JP2022190956A - 軸受用樹脂保持器および転がり軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】円環部がたわむ径方向の繰り返し応力を低減し、ウェルド部の強度を向上した軸受用樹脂保持器、およびこれを備える転がり軸受を提供する。【解決手段】樹脂保持器4は、複数の柱部41と、1対の円環部46と、ゲート部43と、ウェルド部44とを備える。複数の柱部41は、周方向52に沿って間隔をあけて配置される。1対の円環部46は、複数の柱部41の軸方向51に間隔をあけて配置される。ゲート部43は、複数の柱部41のうち少なくとも1つの柱部41に形成される。ウェルド部44は、複数の柱部41のうち周方向52について隣接する1対の柱部41の間および1対の円環部46の間に形成されるポケット42の、軸方向51に隣接する円環部46の部分に形成される。円環部46は、柱部41と重なる位置での径方向53についての第1寸法41hよりも、ウェルド部44での径方向53についての第2寸法44hが大きい。【選択図】図3

Description

本開示は、軸受用樹脂保持器および転がり軸受に関するものである。
転がり軸受には、樹脂製の保持器(樹脂保持器)が用いられる場合がある。樹脂保持器は、産業機械用または鉄道車両用として用いられる。樹脂保持器は、金型を用いた射出成型により成形される。つまり、成形時には金型のゲートから合成樹脂が金型のキャビティ内に注入される。キャビティ内に注入された樹脂は互いに反対方向である2方向に流れるが、その2方向に流れた樹脂同士はキャビティ内を周回することにより合流する。このとき合流した樹脂同士は互いに密着せずに冷却固化される。これにより樹脂が合流した位置にてウェルドと呼ばれる線状の痕が形成される。
一般的に樹脂保持器は、ウェルドが形成された部分(ウェルド部)において、それ以外の位置、たとえばゲート部よりも強度が劣る傾向がある。なおゲート部は、樹脂保持器において金型のゲートから合成樹脂が注入された部分であり、ゲート部からキャビティ内全体に樹脂が流れることで樹脂保持器が形成される。そこで特開2011-52784号公報(特許文献1)では、ゲート部が形成された柱部と円環部とが交わる円弧状の隅部の曲率半径を、ウェルド部が形成された柱部と円環部とが交わる円弧状の隅部の曲率半径よりも大きくしている。これにより、ゲート部が位置する柱部とウェルド部が位置する柱部との破断強度差を小さくしている。
特開2011-52784号公報
転がり軸受の径方向、すなわち平面視された環状形状の径方向に対して高周波の振動が発生する使用条件下では、保持器は径方向の重力加速度を受け、その円環部に対して大きな繰り返し応力が発生する。ウェルド部付近はゲート部付近と比較して強度が劣る傾向があるため、ウェルド部付近に繰り返し応力が加わる環境下で転がり軸受を使用すれば、保持器の強度が不十分となる可能性がある。
一方、特開2011-52784号公報にて提案される構成による破断強度差の改善は、柱部と円環部とが交わる円弧状の隅部においてのみ有効である。ころの進み遅れによるポケット周方向の荷重は柱部に加わるためである。このため上記公報によれば、円環部の径方向に加わる荷重すなわち円環部がたわむ方向の荷重に対しては効力を有さない。特に、複数の柱部のそれぞれにゲート部が形成され、複数のポケットのそれぞれの軸方向に隣接する円環部の部分にウェルド部が形成される樹脂保持器においては、円環部がたわむ方向の荷重が発生したときにウェルド部に繰り返し応力が加わる頻度が非常に高くなる。このため特開2011-52784号公報の提案によってもウェルド部の強度として十分ではない。
本開示は、上記の課題に鑑みなされたものである。その目的は、円環部がたわむ径方向の繰り返し応力を低減し、ウェルド部の強度を向上した軸受用樹脂保持器、およびこれを備える転がり軸受を提供することである。
本開示に従った軸受用樹脂保持器は、複数の柱部と、1対の円環部と、ゲート部と、ウェルド部とを備える。複数の柱部は、周方向に沿って間隔をあけて配置される。1対の円環部は、複数の柱部の軸方向に間隔をあけて配置される。ゲート部は、複数の柱部のうち少なくとも1つの柱部に形成される。ウェルド部は、複数の柱部のうち周方向について隣接する1対の柱部の間および前記1対の円環部の間に形成されるポケットの、軸方向に隣接する円環部の部分に形成される。円環部は、柱部と重なる位置での径方向についての第1寸法よりも、ウェルド部での径方向についての第2寸法が大きい。
本開示によれば、円環部がたわむ径方向の繰り返し応力を低減し、ウェルド部の強度を向上した軸受用樹脂保持器、およびこれを備える転がり軸受を提供できる。
本実施の形態の軸受用樹脂保持器が適用される円筒ころ軸受の構造を示す概略断面図である。 本実施の形態に係る樹脂保持器の概略斜視図である。 図2を図中矢印で示す方向Aから見た概略平面図である。 図3の円環部の一部を拡大しその寸法の大小関係を示す概略図、および上記円環部がたわみ方向の荷重を受けたときの円環部に生じる主応力の大きさの分布を示すグラフである。 図2を図中矢印で示す方向Aから見た概略平面図の変形例である。 比較例に係る樹脂保持器の概略斜視図である。 図6を図中矢印で示す方向Bから見た概略平面図である。 図7の円環部の一部を拡大しその寸法の大小関係を示す概略図、および上記円環部がたわみ方向の荷重を受けたときの円環部に生じる主応力の大きさの分布を示すグラフである。
以下、本実施の形態について図に基づいて説明する。
まず、本実施の形態に係る軸受用の樹脂保持器を備える転がり軸受の構造について説明する。図1は、本実施の形態の軸受用樹脂保持器が適用される円筒ころ軸受の構造を示す概略断面図である。図1を参照して、本実施の形態に係る円筒ころ軸受100は、外輪1と、内輪2と、複数のころ3と、樹脂保持器4とを主に備えている。外輪1は、環形状からなり、内周面に外輪転走面1Aが形成されている。内輪2は、環形状からなり、外周面に内輪転走面2Aが形成されている。内輪2は、内輪転走面2Aが外輪転走面1Aに対向するように外輪1の内側に配置されている。
ころ3は、円筒形状を有しており、ころ転動面3Aにおいて内輪転走面2Aおよび外輪転走面1Aに接触している。また、ころ3は、樹脂材料からなる樹脂保持器4により周方向に所定のピッチで配置されることにより、外輪1および内輪2の円環状の軌道上に転動自在に保持されている。このような構成により、円筒ころ軸受3の外輪1および内輪2は、互いに相対的に回転可能となっている。
以上においては一例として円筒ころ軸受について説明している。ただし本実施の形態の軸受用樹脂保持器が適用される転がり軸受は円筒ころ軸受に限られない。たとえば本実施の形態の軸受用樹脂保持器は、円錐ころ軸受または深溝玉軸受に適用されてもよい。
図2は、本実施の形態に係る樹脂保持器の概略斜視図である。図3は、図2を図中矢印で示す方向Aから見た概略平面図である。図2および図3を参照して、本実施の形態の軸受用の樹脂保持器4は、複数の柱部41と、ゲート部43と、ウェルド部44と、1対の円環部46とを主に備えている。なお図2および図3では、説明の便宜上、軸方向51、周方向52および径方向53が用いられる。軸方向51は、樹脂保持器4がたとえば図1の円筒ころ軸受100に備えられた状態における円筒ころ軸受100の円環形状の中心を通る軸の方向である。周方向52は、当該円筒ころ軸受100の円環形状の円周(円弧)に沿う方向である。径方向53は、当該円筒ころ軸受100の軸が通る円環形状の半径が延びる方向であり、円筒ころ軸受100の軸が通る中心から円環形状の円周に直角に延びる方向である。
柱部41は、樹脂保持器4の周方向52に沿って間隔をあけて複数(たとえば14本)配置されており、軸方向51に沿って延びている。これらの柱部41は、周方向52に沿って等間隔で配置されており、いずれも軸方向51に沿う長さがほぼ等しい。柱部41は、1対の円環部46を端部として、それらの間の領域を延びている。1対の円環部46は、軸方向51についての一方の円環部(たとえば図2の手前側、図3で見えている側)およびその反対側の他方の円環部のそれぞれとして配置される。1対の円環部46は、複数の柱部41のそれぞれの軸方向51に、互いに間隔をあけて配置される。言い換えれば円環部46は、複数のポケット42のそれぞれの軸方向51の一方側および他方側の、樹脂保持器4を構成する材料等が配置される領域である。円環部46は、たとえばその径方向53の外周部が円形となった円環状である。ここでは図2に示すような、径方向53の外周部が円形であり内周部は円形でない形状のものについても円環部46と表記する。
ポケット42は、周方向52について隣接する1対の柱部41の間、および1対の円環部46の間に形成される。したがってポケット42は、樹脂保持器4の周方向52に沿って間隔をあけて複数(たとえば14箇所)形成されている。つまりポケット42は、柱部41と同数だけ形成されている。ポケット42は、上記隣接する1対の柱部41の間と、軸方向51の一方および他方の端部である1対の円環部46の間とに囲まれた、樹脂保持器4を構成する樹脂などの材料が欠落した空隙の領域である。ポケット42は、図1のころ3を回転自在に保持する。
ゲート部43は、柱部41に形成されている。図2および図3に示すように、ゲート部43は複数の柱部41のそれぞれに形成されていてもよい。図2に示すように、ゲート部43はこれが形成される柱部41の径方向53についての内側の表面から突起するように形成されてもよい。しかしゲート部43は上記のような突起形状を有さなくてもよい。すなわちゲート部43はたとえば柱部41の表面の一部に孔部として形成されてもよい。また図3のゲート部43は、(後述の図4に示すように)円環部46の内側に突起する部分が、軸方向51からの平面視において台形状であってもよい。この場合、ゲート部43の台形状は、下底の部分が柱部41の周方向のほぼ全体にわたる幅となるように形成されてもよい。つまりゲート部43の台形状の下底の両端部は、ポケット42の内壁に接する位置に形成されてもよい。ポケット42の内壁は、図3および後述の図4に示すように、軸方向51からの平面視において曲線状すなわち円弧状であってもよいし、楕円形状および放物線状の一部であってもよい。
ウェルド部44は、1対の円環部46のそれぞれに形成されている。ウェルド部44は特に、複数のポケット42のそれぞれの、軸方向51に隣接する円環部46の部分に形成されている。言い換えればウェルド部44は、軸方向51から円環部46を平面視したときの、複数のポケット42のそれぞれと重なる円環部46の部分に形成されている。ウェルド部44は樹脂保持器4の製造工程において溶融された樹脂材料が合流し相互に接合されるように形成される。つまり周方向52に流れる溶融された樹脂材料が合流等することによりウェルド部44が形成されている。このためウェルド部44は、ポケット42の軸方向51に隣接する領域(円環部46を含む領域)の軸方向51についての全体を、軸方向51に沿って延びるように形成されていてもよい。ウェルド部44は、その延びる方向(軸方向51)に交差する方向(周方向52)について微小な隙間を有するように形成されていてもよい。またウェルド部44は、1対の円環部46、すなわち軸方向51についてのポケット42の一方側の円環部46およびそれと反対側の他方側の円環部46の双方に形成されている。
図4は、図3の円環部の一部を拡大しその寸法の大小関係を示す概略図、および上記円環部がたわみ方向の荷重を受けたときの円環部に生じる主応力の大きさの分布を示すグラフである。図4を参照して、円環部46は、柱部41と重なる位置での径方向53についての第1寸法よりも、ウェルド部44での径方向53についての第2寸法が大きい。ここで円環部46が柱部41と重なる位置とは、特に周方向52についてゲート部43と座標が一致する円環部46内での位置を意味する。さらに言い換えれば、円環部46が柱部41と重なる位置とは、たとえば図4のように図2の矢印Aで示す軸方向51から樹脂保持器4を平面視したときに、ゲート部43の径方向53に隣接する(図4においてゲート部43の直下に隣接する)柱部41が配置される位置を意味する。すなわち図4において、径方向53についての柱部41の高さ41h(第1寸法)よりも、径方向53についてのウェルド部44の高さ44h(第2寸法)が大きい。より具体的には、たとえば高さ44hは高さ41hの1.03倍以上であることが好ましく、1.05倍以上であってもよい。さらに高さ44hは高さ41hの1.1倍以上であってもよい。
また、特に図2~図4のようにゲート部43が柱部41の表面に対して突起した形状を有する場合には、複数の柱部41のゲート部43が形成される部分の径方向53についての第3寸法は、第1寸法および第2寸法よりも大きい。ここで複数の柱部41のゲート部43が形成される部分とは、柱部41のうちその真上に突起形状のゲート部43が形成(載置)されている領域を意味する。このため柱部41のゲート部43が形成される部分の径方向53に沿う第3寸法は、上記の第1寸法(柱部41のみの高さ41h)に、その真上のゲート部43の径方向寸法を加えたものであり、図4中の高さ43hである。より具体的には、たとえば高さ43hは高さ41hの1.05倍以上であることが好ましく、1.1倍以上であってもよい。さらに高さ43hは高さ41hの1.2倍以上であってもよい。
ゲート部43は、複数の柱部41のそれぞれの軸方向51についての中央部に形成されている。ただしこれに限らず、たとえばゲート部43は、軸方向51について、一方の円環部46とゲート部43との距離Dが、一方の円環部46と他方の円環部46との距離Lの25%以上75%以下の位置に形成されてもよい。ここでのゲート部43の位置は、ゲート部43の軸方向51の中央の位置を意味する。複数の柱部41のそれぞれの間で、ゲート部43が配置される軸方向51の位置が異なっていてもよい。たとえば第一のゲート部43は上記の距離Dが上記の距離Lの25%の位置に形成され、それの周方向52に隣接する第二のゲート部43は柱部41の軸方向51の中央部に形成され、さらにそれの周方向52に隣接する第三のゲート部43は距離Dが距離Lの75%の位置に形成されてもよい。
ウェルド部44は、周方向52についてのポケット42を形成する円環部46の部分の中央部に形成されている。ただしこれに限らず、たとえばウェルド部44は、ポケット42を形成する部分の円環部46における、周方向52の一方の端部から他方の端部までの距離の25%以上75%以下の位置に形成されてもよい。
図3を再度参照して、樹脂保持器4の径方向53についての内径部47は多角形状であることが好ましい。内径部47は、突起形状を有する複数のゲート部43のそれぞれの最下部、これが形成される柱部41の表面との境界である境界部48のそれぞれと、複数のウェルド部44のそれぞれの最も径方向53の内側の点とを結んでなる環状の部分である。つまり内径部47は樹脂保持器4の径方向53の最も内側の部分により形成される部分である。また境界部48は、特に図3のような突起形状を有するゲート部43の最下部である。ただしここで、図5は、図2を図中矢印で示す方向Aから見た概略平面図の変形例である。図5を参照して、樹脂保持器4の径方向53についての内径部47は曲線状であってもよい。内径部47の曲線は、境界部48が最も径方向53の外側つまり図3における底部となり、ウェルド部44が最も径方向53の内側つまり図3における頂部となる。内径部47の曲線状は円弧状であってもよいし、楕円または放物線の一部であってもよい。
樹脂保持器4を構成する樹脂材料は、樹脂を主成分とする材料であってもよい。ここで樹脂を主成分とする材料とは、完全に樹脂のみからなる場合と、成分のほとんどが樹脂ではあるがごく微量の樹脂以外の物質を含む場合との双方を含む。あるいは樹脂保持器4を構成する樹脂材料は、樹脂と繊維強化材との双方を含有する合成樹脂であってもよい。より具体的には、上記の樹脂は、46ナイロンおよび66ナイロンなどのポリアミド系樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルニトリル(PEN)からなる群から選択されるいずれかであることが好ましい。また繊維強化材は、ガラス繊維および炭素繊維の少なくともいずれかであることが好ましい。繊維強化材は、樹脂と併せた合成樹脂中に10質量%以上50質量%以下だけ含まれることが好ましい。
(作用効果)
図6~図8の比較例と比較しながら、本実施の形態の作用効果について説明する。
図6は、比較例に係る樹脂保持器の概略斜視図である。図7は、図6を図中矢印で示す方向Bから見た概略平面図である。図6および図7を参照して、比較例の軸受用の樹脂保持器4は、大筋で図2および図3の本実施の形態の樹脂保持器4と同様の構成である。ただし比較例では、内径部47が円形状を有している。すなわち樹脂保持器4の円環形状の中心から複数の境界部48のそれぞれまでの径方向53についての距離と、円環形状の中心から複数のウェルド部44のそれぞれの最も径方向53の内側の点までの径方向53についての距離とがほぼ等しい。このため複数の境界部48と、複数のウェルド部44の最も内側の点とが、すべて同一の円周上に配置可能である。図8は、図7の円環部の一部を拡大しその寸法の大小関係を示す概略図、および上記円環部がたわみ方向の荷重を受けたときの円環部に生じる主応力の大きさの分布を示すグラフである。図8を参照して、この場合、高さ41hと高さ44hとはほぼ等しくなる。図8における高さ43hは、高さ41hおよび高さ44hよりも大きくてもよい。
図8の比較例のように高さ41hと高さ44hとが等しい場合には、円環部46におけるウェルド部44(高さ44hの位置)と、円環部46が柱部41と軸方向51からの平面視にて重なる部分の高さ41hの位置との断面二次モーメントがほぼ等しい。この場合、図8のグラフの縦軸に示すように、たわみ方向(径方向53)に沿う荷重が円環部46に加われば、円環部46のうち柱部41のゲート部43が形成される領域に隣接する領域(柱部41と平面視にて重なる領域:図4、図8のグラフ中「柱部」)よりも、ウェルド部44、つまりポケット42の軸方向に隣接する円環部46のうち周方向52の中央部付近(図4、図8のグラフ中「ポケット中央部」)に発生する径方向53に沿う主応力が大きくなる。このため図8では、柱部41のゲート部43付近に比べてウェルド部44において、環形状の内側から外側へのたわみ応力が印加した際に強度として不十分となる可能性が高くなる。従って円環部46は、ウェルド部44において柱部41と平面的に重なる領域よりも強度が弱くなる。
以上の課題に鑑み、本実施の形態に係る軸受用の樹脂保持器4は、複数の柱部41と、1対の円環部46と、ゲート部43と、ウェルド部44とを備える。複数の柱部41は、周方向52に沿って間隔をあけて配置される。1対の円環部46は、複数の柱部41の軸方向51に間隔をあけて配置される。ゲート部43は、複数の柱部41のうち少なくとも1つの柱部41に形成される。ウェルド部44は、複数の柱部41のうち周方向52について隣接する1対の柱部41の間および1対の円環部46の間に形成されるポケット42の、軸方向51に隣接する円環部46の部分に形成される。円環部46は、柱部41と重なる位置での径方向53についての第1寸法(高さ41h)よりも、ウェルド部44での径方向53についての第2寸法(高さ44h)が大きい。
このように(図4のように)すれば、円環部46におけるウェルド部44(高さ44hの位置)の断面二次モーメントが、円環部46が柱部41と軸方向51からの平面視にて重なる高さ41hの位置の断面二次モーメントに比べて小さくなる。このため図4に示すように、たわみ方向(径方向53)に沿う荷重が円環部46に加われば、図8の比較例に比べて、ウェルド部44に発生する応力(径方向53に沿う主応力)が、柱部41と平面視にて重なる円環部46に発生する主応力よりも小さくなる。つまり図4のウェルド部44は、径方向53に沿う、環形状の内側から外側に向かうたわみ応力が加わっても、比較例に比べて曲げなどの変形が起こりにくくなる。本実施の形態の樹脂保持器4は、円環部46にたわみ方向(径方向53)に沿う繰り返し応力が発生したとき、ウェルド部44付近に生じた応力の一部がゲート部43付近に逃げる構造である。このため本実施の形態ではウェルド部44に高周波の振動による径方向53のたわみ応力が生じても、それにより発生するウェルド部44の径方向53に沿う主応力が緩和される。このため一般的に強度が弱いとされるウェルド部44における強度を向上し、円環部46全体の強度を向上できる。以上の作用効果は、上記樹脂保持器4を備える、たとえば図1の円筒ころ軸受100のような転がり軸受について、同様に得られる。本実施の形態では、ウェルド部44に発生する応力(径方向53に沿う主応力)が、柱部41と平面視にて重なる円環部46に発生する主応力の80%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましい。
なお図4と図8との比較により、本実施の形態によれば、比較例よりも、たわみ方向の応力が加わることにより、ゲート部43に隣接する円環部46の領域に生じる径方向53に沿う主応力が大きくなる。しかし元々、円環部46のうちゲート部43に隣接する領域は、円環部46のうちのウェルド部44よりも強度が高い。このためたとえ図4のグラフに示す主応力の大小関係になっても、樹脂保持器4の機能上、特に問題はない。
上記軸受用の樹脂保持器4において、複数の柱部41のそれぞれにゲート部43が形成され、ウェルド部44は、複数形成されるポケット42のそれぞれの軸方向51に隣接する円環部46の部分に形成されてもよい。この場合も、上記と同様の作用効果を奏することができる。
上記軸受用の樹脂保持器4において、ゲート部43は、複数の柱部41のそれぞれの軸方向51についての中央部に形成される。ウェルド部44は、軸方向51についてのポケット42の一方の円環部46および、当該一方の円環部46の反対側の他方の円環部46の双方に形成される。ウェルド部44は、周方向52についてのポケット42を形成する円環部46の部分の中央部に形成される。このような構成であってもよく、この場合も、上記と同様の作用効果を奏することができる。
上記樹脂保持器4において、ゲート部43は、柱部41の表面から突起する形状を有している。複数の柱部41のゲート部43が形成される部分の径方向53についての第3寸法(高さ43h)は、第1寸法(高さ41h)および第2寸法(高さ44h)よりも大きい。このような構成であってもよい。この場合も、上記と同様の作用効果を奏することができる。
上記樹脂保持器4において、径方向53についての内側の、複数のゲート部43の柱部41の表面との境界部48のそれぞれと複数のウェルド部44とを結んでできる内径部47は、たとえば図3に示すように多角形状であってもよい。このようにすれば、樹脂保持器4の製造工程が容易になる。ただし上記樹脂保持器4において、径方向53についての内側の、複数のゲート部43の柱部41の表面との境界部48のそれぞれと複数のウェルド部44とを結んでできる内径部47は、たとえば図5に示すように曲線状であってもよい。この場合も、上記と同様の作用効果を奏することができる。
上記樹脂保持器4は、樹脂材料により形成され、樹脂材料は、樹脂を主成分とする材料、および樹脂と繊維強化材との双方を含有する合成樹脂のいずれかであることが好ましい。このようにすれば、マシニングセンタ、CNC旋盤、フライス盤などの工作機械、および鉄道車両のいずれかの主軸の支持に用いられる円筒ころ軸受100(図1参照)について、運転時の保持器の摩耗粉による潤滑材の劣化の問題を低減できる。また上記の各工作機械(産業機械用)または鉄道車両用の円筒ころ軸受100の保持器を軽量化できる。
上記樹脂保持器4において、上記繊維強化材は、ガラス繊維および炭素繊維の少なくともいずれかであることが好ましい。これにより、樹脂保持器4全体の強度を高めることができる。
以上に述べた実施の形態(に含まれる各例)に記載した特徴を、技術的に矛盾のない範囲で適宜組み合わせるように適用してもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 外輪、1A 外輪転走面、2 内輪、2A 内輪転走面、3 ころ、3A ころ転動面、4 樹脂保持器、41 柱部、41h,43h,44h 高さ、42 ポケット、43 ゲート部、44 ウェルド部、46 円環部、47 内径部、48 51 軸方向、52 周方向、53 径方向、100 円筒ころ軸受。

Claims (9)

  1. 周方向に沿って間隔をあけて配置される複数の柱部と、
    前記複数の柱部の軸方向に間隔をあけて配置される1対の円環部と、
    前記複数の柱部のうち少なくとも1つの前記柱部に形成されたゲート部と、
    前記複数の柱部のうち前記周方向について隣接する1対の柱部の間および前記1対の円環部の間に形成されるポケットの、前記軸方向に隣接する前記円環部の部分に形成されるウェルド部とを備え、
    前記円環部は、前記柱部と重なる位置での径方向についての第1寸法よりも、前記ウェルド部での前記径方向についての第2寸法が大きい、軸受用樹脂保持器。
  2. 前記複数の柱部のそれぞれに前記ゲート部が形成され、
    前記ウェルド部は、複数形成される前記ポケットのそれぞれの前記軸方向に隣接する前記円環部の部分に形成される、請求項1に記載の軸受用樹脂保持器。
  3. 前記ゲート部は、前記複数の柱部のそれぞれの前記軸方向についての中央部に形成され、
    前記ウェルド部は、前記軸方向についての前記ポケットの一方の円環部および前記一方の円環部の反対側の他方の円環部の双方に形成され、
    前記ウェルド部は、周方向についての前記ポケットを形成する前記円環部の部分の中央部に形成される、請求項1または2に記載の軸受用樹脂保持器。
  4. 前記ゲート部は、前記柱部の表面から突起する形状を有しており、
    前記複数の柱部の前記ゲート部が形成される部分の前記径方向についての第3寸法は、前記第1寸法および前記第2寸法よりも大きい、請求項1~3のいずれか1項に記載の軸受用樹脂保持器。
  5. 前記径方向についての内側の、複数の前記ゲート部の前記柱部の表面との境界部のそれぞれと複数の前記ウェルド部とを結んでできる内径部は多角形状である、請求項1~4のいずれか1項に記載の軸受用樹脂保持器。
  6. 前記径方向についての内側の、複数の前記ゲート部の前記柱部の表面との境界部のそれぞれと複数の前記ウェルド部とを結んでできる内径部は曲線状である、請求項1~4のいずれか1項に記載の軸受用樹脂保持器。
  7. 樹脂材料により形成され、
    前記樹脂材料は、樹脂を主成分とする材料、および樹脂と繊維強化材との双方を含有する合成樹脂のいずれかである、請求項1~6のいずれか1項に記載の軸受用樹脂保持器。
  8. 前記繊維強化材は、ガラス繊維および炭素繊維の少なくともいずれかである、請求項7に記載の軸受用樹脂保持器。
  9. 請求項1~8のいずれか1項に記載の軸受用樹脂保持器を備える、転がり軸受。
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