JP2023035044A - 転写シート並びに前記転写シートを用いた部材の製造方法及び部材 - Google Patents

転写シート並びに前記転写シートを用いた部材の製造方法及び部材 Download PDF

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Abstract

【課題】屋外での使用でも、転写層を構成する層と層との間との密着性の低下を抑制することができる、優れた耐候密着性を有するハードコート転写シート及び前記転写シートを用いた部材を提供することを目的とするものである。【解決手段】剥離フィルム上に転写層を有し、前記転写層は、剥離フィルム側から、ハードコート層、プライマー層及び基材密着層をこの順に有し、前記ハードコート層が電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含み、温度領域が40℃~50℃における前記ハードコート層の線形膨張係数と前記プライマー層の線形膨張係数との差の絶対値をAHC-Pr、温度領域が70℃~80℃における前記ハードコート層の線形膨張係数と前記プライマー層の線形膨張係数との差の絶対値をBHC-Prとした時に、下記(式1)を満たす、転写シート。BHC-Pr-AHC-Pr≦5.0×10-4/℃ (式1)【選択図】図1

Description

本開示は、耐候密着性を有するハードコート転写シート並びに前記転写シートを用いた部材の製造方法及び部材に関する。
従来、建築物の内装用及び外装用部材、建具、家具、車両の内装用及び外装用部材等の表面を装飾し、保護するための物品として、いわゆる転写シートが用いられてきた。
転写シートは、例えば剥離フィルム上に、表面保護層、図柄層、接着剤層等からなる転写層を有したものであり、この転写シートを部材等の基材表面に密着させた後、剥離フィルムを剥離して、基材表面に転写層のみを転写することで、基材表面に所望の機能を付与することができる。転写シートは、基材表面に所望の機能を付与するために、例えば、耐擦傷性、耐汚染性及び耐候性等の表面特性、また基材への密着性や加工特性等の様々な性能が求められる。
例えば、特許文献1には、基材表面を装飾する転写シートとして、剥離層に剥離可能に取り付けられた意匠転写層とを含む意匠転写シートが提案されている。
特開2016-120643号公報
通常、転写シートは、剥離フィルム上に、表面保護層や接着剤層等を積層させた転写層を形成することにより製造される。そのため、転写層を構成する各層は、次の層を形成する前に、硬化させていることが必要である。特に、転写層に耐擦傷性や耐候性等を付与させる、いわゆるハードコート層は、ハードコート層に含まれる耐候剤等の添加剤のブリードアウトを防ぎ、転写後の転写層の表面に十分な耐擦傷性及び耐候性を付与させるために、十分に硬化させる必要がある。
しかしながら、特許文献1の転写シートでは、ハードコート層を形成した場合、ハードコート層を十分に硬化させる必要があることから、ハードコート層と、次に積層させる層との間の密着性を十分に確保することができず、特に外装用の部材等に用いた場合、経時により、転写層を構成する各層同士の密着性が弱くなる問題が生じる場合があった。
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであり、屋外での使用でも、転写層を構成する層と層との間との密着性の低下を抑制することができる、優れた耐候密着性を有するハードコート転写シート及び前記転写シートを用いた部材を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決すべく、本開示は、以下の[1]~[10]を提供する。
[1]剥離フィルム上に転写層を有し、前記転写層は、剥離フィルム側から、ハードコート層、プライマー層及び基材密着層をこの順に有し、前記ハードコート層が電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含み、温度領域が40℃~50℃における前記ハードコート層の線形膨張係数と前記プライマー層の線形膨張係数との差の絶対値をAHC-Pr、温度領域が70℃~80℃における前記ハードコート層の線形膨張係数と前記プライマー層の線形膨張係数との差の絶対値をBHC-Prとした時に、下記(式1)を満たす、転写シート。
HC-Pr-AHC-Pr≦5.0×10-4/℃ (式1)
[2]前記BHC-Prが、7.0×10-4/℃以下である、[1]に記載の転写シート。
[3]温度領域が40℃~50℃における前記プライマー層の線形膨張係数と前記基材密着層の線形膨張係数との差の絶対値をAPr-S、温度領域が70℃~80℃における前記プライマー層の線形膨張係数と前記基材密着層の線形膨張係数との差の絶対値をBPr-Sとした時に、下記(式2)を満たす、[1]又は[2]に記載の転写シート。
Pr-S-APr-S≦6.0×10-4/℃ (式2)
[4]前記BPr-Sが、7.5×10-4/℃以下である、[3]に記載の転写シート。
[5]前記プライマー層が、ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の転写シート。
[6]前記ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体のウレタン成分とアクリル成分の質量比[ウレタン成分]/[アクリル成分]が、75/25以上95/5以下である、[5]に記載の転写シート。
[7]前記電離放射線硬化性樹脂組成物がカプロラクトン系ウレタンアクリレートを含む、[1]~[6]のいずれかに記載の転写シート。
[8]下記(1)及び(2)の工程を順に有する、部材の製造方法。
(1)[1]~[7]のいずれかに記載の転写シートの転写層側の面と基材とを密着させる工程。
(2)密着させた前記転写シート及び基材から、前記転写シートの剥離フィルムを剥離する工程。
[9]基材上に転写層を有する部材であり、前記転写層は、基材側から、基材密着層、プライマー層及びハードコート層をこの順に有し、前記ハードコート層が電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含み、温度領域が40℃~50℃における前記ハードコート層の線形膨張係数と前記プライマー層の線形膨張係数との差の絶対値をAHC-Pr、温度領域が70℃~80℃における前記ハードコート層の線形膨張係数と前記プライマー層の線形膨張係数との差をBHC-Prとした時に、下記(式1)を満たす、部材。
HC-Pr-AHC-Pr≦5.0×10-4/℃ (式1)
[10]温度領域が40℃~50℃における前記プライマー層の線形膨張係数と前記基材密着層の線形膨張係数との差の絶対値をAPr-S、温度領域が70℃~80℃における前記プライマー層の線形膨張係数と前記基材密着層の線形膨張係数との差の絶対値をBPr-Sとした時に、下記(式2)を満たす、[9]に記載の部材。
Pr-S-APr-S≦5.0×10-4/℃ (式2)
本開示によれば、屋外での使用でも、転写層を構成する層と層との間との密着性の低下を抑制することができる、優れた耐候密着性を有するハードコート転写シート及び前記転写シートを用いた部材を提供することを提供することができる。
本開示の転写シートの一実施形態を示す断面図である。 本開示の部材の一実施形態を示す断面図である。
[転写シート]
本開示の転写シートは、剥離フィルム上に転写層を有し、前記転写層は、剥離フィルム側から、ハードコート層、プライマー層及び基材密着層をこの順に有し、前記ハードコート層が電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含み、温度領域が40℃~50℃における前記ハードコート層の線形膨張係数と前記プライマー層の線形膨張係数との差の絶対値をAHC-Pr、温度領域が70℃~80℃における前記ハードコート層の線形膨張係数と前記プライマー層の線形膨張係数との差の絶対値をBHC-Prとした時に、下記(式1)を満たすことを特徴としている。
HC-Pr-AHC-Pr≦5.0×10-4/℃ (式1)
図1は、本開示の転写シートの一実施形態を示す断面図である。図1の転写シート10は、剥離フィルム1上に転写層11を有する。転写層11は剥離フィルム1に接する側から順に、ハードコート層2、プライマー層3及び基材密着層4を有している。なお、図1には図示されていないが、転写シート10は、必要に応じ、基材密着層4の剥離フィルム1とは反対側の面上に、更に第2剥離フィルムを有してもよい。また、図1には図示されていないが、転写シート10の転写層11は必要に応じ、更にその他の機能層を有してもよい。
転写層を構成する機能層の内、ハードコート層は、部材に耐擦傷性や耐候性等の耐久性を付与するための機能を付与する層であることから、通常、部材の最表面に形成されていることが好ましい。転写シートは、通常、剥離フィルム上に、いくつかの層を積層させた転写層を形成し作製されるため、転写層におけるハードコート層は、剥離フィルムに接する形で形成されていることが好ましい。そして、プライマー層等のその他の層については、形成されたハードコート層上に形成されることとなる。
ここで、ハードコート層は、ハードコート層に含まれる耐候剤等の添加剤のブリードアウトを防ぎ、部材の表面に十分な耐擦傷性及び耐候性を付与させるために、十分に硬化させる必要がある。そのため、ハードコート層が電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含む場合、ハードコート層と、ハードコート層上に形成されたプライマー層等の層との化学的相互作用及び物理的相互作用が小さくなる傾向があり、層間の密着性が低くなる傾向があった。特に電離放射線硬化性樹脂組成物が電子線硬化性樹脂組成物の場合は、紫外線硬化性樹脂組成物の場合よりも、ハードコート層の硬化がより進みやすいため、層間の密着性が低くなる傾向が顕著であった。
一方で、本開示の転写シートは、上記(式1)を満たすことから、ハードコート層とプライマー層との密着性を向上できる。
当該効果が得られる理由は定かではないが、以下のように推定される。
上記(式1)の内、AHC-Prはいわゆる低温域におけるハードコート層及びプライマー層の線膨張係数の差であり、低温域におけるハードコート層とプライマー層との変形のし易さの差を表した指標である。また、BHC-Prはいわゆる高温域におけるハードコート層及びプライマー層の線膨張係数の差であり、高温域におけるハードコート層とプライマー層との変形のし易さの差を表した指標である。
これらの指標が小さいと、各温度領域において、ハードコート層とプライマー層との層間の、温度変化による変形に伴うひずみを抑制することができるため、当該層間の密着性が低下を防ぐことができると考えられる。
そして、上記(式1)の左辺は、高温域でハードコート層とプライマー層との変形のし易さの差と、低温域でのハードコート層とプライマー層との変形のし易さの差との、違いを表現したものである。つまり、上記(式1)の左辺は、ハードコート層とプライマー層との変形のし易さの差の温度依存性を意味しており、この値が小さいほど、屋外のような、昼夜の温度差や季節の違いによる温度差等、急激な温度変化が繰り返されるような環境下においても、ハードコート層の変形と、プライマー層の変形との差が小さいため、当該層間の密着性の低下を防ぐことができると考えられる。
したがって、本開示の転写シートは、上記(式1)を満たすことから、特に特に屋外で使用する部材に用いた際の耐候密着性を向上できる。
本開示の転写シートにおける、上記(式1)の値は、ハードコート層とプライマー層との層間の耐候密着性を向上させるため、5.0×10-4/℃以下であり、4.5×10-4/℃以下が好ましく、4.0×10-4/℃以下がより好ましく、3.5×10-4/℃以下が更に好ましい。また、上記(式1)において、下限値は特に制限はされないが、ハードコート層とプライマー層との層間の耐候密着性を向上させるため、0/℃以上であることが好ましい。
本開示の転写シートにおいて、BHC-Prは、高温域におけるハードコート層とプライマー層との層間の密着性を向上させるため、7.0×10-4/℃以下が好ましく、6.0×10-4/℃以下がより好ましく、5.0×10-4/℃以下が更に好ましく、4.5×10-4/℃以下がより更に好ましい。また、BHC-Prにおいて、下限値は特に制限はされないが、高温域におけるハードコート層とプライマー層との層間の密着性を向上させるため、0/℃以上であることが好ましい。
本開示の転写シートにおいて、AHC-Prは、低温域におけるハードコート層とプライマー層との層間の密着性を向上させるため、2.0×10-4/℃以下が好ましく、1.5×10-4/℃以下がより好ましく、1.1×10-4/℃以下が更に好ましい。また、AHC-Prにおいて、下限値は特に制限はされないが、低温域におけるハードコート層とプライマー層との層間の密着性を向上させるため、0/℃以上であることが好ましい。
本開示の転写シートにおいて、温度領域が40℃~50℃における前記プライマー層の線形膨張係数と前記基材密着層の線形膨張係数との差の絶対値をAPr-S、温度領域が70℃~80℃における前記プライマー層の線形膨張係数と前記基材密着層の線形膨張係数との差の絶対値をBPr-Sとした時に、下記(式2)を満たすことが好ましい。
Pr-S-APr-S≦6.0×10-4/℃ (式2)
ここで、上記(式2)の内、APr-Sはいわゆる低温域におけるプライマー層と基材密着層との線膨張係数の差であり、低温域におけるプライマー層と基材密着層との変形のし易さの差を表した指標である。また、BPr-Sはいわゆる高温域におけるプライマー層と基材密着層との線膨張係数の差であり、高温域におけるプライマー層と基材密着層との変形のし易さの差を表した指標である。
これらの指標が小さい程、各温度領域において、プライマー層と基材密着層との層間の、温度変化による変形に伴うひずみを抑制することができるため、当該層間の密着性が低下を防ぎやすくできる。
また、上記(式2)の左辺は、プライマー層と基材密着層との変形のし易さの差の温度依存性を意味しており、この値が小さいほど、屋外のような、昼夜の温度差や季節の違いによる温度差等、急激な温度変化が繰り返されるような環境下においても、プライマー層の変形と、基材密着層の変形との差が小さいため、当該層間の密着性の低下を防ぐことができると考えられる。
本開示の転写シートにおける、上記(式2)の値は、プライマー層と基材密着層との層間の耐候密着性を向上させるため、6.0×10-4/℃以下が好ましく、5.0×10-4/℃以下がより好ましく、4.0×10-4/℃以下が更に好ましく、3.0×10-4/℃以下がより更に好ましい。また、上記(式2)において、下限値は特に制限はされないが、プライマー層と基材密着層との層間の耐候密着性を向上させるため、0/℃以上であることが好ましい。
本開示の転写シートにおいて、BPr-Sは、高温域におけるプライマー層と基材密着層との層間の密着性を向上させるため、7.5×10-4/℃以下が好ましく、6.0×10-4/℃以下がより好ましく、5.0×10-4/℃以下が更に好ましく、4.0×10-4/℃以下がより更に好ましい。
また、BPr-Sにおいて、下限値は特に制限はされないが、高温域におけるプライマー層と基材密着層との層間の密着性を向上させるため、0/℃以上であることが好ましい。
本開示の転写シートにおいて、APr-Sは、低温域におけるプライマー層と基材密着層との層間の密着性を向上させるため、2.0×10-4/℃以下が好ましく、1.5×10-4/℃以下がより好ましく、1.1×10-4/℃以下が更に好ましい。
また、APr-Sにおいて、下限値は特に制限はされないが、低温域におけるプライマー層と基材密着層との層間の密着性を向上させるため、0/℃以上であることが好ましい。
本明細書において、線膨張係数は、JIS K 7179:1991に準拠して測定されるものであり、具体的には実施例に記載の方法で測定される。
<剥離フィルム>
剥離フィルムは、転写シートを構成する層において、転写層と剥離可能に積層された層である。剥離フィルムは、基材表面に転写層を転写した後に、転写層から剥離される。
剥離フィルムは、転写シートの転写工程での加工性を向上させるために、転写層と剥離可能に積層でき、かつ耐熱性を有するプラスチックフィルムが好ましい。
剥離フィルムとして用いるプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系フィルム、ナイロン6又はナイロン66等のポリアミド系フィルム、ポリイミド系フィルム等が挙げられ、この中ではポリエステル系フィルムを用いることが好ましく、ポリエステル系フィルムの中でもポリエチレンテレフタレートを用いることがより好ましい。
剥離フィルムの厚みは特に限定されないが、転写シートの取り扱い性を向上させるために、10μm以上200μm以下が好ましく、15μm以上150μm以下がより好ましく、20μm以上100μm以下が更に好ましい。
<転写層>
本開示において転写層は、基材表面に転写される層であり、基材の表面に所定の機能を付与する役割を有する。
本開示の転写シートの転写層は、剥離フィルム側から、少なくともハードコート層、プライマー層及び基材密着層をこの順に有する。
また、転写層は、更にその他の機能層を有してもよい。その他の機能層としては、意匠層、防眩層、防汚層、応力緩和層、帯電防止層、ガスバリア層、防曇層及び透明導電層等が挙げられる。
本開示の転写シートにおいて、転写層の全光線透過率は、80%以下であることが好ましく、70%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましい。
転写層の全光線透過率を上記範囲とすることにより、例えば、本開示の転写シートを用いた部材において、意匠性を向上しやすくできる。
(ハードコート層)
本開示の転写シートは、転写層にハードコート層を有する。本開示におけるハードコート層は、転写層に、例えば耐擦傷性や耐候性等に代表される耐久性を付与させるために形成される層である。その他、ハードコート層に要求される耐久性としては、泥等の各種物質に対する耐汚染性等が挙げられる。
本開示においてハードコート層は、耐擦傷性を向上させるために、樹脂成分として、硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことが好ましい。硬化性樹脂組成物の硬化物の割合は、ハードコート層を構成する全樹脂成分に対して、70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
硬化性樹脂組成物の硬化物としては、ハードコート層の耐擦傷性及び転写シートの加工性を向上させるために、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を用いる。
電離放射線硬化性樹脂組成物としては、例えば、電子線硬化性樹脂組成物及び紫外線硬化性樹脂組成物が挙げられ、これらの中でも、重合開始剤が不要のため臭気が少なく、着色がしにくいことから、電子線硬化性樹脂組成物が好ましい。また、ハードコート層が紫外線吸収剤を含有する場合、電子線硬化性樹脂組成物の方が硬化物層の架橋密度を高くしやすく、耐擦傷性及び耐汚染性を良好にしやすい点でも好ましい。
電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性官能基を有する化合物(以下、「電離放射線硬化性化合物」ともいう)を含む組成物である。電離放射線硬化性官能基としては、電離放射線の照射によって架橋硬化する基であり、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性二重結合を有する官能基等が好ましく挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクロイル基を示す。また、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを示す。
また、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線も含まれる。
電離放射線硬化性化合物は、転写シートの加工特性並びにハードコート層の耐擦傷性及び耐候性を向上させるために、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上が含まれることが好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートが更に好ましい。
また、ウレタン(メタ)アクリレートとしては、カプロラクトン系ウレタンアクリレートを用いることが好ましく、カプロラクトン系ウレタンアクリレートと、カプロラクトン変性されていないウレタン(メタ)アクリレートを混合して用いることがより好ましい。カプロラクトン系ウレタンアクリレートを用いることにより、転写シートの加工特性並びにハードコート層の耐擦傷性及び耐候性をより向上しやすくできる。
電離放射線硬化性化合物として、カプロラクトン系ウレタンアクリレートと、カプロラクトン変性されていないウレタン(メタ)アクリレートを混合して用いる場合、ハードコート層に含まれるカプロラクトン系ウレタンアクリレートの含有量をMCLUA、カプロラクトン変性されていないウレタン(メタ)アクリレートの含有量MUAとしたとき、質量比MCLUA/MUAは、40/60以上90/10以下が好ましく、45/55以上80/20以下がより好ましく、50/50以上70/30以下が更に好ましい。
質量比MCLUA/MUAを上記範囲内にすることにより、転写シートの加工特性並びにハードコート層の耐擦傷性及び耐候性を向上しやすくできる。
カプロラクトン系ウレタンアクリレートは、通常、カプロラクトン系ポリオールと、有機イソシアネートと、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応により得ることができる。合成法としては、ポリカプロラクトン系ポリオールと有機ポリイソシアネートとを反応させて、両末端に-NCO基(イソシアナート基)を含有するポリウレタンプレポリマーを生成させた後に、ヒドロキシ(メタ)アクリレートと反応させる方法が好ましい。反応の条件等は常法に従えばよい。
カプロラクトン系ポリオールとしては、市販されるものを使用することができ、好ましくは2個の水酸基を有し、数平均分子量が好ましくは500~3000、より好ましくは750~2000のものが挙げられる。また、カプロラクトン系以外のポリオール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等のポリオールを1種又は複数種を任意の割合で混合して使用することもできる。
有機ポリイソシアネートとしては、2個のイソシアネート基を有するジイソシアネートが好ましく、黄変を抑制する観点から、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4′-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が好ましく挙げられる。
ヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、カプロラクトン変性-2-ヒドロキシエチルアクリレート等が好ましく挙げられる。
本開示において、電離放射線硬化性樹脂組成物がカプロラクトン系ポリオールを含む場合、カプロラクトン系ウレタンアクリレートは、カプロラクトンジオール系ウレタンアクリレートであることが好ましい。カプロラクトンジオール系ウレタンアクリレートとは、カプロラクトン系ウレタンアクリレートのうち、末端がジエチレングリコールとなっているウレタンアクリレートのことである。カプロラクトンジオール系ウレタンアクリレートを用いることで、特に割れや白化が生じることがない加工性に優れる転写シート及び部材が得られる。
本開示において電離放射線硬化性化合物の数平均分子量は、1000以上10000以下であることが好ましく、2000以上10000以下がより好ましい。すなわち、電離放射線硬化性化合物はオリゴマーであることが好ましい。数平均分子量が上記範囲内であれば、ハードコート層を形成するための組成物が適度なチキソ性が得られるので、加工性に優れ、ハードコート層の形成が容易となる。また、ハードコート層の耐擦傷性及び耐候性を向上しやすくできる。
なお、本明細書において、数平均分子量は、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された平均分子量である。
ハードコート層の線膨張係数は、ハードコート層に含まれる電離放射線硬化性化合物の官能基数によって調整することができる。離放射線硬化性化合物の官能基数を少なくすることで、ハードコート層に含まれる電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物において、架橋点を少なくできるため、より柔軟な構造とすることができ、また、ハードコート層のガラス転移温度を高くすることができるため、ハードコート層の線膨張係数を大きくしやすくできる。
本開示において電離放射線硬化性化合物の官能基数としては、2以上20以下が好ましく、2以上18以下がより好ましく、2以上15以下が更に好ましい。電離放射線硬化性化合物の官能基数を2以上とすることにより、ハードコート層の耐擦傷性及び耐候性を向上しやすくでき、電離放射線硬化性化合物の官能基数を20以下とすることにより、転写シートの加工特性及び、ハードコート層とプライマー層との層間の耐候密着性を向上しやすくできる。
また、電離放射線硬化性化合物にカプロラクトン系ウレタンアクリレートの場合、カプロラクトン系ウレタンアクリレートの官能基数は、2以上4以下が好ましく、2以上3以下がより好ましい。カプロラクトン系ウレタンアクリレートの官能基数を上記範囲内にすることにより、転写シートの加工特性並びにハードコート層の耐擦傷性及び耐候性を向上しやすくできる。
電離放射線硬化性化合物が紫外線硬化性化合物である場合には、光重合開始剤及び光重合促進剤等の添加剤を含むことが好ましい。
光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α-アシルオキシムエステル、アシルフォスフィンオキサイド、チオキサントン類等から選ばれる1種以上が挙げられる。
また、光重合促進剤は、硬化時の空気による重合阻害を軽減させ硬化速度を速めることができるものであり、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等から選ばれる1種以上が挙げられる。
ハードコート層は、本開示の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じてその他の添加剤を含んでもよい。その他の添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、有機粒子及び無機粒子等を用いることが好ましい。
ハードコート層に含まれる紫外線吸収剤としては、ハードコート層から紫外線吸収剤ブリードアウトすることを抑制しやすく、転写シートの転写層に長時間の耐候性を付与することができることから、トリアジン系紫外線吸収剤が好ましく、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2-ヒドロキ
シ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス[2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2'-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノール等が好ましく挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
ハードコート層に含まれる紫外線吸収剤の含有量は、電離放射線硬化性化合物100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下が好ましく、0.8質量部以上8質量部以下がより好ましく1質量部以上5質量部以下がより好ましい。トリアジン系紫外線吸収剤の含有量が上記範囲内であれば、該紫外線吸収剤がブリードアウトすることなく、また十分な紫外線吸収能が得られるので、優れた耐候性が得られる。また、紫外線吸収剤の含有量を10質量部以下とすることで、ハードコート層の架橋密度を低下し難くでき、耐久性を向上しやすくできる。
ハードコート層に含まれる光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤が好ましい。
ヒンダードアミン系光安定剤としては、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニルメタクリレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、2,4-ビス[N-ブチル-N-(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ]-6-(2-ヒドロキシエチルアミン)-1,3,5-トリアジン)等が挙げられる。
ハードコート層に含まれる光安定剤の含有量は、電離放射線硬化性化合物100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下が好ましく、1.5質量部以上8質量部以下がより好ましく2質量部以上5質量部以下がより好ましい。光安定剤の含有量が上記範囲内であれば、該光安定剤がブリードアウトすることなく、また十分な光安定性が得られるので、優れた耐候性が得られる。
ハードコート層の厚みは、転写シートの加工特性並びにハードコート層の耐擦傷性及び耐候性を向上させるために、2μm以上20μm以下が好ましく、3μm以上15μm以下がより好ましく、4μm以上10μm以下が更に好ましい。
(プライマー層)
本開示の転写シートは、転写層にプライマー層を有する。プライマー層は、前述のハードコート層と、後述の基材密着層との間に形成される。プライマー層がハードコート層と基材密着層との間に形成されることにより、転写層を構成する層と層との間の密着性を向上でき、転写層の耐候性及び耐久性を向上できる。
上述のハードコートは、ハードコート層が電離放射線硬化性樹脂の硬化物を含んでおり、また、ハードコート層を形成する際に十分に硬化をさせることから、線膨張係数が比較的小さい傾向がある。
一方、プライマー層は、プライマー層の初期密着性を向上させ、転写層を構成する層と層との間の密着性を向上させるために、Tgを低くする場合があるため、線膨張係数が比較的大きくなる傾向がある。そこで、プライマー層は、その構造をよりリジットにし、線膨張係数を小さくすることで、AHC-Pr及びBHC-Prを小さくし、上記(式1)を満たしやすくできるため、ハードコート層とプライマー層との耐候密着性をより向上しやすくできる。
プライマー層は、転写シートの加工性及び転写層に含有される層と層との間の密着性を向上させるために、硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことが好ましい。
プライマー層に含まれる硬化性樹脂組成物の物硬化物としては、転写層に含有される層と層との間の密着性を向上させるために、熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことが好ましい。
熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも熱硬化性樹脂を含む組成物であり、加熱により、硬化する樹脂組成物である。熱硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ウレタンアクリル樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられ、これらは単独で、又は複数種を組み合わせて使用できる。また、熱硬化性樹脂組成物は、これら樹脂に、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤等の硬化剤を添加したものであってもよい。
プライマー層に含まれる熱硬化性樹脂組成物の硬化物としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂又はウレタンアクリル樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物の硬化物がより好ましく、ウレタンアクリル樹脂を含むことがより好ましい。また、プライマー層に含まれる熱硬化性樹脂組成物の硬化物は、プライマー層に含まれる熱硬化性樹脂組成物の硬化物の構造をよりリジットにするために、イソシアネート系硬化剤又はエポキシ系硬化剤架橋剤を含むことが好ましく、イソシアネート系硬化剤を含むことがより好ましい。
また、プライマー層がウレタンアクリル樹脂を含む場合、ウレタンアクリル樹脂は、アクリルウレタン共重合体であることが好ましく、ポリカーボネート系アクリルウレタン共重合体であることが好ましい。
プライマー層がポリカーボネート系アクリルウレタン共重合体を含むことによって、転写層を構成する層と層との間の密着性を向上しやすくでき、転写層の耐候性及び耐久性を向上しやすくなる。また、プライマー層の構造をよりリジットにし易くでき、線膨張係数を小さくしやすくできるため、上記(式1)及び(式2)を満たしやすくできる。
ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体は、ポリカーボネートジオールと(ジ)イソシアネートを反応させて得られるポリカーボネート系ポリウレタン高分子を、ラジカル重合開始剤として使用して、アクリルモノマーをラジカル重合させて得られる樹脂である。
(ジ)イソシアネートとしては、例えば、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、n-イソシアネートフェニルスルホニルイソシアネート、o-イソシアネートフェニルスルホニルイソシアネート、p-イソシアネートフェニルスルホニルイソシアネート等の芳香族イソシアネート;1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式イソシアネート、及びこれらの付加体、多量体等を、単独で又は2種以上を併用できる。これらの中でも、転写層の耐候密着性を向上させるため、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式イソシアネートを用いることが好ましい。
アクリルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上を併
用できる。
本開示において、プライマー層がポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体を含む場合、ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体のウレタン成分とアクリル成分の質量比[ウレタン成分]/[アクリル成分]は、75/25以上95/5以下が好ましく、80/20以上90/10以下がより好ましい。
本開示において、プライマー層がポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体を含む場合、プライマー層の熱膨張係数は、ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体のウレタン成分とアクリル成分の質量比[ウレタン成分]/[アクリル成分]で調整をすることができる。
ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体の[ウレタン成分]/[アクリル成分]を大きくすることで、ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体のウレタン成分の割合を多くすることができることから、ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体中のウレタン結合及びポリカーボネートジオールに由来するポリカーボネート構造を多くすることができる。そのため、ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体の構造がよりリジットになり、温度変化に対する体積の変化量が小さくなることから、プライマー層の低温域及び高温域における線膨張係数を小さくすることができる。
プライマー層の厚みは、転写シートの加工特性並びに転写層の耐候密着性を向上させるために、2μm以上10μm以下が好ましく、3μm以上8μm以下がより好ましく、3μm以上5μm以下が更に好ましい。
(基材密着層)
基材密着層は、転写シートの転写層を構成する層において、基材と接する層であり、例えば基材との密着性を向上させるために形成される。
基材密着層の線膨張係数は、基材密着層のガラス転移温度により、調整することができる。基材密着層のガラス転移温度を大きくすることにより、温度上昇に伴う基材密着層の変形を抑止しやすくなるため、線膨張係数を小さくしやすくできる。
基材密着層としては、感圧接着層、硬化系の接着層及び感熱接着層のいずれかであってもよく、この中でも、転写シートの加工性及び転写シートの転写層と基材との密着性を向上させるために、感熱接着層であることが好ましい。
基材密着層が感圧接着層の場合、接着層に粘着剤を含むことが好ましい。
粘着剤としては、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、ゴム系等の粘着剤を適宜選択して使用できる。
基材密着層が硬化系の接着層の場合、接着層に熱硬化性接着剤を含むことが好ましい。
熱硬化型接着剤としては、熱によって化学反応が生じて架橋する性質を有する組成物を含むものが好ましく、例えば、2液硬化型ウレタン系接着剤、ポリエステルウレタン系接着剤、ポリエーテルウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリ酢酸ビニル系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤等を例示できる。なお、2液硬化型ウレタン系接着剤を構成するウレタン系樹脂は、ポリオール(多価アルコール)を主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするポリウレタンである。
基材密着層が感熱接着層の場合、接着層に熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、スチレン-アクリル共重合、ポリエステル樹脂、アミド樹脂、シアノアクリレート樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて使用できる。この中でも、転写シートを用いた部材を形成時の加工性及び転写シートの転写層と基材との密着性を向上させるために、アクリル樹脂を用いることが好ましい。
前記熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、10,000以上200,000以下が好ましく、50,000以上150、000以下が好ましく、80,000以上120,000以下がより好ましい。前記熱可塑性樹脂組成物の重量平均分子量が前記の範囲内であると、コーティング適性が良好になり、基材密着層を良好な状態で形成しやすくなる。更に、本開示の転写シートを用いて部材を製造する際、基材密着層と基材との密着性を向上しやすくなり、部材の耐久性を向上しやすくできる。
基材密着層の厚みは、2μm以上10μm以下が好ましく、3μm以上8μm以下がより好ましく、3μm以上5μm以下が更に好ましい。基材密着層の厚みが上記範囲内であると、部材を形成時、基材密着層と基材との密着性を良好にしやすくできる。
本開示の転写シートは、基材密着層に着色剤を含むことが好ましい。
基材密着層が着色剤を含むことにより、転写シートの転写層に意匠性を付与できる。
着色剤としては、特に制限は無く、例えば、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、ニッケルアゾ錯体、フタロシアニンブルー、アゾメチンアゾブラック等の有機顔料又は染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片等の金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片等の真珠光沢(パール)顔料;等が挙げられる。
着色剤の含有量は、基材密着層を構成する樹脂100質量部に対して、5質量部以上90質量部以下が好ましく、15質量部以上80質量部以下がより好ましく、20質量部以上70質量部以下が更に好ましい。
着色剤の含有量が5質量部以上であることにより、転写シートの転写層に、意匠性を付与しやすくできる。また、着色剤の含有量が90質量部以下であることにより、着色剤を添加したことによる基材密着層と基材との密着性の低下を抑制しやすくでき、部材を形成した際、より耐久性のある転写層を形成しやすくできる。
(第2剥離フィルム)
本開示の転写シートは、基材密着層の剥離フィルムとは反対側の面上に、更に第2剥離フィルムを有してもよい。特に基材密着層が感圧接着層の場合、本開示の転写シートが第2剥離フィルムを有することにより、転写シートを作製時にロール状に巻き取った際にブロッキングを防ぎやすくしたり、転写シートが不用意に他の物体に貼りつくことを防ぎやすくしたりできる。
剥離フィルムと転写層との剥離強度をP1、第2剥離フィルムと基材密着層との間の剥離強度をP2と定義した際に、P2<P1であることが好ましい。P2<P1であることにより、剥離フィルムよりも先に第2剥離フィルムを剥離しやすくできる。
なお、本明細書において、剥離強度は、JIS Z 0237:2009の180度剥離試験に準拠して測定できる。
第2剥離フィルムは、基材密着層と剥離可能であれば特に制限されることなく、プラスチックフィルムが好適に用いられる。
第2剥離フィルムとして用いるプラスチックフィルムとしては、上述の剥離フィルムで例示したものと同様のものを使用できる。例示したプラスチックフィルムの中でも、転写シートの取り扱い性を向上させるために、ポリエステル系フィルムを用いることが好ましく、ポリエステル系フィルムの中でもポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることが特に好ましい。
第2剥離フィルムは、基材密着層と接する表面が、剥離剤等で剥離処理されていることが好ましい。剥離剤としては、フッ素系離型剤及びシリコーン系離型剤等の公知の離型剤を使用できる。第2剥離フィルムが離型剤等で剥離処理されていることにより、剥離強度P1と剥離強度P2の関係をP2<P1にしやすくできる。
第2剥離フィルムの厚みは特に限定されないが、転写シートの取り扱い性を向上させるために、10μm以上200μm以下であることが好ましく、15μm以上150μm以下であることがより好ましく、20μm以上100μm以下であることが更に好ましい。
<転写シートの製造方法>
本開示の転写シートの製造方法は、ハードコート層形成工程、プライマー層形成工程及び基材密着層形成工程を少なくとも有する。
(ハードコート層形成工程)
ハードコート層形成工程は、剥離フィルム上にハードコート層を形成する工程である。ハードコート層の形成方法としては、ハードコート層を形成する組成物を、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法等の公知の方式で塗布し、必要に応じて、乾燥させ、電子線等の電離放射線を照射し硬化することによって形成できる。
また、後述のプライマー層形成工程にてプライマー層を形成する前に、ハードコート層とプライマー層との密着性を向上させるため、形成したハードコート層の表面にコロナ処理をすることが好ましい。
(プライマー層形成工程)
プライマー層形成工程は、ハードコート層形成工程で形成したハードコート層上にプライマー層を形成する工程である。プライマー層の形成方法としては、プライマー層を形成する組成物を、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法等の公知の方式で塗布し、必要に応じて、乾燥、硬化することによって形成できる。
(基材密着層形成工程)
基材密着層形成工程は、プライマー層形成工程で形成したプライマー層上に基材密着層を形成する工程である。基材密着層の形成方法としては、基材密着層を形成する組成物を、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法等の公知の方式で塗布し、必要に応じて、乾燥、硬化することによって形成できる。
(第2の剥離フィルム形成工程)
第2の剥離フィルム形成工程は、上述の基材密着層上に第2の剥離フィルムを形成する工程であり、例えば公知のラミネート法で積層することができる。
また、第2の剥離フィルム形成工程の前に、第2の剥離フィルムの一方の面上を剥離処理する工程を含んでもよい。前記剥離処理をする方法は公知の塗布方法を用いることができ、例えばグラビアコートにより処理できる。
<部材の製造方法>
本開示の転写シートを用い、転写シートの転写層を基材に転写することによって、本開示の転写シート用いた部材を製造できる。
(基材)
基材については、特に限定されることなく、樹脂、紙、不織布又は織布、木材、金属、非金属無機材料等を途に応じて適宜選択できる。
また、樹脂を基材として用いる場合には、転写シートの転写層と基材との密着性を向上させるために、所望により、片面又は両面に酸化法及びや凹凸化法等の物理的又は化学的表面処理を施すことができる。また、鋼板に用いられる金属としては、鉄、アルミニウム、銅等の金属材料が挙げられ、これらは溶融亜鉛めっき処理及び電気亜鉛めっき処理等の表面処理が施されていてもよい。
基材の形状は特に限定されることなく、シート形状等の平板状のものであってもよく、また、曲面板、多角柱等の三次元形状の有するものであってもよい。
本開示の部材の製造方法は、少なくとも下記(1)及び(2)の工程を順に有する。
(1)上述した本開示の転写シートの転写層側の面と基材とを密着させる工程。
(2)密着させた前記転写シート及び基材から、前記転写シートの剥離フィルムを剥離する工程。
上記(1)の工程の一実施形態としては、例えば、下記(a1)及び(a2)の工程を順に有する、ラミネート法による方法が挙げられる。
(a1)平板上の基材上に、上述の転写シートの転写層側の面を接し、重ね合わせる工程。
(a2)転写シートの剥離フィルム側から加熱及び加圧し、前記平板上の基材と前記転写シートの転写層とを密着させる工程。
工程(a1)及び(a2)は、ロール転写装置等により加熱及び加圧を併用したラミネート法により実施できる。
工程(a2)において、ロール転写装置のラミロール温度は、200℃以下が好ましく、180℃以下がより好ましい。ラミロール温度を200℃以下とすることによって、転写シートの転写層が必要以上に軟化することを防ぎやすくなり、転写層を良好な状態で基材に転写できる。また、工程(a2)におけるロール転写装置のラミロール温度の下限値は、転写シートの転写層と基材とが密着されれば特に制限はされないが、通常は100℃以上であり、110℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましい。
また、上記(1)の他の実施形態としては、例えば、下記(z1)~(z4)の工程を順に要する、インモールド成形による方法が挙げられる。
(z1)上述の転写シートの転写層側をインモールド成形用金型の内側に向けて配置する工程。
(z2)前記インモールド成形用金型内に樹脂を射出注入する工程。
(z3)前記転写シートと、前記樹脂とを一体化させて、前記転写シートの転写層と前記樹脂とを密着させ、樹脂成形体を形成する工程。
(z4)前記樹脂成形体を前記インモールド成形用金型から取り出す工程。
また、上述した転写シートの基材密着層が硬化系の接着層の場合、上記(2)の工程の後、基材密着層の硬化を進行させるために、下記(3)の工程を有することが好ましい。
(3)一定の温度下で所定時間エージングを行う工程。
エージングの温度条件は、70℃以下であることが好ましく、65℃以下であることが好ましい。70℃以下にすることで、基材密着層等の硬化反応が緩やかに進み、硬化反応に伴う急激な収縮を防ぐことができる。また、エージングの温度条件の下限値は、基材密着層等の構成により異なるが、基材密着層内に含まれる熱硬化性樹脂組成物等の硬化反応を促進させるために、通常は40℃以上である。
また、エージングの時間は、基材密着層等の構成、又はエージングの温度条件により異なるが、通常は12時間以上であり、18時間以上が好ましく、24時間以上がより好ましく、36時間以上が更に好ましい。
また、上述した転写シートが、基材密着層の剥離フィルム側とは反対側の面に第2剥離フィルムを有する場合、上記(1)の工程の前に、下記(0)の工程を有することが好ましい。
(0)上述の転写シートから、第2剥離フィルムを剥離し、基材密着層を露出させる工程。
[部材]
本開示の部材は、基材上に転写層を有する部材であり、前記転写層は、基材側から、少なくとも基材密着層、プライマー層及びハードコート層をこの順に有し、前記ハードコート層が電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含み、温度領域が40℃~50℃における前記ハードコート層の線形膨張係数と前記プライマー層の線形膨張係数との差の絶対値をAHC-Pr、温度領域が70℃~80℃における前記ハードコート層の線形膨張係数と前記プライマー層の線形膨張係数との差をBHC-Prとした時に、上記(式1)を満たすことを特徴としている。
図2は、本開示の部材の一実施形態を示す断面図である。図2の部材20は、基材5上に転写層11を有する。転写層11は基材5に接する側から順に、基材密着層4、プライマー層3及びハードコート層2を有している。また、図2には図示されていないが、部材20の転写層11は必要に応じ、更にその他の機能層を有してもよい。
本開示の部材は、上記(式1)を満たすことから、屋外のような、急激な温度変化を伴う環境下においても、ハードコート層の変形と、プライマー層の変形との差が小さいため、当該層間の密着性の低下を防ぐことができ、特に特に屋外で用いた際の耐候密着性を向上できる。
また、本開示の部材は、上記(式2)を満たすことが好ましい。上記(式2)を満たすことで、屋外のような、急激な温度変化を伴う環境下でも、プライマー層の変形と、基材密着層の変形との差が小さいため、当該層間の密着性の低下を防ぐことができ、特に屋外で用いた際の耐候密着性を向上できる。
以下に、実施例により本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。各性状値は、次の方法により、測定、評価した。
1.測定及び評価方法
1-1.線膨張係数の測定
実施例及び比較例で用いたハードコート層形成用液、プライマー層形成用液及び基材密着層形成用液を、それぞれ離型PETの離型面側に塗布し、ハードコート層、プライマー層及び基材密着層の単層膜(厚さ20μm)を作製した。次いで、前記単層膜を切り出し、長さ10mm、幅5mm、厚さ20μmの線膨張係数測定用サンプルを作製した。
作製したそれぞれの線膨張係数測定用サンプルを、熱機械分析装置(TMA-60、株式会社島津製作所製)にセットし、下記の条件で線膨張係数を測定した。測定結果は、表1にまとめた。
<測定条件>
・雰囲気ガス:窒素
・荷重:2g/5mm
・測定モード:引張
・温度プログラム
Step1:昇温温度10℃/minで30℃まで昇温後、30℃で10分間保持。
Step2:昇温温度5℃/minで100℃まで昇温後、100℃で1分間保持。
Step3:-30℃/minで0℃まで冷却。
また、上記線膨張係数の測定結果から、下記の値並びにBHC-Pr-AHC-Pr及びBPr-S-APr-Sを求め、表1にまとめた。
・AHC-Pr:温度領域が40℃~50℃におけるハードコート層の線形膨張係数とプライマー層の線形膨張係数との差の絶対値
・BHC-Pr:温度領域が70℃~80℃におけるハードコート層の線形膨張係数とプライマー層の線形膨張係数との差の絶対値
・APr-S:温度領域が40℃~50℃におけるプライマー層の線形膨張係数と基材密着層の線形膨張係数との差の絶対値
・BPr-S:温度領域が70℃~80℃におけるプライマー層の線形膨張係数と基材密着層の線形膨張係数との差の絶対値
1-2.耐候密着性の評価
実施例及び比較例の部材に対して、メタルハライドランプ(MWOM)による促進耐候試験(下記の照射条件で20時間紫外線を照射した後、下記の結露条件で4時間結露を行う工程を1サイクルとして、前記サイクルを繰り返し行う試験)を最大で900時間実施した。
100時間ごとに、測定サンプルを取り出し、粘着テープ(「セロテープ(登録商標)」、ニチバン株式会社製)を、部材の端部から5cm程はみ出るようにし、2.5cm×2.5cmの面積で貼り付けた。その後、貼り付けた粘着テープのはみ出た部分をつまみ、部材の表面に対し45°の方向に粘着テープを剥がすことで、ハードコート層とプライマー層との間の密着性を確認し、下記の評価基準で密着性を評価した。評価結果は表1にまとめる。
<促進耐候試験の条件>
(試験装置)
ダイプラ・ウィンテス社製、商品名「ダイプラ・メタルウェザー」
(照射条件)
照度:65mW/cm、ブラックパネル温度:63℃、槽内湿度:50%RH、時間:20時間
(結露条件)
照度:0mW/cm、槽内湿度:98%RH、時間:4時間
<評価基準>
A:促進耐候試験を900時間行った後でも、ハードコート層とプライマー層との間で剥離は生じなかった。
B:促進耐候試験を900時間未満で、ハードコート層とプライマー層との間で剥離が生じた。
2.転写シート及び部材の作製
[実施例1]
離型フィルムとして、厚さ25μmの離型PETフィルム(「E5001」、東洋紡株式会社製)を用意した。離型フィルムの離型処理がされた面上に、下記のハードコート層形成用液1を、乾燥後の塗工量が5g/mとなるように塗布し、70℃、1分で乾燥後、電子線(加圧電圧:175keV、5Mrad(50kGy))を照射し、厚さ5μmのハードコート層を形成した。更に形成したハードコート層の面側に、90kWでコロナ処理を行った。
<ハードコート層形成用液1>
・ウレタンアクリレート:100質量部
(2官能カプロラクトン変性ウレタンアクリレート/多官能ウレタンアクリレート=50/50(質量比))
・紫外線吸収剤:1質量部
(製品名:Tinuvin479、BASF社製)
・光安定剤:3質量部
(製品名:LS-3410、日本乳化剤株式会社製)
・ナノシリカ:2質量部
・非反応シリコーン:0.3質量部
・溶剤:適量
(メチルエチルケトン)
次いで、形成したハードコート層上に、下記のプライマー層形成用液1を、乾燥後の塗工量が3g/mとなるように塗布し、70℃、1分で乾燥させ、厚さ3μmのプライマー層を形成した。
<プライマー層形成用液1>
・ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体:100質量部
(ウレタン成分/アクリル成分=90/10(質量比))
・紫外線吸収剤:35質量部
(「Tinuvin479」(BASF社製)20質量部、「Tinuvin400」(BASF社製)15質量部)
・光安定剤:3.5質量部
(「Tinuvin123」(BASF社製))
・シリカ:5質量部
・ヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤:6質量部
・溶剤:適量
(メチルエチルケトン)
次いで、形成したプライマー層上に、下記の基材密着層として、アクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート、製品名:TMR-600、大日精化株式会社製)を、乾燥後の塗工量が5g/mとなるように塗布し、70℃、1分で乾燥させ、厚さ5μmのヒートシール性を有する基材密着層を形成した。その後、50℃、2日間の条件で養生し、実施例1の転写シートを得た。
次いで、基材として厚さ2mmのポリカーボネート板(「カーボグラス/ポリッシュ」、AGC株式会社製)を用意し、基材の一方の面と、上記で得られた転写シートの基材密着層とを対向させて積層させた。その後、ラミネーター(デスクトップロールラミネーターB316A3、アコ・ブランズ・ジャパン社製)を用い、ラミロール温度160℃、搬送速度2m/minの条件で、転写シート側から加熱及び加圧し、基材と転写シートの転写層を密着させ、密着させた転写シートから剥離フィルムを剥離し、実施例1の部材を得た。
[実施例2]
下記のハードコート層形成用液2を用いてハードコート層を形成した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の転写シート及び部材を得た。
<ハードコート層形成用液2>
・ウレタンアクリレート:100質量部
(2官能カプロラクトン変性ウレタンアクリレート/低官能ウレタンアクリレート=50/50(質量比))
・紫外線吸収剤:1質量部
(「Tinuvin479」(BASF社製))
・光安定剤:3質量部
(「LS-3410」(日本乳化剤株式会社製))
・ナノシリカ:2質量部
・非反応シリコーン:0.3質量部
・溶剤:適量
(メチルエチルケトン)
[実施例3]
下記のハードコート層形成用液3を用いてハードコート層を形成した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の転写シート及び部材を得た。
<ハードコート層形成用液3>
・ウレタンアクリレート:100質量部
(3官能カプロラクトン変性ウレタンアクリレート/3官能ウレタンアクリレート=70/30(質量比))
・紫外線吸収剤:4質量部
(「Tinuvin479」(BASF社製)3質量部、「Tinuvin477」(BASF社製)0.5質量部、「LA-46」(株式会社ADEKA製)0.5質量部)
・光安定剤:3質量部
(「LS-3410」(日本乳化剤株式会社製))
・溶剤:適量
(メチルエチルケトン)
[比較例1]
下記のプライマー層形成用液2を用いてプライマー層を形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の転写シート及び部材を得た。
<プライマー層形成用液2>
・ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体:100質量部
(ウレタン成分/アクリル成分=70/30(質量比))
・紫外線吸収剤:35質量部
(「Tinuvin479」(BASF社製)20質量部、「Tinuvin400」(BASF社製)15質量部)
・光安定剤:3.5質量部
(「Tinuvin123」(BASF社製))
・シリカ:5質量部
・ヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤:6質量部
・溶剤:適量
(メチルエチルケトン)
[比較例2]
上記のプライマー層形成用液2を用いてプライマー層を形成した以外は、実施例2と同様にして、比較例2の転写シート及び部材を得た。
[比較例3]
上記のプライマー層形成用液2を用いてプライマー層を形成した以外は、実施例3と同様にして、比較例3の転写シート及び部材を得た。
Figure 2023035044000002
表1より、BHC-Pr-AHC-Pr≦5.0×10-4/℃の関係を満たす実施例1~3は、耐候密着性に優れることから、本開示の転写シート及び部材を、特に外装用の部材等に用いた場合でも、転写層を構成する各層同士の密着性が低下することを十分に防ぐことができることが確認できる。
一方、比較例1~3は、BHC-Pr-AHC-Prが5.0×10-4/℃よりも大きな値となることから、特にハードコート層とプライマー層との間の密着性を十分に向上させる子tができないため、耐候密着性は劣る結果となった。
本開示の転写シートは、優れた耐候密着性を有するため、壁、天井、床等の建築物の内装用部材又は外壁、屋根、軒天井、柵、門扉等の外装用部材、窓枠、玄関ドア等の各種扉、手すり、幅木、廻り縁、窓枠、扉枠、モール等の建具又は造作部材の他、箪笥、棚、机等の一般家具、食卓、流し台等の厨房家具、又は弱電製品、OA機器等のキャビネットの表面化粧板、車両の内装用部材又は外装用部材として好適に用いられる。また、本開示の転写シートを用いた部材は、上記の各種部材、中でも直射日光に晒される環境で用いられる部材として好適に用いられる。
1 剥離フィルム
2 ハードコート層
3 プライマー層
4 基材密着層
5 基材
10 転写シート
11 転写層
20 部材

Claims (10)

  1. 剥離フィルム上に転写層を有し、
    前記転写層は、剥離フィルム側から、ハードコート層、プライマー層及び基材密着層をこの順に有し、
    前記ハードコート層が電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含み、
    温度領域が40℃~50℃における前記ハードコート層の線形膨張係数と前記プライマー層の線形膨張係数との差の絶対値をAHC-Pr、温度領域が70℃~80℃における前記ハードコート層の線形膨張係数と前記プライマー層の線形膨張係数との差の絶対値をBHC-Prとした時に、下記(式1)を満たす、転写シート。
    HC-Pr-AHC-Pr≦5.0×10-4/℃ (式1)
  2. 前記BHC-Prが、7.0×10-4/℃以下である、請求項1に記載の転写シート。
  3. 温度領域が40℃~50℃における前記プライマー層の線形膨張係数と前記基材密着層の線形膨張係数との差の絶対値をAPr-S、温度領域が70℃~80℃における前記プライマー層の線形膨張係数と前記基材密着層の線形膨張係数との差の絶対値をBPr-Sとした時に、下記(式2)を満たす、請求項1又は2に記載の転写シート。
    Pr-S-APr-S≦6.0×10-4/℃ (式2)
  4. 前記BPr-Sが、7.5×10-4/℃以下である、請求項3に記載の転写シート。
  5. 前記プライマー層が、ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体を含む、請求項1~4のいずれかに記載の転写シート。
  6. 前記ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体のウレタン成分とアクリル成分の質量比[ウレタン成分]/[アクリル成分]が、75/25以上95/5以下である、請求項5に記載の転写シート。
  7. 前記電離放射線硬化性樹脂組成物がカプロラクトン系ウレタンアクリレートを含む、請求項1~6のいずれかに記載の転写シート。
  8. 下記(1)及び(2)の工程を順に有する、部材の製造方法。
    (1)請求項1~7のいずれかに記載の転写シートの転写層側の面と基材とを密着させる工程。
    (2)密着させた前記転写シート及び基材から、前記転写シートの剥離フィルムを剥離する工程。
  9. 基材上に転写層を有する部材であり、
    前記転写層は、基材側から、基材密着層、プライマー層及びハードコート層をこの順に有し、
    前記ハードコート層が電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含み、
    温度領域が40℃~50℃における前記ハードコート層の線形膨張係数と前記プライマー層の線形膨張係数との差の絶対値をAHC-Pr、温度領域が70℃~80℃における前記ハードコート層の線形膨張係数と前記プライマー層の線形膨張係数との差をBHC-Prとした時に、下記(式1)を満たす、部材。
    HC-Pr-AHC-Pr≦5.0×10-4/℃ (式1)
  10. 温度領域が40℃~50℃における前記プライマー層の線形膨張係数と前記基材密着層の線形膨張係数との差の絶対値をAPr-S、温度領域が70℃~80℃における前記プライマー層の線形膨張係数と前記基材密着層の線形膨張係数との差の絶対値をBPr-Sとした時に、下記(式2)を満たす、請求項9に記載の部材。
    Pr-S-APr-S≦5.0×10-4/℃ (式2)
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