JP2022181634A - オーステナイト系ステンレス鋼材及びその製造方法、並びに加工製品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量基準で、C:0.010~0.100%、Si:2.00%以下、Mn:3.00%以下、P:0.035%以下、S:0.0300%以下、Ni:5.00~9.00%、Cr:18.0~22.0%、Cu:0.01~3.00%、Al:0.200%以下、N:0.100~0.200%を含み、残部がFe及び不純物からなり、
下記式(1)で表されるMd30が-20.0~30.0℃であり、且つ下記式(2)で表されるδcalが10.0以下であるオーステナイト系ステンレス鋼材である。
Md30=551-462(C+N)-9.2Si-8.1Mn-13.7Cr-29(Ni+Cu)-18.5Mo ・・・(1)
δcal=-15-44.91C-0.88Mn-2.31Ni+2.2Cr-1.08Cu-28.8N ・・・(2)
式(1)及び(2)中、各元素記号は、各元素の含有量を表す。
【選択図】なし
Description
しかしながら、オーステナイト系ステンレス鋼材の耐食性を向上させるためにCrなどの元素を増量すると、TRIP効果が抑制されてしまうとともに、δフェライト相が生じるため延性が低下してしまう。したがって、強度と延性とのバランスを確保しつつ、耐食性を向上させる手法の開発が望まれていた。
下記式(1)で表されるMd30が-20.0~30.0℃であり、且つ下記式(2)で表されるδcalが10.0以下であるオーステナイト系ステンレス鋼材である。
Md30=551-462(C+N)-9.2Si-8.1Mn-13.7Cr-29(Ni+Cu)-18.5Mo ・・・(1)
δcal=-15-44.91C-0.88Mn-2.31Ni+2.2Cr-1.08Cu-28.8N ・・・(2)
式(1)及び(2)中、各元素記号は、各元素の含有量を表す。
前記焼鈍工程で得られた焼鈍鋼板を調質圧延する調質圧延工程と
を含むオーステナイト系ステンレス鋼材の製造方法である。
Md30=551-462(C+N)-9.2Si-8.1Mn-13.7Cr-29(Ni+Cu)-18.5Mo ・・・(1)
δcal=-15-44.91C-0.88Mn-2.31Ni+2.2Cr-1.08Cu-28.8N ・・・(2)
式(1)及び(2)中、各元素記号は、各元素の含有量を表す。
なお、本明細書において成分に関する「%」表示は、特に断らない限り「質量%」を意味する。
ここで、本明細書において「ステンレス鋼材」とは、ステンレス鋼から形成された材料のことを意味し、その材形は特に限定されない。材形の例としては、板状(帯状を含む)、棒状、管状などが挙げられる。また、断面形状がT形、I形などの各種形鋼であってもよい。また、「不純物」とは、オーステナイト系ステンレス鋼材を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップなどの原料、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
また、本発明の実施形態に係るオーステナイト系ステンレス鋼材は、Mg:0.0001~0.1000%、REM:0.0001~0.1000%、Ca:0.0001~0.1000%、Nb:0.001~1.000%、V:0.001~1.000%、Zr:0.001~1.000%、W:0.001~1.000%、Co:0.001~1.000%、Hf:0.001~1.000%、Ta:0.001~1.000%、Sn:0.001~0.100%、Ti:0.001~1.000%から選択される1種以上を更に含むことができる。
以下、各成分について詳細に説明する。
Cの含有量は多すぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の耐食性が低下してしまう。そのため、Cの含有量の上限値は、0.100%、好ましくは0.080%、より好ましくは0.060%に制御される。一方、Cの含有量は少なすぎると、精練コストの上昇につながる。そのため、Cの含有量の下限値は、0.010%、好ましくは0.015%、より好ましくは0.020%に制御される。
なお、本明細書において「耐食性」とは、海水や塩水などのNaClを含む腐食環境下における耐食性のことを意味する。
Siの含有量は多すぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の加工性が低下してしまう。そのため、Siの含有量の上限値は、2.00%、好ましくは1.80%、より好ましくは1.50%に制御される。一方、Siの含有量の下限値は、特に限定されないが、好ましくは0.01%、より好ましくは0.05%、更に好ましくは0.10%である。
Mnは、オーステナイト相(γ相)生成元素である。Mnの含有量は多すぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の耐食性が低下してしまう。そのため、Mnの含有量の上限値は、3.00%、好ましくは2.80%、より好ましくは2.50%に制御される。一方、Mnの含有量の下限値は、特に限定されないが、好ましくは0.01%、より好ましくは0.05%、更に好ましくは0.10%である。
Pの含有量は多すぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の加工性が低下してしまう。そのため、Pの含有量の上限値は、0.035%、好ましくは0.034%、より好ましくは0.033%に制御される。一方、Pの含有量の下限値は、特に限定されないが、好ましくは0.001%、より好ましくは0.005%、更に好ましくは0.010%である。
Sの含有量は多すぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の製造性が低下してしまう。そのため、Sの含有量の上限値は、0.0300%、好ましくは0.0250%、より好ましくは0.0200%に制御される。一方、Sの含有量の下限値は、特に限定されないが、好ましくは0.0001%、より好ましくは0.0003%、更に好ましくは0.0005%である。
Niは、Mnと同様にオーステナイト相(γ相)生成元素である。Niは高価であるため、含有量が多すぎると、製造コストの上昇につながる。そのため、Niの含有量の上限値は、9.00%、好ましくは8.50%、より好ましくは8.00%に制御される。一方、Niの含有量は少なすぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の耐食性や加工性が低下する。そのため、Niの含有量の下限値は、5.00%、好ましくは5.50%、より好ましくは6.00%に制御される。
Crは、オーステナイト系ステンレス鋼材の耐食性に有効な元素である。Crの含有量を増加させることにより、高価な元素であるMoやNiの量を相対的に低減することができる。ただし、Crの含有量は多すぎると、金属間化合物(σ相)の生成が促進されるため、オーステナイト系ステンレス鋼材の加工性が低下してしまう。そのため、Crの含有量の上限値は、22.0%、好ましくは21.8%、より好ましくは21.5%に制御される。一方、Crの含有量は少なすぎると、耐食性が十分に得られない。そのため、Crの含有量の下限値は、18.0%、好ましくは18.5%、より好ましくは19.0%に制御される。
Cuの含有量は多すぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の耐食性が低下してしまう。そのため、Cuの含有量の上限値は、3.00%、好ましくは2.50%、より好ましくは2.00%に制御される。一方、Cuの含有量は少なすぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の加工性が低下してしまう。そのため、Cuの下限値は、0.01%、好ましくは0.10%、より好ましくは0.15%に制御される。
Alの含有量は多すぎると、介在物の生成量が増加して品質を低下させてしまう。そのため、Alの含有量の上限値は、0.200%、好ましくは0.180%、より好ましくは0.150%に制御される。一方、Alの含有量の下限値は、特に限定されないが、好ましくは0.0001%、より好ましくは0.001%、更に好ましくは0.005%である。
Nは、耐食性の向上に有効な元素である。Nを含有させることにより、高価な元素であるMoやNiの量を相対的に低減することができる。このようなNによる効果を得る観点から、Nの含有量の下限値は、0.100%、好ましくは0.105%、より好ましくは0.110%に制御される。一方、Nの含有量は多すぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の加工性が低下してしまう。そのため、Nの含有量の上限値は、0.200%、好ましくは0.190%、より好ましくは0.180%に制御される。
Moは、耐食性を向上させるために必要に応じて添加される元素である。ただし、Moは高価であるため、Moの含有量が多すぎると、製造コストの上昇につながる。そのため、Moの含有量の上限値は、3.00%、好ましくは2.00%、より好ましくは1.50%に制御される。一方、Moの含有量の下限値は、特に限定されないが、好ましくは0.001%、より好ましくは0.01%、更に好ましくは0.05%である。
Bは、製造性を向上させるために必要に応じて添加される元素である。Bによる効果を得る観点から、Bの含有量の下限値は、0.0001%、好ましくは0.0010%に制御される。一方、Bの含有量は多すぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の耐食性が低下してしまう。そのため、Bの含有量の上限値は、0.0100%、好ましくは0.0060%、より好ましくは0.0040%に制御される。
Mgは、熱間加工性を向上させるために必要に応じて添加される元素である。Mgによる効果を得る観点から、Mgの含有量の下限値は、0.0001%、好ましくは0.0005%、より好ましくは0.0010%に制御される。また、Mgの含有量は多すぎると、介在物の生成量が増加して品質を低下させてしまう。そのため、Mgの含有量の上限値は、0.1000%、好ましくは0.0500%、より好ましくは0.0100%に制御される。
REM(希土類元素)は、熱間加工性を向上させるために必要に応じて添加される元素である。REMによる効果を得る観点から、REMの含有量の下限値は、0.0001%、好ましくは0.0005%、より好ましくは0.0010%に制御される。また、REMは高価であるため、REMの含有量が多すぎると、製造コストの上昇につながる。そのため、REMの含有量の上限値は、0.1000%、好ましくは0.0500%、より好ましくは0.0100%に制御される。
なお、REMは、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)の2元素と、ランタン(La)からルテチウム(Lu)までの15元素(ランタノイド)の総称を指す。これらは単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
Caは、熱間加工性を向上させるために必要に応じて添加される元素である。Caによる効果を得る観点から、Caの含有量の下限値は、0.0001%、好ましくは0.0005%、より好ましくは0.0010%に制御される。また、Caの含有量は多すぎると、介在物の生成量が増加して品質を低下させてしまう。そのため、Caの含有量の上限値は、0.1000%、好ましくは0.0500%、より好ましくは0.0100%に制御される。
Nbは、オーステナイト系ステンレス鋼材中のCを固定して耐粒界腐食性を向上させるために必要に応じて添加される元素である。Nbによる効果を得る観点から、Nbの含有量の下限値は、0.001%、好ましくは0.005%、より好ましくは0.010%に制御される。また、Nbの含有量は多すぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の加工性が低下してしまう。そのため、Nbの含有量の上限値は、1.000%、好ましくは0.900%、より好ましくは0.800%に制御される。
Vは、オーステナイト系ステンレス鋼材中のCを固定して耐粒界腐食性を向上させるために必要に応じて添加される元素である。Vによる効果を得る観点から、Vの含有量の下限値は、0.001%、好ましくは0.005%、より好ましくは0.010%に制御される。また、Vの含有量は多すぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の加工性が低下してしまう。そのため、Vの含有量の上限値は、1.000%、好ましくは0.800%、より好ましくは0.500%に制御される。
Zrは、オーステナイト系ステンレス鋼材中のCを固定して耐粒界腐食性を向上させるために必要に応じて添加される元素である。Zrによる効果を得る観点から、Zrの含有量の下限値は、0.001%、好ましくは0.005%、より好ましくは0.010%に制御される。また、Zrの含有量は多すぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の加工性が低下してしまう。そのため、Zrの含有量の上限値は、1.000%、好ましくは0.800%、より好ましくは0.500%に制御される。
Wは、高温強度及び耐食性を向上させるために必要に応じて添加される元素である。Wによる効果を得る観点から、Wの含有量の下限値は、0.001%、好ましくは0.005%、より好ましくは0.010%に制御される。また、Wの含有量は多すぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の加工性が低下するとともに、製造コストが上昇してしまう。そのため、Wの含有量の上限値は、1.000%、好ましくは0.800%、より好ましくは0.500%に制御される。
Coは、耐食性を向上させるために必要に応じて添加される元素である。Coによる効果を得る観点から、Coの含有量の下限値は、0.001%、好ましくは0.005%、より好ましくは0.010%に制御される。また、Coの含有量は多すぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の加工性が低下するとともに、製造コストが上昇してしまう。そのため、Coの含有量の上限値は、1.000%、好ましくは0.800%、より好ましくは0.500%に制御される。
Hfは、オーステナイト系ステンレス鋼材中のCを固定して耐粒界腐食性を向上させるために必要に応じて添加される元素である。Hfによる効果を得る観点から、Hfの含有量の下限値は、0.001%、好ましくは0.005%、より好ましくは0.010%に制御される。また、Hfの含有量は多すぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の加工性が低下してしまう。そのため、Hfの含有量の上限値は、1.000%、好ましくは0.800%、より好ましくは0.500%に制御される。
Taは、オーステナイト系ステンレス鋼材中のCを固定して耐粒界腐食性を向上させるために必要に応じて添加される元素である。Taによる効果を得る観点から、Taの含有量の下限値は、0.001%、好ましくは0.005%、より好ましくは0.010%に制御される。また、Taの含有量は多すぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の加工性が低下してしまう。そのため、Taの含有量の上限値は、1.000%、好ましくは0.800%、より好ましくは0.500%に制御される。
Snは、耐食性を向上させるために必要に応じて添加される元素である。Snによる効果を得る観点から、Snの含有量の下限値は、0.001%、好ましくは0.005%、より好ましくは0.010%に制御される。また、Snの含有量は多すぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の製造性が低下してしまう。そのため、Snの含有量の上限値は、0.100%、好ましくは0.050%、より好ましくは0.030%に制御される。
Tiは、オーステナイト系ステンレス鋼材中のCを固定して耐粒界腐食性を向上させるために必要に応じて添加される元素である。Tiによる効果を得る観点から、Tiの含有量の下限値は、0.001%、好ましくは0.005%、より好ましくは0.010%に制御される。また、Tiの含有量は多すぎると、オーステナイト系ステンレス鋼材の加工性が低下してしまう。そのため、Tiの含有量の上限値は、1.000%、好ましくは0.800%、より好ましくは0.500%に制御される。
Md30=551-462(C+N)-9.2Si-8.1Mn-13.7Cr-29(Ni+Cu)-18.5Mo ・・・(1)
式(1)中、各元素記号は、各元素の含有量を表す。なお、所定の元素が含まれない場合は、当該元素の値を0とする。
Md30は、オーステナイト相の安定化を表す指標である。Md30の値が大きいほど、オーステナイト相から加工誘起マルテンサイト相への変態が起こり易くなる。Md30を-20℃以上に制御することにより、加工時に加工誘起マルテンサイト相を適度に生成させ、強度及び延性の両方を高めることができる。また、Md30を30℃以下に制御することにより、加工時に加工誘起マルテンサイト相が過度に生成し難くなるため、亀裂の発生や延性の低下を抑制することができる。
δcal=-15-44.91C-0.88Mn-2.31Ni+2.2Cr-1.08Cu-28.8N ・・・(2)
式(2)中、各元素記号は、各元素の含有量を表す。なお、所定の元素が含まれない場合は、当該元素の値を0とする。
δcalは、δフェライト相の量を表す指標である。δcalを10.0以下に制御することにより、δフェライト相の量を低減できるため、延性の低下を抑制することができる。なお、δcalの下限値は、特に限定されないが、例えば0.0である。
ここで、平均結晶粒径は、圧延方向に垂直な厚み方向断面(C断面)を光学顕微鏡で観察することによって求めることができる。具体的には、後述する方法で求めることができる。
ここで、孔食電位は、後述する方法によって測定することができる。また、電位はAg/AgCl基準とする。
δフェライト相の量は、後述する方法で測定することができる。
ここで、0.2%耐力は、JIS Z2241:2011に準拠して測定することができる。
ここで、全伸びは、JIS Z2241:2011に準拠して測定することができる。
オーステナイト系ステンレス鋼材は、一部又は全体が加工されていてもよい。加工方法としては、特に限定されないが、プレス加工、圧延加工、鍛造、押出加工、引き抜き加工などの各種方法が挙げられる。
加工製品としては、特に限定されないが、ガスケット、ばね部品などが挙げられる。
表1に示す組成を有するステンレス鋼30kgを真空溶解で溶製し、厚さ30mmの板に鍛造した後、1230℃で2時間加熱し、厚さ4.0mmに熱間圧延して熱延鋼板を得た。次に、熱延鋼板を焼鈍して酸洗して熱延焼鈍鋼板を得た後、熱延焼鈍鋼板を冷間圧延して冷延鋼板を得た。次に、冷延鋼板を表2に示す条件で焼鈍した後、圧下率40%で調質圧延して厚さ0.2mmのオーステナイト系ステンレス鋼板を得た。
調質圧延前の冷延焼鈍板の幅方向中央部から15mm×20mmの試験片を切り出して700℃で30分の鋭敏化熱処理を行い、圧延方向と垂直な厚み方向断面(C断面)を鏡面研磨してシュウ酸による電解エッチングを施した後、当該エッチング面について光学顕微鏡観察を行った。光学顕微鏡観察では、エッチング面内の約240μm×320μmを5視野観察し、切片法を用いて結晶粒の個数を算出し、平均結晶粒径を求めた。各視野では、長さ320μmの直線を引き、この直線が横切った結晶粒の個数を求め、「直線の長さ(320μm)/結晶粒の個数」をその視野における結晶粒径とし、5視野の平均を平均結晶粒径とした。また、直線の端の結晶粒は1/2個と数えた。なお、調質圧延後の冷延焼鈍板では、調質圧延によって結晶粒が圧延方向に延びたような形状となるため、圧延方向と平行な厚み方向断面(L断面)で結晶粒径を測定すると大きくなるが、C断面では調質圧延の前後で結晶粒径の変化はほとんどない。
オーステナイト系ステンレス鋼板について、フェライトスコープ(Fischer社製FERITESCOPE(登録商標)FMP30)を用いてδフェライト相の含有量を測定した。測定は、任意の3箇所で行い、その平均値を結果とした。
耐食性は、JIS G0577:2014に準拠して孔食電位を測定することによって評価した。具体的には、次のようにして孔食電位を測定した。オーステナイト系ステンレス鋼板から15mm×20mmの試験片を切り出した後、#600の湿式研磨を行った。次に、この試験片の電極面(露出部分)が10mm×10mmとなるように、電極面以外の部分をシリコーン樹脂で絶縁被覆して孔食電位測定用試験片を得た。次に、Ar脱気を十分に行った30℃の3.5%NaCl溶液中に孔食電位測定用試験片を浸漬し、自然電位から20mV/分で動電位アノード分極を行い、孔食電位を測定した。孔食電位は、電流が100μA/cm2流れたときの電位とした。この評価において、孔食電位が0.70V vs.Ag/AgCl(以下、電位はすべてAg/AgCl基準とする)以上であったものを合格とみなすことができる。
オーステナイト系ステンレス鋼板からJIS13号B試験片を切り出し、JIS Z2241:2011に準拠して0.2%耐力及び全伸びを測定した。
これに対して比較例1のオーステナイト系ステンレス鋼板は、Md30が低すぎたため、強度と延性とのバランスが十分でなかった。
比較例2のオーステナイト系ステンレス鋼板は、Crの含有量が少なすぎたため、耐食性が十分でなかった。
比較例3のオーステナイト系ステンレス鋼板は、Ni、Cr及びNの含有量に加えてMd30が所定の範囲になかったため、耐食性や強度が十分でなかった。
比較例4のオーステナイト系ステンレス鋼板は、δcalが高すぎたため、強度と延性とのバランスが十分でなかった。
Claims (12)
- 質量基準で、C:0.010~0.100%、Si:2.00%以下、Mn:3.00%以下、P:0.035%以下、S:0.0300%以下、Ni:5.00~9.00%、Cr:18.0~22.0%、Cu:0.01~3.00%、Al:0.200%以下、N:0.100~0.200%を含み、残部がFe及び不純物からなり、
下記式(1)で表されるMd30が-20.0~30.0℃であり、且つ下記式(2)で表されるδcalが10.0以下であるオーステナイト系ステンレス鋼材。
Md30=551-462(C+N)-9.2Si-8.1Mn-13.7Cr-29(Ni+Cu)-18.5Mo ・・・(1)
δcal=-15-44.91C-0.88Mn-2.31Ni+2.2Cr-1.08Cu-28.8N ・・・(2)
式(1)及び(2)中、各元素記号は、各元素の含有量を表す。 - 質量基準で、Mo:3.00%以下、B:0.0001~0.0100%から選択される1種以上を更に含む、請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼材。
- 質量基準で、Mg:0.0001~0.1000%、REM:0.0001~0.1000%、Ca:0.0001~0.1000%、Nb:0.001~1.000%、V:0.001~1.000%、Zr:0.001~1.000%、W:0.001~1.000%、Co:0.001~1.000%、Hf:0.001~1.000%、Ta:0.001~1.000%、Sn:0.001~0.100%、Ti:0.001~1.000%から選択される1種以上を更に含む、請求項1又は2に記載のオーステナイト系ステンレス鋼材。
- 平均結晶粒径が20.0μm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼材。
- 孔食電位が0.70V以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼材。
- 0.2%耐力(MPa)と全伸び(%)との積が10000以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼材。
- δフェライト相の含有量が5.5%以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼材。
- 質量基準で、C:0.010~0.100%、Si:2.00%以下、Mn:3.00%以下、P:0.035%以下、S:0.0300%以下、Ni:5.00~9.00%、Cr:18.0~22.0%、Cu:0.01~3.00%、Al:0.200%以下、N:0.100~0.200%を含み、残部がFe及び不純物からなり、下記式(1)で表されるMd30が-20.0~30.0℃であり、且つ下記式(2)で表されるδcalが10.0以下である圧延鋼板を950~1050℃の温度及び60秒以下の均熱時間で焼鈍する焼鈍工程と、
前記焼鈍工程で得られた焼鈍鋼板を調質圧延する調質圧延工程と
を含むオーステナイト系ステンレス鋼材の製造方法。
Md30=551-462(C+N)-9.2Si-8.1Mn-13.7Cr-29(Ni+Cu)-18.5Mo ・・・(1)
δcal=-15-44.91C-0.88Mn-2.31Ni+2.2Cr-1.08Cu-28.8N ・・・(2)
式(1)及び(2)中、各元素記号は、各元素の含有量を表す。 - 前記調質圧延の圧下率が5~70%である、請求項8に記載のオーステナイト系ステンレス鋼材の製造方法。
- 前記圧延鋼板は、質量基準で、Mo:3.00%以下、B:0.0001~0.0100%から選択される1種以上を更に含む、請求項8又は9に記載のオーステナイト系ステンレス鋼材の製造方法。
- 前記圧延鋼板は、質量基準で、Mg:0.0001~0.1000%、REM:0.0001~0.1000%、Ca:0.0001~0.1000%、Nb:0.001~1.000%、V:0.001~1.000%、Zr:0.001~1.000%、W:0.001~1.000%、Co:0.001~1.000%、Hf:0.001~1.000%、Ta:0.001~1.000%、Sn:0.001~0.100%、Ti:0.001~1.000%から選択される1種以上を更に含む、請求項8~10のいずれか一項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼材の製造方法。
- 請求項1~7のいずれか一項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼材を含む加工製品。
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