JP2023001047A - ポリエステル組成物の製造方法 - Google Patents

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【課題】熱履歴が少なく色調に優れるポリエステル組成物の効率的な製造方法を提供する。【解決手段】テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸およびエチレングリコールを重縮合したランダム共重合ポリエステルを主成分とするポリエステル組成物の製造方法であって、工程1.エステル化反応槽[1]内にビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートおよびその低重合体を230~250℃の範囲で溶融保持させ、そこへ、シクロヘキサンジカルボン酸とエチレングリコールの混合物を逐次添加または連続添加して重縮合する工程。工程2.シクロヘキサンジカルボン酸とエチレングリコール混合物添加終了後20分以内に反応槽[1]から、低重合体の95~100%を重縮合反応槽[2]へ移送する工程。工程3.反応槽[2]において、減圧下で重縮合をさらに進行させポリエチレンテレフタレート―シクロヘキサンジカルボキシレートランダム共重合組成物を製造する工程。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリエステル組成物の製造方法に関するものである。
ポリオレフィン系繊維の一種であるポリエチレン繊維やポリプロピレン繊維は、軽量性や耐薬品性に優れるものの、極性官能基を有さないため染色することが困難であるという欠点を有している。そのため、衣料用途には適さず、現状ではタイルカーペット、家庭用敷物、自動車用マットなどのインテリア用途や、ロープ、養生ネット、ろ過布、細幅テープ、組紐、椅子張りなどの資材用途などの限られた用途において利用されている。
このような状況の中、ポリオレフィン系繊維の簡便な染色方法として、低染色性であるポリオレフィンに易染色性ポリマーを複合化する技術が提案されており、特に、複合化する易染色性ポリマーとしてテレフタル酸および/またはそのエステル形成性誘導体、およびシクロヘキサンジカルボン酸(以下、CHDAと略すことがある)および/またはそのエステル形成性誘導体からなるジカルボン酸成分と、エチレングリコール(以下、EGと略すことがある)とを重縮合させたランダム共重合ポリエステル組成物(以下、CHDA-PETと略すことがある)の採用が好ましいことが見出されている。(特許文献1、2)
さらに、このCHDA-PETの発色性向上検討を重ねた結果、CHDA-PETの製造方法として、CHDAとEGの加熱混合溶液にテレフタル酸とEGの混合物を逐次添加または連続添加しながら、混合物全体を250℃まで昇温してエステル化反応を進行させ、その後所望の分子量まで減圧下で重縮合させる方法を採用することで、連続製造時の後期ロットにおける黄色味の増加を抑制でき、ポリオレフィンと複合化した際に優れた発色性を示すCHDA-PETを得ることに成功している(特許文献3)。
国際公開WO2017/154665号パンフレット 国際公開WO2020/045156号パンフレット 特開2020-55949号公報 特開平7-309934号公報
特許文献2に記載されているCHDA-PETの製造法は、あらかじめエステル化反応槽内で調製・溶融保持されたテレフタル酸およびCHDAとEGのランダムな低重合体(以下、BHTCと略すことがある)に、テレフタル酸、CHDA、EGを加えエステル化反応を進行させ、得られたBHTCの一部を重縮合反応槽に移送して減圧下で重縮合し所望のポリマーを得るとともに、エステル化反応槽内に残存させたBHTCに再びテレフタル酸、CHDA、EGを加え連続的にCHDA-PETを得る方法である。テレフタル酸とEGのエステル化反応は独立系での反応速度に劣るが、あらかじめ調製した低重合体を共存させることで高効率に反応を進行させることができることから上記手法を採用している。しかしながら、この製造法では製造したBHTCの約半量を重縮合させ、約半量はロットを跨いでエステル化反応槽に常駐させ熱履歴がかかり続けるため、特に連続生産時の後期ロットにおいてBHTC中のCHDA残基の熱劣化・着色が生じやすく、後期ロットにおけるCHDA-PETの色調は満足のいくもの(L値:60以上、b値:3未満)ではなかった。
そこでさらに検討がなされた結果、テレフタル酸とEGのエステル化反応が、エステル化反応未進行のCHDA・EG混合加熱溶液中でも効率よく進行し240分程度で反応が終了することを見出し、特許文献3に記載のとおり、エステル化反応槽にCHDAとEGを加えて加熱混合溶液を製造し、そこにテレフタル酸とEGのみからなる混合物を逐次添加または連続添加しながら、混合物全体を昇温してエステル化反応を進行させ、得られたBHTCの全量を重縮合反応槽に移送して所望の分子量まで減圧下で重縮合させる方法が確立された。この製造法ではロット毎にエステル化反応槽内にCHDAとEGを新たに添加して加熱混合溶液を調製するため、ロットを跨いてBHTCの半量をエステル化反応槽に貯留させることなく連続的にCHDA-PETを製造でき、CHDA残基の熱劣化・着色を低減し、後期ロットにおける黄味の抑制(b値:3未満)には成功した。しかしながら、エステル化反応槽に反応初期からCHDAの全量を添加して室温から50分以上かけて加熱処理し、さらに250分以上かけてテレフタル酸とEGのエステル化反応を進行させる必要があるため、CHDA残基の熱劣化・着色抑制は十分ではなく、明度の改善(後期ロットのL値:60以上)には至らないうえ、1ロットの製造開始から終了までのサイクル時間が長時間化するという問題が生じた。
また、特許文献4にはビス-2-ヒドロキシエチルシクロヘキサンジカルボキシレート及びその低重合体とビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレート及びその低重合体を個別に調製し、混合後速やかに重縮合反応に供することでCHDA-PETを製造する方法が開示されており、この方法を採用することでCHDAの熱履歴を最小限にすることが可能と考えられた。しかしながら、製造されたCHDA-PETは完全なランダム共重合体とはならず、ブロック共重合体様の性質を示すことから高融点となり、ポリオレフィンとの複合化が困難なだけでなく、CHDAとEGを直接短時間で反応させるためにエステル化触媒を添加する必要が生じ、得られる組成物の色調は満足のいく水準ではなかった。
本発明者らは、上記問題の解決に向けて鋭意検討を重ねた結果、CHDAとEGのみからなるスラリー状混合物を、溶融保持したテレフタル酸残基とEG残基で構成される低重合体(以下、BHTと略すことがある)へ逐次添加または連続添加すると、エステル化触媒を使用せずとも急速にCHDAとEGのエステル化反応が進行することを新たに見出し、CHDA成分のエステル化反応時間、すなわち高温滞留時間を180分以内に短縮することに成功した。
この知見に基づき、CHDA-PETを下記の方法により製造することで、CHDA成分の受ける熱履歴が極めて少なく、連続生産における後期ロットにおいても色調が良好なCHDA-PETをサイクル時間270分と高効率に得ることができる。なお、下記製造法ではBHTへの熱履歴が一般的なポリエチレンテレフタレートの製造法よりも長時間となるが、BHTCと異なり、テレフタル酸残基とEG残基のみで構成され耐熱性に優れるBHTでは色調悪化、特にL値の低下は非常に軽微であり問題解決の障害とはなりえない。
すなわち、共重合ポリエステル組成物の製造方法として、
テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸およびエチレングリコールを重縮合したランダム共重合ポリエステルを主成分とするポリエステル組成物の製造方法であって、以下に記載する3つの工程を経ることを特徴とするポリエステル組成物の製造方法。によって解決される。
工程1.エステル化反応槽[1]内にビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートおよびその低重合体を230~250℃の範囲で溶融保持させ、そこへ、シクロヘキサンジカルボン酸とエチレングリコールの混合物を反応槽内が230~250℃の範囲を外れないように100~180分間かけて逐次添加または連続添加して重縮合させることによってビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート、ビス(ヒドロキシエチル)シクロヘキサンジカルボキシレート、およびそれらの低重合体を製造する工程
工程2.シクロヘキサンジカルボン酸とエチレングリコール混合物の添加終了後20分以内にエステル化反応槽[1]から、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート、ビス(ヒドロキシエチル)シクロヘキサンジカルボキシレート、およびそれらの低重合体の95~100%を重縮合反応槽[2]へ移送する工程。
工程3.重縮合反応槽[2]において、減圧下で重縮合をさらに進行させポリエチレンテレフタレート―シクロヘキサンジカルボキシレートランダム共重合組成物を製造する工程。
本発明の製造方法にて連続的かつ効率的に製造したポリエステル組成物は連続生産時の後期ロットにおいても優れた色調(L値:60以上、b値:3未満)を示し、このポリエステル組成物をポリオレフィンにブレンドすることで、長期紡糸性および色調に優れた可染性ポリオレフィン組成物を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の製造方法にて得られるポリエステル組成物は、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸およびCHDA、ジオール成分としてEGを原料とする共重合ポリエステルを主成分とするポリエステル組成物である。
本発明の製造方法において得られるポリエステル組成物は、長期紡糸性および染色性の観点から、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸が40~90モル%、CHDAが10~60モル%の割合でランダム共重合されていることが好ましく、染色性がより優れる点から、CHDAが30~40モル%であることがより好ましい。本発明の効果を損なわない範囲で、その他のジカルボン酸由来の成分が含まれていてもよい。
本発明において、CHDAとしては、例えば1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられ、これらのいずれか1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸は、耐熱性および機械的特性の観点より好適に採用できる。
本発明において、ジオール成分としてはEGが用いられるが、本発明の効果を損なわない範囲で、その他のジオールが含まれていてもよい。
本発明のポリエステル組成物のプロセスは以下のとおりである。
まず、あらかじめ調製されたテレフタル酸残基とEG残基のみからなるBHTをエステル化反応槽[1]に投入し、槽内を230~250℃の範囲に保ちBHTを溶融保持させることが必須である。溶融保持温度が230℃未満では、後のプロセスでCHDAを効率よくエステル化反応させることが難しく、250℃より高いとCHDA残基の熱劣化・着色の原因となる。
投入するBHTはあらかじめ異なるエステル化反応槽[3]で製造したものを取り出して冷却固化させたのちエステル化反応槽[1]へ固体添加してもよく、エステル化反応槽[3]からエステル化反応槽[1]へ溶融状態のまま移送してもよいが、CHDA-PETを効率よく連続的に製造する観点から、エステル化反応槽[3]においてBHTを連続的に製造しながら、適宜エステル化反応槽[1]へ溶融状態のまま連続的に移送する方法を採用することが好ましい。
あらかじめ異なるエステル化反応槽[3]でBHTを製造する方法は特に限定されないが、テレフタル酸ジメチルとEGのエステル交換反応、またはテレフタル酸とEGのエルテル化反応により得ることが一般的である。エステル交換反応またはエステル化反応は、BHTの着色を防ぐ点から240分以内に完了させることが好ましい。また、エステル交換反応を実施する際は、リチウム化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、カルシウム化合物、マグネシウム化合物、亜鉛化合物等の一般的なエステル交換反応触媒を併用することができる。特に反応性に優れ、組成物内で異物化しない点から各種金属化合物の酢酸塩を用いることが好ましい。
投入するBHTのテレフタル酸残基とEG残基のモル比は1.05~1.4であることが好ましい。モル比1.05未満ではエステル化反応を効率的に実施することが難しく、その後の重縮合反応性悪化原因となる。また、モル比が1.4より高いとジエチレングリコールが副生しやすくなり、得られるポリエステル組成物の色調b値が悪化する。また、モル比は1.4よりも低いほど色調b値を低下させられる点から、1.05~1.25がより好ましい。モル比が高いとBHT容量が多くなりCHDA・EG混合スラリーを供給した際の槽内温度低下を抑制でき、効率的にCHDA・EG混合スラリーを供給できる点から、モル比は1.15~1.4がより好ましく、色調b値悪化抑制と両立する点から1.15~1.25が最も好ましい。なお、モル比は以下式(1)にて表される。
モル比=(ジオール成分のモル量)/(ジカルボン酸成分のモル量)(1)
次に、BHTを溶融保持したエステル化反応槽[1]にCHDAとEGの混合物を、反応槽内が230~250℃の範囲を外れないように100~180分間かけて逐次添加または連続添加して重縮合させランダム共重合体としたBHTCを得ることが必須である。反応槽内が230℃未満では、CHDAをエステル化触媒なしで効率よくエステル化反応させることが難しく、250℃より高いとCHDA残基の熱劣化・着色の原因となる。CHDAとEGの混合物にエステル化触媒を添加することは着色の原因となることから好ましくない。逐次添加または連続添加速度が速く100分未満で添加完了した場合は、系内の温度を230℃~250℃で保持することが難しく、またエステル化反応を効率よく進めることができない。逐次添加または連続添加速度が遅く添加完了に180分より長時間を要するとCHDA残基の熱劣化・着色の原因となる。
添加するCHDAとEGのモル比は1.05~1.4であることが好ましい。モル比1.05未満であっても反応を進行させることは可能だが、CHDAとEGを混合した際の性状が強い粘調を示すスラリーとなることから計量・押出性が悪く、スムーズな逐次添加または連続添加が難しい。また、モル比が1.4より高いとジエチレングリコールが副生しやすくなり、さらに添加時間も長時間化することから得られるポリエステル組成物の色調b値が悪化する。色調b値の悪化を抑制できる点から、CHDAとEGのモル比は1.05~1.25がより好ましい。
ここまでを工程1とし、次に工程2に進む。
次に、CHDAとEGの混合物の逐次添加または連続添加が完了した時点から20分以内にBHTCを溶融状態にて重縮合反応槽[2]へ移送することが必須である。CHDAは添加完了時にはエステル化反応がほぼ完了しており、その後溶融滞留時間に従ってCHDA残基の熱劣化・着色が進行するため、得られる組成物のL値を60以上とするためには移送完了までの溶融滞留時間を20分以内としなければならない。さらに、発色性を向上させる点から移送完了までの溶融滞留時間は10分以内であることが好ましい。
さらに、BHTCをエステル化反応槽[1]から重縮合反応槽[2]へ移送するに際して、エステル化反応槽[1]内のBHTCの95~100重量%を移送することが必須である。移送率が95%未満となると、残存BHTCが連続製造時に熱劣化・着色し後期ロットの色調が悪化する。
工程1~工程2のエステル化反応プロセスは大気圧下で実施することが好ましい。反応系全体を大気圧下で行うことでEGを還流させつつ反応副生物である水を速やかに系外に留出させることができる。
本発明においては、工程3として、BHTCを重縮合反応槽[2]へ移送後、減圧下で重縮合をさらに進行させポリエチレンテレフタレート―シクロヘキサンジカルボキシレートランダム共重合組成物(CHDA-PET)を製造する工程が必須である。減圧下で所望の固有粘度(IV)まで重縮合を進行させることによって、得られるポリエステル組成物とポリオレフィンとの複合化が容易となる。
重縮合反応槽[2]における反応では、最終反応温度を285~290℃、圧力は減圧度を高めるほど重合時間が短くなり好ましい。
重縮合の際には触媒を添加する必要があり、リチウム化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物、チタン化合物、アルミニウム化合物、スズ化合物、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物などが用いられる。各種金属化合物としては、酢酸塩またはその水和物、酸化物等が挙げられる。特に良好な重縮合反応性をもたらす点から、三酸化アンチモンや二酸化ゲルマニウム、テトラ-n-ブチルチタネートを主として用い、補助的に酢酸リチウム、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウムを用いることが好ましい。
本発明の製造方法において得られるポリエステル組成物は、減圧下130℃で12時間結晶化処理させた際の、示差走査熱量測定によって得られる融点が175℃以下であることが好ましい。融点が175℃を超えて観測される場合は、得られたポリエステル組成物がランダム共重合体となっておらず、ブロック体として存在するポリエチレンテレフタレート鎖に起因した強固な結晶構造が発現していることを意味する。このような融点を示す場合、ポリオレフィンと複合化するにあたり、混練加工温度を200℃以上に設定する必要が生じ、ポリオレフィンが分解する観点から不都合である。よりポリオレフィンとの複合化が容易であることから融点は170℃以下がより好ましい。
本発明の製造方法において得られるポリエステル組成物は、減圧下130℃で12時間結晶化処理させた際の、示差走査熱量測定によって得られる結晶融解熱量(ΔHm)が20~30J/gであることが好ましい。結晶融解熱量が20J/g未満では、高温乾燥時にペレット同士が融着し取り扱い性が極めて悪くなる。結晶融解熱量が30J/g以上では、ポリオレフィンと複合化して染色した際の染料吸尽率が低下し発色性に劣るものとなる。
本発明の製造方法において得られるポリエステル組成物は、固有粘度(IV)が0.600~0.700であることが好ましい。IVがこの範囲にある時、ポリオレフィンとの混練性および複合化後の紡糸性に非常に優れたものとなる。より混練性が良好となる点からIVは0.600~0.680であることがより好ましく、0.620~0.640であることがさらに好ましく、0.625~0.634であることが最も好ましい。
本発明の製造方法において得られるポリエステル組成物は、アンチモン金属原子をポリエステル組成物重量に対して150~300ppm含んでいることが好ましい。アンチモン金属含有量がこの範囲であるとき、アンチモン金属含有によるポリエステル組成物のL値の低下を抑制しつつ重縮合反応を速やかに進行させて組成物のb値上昇を防ぐことができる。
本発明の製造方法において得られるポリエステル組成物は、安定剤としてリン化合物が10~1000ppm添加されていることが好ましい。具体的にはリン酸、リン酸トリメチル、ジエチルホスホノ酢酸エチル等が好ましく、3,9-ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン(PEP-36:旭電化社製)や亜リン酸トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)(IRGAFOS168:BASF社製)などの3価リン化合物が色調や耐熱性改善の面からより好ましい。リン化合物によるエステル化反応阻害を防ぐため、リン化合物はエステル化反応完了後から重縮合反応の開始までに添加されることが好ましく、エステル化反応槽での残存滞留を防ぐ点から重縮合反応槽に添加されることがより好ましい。
本発明の製造方法において得られるポリエステル組成物は、酸化防止剤が100~10000ppm添加されていることが好ましい。なかでもラジカル連鎖反応禁止剤であるフェノール系酸化防止剤がより好ましい。フェノール系酸化防止剤として、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェノール)プロピオネート)(例えば、BASF製Irganox(登録商標)1010)、2,4,6-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)メシチレン(例えば、ADEKA製アデカスタブ(登録商標)AO-330)、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-[β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]-ウンデカン(例えば、住友化学製スミライザー(登録商標)GA-80、ADEKA製アデカスタブ(登録商標)AO-80)、1,3,5-トリス[[4-(1,1-ジメチルエチル)-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル]メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン(例えば、東京化成工業製THANOX1790、CYTEC製CYANOX(登録商標)1790)は、酸化分解抑制効果が高いため、好適に採用でき、これらの中で1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェノール)プロピオネート)(例えば、BASF製Irganox(登録商標)1010)、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-[β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]-ウンデカン(例えば、住友化学製スミライザー(登録商標)GA-80、ADEKA製アデカスタブ(登録商標)AO-80)は、ポリエステル組成物の重縮合温度においても飛散が少なく、特に好適に採用できる。これらフェノール系酸化防止剤を添加し、ポリエステル組成物が含有するフェノール残基を1mmol/kg以上とすることにより、同じ重縮合反応槽を用いて2回以上繰り返しポリエステル組成物を重縮合した際、重縮合反応槽の吐出口付近にポリエステル組成物の酸化劣化物が発生し難くなり、可染性ポリオレフィン繊維として活用した際の長期連続紡糸時のパック圧上昇およびポリエステル組成物の重縮合吐出時の吐出太細発生を抑制することができる。フェノール残基は3mmol/kg以上であることがより好ましく、5mmol/kg以上であることが特に好ましい。また、フェノール残基を35mmol/kg以下とすることで、フェノール系酸化防止剤を過剰に添加した際に発生するゲル化物を抑制することができ、可染性ポリオレフィン繊維の長期連続紡糸時のパック圧上昇およびポリエステル組成物の重縮合吐出時の吐出太細発生を抑制することができる。フェノール残基は30mmol/kg以下であることがより好ましく、25mmol/kg以下であることが特に好ましい。フェノール系酸化防止剤は、分散性向上および酸化防止能の効率化の観点から、エステル化反応完了後から重縮合反応の開始までに添加するのが好ましく、エステル化反応槽での残存滞留を防ぐ点から重縮合反応槽に添加されることがより好ましい。なお、本発明の方法により製造されるポリエステル組成物に含有されるフェノール残基は、ポリエステル組成物の重縮合反応時に添加するフェノール系酸化防止剤由来のものが大部分を占めている。フェノール系酸化防止剤由来を除くフェノール残基は極微量である。
さらに本発明の製造方法において得られるポリエステル組成物には、紫外線吸収剤、難燃剤、蛍光増白剤、艶消剤、可塑剤もしくは消泡剤又はその他の添加剤等を必要に応じて配合してもよい。
本発明の製造方法において効率的に製造されたポリエステル組成物は連続生産時の後期ロットにおいても優れた色調(L値:60以上、b値:3未満)を示し、ポリオレフィンにブレンドすることで、特許文献1に示すような可染性ポリオレフィン樹脂組成物からなる繊維、およびそれからなる繊維構造体に好適に使用できる。
上記可染性ポリオレフィン繊維は、従来のポリオレフィン系繊維が使用されている用途に加えて、衣料用途ならびに軽量性や発色性が要求される用途への展開が可能である。従来のポリオレフィン系繊維が使用されている用途として、タイルカーペット、家庭用敷物、自動車用マットなどのインテリア用途、ふとん用詰め綿、枕の充填材などの寝具、ロープ、養生ネット、ろ過布、細幅テープ、組紐、椅子張りなどの資材用途などが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、本発明によって拡張される用途として、婦人服、紳士服、裏地、下着、ダウン、ベスト、インナー、アウターなどの一般衣料、ウインドブレーカー、アウトドアウェア、スキーウェア、ゴルフウェア、水着などのスポーツ衣料、ふとん用側地、ふとんカバー、毛布、毛布用側地、毛布カバー、枕カバー、シーツなどの寝具、テーブルクロス、カーテンなどのインテリア、ベルト、かばん、縫糸、寝袋、テントなどの資材などの用途が挙げられるが、これらに限定されない。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。これらは例示であって、本発明はこれらに限定されるものではない。
A.固有粘度(IV)
得られたポリエステル組成物を、o-クロロフェノール溶媒に溶解し、0.5g/dL、0.2g/dL、0.1g/dLの濃度の溶液を調整した。その後、得られた濃度Cの溶液の25℃における相対粘度(ηr)を、ウベローデ粘度計により測定し、(ηr-1)/CをCに対してプロットした。得られた結果を濃度0に外挿することにより、固有粘度を求めた。
B.結晶融解熱量(ΔHm)および融点(Tm)
ポリエステル組成物を130℃の真空乾燥機中で12時間真空乾燥させ、真空乾燥後のポリマー約5mgを秤量し、TAインスツルメント製示差走査熱量計(DSC)Q2000型を用いて、0℃から280℃まで昇温速度16℃/分で昇温してDSC測定を行った。昇温過程中に観測された融解ピークより結晶融解熱量(ΔHm)および融点(Tm)を算出した。測定は1試料につき3回行い、その平均値をΔHmおよびTmとした。なお、融解ピークが複数観測された場合には、最も高温側の融解ピークトップをTmとし、Tmを含む全ての融解熱量の合計をΔHmとした。
C.ポリマーのジエチレングリコール(DEG)含有量
2-アミノエタノールを溶媒とし、内部標準物質である1,6-ヘキサンジオールを加えて260℃で分解した。冷却後、メタノールを加えたのち酸で中和し、析出物をろ過した。ろ液をガスクロマトグラフィ(島津製作所社製、GC-14B)にて測定した。
D.ポリエステル組成物中のカルボキシル末端基量測定
得られたポリエステル組成物のペレットをo-クレゾール溶媒に溶解し、25℃で0.02規定の水酸化ナトリウム水溶液を用いて、自動滴定装置(平沼産業社製)にて滴定して求めた。
E.ペレット色調
得られたペレットを試料とし、石英ガラス製の容器に充填した状態でハンター型色差計(スガ試験機(株)製SMカラーコンピュー型式SM-3)を用いて測定した。なお、測定は1試料につき3回行い、その平均値とした。
F.CHDA・EG混合スラリー供給性
CHDA・EG混合スラリーはCHDAとEGそれぞれをスラリー混合槽に添加して攪拌したのち、直径30mmの配管を通してスネークポンプ(容量:0.52L/rev)を用いて計量・逐次添加を実施した。CHDA・EG混合スラリーの重量およびエステル化反応槽の温度保持の観点から最適な添加時間を判定しスネークポンプによる供給量を設定した。その際、スラリー流動性が良好で実際に設定時間内に供給完了できた場合を供給性「良」、スラリー流動性が悪く供給完了に設定よりも長時間を要する場合に供給性「不良」と判断した。
G.製造サイクル時間
5回の連続生産において各ロットのポリエステル組成物のペレット化が完了する時間の間隔を製造サイクル時間として計測した。
[実施例1]
(BHTの調製・移送)
エステル化反応槽[3]にあらかじめ用意されたモル比1.15のBHT:157kgを大気圧下250℃で溶融保持し、そこへテレフタル酸:84kgとEG:36kg(テレフタル酸に対してモル比1.15)を混合攪拌したスラリーを、槽内温度250℃を維持して水を留出させつつ180分かけて連続供給した。スラリー供給終了後もさらに80分間かけてエステル化反応を行い、モル比1.15のBHTを計260kg調製した。調製したBHTのうち103kgを、溶融状態を保持したまま240℃に加温されたエステル化反応槽[1]に移送した。
(BHTCの調製・移送)
エステル化反応槽[1]内でモル比1.15のBHT:103kgを大気圧下240℃で溶融保持し、そこへCHDA:47kgとEG:19kg(CHDAに対してモル比1.15)を混合攪拌したスラリーを、槽内温度240℃を維持して水を留出させつつ130分かけて連続供給し、BHTCを計157kg調製した。スラリー供給が終了してから10分後、得られたBHTCの全量を重縮合反応槽[2]に移送した。ただし、槽の壁内にわずかにBHTCが残留するため、移送率は99%であった。
(重縮合)
移送後、BHTCに、得られるポリエステル組成物に対してアンチモン原子換算で250ppm相当の三酸化アンチモン、マンガン原子換算で35ppm相当の酢酸マンガン4水和物、リン原子換算で40ppm相当のリン酸、フェノール系酸化防止剤としてBASF社製IRGANOX(登録商標)1010を150gエチレングリコール溶液として添加した。その後、30rpmで撹拌しながら反応系を減圧して反応を開始した。反応槽内を240℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を110Paまで下げた。最終温度および最終圧力到達までの時間は60分とした。所定の攪拌トルクに到達した後、ストランド状に吐出して冷却し、直ちにカッティングしてポリエステル組成物のペレットを得た。なお、減圧開始から所定の撹拌トルク到達までの時間は130分であった。
(連続製造)
上記のBHTの調製・移送、BHTCの調製・移送、重縮合工程を同じ反応槽を用いて槽内を洗浄することなく5回連続で実施し、5回目に得られた共重合ポリエステル組成物を連続製造における後期ロットとして位置づけ各種物性評価を行った。共重合ポリエステル組成物の物性を表1にまとめる。
[実施例2~10]
実施例1で行った製造法において、モル比、エステル化反応槽[1]の保持温度、CHDA・EG混合スラリー供給時間、スラリー供給終了から移送までの時間、BHTCの移送率を表1に記載の通り変更したこと以外は実施例1と同様に実施し、L値60以上、b値3未満のポリエステル組成物を製造サイクル時間270分で得た。
Figure 2023001047000001
[比較例1~7]
実施例1で行った製造法において、モル比、エステル化反応槽[1]の保持温度、CHDA・EG混合スラリー供給時間、スラリー供給終了から移送までの時間、BHTCの移送率を表1に記載の通り変更したこと以外は実施例1と同様に実施しポリエステル組成物を得た。共重合ポリエステル組成物の物性を表2にまとめる。
比較例1は、CHDA・EG混合スラリーのモル比を1.0にしたことが一因となってスラリーの粘度が極めて高くなり、配管内の流動性が悪化することで供給時の計量性が損なわれた。その結果、目標量供給の設定時間は90分であったにもかかわらず実際は240分間を要してしまい、その結果CHDA残基の熱劣化・着色が進んでL値は満足のいくものではなかった。
比較例2は、CHDA・EG混合スラリーのモル比を1.5にしたことが一因となってスラリー容量が大きくなり、目標量の供給に200分間を要してしまい、その結果CHDA残基の熱劣化・着色が進んでL値は満足のいくものではなかった。
比較例3は、CHDA・EG混合スラリーの供給時間を80分に設定したところ、反応槽内の温度維持のためにBHTのモル比を上げざるを得なくなり、最終的に得られるポリエステル組成物中のDEG含有量が増加し、その結果b値は満足のいくものではなかった。
比較例4は、エステル化反応槽[1]の保持温度が260℃であったため、最終的に得られるポリエステル組成物中のDEG含有量が増加し、CHDA残基の熱劣化・着色も進んでb値は満足のいくものではなかった。
比較例5は、エステル化反応槽[1]の保持温度が220℃であったため、CHDA・EG混合スラリー添加終了時点でエステル化反応が完了しておらず、追加で60分間の反応時間を要した。その結果、CHDA残基の熱劣化・着色も進んでL値が悪化した。
比較例6は、CHDA・EG混合スラリーの添加終了から移送完了までの時間を60分と設定したため、CHDA残基の熱劣化・着色も進んでL値が悪化した。
比較例7は、BHTCの移送率を90%設定にしたことから、ポリエステル組成物中のDEG含有量が増加し、CHDA残基の熱劣化・着色も進んでL値・b値ともに満足のいくものではなかった。
Figure 2023001047000002
[比較例8]
(BHTCの調製・移送)
エステル化反応槽[1]内であらかじめ用意されたモル比1.15のBHTC:157kg(全ジカルボン酸成分に対しCHDA残基が35モル%)を大気圧下240℃で溶融保持し、そこへ、テレフタル酸:83kg、CHDA:47kg、EG:50kg(ジカルボン酸成分に対してモル比1.15)を混合攪拌したスラリーを、槽内温度240℃を維持して水を留出させつつ220分かけて連続供給した。スラリー供給終了後もさらに90分間かけてエステル化反応を行い、BHTCを計314kg調製した。調製したBHTCのうち157kgを重縮合反応槽[2]に移送した。
(重縮合)
移送後、BHTCに、得られるポリエステル組成物に対してアンチモン原子換算で250ppm相当の三酸化アンチモン、マンガン原子換算で35ppm相当の酢酸マンガン4水和物、リン原子換算で40ppm相当のリン酸、フェノール系酸化防止剤としてBASF社製IRGANOX(登録商標)1010を150gエチレングリコール溶液として添加した。その後、30rpmで撹拌しながら反応系を減圧して反応を開始した。反応槽内を240℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を110Paまで下げた。最終温度および最終圧力到達までの時間は60分とした。所定の攪拌トルクに到達した後、ストランド状に吐出して冷却し、直ちにカッティングしてポリエステル組成物のペレットを得た。なお、減圧開始から所定の撹拌トルク到達までの時間は130分であった。
(連続製造)
上記のBHTCの調製・移送、重縮合工程を同じ反応槽を用いて槽内を洗浄することなく5回連続で実施し、5回目に得られた共重合ポリエステル組成物を連続製造における後期ロットとして位置づけ各種物性評価を行った。共重合ポリエステル組成物の物性を表3にまとめる。
本比較例では、ロットを跨いだBHTCの溶融保持が実施されているため、後期ロットではCHDA残基の熱劣化・着色が進みL値・b値ともに満足のいくものではなかった。また、スラリー供給量が増加したため供給時間220分、エステル化反応完了に追加で90分を要し、製造サイクル時間は300分以上であった。
[比較例9]
(BHTCの調製・移送)
大気圧に保持されたエステル化反応槽[1]に、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸47kgおよびエチレングリコール19kgを20分かけて添加し、30分かけて温度170℃まで昇温した。続いて、テレフタル酸83kg、エチレングリコール36kgのスラリーを180分かけて連続供給しながら水を留出させつつ、またスラリー供給開始直後から90分かけて250℃まで昇温した。スラリー供給終了後もさらに90分かけてエステル化反応を行い、得られたBHTCを全量重縮合槽に移送した。ただし、槽の壁内にわずかにBHTCが残留するため、移送率は99%であった。
(重縮合)
移送後、エステル化反応生成物に、得られるポリマーに対してアンチモン原子換算で300ppm相当の三酸化アンチモン、リン原子換算で40ppm相当のリン酸、フェノール系酸化防止剤としてBASF社製IRGANOX(登録商標)1010を150gエチレングリコール溶液として添加した。その後、30rpmで撹拌しながら反応系を減圧して反応を開始した。反応槽内を250℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を110Paまで下げた。最終温度および最終圧力到達までの時間は60分とした。所定の攪拌トルクに到達した後、ストランド状に吐出して冷却し、直ちにカッティングした。なお、減圧開始から所定の撹拌トルク到達までの時間は120分であった。ポリマー物性を表1にまとめた。
(連続製造)
上記のBHTCの調製・移送、重縮合工程を同じ反応槽を用いて槽内を洗浄することなく5回連続で実施し、5回目に得られた共重合ポリエステル組成物を連続製造における後期ロットとして位置づけ各種物性評価を行った。共重合ポリエステル組成物の物性を表3にまとめる。
本比較例では、CHDAをエステル化反応開始時に全量添加したため、CHDAを逐次または連続添加する方法と比較してCHDA残基の熱劣化・着色が進みやすく、L値は満足のいくものではなかった。また、ロット毎にCHDA・EGスラリーの添加、加熱工程を計50分間必要とし、製造サイクル時間は300分以上となった。
[比較例10]
(BHTCの調製・移送)
エステル化反応槽[1]にテレフタル酸ジメチル:98kgとEG:56kg(テレフタル酸に対してモル比1.8)を添加し、マンガン原子換算で60ppm相当の酢酸マンガンを加え、150℃、窒素雰囲気下で溶融後、攪拌しながら230℃まで240分かけて昇温し、メタノールを留出させた。そこへ単独のCHDA:47kgを20分かけて粉体添加し、さらに90分間かけてエステル化反応を行って、最終的にモル比1.17のBHTCを計158kg調製し、得られたBHTCの全量を重縮合槽反応[2]に移送した。ただし、槽の壁内にわずかにBHTCが残留するため、移送率は99%であった。
(重縮合)
移送後、BHTCに、得られるポリエステル組成物に対してアンチモン原子換算で250ppm相当の三酸化アンチモン、マンガン原子換算で35ppm相当の酢酸マンガン4水和物、リン原子換算で40ppm相当のリン酸、フェノール系酸化防止剤としてBASF社製IRGANOX(登録商標)1010を150gエチレングリコール溶液として添加した。その後、30rpmで撹拌しながら反応系を減圧して反応を開始した。反応槽内を240℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を110Paまで下げた。最終温度および最終圧力到達までの時間は60分とした。所定の攪拌トルクに到達した後、ストランド状に吐出して冷却し、直ちにカッティングしてポリエステル組成物のペレットを得た。なお、減圧開始から所定の撹拌トルク到達までの時間は130分であった。
(連続製造)
上記のBHTの調製・移送、BHTCの調製・移送、重縮合工程を同じ反応槽を用いて槽内を洗浄することなく5回連続で実施し、5回目に得られた共重合ポリエステル組成物を連続製造における後期ロットとして位置づけ各種物性評価を行った。共重合ポリエステル組成物の物性を表3にまとめる。
本比較例では、CHDAを粉体添加した後エステル化反応を実施するため、あらかじめBHTのモル比を高く設定したことから、最終的に得られるポリエステル組成物中のDEG含有量が増加し、b値は満足のいくものではなかった。また、高モル比のBHTを製造する工程に長時間を要することから、製造サイクル時間は300分以上となった。
[比較例11]
比較例11は特許文献4に記載の方法に沿ってCHDA-PETの製造を実施した。
(BHT(ビスヒドロキシエチルテレフタレート)、BHC(ビスヒドロキシエチルシクロヘキサンジカルボキシレート)の調製・移送)
エステル化反応槽[3]にあらかじめ用意されたモル比1.15のBHT:157kgを大気圧下250℃で溶融保持し、そこへテレフタル酸:84kgとEG:36kg(テレフタル酸に対してモル比1.15)を混合攪拌したスラリーを、槽内温度250℃を維持して水を留出させつつ180分かけて連続供給した。スラリー供給終了後もさらに80分間かけてエステル化反応を行い、モル比1.15のBHTを計260kg調製した。調製したBHTのうち103kgを、溶融状態を保持したまま240℃に加温された重縮合反応槽[2]に移送した。
同時に、エステル化反応槽[1]にCHDA:47kgとEG:19kgを仕込み、エステル化触媒として酢酸亜鉛10.0gを加えて槽内温度を200℃まで加温した。200℃を維持して生成した水を留出させつつ150分かけてエステル化反応を進め、BHCを計54kg調製し、全量を重縮合反応槽[2]に移送した。ただし、槽の壁内にわずかにBHCが残留するため、移送率は98%であった。なお、BHTとBHCの移送は同時に実施した。
(重縮合)
移送後、BHTとBHCの混合物に、得られるポリエステル組成物に対してアンチモン原子換算で250ppm相当の三酸化アンチモン、マンガン原子換算で35ppm相当の酢酸マンガン4水和物、リン原子換算で40ppm相当のリン酸、フェノール系酸化防止剤としてBASF社製IRGANOX(登録商標)1010を150gエチレングリコール溶液として添加した。その後、30rpmで撹拌しながら反応系を減圧して反応を開始した。反応槽内を240℃から280℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を110Paまで下げた。最終温度および最終圧力到達までの時間は60分とし、減圧開始から150分経過したところでストランド状に吐出して冷却し、直ちにカッティングしてポリエステル組成物のペレットを得た。
(連続製造)
上記のBHT、BHCの調製・移送、重縮合工程を同じ反応槽を用いて槽内を洗浄することなく5回連続で実施し、5回目に得られた共重合ポリエステル組成物を連続製造における後期ロットとして位置づけ各種物性評価を行った。共重合ポリエステル組成物の物性を表1にまとめる。
本比較例では、BHTとBHCを完全に別々に調整した後、速やかに低温で重縮合反応を行ったことから、得られたポリエステルは完全なランダム共重合体とはならず、ブロック共重合体様の性質を示すことから融点が175℃よりも高くなり、ポリオレフィンとの複合化には不向きなものとなった。また、CHDAとEGをBHTやBHCを介さず直接短時間で反応させるためにエステル化触媒を多量に添加する必要が生じた結果、触媒化合物に起因した着色が起こりL値・b値ともに満足のいくものではなかった。
Figure 2023001047000003
本発明の製造方法にて効率的に得られたポリエステル組成物を含む可染性ポリオレフィン組成物は、長期連続紡糸性に優れ、かつ優れた発色性が付与されたものであり、繊維および繊維構造体として好適に用いることができる。

Claims (4)

  1. テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸およびエチレングリコールを重縮合したランダム共重合ポリエステルを主成分とするポリエステル組成物の製造方法であって、以下に記載する3つの工程を経ることを特徴とするポリエステル組成物の製造方法。
    工程1.エステル化反応槽[1]内にビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートおよびその低重合体を230~250℃の範囲で溶融保持させ、そこへ、シクロヘキサンジカルボン酸とエチレングリコールの混合物を反応槽内が230~250℃の範囲を外れないように100~180分間かけて逐次添加または連続添加して重縮合させることによってビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート、ビス(ヒドロキシエチル)シクロヘキサンジカルボキシレート、およびそれらの低重合体を製造する工程
    工程2.シクロヘキサンジカルボン酸とエチレングリコール混合物の添加終了後20分以内にエステル化反応槽[1]から、ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート、ビス(ヒドロキシエチル)シクロヘキサンジカルボキシレート、およびそれらの低重合体の95~100%を重縮合反応槽[2]へ移送する工程。
    工程3.重縮合反応槽[2]において、減圧下で重縮合をさらに進行させポリエチレンテレフタレート―シクロヘキサンジカルボキシレートランダム共重合組成物を製造する工程。
  2. 工程1で逐次添加または連続添加するシクロヘキサンジカルボン酸とエチレングリコールのモル比を1.05~1.40に調製することを特徴とする請求項1に記載のポリエステル組成物の製造方法。ただし、モル比とはジカルボン酸成分のモル量に対するエチレングリコールのモル量の比である。
  3. 工程1及び2を大気圧下で実施することを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステルの製造方法
  4. 得られるポリエステル組成物が以下の特性を示すことを特徴する請求項1または2に記載のポリエステルの製造方法。
    (1)全酸成分に対するシクロヘキサンジカルボン酸成分の共重合比率が30~40モル%である。
    (2)最も高温領域に観測される融点Tmが175℃以下である。
    (3)結晶融解熱量ΔHmが20~30J/gである。
    (4)固有粘度IVが0.600~0.700である。
    (5)アンチモン金属含有量がポリエステル組成物に対して150~300ppmである。
    (6)フェノール残基の含有量がポリエステル組成物に対して1~35mmol/kgである。
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