JP2023034961A - 繊維製品の賦香方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】処理された繊維製品の着用時に、特には処理された繊維製品が発汗等で、水で湿潤した際に良好な香り立ちを示す、木綿繊維を含む繊維製品の賦香方法を提供する。【解決手段】下記工程(I)、及び工程(II)を含む、木綿繊維を含む繊維製品の賦香方法。工程(I):(a)特定の香料組成物(A)を包含するシリカカプセル(以下、(a)成分という)を含有する水性組成物を、木綿繊維を含む繊維製品に接触させる工程。工程(II):工程(I)で処理した繊維製品を、5℃以上90℃未満の気体中で乾燥処理させることで、繊維製品表面又は内部に付着した(a)成分のシリカカプセル構造体を崩す工程。【選択図】なし

Description

本発明は、木綿繊維を含む繊維製品の賦香方法に関する。
近年、洗濯時や衣類乾燥時、及び衣類を着用する時の香りに対する消費者の関心は高まっており、香りに関連する内容を訴求した液体柔軟剤や香り付け剤の市場は著しく伸長している。香りを感じる場面の中でも衣類の着用時の香りは特に関心が高く、衣類を着用している際に一日中香りを実感させることを可能にする機能性材料、及びそれらを含有する繊維製品処理剤の開発が活発に行われている。
香りの持続性を向上させる従来技術として、香料のマイクロカプセル化や香料を前駆体化して配合する試みがなされている。香料のマイクロカプセルは、芯物質の香料を壁材で包んだ粒子状物質であり、その役割は芯物質の香料を保護し、カプセルに物理的な力が加わった際にカプセルの壁が破れて芯物質の香料を放出するものである。
このようなマイクロカプセルとして特許文献1には、芯物質として引火点が50~130℃の範囲内の香料組成物を含有するカプセル化香料が記載されている。また特許文献1には、高揮発性香料等の揮発成分と、それよりも高融点で相溶性がある添加剤を含有するマイクロカプセルが記載されている。
特許文献2には、香料化合物のケイ酸エステル化合物及び特定香料を含有し、布地上の香料の寿命を改善する繊維製品処理剤組成物が開示されている。
特許文献3にはケイ酸エステル化合物と特定の高残香性香料を含有する柔軟剤用香料組成物が開示されている。
特許文献4には有効成分を包含するゾルゲル法によってえられるシリカカプセルが開示されている。
特許文献5にはコアシェル法により製造された香料を包含するシリカカプセルが記載されており洗濯用液体洗剤、布柔軟剤に配合することが開示されている。
特許文献6には香料等の有効成分を包含するシリカカプセルの製造方法が記載されている。
特許文献7(特開2021-80613号公報花王)には、繊維内に侵入し易く、発汗等の吸湿により芳香する香料組成物を含有する繊維製品処理剤組成物が開示されている。
特開2006-249326号公報 特開2009-256818号公報 特開2011-063674号公報 特表2003-534249号公報 特表2011-517323号公報 特開2015-128762号公報 特開2021-80613号公報
近年、香りの嗜好性は多岐に渡っており、持続的に繊維製品から芳香させるための技術はいくらか提案されているが、繊維製品処理剤に添加した香料の繊維製品への吸着は難しく、繊維製品表面に留まるため、匂いは直ぐに空気中に拡散してしまう。基剤によっては乾燥中になくなってしまう。
また従来の香料のマイクロカプセルとして、高分子樹脂によるカプセルでは繊維製品に付着し物理的な応力をかけることで破砕し、芳香するものである。また香料を包含するシリカカプセルも知られており、シリカの膜厚の薄さから破砕し易いが、シリカの細孔の中に入り込んだ香料が持続的に芳香するものである。
また脂肪酸エステル化による香料前駆体やケイ酸エステル化合物を用いた芳香技術は、アルコール系香料に制限されるため、他の香料成分では成立しない。また香りが制限され、広がりが感じにくい。
更に繊維製品処理剤を長期保存することで、繊維製品処理剤に添加した香料の水中での分散性が低下するため、賦香性が著しく低下する。
また香料を吸着させた繊維製品に乾燥機を使用して乾燥させる場合、熱によりカプセルや香料前駆体が崩壊もしくは分解しやすく、香料も揮散しやすいため香りの持続性は低下する。
本発明者らは特定香料化合物が木綿繊維内部に浸透し易いことを見出し特許文献6として出願している。この技術は繊維製品に直接塗布やスプレーする方法のように処理液をそのまま吸わせるような処理方法(リーブオン処理方法とも言われる)によれば有効に活用できるが、洗濯工程での糊付けや柔軟化処理のような仕上げ工程で浸漬させるような方法に用いる場合、浸漬に用いる水溶液中の香料濃度を高める必要があり、そのほとんどが脱水時に水と共に流れてしまうことから、当該香料を効率よく繊維製品に送達させるものではなかった。
本発明は、木綿繊維を含む繊維製品の浸漬処理に用いることができる賦香方法であって、処理された繊維製品の着用時に、特には処理された繊維製品が発汗等で、水で湿潤した際に良好な香り立ちを示す、木綿繊維を含む繊維製品の賦香方法を提供する。
本発明者は、特定の性質を有する香料化合物を含む香料組成物を包含するシリカカプセルを含有する水性組成物を、木綿繊維を含む繊維製品に接触させた後、乾燥することで、繊維製品表面に付着したシリカカプセルの構造体が、実質的に物理的応力がかからない状態で崩れるため、木綿繊維内部に香料化合物を浸透し易くすることができ、その結果効率よく繊維製品に香料化合物を留めることが出来ることを見出した。そして、当該繊維が吸湿すると、著しく香り強度が向上することを見出した。
すなわち本発明は、記工程(I)、及び工程(II)を含む、木綿繊維を含む繊維製品の賦香方法に関する。
工程(I):(a)下記香料組成物(A)を包含するシリカカプセル(以下、(a)成分という)を含有する水性組成物を、木綿繊維を含む繊維製品に接触させる工程。
工程(II):工程(I)で処理した繊維製品を、5℃以上90℃未満の気体中で乾燥処理させることで、繊維製品表面又は内部に付着した(a)成分のシリカカプセル構造体を崩す工程。
香料組成物(A):logKowの値が2.0以上5.0以下であり、且つ25℃における蒸気圧の値が0.01Pa以上3.63Pa以下である香料化合物(A1)を、香料組成物(A)中、30質量%以上85質量%以下含み、且つ当該香料化合物(A1)のうち、下記香料化合物(A1-1)から選ばれる少なくとも5種の香料化合物を、香料組成物(A)中、5質量%以上65質量%含む、香料組成物。
(A1-1)γ-ウンデカラクトン、2-シクロヘキシリデン-2-フェニルアセトニトリル、ダマセノン、δ-ダマスコン、α-メチル-β-(p-t-ブチルフェニル)-プロピオンアルデヒド、β-イオノン、ミルラアルデヒド、エチルトリシクロ〔5.2.1.0-2,6〕デカン-2-カルボキシレート、シトロネロール、ゲラニオール、α-イオノン、パチョリアルコール、6,7-ジヒドロ-1,1,2,3,3-ペンタメチル-4(5H)-インダノン、メチルジヒドロジャスモネート、ヘキシルシンナミックアルデヒド、アミルシンナミックアルデヒド、プロピオン酸アリルシクロヘキシル、酪酸ジメチルベンジルカルビニル、プロピオン酸トリシクロデセニル、サリチル酸アミル、γ-メチルイオノン、α-ダマスコン、β-ダマスコン、ネロリンヤラヤラ、フェニルヘキサノール、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト〔2,1-b〕フラン、γ-ノナラクトン、メチルβ-ナフチルケトン、オイゲノール、リラール、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、イソ-ダマスコン、2-シクロヘキシリデン-2-フェニルアセトニトリル、γ-デカラクトン、α-メチル-3,4-メチレンジオキシヒドロシンナミックアルデヒド、7-メチル-3,5-ジヒドロ-2H-ベンゾジオキセピノン、トリシクロデシニルアセテート、トリシクロデシニルプロピオネート、2-ペンチルオキシグリコール酸アリル
本発明によれば、処理された繊維製品の着用時に、特には処理された繊維製品が発汗等で、水で湿潤した際に良好な香り立ちを示し、複数の香料を同等に使用できることから、バリエーションに富む香りの広がりが感じられる、木綿繊維を含む繊維製品の賦香方法が提供される。
本発明の賦香方法によって得られた木綿繊維を含む繊維製品は、水分により湿潤状態となると乾燥時と比較して著しく香り強度が向上する。その理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推察される。本発明者は、香料組成物(A)を構成する特定の香料化合物が、繊維製品の木綿繊維の内部に浸透し易いことを見出し、更に木綿繊維を構成するフィブリルの束の間に入って行くことを見出した。その結果、香料の揮散が抑制され、吸湿によって繊維内の香料成分が水に置換されることで芳香するものと推察される。
[木綿繊維を含む繊維製品の賦香方法]
本発明の木綿繊維を含む繊維製品の賦香方法は、工程(I)、及び工程(II)を含む。
工程(I)で処理した繊維製品に工程(II)を適用することで、繊維製品の吸湿時ないし湿潤時に強く芳香する性質を付与することが出来る。
以下、本発明の木綿繊維を含む繊維製品の賦香方法を、本発明の方法という。本発明の方法という場合、特記しない限りこの方法を指すものとする。
<工程(I)>
本発明の工程(I)は、(a)前記香料組成物(A)を包含するシリカカプセル(以下、(a)成分という)を含有する水性組成物を、木綿繊維を含む繊維製品に接触させる工程である。
木綿繊維を含む繊維製品に水性組成物を接触させる方法は一般的に知られている方法で行うことができる。水性組成物に繊維製品を浸漬させる方法であり、浸漬させる場合は洗面器やタライ等の容器に入れて浸漬させてもよく、洗濯槽内で行ってもよい。処理対象の繊維製品は処理前から湿潤していてもよく、乾燥した状態のものを接触させてもよい。湿潤している場合は、余分な水を除外するために脱水操作をしたものに適用してもよく、既に繊維製品が水媒体に浸漬されている場合は、本発明の水性組成物の水分量を低減させた濃縮水性組成物を、前記水媒体に1ml以上50ml以下の割合で、後述する繊維製品との接触時に好ましい香料組成物濃度になるように設計して添加してもよい。濃縮水性組成物は、水をほとんど含まないものであってもよく、有機溶媒に香料組成物が分散した状態のものであってもよい。濃縮水性組成物は、従来の繊維製品用処理剤組成物としての使用方法であり、繊維製品処理剤組成物であってもよく、詳しくは後述する。
なお本発明の水性組成物をスプレーするなどして賦香対象の繊維製品に直接付着させる方法もあるが、本発明のシリカカプセルはスプレー操作時の機械力で壊れてしまうことがあるため、浸漬させる方法がより好ましい。
繊維製品と本発明の水性組成物を接触させる場合、濃縮水性組成物を、水を溜めた容器に添加することで、本発明の水性組成物を調製する。1つ目の方法の場合の水性組成物中の香料組成物(A)の濃度は、好ましくは1ppm以上、より好ましくは3ppm以上、そして、好ましくは80ppm以下、より好ましくは20ppm以下である。
接触させる繊維製品と本発明の水性組成物の割合は、洗濯機等を用いた場合、繊維製品1kgあたり、好ましくは5L以上、より好ましくは10L以上、更に好ましくは12L以上、そして、好ましくは30L以下、より好ましくは25L以下、更に好ましくは20L以下である。
工程(I)において、本発明の水性組成物の温度が、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは15℃以上、そして、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、更に好ましくは30℃以下で繊維製品と接触させることが好ましい。
繊維製品と本発明の水性組成物の接触時間は、香料の衣類への均一な吸着性の観点から、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上、そして、浸漬中の香料の揮散を抑制する観点から、好ましくは20分以下、より好ましくは10分以下である。
工程(I)の後、脱水処理を行ってから、工程(II)に移行することが好ましい。
<水性組成物>
本発明の水性組成物は、下記香料組成物(A)[以下(A)成分という場合もある]を包含するシリカカプセルを(a)成分として含有する。
香料組成物(A):logKowの値が2.0以上5.0以下であり、且つ25℃における蒸気圧の値が0.01Pa以上3.63Pa以下である香料化合物(A1)を、香料組成物(A)中、30質量%以上85質量%以下含み、且つ当該香料化合物(A1)のうち、下記香料化合物(A1-1)から選ばれる少なくとも5種の香料化合物を、香料組成物(A)中、5質量%以上65質量%含む、香料組成物。
(A1-1)γ-ウンデカラクトン、2-シクロヘキシリデン-2-フェニルアセトニトリル、ダマセノン、δ-ダマスコン、α-メチル-β-(p-t-ブチルフェニル)-プロピオンアルデヒド、β-イオノン、ミルラアルデヒド、エチルトリシクロ〔5.2.1.0-2,6〕デカン-2-カルボキシレート、シトロネロール、ゲラニオール、α-イオノン、パチョリアルコール、6,7-ジヒドロ-1,1,2,3,3-ペンタメチル-4(5H)-インダノン、メチルジヒドロジャスモネート、ヘキシルシンナミックアルデヒド、アミルシンナミックアルデヒド、プロピオン酸アリルシクロヘキシル、酪酸ジメチルベンジルカルビニル、プロピオン酸トリシクロデセニル、サリチル酸アミル、γ-メチルイオノン、α-ダマスコン、β-ダマスコン、ネロリンヤラヤラ、フェニルヘキサノール、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト〔2,1-b〕フラン、γ-ノナラクトン、メチルβ-ナフチルケトン、オイゲノール、リラール、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、イソ-ダマスコン、2-シクロヘキシリデン-2-フェニルアセトニトリル、γ-デカラクトン、α-メチル-3,4-メチレンジオキシヒドロシンナミックアルデヒド、7-メチル-3,5-ジヒドロ-2H-ベンゾジオキセピノン、トリシクロデシニルアセテート、トリシクロデシニルプロピオネート、2-ペンチルオキシグリコール酸アリル
本発明者らは、本発明の水性組成物が繊維製品と接触した際に、繊維への吸収に優れる香料を探索した結果、logKowが2.0以上5.0以下[以下、条件(1)という場合もある]という水親和性を有し、且つ25℃の蒸気圧が0.01以上3.63Pa以下[以下、条件(2)という場合もある]である揮発が比較的低いという点で共通性を有する香料化合物(A1)が木綿繊維内部に浸透し易いことを見出し、そのうち特に前記した香料化合物(A1-1)から選ばれる香料化合物が有効であることを見出した。
本発明において、logKow(logP)値とは、水と1-オクタノールに対する有機化合物の親和性を示す係数である。1-オクタノール/水分配係数logKowは、1-オクタノールと水の2液相平衡系における、それぞれの溶媒中における化合物の平衡濃度の比であり、底10に対するそれらの対数値で示される。logKow(logP)値は、構造をフラグメント(原子/官能基)に分け、各原子団の値を合計して(構造補正係数を用いる場合もある)推定値を出す「フラグメント定数」法によって算出できる。本発明では、米国環境保護庁(EPA)から入手できる化学物質の物性推算ソフトウェアの1つであるEPI suite version4.11により計算したlogKow値を用いる。
本発明において、25℃における蒸気圧とは、実測値又は沸点からの蒸気圧推定によって求めたものであり、化学物質が室温で固体である場合には融点から推定される。蒸気圧は、幾つかの公知の方法(Antoine法、Modified Grain法、Mackay法等)によって推定されるが、本発明においては、米国環境保護庁(EPA)から入手できる、EPI suiteに組み込まれているMPBPWINを用いて算出した値であって、Antoine法によって算出される値とGrain法によって算出される値の平均値が、「選択されている値(Selected VP)」として算出結果に表示されている場合は、その平均値を、特に「選択されている値(Selected VP)」としての表示がない場合は、Modified Grain法によって算出された値を用いる。
本発明の香料化合物(A1-1)のlogKowと蒸気圧(Pa;25℃)の値を併せて表1に示す。
Figure 2023034961000001
また前記の香料化合物(A1-1)の中でも、下記の香料化合物(A1-1S)から選ばれる香料化合物がより好ましい。
(A1-1S)γ-ウンデカラクトン、2-シクロヘキシリデン-2-フェニルアセトニトリル、ダマセノン、δ-ダマスコン、β-イオノン、ミルラアルデヒド、エチルトリシクロ〔5.2.1.0-2,6〕デカン-2-カルボキシレート、シトロネロール、ゲラニオール、α-イオノン、パチョリアルコール、6,7-ジヒドロ-1,1,2,3,3-ペンタメチル-4(5H)-インダノン、メチルジヒドロジャスモネート、プロピオン酸アリルシクロヘキシル、プロピオン酸トリシクロデセニル、γ-メチルイオノン、α-ダマスコン、β-ダマスコン、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト〔2,1-b〕フラン、γ-ノナラクトン、リラール、イソ-ダマスコン、γ-デカラクトン、トリシクロデシニルアセテート、トリシクロデシニルプロピオネート、γ-デカラクトン、2-ペンチルオキシグリコール酸アリル、2-ペンチルオキシグリコール酸アリル
香料化合物(A1-1S)は、logKow及び蒸気圧の条件を満たす香料化合物(A1-1)の中でも、発汗時など水分を含んで繊維が膨潤した際の香り立ちの認知の易化の観点からより好ましい。香料化合物(A1-1S)は、いずれかを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
このうち(A)成分の香料組成物を調合する上で、香り認知の観点から、香料化合物(A1-1S)で挙げられたγ-ウンデカラクトン、2-シクロヘキシリデン-2-フェニルアセトニトリル、ダマセノン、α-ダマスコン、β-ダマスコン、δ-ダマスコン、イソ-ダマスコン、トリシクロデシニルアセテートトリシクロデシニルプロピオネート、エチルトリシクロ〔5.2.1.0-2,6〕デカン-2-カルボキシレート、γ-デカラクトン、2-ペンチルオキシグリコール酸アリルの中から少なくとも1種を必須成分として含有することがより更に好ましい。
本発明の(A)成分の香料組成物は、木綿含有繊維製品の吸湿による芳香を明確にするために、香料組成物(A)中、香料化合物(A1)を、30%質量以上、好ましくは33質量%以上、より好ましくは質量35%以上、更に好ましくは37質量%以上、そして、芳香バランスの観点から、85質量%以下、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、より更に好ましくは65質量%以下含有する。
本発明の(A)成分の香料組成物は、前記した香料化合物(A1-1)から選ばれる少なくとも5種、好ましくは7種以上、より好ましくは10種以上の香料化合物を含む。
また本発明の(A)成分の香料組成物は、前記した香料化合物(A1-1S)から選ばれる少なくとも3種、好ましくは5種以上、より好ましくは7種以上の香料化合物を含むことが好適である。
本発明の(A)成分の香料組成物は、香料組成物(A)中、香料化合物(A1-1)を、湿潤時の香り立ちの観点から、5%質量以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、より更に好ましくは35質量%以上、より更に好ましくは37質量%以上、そして、芳香バランスの観点から、65質量%以下、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下含有する。
本発明の(A)成分の香料組成物は、香料組成物(A)中、香料化合物(A1-1S)を、湿潤時の香り立ちの観点から、好ましくは5%質量以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、より更に好ましくは25質量%以上、そして、芳香バランスの観点から、好ましくは65質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは55質量%以下含有する。
本発明の香料組成物(A)は、更にlogKowの値が3.0以上であり、且つ25℃における蒸気圧の値が3.63Paを超える香料化合物(A2)を含有することが好ましい。
香料化合物(A2)としては、下記香料化合物(A2-1)から選ばれる香料化合物を挙げることができる。
(A2-1)リモネン、α-テルピネン、γ-テルピネン、酢酸シトロネリル、酢酸p,t-ブチルシクロヘキシル、酢酸o,t-ブチルシクロヘキシル、酢酸リナリル、ヘプタン酸アリル、テトラヒドロリナロール、ジヒドロミルセノール、リナロール、ノナナール、デカナール、酢酸ゲラニル、ローズオキサイド、メチルノニルアセトアルデヒド、カプロン酸アリル、酢酸ターピニル、1,8-シネオール、シトロネリルニトリル、エチル 2-メチルバレレート、α-ピネン、β-ピネン、ヘキサン酸アリル、d-シトロネラ―ル、酢酸ネリル、メロナール、エチル-2-シクロヘキシルプロピオネート、イソシクロシトラール
香料化合物(A2-1)のlogKowと蒸気圧(Pa;25℃)の値を併せて表2に示す。
Figure 2023034961000002
香料化合物(A2)は、水を媒体として繊維を処理する場合、具体的には液体柔軟剤組成物として用いる場合において、繊維への吸着性、且つ乾燥するまでの間に繊維上に香料化合物を一定量残存させる観点から、logKowの値が3.0以上、また、親水性の高い繊維内部への浸透性の観点から、logKowの値が好ましくは5.0以下の香料化合物が好適である。
香料化合物(A2)は、微量吸着させるだけでも香り認知に十分な気相濃度を担保できる揮発性が必要であることから、蒸気圧の値が3.63Paを超え、また、処理後から乾燥するまでの間における繊維上の香料化合物の残存性の観点から、蒸気圧の値が好ましくは1000Pa以下の香料化合物が好適である。
香料化合物(A2)は、logKowの値が、3.0以上、好ましくは3.5以上、より好ましくは4.0以上、そして、好ましくは5.0以下であり、25℃における蒸気圧の値が、3.63Paを超え、そして、好ましくは1000Pa以下、より好ましくは500Pa以下、更に好ましくは250Pa以下である。
香料化合物(A2)は、香り立ちが特徴的且つ揮発性が大きいことから、水性組成物の香り立ちや繊維処理直後の香り立ちに寄与度が高いものである。一方で、乾燥過程で繊維へ吸着した分の大半が揮散してしまうために、処理後の繊維の香り立ちへの寄与度は小さいが、これらの香料化合物は繊維の内部に微量存在しており、発汗時など水分を含んで繊維が膨潤状態になった際には揮散して香料化合物(A1)と調和して、より嗜好性の高い香りを感じることができる。
香料化合物(A2)は、蒸気圧が高いため、香り認知に十分な気相濃度を担保するためには繊維上に微量の香料化合物(A2)が残存していればよい。
しかし、処理後から乾燥するまでの間に繊維上の多くの香料化合物が揮散してしまうことから、(A)成分の香料組成物は、香料化合物(A2)、好ましくは香料化合物(A2-1)を、香料組成物(A)中、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、より更に好ましくは15質量%以上、また含水時の過度の香り立ちの防止及び香りの持続性の観点から、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、より更に好ましくは35質量%以下、より更に好ましくは30質量%以下含有する。
本発明の香料組成物(A)は、香料化合物(A2)を含有する場合、香料組成物(A)中、繊維が膨潤した際の香り立ちと繊維処理直後の香り立ちを更に際立たせる観点から、香料化合物(A1)、好ましくは香料化合物(A1-1)、より好ましくは香料化合物(A1-1S)と、香料化合物(A2)、好ましくは香料化合物(A2-1)との合計含有量が、前記の必須要件の規定下において、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは35質量%以上、より更に好ましくは45質量%以上、より更に好ましくは55質量%以上、より更に好ましくは60質量%以上、そして、香りの嗜好性の観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である。
本発明の香料組成物(A)において、香料化合物(A2)を含有する場合、繊維が膨潤した際の香り立ちと繊維処また理直後の香り立ちを両立させる観点から、香料組成物(A)中、香料化合物(A1)の含有量と、香料化合物(A2)の含有量との質量比(A1)/(A2)が、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.5以上、より更に好ましくは1以上、より更に好ましくは1.2以上、そして、香りの嗜好性の観点から、好ましくは50以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは20以下、より更に好ましくは10以下、より更に好ましくは5以下、より更に好ましくは4以下である。
また(A)成分の香料組成物には香り創作の自由度を向上するという観点から、香料化合物(A1)及び(A2)以外の香料化合物として、繊維製品処理剤に使用することが一般的に又は特許文献等により知られている香料化合物[以下、香料化合物(A3)という場合がある]を含有することができる。
香料化合物(A1)、(A2)以外の香料化合物(A3)としては、例えば、オクタナール、酢酸ヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸イソアミル、サリチル酸ヘキシル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸シクロヘキシル、サリチル酸シス-3-ヘキセニル、イソEスーパー、メチルアンスラニレート、エチレンブラシレート、アンブレットリド、バニリン、エチルバニリン、イソオイゲノール、ラズベリーケトン、クマリン、ヘリオトロピン、1- (スピロ〔4.5〕デカン-7-エン-7-イル)ペンタ-4-エン-1-オン、1-(スピロ〔4.5〕デカン-6-エン-7-イル)ペンタ-4-エン-1-オン、セドリルメチルエーテル、ジャバノール(ジボダン社製)、アセチルセドリン、トリプラール、エチルブチレート、エチル-2-メチルブチレート、2-(2-(4-メチル)-3-シクロヘキシニル-(1)プロピルシクロペンタノン、シクラメンアルデヒドから選ばれる香料化合物が挙げられる。
(A)成分の香料組成物は、香料の業界で知られている希釈剤や保留剤という溶剤で希釈したものとして用いてもよい。
溶剤としては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、3-メトキシ-3-メチルブタノール、フタル酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ベンジル、クエン酸トリエチル、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、アジピン酸ジイソブチル、水添アビエチン酸メチル等が挙げられる。特に溶剤は高濃度の(A)成分を含む濃縮溶液を、水に溶かして水性組成物を調製する場合に、水に対して溶解ないし分散しやすい観点から配合することが好ましい。
しかしながら、本発明における香料組成物の配合量を計算する際には香料の希釈に使用される溶剤を含まず算出を行うが、溶剤を用いる場合、(A)成分と溶剤との合計に対する溶剤の割合は、(A)成分中、好ましくは0質量%以上20質量%以下である。
本発明の水性組成物は、シリカを構成体として含むシェルと該シェルの内部に前記香料組成物(A)を含むコアとを有するマイクロカプセルを(a)成分として含有する。シリカは二酸化ケイ素を構造単位とする物質である。以下、シリカを構成体として含むシェルを有するマイクロカプセルを、シリカカプセルという。また、香料組成物という場合は、特記しない限り、前記(A)成分の香料組成物である。
本発明の(a)成分のシリカカプセルのシェルは、シリカを構成成分として含む。本発明のシリカカプセルのシェルは、シェルを構成している構造の一部または実質的全部がシリカを構成成分としてできていることを特徴とする。
本発明のシリカカプセルのシェルは、アルコキシシランを前駆体としたゾル-ゲル反応により形成されてなるものが好ましい。
本発明において「ゾル-ゲル反応」とは、アルコキシシランが加水分解及び重縮合反応により、ゾル及びゲル状態を経てシェルの構成成分であるシリカを形成する反応を意味する。具体的には、例えばテトラアルコキシシランが加水分解され、シラノール化合物が脱水縮合反応及び脱アルコール縮合反応によりシロキサンオリゴマーを生成し、更に脱水縮合反応が進行することによりシリカが形成される。
また、本発明のシリカカプセルのシェルは、本発明の効果を阻害しない範囲で、シリカ以外の無機重合体を構成成分として含んでもよい。本発明において無機重合体とは、無機元素を含む重合体をいう。該無機重合体としては、無機元素のみからなる重合体、主鎖が無機元素のみから構成され側鎖又は置換基として有機基を有する重合体等が挙げられる。
前記無機重合体は、好ましくは金属元素又は半金属元素を含む金属酸化物であり、更に好ましくは金属アルコキシド〔M(OR)x〕を前駆体として、前述のシリカのゾル-ゲル反応と同様の反応により形成されてなる重合体である。ここで、Mは金属又は半金属元素であり、Rは炭化水素基である。
金属アルコキシドを構成する金属又は半金属元素としては、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、亜鉛等が挙げられる。
前記アルコキシシランは、香料組成物の内包率を高める観点並びにデリバリー性能を良好に発現させる観点から、好ましくはテトラアルコキシシランである。
前記テトラアルコキシシランとしては、ゾル-ゲル反応を促進する観点から、好ましくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基を有するものであり、より好ましくはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、及びテトライソプロポキシシランから選ばれる1種以上であり、更に好ましくはテトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランから選ばれる1種以上であり、より更に好ましくはテトラエトキシシランである。
(シリカカプセルの製造)
本発明のシリカカプセルのシェルは、香料組成物の内包率を高める観点、及び長期保持性を向上させる観点、並びに香料組成物のデリバリー性能を良好に発現させる観点から、ゾル-ゲル反応を2段階で行うことにより形成されてなるシリカを構成成分として含むことが好ましい。すなわち、本発明のシリカカプセルは、下記の工程1及び工程2を含む方法により製造することが好ましい。
工程1:陽イオン性界面活性剤を含む水相成分と、香料組成物及びテトラアルコキシシランを含む油相成分とを乳化して得られる乳化液を、酸性条件下でゾル-ゲル反応に供し、コアと、シリカを構成成分とする第一シェルと、を有するシリカカプセル(1)を形成し、該シリカカプセル(1)を含有する水分散体を得る工程。
工程2:工程1で得られたシリカカプセル(1)を含有する水分散体に、更にテトラアルコキシシランを添加してゾル-ゲル反応を行い、第一シェルを包接する第二シェルを有するシリカカプセルを形成する工程。
〔工程1〕
工程1は、陽イオン性界面活性剤を含む水相成分と、アルコール系香料化合物を含む香料組成物及びテトラアルコキシシランを含む油相成分とを乳化して得られる乳化液を、酸性条件下でゾル-ゲル反応に供し、コアと、シリカを構成成分とする第一シェルと、を有するシリカカプセル(1)を形成し、該シリカカプセル(1)を含有する水分散体を得る工程である。
工程1における陽イオン性界面活性剤として、アルキルアミン塩、アルキル第4級アンモニウム塩等が挙げられる。アルキルアミン塩は、好ましくは第2級アミン又は第3級アミンの塩であり、より好ましくは第3級アミンの塩である。アルキルアミン塩及びアルキル第4級アンモニウム塩は、少なくとも1つの長鎖アルキル基を有し、任意に、好ましくは少なくとも1つの長鎖アルキル基、短鎖アルキル基及びベンジル基から選ばれる基を有する化合物が好ましい。長鎖アルキル基の炭素数は、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、更に好ましくは14以上であり、そして、好ましくは22以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは18以下である。短鎖アルキル基の炭素数は、好ましくは1以上、そして、好ましくは4以下であり、より好ましくは1又は2であり、更に好ましくは1、すなわちメチル基である。
アルキルアミン塩としては、長鎖アルキル基が前記炭素数の範囲である、長鎖モノアルキルモノメチル2級アミン塩、長鎖モノアルキルジメチル3級アミン塩等のアルキルアミン塩が挙げられる。
第4級アンモニウム塩としては、長鎖アルキル基及び短鎖アルキル基がそれぞれ前記炭素数の範囲である、長鎖アルキルトリ短鎖アルキル4級アンモニウム塩、ジ長鎖アルキルジ短鎖アルキル4級アンモニウム塩、長鎖アルキルベンジルジ短鎖アルキル4級アンモニウム塩等が挙げられる。
アルキルアミン塩としては、ラウリルジメチルアミンアセテート、ステアリルジメチルアミンアセテート等のアルキルアミン酢酸塩が挙げられる。
アルキルトリメチルアンモニウム塩としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド等のアルキルトリメチルアンモニウムクロライド;ラウリルトリメチルアンモニウムブロマイド、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロマイド等のアルキルトリメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
ジアルキルジメチルアンモニウム塩としては、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等のジアルキルジメチルアンモニウムクロライド;ジステアリルジメチルアンモニウムブロマイド等のジアルキルジメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩としては、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
陽イオン性界面活性剤は、これらの中でも、好ましくは第4級アンモニウム塩であり、より好ましくは炭素数10以上22以下のアルキル基を有するアルキルトリメチルアンモニウム塩であり、更に好ましくは炭素数10以上22以下のアルキル基を有するアルキルトリメチルアンモニウムクロライドであり、より更に好ましくはラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、及びセチルトリメチルアンモニウムクロライドから選ばれる1種以上であり、より更に好ましくはセチルトリメチルアンモニウムクロライドである。
工程1において、本発明の効果を阻害しない範囲で、陽イオン性界面活性剤に加えて、更に他の乳化剤を含んでもよい。他の乳化剤としては、高分子分散剤、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
工程1において水相成分中の陽イオン性界面活性剤の含有量は、乳化滴の分散安定性の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.4質量%以上であり、そして、乳化液の分散安定性に寄与しない余剰の乳化剤による乳化剤ミセルの形成を抑制し、カプセル化効率を向上させる観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。
工程1で得られる乳化液の総量に対する油相成分の量は、製造効率の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15%以上であり、そして、安定な乳化液を得る観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
工程1におけるテトラアルコキシシランの添加量は、ゾル-ゲル反応を促進させ、十分に緻密なシェルを形成する観点から、工程1の香料組成物の総量に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは12質量%以上、更に好ましくは14質量%以上であり、そして、過剰のテトラアルコキシシランが香料組成物中に残存することを抑制する観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、より更に好ましくは35質量%以下である。
工程1は、好ましくは下記の工程1-1~1-4を含む。
工程1-1:陽イオン性界面活性剤を含む水相成分を調製する工程
工程1-2:アルコール系香料化合物を含む香料組成物とテトラアルコキシシランを混合し、油相成分を調製する工程
工程1-3:工程1-1で得られた水相成分と工程1-2で得られた油相成分とを混合及び乳化し、乳化液を得る工程
工程1-4:工程1-3で得られた乳化液を、1段階目のゾル-ゲル反応に供し、コアと、シリカを構成成分とする第一シェルとを有するシリカカプセルを形成する工程
前記乳化液の調製に用いられる撹拌手段は特に限定されないが、強い剪断力を有するホモジナイザー、高圧分散機、超音波分散機等を使用することができる。また、ホモミキサー、「ディスパー」(商品名、プライミクス株式会社製)、「クレアミックス」(商品名、エムテクニック株式会社製)、「キャビトロン」(商品名、大平洋機工株式会社製)等を使用することもできる。
工程1の乳化液における乳化滴のメジアン径D50は、シリカカプセル外環境に対する比表面積を少なくし、長期保持性を高める観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、更に好ましくは0.3μm以上であり、そして、シリカカプセルの物理的強度の観点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、更に好ましくは10μm以下、より更に好ましくは5μm以下、より更に好ましくは3μm以下である。
乳化滴のメジアン径D50は、実施例に記載の方法により測定することができる。
工程1におけるゾル-ゲル反応の初期pHは、テトラアルコキシシランの加水分解反応と縮合反応のバランスを保つ観点、及び親水性の高いゾルの生成を抑制し、カプセル化の進行を促進する観点から、好ましくは3.0以上、より好ましくは3.3以上、更に好ましくは3.5以上であり、そして、シリカシェルの形成と乳化滴の凝集の併発を抑制し、緻密なシェルを有するシリカカプセルを得る観点から、好ましくは4.5以下、より好ましくは4.3以下、更に好ましくは4.1以下である。
香料組成物を含む油相成分の酸性、アルカリ性の強さに応じて、所望の初期pHに調整する観点から、任意の酸性又はアルカリ性のpH調整剤を用いてもよい。
前記乳化液のpHが所望の値以下となることもある。その場合には、後述するアルカリ性のpH調整剤を用いて調整することが好ましい。
すなわち、工程1-4は、好ましくは、下記の工程1-4’であってもよい。
工程1-4’:工程1-3で得られた乳化液のpHを、pH調整剤を用いて調整し、1段階目のゾル-ゲル反応を行い、コアと第一シェルとを有するシリカカプセル(1)を形成し、該シリカカプセル(1)を含有する水分散体を得る工程
酸性のpH調整剤として、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸、酢酸、クエン酸等の有機酸、陽イオン交換樹脂等を水やエタノール等に加えた液などが挙げられ、好ましくは塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸である。
アルカリ性のpH調整剤として、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタンなどが挙げられ、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウムである。
工程1におけるゾル-ゲル反応の反応温度は、水相として含まれる水の融点以上、沸点以下であれば任意の値を選択することができるが、ゾル-ゲル反応における加水分解反応と縮合反応のバランスを制御し、緻密なシェルを形成する観点から、温度を一定範囲にするのが好ましい。該範囲としては、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは15℃以上、そして、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、更に好ましくは40℃以下である。
〔工程2〕
工程2は、工程1で得られたシリカカプセル(1)を含有する水分散体に、更にテトラアルコキシシランを添加してゾル-ゲル反応を行い、第一シェルを包接する第二シェルを有するシリカカプセルを形成する工程である。
工程2におけるテトラアルコキシシランの添加量は、第一シェルを包接した第二シェルを形成する観点から、工程1の香料組成物に対して、好ましくは7質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、水相に分散するシリカゾルの生成を抑制し、シリカカプセルの分散安定性を向上させる観点から、好ましくは200質量%以下、より好ましくは170質量%以下、更に好ましくは150質量%以下である。
工程2において、工程1で得られるシリカカプセル(1)を含有する水分散体に添加するテトラアルコキシシランは、全量を一括で添加してもよく、間欠的に分割して添加してもよく、連続的に添加してもよいが、緻密性の高い第二シェルを形成する観点から、連続的に滴下して添加することが好ましい。
テトラアルコキシシランを連続的に滴下して添加する場合、その滴下時間は製造の規模に応じて適宜設定することができるが、添加するテトラアルコキシシランと水分散体との分離を抑制する観点から、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、更に好ましくは30分以上であり、そして、好ましくは1200分以下、より好ましくは1000分以下、更に好ましくは500分以下である。
本発明において、テトラアルコキシシランの添加総量、すなわち工程1及び工程2で用いられるテトラアルコキシシランの合計添加量は、工程1の香料組成物に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、更に好ましくは40質量%以上であり、そして、好ましくは250質量%以下、より好ましくは200質量%以下、更に好ましくは150質量%以下である。テトラアルコキシシランの添加総量を上記範囲にすることにより、内包する香料組成物を長期間保持することができる。
本発明において、工程2におけるテトラアルコキシシランの添加前の水分散体の総量に対して、工程1の香料組成物及びテトラアルコキシシランの合計量は、香料組成物の長期保持性を向上させる観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、より更に好ましくは10質量%以下であり、そして、生産効率の観点から、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上である。
工程2におけるテトラアルコキシシランの添加前の水分散体の総量に対する、工程1の香料組成物及びテトラアルコキシシランの合計量の調整は、工程1の香料組成物及びテトラアルコキシシランの量と工程1で得られる水分散体の総量とが上記範囲となるように工程1を行ってもよく、工程1で得られた水分散体に更に水を添加して希釈することにより行ってもよい。
本発明は、生産効率の観点から、工程2において、テトラアルコキシシランの添加前に、工程1で得られた水分散体を水で希釈してもよい。工程1で得られた水分散体の希釈前の総量に対する、工程1の香料組成物及びテトラアルコキシシランの合計量は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、より更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
希釈倍率は、好ましくは2倍以上、より好ましくは2.5倍以上であり、そして、好ましくは20倍以下、より好ましくは10倍以下、より好ましくは7倍以下である。
工程2におけるゾル-ゲル反応の反応温度は、分散媒として含まれる水の融点以上、沸点以下であれば任意に選択することができるが、ゾル-ゲル反応における加水分解反応と縮合反応のバランスを制御し、緻密なシェルを形成する観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは15℃以上であり、そして、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、更に好ましくは40℃である。工程1のゾル-ゲル反応と工程2のゾル-ゲル反応とで異なる反応温度で実施しても良い。
本発明は、工程2において、工程1で得られた水分散体に、更に有機高分子化合物を水分散体を安定させ凝集を抑制する目的で添加してもよい。ここで、有機高分子化合物とは重量平均分子量5,000以上の化合物を意味する。
前記有機高分子化合物としては、ノニオン性ポリマー、カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマーが挙げられる。
前記ノニオン性ポリマーは、水中で電荷を有しない水溶性ポリマーを意味する。ノニオン性ポリマーを用いることにより、シリカカプセルの用途に応じた機能を該シリカカプセルに付与させることができる。
前記有機高分子化合物としてノニオン性ポリマー、カチオン性ポリマー、又はアニオン性ポリマーを用いる場合、例えば本発明に係るシリカカプセルを柔軟剤組成物等の繊維製品処理剤組成物に用いる際には、シリカカプセルの繊維への吸着性の向上が期待できる。
本明細書において「水溶性ポリマー」とは、105℃で2時間乾燥させ、恒量に達したポリマーを25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が1mg以上であるポリマーをいう。
ノニオン性ポリマーとしては、ノニオン性モノマー由来の構成単位を有するポリマー、水溶性多糖類(セルロース系、ガム系、スターチ系等)及びその誘導体等が挙げられる。
ノニオン性モノマーとしては、炭素数1以上22以下の脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート;スチレン等のスチレン系モノマー;ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族基含有(メタ)アクリレート;酢酸ビニル;ビニルピロリドン;ビニルアルコール;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。なお、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートの意味である。同様に、(メタ)アクリルは、アクリル又はメタクリルの意味である。
ノニオン性ポリマーは、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体等のビニルピロリドンと他のノニオン性モノマーとの共重合体、及びヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース等のセルロース系ポリマーから選ばれる1種以上が好ましく、ポリビニルピロリドン及びヒドロキシプロピルセルロースから選ばれる1種以上がより好ましい。
カチオン性ポリマーとしては、四級アンモニウム塩基を含有するポリマーの他、窒素系のカチオン基を有するポリマー、pH調整によりカチオン性を帯びることがあるポリマー等が挙げられる。カチオン性ポリマーを用いることにより、工程1で得られるシリカカプセル(1)が水分散体中で凝集しやすい状況を緩和することができ、続く工程2において粗大粒子等の生成を抑制できる。
カチオン性ポリマーとしては、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(アクリル酸-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(アクリルアミド-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(アクリルアミド-co-アクリル酸-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)等のポリジアリルジメチルアンモニウム塩及びその共重合体、ポリ(2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド)、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガム、カチオン化タラガム、カチオン化フェヌグリークガム、カチオン化ローカストビンガム等が挙げられる。これらの中でも、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩及びその共重合体が好ましく、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(アクリル酸-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、及びポリ(アクリルアミド-co-アクリル酸-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)から選ばれる1種以上がより好ましく、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)が更に好ましい。
カチオン性ポリマーのカチオン基当量は、シリカカプセル(1)の分散性の観点及び粗大粒子の生成を抑制する観点、並びに長期保持性を向上させる観点から、好ましくは1meq/g以上、より好ましくは3meq/g以上、更に好ましくは4.5meq/g以上であり、そして、好ましくは10meq/g以下、より好ましくは8meq/g以下である。カチオン性ポリマーにアニオン基が含まれてもよいが、その場合、カチオン性ポリマーに含まれるアニオン基当量は、好ましくは3.5meq/g以下、より好ましくは2meq/g以下、更に好ましくは1meq/g以下である。なお、本発明において、カチオン性ポリマーのカチオン基当量は、モノマー組成に基づいた計算により算出したものを用いる。
アニオン性ポリマーとしては、カルボキシル基を有するモノマー単位を含有するポリマーの他、スルホン酸基を有するモノマー単位を含有するポリマー、pH調整によりアニオン性を帯びるポリマー等が挙げられる。
アニオン性ポリマーとしては、ポリ(メタ)(アクリル酸)、ポリ(マレイン酸)、ポリ((メタ)アクリル酸-co-マレイン酸)、ポリ((メタ)アクリル酸-co-無水マレイン酸)、ポリ((メタ)アクリル酸-co-イソブチレン)、ポリ((メタ)アクリル酸-co-スチレン)、ポリ(イソブチレン-co-マレイン酸)、ポリ(スチレン-co-マレイン酸)、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又はメタクリル酸の意味である。
工程2において、有機高分子化合物の添加量は、工程1で得られた水分散体に対して、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上であり、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。
工程2により得られるシリカカプセルは、水中に分散した状態で得られる。用途によってはこれをそのまま使用することもできるが、場合によっては、シリカカプセルを分離して使用する。分離方法としては、ろ過法、遠心分離法等を採用することができる。
本発明の香料組成物(A)を包含するシリカカプセル(a)、例えば前記の様に製造したシリカカプセルは、水媒体中で繊維製品に付着した後に繊維製品から水分が蒸発する過程の終盤で壊れ、内包物を繊維製品に浸透させることができる。
本発明の(a)成分であるシリカカプセルは、本発明の水性組成物中では内包物を安定に保持し、水媒体中で繊維製品に付着した後、乾燥時に壊れるという視点から、好ましくは、前記香料組成物を含むコアと、該コアを包接する第一シェルと、第一シェルを包接する第二シェルとを有するシリカカプセルである。
本発明のシリカカプセルの第一シェルは、コアを包接し、シリカを構成成分として含み、好ましくは5nm以上20nm以下の平均厚さを有し、第二シェルは、第一シェルを包接し、シリカを構成成分として含み、好ましくは10nm以上100nm以下の平均厚さを有する。
シリカカプセルの第一シェル及び第二シェルの平均厚さは、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により測定することができる。具体的には、透過型電子顕微鏡観察下で、第一シェル及び第二シェルの厚さを写真上で実測する。この操作を、視野を5回変えて行う。得られたデータから第一シェル及び第二シェルの平均厚さの分布を求める。透過型電子顕微鏡の倍率の目安は1万倍以上10万倍以下であるが、シリカカプセルの大きさによって適宜調節される。ここで、透過型電子顕微鏡(TEM)として、例えば商品名「JEM-2100」(日本電子株式会社製)を用いることができる。
本発明に係るシリカカプセルのメジアン径D50は、長期保持性を向上させ、シリカカプセルの分散安定性を向上させる観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは1μm以上であり、そして、シリカカプセルの物理的強度を向上させ、長期保持性を向上させる観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、更に好ましくは30μm以下、より更に好ましくは10μm以下である。
シリカカプセルのメジアン径D50は、実施例に記載の方法により測定することができる。
本発明に係るシリカカプセルは、本発明の濃縮水性組成物である繊維製品処理剤組成物を調製する際は、シリカカプセルスラリーとして配合することが好ましい。繊維製品処理剤組成物を調製するときに混合する成分へのシリカカプセルスラリーの分散性を向上させる観点から、シリカカプセルスラリーには、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤及び陰イオン性界面活性剤から選ばれる界面活性剤を添加してもよい。
なお、(a)成分のシリカカプセルは香り立ちを損なわない程度に一部凝集していてもよい。
本発明の水性組成物は、(a)成分を、(a)成分が包含する香料組成物(A)として、好ましくは0.01ppm以上、より好ましくは0.05ppm以上、更に好ましくは0.1ppm以上、そして、好ましくは20ppm以下、より好ましくは10ppm%以下、更に好ましくは5ppm以下含有する。
本発明の水性組成物には、(A)成分を包含するシリカカプセル(a)以外に、公知のマイクロカプセル化した香料粒子、特開2009-256818号公報に記載のケイ酸エステル香料前駆体等の香料前駆体を別途配合してもよい。これらの香料前駆体やマイクロカプセル香料は、本発明の(A)成分の濃度規定に含まれないものとする。
本発明中の水性組成物は、水を含有することが好ましい。水は蒸留水又は脱イオン化した水が好ましい。本発明の水性組成物は、水を、容易な使用を行うための観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、そして、好ましくは99.9質量%以下、より好ましくは99.5質量%以下、更に好ましくは99質量%以下含有する。
本発明の水性組成物は、組成物自体の安定性の観点から、希釈する前の濃縮水性組成物(ここで濃縮水性組成物を繊維製品処理剤と称する場合もあり、これは柔軟剤等に代表される公知の繊維製品処理剤であってもよい)の安定性又は水溶解性の観点から、又は(A)成分からの付随成分として、水溶性有機溶剤(以下、(b)成分ともいう)を含有することができる。
なお本発明において、(b)成分の「水溶性」とは、100gの20℃の脱イオン水に対して20g以上溶解することをいう。また本発明において、「溶解」とは、分離や白濁が生じないことであり、具体的には、紫外可視分光光度計UV-2550(株式会社島津製作所製)を用いて、UV600nmの光透過率が85%以上のことをいう。
(b)成分としては、具体的にはエタノール、イソプロパノール等の低級(炭素数2以上4以下)アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の多価アルコール類(炭素数2以上12以下)、エチレングリコールのモノエチル又はモノブチルエーテル、プロピレングリコールのモノエチル又はモノブチルエーテル、ジエチレングリコールのモノエチル又はモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールのモノエチル又はモノブチルエーテル、ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール、フェノール性化合物のエチレンオキシド又はプロピレンオキシド付加物、炭素数5以上8以下のアルキル基を有するモノアルキルモノグリセリルエーテル等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。
(b)成分としては、水性組成物中での(A)成分の溶解性担保の観点から、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノキシエタノール、エタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、及びプロピレングリコールモノエチルエーテルから選ばれる1種以上が好ましく、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びエタノールから選ばれる1種以上がより好ましい。
本発明の水性組成物は、(c)成分として、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤としては、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる1種以上を挙げることができるが、本発明では処理に伴う浸漬時の(a)成分の繊維製品への吸着性を高める観点から、陽イオン性界面活性剤が好ましく、4級アンモニウム塩型陽イオン性界面活性剤がより好ましい。この点、陽イオン性界面活性剤は柔軟基剤や殺菌剤としての効果も利用できることからも好ましく、柔軟基剤として知られている陽イオン性界面活性剤を用いることができる。
(c)成分の陽イオン界面活性剤としては、好ましくはエステル結合又はアミド結合で分断されていてもよい炭素数10以上、好ましくは12以上であり、22以下、好ましくは22以下の不飽和又は飽和の直鎖炭化水素を1つ以上3つ以下(アミンの場合は2つ以下)有し、残りの有機基が炭素数1以上3以下のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基であって、ヒドロキシアルキル基は重合度1以上40以下のオキシエチレン基又はオキシプロピレン基を窒素原子の間で有してもよく、又はベンジル基であり、好ましくはメチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基又はベンジル基であって、その塩酸、硫酸又はヒドロキシカルボン酸の酸塩である3級アミン塩型陽イオン性界面活性剤、又は当該3級アミンをアルキル化剤で4級化して得られる、陰イオン、好ましくは塩素イオン、メチル硫酸イオン又はエチル硫酸イオンを対イオンとする4級アンモニウム塩型陽イオン性界面活性剤を挙げることができる。陽イオン性界面活性剤は製造上、2種以上の陽イオン性界面活性剤の混合物として構成されていることが知られており、例えば4級アンモニウム塩化合物は疎水性基である前記長鎖炭化水素基を1つ、2つ又は3つを有する化合物の混合物として使用してもよく、4級化されていない3級アミン塩や未反応の脂肪酸やその他副反応物を含有するものであってもよい。
(c)成分としては、生物分解性を考慮した柔軟基剤としてもよく知られている下記一般式(c1)で表される4級アンモニウム塩化合物(以下、(c1)成分ともいう)が挙げられ、これを主基剤として用いることがより好ましい。
Figure 2023034961000003
〔式中、R11c、R12c、R13cは、それぞれ独立して、炭素数16以上22以下の脂肪酸からOHを除いた残基(アシル基)、又は水素原子である。但し、R11c、R12c、R13cの少なくとも1つはアシル基である。R14cは炭素数1以上3以下のアルキル基であり、Xは陰イオンである。〕
(c1)成分はトリエタノールアミン脂肪酸エステルの4級化物であることから、アシル化度が1、2又は3の3つの異なる4級化合物から構成されるものである。
(c1)成分の平均アシル化率は、組成物の保存安定性の観点及び残香持続性の観点から、好ましくは1.3以上、より好ましくは1.5以上、そして、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.95以下である。平均アシル化度は、脂肪酸とトリエタノールアミンとの反応比率及び4級化の際のアルキル化剤との反応比率や反応条件によって調整することができる。
本発明では(c1)成分を構成するそれぞれの割合は以下の比率が好ましい。
アシル化度が1の化合物、すなわち一般式(c1)中のR11cがアシル基であり、R12c及びR13cが水素原子である化合物(c11)〔以下、(c11)成分という〕の割合は、一般式(c1)で表される4級アンモニウム塩の全量中、5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、そして、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。
アシル化度が2の化合物、すなわち一般式(c1)中のR11c及びR12cがアシル基であり、R13cが水素原子である化合物(c12)〔以下、(c12)成分という〕の割合は、一般式(c1)で表される4級アンモニウム塩の全量中、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、そして、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは65質量%以下である。
アシル化度が3の化合物、すなわち一般式(c1)中のR11c、R12c及びR13cがアシル基である化合物(c13)〔以下、(c13)成分という〕の割合は、一般式(c1)で表される4級アンモニウム塩の全量中、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。
(c12)成分と(c13)成分は香料の繊維製品への吸着に有効な成分であるが、繊維製品処理剤組成物の保存安定性に影響を与える。そのために、(c1)成分は、(c11)成分を適度に残した組成であることが好ましい。更には、前記の割合を満たした上で、(c1)成分中の(c12)成分の含有量が(c13)成分よりも多いこと、より好ましくは(c12)成分の含有量(質量%)と(c13)成分の含有量(質量%)との差が、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上あることである。
一般式(c1)中、R14cはメチル基又はエチル基が好ましい。
一般式(c1)中、Xは、クロロイオン等のハロゲンイオン、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸エステルイオン、炭素数1以上3以下のアルキル基が1個以上3個以下置換していてもよいベンゼンスルホン酸イオンから選ばれる陰イオンが好ましく、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸エステルイオンがより好ましく、メチル硫酸エステルイオン又はエチル硫酸エステルイオンがより好ましい。
本発明に用いる(c1)成分は、脂肪酸とトリエタノールアミンを脱水エステル化反応させる方法(脱水エステル化法という)、又は脂肪酸低級アルキルエステル(低級アルキルはメチル基、エチル基、プロピル基)とトリエタノールアミンをエステル交換反応させる方法(エステル交換法という)により得られたエステル化反応物を、アルキル化剤で4級化反応させることで得ることができる。本発明の(c1)成分の(c11)成分~(c13)成分の割合を満たす混合物を得るには、例えば、脂肪酸又は脂肪酸低級アルキルエステル:トリエタノールアミンのモル比を、好ましくは1.3:1以上、より好ましくは1.5:1以上、そして、好ましくは2.0:1以下、より好ましくは1.95:1以下の比率で反応させたトリエタノールアミン脂肪酸エステルの混合物を4級化反応させることで得ることができる。
なお、(c1)成分を得るのに選択水素化反応を行った場合には不飽和結合の幾何異性体の混合物が形成するが、本発明の(c1)成分では、シス/トランス(モル比)が、好ましくは25/75以上、より好ましくは50/50以上、そして、好ましくは100/0以下、より好ましくは95/5以下が好適である。
脱水エステル化法においてはエステル化反応温度を140℃以上230℃以下で縮合水を除去しながら反応させることが好ましい。反応を促進させる目的から通常のエステル化触媒を用いても差し支えなく、例えば硫酸、燐酸などの無機酸、酸化錫、酸化亜鉛などの無機酸化物、テトラプロポキシチタンなどのアルコラートなどを選択することができる。反応の進行はJISK0070-1992に記載の方法で酸価(AV)及び鹸化価(SV)を測定することで確認を行い、好適にはAVが10mgKOH/g以下、好ましくは6mgKOH/g以下となった時、エステル化反応を終了する。得られるエステル化合物の混合物は、SVが好ましくは110mgKOH/g以上、より好ましくは130mgKOH/g以上、そして、好ましくは210mgKOH/g以下、より好ましくは190mgKOH/g以下である。
エステル交換法においては、反応は、好ましくは50℃以上、より好ましくは100℃以上、そして、好ましくは150℃以下の温度で生成する低級アルコールを除去しながら行う。反応促進のために水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機アルカリや、メチラート、エチラートなどのアルコキシ触媒を用いることも可能である。反応の進行はガスクロマトグラフィーなどを用いて脂肪酸低級アルキルエステルの量を直接定量することが好適であり、未反応脂肪酸低級アルキルエステルが仕込みの脂肪酸低級アルキルエステルに対してガスクロマトグラフィーチャート上で10面積%以下、特に6面積%以下で反応を終了させることが好ましい。得られるエステル化合物の混合物は、SVが好ましくは110mgKOH/g以上、より好ましくは130mgKOH/g以上、そして、好ましくは210mgKOH/g以下、より好ましくは190mgKOH/g以下である。
次にこのようにして得られたエステル化合物の4級化を行うが、4級化に用いられるアルキル化剤としては、メチルクロリド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等が好適である。アルキル化剤として、メチルクロリドを用いる場合には、特に溶媒を使用する必要はないが、溶媒を使用する場合は、エタノールやイソプロパノールなどの溶媒を、エステル化合物に対して10質量%以上50質量%以下程度混合した溶液をチタン製のオートクレーブなどの加圧反応器に仕込み、密封下30℃以上120℃以下の反応温度でメチルクロリドを圧入させて反応させる。このときメチルクロリドの一部が分解し塩酸が発生する場合があるため、アルカリ剤を少量加えることで反応が効率よく進むため好適である。メチルクロリドとエステル化合物とのモル比は、エステル化合物のアミノ基1当量に対してメチルクロリドを1倍当量以上1.5倍当量以下用いることが好適である。
ジメチル硫酸及び/又はジエチル硫酸とエステル化合物との反応モル比は、エステル化合物のアミノ基1当量に対してジメチル硫酸及び/又はジエチル硫酸を好ましくは0.9倍当量以上、より好ましくは0.95倍当量以上、そして、好ましくは1.1倍当量以下、より好ましくは0.99倍当量以下用いる。
本発明の水性組成物は、(c1)成分の製造時に生成されるその他反応生成物を含有してもよい。例えば、4級化されなかった未反応アミンとして、具体的には脂肪酸トリエステル構造体のアミンと脂肪酸ジエステル構造体のアミンがあり、製法によっては、脂肪酸トリエステル構造体のアミンと脂肪酸ジエステル構造体のアミンとを合計して、(c1)成分100質量部に対して5質量部以上30質量部以下含む反応生成物が得られる。一方、脂肪酸モノエステル構造体のアミンは4級化し易いことから、通常、反応生成物中の含有量は(c1)成分100質量部に対して0.5質量部以下である。更には脂肪酸エステル化されなかったトリエタノールアミン及びトリエタノールアミンの4級化物は合計で(c1)成分100質量部に対して0.5質量部以上3質量部以下含有され、このうち90質量%以上は4級化物である。また未反応脂肪酸が含まれることもある。(c1)成分を含む反応生成物を用いる場合は、本発明の効果を損なわない限り、このような未反応成分や副反応成分が繊維製品処理剤組成物中に含まれていてもよい。
(c1)成分として(c11)成分、(c12)成分及び(c13)成分を含む混合物を用いる場合、該混合物中の(c11)成分、(c12)成分、(c13)成分、アミン化合物の割合等は、高速液体クロマトグラフ(HPLCと言う場合もある)を用い、検出器として荷電荷粒子検出器(Charged Aerosol Detection、CADと言う場合もある)を使用して求めることができる。CADを用いた測定方法については「荷電化粒子検出器Corona CADの技術と応用」(福島ら Chromatography, Vol.32 No.3(2011))を参考にすることができる。
本発明の(c1)成分は、アシル基を脂肪酸と見做した場合に、アシル基を構成する全脂肪酸中、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸の割合が、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは75質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下、より好ましくは98質量%以下、更に好ましくは95質量%以下である4級アンモニウム塩化合物[以下(c1-1)成分という]を必須成分として含有することが好ましい。
(c1-1)成分は、アシル基を脂肪酸と見做した場合に、アシル基を構成している全脂肪酸中、オレイン酸の割合が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは65質量%以上、より更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは75質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下である4級アンモニウム塩化合物である。なお前記した(c1)成分として(c11)成分、(c12)成分及び(c13)成分を含む条件は(c1-1)成分でも同様である。
(c1-1)成分のアシル基を構成する脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸以外に、ステアリン酸、パルミチン酸及びエライジン酸を挙げることができる。
(c)成分としては、(c1)成分として(c1-1)成分を使用する場合、(c1-1)成分とアシル基を構成する脂肪酸の組成条件が異なる4級アンモニウム塩化合物(以下、(c1-2)成分ともいう)を用いることが好ましい。(c1-2)成分は、前記一般式(c1)で示される4級アンモニウム化合物であって、(c1-1)成分のアシル基を構成する脂肪酸組成が異なる以外は、同様にして得られる4級アンモニウム塩化合物が好ましい。具体的には、アシル基を脂肪酸と見做した場合に不飽和脂肪酸の割合が、アシル基を構成している全脂肪酸の50質量%以下、更に40質量%以下である4級アンモニウム塩化合物が好ましい。該4級アンモニウム塩化合物の不飽和脂肪酸の割合の下限値は、アシル基を構成している全脂肪酸の10質量%以上であってよい。
(c1-2)成分としては、前記一般式(c1)中のR11c、R12c及びR13cのアシル基を構成する脂肪酸が、牛脂、パーム油、ヒマワリ油、大豆油、ナタネ油、サフラワー油、綿実油、トウモロコシ油、オリーブ油から選ばれる油脂をケン化して得られる脂肪酸組成のものが好適であり、特に柔軟性能の点から牛脂、パーム油及びヒマワリ油から得られる脂肪酸組成のものが良好である。また、これらは炭素-炭素不飽和結合を2つ以上有するアルケニル基を多量に含有するため、例えば特開平4-306296号公報に記載されているような晶析や、特開平6-41578号公報に記載されているようにメチルエステルを減圧蒸留する方法、あるいは特開平8-99036号公報に記載の選択水素化反応を行うことで炭素-炭素不飽和結合を2つ以上含有する脂肪酸の割合を制御する方法などにより製造することができる。例えば硬化牛脂は牛脂由来の脂肪酸を水素添加により飽和にしたものであり、一部を硬化させたものとして半硬化という表現をする場合もある。なお前記した(c1)成分として(c11)成分、(c12)成分及び(c13)成分を含む条件は(c1-2)成分でも同様である。
(c)成分としては、(c1)成分以外の陽イオン性界面活性剤(以下、(c2)成分ともいう)を挙げることができる。
(c2)成分の具体例としては、窒素原子に結合する基のうち、1つ又は2つが炭素数10以上22以下のアルキル基又はアルケニル基であり、残りがヒドロキシ基を有していてもよい炭素数1以上4以下のアルキル基、ベンジル基、好ましくはメチル基である第3級アミン化合物及びその酸塩、並びに前記第3級アミン化合物の4級化物が挙げられる。これらの中でも、本発明の水性組成物に殺菌効果を付与する観点から、炭素数10以上22以下のアルキル基又はアルケニル基を1つ有し、ベンジル基を1つ有する陽イオン性界面活性剤が好ましい。
前記化合物の4級化に用いるアルキル化剤としては、(c1)成分において記載した化合物を用いることができる。
(c2)成分としては、下記(I)~(IV)から選ばれる1種以上の陽イオン性界面活性剤が好ましく、更に(II)~(IV)から選ばれる陽イオン性界面活性剤が好ましい。
(I)アルキル基又はアルケニル基の炭素数が10以上22以下のジ長鎖アルキル又はアルケニルジメチルアンモニウム塩[以下(c2-1)成分という]、
(II)アルキル基又はアルケニル基の炭素数が10以上22以下のモノ長鎖アルキル又はアルケニルトリメチルアンモニウム塩、[以下(c2-2)成分という]
(III)アルキル基又はアルケニル基の炭素数が10以上22以下のモノ長鎖アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩[以下(c2-3)成分という]
(IV)式(c2-4)で示されるアミン化合物の酸塩[以下(c2-4)成分という]
Figure 2023034961000004
〔式中、R21cは炭素数13以上19以下のアルキル基又は炭素数13以上19以下のアルケニル基であり、R22cは炭素数1以上6以下のアルキレン基であり、R23c、R24cはそれぞれ独立して炭素数1以上3以下のアルキル基である。〕
前記一般式(c2-4)で示されるアミン化合物の酸塩の酸としては、無機酸又は有機酸が挙げられる。無機酸としては、塩酸、及び硫酸が挙げられる。有機酸としては、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸、炭素数1以上10以下の1価又は多価のカルボン酸、及び炭素数1以上20以下の1価又は多価のスルホン酸が挙げられる。有機酸の具体例としては、メチル硫酸、エチル硫酸、p-トルエンスルホン酸、(o-、m-、p-)キシレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、グリコール酸、クエン酸、安息香酸、及びサリチル酸が挙げられる。
(c2)成分としては、具体的には塩化ジデシルジメチルアンモニウム塩、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム塩、塩化ミリスチルトリメチルアンモニウム塩、及び塩化ラウリルジメチルベンジルアンモニウム塩、ジメチルアミノプロピルステアリルアミド酸塩、ジメチルアミノプロピルパルミチルアミド酸塩を挙げることができる。
(c)成分としては、非イオン性界面活性剤(以下、(c3)成分ともいう)を挙げることができる。
(c3)成分としては、炭素数8以上20以下のアルキル基又はアルケニル基とオキシアルキレン基とを有する非イオン性界面活性剤が好ましく、下記一般式(c3)で表される非イオン性界面活性剤がより好ましい。
31c-A-〔(R32cO)-R33c (c3)
〔式中、R31cは、炭素数8以上、好ましくは10以上、そして、18以下、好ましくは16以下のアルキル基又はアルケニル基であり、R32cは、炭素数2又は3のアルキレン基、好ましくはエチレン基であり、R33cは、炭素数1以上3以下のアルキル基又は水素原子であり、xは2以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、そして、100以下、好ましくは80以下、より好ましくは60以下の数であり、Aは-O-、-COO-、-CON<又は-N<であり、Aが-O-又は-COO-の場合yは1であり、Aが-CON<又は-N<の場合yは2である。〕
一般式(c3)の化合物の具体例としては、以下の式(c3-1)~(c3-3)で表される化合物を挙げることができる。
31c-O-(CO)-H (c3-1)
〔式中、R31cは前記R31cと同義である。kは8以上、好ましくは10以上、そして、100以下、好ましくは60以下の数である。〕
31c-O-[(CO)(CO)]-H (c3-2)
〔式中、R31cは前記R31cと同義である。s及びtはそれぞれ独立に2以上、好ましくは5以上であり、そして、40以下の数であり、(CO)と(CO)はランダム又はブロック付加体であってもよい。(CO)と(CO)の結合順序を問わない。〕
Figure 2023034961000005
(式中、R31cは前記R31cと同義である。Aは-N<又は-CON<であり、u及びvはそれぞれ独立に0以上40以下の数であり、u+vは5以上60以下、好ましくは40以下の数である。R33cは、炭素数1以上3以下のアルキル基又は水素原子である。)
本発明の水性組成物は、(c)成分として、(c1)成分、(c2)成分、及び(c3)成分から選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
本発明の水性組成物は、(d)成分として、(a)成分に包含される香料組成物以外の香料を含有することができる。(d)成分としては、まず水性組成物中に分散ないし溶解している、カプセル化や誘導体化されていない、通常の香料(外香料という場合もある)を挙げることができる。外香料は一般に繊維製品処理剤、特には柔軟剤組成物に関する実施例等に記載された香料組成物を参照することができ、公知の目的で配合する事ができる。(d)成分の外香料は本発明の(A)成分の条件と同じ香料化合物からなる香料組成物であってもよい。
また本発明の水性組成物は、(d)成分として、外香料以外に、シリカカプセル(a)以外の素材で構成されたシェル(殻という場合もある)で香料化合物を内包したマイクロカプセル、又は香料前駆体を含有することができる。
(d)成分は、(A)成分と併用することで、従来よりも自由度の高い香料設計が可能となる。(d)成分のシリカカプセル(a)以外の素材で構成されたシェル(殻という場合もある)で香料化合物を内包したマイクロカプセル、又は香料前駆体としては、には、徐放性香料として特開2014-125685号公報記載のケイ酸エステル化合物や特表平8-502522号公報記載のアルコール系香料化合物と、脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸とのエステル化合物やカプセル香料として特開2015-200047号公報記載のマイクロカプセル香料を用いることができる。
本発明の水性組成物は、(e)成分として、無機塩を含有することができる。
無機塩としては、保存安定性を向上させる観点から、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、及び塩化マグネシウムから選ばれる1種以上が好ましい。
本発明の水性組成物は、(f)成分として、水不溶性のシリコーン化合物を含有することができる。本明細書における(f)成分の「水不溶性」とは、20℃のイオン交換水1Lに溶解するシリコーン化合物の量が1g以下であることをいう。
(f)成分の具体例としては、ジメチルポリシロキサン、4級アンモニウム変性ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン、アミド変性ジメチルポリシロキサン、エポキシ変性ジメチルポリシロキサン、カルボキシ変性ジメチルポリシロキサン、ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサン、及びフッ素変性ジメチルポリシロキサン等のシリコーン化合物が挙げられる。
(f)成分としては、重量平均分子量が好ましくは1千以上、より好ましくは3千以上、更に好ましくは5千以上であり、そして、好ましくは100万以下であり、25℃における粘度が好ましくは2mm/s以上、より好ましくは500mm/s以上、更に好ましくは1千mm/s以上であり、そして、好ましくは100万mm/s以下である、ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン、アミド変性ジメチルポリシロキサン、及びポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン及び/又はポリオキシプロピレン、好ましくはポリオキシエチレン)変性ジメチルポリシロキサンから選ばれる1種以上が好ましい。
なお、(f)成分における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により、ポリスチレンを標準物質として測定した値である。
アミノ変性ジメチルポリシロキサンのアミノ当量(アミノ当量とは窒素原子1個当たりの分子量)は、好ましくは1,500g/mol以上、より好ましくは2,500g/mol以上、更に好ましくは3,000g/mol以上、そして、好ましくは40,000g/mol以下、より好ましくは20,000g/mol以下、更に好ましくは10,000g/mol以下である。
本発明の水性組成物は、(g)成分として、キレート剤を含有することができる。
キレート剤の具体例としては、エタン-1-ヒドロキシ-1,1-ジホスホン酸、エチレンジアミン四酢酸、メチルグリシン二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、エチレンジアミン二コハク酸、L-グルタミン酸-N,N-二酢酸、N-2-ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、クエン酸、コハク酸、及びそれらの塩から選ばれる1種以上が挙げられる。塩としては、アルカリ金属塩、アンモニウム塩が好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩がより好ましい。
本発明の水性組成物は、その他成分(以下、(h)成分ともいう)として、基材の劣化を抑制する観点から、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)等の酸化防止剤を用いることができ、また、審美や長期保存時の着色を防ぐ観点から、繊維製品処理剤組成物において一般的に用いられる染料及び顔料を用いることもできる。更に、プロキセルの商品名で市販されている防菌、防黴剤を用いることもできる。また、安息香酸及びその塩も防菌、防黴剤として用いることもできる。
本発明の工程(I)で使用する水性組成物は、本発明の本質部分である(A)成分としての香料組成物及び水の他に、前記したように(b)成分~(h)成分を含有することができる
本発明の水性組成物において、(b)成分の含有量は、浸漬処理を行う場合、好ましくは0.8ppm以上、より好ましくは2ppm以上、更に好ましくは3ppm以上、そして、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、更に好ましくは10ppm以下である。また本発明の水性組成物において、(b)成分の含有量は、塗布又は噴霧処理を行う場合、好ましくは30000ppm以上、より好ましくは40000ppm以上、更に好ましくは50000ppm以上、そして、好ましくは100000ppm以下、より好ましくは80000ppm以下、更に好ましくは70000ppm以下である。
本発明の水性組成物において、(c)成分の含有量は、浸漬処理を行う場合、好ましくは10ppm以上、より好ましくは20ppm以上、更に好ましくは30ppm以上、そして、好ましくは800ppm以下、より好ましくは200ppm以下、更に好ましくは100ppm以下である。
本発明の水性組成物において、(A)成分と(d)成分の合計含有量は、浸漬処理を行う場合、好ましくは1ppm以上、より好ましくは2ppm以上、更に好ましくは4ppm以上、そして、前記組成物中に香料成分を安定に溶解させる目的から、好ましくは120ppm以下、より好ましくは60ppm以下、更に好ましくは20ppm以下である。また、本発明の水性組成物において、(A)成分と(d)成分の合計含有量は、塗布又は噴霧処理を行う場合、好ましくは150ppm以上、より好ましくは250ppm以上、更に好ましくは400ppm以上、そして、前記組成物中に香料成分を安定に溶解させる目的から、好ましくは1500ppm以下、より好ましくは1000ppm以下、更に好ましくは600ppm以下である。
本発明の水性組成物において、(d)成分を含有する場合、(d)成分の含有量と(A)成分の含有量との質量比(d)/(A)は、好ましくは0.002以上、より好ましくは0.02以上、更に好ましくは0.1以上、より更に好ましくは0.5以上、より更に好ましくは1以上、より更に好ましくは3以上、そして、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは25以下、より更に好ましくは10以下、より更に好ましくは5以下である。
本発明の水性組成物において、(e)成分の含有量は、浸漬処理を行う場合、好ましくは0.01ppm以上、より好ましくは0.1ppm以上、更に好ましくは0.3ppm以上、そして、好ましくは20ppm以下、より好ましくは5ppm以下、更に好ましくは2ppm以下である。
また本発明の水性組成物において、(e)成分の含有量は、塗布又は噴霧処理を行う場合、好ましくは100ppm以上、より好ましくは300ppm以上、更に好ましくは500ppm以上、そして、好ましくは3000ppm以下、より好ましくは2000ppm以下、更に好ましくは1000ppm以下である。
本発明の水性組成物において、(f)成分の含有量は、浸漬処理を行う場合、好ましくは0.01ppm以上、より好ましくは0.03ppm以上、更に好ましくは0.05ppm以上、そして、好ましくは2ppm以下、より好ましくは1ppm以下、更に好ましくは0.5ppm以下である。
また本発明の水性組成物において、(f)成分の含有量は、塗布又は噴霧処理を行う場合、好ましくは1ppm以上、より好ましくは5ppm以上、更に好ましくは10ppm以上、そして、好ましくは100ppm以下、より好ましくは75ppm以下、更に好ましくは50ppm以下である。
本発明の水性組成物において、(g)成分の含有量は、浸漬処理を行う場合、好ましくは0.01ppm以上、より好ましくは0.03ppm以上、更に好ましくは0.05ppm以上、そして、好ましくは1ppm以下、より好ましくは0.75ppm以下、更に好ましくは0.5ppm以下である。
また本発明の水性組成物において、(g)成分の含有量は、塗布又は噴霧処理を行う場合、好ましくは10ppm以上、より好ましくは100ppm以上、更に好ましくは500ppm以上、そして、好ましくは3000ppm以下、より好ましくは2000ppm以下、更に好ましくは1500ppm以下である。
本発明の水性組成物は、濃縮水性組成物を水で希釈することで調製することができる。本発明の濃縮水性組成物は公知の柔軟剤等の繊維製品処理剤組成物であってもよい。本発明の濃縮水性組成物又は繊維製品処理剤組成物中の(A)成分及び任意の(b)成分~(g)成分は以下の濃度であることが好ましい。
本発明の濃縮水性組成物又は繊維製品処理剤組成物において、(a)成分が包含する香料組成物(A)の含有量は、洗濯処理、乾燥後に残存する香料量の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上、より更に好ましくは0.1質量%以上、そして、保存安定性及び他の香料添加剤とのバランスの観点から、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは質量2.0%以下、更に好ましくは1.5質量%以下、より更に好ましくは1.0質量%以下、より更に好ましくは0.5質量%以下である。
本発明の濃縮水性組成物又は繊維製品処理剤組成物において、(b)成分を含有する場合、(b)成分の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、そして、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
本発明の濃縮水性組成物又は繊維製品処理剤組成物において、(c)成分を含有する場合、(c)成分の含有量は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、より更に好ましくは10質量%以上、そして、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは17質量%以下、より更に好ましくは14質量%以下である。
本発明の濃縮水性組成物又は繊維製品処理剤組成物において、(d)成分を含有する場合、(d)成分と(A)成分の合計含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.45質量%以上、より更に好ましくは0.8質量%以上、そして、好ましくは7.5質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下、更に好ましくは3.0質量%以下、より更に好ましくは1.5質量%以下である。
本発明の濃縮水性組成物又は繊維製品処理剤組成物において、(d)成分を含有する場合、(d)成分の含有量と(A)成分の含有量との質量比(d)/(A)は、好ましくは0.002以上、より好ましくは0.02以上、更に好ましくは0.1以上、より更に好ましくは0.5以上、より更に好ましくは1以上、より更に好ましくは3以上、そして、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは25以下、より更に好ましくは10以下、より更に好ましくは5以下である。
本発明の濃縮水性組成物又は繊維製品処理剤組成物において、(e)成分を含有する場合、(e)成分の含有量は、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.015質量%以上、そして、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、より更に好ましくは0.05質量%以下である。
本発明の濃縮水性組成物又は繊維製品処理剤組成物において、(f)成分を含有する場合、(f)成分の含有量は、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、そして、好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.04質量%以下である。
本発明の濃縮水性組成物又は繊維製品処理剤組成物において、(g)成分を含有する場合、(g)成分の含有量は、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、そして、好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.04質量%以下である。
工程(I)に用いる水性組成物は、前記したように、水性組成物から水を低減させた濃縮水性組成物を使用時に水に希釈したものを用いる方法がある。前記したように濃縮水性組成物は、一般的に知られている柔軟剤組成物、糊剤、スタイリング剤等の繊維製品処理剤組成物であってもよく、その他、特許等で公開され洗濯の仕上げに用いることが知られている、UVを妨げるUV抑制処理剤;蛍光染料等を付与する染料助剤;汚れをつきにくくする防汚剤;繊維に殺菌や殺ウイルスないし抗菌性ないし抗ウイルスを付与する殺菌・抗菌剤;花粉やPM2.5等のアレルゲンや煤塵の付着や発現を抑制するアレルゲン除去剤;繊維の賦香を主目的とした賦香剤等を挙げることができる。それらの組成物を希釈して使用する場合に本発明の(A)成分を用いて本効果を有する繊維製品に仕上げることができる。従ってこれらの処理剤を希釈する場合、前記した(b)~(h)成分以外の成分を本発明の水性組成物は含有してもよく、本効果を大きく損なわないように注意して成分を決めることができる。
繊維製品用の殺菌・抗菌剤や悪臭の消臭を目的とする消臭剤に本発明の水性組成物を利用してもよい。本発明は賦香剤としての使用もあるが、(A)成分、特に香料化合物(A1)は、本発明の賦香方法において、乾燥時は芳香しない設計も可能であることから、消臭剤との併用は有効であり、他の香料を併用して芳香する場合であっても、悪臭を消臭する消臭剤であっても賦香能を備えた組成物であってもよい。また花粉やPM2.5等のアレルゲンや煤塵の付着や発現を抑制するアレルゲン抑制剤;蚊・ダニ等の付着ないし接近を抑制する害虫類忌避剤;タバコ臭、体臭又は焼き肉などの食べ物臭の付着を抑制する特定臭気抑制剤;汚れ付着防止剤等を上げることができる。従ってこれらの処理剤を塗布ないし噴霧して使用する場合、前記した(b)~(h)成分以外の成分を本発明の水性組成物は含有してもよく、本効果を大きく損なわないように注意して成分を決めることができる。
本発明の水性組成物は、柔軟剤等の仕上げ剤又は賦香剤もしくは消臭剤として使用することがより好ましい。その場合は、それぞれの効果を損なわない限り、各用途に使用することが知られている基材及び各種成分を含有することができる。
本発明の水性組成物を、賦香剤もしくは消臭剤として使用する場合、水性組成物のpHは、20℃で、4.0以上9.5以下であることが好ましい。本発明の水性組成物のpHは、液相安定性の観点から、20℃で、より好ましくは4.5以上、更に好ましくは5.0以上、そして、より好ましくは9.0以下、更に好ましくは8.5以下である。pHは、塩酸等の酸、又は水酸化ナトリウム等のアルカリを添加することにより調整することができる。pHはJIS K 3362;2008の項目8.3に従って20℃において測定する。
本発明の水性組成物を、柔軟剤として使用する場合は、前記した(c1)成分の界面活性剤を含有することが好ましく、その他に、グリセリン、ソルビトール及びペンタエリスルトール等の多価アルコール脂肪酸エステルとしての柔軟補助剤、クエン酸等の有機酸又はその塩、塩酸等の有機酸又はその塩、前記した酸化防止剤、前記した防腐剤、色素、並びに紫外線吸収剤を含むことができる。
本発明の水性組成物を柔軟剤として使用する場合、水性組成物、特にはその濃縮水性組成物又は繊維製品処理剤組成物のpHは、20℃で、2.0以上4.0以下であることが好ましい。本発明の水性組成物のpHは、液相安定性の観点から、20℃で、より好ましくは2.5以上、更に好ましくは2.7以上、そして、より好ましくは3.8以下、更に好ましくは3.5以下である。pHは、塩酸等の酸、又は水酸化ナトリウム等のアルカリを添加することにより調整することができる。pHはJIS K 3362;2008の項目8.3に従って20℃において測定する。
本発明の賦香方法の対象となる繊維製品としては、木綿繊維を含む繊維製品であって、木綿100%の繊維製品、及び、木綿繊維と他の繊維との混繊、混紡、交織、交撚等で混用して得られる紡績糸、織物、編物、不織布を挙げることができる。
具体的な他の繊維としては、苧麻、亜麻、パルプ、バクテリアセルロース繊維等の天然セルロース繊維、絹、羊毛等の天然タンパク繊維、ビスコース法レーヨン、銅アンモニア法レーヨン、溶剤紡糸法レーヨン等の再生セルロース繊維、アセテート、トリアセテート等の半合成繊維、ポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成繊維から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
なお、繊維製品は、反応性染料、バット染料等による先染め、反染、プリント品であっても差し支えない。
他の繊維と混用する場合、吸湿時のにおい立ちする観点から、木綿繊維の含有率は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上である。
本発明に使用される繊維製品としては、前記の木綿繊維や混用繊維を用いた織物、編物、不織布等の布帛及びそれを用いて得られたアンダーシャツ、Tシャツ、ワイシャツ、ブラウス、スラックス、帽子、ハンカチ、タオル、ニット、靴下、下着、タイツ、寝具等の製品が挙げられる。
上述したように、本発明の水性組成物を繊維製品に接触させる方法としては、本発明の水性組成物を繊維製品に塗布する方法、又は本発明の濃縮水性組成物を水で希釈した水性組成物に繊維製品を浸漬させる方法などが挙げられる。
工程(I)の処理は、洗濯機を用いておこなうことができる。例えば賦香剤として使用するような場合は、本発明の効果を損なわない限り、洗濯時の洗浄工程で洗剤を含有する環境下でおこなってもよく、洗浄工程を行う前に、洗剤と共に添加してもよく、或いは洗浄工程後のすすぎ前からすすぎ後の工程で添加してもよい。本発明では柔軟剤を添加するタイミングで繊維製品と接触させることが好ましく、具体的には洗浄工程後、1回以上のすすぎ工程の後に、本発明の水性組成物を添加して処理することが好ましい、その場合は既に繊維製品は水を含んだ状態になるため、溜め水の量を考慮して本発明の濃縮水性組成物が用いられるべきである。また前記したように濃縮水性組成物は柔軟剤組成物そのものであってもよい。
本発明の水性組成物に繊維製品を浸漬する場合は、本発明の水性組成物に繊維製品を浸漬により接触させた後、必要ならば脱水機を用いて余分な水分及び成分を除去すればよい。
本発明の水性組成物は、繊維製品用賦香剤組成物であってもよく、そのまま、あるいは希釈して繊維製品に適用される。本発明の繊維製品用賦香剤組成物は、水を含有することが好ましい。本発明の繊維製品用賦香剤組成物は、本発明の方法で述べた本発明の水性組成物であってよい。本発明の水性組成物で述べた事項は、本発明の繊維製品用賦香剤組成物に適用できる。
<工程(II)>
工程(II)は、工程(I)で処理した繊維製品を、5℃以上90℃未満の気体中で乾燥させることで、繊維製品表面ないし内部に付着した(a)成分のシリカカプセルの構造体を崩す工程である。
前記したように、工程(I)の接触方法が浸漬による場合は、工程(I)の後に脱水工程を設けることが好ましい。脱水方法は、浸漬方法の場合、単純に網に乗せて水だけ落とす方法から、物理的脱水方法として、洗濯機を用いた回転による遠心脱水方法、繊維製品を手でねじって絞る脱水方法や2つ以上のローラーの間を通すことによるプレスによる脱水方法がある。本発明では工程(I)と工程(II)の間に行う脱水工程を工程(I´)という場合がある。工程(I)の接触方法が浸漬による場合、工程(II)の前の繊維製品中の水分量は繊維製品乾燥1kgあたり、0.6~0.7kg含んでいることが好ましい。なお工程(I)の接触方法が浸漬による場合、工程(I)の後、水や溶媒等を添加して水性組成物を希釈してもよいが、工程(II)に至るまで繊維製品に接触する水性組成物の溶液中の(A)成分濃度は、本発明の規定する範囲領域を出ないことが好ましい。
工程(II)の重要な要件は、シリカカプセルが乾燥により崩壊する点にある。本発明の香料化合物(A1)は、木綿繊維を含む繊維製品に奥深く入り易い性質を持っているものであるため、工程(II)で、気体中で乾燥することにより繊維製品に付着したシリカカプセルが崩壊し、包含されていた香料化合物(A1)が繊維製品の内部へとより入り易くなる。
工程(II)で、乾燥温度は乾燥中に崩壊した香料化合物が揮発しないようにする観点から、5℃以上、好ましくは7℃以上、より好ましくは10℃以上であり、繊維製品に香料化合物(A1)が浸透する前に揮発しない程度の温度以下が好ましく、90℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下である。なお乾燥機を用いて乾燥処理をしてもよいが、温度上限はこの範囲以内であることが好ましい。なお乾燥処理後に熱処理することで香料化合物(A1)は繊維内部へと浸透し易くなる。この点は特開2021-80613号公報を参考にすることができる。
<工程(III)>
本発明の木綿繊維を含む繊維製品の賦香方法は、工程(II)の後に、更に工程(III)として、工程(II)の乾燥処理を引き続き行うか又は繊維製品を加熱して繊維製品を乾燥させる工程を含むことができる。
工程(III)は、工程(II)の後、乾燥処理を引き続き行ってよく、又はアイロン処理で繊維製品を加熱してシワを伸ばしてもよいが、なるべく水やスプレー式糊剤等で湿潤させないことが好ましい。
実施例及び比較例で使用した成分を以下に示す。
<(a)成分>
香料組成物(A)又は香料組成物(A’)(香料組成物(A)の比較成分)として表3a、表3b、表3cに記載した香料組成物を調製した。これを下記合成例(a―1)に従って香料組成物(A)又は香料組成物(A’)を包含するシリカカプセル(a1-1)~(a1-6)、及び(a2-1)~(a2-4)を調製した。
Figure 2023034961000006
Figure 2023034961000007
Figure 2023034961000008
〔合成例(a-1):シリカカプセル(a-1)の合成〕
(工程1)
0.91gのコータミン60W(商品名、花王株式会社製、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、有効分30質量%)を224.13gのイオン交換水で希釈して水相成分を得た。この水相成分に、60.03gの前記表3に示す配合割合の香料組成物(A)又は香料組成物(A’)と15.10gのテトラエトキシシラン(以下、「TEOS」ともいう)を混合して調製した油相成分を加え、ホモミキサー(HsiangTai製、モデル:HM-310、以下同様)を用いて回転数9,000rpmで10分間混合液を乳化し、乳化液を得た。この時の乳化滴のメジアン径D50は1.3μmであった。
得られた乳化液のpHを1質量%硫酸水溶液を用いて3.7に調整した後、撹拌翼と冷却器を備えたセパラブルフラスコに移し、液温を30℃に保ちつつ、24時間撹拌し、表3の香料組成物(A)又は香料組成物(A’)からなるコアとシリカからなる第一シェルとを有するシリカカプセル(1-1)を含有する水分散体を得た。
(工程2)
工程1で得られた水分散体280.0gに対し、8.4gのTEOSを420分かけて添加した。滴下後、更に17時間撹拌させて第1シェルを包接する第二シェルを形成し、表3の香料組成物(A)又は香料組成物(A’)が非晶質シリカで内包されたシリカカプセル(I)を含有する水分散体を得た。シリカカプセル(I)のメジアン径D50は2.1μmであった。乳化滴及びシリカカプセル(I)のメジアン径D50は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置「LA-960」(商品名、株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。測定はフローセルを使用し、媒体は水、屈折率は1.40-0iに設定した。乳化液又はシリカカプセルを含む水分散体をフローセルに添加し、透過率が90%付近を示した濃度で測定を実施し、体積基準でメジアン径D50を求めた。
なお、第一シェルの厚さは約5nmであり、第二シェルの厚さは5~30nmであった。
<(b)成分>
(b-1):エチレングリコール
(b-2):プロピレングリコール
<(c)成分>
〔合成例c1-2:(c1-2)の製造〕
(c1)成分として一般式(c1)で示される4級アンモニウム塩化合物であってアシル基を構成する脂肪酸組成が(c1-2)成分の4級アンモニウム塩化合物を調製した。すなわちトリエタノールアミンと、後述する組成のRCOOHで表される脂肪酸を、反応モル比(脂肪酸/トリエタノールアミン)が1.65/1で、エステル化反応させ、一般式(c1)で表されるアミン化合物を含むエステル化反応物を得た。
エステル化反応物中には、未反応の脂肪酸(組成は後述の通り)が5質量%含まれていた。エステル化反応物中のアミン化合物のアミンに対して、メチル基が0.96等量となるように、ジメチル硫酸で4級化反応を行った後、エタノールを添加した。以上の様にして4級アンモニウム塩化合物[以下(c1-2)成分という]を含有する反応物を調製した。
得られた反応物をHPLC法で各成分の組成比を分析し、臭化テトラオクチルアンモニウムを内部標準物質として使用し定量した結果、得られた反応物は、一般式(c1)で示される(c1-2)成分を75質量%、エタノール10質量%、未反応アミン(メチル硫酸塩として)12質量%、未反応脂肪酸2%、微量のトリエタノールアミン4級化物及びその他微量成分を含み、(c1-2)成分のうち一般式(c1)においてR11cがアシル基であり、R12c及びR13cが水素原子であり、R14cがメチル基であって、Xがメチル硫酸である化合物[以下(c1-2-1)という場合がある]が(c1-2)成分中28量%、一般式(c1)においてR11c及びR12cがアシル基であり、R13cが水素原子であり、R14cがメチル基であって、Xがメチル硫酸である化合物[以下(c1-2-2)という場合がある]が成分中56質量%、一般式(c1)においてR11c、R12c及びR13cがアシル基であり、R14cがメチル基であって、Xがメチル硫酸である化合物[以下(c1-2-3)という場合がある]が(c1-2)成分中16質量%であった。また4級化率は80質量%であった。
なお(c1-2)成分を製造するための反応に用いたRCOOHの組成を以下に示す。
パルミチン酸:45質量%
ステアリン酸:25質量%
オレイン酸:27質量%
リノール酸:3質量%
前記組成は、原料に使用した脂肪酸をガスクロマトグラフィーで組成分析し、各脂肪酸の面積%を質量%とみなした。
なお表6、7中の組成物中の配合量の数値は(c1-2)成分濃度に換算している。
〔合成例c1-1:(c1-1)の製造〕
トリエタノールアミンと、後述するRCOOHで表される組成の脂肪酸を、反応モル比(脂肪酸/トリエタノールアミン)が1.87/1で、エステル化反応させ、一般式(c1)で表されるアミン化合物を含むエステル化反応物を得た。
エステル化反応物中には、未反応の脂肪酸(組成は後述の通り)が1質量%含まれていた。エステル化反応物中のアミン化合物のアミンに対して、メチル基が0.96等量となるように、ジメチル硫酸で4級化反応を行った後、エタノールを添加した。以上の様にして(c1)成分である一般式(c1)で示される4級アンモニウム塩化合物[以下(c1-1)成分という]を含有する反応物を調製した。
得られた反応物をHPLC法で各成分の組成比を分析し、臭化テトラオクチルアンモニウムを内部標準物質として使用し定量した結果、得られた反応物は、(c1)成分である(c1-1)成分を66質量%、エタノール15質量%、未反応アミン塩(メチル硫酸塩として)17質量%、未反応脂肪酸1質量%、微量のトリエタノールアミン4級化物及びその他微量成分を含み、このうち一般式(c1)において、R11cがアシル基であり、R12c及びR13cが水素原子であり、R14cがメチル基であって、Xがメチル硫酸である化合物[以下(c1-1-1)という場合がある]が(c1-1)成分中22質量%、一般式(c1)において、R11c及びR12cがアシル基であり、R13cが水素原子であり、R14cがメチル基であって、Xがメチル硫酸である化合物[以下(c1-1-2)という場合がある]が(c1-1)成分中58質量%、一般式(c1)において、R11c、R12c及びR13cがアシル基であり、R14cがメチル基であって、Xがメチル硫酸である化合物[以下(c1-1-3)という場合がある]が(c1-1)成分中20質量%であった。また4級化率は80質量%であった。
なお(c1-1)成分を製造するための反応に用いたRCOOHの組成を以下に示す。
オレイン酸:80質量%
リノール酸:10質量%
リノレン酸:2質量%
ステアリン酸:2質量%
パルミチン酸:6質量%
前記組成は、原料に使用した脂肪酸をガスクロマトグラフィーで組成分析し、各脂肪酸の面積%を質量%とみなした。
なお表6、7中の組成物中の配合量の数値は(c1-1)成分濃度に換算している。
(c3-1):ラウリルアルコールにエチレンオキサイドを平均30モル付加させた化合物、すなわち、一般式(c3-1)においてR31cが直鎖の炭素数12のアルキル基であって酸素原子と結合するR31cの炭素原子が第1級炭素原子であり、kが30である非イオン性界面活性剤
(c2-4):ジメチルアミノプロピルステアリルアミド酸塩
<(d)成分>
(d0-1):外香料として表4に示した香料組成物(d0-1)
Figure 2023034961000009
(d1-1):ケイ酸エステル系香料前駆体として、Si(O-Geranyl)
なお、(d1-1)における「Geranyl」は、ゲラニオール(1級アリルアルコール性香料、logP2.4)から水酸基を1個除いた基を表す。
前記(d1-1)は、下記合成例d1-1により合成した。
(合成例d1-1:Si(O-Geranyl)の合成)
200mLの四つ口フラスコにテトラエトキシシラン27.08g(0.13mol)、ゲラニオール72.30g(0.47mol)及び2.8質量%ナトリウムメトキシドメタノール溶液0.485mLを入れ、窒素気流下エタノールを留出させながら110~120℃で2時間撹拌した。
2時間後、槽内の圧力を徐々に8kPaまで下げ、エタノールを留出させながら117~120℃でさらに4時間撹拌した。4時間後、冷却、減圧を解除した後、濾過を行い、ゲラニオールのケイ酸エステル香料前駆体を含む76.92gの黄色油状物を得た。
(d2-1):ラウリン酸とエチルバニリンとのエステル
前記(d2-1)については、下記合成例d2-1により合成した。
〔合成例d2-1:ラウリン酸とエチルバニリンとのエステルの製造〕
窒素雰囲気下、300mLの四つ口フラスコに、ラウリン酸クロリド8.95g(0.041mol)、ジクロロメタン40mLを入れ、0℃に冷却した。一方、100mLの滴下ロートに、エチルバニリン6.80g(0.041mol)、トリエチルアミン4.35g(0.043mol)、ジクロロメタン40mLを入れた。滴下ロートより反応温度が-5℃~0℃に保たれるようフラスコに40分かけて滴下を行った。滴下終了後、室温(25℃)で2時間撹拌を行った。フラスコに飽和塩化アンモニウム水溶液10mLを添加し、反応を停止した。ジエチルエーテル150mLを添加し、生成した白色固体をろ過で除去し、ろ液を分液ロートに移した。分液ロートにイオン交換水100mLを添加し、ジエチルエーテル50mLで水層から3回抽出を行った。抽出溶液を集め、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで溶液を乾燥した。溶媒を減圧除去後、淡黄色固体のラウリン酸とエチルバニリンとのエステル14.20g(収率99%)を得た。最終物はNMR及びIRを用いて目的の化合物が製造できているか確認された。
(d3-1):下記製造例d3-1で得られた、香料含有マイクロカプセルスラリー
〔製造例d3-1:(d3-1)の製造〕
ジイソブチレン-無水マレイン酸共重合体(デモールEP、固形分25%、花王株式会社)1.7gを塩酸で中和後、更にイオン交換水で希釈することにより、固形分3%、pH4.3の水溶液を得た。次に、前記ジイソブチレン-無水マレイン酸共重合体水溶液100gに、アルコール系香料化合物としてゲラニオール、ターピネオール及びテトラヒドロリナロールを香料1000質量部あたり、90質量部含有している表5の組成の(d3-1)用香料を36g加え、ホモミキサーを用いて乳化し、これを50℃に昇温した。次に、部分メチロール化メラミン樹脂(商品名Cymel385、固形分80%、Cytec Industries Inc製)を12g、イオン交換水35gを混合した水溶液を滴下した。これを50℃で2時間保持し、さらに70℃で1時間保持し、さらに80℃で3時間保持し、封入を完了させた。その後、放冷することによって、平均粒径7μm、有効分30質量%のマイクロカプセルスラリーを得た。
Figure 2023034961000010
<(e)成分>
(e-1):塩化カルシウム
<(f)成分>
(f-1):下記合成例f-1で製造した、ジメチルポリシロキサンの水性エマルジョン
[合成例f-1の製造]
平均付加モル数5モルのポリオキシエチレンラウリルエーテル5gを、ジメチルポリシロキサン(25℃における粘度500,000mm/s)300gに高せん断力をかけながら添加し、さらに10分間、高せん断力で攪拌し続けた。その後、イオン交換水を30g添加し、次に平均付加モル数2モルのポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム2g、平均付加モル数40モルのポリオキシエチレンミリスチルエーテル15gを加え、さらに高せん断力下、攪拌を30分間続け、その後、水を248g加えて攪拌し、ジメチルポリシロキサンの水性エマルジョン〔(f-1)〕を得た。(f-1)中の乳化粒子の体積平均粒径は500nmであった。また、(f-1)中のジメチルポリシロキサンの含有量は50質量%であった。体積平均粒径は水性エマルジョンをエタノール中に分散させ、電気泳動光散乱光度計(大塚電子(株)製、型式ELS-8000)を用いて、20℃で測定した。
<(g)成分>
(g-1)成分:メチルグリシン二酢酸3ナトリウム
<(h)成分>
(h-1)成分:プロキセルBDN(アーチ・ケミカル・ジャパン社製)
<pH調整剤>
濃縮水性組成物のpHを調整するため、必要に応じて適宜、水酸化ナトリウム、クエン酸、塩酸を使用した。
<実施例1及び比較例1>
〔濃縮水性組成物の調製〕
表6に示す配合組成となるように各成分を混合することにより、濃縮水性組成物を調製した。具体的には、以下の通りである。なお、表中の組成の質量%は、有効分の質量%である。
300mLビーカーに、濃縮水性組成物のできあがり量が200gとなるのに必要な量の85質量%に相当する量のイオン交換水と、(f)成分、(g)成分、(h)成分必要に応じてpH調整剤とを入れ、ウォーターバスを用いてイオン交換水の温度を60±2℃に調温し混合液を調製した。なお、撹拌羽根としては、直径が5mmの撹拌棒の回転中心軸を基準として、長辺が90度方向になるように配置された撹拌羽根であって、羽根の数3枚、羽根の長辺/短辺=3cm/1.5cm、回転面に対して45度の角度で羽根が設置されたものを用いた。
60±2℃の温度に調温した混合液を、前記撹拌羽根で撹拌(300r/m)した。これに、65℃で加熱溶解させた(c)成分を3分間掛けて投入し、投入終了後、15分間撹拌した。
次に、5℃のウォーターバスを用いて、混合液の温度を30±2℃になるまで冷却した。これに、香料組成物(A)又は香料組成物(A’)を包含するシリカカプセル、(e)成分、(d)成分を順次投入し、5分間撹拌した。更に、できあがり質量(200g)となるようにイオン交換水を加え、5分間撹拌して濃縮水性組成物を得た。
得られた濃縮水性組成物について可視光透過率を測定した。具体的には、測定セルとして光路長10mmのガラスセルを使用し、対照セルにイオン交換水を入れ、紫外可視分光光度計(島津製作所製のUV-2500PC)を用いて測定した。実施例及び比較例で得られた濃縮水性組成物の可視光線透過率(波長660nm)は、全て10%未満であり、乳濁型の濃縮水性組成物であった。
〔香り評価〕
あらかじめ、市販の弱アルカリ性洗剤(花王株式会社、アタック)を用いて、肌着(グンゼ株式会社、紳士用丸首半袖シャツ、Lサイズ)17枚を株式会社日立製作所製全自動洗濯機NW-6CYで5回洗浄を繰り返し、室内乾燥することによって過分の薬剤を除去した。1回ごとの洗浄条件は、洗剤濃度0.0667質量%、水道水47L、水温20℃、洗浄10分、ためすすぎ2回、脱水6分とした。
パナソニック株式会社製電気バケツN-BK2-Aに、4Lの水道水に表6の濃縮水性組成物を0.867g(10g/肌着1.5kg)投入し水性組成物を調製した。さらに上述の方法で洗濯した肌着1枚を入れて、5分間撹拌した。その後、上記水性組成物で仕上げた肌着を株式会社日立製作所製二槽式洗濯機の脱水槽で3分脱水を行ってから、20℃、40%RHの部屋にハンガーで吊るして24時間乾燥した。
上記で処理した肌着から20cm×20cmの大きさの布を裁断し、香り評価に用いた。評価方法はまず乾燥状態で香りを嗅いで、その後スプレーを用いて布を水で10-20%o.w.f湿潤させた後に布を4つ折りにした。数秒静置した後に布を開いて折り目の交点の香りを嗅ぎ、乾燥時と湿潤時の香り強度の差異と、香りの表現力を評価し、水分発香の実効感とした。評価は、香りを評価する専門のパネラー5人によって行った。評価は下記基準で行い、5人の評価の平均値を評価結果とした。結果を表6に示す。
<評価基準>
(香りの強度の評価基準)
3:香り強度の差異が大きい
2:香り強度の差異が小さい
1:香り強度の差異を感じない
(香りの表現力の評価基準)
3:バリエーションに富む豊かな香りを感じる
2:少しバリエーションに富む香りを感じる
1:平坦な香りを感じる
Figure 2023034961000011
以下の表7に本発明の濃縮水性組成物の配合例を示す。表7に記載の濃縮水性組成物から調製した水性組成物用いた繊維製品を処理することで、処理された繊維製品が発汗等で、水で湿潤した際に良好な香り立ちを示すことができる。
Figure 2023034961000012

Claims (4)

  1. 下記工程(I)、及び工程(II)を含む、木綿繊維を含む繊維製品の賦香方法。
    工程(I):(a)下記香料組成物(A)を包含するシリカカプセル(以下、(a)成分という)を含有する水性組成物を、木綿繊維を含む繊維製品に接触させる工程。
    工程(II):工程(I)で処理した繊維製品を、5℃以上90℃未満の気体中で乾燥処理させることで、繊維製品表面又は内部に付着した(a)成分のシリカカプセル構造体を崩す工程。
    香料組成物(A):logKowの値が2.0以上5.0以下であり、且つ25℃における蒸気圧の値が0.01Pa以上3.63Pa以下である香料化合物(A1)を、香料組成物(A)中、30質量%以上85質量%以下含み、且つ当該香料化合物(A1)のうち、下記香料化合物(A1-1)から選ばれる少なくとも5種の香料化合物を、香料組成物(A)中、5質量%以上65質量%含む、香料組成物。
    (A1-1)γ-ウンデカラクトン、2-シクロヘキシリデン-2-フェニルアセトニトリル、ダマセノン、δ-ダマスコン、α-メチル-β-(p-t-ブチルフェニル)-プロピオンアルデヒド、β-イオノン、ミルラアルデヒド、エチルトリシクロ〔5.2.1.0-2,6〕デカン-2-カルボキシレート、シトロネロール、ゲラニオール、α-イオノン、パチョリアルコール、6,7-ジヒドロ-1,1,2,3,3-ペンタメチル-4(5H)-インダノン、メチルジヒドロジャスモネート、ヘキシルシンナミックアルデヒド、アミルシンナミックアルデヒド、プロピオン酸アリルシクロヘキシル、酪酸ジメチルベンジルカルビニル、プロピオン酸トリシクロデセニル、サリチル酸アミル、γ-メチルイオノン、α-ダマスコン、β-ダマスコン、ネロリンヤラヤラ、フェニルヘキサノール、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト〔2,1-b〕フラン、γ-ノナラクトン、メチルβ-ナフチルケトン、オイゲノール、リラール、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、イソ-ダマスコン、2-シクロヘキシリデン-2-フェニルアセトニトリル、γ-デカラクトン、α-メチル-3,4-メチレンジオキシヒドロシンナミックアルデヒド、7-メチル-3,5-ジヒドロ-2H-ベンゾジオキセピノン、トリシクロデシニルアセテート、トリシクロデシニルプロピオネート、2-ペンチルオキシグリコール酸アリル
  2. 工程(II)の後に、更に工程(III)として、工程(II)の乾燥処理を引き続き行うか又は繊維製品を加熱して繊維製品を乾燥させる工程を含む、請求項1に記載の木綿繊維を含む繊維製品の賦香方法。
  3. 香料組成物(A)が、更にlogKowの値が3.0以上であり、且つ25℃における蒸気圧の値が3.63Paを超える香料化合物(A2)を、香料組成物(A)中、3質量%以上70質量%以下含有する、香料組成物である、請求項1又は2に記載の木綿繊維を含む繊維製品の賦香方法。
  4. 工程(I)が、水性組成物に繊維製品を浸漬させる工程である、請求項1~3の何れか1項に記載の木綿繊維を含む繊維製品の賦香方法。

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