JP2021092229A

JP2021092229A - ラジアルころ軸受用保持器

Info

Publication number: JP2021092229A
Application number: JP2019221413A
Authority: JP
Inventors: 康太郎山下; Yasutaro Yamashita
Original assignee: JTEKT Corp
Current assignee: JTEKT Corp
Priority date: 2019-12-06
Filing date: 2019-12-06
Publication date: 2021-06-17
Also published as: CN112922962A; US20210172476A1

Abstract

【課題】強度が向上された、樹脂からなるラジアルころ軸受用保持器を提供する。【解決手段】ラジアルころ軸受用の保持器２は、一対の環状体２１及びこれらの環状体２１を軸方向に連結する複数の柱２２が樹脂成形により一体に形成され、一対の環状体２１の間に複数の柱２２によって区画された複数のポケット２０が設けられている。環状体２１のポケット２０の軸方向にあたる部位には、径方向内方に突出する突起２１１が設けられている。【選択図】図５

Description

本発明は、樹脂製のラジアルころ軸受用保持器に関する。

従来、例えば自動車のトランスミッションに用いられる遊星歯車装置には、外歯歯車と内歯歯車との間に複数の遊星歯車が配置され、それぞれの遊星歯車がラジアルころ軸受によって回転可能に支持されたものがある。ラジアルころ軸受は、複数のころと、複数のころを転動可能に保持する保持器とを有している。遊星歯車装置に用いられるころ軸受は、遊星歯車の公転により発生する遠心力を受けながら遊星歯車の自転を支持するので、強度確保の観点から金属製の保持器が広く用いられていたが、軽量化や低コスト化の要請により、樹脂製の保持器を採用する試みがなされている（例えば、特許文献１参照）。

特許文献１に記載の保持器は、軸方向に間隔をあけて対向する２つの環状体からなるリブ部と、円周方向に所定間隔をあけて列設した複数の柱とが、樹脂材料により一体に形成されている。２つのリブ部のそれぞれには、強度向上のため、樹脂材料よりも強度が高い強度材料からなる環状の芯材が埋設されている。芯材は、圧延鋼材等の金属材料あるいはガラス繊維等の強化繊維を配合した樹脂材料によって形成されている。

特開２００６−７７８０１号公報

特許文献１に記載の保持器では、２つのリブ部のそれぞれに芯材を埋設するため、製造時の工数や重量が増大し、金属製の保持器との比較では軽量化及び低コスト化が図られているものの、より一層の軽量化及び低コスト化が望まれていた。本発明者は、このような事情に鑑みて、強度を向上させた樹脂保持器の開発に着手し、特に環状体の応力を分散させることで保持器の強度を高めることができるとの着想を得て本発明をなすに至った。すなわち、本発明は、強度が向上された、樹脂からなるラジアルころ軸受用保持器を提供することを目的とする。

本発明は、上記の目的を達成するため、一対の環状体及び前記環状体を軸方向に連結する複数の柱が樹脂成形により一体に形成され、前記一対の環状体の間に前記複数の柱によって区画された複数のポケットが設けられたラジアルころ軸受用保持器であって、前記一対の環状体のうち少なくとも何れかの環状体の前記ポケットの軸方向にあたる部位の少なくとも一箇所に、径方向内方に突出する突起が設けられた、ラジアルころ軸受用保持器を提供する。

本発明によれば、樹脂からなるラジアルころ軸受用保持器の強度を向上させることができる。

本発明の実施の形態に係る保持器を有するラジアルころ軸受が用いられた遊星歯車装置を示す分解斜視図である。（ａ）はころ軸受の断面をその周辺部と共に示す断面図であり、（ｂ）は（ａ）のＡ−Ａ線における断面図である。（ａ）は、ラジアルころ軸受の側面図であり、（ｂ）は、ラジアルころ軸受の軸方向端面を示す正面図である。図３（ａ）のＢ−Ｂ線における保持器の断面図である。保持器の軸方向一端部を示す斜視図である。保持器の内周面を平面状に展開して模式的に示す展開図である。実施の形態に係るラジアルころ軸受の保持器に発生する応力分布を示す応力分布図である。比較例に係るラジアルころ軸受の保持器に発生する応力分布を示す応力分布図である。

［実施の形態］
本発明の実施の形態について、図１乃至図７を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。

（遊星歯車装置の全体構成）
図１は、本発明の実施の形態に係る保持器を有するラジアルころ軸受が用いられた遊星歯車装置を示す分解斜視図である。図２（ａ）は、ころ軸受の断面をその周辺部と共に示す断面図であり、図２（ｂ）は、図２（ａ）のＡ−Ａ線における断面図である。

遊星歯車装置１は、外周面に外歯１１１を有するサンギヤ１１と、内周面に内歯１２１を有するインターナルギヤ１２と、サンギヤ１１とインターナルギヤ１２との間に配置された複数（本実施の形態では３つ）のプラネタリギヤ１３と、複数のプラネタリギヤ１３をそれぞれ支持する複数（３本）の支持軸１４１を備えたキャリア１４と、複数のプラネタリギヤ１３及び支持軸１４１の間にそれぞれ配置されたラジアルころ軸受１０（図２参照）と、それぞれのプラネタリギヤ１３の軸方向両端面１３ａ，１３ｂに対向して配置された複数のワッシャ１５とを備えている。プラネタリギヤ１３は、サンギヤ１１の外歯１１１及びインターナルギヤ１２の内歯１２１に噛み合う外歯１３１を有している。

サンギヤ１１、インターナルギヤ１２、及びキャリア１４は、回転軸線Ｏを中心とする同軸上で相対回転可能に支持されている。また、それぞれのプラネタリギヤ１３は、支持軸１４１の周りを回転軸線Ｏ_１〜Ｏ_３を中心として回転する。複数のプラネタリギヤ１３は、回転軸線Ｏを中心として公転し、かつ回転軸線Ｏ_１〜Ｏ_３を中心として自転する。図２（ａ）及び（ｂ）では、回転軸線Ｏ_１を中心として回転する一つのプラネタリギヤ１３を示している。以下、回転軸線Ｏ_１に平行な方向を軸方向といい、回転軸線Ｏ_１に対して垂直な方向を径方向という。

サンギヤ１１の中心部には、シャフト１１０が相対回転不能に固定されている。プラネタリギヤ１３は、その中心部を貫通する軸孔１３０に支持軸１４１が挿通されており、軸孔１３０の内周面１３０ａと支持軸１４１の外周面１４１ａとの間にラジアルころ軸受１０が配置されている。ラジアルころ軸受１０は、樹脂製の保持器２と、金属製の複数（本実施の形態では９個）のころ３とを有している。ころ３は、円柱状に形成されており、プラネタリギヤ１３の自転に伴ってプラネタリギヤ１３の軸孔１３０の内周面１３０ａ及び支持軸１４１の外周面１４１ａを転動する。

キャリア１４は、ラジアルころ軸受１０を介してプラネタリギヤ１３を自転及び公転可能に支持している。また、キャリア１４は、複数のプラネタリギヤ１３を軸方向に挟む第１及び第２の円盤部１４２，１４３と、第１及び第２の円盤部１４２，１４３のそれぞれの外径側の端部同士を橋渡しする外郭部１４４と、第１の円盤部１４２の内径側の端部に固定された嵌合筒１４５とを有している。

嵌合筒１４５の内周には、図略のシャフトが相対回転不能に嵌合するスプライン嵌合部１４５ａが形成されている。外郭部１４４には、プラネタリギヤ１３の一部を突出させる開口１４４ａが形成されており、この開口１４４ａから突出したプラネタリギヤ１３の外歯１３１がインターナルギヤ１２の内歯１２１に噛み合っている。複数のワッシャ１５は、第１及び第２の円盤部１４２，１４３とプラネタリギヤ１３の軸方向両端面１３ａ，１３ｂとの間にそれぞれ配置されている。

図２（ａ）に示すように、支持軸１４１の両端部は、第１及び第２の円盤部１４２，１４３にそれぞれ形成された嵌合穴１４２ａ，１４３ａに圧入嵌合されている。支持軸１４１は、中心部に空洞１４０が形成された円筒状であり、この空洞１４０に連通する油孔１４１ｂが外周面１４１ａに開口している。空洞１４０に流入した潤滑油は、油孔１４１ｂからラジアルころ軸受１０に供給される。

次に、図３乃至図６を参照し、ラジアルころ軸受１０の構成について詳細に説明する。図３（ａ）は、ラジアルころ軸受１０の側面図であり、図３（ｂ）は、ラジアルころ軸受１０の軸方向端面を示す正面図である。図４は、図３（ａ）のＢ−Ｂ線における保持器２の断面図である。図５は、保持器２の軸方向一端部を示す斜視図である。図６は、保持器２の内周面を平面状に展開して模式的に示す展開図である。

保持器２は、リング状に形成された一対の環状体２１，２１と、一対の環状体２１，２１の間に設けられた複数の柱２２とを有し、一対の環状体２１，２１が複数の柱２２によって軸方向に連結されている。一対の環状体２１，２１と複数の柱２２とは、樹脂成形により一体に形成されている。この樹脂材料としては、例えば、ガラス繊維や炭素繊維等の補強繊維材を所定量添加した６６ナイロンやＰＰＳ（ポリフェニレンサルファイド)樹脂あるいはＰＢＴ（ポリブチレンテレフタレート）樹脂等を好適に用いることができる。

一対の環状体２１，２１の間には、複数の柱２２によって区画された複数のポケット２０が設けられている。柱２２の数ならびにポケット２０の数は、ラジアルころ軸受１０が有するころ３の数と同数であり、本実施の形態では、９本の柱２２が一対の環状体２１，２１の周方向に沿って等間隔に設けられている。それぞれのポケット２０は、隣り合う２本の柱２２と一対の環状体２１，２１により、矩形状に画成されている。一対の環状体２１，２１は、その形状及び大きさが互いに共通である。

ポケット２０からのころ３の離脱は、柱２２に設けられた内周側及び外周側の突起２２３，２２４（図４参照）によって抑止されている。図４では、一つのころ３を仮想線（二点鎖線）で示している。ポケット２０の径方向の中央部では、隣り合う２つの柱２２の間隔がころ３の直径よりも大きく形成されており、ころ３をポケット２０に収容する際には、柱２２を弾性変形させる。

それぞれの柱２２における保持器２の外周面２２ａには、潤滑油を流動させる油溝２２１が軸方向に延在して形成されている。また、それぞれの柱２２における保持器２の内周面２２ｂには、潤滑油を流動させる油溝２２２が軸方向に延在して形成されている。柱２２の内径側に形成された油溝２２２は、一対の環状体２１，２１のそれぞれの内周面２１ａを含んで保持器２の軸方向両端面２ａ，２ｂに至る範囲に直線状に形成されている。

保持器２は、金型内に溶融した樹脂を注入して射出成形することにより形成された単一の樹脂材料からなる。図６では、保持器２を射出成形する際の溶融樹脂の流れを複数の矢印で示すと共に、溶融樹脂が射出されるゲートにあたる部位を破線で囲んで符号Ｇで示している。本実施の形態では、三箇所から同時に金型のキャビティ内に溶融樹脂を注入して保持器２を成形する。

図６に示すように、三箇所のゲートＧから注入された溶融樹脂はそれぞれ二方向に分かれてキャビティ内を流動し、複数個所で合流する。この溶融樹脂の合流地点では、符号Ｗで示すウエルドが形成される。ここで、ウエルドとは、合流する溶融樹脂がぶつかり合って不可避的に生じる継ぎ目状の部分であり、他の部分に比較して強度が低い部分である。本実施の形態では、ウエルドＷが一対の環状体２１，２１のそれぞれの三箇所に形成される。環状体２１，２１においてウエルドＷが形成される部位は、ポケット２０の軸方向にあたる部位である。

サンギヤ１１又はインターナルギヤ１２の回転に伴い、キャリア１４が回転すると、保持器２は、プラネタリギヤ１３の公転に伴う遠心力を受けながら支持軸１４１の周りを回転する。このため、一対の環状体２１，２１には、遠心力によって略楕円形状に弾性変形することによる応力が発生する。特に、ウエルドＷが形成された部位に応力が集中すると、ウエルドＷを起点とする破損が発生しやすくなってしまう。

そこで、本発明では、応力集中を緩和して強度を向上させるため、一対の環状体２１，２１のうち少なくとも何れかの環状体２１のポケット２０の軸方向にあたる部位の少なくとも一箇所に、径方向内方に突出する突起２１１を設けることとしている。この突起２１１は、少なくとも樹脂成形の際にウエルドＷが発生する位置に設けられる。本実施の形態では、双方の環状体２１，２１の全てのポケット２０の軸方向両側にあたる部位に、それぞれ突起２１１を設けている。

図３（ｂ）に拡大して示すように、突起２１１は、径方向内側に向かって凸となる湾曲形状である。図３（ｂ）では、突起２１１が形成された部分に重ねて環状体２１の内周面２１ａを延長した延長線Ｌ_１を二点鎖線で図示している。また、図３（ｂ）では、突起２１１の裾野の先端部にあたる周方向両端部２１１ｂ，２１１ｂを結んだ直線Ｌ_２を一点鎖線で図示している。

三つのウエルドＷのそれぞれは、突起２１１の突出高さが最も高い頂部２１１ａに達している。すなわち、ウエルドＷは、突起２１１の高さ方向（径方向）の全体にわたって形成されている。ここで、突出高さとは、保持器２の径方向における延長線Ｌ_１からの距離をいう。頂部２１１ａは、直線Ｌ_２よりも径方向内方に突出しており、ころ３は、その一部が頂部２１１ａよりもさらに径方向内方に突出している。

なお、本実施の形態では、突起２１１の周方向幅（周方向両端部２１１ｂ，２１１ｂ間の距離）が、内周面２２ｂにおけるポケット２０の開口幅よりも狭く、突起２１１の全体がポケット２０の軸方向側にあたる部位に設けられているが、これに限らず、突起２１１の一部が柱２２の軸方向側にあたる部位に設けられていてもよい。すなわち、突起２１１の周方向両端部２１１ｂ，２１１ｂが柱２２と軸方向に並ぶ位置に存在していてもよい。

図７は、本実施の形態に係るラジアルころ軸受１０が遊星歯車装置１に組み込まれ、キャリア１４と共に公転した際に保持器２に発生する応力分布をグレースケールで示す応力分布図である。図８は、ラジアルころ軸受１０に替えて比較例に係るラジアルころ軸受１０Ａを用いた場合の応力分布をグレースケールで示す応力分布図である。比較例に係るラジアルころ軸受１０Ａは、保持器２に突起２１１が設けられていない他は本実施の形態に係るラジアルころ軸受１０と同様に構成されている。このため、図８において、ラジアルころ軸受１０Ａの各構成要素については、ラジアルころ軸受１０の各構成要素の符号を援用して付すことにより、重複した説明を省略する。

図７及び図８では、応力の大きさを色の濃さで示しており、濃色の部分ほど応力が大きく、淡色の部分ほど応力が小さくなる。なお、図７及び図８において、色の濃さと応力の大きさとの関係（尺度）は共通である。

図８に示すように、比較例に係るラジアルころ軸受１０Ａでは、ポケット２０の軸方向一側にあたる部位における環状体２１の周方向中央部に、径方向に沿って延びるように応力が大きい部分が発生している。そして、この応力が大きい部分にはウエルドＷが形成されているため、ウエルドＷが形成された部分に破断等が発生しやすくなる。

一方、本実施の形態に係るラジアルころ軸受１０では、比較例に係るラジアルころ軸受１０Ａに比較して応力が分散されており、ウエルドＷが形成された部分では応力が大きく低減されている。これにより、ウエルドＷを起点とする破損が発生しにくくなり、強度が向上する。また、本実施の形態では、ウエルドＷが形成された部分を含む全てのポケット２０の軸方向両側にあたる部位にそれぞれ突起２１１が設けられているので、環状体２１における応力集中が周方向全体で緩和され、これによっても保持器２の強度が向上する。

（付記）
以上、本発明を実施の形態及びその変形例に基づいて説明したが、これら実施の形態及び変形例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。

また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、一部の構成を省略し、あるいは構成を追加もしくは置換して、適宜変形して実施することが可能である。

２…保持器２０…ポケット
２１…環状体２２…柱
２１１…突起２１１ａ…頂部
Ｗ…ウエルド

Claims

一対の環状体及び前記環状体を軸方向に連結する複数の柱が樹脂成形により一体に形成され、前記一対の環状体の間に前記複数の柱によって区画された複数のポケットが設けられたラジアルころ軸受用保持器であって、
前記一対の環状体のうち少なくとも何れかの環状体の前記ポケットの軸方向にあたる部位の少なくとも一箇所に、径方向内方に突出する突起が設けられた、
ラジアルころ軸受用保持器。
前記突起は、少なくとも樹脂成形の際にウエルドが発生する位置に設けられている、
請求項１に記載のラジアルころ軸受用保持器。
前記ウエルドは、前記突起の突出高さが最も高い頂部に達している、
請求項１又は２に記載のラジアルころ軸受用保持器。