JP2023000623A - 水熱処理による熱可塑性樹脂成形体の回収方法 - Google Patents

水熱処理による熱可塑性樹脂成形体の回収方法 Download PDF

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Abstract

【課題】機能付与層を有する熱可塑性樹脂成形体から機能付与層を分離して熱可塑性樹脂成形体を簡便に回収する方法を提供する。【解決手段】機能付与層を有する熱可塑性樹脂成形体を、101kPa以上の圧力下、熱可塑性樹脂成形体を形成している熱可塑性ポリマーの軟化点±30℃の温度条件で、水熱処理することにより、機能付与層を熱可塑性樹脂成形体から分離させる、熱可塑性樹脂成形体の回収方法。【選択図】なし

Description

本発明は、機能付与層を有する熱可塑性樹脂成形体から機能付与層を分離して熱可塑性樹脂成形体を回収する方法に関する。
多種、大量の廃プラスチックからその材料を効率的かつ高純度で回収するリサイクル技術の開発が望まれている。廃プラスチックの中には、市販の材料、例えばポリマー(重合体そのもの)、又はポリマーを含むポリマー組成物を単に成形して得られる樹脂成形体だけでなく、表面等に機能付与層を重ねた多層構造の樹脂成形体が多数ある。この機能付与層としては、樹脂成形体の用途、要求特性等によって適宜の層が選択される。例えば、樹脂成形体のベースとなる基材にガスバリヤ性、保香性、光反射性等を付与する金属層、耐擦傷性を付与するハードコートとしての無機物層、また印刷層、更には被覆層等を接着させる接着層等の機能付与層が挙げられる。このような機能付与層は、それを除いた基材となる熱可塑性樹脂成形体をリサイクルする際には、夾雑物となるので、予め、機能付与層を樹脂成形体から除去しておくことが、高効率、高純度のリサイクルに効果的である。
例えば、機能付与層を除去する方法として、特許文献1には、ポリカーボネート樹脂基材上に異質の層又は膜(機能付与層)を設けてなる廃棄物を、特定の濃度でアルカリ物質及び界面活性剤を含むアルカリ水溶液で少なくとも2回洗浄し、特定の濃度で過酸化水素及び界面活性剤を含む水溶液で洗浄して、ポリカーボネート樹脂基材を回収する方法が開示されている。また、特許文献2には、多層積層体において樹脂層から金属層を分離するに当たり、少なくとも膨張剤(有機溶剤)及びカルボン酸を含む分離液を作用させる方法が開示されている。一方、純水のみを用いる方法として、特許文献3には、ポリカーボネート樹脂基材上の金属蒸着膜を、イオン交換水中、120℃で4時間熱水処理することにより、金属蒸着膜を剥離する実施例が開示されており、70℃では20時間を要することが報告されている。
特許第4311858号公報 国際公開第2015/169801号 特開平05-345321号公報
機能付与層を有する成形体から機能付与層を除去する方法においても簡便な方法であることが望まれる。しかし、特許文献1に記載の上記技術は、複数回の洗浄処理を必須とする点で、改善の余地がある。また、特許文献3に記載の上記技術は、純水のみを使用するので洗浄処理が不要である利点があるが、70℃では20時間という長時間の熱水処理を要する点、並びに、剥離対象の機能付与層が金属蒸着膜(真空プロセスで形成される金属薄膜。金属ナノ粒子が降り積もる機構で形成されるので、ポリカーボネート樹脂基材との密着性は必ずしも強固ではない。)に限定されている点に、改善の余地がある。
更に、特許文献1及び2に記載の上記技術は、いずれも、水、有機溶剤等の溶媒以外に、アルカリ物質、界面活性剤又はカルボン酸等の添加剤を必須とする。そのため、廃液の発生ばかりでなく、回収した樹脂基材等にこれら添加剤若しくはそれに由来する副生物が残留(混入)することがある。純度、品質を高めてリサイクルするためには、添加剤又は副生物の除去処理(精製工程)が必須となり、回収方法が煩雑となる。また、これら添加剤による回収ポリマーの化学的な劣化を抑制するためには、回収すべきポリマーの種類に対する機能付与層(それを構成する化合物)の組み合わせに応じた処理条件の選定(最適化)を、その都度行う必要がある。処理条件の選定としては、例えば、添加剤の種類、使用量、使用比の最適化、若しくは、温度条件の最適化(例えば、水の沸点以下程度の比較的低温の選択)等の多岐にわたる。そのため、処理条件の選定だけでも、多様な機能付与層が混在する廃プラスチックの処理作業には限界があった。
加えて、大量の廃液が副生するため、例えば、酸若しくはアルカリ物質の中和、界面活性剤による泡立ち等の廃液処理上好ましくない現象への対応、廃液の濃縮による減容等の作業が必要となって廃液処理コストとエネルギー消費が増大する。更に、酸若しくはアルカリ物質又はその中和物、界面活性剤等の添加剤又はその副生物が産業廃棄物として発生するため、大量の廃プラスチックをリサイクル処理する際の問題として残されている。
本発明は、機能付与層を有する熱可塑性樹脂成形体から、製法や成分を問わない機能付与層を分離して熱可塑性樹脂成形体を、短時間かつ簡便に回収する方法を提供することを、課題とする。更に、本発明は、酸やアルカリ物質、界面活性剤等の添加剤を使用しなくても、また機能付与層の製法や成分に依らずに、機能付与層を有する熱可塑性樹脂成形体から機能付与層を分離して熱可塑性樹脂成形体を短時間かつ簡便に回収する方法を提供することを、課題とする。
本発明の課題は以下の手段によって達成された。
<1>機能付与層を有する熱可塑性樹脂成形体を、101kPa以上の圧力下、前記熱可塑性樹脂成形体を形成している熱可塑性ポリマーの軟化点±30℃の温度条件で、水熱処理することにより、前記機能付与層を前記熱可塑性樹脂成形体から分離させる、熱可塑性樹脂成形体の回収方法。
<2>前記熱可塑性樹脂成形体に対して機械的処理を加えて前記機能付与層の分離を促進する、<1>に記載の熱可塑性樹脂成形体の回収方法。
<3>前記熱可塑性樹脂成形体を形成している熱可塑性ポリマーが縮合系ポリマーである、<1>又は<2>に記載の熱可塑性樹脂成形体の回収方法。
<4>前記機能付与層が前記熱可塑性樹脂成形体の表面に存在する、<1>~<3>のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂成形体の回収方法。
本発明の熱可塑性樹脂成形体の回収方法は、機能付与層を有する熱可塑性樹脂成形体から機能付与層を分離して熱可塑性樹脂成形体を短時間かつ簡便に回収することができる。
本発明において、ポリマーは重合体そのもの(添加剤を一切混合していない状態)を意味する用語として用いる。また、ポリマー組成物は、ポリマーに対して、適宜に任意成分(添加剤)を含有させた組成物を意味する。樹脂はポリマー組成物と同じ意味を有する用語として用いる。
本発明において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
[本発明の熱可塑性樹脂成形体の回収方法]
<機能付与層を有する熱可塑性樹脂成形体>
本発明の熱可塑性樹脂成形体の回収方法(本発明の回収方法ともいう。)は、機能付与層を有する熱可塑性樹脂成形体(機能付与層付成形体ともいう。)を、処理対象とする。
機能付与層付成形体とは、機能付与層が基材となる熱可塑性樹脂成形体に積層された樹脂成形体をいう。機能付与層付成形体、熱可塑性樹脂成形体及び機能付与層は、それぞれ、機能付与層付成形体等の用途、機能等に応じて適宜の形状を有しており、例えば、フィルム状、シート状、ディスク状、ブロック状、環状等が挙げられる。機能付与層付成形体は、形状や寸法を調整せずにそのまま用いることができるが、後述する水熱処理において速やかに機能付与層を除去することが可能となる点で、機械的処理を加えることにより、破砕物(切断物、粉砕物、解砕物)、表面を研磨又は擦傷した状態の物、微細な粉末(顆粒)状物として用いることが好ましい。このときの破砕物等のサイズは、適宜に決定されるが、生産性のよい常用される目開きの篩に引っかかって回収しやすい程度のサイズが好適である。
機能付与層付成形体において熱可塑性樹脂成形体と機能付与層との積層構造に制限はなく、熱可塑性樹脂成形体の少なくとも1つの表面に機能付与層が密着して積層されていればよい。例えば、熱可塑性樹脂成形体の1つの表面に機能付与層を有する形態(例えば、熱可塑性樹脂成形体-機能付与層の2層積層体)、熱可塑性樹脂成形体の2つの表面に機能付与層を有する形態(例えば、機能付与層-熱可塑性樹脂成形体-機能付与層の3層積層体)、更には、2つの熱可塑性樹脂成形体に機能付与層が挟まれて存在する形態(例えば、熱可塑性樹脂成形体-機能付与層-熱可塑性樹脂成形体の3層積層体)、ドーナツ状など穴の開いた熱可塑性樹脂成形体の表面に機能付与層を有する形態等が挙げられる。本発明を適用可能な機能付与層と熱可塑性樹脂成形体の積層界面の物理化学的構造に制限はないが、機能付与層付成形体は、通常、金属や無機物等の機能付与層と熱可塑性樹脂成形体を形成する熱可塑性ポリマーとの間の親水性相互作用(例えば水素結合)及び又はシランカップリング剤等の異材を接着するカップリング剤やサイジング剤の使用、インキや接着剤等の有機物の熱可塑性ポリマーの化学構造に応じた親和性やポリマーへの浸透性の設計等の手段により、界面の接着性を向上させてある。本発明は、熱可塑性樹脂成形体を形成している熱可塑性ポリマーの軟化点±30℃の温度条件で水熱処理することにより、機能付与層の化学構造や界面設計の如何を問わず、基材となる熱可塑性樹脂成形体の表層を加水分解する機構により、前記界面の接着性の向上に打ち勝って機能付与層付成形体から機能付与層の除去を好適に達成するものである。
機能付与層付成形体は、未使用のもの、廃プラスチック(使用済み成形品、成形不良品若しくは成形カス等の廃棄物若しくは回収物)となったもの等、任意の使用履歴のものを用いることができ、特に廃プラスチックを用いることにより、炭素資源の循環と地球環境の保全との実現に資する。廃プラスチックとしては、特に制限されないが、例えば、プラスチック製自動車部品(車台、内装、外層、窓ガラス部、ヘッドランプカバーや反射板等の照明部、サイドミラー、ディスプレイ部、安全ベルト・エアバッグ・エアバッグカバー等の安全機構、タンク・配管・ポンプ等の燃料系機構、コネクター等の電気配線機構、歯車等の機械的機構等)、電気機器(例:家電、パソコン)や携帯通信端末のプラスチック部品(筐体、ディスプレイ部品、電気回路基板、アンテナ等)、各種光ディスク、医療・健康器具のプラスチック部品(人工透析、輸液バッグ、使い捨てシリンジ、体力トレーニング器具等)、容器、包装用トレー、文具、玩具、家具、日用品、家電筐体等の各種成形品、更に、包装用フィルム(含:錠剤・粉体・液体等の医薬品の包装)、レジ袋等が挙げられる。中でも、数量の大きな自動車部品、電気機器や携帯通信端末、各種光ディスク、包装用フィルム等に由来する廃棄物に対して本発明を好適に用いると、大量に廃棄される多層プラスチック積層体のリサイクルを促進できる。
熱可塑性樹脂成形体は、熱可塑性ポリマー又はその組成物を成形してなる成形体であって、機能付与層付成形体の基材となる。その形状、寸法等は上述の通りである。
熱可塑性樹脂成形体を形成する熱可塑性ポリマーは、特に限定されず、用途、機能等に応じて適宜のポリマーを適用でき、例えば、縮合系ポリマー、非縮合系ポリマーが挙げられる。熱可塑性樹脂成形体を形成している熱可塑性ポリマーは1種でも2種以上でもよく、複数種の熱可塑性ポリマーの混合物(相溶系又は非相溶系を問わないポリマーブレンド材料又はポリマーアロイ材料)であってもよい。
以下、本発明を適用可能な熱可塑性ポリマーを例示する。ここで示す各ポリマーのガラス転移温度(以下、Tgと略記する場合がある。)と融点等のデータは公知情報の一例であり、測定試料の熱履歴に起因する状態の差異(例:結晶性樹脂における結晶形態や結晶化度の差異)や測定方法(例:示差走査熱量分析[略称はDSC]、動的粘弾性測定)により変動する可能性があるものである。各ポリマーの軟化点については、後述するように、熱可塑性樹脂成形体の全体として軟化させて粘弾性体(ゴム状又は餅状)とするが機能付与層の除去物(遊離物)を巻き込まなければよしとする場合、若しくは同除去物を多少巻き込んでも本発明の目的を達する程度にとどまる場合、逆に熱可塑性樹脂成形体の表層にのみ高温かつ短時間の水熱処理条件で伝熱してこの部分を軟化させるが(場合によれば若干溶融させるが)当該成形体の全体としては形を保持する場合など、本発明の実施の様々な場合があり得るので、本発明が許容する各ポリマーの見かけ上の軟化点のみなし範囲は、非晶性ポリマー(通常の使用状態では融点が観測されないもの)についてはそのTgの、結晶性ポリマー(通常の使用で融点を有するもの)については融点の、それぞれ+50℃程度までは可能であり、上記除去物の巻き込みの抑制の点で好ましくは+30℃、更に好ましくは+10℃である。
本発明の水熱処理は、使用する熱可塑性樹脂成形体を形成している熱可塑性ポリマーの軟化点の近傍、具体的には軟化点の±30℃の温度条件で実施する。この高温側の範囲で、例えば、前記高温かつ短時間の水熱処理による熱可塑性樹脂成形体の表層に限定した伝熱が可能となる。この低温側の範囲を下回ると、熱可塑性ポリマー分子の熱運動(分子量分布における低分子量成分の熱運動は平均としての軟化点よりも低温で開始する。)が不十分であり、本発明が意図する熱可塑性ポリマーの加水分解も不十分となる。かかる水熱処理条件の温度範囲は、上記除去物の巻き込みと成形体同士の融着の抑制の点でその上限は好ましくは軟化点+20℃、更に好ましくは+10℃、一方その下限は水熱処理効果の点で好ましくは-20℃、更に好ましくは-10℃である。
本発明における縮合系ポリマーとは、重合反応原料となるモノマーから水分子やアルコール分子等の低分子量分子が脱離する重縮合により生成するポリマーである。例えば、ポリエステル類、ポリカーボネート類、ポリアミド(本発明ではPAと略記する場合がある)類(本発明では、便宜上、重縮合ではなくε-カプロラクタムの開環重合で生成するナイロン6等の開環重合ポリアミド類をここに包含する。)、ポリアセタール類、ポリエーテル類が挙げられる。なお、本発明においては、重縮合ではない反応様式(例えば開環重合)で生成する場合であっても、上記例示のポリマー類であれば、便宜的に、ここに包含する。更に具体的に以下例示する。
ポリエチレンテレフタレート(PET、Tg70~80℃、融点250~270℃)、ポリブチレンテレフタレート(PBT、Tg60℃、融点230~270℃)、ポリエチレンナフタレフタレート(PEN、Tg118℃、融点265℃)、ポリブチレンナフタレート(PBN、Tg74~78℃、融点243℃)、ビスフェノールAを主原料とするポリカーボネート(PC、Tg150℃、通常の使用では非晶性であるため融点は通常示さない)等のエステル結合(-COO-)を高分子主鎖の繰り返し単位に有する高分子;ナイロン6(PA6、Tg50℃、融点225℃)、ナイロン66(PA66、Tg50℃、融点265℃)、ナイロン6/66(PA6/66)、ナイロン12(PA12、Tg37~46℃、融点175~185℃)、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンとフタル酸類(テレフタル酸やイソフタル酸)等の芳香族ジカルボン酸を主原料とするポリアミド(フタル酸類の共重合比により変化するが、Tgは、例えば120℃程度である。)、更には、メタキシレンジアミン(MXD)等の芳香族ジアミンとアジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸を主原料とするポリアミド(代表例:PAMXD6、Tg75~102℃、融点243℃)等のポリアミドポリマー;ポリオキシメチレンポリマー(POM、別称はポリアセタールポリマー、Tgはマイナス60~マイナス50℃、融点165~181℃)、ポリフェニレンエーテルポリマー(PPE、単体ポリマーとしてのTg210~220℃。通常の使用では非晶性であるため融点は通常示さない。汎用的にはポリスチレンとの相溶性ポリマーブレンド材として使用されるので、その場合のTgは120~200℃程度の範囲で、荷重たわみ温度は75~200℃程度の範囲で、それぞれ可変である。)及びそのポリマーアロイ変性品(変性PPE;代表例はPPEとポリスチレンのポリマーアロイ)等が挙げられる。中でも、汎用性と工業的な使用数量の点で、PET及びPA6は多層フィルムの構成ポリマーとして重要であり、5大汎用エンジニアリングプラスチックであるPC、PBT、POM、PPE及び各種PAは耐熱性や機械的強度の点で自動車部品、電気機器(例:家電、パソコン)や携帯通信端末のプラスチック部品等において重要であるので、これらのポリマーが使用された熱可塑性樹脂成形体に対して本発明は好適に適用される。
非縮合系ポリマーとは、付加重合、配位重合、メタセシス重合等により合成される高分子主鎖骨格が炭素原子のみで構成されるポリマーをいい、ビニル系ポリマーやシクロオレフィンポリマーと呼ばれるものを包含する。例えば、ポリエチレン(PE、Tgは-120℃、融点は結晶化度(密度)に応じて100℃程度から140℃程度まで変化する。本発明においては、PEが餅状となって除去した機能付与層を巻き込まない軟化の程度であればよい。)、ポリプロピレン(PP、Tg0℃、融点160℃~170℃。荷重たわみ温度(0.45MPa)90~115℃。ビカット軟化点80~100℃。本発明においては、PPが餅状となって除去した機能付与層を巻き込まない軟化の程度であればよい。)等のポリオレフィンポリマー(PO);ポリスチレン(PS、Tg100℃、通常の使用では非晶性であるため融点は通常示さない)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS、Tgは共重合比等により変動し通常80~110℃、通常の使用では非晶性であるため融点は通常示さない。ブタジエン成分に由来するポリマー分子間の架橋のため、非熱可塑性のミクロ相分離構造を含有する場合がある。)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS又はSAN、軟化点115℃)等のスチレン系ポリマー;ポリメチルメタクリレート(PMMA、ガラス転移温度100℃)等の(メタ)アクリルポリマー;汎用のアクリルモノマー(例えば、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート等の(メタ)アクリル化合物)と任意のラジカル重合性モノマーとの共重合体等のアクリル系ポリマーが挙げられる。中でも、PE、PP及びPSは多層フィルムの構成ポリマーとして重要であり、ABS及びASは汎用ポリオレフィンとエンジニアリングプラスチックの間に位置する重要な構造材料として、PMMAは透明ポリマーとして、それぞれ産業上幅広く利用されているので、これらのポリマーが使用された熱可塑性樹脂成形体に対して本発明は好適に適用される。なお、非縮合系ポリマーは基本的に加水分解を受けにくい化学構造を有するが、本発明の水熱処理が効果を発揮する機構としては、例えばPE又はPPの成形体に機能付与層を積層する際に使用される接着剤(例:PE、PP、若しくはエチレン/プロピレン共重合体を無水マレイン酸やグリシジルメタクリレート等の変性剤を反応させて得る変性ポリオレフィン類)に対する加水分解、若しくは当該接着剤と機能付与層との界面の化学結合への加水分解が推定される。従って、本発明の水熱処理は、熱可塑性樹脂成形体の基材ポリマーに対してのみ作用するものである必要はなく、機能付与層が分離(剥離又は除去)される限りにおいてその作用機構を制限するものではない。
上述の熱可塑性ポリマーのうち、本発明の効果が顕著に現れるのは、縮合系ポリマー、中でも加水分解反応を受けやすいエステル結合(-COO-)を主鎖の繰り返し単位に有する高分子である。その理由は、本発明の水熱処理を、軟化点(代表的にはポリマーの融点やガラス転移温度)近傍の温和かつ効果的な温度条件で行うことにより、加水分解反応による回収ポリマーの劣化を最小限に抑えかつ有効に機能付与層を除去して熱可塑性樹脂成形体を回収できることにある。
熱可塑性樹脂成形体は、上記ポリマー以外の成分を含有していてもよい。ポリマー以外の成分としては、例えば、ガラス、炭素繊維、カーボンブラック、シリカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸マグネシウム(タルク)、カオリン、雲母、有機又は無機からなる顔料等の粒子及びファイバー、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、リン酸エステル、ステアリン酸エステル等の長鎖脂肪酸エステル類等の可塑剤、ヒンダードフェノール系等の熱安定剤、アミン系等の紫外線吸収剤、グリセリン等多価アルコールの長鎖脂肪酸エステル等の滑剤、安息香酸ナトリウム塩、フタル酸ナトリウム塩、サリチル酸ナトリウム塩、4-ヒドロキシ安息香酸ナトリウム塩、ステアリン酸ナトリウム塩等のカルボン酸塩、ベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、トルエンスルホン酸ナトリウム塩、4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム塩等の有機スルホン酸塩等の結晶核剤、シリコーン系等の離型剤、カーボンブラック、各種顔料・染料等の着色剤等が挙げられる。ポリマー以外の成分の含有量は、特に制限されないが、ポリマー100質量部に対して、合計量で50質量部以下とすることができる。
機能付与層を形成する材料としては、例えば、金属(スパッタや蒸着等の真空プロセス、メッキ(例えば、アルミニウム、ケイ素、銅-ニッケル-クロムの組み合わせ、金、パラジウム、スズ、ルテニウム、黒色三価クロム、錫コバルト合金等の遷移金属、これら金属の酸化物及び/又は窒化物等の無機物が挙げられる。例えば、塚田理研工業社のホームページ「https://www.tukada-riken.co.jp/products/index.html#wc_anc00001」が参考となる。))、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア等の金属酸化物を主体とするセラミクス(耐擦傷性を付与するハードコート、更に遷移金属酸化物組成を加えた紫外線吸収コートや反射防止コート等に利用される。)、インキ(例えば、有機顔料、無機顔料、染料、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂)、ウレタンアクリレート系等の接着剤等が挙げられる。機能付与層は、複数種が任意の組み合わせと積層構造で使用されていてもよい。これは、本発明の水熱処理による加水分解反応や加熱の作用は基本的に熱可塑性ポリマー又は熱可塑性樹脂成形体に対して意図されるものであって、そこに積層されている機能付与層の化学種は副次的な要因であることが理由である。
熱可塑性樹脂成形体を形成している熱可塑性ポリマーと機能付与層を形成している材料との組み合わせは、上記の各熱可塑性ポリマー及び材料の適宜の組み合わせが挙げられ、本発明が好ましく適用されるのは、産業上の使用数量の大きなもの、例えば、(1)異種多層フィルムとして基材としてPE、PP又はPS等の非縮合系ポリマーに縮合系ポリマー(代表例はPET及びPA6)が積層されたものに機能付与層として、印刷層、酸素及び水を遮断するバリア層(アルミ層やシリカ層、アルミナ層、塩化ビニリデン層等)、帯電防止層、異種フィルムを接着させる接着剤層、ブロッキング防止層が積層されたもの、(2)上記5大汎用エンジニアリングプラスチック(PC、PBT、POM、PPE及び各種PA)の成形品(好ましくは射出成型や押出成形により製造される。)に上記金属やセラミクスのコーティングを施したもの、(3)PPやABS等の非縮合系ポリマーの大型成形品(例:自動車部品、家電筐体)に上記インキやセラミクスのコーティングを施したものである。
機能付与層付成形体において、熱可塑性樹脂成形体と機能付与層との割合(質量比)は、特に制限されず、適宜に設定できるが、通常、例えば、熱可塑性樹脂成形体:機能付与層=100:10~100:0.001(質量比)とすることができる。
<水熱処理による回収工程>
本発明の回収方法は、上記機能付与層付成形体を水熱処理に付す。これにより、熱可塑性樹脂成形体から機能付与層を分離させて、機能付与層が除去された熱可塑性樹脂成形体を回収できる。ここでいう除去には、例えば、金属層やセラミクス等の無機物層が薄片状に剥離する様態、インキや接着剤等の有機物層が水相に離脱して目視で感知できないサイズで除去される様態等が考えられるが、かかる除去の様態に制限はない。
本発明において、熱可塑性樹脂成形体から機能付与層が分離する程度は、機能付与層を完全に除去することが理想的であるが、本発明の目的を損なわない限りにおいて、機能付与層の一部が除去されずに熱可塑性樹脂成形体に残存していてもよい。例えば、回収した熱可塑性樹脂成形体から熱可塑性ポリマーを回収する別工程に供する場合、その用途にも依存するが、機能付与層は10質量%以下残存していてもよい。
本発明において、熱可塑性樹脂成形体を回収するとは、熱可塑性樹脂成形体から機能付与層を極力除去した状態で、熱可塑性樹脂成形体を好ましくはその形態のまま回収することを意味する。もとの形態のまま回収することにより、後述する様々な用途に供する可能性が広がる。
本発明における水熱処理は、高温高圧の水を機能付与層付成形体に接触(機能付与層付成形体と水とを加熱混合)させ、機能付与層を熱可塑性樹脂成形体から、例えば物理化学的作用により、分離させる操作をいう。なお、機能付与層又は熱可塑性樹脂成形体に含まれる物質を化学反応させて機能付与層を除去する水熱処理を特に水熱反応処理ともいう。
用いる水としては、特に制限されず、脱イオン水、逆浸透水、蒸留水、精製水の他に、井水、水道水、工業用水等を用いることができる。
水の使用量は、熱可塑性樹脂成形体及び機能付与層を形成している材料の種類、熱可塑性樹脂成形体及び機能付与層の割合、水熱処理条件等に応じて適宜に決定されるが、例えば、機能付与層付成形体100質量部に対して、1~10000質量部であることが好ましく、加水分解の効率からその下限は10質量部、水を加熱するエネルギーを極力低減して省エネルギー化する目的でその上限は1000質量部であることが、それぞれより好ましい。
水熱処理条件は、熱可塑性樹脂成形体及び機能付与層を形成している材料の種類等応じて適宜に選択される。
本発明においては、水熱処理の加熱温度は、熱可塑性樹脂成形体を形成している熱可塑性ポリマーの軟化点±30℃の温度範囲に設定する。その理由は、かかる軟化点の温度範囲を超える高温条件では、熱可塑性ポリマーが溶融して粘性流体(水飴状。流動する)又は粘弾性体(ゴム状又は餅状。流動性は小さい)となるため、例えば剥離等の様態で離脱した機能付与層を巻き込んでしまうことにある。ここでいう熱可塑性ポリマーの軟化点は、熱可塑性ポリマーが結晶性ポリマーの場合は融点、非晶性ポリマーの場合はガラス転移温度等の物理定数をそれぞれ例示できるが、機能付与層の巻き込み現象を実用的に許容できる程度に抑制できる限り(例えば、溶融したポリマーの溶融粘度が極めて大きいため見かけ上かかる巻き込み現象は無視できる場合や、除去した機能付与層が直ちに溶融した樹脂の近傍から除去される装置的な工夫がある場合、熱可塑性樹脂成形体の表層のみは例えば短時間で高温の水熱処理により溶融してかかる巻き込み現象を起こすとしても当該成形体の全体としては微々たるものなので、実用的にその影響を許容できる場合等が挙げられる。)、これら物理定数を超える温度条件を本発明における軟化点とみなすことも可能である。なお、熱可塑性ポリマーが複数共存する理由でそれらの軟化点が複数存在する場合、融着を避け成形体の形状を極力維持して回収するためには、成形体のベースとなる基材をなすポリマー組成物の相分離構造(モルフォロジー)の連続相(所謂「海島構造」であれば「海」をなす相)のポリマーの軟化点近傍で水熱処理を実施することが好ましい。これは、当該連続相が軟化しない限り、分散相(「島」)が溶融しても融着等の不都合な現象は起きにくいためである。
具体的な加熱温度(処理温度)としては、101kPa(1atm)以上の圧力下において、例えば100~300℃とすることができ、回収する熱可塑性ポリマーの劣化を抑制する観点で、好ましくは100~270℃、より好ましくは100~250℃、更に好ましくは100~230℃である。かかる温度条件の下限は、加水分解反応や加熱による除去効果の観点で、好ましくは120℃以上、更に好ましくは130℃以上、最も好ましくは140℃以上である。
熱可塑性ポリマーの軟化点は、ガラス転移温度や融点等の物質定数については熱的測定(示差走査熱量分析[略称はDSC]等)や動的粘弾性測定(温度を変えた場合の粘弾性挙動の変化点を観測)により測定でき、巨視的な軟化点はISO等で規定されている荷重たわみ温度やビカット軟化点により測定できる。
また、加熱時間(処理時間。連続処理の場合は滞留時間)としては、例えば事前の機械的処理の程度など機能付与層付成形体の初期状態、高温で短時間の水熱処理により機能付与層付成形体の表層のみに伝熱及び又は加水分解の浸透を意図する加熱制御、といった要因により変動するが、通常、加水分解の促進の点で1分以上が好ましく、10分以上がより好ましい。加熱時間の上限は、熱劣化を抑制し生産性を向上させる点で、極力短時間に設定することが好ましいので、例えば、240分未満が好ましく、180分未満がより好ましい。
水熱処理における圧力は、101kPa以上の圧力に設定されていればよい。
水熱処理の諸条件(温度、時間、圧力等)は、反応管などの連続プロセスの場合は、複数の条件のゾーンを直列及び又は並列することも考えられる。
水熱処理は、通常、密閉状態で行われ、攪拌装置を付加することもできる。水熱処理は、回分式(バッチ式)で行うこともでき、連続式で行うこともできる。回分式に用いる反応容器としては密閉型反応容器(例えばオートクレーブ)、連続式としては反応管の形式をそれぞれ例示できる。
水熱処理条件は、最小限の酸性若しくはアルカリ性物質、界面活性剤等の添加剤、及び有機溶剤の存在下で行うこともできるが、これら添加剤等の非存在下で行うことが好ましい。本発明において、添加剤等の非存在下とは、機能付与層付成形体及び水とは別に添加剤等を添加しないで行うことを意味し、機能付与層付成形体及び水に包含される不可避な添加剤等の存在下で行う態様を包含する。水熱処理を添加剤等の非存在下で行うことにより、水熱処理条件の厳密な設定が不要となり、純度、品質が向上した熱可塑性樹脂成形体を、廃棄コストを低減しつつ、より簡便な工程で回収できる。
機能付与層が前記剥離の様態で離脱する場合は、機能付与層と熱可塑性樹脂成形体との界面に水熱処理条件下の水が侵入して界面での加水分解反応(熱可塑性ポリマーと機能付与層の双方、場合によれば双方を接着する接着剤の成分に対する加水分解反応が考えられる)の進行による界面の剥離、かかる界面に存在する熱可塑性ポリマーの高分子鎖の可動性を熱的に促すことによる界面接着力の緩みの2つの機構が考えられる。一般に、熱可塑性樹脂成形体の表面では低分子量成分及び末端基の濃度(比率)が高まっているので、微視的にはガラス転移温度が低下(高分子鎖の熱的な可動性が増大)するとともに化学的反応性も増大した表層ポリマー部分が存在するため、これら2つの機構の相乗効果において、界面の剥離に有利に働くと考えられる。
水熱処理後に、熱可塑性樹脂成形体から除去した機能付与層を、任意の分離手段(例えば、比重差や大きさの差によるふるい分け)により除去することにより、熱可塑性樹脂成形体への異物又は夾雑物としての残存を低減することができる。
本発明の回収方法において、熱可塑性樹脂成形体の回収率は、機能付与層の性状、熱可塑性ポリマーの種類、水熱処理条件等の変更により変動するが、通常、水熱処理前の熱可塑性樹脂成形体に占める熱可塑性ポリマーの質量に対して90質量%以上を達成することができる。損失部分は、加水分解による化学的損失、機能付与層の除去物を巻き込んだ部分を不純物として除去する損失等で構成される。
本発明の回収方法で得られる熱可塑性樹脂成形体の用途や利用に制限はないが、例えば、(1)成形体としてそのまま再利用(所謂リユース[Reuse]に近い利用)、(2)適度に破砕したものを射出成型機や押出成形機等の汎用の熱可塑成形装置に投入して成形体に賦形して再利用、(3)適度に破砕したものを押出機に投入してストランド化しこれを裁断(ペレット化)することによりマテリアルリサイクルペレットを得る方法が挙げられる。この内、マテリアルリサイクルペレットとする方法が、その先のいろいろな利用を許容する点で好ましい。例えば、(4)射出成型や押出成形等の汎用の熱可塑成形の際にマテリアルリサイクルペレットで希釈(ドライブレンド)して新品材料の消費量を削減する利用、(5)かかる汎用の熱可塑成形に用いられる熱可塑性樹脂材の原料の一部または全部をマテリアルリサイクルペレットに置き換えることにより新品ポリマーの消費量を削減する利用が例示できる。なお、マテリアルリサイクルペレットを得る際に、公知の異物除去技術、例えば、スクリーン(所定のメッシュ度の金網)又はその自動更新機構(オートスクリーンチェンジャー)をストランド吐出口の直前に入れて残存可能性のある機能付与層を更に除去して品質を高める工夫が考えられる。
本発明の回収方法においては、水熱処理条件の選定等により、機能付与層の全部を熱可塑性樹脂成形体から除去することができるが、回収された熱可塑性樹脂成形体の用途によっては、機能付与層の一部が熱可塑性樹脂成形体に残存していてもよく、例えば、機能付与層の残存率は30質量%以下とすることができ、この残存率はリサイクル品質の点で好ましくは20質量%以下である。特に、機能付与層を除去した熱可塑性樹脂成形体を上記(3)のマテリアルリサイクルペレット等の形態のリサイクル原料として更なるリサイクル処理に供する場合には、例えば、上記公知の異物除去技術の追加によるリサイクル品質の向上が可能なので、本発明においては機能付与層の一部の残存が許容される場合もある。
<その他の工程>
本発明の回収方法においては、上記回収工程以外の工程を行うこともできる。
例えば、機能付与層付成形体に機械的処理を加えて剥離の様態の機能付与層の分離を促進する工程、機能付与層付成形体を洗浄して汚れを予め除去する工程、回収した熱可塑性樹脂成形体を洗浄、精製する工程、回収した成形体を再溶融及びペレタイズして前記マテリアルリサイクルする工程等が挙げられる。洗浄、精製する方法等は、公知の各種方法を特に制限されることなく適用できる。
(機械的処理を加える工程)
本発明の回収方法においては、上記回収工程の前、同時又は後に、熱可塑性樹脂成形体に対して機械的処理(物理的処理)を加えて、剥離の様態の機能付与層の分離を促進する工程(機械的処理工程)を行うこともできる。
機械的処理による機能付与層の分離(除去)とは、機能付与層と熱可塑性樹脂成形体の積層界面が任意の物理的作用により剥がれることを意味する。かかる物理的作用としては、機械的な衝撃力、研磨等の機械的作用等が挙げられる。
機械的処理は、本発明の水熱処理による機能付与層の除去効果を促進する意図で付加的に実施されるものであって、水熱処理に対して任意の段階で行うことができる。例えば、水熱処理の前、水熱処理と同時(併用)、又は水熱処理の後に、行うことができる。水熱処理の前に機械的処理を行うことにより、機能付与層と熱可塑性樹脂成形体の積層界面に予め隙間や亀裂を与えることで、水熱処理による機能付与層の分離を促進する効果が期待できる。また、水熱処理と同時に機械的処理を行うことにより、加水分解反応や加熱により緩んだ界面において機械的に除去を促進する効果が期待できる。更に、水熱処理の後で機械的処理を行うことにより、水熱処理による界面の緩みが進行した上に機械的な除去を追加して除去を促進する効果ができる。
水熱処理の前又は後に行う場合、機械的に除去を促進する際に、少量の水を加える湿式で行う等の付加的な工夫も可能である。
機械的処理は、機能付与層付成形体に上記機械的作用を付与可能な方法で行うことができ、例えば、粉砕機、シュレッダー等による粉砕処理、ハンマー殴打等によって機械的な衝撃力を加える方法、研磨等による方法、強力なせん断力(機能付与層と基材ポリマーとの界面へのずり応力。一例:ホソカワミクロン社により市販されているメカノフュージョン装置)を加える方法、更には撹拌機等によって攪拌、混合する方法等が挙げられる。これら機械的処理の処理時間は、一般に、通常30秒~4時間、処理の効果と生産性の点で好ましくは1分~2時間、上限は更に好ましくは1時間である。一方、処理温度は、冷却による処理物の脆化を意図する場合も含め、通常-100℃~+200℃、冷却の省エネルギーの点で下限は好ましくは-80℃、更に好ましくは-60℃に制御し、基材ポリマーの部分的な溶融・融着を抑制する点で上限は好ましくは150℃、更に好ましくは100℃に制御する。以上の条件は、装置の特性、温度の測定機構(例:処理物の温度の実測、容器温度の観測、連続プロセスの場合は出口温度の観測)や処理対象の機能付与層付成形体の性状により変動するので、あくまで目安であり、この例示に束縛されるものではない。
機械的処理は、上記各処理を1回行うこともでき、複数種の機械的処理を複数回行うこともできる。複数回行う場合、各機械的処理の実施時期は、特に制限されず、水熱処理に対して同じ実施時期(水熱処理の前、同時又は後)に間欠的に若しくは連続して行うことができ、また、水熱処理との実施時期を変更して行うこともできる。
機械的処理は、機能付与層が熱可塑性樹脂成形体の表面に存在する機能付与層付成形体に最も好適に適用できる。その理由は、熱可塑性樹脂成形体に対する機械的な破砕及び/又は研磨による除去の物機械的作用は熱可塑性樹脂成形体の表面において直接的なので最も効果的となり、更に水熱処理における水分子の化学的作用(加水分解反応等)も熱可塑性樹脂成形体の表面において直接的となることにある。
本発明の回収方法は、機能付与層付成形体を形成する熱可塑性樹脂成形体から材料、特に熱可塑性樹脂成形体を形成している熱可塑性ポリマー又はその原料化合物を回収する方法の前処理として好適に適用することができる。
例えば、適用可能な熱可塑性樹脂成形体として、1種の熱可塑性ポリマーを含有する成形体、多層構造からなるプラスチック成形体、異種材料で構成した多層構造からなるプラスチック成形体等が挙げられる。これら成形体を形成するポリマーは熱可塑性ポリマーであることが好ましい。下記の水熱反応処理は、例えば、熱可塑性ポリマーのうち加水分解性ポリマーをその原料化合物にリサイクル(ケミカルリサイクルともいう)するとともに、熱可塑性ポリマーのうち非加水分解性ポリマーをそのままリサイクル(マテリアルリサイクルともいう)できるため、加水分解性ポリマーを含有する樹脂層と非加水分解性ポリマーを含有する樹脂層との多層体を好ましく用いることができる。
(水熱反応処理によるポリマー又は原料化合物の回収)
本発明の回収方法で得られた熱可塑性樹脂成形体からポリマー又は原料化合物を回収するには、この熱可塑性樹脂成形体を水熱反応処理に付す(分解分離工程を行う)。特に、熱可塑性樹脂成形体が加水分解性ポリマーAを主成分とする樹脂層1と、非加水分解性ポリマーBを主成分とする樹脂層2とを少なくとも含んでいる場合にポリマー又は原料化合物を回収するのに好適である。
本発明において、加水分解性ポリマーとは、ポリマーを構成する構成原料化合物の結合が加水分解可能な結合を介して構成されたポリマー(ポリマーの主鎖が加水分解可能)であり、後述する水熱反応処理(分解分離工程)において、ポリマーがその構成原料化合物の化学的性質に起因して加水分解を受けるポリマーをいう。加水分解性ポリマーとしては、ポリエステル類、ポリカーボネート類、ポリアミド類(本発明では、便宜上、重縮合ではなくε-カプロラクタムの開環重合で生成するナイロン6等の開環重合ポリアミド類をここに包含する。)、ポリアセタール類、ポリエーテル類が挙げられる。
一方、非加水分解性ポリマーとは、ポリマーを構成する構成原料化合物の結合が加水分解されない若しくは加水分解されにくい結合を介して構成されたポリマーであり、分解分離工程において、ポリマーがその構成原料化合物に加水分解されない若しくは加水分解されにくいポリマー、具体的な代表例としては高分子主鎖(連結鎖)の化学構造が実質的に炭素原子だけで構成されているポリマーをいう。
本発明において、特定のポリマーを主成分とする樹脂層とはポリマー成分のうち特定のポリマーを最大含有量成分として含有する樹脂層をいう。
樹脂層1と樹脂層2とを含む熱可塑性樹脂成形体は、水熱反応処理において、溶融物となり、場合によっては溶融混合物となり、加水分解性ポリマーAを加水分解して分離させるとともに、非加水分解性ポリマーBをその分子量を維持した溶融状態で分離させることができる。この分離の際、加水分解性ポリマーAの加水分解成分aが固体として析出することを避けることが、両者を簡便かつ高純度で分離させることができる点で、好ましい。
本発明において、加水分解成分aが固体として析出することを避けるとは、系を水熱反応処理条件に加熱することによって、少なくとも1種の加水分解成分aについて高温での水への溶解度を増大させることにより、この加水分解成分aを、好ましくは、水熱処理条件下にある水相に溶解(移行)させて、系内で結晶や凝集体等として固体状に析出させないことを意味する。ここで、加水分解成分aは、後述する範囲を満たす回収率となる程度に析出を抑制できていればよい。
分解分離工程(水熱反応処理)は、熱可塑性樹脂成形体と水とを加熱混合して行う。水としては、特に制限されず、脱イオン水、逆浸透水、蒸留水、精製水の他に、井水、水道水、工業用水等を用いることができる。
水の使用量は、各ポリマーの種類、ポリマーA及びポリマーBの含有割合、水熱反応処理条件等に応じて適宜に決定されるが、例えば、熱可塑性樹脂成形体100質量部に対して、100~10000質量部であることが好ましく、300~5000質量部であることがより好ましい。
水熱反応処理条件は、101kPa(1atm)以上の圧力下において、加水分解性ポリマーAの加水分解反応が進行する温度以上で、かつ非加水分解性ポリマーBの溶融温度以上分解温度(特に、分解反応を抑制して分子量を維持可能な温度)未満の加熱条件に設定され、各ポリマーの種類、共存するポリマーAとポリマーBとの組み合わせ等に応じて適宜に選択される。
例えば、加熱温度(処理温度)としては、275℃以上が好ましく、300℃以上がより好ましい。加熱温度の上限は、例えば、375℃以下が好ましく、350℃以下が好ましく、330℃以下がより好ましい。
また、加熱時間(処理時間)としては、水熱反応処理が十分進行するのであれば短いほど好ましい。例えば、加熱時間の下限は、1分以上が好ましいが、10分以上、更には15分以上とすることができる。加熱時間の上限は、短いほど好ましく、例えば、90分以下がより好ましく、60分以下が更に好ましい。
水熱反応処理条件は、非加水分解性ポリマーBの低分子量化反応を抑えつつ加水分解性ポリマーAを速やかに加水分解反応させて、リサイクル効率を更に高めることができる点で、水熱反応処理条件は、101kPa以上の圧力下において、処理時間(分)をx軸、処理温度(℃)をy軸とする直交座標系において、点A(1;375)、点B(1;325)、点C(60;275)、点D(60;300)を頂点とする四角形の領域内(境界線上を含む)に含まれる処理温度及び処理時間に設定することが好ましい。より好ましくは、点E(5;350)、点F(15;325)、点C(60;275)、点D(60;300)を頂点とする四角形の領域内(境界線上を含む)に含まれる処理温度及び処理時間である。
水熱反応処理条件における圧力は、水の臨界温度までは加熱温度における水蒸気圧(例えば、100℃で101kPa、330℃で12.86MPa)以上であり、通常、101kPa以上の圧力に設定され、例えば、臨界温度以上の加熱温度では臨界圧力22.1MPa以上である。臨界温度以上の加熱温度における圧力の上限は、特に制限されず、例えば、臨界圧力+40MPa以下とすることができる。
水熱反応処理(分解分離工程)は、通常、密閉状態で行われ、回分式(バッチ式)で行うこともでき、連続式で行うこともできる。回分式に用いる反応容器としては、密閉型反応容器、例えば、オートクレーブ、反応管が挙げられる。
上記水熱反応処理を好ましくは上記水熱反応処理条件で行うことにより、まず、熱可塑性樹脂成形体が溶融して、場合によっては水と混和しない溶融混合物となることもある。
熱可塑性樹脂成形体の溶融と同時に、又は溶融後に、加水分解性ポリマーAは、加水分解反応を受けて、加水分解成分aを生成する。この加水分解成分aは熱可塑性樹脂成形体から分離し、そのうち水溶性を示すものは水相に移行する。加水分解成分aは、加水分解性ポリマーAの種類に応じて生成する化合物であり、通常、加水分解性ポリマーAを形成する原料化合物(モノマー)又はその数量体となる。加水分解成分aとしては、好ましくは、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート等の原料化合物(モノマー)が挙げられ、工業的な重要性からより好ましくは、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、テトラヒドロフラン、アミノカプロン酸、ε-カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン及びアジピン酸、並びにこれらの誘導体からなる群から選択される1種又は2種以上の成分が挙げられる。ここで、「これらの誘導体」とは、加水分解性ポリマーAの加水分解により生じた加水分解成分aが加水分解条件で更に反応等をして生成する化合物をいい、加水分解成分a及び加水分解条件等により決定される。
一方、非加水分解性ポリマーBは、熱可塑性樹脂成形体の溶融時及び溶融後の水熱反応処理において、分解反応の進行が効果的に抑制され、樹脂層2中に存在する非加水分解性ポリマーBが有していた分子量を維持しながら、水相(熱可塑性樹脂成形体)から溶融状態で分離する。
水熱反応処理の進行とともに、加水分解性ポリマーAは加水分解成分aとなって、更に水溶性を示すものは水相に移動して、溶融状態の非加水分解性ポリマーBから分離される。かかる溶融状態における分離の後に、非加水分解性ポリマーBを冷却固化させて回収する。非加水分解性ポリマーBの回収の際、好ましくは溶融押出によるペレット化の手法を用いる。
加水分解成分aの回収率は、加水分解性ポリマーAの種類、水熱反応処理条件等の変更により変動するが、例えば、樹脂層1に含まれる加水分解性ポリマーAを100%としたとき、70%以上を達成することができ、更に80%以上の高い回収率(モル基準)を達成することができる。同様に、非加水分解性ポリマーBの回収率は、非加水分解性ポリマーBの種類、水熱反応処理条件等の変更により変動するが、例えば、樹脂層2に含まれる非加水分解性ポリマーBを100%としたとき、80%以上を達成することができ、更に90%以上の高い回収率(モル基準)を達成することができる。
回収された非加水分解性ポリマーBは、樹脂層2中に存在する非加水分解性ポリマーBの分子量分布を良好に維持している。回収された非加水分解性ポリマーBの分子量分布の挙動は、ポリマーBの種類、水熱反応処理条件等の変更によって一義的ではない。本発明の分離回収方法では、例えば、回収された非加水分解性ポリマーBは、水熱反応処理前の非加水分解性ポリマーBの平均分子量に対して、0.7倍以上の平均分子量を維持する(分子量維持率70%以上)ことができ、処理条件の最適化により、0.8倍以上の平均分子量を維持する(分子量維持率80%以上)こともできる。回収された非加水分解性ポリマーBが上記範囲の分子量維持率を示すと、非加水分解性ポリマーBが本来有する性能を維持でき、回収された非加水分解性ポリマーBを成形品等へのリサイクルを更に促進できる。
回収された加水分解成分a及び非加水分解性ポリマーBは、それぞれ、適宜に、通常の方法により、精製することもできる。
分解分離工程の実施に際して他の工程を行うこともできる。例えば、熱可塑性樹脂成形体を予め溶融する工程、上述の、熱可塑性樹脂成形体の溶融物から固体成分を除去する工程、更には、熱可塑性樹脂成形体を例えば含有ポリマー種によって分別する工程、熱可塑性樹脂成形体を洗浄して予め汚れ成分を低減する工程、回収した加水分解成分a及び非加水分解性ポリマーBを精製する工程、非加水分解性ポリマーを乾燥させる工程、非加水分解性ポリマーを造粒(ペレタイズ)する工程等が挙げられる。精製方法等は、公知の各種方法を特に制限されることなく適用できる。
以下に、実施例に基づき本発明について更に詳細に説明するが、本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。
[実施例1]
市販のコンパクトディスク(ナツメ出版企画社より刊行の「CDでわかるピアノの名器と名曲」(ISBN978-4-8163-4623-1;2009年1月9日初版発行、同年8月10日第2刷発行)付属の音楽CD、熱可塑性樹脂成形体はポリカーボネート製、機能付与層はインキからなる印刷面と金属薄膜)をハンマーにより人力で破砕した(機械的処理)。このとき、機能付与層が一部剥離しているのが確認された。
次いで、内容積100cmの反応管に、機械的処理後の機能付与層付成形体2.99gと水(50cm)を導入して、密封した。この反応管を溶融塩浴に投入して、水熱処理温度140℃、水熱処理時間1時間の水熱処理条件で、水熱処理した(回収工程)。これにより、機械的処理で未剥離であった機能付与層は熱可塑性樹脂成形体から完全に剥離した。水熱処理後に、反応管を水冷して、反応物をろ過し、固形物を水洗及び熱風乾燥して、熱可塑性樹脂成形体2.98gを回収した。回収した熱可塑性樹脂成形体を目視で観察したところ熱的な変形は見られなかった。
[実施例2]
実施例1の操作において、機械的処理後の機能付与層付成形体の仕込み量を5.03gとし、水熱処理温度を150℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、機械的処理及び回収工程を行って、熱可塑性樹脂成形体4.93gを回収した。
水熱処理により未剥離の機能付与層が完全に剥離した。回収した熱可塑性樹脂成形体は熱的に若干変形しており、鋭い破砕端面は丸く滑らかになっていた。
[実施例3]
市販のヘッドランプカバー(自動車の産業廃棄物の中から得たため由来は不詳、熱可塑性樹脂成形体はポリカーボネート製、機能付与層は無機物質からなる透明なハードコート層)を、ハンマーにより人力で数センチメートル大(差し渡し幅は概ね3~5cm程度)に破砕した(1回目の機械的処理)。このとき、機能付与層は、目視により、ほぼ完全に残存しているのが確認された。
次いで、粉砕機としてワンダークラッシャー(大阪ケミカル社製、釜の中で刃物が回転する機構による粉砕する装置)を用いて、1回目の機械的処理で得られたヘッドランプカバーの粉砕物を更に粉砕した(2回目の機械的処理)。条件として、回転数約7000rpmで、破砕時間を30秒、60秒若しくは90秒の3段階に設定した。いずれの条件においても、差し渡し幅1cm程度の破片に収束するとともに、表面の研磨(剥離)が進行して微粉が生じた。破砕時間を長くするにつれて研磨の度合いが進行することが観察された。
破砕時間90秒の破片の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果、無数のスジ状の傷痕や熱可塑性樹脂成形体が削られて毛羽立った様子や擦られて捲られた様子がみられる一方で、傷痕のない平坦な箇所(概ね0.1~0.2mm四方程度の面積)も観察されたが、観察したいくつかの視野の範囲では、残存するハードコート層は観察されなかった。
次いで、2回目の機械的処理で得られたヘッドランプカバーの粉砕物を用いて、実施例1又は2と同様に140℃又は150℃で1時間水熱処理をした。その結果、未剥離で残存している可能性があるハードコート層は実質的に完全に剥離され、マテリアルリサイクルに耐える高純度を確保できる。
[実施例4]
市販の自動車ドアハンドル(熱可塑性樹脂成形体はPC/ABS共重合体ポリマーアロイ材料製、基材のポリマー組成物の相分離構造はPCが連続層を成す。機能付与層として金属メッキ層)を、実施例3のハンマーによる粉砕処理(1回目の機械的処理)と同様にして粉砕処理したが、粉砕できなかった。そのため、粉砕装置としてオリエントミル(オリエント粉砕機社製)を用いて、自動車ドアハンドルを破砕した。条件としては、試料投入量約3kg、破砕時間600秒とした。こうして2回目の機械的処理を行い、8mm及び10mmのふるいを通過したものを、集めた。得られた粉砕物を確認したところ、金属メッキ層は完全に剥離していなかったものの、金属メッキを主成分とする粉末が生成した。
次いで、2回目の機械的処理で得られたドアハンドルの粉砕物を、実施例1又は2と同様(連続層をなすPCのガラス転移点近傍の温度条件)にして、水熱処理を行った。これにより、金属メッキ層の80%(目視によるおおよその面積率)が剥離して、熱可塑性樹脂成形体上の金属メッキ層は、疎らに残存し、またその厚さも薄化していた。
[実施例5]
市販のどんぶり(熱可塑性樹脂成形体はポリブチレンテレフタレート(PBT)製、機能付与層は薄い青緑色の感熱色素による印刷層)に対して、実施例3と同様の2段階の機械的処理(ハンマーによる人力破砕、次いでワンダークラッシャーによる粉砕)を行ったが、印刷層の研磨(剥離)は目視観察において見られなかった。そこで、ハンマーによる人力破砕(粗砕)で得た数センチメートル大の破片(約3.5g)をオートクレーブ中に約50gの水とともに封入し、静置条件で200℃1時間の水熱処理を施した結果、破片形状は保持されたまま融着し、印刷層の青緑色は目視観察でほぼ完全に脱色した。破片に由来する固体の回収率は100.6質量%と測定された(PBT樹脂の吸水による質量増の寄与があると考えられる)。以上の結果から、印刷層は樹脂成形体であるPBTの表層に強固に固着又は浸透しているため機械的処理では除去は困難であるが、水熱処理により、PBT樹脂表層の加水分解の機構により脱色したものと推定された。
[比較例1]
実施例2において、水熱処理温度をポリカーボネートの軟化点を超える200℃に変更したこと以外は、実施例2と同様にして、機械的処理及び回収工程を行って、熱可塑性樹脂成形体を構成しているポリカーボネート約5gを回収した。
水熱処理により未剥離の機能付与層は熱可塑性樹脂成形体から一旦剥離するものの、熱可塑性樹脂成形体から溶出したポリカーボネートが剥離した機能付与層を巻き込んで団子状(不定形)の固形物となり、回収した固形物中のポリカーボネートの含有量(固形物純度)は処理前の熱可塑性樹脂成形体中の含有量(純度)よりも低下した。
[比較例2]
実施例5において温度条件を170℃とした他は同様の操作を行った。その結果、印刷層の青緑色は目視観察で減退したが残存していた。破片に由来する固体の回収率は100.5質量%と測定された(PBT樹脂の吸水による質量増の寄与があると考えられる)。以上の結果から、170℃というPBTの軟化点からかなり離れた低温条件では、樹脂成形体であるPBT分子の加水分解は不十分であるために、PBTの成形表層に強固に固着又は浸透している印刷層の色素分子の除去は進まなかったものと推定された。
[参考例1]ポリアセタール(略称はPOM)の水熱処理実験
三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製のPOM(コポリマータイプ。登録商標「ユピタール」、グレード名「F20-03N」。無添加グレード、白色ペレット状。GPC測定[条件は後述]による重量平均分子量Mwは18万)約5gを、オートクレーブ中に約50gの水とともに封入し、80℃、150℃及び200℃の3水準の温度で1時間水熱処理を行った。固体の回収率(重量測定)は、80℃及び150℃の場合は定量的(99~100質量%。ペレット形状を保持し融着は見られなかった。)であり、200℃の場合はほぼゼロ(0.1質量%)であった。Mwは、80℃の場合は18万、150℃の場合は16万であった。以上結果と上記実施例の知見から、POM成形体の場合、150℃又はもう少し低い温度から融点(165~181℃)までの温度範囲で、水熱処理による機能付与層の除去が可能であると推測される。
[参考例2]半芳香族ポリアミド(略称はPAMXD6)の水熱処理実験
三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製の半芳香族ポリアミドPAMXD6(メタキシレンジアミンとアジピン酸を原料モノマーとするポリアミド。登録商標「レニー」、グレード名「6000」。無添加グレード、白色ペレット状。GPC測定[条件は後述]による重量平均分子量Mwは5.5万)約5gを、オートクレーブ中に約50gの水とともに封入し、100℃、150℃及び200℃の3水準の温度で1時間水熱処理を行ったところ、固体の回収率(重量測定)はそれぞれ102質量%、101質量%及び87質量%、Mwはそれぞれ5.4万、5.2万および2.8万であった。いずれの場合も、ペレット形状を保持し融着は見られなかった。以上結果と上記実施例の知見から、PAMXD6(Tg75~102℃、融点243℃)成形体の場合、Tg近傍の100℃から200℃程度までの温度範囲で、水熱処理による機能付与層の除去が可能であると推測される。実施例で用いたPBT及び参考例1のPOM同様の結晶性の縮合系ポリマーであるにも関わらず100℃程度の低温で加水分解による分子量低下が見られるのは、ポリアミドは一般的に吸水性が高いので容易に水分子が浸透することが理由と考えられた。
[参考例1及び参考例2のGPC測定条件]
GPC装置: HLC-8420GPC(東ソー社製)
カラム: TSKgel Super AWM-H(6.0mm-I.D.×15cm)×2本(東ソー社製)
検出器: 示唆屈折率計(RI検出器)、polarity=(+)
溶離液: HFIP(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール)(富士フイルム和光純薬社製)+10mM-トリフルオロ酢酸ナトリウム塩(富士フイルム和光純薬社製1級)
流速: 0.3mL/分
カラム温度: 40℃
試料濃度: 1mg/mL
試料注入量: 20μL
試料前処理: 溶離液に室温で一晩静置溶解し、緩やかに振り混ぜ、0.45μmのPTFEカートリッジフィルターでろ過した。
検量線: 標準PMMA(Agilent Technologies社製)を用いた3次近似曲線(PMMA換算分子量となる)。
上記実施例に示されるように、機能付与層付成形体を単に水熱処理するという簡便な方法によって、熱可塑性樹脂成形体から機能付与層を1時間という短時間で剥離(除去)でき、特に機械的処理を更に行うと、機能付与層をより効果的に剥離でき、熱可塑性樹脂成形体自体を回収できる。また、熱可塑性ポリマーの劣化(分解)を抑えて、水熱処理前の品質(分子量等)を良好に維持した熱可塑性ポリマーを含む熱可塑性樹脂成形体を高収率で回収できる。

Claims (4)

  1. 機能付与層を有する熱可塑性樹脂成形体を、101kPa以上の圧力下、前記熱可塑性樹脂成形体を形成している熱可塑性ポリマーの軟化点±30℃の温度条件で、水熱処理することにより、前記機能付与層を前記熱可塑性樹脂成形体から分離させる、熱可塑性樹脂成形体の回収方法。
  2. 前記熱可塑性樹脂成形体に対して機械的処理を加えて前記機能付与層の分離を促進する、請求項1に記載の熱可塑性樹脂成形体の回収方法。
  3. 前記熱可塑性樹脂成形体を形成している熱可塑性ポリマーが縮合系ポリマーである、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂成形体の回収方法。
  4. 前記機能付与層が前記熱可塑性樹脂成形体の表面に存在する、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂成形体の回収方法。
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