JP2004195673A - 積層ポリエステルフィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】密着性に優れて表面硬度が高く、フィルム同士の滑り性が良好で、かつ熱による透明性やカール性の悪化のない積層ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】二軸延伸ポリエステルフィルムの両面にメラミン系樹脂を1〜50%含有する塗布層を有し、当該塗布層上に活性化エネルギー線硬化樹脂層をそれぞれ有し、片面の最外層▲1▼が0.01〜0.50μmの粒子を0.05〜2.0重量%含有する厚さ0.02〜1.0μmの活性化エネルギー線硬化樹脂層よりなることを特徴とする積層ポリエステルフィルム。
【選択図】 なし
【解決手段】二軸延伸ポリエステルフィルムの両面にメラミン系樹脂を1〜50%含有する塗布層を有し、当該塗布層上に活性化エネルギー線硬化樹脂層をそれぞれ有し、片面の最外層▲1▼が0.01〜0.50μmの粒子を0.05〜2.0重量%含有する厚さ0.02〜1.0μmの活性化エネルギー線硬化樹脂層よりなることを特徴とする積層ポリエステルフィルム。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、両面に耐光性に優れた塗布層の上に、活性エネルギー線硬化樹脂層を設けた積層ポリエステルフィルムに関し、詳しくは優れた透明性と高い表面硬度を有し、かつフィルムカールが小さく、塗膜面同士の滑り性に優れた積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
二軸延伸ポリエステルフィルムは、透明性、寸法安定性、機械的特性、耐熱性、電気的特性、ガスバリヤー性、耐薬品性などに優れ、包装材料、電気絶縁材料、金属蒸着材料、製版材料、磁気記録材料、表示材料、転写材料、窓貼り材料などを始めとして多くの用途で使用されている。特に、近年、電気、電子情報機器の進歩はめざましく、当該用途におけるポリエステルフィルムの使用方法も多岐に渡っている。例えば、電卓、パソコン、マイコン、PPC、電子レンジ、ミシン、電子玩具など幅広い分野で使用されるメンブレンスイッチや、CRT、フラットディスプレイ等の表示部全面に設けられる透明タッチパネルがその代表例として挙げられる。
【0003】
メンブレンスイッチ用およびタッチパネル用として使用されるポリエステルフィルムは、耐擦傷性、防汚性、防眩性を付与するため、その表面に活性エネルギー線による硬化層(ハードコート層)が一般に形成される。
また、ポリアセタール製等のペンを用いて、直接タッチパネルに接触し文字等を入力する携帯情報端末(PDA(Personal Digital Assistant))等に用いられる場合は、ハードコート層表面の硬さや耐久性がより求められている。
一般的にハードコート層の表面硬度を上げるためには、ハードコート層を厚くする必要があるが、ハードコート層を厚くした場合は、ハードコート層に用いた硬化樹脂の収縮により、フィルムがカールしてしまう問題があり、この問題に対処するため、フィルムの両面にハードコート層を形成する方法が採用されている。
【0004】
しかしながら、ハードコート層を両面に設けた場合には、ハードコート層同士の滑り性が悪くなるため片方のハードコート層に粒子を含有する等の方法で表面に突起を形成させフィルム同士の滑り性を改良しているが、タッチパネル等の透明性が要求される分野ではハードコート層に含有された粒子などが異物となったり、透明性を悪化させてしまったりする問題が生じてしまう。
【0005】
【特許文献1】特開2000−289168号公報
【特許文献2】特開2001−62960号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その課題は、密着性に優れて表面硬度が高く、フィルム同士の滑り性が良好で、かつ熱による透明性やカール性の悪化のない積層ポリエステルフィルムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の塗布層を有するポリエステルに、特定の活性化エネルギー硬化性樹脂層を構成することによれば、上記課題が容易に解決されることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、二軸延伸ポリエステルフィルムの両面にメラミン系樹脂を1〜50%含有する塗布層を有し、当該塗布層上に活性化エネルギー線硬化樹脂層をそれぞれ有し、片面の最外層▲1▼が0.01〜0.50μmの粒子を0.05〜2.0重量%含有する厚さ0.02〜1.0μmの活性化エネルギー線硬化樹脂層よりなることを特徴とする積層ポリエステルフィルムに存する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、ポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸またはそのエステルとグリコールとを主たる出発原料として得られるポリエステルであり、例えば、繰り返し構造単位の80%以上がエチレンテレフタレート単位またはエチレン−2,6−ナフタレート単位または1,4−シクロヘキサンテレフタレートを有するポリエステルを指す。そして、上記の範囲を逸脱しない条件下であれば、他の第三成分を含有していてもよい。
【0010】
芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸以外に、例えば、イソフタル酸、フタル酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えばp−オキシエトキシ安息香酸)等の一種または二種以上を使用することができる。グリコール成分としては、エチレングリコール以外に、例えば、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上を使用することができる。
【0011】
また、本発明においては、フィルムに滑り性を与えて取扱い性を向上するため、ポリエステルに粒子を含有させてフィルム表面に適度な突起を形成させてもよい。用いることのできる粒子としては、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカ、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子、および、ポリエステル重合時に生成させる析出粒子を挙げることができる。これらの粒子は、同一または異なる種類を二種以上併用してもよい。
【0012】
上記の粒子の平均粒径は、通常3.0μm以下、好ましくは2.5μm以下、さらに好ましくは2.0μm以下の範囲である。平均粒径が3.0μmを超える場合は、フィルム製造における溶融押出工程に設けられるフィルターのライフが短くなる。
粒子は、ポリエステルの合成反応中に添加してもポリエステルに直接添加してもよい。合成反応中に添加する場合は、粒子をエチレングリコール等に分散させたスラリーとして、ポリエステル合成の任意の段階で添加する方法が好ましい。一方、ポリエステルに直接添加する場合は、乾燥した粒子として、または、水あるいは沸点が200℃以下の有機溶媒中に分散したスラリーとして、2軸混練押出機を使用してポリエステルに混合する方法が好ましい。添加する粒子は、必要に応じ、事前に解砕、分散、分級、濾過などの処理を施しておいてもよい。
【0013】
粒子の含有量を調節する方法としては、上記した方法で高濃度に粒子を含有するマスター原料を調製し、これに実質的に粒子を含有しない原料を添加して希釈する方法が有効である。本発明においては、必要に応じて、帯電防止剤、安定剤、潤滑剤、架橋剤、固着防止剤、酸化防止剤、着色剤(染料、顔料)、光線遮断剤、紫外線吸収剤などをポリエステルに含有させてもよい。
本発明において、ポリエステルフィルムは、最終的に得られる特性が本発明の要件を満足する限り、多層構造となっていても構わない。例えば、共押出積層フィルムであってもよい。多層構造の場合、上記の記述は、最表面層のポリエステルに適用される。
【0014】
本発明において、二軸延伸ポリエステルフィルムの製造は、同時二軸延伸、逐次二軸延伸の何れかで行われるが、逐次二軸延伸が好ましく採用される。逐次二軸延伸においては、先ず、冷却回転ドラムの表面に溶融ポリエステルを押し出してシートを得、次いで、これを周速差のある一群のロールでフィルムの長手方向に延伸(縦延伸)した後、フィルムの長手方向と直交する方向にクリップで保持しつつ延伸(横延伸)する。上記の縦延伸および横延伸は何回かに分割して行ってもよい。また、分割した縦延伸および横延伸を交互に行ってもよい。例えば、高強度フィルムを再延伸法で製造する方法がこれに相当する。
【0015】
活性化エネルギー線硬化樹脂層をベースフィルムに接着させる方法としては、従来フィルムへの化学的処理や放電処理などを施す方法が知られているが、本発明においてはベースフィルムと活性化エネルギー線硬化樹脂との間に特定の組成を有する易接着層を設けることを特徴とする。かかる易接着層を設ける方法としては、共押し出しや塗布方法が好ましく用いられる。
塗布方法を採用する場合の塗布層は、架橋剤と各種バインダー樹脂との組み合わせからなり、バインダー樹脂としては接着性の観点からポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。
【0016】
本発明は、架橋剤樹脂としてメラミン系樹脂を用いることを特徴とする。メラミン系化合物は、特に限定されるものではないが、メラミン、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロール化メラミン誘導体、メチロール化メラミンに低級アルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。また、メラミン系樹脂としては、単量体、あるいは2量体以上の多量体からなる縮合物のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。
【0017】
上記エーテル化に用いる低級アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノールなどを好ましく使用することができる。官能基としては、イミノ基、メチロール基、あるいはメトキシメチル基やブトキシメチル基等のアルコキシメチル基を1分子中に有するもので、イミノ基型メチル化メラミン樹脂、メチロール基型メラミン樹脂、メチロール基型メチル化メラミン樹脂、完全アルキル型メチル化メラミン樹脂などを用いることができる。それらの中でもメチロール化メラミン樹脂が最も好ましい。さらに、メラミン系架橋剤の熱硬化を促進するため、例えばp−トルエンスルホン酸などの酸性触媒を用いることもできる。
【0018】
塗布剤中におけるメラミン樹脂の配合量は、1〜50重量%の範囲が好ましく、架橋剤樹脂の配合量が5重量%未満の場合は、耐光後の十分な接着性が発揮されず、耐溶剤性の改良効果が不十分であり、50重量%を超える場合は、十分な接着性が発揮されない。
バインダー樹脂として塗布剤中におけるポリエステル系樹脂の配合量は、通常10〜85重量%、好ましくは15〜70重量%の範囲である。ポリエステル系樹脂の配合量が10重量%未満の場合は、十分な接着力が発揮されないことがあり、85重量%を超える場合は、耐固着性が不十分となる傾向がある。
【0019】
塗布剤中におけるアクリル系樹脂の配合量は、通常5〜70重量%、好ましくは10〜60重量%の範囲である。アクリル系樹脂の配合量が5重量%未満の場合は、ハードコート層との接着性が不十分となる場合があり、70重量%を超えると、塗布層自体の延伸追随性が悪化し、塗膜の均一性が悪化する傾向がある。
【0020】
ポリエステル系樹脂としては、次のような多価カルボン酸および多価ヒドロキシ化合物を原料とする常法の重縮合反応により得られる。多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、フタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−カリウムスルホテレフタル酸、5−ソジウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、コハク酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、トリメリット酸モノカリウム塩およびそれらのエステル形成性誘導体などが使用される。多価ヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、p−キシリレングリコール、ビスフェノールA−エチレングリコール付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリテトラメチレンオキシドグリコール、ジメチロールプロピオン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジメチロールエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロールプロピオン酸カリウム等が使用される。
【0021】
ポリエステル系樹脂としては、ポリエステルポリオールをイソシアネートで鎖延長したポリエステルポリウレタン、特開平1−165633号公報に記載されているいわゆるアクリルグラフトポリエステル等のポリエステル成分を有する複合高分子も使用することができる。
アクリル系樹脂としては、アルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートを主要成分とするものが好ましく、特に、アルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレート成分30〜90モル%と官能基を有するビニル単量体成分10〜70モル%とを共重合した水溶性ないしは水分散性のアクリル系樹脂が好ましい。
【0022】
上記のアルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレートのアルキル基の例としては、メチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
上記のビニル単量体の官能基としては、樹脂に親水性を付与して樹脂の水分散性を良好にし、樹脂とポリエステルフィルムおよび塗布層上に形成されるハードコート層との接着性を良好にし、塗布剤として配合する他の樹脂との親和性を良好にし得る官能基が好ましい。そのような機能を有する官能基としては、カルボキシル基またはその塩、酸無水物基、スルホン酸基またはその塩、アミド基またはアルキロール化されたアミド基、アミノ基(置換アミノ基を含む)またはアルキロール化されたアミノ基あるいはそれらの塩、水酸基、エポキシ基などが挙げられ、特にカルボキシル基またはその塩、酸無水物基、エポキシ基が好ましい。これらの基は、ビニル単量体中に二種類以上含有されていてもよい。
【0023】
アクリル系樹脂中のアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートの含有量が30モル%未満の場合は、塗布形成性、塗膜の強度、耐固着性が劣る傾向がある。アクリル系樹脂中のアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートの含有量が90モル%を超える場合は、共重合成分として上記のビニル単量体をアクリル系樹脂に導入しても、水溶化ないしは水分散化が困難となる傾向がある。しかも、塗布層とポリエステルフィルム層との接着性、塗布層内での反応による塗布層の強度、耐水性、耐薬品性などが十分に改善されない。
【0024】
なお、官能基を有するビニル系単量体としては、反応性官能基、自己架橋性官能基、親水性基などの官能基を有する化合物類も使用できる。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩またはアンモニウム塩のほか、無水マレイン酸などが挙げられる。
スルホン酸基またはその塩を有するビニル単量体としては、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、これらのスルホン酸の金属塩やアンモニウム塩などが挙げられる。
【0025】
アミド基またはアルキロール化されたアミド基を有するビニル単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、メチロール化アクリルアミド、メチロール化メタクリルアミド、ウレイドビニルエーテル、β−ウレイドイソブチルビニルエーテル、ウレイドエチルアクリレート等が挙げられる。
アミノ基またはアルキロール化されたアミノ基またはそれらの塩を有するビニル単量体としては、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、2−アミノエチルビニルエーテル、3−アミノプロピルビニルエーテル、2−アミノブチルビニルエーテル、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、それらのアミノ基をメチロール化したビニル単量体の他、ハロゲン化アルキル、ジメチル硫酸、サルトン等により4級化したビニル単量体などが挙げられる。
【0026】
水酸基を有するビニル単量体としては、β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレート、β−ヒドロキシプロピルアクリレート、β−ヒドロキシプロピルメタクリレート、β−ヒドロキシビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート等が挙げられる。
エポキシ基を有するビニル単量体としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
【0027】
さらに、上記以外に次に示すような化合物を併用してもよい。すなわち、アクリロニトリル、スチレン類、ブチルビニルエーテル、マレイン酸モノまたはジアルキルエステル、フマル酸モノまたはジアルキルエステル、イタコン酸モノまたはジアルキルエステル、メチルビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルトリメトキシシラン等を併用してもよい。
【0028】
アクリル系樹脂は、界面活性剤を含有していてもよいが、低分子量の界面活性剤は、造膜過程で濃縮され、粒子と粒子の界面に蓄積されたり、塗布層の界面に移行するなどして、塗布層の機械的強度、耐水性、積層体との接着性に問題を生じる場合がある。このような場合には、界面活性剤を含有しない所謂ソープフリー重合によるアクリル系樹脂を利用できる。
【0029】
界面活性剤を含有しないアクリル系樹脂の製造方法としては、経営開発センター出版部編集、経営開発センター出版部昭和56年1月発行「水溶性高分子・水分散型樹脂総合技術資料」第309頁、または、産業技術研究会主催「〜最新の研究成果から将来を展望する〜エマルジョンの新展開と今後の技術課題」講演会テキスト(昭和56年12月)等に例示された方法を使用することができる。
例えば、低分子量体の界面活性剤の代わりとしてのオリゴマーまたは高分子界面活性剤の利用、過硫酸カリウムや過硫酸アンモニウムなどの重合開始剤の利用による親水基の重合体中への導入、親水基を有するモノマーの共重合、反応性界面活性剤の利用、分散体粒子の内部層と外部層の組織を変化させた所謂シェル−コア型重合体などの技術を利用することができる。
【0030】
本発明において、滑り性、固着性などをさらに改良するため、塗布層中に無機系粒子や有機系粒子を含有させるのが好ましい。
塗布剤中における粒子の配合量は、通常0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%である。かかる配合量が0.5重量%未満では、耐ブロッキング性が不十分となる傾向があり、10重量%を超えると透明性を阻害し、画像の鮮明度が落ちる恐れがある。
無機粒子としては、二酸化ケイ素、アルミナ、酸化ジルコニウム、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化バリウム、カーボンブラック、硫化モリブデン、酸化アンチモン等が挙げられる。これらの中では、二酸化ケイ素が安価でかつ粒子径が多種あるので利用しやすい。
【0031】
有機粒子としては、炭素−炭素二重結合を一分子中に2個以上含有する化合物(例えばジビニルベンゼン)により架橋構造を達成したポリスチレンまたはポリアクリレートポリメタクリレートが挙げられる。さらに、縮合反応のより合成される熱硬化性樹脂の粒子として、メラミン−ホルムアルデヒド、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド、フェノール−ホルムアルデヒド、エポキシ等の各樹脂が挙げられる。さらに、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素系樹脂の粒子、架橋シリコーン樹脂の粒子が挙げられる。
【0032】
上記の無機粒子および有機粒子は表面処理されていてもよい。表面処理剤としては、例えば、界面活性剤、分散剤としての高分子、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などが挙げられる。塗布層中の粒子の含有量は、透明性を阻害しない適切な添加量として10重量%以下が好ましく、さらには5重量%以下が好ましい。また、塗布層は、帯電防止剤、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料などを含有していてもよい。
【0033】
塗布剤は、水を主たる媒体とする限りにおいて、水への分散を改良する目的または造膜性能を改良する目的で少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は、水に溶解する範囲で使用することが好ましい。有機溶剤としては、n−ブチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、メチルアルコール等の脂肪族または脂環族アルコール類、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類、n−ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール誘導体、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸アミル等のエステル類、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類、N−メチルピロリドン等のアミド類が挙げられる。これらの有機溶剤は、必要に応じて二種以上を併用してもよい。
【0034】
塗布層の形成方法としては、二軸延伸後のポリエステルフィルムに塗布剤を塗布する方法(オフラインコーティング法)のほか、塗布剤の塗布後にフィルムを延伸して熱処理する塗布延伸法(インラインコーティング法)と言われる方法がある。塗布層と基材ポリエステルとの密着性の点から塗布延伸法の方が好ましい。塗布延伸方法としては、例えば、未延伸フィルム表面に塗布剤を塗布した後に二軸方向に延伸する方法、または、一軸延伸フィルム表面に塗布剤を塗布した後に先の一軸方向と直交する方向にさらに延伸する方法などが挙げられるが、後者が好ましい。
【0035】
一軸延伸フィルム表面に塗布剤を塗布した後に先の一軸方向と直交する方向にさらに延伸する方法は、具体的には次のように行うのが好ましい。まず、押出装置にポリエステル原料を供給し、ポリエステルの融点以上の温度で溶融押出を行ってスリット状のダイから回転冷却ドラム上に溶融シートとして押し出し、回転冷却ドラム表面上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未延伸シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。
【0036】
次いで、上記の未延伸シートを縦方向に延伸する。延伸温度は通常70〜150℃の範囲、延伸倍率は通常2.5〜6倍の範囲とする。延伸は一段階または二段階以上で行うことができる。次いで、フィルムの両面に塗布剤を塗布し、必要に応じて適度な乾燥を施し、例えば90〜150℃の温度範囲に予熱し、横方向(縦方向と直交する方向)に延伸する。延伸倍率は、通常2.5〜5倍、好ましくは3.0〜4.5倍の範囲とされる。なお、上記の予熱に先立ち一旦ガラス転移点以下にフィルムを冷却してもよい。
【0037】
次いで、30%以内の伸長、制限収縮または定長下で1秒〜5分間の熱処理を行う。この際、特に縦方向の熱収縮率を好適な範囲とするため、熱処理工程内または熱処理後に縦方向に通常10%以内、好ましくは5%以内の弛緩処理をしてもよい。熱処理温度は、延伸条件によって異なるが、通常180〜250℃、好ましくは200〜230℃の範囲である。熱処理温度が250℃を超える場合は、フィルム密度が高くなり過ぎる傾向があり、また、塗布層の一部が熱分解を生ずる場合もある。一方、熱処理温度が180℃未満の場合は、フィルムの熱収縮率が大きくなり過ぎる傾向がある。
【0038】
塗布剤の塗布方法としては、例えば、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示される様な、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクターコーターまたはこれら以外の塗布装置を使用することができる。
塗布層は、ポリエステルフィルムの片面だけに形成してもよいし、両面に形成してもよい。片面にのみ形成した場合、その反対面には必要に応じて上記の塗布層と異なる塗布層を形成して他の特性を付与することもできる。なお、塗布剤のフィルムへの塗布性や接着性を改良するため、塗布前にフィルムに化学処理や放電処理を施してもよい。また、表面特性をさらに改良するため、塗布層形成後に放電処理を施してもよい。
【0039】
塗布層の厚みは、最終的な乾燥厚さとして、通常0.02〜0.5μm、好ましくは0.03〜0.3μmの範囲である。塗布層の厚さが0.02μm未満の場合は、本発明の効果が十分に発揮されない。塗布層の厚さが0.5μmを超える場合は、フィルムが相互に固着しやすくなったり、特にフィルムの高強度化のために塗布処理フィルムを再延伸する場合は、工程中のロールに粘着しやすくなったりする。上記の固着の問題は、特にフィルムの両面に同一の塗布層を形成する場合に顕著に現れる。
【0040】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、タッチパネル等の製造工程において表面が傷つき歩留まりが低下する等の問題を解決するために、二軸延伸ポリエステルフィルムの両面の塗布層上に活性化エネルギー線硬化樹脂層を設けるが、当該樹脂層の表面は非常に平坦なため、フィルムを重ねた場合、フィルム同士でブロッキングが生じ、フィルムがまったく滑らない状態となってしまう問題を有する。かかる問題を解決する方法として、本発明においては、片方の面の最外層▲1▼に易滑層を設けることを特徴とする。
【0041】
さらに、本発明で用いる易滑層は、高い透明性を維持し、かつ滑り性に優れた易滑層を得るため非常に薄い層とし、易滑層▲1▼の反対側の表面に設けられるハードコート層は、高い表面硬度を得るために厚い層とするために、易滑層と反対面に設けられたハードコート層の厚さ比が非常に大きくなるため、活性化エネルギー線硬化樹脂の硬化収縮によりフィルムカールが大きくなる問題を生じる。本発明では、易滑層とポリエステルフィルム塗布層の間にカール防止層を設け、フィルムカールの問題を解決することが好ましい。
【0042】
本発明のフィルムの易滑層は活性化エネルギー線硬化樹脂よりなる。高い透明性と易滑性を得るために、易滑層中に平均粒子径0.01〜0.50μm、好ましくは0.05〜0.20μmの粒子を、0.05〜2.0重量%、好ましくは0.05〜1.0重量%含有させ、かつコート厚さを0.02〜1.0μm、好ましくは0.02〜0.50μmの範囲となるように活性化エネルギー線硬化樹脂層を設けることを特徴とする。
易滑層が含有する粒子の平均粒子径が0.01μm未満では、コート表面にフィルムの滑り性を与えるための突起が形成されないため、コート面同士の滑り性が悪くなり好ましくない。0.50μmを超えた場合には、コート表面に大きな突起が形成されたり、粒子自身の影響で、フィルムの透明性や表面性の悪化が見られたりして好ましくない。
【0043】
易滑層が含有する粒子量が0.01重量%未満では、滑り性が悪く、0.10重量%を超えた場合には、透明性の悪化や表面性の悪化が見られ好ましくない。
易滑層の厚さが0.05μm未満では、塗布されない部分が現れ、いわゆる塗布ヌケと呼ばれている欠陥が発生し、易滑層に厚さが1.0μmを超える場合は、滑り性の改良が不十分となり好ましくない。
易滑層が含有する無機粒子としては、二酸化ケイ素、アルミナ、酸化ジルコニウム、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化バリウム、カーボンブラック、硫化モリブデン、酸化アンチモン等が挙げられる。
【0044】
有機粒子としては、炭素−炭素二重結合を一分子中に2個以上含有する化合物(例えばジビニルベンゼン)により架橋構造を達成したポリスチレンまたはポリアクリレートポリメタクリレートが挙げられる。さらに、縮合反応のより合成される熱硬化性樹脂の粒子として、メラミン−ホルムアルデヒド、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド、フェノール−ホルムアルデヒド、エポキシ等の各樹脂が挙げられる。さらに、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素系樹脂の粒子、架橋シリコーン樹脂の粒子が挙げられる。
【0045】
これらの中では、粒度分布がシャープで粒子径も多種ある二酸化ケイ素や有機粒子が利用しやすい。
易滑層とポリエステル塗布層の間に設けるカール防止層となる活性エネルギー線硬化樹脂層の厚さは、通常1〜10μm、好ましくは2〜8μmの範囲である。厚さが1μm未満の場合はカール防止の効果が不十分となる傾向があり、10μmを超える場合は、屈曲性が劣るようになり少しの曲がりでも硬化樹脂層にクラックが入ってしまう場合がある。
【0046】
前記した易滑層の反対面に設けられた活性化エネルギー線硬化樹脂層よりなるハードコート層の厚さは、通常5〜20μm、好ましくは5〜15μmの範囲である。厚さが5μm未満の場合は表面硬度が不十分となることがあり、20μmを超える場合は、屈曲性が悪くなり好ましくない。
本発明は、片面の活性エネルギー線硬化樹脂層をカール防止層として設けることにより、カール値が15mm以下、さらには10mm以下とすることが好ましい。カール値が15mmを超える場合は、製造工程において歩留まりが悪化したりすることがある。
【0047】
通常、活性エネルギー線樹脂にはコート性を良くするためにレベリング剤が添加されているが、本発明でカール防止層に用いる活性エネルギー線硬化樹脂に関しては、レベリング剤を添加しない方が好ましい。本発明においては、カール防止層の上に易滑層を形成するために、レベリング剤が添加されたカール防止層の上に易滑層をコートした場合は、易滑層のコート液が上手く濡れず塗布した面にコート抜け等の問題が発生する。
【0048】
本発明においてカール防止層の反対面に設けられた活性エネルギー線硬化樹脂層の表面硬度は、通常2H以上、好ましくは3H以上である。2H未満では製品となった時に表面に傷が着きやすくなり製品寿命が短くなる傾向がある。
本発明の積層フィルムは、タッチパネルなどの光学用途に用いられるが、150℃で60分間熱処理後のヘーズ値は通常5.0%以下、好ましくは3.0%である。熱処理後のヘーズ値が5%を超える場合は、タッチパネル等の製造工程でフィルムが加熱された際にヘーズが生じ透明性が悪化することがある。熱処理によりヘーズが高くなる原因としては、ポリエステルフィルムの表面に析出してくるオリゴマーが考えられるが、本発明の積層ポリエステルフィルムは、活性エネルギー線硬化樹脂層が両面に設けられているため、オリゴマーの析出が防止できるのでヘーズの上昇も抑えることができる特徴を有している。
【0049】
本発明において、活性エネルギー線硬化樹脂層の硬化成分としては、不飽和ポリエステル樹脂系、アクリル系、付加重合系、チオール・アクリルのハイブリッド系、カチオン重合系、カチオン重合とラジカル重合のハイブリッド系などを使用することができる。これらの中では、硬化性、耐擦傷性、表面硬度、可撓性および耐久性などの観点でアクリル系の硬化成分が好ましい。
上記のアクリル系硬化成分は、活性エネルギー線重合成分としてのアクリルオリゴマーと反応性希釈剤とを含有する。そして、必要に応じ、光重合開始剤、光増感剤、改質剤を含有する。
【0050】
アクリルオリゴマーとしては、代表的には、アクリル系樹脂骨格に反応性のアクリロイル基またはメタアクリロイル基が結合されたオリゴマーが挙げられる。その他のアクリルオリゴマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート等が挙げられる。さらに、メラミン、イソシアヌール酸、環状ホスファゼン等の剛直な骨格にアクリロイル基またはメタアクリロイル基が結合したオリゴマーが挙げられる。
【0051】
反応性希釈剤は、塗布剤の媒体として塗布工程での溶剤の機能を担うとともに、それ自体が多官能性または一官能性のアクリルオルゴマーと反応する基を有するため、塗膜の共重合成分となる。反応性希釈剤の具体例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0052】
光重合開始剤としては、例えば、2,2−エトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシー2ーフェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジベンゾイル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、p−クロロベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、アセトフェノン、2−クロロチオキサントン、アントラキノン、フェニルジスルフイド、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン等が挙げられる。
【0053】
光増感剤としては、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール等の3級アミン系、トリフェニルホスフィン等のアルキルホスフィン系、β−チオジグリコール等のチオエーテル系などが挙げられる。
改質剤としては、塗布性改良剤、消泡剤、増粘剤、無機系粒子、有機系粒子、潤滑剤、有機高分子、染料、顔料、安定剤などが挙げられる。これらは、活性エネルギー線による反応を阻害しない範囲で使用され、活性エネルギー線硬化樹脂層の特性を用途に応じて改良することができる。活性エネルギー線硬化樹脂層の組成物には、塗工時の作業性向上、塗工厚さのコントロールのため、有機溶剤を配合することができる。
【0054】
活性エネルギー線硬化樹脂層の形成は、硬化用樹脂組成物を前記の塗布層の表面に塗布した後に活性エネルギー線を照射して架橋硬化させることにより行う。活性エネルギー線としては、紫外線、可視光線、電子線、X線、α線、β線、γ線を使用することができる。活性エネルギー線の照射は、通常、塗布層側から行うが、フィルムとの密着性を高めるため、フィルム面側から行ってもよく、さらには、活性エネルギー線を反射し得る反射板をフィルム面側に設けてもよい。
【0055】
【実施例】
以下、実施例を挙げてさらに詳細に本発明を説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の評価方法は下記のとおりである。実施例および比較例中「部」とあるのは「重量部」を示す。
【0056】
(1)フィルムの極限粘度[η](dl/g)
ポリマー1gをフェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlに溶解し、30℃で測定した。
【0057】
(2)平均粒子径
粒子の走査電子顕微鏡観察より粒子毎の最大径および最小径を測定して、その相加平均を粒子一個の粒径(直径)とした。少なくとも粒子100個について粒径を測定し、それらの相加平均を平均粒径とした。
【0058】
(3)ハードコート層との接着性
カール防止層の反対面に設けたハードコート層を評価した。
▲1▼初期接着性
ハードコート層形成直後、当該ハードコート層に1インチ幅に碁盤目が100個になるようクロスカットを入れ、直ちに、同一箇所について3回セロテープ(登録商標)で急速剥離テストを実施し、剥離面積により評価した。判定基準は以下のとおりである。
◎:碁盤目剥離個数=0
○:1≦碁盤目剥離個数≦10
△:11≦碁盤目剥離個数≦20
×:21<碁盤目剥離個数
【0059】
▲2▼耐光後接着性:
活性エネルギー線硬化樹脂層形成直後、スガ試験機(株)製ロングライフタイプ耐光試験機(Standard UV Long−Life FADE METER)にてUV光がハードコート面側から当たるようにセットし、100時間照射した後、セロテープ(登録商標)による急速剥離テストを行った以外は、初期接着性評価と同じ方法にて評価した。
【0060】
(4)カール値
100mm×100mmの大きさのサンプルを、凹面を上にして平らな面の上に置き、四隅の跳ね上がり高さを測定し平均値をカール値とした。
【0061】
(5)屈曲性
評価する活性エネルギー線硬化樹脂層を有する面を、JIS K 5600−5−1に記載されているタイプIの試験装置により求めた。
【0062】
(6)生産性
生産性について下記基準に従いランク付けした。
○:通常の生産速度で生産可能である
△:歩留まりの低下等により生産速度ダウン率が通常生産品の1〜10%の範囲にある
×:歩留まりの低下等により生産速度ダウン率が通常生産品の11%以上ある
【0063】
(7)表面の状態
易滑層の表面を目視観察し、下記基準に従いランク付けした。
○:表面に全く異常は見られない
△:表面に粒子起因と思われるブツが確認されるが、実用上問題とならない程度である
×:表面に粒子起因と思われるブツが明確に確認され、実用上も問題となる程度である
【0064】
(8)熱処理フィルムヘーズ
窒素雰囲気下、180℃のオーブンで10分間放置し熱処理を行ったフィルムをJIS−K7105に準じ、日本電色工業社製積分球式濁度計NDH−20Dにより熱処理後のフィルムの濁度を測定した。
【0065】
(9)表面硬度
カール防止層の反対面をJIS K5400(1990)に従い、各種硬度の鉛筆を45°の角度で硬化樹脂層表面に当て、荷重1kgの下で引掻きを与え、そして、傷が発生したときの鉛筆の硬度を表面硬度とした。
【0066】
(10)耐擦傷性
カール防止層の反対面をスチールウール#0000で硬化樹脂層表面を摩擦し、そして、キズの発生状況を下記の基準によって評価した。
A:強く摩擦してもほとんど傷が付かない
B:強く摩擦すると少し傷が付く
C:弱い摩擦でも傷が付く
【0067】
(11)フィルムの滑り性
活性エネルギー線硬化樹脂よりなるカール防止層が設けられている場合は、カール防止層の面とカール防止層の反対側の活性エネルギー線硬化樹脂層の面が重なる様にフィルムを重ね合わせ、手で擦り合わせることにより、フィルムの滑り性を下記の基準によって評価した。
カール防止層が設けられていない場合は、活性エネルギー線硬化樹脂層と活性エネルギー線硬化樹脂層が設けられていない面が重なるようにフィルムを重ね合わせ、手で擦り合わせることにより、フィルムの滑り性を下記の基準によって評価した。
◎:非常に滑らかに滑る
○:滑らかに滑る
△:かろうじて滑る
×:全く滑らない
【0068】
[塗布液の調製]
下記表1に示す塗布液を下記表2に示す割合で配合してP1〜P4の塗布液を調製した。
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
[活性エネルギー線硬化樹脂の調整]
下記表3に示す活性エネルギー線硬化樹脂を下記表4に示す割合で配合してHC1〜HC10の活性エネルギー線硬化樹脂塗布剤を調製した。塗布液の固形分濃度は2重量%とした。
【表3】
【表4】
【0071】
実施例1
[フィルムの製造]
平均粒子径1.5μmのシリカ粒子15ppmを含有する極限粘度0.75のポリエチレンテレフタレートを常法により乾燥して押出機に供給し、290℃で溶融してシート状に押出し、静電印加密着法を適用して冷却回転ロール上で急冷し、の無定形シートを得た。得られたシートをロール延伸法で縦方向に85℃で2.5倍延伸し、さらに、95℃で1.3倍延伸た後、表2に示すP1よりなる塗布液をフィルムの両面に塗布し、テンターに導き、横方向に120℃で3.2倍延伸し、230℃で熱処理を行った後、横方向に2%弛緩し、30m/分の生産速度でフィルムをロール状に巻き上げた。フィルムの厚さは125μm、極限粘度は0.66であった。
次いで、上記フィルムの塗布層上にカール防止層として表4に示すHC1よりなる活性エネルギー線硬化樹脂を、硬化後の厚さが5μmになるように塗布し、120W/cmのエネルギーの高圧水銀灯を使用し、照射距離100mmにて約10秒間照射して積層ポリエステルフィルムを得た。
さらに、表4に示すHC3よりなる活性エネルギー線硬化樹脂層を、カール防止層上に易滑層として塗布した。塗布厚さは、硬化後の厚さが0.045μmになるようにし、120W/cmのエネルギーの高圧水銀灯を使用し、照射距離100mmにて約10秒間照射して、カール防止層の上に易滑層を形成した積層ポリエステルフィルムを得た。
さらに、易滑層の反対面に、表4に示すHC2よりなる活性エネルギー線硬化樹脂をハードコート層として硬化後の厚さが7μmになるように塗布し、120W/cmのエネルギーの高圧水銀灯を使用し、照射距離100mmにて約10秒間照射して本発明の積層ポリエステルフィルムを得た。フィルムの評価結果を下記表6に示す。
【0072】
実施例2〜13、比較例1〜8
実施例1において、塗布液の種類、活性エネルギー線硬化樹脂よりなるハードコート層、カール防止層、易滑層の活性エネルギー線硬化樹脂とコート厚さを、下記表5に記載した以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。
また、実施例10に関してはカール防止層を設けず、比較例1に関してはカール防止層と易滑層を設けず、比較例6に関しては易滑層を設けていない。
フィルムの評価結果を表6および7に示す。
【0073】
【表5】
【0074】
【表6】
【0075】
【表7】
【0076】
【発明の効果】
本発明によれば、両面に活性エネルギー線硬化樹脂層を有する積層ポリエステルフィルムにおいて、優れた透明性と高い表面硬度を有し、かつフィルムカールが小さく、塗膜面同士の滑り性に優れた積層ポリエステルフィルムを提供することができ、その工業的価値は高い。
【発明の属する技術分野】
本発明は、両面に耐光性に優れた塗布層の上に、活性エネルギー線硬化樹脂層を設けた積層ポリエステルフィルムに関し、詳しくは優れた透明性と高い表面硬度を有し、かつフィルムカールが小さく、塗膜面同士の滑り性に優れた積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
二軸延伸ポリエステルフィルムは、透明性、寸法安定性、機械的特性、耐熱性、電気的特性、ガスバリヤー性、耐薬品性などに優れ、包装材料、電気絶縁材料、金属蒸着材料、製版材料、磁気記録材料、表示材料、転写材料、窓貼り材料などを始めとして多くの用途で使用されている。特に、近年、電気、電子情報機器の進歩はめざましく、当該用途におけるポリエステルフィルムの使用方法も多岐に渡っている。例えば、電卓、パソコン、マイコン、PPC、電子レンジ、ミシン、電子玩具など幅広い分野で使用されるメンブレンスイッチや、CRT、フラットディスプレイ等の表示部全面に設けられる透明タッチパネルがその代表例として挙げられる。
【0003】
メンブレンスイッチ用およびタッチパネル用として使用されるポリエステルフィルムは、耐擦傷性、防汚性、防眩性を付与するため、その表面に活性エネルギー線による硬化層(ハードコート層)が一般に形成される。
また、ポリアセタール製等のペンを用いて、直接タッチパネルに接触し文字等を入力する携帯情報端末(PDA(Personal Digital Assistant))等に用いられる場合は、ハードコート層表面の硬さや耐久性がより求められている。
一般的にハードコート層の表面硬度を上げるためには、ハードコート層を厚くする必要があるが、ハードコート層を厚くした場合は、ハードコート層に用いた硬化樹脂の収縮により、フィルムがカールしてしまう問題があり、この問題に対処するため、フィルムの両面にハードコート層を形成する方法が採用されている。
【0004】
しかしながら、ハードコート層を両面に設けた場合には、ハードコート層同士の滑り性が悪くなるため片方のハードコート層に粒子を含有する等の方法で表面に突起を形成させフィルム同士の滑り性を改良しているが、タッチパネル等の透明性が要求される分野ではハードコート層に含有された粒子などが異物となったり、透明性を悪化させてしまったりする問題が生じてしまう。
【0005】
【特許文献1】特開2000−289168号公報
【特許文献2】特開2001−62960号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その課題は、密着性に優れて表面硬度が高く、フィルム同士の滑り性が良好で、かつ熱による透明性やカール性の悪化のない積層ポリエステルフィルムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の塗布層を有するポリエステルに、特定の活性化エネルギー硬化性樹脂層を構成することによれば、上記課題が容易に解決されることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、二軸延伸ポリエステルフィルムの両面にメラミン系樹脂を1〜50%含有する塗布層を有し、当該塗布層上に活性化エネルギー線硬化樹脂層をそれぞれ有し、片面の最外層▲1▼が0.01〜0.50μmの粒子を0.05〜2.0重量%含有する厚さ0.02〜1.0μmの活性化エネルギー線硬化樹脂層よりなることを特徴とする積層ポリエステルフィルムに存する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、ポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸またはそのエステルとグリコールとを主たる出発原料として得られるポリエステルであり、例えば、繰り返し構造単位の80%以上がエチレンテレフタレート単位またはエチレン−2,6−ナフタレート単位または1,4−シクロヘキサンテレフタレートを有するポリエステルを指す。そして、上記の範囲を逸脱しない条件下であれば、他の第三成分を含有していてもよい。
【0010】
芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸以外に、例えば、イソフタル酸、フタル酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えばp−オキシエトキシ安息香酸)等の一種または二種以上を使用することができる。グリコール成分としては、エチレングリコール以外に、例えば、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上を使用することができる。
【0011】
また、本発明においては、フィルムに滑り性を与えて取扱い性を向上するため、ポリエステルに粒子を含有させてフィルム表面に適度な突起を形成させてもよい。用いることのできる粒子としては、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカ、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子、および、ポリエステル重合時に生成させる析出粒子を挙げることができる。これらの粒子は、同一または異なる種類を二種以上併用してもよい。
【0012】
上記の粒子の平均粒径は、通常3.0μm以下、好ましくは2.5μm以下、さらに好ましくは2.0μm以下の範囲である。平均粒径が3.0μmを超える場合は、フィルム製造における溶融押出工程に設けられるフィルターのライフが短くなる。
粒子は、ポリエステルの合成反応中に添加してもポリエステルに直接添加してもよい。合成反応中に添加する場合は、粒子をエチレングリコール等に分散させたスラリーとして、ポリエステル合成の任意の段階で添加する方法が好ましい。一方、ポリエステルに直接添加する場合は、乾燥した粒子として、または、水あるいは沸点が200℃以下の有機溶媒中に分散したスラリーとして、2軸混練押出機を使用してポリエステルに混合する方法が好ましい。添加する粒子は、必要に応じ、事前に解砕、分散、分級、濾過などの処理を施しておいてもよい。
【0013】
粒子の含有量を調節する方法としては、上記した方法で高濃度に粒子を含有するマスター原料を調製し、これに実質的に粒子を含有しない原料を添加して希釈する方法が有効である。本発明においては、必要に応じて、帯電防止剤、安定剤、潤滑剤、架橋剤、固着防止剤、酸化防止剤、着色剤(染料、顔料)、光線遮断剤、紫外線吸収剤などをポリエステルに含有させてもよい。
本発明において、ポリエステルフィルムは、最終的に得られる特性が本発明の要件を満足する限り、多層構造となっていても構わない。例えば、共押出積層フィルムであってもよい。多層構造の場合、上記の記述は、最表面層のポリエステルに適用される。
【0014】
本発明において、二軸延伸ポリエステルフィルムの製造は、同時二軸延伸、逐次二軸延伸の何れかで行われるが、逐次二軸延伸が好ましく採用される。逐次二軸延伸においては、先ず、冷却回転ドラムの表面に溶融ポリエステルを押し出してシートを得、次いで、これを周速差のある一群のロールでフィルムの長手方向に延伸(縦延伸)した後、フィルムの長手方向と直交する方向にクリップで保持しつつ延伸(横延伸)する。上記の縦延伸および横延伸は何回かに分割して行ってもよい。また、分割した縦延伸および横延伸を交互に行ってもよい。例えば、高強度フィルムを再延伸法で製造する方法がこれに相当する。
【0015】
活性化エネルギー線硬化樹脂層をベースフィルムに接着させる方法としては、従来フィルムへの化学的処理や放電処理などを施す方法が知られているが、本発明においてはベースフィルムと活性化エネルギー線硬化樹脂との間に特定の組成を有する易接着層を設けることを特徴とする。かかる易接着層を設ける方法としては、共押し出しや塗布方法が好ましく用いられる。
塗布方法を採用する場合の塗布層は、架橋剤と各種バインダー樹脂との組み合わせからなり、バインダー樹脂としては接着性の観点からポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。
【0016】
本発明は、架橋剤樹脂としてメラミン系樹脂を用いることを特徴とする。メラミン系化合物は、特に限定されるものではないが、メラミン、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロール化メラミン誘導体、メチロール化メラミンに低級アルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。また、メラミン系樹脂としては、単量体、あるいは2量体以上の多量体からなる縮合物のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。
【0017】
上記エーテル化に用いる低級アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノールなどを好ましく使用することができる。官能基としては、イミノ基、メチロール基、あるいはメトキシメチル基やブトキシメチル基等のアルコキシメチル基を1分子中に有するもので、イミノ基型メチル化メラミン樹脂、メチロール基型メラミン樹脂、メチロール基型メチル化メラミン樹脂、完全アルキル型メチル化メラミン樹脂などを用いることができる。それらの中でもメチロール化メラミン樹脂が最も好ましい。さらに、メラミン系架橋剤の熱硬化を促進するため、例えばp−トルエンスルホン酸などの酸性触媒を用いることもできる。
【0018】
塗布剤中におけるメラミン樹脂の配合量は、1〜50重量%の範囲が好ましく、架橋剤樹脂の配合量が5重量%未満の場合は、耐光後の十分な接着性が発揮されず、耐溶剤性の改良効果が不十分であり、50重量%を超える場合は、十分な接着性が発揮されない。
バインダー樹脂として塗布剤中におけるポリエステル系樹脂の配合量は、通常10〜85重量%、好ましくは15〜70重量%の範囲である。ポリエステル系樹脂の配合量が10重量%未満の場合は、十分な接着力が発揮されないことがあり、85重量%を超える場合は、耐固着性が不十分となる傾向がある。
【0019】
塗布剤中におけるアクリル系樹脂の配合量は、通常5〜70重量%、好ましくは10〜60重量%の範囲である。アクリル系樹脂の配合量が5重量%未満の場合は、ハードコート層との接着性が不十分となる場合があり、70重量%を超えると、塗布層自体の延伸追随性が悪化し、塗膜の均一性が悪化する傾向がある。
【0020】
ポリエステル系樹脂としては、次のような多価カルボン酸および多価ヒドロキシ化合物を原料とする常法の重縮合反応により得られる。多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、フタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−カリウムスルホテレフタル酸、5−ソジウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、コハク酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、トリメリット酸モノカリウム塩およびそれらのエステル形成性誘導体などが使用される。多価ヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、p−キシリレングリコール、ビスフェノールA−エチレングリコール付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリテトラメチレンオキシドグリコール、ジメチロールプロピオン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジメチロールエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロールプロピオン酸カリウム等が使用される。
【0021】
ポリエステル系樹脂としては、ポリエステルポリオールをイソシアネートで鎖延長したポリエステルポリウレタン、特開平1−165633号公報に記載されているいわゆるアクリルグラフトポリエステル等のポリエステル成分を有する複合高分子も使用することができる。
アクリル系樹脂としては、アルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートを主要成分とするものが好ましく、特に、アルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレート成分30〜90モル%と官能基を有するビニル単量体成分10〜70モル%とを共重合した水溶性ないしは水分散性のアクリル系樹脂が好ましい。
【0022】
上記のアルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレートのアルキル基の例としては、メチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
上記のビニル単量体の官能基としては、樹脂に親水性を付与して樹脂の水分散性を良好にし、樹脂とポリエステルフィルムおよび塗布層上に形成されるハードコート層との接着性を良好にし、塗布剤として配合する他の樹脂との親和性を良好にし得る官能基が好ましい。そのような機能を有する官能基としては、カルボキシル基またはその塩、酸無水物基、スルホン酸基またはその塩、アミド基またはアルキロール化されたアミド基、アミノ基(置換アミノ基を含む)またはアルキロール化されたアミノ基あるいはそれらの塩、水酸基、エポキシ基などが挙げられ、特にカルボキシル基またはその塩、酸無水物基、エポキシ基が好ましい。これらの基は、ビニル単量体中に二種類以上含有されていてもよい。
【0023】
アクリル系樹脂中のアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートの含有量が30モル%未満の場合は、塗布形成性、塗膜の強度、耐固着性が劣る傾向がある。アクリル系樹脂中のアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートの含有量が90モル%を超える場合は、共重合成分として上記のビニル単量体をアクリル系樹脂に導入しても、水溶化ないしは水分散化が困難となる傾向がある。しかも、塗布層とポリエステルフィルム層との接着性、塗布層内での反応による塗布層の強度、耐水性、耐薬品性などが十分に改善されない。
【0024】
なお、官能基を有するビニル系単量体としては、反応性官能基、自己架橋性官能基、親水性基などの官能基を有する化合物類も使用できる。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩またはアンモニウム塩のほか、無水マレイン酸などが挙げられる。
スルホン酸基またはその塩を有するビニル単量体としては、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、これらのスルホン酸の金属塩やアンモニウム塩などが挙げられる。
【0025】
アミド基またはアルキロール化されたアミド基を有するビニル単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、メチロール化アクリルアミド、メチロール化メタクリルアミド、ウレイドビニルエーテル、β−ウレイドイソブチルビニルエーテル、ウレイドエチルアクリレート等が挙げられる。
アミノ基またはアルキロール化されたアミノ基またはそれらの塩を有するビニル単量体としては、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、2−アミノエチルビニルエーテル、3−アミノプロピルビニルエーテル、2−アミノブチルビニルエーテル、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、それらのアミノ基をメチロール化したビニル単量体の他、ハロゲン化アルキル、ジメチル硫酸、サルトン等により4級化したビニル単量体などが挙げられる。
【0026】
水酸基を有するビニル単量体としては、β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレート、β−ヒドロキシプロピルアクリレート、β−ヒドロキシプロピルメタクリレート、β−ヒドロキシビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート等が挙げられる。
エポキシ基を有するビニル単量体としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
【0027】
さらに、上記以外に次に示すような化合物を併用してもよい。すなわち、アクリロニトリル、スチレン類、ブチルビニルエーテル、マレイン酸モノまたはジアルキルエステル、フマル酸モノまたはジアルキルエステル、イタコン酸モノまたはジアルキルエステル、メチルビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルトリメトキシシラン等を併用してもよい。
【0028】
アクリル系樹脂は、界面活性剤を含有していてもよいが、低分子量の界面活性剤は、造膜過程で濃縮され、粒子と粒子の界面に蓄積されたり、塗布層の界面に移行するなどして、塗布層の機械的強度、耐水性、積層体との接着性に問題を生じる場合がある。このような場合には、界面活性剤を含有しない所謂ソープフリー重合によるアクリル系樹脂を利用できる。
【0029】
界面活性剤を含有しないアクリル系樹脂の製造方法としては、経営開発センター出版部編集、経営開発センター出版部昭和56年1月発行「水溶性高分子・水分散型樹脂総合技術資料」第309頁、または、産業技術研究会主催「〜最新の研究成果から将来を展望する〜エマルジョンの新展開と今後の技術課題」講演会テキスト(昭和56年12月)等に例示された方法を使用することができる。
例えば、低分子量体の界面活性剤の代わりとしてのオリゴマーまたは高分子界面活性剤の利用、過硫酸カリウムや過硫酸アンモニウムなどの重合開始剤の利用による親水基の重合体中への導入、親水基を有するモノマーの共重合、反応性界面活性剤の利用、分散体粒子の内部層と外部層の組織を変化させた所謂シェル−コア型重合体などの技術を利用することができる。
【0030】
本発明において、滑り性、固着性などをさらに改良するため、塗布層中に無機系粒子や有機系粒子を含有させるのが好ましい。
塗布剤中における粒子の配合量は、通常0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%である。かかる配合量が0.5重量%未満では、耐ブロッキング性が不十分となる傾向があり、10重量%を超えると透明性を阻害し、画像の鮮明度が落ちる恐れがある。
無機粒子としては、二酸化ケイ素、アルミナ、酸化ジルコニウム、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化バリウム、カーボンブラック、硫化モリブデン、酸化アンチモン等が挙げられる。これらの中では、二酸化ケイ素が安価でかつ粒子径が多種あるので利用しやすい。
【0031】
有機粒子としては、炭素−炭素二重結合を一分子中に2個以上含有する化合物(例えばジビニルベンゼン)により架橋構造を達成したポリスチレンまたはポリアクリレートポリメタクリレートが挙げられる。さらに、縮合反応のより合成される熱硬化性樹脂の粒子として、メラミン−ホルムアルデヒド、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド、フェノール−ホルムアルデヒド、エポキシ等の各樹脂が挙げられる。さらに、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素系樹脂の粒子、架橋シリコーン樹脂の粒子が挙げられる。
【0032】
上記の無機粒子および有機粒子は表面処理されていてもよい。表面処理剤としては、例えば、界面活性剤、分散剤としての高分子、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などが挙げられる。塗布層中の粒子の含有量は、透明性を阻害しない適切な添加量として10重量%以下が好ましく、さらには5重量%以下が好ましい。また、塗布層は、帯電防止剤、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料などを含有していてもよい。
【0033】
塗布剤は、水を主たる媒体とする限りにおいて、水への分散を改良する目的または造膜性能を改良する目的で少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は、水に溶解する範囲で使用することが好ましい。有機溶剤としては、n−ブチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、メチルアルコール等の脂肪族または脂環族アルコール類、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類、n−ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール誘導体、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸アミル等のエステル類、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類、N−メチルピロリドン等のアミド類が挙げられる。これらの有機溶剤は、必要に応じて二種以上を併用してもよい。
【0034】
塗布層の形成方法としては、二軸延伸後のポリエステルフィルムに塗布剤を塗布する方法(オフラインコーティング法)のほか、塗布剤の塗布後にフィルムを延伸して熱処理する塗布延伸法(インラインコーティング法)と言われる方法がある。塗布層と基材ポリエステルとの密着性の点から塗布延伸法の方が好ましい。塗布延伸方法としては、例えば、未延伸フィルム表面に塗布剤を塗布した後に二軸方向に延伸する方法、または、一軸延伸フィルム表面に塗布剤を塗布した後に先の一軸方向と直交する方向にさらに延伸する方法などが挙げられるが、後者が好ましい。
【0035】
一軸延伸フィルム表面に塗布剤を塗布した後に先の一軸方向と直交する方向にさらに延伸する方法は、具体的には次のように行うのが好ましい。まず、押出装置にポリエステル原料を供給し、ポリエステルの融点以上の温度で溶融押出を行ってスリット状のダイから回転冷却ドラム上に溶融シートとして押し出し、回転冷却ドラム表面上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未延伸シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。
【0036】
次いで、上記の未延伸シートを縦方向に延伸する。延伸温度は通常70〜150℃の範囲、延伸倍率は通常2.5〜6倍の範囲とする。延伸は一段階または二段階以上で行うことができる。次いで、フィルムの両面に塗布剤を塗布し、必要に応じて適度な乾燥を施し、例えば90〜150℃の温度範囲に予熱し、横方向(縦方向と直交する方向)に延伸する。延伸倍率は、通常2.5〜5倍、好ましくは3.0〜4.5倍の範囲とされる。なお、上記の予熱に先立ち一旦ガラス転移点以下にフィルムを冷却してもよい。
【0037】
次いで、30%以内の伸長、制限収縮または定長下で1秒〜5分間の熱処理を行う。この際、特に縦方向の熱収縮率を好適な範囲とするため、熱処理工程内または熱処理後に縦方向に通常10%以内、好ましくは5%以内の弛緩処理をしてもよい。熱処理温度は、延伸条件によって異なるが、通常180〜250℃、好ましくは200〜230℃の範囲である。熱処理温度が250℃を超える場合は、フィルム密度が高くなり過ぎる傾向があり、また、塗布層の一部が熱分解を生ずる場合もある。一方、熱処理温度が180℃未満の場合は、フィルムの熱収縮率が大きくなり過ぎる傾向がある。
【0038】
塗布剤の塗布方法としては、例えば、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示される様な、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクターコーターまたはこれら以外の塗布装置を使用することができる。
塗布層は、ポリエステルフィルムの片面だけに形成してもよいし、両面に形成してもよい。片面にのみ形成した場合、その反対面には必要に応じて上記の塗布層と異なる塗布層を形成して他の特性を付与することもできる。なお、塗布剤のフィルムへの塗布性や接着性を改良するため、塗布前にフィルムに化学処理や放電処理を施してもよい。また、表面特性をさらに改良するため、塗布層形成後に放電処理を施してもよい。
【0039】
塗布層の厚みは、最終的な乾燥厚さとして、通常0.02〜0.5μm、好ましくは0.03〜0.3μmの範囲である。塗布層の厚さが0.02μm未満の場合は、本発明の効果が十分に発揮されない。塗布層の厚さが0.5μmを超える場合は、フィルムが相互に固着しやすくなったり、特にフィルムの高強度化のために塗布処理フィルムを再延伸する場合は、工程中のロールに粘着しやすくなったりする。上記の固着の問題は、特にフィルムの両面に同一の塗布層を形成する場合に顕著に現れる。
【0040】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、タッチパネル等の製造工程において表面が傷つき歩留まりが低下する等の問題を解決するために、二軸延伸ポリエステルフィルムの両面の塗布層上に活性化エネルギー線硬化樹脂層を設けるが、当該樹脂層の表面は非常に平坦なため、フィルムを重ねた場合、フィルム同士でブロッキングが生じ、フィルムがまったく滑らない状態となってしまう問題を有する。かかる問題を解決する方法として、本発明においては、片方の面の最外層▲1▼に易滑層を設けることを特徴とする。
【0041】
さらに、本発明で用いる易滑層は、高い透明性を維持し、かつ滑り性に優れた易滑層を得るため非常に薄い層とし、易滑層▲1▼の反対側の表面に設けられるハードコート層は、高い表面硬度を得るために厚い層とするために、易滑層と反対面に設けられたハードコート層の厚さ比が非常に大きくなるため、活性化エネルギー線硬化樹脂の硬化収縮によりフィルムカールが大きくなる問題を生じる。本発明では、易滑層とポリエステルフィルム塗布層の間にカール防止層を設け、フィルムカールの問題を解決することが好ましい。
【0042】
本発明のフィルムの易滑層は活性化エネルギー線硬化樹脂よりなる。高い透明性と易滑性を得るために、易滑層中に平均粒子径0.01〜0.50μm、好ましくは0.05〜0.20μmの粒子を、0.05〜2.0重量%、好ましくは0.05〜1.0重量%含有させ、かつコート厚さを0.02〜1.0μm、好ましくは0.02〜0.50μmの範囲となるように活性化エネルギー線硬化樹脂層を設けることを特徴とする。
易滑層が含有する粒子の平均粒子径が0.01μm未満では、コート表面にフィルムの滑り性を与えるための突起が形成されないため、コート面同士の滑り性が悪くなり好ましくない。0.50μmを超えた場合には、コート表面に大きな突起が形成されたり、粒子自身の影響で、フィルムの透明性や表面性の悪化が見られたりして好ましくない。
【0043】
易滑層が含有する粒子量が0.01重量%未満では、滑り性が悪く、0.10重量%を超えた場合には、透明性の悪化や表面性の悪化が見られ好ましくない。
易滑層の厚さが0.05μm未満では、塗布されない部分が現れ、いわゆる塗布ヌケと呼ばれている欠陥が発生し、易滑層に厚さが1.0μmを超える場合は、滑り性の改良が不十分となり好ましくない。
易滑層が含有する無機粒子としては、二酸化ケイ素、アルミナ、酸化ジルコニウム、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化バリウム、カーボンブラック、硫化モリブデン、酸化アンチモン等が挙げられる。
【0044】
有機粒子としては、炭素−炭素二重結合を一分子中に2個以上含有する化合物(例えばジビニルベンゼン)により架橋構造を達成したポリスチレンまたはポリアクリレートポリメタクリレートが挙げられる。さらに、縮合反応のより合成される熱硬化性樹脂の粒子として、メラミン−ホルムアルデヒド、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド、フェノール−ホルムアルデヒド、エポキシ等の各樹脂が挙げられる。さらに、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素系樹脂の粒子、架橋シリコーン樹脂の粒子が挙げられる。
【0045】
これらの中では、粒度分布がシャープで粒子径も多種ある二酸化ケイ素や有機粒子が利用しやすい。
易滑層とポリエステル塗布層の間に設けるカール防止層となる活性エネルギー線硬化樹脂層の厚さは、通常1〜10μm、好ましくは2〜8μmの範囲である。厚さが1μm未満の場合はカール防止の効果が不十分となる傾向があり、10μmを超える場合は、屈曲性が劣るようになり少しの曲がりでも硬化樹脂層にクラックが入ってしまう場合がある。
【0046】
前記した易滑層の反対面に設けられた活性化エネルギー線硬化樹脂層よりなるハードコート層の厚さは、通常5〜20μm、好ましくは5〜15μmの範囲である。厚さが5μm未満の場合は表面硬度が不十分となることがあり、20μmを超える場合は、屈曲性が悪くなり好ましくない。
本発明は、片面の活性エネルギー線硬化樹脂層をカール防止層として設けることにより、カール値が15mm以下、さらには10mm以下とすることが好ましい。カール値が15mmを超える場合は、製造工程において歩留まりが悪化したりすることがある。
【0047】
通常、活性エネルギー線樹脂にはコート性を良くするためにレベリング剤が添加されているが、本発明でカール防止層に用いる活性エネルギー線硬化樹脂に関しては、レベリング剤を添加しない方が好ましい。本発明においては、カール防止層の上に易滑層を形成するために、レベリング剤が添加されたカール防止層の上に易滑層をコートした場合は、易滑層のコート液が上手く濡れず塗布した面にコート抜け等の問題が発生する。
【0048】
本発明においてカール防止層の反対面に設けられた活性エネルギー線硬化樹脂層の表面硬度は、通常2H以上、好ましくは3H以上である。2H未満では製品となった時に表面に傷が着きやすくなり製品寿命が短くなる傾向がある。
本発明の積層フィルムは、タッチパネルなどの光学用途に用いられるが、150℃で60分間熱処理後のヘーズ値は通常5.0%以下、好ましくは3.0%である。熱処理後のヘーズ値が5%を超える場合は、タッチパネル等の製造工程でフィルムが加熱された際にヘーズが生じ透明性が悪化することがある。熱処理によりヘーズが高くなる原因としては、ポリエステルフィルムの表面に析出してくるオリゴマーが考えられるが、本発明の積層ポリエステルフィルムは、活性エネルギー線硬化樹脂層が両面に設けられているため、オリゴマーの析出が防止できるのでヘーズの上昇も抑えることができる特徴を有している。
【0049】
本発明において、活性エネルギー線硬化樹脂層の硬化成分としては、不飽和ポリエステル樹脂系、アクリル系、付加重合系、チオール・アクリルのハイブリッド系、カチオン重合系、カチオン重合とラジカル重合のハイブリッド系などを使用することができる。これらの中では、硬化性、耐擦傷性、表面硬度、可撓性および耐久性などの観点でアクリル系の硬化成分が好ましい。
上記のアクリル系硬化成分は、活性エネルギー線重合成分としてのアクリルオリゴマーと反応性希釈剤とを含有する。そして、必要に応じ、光重合開始剤、光増感剤、改質剤を含有する。
【0050】
アクリルオリゴマーとしては、代表的には、アクリル系樹脂骨格に反応性のアクリロイル基またはメタアクリロイル基が結合されたオリゴマーが挙げられる。その他のアクリルオリゴマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート等が挙げられる。さらに、メラミン、イソシアヌール酸、環状ホスファゼン等の剛直な骨格にアクリロイル基またはメタアクリロイル基が結合したオリゴマーが挙げられる。
【0051】
反応性希釈剤は、塗布剤の媒体として塗布工程での溶剤の機能を担うとともに、それ自体が多官能性または一官能性のアクリルオルゴマーと反応する基を有するため、塗膜の共重合成分となる。反応性希釈剤の具体例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0052】
光重合開始剤としては、例えば、2,2−エトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシー2ーフェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジベンゾイル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、p−クロロベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、アセトフェノン、2−クロロチオキサントン、アントラキノン、フェニルジスルフイド、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン等が挙げられる。
【0053】
光増感剤としては、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール等の3級アミン系、トリフェニルホスフィン等のアルキルホスフィン系、β−チオジグリコール等のチオエーテル系などが挙げられる。
改質剤としては、塗布性改良剤、消泡剤、増粘剤、無機系粒子、有機系粒子、潤滑剤、有機高分子、染料、顔料、安定剤などが挙げられる。これらは、活性エネルギー線による反応を阻害しない範囲で使用され、活性エネルギー線硬化樹脂層の特性を用途に応じて改良することができる。活性エネルギー線硬化樹脂層の組成物には、塗工時の作業性向上、塗工厚さのコントロールのため、有機溶剤を配合することができる。
【0054】
活性エネルギー線硬化樹脂層の形成は、硬化用樹脂組成物を前記の塗布層の表面に塗布した後に活性エネルギー線を照射して架橋硬化させることにより行う。活性エネルギー線としては、紫外線、可視光線、電子線、X線、α線、β線、γ線を使用することができる。活性エネルギー線の照射は、通常、塗布層側から行うが、フィルムとの密着性を高めるため、フィルム面側から行ってもよく、さらには、活性エネルギー線を反射し得る反射板をフィルム面側に設けてもよい。
【0055】
【実施例】
以下、実施例を挙げてさらに詳細に本発明を説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の評価方法は下記のとおりである。実施例および比較例中「部」とあるのは「重量部」を示す。
【0056】
(1)フィルムの極限粘度[η](dl/g)
ポリマー1gをフェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlに溶解し、30℃で測定した。
【0057】
(2)平均粒子径
粒子の走査電子顕微鏡観察より粒子毎の最大径および最小径を測定して、その相加平均を粒子一個の粒径(直径)とした。少なくとも粒子100個について粒径を測定し、それらの相加平均を平均粒径とした。
【0058】
(3)ハードコート層との接着性
カール防止層の反対面に設けたハードコート層を評価した。
▲1▼初期接着性
ハードコート層形成直後、当該ハードコート層に1インチ幅に碁盤目が100個になるようクロスカットを入れ、直ちに、同一箇所について3回セロテープ(登録商標)で急速剥離テストを実施し、剥離面積により評価した。判定基準は以下のとおりである。
◎:碁盤目剥離個数=0
○:1≦碁盤目剥離個数≦10
△:11≦碁盤目剥離個数≦20
×:21<碁盤目剥離個数
【0059】
▲2▼耐光後接着性:
活性エネルギー線硬化樹脂層形成直後、スガ試験機(株)製ロングライフタイプ耐光試験機(Standard UV Long−Life FADE METER)にてUV光がハードコート面側から当たるようにセットし、100時間照射した後、セロテープ(登録商標)による急速剥離テストを行った以外は、初期接着性評価と同じ方法にて評価した。
【0060】
(4)カール値
100mm×100mmの大きさのサンプルを、凹面を上にして平らな面の上に置き、四隅の跳ね上がり高さを測定し平均値をカール値とした。
【0061】
(5)屈曲性
評価する活性エネルギー線硬化樹脂層を有する面を、JIS K 5600−5−1に記載されているタイプIの試験装置により求めた。
【0062】
(6)生産性
生産性について下記基準に従いランク付けした。
○:通常の生産速度で生産可能である
△:歩留まりの低下等により生産速度ダウン率が通常生産品の1〜10%の範囲にある
×:歩留まりの低下等により生産速度ダウン率が通常生産品の11%以上ある
【0063】
(7)表面の状態
易滑層の表面を目視観察し、下記基準に従いランク付けした。
○:表面に全く異常は見られない
△:表面に粒子起因と思われるブツが確認されるが、実用上問題とならない程度である
×:表面に粒子起因と思われるブツが明確に確認され、実用上も問題となる程度である
【0064】
(8)熱処理フィルムヘーズ
窒素雰囲気下、180℃のオーブンで10分間放置し熱処理を行ったフィルムをJIS−K7105に準じ、日本電色工業社製積分球式濁度計NDH−20Dにより熱処理後のフィルムの濁度を測定した。
【0065】
(9)表面硬度
カール防止層の反対面をJIS K5400(1990)に従い、各種硬度の鉛筆を45°の角度で硬化樹脂層表面に当て、荷重1kgの下で引掻きを与え、そして、傷が発生したときの鉛筆の硬度を表面硬度とした。
【0066】
(10)耐擦傷性
カール防止層の反対面をスチールウール#0000で硬化樹脂層表面を摩擦し、そして、キズの発生状況を下記の基準によって評価した。
A:強く摩擦してもほとんど傷が付かない
B:強く摩擦すると少し傷が付く
C:弱い摩擦でも傷が付く
【0067】
(11)フィルムの滑り性
活性エネルギー線硬化樹脂よりなるカール防止層が設けられている場合は、カール防止層の面とカール防止層の反対側の活性エネルギー線硬化樹脂層の面が重なる様にフィルムを重ね合わせ、手で擦り合わせることにより、フィルムの滑り性を下記の基準によって評価した。
カール防止層が設けられていない場合は、活性エネルギー線硬化樹脂層と活性エネルギー線硬化樹脂層が設けられていない面が重なるようにフィルムを重ね合わせ、手で擦り合わせることにより、フィルムの滑り性を下記の基準によって評価した。
◎:非常に滑らかに滑る
○:滑らかに滑る
△:かろうじて滑る
×:全く滑らない
【0068】
[塗布液の調製]
下記表1に示す塗布液を下記表2に示す割合で配合してP1〜P4の塗布液を調製した。
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
[活性エネルギー線硬化樹脂の調整]
下記表3に示す活性エネルギー線硬化樹脂を下記表4に示す割合で配合してHC1〜HC10の活性エネルギー線硬化樹脂塗布剤を調製した。塗布液の固形分濃度は2重量%とした。
【表3】
【表4】
【0071】
実施例1
[フィルムの製造]
平均粒子径1.5μmのシリカ粒子15ppmを含有する極限粘度0.75のポリエチレンテレフタレートを常法により乾燥して押出機に供給し、290℃で溶融してシート状に押出し、静電印加密着法を適用して冷却回転ロール上で急冷し、の無定形シートを得た。得られたシートをロール延伸法で縦方向に85℃で2.5倍延伸し、さらに、95℃で1.3倍延伸た後、表2に示すP1よりなる塗布液をフィルムの両面に塗布し、テンターに導き、横方向に120℃で3.2倍延伸し、230℃で熱処理を行った後、横方向に2%弛緩し、30m/分の生産速度でフィルムをロール状に巻き上げた。フィルムの厚さは125μm、極限粘度は0.66であった。
次いで、上記フィルムの塗布層上にカール防止層として表4に示すHC1よりなる活性エネルギー線硬化樹脂を、硬化後の厚さが5μmになるように塗布し、120W/cmのエネルギーの高圧水銀灯を使用し、照射距離100mmにて約10秒間照射して積層ポリエステルフィルムを得た。
さらに、表4に示すHC3よりなる活性エネルギー線硬化樹脂層を、カール防止層上に易滑層として塗布した。塗布厚さは、硬化後の厚さが0.045μmになるようにし、120W/cmのエネルギーの高圧水銀灯を使用し、照射距離100mmにて約10秒間照射して、カール防止層の上に易滑層を形成した積層ポリエステルフィルムを得た。
さらに、易滑層の反対面に、表4に示すHC2よりなる活性エネルギー線硬化樹脂をハードコート層として硬化後の厚さが7μmになるように塗布し、120W/cmのエネルギーの高圧水銀灯を使用し、照射距離100mmにて約10秒間照射して本発明の積層ポリエステルフィルムを得た。フィルムの評価結果を下記表6に示す。
【0072】
実施例2〜13、比較例1〜8
実施例1において、塗布液の種類、活性エネルギー線硬化樹脂よりなるハードコート層、カール防止層、易滑層の活性エネルギー線硬化樹脂とコート厚さを、下記表5に記載した以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。
また、実施例10に関してはカール防止層を設けず、比較例1に関してはカール防止層と易滑層を設けず、比較例6に関しては易滑層を設けていない。
フィルムの評価結果を表6および7に示す。
【0073】
【表5】
【0074】
【表6】
【0075】
【表7】
【0076】
【発明の効果】
本発明によれば、両面に活性エネルギー線硬化樹脂層を有する積層ポリエステルフィルムにおいて、優れた透明性と高い表面硬度を有し、かつフィルムカールが小さく、塗膜面同士の滑り性に優れた積層ポリエステルフィルムを提供することができ、その工業的価値は高い。
Claims (3)
- 二軸延伸ポリエステルフィルムの両面にメラミン系樹脂を1〜50%含有する塗布層を有し、当該塗布層上に活性化エネルギー線硬化樹脂層をそれぞれ有し、片面の最外層▲1▼が0.01〜0.50μmの粒子を0.05〜2.0重量%含有する厚さ0.02〜1.0μmの活性化エネルギー線硬化樹脂層よりなることを特徴とする積層ポリエステルフィルム。
- 最外層▲1▼とメラミン系樹脂含有塗布層層との間に、厚さ1〜10μmの活性化エネルギー線硬化樹脂層を有することを特徴とする請求項1記載の積層ポリエステルフィルム。
- 最外層▲1▼と反対側の表面を構成する層が厚さ5〜20μmの活性エネルギー線硬化樹脂層であることを特徴とする請求項1または2記載の積層ポリエステルフィルム。
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