JP2019182920A - ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ - Google Patents

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武田 慎也
Shinya Takeda
慎也 武田
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Abstract

【課題】ウェット路面走行用の競技用タイヤとしては、トレッド用ゴム組成物にシリカや樹脂を多量に配合してウェットグリップ性能を高める技術が知られている。その結果、タイヤが走行上十分な温度を有する状態(温間時)ではウェットグリップ性能が向上するものの、タイヤが低温状態にある場合は硬度Hsや貯蔵弾性率E’が高く、十分なウェットグリップ性能が得られないという問題点があった。【解決手段】ゴム成分100質量部に対し、シリカを30〜200質量部およびポリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)を5〜25質量部配合してなることを特徴とするゴム組成物によって上記課題を解決した。【選択図】なし

Description

本発明は、ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関するものであり、詳しくは、ウェットグリップ性能および低温時のグリップ性能を同時に向上させ得るゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
一般に、競技用の空気入りタイヤでは、ドライ路面走行用タイヤとウェット路面走行用タイヤとが用意され、走行時の天候および路面の状態に応じそれぞれ最適のタイヤを選択するようにしている。ここでウェット路面走行用の競技用タイヤとしては、トレッド用ゴム組成物にシリカや樹脂を多量に配合してウェットグリップ性能を高める技術が知られている(例えば下記特許文献1参照)。その結果、タイヤが走行上十分な温度を有する状態(温間時)ではウェットグリップ性能が向上するものの、タイヤが温間時に到達する前の低温状態にある場合は硬度Hsや貯蔵弾性率E’が高く、十分なウェットグリップ性能が得られないという問題点があった。
一方、低温可塑剤としてトリス(2―エチルヘキシル)ホスフェート(TOP)等のリン酸エステルを使用する技術も知られているが、タイヤが低温状態にある場合のウェットグリップ性能には改善の余地があった。
なお、下記特許文献2には、ゴム成分と、可塑剤と、軟化点30℃以上の樹脂と、硫黄とを含有し、前記可塑剤は、凝固点−50〜−10℃の脂肪族多塩基酸エステルを含み、前記ゴム成分100質量部に対して、前記脂肪族多塩基酸エステルの含有量が0.5〜50質量部、前記樹脂の含有量が2質量部以上であるタイヤ外層用ゴム組成物が開示されている。
しかし、前記脂肪族多塩基酸エステルは、例えばビス(アルコキシアルコキシアルキル)アジペートであって、下記で説明する本発明の特定の可塑剤とは異なる。また、特許文献2に開示された技術では、十分なウェットグリップ性能および低温時のグリップ性能を同時に得ることができない。
特開2007−321046号公報 特開2016−204504号公報
したがって本発明の目的は、ウェットグリップ性能および低温時のグリップ性能を同時に向上させ得るゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することにある。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、ゴム成分に対し、シリカを特定量配合し、さらに従来使用されていない特定の可塑剤を特定量で配合することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
すなわち本発明は以下の通りである。
1.ゴム成分100質量部に対し、シリカを30〜200質量部およびポリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)を5〜25質量部配合してなることを特徴とするゴム組成物。
2.前記シリカの窒素吸着比表面積(NSA)が150〜250m/gであることを特徴とする前記1に記載のゴム組成物。
3.さらに軟化点が120℃以上の樹脂を5〜70質量部配合してなることを特徴とする前記1または2に記載のゴム組成物。
4.さらにα−メチルスチレン誘導体およびインデンの共重合体を5〜70質量部配合してなることを特徴とする前記3に記載のゴム組成物。
5.さらにシランカップリング剤を配合してなり、前記シランカップリング剤が、下記(1)の組成式で表されることを特徴とする前記1〜4のいずれかに記載のゴム組成物。
(A)a(B)b(C)c(D)d(R1)eSiO(4-2a-b-c-d-e)/2 (1)
(式(1)中、Aはスルフィド基を含有する2価の有機基、Bは炭素数5〜10の1価の炭化水素基、Cは加水分解性基、Dはメルカプト基を含有する有機基、R1は炭素数1〜4の1価の炭化水素基を表し、0≦a<1、0<b<1、0<c<3、0<d<1、0≦e<2、かつ0<2a+b+c+d+e<4の関係を満たす。)
6.さらにアルキルアルコキシシラン剤を配合してなり、前記アルキルアルコキシシランが、下記式(2)で表されることを特徴とする前記1〜5のいずれかに記載のゴム組成物。
Figure 2019182920
(式(2)中、R1は炭素数3〜20のアルキル基を表し、Etはエチル基を表す。)
7.競技用空気入りタイヤに用いられる、前記1〜6のいずれかに記載のゴム組成物。
8.前記1〜6のいずれかに記載のゴム組成物をキャップトレッドに使用した空気入りタイヤ。
9.前記7に記載のゴム組成物をキャップトレッドに使用した競技用空気入りタイヤ。
本発明のゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対し、シリカ30〜200質量部と、特定の可塑剤であるポリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)5〜25質量部とを配合しているので、ウェットグリップ性能および低温時のグリップ性能を同時に向上させ得るゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することができる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
(ゴム成分)
本発明で使用されるゴム成分は、公知のゴム組成物に配合することができる。典型的には、ジエン系ゴムが挙げられ、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、その分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。
これらのうち、ウェットグリップ性能を発現しやすいという観点から、SBRを用いるのが好ましい。
(シリカ)
本発明で使用されるシリカは、乾式シリカ、湿式シリカ、コロイダルシリカなど、従来からゴム組成物において使用することが知られている任意のシリカを単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。
なお、ウェットグリップ性能および低温時のグリップ性能をさらに高めるという観点から、シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、150〜250m/gであることが好ましく、150〜230m/gであるのがさらに好ましい。
なお窒素吸着比表面積(NSA)は、JIS K6217−2に準拠して求めるものとする。
シリカの配合量は、ゴム成分100質量部に対し、30〜200質量部であり、50〜185質量部が好ましい。シリカの配合量が30質量部未満では、ウェットグリップ性能および低温時のグリップ性能を高めることができず、200質量部を超えると加工性が悪化する。
(特定の可塑剤)
本発明では、特定の可塑剤としてポリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)を使用する。
ポリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)は、可塑剤としての効果に加えて、シリカの凝集を防ぐことでシリカの分散を向上させる効果を有するものと推測される。
ポリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)は、市販品を利用することができ、例えばライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製リオノンDEH−40等が挙げられる。
ポリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)の配合量は、ゴム成分100質量部に対し、5〜25質量部であり、7〜20質量部が好ましい。
ポリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)の配合量が5質量部未満では、配合量が少な過ぎて本発明の効果を奏することができず、25質量部を超えるとウェットグリップ性能および低温時のグリップ性能の向上効果が低減する。
(樹脂)
本発明のゴム組成物は、軟化点が120℃以上の樹脂を配合することが好ましい。このような樹脂を配合することにより、ウェット路面での走行安定性が向上する効果を奏する。
前記樹脂の軟化点は、120〜180℃であるのがさらに好ましい。
なお、樹脂の軟化点はJIS K6220−1(環球法)に準拠し測定したものとする。
軟化点が120℃以上の樹脂としては、例えばテルペン系樹脂、ロジン系樹脂などの天然樹脂、石油系樹脂、石炭系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂などの合成樹脂、芳香族変性テルペン樹脂やα−メチルスチレン誘導体およびインデンの共重合体等が挙げられるが、本発明ではウェットグリップ性能を高めるという観点から、α−メチルスチレン誘導体およびインデンの共重合体を配合するのが好ましい。以下、α−メチルスチレン誘導体およびインデンの共重合体について説明する。
(α−メチルスチレン誘導体およびインデンの共重合体)
α−メチルスチレン誘導体は、下記一般式(I)を有することができる。
Figure 2019182920
(式(I)中、Rは炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
上記一般式(I)において、Rは、メチル、エチル、n−プロピルまたはイソプロピルであり、好ましくはメチルである。上記α−メチルスチレン誘導体とインデンの共重合体は、通常用いられる方法により共重合することができる。また市販されているものを利用することもでき、例えば三井化学株式会社製FMR0150等が挙げられる。
前記軟化点が120℃以上の樹脂または前記共重合体の配合量は、ゴム成分100質量部に対し、5〜70質量部が好ましく、7〜60質量部がさらに好ましい。
(シランカップリング剤)
本発明では、公知のシランカップリング剤を使用することができる。使用されるシランカップリング剤としては、ウェットグリップ性能および低温時のグリップ性能をさらに高めるという観点から、下記式(1)で表されるシランカップリング剤が好ましい。
(A)a(B)b(C)c(D)d(R1)eSiO(4-2a-b-c-d-e)/2 (1)
(式(1)中、Aはスルフィド基を含有する2価の有機基、Bは炭素数5〜10の1価の炭化水素基、Cは加水分解性基、Dはメルカプト基を含有する有機基、R1は炭素数1〜4の1価の炭化水素基を表し、0≦a<1、0<b<1、0<c<3、0<d<1、0≦e<2、かつ0<2a+b+c+d+e<4の関係を満たす。)
式(1)で表される硫黄含有シランカップリング剤(ポリシロキサン)およびその製造方法は、例えば国際公開WO2014/002750号パンフレットに開示され、公知である。
上記式(1)中、Aはスルフィド基を含有する2価の有機基を表す。なかでも、下記式(12)で表される基であることが好ましい。
−(CH2n−Sx−(CH2n (12)
上記式(12)中、nは1〜10の整数を表し、なかでも、2〜4の整数であることが好ましい。
上記式(12)中、xは1〜6の整数を表し、なかでも、2〜4の整数であることが好ましい。
上記式(12)中、*は、結合位置を示す。
上記式(12)で表される基の具体例としては、例えば、−CH2−S2−CH2−C24−S2−C24−C36−S2−C36−C48−S2−C48−CH2−S4−CH2−C24−S4−C24−C36−S4−C36−C48−S4−C48などが挙げられる。
上記式(1)中、Bは炭素数5〜20の1価の炭化水素基を表し、その具体例としては、例えば、ヘキシル基、オクチル基、デシル基などが挙げられる。Bは炭素数5〜10の1価の炭化水素基であることが好ましい。
上記式(1)中、Cは加水分解性基を表し、その具体例としては、例えば、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。なかでも、下記式(13)で表される基であることが好ましい。
−OR2 (13)
上記式(13)中、R2は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数6〜10のアラルキル基(アリールアルキル基)または炭素数2〜10のアルケニル基を表し、なかでも、炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましい。上記炭素数1〜20のアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、オクタデシル基などが挙げられる。上記炭素数6〜10のアリール基の具体例としては、例えば、フェニル基、トリル基などが挙げられる。上記炭素数6〜10のアラルキル基の具体例としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基などが挙げられる。上記炭素数2〜10のアルケニル基の具体例としては、例えば、ビニル基、プロぺニル基、ペンテニル基などが挙げられる。
上記式(13)中、*は、結合位置を示す。
上記式(1)中、Dはメルカプト基を含有する有機基を表す。なかでも、下記式(14)で表される基であることが好ましい。
−(CH2m−SH (14)
上記式(14)中、mは1〜10の整数を表し、なかでも、1〜5の整数であることが好ましい。
上記式(14)中、*は、結合位置を示す。
上記式(14)で表される基の具体例としては、−CH2SH、−C24SH、−C36SH、−C48SH、−C510SH、−C612SH、−C714SH、−C816SH、−C918SH、−C1020SHが挙げられる。
上記式(1)中、R1は炭素数1〜4の1価の炭化水素基を表す。
上記式(1)中、0≦a<1、0<b<1、0<c<3、0<d<1、0≦e<2、かつ0<2a+b+c+d+e<4の関係を満たす。
上記式(1)中、aは、本発明の上記効果が向上するという理由から、0<a≦0.50であることが好ましい。
上記式(1)中、bは、本発明の上記効果が向上するという理由から、0<bであることが好ましく、0.10≦b≦0.89であることがより好ましい。
上記式(1)中、cは、本発明の上記効果が向上するという理由から、1.2≦c≦2.0であることが好ましい。
上記式(1)中、dは、本発明の上記効果が向上するという理由から、0.1≦d≦0.8であることが好ましい。
上記ポリシロキサンの重量平均分子量は、本発明の上記効果が向上するという理由から、500〜2300であるのが好ましく、600〜1500であるのがより好ましい。本発明における上記ポリシロキサンの分子量は、トルエンを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で求めたものである。
上記ポリシロキサンの酢酸/ヨウ化カリウム/ヨウ素酸カリウム添加−チオ硫酸ナトリウム溶液滴定法によるメルカプト当量は、加硫反応性に優れるという観点から、550〜700g/molであるのが好ましく、600〜650g/molであるのがより好ましい。
上記ポリシロキサンは、本発明の上記効果が向上するという理由から、シロキサン単位(−Si−O−)を2〜50個有するものであることが好ましい。
なお、上記ポリシロキサンの骨格には、ケイ素原子以外の金属(例えば、Sn、Ti、Al)は存在しない。
上記ポリシロキサンの製造方法は公知であり、例えば国際公開WO2014/002750号パンフレットに開示された方法にしたがって製造することができる。
シランカップリング剤の配合量は、前記シリカに対して3〜20質量%が好ましく、5〜15質量%であるのがさらに好ましい。5質量%未満であると、添加効果が発現しない。逆に20質量%を超えると、それ以上の改善効果が得られなくなる。
(アルキルアルコキシシラン)
本発明では、ウェットグリップ性能および低温時のグリップ性能をさらに高めるという観点から、下記式(2)で表されるアルキルアルコキシシランを使用することができる。
Figure 2019182920
(式(2)中、R1は炭素数3〜20のアルキル基を表し、Etはエチル基を表す。)
ここで、R1の炭素数3〜20のアルキル基としては、中でも、炭素数7〜20のアルキル基が好ましく、具体的には、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられる。これらのうち、ジエン系ゴムとの相溶性の観点から、炭素数8〜10のアルキル基がさらに好ましく、オクチル基、ノニル基であるのがとくに好ましい。
アルキルアルコキシシランの配合量は、前記シリカに対して3〜20質量%が好ましく、5〜15質量%であるのがさらに好ましい。5質量%未満であると、添加効果が発現しない。逆に20質量%を超えると、それ以上の改善効果が得られなくなる。
(その他成分)
本発明におけるゴム組成物には、前記した成分に加えて、加硫又は架橋剤;加硫又は架橋促進剤;酸化亜鉛、カーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウムのような各種充填剤;老化防止剤;前記以外のその他の可塑剤などのゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
また本発明のゴム組成物は従来の空気入りタイヤの製造方法に従って空気入りタイヤを製造するのに適しており、キャップトレッド、とくに競技用空気入りタイヤのキャップトレッドに適用するのがよい。
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
実施例1〜7および比較例1〜6
サンプルの調製
表1に示す配合(質量部)において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した後、混練物をミキサー外に放出させて室温冷却させた。その後、同バンバリーミキサーにおいて加硫促進剤および硫黄を加えてさらに混練し、ゴム組成物を得た。次に得られたゴム組成物を所定の金型中で160℃、20分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を得、以下に示す試験法で加硫ゴム試験片の物性を測定した。
上記で得られたゴム組成物をタイヤトレッド部に使用して、タイヤサイズ225/40R18の空気入りタイヤを製造した。これらの空気入りタイヤについて、ウェットグリップ性能およびウェットグリップのウォームアップ性能を以下の方法で評価した。
ウェットグリップ性能およびウォームアップ性能
得られた空気入りタイヤを、それぞれサイズ18×8Jのリムに組み、空気圧240kPaを充填し、テスト車両の4輪に装着し、テストドライバーが、湿潤路面(ウェット条件)のサーキットコース(1周約2km)を10周連続走行させたときの周回毎のラップタイムを計測した。得られた結果は、平均ラップタイムの逆数を算出し、表1では比較例1の値を100とし、表2では比較例7の値を100とする指数として、表1〜2の「ウェットグリップ性能」に示した。この指数が大きいほど、平均ラップタイムが速く、ウェットグリップ性能が優れることを意味する。
また前記ウェット条件のサーキットコースを周回したとき、走行開始1周目のラップタイムを計測し、その逆数を算出した。得られた結果を表1では比較例1の値を100とし、表2では比較例7の値を100とする指数として、表1〜2の「ウォームアップ性能」に示した。この指数が大きいほど、ウォームアップ性能が優れ、ウェットグリップ性能を早期に発揮しやすいことを意味する。
Figure 2019182920
*1:SBR1(日本ゼオン(株)製Nipol 1749、油展E−SBR、油展量=SBR100質量部に対し50質量部、スチレン量=40%)
*2:SBR2(旭化成(株)製E581、油展S−SBR、油展量=SBR100質量部に対し37.5質量部、スチレン量=37%、ビニル量=43%)
*3:アロマオイル(昭和シェル石油(株)製エキストラクト4号S)
*4:芳香族変性テルペン樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製TO−125、軟化点=125℃、分子量=1300)
*5:α−メチルスチレンインデン樹脂(三井化学株式会社製FMR0150、α−メチルスチレン誘導体およびインデンの共重合体、、軟化点=145℃、分子量=2000)
*6:カーボンブラック(東海カーボン株式会社製シーストF、窒素吸着比表面積(NSA)=142m/g)
*7:シリカ(ローディア社製1165MP、窒素吸着比表面積(NSA)=160m/g)
*8:シランカップリング剤1(エボニクデグッサ社製Si69)
*9:可塑剤1(大八化学工業株式会社製TOP、トリス(2―エチルヘキシル)ホスフェート)
*10:可塑剤2(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製リオノンDEH−40、ポリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート))
*11:亜鉛華(正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種)
*12:ステアリン酸(千葉脂肪酸株式会社製工業用ステアリン酸N)
*13:老化防止剤(精工化学株式会社製オゾノン6C)
*14:イオウ(鶴見化学工業(株)製金華印油入微粉硫黄)
*15:加硫促進剤CZ(大内新興化学工業(株)製ノクセラーCZ−G)
*16:シランカップリング剤2(上記式(1)を満たす化合物。組成式=(−C36−S4−C36−)0.071(−C8170.571(−OC251.50(−C36SH)0.286SiO0.75、信越化学工業(株)製9511D)
*17:アルキルアルコキシシラン(n−オクチルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製KBE−3083))
表1の結果から、実施例のゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対し、シリカを30〜200質量部およびポリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)を5〜25質量部の範囲で配合してなるものであるので、従来の代表的な比較例1の組成物に比べ、ウェットグリップ性能およびウォームアップ性能(低温時のグリップ性能)が同時に向上していることが分かる。
これに対し、比較例2は比較例1のゴム組成物に対し、SBRの種類およびアロマオイルの量を単に変更したものであるので、ウェットグリップ性能およびウォームアップ性能がそれほど向上していない。
比較例3は、比較例1のゴム組成物に対し可塑剤としてTOPを配合した例であるが、ウェットグリップ性能が向上していない。
比較例4は、比較例3のゴム組成物に対しシリカを増量した例であり、ウェットグリップ性能は改善しているものの、ウォームアップ性能が向上していない。
比較例5は、ポリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)の配合割合が本発明で規定する下限未満であるので、ウェットグリップ性能およびウォームアップ性能の向上の度合いが低い。
比較例6は、ポリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)の配合割合が本発明で規定する上限を超えているので、ウェットグリップ性能の向上の度合いが低い結果となった。
実施例8および比較例7
表2に示す配合(質量部)において、前記実施例と同様に、加硫ゴム試験片を調製し、0℃における硬度および20℃における硬度を測定し、両者の硬度の差の絶対値を求めた。なお、硬度は、JIS K6253に準拠してそれぞれの温度で測定した。また、前記実施例と同様に、ウェットグリップ性能を評価した。
結果は、比較例7の値を100として指数表示した。
該絶対値の指数が小さいほど、操縦安定性に優れると言える。
また、ウェットグリップ性能の指数が大きいほど該性能に優れることを示す。
Figure 2019182920
表2の結果から、ゴム成分100質量部に対し、シリカを30〜200質量部およびポリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)を5〜25質量部の範囲で配合した実施例8は、比較例7の組成物に比べ、0℃における硬度および20℃における硬度の差の絶対値が小さく、操縦安定性に優れることが見出された。また、ウェットグリップ性能の向上も確認された。

Claims (9)

  1. ゴム成分100質量部に対し、シリカを30〜200質量部およびポリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)を5〜25質量部配合してなることを特徴とするゴム組成物。
  2. 前記シリカの窒素吸着比表面積(NSA)が150〜250m/gであることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
  3. さらに軟化点が120℃以上の樹脂を5〜70質量部配合してなることを特徴とする請求項1または2に記載のゴム組成物。
  4. さらにα−メチルスチレン誘導体およびインデンの共重合体を5〜70質量部配合してなることを特徴とする請求項3に記載のゴム組成物。
  5. さらにシランカップリング剤を配合してなり、前記シランカップリング剤が、下記(1)の組成式で表されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のゴム組成物。
    (A)a(B)b(C)c(D)d(R1)eSiO(4-2a-b-c-d-e)/2 (1)
    (式(1)中、Aはスルフィド基を含有する2価の有機基、Bは炭素数5〜10の1価の炭化水素基、Cは加水分解性基、Dはメルカプト基を含有する有機基、R1は炭素数1〜4の1価の炭化水素基を表し、0≦a<1、0<b<1、0<c<3、0<d<1、0≦e<2、かつ0<2a+b+c+d+e<4の関係を満たす。)
  6. さらにアルキルアルコキシシラン剤を配合してなり、前記アルキルアルコキシシランが、下記式(2)で表されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のゴム組成物。
    Figure 2019182920
    (式(2)中、R1は炭素数3〜20のアルキル基を表し、Etはエチル基を表す。)
  7. 競技用空気入りタイヤに用いられる、請求項1〜6のいずれかに記載のゴム組成物。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載のゴム組成物をキャップトレッドに使用した空気入りタイヤ。
  9. 請求項7に記載のゴム組成物をキャップトレッドに使用した競技用空気入りタイヤ。
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CN116063721B (zh) * 2023-02-23 2024-02-13 江苏中煜橡塑科技有限公司 一种耐钠离子电池电解液的氟橡胶密封材料及其制备方法

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