JP7152034B2 - フィルター濾材及びレスピレーター - Google Patents
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Description
従来、通常の繊維からなる不織布とナノファイバー不織布とを組み合わせたフィルター濾材の製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
このため、上記のような方法とすることにより、エレクトレット化の効果の減衰を抑制してフィルター濾材の捕集性能が経時劣化することを抑制することが可能となる。
上記のような構成とすることにより、成人が強めの呼気を送る程度で十分な逆洗を行うことが可能となる。
上記のような構成とすることにより、成人が強めの呼気を送る程度で十分な逆洗を行うことが可能となる。
1.フィルター濾材10
まず、実施形態に係るフィルター濾材10について説明する。
図1は、実施形態に係るフィルター濾材10の断面図である。
実施形態に係るフィルター濾材10は、図1に示すように、第1不織布12と、第2不織布14と、第3不織布16とを有する。フィルター濾材10は、厚さが0.05mm~0.4mmの範囲内にある。
本明細書において「フィルター濾材」とは、フィルターの構成要素として用いられるもののうち、フィルターの主要機能である濾過(捕集)機能を担うもののことをいう。フィルター濾材は、単独でフィルターとして用いてもよいし、他の構成要素(例えば、口元用の不織布、補強用の不織布、他のフィルター濾材等)と積層又は一体化させて用いてもよい。
第2不織布14は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアミド(PA)、ポリアクリロニトリル(PAN)及びポリビニルアルコール(PVA)のうち少なくとも1種類を原料とするナノファイバーにより形成されている。
なお、エレクトレット化されたメルトブロー不織布は、繊維自体で比較的大きな捕集対象を捕集でき、同時に静電気力の作用により比較的小さい捕集対象も捕集できるため、フィルター濾材の捕集性能を高くするのに適する構成要素である。
本明細書においては、第3不織布についてどの部分をみても、厚み、密度及び繊維の絡み方に有意な差がない構造を有すること、又は、厚み、密度及び繊維の絡み方に意図的に設けられた差異がない構造を有することを「均一な構造を有する」という。
(b)第3不織布に必要以上に厚い領域や突起が存在しないため、フィルター濾材の厚さが必要以上に厚くならないようにする(薄さを維持する)ことが可能となる。
(c)構造の不均一さ(特に突起)は主に後加工(例えば、ロールやへら等による摩擦)により形成されるが、全体にわたって均一な構造を有する第3不織布を用いる場合には後加工を行う必要がないため、後加工に係る加工コストや設備コストの増加を防ぐことが可能となる。
(d)第3不織布の構造を後加工で物理的に変化させないため、第3不織布中の孔の大きさや形状が無理に変化させられることがなく、フィルター濾材の粒子捕集性能を低下させないようにすることが可能となる。
(e)均一な構造を有しない第3不織布を用いる場合と比較して、突起等に由来する隙間(層間の隙間)が少なくなることから、第2不織布(ナノファイバー不織布)が粒子を捕集したときに第2不織布を十分に支持することが可能となり、その結果、第2不織布が損傷することを抑制することが可能となる。
また、第1不織布12及び第2不織布14と第3不織布16とは、樹脂接着剤により接着されている。当該接着のための方法としては、例えば、ホットメルトを用いることができる(後述するフィルター濾材の製造方法の接着工程S2参照。)
次に、実施形態に係るフィルター濾材の製造方法について説明する。
実施形態に係るフィルター素材の製造方法は、ナノファイバー積層工程S1と接着工程S2とをこの順序で含む。以下、各工程について説明する。
図2は、実施形態に係るフィルター濾材の製造方法におけるナノファイバー積層工程S1を説明するために示す図である。図2(a)はナノファイバー積層工程S1を実施する様子を示す模式図であり、図2(b)は図2(a)におけるA1の位置の様子を示す断面図であり、図2(c)は図2(a)におけるA2の位置の様子を示す断面図である。
ナノファイバー積層工程S1では、図2(a)に示すように、紡糸方向が下から上であるマルチノズル式エレクトロスピニング装置200を用いてナノファイバーを積層する。
この場合、第2不織布14の目付量は、第1不織布12を移動させる速度の変更、ナノファイバー原料の噴射量の変更、印加電圧の増減等を行うことにより調整することができる。
図3は、実施形態に係るフィルター濾材の製造方法における接着工程S2を説明するために示す図である。図3(a)は接着工程S2を実施する様子を示す模式図であり、図3(b)は図3(a)におけるA3の位置の様子を示す断面図であり、図3(c)は図3(a)におけるA4の位置の様子を示す断面図であり、図3(d)は図3(a)におけるA5の位置の様子を示す断面図である。
なお、図3(a)~図3(c)においては、樹脂接着剤18を等間隔に配置された粒状の形状のものであるように表示しているが、これは便宜上のものである。樹脂接着剤は、第3不織布を適切に接着するという目的を達成することができる限り、任意の(適切な)形態(網状や線状といった形状や、固体、ペースト、ゲルといった状態)のものを用いることができ、任意の(適切な)分布・方法で散布、塗布、配置等を行うことができる。
本実施形態においては、繰り出しロール320及び繰り出しロール322から各不織布を繰り出しつつ巻き取りロール324でフィルター濾材10を巻き取ることで各不織布を移動させ、フィルター濾材10を連続的に製造する。
なお、上記した第2不織布の形成の場合と同じく、第3不織布の接着は連続的でなくても(断続的であっても)よい。
次に、実施形態に係るレスピレーター100について説明する。
図4は、実施形態に係るレスピレーター100を説明するために示す図である。図4(a)は折り畳んだ状態のレスピレーター100の平面図であり、図4(b)は図4(a)のA-A断面図であり、図4(c)は図4(b)のA6で示す位置の様子を示す断面図である。なお、図4(b)においては、フィルター20が折り畳まれている様子をわかりやすくするために、レスピレーター100を完全に折り畳んだ状態ではなく、わずかに開いた状態として図示している。
図5は、実施形態に係るレスピレーター100を使用している様子を示す図である。図5において符号Uで示すのは、レスピレーター100の使用者である。図5は、レスピレーター100に着目する場合には、レスピレーター100の使用時(展開時)の状態を示す斜視図ということもできる。
つまり、レスピレーター100は、実施形態に係るフィルター濾材10をフィルター20の構成要素(実施形態においては、フィルター20の一部)として備える。
このため、レスピレーター100における第3不織布16は、全体にわたって均一な構造を有する。
折り畳み式のレスピレーターには、省スペースであり、収納や運搬が容易であるという特徴がある。本発明のフィルター濾材は軽量化及び薄型化が可能なものであるため、折り畳み式のレスピレーター用に用いるフィルター濾材として特に好適に用いることができる。
フィルター20の全体の厚さは、0.2mm~1.5mmの範囲内にある。
また、フィルター20は面形状がプレーンであり、エンボス等が存在しない。
以下、本発明のフィルター濾材及びレスピレーター(フィルター)の効果を、実際に行った実験に基づいて説明する。
図6は、実施例及び比較例に係る実験結果を示す表である。
以下、実験に用いた実施例1,2及び比較例1,2について説明する。
実施例1における第1不織布は、ポリプロピレン(PP)からなる目付量が30g/m2、平均厚さ0.15mmのスパンボンド不織布である。
実施例1における第2不織布は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)からなる目付量が0.1g/m2、平均厚さ0.0003mm(300nm)のナノファイバー不織布である。
実施例1における第3不織布は、ポリプロピレン(PP)からなる目付量が26g/m2、厚さが0.19mmのメルトブロー不織布である。
実施例2におけるフィルターは、上記した実施例1に係るフィルター濾材と口元用のサーマルボンド不織布とを積層したものである。
サーマルボンド不織布としては、ポリプロピレン及びポリエチレンからなる、目付量が15g/m2、平均厚さ0.9mmのものを用いた。
比較例1におけるフィルターは、ポリプロピレン(PP)からなるメルトブロー不織布を2枚重ねたものである。比較例1は、市販のN95マスク(レスピレーター)に用いられているフィルターである。
比較例2におけるフィルターは、ポリプロピレン(PP)からなるスパンボンド不織布(目付量:30g/m2、平均厚さ:0.15mm)に熱可塑性ポリウレタン(TPU)からなる目付量が0.1g/m2のナノファイバー不織布を積層したものを、ナノファイバー不織布が内側になるように2枚重ねにしたものである。比較例2は、ナノファイバーを用いた軽量型のマスクに用いられているフィルターである。
また、目付量は、所定の面積となるように切り出したフィルター濾材又はフィルターの重量を実際に測定することにより算出した。
N95規格とは、米国NIOSH(National Institute of Occupational Safety and Health)が定めた基準の中の1つで、「N」は耐油性が無いことを表し、「95」は試験粒子を95%以上捕集できることを表す。当該規格を満たすためには、フィルターで最も捕集しづらい空力学的質量径がおおよそ0.3μmの試験粒子を用い、当該試験粒子を95%以上捕集できる捕集性能を有しなければならない。なお、N95規格はフィルター性能に関する規格であり、レスピレーターとした際の性能を保証するものではない。
捕集効率は、米国のTSI Inc.のTSI-8130を用いて測定した。試行回数は4回とし、得られた結果の平均値を最終的な捕集効率として扱った。
圧力損失についても、米国のTSI Inc.のTSI-8130を用いて測定した。試行回数は4回とし、得られた結果の平均値を最終的な捕集効率として扱った。
実験の結果、実施例1に係るフィルター濾材は、捕集性能及び圧力損失において、N95規格を十分以上に満たす優れた性能を発揮することが確認できた。
次に、比較例について見てみると、比較例1に係るフィルターは、N95マスクに用いるフィルターとして十分な捕集性能を有することがわかる。また、比較例2に係るフィルターは、薄くかつ圧力損失が極めて小さいが、N95マスクの基準で見たときには、捕集性能は不十分であることがわかる。
一方、実施例2に係るフィルターについては、実施例1に係るフィルター濾材と比較すると、捕集性能で上回りつつ、圧力損失は同様の値となっていることが確認できた。
また、実施例2に係るフィルターは、比較例1に係るフィルターと比較して厚さが2/3程度であり、圧力損失も小さくなっているにもかかわらず、捕集性能は比較例1に係るフィルターよりも高いことが確認できた。
さらに、実施例2に係るフィルターは、比較例2に係るフィルターと同様にナノファイバーを用いるフィルターであるが、比較例2に係るフィルターと比較して、厚みの差から予想できる捕集能力を大きく超える捕集能力を有することが確認できた。
追加実施例1として、本発明のレスピレーターについて、逆洗性能(再生性能)を調べるための実験を行った。
図7は、追加実施例1における実験に用いた実験装置400の構成を示す模式図である。
図8は、追加実施例1における実験の結果を示すグラフである。
なお、試料設置部410は略円筒状の形状からなり、一端に試料を取り付けるための試料取り付け口412を有する。試料設置部410は、実験装置400の空気流通部420から取り外し可能に構成されている。
試料取り付け口412の直径は、7cmとした。このため、試験面積は約38.5cm2ということになる。
流量計としては、アズビル株式会社の気体用マスフローメーターCMS0050BSRNを用いた。
まず、レスピレーターの中央部を切り取ってフィルター濾材及び口元側不織布からなる試料(以下、試料Sという。)とした。続いて、試料Sをレスピレーターにおける外側(第1不織布側)を外側、口元側不織布側を内側として、試料取り付け口412に取り付けた(工程1)。
なお、「強めの呼気」とは、通常の呼吸で吐出する空気の量よりも多い量を短い時間で吐出するときの呼気のことをいう。強めの呼気は、継続時間約1秒、平均面風速約26cm/sと表現することもできる。
1回目の試験における初期圧力損失は、147Paであった。
2回目の試験における初期圧力損失は150Paであった。図8のグラフに示すように、2回目の試験における初期圧力損失は、1回目の試験における逆洗(再生)後の圧力損失と同じである。
なお、実施例における初期圧力損失(図6参照。)の値と追加実施例1における初期圧力損失の値が異なるのは、実験条件の差異(特に、試験面積の差異)によるものである。
2回目の試験においては、圧力損失が230Paとなった段階でブロワー450を停止させた。
1回目の試験においては、逆洗(再生)後の圧力損失は150Paとなった。
2回目の試験においては、逆洗後の圧力損失は155Paとなった。
これは、再生が容易であり、逆洗性能が高いことを示している。
追加実施例2として、試験粒子を吸引させた後の様子を観察する実験を行った。
図9は、追加実施例2における各レスピレーターの試験粒子吸引後の様子を示すSEM画像である。図9(a)は実施例2におけるレスピレーターと同じレスピレーターであるレスピレーターAについてのSEM画像であり、図9(b)は比較用のレスピレーターBについてのSEM画像であり、図9(c)は比較用のレスピレーターCについてのSEM画像である。
レスピレーターB及びCは、フィルター部がメルトブロー不織布からなるレスピレーターであった。
レスピレーターB及びCは、市販されているN95規格のレスピレーターである。
なお、レスピレーターBは、製品厚さが1.6mm、製品重量が7.0gであった。また、レスピレーターCは、製品厚さが4.0mm、製品重量が10.8gであった。
次に、レスピレーターの表面(レスピレーターAでは第1不織布の側)に1gの試験粒子を載せ、円筒の他端から10秒間空気を吸引した。試験粒子(粉塵)としては、桜島の火山灰を用いた。また、空気の吸引はブロワーで行い、風量は85L/minとした。
その後、試験粒子を払い落とし、レスピレーターを成人男性が装着した後に、試験粒子を載せた側とは反対の側から強めの呼気を5回送った。
この状態の各レスピレーターについて、SEMを用いてフィルター部分における試験粉体の捕集状態を確認した。
SEMとしては、株式会社キーエンスの3Dリアルサーフェスビュー顕微鏡 VE-9800を用いた。
このため、レスピレーターAでは逆洗が容易である一方、レスピレーターB及びレスピレーターCでは逆洗は困難であるといえる。
Claims (10)
- 目付量が10g/m2~50g/m2の範囲内にあるスパンボンド不織布である第1不織布と、
前記第1不織布の片面に配置され、平均繊維径が100nm~400nmの範囲内にあるナノファイバーからなり目付量が0.05g/m2~0.2g/m2の範囲内にあるナノファイバー不織布である第2不織布と、
前記第2不織布の前記第1不織布とは反対の側に配置されており、目付量が5g/m2~30g/m2の範囲内にあるエレクトレット化されたメルトブロー不織布である第3不織布とを有し、
前記第1不織布と前記第2不織布とは、それぞれの不織布を構成する繊維同士の接触及び絡みつきにより一体化され、
厚さが0.05mm~0.4mmの範囲内にあり、
前記第1不織布側が外側であり、
空気を吸引しながら前記第1不織布側にJIS8種である試験粒子を堆積させて圧力損失が前記試験粒子を堆積させる前の圧力損失の1.5倍となった後、前記第3不織布側から平均面風速が26cm/sである呼気を1秒ずつ5回送った後の圧力損失が、前記試験粒子を堆積させる前の圧力損失の1.1倍以下であることを特徴とするフィルター濾材。 - 前記第3不織布は、全体にわたって均一な構造を有することを特徴とする請求項1に記載のフィルター濾材。
- N95規格を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルター濾材。
- 目付量が10g/m2~50g/m2の範囲内にあるスパンボンド不織布である第1不織布と、前記第1不織布の片面に配置され、平均繊維径が100nm~400nmの範囲内にあるナノファイバーからなり目付量が0.05g/m2~0.2g/m2の範囲内にあるナノファイバー不織布である第2不織布と、前記第2不織布の前記第1不織布とは反対の側に配置されており、目付量が5g/m2~30g/m2の範囲内にあるエレクトレット化されたメルトブロー不織布である第3不織布とを有し、前記第1不織布と前記第2不織布とは、それぞれの不織布を構成する繊維同士の接触及び絡みつきにより一体化され、厚さが0.05mm~0.4mmの範囲内にあるフィルター濾材を、フィルターの構成要素として備え、
前記第1不織布側が外側であり、前記第3不織布側が口元側であり、
空気を吸引しながら前記第1不織布側にJIS8種である試験粒子を堆積させて圧力損失が前記試験粒子を堆積させる前の圧力損失の1.5倍となった後、前記第3不織布側から平均面風速が26cm/sである呼気を1秒ずつ5回送った後の圧力損失が、前記試験粒子を堆積させる前の圧力損失の1.1倍以下であることを特徴とするレスピレーター。 - 前記フィルターの全体の厚さは、0.2mm~1.5mmの範囲内にあることを特徴とする請求項4に記載のレスピレーター。
- 前記フィルターは、面形状がプレーンであることを特徴とする請求項4又は5に記載のレスピレーター。
- 前記第3不織布は、全体にわたって均一な構造を有することを特徴とする請求項4~6のいずれかに記載のレスピレーター。
- サーマルボンド不織布からなる口元側不織布を、前記フィルターの構成要素として有することを特徴とする請求項4~7のいずれかに記載のレスピレーター。
- 前記フィルター濾材と前記口元側不織布とは、それぞれの端部で接合されていることを特徴とする請求項8に記載のレスピレーター。
- N95規格を満たすことを特徴とする請求項4~9のいずれかに記載のレスピレーター。
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