JP2023047426A - タイヤ用ゴム組成物およびタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】競技用の空気入りタイヤには、ウェットグリップ性能、耐摩耗性、熱ダレ性能を改善することが要求されている。
【解決手段】スチレン量が30質量%以上であるSBRを含むジエン系ゴム100質量部に対し、NSAが100~300m/gであり、かつNSA/CTAB比表面積の値が1.10以下のシリカを140~300質量部、水酸化アルミニウムを15質量部以上、ビニル量が50質量%以上であり、かつ未変性の液状スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを5質量部以上、かつ軟化点が60~180℃の粘着付与樹脂を15質量部以上配合してなるタイヤ用ゴム組成物によって上記課題を解決した。
【選択図】なし

Description

本発明は、タイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤに関するものであり、詳しくは、ウェットグリップ性能および耐摩耗性に優れ、かつ熱ダレ性能にも優れるタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤに関するものである。
一般に、競技用の空気入りタイヤでは、ドライ路面走行用タイヤとウェット路面走行用タイヤとが用意され、走行時の天候および路面の状態に応じそれぞれ最適のタイヤを選択するようにしている。ここでウェット路面走行用の競技用タイヤとしては、ウェットグリップ性能を高めるために、シリカの多量配合や水酸化アルミニウムの配合がなされている(例えば特許文献1参照)。しかし、上記無機フィラーを多量配合すると耐摩耗性が悪化するという問題点がある。一方、樹脂の多量配合によりウェットグリップ性能の向上が図られているが、樹脂の多量配合では長時間走行したときの熱ダレ性が悪化してしまう。
特許5827541号公報
したがって本発明の目的は、ウェットグリップ性能および耐摩耗性に優れ、かつ熱ダレ性能にも優れるタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤを提供することにある。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、特定の組成のジエン系ゴムに対し、特定の特性を有するシリカを特定量で配合するとともに、さらに水酸化アルミニウム、液状スチレン-ブタジエン共重合体ゴムおよび粘着付与尾樹脂を特定量で配合することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
すなわち本発明は、スチレン量が30質量%以上であるスチレン-ブタジエン共重合体ゴムを含むジエン系ゴム100質量部に対し、窒素吸着比表面積NSAが100~300m/gであり、かつ窒素吸着比表面積NSA/CTAB比表面積の値が1.10以下のシリカを140~300質量部、水酸化アルミニウムを15質量部以上、ビニル量が50質量%以上であり、かつ未変性の液状スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを5質量部以上、かつ軟化点が60~180℃の粘着付与樹脂を15質量部以上配合してなることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物を提供するものである。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、スチレン量が30質量%以上であるスチレン-ブタジエン共重合体ゴムを含むジエン系ゴム100質量部に対し、窒素吸着比表面積NSAが100~300m/gであり、かつ窒素吸着比表面積NSA/CTAB比表面積の値が1.10以下のシリカを140~300質量部、水酸化アルミニウムを15質量部以上、ビニル量が50質量%以上であり、かつ未変性の液状スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを5質量部以上、かつ軟化点が60~180℃の粘着付与樹脂を15質量部以上配合してなることを特徴としているので、ウェットグリップ性能および耐摩耗性に優れ、かつ熱ダレ性能にも優れるタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤを提供することができる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
(ジエン系ゴム)
本発明で使用されるジエン系ゴムは、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)を必須成分とする。本発明で使用されるジエン系ゴム全体を100質量部としたときに、SBRの配合量は、例えば競技用途である場合は気温、天候等の諸条件を適宜勘案して定めればよいが、例えば70質量部以上、好ましくは85質量部以上、さらに好ましくは100質量部であることができる。なお本発明では、SBR以外にも、通常のゴム組成物に配合することができる任意のジエン系ゴムを用いることができ、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、その分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。
また、本発明で使用されるSBRは、スチレン量が30質量%以上であるものが好ましい。このようなスチレン量を満たすことにより、タイヤのウェットグリップ性能、耐摩耗性および熱ダレ性能を高めることができる。さらに好ましい該スチレン量は、33~50質量%である。
また、本発明で使用されるSBRは、重量平均分子量が、10×10g/mоl以上であることが好ましい。この重量平均分子量を満たすことにより、耐摩耗性が向上する。さらに好ましいSBRの重量平均分子量は、10×10g/mоl以上20×10g/mоl以下である。
また、本発明で使用されるSBRは、質量比としてスチレン量>ビニル量であることが好ましい。この条件を満たすことにより、Tgを確保しつつ硬度が上昇し、耐摩耗性を向上させる効果がある。
(シリカ)
本発明で使用するシリカは、窒素吸着比表面積NSAが100~300m/gであり、かつ窒素吸着比表面積NSA/CTAB比表面積の値が1.10以下である(以下特定シリカと言うことがある)。
シリカのNSAが100m/g未満であると、硬度および破断強度が低下するため、操縦安定性および耐摩耗性が悪化する。
またシリカのNSAが300m/gを超えると、粘度が高くなりすぎ、加工が困難になる。
本発明で使用するシリカのさらに好ましいNSAは、130~270m/gである。
なおNSAは、JIS K6217-2に準拠して測定するものとする。
また、本発明で使用するシリカは、窒素吸着比表面積NSA/CTAB比表面積の値が1.10以下である。前記窒素吸着比表面積NSA/CTAB比表面積の値は、シリカの表面細孔の状態を表している。窒素吸着比表面積NSA/CTAB比表面積の値が1.10以下であると、シリカの表面細孔が少ない状態であり、該表面細孔にSBRが入りにくくなり、シリカの分散性およびSBRとの相互作用が高まり、本発明の効果が向上する。
前記窒素吸着比表面積NSA/CTAB比表面積の値は、1.08~0.90が好ましい。
なお、シリカのCTAB比表面積は、ISO5794/1に準拠して測定される。
(水酸化アルミニウム)
本発明で使用される水酸化アルミニウムは、その粒度分布等の条件をとくに制限するものではなく、公知のものの中から適宜選択することができる。例えば市販品として日本軽金属株式会社製BF013等が挙げられる。
また、本発明の効果向上の観点から、水酸化アルミニウムのBET比表面積は、10m/g以下が好ましく、1~8m/gがさらに好ましい。BET比表面積は、ISO5794/1に準拠して測定される。
(液状スチレン-ブタジエン共重合体)
本発明のゴム組成物は、その効果をさらに向上させるため、液状スチレン-ブタジエン共重合体(液状SBR)を配合することができる。
液状SBRは、ビニル量が50質量%以上(好ましくは50~90質量%)であり、かつ未変性であるものが好ましい。また液状SBRは、重量平均分子量が2000~40000であり、好ましくは3000~20000のものを使用することができる。なお、本発明で言う重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で分析されるポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。このような液状SBRを採用することにより、ジエン系ゴムのSBRとの相互作用が高まり、本発明の効果、とくに耐摩耗性が向上する。なお、本発明で使用される液状SBRは、23℃で液体である。したがって、この温度では固体である前記ジエン系ゴムとは区別される。
(粘着付与樹脂)
本発明のゴム組成物は、その効果をさらに向上させるため、粘着付与樹脂を配合することができる。
本発明に使用される粘着付与樹脂は特に制限されないが、その具体例としては、フェノール系樹脂(例えば、フェノール樹脂、フェノール・アセチレン樹脂、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂)、クマロン系樹脂(例えば、クマロン樹脂、クマロン・インデン樹脂、クマロン・インデン・スチレン樹脂)、テルペン系樹脂(例えば、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂(芳香族変性テルペン樹脂等)、テルペンフェノール樹脂)、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ロジン系樹脂(例えば、ロジン、ロジンエステル、水素添加ロジン誘導体)、水添テルペン樹脂)、石油樹脂(例えば、ジシクロペンタジン樹脂等のC5系石油樹脂、C9系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、C5/C9共重合系石油樹脂)、キシレン系樹脂(例えば、キシレン樹脂、キシレン・アセチレン樹脂、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂)、α-ピネン樹脂、脂肪族飽和炭化水素樹脂等が挙げられる。中でも、本発明の効果等がより優れる理由から、C9系石油樹脂、フェノール系樹脂、クマロンインデン樹脂、テルペン樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ロジン系樹脂およびジシクロペンタジエン樹脂から選択された1種以上であることが好ましく、tanδ(0℃)を高めウェットグリップ性能を向上させるという観点から、インデンを30質量%以上含む芳香族系の石油樹脂がさらに好ましい。
前記粘着付与樹脂の軟化点は、本発明の効果がより優れる理由から、60~180℃であることが好ましい。
なお、上記軟化点は、JIS K6220-1に準拠して測定したものとする。
(ゴム組成物の配合割合)
本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に対し、特定シリカを140~300質量部、水酸化アルミニウムを15質量部以上、ビニル量が50質量%以上であり、かつ未変性の液状スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(液状SBR)を5質量部以上、かつ軟化点が60~180℃の粘着付与樹脂を15質量部以上配合してなることを特徴とする。
前記特定シリカの配合量が140質量部未満であると、硬度が低下して操縦安定性が悪化し、逆に300質量部を超えると加工性および操縦安定性が低下する。
前記水酸化アルミニウムの配合量が15質量部未満であると、ウェットグリップ性能を向上させることができない。
前記液状SBRの配合量が5質量部未満であると添加量が少なすぎて本発明の効果を奏することができない。
前記粘着付与樹脂の配合量が15質量部未満であると添加量が少なすぎて本発明の効果を奏することができない。
本発明のゴム組成物において、前記特定シリカの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、160~280質量部であることが好ましく、170~260質量部であることがさらに好ましい。
前記水酸化アルミニウムの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、10~80質量部であることが好ましく、20~70質量部であることがさらに好ましい。
前記液状SBRの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、5~50質量部であることが好ましく、10~40質量部であることがさらに好ましい。
前記粘着付与樹脂の配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、25~70質量部であることがさらに好ましく、30~60質量部であることがとくに好ましい。
本発明のゴム組成物は、前記シリカに対し、さらにシランカップリング剤を2~20質量%、好ましくは5~16質量%配合してなり、前記シランカップリング剤が、下記(2)の組成式で表されるものであれば、ウェットグリップ性能、耐摩耗性および熱ダレ性をさらに改善することができる。
(A)a(B)b(C)c(D)d(R1)eSiO(4-2a-b-c-d-e)/2 (2)
(式(2)中、Aはスルフィド基を含有する2価の有機基、Bは炭素数5~10の1価の炭化水素基、Cは加水分解性基、Dはメルカプト基を含有する有機基、R1は炭素数1~4の1価の炭化水素基を表し、0≦a<1、0<b<1、0<c<3、0≦d<1、0≦e<2、かつ0<2a+b+c+d+e<4の関係を満たす。)
式(2)で表されるシランカップリング剤(ポリシロキサン)およびその製造方法は、例えば国際公開WO2014/002750号パンフレットに開示され、公知である。
上記式(2)中、Aはスルフィド基を含有する2価の有機基を表す。なかでも、下記式(12)で表される基であることが好ましい。
-(CH2n-Sx-(CH2n (12)
上記式(12)中、nは1~10の整数を表し、なかでも、2~4の整数であることが好ましい。
上記式(12)中、xは1~6の整数を表し、なかでも、2~4の整数であることが好ましい。
上記式(12)中、*は、結合位置を示す。
上記式(12)で表される基の具体例としては、例えば、-CH2-S2-CH2-C24-S2-C24-C36-S2-C36-C48-S2-C48-CH2-S4-CH2-C24-S4-C24-C36-S4-C36-C48-S4-C48などが挙げられる。
上記式(2)中、Bは炭素数5~20の1価の炭化水素基を表し、その具体例としては、例えば、ヘキシル基、オクチル基、デシル基などが挙げられる。Bは炭素数5~10の1価の炭化水素基であることが好ましい。
上記式(2)中、Cは加水分解性基を表し、その具体例としては、例えば、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。なかでも、下記式(13)で表される基であることが好ましい。
-OR2 (13)
上記式(13)中、R2は炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数6~10のアラルキル基(アリールアルキル基)または炭素数2~10のアルケニル基を表し、なかでも、炭素数1~5のアルキル基であることが好ましい。上記炭素数1~20のアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、オクタデシル基などが挙げられる。上記炭素数6~10のアリール基の具体例としては、例えば、フェニル基、トリル基などが挙げられる。上記炭素数6~10のアラルキル基の具体例としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基などが挙げられる。上記炭素数2~10のアルケニル基の具体例としては、例えば、ビニル基、プロぺニル基、ペンテニル基などが挙げられる。
上記式(13)中、*は、結合位置を示す。
上記式(2)中、Dはメルカプト基を含有する有機基を表す。なかでも、下記式(14)で表される基であることが好ましい。
-(CH2m-SH (14)
上記式(14)中、mは1~10の整数を表し、なかでも、1~5の整数であることが好ましい。
上記式(14)中、*は、結合位置を示す。
上記式(14)で表される基の具体例としては、-CH2SH、-C24SH、-C36SH、-C48SH、-C510SH、-C612SH、-C714SH、-C816SH、-C918SH、-C1020SHが挙げられる。
上記式(2)中、R1は炭素数1~4の1価の炭化水素基を表す。
上記式(2)中、0≦a<1、0<b<1、0<c<3、0≦d<1、0≦e<2、かつ0<2a+b+c+d+e<4の関係を満たす。
上記式(2)中、aは、本発明の効果が向上するという理由から、0<a≦0.50であることが好ましい。
上記式(2)中、bは、本発明の効果が向上するという理由から、0<bであることが好ましく、0.10≦b≦0.89であることがより好ましい。
上記式(2)中、cは、本発明の効果が向上するという理由から、1.2≦c≦2.0であることが好ましい。
上記式(2)中、dは、本発明の効果が向上するという理由から、0.1≦d≦0.8であることが好ましい。
上記ポリシロキサンの重量平均分子量は、本発明の効果が向上するという理由から、500~2300であるのが好ましく、600~1500であるのがより好ましい。本発明における上記ポリシロキサンの分子量は、トルエンを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で求めたものである。
上記ポリシロキサンの酢酸/ヨウ化カリウム/ヨウ素酸カリウム添加-チオ硫酸ナトリウム溶液滴定法によるメルカプト当量は、加硫反応性に優れるという観点から、550~700g/molであるのが好ましく、600~650g/molであるのがより好ましい。
上記ポリシロキサンは、本発明の効果が向上するという理由から、シロキサン単位(-Si-O-)を2~50個有するものであることが好ましい。
なお、上記ポリシロキサンの骨格には、ケイ素原子以外の金属(例えば、Sn、Ti、Al)は存在しない。
上記ポリシロキサンの製造方法は公知であり、例えば国際公開WO2014/002750号パンフレットに開示された方法にしたがって製造することができる。
(その他成分)
本発明におけるゴム組成物には、前記した成分に加えて、加硫又は架橋剤;加硫又は架橋促進剤;カーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウムのような各種充填剤;老化防止剤;可塑剤;樹脂;硬化剤などのゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
なお、可塑剤を配合する場合、本発明の効果向上の観点から、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、テルペン樹脂を含む可塑剤を5質量部以上、好ましくは15~60質量部配合するのが好ましい。テルペン樹脂を含む可塑剤は、市販されているものを利用でき、例えばヤスハラケミカル株式会社製PX300N等が挙げられる。
本発明のゴム組成物は、ウェットグリップ性能および耐摩耗性に優れ、かつ熱ダレ性能にも優れることから、タイヤのトレッド、とくにキャップトレッド、好ましくは競技用タイヤのトレッド、とくにキャップトレッドに好適に用いられ得る。また本発明のタイヤは、空気入りタイヤであることが好ましく、空気、窒素等の不活性ガス及びその他の気体を充填することができる。
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
変性液状SBRの製造方法
リチウムジメチルアミドを開始剤とし、スチレンと1,3ブタジエンよりアニオン重合で合成された溶液重合スチレンブタジエンゴムの重合活性末端に、メチルトリエトキシシランを変性剤として反応させることで、末端変性した変性液状SBRを得た。
標準例、実施例1~6および比較例1~5
サンプルの調製
表1に示す配合(質量部)において、加硫系(加硫促進剤、硫黄)を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した後、ミキサー外に放出させて室温冷却した。続いて、該組成物を同バンバリーミキサーに再度入れ、加硫系を加えて混練し、ゴム組成物を得た。
次に、前記ゴム組成物をトレッド部に使用し、加硫することによりタイヤサイズが225/40R18の空気入りタイヤを製作し、下記評価を行った。
ウェットグリップ性能:得られた空気入りタイヤをリムサイズ17×8Jのホイールに組付け、国産2リットルクラスの試験車両に装着し、空気圧240kPaの条件で、実車走行を湿潤路面または乾きかけの路面(道路の凸凹の頂点より下の水深)からなる1周1.2kmのテストコース上で行い、10周連続走行させたときの周回毎のラップタイムを計測し、最も速いラップタイムを結果とした。結果は、標準例1の値を100として指数表示した。指数が大きいほど、ラップタイムが速く、ウェットグリップ性能に優れることを示す。
耐熱ダレ性:上記ゴム組成物を用い、M300(RT)/M300(60℃)を求めた。詳細には、JIS K6251(3号ダンベル使用)に基づき室温(RT)または60℃にて引張り試験を実施し、300%変形モジュラス(M300)を求めた。結果は、標準例の値を100として指数表示した。指数が大きいほど温度依存性が低く、熱ダレ性能に優れることを示す。
耐摩耗性:上記ゴム組成物を用い、JIS K6251に準拠し、引張試験にて破断伸びを室温で評価した。結果は標準例の値を100として指数表示した。この指数が大きいほど破断強度に優れ、耐摩耗性に優れることを示す。
結果を表1に示す。
Figure 2023047426000001
*1:SBR1(ZSエラストマー株式会社製 Nipol NS522(スチレン量=39質量%、ビニル量=42質量%、重量平均分子量=8.4×10g/mоl、油展量=SBR100質量部に対し37.5質量部))
*2:SBR2(ZSエラストマー株式会社製 Nipol NS460(スチレン量=25質量%、ビニル量=63質量%、重量平均分子量=9.5×10g/mоl、、油展量=SBR100質量部に対し37.5質量部))
*3:SBR3(JSR株式会社製HP776(スチレン量=32質量%、ビニル量=56質量%、重量平均分子量=12.1×10g/mоl、油展量=SBR100質量部に対し37.5質量部))
*4:SBR4(LANXESS社製VSL2438-2(スチレン量=38質量%、ビニル量=24質量%、重量平均分子量=10.9×10g/mоl、油展量=SBR100質量部に対し37.5質量部))
*5:シリカ1(Evonik社製VN3GR、窒素吸着比表面積(NSA)=181m/g、NSA/CTAB比表面積=1.12)
*6:シリカ2(Evonik社製Ultrasil 7000GR、窒素吸着比表面積(NSA)=171m/g、NSA/CTAB比表面積=1.03)
*7:シリカ3(Solvay社製Zeosil 1085GR(窒素吸着比表面積(NSA)=86m/g、NSA/CTAB比表面積=0.99)
*8:カーボンブラック(東海カーボン株式会社製シースト9(窒素吸着比表面積(NSA)=142m/g、NSA/IA=1.02))
*9:水酸化アルミニウム(日本軽金属株式会社製BF013)
*10:粘着付与樹脂1(三井化学株式会社製FTR2140、芳香族系炭化水素樹脂、軟化点=137℃、インデン含量=0質量%)
*11:粘着付与樹脂2(ENEOS株式会社製ネオポリマー140S、C9系石油樹脂、軟化点=145℃、インデン含量=48質量%)
*12:シランカップリング剤1(Evonik社製Si69)
*13:シランカップリング剤2(国際公開WO2014/002750号パンフレットに開示された製法により調製された、前記(2)の組成式を満たすシランカップリング剤。組成式=(-C36-S4-C36-)0.083(-C8170.667(-OC251.50(-C36SH)0.167SiO0.75、平均分子量=860)
*14:液状SBR1(Cray Valley社製Ricon100、ビニル量=70質量%、未変性)
*15:液状SBR2(Cray Valley社製Ricon184、ビニル量=30質量%、未変性)
*16:液状SBR3(上記製造方法に基づいた変性液状SBR、ビニル量=70質量%、シラン変性)
*17:可塑剤1(シェルルブリカンツジャパン株式会社製エキストラクト4号S)
*18:可塑剤2(ヤスハラケミカル株式会社製PX300N、テルペン樹脂からなる)
*19:ステアリン酸(日油株式会社製ビーズステアリン酸YR)
*20:酸化亜鉛(正同化学工業株式会社製酸化亜鉛3種)
*21:老化防止剤(フレキシス社製6PPD)
*22:加硫促進剤1(三新化学工業株式会社製サンセラーD-G)
*23:加硫促進剤2(大内新興化学工業株式会社製ノクセラーCZ-G)
*24:硫黄(鶴見化学工業株式会社製金華印油入微粉硫黄)
表1の結果から、各実施例のゴム組成物は、スチレン量が30質量%以上であるスチレン-ブタジエン共重合体ゴムを含むジエン系ゴム100質量部に対し、窒素吸着比表面積NSAが100~300m/gであり、かつ窒素吸着比表面積NSA/CTAB比表面積の値が1.10以下のシリカを140~300質量部、水酸化アルミニウムを15質量部以上、ビニル量が50質量%以上であり、かつ未変性の液状スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを5質量部以上、かつ軟化点が60~180℃の粘着付与樹脂を15質量部以上配合してなることを特徴としているので、ウェットグリップ性能および耐摩耗性に優れ、かつ熱ダレ性能にも優れる。
一方、比較例1は、シリカのNSA/CTAB比表面積の値が1.10を超えているので、耐摩耗性が悪化している。
比較例2は、シリカのNSAが本発明で規定する下限未満であるので、耐摩耗性が低下した。
比較例3は、液状SBRのビニル量が本発明で規定する下限未満であるので、ウェットグリップ性能が低下した。
比較例4は、液状SBRがマレイン酸変性されているので、ウェットグリップ性能が低下した。
比較例5はSBRのスチレン量が本発明で規定する下限未満であるので、耐熱ダレ性、耐摩耗性が低下した。

Claims (7)

  1. スチレン量が30質量%以上であるスチレン-ブタジエン共重合体ゴムを含むジエン系ゴム100質量部に対し、
    窒素吸着比表面積NSAが100~300m/gであり、かつ窒素吸着比表面積NSA/CTAB比表面積の値が1.10以下のシリカを140~300質量部、
    水酸化アルミニウムを15質量部以上、
    ビニル量が50質量%以上であり、かつ未変性の液状スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを5質量部以上、かつ
    軟化点が60~180℃の粘着付与樹脂を15質量部以上
    配合してなることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
  2. 前記粘着付与樹脂が、インデンを30質量%以上含む芳香族系の石油樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  3. さらに、テルペン樹脂を含む可塑剤を5質量部以上配合してなることを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  4. 前記スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの重量平均分子量が、10×10g/mоl以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
  5. 前記スチレン-ブタジエン共重合体ゴムが、質量比としてスチレン量>ビニル量であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
  6. 前記シリカに対し、さらにシランカップリング剤を2~20質量%配合してなり、
    前記メルカプト基を有するシランカップリング剤が、下記(2)の組成式で表されることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
    (A)a(B)b(C)c(D)d(R1)eSiO(4-2a-b-c-d-e)/2 (2)
    (式(2)中、Aはスルフィド基を含有する2価の有機基、Bは炭素数5~10の1価の炭化水素基、Cは加水分解性基、Dはメルカプト基を含有する有機基、R1は炭素数1~4の1価の炭化水素基を表し、0≦a<1、0<b<1、0<c<3、0≦d<1、0≦e<2、かつ0<2a+b+c+d+e<4の関係を満たす。)
  7. 請求項1~6のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物をキャップトレッドに用いたタイヤ。
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