JP6060566B2 - 積層フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、熱可塑性樹脂フィルム、特にポリエステルフィルムに樹脂層が積層された積層フィルムに関する。さらに詳しくはポリエステルフィルムの製膜や搬送工程中で発生するフィルム表面への擦り傷を抑制し、加熱処理を伴う加工工程でポリエステルフィルムから析出するオリゴマーを抑制し、且つハードコートやインク等の各種被覆物との接着性に優れた易接着フィルムに関するものである。
熱可塑性樹脂フィルム、中でも二軸延伸ポリエステルフィルムは、機械的性質、電気的性質、寸法安定性、透明性、耐薬品性などに優れた性質を有することから磁気記録材料、包装材料などの多くの用途において基材フィルムとして広く使用されている。特に近年、フラットパネルディスプレイ向けの反射防止材料やタッチパネル関係の表示材料をはじめとした各種光学用フィルムとしての需要が高まっている。このような用途では、品質に対する要求が著しく高くなっており、各種光学用フィルムには透明性だけでなく、加熱加工時のオリゴマー抑制性や工程搬送時のロールに対する耐傷性、他の材料との易接着性などの要求が求められるようになっている。
しかしながら、従来の二軸延伸ポリエステルフィルムを表示材料をはじめとした各種光学用フィルムに用いた場合は、例えばポリエステルフィルム製造中の搬送工程で搬送ロールとの擦過によりフィルム表面に擦り傷が発生したり、加工工程における熱処理によりポリエステルフィルムからのオリゴマーの析出によってフィルムの白化やフィルム表面の汚染が発生すると、最終製品として実用に適用できないことがあった。
さらに、ポリエステルフィルム上に各種コーティング層を積層させたり、電極材料や光学フィルムを貼り合わせて加工を行う際、積層や貼り合わせする材料との接着性が悪いと、製造工程での剥離や品位の低下が発生し、最終製品として実用に適用できないことがあった。 そのため、これまでもポリエステルフィルムにオリゴマー防止層、粘着層を順次積層させ、オリゴマー析出抑制と易接着機能を目的とした検討がされている(特許文献1)。また熱可塑性樹脂フィルムの製造の工程内で塗布を行うインラインコート法により熱硬化型アクリル樹脂と架橋剤を塗布する方法(特許文献2)、さらに熱開始剤を添加して塗膜硬度の向上を図った方法(特許文献3)や、ポリエステルフィルムを3層構成にすることでオリゴマーの析出を抑制させ、バインダー樹脂と架橋剤からなる塗膜を設け、易滑性を付与する方法(特許文献4)が提案されている。
特開2012−92314号公報 特開2007−131823号公報 特表2008−524402号公報 特開2003−191413号公報
しかしながら、特許文献1のようにポリエステルフィルムにオリゴマー防止層、粘着層を順次積層させる方法では、オリゴマーの析出抑制効果は十分で無く、その他にも次の欠点がある。ポリエステルフィルム上に、オリゴマー防止層、粘着層と順次積層するため、製造工程が複数となり、製品の歩留まりが低下するだけでなく、製造コストが高くなる。また、各工程でそれぞれ塗布や熱処理を必要とするため、製造中にポリエステルフィルム表面へのキズや寸法変化が発生しやすい。またUV硬化性樹脂を使用する際、1μm以下の樹脂層を形成させようとすると空気中では酸素によるラジカル硬化阻害の影響を受けるため、樹脂層が硬化しない欠点がある。さらにUV硬化性樹脂を使用し、1μm以上の樹脂層を形成させた場合、ハンドリング性を向上させるため樹脂層に易滑粒子を添加する方法が用いられるが、易滑粒子は直径1μm以上と粗大なものが必要になるため、樹脂層のヘイズ値が上昇しまい良好な透明性が得られない。
特許文献2、3のように一般的な熱硬化性アクリル樹脂と架橋剤を用いて樹脂層を設ける方法は、樹脂層の硬度が十分でないためフィルム表面へのキズが抑制できず、またオリゴマー析出抑制効果も十分で無い。特許文献4のようにポリエステルフィルムを積層体構成とする方法は、単膜構成よりもオリゴマーの析出を抑制する一定の効果はあるが、その効果は十分ではなく、特に150℃以上の高温熱処理下では効果は得られない。
そこで、本発明では上記の欠点を解消し、樹脂層の厚みが500nm以下と圧倒的に薄く、且つオリゴマー析出抑制性と易接着性に優れた透明樹脂層を有する積層フィルムを提供することを目的とする。
本発明は次の構成からなる。すなわち、
ポリエステルフィルム(P)の少なくとも一面に、樹脂(α)を含む樹脂層(X)が設けられた積層フィルムであって、以下の(1)〜(4)の条件を満たす積層フィルム。
(1)樹脂層(X)の厚みが90〜500nmであること。
(2)樹脂(α)が、水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A)と、メチロール基を有するメラミン化合物(B)、及びカルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有する樹脂(C)を含む樹脂組成物から得られる樹脂であること。
(3)樹脂層(X)において、樹脂(A)とメラミン化合物(B)からなる樹脂成分が、ポリエステルフィルム(P)と接していない樹脂層(X)の表面側から、ポリエステルフィルム(P)と接している界面側に向かって含有量が多く偏在していること。
(4)樹脂層(X)の、ポリエステルフィルム(P)と接していない表面側の表面自由エネルギーが、ポリエステルフィルム(P)と接している界面側の表面自由エネルギーよりも2.0mN/m以上低いこと。
である。
本発明の積層フィルムは、透明且つ加熱処理時に問題となる基材フィルムであるポリエステルフィルムからのオリゴマーの析出を抑制し、ハードコート剤との接着性に優れた効果を奏する。
以下、本発明の積層フィルムについて詳細に説明する。
本発明は、基材フィルムとしてポリエステルフィルム(P)の少なくとも一面に樹脂(α)を含む樹脂層(X)が積層された積層フィルムである。
(1)樹脂層(X)
本発明の積層フィルムの樹脂層(X)は、樹脂層(X)厚みが90nm以上、500nm以下であることが必要である。樹脂層(X)厚みを90nm以上とすることで、オリゴマー析出抑制性を付与が可能となる。樹脂層(X)厚みを500nm以下とすることで積層フィルムの透明性、ハンドリング性が良好となる。
さらに、本発明の積層フィルムは、ヘイズが3.0%以下であることが好ましい。ヘイズを3.0%以下にすることで、例えば透明性が求められるディスプレイ用などの光学用フィルムに好適に用いることができる。例えば、本発明の積層フィルムをディスプレイ用フィルムとして用いた場合、ディスプレイの白濁を抑制することが可能となり、解像度の低下を抑制することができる。
また、本発明の積層フィルムは、ポリエステルフィルム(P)の少なくとも一面に、樹脂(α)を含む樹脂層(X)が設けられることが必要である。なお、樹脂(α)の詳細については後述する。
また、本発明の積層フィルムは、樹脂層(X)中の樹脂(α)と、水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A)、及び、メチロール基を有するメラミン化合物(B)、及びカルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有する樹脂(C)の合計質量が樹脂層(X)全体の75質量%以上であることが好ましい。樹脂層(X)中の樹脂(α)と樹脂(A)、及びメラミン化合物(B)、樹脂(C)の合計含有量を75質量%以上とすることで、オリゴマーの析出を抑制し、ハードコート剤との接着性を付与することができる。
樹脂(α)は、水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A)と、メチロール基を有するメラミン化合物(B)、及びカルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有する樹脂(C)を含む樹脂組成物が加熱されることによって得られる樹脂である。
本発明の積層フィルムにおいて、樹脂層(X)は、樹脂(A)とメラミン化合物(B)からなる樹脂成分を基材であるポリエステルフィルム(P)と接している界面側に、樹脂(C)からなる樹脂成分をポリエステルフィルム(P)と接していない樹脂層(X)の表面側に、濃度に傾斜を持たせて偏在して含有させることで、ポリエステルフィルムからのオリゴマーの析出抑制とハードコート層との良好な接着性を両立することができる。本発明の積層フィルムの樹脂層(X)は、樹脂(A)とメラミン化合物(B)からなる樹脂成分が、ポリエステルフィルム(P)と接していない樹脂層(X)の表面側から、ポリエステルフィルム(P)と接している界面側に向かって偏在した含有量を有していることが必要である。本発明において、樹脂(A)とメラミン化合物(B)からなる樹脂成分が、ポリエステルフィルム(P)と接していない樹脂層(X)の表面側から、ポリエステルフィルム(P)と接している界面側に向かって偏在した含有量を有しているとは、後述する測定方法において、樹脂(A)とメラミン化合物(B)からなる樹脂成分がポリステルフィルムと接していない樹脂層(X)の表面側から樹脂層厚み深さ10%、50%、90%の領域で順次その含有量が多くなっていることを表す。
樹脂(A)とメラミン化合物(B)からなる樹脂成分がポリエステルフィルム(P)と接している界面側に向かって含有量が多く偏在していること、すなわちポリエステルフィルム(P)に接していない樹脂層(X)の表面側に向かって樹脂(C)からなる樹脂成分が偏在し、ポリエステルフィルム(P)に接していない樹脂層(X)の表面近傍に多く含有させることで、各種ハードコート剤との接着性を樹脂層(X)に付与することができる。一方、基材であるポリエステルフィルム(P)と接している界面側に樹脂(A)とメラミン化合物(B)からなる樹脂成分を多く含有するように偏在させることで、ポリエステルフィルムからのオリゴマーの析出を抑制させることができる。
尚、樹脂(A)とメラミン化合物(B)からなる樹脂成分とは、樹脂(A)とメラミン化合物(B)が架橋され、樹脂層(X)中で実質的に式(1)〜(3)の構造を有した成分である。また、樹脂(C)からなる樹脂成分とは、樹脂層(X)中において樹脂(C)がそのまま存在しているか、自己架橋した成分であり、実質的に式(1)〜(3)の構造を有さない成分である。樹脂(C)が樹脂(A)、メラミン化合物(B)と架橋反応して樹脂成分を形成している場合は、本発明では、該樹脂成分は、樹脂(A)とメラミン化合物(B)からなる樹脂成分とみなす。樹脂(C)と、樹脂(A)やメラミン化合物(B)との反応性は、樹脂(A)とメラミン化合物(B)の反応性に比べて極めて低いため、実質的にその質量は無視することができる。
また、本発明の積層フィルムの樹脂層(X)は、ポリエステルフィルム(P)と接していない表面側の表面自由エネルギーが、ポリエステルフィルム(P)と接している界面側の表面自由エネルギーよりも2.0mN/m以上低いことが必要である。樹脂層(X)のポリエステルフィルム(P)と接していない表面の表面自由エネルギーが、ポリエステルフィルム(P)と接している界面側の表面自由エネルギーよりも2.0mN/m以上低くなるように、樹脂(A)とメラミン化合物(B)からなる樹脂成分を偏在して含有させることで、ポリエステルフィルムからのオリゴマーの析出抑制とハードコート層との良好な接着性を両立することができる。
本発明の積層フィルムの樹脂層(X)は、樹脂(A)およびメラミン化合物(B)、メチロール基を有するメラミン化合物(B)、及びカルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有する樹脂(C)を含む樹脂組成物を150℃以上に加熱して形成されることが好ましい。樹脂組成物を150℃以上に加熱することで、樹脂(A)のアクリロイル基同士が反応して、架橋構造が形成されたり、樹脂(A)の水酸基とメラミン化合物(B)のメチロール基が反応して、架橋構造(後述する式(1)で示される構造)が形成されたり、メラミン化合物(B)のメチロール基同士反応して、架橋構造(後述する式(2)で示される構造)が形成されたりして、樹脂(A)とメラミン化合物(B)からなる樹脂成分を形成する。また、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有する樹脂(C)は樹脂(A)よりも疎水的な表面エネルギーを有しているため、ポリエステルフィルム(P)からなる基材フィルム側ではない表層へ偏在して含有する傾向があるが、150℃以上に加熱することで樹脂(C)からなる樹脂成分をより効果的にポリエステルフィルム(P)と接していない樹脂層(X)の表層へ偏在して含有させることができる。
樹脂(A)のアクリロイル基同士、樹脂(A)の水酸基とメラミン化合物(B)のメチロール基、メラミン化合物(B)のメチロール基同士の反応は、反応性が高いため、樹脂(α)は、多くの架橋構造を有する樹脂となる。樹脂(A)の水酸基、アクリロイル基の数、メラミン化合物(B)のメチロール基の数を増やすと、より緻密な架橋構造を形成した樹脂(α)を得ることが可能となる。
つまり、本発明において、樹脂層(X)を形成する樹脂(α)は、アクリロイル基同士の架橋構造を有することが好ましい。また、樹脂層(X)を形成する樹脂(α)は、式(1)で示される水酸基とメチロール基との架橋構造(化学構造)を有することが好ましい。また、樹脂層(X)を形成する樹脂(α)は式(2)で示されるメチロール基同士の架橋構造を有することが好ましい。
Figure 0006060566
Figure 0006060566
このように、樹脂(α)を含む樹脂層(X)は緻密な架橋構造を有するため、加熱した時のオリゴマーの析出を抑制することができ、加えて透明性や樹脂層(X)の硬度を高めることができる。オリゴマーが析出すると、透明性が悪化(ヘイズが上昇)するが、本発明の積層フィルムは、150℃で1時間加熱処理せしめても、ヘイズの変化量を小さくすることが出来る。150℃で1時間加熱処理せしめたときのヘイズの変化量が0.3%以下であると、種々の加熱工程を経ても透明性を維持することができるため好ましい。そのため、本発明の積層フィルムは、加熱され、かつ透明性が求められる用途に好適に供せられる。具体的には、本発明の積層フィルムの上にハードコート層や酸化インジウムスズ(ITO)などの導電層が設けられる用途(例えばタッチパネル用途)に好適に供せられる。これらの用途では、ハードコート層やITOなどの導電層が積層される際に、積層フィルムに高い熱が加えられ、かつ、これらの層が積層された後においても高い透明性が要求されるためである。
本発明の積層フィルムの樹脂層(X)を得る方法としては、水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A)とメチロール基を有するメラミン化合物(B)、及びカルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有する樹脂(C)を含む樹脂組成物から得られる樹脂(α)を含むものであれば特に限定されないが、前記樹脂組成物をポリエステルフィルム(基材フィルム)に塗布し、150℃以上に加熱することによって製造することが好ましい。
(2)樹脂(α)および架橋構造
本発明に用いる樹脂(α)は前述したように、水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A)とメチロール基を有するメラミン化合物(B)、及びカルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有する樹脂(C)を含む樹脂組成物から得られる樹脂である。樹脂(α)について以下に詳しく説明する。
樹脂層(X)のオリゴマーの析出抑制性やハードコート接着性などを向上させるために、樹脂(α)は以下の構造を有することが好ましい。
以下、樹脂(α)において、樹脂(A)とメラミン化合物(B)からなる樹脂成分が有する架橋構造について説明する。樹脂(α)は、アクリロイル基同士の架橋により得られる構造を有することが好ましい。つまり、樹脂層(X)を形成する樹脂は、アクリロイル基同士の架橋により得られる構造を有することが好ましい。かかる架橋構造は、アクリロイル基を有する樹脂(A)を加熱することによって、形成させることができる。
次に、樹脂(α)は式(1)に示す構造を有することが好ましい。
Figure 0006060566
式(1)に示す構造は、水酸基とメチロール基の架橋により得られる構造である。つまり、樹脂層(X)を形成する樹脂は、水酸基とメチロール基の架橋により得られる式(1)の化学構造を有することが好ましい。かかる架橋構造は、水酸基を有する樹脂(A)とメチロール基を有するメラミン化合物(B)を加熱することによって、形成させることができる。樹脂層(X)を形成する樹脂や樹脂(α)が式(1)に示す構造を有することで、樹脂層(X)に高い硬度とオリゴマー析出抑制性を持たせることができる。
さらに、樹脂(α)は式(2)に示す構造を有することが好ましい。
Figure 0006060566
式(2)に示す構造は、メチロール基同士の架橋により得られる構造である。つまり、樹脂層(X)を形成する樹脂は、メチロール基同士の架橋により得られる式(2)の化学構造を有することが好ましい。かかる架橋構造は、メチロール基を有するメラミン化合物(B)を加熱することによって、形成させることができる。樹脂層(X)を形成する樹脂や樹脂(α)は式(2)に示す構造を有することで、樹脂層(X)に高い硬度とオリゴマー析出抑制性を持たせることができる。
加えて、樹脂(α)は式(3)に示す構造を有することが好ましい。
Figure 0006060566
式(3)に示す構造は、ウレタン構造である。かかる構造は、例えば、水酸基とアクリロイル基に加えてウレタン構造を持つ樹脂(A)を用いることなどによって、樹脂(α)に導入することができる。樹脂層(X)を形成する樹脂や樹脂(α)は式(3)に示す構造を有することで、樹脂層(X)に伸縮性や弾性を持たせることができる。樹脂(α)が形成される際、アクリロイル基同士の架橋構造や式(1)および式(2)で示される架橋構造が形成されるが、その際に樹脂層(X)にクラックが発生したり、カールが発生したりすることがある。樹脂層(X)を形成する樹脂や樹脂(α)が式(3)の構造を有することにより、クラックやカールの発生を抑制することができる。
本発明において、樹脂(A)とメラミン化合物(B)、及び樹脂(C)を用いて樹脂(α)を得る場合、樹脂層(X)を形成するための樹脂組成物(樹脂(A)とメラミン化合物(B)、及び樹脂(C)の混合物)において、樹脂(A)とメラミン化合物(B)の合計を100質量部としたとき、樹脂(A)の質量は50質量部以上80質量部以下であることが好ましい。メラミン化合物(B)の質量は20質量部以上50質量部以下であることが好ましい。樹脂(A)の質量を80質量部以下、メラミン化合物(B)の質量を20質量部以上とすることで、樹脂(α)に式(2)の構造を十分に持たせることができる。その結果、オリゴマーの析出を大幅に抑制させることが可能となる。また可撓性、強靭性、耐溶剤性も高まる。一方、樹脂(A)の質量は50質量部以上、メラミン化合物(B)の質量を50質量部以下とすることで、式(2)の構造が形成される際に発生する硬化収縮を抑制することができる。その結果、樹脂層(X)でのクラックの発生が抑制され、オリゴマーの析出を抑制できるだけでなく、積層フィルムのヘイズを下げることができる。
また、樹脂(A)とメラミン化合物(B)の合計を100質量部としたとき、樹脂(C)の質量は、20質量部以上50質量部以下であることが好ましい。樹脂(C)の質量が、20質量部以上であると、ポリエステルフィルム(P)と接していない樹脂層(X)の最表層に偏在した際に、ハードコート剤との接着性を発現することができる。一方、樹脂(C)の質量が、50質量部以下であると、樹脂層(X)形成時に、偏在が効果的に起こり、ハードコート剤との接着性を発現することができる。
(3)水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A)
本発明において用いられる、水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A)とは、少なくとも1つ以上の水酸基と、1つ以上のアクリロイル基を有する樹脂である。本発明において、アクリロイル基はメタクリロイル基を含むものである。また、樹脂層(X)が緻密な架橋構造を形成する点からアクリロイル基は多官能であることが好ましく、アクリロイル基の数が2以上、15以下であることが好ましい。
本発明において、樹脂(A)が水酸基とアクリロイル基を有するとは、樹脂(A)がメラミン化合物(B)と共に加熱することによって、樹脂(A)のアクリロイル基同士、樹脂(A)の水酸基とメラミン化合物(B)のメチロール基と反応して、架橋構造を有する樹脂(α)を形成せしめることができれば、どのような形態で有していても良い。例えば、水酸基を有する重合体とアクリロイル基を有する重合体を有する樹脂でも良く、水酸基とアクリロイル基を繰り返し単位とする重合体を有する樹脂でも良い。中でもアクリル酸エステル化合物及び/又はメタクリル酸エステル化合物(a1)と、水酸基を有するエチレン系不飽和化合物(a2)と、水酸基とアクリロイル基を有する化合物(a3)を用い、これらを重合することによって得られる重合体を有する樹脂であることが好ましい。緻密な架橋構造を形成させる点で、(a1)から形成された炭化水素鎖に(a2)及び(a3)がランダムにグラフト重合されている重合体を有することがより好ましい。これらのモノマー((a1)、(a2)及び(a3))を用いて重合された樹脂(A)は、メラミン化合物(B)と共に加熱することによって、前述した緻密な架橋構造を有する樹脂(α)を形成せしめることができる。以下、化合物(a1)、(a2)及び(a3)について説明する。
アクリル酸エステル化合物及び/又はメタクリル酸エステル化合物(a1):
化合物(a1)は、樹脂(A)の主骨格を形成するモノマーである。化合物(a1)の具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸i−オクチル、アクリル酸t−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸i−オクチル、メタクリル酸t−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸及び/またはメタクリル酸の炭素数1〜18のアルキルエステルやその他、アクリル酸シクロヘキシル等のシクロ炭素数5〜12のシクロアルキルエステル、アクリル酸ベンジル炭素数7〜12のアラルキルエステルなどを挙げることができる。
化合物(a1)、(a2)及び(a3)を用いて、樹脂(A)を重合する場合、化合物(a1)の質量は、(a1)〜(a3)の化合物の質量の合計を100質量部としたときに、55質量部以上、95質量部以下であることが好ましい。化合物(a1)の質量(仕込み量)を上記の数値範囲内とすることで、樹脂(A)を効率よく重合することができる。
水酸基を有するエチレン系不飽和化合物(a2):
化合物(b)は、水酸基を有することが必要である。かかる化合物(a2)をモノマーとして用いることにより、樹脂(A)に水酸基を持たせることができる。
化合物(b)の具体例としては、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシブチル、アクリル酸3−ヒドロキシブチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、2−ヒドロキシプロピルアリルエーテル、2−ヒドロキシブチルアリルエーテル、アリルアルコール、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシブチル、メタクリル酸3−ヒドロキシブチル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、2−ヒドロキシエチルメタアリルエーテル、2−ヒドロキシプロピルメタアリルエーテル、2−ヒドロキシブチルメタアリルエーテルなど分子内に1つ以上の水酸基を含む不飽和化合物が好ましい。また化合物(a2)は、カルボキシル基を有していても良い。
化合物(a1)、(a2)及び(a3)を用いて、樹脂(A)を重合する場合、化合物(a2)の質量は、(a1)〜(a3)の化合物の質量の合計を100質量部としたときに、4質量部以上、30質量部以下であることが好ましい。化合物(b)の質量(仕込み量)を、4質量部以上にすることで、樹脂(A)に十分な量の水酸基を持たせることができる。また、化合物(a2)の質量を30質量部以下とすることで、樹脂(A)を効率よく重合することができる。化合物(a2)の質量が30重量部を超えると、後述する方法によって樹脂組成物を含む塗液を調製する際に、水系溶媒(E)に水分散化または水溶化した樹脂(A)がゲル化したり、凝集したりしてしまい、好適に使用することが困難になる。
多官能アクリロイル基を有する化合物(a3):
本発明において用いられる、化合物(a3)は、多官能アクリロイル基を有することが必要である。本発明において、アクリロイル基はメタクリロイル基を含むものである。かかる化合物(a3)をモノマーとして用いることにより、樹脂(A)にアクリロイル基を持たせることができる。また、化合物(a3)は多官能アクリロイル基以外に分子内にウレタン構造を有することが好ましい。かかる化合物(a3)をモノマーとして用いることにより、樹脂(A)にアクリロイル基とウレタン構造を持たせることができる。
化合物(a3)は、具体的には、多価アルコールと、イソシアネートモノマー及び/又は有機ポリイソシアネートとを反応させて得られる化合物と、水酸基を有するアクリレートモノマー及び/又は水酸基を有するメタクリレートモノマーとを、無溶剤下もしくは有機溶剤下で反応させ合成することで得られるウレタンアクリレート化合物が好ましい。
多価アルコールとしてはアクリルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、エチレングリコール、プロピレングリコールなどが挙げられる。イソシアネートモノマーとしてはトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられ、有機ポリイソシアネートはイソシアネートモノマーから合成されるアダクトタイプ、イソシアヌレートタイプ、ビュレットタイプのポリイソシアネートなどが挙げられる。水酸基を有するアクリレートモノマーとしては、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジアクリレート、ペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートなどが挙げられる。水酸基を有するメタクリレートモノマーとしては、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピルなどが上げられる。また、化合物(a3)には、メチロール基が含有されていてもよい。
化合物(a1)、(a2)及び(a3)を用いて、樹脂(A)を重合する場合、化合物(a3)の質量は、(a1)〜(a3)の化合物の質量の合計を100質量部としたときに、1質量部以上、15質量部以下であることが好ましい。化合物(a3)の質量を1質量部以上にすることで、樹脂(A)に十分な量のアクリロイル基やウレタン構造を持たせることができる。
一方、化合物(a3)の質量が15質量部を超えると、以下の現象が起こることがあり、好ましくない。すなわち、樹脂(A)が過剰な量のアクリロイル基を有するので、樹脂(α)を得るためにこれを熱すると、アクリロイル基同士の架橋構造が非常に多く形成される。その結果、著しい硬化収縮が引き起こされ、樹脂層(X)にクラックが発生することがある。また、樹脂(α)を得るために樹脂(A)を熱しても、樹脂(α)の硬度を十分に高めることができず、樹脂層(X)の硬度に劣ることがある。
(4)水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A)の製造方法
本発明において用いられる樹脂(A)の製造方法としては、特に限定されることなく公知の技術を適用することができるが、モノマーとして、化合物(a1)、(a2)及び(a3)を用いることが好ましい。さらに、樹脂(A)の製造方法としては、化合物(a1)、(a2)及び(a3)を用いて水系溶媒(E)中で乳化重合により製造することが好ましい。水系溶媒(E)を用いることで、水系溶媒(E)を用いた樹脂組成物を含む塗液の調整が容易となる。また乳化重合により樹脂(A)を製造することで、樹脂(A)の機械的分散安定性が優れるので好ましい。
本発明で用いられる乳化剤は、特に限定されずに用いることができ、アニオン系乳化剤、及びノニオン系乳化剤のいずれの乳化剤でも良く、単独または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
アニオン系乳化剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウムなどの高級脂肪酸塩類やドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルアリールスルホン酸塩類、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸エステル塩類などが挙げられる。またノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類やポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル類などが挙げられる。
乳化重合に際しては、通常、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩類、t-ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、p-メンタンヒドロパーオキシドなどの有機過酸化物類、過酸化水素などの重合開始剤が使用される。これら重合開始剤も1種又は複数種併用のいずれの態様でも利用できる。
また乳化重合に際して、所望により重合開始剤とともに還元剤を併用することができる。このような還元剤としては、例えば、アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖、ホルムアルデヒドスルホキシラート金属塩等の還元性有機化合物;チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸アンモニウム等の還元性無機化合物などが使用できる。
更に、乳化重合に際しては連鎖移動剤を使用することができる。このような連鎖移
動剤としては、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-ブチルメルカプタン、2-エチルヘキシルチオグリコレート、2-メルカプトエタノール、トリクロロブロモメタン等を挙げることができる。本発明の樹脂(A)の乳化重合において好適に採用される重合温度は約30〜100℃である。
(5)メチロール基を有するメラミン化合物(B)
本発明で用いることのできるメラミン化合物(B)は、1分子中にトリアジン環、及びメチロール基をそれぞれ1つ以上有している必要がある。かかるメラミン化合物(B)を用いることで、樹脂(α)に式(2)に示したメチロール基同士の架橋構造を持たせることができる。
このメラミン化合物(B)は、具体的には、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロールメラミン誘導体に、低級アルコールとしてメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等を脱水縮合反応させてエーテル化した化合物などが好ましい。
メチロール化メラミン誘導体としては、例えばモノメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミンを挙げることができる。
(6)カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有する樹脂(C):
本発明において、樹脂(α)は、樹脂(A)およびメラミン化合物(B)以外に、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、から選ばれる少なくとも1つの官能基を有する樹脂(C)を含有している。樹脂(C)は樹脂(A)の表面自由エネルギーよりも4.0mN/m以上低いことが好ましい。樹脂(C)の表面自由エネルギーを樹脂(A)の表面自由エネルギーよりも4.0mN/m以上低くにすることで、樹脂(C)からなる樹脂成分が樹脂層(X)最表層への偏在が促進され、本発明に用いる樹脂組成物から樹脂層(X)を形成させた時に、樹脂層(X)のポリエステルフィルム(P)と接していない表面側のの表面自由エネルギーが、ポリエステルフィルム(P)と接している界面側の表面自由エネルギーよりも2.0mN/m以上低くすることが可能となり、ポリエステルフィルム(P)からのオリゴマーの析出抑制とハードコート剤との良好な接着性を両立することができる。
本発明において、樹脂(C)はカルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有し、樹脂(A)とメラミン化合物(B)と共に加熱することによって樹脂(α)を形成せしめることができれば、どのような形態で有していても良い。例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、から選ばれる少なくとも1つの官能基を有したアクリル樹脂やポリエステル樹脂でも良い。中でもアクリル酸エステル化合物及び/又はメタクリル酸エステル化合物(c1)と、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有した不飽和化合物(c2)と、Nメチロールアクリルアミド化合物(c3)を用い、これらを重合することによって得られる重合体を有する樹脂であることが好ましい。カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基から選ばれる少なくとも1つの官能基を樹脂(C)にランダムに重合させる点で、(c1)から形成された炭化水素鎖に(c2)及び(c3)がランダムにグラフト重合されている重合体を有することがより好ましい。これらのモノマー((c1)、(c2)及び(c3))を用いて重合された樹脂(C)は、樹脂(A)とメラミン化合物(B)と共に加熱することによって、前述した樹脂(α)を形成せしめることができる。以下、好ましい形態である化合物(c1)、(c2)及び(c3)について説明する。
アクリル酸エステル化合物及び/又はメタクリル酸エステル化合物(c1):
化合物(c1)は、樹脂(C)の主骨格を形成するモノマーであり、化合物(c1)は樹脂(A)の主骨格を有する化合物(a1)と同一である。
化合物(c1)、(c2)及び(c3)を用いて、樹脂(C)を重合する場合、化合物(c1)の質量は、(c1)〜(c3)の化合物の質量の合計を100質量部としたときに、80質量部以上、98質量部以下であることが好ましい。化合物(c1)の質量(仕込み量)を上記の数値範囲内とすることで、樹脂(C)の表面自由エネルギーを樹脂(A)の表面自由エネルギーよりも4.0mN/m以上低くすることができ、また樹脂(C)を効率よく重合することができる。
カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、から選ばれる少なくとも1つの官能基を有した不飽和化合物(c2):
樹脂(C)は、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有することが必要である。かかる化合物(c2)をモノマーとして用いることにより、樹脂(C)に各種ハードコート剤との接着性を付与することができる。
カルボキシル基を有する化合物としては、分子内に1つ以上のカルボキシル基を含む不飽和化合物であれば特に限定はされないが、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸などを挙げることができる。
スルホン酸基を有する化合物としては、例えば、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸などあるいはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩を用いることができるが、これに限定されるものではない。
アミノ基を有する化合物としては、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸ブチルアミノエチル、メタクリル酸アミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ブチルアミノエチルなどのアミノアルキルエステル類やアミノエチルアクリルアミド、ジメチルアミノメチルアクリルアミド、メチルアミノプロピルアクリルアミド、アミノエチルメタクリルアミド、ジメチルアミノメチルメタクリルアミド、メチルアミノプロピルメタクリルアミド等のカルボン酸アミノアルキルアミド類などが挙げられる。
化合物(c1)、(c2)及び(c3)を用いて、樹脂(C)を重合する場合、化合物(c2)の質量は、(c1)〜(c3)の化合物の質量の合計を100質量部としたときに、1質量部以上、10質量部以下であることが好ましい。化合物(c2)の質量(仕込み量)を、1質量部以上にすることで、樹脂(C)は各種ハードコート剤との接着が可能となる。また、化合物(c22)の質量を10質量部以下とすることで、樹脂(A)よりも表面自由エネルギーを4.0mN/m以上低くすることができ、樹脂(α)中で樹脂(C)からなる樹脂成分をポリエステルフィルム(P)と接していない樹脂層(X)の表面側へ偏在させることができる。また化合物(a2)の質量が10重量部を超えると、後述する方法によって樹脂組成物を含む塗液を調製する際に、水系溶媒(E)に水分散化または水溶化した樹脂(C)がゲル化したり、凝集したりしてしまい、好適に使用することが困難になる。
N−メチロールアクリルアミド化合物(c3):
樹脂(C)は、N−メチロールアクリルアミド化合物(c3)有することが好ましい。。かかる化合物(c3)をモノマーとして用いることにより、樹脂(C)に自己架橋性の付与し、樹脂(C)からなる樹脂成分の架橋密度を向上させることができる。N−メチロールアクリルアミド化合物(c3)としては、N−メチロールアクリルアミド単独、及び/またはアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミドなどのアミド基含有モノマーやアリルグリシジルエーテルなどのグリシジル基含有モノマーと併用したものなどが挙げられる。
本発明の樹脂(C)のガラス転移点温度(Tg)は60℃以下が好ましい。より好ましくは45℃以下である。Tgを50℃以下にすることで、各種ハードコート剤やインキに対して、より良好な接着性を付与させることができる。
化合物(c1)、(c2)及び(c3)を用いて、樹脂(C)を重合する場合、化合物(c3)の質量は、(a1)〜(a3)の化合物の質量の合計を100質量部としたときに、1質量部以上、10質量部以下であることが好ましい。化合物(c3)の質量を1質量部以上にすることで、樹脂(c)は樹脂(α)中で自己架橋し、造膜性を付与させることができる。また、化合物(a3)の質量が10質量部以下にすることで、樹脂(C)からなる樹脂成分をポリエステルフィルム(P)と接していない樹脂層(X)の表面側へ偏在させることができる。
(7)カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基から選ばれる少なくとも1つ官能基を有する樹脂(C)の製造方法
本発明において用いられる樹脂(C)の製造方法としては、特に限定されることなく公知の技術を適用することができるが、モノマーとして、化合物(c1)、(c2)及び(c3)を用いることが好ましい。さらに、樹脂(C)の製造方法としては、樹脂(A)の製造方法と同様に、化合物(c1)、(c2)及び(c3)を用いて水系溶媒(E)中で乳化重合により製造することが好ましい。水系溶媒(E)を用いることで、水系溶媒(E)を用いた樹脂組成物を含む塗液の調整が容易となる。また乳化重合により樹脂(C)を製造することで、樹脂(A)の機械的分散安定性が優れるので好ましい。本発明で用いられる樹脂(C)においては、製造方法、及び乳化剤、重合開始剤や還元剤などの添加剤は樹脂(A)の製造方法と同様のものを用いることができる。
(8)オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物
本発明において、前記樹脂組成物には、オキサゾリン化合物および/またはカルボジイミド化合物を含むことが好ましい。
オキサゾリン基を有する化合物としては、オキサゾリン基またはオキサジン基を1分子当たり少なくとも1つ以上有するものであれば特に限定されないが、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーが好ましく、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリンを挙げることができる。
カルボジイミド基を有する化合物としては、例えば、下記式(4)で表されるカルボジイミド構造を1分子当たり少なくとも1つ以上有するものであれば特に限定されないが、耐湿熱接着性などの点で、1分子中に2つ以上を有するポリカルボジイミド化合物が特に好ましい。特に、ポリエステル樹脂やアクリル樹脂などのポリマーの末端や側鎖に、複数個のカルボジイミド基を有する、高分子型のイソシアネート化合物を用いると、本発明の樹脂層(X)をポリエステルフィルム上に設け、積層フィルムとしたときに、樹脂層(X)の硬度向上やオリゴマー析出抑制性だけでなく、各種インキやハードコート剤などとの接着性や耐湿熱接着性、可撓性、強靭性が高まり好ましく用いることができる。
−N=C=N− 式(4)
カルボジイミド化合物の製造は公知の技術を適用することができ、一般的には、ジイソシアネート化合物を触媒存在下で重縮合することにより得られる。ポリカルボジイミド化合物の出発原料であるジイソシアネート化合物としては、芳香族、脂肪族、脂環式ジイソシアネートなどを用いることができ、具体的にはトリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネートなどを用いることができる。
更に本発明の効果を消失させない範囲において、ポリカルボジイミド化合物の水溶性や水分散性を向上するために、界面活性剤を添加することや、ポリアルキレンオキシド、ジアルキルアミノアルコールの四級アンモニウム塩、ヒドロキシアルキルスルホン酸塩などの親水性モノマーを添加しても用いてもよい。また他の化合物、例えば、アジリジン化合物、アミドエポキシ化合物、チタンキレートなどのチタネート系カップリング剤、メチロール化あるいはアルキロール化した尿素系化合物、アクリルアミド系化合物などを任意で用いることもできる。
(9)ポリエステルフィルム(P)
本発明の積層フィルムにおいて、基材フィルムとなるポリエステルフィルム(P)について詳しく説明する。本発明においてポリエステルフィルム(P)を構成するポリエステルとは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子の総称であって、エチレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレート、ブチレンテレフタレート、プロピレン−2,6−ナフタレート、エチレン−α,β−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4‘−ジカルボキシレートなどから選ばれた少なくとも1種の構成成分を主要構成成分とするものを表す。本発明では、ポリエステルフィルム(P)を構成するポリエステルとしてポリエチレンテレフタレートを用いることが好ましい。また積層フィルムに熱や収縮応力などが作用する場合には、ポリエステルフィルム(P)を構成するポリエステルとして耐熱性や剛性に優れたポリエチレン−2,6−ナフタレートを用いることが好ましい。
上記ポリエステルフィルム(P)は、二軸配向されたものであることが好ましい。二軸配向ポリエステルフィルム(P)とは、一般に、未延伸状態のポリエステルシート又はフィルムを長手方向および長手方向に直行する幅方向に各々2.5〜5倍程度延伸され、その後、熱処理を施されて、結晶配向が完了されたものであり、広角(X)線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。ポリエステルフィルム(P)が二軸配向していない場合には、積層フィルムの熱安定性、特に寸法安定性や機械的強度が不十分であったり、平面性の悪いものとなるので好ましくない。
また、ポリエステルフィルム(P)中には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機系易滑剤、顔料、染料、有機又は無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤などがその特性を悪化させない程度に添加されていてもよい。
ポリエステルフィルム(P)の厚みは特に限定されるものではなく、用途や種類に応じて適宜選択されるが、機械的強度、ハンドリング性などの点から、通常は好ましくは10〜500μm、より好ましくは38〜250μm、最も好ましくは75〜150μmである。また、ポリエステルフィルム(P)は、共押出しによる複合フィルムであってもよいし、得られたフィルムを各種の方法で貼り合わせたフィルムであっても良い。
(10)樹脂層(X)の形成方法
本発明では、樹脂(A)とメラミン化合物(B)、及び樹脂(C)とを含有する樹脂組成物をポリエステルフィルム(P)上に設け、その後に加熱し、ポリエステルフィルム(P)上に樹脂(α)を含む樹脂層(X)を形成させることが好ましい。このとき、加熱温度は150℃以上にすることが好ましい。加熱温度を150℃以上にすることで、式(1)〜(3)の構造を有し、且つ樹脂層(X)において、樹脂(A)とメラミン化合物(B)からなる樹脂成分が、ポリエステルフィルム(P)と接していない樹脂層(X)の表面側から、ポリエステルフィルム(P)と接している界面側に向かって含有量が多く偏在させることが可能となる。これによって、オリゴマーの析出が抑制され、ハードコート剤との接着性が良好な積層フィルムを得ることができる。
樹脂(A)とメラミン化合物(B)、及び樹脂(C)とを含有する樹脂組成物をポリエステルフィルム(P)上に設ける際に、溶媒を用いても良い。すなわち、樹脂(A)とメラミン化合物(B)、及び樹脂(C)を溶媒に溶解または分散せしめて、塗液とし、これをポリエステルフィルム(P)に塗布しても良い。塗布後に、溶媒を乾燥させ、かつ加熱することで樹脂(α)が積層されたフィルムを得ることができる。本発明では、溶媒として水系溶媒(E)を用いることが好ましい。水系溶媒を用いることで、加熱工程での溶媒の急激な蒸発を抑制でき、均一な樹脂層(X)を形成できるだけでなく、環境負荷の点で優れているためである。
ここで、水系溶媒(E)とは水、または水とメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類など水に可溶である有機溶媒が任意の比率で混合させているものを指す。
樹脂組成物のポリエステルフィルム(P)への塗布方法はインラインコート法、オフコート法のどちらでも用いることができるが、好ましくはインラインコート法である。インラインコート法とは、ポリエステルフィルム(P)の製造の工程内で塗布を行う方法であり、通常オフコートではポリエステルフィルム(P)の寸法安定性の点から実施することが困難な150℃以上の加熱を樹脂組成物に施すことができる。具体的には、ポリエステル樹脂を溶融押し出ししてから二軸延伸後熱処理して巻き上げるまでの任意の段階で塗布を行う方法を指し、通常は、溶融押出し後・急冷して得られる実質的に非晶状態の未延伸(未配向)ポリエステルフィルム(Aフィルム)、その後に長手方向に延伸された一軸延伸(一軸配向)ポリエステルフィルム(Bフィルム)、またはさらに幅方向に延伸された熱処理前の二軸延伸(二軸配向)ポリエステルフィルム(Cフィルム)の何れかのフィルムに塗布する。
本発明では、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルム(P)のAフィルム、Bフィルム、の何れかのフィルムに、樹脂組成物を塗布し、溶媒を蒸発させ、その後、ポリエステルフィルム(P)を一軸方向又は二軸方向に延伸し、加熱し、ポリエステルフィルムの結晶配向を完了させるとともに、樹脂層(X)を設ける方法を採用することが好ましい。この方法によれば、ポリエステルフィルム(P)の製膜と、樹脂組成物の塗布と溶媒の乾燥、および加熱(すなわち、樹脂層(X)の形成)を同時に行うことができるために製造コスト上のメリットがある。また、塗布後に延伸を行うために樹脂層(X)の厚みをより薄くすることが容易である。
中でも、長手方向に一軸延伸されたフィルム(Bフィルム)に、樹脂組成物を塗布し、溶媒を乾燥させ、その後、幅方向に延伸し、加熱する方法が優れている。未延伸フィルムに塗布した後、二軸延伸する方法に比べ、延伸工程が1回少ないため、延伸による樹脂層(X)の欠陥や亀裂が発生しづらく、透明性や平滑性に優れた樹脂層(X)を形成できるためである。
一方、オフラインコート法とは、上記Aフィルムを一軸又は二軸に延伸し、加熱処理を施しポリエステルフィルム(P)の結晶配向を完了させた後のフィルム、またはAフィルムに、フィルムの製膜工程とは別工程で樹脂組成物を塗布する方法である。本発明では、上述した種々の利点から、インラインコート法により設けられることが好ましい。
よって、本発明において最良の樹脂層(X)の形成方法は、水系溶媒(E)を用いた樹脂組成物を、ポリエステルフィルム(P)上にインラインコート法を用いて塗布し、水系溶媒(E)を乾燥させ、加熱することによって形成する方法である。
(11)樹脂組成物を含む塗液の調整方法
樹脂組成物を含む塗液を作成する場合、溶媒は水系溶媒(E)を用いることが好ましい。樹脂組成物を含む塗液は、必要に応じて水分散化または水溶化した樹脂(A)、メラミン化合物(B)、樹脂(C)、及び水系溶媒(E)を任意の順番で所望の重量比で混合、撹拌することで作製することができる。次いで必要に応じて易滑剤や無機粒子、有機粒子、界面活性剤、酸化防止剤、熱開始剤などの各種添加剤を、樹脂組成物により設けた樹脂層(X)の特性を悪化させない程度に任意の順番で混合、撹拌することができる。混合、撹拌する方法は、容器を手で振って行ったり、マグネチックスターラーや撹拌羽根を用いたり、超音波照射、振動分散などを行うことができる。
(12)塗布方式
熱可塑性樹脂フィルムへの樹脂組成物の塗布方式は、公知の塗布方式、例えばバーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ブレードコート法等の任意の方式を用いることができる。
(13)積層フィルム製造方法
本発明の積層フィルムの製造方法について説明する。ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略す)フィルムはまず、PETのペレットを十分に真空乾燥した後、押出機に供給し、約280℃でシート状に溶融押し出し、冷却固化せしめて未延伸(未配向)PETフィルム(Aフィルム)を作製する。このフィルムを80〜120℃に加熱したロールで長手方向に2.5〜5.0倍延伸して一軸配向PETフィルム(Bフィルム)を得る。このBフィルムの片面に所定の濃度に調製した、樹脂(A)とメラミン化合物(B)、及び樹脂(C)を含む樹脂組成物を有する塗液を塗布する。この時、塗布前にPETフィルムの塗布面にコロナ放電処理等の表面処理を行ってもよい。コロナ放電処理等の表面処理を行うことで、樹脂組成物のPETフィルムへの濡れ性を向上させ、樹脂組成物のはじきを防止し、均一な塗布厚みを達成することができる。
塗布後、PETフィルムの端部をクリップで把持して80〜130℃の予熱ゾーンへ導き、塗液の溶媒を乾燥させる。乾燥後幅方向に1.1〜5.0倍延伸する。引き続き150〜250℃の熱処理ゾーンへ導き1〜30秒間の熱処理を行い、結晶配向を完了させるとともに、樹脂(α)を含む樹脂層(X)の形成を完了させる。この加熱工程(熱処理工程)で、必要に応じて幅方向、あるいは長手方向に3〜15%の弛緩処理を施してもよい。かくして得られた積層フィルムは、透明且つ、ハードコート剤との接着性やオリゴマー抑制に優れたものとなる。
(特性の測定方法および効果の評価方法)
本発明における特性の測定方法、および効果の評価方法は次のとおりである。
(1)全光線透過率・ヘイズの測定
一辺が5cmの正方形状の積層フィルムサンプルを3点(3個)準備する。次にサンプルを常態(23℃、相対湿度50%)において、40時間放置する。それぞれのサンプルを日本電色工業(株)製濁度計「NDH5000」を用いて、全光線透過率の測定はJIS「プラスチック透明材料の全光線透過率の試験方法」(K7361−1、1997年版)、ヘイズの測定はJIS「透明材料のヘーズの求め方」(K7136 2000年版)に準ずる方式で実施する。それぞれの3点(3個)の全光線透過率およびヘイズの値を平均して、積層フィルムの全光線透過率およびヘイズの値とする。
(2)樹脂層(X)厚みの測定
積層フィルムの樹脂層(X)をRuOを用いて染色する。次に、積層フィルムを凍結せしめ、フィルム厚み方向に切断し、樹脂層(X)断面観察用の超薄切片サンプルを10点(10個)得る。それぞれのサンプル断面をTEM(透過型電子顕微鏡:(株)日立製作所製H7100FA型)にて1万〜100万倍で観察し、断面写真を得る。その10点(10個)のサンプルの樹脂層(X)厚みの測定値を平均して、積層フィルムの樹脂層(X)厚みとする。
(3)樹脂層(X)において、樹脂(A)とメラミン化合物(B)からなる樹脂成分が、ポリエステルフィルム(P)と接していない樹脂層(X)の表面側から、ポリエステルフィルム(P)と接している界面側に向かって含有量が多く偏在しているかの確認方法
積層フィルムの樹脂層(X)の断面を、飛行時間2次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)(ION−TOF社製、TOF−SIMS5型)を用いて測定し、ポリステルフィルムと接していない樹脂層(X)の表面側から樹脂層厚み深さ10%、50%、90%の領域における、樹脂(A)とメラミン化合物(B)からなる樹脂成分に由来する2次イオンのピーク強度を確認する。ピーク強度が、ポリステルフィルムと接していない樹脂層(X)の表面側から樹脂層厚み深さ10%、50%、90%の領域で順次大きくなっていれば、樹脂(A)とメラミン化合物(B)からなる樹脂成分が、ポリエステルフィルムと接していない樹脂層(X)の表面側から、ポリエステルフィルムと接している界面側に向かって多く偏在しているとした。表中において、偏在しているものを「樹脂層(X)の構造」の項で「○」、偏在していないものを「×」とした。
(4)ハードコート剤との接着性評価
本発明に積層フィルムのハードコート剤との接着性を評価するため、有機溶媒塗料系の紫外線硬化型ハードコート剤(ハードコートA、ハードコートB)や無溶媒型紫外線硬化型樹脂(ハードコートC)を用いた。
ハードコートA:(下記の組成比で調整した)
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:70重量部
・N−ビニルピロリドン:30重量部
・1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン:4重量部。
ハードコートB:(株)JSR製“オプスター” (登録商標)KZ6445A
ハードコートC:無溶媒型透明紫外線硬化型樹脂(下記の組成比で調整した)
・三洋化成(株)製“サンラッド”(登録商標)RC−610:60重量部
・三菱レイヨン(株)製“ダイヤビーム”(登録商標)UR−6530:20重量部
・日本化薬(株)製DPHA(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート/ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート混合物):20重量部。
ここで、ハードコートA、ハードコートBについては、バーコーターを用いて硬化後の膜厚が2μmとなるように、積層フィルムの樹脂層(X)の表面に塗布し、エスペック(株)製熱風オーブン「HIGH−TEMP−OVEN PHH−200」にて100℃、1分間乾燥させその後、照射強度120W/cmの紫外線ランプを用い、照射距離(ランプとインキ面の距離)12cmで、コンベア速度3m/分、積算強度約350mJ/cmでUV照射し、該ハードコート層を硬化させた。接着性評価は以下のクロスカット法を用いて行った。
ハードコートCについては、ワイヤーバーコート法で厚み約5μmになるように、積層フィルムの樹脂層(X)の表面に塗布し、その後、照射強度120W/cmの紫外線ランプを用い、照射距離(ランプとインキ面の距離)12cmで、コンベア速度2m/分、積算強度約550mJ/cmでUV照射し、該無溶媒型透明紫外線硬化型樹脂を硬化させた。接着性評価は以下のクロスカット法を用いて行った。
<クロスカット法>
各種ハードコートの硬化膜に1mmのクロスカットを100個入れ、ニチバン(株)製“セロハンテープ”(登録商標)をその上に貼り付け、ゴムローラーを用いて、荷重19.6Nで3往復させ、押し付けた後、90度方向に剥離し、該硬化膜の残存した個数により評価し、残存した個数が95以上を接着性特に良好「◎」、80以上を接着性良好「○」、79以下を接着性不良「×」とした。
(5)加熱処理評価(オリゴマー析出評価)
一辺が10cmの積層フィルムサンプルを金属枠に4辺で固定する。次に、金属枠に固定した積層フィルムサンプルを150℃(風量ゲージ「7」)に設定したエスペック(株)製熱風オーブン「HIGH−TEMP−OVEN PHH−200」に、オーブン内の床に対して立てて入れ1時間加熱し、その後空冷で1時間放置した。樹脂層(X)と反対にあるポリエステルフィルム(P)の面を、アセトンを含ませた不織布(小津産業(株)製、ハイゼガーゼNT−4)にて拭き取り、さらにアセトンで流し、常態で40時間放置乾燥させ、樹脂層(X)とは反対面のポリエステルフィルム(P)面から析出したオリゴマーを除去した。その後(1)と同様にヘイズを測定し、加熱処理評価前のヘイズとの差をΔヘイズとして評価した。Δヘイズが0.3%未満を良好とした。尚、目安としてΔヘイズが0.3%未満であると加熱処理前後において目視ではヘイズ値の変化は分からない。0.3%以上、0.5%未満では個人差はあるが加熱処理前後で目視でのヘイズ値の変化が分かる可能性がある。0.5%以上では加熱処理前後で目視でのヘイズの変化が明らかに分かる。
(6)樹脂層(X)のポリエステルフィルム(P)と接していない表面側とポリエステルフィルム(P)と接しているの界面側の表面自由エネルギー差の算出
まず、積層フィルムの樹脂層(X)の表面の表面自由エネルギーを以下の方法で算出する。積層フィルムを室温23℃相対湿度65%の雰囲気中に24時間放置後した。その後、同雰囲気下で、樹脂層(X)に対して、純水、エチレングリコール、ホルムアミド、ジヨードメタンの4種の溶液のそれぞれの接触角を、接触角計CA−D型(協和界面科学(株)社製)により、それぞれ5点測定する。5点の測定値の最大値と最小値を除いた3点の測定値の平均値をそれぞれの溶液の接触角とする。尚、樹脂層(X)のポリエステルフィルム(P)との界面側の測定は、一度溶剤によりポリエステルフィルム(P)を溶出させ、樹脂層(X)のポリエステルフィルム(P)との界面を露出させたもので測定する。
次に、得られた4種類の溶液の接触角を用いて、畑らによって提案された「固体の表面自由エネルギー(γ)を分散力成分(γ )、極性力成分(γ )、および水素結合力成分(γ )の3成分に分離し、Fowkes式を拡張した式(拡張Fowkes式)」に基づく幾何平均法により、本発明の分散力、極性力、及び分散力と極性力の和である表面エネルギーを算出する。
具体的な算出方法を示す。各記号の意味について下記する。γ は固体と液体の界面での張力である場合、数式(1)が成立する。
γ : 樹脂層(X)と表1に記載の既知の溶液の表面自由エネルギー
γ: 樹脂層(X)の表面自由エネルギー
γ: 表1に記載の既知の溶液の表面自由エネルギー
γ : 樹脂層(X)の表面自由エネルギーの分散力成分
γ : 樹脂層(X)の表面自由エネルギーの極性力成分
γ : 樹脂層(X)の表面自由エネルギーの水素結合力成分
γL : 表1に記載の既知の溶液の表面自由エネルギーの分散力成分
γL : 表1に記載の既知の溶液の表面自由エネルギーの極性力成分
γL : 表1に記載の既知の溶液の表面自由エネルギーの水素結合力成分
γ =γ+γ−2(γ ・γ )1/2−2(γ ・γp)1/2−2(γ ・γ )1/2 ・・・ 数式(1)。
また、平滑な固体面と液滴が接触角(θ)で接しているときの状態は次式で表現される(Youngの式)。
γ=γ +γcosθ ・・・ 数式(2)。
これら数式(1)、数式(2)を組み合わせると、次式が得られる。
・γ )1/2+(γ ・γ )1/2+(γ ・γ )1/2=γ(1+cosθ)/2 ・・・ 数式(3)。
実際には、水、エチレングリコール、ホルムアミド、及びジヨードメタンの4種類の溶液に接触角(θ)と、表1に記載の既知の溶液の表面張力の各成分(γL 、γL 、γL )を数式(3)に代入し、4つの連立方程式を解く。その結果、固体の表面自由エネルギー(γ)、すなわち樹脂層(X)の表面の表面自由エネルギーが算出される。
次に、樹脂層(X)のポリエステルフィルム(P)との界面の表面自由エネルギーを算出させるために、積層フィルムを溶剤によりポリエステルフィルム(P)を溶出させ、樹脂層(X)のポリエステルフィルム(P)との界面を露出させたもの準備し、樹脂層(X)の表面の表面自由エネルギーを算出する方法を同様の方法でポリエステルフィルム(P)との界面の表面自由エネルギーを算出する。得られた樹脂層(X)の表面の表面自由エネルギーと、ポリエステルフィルム(P)との界面の表面自由エネルギーにより、表面自由エネルギーの差を算出する。
(7)樹脂(A)と樹脂(C)の表面自由エネルギーの算出
まず、樹脂(A)、および樹脂(C)の表面自由エネルギーを以下の方法で算出する。
ポリエステルフィルム(P)上に樹脂(A)、および樹脂(C)をそれぞれワイヤーバーコート法で、厚み約0.5μmになるように塗布し、100℃(風量ゲージ「7」)に設定したエスペック(株)製熱風オーブン「HIGH−TEMP−OVEN PHH−200」にて1時間加熱し、その後空冷で1時間放置する。この時、塗布前にポリエステルフィルム(P)の塗布面にコロナ放電処理等の表面処理を行ってもよい。コロナ放電処理等の表面処理を行うことで、樹脂(A)、および樹脂(C)のポリエステルフィルム(P)への濡れ性を向上させ、均一な塗膜を作成することができる。
次に得られた樹脂(A)、および樹脂(C)の塗膜を用いて、前項(6)と同様の方法で、それぞれ樹脂(A)、および樹脂(C)表面自由エネルギーを算出する。得られた樹脂(A)、および樹脂(C)の表面自由エネルギーより、樹脂(A)、および樹脂(C)の表面自由エネルギーの差(表中、「表面自由エネルギー差」と記載する)を算出する。
(8)樹脂層(X)の構造確認(式(1)〜(3)の構造確認)
樹脂層(X)中の式(1)〜(3)の構造の確認方法は、特に特定の手法に限定されないが、以下のような方法が例示できる。例えば、ガスクロマトグラフ質量分析(GC−MS)による式(1)〜(3)の構造に由来する重量ピークの有無を確認する。次に、フーリエ変換型赤外分光(FT−IR)にて、式(1)〜(3)の構造が有する各原子間の結合に由来するピークの有無を確認する。さらに、プロトン核磁気共鳴分光(1H−NMR)にて、式(1)〜(3)の構造が有する水素原子の位置に由来する化学シフトの位置と水素原子の個数に由来するプロトン吸収線面積を確認する。これらの結果を合わせて総合的に確認する手法が好ましい。表中、式(1)〜(3)の構造を有する場合を「○」、有さない場合を「×」と記載した。
(実施例1)
・水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A):
ステンレス反応容器に、メタクリル酸メチル(a1)、メタクリル酸ヒドロキシエチル(a2)、ウレタンアクリレートオリゴマー(根上工業(株)製、“アートレジン”(登録商標)UN−3320HA、アクリロイル基の数が6)(a3)を表1の質量比で仕込み、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを(a1)〜(a3)の合計100質量部に対して2質量部を加えて撹拌し、混合液1を調製した。次に、攪拌機、環流冷却管、温度計及び滴下ロートを備えた反応装置を準備した。上記混合液1を60重量部と、イソプロピルアルコール200重量部、重合開始剤として過硫酸カリウムを5重量部を反応装置に仕込み、60℃に加熱し、混合液2を調製した。混合液2は60℃の加熱状態のまま20分間保持させた。次に、混合液1の40重量部とイソプロピルアルコール50重量部、過硫酸カリウム5重量部からなる混合液3を調製した。続いて、滴下ロートを用いて混合液3を2時間かけて混合液2へ滴下し、混合液4を調製した。その後、混合液4は60℃に加熱した状態のまま2時間保持した。得られた混合液4を50℃以下に冷却した後、攪拌機、減圧設備を備えた容器に移した。そこに、25%アンモニア水60重量部、及び純水900重量部を加え、60℃に加熱しながら減圧下にてイソプロピルアルコール及び未反応モノマーを回収し、純水に分散された樹脂(A)を得た。
・メチロール基を有するメラミン化合物(B):
メチロール化メラミン((株)三和ケミカル製、“ニカラック”(登録商標)MW−035)を用いた。
・カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基から少なくとも1つから選ばれる官能基を有する樹脂(C):
ステンレス反応容器に、メタクリル酸メチル(c1)、アクリル酸(c2)、N−メチロールアクリルアミド(c3)を表1の質量比で仕込み、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを(c1)〜(c3)の合計100質量部に対して2質量部を加えて撹拌し、混合液5を調製した。次に、攪拌機、環流冷却管、温度計及び滴下ロートを備えた反応装置を準備した。上記混合液5を60重量部と、イソプロピルアルコール200重量部、重合開始剤として過硫酸カリウムを5重量部を反応装置に仕込み、60℃に加熱し、混合液6を調製した。混合液2は60℃の加熱状態のまま20分間保持させた。次に、混合液5の40重量部とイソプロピルアルコール50重量部、過硫酸カリウム5重量部からなる混合液7を調製した。続いて、滴下ロートを用いて混合液3を2時間かけて混合液6へ滴下し、混合液8を調製した。その後、混合液8は60℃に加熱した状態のまま2時間保持した。得られた混合液8を50℃以下に冷却した後、攪拌機、減圧設備を備えた容器に移した。そこに、25%アンモニア水60重量部、及び純水900重量部を加え、60℃に加熱しながら減圧下にてイソプロピルアルコール及び未反応モノマーを回収し、純水に分散された樹脂(C)を得た。
尚、樹脂(A)と樹脂(C)の表面自由エネルギーはそれぞれ、46mN/m、38mN/mであり、樹脂(C)の方が8mN/m低い結果であった。
・樹脂組成物、及び樹脂組成物を含む塗液:
樹脂(A)、メラミン化合物(B)、樹脂(C)を質量比で、(A)/(B)/(C)=65/35/40となるように混合した。そこに、積層フィルム表面に易滑性を付与させるために、無機粒子として数平均粒子径300nmのシリカ粒子((株)日本触媒社製 “シーホスター”(登録商標)KE−W30)を樹脂(A)100質量部に対して2質量部添加した。さらに、樹脂組成物のポリエステルフィルム(P)上への塗布性を向上させるために、フッ素系界面活性剤(互応化学(株)製 “プラスコート”(登録商標)RY−2)を、樹脂組成物を含む塗液に対する含有量が0.06質量部になるよう添加した。
・ポリエステルフィルム(P):
実質的に粒子を含有しないPETペレット(極限粘度0.63dl/g)を充分に真空乾燥した後、押し出し機に供給し285℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化せしめた。この未延伸フィルムを90℃に加熱して長手方向に3.4倍延伸し、一軸延伸PETフィルム(Bフィルム)とした。
・積層フィルム:
樹脂組成物を一軸延伸フィルムにバーコートを用いて塗布厚み約8μmで塗布した。続いて、樹脂組成物を塗布した一軸延伸フィルムの幅方向の両端部をクリップで把持して予熱ゾーンに導いた。予熱ゾーンの雰囲気温度は90℃〜100℃にし、樹脂組成物を含む塗液の溶媒を乾燥させた。引き続き、連続的に110℃の延伸ゾーンで幅方向に3.5倍延伸し、続いて235℃の熱処理ゾーンで20秒間熱処理を施し、樹脂(α)を形成せしめ、PETフィルムの結晶配向の完了した積層フィルムを得た。得られた積層フィルムにおいてPETフィルムの厚みは100μm、樹脂層(X)の厚みは95nmであった。
得られた積層フィルムの特性等を表2に示す。全光線透過率やヘイズなどの透明性に優れ、且つハードコート剤との接着性、及び150℃1時間加熱処理後のヘイズ変化が0.3%以内と良好な結果であった。
(実施例2、3)
一軸延伸フィルムに対する樹脂組成物の塗布厚みを増加させ、樹脂層(X)厚みを表2に記載の厚みに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2に示す。実施例2では、実施例1と比較して樹脂層(X)の厚みを増加させたことにより、ハードコート剤との接着性を維持しながら、150℃1時間加熱処理後のヘイズ変化はより良好な結果であった。実施例3では、実施例1と比較して樹脂層(X)の厚みを増加させたことにより、ややヘイズが高くなったが、ハードコート剤との接着性を維持しながら、150℃1時間加熱処理後のヘイズ変化はより良好な結果であった。
(実施例4、5)
樹脂(A)の組成質量比を表1に記載の組成質量比に変更した以外は、実施例2と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2に示す。実施例2と比較して、樹脂(A)の組成質量比を変更したが、全光線透過率やヘイズなどの透明性に優れ、且つハードコート剤との接着性、及び150℃1時間加熱処理後のヘイズ変化が0.3%以内と良好な結果であった。
(実施例6、7)
樹脂(A)とメラミン化合物(B)の質量比を表1に記載した質量比に変更した以外は、実施例2と同様の方法で積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2に示す。実施例2と比較して、メラミン化合物(B)の質量比を変更したが、全光線透過率やヘイズなどの透明性に優れ、且つハードコート剤との接着性、及び150℃1時間加熱処理後のヘイズ変化が0.3%以内と良好な結果であった。
(実施例8、9)
樹脂(C)の組成質量比を表1に記載の組成質量比に変更した以外は、実施例2と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2に示す。実施例2と比較して、樹脂(C)の組成質量比を変更したが、全光線透過率やヘイズなどの透明性に優れ、且つハードコート剤との接着性はハードコートの種類によってやや劣るものの「○」以上であり、150℃1時間加熱処理後のヘイズ変化が0.3%以内と良好な結果であった。
(実施例10)
樹脂(A)、樹脂(C)それぞれの組成質量比を表1に記載の組成質量比に変更した以外は、実施例2と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2に示す。実施例2と比較して、樹脂(A)、樹脂(C)それぞれの組成質量比を変更したが、全光線透過率やヘイズなどの透明性に優れ、且つハードコート剤との接着性はやや劣るものの「○」以上であり、150℃1時間加熱処理後のヘイズ変化が0.3%以内と良好な結果であった。
(実施例11)
樹脂層(X)中に樹脂(α)の含有率が88質量%となるように、オキサゾリン化合物((株)日本触媒製“エポクロス”WS−500)を12質量%添加した樹脂組成物を調整した以外は、実施例2と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2に示す。実施例2と同様に、ハードコート剤との接着性、及び150℃1時間加熱処理後のヘイズ変化ともに良好であった。
(実施例12)
樹脂層(X)中に樹脂(α)の含有率が78質量%となるように、オキサゾリン化合物((株)日本触媒製“エポクロス”WS−500)、カルボジイミド化合物(日清紡ケミカル(株)“カルボジライト”V−04)をそれぞれ11質量%添加した樹脂組成物を調整した以外は、実施例2と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2に示す。実施例2と同様に、ハードコート剤との接着性、及び150℃1時間加熱処理後のヘイズ変化ともに良好であった。
(比較例1)
樹脂層(X)厚みを表1に記載した厚みに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2に示す。実施例1と比較して樹脂層(X)の厚みを減少させたところ、150℃1時間加熱処理後のヘイズ変化が大きく、オリゴマーの析出抑制効果が十分ではなかった。
(比較例2)
樹脂層(X)厚みを表1に記載した厚みに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2に示す。実施例1と比較して樹脂層(X)の厚みを増加させたところ、ハードコートとの接着性が不良であった。ポリエステルフィルム(P)と接しない樹脂層(X)の表面から樹脂層(X)厚み深さ方向に10%と50%の領域の樹脂(A)、メラミン化合物(B)からなる樹脂成分の2次イオンピーク強度の増加が確認できなかった。よって、樹脂層(X)厚みが厚かったため、樹脂(C)からなる樹脂成分がポリエステルフィルム(P)と接しない樹脂層(X)の表面に偏在しきれず、ハードコートとの接着性が不良になったものと考えられる。
(比較例3)
樹脂(A)、樹脂(C)の質量比を表1に記載の質量比に変更した以外は、実施例2と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2に示す。実施例2と比較して、樹脂(A)と樹脂(C)の表面エネルギーが近似したため、樹脂層(X)の表面の表面自由エネルギーが、ポリエステルフィルム(P)との界面側の表面自由エネルギーよりも2.0mN/m未満となり、ポリエステルフィルム(P)と接しない樹脂層(X)の表面から樹脂層(X)厚み深さ方向に10%、50%、90%の領域の樹脂(A)、メラミン化合物(B)からなる樹脂成分の2次イオンピーク強度の増加が確認できなかった。よって、樹脂(C)からなる樹脂成分がポリエステルフィルム(P)と接しない樹脂層(X)の表面に偏在しきれず、ハードコートとの接着性が不良になったものと考えられる。
(比較例4)
樹脂組成物(樹脂(A)とメラミン化合物(B)、及び樹脂(C)の混合物)の質量比を表1に記載の質量比に変更した以外は、実施例2と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2に示す。比較例4では、150℃1時間加熱処理後のヘイズ変化は良好なものの、ハードコートとの接着性が不良であった。これは樹脂層(X)中の樹脂(C)の質量比が小さく、ポリエステルフィルム(P)と接しない樹脂層(X)の表面から樹脂層(X)厚み深さ方向に10%、50%、90%の領域の樹脂(A)、メラミン化合物(B)からなる樹脂成分の2次イオンピーク強度の増加が確認できなかった。よって樹脂(C)からなる樹脂成分がポリエステルフィルム(P)と接しない樹脂層(X)の表面に偏在しきれず、にハードコート剤と接着性が不足したためと考えられる。
(比較例5)
樹脂組成物(樹脂(A)とメラミン化合物(B)、及び樹脂(C)の混合物)の質量比を表1に記載の質量比に変更した以外は、実施例2と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2に示す。比較例5では、ハードコートとの接着性は良好なものの、150℃1時間加熱処理後のヘイズ変化が不良であった。これは樹脂(C)の質量比が大きく、相対的に樹脂(A)とメラミン化合物(B)の質量比が小さくなったため、樹脂層(X)のオリゴマー抑制効果が不足したためと考えられる。
(比較例6)
樹脂(A)の組成質量比を表1に記載の組成質量比に変更した以外は、実施例2と同様の方法で、樹脂組成物を含む塗液を調整しようとしたが、樹脂(A)が溶媒である水に分散出来ず、樹脂(A)の塗液、及び樹脂組成物を調整することができなかった。
(比較例7)
樹脂(A)の組成質量比を表1に記載の組成質量比に変更した以外は、実施例2と同様の方法で、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表2に示す。比較例6では、ハードコートとの接着性は良好なものの、150℃1時間加熱処理後のヘイズ変化が不良であった。これは樹脂(A)がアクリロイル基を有していなかったため、樹脂(α)の架橋密度が低下し、樹脂層(X)のオリゴマー抑制効果が不足したためと考えられる。
Figure 0006060566
Figure 0006060566
本発明は、ポリエステルフィルムの製膜や加熱処理を伴う加工工程でポリエステルフィルムから析出するオリゴマーを抑制し、各種ハードコート剤との接着性に優れた樹脂層(X)を有する積層フィルムに関するものであり、ディスプレイやタッチパネル用途の光学用フィルムや各種加熱加工を必要とするフィルムへ利用可能である。

Claims (14)

  1. ポリエステルフィルム(P)の少なくとも一面に、樹脂(α)を含む樹脂層(X)が設けられた積層フィルムであって、以下の(1)〜(4)の条件を満たす積層フィルム。
    (1)樹脂層(X)の厚みが90〜500nmであること。
    (2)樹脂(α)が、水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A)と、メチロール基を有するメラミン化合物(B)、及びカルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有し、かつ、アクリル樹脂を含む樹脂(C)を含む樹脂組成物から得られる樹脂であること。
    (3)樹脂層(X)において、樹脂(A)とメラミン化合物(B)からなる樹脂成分が、ポリエステルフィルム(P)と接していない樹脂層(X)の表面側から、ポリエステルフィルム(P)と接している界面側に向かって含有量が多く偏在していること。
    (4)樹脂層(X)の、ポリエステルフィルム(P)と接していない表面側の表面自由エネルギーが、ポリエステルフィルム(P)と接触している界面側の表面自由エネルギーよりも2.0mN/m以上低いこと。
  2. 前記樹脂(α)が式(1)で示される化学構造を有する請求項1に記載の積層フィルム。
    Figure 0006060566
  3. 前記樹脂(α)が式(2)で示される化学構造を有する請求項1または2に記載の積層フィルム。
    Figure 0006060566
  4. ポリエステルフィルム(P)の少なくとも一面に、樹脂(α)を含む樹脂層(X)が設けられた積層フィルムであって、以下の(1)〜(5)の条件を満たす積層フィルム。
    (1)樹脂層(X)の厚みが90〜500nmであること。
    (2)樹脂(α)が、水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A)と、メチロール基を有するメラミン化合物(B)、及びカルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有し、かつ、アクリル樹脂を含む樹脂(C)を含む樹脂組成物から得られる樹脂であること。
    (3)樹脂層(X)において、樹脂(A)とメラミン化合物(B)からなる樹脂成分が、ポリエステルフィルム(P)と接していない樹脂層(X)の表面側から、ポリエステルフィルム(P)と接している界面側に向かって含有量が多く偏在していること。
    (4)樹脂層(X)の、ポリエステルフィルム(P)と接していない表面側の表面自由エネルギーが、ポリエステルフィルム(P)と接触している界面側の表面自由エネルギーよりも2.0mN/m以上低いこと。
    (5)樹脂(α)が、アクリロイル基同士の架橋構造と、式(1)で示される化学構造と、式(2)で示される化学構造を有すること。
    Figure 0006060566
    Figure 0006060566
  5. 前記樹脂(α)が式(3)で示される化学構造を有する請求項1〜4のいずれかに記載の積層フィルム。
    Figure 0006060566
  6. 前記樹脂組成物に、さらにオキサゾリン化合物および/またはカルボジイミド化合物を含む請求項1〜5に記載の積層フィルム。
  7. ポリエステルフィルム(P)の少なくとも一面に樹脂層(X)が設けられた、以下の(i)〜(iii)の条件を満たす積層フィルムの製造方法であって、
    該樹脂層(X)が、水酸基とアクリロイル基を有する樹脂(A)と、メチロール基を有するメラミン化合物(B)、およびカルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有し、かつ、アクリル樹脂を含む樹脂(C)を含む樹脂組成物を塗布し、加熱して形成する工程により得られる積層フィルムの製造方法。
    (i) 樹脂層(X)の厚みが90〜500nmであること。
    (ii) 樹脂層(X)を形成する樹脂が、アクリロイル基同士の架橋構造と、式(1)で示される化学構造と、式(2)で示される化学構造を有すること。
    (iii) 樹脂(C)の表面自由エネルギーが樹脂(A)よりも4.0mN/m以下であること。
    Figure 0006060566
    Figure 0006060566
  8. 前記樹脂組成物中の樹脂(A)とメラミン化合物(B)含有量の和を100質量部としたとき、樹脂(A)の含有量が50〜80質量部、メラミン化合物(B)の含有量が20〜50質量部であり、且つ樹脂(A)とメラミン化合物(B)含有量の和を100質量部に対して、樹脂(C)の含有量が20〜50質量部である請求項7に記載の積層フィルムの製造方法。
  9. 前記樹脂(A)が、式(3)で示される化学構造を有する請求項7または8に記載の積層フィルムの製造方法。
    Figure 0006060566
  10. 前記樹脂組成物が、さらにオキサゾリン化合物、及び/またはカルボジイミド化合物を含む樹脂組成物である請求項7〜9のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法。
  11. 樹脂(A)が、少なくとも以下の(a1)〜(a3)の化合物を用いて重合されてなる樹脂であって、用いられる各化合物の質量比が以下のとおりである、請求項7〜10のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法。
    ・アクリル酸エステル化合物及び/又はメタクリル酸エステル化合物(a1):55〜95質量部
    ・水酸基を有するエチレン系不飽和化合物(a2):4〜30質量部
    ・式(3)で示される化学構造と多官能アクリロイル基を有する化合物(a3):1〜15質量部
    ただし、(a1)〜(a3)の質量の合計を100質量部とする。
    Figure 0006060566
  12. 前記(a3)の化合物が、さらにメチロール基を有する請求項11に記載の積層フィルムの製造方法。
  13. 樹脂(C)が、少なくとも以下の(c1)〜(c3)の化合物を用いて重合されてなる樹脂であって、用いられる各化合物の質量比が以下のとおりである、請求項7〜12のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法。
    ・アクリル酸エステル化合物及び/又はメタクリル酸エステル化合物(c1):80〜98質量部
    ・カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、アクリロイル基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有する不飽和化合物(c2):1〜10質量部
    ・Nメチロールアクリルアミド化合物(c3):1〜10質量部
    ただし、(c1)〜(c3)の質量の合計を100質量部とする。
  14. ポリエステルフィルム(P)の少なくとも一面に、前記樹脂組成物を塗布し、次いで少なくとも一軸方向に延伸し、その後、150℃以上に加熱し、樹脂層(X)を形成せしめる請求項7〜13のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法。
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