JP2023022765A - 固定子 - Google Patents
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Abstract
【課題】絶縁被膜の剥離を抑制して固定子巻線の絶縁信頼性を確保することのできる固定子を提供する。
【解決手段】固定子は、固定子コアと、固定子コアに設けられた固定子巻線と、を備える。固定子巻線は、導体34が絶縁被膜35で被覆された複数の導体セグメント30からなり、導体セグメントは、その先端部において導体が露出した露出部33と、導体が絶縁被膜で被覆されたままとなる被覆部36とを有する。また、固定子巻線のコイルエンド部において、異なる導体セグメントの露出部どうしが接続されており、導体セグメントの被覆部において導線先端側の端部に、絶縁被膜の少なくとも一部が押し潰された状態で塑性変形痕37が設けられている。
【選択図】 図7
【解決手段】固定子は、固定子コアと、固定子コアに設けられた固定子巻線と、を備える。固定子巻線は、導体34が絶縁被膜35で被覆された複数の導体セグメント30からなり、導体セグメントは、その先端部において導体が露出した露出部33と、導体が絶縁被膜で被覆されたままとなる被覆部36とを有する。また、固定子巻線のコイルエンド部において、異なる導体セグメントの露出部どうしが接続されており、導体セグメントの被覆部において導線先端側の端部に、絶縁被膜の少なくとも一部が押し潰された状態で塑性変形痕37が設けられている。
【選択図】 図7
Description
この明細書の開示は、固定子に関する。
回転電機の固定子においては、固定子コアに固定子巻線が設けられている。固定子巻線は、例えば複数の導体セグメントを用いて、それら各導体セグメントどうしが接続されることで構成されている。より具体的には、導体セグメントは、導体が絶縁被膜で被覆された導線からなる。また、導体セグメントは、先端部の導体が露出した露出部と、導体が絶縁被膜で被覆されたままとなっている被覆部とを有し、導体セグメントの露出部にて他の導体セグメントに接続されている。導体セグメントの絶縁被膜に関する先行技術として、隣接接合部間の沿面距離を拡張すべく、絶縁被膜に、導体から剥離された剥離絶縁被膜部を設け、この剥離絶縁被膜部を導体から傾斜状に離間させるようにした技術が知られている(特許文献1参照)。
ところで、導体セグメントの被覆部における露出部側の端部では絶縁被膜の剥離が生じる可能性がある。例えば、製造時に導体セグメントどうしを接続する際において、絶縁被膜の端部に他の部品等が接触することで、絶縁被膜の剥離が生じることが考えられる。なお、特許文献1の技術では、剥離絶縁被膜部が導体に対して傾斜状に設けられているため、剥離絶縁被膜部から絶縁被膜の剥離が拡がることが懸念される。被膜部の絶縁被膜の剥離が生じると、絶縁信頼性が低下するといった不都合が生じることが懸念される。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、絶縁被膜の剥離を抑制して固定子巻線の絶縁信頼性を確保することのできる固定子を提供することにある。
手段1の固定子は、
固定子コアと、前記固定子コアに設けられた固定子巻線と、を備え、
前記固定子巻線は、導体が絶縁被膜で被覆された複数の導線からなり、
前記導線は、その先端部において前記導体が露出した露出部と、前記導体が前記絶縁被膜で被覆されたままとなる被覆部とを有し、
前記固定子巻線のコイルエンド部において、異なる前記導線の前記露出部どうしが接続されており、
前記導線の前記被覆部において導線先端側の端部に、前記絶縁被膜の少なくとも一部が押し潰された状態で塑性変形痕が設けられていることを特徴とする。
固定子コアと、前記固定子コアに設けられた固定子巻線と、を備え、
前記固定子巻線は、導体が絶縁被膜で被覆された複数の導線からなり、
前記導線は、その先端部において前記導体が露出した露出部と、前記導体が前記絶縁被膜で被覆されたままとなる被覆部とを有し、
前記固定子巻線のコイルエンド部において、異なる前記導線の前記露出部どうしが接続されており、
前記導線の前記被覆部において導線先端側の端部に、前記絶縁被膜の少なくとも一部が押し潰された状態で塑性変形痕が設けられていることを特徴とする。
導線の被覆部において導線先端側の端部に、絶縁被膜の少なくとも一部が押し潰された状態で塑性変形痕が設けられている。この構成では、絶縁被膜の端部が導体に密着しており、意図しない絶縁被膜の剥離が生じにくくなっている。これにより、被覆部における絶縁被膜の剥離の発生を抑制することができ、固定子巻線の絶縁信頼性を確保することができる。
手段2では、前記塑性変形痕は、前記被覆部の前記絶縁被膜からその直下の前記導体の一部に達するまでの深さで設けられている。
塑性変形痕は、被覆部の絶縁被膜からその直下の導体の一部に達するまでの深さで設けられている。この構成では、塑性変形痕として導体に窪みが形成され、絶縁被膜の端部が導体の窪み部分に入り込んでいるため、導体に対する絶縁被膜の密着性が向上する。これにより、絶縁被膜の剥離を一層生じにくくすることができる。
手段3では、
前記導線は、横断面が矩形状の平角導線であり、
前記コイルエンド部は、前記固定子コアの軸方向外側において周方向の一定方向に延びる前記導線の先端部と、周方向の前記一定方向とは逆向き方向に延びる他の前記導線の先端部とが互いに接続されることで構成されており、
周方向に互いに逆側から延びる前記導線の先端部にそれぞれ前記露出部が形成され、それら各露出部どうしが径方向に互いに接合された状態で溶接されており、
前記導線の前記被覆部において導線先端側の端部には、軸方向及び径方向の各面にそれぞれ前記塑性変形痕が設けられている。
前記導線は、横断面が矩形状の平角導線であり、
前記コイルエンド部は、前記固定子コアの軸方向外側において周方向の一定方向に延びる前記導線の先端部と、周方向の前記一定方向とは逆向き方向に延びる他の前記導線の先端部とが互いに接続されることで構成されており、
周方向に互いに逆側から延びる前記導線の先端部にそれぞれ前記露出部が形成され、それら各露出部どうしが径方向に互いに接合された状態で溶接されており、
前記導線の前記被覆部において導線先端側の端部には、軸方向及び径方向の各面にそれぞれ前記塑性変形痕が設けられている。
周方向に互いに逆側から延びる導線の先端部にそれぞれ露出部が形成され、それら各露出部どうしが互いに接合される構成では、導線どうしの接触等により、絶縁被膜の導線先端側の端部で剥離の懸念が生じる。この点、導線の被覆部において導線先端側の端部には、軸方向及び径方向の各面にそれぞれ塑性変形痕が設けられていることにより、導線どうしの接触等に起因する絶縁被膜の剥離を好適に抑制することができる。
手段4では、前記被覆部の導線先端側の端部において径方向の面に設けられた前記塑性変形痕が、前記露出部どうしが接合された状態での当該露出部の位置決め部となっている。
被覆部の導線先端側の端部に設けられた塑性変形痕が、露出部どうしが接合された状態での露出部の位置決め部となっていることで、露出部どうしの位置合わせを適正に行わせることができる。また、被覆部の導線先端側の端部を露出部の位置合わせに用いる場合には、被覆部の導線先端側の端部に露出部が接触することにより絶縁被膜の剥離が懸念されるが、被覆部の導線先端側の端部に塑性変形痕が設けられていることにより、仮に被覆部の導線先端側の端部に露出部が接触しても絶縁被膜の剥離が抑制できるものとなっている。
手段5では、周方向に互いに逆側から延びる前記導線は、前記固定子コアの軸方向端面に対して斜めとなる角度で軸方向外側に延び、その先端部の前記露出部どうしが接続されており、前記被覆部の導線先端側の端部において軸方向の2面に設けられた前記塑性変形痕のうち、軸方向外側の面の前記塑性変形痕は、軸方向内側の面の前記塑性変形痕よりも前記導線の長手方向において反先端側の位置となっている。
周方向に互いに逆側から延びる導線が、固定子コアの軸方向端面に対して斜めとなる角度で軸方向外側に延び、その先端部の露出部どうしが接続されている構成では、導体の先端に近づくほど、軸方向の外側に位置することとなる。この場合、軸方向の外側になるほど、固定子以外の他の部品などに接触するおそれが高まり、ひいては接触に伴う絶縁被膜の剥離の懸念が高まることとなる。この点、被覆部の導線先端側の端部において軸方向の2面に設けられた塑性変形痕のうち、軸方向外側の面の塑性変形痕が、軸方向内側の面の塑性変形痕よりも導線の長手方向において反先端側の位置となっているようにした。これにより、導線における軸方向外側の面において、被覆部の導線先端側の端部(塑性変形痕)が固定子以外の他の部品などに接触する可能性を下げることができ、ひいては絶縁被膜の剥離を一層適正に抑制することができる。
手段6では、前記露出部には、前記被覆部との境界部分に前記塑性変形痕としての凹部が設けられているとともに、前記凹部の導線先端側に突出部が設けられている。
露出部において被覆部との境界部分には塑性変形痕としての凹部が設けられているとともに、凹部の導線先端側には突出部が設けられていることで、絶縁被膜の端部に他の導線等が接触することが抑制される。これにより、絶縁被膜の剥離を抑制することができる。
以下、本発明に係る回転電機の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態及び変形例相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。この実施形態の回転電機としてのモータは、例えば車両用の電動機や、飛行体用の電動機として用いられる。
本実施形態の回転電機は、永久磁石同期電動機をはじめ、巻線界磁型や誘導機に適用できるものであり、3相巻線を有する回転電機である。回転電機は、図1に示す円筒形状の固定子10や、固定子10の径方向内側に配置される回転子(図示略)など、を備える。回転子は、固定子10に対して、回転軸を中心にして回転可能に配置されている。以下、軸方向とは、固定子10の軸方向、すなわち回転子の回転軸の軸方向のことを示し、径方向とは、固定子10の径方向、すなわち回転子の回転軸の中心を通りかつ回転軸に直交する方向のことを示し、周方向とは、固定子10の周方向、すなわち回転子の回転軸を中心とする周回方向のことを示す。
図1及び図2に示すように、固定子10は、円環状をなす固定子コア11と、その固定子コア11に巻装された固定子巻線12とを備えている。本実施形態の回転電機は、インナロータ型の回転電機であり、固定子10の径方向内側に、回転子が回転可能な状態で配置されるようになっている。固定子巻線12は、相ごとの相巻線としてU相巻線、V相巻線及びW相巻線を有する3相巻線であり、各相の相巻線の一方の端部に動力線バスバ13が接続されるとともに、他方の端部に中性点バスバ14が接続されている。固定子巻線12において、軸方向に固定子コア11に重複する範囲がスロット内コイル部CSであり、軸方向両側で固定子コア11よりも軸方向外側となる部分がコイルエンド部CE1,CE2である。
図3に示すように、固定子コア11は、円環状のバックヨーク21と、バックヨーク21から径方向内側へ突出し周方向に所定距離を隔てて配列された複数のティース22とを有し、隣り合うティース22の間にスロット23が形成されている。スロット23は、径方向を長手として延びる開口形状をなし、固定子コア11において周方向に等間隔に設けられている。そして、そのスロット23に巻装された状態で固定子巻線12が設けられている。固定子コア11は、例えば磁性体である電磁鋼板からなるコアシートが軸方向に積層されたコアシート積層体として構成されている。
固定子巻線12は、3相巻線がY結線(星形結線)により接続されることにより構成されている。固定子巻線12は、不図示のインバータを介して電源から電力(交流電力)が供給されることで磁束を発生する。固定子巻線12は、略U字状の分割導体としての複数の導体セグメント30を用いて構成されている。以下、固定子巻線12のセグメント構造について詳しく説明する。
図4は、導体セグメント30と固定子コア11の一部とを示す斜視図である。図4に示すように、導体セグメント30は、略U字状をなし、直線状をなす一対の直線部31と、一対の直線部31どうしを繋ぐように屈曲形成されたターン部32とを有している。一対の直線部31は、固定子コア11の軸方向の厚さよりも長い長さを有している。導体セグメント30は、横断面が矩形状をなす導体(対向する一対の平面部を有する導体)を絶縁被膜により被覆した平角導線を用いて構成されており、各直線部31の先端部は、絶縁被膜が切除されることで導体が露出した露出部33となっている。
固定子コア11のスロット23には、複数の導体セグメント30が径方向に一列に並べられた状態で挿入される。本実施形態では、スロット23内に、導体セグメント30の各直線部31を6層に積層した状態で収容する構成としている。導体セグメント30において、一対の直線部31は所定のコイルピッチを隔てた2つのスロット23にそれぞれ収容される。直線部31のうち、スロット23内に収容された部分が、固定子巻線12のうちスロット内コイル部CSに相当する。なお、スロット23内には、固定子コア11と固定子巻線12(導体セグメント30)との間を電気絶縁する絶縁シート24が設けられている。絶縁シート24は、スロット23内に挿入される複数の導体セグメント30をまとめて囲むように折り曲げられ、スロット23内において固定子コア11の内周面(内壁面)と導体セグメント30との間に挟まれた状態で設けられている。
導体セグメント30の一対の直線部31は、2つのスロット23において径方向位置を1つずらしてそれぞれ収容されている。例えば一方の直線部31が径方向奥側(バックヨーク側)からn番目の位置に収容される場合、他方の直線部31は径方向奥側からn+1番目の位置に収容されるようになっている。
固定子コア11のスロット23に対する各導体セグメント30の挿入に際し、各導体セグメント30の直線部31は、固定子コア11の軸方向両端の第1端側及び第2端側のうち第1端側から挿入され、その直線部31の先端部が第2端側から突出する。この場合、固定子コア11の第1端側では、導体セグメント30のターン部32により一方のコイルエンド部CE1が形成される。また、固定子コア11の第2端側では、各直線部31の反ターン部側が周方向に屈曲され、かつ互いに異なる導体セグメント30の直線部31どうしが接続されることにより、他方のコイルエンド部CE2が形成される。各コイルエンド部CE1,CE2の概要は図2に示すとおりである。
次に、コイルエンド部CE2における導体セグメント30の接続についてより詳しく説明する。ここではまず、導体セグメント30どうしの接続について説明する。
図5は、スロット23内に収容された状態の一部の導体セグメント30を示す図である。なお、図5では、固定子コア11を仮想線で示している。導体セグメント30において、一対の直線部31の反ターン部側は、固定子コア11の軸方向端面(図の上端面)から突出し、コア端面に対して所定の角度をもって斜行するように周方向へ屈曲されている。そして、異なる導体セグメント30の先端部の露出部33どうしがレーザ溶接により接合されることで、複数の導体セグメント30が接続されるようになっている。
コイルエンド部CE2では、固定子コア11の軸方向外側において周方向の一定方向に延びる導体セグメント30の周方向先端部と、周方向の一定方向とは逆向き方向に延びる他の導体セグメント30の周方向先端部とが互いに接合されている。これにより、固定子巻線12は、コイルエンド部CE2において、導体セグメント30の直線部31が軸方向に対して傾斜する向きで延び、かつ所定の頂部位置で折り返された状態となっている。導体セグメント30は、各直線部31の反ターン部側が周方向でターン部32と同じ側に屈曲されるものと、各直線部31の反ターン部側が周方向にターン部32とは逆側に屈曲されるものとを含む。
次いで、導体セグメント30の先端部の構成を詳しく説明する。
図6(a),(b)は、導体セグメント30どうしの接続に関する基本構成を示す図である。図6(a)に示すように、導体セグメント30は、線状の導体34と、その導体34を被覆する絶縁被膜35とを有しており、その先端部において導体34が露出した部分が露出部33となっている。また、導体セグメント30において、露出部33以外の部位が、導体34が絶縁被膜35に被覆されている被覆部36となっている。露出部33において、軸方向に外側となる軸方向外側面33a、すなわち図の上面は、軸方向外側に凸となる円弧面となっている。また、露出部33において軸方向外側面33a以外の各面、すなわち軸方向内側面、径方向外側面、径方向内側面の3面は、いずれも平坦面となっている。
そして、図6(b)に示すように、各導体セグメント30の露出部33どうしが径方向に重ねられることで互いに接合され、その状態でレーザ溶接により接続されている。この場合、露出部33どうしは、各々の軸方向外側面33aが略面一となる状態で互いに接合されており、その軸方向外側面33a(図の上面)をレーザ照射面としてレーザ溶接が行われる。なお、露出部33どうしが対向する部分は、軸方向よりも周方向が長い横長状になっている。レーザ溶接の際には、円弧状の軸方向外側面33aに沿って、周方向の所定範囲でレーザの走査が行われる。
ところで、図6に示す構成では、被覆部36において露出部33との境界部分で意図しない絶縁被膜35の剥がれが生じることが懸念される。例えば、導体セグメント30の先端部において露出部33の形成のために絶縁被膜35を剥離した際に、絶縁被膜35にバリ状の余剰部分が残ると、その余剰部分の引っかかりにより意図しない絶縁被膜35の剥がれが生じることが考えられる。また、被覆部36の導線先端側の端部に別の導体セグメント30の露出部33が接触することにより、絶縁被膜35の剥離が生じることが懸念される。なお、図6では、絶縁被膜35の露出部33側の端部に面取りが施されており、その面取りによっても絶縁被膜35の剥がれ抑制が期待できるが、剥がれ抑制の効果をより確実に得られる構成が望まれる。
そこで本実施形態では、導体セグメント30の被覆部36において露出部33側の端部に、被覆部36の絶縁被膜35からその直下の導体34の一部に達するまでの深さで塑性変形痕37を設け、これにより意図しない絶縁被膜35の剥がれを抑制するものとしている。以下に、その詳細を説明する。
図7(a)~(c)は、本実施形態における導体セグメント30の先端部の構成を示す図であり、その構成は図6(a),(b)の構成の一部を改良したものとなっている。図7(a)は、導体セグメント30の先端部を径方向から見た図(図2で言えば正面側から見た図)であり、図7(b)は、導体セグメント30の先端部を軸方向外側から見た図(図2で言えば上側から見た図)であり、図7(c)は、導体セグメント30の先端部どうしを接続した状態を示す図である。
図7(a),(b)に示すように、各導体セグメント30は、既述のとおり露出部33と被覆部36とを有しており、それら露出部33と被覆部36との境界部分に、凹状をなす塑性変形痕37が設けられている。塑性変形痕37は、導体セグメント30を外側から押圧することにより形成された圧痕であり、露出部33と被覆部36との境界位置を挟んで両側となる範囲で形成されている。
塑性変形痕37では、被覆部36側において導体34と絶縁被膜35とがまとめて押し潰され、露出部33側において導体34が押し潰されている。この場合、被覆部36側では、絶縁被膜35からその直下の導体34の一部に達するまでの深さで塑性変形痕37が形成されているため、絶縁被膜35の端部が導体34に密着し、意図しない絶縁被膜35の剥がれが生じにくくなっている。また、絶縁被膜35の端部が導体34の窪み部分(凹部)に入り込んでいるため、やはり意図しない絶縁被膜35の剥がれが生じにくくなっている。
塑性変形痕37は、導体セグメント30の横断面の全周にわたって設けられている。ここで、導体セグメント30は、外周面として軸方向の2面と径方向の2面とを有しており、軸方向の2面に設けられた塑性変形痕37を「塑性変形痕37A」、径方向の2面に設けられた塑性変形痕37を「塑性変形痕37B」としている。これら塑性変形痕37A,37Bを対比すると、それらは互いに異なる形態で設けられている。ただし、いずれの面においても、絶縁被膜35からその直下の導体34の一部に達するまでの深さで塑性変形痕37が設けられていることは同様である。導体セグメント30において、軸方向の2面は、レーザ照射が行われるレーザ照射側とその反対側である反照射側との各面であり、径方向の2面は、異なる導体セグメント30の露出部33どうしが接合される接合面を含む面である。
詳しくは、図7(b)に示すように、導体セグメント30における軸方向の2面には、導体セグメント30の長手方向に直交する方向に直線状に延びるようにして塑性変形痕37Aが設けられている。また、軸方向の2面に設けられた各塑性変形痕37Aのうち、軸方向外側の面(図の上面)の塑性変形痕37Aは、導体セグメント30の長手方向(図7(a)の左右方向)において軸方向内側の面(図の下面)の塑性変形痕37Aよりも反先端側に位置するものとなっている。
これに対して、図7(a)に示すように、導体セグメント30における径方向の2面には、軸方向の各面における塑性変形痕37Aの間に、導体セグメント30の先端とは逆側に凸となる向きで湾曲するようにして塑性変形痕37Bが設けられている。導体セグメント30には、周囲4面において互いに連続する状態で塑性変形痕37A,37Bが設けられている。
図7(c)に示すように、2つの導体セグメント30の露出部33どうしが径方向に重ねられた状態では、導体セグメント30の長手方向において、一方の導体セグメント30の露出部33の先端と、他方の導体セグメント30の塑性変形痕37Bとが対向する。この構成では、2つの導体セグメント30の露出部33どうしを重ねた状態において、導体セグメント30どうしの周方向の位置決めが可能となっている。本実施形態では特に、塑性変形痕37Bが導体セグメント30の先端とは逆側に凸となる湾曲形状となっているため、塑性変形痕37Bが露出部33の位置決め部として好適に機能する。この場合、塑性変形痕37Bが、導体セグメント30の露出部33の形状と同一の形状となっているとよい。
また、図7(c)に示す状態では、周方向に互いに逆側から延びる導体セグメント30が、固定子コア11の軸方向端面に対して斜めとなる角度で軸方向外側に延び、その先端部の露出部33どうしが接続されるものとなっている。この場合、導体セグメント30の先端側ほど軸方向の外側(図の上側)の位置となるため、固定子コア11への固定子巻線12の組み付け後において、被覆部36の導線先端側の端部が固定子10以外の他の部品などに接触するおそれが高まることが考えられる。この点について、本実施形態では、上記のとおり軸方向外側の面の塑性変形痕37Aが、軸方向内側の面の塑性変形痕37Aよりも導体セグメント30の反先端側の位置となっているため、導体セグメント30における軸方向外側の面において、被覆部36の導線先端側の端部(塑性変形痕37A)が固定子10以外の他の部品などに接触する可能性が低くなっている。
次に、図8を用いて導体セグメント30の先端部の形成工程について説明する。導体セグメント30の先端部の形成工程は、塑性変形痕37を形成する工程と、露出部33を形成する工程とを有する。図8(a)~(c)は、塑性変形痕37を設ける工程を示しており、図8(d)は、露出部33を成形する工程を示している。
塑性変形痕37を形成する工程について説明する。図8(a)に示すように、塑性変形痕37を形成する前の導体セグメント30の先端部(図の左側の端部)は、絶縁被膜35で被覆された状態となっている。そして、絶縁被膜35の上から所定形状の刃具を押し当てることにより、塑性変形痕37を形成する。ここでは、導体セグメント30の全周の塑性変形痕37として、軸方向の2面に塑性変形痕37Aを形成し、その後に、径方向の2面に塑性変形痕37Bを形成することとしている。
具体的には、図8(a)に示すように、軸方向の2面に刃具T1,T2をそれぞれ押し当てる。このとき、刃具T1,T2は、絶縁被膜35を突き抜けて導体34に食い込むようにして押し当てられる。これにより、図8(b)に示すように、軸方向の2面において、絶縁被膜35からその直下の導体34の一部に達するまでの深さで塑性変形痕37Aが形成される。
その後、図8(c)に示すように、径方向の2面に塑性変形痕37Bが形成される。このとき、径方向の2面に押し当てられる刃具については不図示とするが、その刃具は、湾曲形状の刃先を有しており、その刃具が、絶縁被膜35を突き抜けて導体34に食い込むようにして押し当てられる。これにより、径方向の2面において、絶縁被膜35からその直下の導体34の一部に達するまでの深さで塑性変形痕37Bが形成される。以上により、導体セグメント30の先端部における横断面の全周に塑性変形痕37が形成される。
次に、塑性変形痕37の形成後において露出部33を形成する工程について説明する。この工程には、導体セグメント30の先端部を打ち抜きにより所定の形状にする工程と、絶縁被膜35を剥離させる工程とが含まれる。図8(d)では、導体セグメント30の先端部においてハッチングを付して示す部分が打ち抜きにより除去される部分を示しており、その打ち抜きにより、軸方向の2面が所定形状に形成される。このとき、図の上面が凸状の円弧面に形成されるとともに、軸方向の2面において塑性変形痕37Aよりも先端側の絶縁被膜35が除去される。
また、図8(d)において打ち抜き成形後のセグメント先端部には、径方向の2面に絶縁被膜35が残っている(ドットを付した部分)。この部分については、レーザ剥離により絶縁被膜35が除去される。つまり、径方向の2面において塑性変形痕37Bよりも先端側の絶縁被膜35がレーザ剥離により除去される。こうして、導体セグメント30の先端部の露出部33が形成される。
上記実施形態によれば、以下の優れた効果を有する。
導体セグメント30の被覆部36において導線先端側の端部に、絶縁被膜35の少なくとも一部が押し潰された状態で塑性変形痕37が設けられている。この構成では、絶縁被膜35の端部が導体34に密着しており、意図しない絶縁被膜35の剥離が生じにくくなっている。これにより、被覆部36における絶縁被膜35の剥離の発生を抑制することができ、固定子巻線12の絶縁信頼性を確保することができる。
また特に、塑性変形痕37が、被覆部36の絶縁被膜35からその直下の導体34の一部に達するまでの深さで設けられている構成とした。そのため、より絶縁被膜35の剥離を生じにくくすることができる。
周方向に互いに逆側から延びる導体セグメント30の先端部にそれぞれ露出部33が形成され、それら各露出部33どうしが互いに接合される構成では、導体セグメント30どうしの接触等により、絶縁被膜35の導線先端側の端部で剥離の懸念が生じる。この点、導体セグメント30の被覆部36において導線先端側の端部には、軸方向及び径方向の各面にそれぞれ塑性変形痕37が設けられていることにより、導体セグメント30どうしの接触等に起因する絶縁被膜35の剥離を好適に抑制することができる。
被覆部36の導線先端側の端部に設けられた塑性変形痕37が、露出部33どうしが接合された状態での露出部33の位置決め部となっていることで、露出部33どうしの位置合わせを適正に行わせることができる。また、被覆部36の導線先端側の端部を露出部33の位置合わせに用いる場合には、被覆部36の導線先端側の端部に露出部33が接触することにより絶縁被膜35の剥離が懸念されるが、被覆部36の導線先端側の端部に塑性変形痕37が設けられていることにより、仮に被覆部36の導線先端側の端部に露出部33が接触しても絶縁被膜35の剥離が抑制できるものとなっている。
また、被覆部36の導線先端側の端部に設けられた塑性変形痕37(37B)と、露出部33の先端形状とを同一にしたため、適正な位置合わせを行うことができる。また、塑性変形痕37に対して露出部33が局所的に当たることを抑制でき、絶縁被膜の剥離を抑制する上でも有利な構成となっている。
被覆部36の導線先端側の端部において軸方向の2面に設けられた塑性変形痕37Aのうち、軸方向外側の面の塑性変形痕37Aが、軸方向内側の面の塑性変形痕37Aよりも導体セグメント30の長手方向において反先端側の位置となっているようにした。これにより、導体セグメント30における軸方向外側の面において、被覆部36の導線先端側の端部(塑性変形痕37)が固定子10以外の他の部品などに接触する可能性を下げることができ、ひいては絶縁被膜35の剥離を一層適正に抑制することができる。
上記実施形態において、その構成の一部を変更してもよい。以下、上記実施形態の変形例について説明する。
・図9(a)に示すように、露出部33において、被覆部36との境界部分に塑性変形痕37としての凹部41が設けられている構成において、凹部41の導線先端側に突出部42が設けられていてもよい。図9(b)は、図9(a)における9b-9b線断面図である。この場合、突出部42により、絶縁被膜35の端部に他の導体セグメント30等が接触することが抑制される。これにより、絶縁被膜35の剥離を抑制することができる。
なお、突出部42は、塑性変形痕37Bを形成する工程において、塑性変形痕37Bの形成に引き続いて形成されるとよい。つまり、塑性変形痕37Bの形成用の刃具を導体セグメント30に押し当てて塑性変形痕37Aを形成した後に、刃具を押し当て状態のまま導線先端側にずらすことにより露出部33に盛り上がり部を形成し、その盛り上がり部を突出部42とする。
・上記実施形態では、被覆部36と露出部33の境界部分において被覆部36の側と露出部33の側とのそれぞれに塑性変形痕37を設ける構成としたが、これを変更してもよい。例えば、被覆部36と露出部33の境界部分において被覆部36の側にのみ塑性変形痕37を設ける構成、すなわち露出部33の側には塑性変形痕37を設けない構成としてもよい。
・上記実施形態では、導体セグメント30の被覆部36において露出部33側の端部に、被覆部36の絶縁被膜35からその直下の導体34の一部に達するまでの深さで塑性変形痕37を設ける構成としたが、これを変更してもよい。例えば、図10に示すように、被覆部36において露出部33側の端部の絶縁被膜35のみに塑性変形痕37を設けた構成、すなわち被覆部36において露出部33側の端部の絶縁被膜35の直下の導体34には塑性変形痕37を設けない構成としてもよい。
・上記実施形態では、被覆部36における横断面の全周にわたって塑性変形痕37を設ける構成としたが、これを変更してもよい。例えば、被覆部36における横断面の各辺のうちの1辺、2辺、又は3辺に塑性変形痕37を設ける構成としてもよい。すなわち、塑性変形痕37は端部の横断面の1辺以上に設けられている構成であればよい。
また、塑性変形痕37が端部の横断面の1辺以上に設けられている構成において、塑性変形痕37が設けられている辺には、その辺全体、すなわち辺の一端側から他端側まで範囲で塑性変形痕37が設けられている構成であるとよい。
・上記実施形態では、固定子巻線12において各導体セグメント30の周方向に延びる先端部に露出部33を設け、その周方向先端部の露出部33どうしを溶接により接続する構成としたが、これを変更してもよい。各導体セグメント30の先端部を軸方向外側に折り曲げ、その軸方向に延びる部分に設けられた露出部どうしを溶接により接続する構成としもよい。
・固定子巻線12は、セグメント構造でなくてもよい。この場合、固定子巻線12の相ごとに設けられる各相巻線において複数の導線が溶接により接続される構成となっており、溶接部を含む露出部以外の被覆部における露出部側の端部に、被覆部の絶縁被膜及びその直下の導体に塑性変形痕が設けてられていればよい。また、横断面が丸形状をなす導体を絶縁被膜より被覆した丸線導体を用いる構成であってもよい。
10…固定子、11…固定子コア、12…固定子巻線、30…導体セグメント、33…露出部、34…導体、35…絶縁被膜、36…被覆部、37…塑性変形痕、CE2…コイルエンド部。
Claims (6)
- 固定子コア(11)と、前記固定子コアに設けられた固定子巻線(12)と、を備え、
前記固定子巻線は、導体(34)が絶縁被膜(35)で被覆された複数の導線(30)からなり、
前記導線は、その先端部において前記導体が露出した露出部(33)と、前記導体が前記絶縁被膜で被覆されたままとなる被覆部(36)とを有し、
前記固定子巻線のコイルエンド部(CE2)において、異なる前記導線の前記露出部どうしが接続されており、
前記導線の前記被覆部において導線先端側の端部に、前記絶縁被膜の少なくとも一部が押し潰された状態で塑性変形痕(37)が設けられている、固定子。 - 前記塑性変形痕は、前記被覆部の前記絶縁被膜からその直下の前記導体の一部に達するまでの深さで設けられている、請求項1に記載の固定子。
- 前記導線は、横断面が矩形状の平角導線であり、
前記コイルエンド部は、前記固定子コアの軸方向外側において周方向の一定方向に延びる前記導線の先端部と、周方向の前記一定方向とは逆向き方向に延びる他の前記導線の先端部とが互いに接続されることで構成されており、
周方向に互いに逆側から延びる前記導線の先端部にそれぞれ前記露出部が形成され、それら各露出部どうしが径方向に互いに接合された状態で溶接されており、
前記導線の前記被覆部において導線先端側の端部には、軸方向及び径方向の各面にそれぞれ前記塑性変形痕が設けられている、請求項1又は2に記載の固定子。 - 前記被覆部の導線先端側の端部において径方向の面に設けられた前記塑性変形痕(37B)が、前記露出部どうしが接合された状態での当該露出部の位置決め部となっている、請求項3に記載の固定子。
- 周方向に互いに逆側から延びる前記導線は、前記固定子コアの軸方向端面に対して斜めとなる角度で軸方向外側に延び、その先端部の前記露出部どうしが接続されており、
前記被覆部の導線先端側の端部において軸方向の2面に設けられた前記塑性変形痕(37A)のうち、軸方向外側の面の前記塑性変形痕は、軸方向内側の面の前記塑性変形痕よりも前記導線の長手方向において反先端側の位置となっている、請求項3又は4に記載の固定子。 - 前記露出部には、前記被覆部との境界部分に前記塑性変形痕としての凹部(41)が設けられているとともに、前記凹部の導線先端側に突出部(42)が設けられている、請求項1~5のいずれか1項に記載の固定子。
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