されており、内側シートの肌側の表面の表面粗さの平均偏差(SMD)は3.3以下である。マスク本体部は、人工血液バリア性として、120mmHg以上に耐える性能を有し、通気抵抗値として、60Pa/cm2未満の性能を有する。【選択図】図1

Description

本発明は、医療用マスクに関する。
医療用のマスクが知られている。例えば、特許文献1には、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンド(SMS)積層と、最も内側の層と、前記スパンボンド/メルトブロー/スパンボンド積層と前記最も内側の層との間に配置された少なくとも一つの付加的濾過層と、からなる顔用マスクが開示されている。前記最も内側の層は、液体媒体に分散された繊維をスクリーン上に堆積させることによって形成される湿式堆積布、スパンボンド層及び第2のスパンボンド/メルトブロー/スパンボンド積層とからなる群から選択されるものである。
特許文献2には、下記(イ)~(ニ)の要件を満たすことを特徴とする表材層(A)、中間材層(B)及び口元材層(C)の積層体からなる医療手術用血液不浸透性マスクが開示されている。(イ):表材層(A)は、ポリプロピレン製のスパンボンド不織布であって、目付が10~65g/m、厚みが0.05~1.0mm、繊維径が10μm以上である。(ロ):中間材層(B)は、ポリプロピレン製のメルトブロー不織布であって、目付が8~40g/m、厚みが0.05~1.0mm、繊維径が5μm以下である。(ハ):口元材層(C)は、ポリプロピレン製のサーマルボンド不織布である。(ニ):8L/分で空気を通したときの積層体の圧力損失が4.0mmAq/cm以下である。
特許第4316678号 特許第4095863号
医療用のマスクは、人工血液バリア性などの所定の品質基準を満たす必要があるが、それに加えて、顔に接する面が良好な肌触りを有することが望ましい。
特許文献1の顔用マスクでは、顔に接する最も内側の層として、湿式堆積布、スパンボンド層及びSMS積層が挙げられている。このうち、湿式堆積布は、短繊維で形成されているため、その表面に多数の繊維の端部が露出するので、それらが顔に当たってちくちくとした感覚を生じさせ易く、良好な肌触りを有さないおそれがある。一方、スパンボンド層やSMS積層のS(スパンボンド)層のような長繊維で形成される不織布では、その表面に繊維の端部が露出することはほとんどないが、表面の凹凸の状態(表面特性)によっては、ざらざらとした感覚を生じさせやすく、良好な肌触りを有さないおそれがある。
また、特許文献1では、唯一の実施例として、顔用マスクの特性評価のために、SMS積層/メルトブロー層/湿式紙層の構成を有する試験体について、合成血液を用いた液体貫通試験(以下、「人工血液バリア性試験」ともいう。)を行っている。すなわち、その試験では、最も内側の層として短繊維の天然繊維で形成された湿式紙層を用いた試験体が評価されている。そのため、最も内側の層として長繊維の合成繊維で形成されたスパンボンド層(SMS積層のS層を含む)を用いた試験体を評価していない。したがって、その顔用マスクは、最も内側の層が長繊維のスパンボンド層である場合、人工血液バリア性の基準を満たさないおそれがある。
更に、特許文献2の医療手術用血液不浸透性マスクでは、顔に接する口元材層としてサーマルボンド不織布が挙げられている。サーマルボンド不織布のような短繊維で形成される不織布では、その表面に多数の繊維の端部が露出するので、顔にちくちくとした感覚を生じさせ易く、良好な肌触りを有さないおそれがある。
また、特許文献2では、実施例において、顔用マスクの特性評価のために、一番外側の表材層としては、二層のスパンボンド層からなるもののみを用いている。そのため、人工血液バリア試験においては、二層のスパンボンド層の各々の内部で人工血液の浸透が抑制されるだけでなく、二層のスパンボンド層の各々の表面で人工血液が層内に浸透することが抑制され、かつ、二層のスパンボンド層の間の領域(空間)に、層の表面に沿って人工血液が拡散することで人工血液が遮断される。すなわち、この特許文献2のような一番外側の層が多層のマスクは、特許文献1のような一番外側の層が単層の場合と比較して、人工血液を遮断する機構が明らかに相違している。そして、一番外側の層が単層の場合と比較して、コストが高くなるおそれがある。
内側シート、フィルターシート及び外側シートの三層で構成された医療用マスク、すなわち、各層が単層の医療用マスクが、人工血液バリア性の基準を確実に満たすように改善する方法としては、各層の坪量を増やす方法が考えられる。ただし、例えば、各層の坪量を均等な割合で増加させるだけでは、他の品質基準を満足することや、顔に接する面が良好な肌触りを有することができないおそれがある。
そこで、本発明は、医療用マスクとしての品質基準を満たしつつ、顔に接する面の肌触りが良好である医療用マスクを提供することを目的とする。
本発明は、内側シート、フィルターシート及び外側シートの三層の不織布で構成されたマスク本体部を備える医療用マスクであって、前記外側シートの坪量は内側シートの坪量より多く、前記外側シートの坪量は46~70g/mであり、前記内側シートは、長繊維の不織布で形成されており、前記内側シートの肌側の表面の表面粗さの平均偏差(SMD)は3.3以下であり、前記マスク本体部は、人工血液バリア性として、120mmHg以上に耐える性能を有し、通気抵抗値として、60Pa/cm未満の性能を有する、医療用マスク、である。
本発明によれば、医療用マスクとしての品質基準を満たしつつ、顔に接する面の肌触りが良好である医療用マスクを提供することができる。
実施形態に係る医療用マスクの構成を示す平面図である。 図1の医療用マスクにおけるマスク本体部の構成を示す要部断面図である。 別の実施形態に係る医療用マスクの構成を示す平面図である。
本実施形態は、以下の態様に関する。
[態様1]
内側シート、フィルターシート及び外側シートの三層の不織布で構成されたマスク本体部を備える医療用マスクであって、前記外側シートの坪量は内側シートの坪量より多く、前記外側シートの坪量は46~70g/mであり、前記内側シートは、長繊維の不織布で形成されており、前記内側シートの肌側の表面の表面粗さの平均偏差(SMD)は3.3以下であり、前記マスク本体部は、人工血液バリア性として120mmHg以上に耐える性能を有し、通気抵抗値として60Pa/cm未満の性能を有する、医療用マスク。
発明者の検討によれば、医療用マスクを装着する医療従事者の安全性をより向上する観点から、人工血液バリア性試験において、人工血液は、外側の二層(外側シート及びフィルターシート)で概ね遮断され、内側シートまで到達しないことが望ましい。そこで、本医療用マスクでは、外側シートの坪量を、内側シートの坪量より多くし、かつ、46~70g/mとしている。すなわち、内側シートの坪量を実質的に少なく抑えつつ、外側シートの坪量を所定の範囲内で多くしている。それにより、人工血液バリア性試験において、人工血液を外側の二層で概ね遮断でき、医療用マスクにおける人工血液バリア性の基準(120mmHg以上)を確実に満たすことができる。それと共に、内側シートの通気抵抗を低く抑えることができ、結果として、通気抵抗値(圧力損失値)の基準(60Pa/cm未満)をも確実に満たすことができる。
ここで、上記のように内側シートの坪量を低く抑えると、繊維のムラが相対的に目立つようになり、肌触りに影響するおそれがある。そこで、本医療用マスクでは、内側シートを長繊維の不織布とし、かつ、内側シートの肌側の表面のSMDを3.3以下としている。それにより、その表面に多数の繊維の端部が露出することや、表面の凹凸が大きくなることを抑えることができる。したがって、人工血液バリア性や通気抵抗値(圧力損失値)の基準を満しつつ、顔にちくちくとした感覚やざらざらとした感覚を生じさせ難くでき、良好な肌触りを発現させることができる。
このように、本態様では、医療用マスクとしての品質基準を満たしつつ、顔に接する面の肌触りが良好である医療用マスクを提供することができる。
[態様2]
前記内側シートのエンボス率は、10~20%である、態様1に記載の医療用マスク。
本医療用マスクでは、長繊維の不織布で形成された内側シートのエンボス率(エンボスの面積率)は、10~20%である。そのため、内側シートの肌側の表面から繊維が大きくはみ出すことを抑制でき、SMDを確実に3.3以下とすることができ、良好な肌触りをえることができる。エンボス率が低すぎると、内側シートの形状安定性が悪くなり、内側シートの肌側表面から繊維が大きくはみ出し易くなり、高過ぎると、内側シートが硬くなり、いずれもざらざらとした感覚を生じさせ易くなる。
[態様3]
前記内側シートの通気抵抗値は、7Pa/cm以下である、態様1又は2に記載の医療用マスク。
本医療用マスクでは、内側シートの通気抵抗値は7Pa/cm以下と低い値を有するので、通気抵抗値(圧力損失値)の基準をより確実に満させることができる。
[態様4]
前記内側シートはスパンボンド不織布で形成されている、態様1乃至3のいずれか一項に記載の医療用マスク。
本医療用マスクでは、内側シートは長繊維のスパンボンド不織布で形成されているので、内側シートの肌側表面からの繊維のはみ出しや、繊維の端部の露出を確実に抑制でき、良好な肌触りをえることができる。
[態様5]
前記外側シートはスパンボンド層、メルトブローン層及びスパンボンド層を積層したSMS不織布で形成されている、態様1乃至4のいずれか一項に記載の医療用マスク。
本医療用マスクでは、外側シートが、所定の坪量を有し、緻密なメルトブローン層を含むSMS不織布の積層体で形成されているので、人工血液バリア性の基準をより確実に満たすことができる。
[態様6]
前記SMS不織布の前記メルトブローン層の坪量は、3~8g/mである、態様5に記載の医療用マスク。
本医療用マスクでは、SMS不織布のメルトブローン層の坪量は、3~8g/mであるので、人工血液バリア性及び通気抵抗値(圧力損失値)の基準をより確実に満たすことができる。坪量が高過ぎると、通気抵抗値(圧力損失値)が高くなり易く、低過ぎると、人工血液バリア性が低下し易くなる。
[態様7]
前記外側シート及び前記フィルターシートを合わせた厚さは0.56~0.80mmである、態様1乃至6のいずれか一項に記載の医療用マスク。
本医療用マスクでは、外側シート及びフィルターシートを合わせた厚さは0.56~0.80mmであり、十分な厚さがあるので、人工血液バリア性試験における人工血液を外側の二層(外側シート及びフィルターシート)で概ね遮断できる。それにより、人工血液バリア性の基準をより確実に満たすことができ、厚過ぎないので、通気抵抗値(圧力損失値)の基準をより確実に満たすことができる。繊維密度が同じ場合、厚さが厚過ぎると、通気抵抗値(圧力損失値)が高くなり易く、薄過ぎると、人工血液バリア性が低下し易くなる。坪量が同じ場合、厚さが薄過ぎると、繊維密度が高くなり、通気抵抗値(圧力損失値)が高くなり易く、厚過ぎると、繊維密度が低くなり、人工血液バリア性が低下し易くなる。
[態様8]
前記マスク本体部の横方向の両端部に設けられた一対の耳掛け部を更に備え、前記一対の耳掛け部の各々は、前記マスク本体部の前記横方向の前記端部に接合された基部と、前記基部と互いに環状に連接された環状部と、を含み、前記基部は、前記マスク本体部の前記横方向の前記端部において、前記マスク本体部の上下方向のほぼ全体に亘り、帯状に延在するように構成されている、態様1乃至7のいずれか一項に記載の医療用マスク。
本医療用マスクでは、一対の耳掛け部の各々の基部が、マスク本体部の横方向の端部において、上下方向のほぼ全体に亘り、帯状に延在するように構成されている。そのため、マスクの装着時に、マスク本体部の両端部近傍において、マスク本体部と顔の表面との間に隙間が生じても、基部によりその隙間を覆うことができる。それにより、本医療用マスクは、安全上の品質基準を満たすだけでなく、装着時に血液等が飛散したとしても、マスク本体部と顔の表面との間の隙間から、それらが侵入することを抑制でき、安全性をより向上できる。
以下、本発明の医療用マスクの実施形態について説明する。ただし、以下では、「医療用マスク」を単に「マスク」と簡略的に記すものとする。
なお、本明細書において用いられる各種方向等については、特に断りのない限り、次のとおりである。本明細書において、「上下方向」は、マスクの装着時の上下方向に対応する方向であり、「横方向」は、マスクの装着時の左右方向に対応する方向であり、これらの方向は互いに直交する関係にある。例えば、プリーツ型又はフラット型マスクの場合は、長手方向及び短手方向を有する略矩形状のマスク本体部の、長手方向が横方向に対応し、短手方向が上下方向に対応する。また、本明細書では、特に断りのない限り、マスクの厚さ方向において、マスクの装着時に、装着者の肌面に対して相対的に近位側を「肌側」といい、マスクの装着時に、装着者の肌面に対して相対的に遠位側を「非肌側」という。
[マスク]
図1は、実施形態に係るマスク1の構成を示す平面図である。図1に示すように、本実施形態に係るマスク1は、装着時に装着者の鼻や口元を覆う略矩形状の形状を有するマスク本体部2を具備している。本実施形態では、マスク1は、マスク本体部2の横方向Hの両側部から延びる一対の耳掛け部3を更に具備している。一対の耳掛け部3の各々は、マスク本体部2の横方向Hの両側部の各々に、接着剤や熱融着などの方法で接合される。
なお、マスク1が耳掛け部3を有さない場合、例えば、マスク本体部2は、肌側の表面における横方向Hの両端部に配置された粘着剤で、装着者の頬などに粘着固定され得る。あるいは、マスク本体部2は、横方向Hの両端部をクリップのような固定部材で摘まれ、その固定部材に取り付けられた紐状部材を耳や頭部に引っ掛けて、装着者の耳や頭部に固定され得る。あるいは、マスク本体部2は、マスク本体部の部分が交換可能に形成されたマスクに、交換用のマスク本体部として取り付け得る。
図2は、図1のマスク1におけるマスク本体部2の構成を示す要部断面図である。マスク本体部2は、内側シート21、フィルターシート22及び外側シート23の三層の不織布のシート部材が厚さ方向T(非肌側T、肌側T)に積層されて構成されている。本実施形態では、内側シート21、フィルターシート22及び外側シート23は、マスク本体部2の上下方向V及び/又は横方向Hの両端部に形成された接合部4により互いに接合されている。
本実施形態では、図1に示すように、マスク本体部2は、マスク本体部2の上下方向Vの上側端部において横方向Hに沿って配置された、装着者の鼻上部の形状に適合するように変形可能なノーズフィット部を備えている。また、本実施形態では、図1に示すように、マスク1は、マスク本体部2の複数のシート部材が上下方向Vに折り畳まれてなる複数の襞部を備えるプリーツ型マスクである。
そして、マスク本体部2において、外側シート23の坪量は内側シート21の坪量より多く、外側シート23の坪量は46~70g/mであり、内側シート21は、長繊維の不織布で形成されており、内側シート21の肌側の表面の表面粗さの平均偏差(SMD)は3.3以下である。マスク本体部2は、人工血液バリア性として、120mmHg以上に耐える性能を有し、通気抵抗値として、60Pa/cm未満の性能を有する。
ここで、シートの坪量は、以下の方法で測定される。
<坪量>
(1)測定対象のシート(不織布)から50mm×50mmの四角形の試料片を切り出す。
(2)試料片の質量(g)を電子天秤により測定する。
(3)測定した質量(g)を試料片の面積(m)で除することにより試料片の坪量(g/m)を算出する。
(4)複数個の試料片の平均値を求め、シートの坪量とする。
シートの表面粗さの平均偏差(SMD)は、以下の方法で測定される。
<表面粗さの平均偏差(SMD)>
(1)測定対象のシート(不織布)から100mm×100mmの四角形の試料片を切り出す。
(2)カトーテック株式会社製の自動化表面試験機KES-FB4AUTO-Aに、試料片をセットする。
(3)試験機において、試験片上で、25gの加重が加えられた端子を、1.0mm/秒の速さで滑らせることにより、平均摩擦係数:MIU、その標準偏差:MMD、表面粗さの平均偏差:SMD(μm)を測定する。なお、上記端子は、10mm×10mmのサイズを有し、0.5mm径のピアノ線が巻かれている。
(4)複数個の試料片の平均値を求め、シートの表面粗さの平均偏差:SMD(μm)とする。
マスク本体部2の人工血液バリア性の性能は、JIS T 9001:2021(医療用マスク及び一般用マスクの性能要件及び試験方法)における「人工血液バリア性試験」に準拠した方法で測定される。
マスク本体部2の通気抵抗値(圧力損失値)(Pa/cm)は、以下の方法で測定される。
<通気抵抗値(圧力損失値)>
(1)測定対象の試料(マスク本体部)から100mm×100mmの四角形状の試料片を切り出す。
(2)試料片を、20℃、60%RHの条件下で24時間静置する。
(3)20℃、60%RHの条件下、カトーテック株式会社製の通気性試験機KES-F8-AP1に、試料片をセットする。
(4)試料片の上に、150mm×150mmのアクリル板を、試料片に32.6mPaの圧力が加わるように置いて、上記試料片の通気抵抗値を測定する。
(5)上述の測定を計5回繰り返し、その平均値を、試料の通気抵抗値AR(kPa・s/m)とする。
(6)通気抵抗値ARを、下記計算値:
AP(Pa/cm)=37.68・AR+4.42
に従って、通気抵抗値AP(Pa/cm)に換算し、試料の通気抵抗値AP(Pa/cm)とする。
なお、各シートの通気抵抗値を測定する場合にも同様とする。
なお、通気抵抗値(Pa/cm)は、JIS T 9001:2021(医療用マスク及び一般用マスクの性能要件及び試験方法)における「圧力損失試験」に準拠した方法で測定されてもよい。
本実施形態のマスク1では、内側シート21は長繊維の不織布で形成されており、上記の方法で測定された外側シート23の坪量は内側シート21の坪量より多く、外側シート23の坪量は46~70g/mである。上記の方法で測定された内側シート21の肌側の表面の表面粗さの平均偏差(SMD)は3.3以下である。そして、マスク本体部2は、人工血液バリア性として、120mmHg以上に耐える性能を有し、通気抵抗値として、60Pa/cm未満の性能を有することが、上記の方法の測定で確認されている。
医療用マスクを装着する医療従事者の安全性をより向上する観点から、人工血液バリア性の試験において、人工血液は、外側の二層(外側シート23及びフィルターシート22)で概ね遮断され、内側シート21まで到達しないことが望ましい。
そこで、本マスク1では、外側シート23の坪量を、内側シート21の坪量より多くし、かつ、46~70g/mとしている。すなわち、内側シート21の坪量を実質的に少なく抑えつつ、外側シート23の坪量を所定の範囲内で多くしている。それにより、人工血液バリア性試験において、人工血液を外側の二層(外側シート23及びフィルターシート22)で概ね遮断でき、医療用マスクにおける人工血液バリア性の基準(120mmHg以上)を確実に満たすことができる。それと共に、内側シート21の通気抵抗値を低く抑えることができ、結果として、医療用マスクにおける通気抵抗値(圧力損失値)の基準(60Pa/cm未満)をも確実に満たすことができる。
ここで、上記のように内側シート21の坪量を低く抑えると、繊維のムラが相対的に目立つようになり、肌触りに影響するおそれがある。そこで、本マスク1では、内側シート21を長繊維の不織布とし、かつ、内側シート21の肌側の表面の表面粗さの平均偏差SMDを3.3以下としている。それにより、その表面に多数の繊維の端部が露出することや、表面の凹凸が大きくなることを抑えることができる。したがって、人工血液バリア性や通気抵抗値(圧力損失値)の基準を満しつつ、顔にちくちくとした感覚やざらざらとした感覚を生じさせ難くでき、良好な肌触りを発現させることができる。
このように、本実施形態では、医療用マスクとしての品質基準を満たしつつ、顔に接する面が良好な肌触りを有する医療用のマスク1を提供することができる。
なお、外側シート23の坪量が小さ過ぎると人工血液バリア性の基準を確実に満たすことができないおそれがあり、大き過ぎるとマスクが硬く、変形し難くなり、マスク本体部2の周縁部分と顔の表面との間に隙間が生じ易くなる。また、内側シート21の坪量が大き過ぎると、通気抵抗値(圧力損失値)の基準を満たすことができないおそれがあり、内側シート21の坪量が小さ過ぎると、肌触りに影響するほか、内側シート21の強度が不足して破断するおそれがある。
以下、本実施形態に係るマスク1の各種部材について更に説明する。
[マスク本体部]
本実施形態では、マスク1のマスク本体部2は、図1に示すように、平面視にて略矩形状の形状を有している。なお、マスク本体部2の形状は、装着者の鼻や口元を覆い得るものであれば特に限定されず、任意の形状を有することができる。その形状としては、例えば、矩形状、長円形状、三角形状、多角形状、立体形状が挙げられる。
マスク本体部2は、三層のシート部材で構成されている。図2に示すように、マスク本体部2は、厚さ方向Tに、肌側Tに位置する内側シート21と、内側シート21の非肌側Tに位置するフィルターシート22と、フィルターシート22の非肌側Tに位置する外側シート23とで構成されている。内側シート21は不織布、好ましくは親水性の不織布で形成され、フィルターシート22は不織布、好ましくは疎水性の不織布から形成され、外側シート23は不織布、好ましくは親水性の不織布から形成される。本実施形態では、内側シート21、フィルターシート22及び外側シート23は、マスク本体部2の上下方向Vの両端部において横方向Hに沿って延設され、横方向Hの両端部において上下方向Vに沿って延設された複数の接合部4によって互いに融着又は接着されている。
本実施形態では、マスク1はマスク本体部2の上下方向Vに複数の襞部を有するプリーツ型マスクである。それゆえ、複数の襞部が上下方向Vに開くことにより、マスク本体部2の中央部分が立体的な空間を形成できる。それにより、マスク本体部2の肌側の表面が顔へ強く押し付けられることを抑制でき、長時間の装着でも、マスク内側の不快感を低減でき、結果として肌触りを改善できる。
マスク本体部2は、内側シート21、フィルターシート22及び外側シート23の三層の不織布がこの順に積層されることで、人工血液バリア性として、120mmHg以上に耐える性能を有し、通気抵抗値として、60Pa/cm未満の性能を有する。なお、本実施形態のマスク1は、JIS T 9001の医療用マスクの他の品質基準も満足している。以下、マスク本体部2を形成する各シートについて詳説する。
(内側シート)
内側シート21は、マスク本体部2の肌側Tに配置された長繊維の不織布、好ましくは親水性の長繊維の不織布によって形成されている。長繊維の不織布は、繊維を切らずに直接紡糸することによって形成される。そのため、長繊維の不織布は、短繊維の不織布と比較して、繊維の端部がきわめて少ないため、表面に繊維の端部が露出することを抑制でき、繊維が紡糸の方向に連続しているため、表面の凹凸を抑えることができる。それにより、マスク1の装着者に、顔にちくちくとした感覚やざらざらとした感覚を生じさせ難くでき、マスク1の肌触りを改善できる。
内側シート21の長繊維の不織布としては、本発明の効果を阻害しない限り、所望の特性を有する任意の長繊維の不織布を用いることができる。そのような長繊維の不織布としては、例えば、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンメルト不織布、フラッシュ紡糸不織布、又はこれらの不織布を任意に組み合わせた不織布(例示:SMS不織布)などが挙げられる。中でも、内側シート21としては、スパンボンド不織布が好ましい。スパンボンド不織布を用いることで、内側シート21の肌側の表面からの繊維のはみ出しや、繊維の端部の露出をより確実に抑制でき、より良好な肌触りを得ることができる。更に、スパンボンド不織布は強度や加工性等の点でも優れている。なお、内側シート21として親水性の長繊維の不織布を用いる場合、例えば、親水性の繊維からなる又は親水化処理が施された上記の不織布を用いることができる。ただし、長繊維の不織布という場合、不織布に含まれる長繊維の割合は、上記の効果を奏し得る観点から少なくとも90%以上であり、95%が好ましく、98%以上がより好ましい。本実施形態では、その割合は100%である。
本実施形態において、不織布を構成する繊維としては、本発明の効果を阻害しない限り特に制限はなく、例えば、セルロース系繊維や合成繊維などが挙げられる。セルロース系繊維としては、例えば、レーヨン、リヨセル、キュプラ等の再生セルロース系繊維などが挙げられ、これらの繊維は、1種類の繊維を単独で用いても、2種類以上の繊維を併用してもよい。また、合成繊維としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系繊維;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)等のポリエステル系繊維;ビニロン等のポリビニルアルコール系繊維;ポリアクリロニトリル等のポリアクリル系繊維;ポリウレタン(PU)系繊維;ナイロン等のポリアミド系繊維などが挙げられ、これらの繊維は、1種類の繊維を単独で用いても、2種類以上の繊維を併用してもよい。さらに、合成繊維の形態も特に限定されず、例えば、PP(芯部)/PE(鞘部)や高融点PP(芯部)/低融点PP(鞘部)、PET(芯部)/PE(鞘部)等の芯鞘型複合繊維;サイド・バイ・サイド型複合繊維;扁平、Y字形、C字形等の異形断面型繊維などの任意の形態の合成繊維を用いることができる。なお、不織布が親水性の合成繊維からなる場合は、不織布を形成する前の合成繊維に対して親水化処理剤等により親水化処理を施すか、形成後の不織布に対して親水化処理剤等により親水化処理を施せばよい。
内側シート21における肌側の表面の表面粗さの平均偏差(SMD:Mean Deviation of Surface roughness)は3.3以下であり、好ましくは3.1以下である。SMDは、シートの平均的な凹凸の変動(平均偏差)であり、表面の凹凸の程度を示しており、その値が小さいほど表面の凹凸が少なく、場所による凹凸の変動が小さいことを意味している。そのため、内側シート21は、表面の凹凸が小さく抑えられている。そして、SMDが3.3以下、好ましくは3.1以下のシートは、肌触りが良好になることが、発明者の感応試験で確認されている。したがって、マスク1は、装着者に、顔にざらざらとした感覚を生じさせ難くでき、マスク1の肌触りを良好に改善できる。
内側シート21の坪量は、外側シートの坪量より少ない。本実施形態では、内側シート21の坪量としては、10g/m~50g/mの範囲内の坪量が挙げられ、15g/m~40g/mの範囲内の坪量が好ましい。内側シート21の坪量を外側シート23の坪量より少なくすることで、内側シート21の通気抵抗値を低く抑えることができ、結果として、医療用マスクにおける通気抵抗値(圧力損失値)の基準をより確実に満たすことができる。内側シート21の坪量が小さ過ぎると、不織布にムラができ肌触りが低下し易く、大き過ぎると通気抵抗値が高くなり易い。
本実施形態において、内側シート21における繊維同士を接合するエンボス加工でのエンボス率(エンボスの面積率)は、10~20%が好ましい。それにより、内側シート21の肌側の表面から繊維が大きくはみ出すことを抑制でき、SMDを確実に3.3以下とすることができ、良好な肌触りを得ることができる。なお、エンボス率が低過ぎると、内側シート21の形状安定性が悪くなり、内側シート21の肌側の表面から繊維が大きくはみ出し易くなり、高過ぎると、内側シート21が硬くなり、いずれもざらざらとした感覚を生じさせ易くなる。
シートのエンボス率は、以下の方法で測定される。
<エンボス率>
(1)測定対象の試料(内側シート21)から30mm×30mmの四角形状の試料片を切り出す。
(2)株式会社キーエンス製のデジタルマイクロスコープVHX-100を使用して、上方から、試料片の表面の拡大画像を撮影する。拡大画像は、10か所以上のエンボス部分の測定が可能となるような倍率に拡大された画像であり、拡大倍率は、例えば10~50倍である。
(3)拡大画像において、画像全体の面積Aと、複数のエンボス部の合計の面積Bと、をそれぞれ算出して、B/A×100により、エンボス率(%)を算出する。
(4)上記(1)~(3)を数回(例えば2~4回)繰り返し、その平均値を最終的にエンボス率(%)とする。
本実施形態において、内側シート21の通気抵抗値(圧力損失値)は、7Pa/cm以下であることが好ましい。このように、内側シート21の通気抵抗値を低い値にすることで、マスク1(マスク本体部2)が通気抵抗値(圧力損失値)の基準をより確実に満すようにすることができる。
なお、本実施形態において、内側シート21に用いられる不織布の肌側の表面は、その不織布のネット面によって形成されていることが好ましい。このように内側シート21の肌側の表面がネット面によって形成されていると、非肌側の表面と比較して、肌側の表面の凹凸をより抑制することができる。それにより、マスク1の肌触りをより良好に改善できる。なお、不織布のネット面は、不織布の製造時に搬送設備の支持体(ネット)に接していた面であり、そのネット面は、その反対側の面(すなわち、反ネット面)と比較して、相対的に凹凸の少ない面である。
なお、本実施形態において、内側シート21の繊維の平均繊維径は、本発明の効果を阻害しない限り、任意の平均繊維径とすることができる。平均繊維径は、例えば、50μm以下が挙げられ、20μm以下であることが好ましく、15μm以下がより好ましい。この場合、内側シート21の繊維の平均繊維径が細いので、肌理(きめ)が細かく滑らかな肌触りにすることができる。
不織布の繊維の平均繊維径は、次の方法で測定される。
<平均繊維径>
(1)測定対象のシート(不織布)の任意の箇所から、縦5mm×横5mmの四角形状の試料片を10個切り出す。
(2)切り出した試料片の表面を走査型電子顕微鏡(KEYENCE社製 VE-7800)により観察し、試料片の表面の倍率500倍の拡大画像を得る。なお、拡大画像は、試料片ごとにそれぞれ1枚ずつ、合計10枚を得る。
(3)各拡大画像の中の最表面において所定本数(例示:10本)の繊維の繊維径を測定する。
(4)測定した各繊維の繊維径の値を合計し、測定した繊維本数で割った値を平均繊維径(μm)とする。
(フィルターシート)
フィルターシート22は、マスク本体部2の内側シート21の非肌側Tに位置し、内側シート21と外側シート23とによって挟持されている。フィルターシート22は、非肌側から到来するウイルスを含む飛沫や細菌、埃、花粉、微小粒子状物質(例示:PM2.5)などの物質を捕捉し得る不織布によって形成されている。なお、フィルターシート22は単層で形成されてもよいし、複数層でされてもよい。
マスク1は医療用であるため、フィルターシート22としては、ウイルス飛沫捕集効率VFE(Viral Filtration Efficiency)、バクテリア飛沫捕集効率BFE(Bacterial Filtration Efficiency)及び微小粒子捕集効率PFE(Particle Filtration Efficiency)がいずれも95%以上、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上のものを用いる。本実施形態では98%以上である。これらVFE、BFE及びPFEは、JIS T 9001:2021(医療用マスク及び一般用マスクの性能要件及び試験方法)の「ウイルス飛まつ捕集効率(VFE)試験」、「バクテリア飛まつ捕集効率(BFE)試験」及び「微小粒子捕集効率(PFE)試験」に準拠した方法で測定される。
本実施形態において、フィルターシート22を形成する不織布としては、本発明の効果を阻害しない限り、所望の特性を有する任意の不織布を用いることができる。そのような不織布としては、例えば、スパンレース不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、エアレイド不織布、メルトブローン不織布、スパンメルト不織布、フラッシュ紡糸不織布、サーマルボンド不織布、カーディング不織布、又はこれらの不織布を任意に組み合わせた不織布(例示:SMS不織布等)などが挙げられる。中でも、緻密性等の観点からメルトブローン不織布が好ましい。フィルターシート22がこのようなメルトブローン不織布によって形成されていることで、ウイルスやバクテリアや微小粒子を含む飛沫の透過や、血液の透過をより抑制できる。ただし、フィルターシート22の不織布としては、疎水性の合成繊維によって形成された疎水性の不織布が、後述されるエレクトレット加工の点で好ましい。また、不織布を構成する繊維としては、本発明の効果を阻害しない限り特に制限はなく、例えば、上述の内側シート21の不織布を構成する繊維と同様の繊維(ただし、親水性でないもの)が挙げられる。疎水性の合成繊維としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系繊維を用いることが好ましい。
本実施形態において、フィルターシート22を形成する不織布は、エレクトレット加工された不織布であることが好ましい。フィルターシート22がエレクトレット加工された不織布によって形成されていると、静電気の力によりウイルスやバクテリアや微小粒子に対して優れた捕捉性を発揮することができる。エレクトレット加工における電荷を保持する効果を高める観点から、不織布は疎水性であることが好ましい。更に、電荷密度を高めるためには、表面積が相対的に大きくなる、すなわち平均繊維径が小さい繊維(例示:1~10μm)を多く含むことがより好ましい。
本実施形態において、フィルターシート22の坪量は、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、任意の坪量を採用することができるが、ウイルスやバクテリアや微小粒子に対する捕捉性などの観点から、坪量は、10g/m~50g/mの範囲内の坪量が好ましく、15g/m~30g/mの範囲内の坪量がより好ましい。フィルターシート22の坪量が小さ過ぎるとフィルターシート22の各捕集効率が低下し易く、坪量が大き過ぎるとフィルターシート22の通気抵抗値、延いてはマスク1(マスク本体部2)の通気抵抗値が増加し易くなる。
(外側シート)
外側シート23は、マスク本体部2の非肌側T、すなわち、フィルターシート22の非肌側Tに位置しており、フィルターシート22の肌側Tに位置する内側シート21と共にフィルターシート22を挟持する。外側シート23は、不織布、好ましくは親水性の不織布によって形成されている。
本実施形態において、外側シート23を形成する不織布としては、本発明の効果を阻害しない限り、所望の特性を有する任意の不織布を採用することができる。そのような不織布としては、例えば、スパンレース不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、エアレイド不織布、メルトブローン不織布、スパンメルト不織布、フラッシュ紡糸不織布、サーマルボンド不織布、カーディング不織布、又はこれらの不織布を任意に組み合わせた不織布(例示:SMS不織布等)などが挙げられる。中でも、緻密性等の観点からSMS(スパンボンド/メルトブローン/スパンボンド)不織布が好ましい。外側シート23がこのようなSMS不織布によって形成されていることで、血液の透過をより抑制でき、延いては、医療用マスクにおける人工血液バリア性の基準をより確実に満たすことができる。なお、外側シート23として親水性の不織布を用いる場合、親水性の繊維からなる又は親水化処理が施された上記の不織布を用いることができる。
外側シート23の坪量は、内側シート21の坪量より多い。外側シート23の坪量としては、46g/m~70g/mの範囲内の坪量が挙げられ、50g/m~60g/mの範囲内の坪量が好ましい。外側シート23の坪量を内側シート21の坪量より多くすることで、外側シート23の人工血液に対するバリア性が高められ、延いては、マスク1が人工血液バリア性の基準をより確実に満たすことができる。外側シート23の坪量が小さ過ぎると、人工血液に対するバリア性が低下し易く、大き過ぎると通気抵抗値が高くなり易い。
本実施形態において、外側シート23の坪量の、内側シート21の坪量に対する比は、1.4~3.0が挙げられ、1.7~2.5が好ましい。それにより、外側シート23の人工血液に対するバリア性を高めつつ、内側シート21の通気抵抗値を低く抑えることができ、結果として、マスク1が、人工血液バリア性及び通気抵抗値(圧力損失値)の基準をより確実に満たすことができる。
本実施形態において、外側シート23がSMS不織布の場合、そのSMS不織布におけるメルトブローン層の坪量は、好ましくは3~8g/mであり、より好ましくは、4~8g/mであり、更に好ましくは、4.5~7g/mである。このように、外側シート23のSMS不織布のメルトブローン層の坪量が所定の数値範囲にあることで、マスク1が人工血液バリア性及び通気抵抗値(圧力損失値)の基準をより確実に満たすことができる。そのメルトブローン層の坪量が高過ぎると、通気抵抗値(圧力損失値)が高くなり易く、低過ぎると、人工血液バリア性が低下し易くなる。
本実施形態において、外側シート23及びフィルターシート22を合わせた厚さは0.56~0.80mmであり、0.60~0.75mmであることが好ましい。このように、マスク1では、外側シート23及びフィルターシート22を合わせた厚さが上記の数値範囲にあり、十分な厚さがあるので、人工血液バリア性試験における人工血液を外側の二層(外側シート23及びフィルターシート22)で概ね遮断できる。それにより、人工血液バリア性の基準をより確実に満たすことができる。それに加えて、その厚さが厚過ぎないいので、通気抵抗値(圧力損失値)の基準をより確実に満たすことができる。例えば、0.56mmは人工血液バリア性の基準120mmHgを達成し得る好ましい下限値であり、0.80mmは通気抵抗値の基準60Pa/cm未満を達成し得る好ましい上限値であるといえる。なお、繊維密度が同じ場合、厚さが厚過ぎると、通気抵抗値(圧力損失値)が高くなり易く、薄過ぎると、人工血液バリア性が低下し易くなる。また、坪量が同じ場合、厚さが薄過ぎると、繊維密度が高くなり、通気抵抗値(圧力損失値)が高くなり易く、厚過ぎると、繊維密度が低くなり、人工血液バリア性が低下し易くなる。
[耳掛け部]
一対の耳掛け部3は、マスク1において、装着時に装着者の耳に掛かることでマスク本体部2を装着者の鼻や口元に密着させる。耳掛け部3は、図1に示すように、平紐状、丸紐状又は帯状の伸縮性部材で形成され、その両端部がマスク本体部2の横方向Hの両端部に接合された環状の形状を有している。
耳掛け部3として用い得る伸縮性部材は、装着者の耳に掛かることでマスク本体部2を装着者の鼻や口元に密着させ得るものであれば特に制限されず、例えば、織ゴム、編ゴム、伸縮性不織布などが挙げられる。なお、伸縮性部材は、伸ばしても幅が小さくなり難く(すなわち、幅入りが生じ難い)ものが好ましい。このような幅入りの生じ難い伸縮性部材で耳掛け部3を形成すると、耳掛け部3が装着者の耳に掛けられた時に耳掛け部3の幅が細くなり難く、耳掛け部3が装着者の耳に当接する部分の面積を広く確保することができるため、装着者の耳が痛くなり難くなる。
耳掛け部3に関し、別の実施形態について説明する。図3は、別の実施形態に係るマスク1の構成を示す平面図である。この図3のマスク1は、耳掛け部3がマスク本体部2の横方向Hの両端部よりも外側の部分を覆うように形成されている点で、図1のマスク1と相違する。
本実施形態では、マスク1は、一対の耳掛け部3を備える。耳掛け部3は、マスク本体部2の横方向Hの端部に接合された基部33と、基部33と互いに環状に連接された環状部(31,32)と、を含んでいる。そして、基部33は、マスク本体部2の横方向Hの端部の外側において、マスク本体部2の上下方向Vのほぼ全体に亘り、帯状に延在するように構成されている。なお、環状部は、基部33の上下方向Vの両端部から横方向Hに延びる一対の横延在部32と、一対の横延在部32における、基部33側とは反対側の端部同士を接続するように上下方向Vに延びる縦延在部31と、を含んでいる。なお、「ほぼ全体」とは、「全体」の90%以上、好ましくは95%以上のことをいう。基部33の横方向Hの幅(ただし、平面視でマスク本体部2からはみ出した部分の幅とする)は、10mm以上、好ましくは15mm以上、より好ましくは20mm以上である。上限は耳穴が基部33で完全に覆われない程度であり、例えば40~50mmである。
このマスク1では、一対の耳掛け部3の各々の基部33が、マスク本体部2の横方向Hの端部の外側において、上下方向Vのほぼ全体に亘り、帯状に延在するように構成されている。そのため、マスク1の装着時に、マスク本体部2の両端部近傍において、マスク本体部2と装着者の顔の表面との間に隙間が生じても、基部33によりその隙間を覆うことができる。それにより、本マスク1は、安全上の品質基準を満たすだけでなく、装着時に血液等が飛散したとしても、マスク本体部2と顔の表面との間の隙間から、血液等が侵入して顔に付着したり、口や鼻から吸い込まれたりすることを抑制でき、安全性をより向上できる。
なお、耳掛け部3は、基部33と環状部(31,32)とで形成された環状の構造だけではなく、耳掛け部用のシートにスリットを入れて、そのスリットに耳を掛ける構造にしてもよい。例えば、略半円形のシート内に、その半円よりも小さい直径を有する略半円の弧状のスリットを、同心円状に入れた構造、又は類似の構造であってもよい。この場合、マスク本体部2と装着者の顔の表面との間の隙間だけでなく、耳の穴もシートで覆われるので、血液等の侵入や付着をより抑制できる。
以上、本発明のマスクについて、実施形態に係るマスク1を用いて説明したが、本発明のマスクは、上述のマスク1のような複数の襞部を有する、いわゆるプリーツ型マスクに限定されず、平坦なマスク本体部を有するフラット型マスクや、マスク本体部がカップ形状等の立体構造を有する立体型マスクなどの任意のマスクに適用することができる。
以下、実施例を示して本発明を説明するが、本発明はこの実施例に限定されない。
(A)試料
実施例及び比較例の試料として、下記のような構成を有するマスク本体部を備えるマスクを準備した。ここで、準備された全てのマスクは、図1のようなプリーツ型のマスクであった。
(1)実施例1
内側シート:スパンボンド不織布(親水性:坪量30g/m
フィルターシート:メルトブローン不織布(疎水性:坪量20g/m
外側シート:SMS不織布(親水性:坪量53g/m
(2)実施例2
内側シート:スパンボンド不織布(親水性:坪量30g/m
フィルターシート:メルトブローン不織布(疎水性:坪量20g/m
外側シート:SMS不織布(親水性:坪量58g/m
(3)比較例1
内側シート:スパンボンド不織布(親水性:坪量30g/m
フィルターシート:メルトブローン不織布(疎水性:坪量20g/m
外側シート:SMS不織布(親水性:坪量40g/m
(4)比較例2
内側シート:SMS不織布(親水性:坪量17g/m
フィルターシート:メルトブローン不織布(疎水性:坪量24g/m
外側シート:SMS不織布(親水性:坪量30g/m
*準備されたマスクのフィルターシートは、すべてウイルス飛沫捕集効率VFE、バクテリア飛沫捕集効率BFE及び微小粒子捕集効率PFEがいずれも98%以上の性能を有している。
(B)評価
実施例及び比較例のマスクにおけるマスク本体部2及び各シートについて、以下の項目を評価した。その結果を下記の表1に示す。
・内側シートに対する外側シートの坪量比(ただし、表1では「外側S/内側S坪量比」と記す。以下同じ。)
・内側シートの肌側の表面の表面粗さの平均偏差SMD(内側S表面粗さSMD)
・内側シートの通気抵抗値(内側S通気抵抗値)
・外側シートのM層の概算の坪量(外側S坪量)
・外側シートとフィルターシートの厚さの合計(外側S+フィルタS厚さ)
・マスク本体部の通気抵抗値(通気抵抗値)
・マスク本体部の人工血液バリア性(人工接液バリア性)
*ただし、「外側シートのM層の概算の坪量」は、SMS不織布の坪量の10%として算出した。
(C)評価結果
Figure 2023059426000002
表1に示すように、実施例1、2では、外側シートの坪量が内側シートの坪量より多く、外側シートの坪量が46~70g/mであり、内側シートが長繊維の不織布で形成されており、内側シートの肌側の表面の表面粗さの平均偏差(SMD)は3.3以下となっている。そして、実施例1、2のマスク本体部は、人工血液バリア性として120mmHg以上に耐える性能を有し、かつ、通気抵抗値として、60Pa/cm未満の性能を有することが確認された。したがって、実施例1、2のマスクは、医療用マスクの品質基準を満たしつつ、顔に接する面が良好な肌触りを有することが分かった。一方、比較例1、2では、外側シートの坪量が小さ過ぎたり(46g/m未満)、SMDが3.3を超えていたり、人工血液バリア性:120mmHgを満足できなかったりするなど十分な特性が得られなかった。それゆえ、比較例1、2のマスクは、医療用マスクの品質基準を満たさないこと、及び、顔に接する面が良好な肌触りを有さない場合もあることが分かった。
なお、本発明の医療用マスクは、上述の実施形態等に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜組み合わせや代替、変更等が可能である。
1 (医療用)マスク
2 マスク本体部
21 内側シート
22 フィルターシート
23 外側シート

Claims (8)

  1. 内側シート、フィルターシート及び外側シートの三層の不織布で構成されたマスク本体部を備える医療用マスクであって、
    前記外側シートの坪量は内側シートの坪量より多く、
    前記外側シートの坪量は46~70g/mであり、
    前記内側シートは、長繊維の不織布で形成されており、
    前記内側シートの肌側の表面の表面粗さの平均偏差(SMD)は3.3以下であり、
    前記マスク本体部は、
    人工血液バリア性として、120mmHg以上に耐える性能を有し、
    通気抵抗値として、60Pa/cm未満の性能を有する、
    医療用マスク。
  2. 前記内側シートのエンボス率は、10~20%である、
    請求項1に記載の医療用マスク。
  3. 前記内側シートの通気抵抗値は、7Pa/cm以下である、
    請求項1又は2に記載の医療用マスク。
  4. 前記内側シートはスパンボンド不織布で形成されている、
    請求項1乃至3のいずれか一項に記載の医療用マスク。
  5. 前記外側シートはスパンボンド層、メルトブローン層及びスパンボンド層を積層したSMS不織布で形成されている、
    請求項1乃至4のいずれか一項に記載の医療用マスク。
  6. 前記SMS不織布の前記メルトブローン層の坪量は、3~8g/mである、
    請求項5に記載の医療用マスク。
  7. 前記外側シート及び前記フィルターシートを合わせた厚さは0.56~0.80mmである、
    請求項1乃至6のいずれか一項に記載の医療用マスク。
  8. 前記マスク本体部の横方向の両端部に設けられた一対の耳掛け部を更に備え、
    前記一対の耳掛け部の各々は、
    前記マスク本体部の前記横方向の前記端部に接合された基部と、
    前記基部と互いに環状に連接された環状部と、
    を含み、
    前記基部は、前記マスク本体部の前記横方向の前記端部において、前記マスク本体部の上下方向のほぼ全体に亘り、帯状に延在するように構成されている、
    請求項1乃至7のいずれか一項に記載の医療用マスク。
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