JP2023004928A - 繊維製品処理剤組成物 - Google Patents

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Tatsuya Tanaka
真一 市村
Shinichi Ichimura
紗智美 梶本
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Abstract

【課題】シェルが構成体としてシリカを含んでいるマイクロカプセルであってコア部に香料化合物が存在するシリカカプセルと、カチオン性界面活性剤とを含有する繊維製品処理剤であって、高温及び/又は長期の保存を行った後も、繊維製品への吸着率低下を抑制することができ、高い吸着率を保持できる繊維製品処理剤組成物を提供する。【解決手段】下記(A)成分、(B)成分、及び水を含有し、30℃におけるpHが4.0以下である、繊維製品処理剤組成物。(A)成分:シリカを含むシェルと該シェルの内部に香料化合物を含むコアとを有するマイクロカプセル。(B)成分:pH4.0以下でカチオン性を有する界面活性剤。【選択図】なし

Description

本発明は、繊維製品処理剤組成物に関する。
洗濯時や衣類乾燥時、及び衣類を着用する時の香りに対する消費者の関心は高まっており、香りに関連する内容を訴求した液体柔軟剤や香り付け剤の市場は伸長を続けている。
しかしながら、一般家庭で使用する繊維処理剤組成物は水を介して繊維製品に処理されるため、繊維への香料の付着が不十分であったり、乾燥時、または乾燥後に経時的に香料が布上から揮散したりすることで香りが弱くなる。
このような問題に対し、例えば特許文献1には特定の持続性香料組成物を含有し、布地上の香料の寿命を改善する布地軟化組成物が開示されている。
特許文献2には、香気を長時間持続させることを目的として、二塩基酸モノエステル及び/又は二塩基酸ジエステルと、エチレングリコール又はプロピレングリコールとの混合物等を用いる衣類にも使用できる徐放性香料組成物が開示されている。また、特許文献3には常圧における融点が30℃以上の油脂と香料組成物との混合物を水に乳化分散させることにより得られる乳化物粒子を含有する水性液体を用いることで香気を長時間持続できることが開示されている。
一方、香料を効率よく衣類に送達し、着用時の残香性の向上をもたらすために、香料をマイクロカプセル化して配合する試みもなされてきた。特許文献4には、芯物質として引火点が50~130℃の範囲内の香料組成物を含有するカプセル化香料が記載されている。また、特許文献5には、香料を内包するマイクロカプセルと特定のアミンを含有するポリマーを併用することで複数の異なる表面に対して高濃度で均一に香料を付着できることが記載されている。
また、ゾル-ゲル法によるマイクロカプセルの合成の検討も行われている。
特許文献6には、特に日焼け止め剤の活性成分を、生体組織から実質的に隔離しながら、日焼け止め剤の光吸収能力の恩恵を享受することを目的として、マイクロカプセル殻内に封入されたコア物質を有するマイクロカプセルであって、前記コア物質が、活性成分を含み、マイクロカプセル殻が、その前駆体のインサイチュ重合により得られる重合された前駆体からなる無機重合体からなり、マイクロカプセルの全重量に基づくコア物質の濃度が、95重量/重量%以上であるマイクロカプセルが開示されている。
特許文献7には、有効成分を安定化して適用できる治療用組成物または化粧品組成物であって、コア-殻構造を有する複数のマイクロカプセルを含み、前記マイクロカプセルが約0.1~100ミクロンの直径を有し、それぞれのコアが有効成分を含み、前記コアがマイクロカプセル殻内にカプセル化され、前記殻がゾル-ゲル法によって得られる無機ポリマーからなり、そして前記マイクロカプセル殻により、局所適用前の有効成分が保護され、そして有効成分が局所適用後に放出される組成物が開示されている。
特許文献8には、例えば、パーソナルケア製品のための香料の放出性の向上を目的として、ゾル-ゲル前駆体と活性物質(特に、精油)を混合して冷却し、次いで活性剤水溶液を冷却し、該活性剤水溶液にゾル-ゲル前駆体と精油との混合物を添加し、乳化させた後に、消泡剤を添加し、硬化させることにより、コアに活性物質を含むマイクロカプセル粒子を製造する方法が開示されている。
また、特許文献9には、コア-シェル法で製造した香料を内包するマイクロカプセルを洗剤や柔軟剤に配合することで、洗濯処理後の衣類の残香性が向上することが記載されている。
特許文献1 特表平11-504994号公報
特許文献2 特開2003-313580号公報
特許文献3 特開2012-72539号公報
特許文献4 特開2006-249326号公報
特許文献5 特開2018-172687号公報
特許文献6 特表2007-500590号公報
特許文献7 特表2003-534249号公報
特許文献8 米国特許出願公開第2010/0143422号明細書
特許文献9 特表2011-517323号公報
近年、持続的に繊維製品から芳香させるための技術はいくつも提案されており、代表的な方法の一つに、香料をマイクロカプセル化して衣類に送達する方法がある。しかし、マイクロカプセルの殻(以下「シェル」ともいう)は非常に薄い。そのため、コア成分のシェルへの溶解、又は、シェルに存在する微細孔を通した拡散、浸透作用によって、コア成分の外部環境への溶出が起こる。前記特許文献6~9の方法によって得られたカプセルは、シェルの緻密性または強度が不十分であるためか、界面活性剤とともに共存させたとき、香料などの有効成分である有機化合物を高温環境下、または長期間、カプセル内に十分保持できないものであった。そのため洗剤や柔軟剤に代表される、界面活性剤などを含む繊維製品処理剤中にカプセルを配合した場合、処理剤を高温環境下、または長期間保存すると、洗濯処理時の繊維製品へのカプセル内香料の吸着率が低下する。
本発明は、シェルが構成体としてシリカを含んでいるマイクロカプセルであってコア部に香料化合物が存在するシリカカプセルと、カチオン性界面活性剤とを含有する繊維製品処理剤であって、高温及び/又は長期の保存を行った後も、繊維製品への吸着率低下を抑制することができ、高い吸着率を保持できる繊維製品処理剤組成物を提供する。
本発明者らは、香料化合物を効率的に衣類に送達するためのシリカカプセルをカチオン性界面活性剤と共存させる系において、任意の酸を用いてpHを低下させることによって、繊維製品処理剤組成物を高温または、長時間保存した後もコア部に内包した香料化合物を保持し続けることができることを見いだし、本発明に至った。
本発明は、下記(A)成分、(B)成分、及び水を含有し、30℃におけるpHが4.0以下である、繊維製品処理剤組成物に関する。
(A)成分:シリカを含むシェルと該シェルの内部に香料化合物を含むコアとを有するマイクロカプセル。
(B)成分:pH4.0以下でカチオン性を有する界面活性剤。
本発明によれば、シェルが構成体としてシリカを含んでいるマイクロカプセルであってコア部に香料化合物が存在するシリカカプセルと、カチオン性界面活性剤とを含有する繊維製品処理剤であって、高温及び/又は長期の保存を行った後も、繊維製品への吸着率低下を抑制することができ、高い吸着率を保持できる繊維製品処理剤組成物、例えば、液体柔軟剤組成物、及び繊維製品処理剤組成物の製造方法が提供される。
<繊維製品処理剤組成物>
<(A)成分>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(A)成分として、シリカを構成体として含むシェルと、該シェルの内部に香料化合物を含むコアと、を有するマイクロカプセル含有する。シリカは二酸化ケイ素を構造単位とする物質である。以下、(A)成分のマイクロカプセルなどの、シリカを構成体として含むシェルを有するマイクロカプセルを、シリカカプセルともいう。香料化合物は、複数の香料化合物を含有する香料組成物としてシリカカプセルに配合することができる。
<シェル>
本発明のシリカカプセルのシェルは、シリカを構成成分として含む。本発明のシリカカプセルのシェルは、シェルを構成している構造の一部または実質的全部がシリカを構成成分としてできていることを特徴とする。
本発明のシリカカプセルのシェルは、アルコキシシランを前駆体としたゾル-ゲル反応により形成されてなるものが好ましい。
本発明において「ゾル-ゲル反応」とは、アルコキシシランが加水分解及び重縮合反応により、ゾル及びゲル状態を経てシェルの構成成分であるシリカを形成する反応を意味する。具体的には、例えばテトラアルコキシシランが加水分解され、シラノール化合物が脱水縮合反応及び脱アルコール縮合反応によりシロキサンオリゴマーを生成し、更に脱水縮合反応が進行することによりシリカが形成される。
また、本発明のシリカカプセルのシェルは、本発明の効果を阻害しない範囲で、シリカ以外の無機ポリマーを構成成分として含んでもよい。本発明において無機ポリマーとは、無機元素を含むポリマーをいう。該無機ポリマーとしては、無機元素のみからなるポリマー、主鎖が無機元素のみから構成され側鎖又は置換基として有機基を有するポリマー等が挙げられる。
前記無機ポリマーは、好ましくは金属元素又は半金属元素を含む金属酸化物であり、更に好ましくは金属アルコキシド〔M(OR)x〕を前駆体として、前述のシリカのゾル-ゲル反応と同様の反応により形成されてなるポリマーである。ここで、Mは金属又は半金属元素であり、Rは炭化水素基である。
金属アルコキシドを構成する金属又は半金属元素としては、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、亜鉛等が挙げられる。
前記アルコキシシランは、香料化合物の内包率を高める観点並びにデリバリー性能を良好に発現させる観点から、好ましくはテトラアルコキシシランである。
前記テトラアルコキシシランとしては、ゾル-ゲル反応を促進する観点から、好ましくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基を有するものであり、より好ましくはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、及びテトライソプロポキシシランから選ばれる1種以上であり、更に好ましくはテトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランから選ばれる1種以上であり、より更に好ましくはテトラエトキシシランである。
(シリカカプセルの製造)
本発明のシリカカプセルのシェルは、香料化合物の内包率を高める観点、及び長期保持性を向上させる観点、並びに香料化合物のデリバリー性能を良好に発現させる観点から、ゾル-ゲル反応を2段階で行うことにより形成されてなるシリカを構成成分として含むことが好ましい。すなわち、本発明のシリカカプセルは、下記の工程1及び工程2を含む方法により製造することが好ましい。
工程1:カチオン性界面活性剤を含む水相成分と、香料化合物及びテトラアルコキシシランを含む油相成分とを乳化して得られる乳化液を、酸性条件下でゾル-ゲル反応に供し、コアと、シリカを構成成分とする第一シェルと、を有するシリカカプセル(1)を形成し、該シリカカプセル(1)を含有する水分散体を得る工程
工程2:工程1で得られたシリカカプセル(1)を含有する水分散体に、更にテトラアルコキシシランを添加してゾル-ゲル反応を行い、第一シェルを包接する第二シェルを有するシリカカプセルを形成する工程
〔工程1〕
工程1は、カチオン性界面活性剤を含む水相成分と、香料化合物及びテトラアルコキシシランを含む油相成分とを乳化して得られる乳化液を、酸性条件下でゾル-ゲル反応に供し、コアと、シリカを構成成分とする第一シェルと、を有するシリカカプセル(1)を形成し、該シリカカプセル(1)を含有する水分散体を得る工程である。
工程1におけるカチオン性界面活性剤として、アルキルアミン塩、アルキル第4級アンモニウム塩等が挙げられる。アルキルアミン塩は、好ましくは第2級アミン又は第3級アミン、より好ましくは第3級アミンが好ましい。アルキルアミン塩及びアルキル第4級アンモニウム塩のアルキル基の炭素数は、長鎖アルキル基と、短鎖アルキル基及びベンジル基によって分けられ、長鎖アルキル基は好ましくは10以上、より好ましくは12以上、更に好ましくは14以上であり、そして、好ましくは22以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは18以下であり、短鎖アルキル基は炭素数1以上4以下、好ましくは1又は2であり、より好ましくはメチル基である。
アルキルアミン塩としては、アルキル基が前記炭素数の範囲であって、長鎖モノアルキルモノメチル2級アミン塩、長鎖モノアルキルジメチル3級アミン塩等のアルキルアミン塩が挙げられる。
第4級アンモニウム塩としては、アルキル基が前記炭素数の範囲であって、長鎖アルキル短鎖トリアルキル4級アンモニウム塩、長鎖ジアルキルジ短鎖アルキル4級アンモニウム塩、長鎖アルキルベンジル短鎖ジアルキル4級アンモニウム塩等が挙げられる。
アルキルアミン塩としては、ラウリルジメチルアミンアセテート、ステアリルジメチルアミンアセテート等のアルキルアミン酢酸塩が挙げられる。
アルキルトリメチルアンモニウム塩としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド等のアルキルトリメチルアンモニウムクロライド;ラウリルトリメチルアンモニウムブロマイド、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロマイド等のアルキルトリメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
ジアルキルジメチルアンモニウム塩としては、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド等のジアルキルジメチルアンモニウムクロライド;ジステアリルジメチルアンモニウムブロマイド等のジアルキルジメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩としては、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤は、これらの中でも、好ましくは第4級アンモニウム塩であり、より好ましくは炭素数10以上22以下のアルキル基を有するアルキルトリメチルアンモニウム塩であり、更に好ましくは炭素数10以上22以下のアルキル基を有するアルキルトリメチルアンモニウムクロライドであり、より更に好ましくはラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、及びセチルトリメチルアンモニウムクロライドから選ばれる1種以上であり、より更に好ましくはセチルトリメチルアンモニウムクロライドである。
工程1において、本発明の効果を阻害しない範囲で、カチオン性界面活性剤に加えて、更に他の乳化剤を含んでもよい。他の乳化剤としては、高分子分散剤、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
工程1において水相成分中のカチオン性界面活性剤の含有量は、乳化滴の分散安定性の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.4質量%以上であり、そして、乳化液の分散安定性に寄与しない余剰の乳化剤による乳化剤ミセルの形成を抑制し、カプセル化効率を向上させる観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。
工程1で得られる乳化液の総量に対する油相成分の量は、製造効率の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15%以上であり、そして、安定な乳化液を得る観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
工程1におけるテトラアルコキシシランの添加量は、ゾル-ゲル反応を促進させ、十分に緻密なシェルを形成する観点から、工程1の香料化合物の総量に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは12質量%以上、更に好ましくは14質量%以上であり、そして、過剰のテトラアルコキシシランが香料化合物中に残存することを抑制する観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、より更に好ましくは35質量%以下である。
工程1は、好ましくは下記の工程1-1~1-4を含む。
工程1-1:カチオン性界面活性剤を含む水相成分を調製する工程
工程1-2:香料化合物とテトラアルコキシシランを混合し、油相成分を調製する工程
工程1-3:工程1-1で得られた水相成分と工程1-2で得られた油相成分とを混合及び乳化し、乳化液を得る工程
工程1-4:工程1-3で得られた乳化液を、1段階目のゾル-ゲル反応に供し、コアと、シリカを構成成分とする第一シェルとを有するシリカカプセルを形成する工程
前記乳化液の調製に用いられる撹拌手段は特に限定されないが、強い剪断力を有するホモジナイザー、高圧分散機、超音波分散機等を使用することができる。また、ホモミキサー、「ディスパー」(商品名、プライミクス株式会社製)、「クレアミックス」(商品名、エムテクニック株式会社製)、「キャビトロン」(商品名、大平洋機工株式会社製)等を使用することもできる。
工程1の乳化液における乳化滴のメジアン径D50は、シリカカプセル外環境に対する比表面積を少なくし、長期保持性を高める観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、更に好ましくは0.3μm以上であり、そして、シリカカプセルの物理的強度の観点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、更に好ましくは10μm以下、より更に好ましくは5μm以下、より更に好ましくは3μm以下である。
乳化滴のメジアン径D50は、実施例に記載の方法により測定することができる。
工程1におけるゾル-ゲル反応の初期pHは、テトラアルコキシシランの加水分解反応と縮合反応のバランスを保つ観点、及び親水性の高いゾルの生成を抑制し、カプセル化の進行を促進する観点から、好ましくは3.0以上、より好ましくは3.3以上であり、更に好ましくは3.5以上であり、そして、シリカシェルの形成と乳化滴の凝集の併発を抑制し、緻密なシェルを有するシリカカプセルを得る観点から、好ましくは4.5以下、より好ましくは4.3以下、更に好ましくは4.1以下である。
香料化合物を含む油相成分の酸性、アルカリ性の強さに応じて、所望の初期pHに調整する観点から、任意の酸性又はアルカリ性のpH調整剤を用いてもよい。
前記乳化液のpHが所望の値以下となることもある。その場合には、後述するアルカリ性のpH調整剤を用いて調整することが好ましい。
すなわち、工程1-4は、好ましくは、下記の工程1-4’であってもよい。
工程1-4’:工程1-3で得られた乳化液のpHを、pH調整剤を用いて調整し、1段階目のゾル-ゲル反応を行い、コアと第一シェルとを有するシリカカプセル(1)を形成し、該シリカカプセル(1)を含有する水分散体を得る工程
酸性のpH調整剤として、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸、酢酸、クエン酸等の有機酸、陽イオン交換樹脂等を水やエタノール等に加えた液などが挙げられ、好ましくは塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸である。
アルカリ性のpH調整剤として、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタンなどが挙げられ、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウムである。
工程1におけるゾル-ゲル反応の反応温度は、水相として含まれる水の融点以上、沸点以下であれば任意の値を選択することができるが、ゾル-ゲル反応における加水分解反応と縮合反応のバランスを制御し、緻密なシェルを形成する観点から、温度を一定範囲にするのが好ましい。該範囲としては、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは15℃以上、そして、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、更に好ましくは40℃以下である。
〔工程2〕
工程2は、工程1で得られたシリカカプセル(1)を含有する水分散体に、更にテトラアルコキシシランを添加してゾル-ゲル反応を行い、第一シェルを包接する第二シェルを有するシリカカプセルを形成する工程である。
工程2におけるテトラアルコキシシランの添加量は、第一シェルを包接した第二シェルを形成する観点から、工程1の香料化合物に対して、好ましくは7質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、水相に分散するシリカゾルの生成を抑制し、シリカカプセルの分散安定性を向上させる観点から、好ましくは200質量%以下、より好ましくは170質量%以下、更に好ましくは150質量%以下である。
工程2において、工程1で得られるシリカカプセル(1)を含有する水分散体に添加するテトラアルコキシシランは、全量を一括で添加してもよく、間欠的に分割して添加してもよく、連続的に添加してもよいが、緻密性の高い第二シェルを形成する観点から、連続的に滴下して添加することが好ましい。
テトラアルコキシシランを連続的に滴下して添加する場合、その滴下時間は製造の規模に応じて適宜設定することができるが、添加するテトラアルコキシシランと水分散体との分離を抑制する観点から、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上、更に好ましくは30分以上であり、そして、好ましくは1200分以下、より好ましくは1000分以下、更に好ましくは500分以下である。
本発明において、テトラアルコキシシランの添加総量、すなわち工程1及び工程2で用いられるテトラアルコキシシランの合計添加量は、工程1の香料化合物に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、更に好ましくは40質量%以上であり、そして、好ましくは250質量%以下、より好ましくは200質量%以下、更に好ましくは150質量%以下である。テトラアルコキシシランの添加総量を上記範囲にすることにより、内包する香料化合物を長期間保持することができる。
本発明において、工程2におけるテトラアルコキシシランの添加前の水分散体の総量に対して、工程1の香料化合物及びテトラアルコキシシランの合計量は、香料化合物の長期保持性を向上させる観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、より更に好ましくは10質量%以下であり、そして、生産効率の観点から、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上である。
工程2におけるテトラアルコキシシランの添加前の水分散体の総量に対する、工程1の香料化合物及びテトラアルコキシシランの合計量の調整は、工程1の香料化合物及びテトラアルコキシシランの量と工程1で得られる水分散体の総量とが上記範囲となるように工程1を行ってもよく、工程1で得られた水分散体に更に水を添加して希釈することにより行ってもよい。
本発明は、生産効率の観点から、工程2において、テトラアルコキシシランの添加前に、工程1で得られた水分散体を水で希釈してもよい。工程1で得られた水分散体の希釈前の総量に対する、工程1の香料化合物及びテトラアルコキシシランの合計量は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、より更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
希釈倍率は、好ましくは2倍以上、より好ましくは2.5倍以上であり、そして、好ましくは20倍以下、より好ましくは10倍以下、より好ましくは7倍以下である。
工程2におけるゾル-ゲル反応の反応温度は、分散媒として含まれる水の融点以上、沸点以下であれば任意に選択することができるが、ゾル-ゲル反応における加水分解反応と縮合反応のバランスを制御し、緻密なシェルを形成する観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは15℃以上であり、そして、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、更に好ましくは40℃である。工程1のゾル-ゲル反応と工程2のゾル-ゲル反応とで異なる反応温度で実施しても良い。
本発明は、工程2において、工程1で得られた水分散体に、更に有機ポリマーを添加してもよい。ここで、有機ポリマーとは重量平均分子量5,000以上の化合物を意味する。
前記有機ポリマーは、好ましくはカチオン性ポリマー及びノニオン性ポリマーから選ばれる1種以上である。
前記ノニオン性ポリマーは、水中で電荷を有しない水溶性ポリマーを意味する。ノニオン性ポリマーを用いることにより、シリカカプセルの用途に応じた機能を該シリカカプセルに付与させることができる。
前記有機ポリマーとしてカチオン性ポリマー又はノニオン性ポリマーを用いる場合、例えば本発明に係るシリカカプセルを柔軟剤組成物等の繊維処理剤組成物に用いる際には、シリカカプセルの繊維への吸着性の向上が期待できる。
本明細書において「水溶性ポリマー」とは、105℃で2時間乾燥させ、恒量に達したポリマーを25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が1mg以上であるポリマーをいう。
ノニオン性ポリマーとしては、ノニオン性モノマー由来の構成単位を有するポリマー、水溶性多糖類(セルロース系、ガム系、スターチ系等)及びその誘導体等が挙げられる。
ノニオン性モノマーとしては、炭素数1以上22以下の脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート;スチレン等のスチレン系モノマー;ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族基含有(メタ)アクリレート;酢酸ビニル;ビニルピロリドン;ビニルアルコール;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。なお、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートの意味である。同様に、(メタ)アクリルは、アクリル又はメタクリルの意味である。
ノニオン性ポリマーは、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー等のビニルピロリドンと他のノニオン性モノマーとのコポリマー、及びヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース等のセルロース系ポリマーから選ばれる1種以上が好ましく、ポリビニルピロリドン及びヒドロキシプロピルセルロースから選ばれる1種以上がより好ましい。
カチオン性ポリマーとしては、四級アンモニウム塩基を含有するポリマーの他、窒素系のカチオン基を有するポリマー、pH調整によりカチオン性を帯びることがあるポリマー等が挙げられる。カチオン性ポリマーを用いることにより、工程1で得られるシリカカプセル(1)が水分散体中で凝集しやすい状況を緩和することができ、続く工程2において粗大粒子等の生成を抑制できる。
カチオン性ポリマーとしては、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(アクリル酸-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(アクリルアミド-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(アクリルアミド-co-アクリル酸-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)等のポリジアリルジメチルアンモニウム塩及びそのコポリマー、ポリ(2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド)、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガム、カチオン化タラガム、カチオン化フェヌグリークガム、カチオン化ローカストビンガム等が挙げられる。これらの中でも、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩及びそのコポリマーが好ましく、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(アクリル酸-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、及びポリ(アクリルアミド-co-アクリル酸-co-ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)から選ばれる1種以上がより好ましく、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)が更に好ましい。
カチオン性ポリマーのカチオン基当量は、シリカカプセル(1)の分散性の観点及び粗大粒子の生成を抑制する観点、並びに長期保持性を向上させる観点から、好ましくは1meq/g以上、より好ましくは3meq/g以上、更に好ましくは4.5meq/g以上であり、そして、好ましくは10meq/g以下、より好ましくは8meq/g以下である。カチオン性ポリマーにアニオン基が含まれてもよいが、その場合、カチオン性ポリマーに含まれるアニオン基当量は、好ましくは3.5meq/g以下、より好ましくは2meq/g以下、更に好ましくは1meq/g以下である。なお、本発明において、カチオン性ポリマーのカチオン基当量は、モノマー組成に基づいた計算により算出したものを用いる。
有機ポリマーの添加量は、工程1で得られた水分散体に対して、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上であり、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。
なお、前記有機ポリマーとして、アニオン性ポリマーを用いることもできる。アニオン性ポリマーとしては、カルボキシル基を有するモノマー単位を含有するポリマーの他、スルホン酸基を有するモノマー単位を含有するポリマー、pH調整によりアニオン性を帯びるポリマー等が挙げられる。
アニオン性ポリマーとしては、ポリ(メタ)(アクリル酸)、ポリ(マレイン酸)、ポリ((メタ)アクリル酸-co-マレイン酸)、ポリ((メタ)アクリル酸-co-無水マレイン酸)、ポリ((メタ)アクリル酸-co-イソブチレン)、ポリ((メタ)アクリル酸-co-スチレン)、ポリ(イソブチレン-co-マレイン酸)、ポリ(スチレン-co-マレイン酸)、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又はメタクリル酸の意味である。
工程2により得られるシリカカプセルは、水中に分散したスラリーの状態で得られる。用途によってはこれをそのまま使用することもできるが、場合によっては、更に水分を減らして濃縮した水スラリー組成物として用いてもよく、またシリカカプセルを分離して使用する。濃縮化や分離方法としては、ろ過法、遠心分離法等を採用することができる。
本発明の繊維製品処理剤組成物の製造方法では、その製造工程において、シリカカプセルは、前記シリカカプセルが水中に分散した状態である水スラリー組成物として用いることが好ましく、更にシリカカプセルを含む水スラリー組成物の30℃のpHは、好ましくは5.0以下、より好ましくは2.0以上4.5以下、更に好ましくは2.5以上4.0以下の酸性条件下か、又は好ましくは7.5以上11.5以下、より好ましくは8.0以上11.0以下、さらに好ましくは8.5以上10.5以下のアルカリ条件下である。シリカカプセルはpHが当該範囲を外れると凝集してしまうため、水スラリー組成物のpHは特定のpH以下の酸性又は特定のpH範囲のアルカリ性のものが好ましい。なお水スラリー組成物の水分量を測定する際は、遠心分離機や濾過フィルター等を用いることで分離してそれぞれの層中のカプセル濃度を測定することで測定してもよい。正確な水分量ではないが、例えば遠心分離機に50mlを5000rpmで15分遠心分離した際の上層の水溶液、好ましくは上澄み液が、水スラリー組成物中の好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましく85質量%以下となる濃度のものが好ましい。
<コア>
本発明に係るシリカカプセルのコアは香料化合物を含む。
本発明では、シリカカプセル形成の観点から、香料化合物の全量中、logPが2.0以上5.0以下、且つ25℃の蒸気圧が0.01以上8.00以下である香料化合物の割合が25質量%以上であることが好ましい。
本発明において、logP値とは、有機化合物の水と1-オクタノールに対する親和性を示す係数である。1-オクタノール/水分配係数Pは、1-オクタノールと水の2液相からなる溶媒に微量の化合物が溶質として溶け込んで分配平衡に到達した際の、それぞれの溶媒中における化合物の平衡濃度の比であり、底10に対するそれらの対数logPの形で示すのが一般的である。今日では、化合物分子を構成する原子の数及び化学結合のタイプによって決められる原子団のフラグメント値を用いた計算プログラムによって算出される、“計算logP(ClogPという場合がある)”の値が広く用いられており、本発明においても、化合物の選択に際して、ClogPの値を用いる。
本発明においては、ClogPの値として、米国環境保護庁とSyracuse社が共同開発したソフトウェアEPI Suite(登録商標;The EstimationsProgramsInterfacefor Windows version 4.11)を用いて算出された値を用いる。
本発明において、25℃における蒸気圧とは、実測値又は沸点からの蒸気圧推定によって求めたものであり、化学物質が室温で固体である場合には融点から推定される。蒸気圧は、幾つかの公知の方法(Antoine法、Modified Grain法、Mackay法等)によって推定されるが、本発明においては、米国環境保護庁(EPA)から入手できる、EPI suiteに組み込まれているMPBPWINを用いて算出した値であって、Antoine法によって算出される値とGrain法によって算出される値の平均値が、「選択されている値(Selected VP)」として算出結果に表示されている場合は、その平均値を、特に「選択されている値(Selected VP)」としての表示がない場合は、Modified Grain法によって算出された値を用いる。
logPが2.0以上5.0以下、且つ25℃の蒸気圧が0.01以上8.00以下である香料化合物として、例えば、γ-ウンデカラクトン、2-シクロヘキシリデン-2-フェニルアセトニトリル、ダマセノン、δ-ダマスコン、α-メチル-β-(p-t-ブチルフェニル)-プロピオンアルデヒド、β-イオノン、ミルラアルデヒド、エチルトリシクロ〔5.2.1.0-2,6〕デカン-2-カルボキシレート(フルテート)、シトロネロール、ゲラニオール、α-イオノン、パチョリアルコール、6,7-ジヒドロ-1,1,2,3,3-ペンタメチル-4(5H)-インダノン、メチルジヒドロジャスモネート、ヘキシルシンナミックアルデヒド、アミルシンナミックアルデヒド、プロピオン酸アリルシクロヘキシル、酪酸ジメチルベンジルカルビニル、プロピオン酸トリシクロデセニル、サリチル酸アミル、γ-メチルイオノン、α-ダマスコン、β-ダマスコン、ネロリンヤラヤラ、2,4,6-トリメチル-4-フェニル-1,3-ジオキサン、フェニルヘキサノール、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト〔2,1-b〕フラン、γ-ノナラクトン、メチルβ-ナフチルケトン、オイゲノール、リラール、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、イソ-ダマスコン、2-シクロヘキシリデン-2-フェニルアセトニトリル、γ-デカラクトン、α-メチル-3,4-メチレンジオキシヒドロシンナミックアルデヒド、7-メチル-3,5-ジヒドロ-2H-ベンゾジオキセピノン、トリシクロデシニルアセテート(酢酸トリシクロデセニル)、トリシクロデシニルプロピオネート、2-ペンチルオキシグリコール酸アリル、1-(2-tert-ブチルシクロヘキシロキシ)-2-ブタノール、シトロネリロキシアセトアルデヒド、インドール、4-メチル-3-デセン-5-オール、パラ-メンタン-8-チオール-3-オン、3-(パラ-tert-ブチルフェニル)-プロパナール、エチルシンナメート、5-メチル-3-ヘプタノンオキシム、メチルアンスラニレート、ターピネオール、β-カリオフィレン、酢酸シトロネリル、酢酸ゲラニル、酢酸ネリル、酢酸p-t-ブチルシクロヘキシル、テトラヒドロゲラニオール、2-イソブチル-4ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラノール(フロローサ)、α-ダイナスコン、シスジャスモン、ビシクロ〔3.2.1〕オクタン-8-オン-1,5-ジメチル-オキシム、2,4-ジメチル-4,4α,5,9β-テトラヒドロインデノ[1,2-d]-m-ジオキシン、3-(パラ-エチルフェニル)-2,2-ジメチルプロパナール、エチル-2-tert-ブチルシクロヘキシル-カーボネート、安息香酸ヘキシル、4-アセトキシ-3-アミルテトラヒドロピラン、ドデシルアルデヒド、ジヒドロ-β-イオノン、メチルシクロオクチルカーボネート、メチルフェニルグリシド酸エチル、イソオイゲノール、メチルイソオイゲノール、ジフェニルオキサイド、2,2,5-トリメチル-5-ペンチルシクロペンタノン、チモール、ネロリンブロメリア、5,6-ジメチル-8-イソプロペニル、ビシクロ「4,4,0]-1-デセン-3-オン、3-(4-イソプロピルフェニル)-プロパナール、4-イソプロピルシクロヘキサンメタノール、メチルアンスラニル酸メチル、ドデカンニトリル3-ドデセナールが挙げられる。
また、(A)成分の香料化合物としては、logP値が2.0よりも低い香料化合物を用いることもできる。logP値が2.0よりも低い香料化合物として、例えば、クマリン(1.5)、フェニルエチルアルコール(1.6)、cis-3-ヘキセノール(1.6)、ラズベリーケトン(1.5)、ヘリオトロピン(1.8)、ベンジルアルコール(1.1)などが挙げられる。なお( )内の数字はlogP値である。
また、(A)成分の香料化合物としては、logP値が5.0よりも高い香料化合物を用いることもできる。logP値が5.0よりも高い香料化合物として、例えば、2-[2-(4-メチル-3-シクロヘキセン-1-イル)プロピル]シクロペンタノン(5.1)、7-アセチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロ-1,1,6,7-テトラメチルナフタレン(5.2)、アセチルセドレン(5.2)、ネロリドール(5.7)、カリオフィレン(6.3)などが挙げられる。なお( )内の数字はlogP値である。
また、(A)成分の香料化合物としては、蒸気圧が0.01Paよりも低い香料化合物を用いることもできる。蒸気圧が0.01Paよりも低い香料化合物として、例えば、1,4-ジオキサシクロヘプタデカン-5,17-ジオン(0.0000585)、エチレンブラッシレート(0.0000585)が挙げられる。なお( )内の数字は蒸気圧である。
また、(A)成分の香料化合物としては、蒸気圧が8.00Paよりも高い香料化合物を用いることもできる。蒸気圧が8.00Paよりも高い香料化合物として、例えば、2-メチル酪酸エチル(1070)、エチルー2-メチルペンタノエート(384)、リモネン(193)、2-ペンチルオキシグリコール酸アリル(19.7)、2,4-ジメチルー3-シクロヘキセニルカルボキシアルデヒド(46.9)、リナロール(11.1)、リナリルアセテート(17.5)、テトラヒドロリナロール(9.51)、1,8-シネオール(208)、イソボルニルアセテート(14.3)、オシメン(358)、シス-3-ヘキセノール(125)、トリプラール(46.9)、スチラリルアセテート(14.9)が挙げられる。なお( )内の数字は蒸気圧である。
なお、(A)成分のマイクロカプセルは香料化合物の他に希釈剤、溶剤、及び固化剤から選ばれる1種以上を内包してもよい。希釈剤ないし溶剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、及びグリセリンを挙げることができ、脂肪酸アルコール、脂肪酸の低級アルコールエステル、及び脂肪酸のグリセリンエステルを挙げることもできる。
[シリカカプセル]
本発明のシリカカプセルは、好ましくは、前記香料化合物を含むコアと、該コアを包接する第一シェルと、第一シェルを包接する第二シェルとを有するシリカカプセルである。
本発明のシリカカプセルの第一シェルは、コアを包接し、シリカを構成成分として含み、好ましくは5nm以上20nm以下の平均厚さを有し、第二シェルは、第一シェルを包接し、シリカを構成成分として含み、好ましくは10nm以上100nm以下の平均厚さを有する。
シリカカプセルの第一シェル及び第二シェルの平均厚さは、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により測定することができる。具体的には、透過型電子顕微鏡観察下で、第一シェル及び第二シェルの厚さを写真上で実測する。この操作を、視野を5回変えて行う。得られたデータから第一シェル及び第二シェルの平均厚さの分布を求める。透過型電子顕微鏡の倍率の目安は1万倍以上10万倍以下であるが、シリカカプセルの大きさによって適宜調節される。ここで、透過型電子顕微鏡(TEM)として、例えば商品名「JEM-2100」(日本電子株式会社製)を用いることができる。
本発明に係るシリカカプセルのメジアン径D50は、長期保持性を向上させ、シリカカプセルの分散安定性を向上させる観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは1μm以上であり、そして、シリカカプセルの物理的強度を向上させ、長期保持性を向上させる観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、更に好ましくは30μm以下、より更に好ましくは10μm以下である。
シリカカプセルのメジアン径D50は、実施例に記載の方法により測定することができる。
なお、(A)成分のシリカカプセルは香り立ちを損なわない程度に一部凝集していてもよい。
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(A)成分を、(A)成分が含む香料化合物として、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.07質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、そして、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、更に好ましくは1.0質量%以下含有する。
<(B)成分>
本発明の(B)成分はpH4.0以下でカチオン性を有する界面活性剤であり、いわゆるカチオン性界面活性剤であるが、カチオン性界面活性剤の中にはpHによってカチオン性を示さない化合物があることから、本発明では、本発明の組成物のpHであるpH4.0以下でカチオン性を示す界面活性剤を含有する。カチオン性を示す界面活性剤を含有することで組成物中の(A)成分の分散安定性が向上する。
(B)成分としては、下記一般式(B1)で表される第3級アミン、その酸塩、及び前記アミンの4級化物から選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。
Figure 2023004928000001
〔式中、Rb1基は、エステル基、アミド基、及びエーテル基から選ばれる1種以上で分断されていてもよい、総炭素数12以上28以下の炭化水素基であり、Rb2基及びRb3基はそれぞれ独立に、Rb1基、炭素数1以上3以下のアルキル基、炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基、及び炭素数4以上6以下のヒドロキシアルキルエーテルアルキレン基から選ばれる基である。〕
前記一般式(B1)において、Rb1基は、エステル基、アミド基、及びエーテル基から選ばれる1種以上で分断されている総炭素数12以上、好ましくは14以上、そして、28以下、好ましくは26以下の炭化水素基が好ましい。この場合、炭化水素基は、飽和、不飽和のどちらでもよい。すなわち、好ましいRb1基としては、下記(i)~(iii)に示す基が挙げられる。
(i)エステル基、アミド基、及びエーテル基から選ばれる1種以上で分断されている総炭素数12以上、好ましくは14以上、そして、28以下、好ましくは26以下の飽和炭化水素基
(ii)エステル基、アミド基、及びエーテル基から選ばれる1種以上で分断されている総炭素数12以上、好ましくは14以上、そして、28以下、好ましくは26以下の二重結合を1個以上有する不飽和炭化水素基
(iii)上記基(i)及び基(ii)が混在するもの
また、好ましいRb2基及びRb3基としては、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基、炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基、及び炭素数4以上6以下のヒドロキシアルキルエーテルアルキレン基から選ばれる基が挙げられる。
(B)成分は、例えば、総炭素数12~28の脂肪酸又は脂肪酸低級アルキルエステルと、炭素数2又は3のアルカノール基を有するアルカノールアミン又は炭素数2又は3のアルキルアミン基を有するアミノアルキルアミン等のアミンとを、エステル化反応、アミド化反応、又はエステル交換反応させて得ることができ、あるいは前記アルカノールアミンと炭素数2又は3のアルキレンオキシドを反応させてから当該反応させて得ることができる。
前記の脂肪酸又は脂肪酸低級アルキルエステルとしては、総炭素数12~28の脂肪酸又はその低級アルキルエステル(アルキル基の炭素数1~3)が好適であり、1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
脂肪酸又は脂肪酸低級アルキルエステルは必要に応じて、油化学便覧(第四版、社団法人日本油化学会、丸善株式会社、2001年11月20日)等で知られているような脂肪酸を用いてもよく、単体の脂肪酸から、ヤシ油、パーム油及び牛脂等の天然系油脂由来とする、鎖長の異なる脂肪酸や不飽和脂肪酸を含む脂肪酸混合物であってもよい。種類の異なる脂肪酸混合物、例えば天然系油脂由来の脂肪酸は、不飽和結合への水素添加反応、不飽和結合の異性化反応、又は蒸留操作、ボトムカット、トップカットによるアルキル鎖長の調整、あるいは複数の脂肪酸の混合により得たものを用いることが出来る。
前記のアミノアルキルアミンは分子内に1級アミノ基、2級アミノ基、及び3級アミノ基から選ばれる、少なくとも2種以上のアミノ基を有するアミンが好ましい。また前記のアルカノールアミンは分子内にヒドロキシ基を必須とし、1級~3級アミノ基を有するアミンが好ましい。より具体的な例として、ジアルキルモノアルカノールアミン(好ましくはジメチルモノエタノールアミンもしくはジメチルモノプロパノールアミン)、モノアルキルジアルカノールアミン(好ましくはメチルジエタノールアミンもしくはメチルジプロパノールアミン)、又はトリアルカノールアミン(好ましくはトリエタノールアミンもしくはトリプロパノールアミン)、又はジ(アミノアルキル)アルキルアミン(例えば、N-メチル-N,N-ジ(3-アミノプロピル)アミン)、ジアルキルアミノアルキルアミン((例えば、N,N-ジメチル-N-(3-アミノプロピル)アミン)、アルキルアミノプロピルモノアルキルアルカノールアミン(好ましくは、N-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-N-(3-アミノプロピル)アミン)が挙げられるが、これらに限定されない。より好ましくはN-メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-N-(3-アミノプロピル)アミン、N,N-ジメチル-N-(3-アミノプロピル)アミン、N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシエチル)アミンである。
一般式(B1)で表される第3級アミンの酸塩としては、無機酸及び有機酸で中和された酸塩が挙げられる。好ましい無機酸は、塩酸、硫酸、リン酸であり、好ましい有機酸は炭素数1~10の1価又は多価のカルボン酸、又は炭素数1~20の1価又は多価のスルホン酸、又は炭素数6~36のアルキル硫酸エステル、又はポリオキシアルキレンアルキル(アルキル基の炭素数6~36)硫酸エステルである。より好ましくはメチル硫酸、エチル硫酸、p-トルエンスルホン酸、(o-、m-、p-)キシレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、グリコール酸、クエン酸、安息香酸、サリチル酸、炭素数12~36のアルキル硫酸エステル、又はポリオキシアルキレンアルキル(アルキル基の炭素数12~36)硫酸エステルである。
一般式(B1)で表される第3級アミンの4級化物としては、一般式(B1)で表される第3級アミンを、アルキルハライド、ジアルキル硫酸、アルキレンオキシド等のアルキル化剤で4級化した化合物が挙げられる。アルキルハライドとしてはメチルクロリドが好ましく、ジアルキル硫酸としては、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸が好ましく、アルキレンオキシドとしてはエチレンオキシドが好ましい。また、アルキル化剤を用いた4級化反応は、溶媒存在下(例えば、エタノール)でも行うことができるが、合成物の臭い、保存安定性を維持する観点及び/又は不純物の生成を抑える観点から、無溶媒下で行うことも出来る。
(B)成分は、下記(b1)成分、及び(b2)成分から選ばれる1種以上を含む成分であってよい。これらは、本発明の繊維製品処理剤組成物を液体柔軟剤組成物とする場合に好ましい。
(b1)成分:下記一般式(B2)で表される第3級アミン化合物、及びその酸塩。
(b2)成分:下記一般式(B2)で表される第3級アミン化合物の4級化物。
〔Rb11-C(=O)-O-(C2pO)-C2qN(Rb123-m (B2)
〔式中、Rb11は炭素数11以上23以下の炭化水素基であり、
b12は炭素数1以上3以下の炭化水素基及びHO-(C2pO)-C2q基から選ばれる基であり、
mは1以上3以下の数であり、p及びqはそれぞれ独立して2又は3の数であり、rは0又は1の数である。
同一分子内にRb11、Rb12、p、q、rが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。また、Rb11-C(=O)-O-(C2pO)-C2qの総炭素数は14以上28以下である。〕
一般式(B2)中のRb11は炭素数11以上23以下であり、繊維製品の柔軟化の観点から、炭素数13以上21以下の非環式の炭化水素基が好ましい。
b11の具体的な例としては、炭素数13以上21以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、炭素数13以上21以下の直鎖又は分岐鎖のアルケニル基が好ましく、炭素数13以上21以下の直鎖のアルキル基、及び炭素数13以上21以下の直鎖のアルケニル基から選ばれる基が挙げられる。
b11の具体的な例としては、炭素数13以上21以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、炭素数13以上21以下の直鎖又は分岐鎖のアルケニル基が挙げられる。Rb11は、好ましくは、炭素数13以上21以下の直鎖のアルキル基、及び炭素数13以上21以下の直鎖のアルケニル基から選ばれる基である。
(b1)成分は、前記一般式(B2)におけるRb11が異なる置換基で構成される化合物の混合物であることが好ましく、Rb11が、アルキル基である化合物とアルケニル基である化合物との混合物であることがより好ましい。
アルキル基からなる化合物とアルケニル基からなる化合物との割合は原料となる脂肪酸又は脂肪酸エステルの組成によって決めることができる。アルキル基の量とアルケニル基の量の調整は、アルケニル基を有する原料の水素添加、又はRb11がアルケニル基である化合物の水素添加により行うことができる。
前記アルケニル基に含まれる不飽和基はシス体とトランス体が存在する。トランス体に対するシス体のモル比[シス体/トランス体]は、好ましくは30/70以上99/1以下であり、アルケニル基の入手性の観点から、より好ましくは50/50以上97/3以下である。本発明において、シス体とトランス体の比は1H-NMRの積分比で算出することができる。
一般式(B2)中のp及びqは、それぞれ、2又は3の数である。処理した布吸水性保持の観点から、pは2が好ましい。製造の容易性の観点から、qは2が好ましい。
一般式(B2)中のrは、繊維製品の柔軟化の点から、0又は1の数であり、0が好ましい。
b12は、吸水性の観点から、HO-(C2pO)-C2q基、更にHO-C基が好ましい。
mは、吸水性の観点から1以上2以下が好ましい。
(b1)成分は、前述のとおり一般式(B2)で表される第3級アミン化合物及びその酸塩であるが、本発明の繊維製品処理剤組成物、例えば、液体柔軟剤組成物のpHにより、(b1)成分のほぼ全てが酸塩の状態で組成物中に存在していてもよい。
(b1)成分を構成する第3級アミン化合物が酸塩として存在する場合の酸としては、無機酸又は有機酸が挙げられる。
無機酸としては、塩酸、及び硫酸が挙げられる。
有機酸としては、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸、炭素数1以上10以下の1価又は多価のカルボン酸、及び炭素数1以上20以下の1価又は多価のスルホン酸が挙げられる。有機酸の具体例としては、メチル硫酸、エチル硫酸、p-トルエンスルホン酸、(o-、m-、p-)キシレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、グリコール酸、クエン酸、安息香酸、及びサリチル酸が挙げられる。
(b1)成分である一般式(B2)で表されるアミン化合物の製造方法は特に制限されないが、例えば、下記一般式(B2-1)で表わされるアルカノールアミン化合物と脂肪酸とのエステル化反応、又は一般式(B2-1)で表わされるアルカノールアミン化合物と脂肪酸エステルとのエステル交換反応によって得ることができる。
前記脂肪酸としては、パーム核油由来、ヤシ油由来、牛脂、菜種油、ひまわり油由来の脂肪酸を用いることができ、脂肪酸比率を調製したものであってもよく、由来の違う脂肪酸を併用して用いてもよい。
〔HO-(C2pO)-C2qN(Rb133-n (B2-1)〔式中、Rb13は炭素数1以上3以下の炭化水素基から選ばれる基であり、nは1以上3以下の数、p、q、rは、前記一般式(B2)と同じ意味を表す。〕
エステル化反応の例としては、例えば、特表2000-510171号公報の8~9頁目に記載されている方法を適用することができる。
エステル交換反応の例としては、例えば、特開平7-138211号公報の段落〔0013〕~段落〔0016〕に記載の方法を適用することができる。
(b2)成分は、前記一般式(B2)で表される第3級アミン化合物の4級化物であり、一般式(B2)で表される第3級アミン化合物とアルキル化剤を用いた4級化反応により得ることができる。
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(B)成分を、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下、更に好ましくは15質量%以下含有する。
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(B)成分に対する(A)成分の質量比[(A)成分/(B)成分]が、好ましくは1/1000以上、より好ましくは1/500以上であり、そして、好ましくは1/1以下、より好ましくは1/2以下である。
<pH>
本発明の最も重要な部分は、繊維製品処理剤組成物のpHである。本発明者らは、シリカカプセルが低濃度で水に分散するような状況、例えば本発明の(A)成分として水を含む組成物に配合されるような状況において、カプセル内香料がpHにより漏洩し易くなることを見出した。そのため本発明の繊維製品処理剤組成物のpHは、シリカカプセルからの香料化合物の漏洩を抑制するために、30℃でのpHが、4.0以下、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.2以下、更に好ましくは3.0以下、より更に好ましくは、2.8以下、より更に好ましくは2.6以下、より更に好ましくは2.4以下である。また使用上の安全性の観点から、前記pHは、好ましくは1.5以上である。
(B)成分として、一般式(B2)で表されるようなエステル基を有する界面活性剤を用いる場合、繊維製品処理剤組成物のpHが高すぎたり、低すぎたりすると当該界面活性剤が加水分解しやすくなる傾向がある。そのため一般式(B2)成分で示されるようなエステル結合を有する界面活性剤を用いる場合は、配合量と安定性を考慮しつつ、組成物のpHを設定することが好ましい。pHの測定方法は実施例に記載した。
<本発明の繊維製品処理剤組成物が含有し得る成分>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、更に以下の成分を含有することができる。
<(C)成分>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、高温、または長期保存後であってもカプセル内香料の吸着率を維持するという観点から、(C)成分としてシリカ粒子を含んでいることが望ましい。(C)成分のシリカ粒子は、シリカ部分が殻や膜になっていない粒子、例えば中実な粒子であることが好ましい。
本発明に用いられるシリカ粒子の種類や粒径に制限はなく、例えばコロイダルシリカが挙げられる。
コロイダルシリカは、一般的に負に帯電した無定形シリカ粒子が1次粒子の単分散体状態で水溶液中に分散したコロイド溶液である。コロイダルシリカ粒子の表面には-SiOH基や-OHイオンが存在し、アルカリイオンにより電気二重層が形成され、粒子間の反発により安定化されている。
コロイダルシリカは、二酸化ケイ素を主成分とするが、少量成分として、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム等のアルミン酸塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム等の無機塩類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の有機塩類を含んでいてもよい。これらの無機塩類や有機塩類は、コロイドの安定化剤として作用する。
コロイダルシリカの分散媒としては、水の他に有機溶媒を含んでいてもよい。有機溶媒は水溶性有機溶媒でも非水溶性有機溶媒でもよいが、メタノール、エタノ-ル、イソプロピルアルコール、n-プロパノール等の水溶性有機溶媒であることが好ましい。
コロイダルシリカの製造方法に特に制限はなく、公知の方法で製造することができる。例えば、(1)珪酸ナトリウム等の珪酸アルカリ金属塩を原料とし、水溶液中で縮合反応させて粒子を成長させる水ガラス法、(2)テトラエトキシシラン等のアルコキシシランを原料とし、アルコール等の水溶性有機溶媒を含有する水中で縮合反応させて成長させるアルコキシシラン法等が挙げられる。
コロイダルシリカとしては、カチオン性コロイダルシリカとアニオン性コロイダルシリカが挙げられる。カチオン性コロイダルシリカは、pHを2~4に調整することにより、コロイダルシリカをカチオン性に帯電させたり、シリカ粒子の表面のシラノール基に、アミノ基やアンモニウム基等のカチオン性基を導入したりしたものである。
アニオン性コロイダルシリカは、シリカ粒子の表面にシラノール基、水酸基と、カルボキシル基やスルホン基等のアニオン性基が存在する無水ケイ酸の超微粒子を、水性液体中に安定に分散したものである。
アニオン性コロイダルシリカを含有する処理液は、コロイドを安定化するために、水酸化ナトリウム、カリウム、アンモニア等を含有させ、25℃でpH8~11程度のアルカリ性にすることが好ましい。
アニオン性コロイダルシリカとしては、高分子量の無水珪酸の超微粒子を水中に分散させたものが好ましい。市販品としては、日産化学工業株式会社製のスノーテックスシリーズ、具体的にはスノーテックスS、スノーテックスN、スノーテックスC、スノーテックス XL、スノーテックス XS、スノーテックス ZL、スノーテックス 20、スノーテックス 30、スノーテックス 40、スノーテックスMP2040、日揮触媒化成株式会社製のカタロイドシリーズ、具体的にはCataloid SI-350、Cataloid SI-50、Cataloid SI-30、Cataloid S-20L、Cataloid S-20H、Cataloid S-30L、Cataloid S-45P、Cataloid SI-40、Cataloid SI-80P、バイエル社のレバシルシリーズ等が挙げられる。
本発明に用いられるシリカ粒子の平均粒径(以下、単に「シリカ粒子の平均粒径」ともいう)はレーザー光散乱法を用いて体積平均粒径として測定することができる。
シリカ粒子の平均粒径は特に規定されるものではないが、保存安定性および美観の観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上、更に好ましくは30nm以上、より更に好ましくは50nm以上であり、そして、好ましくは300nm以下、より好ましくは250nm以下、更に好ましくは200nm以下、より更に好ましくは100nm以下である。
本発明の繊維製品処理剤組成物が(C)成分を含有する場合、その含有量は、組成物中、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。
<(D)成分>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(D)成分として、(A)成分に内包されている香料化合物以外の香料化合物を含有してもよい。本発明においては、香料化合物であっても、マイクロカプセルに内包されていない香料化合物は(D)成分として扱う。
(D)成分として用いることができる香料化合物に特に制限はなく、(A)成分から放出される香料化合物と同じ香料化合物を用いてもよい。(D)成分は、複数の香料化合物を含有する香料組成物として本発明の繊維製品処理剤組成物に配合することができる。
(D)成分として用いることができる香料化合物としては、例えば「香料と調香の基礎知識、中島基貴 編著、産業図書株式会社発行、2005年4月20日 第4刷」に記載の香料や特許文献等を通じて柔軟剤などに配合することが知られている香料化合物の他に、香料メーカーが独自に調製した香料成分又は調香した香料組成物そのものを使用することができる。
(D)成分としては、例えば、β-イオノン(4.4)、γ-ウンデカラクトン(3.1)、γ-ノナラクトン(2.1)、γ-メチルイオノン(4.8)、アンブロキサン(4.8)、イソEスーパー(5.2)、エチルバニリン(1.6)、エチレンブラッシレート(4.7)、オイゲノール(2.7)、カシュメラン(IFF社製)(4.5)、クマリン(1.5)、ゲラニオール(3.5)、酢酸o,t-ブチルシクロヘキシル(4.4)、酢酸シトロネリル(4.6)、酢酸ジメチルベンジルカルビニル(3.4)、サンダルマイソールコア(4.7)、ジヒドロジャスモン酸メチル(3.5)、ジヒドロミルセノール(3.5)、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド(2.9)、ジャバノール(ジボダン製)(4.7)、ネロリンヤラヤラ(3.3)、ハバノライド(フィルメニッヒ製)(4.9)、フルテート(花王株式会社)(3.6)、ペオニル(ジボダン製)(4.3)、ヘキシルシンナミックアルデヒド(4.8)、ヘリオトロピン(1.8)、メチルβ-ナフチルケトン(2.9)、メチルアンスラニレート(2.3)、ラズベリーケトン(1.5)、リモネン(4.8)、及びリリアール(4.4)を挙げることができる。なお( )内の数値はlogP値である。
なお、本発明の繊維製品処理剤組成物は、香料化合物の希釈剤や保留剤を含有してもよい。希釈剤及び保留剤としては、ジプロピレングリコール、パルミチン酸イソプロピルエステル、ジエチルフタレート、ペンジルベンゾエート、流動パラフィン、イソパラフィン、及び油脂等を挙げることができる。
希釈剤及び保留剤を用いる場合、(D)成分と希釈剤及び保留剤との合計に対する希釈剤及び保留剤の量は、好ましくは0質量%以上20質量%以下である。なお、これら希釈剤及び保留剤は(A)成分のマイクロカプセルに内包された香料化合物にも用いることができる。
(D)成分は、(A)成分と併用することで、従来よりも自由度の高い香料設計が可能となる。したがって(D)成分を併用した本発明の繊維製品処理剤組成物を繊維製品に処理を施した場合、例えば、フレッシュ且つリッチな香りを付与することができる。
本発明の繊維製品処理剤組成物が(D)成分を含有する場合、その含有量は、組成物中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、繊維製品処理剤組成物の保存安定性(以下、保存安定性ともいう)及び他の賦香成分との香りのバランスの観点から、好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下、更に好ましくは1.8質量%以下である。なお、繊維製品処理剤組成物中の(D)成分は、製品に合わせてその含有量を調整することができる。
また、本発明の繊維製品処理剤組成物が(D)成分を含有する場合において、(A)成分及び(D)成分の合計の含有量は、繊維製品に対して十分に賦香する観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、保存安定性及び他の賦香成分との香りのバランスの観点から、好ましくは2.8質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下、更に好ましくは2.0質量%以下である。
<(E)成分>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(E)成分として、炭素数8以上24以下のアルキル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル、及び炭素数8以上24以下のアルケニル基を有するポリオキシアルキレンアルケニルエーテルから選ばれる1種以上のノニオン性界面活性剤を含有することができる。
(E)成分としては、下記一般式(E1)で表されるノニオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
1e-A-〔(R2eO)p1-R3eq1 (E1)
〔式中、R1eは、炭素数8以上、好ましくは10以上、そして、24以下、好ましくは18以下、より好ましくは16以下の、アルキル基又はアルケニル基であり、R2eは、炭素数2又は3のアルキレン基、好ましくはエチレン基であり、R3eは、炭素数1以上3以下のアルキル基又は水素原子であり、p1は2以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、そして、100以下、より好ましくは80以下、更に好ましくは60以下の数であり、付加形態はランダム付加又はブロック付加のいずれでもよい。Aは-O-、-COO-、-CONH-、-NH-、-CON<又は-N<であり、Aが-O-、-COO-、-CONH-又は-NH-の場合q1は1であり、Aが-CON<又は-N<の場合q1は2である。〕
一般式(E1)の化合物の具体例としては、以下の式(E1-1)~(E1-4)で表される化合物を挙げることができる。
1e-O-(CO)p11-H (E1-1)
〔式中、R1eは前記の意味を示す。p11は8以上、好ましくは10以上、そして、100以下、好ましくは60以下の数である。〕
1e-O-(CO)/(CO)-H (E1-2)
〔式中、R1eは前記の意味を示す。s及びtはそれぞれ独立に2以上、好ましくは5以上、そして、40以下の数であり、(CO)と(CO)はランダム又はブロック付加体であってもよい。〕
1e-O-(CO)x1-(CO)-(CO)x2-H (E1-3)
〔式中、R1eは前記の意味を示す。x1、y、及びx2は平均付加モル数であり、x1は1以上13以下、yは1以上4以下、x2は1以上13以下であり、(CO)と(CO)と(CO)はブロック付加体である。〕
Figure 2023004928000002
〔式中、R1eは前記の意味を示す。Bは-CON<であり、u及びvはそれぞれ独立に0以上40以下の数であり、u+vは5以上、そして、60以下、好ましくは40以下の数である。R4e、R5eはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基である。〕
本発明の繊維製品処理剤組成物が(E)成分を含有する場合、その含有量は、組成物中、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、更に好ましくは2.0質量%以上、そして、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは4.5質量%以下、更に好ましくは4.0質量%以下である。
<(F)成分>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、保存安定性を向上させる観点から(F)成分として、無機塩を含有することができる。
無機塩としては、保存安定性を向上させる観点から、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、及び塩化マグネシウムから選ばれる1種以上が好ましい。
本発明の繊維製品処理剤組成物が(F)成分を含有する場合、その含有量は、繊維製品処理剤組成物の分散性を向上させる観点から、組成物中、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.02質量%以上、そして、繊維製品処理剤組成物の保存安定性を向上する観点から、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.3質量%以下である。
<(G)成分>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、保存安定性を改善する観点から、(G)成分として、多価アルコールと脂肪酸とのエステルを含有してもよい。
多価アルコールと脂肪酸とのエステルとしては、炭素数3以上6以下であり、かつ3価以上6価以下の多価アルコールと、炭素数12以上22以下の脂肪酸とのエステル化合物が好ましい。
より具体的には、炭素数が好ましくは3以上、より好ましくは4以上、そして、好ましくは6以下であり、かつ、好ましくは3価以上、より好ましくは4価以上で、そして、好ましくは6価以下である多価アルコールと、炭素数が好ましくは12以上、より好ましくは14以上、更に好ましくは16以上、そして、好ましくは22以下、より好ましくは20以下の脂肪酸とのエステル化合物である。
(G)成分を構成する多価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5-ペンタトリオール、エリスリトール、アラビトール、ペンタエリスリトール、ソルビタン、ソルビトール、キシリトール及びマンニトールから選ばれる1種以上が好ましく、ペンタエリスリトール及びソルビタンから選ばれる1種以上がより好ましい。
(G)成分を構成する脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、及びパルミチン酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、及びリノレン酸等の不飽和脂肪酸、パーム油脂肪酸、及び硬化パーム油脂肪酸の植物油由来の脂肪酸、牛脂脂肪酸及び硬化牛脂脂肪酸等の動物油由来の脂肪酸から選ばれる1種以上が好ましく、飽和脂肪酸、植物油由来の脂肪酸、及び動物油由来の脂肪酸から選ばれる1種以上がより好ましく、ステアリン酸、硬化パーム油脂肪酸、及び硬化牛脂脂肪酸から選ばれる1種以上が更に好ましい。
本発明における(G)成分としては、ペンタエリスリトールと炭素数16以上22以下の脂肪酸とのエステル化合物(以下、「ペンタエリスリトール脂肪酸エステル」ともいう)、及びソルビタンと炭素数16以上22以下の脂肪酸とのエステル化合物(以下、「ソルビタン脂肪酸エステル」ともいう)から選ばれる1種以上が好ましい。
本発明の繊維製品処理剤組成物が(G)成分を含有する場合、(G)成分の含有量は、組成物中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、より更に好ましくは0.7質量%以上、そして、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。
<(H)成分>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(H)成分として両性界面活性剤を含有することができる。
(H)成分としては、一般的に液体柔軟剤組成物などに配合することができるものであれば特に制限はなく、例えば、アルキル(炭素数12以上22以下)アミドプロピルカルボベタイン、アルキル(炭素数12以上22以下)アミドプロピルスルホベタイン、アルキル(炭素数12以上22以下)カルボベタイン、アルキル(炭素数12以上22以下)スルホベタイン、アルキル(炭素数10以上18以下)ジメチルアミンオキシド等が挙げられる。
本発明の繊維製品処理剤組成物が(H)成分を含有する場合、(H)成分の含有量は、繊維製品処理剤組成物の粘度を低下させる観点、及び殺菌性を向上させる観点から、組成物中、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、より更に好ましくは0.5質量%以上、そして、保存安定性や柔軟効果の低下を抑制する観点から、好ましくは4.0質量%以下、より好ましくは3.5質量%以下、更に好ましくは2.5質量%以下である。
<(I)成分>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(I)成分として、水不溶性のシリコーン化合物を含有してもよい。本明細書における(I)成分の「水不溶性」とは、20℃のイオン交換水1Lに溶解するシリコーン化合物の量が1g以下であることをいう。
(I)成分の具体例としては、ジメチルポリシロキサン、4級アンモニウム変性ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン、アミド変性ジメチルポリシロキサン、エポキシ変性ジメチルポリシロキサン、カルボキシ変性ジメチルポリシロキサン、ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサン、及びフッ素変性ジメチルポリシロキサン等のシリコーン化合物が挙げられる。
(I)成分としては、ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン、アミド変性ジメチルポリシロキサン、及びポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン及び/又はポリオキシプロピレン、好ましくはポリオキシエチレン)変性ジメチルポリシロキサンから選ばれる1種以上が好ましい。(I)成分は、重量平均分子量が、好ましくは1千以上、より好ましくは3千以上、更に好ましくは5千以上であり、そして、好ましくは100万以下である。(I)成分は、25℃における粘度が、好ましくは2mm/s以上、より好ましくは500mm/s以上、更に好ましくは1千mm/s以上であり、そして、好ましくは100万mm/s以下である。なお、(I)成分における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により、ポリスチレンを標準物質として測定した値である。
アミノ変性ジメチルポリシロキサンのアミノ当量(アミノ当量とは窒素原子1個当たりの分子量)は、好ましくは1,500g/mol以上、より好ましくは2,500g/mol以上、更に好ましくは3,000g/mol以上、そして、好ましくは40,000g/mol以下、より好ましくは20,000g/mol以下、更に好ましくは10,000g/mol以下である。
本発明の繊維製品処理剤組成物が(I)成分を含有する場合、(I)成分の含有量は、繊維製品の仕上り感として、さっぱり感を与える観点から、組成物中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、そして、分散性の観点から、好ましくは5質量%以下である。
また、本発明の繊維製品処理剤組成物が(I)成分を含有する場合、(I)成分の含有量は、泡立ち抑制の観点から、組成物中、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、更に好ましくは0.01質量%以上、であり、そして、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である。
<(J)成分>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、前述の通り繊維製品処理剤組成物のpHを4.0以下に調整するために、(J)成分として、pH調整剤を含有することができる。
pH調整剤のうち酸剤としては、無機酸及び有機酸が挙げられ、無機酸の具体例としては、塩酸、硫酸、硝酸などが挙げられる。有機酸の具体例としては、炭素数1以上10以下の1価又は多価のカルボン酸、又は炭素数1以上20以下の1価又は多価のスルホン酸、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸が挙げられる。より具体的には、メチル硫酸、エチル硫酸、p-トルエンスルホン酸、(o-、m-、p-)キシレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、グリコール酸、エチレンジアミン4酢酸、クエン酸、安息香酸、及びサリチル酸が挙げられる。
本発明の繊維製品処理剤組成物は、pH調整剤として、必要に応じて水酸化ナトリウム、アルカノールアミンなどのアルカリ剤を含有することもできる。
本発明の繊維製品処理剤組成物がpH調整剤を含有する場合、その含有量は適宜調整することができ、pHが例えば前記の範囲になる量であって、保存安定性を損なわない程度が好ましい。
一方、本発明の繊維製品処理剤組成物において、(B)成分の界面活性剤が一般式(B2)で表されるようなエステル基を有する場合、繊維製品処理剤組成物の保存安定性の観点からエステル基の加水分解を可能な限り抑制することが望ましい。エステル基の加水分解を抑制しつつ、繊維製品処理剤組成物のpHを前述の範囲に収めるために好ましい酸として、塩酸、硫酸、硝酸、メチル硫酸などの、30℃でのpKaが3以下、好ましくは2以下、更に好ましくは0以下である酸が挙げられる。一方、30℃でのpKaが3を超える、クエン酸、安息香酸、酢酸などの酸は、(B)成分としてエステル基を有する界面活性剤を用いる場合は、使用量を少なくする、あるいは使用しないのが好ましい。
<(K)成分>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、柔軟効果を向上させる観点から、炭素数12以上22以下の脂肪酸を含有してもよい。
(K)成分の脂肪酸は、(B)成分の合成時の未反応物や、(B)成分の分解物として含有してもよい。
(K)成分としては、炭素数12以上22以下の飽和又は不飽和脂肪酸が好ましく、具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、エルカ酸、及びベヘニン酸から選ばれる脂肪酸が好ましく、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸及びリノール酸から選ばれる脂肪酸がより好ましい。
本発明の繊維製品処理剤組成物が(K)成分を含有する場合、(K)成分の含有量は、組成物中、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、そして、好ましくは0.3質量%以下、より好ましくは0.2質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である。
<(L)成分>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、保存安定性や粘度の観点から(L)成分として、水溶性有機溶剤を含有することができる。
水溶性有機溶剤としては、繊維製品処理剤組成物に用いられる一般的な水溶性有機溶剤が挙げられる。なお、(L)成分における「水溶性有機溶剤」とは、20℃の脱イオン水100gに対して20g以上溶解する有機溶剤をいう。
水溶性有機溶剤の具体例としては、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、モノエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、イソプロパノール、及びエタノール等を挙げることができる。これらの中でも、エチレングリコール、エタノール、及びプロピレングリコールから選ばれる水溶性有機溶剤が好ましい。
本発明の繊維製品処理剤組成物が他の成分によって、十分に安定化され粘度が低い場合は、(L)成分である水溶性有機溶剤を含有しなくてもよい。
本発明の繊維製品処理剤組成物が(L)成分を含有する場合、(L)成分の含有量は、組成物中、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、そして、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上である。
<(M)成分>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、繊維製品処理剤組成物の長期保存時の色相変化や染料の褪色及び香りの変質を抑制する観点から、(M)成分として、キレート剤を用いることが好ましい。なお、本発明における(M)成分は前記酸剤としての機能も有していてもよい。
キレート剤の具体例としては、エタン-1-ヒドロキシ-1,1-ジホスホン酸、エチレンジアミン四酢酸、メチルグリシン二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、エチレンジアミン二コハク酸、L-グルタミン酸-N,N-二酢酸、N-2-ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、クエン酸、コハク酸、及びそれらの塩が挙げられる。塩としては、アルカリ金属塩、アンモニウム塩が好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩がより好ましい。
本発明の繊維製品処理剤組成物が(M)成分を含有する場合、(M)成分の含有量は、組成物中、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上であり、そして、好ましくは2質量%以下、より好ましく1.5質量%以下、更に好ましくは1.0質量%以下、より更に好ましくは0.5質量%以下、より更に好ましくは0.1質量%以下である。
<(N)成分>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(N)成分として、香料化合物を内包した(A)成分以外のマイクロカプセル、又は香料前駆体を含有することができる。
(N)成分は、(A)成分及び(D)成分と併用することで、従来よりも自由度の高い香料設計が可能となる。(N)成分には、徐放性香料として特開2014-125685号公報記載のケイ酸エステル化合物や特表平8-502522号公報記載のアルコール系香料化合物と、脂肪族モノカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸とのエステル化合物を用いることができる。
本発明の繊維製品処理剤組成物が(N)成分を含有する場合、(N)成分の含有量は、組成物中、好ましくは0.15質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.45質量%以上、そして、好ましくは質0.65質量%以下、より好ましくは0.6質量%以下、更に好ましくは0.55質量%以下である。
本発明の繊維製品処理剤組成物が(N)成分を含有する場合、(A)成分、(D)成分及び(N)成分の合計含有量は、繊維製品に対して十分に賦香する観点から、組成物中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、そして、保存安定性及び香りの強度の嗜好性のバランスの観点から、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下、更に好ましくは2.0質量%以下である。
なお、(N)成分の質量%は、(N)成分のマイクロカプセルが内包する香料化合物及び(N)成分の香料前駆体を構成する香料化合物の質量に基づいて計算する。
<(O)成分>
本発明の繊維製品処理剤組成物においては、基材の劣化を抑制する観点から、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)等の酸化防止剤を用いることができ、また、審美や長期保存時の着色を防ぐ観点から、繊維製品処理剤組成物において一般的に用いられる染料及び顔料を用いることもできる。更に、プロキセルの商品名で市販されている防菌、防黴剤を用いることもできる。また、安息香酸及びその塩も防菌、防黴剤として用いることもできる。
<その他の成分等>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、水を含有することが好ましい。水を含有する液体組成物であることが好ましい。水は、通常、組成物の残部であり、成分の合計が100質量%となるように用いられる。本発明の繊維製品処理剤組成物は、水を、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下含有する。
本発明の繊維製品処理剤組成物は、繊維製品用として好適であり、繊維製品としては、衣料、布帛、寝具、タオル等が挙げられる。
本発明の繊維製品処理剤組成物は、繊維製品の柔軟処理に用いることができる。例えば、本発明の繊維製品処理剤組成物は、繊維製品用柔軟剤組成物、更に繊維製品用液体柔軟剤組成物であってよい。
<繊維製品処理剤組成物の製造方法>
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(A)成分、(B)成分、及び水を混合することで製造できる。(A)成分、(B)成分、及び水の混合順序は問わない。例えば、(B)成分と水を混合したものに(A)成分を添加し、前記酸を用いてpHを調整する方法が挙げられる。pHを調整するために用いる酸の添加タイミングは、(B)成分と水を混合する前に予め(B)成分に混合しておいてもよいし、(B)成分と水を混合した後、(A)成分を添加する前に添加してもよい。本発明の繊維製品処理剤組成物は、例えば、工程1及び工程2を含む方法により(A)成分を製造し、得られた(A)成分を、(B)成分及び水と混合して製造することができる。これらの製造方法では前記した任意成分を適宜混合することができる。
なお(A)成分を添加する際は、混合後のカプセルの凝集を防ぐために、水で2~8倍程度に希釈してから添加してもよい。
<繊維製品の処理方法>
本発明は、(A)成分、(B)成分、及び水を混合して得た処理液を繊維製品と接触させる、繊維製品の処理方法を提供する。
本発明の繊維製品の処理方法で用いられる(A)成分、(B)成分は、本発明の繊維製品用処理剤組成物に記載の(A)成分、(B)成分を使用することができる。(A)成分、(B)成分などの好ましい態様も、本発明の繊維製品用処理剤組成物と同じである。本発明の繊維の処理方法には、本発明の繊維製品用処理剤組成物で述べた事項を適宜適用することができる。
本発明の繊維製品の処理方法において、前記処理液は、前記本発明の繊維製品用処理剤組成物と水とを混合して得られたものであることが好ましい。
<香料組成物>
マイクロカプセルに内包する香料組成物として、表1-1に示す組成を有するモデル香料A-1および表1-2に示す組成を有するモデル香料A-2を用いた。
Figure 2023004928000003
Figure 2023004928000004
<(A)成分>
(A-1):下記合成例a-1で得られたシリカカプセル
(A-2):下記合成例a-2で得られたシリカカプセル
<合成例a-1>(A-1)の合成
(工程1)
3.0gのコータミン60W(商品名、花王株式会社製、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、有効分30質量%)を750gのイオン交換水で希釈して水相成分を得た。この水相成分に、200gの前記表1に示す配合割合のモデル香料A-1と50gのテトラエトキシシラン(以下、「TEOS」ともいう)を混合して調製した油相成分を加え、ホモミキサー(HsiangTai製、モデル:HM-310、以下同様)を用いて回転数8,500rpmにて混合液を乳化し、乳化液を得た。この時の乳化滴のメジアン径D50は1.4μmであった。
得られた乳化液のpHを1%硫酸水溶液を用いて3.8に調整した後、撹拌翼と冷却器を備えたセパラブルフラスコに移し、液温を30℃に保ちつつ、200rpmで24時間撹拌し、モデル香料A-1からなるコアとシリカからなる第一シェルとを有するシリカカプセル(1-1)を含有する水分散体を得た。
(工程2)
工程1で得られた水分散体を液温30℃で撹拌しながら、21gのTEOSを420分かけて滴下した。滴下後、更に17時間撹拌を続けた後に冷却することにより、第一シェルを包接する第二シェルを形成し、モデル香料Aが非晶質シリカで内包されたシリカカプセル(A-1)を含有する水分散体を得た。シリカカプセル(A-1)のメジアン径D50は2.1μmであった。乳化滴及びシリカカプセル(A-1)のメジアン径D50は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置「LA-960」(商品名、株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。測定はフローセルを使用し、媒体は水、屈折率は1.40-0iに設定した。乳化液又はシリカカプセルを含む水分散体をフローセルに添加し、透過率が90%付近を示した濃度で測定を実施し、体積基準でメジアン径D50を求めた。
なお、第一シェルの厚さは約5nmであり、第二シェルの厚さは5~30nmであった。
<合成例a-2>(A-2)の合成
(工程1)
3.0gのコータミン60W(商品名、花王株式会社製、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、有効分30質量%)を750gのイオン交換水で希釈して水相成分を得た。この水相成分に、200gの前記表1-2に示す配合割合のモデル香料A-2と50gのテトラエトキシシラン(以下、「TEOS」ともいう)を混合して調製した油相成分を加え、ホモミキサー(HsiangTai製、モデル:HM-310、以下同様)を用いて回転数8,500rpmにて混合液を乳化し、乳化液を得た。この時の乳化滴のメジアン径D50は1.3μmであった。
得られた乳化液のpHを1%硫酸水溶液を用いて3.8に調整した後、撹拌翼と冷却器を備えたセパラブルフラスコに移し、液温を30℃に保ちつつ、200rpmで24時間撹拌し、モデル香料A-2からなるコアとシリカからなる第一シェルとを有するシリカカプセル(1-2)を含有する水分散体を得た。
(工程2)
工程1で得られた水分散体を液温30℃で撹拌しながら、21gのTEOSを420分かけて滴下した。滴下後、更に17時間撹拌を続けた後に冷却することにより、第一シェルを包接する第二シェルを形成し、モデル香料A―2が非晶質シリカで内包されたシリカカプセル(A-2)を含有する水分散体を得た。シリカカプセル(A-2)のメジアン径D50は1.9μmであった。乳化滴及びシリカカプセル(A-2)のメジアン径D50は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置「LA-960」(商品名、株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。測定はフローセルを使用し、媒体は水、屈折率は1.40-0iに設定した。乳化液又はシリカカプセルを含む水分散体をフローセルに添加し、透過率が90%付近を示した濃度で測定を実施し、体積基準でメジアン径D50を求めた。
なお、第一シェルの厚さは約5nmであり、第二シェルの厚さは5~30nmであった。
<(B)成分>
(B-1):下記合成例b-1で得られた反応混合物
<合成例b-1>(B-1)の製造
トリエタノールアミンとRCOOHで表される脂肪酸を、反応モル比(脂肪酸/トリエタノールアミン)が1.65/1で、エステル化反応させ、エステル化反応物を得た。
エステル化反応物中には、未反応の脂肪酸が5質量%含まれていた。エステル化反応物中のアミン化合物のアミンに対して、メチル基が0.96等量となるように、ジメチル硫酸で4級化反応を行った後、エタノールを添加した。以上の様にして(B)成分である4級アンモニウム塩化合物[以下(B-1-1)という]及び3級アミン化合物[以下(B-1-2)という]を含有する反応物[(B-1)]を調製した。
得られた反応物をHPLC法で各成分の組成比を分析し、臭化テトラオクチルアンモニウムを内部標準物質として使用し定量した結果、得られた反応物(B-1)は、下記一般式(B1-1)で示される化合物として示されR14がメチル基である(B-1-1)を76質量%、下記一般式(B1-1)でR14基を有さない化合物として示される3級アミン化合物である(B-1-2)を12質量%、エタノールを10質量%、未反応脂肪酸を2質量%、微量のトリエタノールアミン4級化物及びその他微量成分を含んでいた。また、(B-1-1)の4級アンモニウム塩化合物は、一般式(B1-1)において、R11がアシル基であり、R12及びR13が水素原子であり、R14がメチル基であって、Xがメチル硫酸イオンである化合物が28質量%、一般式(B1-1)において、R11及びR12がアシル基であり、R13が水素原子であり、R14がメチル基であって、Xがメチル硫酸イオンである化合物が56質量%、一般式(B1-1)において、R11、R12及びR13がアシル基であり、R14がメチル基であって、Xがメチル硫酸イオンである化合物が16質量%であった。更に(B-1-2)の3級アミン化合物は、一般式(B1-1)(ここではR14を有していない化合物の意味である)において、R11がアシル基であり、R12及びR13が水素原子である化合物を実質含有せず、一般式(B1-1)において、R11及びR12がアシル基であり、R13が水素原子である化合物が17質量%、一般式(B1-1)において、R11、R12及びR13がアシル基である化合物が83質量%であった。また、反応物(B-1)の4級化率は80質量%であった。
Figure 2023004928000005
なお(B-1)を製造するための反応に用いたRCOOHの組成を以下に示す。
パルミチン酸:45質量%
ステアリン酸:25質量%
オレイン酸:27質量%
リノール酸:3質量%
前記組成は、原料に使用した脂肪酸をガスクロマトグラフィーで組成分析し、各脂肪酸の面積%を質量%とみなした。なお配合表の数値は4級アンモニウム塩化合物の(B-1-1)及び3級アミン化合物の(B-1-2)の合計としての濃度に換算している。
<(C)成分>
(C-1):スノーテックスST-S(日産化学株式会社)
(C-2):スノーテックスST-O(日産化学株式会社)
<(D)成分>
(D-1):表1-1に記載の香料(カプセル化せずに配合)
(D-2):表1-2に記載の香料(カプセル化せずに配合)
(D-3):表2に記載の香料
Figure 2023004928000006
<(E)成分>
(E-1):ラウリルアルコールにエチレンオキサイドを平均30モル付加させた化合物
すなわち、一般式(E1-1)においてR1eが直鎖の炭素数12のアルキル基であって酸素原子と結合するR1eの炭素原子が第1級炭素原子であり、p11が30であるノニオン性界面活性剤
<(F)成分>
(F-1):塩化カルシウム
<(I)成分>
(I-1):下記合成例i-1で製造した、ジメチルポリシロキサンの水性エマルジョン。
<合成例i-1>(I-1)の合成
平均付加モル数5モルのポリオキシエチレンラウリルエーテル5gを、ジメチルポリシロキサン(25℃における粘度500,000mm/s)300gに高せん断力をかけながら添加し、さらに10分間、高せん断力で攪拌し続けた。その後、イオン交換水を30g添加し、次に平均付加モル数2モルのポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム2g、平均付加モル数40モルのポリオキシエチレンミリスチルエーテル15gを加え、さらに高せん断力下、攪拌を30分間続け、その後、水を248g加えて攪拌し、ジメチルポリシロキサンの水性エマルジョン〔(I-1)〕を得た。(I-1)中の乳化粒子の体積平均粒径は500nmであった。また、(I-1)中のジメチルポリシロキサンの含有量は50質量%であった。体積平均粒径は水性エマルジョンをエタノール中に分散させ、電気泳動光散乱光度計(大塚電子(株)製、型式ELS-8000)を用いて、20℃で測定した。
<(J)成分>
(J-1):35質量% 塩酸水溶液
(J-2):50質量% クエン酸水溶液
<(L)成分>
(L-1):エチレングリコール
<(M)成分>
(M-1):メチルグリシン二酢酸3ナトリウム
<(N)成分>
(N-1):Si(O-Geranyl)
なお、(N-1)における「Geranyl」は、ゲラニオール(1級アリルアルコール性香料、logP3.5)から水酸基を1個除いた基を表す。
(N-1)は、下記合成例n-1により合成した。
<合成例n-1>(N-1)〔Si(O-Geranyl)〕の合成
200mLの四つ口フラスコにテトラエトキシシラン27.08g(0.13mol)、ゲラニオール72.30g(0.47mol)及び2.8質量%ナトリウムメトキシドメタノール溶液0.485mLを入れ、窒素気流下エタノールを留出させながら110~120℃で2時間撹拌した。
2時間後、槽内の圧力を徐々に8kPaまで下げ、エタノールを留出させながら117~120℃でさらに4時間撹拌した。4時間後、冷却、減圧を解除した後、濾過を行い、ゲラニオールのケイ酸エステル香料前駆体を含む76.92gの黄色油状物を得た。
(N-2):ラウリン酸とエチルバニリンとのエステル
(N-2)は、下記合成例n-2により合成した。
<合成例n-2>(n-2)〔ラウリン酸とエチルバニリンとのエステル〕の合成
窒素雰囲気下、300mLの四つ口フラスコに、ラウリン酸クロリド8.95g(0.041mol)、ジクロロメタン40mLを入れ、0℃に冷却した。一方、100mLの滴下ロートに、エチルバニリン6.80g(0.041mol)、トリエチルアミン4.35g(0.043mol)、ジクロロメタン40mLを入れた。滴下ロートより反応温度が-5℃~0℃に保たれるようフラスコに40分かけて滴下を行った。滴下終了後、室温(25℃)で2時間撹拌を行った。フラスコに飽和塩化アンモニウム水溶液10mLを添加し、反応を停止した。ジエチルエーテル150mLを添加し、生成した白色固体をろ過で除去し、ろ液を分液ロートに移した。分液ロートにイオン交換水100mLを添加し、ジエチルエーテル50mLで水層から3回抽出を行った。抽出溶液を集め、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで溶液を乾燥した。溶媒を減圧除去後、淡黄色固体のラウリン酸とエチルバニリンとのエステル14.20g(収率99%)を得た。最終物はNMR及びIRを用いて目的の化合物が製造できているか確認された。
<(O)成分>
(O-1):プロキセルBDN(アーチ・ケミカル・ジャパン社製)
<液体繊維製品処理剤組成物(液体柔軟剤組成物)の調製>
表2に示す配合組成となるように各成分を混合することにより、液体繊維製品処理剤組成物を調製した。具体的には、以下の通りである。なお、表中の組成の質量%は、有効分の質量%((a)成分は香料化合物としての質量%)である。
300mLビーカーに、液体繊維製品処理剤組成物のできあがり量が200gとなるのに必要な量の85質量%に相当する量のイオン交換水と、(E)成分、(I)成分、(J)成分、(L)成分、(M)成分、(O)成分を入れ、ウォーターバスを用いてイオン交換水の温度を60±2℃に調温した。(E)成分がイオン交換水中に均一に溶解するように、必要に応じて撹拌羽根を用いて撹拌することにより混合液を得た。なお、撹拌羽根としては、直径が5mmの撹拌棒の回転中心軸を基準として、長辺が90度方向になるように配置された撹拌羽根であって、羽根の数3枚、羽根の長辺/短辺=3cm/1.5cm、回転面に対して45度の角度で羽根が設置されたものを用いた。
60±2℃の温度に調温した混合液を、前記撹拌羽根で撹拌(300r/m)した。これに、65℃で加熱溶解させた(B)成分を3分間掛けて投入し、更に(N)成分のうちの(N-2)を投入し、投入終了後、15分間撹拌した。
次に、5℃のウォーターバスを用いて、混合液の温度が30±2℃になるまで冷却した。これに、(A)成分、(C)成分、(N)成分のうちの(N-1)、(D)成分、(F)成分を順次投入し、5分間撹拌した。更に、できあがり質量(200g)となるようにイオン交換水を加え、5分間撹拌して液体繊維製品処理剤組成物を得た。なおpHは、適宜NaOH水溶液にて調整した。
液体繊維製品処理剤組成物のpHは以下のようにして測定した。
pHメーター(HORIBA製 pHメータ D-51)にpH測定用複合電極(HORIBA製 汎用スリーブ型)を接続し、電源を投入した。pH電極内部液としては、飽和塩化カリウム水溶液(3.33mol/L)を使用した。
次に、pH1.68標準液(しゅう酸塩標準液)、pH4.01標準液(フタル酸塩標準液)、pH6.86(中性リン酸塩標準液)、をそれぞれ100mlビーカーに充填し、30℃の恒温槽に30分間浸漬した。恒温に調整された標準液にpH測定用電極を3分間浸し、pH6.86→pH4.01→pH1.68の順に校正操作を行った。なおアルカリ領域を測定する場合はpH1.68の標準液の代わりに、pH 9.18標準液(ホウ酸塩標準液)を使用して校正する。
試料を100mlビーカーに充填し、30℃の恒温槽内にて30℃に調整した。恒温に調整された試料にpH測定用電極を3分間浸し、pHを測定した。
得られた液体繊維製品処理剤組成物について可視光透過率を測定した。具体的には、測定セルとして光路長10mmのガラスセルを使用し、対照セルにイオン交換水を入れ、紫外可視分光光度計(島津製作所製のUV-2500PC)を用いて測定した。実施例及び比較例で得られた液体繊維製品処理剤組成物の可視光線透過率(波長660nm)は、全て10%未満であり、乳濁型液体繊維製品処理剤組成物であった。なお今回調製した液体繊維製品処理剤組成物は液体柔軟剤組成物として使用でき、従来の使用方法で十分な柔軟効果を得ることができる。
<評価>
あらかじめ、炭素数12の1級アルコールにエチレンオキサイドを平均8モル付加させたノニオン性界面活性剤を用いて、綿メリヤス布を株式会社日立製作所製全自動洗濯機NW-6CYで5回洗浄を繰り返し、室内乾燥することによって過分の薬剤を除去した。1回ごとの洗浄条件は、洗剤濃度0.0667質量%、水道水47L、水温20℃、洗浄10分、ためすすぎ2回、脱水6分とした。これらを乾燥させた後、一枚の重さが800mg程度になるように裁断して用いた。
ターゴトメーター(大栄科学精器製作所)を使用し浴処理を行った。水道水320mLに上記繊維製品処理剤組成物を675μL添加し80r/mで1分間撹拌した後、上記布を27枚入れて80r/mで5分間撹拌した。その後、二槽式洗濯機で2分間脱水した。
脱水布に残存している香料化合物を定量するために、脱水布9枚ずつをガラス瓶に入れ、180mLのアセトンを加え、30分間超音波処理による抽出を行った。液体クロマトグラフィー(島津製作所)を用いて、香料吸着率を算出した。吸着率の算出に用いた香料は、logPが低くカプセルに内包しなければ布に吸着しにくい香料かつ定量性の観点から一定量以上配合されている香料を選択した。具体的には、モデル香料A-1の場合にはメチルイソオイゲノール、モデル香料A-2の場合にはメチルジヒドロジャスモネートを用いた。
なお、繊維製品処理剤組成物は、1つの組成物につき、調製直後、並びに、ビンに密閉した状態で40℃または50℃で所定日数保存したもの、を用いて処理を行い、それぞれの香料吸着率を算出した。
結果を表3-1および表3-2に示す。
Figure 2023004928000007
Figure 2023004928000008

Claims (10)

  1. 下記(A)成分、(B)成分、及び水を含有し、30℃におけるpHが4.0以下である、繊維製品処理剤組成物。
    (A)成分:シリカを含むシェルと該シェルの内部に香料化合物を含むコアとを有するマイクロカプセル。
    (B)成分:pH4.0以下でカチオン性を有する界面活性剤。
  2. (A)成分のメジアン径D50が、0.1μm以上50μm以下である請求項1に記載の繊維製品処理剤組成物。
  3. (A)成分の前記シェルが、アルコキシシランのゾル-ゲル反応を行うことにより形成されてなるシリカを構成成分として含む、請求項1又は2に記載の繊維製品処理剤組成物。
  4. 前記アルコキシシランが、テトラエトキシシランである、請求項3に記載の繊維製品処理剤組成物。
  5. (A)成分が、前記コアを包接する第一シェルと、第一シェルを包接する第二シェルとを有するマイクロカプセルである、請求項1~4の何れか1項に記載の繊維製品処理剤組成物。
  6. 第一シェルが、20nm以下の平均厚さを有する、請求項5に記載の繊維製品処理剤組成物。
  7. 第二シェルが、100nm以下の平均厚さを有する、請求項5又は6に記載の繊維製品処理剤組成物。
  8. (B)成分として、下記一般式(B1)で表される第3級アミン、その酸塩、及び前記アミンの4級化物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する、請求項1~7の何れか1項に記載の繊維製品処理剤組成物。
    Figure 2023004928000009

    〔式中、Rb1基は、エステル基、アミド基、及びエーテル基から選ばれる1種以上で分断されていてもよい、総炭素数12以上28以下の炭化水素基であり、Rb2基及びRb3基はそれぞれ独立に、Rb1基、炭素数1以上3以下のアルキル基、炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基、及び炭素数4以上6以下のヒドロキシアルキルエーテルアルキレン基から選ばれる基である。〕
  9. pH調整剤として、塩酸、硫酸、硝酸、及びメチル硫酸から選ばれる酸剤を含有する、請求項1~8の何れか1項に記載の繊維製品処理剤組成物。
  10. 更に下記(C)成分を含有する、請求項1~9の何れか1項に記載の繊維製品処理剤組成物。
    (C)成分:シリカ粒子
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