JP2022155876A - 高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルム - Google Patents

高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルム Download PDF

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Yoshihiko Suzuki
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Abstract

【課題】フィルム自体から発生するガス及び接する空間からのガスを吸着し、ガス放出量が少なく、経時劣化による包装体内外へのガスの出入り及び放出を抑制する、ボイルからセミレトルト殺菌処理の温度に耐える高耐熱性シーラントフィルムを提供する。【解決手段】ヒートシール性を有する高耐熱性低臭樹脂と、ガス吸着剤4bとを含有し、自身から発生するガス及び外部からのガス(炭化水素類、アルデヒド類、ケトン類、カルボン酸から選ばれる1種又は2種以上)を吸着し、高耐熱性低臭樹脂は、密度が0.920g/cm3以上、0.960g/cm3以下であり、高耐熱性低臭樹脂からなるフィルムに含まれる、溶出性の全有機体炭素(TOC)の濃度は、1.5ppm以上、250ppm以下であり、90~110℃、30分間のボイル処理と35℃の静置保管によって溶出するものであることを特徴とする、高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルム1。【選択図】図1

Description

本発明は、自身から発生するガス及び接する空間からのガスを吸着し、加熱されても、ガス放出量が少なく、内容物の臭味変化を生じない、高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムに関する。
近年、包装体は、包装体内容物の汚染や劣化、臭味変化を防止する為に、臭気を吸着する臭気吸着剤を内包した包装材料が提案されている(特許文献1)。このような包装材料においては、合成ゼオライトや活性炭といった臭気吸着剤が、樹脂材料中に練り込まれている。
無機多孔体上に化学吸着剤を担持させてなる臭気吸着剤を含有した包装材料も知られているが(特許文献2)、主な吸着対象物は特定の官能基を有する臭気成分を吸着するのみであって、樹脂材料を選定しない状況では、官能基を有さない有機物の発生量を抑制できず、臭気成分を十分に吸着し得るものではない。
さらに、内容物の加水分解によって異臭が発生することを抑制する吸湿性の包装材料も知られているが(特許文献3)、臭気発生抑制効果はあるものの、発生した臭気成分はそのまま残留する為に、十分な臭気改善効果が得られなかった
また、レトルト殺菌や高温ボイルなどの高温殺菌処理で使用される用途に、包装内の残存臭気の低減、及び臭味改善を図って、酸素吸収剤とガス吸着剤とを含有する機能性樹脂層を有する蓋材フィルムが提案されているが(特許文献4)、酸素吸収特性を発現する際に発生する樹脂分解成分の全てを吸着しきれず、また、また蓋材フィルムであることから内層面にはイージーピール層が形成されているために、汎用的な使用には適さないものである。
特許第2538487号公報 特開2014-233408公報 特開2006-327690号公報 特許5046098号公報
本発明は、ボイルからセミレトルト加熱処理の温度(90~110℃)に耐える高耐熱性を有し、自身からのガス放出量が少なく、接する外部からのガスを吸着し、内容物の臭味変化を抑制するシーラントフィルムを提供することを課題とする。
本発明者らは、種々検討の結果、少なくとも、特定の高耐熱性低臭樹脂及びガス吸着剤を含有するシーラントフィルムが、上記の目的を達成することを見出した。
すなわち、本発明は、以下の点を特徴とする。
1.高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムであって、
該高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムは、ヒートシール性を有する高耐熱性低臭樹脂と、ガス吸着剤とを含有し、自身から発生するガス及び外部からのガスを吸着し、
該ガスは、炭化水素類、アルデヒド類、ケトン類、カルボン酸類からなる群から選ばれる1種または2種以上の組み合わせであり、
該高耐熱性低臭樹脂は、密度が0.920g/cm3以上、0.960g/cm3以下で
あり、
前記高耐熱性低臭樹脂からなるフィルムに含まれる、溶出性の全有機体炭素(TOC)の濃度は、1.5ppm以上、250ppm以下であり、90~110℃、30分間のボイル処理と35℃の静置保管によって溶出するものであることを特徴とする、前記の高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルム。
2.全高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムに含有される樹脂中の、前記高耐熱性低臭樹脂の含有量は、70質量%以上、100質量%以下であり、
前記ガス吸着剤の含有量が、前記ガス吸着剤を含有する層中に、0.1質量%以上、30質量%以下であることを特徴とする、
上記1に記載の高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルム。
3.前記高耐熱性低臭樹脂は、ポリエチレン系樹脂であることを特徴とする、上記1又は2に記載の高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルム。
4.前記高耐熱性低臭樹脂が、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン及び線状低密度ポリエチレンからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであることを特徴とする、上記1または2に記載の高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルム。
5.前記ガス吸着剤が、疎水性ゼオライト、モレキュラーシーブ、金属有機構造体(MOF)、活性炭からなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせを含むことを特徴とする、上記1~4のいずれかに記載の高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルム。
6.前記高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムが、ガス吸着層と、ヒートシール層とを有し、
該ガス吸着層は、前記高耐熱性低臭樹脂と、前記ガス吸着剤とを含有する層であり、
該ヒートシール層は、前記高耐熱性低臭樹脂を含有し、ヒートシール性を有する層であり、
前記高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムの少なくとも片側の最外層は、ヒートシール層であり、
該ガス吸着層に含有される前記高耐熱性低臭樹脂と、該ヒートシール層に含有される前記高耐熱性低臭樹脂とは、同一又は異なっていることを特徴とする、
上記1~5のいずれかに記載の高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルム。
7.90℃以上、100℃以下の温度において、10分以上、60分以下ボイルした際の熱収縮率が、0%以上、10%以下であり、
表面にゆず肌状の変化が発生していないことを特徴とする、
上記1~6のいずれかに記載の高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルム。
8.上記1~7のいずれかに記載の高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムを用いた、ボイル殺菌またはセミレトルト殺菌用の、高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルム。
本発明により、ボイルからセミレトルト加熱処理の温度(90~110℃)に耐える高耐熱性を有し、自身からのガス放出量が少なく、接する外部からのガスを吸着し、内容物の臭味変化を抑制するシーラントフィルムを得ることができる。
本発明の高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムの層構成の一例を示す概略的断面図である。 本発明の高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムの層構成の別態様の一例を示す概略的断面図である。 本発明の高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムの層構成のさらに別態様の一例を示す概略的断面図である。
各図においては、解り易くする為に、部材の大きさや比率を変更又は誇張して記載する
ことがある。また、見易さの為に説明上不要な部分や繰り返しとなる符号は省略することがある。
また、各図においては省略されているが、各層の間に接着層を設けることもできる。
さらに、必要に応じて、各層間の接着強度(密着強度)を強固にするために、各層の積層面に、コロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理、グロー放電処理、サンドブラスト処理等、などの物理的な表面処理や、化学薬品を用いた酸化処理などの化学的な表面処理を予め施しておくこともできる。
本発明の高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムについて、以下に更に詳しく説明する。具体例を示しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、本発明においては、フィルムとシートとは、同義として扱う。
≪高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルム≫
本願発明の高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムは、ヒートシール性を有する高耐熱性低臭樹脂とガス吸着剤とを含有していることによって、ヒートシール性に優れ、ボイルからセミレトルト加熱処理の温度(90~110℃)に曝されても、耐える高耐熱性を有し、熱収縮が小さく、ゆず肌の発生が抑制され、自身からのガス放出(溶出を含む)量が少なく、接する外部からのガスを吸着し、これらのガスによる包装された内容物の臭味変化を抑制することができる。
高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムは、1層の単層構成であってもよく、2層以上の多層構成であってもよい。
例えば、高耐熱性低臭樹脂及びガス吸着剤を含有するガス吸着層の1層で構成されていてもよく、高耐熱性低臭樹脂及びガス吸着剤を含有するガス吸着層及び高耐熱性低臭樹脂を含有するヒートシール層の2層で構成されていてもよく、2つのヒートシール層がガス吸着層を挟んだ3層構成であってもよい。
全高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムに含有される樹脂中の、前記高耐熱性低臭樹脂の含有量は、70質量%以上、100質量%以下が好ましく、80質量%以上、100質量%以下がより好ましく、90質量%以上、100質量%以下が更に好ましい。上記範囲よりも少ないと、高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムの低ガス放出性が不十分になるおそれがあり、上記範囲よりも多いと、諸物性や作業性の面でバランスを採り難くなり易い反面、低ガス放出性はさほど向上しない。
そして、ガス吸着剤の含有量は、ガス吸着剤を含有する層中に、0.1質量%以上、30質量%以下が好ましく、0.5質量%以上、28質量%以下がより好ましい。上記範囲よりも少ないと、ガス吸着効果が不十分になるおそれがあり、上記範囲よりも多いと、製膜性が悪化するおそれがある。
ここで、ガス吸着剤を含有する層とは、高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムが1層のみで構成されている場合には、高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルム全体を指し、高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムがガス吸着層及びヒートシール層等を有する多層構成の場合には、例えば、ガス吸着層を指す。
本発明の高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムがガス吸着層及びヒートシール層等を有する多層構成の場合には、ヒートシール性、及びラミネート性を高める為に、前記高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムの、少なくとも片側の最外層がヒートシール層であることが好ましく、両側の最外層がヒートシール層であることがより好ましい。
また、ガス吸着層に含有される高耐熱性低臭樹脂と、ヒートシール層に含有される高耐熱性低臭樹脂とは、同一でもよく、異なっていてもよい。
高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムは、フィルム厚さを調節して、ガス吸着性やガス放出性を調節することができる。
高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムの厚さは、良好なヒートシール性とガス吸着性と低ガス放出性とのバランスを有する為に、25μm以上、150μm以下が好ましく、30μm以上、100μm以下がより好ましい。上記範囲よりも薄いとヒートシール性及び/又はガス吸着性が不十分になるおそれがあり、上記範囲よりも厚いと低ガス放出性が劣るおそれがある。
そして、高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムは、スリップ剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、溶剤、その他の添加剤をさらに少量含むことができる。
本発明の高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムは、高温環境下での樹脂劣化由来の放出性ガスの発生を抑制する為に、酸化防止剤を含有することが好ましい。逆に、高温時にガス放出量を上昇させてしまいそうな添加剤の使用は制限することが好ましい。
(吸着対象ガス)
本発明において吸着対象となるガス成分は、主に、本発明の高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムが元から含有しているガス成分や、ヒートシール、ボイル、セミレトルト処理等の加熱や、UV又はEB等の照射によって高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルム中の樹脂が分解することで発生した樹脂分解物からなるガス成分である。
ここで、高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムが元から含有しているガス成分としては、高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムを構成する原材料が含有していたガス成分、及び高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムを形成する際の熱履歴等によって発生したガス成分等が挙げられる。
特に、高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムが元から含有しているガス成分、高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムを構成する原材料が含有していたガス成分、低ガス放出性ガス吸着シーラントフィルムを形成する際の熱履歴等によって発生したガス成分等が挙げられる。
具体的な吸着対象ガスとしては、比較的分子量の小さい有機物が挙げられる。
該有機物は、高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムに由来するガス成分であり、ガス成分の化合物としては、炭素数が1~16のものが多く、種類としては炭化水素類、アルデヒド類、ケトン類、カルボン酸類等が挙げられる。
炭化水素類の具体例としては、プロパン、プロペン、ブタン、イソブタン、2-メチルブタン、ブテン、イソブテン、2-メチルペンタン、3-エチルペンタン、2,2-ジメチルペンタン、3,3-ジメチルペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン、ヘプタン、2-メチルヘプタン、3-メチルヘプタン、3-エチルヘプタン、2,2,4,6,6-ペンタメチルヘプタン、3-エチル-3-メチルヘプタン、3-メチルヘプテン、オクタン、2-メチルオクタン、4-エチルオクタン、ノナン、3-メチルノナン、デカン、ドデカン等が挙げられる。
アルデヒド類の具体例としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、2-メチルプロパナール、3-メチルブタナール等が挙げられる。
ケトン類の具体例としては、アセトン、MEK、MIBK、3,3-ジメチルー2-ブタノン等が挙げられる。
カルボン酸類の具体例としては、酢酸、イソ吉草酸、2-メチルプロパン酸、2,2-
ジメチルプロパン酸等が挙げられる。
炭化水素類、アルデヒド類、ケトン類、カルボン酸類は、高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムの熱履歴に由来する。
[ガス吸着層]
ガス吸着層は、ガス吸着剤を含有して高いガス吸着性を有する層であり、低ガス放出性を維持する為にバインダー樹脂として高耐熱性低臭樹脂をさらに含有することが好ましい。しかしながら、ガス吸着性と低ガス放出性を大きく損なわない範囲で、他の樹脂や、酸化防止剤等の各種添加剤を含有することができる。
高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルム中にガス吸着層は、1層又は組成が同一あるいは異なる2層以上が含まれていてもよい。
ガス吸着層の厚さは、良好なガス吸着性を示す為に、5μm以上、80μm以下が好ましく、7μm以上、75μm以下がより好ましい。上記範囲よりも薄いとガス吸着性が不十分になるおそれがあり、上記範囲よりも厚くても、ガス吸着性はさほど向上せず、高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムの剛性が強くなり過ぎて作業性が低下するおそれがある。
[ヒートシール層]
ヒートシール層は高耐熱性低臭樹脂を含有する層であり、高いヒートシール性を有する層であり、高いヒートシール性を有する為に、ガス吸着剤を含有しないことが好ましい。
そして、高いヒートシール性と低ガス放出性を両立する為に、含有されるヒートシール性樹脂は、高耐熱性低臭樹脂であることが好ましい。
しかしながら、ヒートシール性と低ガス放出性を大きく損なわない範囲で、ガス吸着剤や、他の樹脂や、酸化防止剤等の各種添加剤を含有することができる。
高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルム中にヒートシール層は、1層又は組成が同一あるいは異なる2層以上が含まれていてもよい。
ヒートシール層の厚さは、良好なヒートシール性を示す為に、3μm以上、30μm以下が好ましく、5μm以上、20μm以下がより好ましい。上記範囲よりも薄いとヒートシール性が不十分になるおそれがあり、上記範囲よりも厚くても、ヒートシール性はさほど向上せず、高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムの剛性が弱くなり過ぎて作業性が低下するおそれがある。
[高耐熱性低臭樹脂]
高耐熱性低臭樹脂とは、耐熱性が高く、ガスの放出量が少ない樹脂のことであり、ガス放出量は樹脂の形状や熱履歴等によって変化する。
ヒートシール性を有する高耐熱性低臭樹脂を高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムに含有させることによって、高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムにヒートシール性を付与し、放出されるガス量を低減して、ガスの通過や放出を抑制することができる。
高耐熱性低臭樹脂のガス放出量は、高耐熱性低臭樹脂に含有される、ボイルまたはセミレトルト処理によって溶出する、溶出性の全有機体炭素(TOC=Total Organic Carbon)濃度と相関が高い。
TOCは、水中の酸化され得る有機物(有機炭素体)全量の濃度を炭素量の濃度で示したものであり、代表的な水質指標の一つとして用いられているものであって、JIS K0805(全有機体炭素(TOC)自動計測器)等で規格化されている。
本発明における高耐熱性低臭樹脂からなるフィルムに含まれる溶出性の全有機体炭素(
TOC)の濃度は、1.5ppm以上、250ppm以下が好ましく、5ppm以上、200ppm以下が好ましい。上記範囲よりも少ないものを準備することは困難であり、且つ実用上の効果に有意差を示し難い。上記範囲よりも多いと、高耐熱性低臭樹脂のガス放出性が不十分になるおそれがある。
ここで、単体原料としての高耐熱性低臭樹脂に関する溶出性のTOCの濃度を、原料ペレット等の状態ではなく、フィルム化された状態で測定する理由は、高耐熱性低臭樹脂は、低ガス放出性ガス吸着シーラント層形成等の為にフィルム化される際に、様々な熱履歴等を与えられてTOCの溶出量を増加させてしまうことがあるからである。
上記の高耐熱性低臭樹脂からなるフィルムに含まれる溶出性の全有機体炭素(TOC)の濃度は、下記の様に測定することができる。
例えば、本発明における高耐熱性低臭樹脂からなるフィルムを、ガスサンプリングバック内に、充填水として蒸留水を充填して、ボイルして有機炭素体を溶出させて、さらに冷まして保管した後に、充填水中のTOC濃度を測定する。そして、充填前の充填水のTOC濃度をブランクとして差し引いてTOC濃度の増加分を算出し、さらに、高耐熱性低臭樹脂からなるフィルムに含有されていた溶出性のTOC濃度を算出することができる。
具体的な条件としては、ボイル温度を90℃~100℃、ボイル時間を10分~60分、保管時の温度を25℃~50℃、保管期間を1日~4週間とし、充填水のTOC濃度を全有機体炭素計やHS-GCで測定することが好ましい。
高耐熱性低臭樹脂の密度は、0.920g/cm3以上、0.960g/cm3以下が好ましく、0.925g/cm3以上、0.955g/cm3以下がより好ましい。密度が上記範囲であれば、ガス放出量を低くし得る。
高耐熱性低臭樹脂のMFR(メルトフローレート)は、0.2g/10分以上、10g/10分以下が好ましく、0.5g/10分以上、7g/10分以下がより好ましい。MFRが上記範囲であれば、他の樹脂やガス吸着剤と混合されても、良好なMFRを維持し、良好な製膜性や接着性を示すことができる。
高耐熱性低臭樹脂としては、ヒートシール性に優れ、UV又はEB照射や加熱に対して耐性があって分解され難い性質があることから、ポリエチレン系樹脂(低ガス放出性ポリエチレン系樹脂)が好ましい。
低ガス放出性ポリエチレン系樹脂は、元々含有している放出性のガス量が少なく、且つUV又はEB照射や加熱に対して耐性があって分解され難いことによって、ガス放出量を少なくすることができる。
低ガス放出性ポリエチレン系樹脂のポリエチレン種の具体例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メチルメタクリル酸共重合体、エチレン-プロピレン共重合体等の低ガス放出化されたもの及びそれらの樹脂の混合物が挙げられるが、これらの樹脂に限定されない。
上記の中でも、HDPE、MDPE、LDPE及びLLDPEからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであることが好ましい。
また、LLDPEは、C4-LLDPE、C6-LLDPE、C8-LLDPEからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであることが好ましく、C6-LLDP
Eがより好ましい。
ここで、C4-LLDPEは、エチレンと1-ブテンとの共重合体からなる直鎖状低密度ポリエチレンであり、C6-LLDPEは、エチレンと1-ヘキセン及び/又は4-メチル-1-ペンテンとの共重合体からなる直鎖状低密度ポリエチレンであり、C8-LLDPEは、エチレンと1-オクテンとの共重合体からなる直鎖状低密度ポリエチレンである。
それぞれの分子構造は、エチレン由来のLLDPEの主鎖に、それぞれ、1-ブテン、1-ヘキセン及び/又は4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン由来の、炭素数がそれぞれ、4個、6個、8個の側鎖が存在する分子構造を有する。
樹脂に含有される放出性ガス量を低く抑える為には、例えば、樹脂を製造する際に、未反応原料残存量や低分子量生成物や副生成物の量を低減することや、重合触媒を除去することが有効である。具体的には、原料純度を向上したり、反応温度や圧力等の条件を精密に制御したり、蒸留や洗浄によって未反応原料や低分子量生成物や副生成物や重合触媒を除去したり、高温のままで空気中の酸素に触れることによる酸化を防止したりする方法が挙げられる。
他の方法としては、製造された樹脂をペレット化やフィルム化する際に、放出性ガス量を増加させてしまいそうな添加剤の使用を制限し、高温による酸化を防止することが挙げられる。具体的な添加剤としては、滑剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、溶剤、その他が挙げられる。
[ガス吸着剤]
本発明において、ガス吸着剤としては、疎水性ゼオライト、モレキュラーシーブ、金属有機構造体(MOF)、活性炭からなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせを含有することが好ましい。
(疎水性ゼオライト)
本発明において、ガス吸着剤として用いられる疎水性ゼオライトは、SiO2/Al23モル比が2/1~10000/1であることが好ましく、30/1~2000/1であることがより好ましい。該モル比が上記の範囲であれば、疎水性と細孔サイズのバランスに優れて、良好なガス吸着性を奏することができる。
疎水性ゼオライトは、230℃以上に晒された場合であっても、ガス成分の吸着効果が維持されることから、好ましく用いることができる。
疎水性ゼオライトは、球状、棒状、楕円状等の任意の外形形状であってよく、粉体状、塊状、粒状等いかなる形態であってもよいが、樹脂中に分散させた際の、均一な分散性や混練特性、製膜性等の観点から、粉体状が好ましい。
本発明において、疎水性ゼオライトの平均粒子径は、用途に応じて、任意の平均粒子径のものを適宜選択することができるが、平均粒子径0.01μm以上、30μm以下が好ましく、0.1μm以上、20μm以下がより好ましい。ここで、平均粒子径は、動的光散乱法により測定された値である。
平均粒子径が上記範囲よりも小さい場合には疎水性ゼオライトの凝集が生じ易く、分散性が低下する傾向にある。また、平均粒子径が上記範囲よりも大きい場合には、疎水性ゼオライトを含有する層の製膜性が劣る傾向になる為に、疎水性ゼオライトを多くは添加し難い傾向となり、更に表面積も減少する為、十分なガス吸着効果が得られない可能性が生じる。
疎水性ゼオライトは、疎水性である為に、極性の高い水分子等は吸着し難く、逆に極性の低い有機ガスとの親和性が高く、他の極性の低いガス成分、疎水性ガス、親油性ガス(
溶剤系ガスも含む)とも親和性が高く、これらを吸着し易い。すなわち、官能基を有していないガス成分を吸着する機能に優れている。更に、ゼオライト表面にCa、Na、K等のアルカリ金属、アルカリ土類金属が存在する場合には、ゼオライト表面は塩基性を示し、酸性ガスを中和反応によって吸着し易い。
(モレキュラーシーブ)
モレキュラーシーブは、親水性ゼオライトの1種であり、多孔質の空孔に、極性の高い分子を吸着する。特に水(水蒸気)分子を強く吸着する。
モレキュラーシーブは、原料のゼオライトの種類によって3A、4A、5A、13Xと表記され、数字は空孔のおおよその直径(オングストローム)を、大文字のアルファベットはゼオライトの種類を表し、AはLTA型ゼオライト、XはFAU型ゼオライトを表す。
3Aはアセトニトリルやエタノール、5Aは芳香族化合物等、13Xは長鎖三級アミンなどの大きな分子の吸着に適している。
(金属有機構造体(MOF))
金属有機構造体(MOF:Metal Organic Frameworks)には、金属イオンと有機配位子とからなる塩が好ましく用いられる。
金属有機構造体は、一般的な活性炭やゼオライトと比較して、より小さな細孔径と、より大きな比表面積を有する多孔質構造を有することができる。
金属有機構造体の具体例としては、フマル酸アルミニウム、フマル酸ジルコン、トリメシン酸銅、トリメシン酸アルミニウム、トリメシン酸ジルコン、トリメシン酸鉄、テレフタル酸アルミニウム、テレフタル酸ジルコン、2-メチルイミダゾール亜鉛、ギ酸マグネシウム、ベンゼン-1,3,5-トリ安息香酸亜鉛、2,6-ナフタレン-ジカルボン酸亜鉛、アミノベンゼン-1,4-ジカルボン酸アルミニウム、2,5-ジオキシドベンゼン-1,4-ジカルボキレートマグネシウム、4,4-ジオキシドビフェニル-3,3-ジカルボキシレートマグネシウム等が挙げられ、これらの群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせを用いることができる。
金属有機構造体の細孔径は、0.3nm以上、3.0nmが好ましく、0.3nm以上、2.0nm以下がより好ましい。細孔径は例えば、2-メチルイミダゾール亜鉛塩が1.1nm及び0.6nm、トリメシン酸銅が0.90nm又は0.3nm及び0.5nm、テレフタル酸アルミニウムが0.8nm及び0.5nm、フマル酸アルミニウムが1.1nm及び0.5nm、トリメシン酸アルミニウムが0.7nm及び0.6nm、トリメシン酸ジルコンが0.46nm、1.15nm、及び1.8nm、ギ酸マグネシウムが0.3nm及び0.4nm、トリメシン酸鉄が2.5nm及び2.9nmである。
金属有機構造体の比表面積は、BET比表面積又はLangmuir比表面積で表すことができ、BET比表面積の場合は、400m2/g以上、4000m2/g以下が好ましく、900m2/g以上、2100m2/g以下がより好ましい。
Langmuir比表面積の場合は、500m2/g以上、5000m2/g以下が好ましく、1200m2/g以上、2400m2/g以下がより好ましい。
BET比表面積は例えば、2-メチルイミダゾール亜鉛が1350m2/g、トリメシン酸銅が1500m2/g、テレフタル酸アルミニウムが950m2/g、フマル酸アルミニウムが1000m2/g、トリメシン酸アルミニウムが1100m2/g、トリメシン酸ジルコンが2060m2/g、ギ酸マグネシウムが400m2/g、ベンゼン-1,3,5-トリ安息香酸亜鉛が3600m2/gのものがある。
Langmuir比表面積は例えば、2-メチルイミダゾール亜鉛が1800m2/g、トリメシン酸銅が2000m2/g、テレフタル酸アルミニウムが1500m2/g、フ
マル酸アルミニウムが1200m2/g、トリメシン酸アルミニウムが1500m2/g、トリメシン酸ジルコンが2390m2/g、ギ酸マグネシウムが500m2/g、ベンゼン-1,3,5-トリ安息香酸亜鉛が5000m2/gのものがある。
上記の金属有機構造体は、その細孔径に応じた分子サイズ、比表面積に応じた量のガスを吸収できる。例えば、2-メチルイミダゾール亜鉛塩は、低級炭化水素、二酸化炭素を、トリメシン酸銅は、低級炭化水素(特にメタン)と二酸化炭素を、テレフタル酸アルミニウムは、メタン、水蒸気、二酸化炭素を吸収する能力に優れ、フマル酸アルミニウムとトリメシン酸ジルコンは、水蒸気を吸収する能力に優れ、トリメシン酸アルミニウム、低級炭化水素(特にメタン)と水蒸気を吸収する能力に優れる。
本発明においては、上記の金属有機構造体の中でも、2-メチルイミダゾール亜鉛塩、トリメシン酸銅、テレフタル酸アルミニウムからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせを用いることが好ましい。
(活性炭)
活性炭は、炭素を主な成分とし酸素、水素、カルシウムなども含有し、化学的又は物理的な処理が施された多孔質の物質である。多孔質であることで体積の割りに広い表面積を持つため、多くの物質を吸着する性質がある。
活性炭の表面は非極性であるため、極性分子に対しては吸着力が低く、活性炭が持つ細孔よりも小さな粒状の有機物を選択的に吸着しやすい。
(ガス吸着剤のマスターバッチ化による分散性向上)
ガス吸着剤を高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムの他の構成成分と直接に混合して溶融混練してもよいが、ガス吸着剤を高濃度で熱可塑性樹脂と混合した後に溶融混練(メルトブレンド)してマスターバッチを作製しておき、これを、目標含有率に応じた比率で高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムの他の構成成分と混合して溶融混練する、いわゆるマスターバッチ方式によって、ガス吸着剤の高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルム中での分散性を高めることが好ましい。
マスターバッチ方式を採用することで、凝集が発生し易いガス吸着剤を用いた場合であっても、ガス吸着剤を高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルム中に、効率的且つ均質に分散させることができる。
マスターバッチ中の、ガス吸着剤/熱可塑性樹脂の質量比は、特に制限は無いが、3/97以上、50/50以下の割合が好ましく、5/95以上、40/60以下の割合がより好ましい。
ガス吸着剤と熱可塑性樹脂とを混練する方法としては、各種の混練方法を適用することができる。
マスターバッチに用いる熱可塑性樹脂は、高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルム全体のヒートシール性や製膜性やガス吸着性や低ガス放出性に大きな悪影響を与えない範囲内の種類及び含有量で用いることができるが、高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムに含有されているヒートシール性樹脂や高耐熱性低臭樹脂等の他樹脂との相溶性が高く、同等程度のヒートシール性を有する樹脂が好ましく、これらと同一であっても、異なっていてもよい。例えば、高耐熱性低臭樹脂であってもよい。
マスターバッチに用いる熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、汎用のポリエチレン、ポリプロピレン、メチルペンテンポリマー、酸変性ポリオレフィン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、及びこれらの樹脂の混合物等が挙げられるが、これらの樹脂に限定されず、目的に応じた熱可塑性樹脂の種類を選ぶことができる。
マスターバッチに用いる熱可塑性樹脂のMFR(メルトフローレート)は、0.2g/10分以上、10g/10分以下が好ましい。この範囲のMFRであれば、ガス吸着剤との溶融混錬が容易であり、高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルム中にガス吸着剤を分散させ易く、高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムの製膜性も維持され易い。
(高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムの作製方法)
例えば、ガス吸着層用のガス吸着層樹脂組成物と、ヒートシール層用の高耐熱性低臭樹脂とをそれぞれ調製して準備し、インフレーション法により、下記層構成の高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムを得ることができる。
層構成:ヒートシール層1/ガス吸着層/ヒートシール層2
又は、ガス吸着層用のガス吸着層樹脂組成物と、ヒートシール層用の高耐熱性低臭樹脂とを、押出し又は共押出しで、離型フィルム上に、エクストルージョンコート法で積層して、離型フィルムを除去することによって作製してもよい。エクストルージョンコート法の場合、必要に応じて接着層を介して、積層してもよい。
<高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムの耐熱性測定>
本発明の高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムは、例えば、10cm×10cmにカットされ、90~110℃の温度において10~60分間、ボイルまたは加熱された際の熱収縮率は、0%以上、10%以下であることができ、表面でのゆず肌状の変化の発生を抑制することができる。
熱収縮率は長さの変化率であり、例えば、各辺の長さの熱収縮率の平均値であってもよい。
また、本発明において耐熱性とは、単純に高温時に熱変形や熱分解が少ないことを指すだけではなく、樹脂が元から含有しているガス成分の放出量が少ないことや、ガス吸着性が維持されることを含む。
例えば、高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムを用いて作製した内容物入りの包装体に対して、90℃~100℃の高温ボイル処理や、100℃~110℃のセミレトルト処理による加熱処理が行われても、分解物臭の発生を抑え、発生した少量の該分解物臭と、内容物の酸化物臭とを吸着することができることで、内容物の臭味変化を抑制することができる。
<高耐熱性低臭樹脂フィルム、高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルム中に含有される溶出性のTOC濃度測定及び算出>
上記の高耐熱性低臭樹脂フィルム、高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルム中に含有される溶出性の全有機体炭素(TOC)の濃度は、下記の様に測定および算出することができる。
高耐熱性低臭樹脂フィルム、高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムの総称として、試験片フィルムと記載する。
先ず、試験片フィルムを、ガスサンプリングバック内に入れ、充填水として蒸留水を充填して、封をする。
そして、ボイルして有機炭素体を溶出させて、さらに室温(約35℃)まで冷まして一定期間静置保管した後に、充填水中のTOC濃度を測定する。
次に、充填前の充填水のTOC濃度をブランクとして差し引いてTOC濃度の増加分を算出し、試験片フィルムに含有されていた溶出性のTOC濃度を算出する。
ガスサンプリングバックとしてはジーエルサイエンス社製SMART BAG等を、充填水としては高速液体クロマトグラフィー用蒸留水を用いることができる。
そして、充填水のTOC濃度は全有機体炭素計やHS-GC、例えば、TOC-L全有機体炭素計((株)島津製作所社製等)で測定することができる。
具体的な条件としては、ボイル温度を90℃~100℃、ボイル時間を10分~60分
、保管時の温度を25℃~50℃、保管期間を1日~4週間とし、試験片フィルムが高耐熱性低臭樹脂からなる樹脂フィルムの場合には、ボイル条件は90℃、30分間、保管条件は35℃、2週間が好ましい。
試験片フィルムが高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムの場合には、ボイル条件は90℃、30分間、保管条件は室温(35℃)、2週間が好ましい。
下記に、充填水中のTOCの増加濃度から、試験片フィルム中に含まれる溶出性のTOCの濃度Cが算出する事例を示す。
充填水(蒸留水)重量:W1=1000[g]
試験片フィルム
密度:S[g/cm3
サイズ:15cm×44cm×50μm厚、2枚
重量:W2=15×44×50×10-4×2×S=6.6×S[g]
含有する溶出性のTOC濃度:C[ppm]
充填水中のTOC濃度の増加分:X[ppm]
とすると、
試験片フィルム中に含まれる溶出性のTOCの全重量=C×W2[g]
これがW1[g]の水に溶出するので、
X=C×W2/W1=C×6.6×S×10-3[ppm]
の関係になり、試験片フィルム中に含まれる溶出性のTOC濃度Cは下記式から算出される。
C=X/(6.6×S×10-3)[ppm]
例えば、試験片フィルムの密度Sが1.00[g/cm3]、充填水のTOC濃度の増加分Xが0.01[ppm]の場合には、
C=0.01/(6.6×1.00×10-3)=1.51[ppm]
のように算出される。
上記の条件で測定された高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルム中に含まれる溶出性のTOC濃度は、0.01ppm以上、1.5ppm以下であることが好ましく、0.02ppm以上、1.2ppm以下であることがより好ましい。上記範囲よりも少ないものを作製することは困難であり、且つ実用上の効果に有意差を示し難い。上記範囲よりも多いと、高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムの低臭味性が不十分になるおそれがある。コストと性能の両立の観点から、上記の範囲であることが好ましい。
実施例に用いた原料の詳細は下記の通りである。
[高耐熱性低臭樹脂]
・高耐熱性低臭樹脂1:(株)プライムポリマー社製、ウルトゼックス3520L。C6-LLDPE、密度0.931g/cm3、MFR2.1g/10分。樹脂フィルムに含有される溶出性のTOC濃度42.3ppm。
・高耐熱性低臭樹脂2:(株)プライムポリマー社製、ウルトゼックス4020L。C6-LLDPE、密度0.937g/cm3、MFR2.3g/10分。樹脂フィルムに含有される溶出性のTOC濃度32.5ppm。
・高耐熱性低臭樹脂3:(株)プライムポリマー社製、ハイゼックス3300F。HDPE、密度0.949g/cm3、MFR1.1g/10分。樹脂フィルムに含有される溶出性のTOC濃度24.4ppm。
[汎用ポリエチレン]
・汎用ポリエチレン1:(株)プライムポリマー社製エボリューSP4020。C6-LLDPE、密度0.937g/cm3、MFR1.7g/10分。抽出水のTOC濃度2
.85ppm、樹脂フィルムに含有される溶出性のTOC濃度461ppm。
・汎用ポリエチレン2:(株)プライムポリマー社製、エボリューSP1520。C6-LLDPE、密度0.913g/cm3、MFR2.0g/10分。樹抽出水のTOC濃度3.05ppm、樹脂フィルムに含有される溶出性のTOC濃度506ppm。
[ガス吸着剤]
・疎水性ゼオライト1:水澤化学工業(株)製疎水性ゼオライト、ミズカシーブスEX-122。SiO2/AL23モル比=32/1、平均粒子径2.5~5.5μm。
・疎水性ゼオライト2:水澤化学工業(株)社製疎水性ゼオライト、シルトンMT400。SiO2/AL23モル比=400/1、平均粒子径5~7μm。
・疎水性ゼオライト3:水澤化学工業(株)製疎水性ゼオライト、シルトンMT-2000。SiO2/AL23モル比=2000/1、平均粒子径0.8μm。
[マスターバッチの調製]
ガス吸着層に使用するマスターバッチは下記のように調製した。
(マスターバッチ1の調製)
高耐熱性低臭樹脂1と疎水性ゼオライト1とを下記の割合でメルトブレンドして、マスターバッチ1(MB1)を得た。
高耐熱性低臭樹脂1 70質量部
疎水性ゼオライト1 30質量部
[マスターバッチ2~5の調整]
表1の配合に従って、マスターバッチ1と同様に、各原料をメルトブレンドして、マスターバッチ2~5(MB2~5)得た。
Figure 2022155876000002
<実施例1>
[ガス吸着層樹脂組成物の調製]
MB1と高耐熱性低臭樹脂1とを下記の割合でドライブレンドして、ガス吸着層に使用するガス吸着層樹脂組成物1を得た。
MB1 5.6質量部
高耐熱性低臭樹脂1 94.4質量部
[高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムの作製]
上記で得たガス吸着層樹脂組成物1と、高耐熱性低臭樹脂1とを用いて、インフレーション法により、下記層構成の高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルム1を得た。
得られた高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルム1を用いて、製膜性、熱収縮性、TOC溶出量、臭気官能性を評価した。
高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルム1の層構成:ヒートシール層1/ガス吸着層/ヒートシール層2=高耐熱性低種樹脂1(10μm厚)/ガス吸着層樹脂組成物1(30μm厚)/高耐熱性低臭樹脂1(10μm厚)
<実施例2~9、比較例1~4>
表2~4に示されたフィルム全体の層構成に合わせて、ガス吸着層樹脂組成物を調製し、ガス吸着層樹脂組成物および/または樹脂を用いて、実施例1と同様にインフレーション法により高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムを得て、同様に評価した。
Figure 2022155876000003
Figure 2022155876000004
Figure 2022155876000005
<評価方法>
[製膜性]
高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムの外観を観察し、官能的に評価した。評価基準は以下の通りである。
○:皺やぶつが生じることなく製膜が可能。
×:皺やぶつが多数生じ、製膜が困難。
[ヒートシール性]
高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムを10cm×10cmに切り分け、片面を、ドライラミネート用接着剤(ロックペイント(株)社製、アドロックRU77T/H7。ポリエステル系接着剤。)を介してドライラミネーション接着によってPETフィルム(東洋紡(株)社製PETフィルム、エスペットT4102、厚さ12μm。)と接着し、積層体を得た。
そして、上記で作製した積層体2枚を、ヒートシール面同士を対向して重ね合せ、ヒートシールテスター(テスター産業社製:TP-701-A)を用いて、1cm×10cmの領域を下記条件でヒートシールして、端部はヒートシールされずに接着しておらず、二股に分かれている状態の引き剥がし強度の試験片を作製した。
この試験片を、15mm幅で短冊状に切り、二股に分かれている各端部を引張試験機に装着して下記条件で引き剥がし強度(N/15mm)を測定して、下記合否判定基準で合否判定した。
ヒートシール条件
温度:160℃
圧力:1kgf/cm2
時間:1秒
試験条件
試験速度:300mm/分
荷重レンジ:50N
合否判定基準
○:30N/15mm以上であり、合格。
×:30N/15mm未満であり、不合格。
[ボイル後の熱収縮状態]
10cm×10cmにカットされた高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムを90~100℃の熱湯で10分ボイルし、ボイル後の各辺の長さの収縮率の平均値を算出して、下記基準で合否判定した。
〇:熱収縮率10%以下。合格。
×:熱収縮率10%より大、又はフィルムが溶着し測定不可。不合格。
[ボイル後のゆず肌有無]
10cm×10cmにカットされた高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムを90~100℃の熱湯で10分間ボイルし、外観を目視によって観察し、ゆず肌発生の有無を確認した。
〇:ゆず肌無し、合格。
×:ゆず肌有り、不合格
[溶出性TOC濃度]
ガスサンプリングバック(ジーエルサイエンス社、SMART BAG)に下記サイズの高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムと充填水を充填及び封止して、90℃、30分ボイルした後、常温まで冷まし、35℃2週間保管後に、該充填水のTOC濃度を測定して、TOC濃度の増加濃度を求めた。
高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムサイズ:15cm×44cm×50μm厚×2枚。
充填水:純正化学(株)社製高速液体クロマトグラフィー用蒸留水。1000g。
TOC濃度測定器:(株)島津製作所社製TOC-L全有機体炭素計。
次に、上記で得られた充填水中のTOCの増加濃度から、次式によって高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルム中に含まれる溶出性TOCの濃度を算出した。
C=X×W1/W2
=X×W1/(6.6×S)
C:高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルム中に含まれる溶出性TOCの濃度[ppm]
X:充填水中のTOCの増加濃度[ppm]
W1:充填水重量=1000[g]
W2:高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルム重量=15×44×50×10
-4×2×S=6.6×S[g]
S:高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムの密度[g/cm3
[臭味官能評価]
ガスサンプリングバック(ジーエルサイエンス社、SMART BAG)で作製したパウチ(外寸:13cm×17cm)に、11cm×15cmにカットされた高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムを2枚と、充填水として100mlの水(日本の天然水、サントリー社)を充填して包装体液体充填物を作製して、90℃で30分ボイルし、その後、常温環境下で1週間保管後に、充填水の臭味の官能評価を実施した。
評価指標は下記の通り。
1:臭味がきつい
2:臭味が多少軽減している
3:臭味が大幅に軽減している
4:充填前の天然水と同等
<結果まとめ>
全実施例の高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムは、優れた製膜性、ヒートシール性、ボイル後の低熱収縮性、ボイル後の外観、溶出性TOC濃度、臭味官能性を示した。
しかしながら、汎用樹脂を用いた比較例1、2、3のシーラントフィルムは、ボイル後の低熱収縮性、ボイル後の外観、溶出性TOC濃度、臭味官能性の何れかがで劣る結果を示した。
また、ガス吸着剤含有量が多過ぎる比較例4のシーラントフィルムは、製膜性およびヒートシール性が劣る結果を示した。
1 高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルム
4a ガス吸着層
4b ガス吸着剤
4c ヒートシール層

Claims (8)

  1. 高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムであって、
    該高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムは、ヒートシール性を有する高耐熱性低臭樹脂と、ガス吸着剤とを含有し、自身から発生するガス及び外部からのガスを吸着し、
    該ガスは、炭化水素類、アルデヒド類、ケトン類、カルボン酸類からなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり、
    該高耐熱性低臭樹脂は、密度が0.920g/cm3以上、0.960g/cm3以下であり、
    前記高耐熱性低臭樹脂からなるフィルムに含まれる、溶出性の全有機体炭素(TOC)の濃度は、1.5ppm以上、250ppm以下であり、90~110℃、30分間のボイル処理と35℃の静置保管によって溶出するものであることを特徴とする、
    前記高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルム。
  2. 全高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムに含有される樹脂中の、前記高耐熱性低臭樹脂の含有量は、70質量%以上、100質量%以下であり、
    前記ガス吸着剤の含有量が、前記ガス吸着剤を含有する層中に、0.1質量%以上、30質量%以下であることを特徴とする、
    請求項1に記載の高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルム。
  3. 前記高耐熱性低臭樹脂は、ポリエチレン系樹脂であることを特徴とする、請求項1または2に記載の高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルム。
  4. 前記高耐熱性低臭樹脂が、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン及び線状低密度ポリエチレンからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであることを特徴とする、請求項1または2に記載の高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルム。
  5. 前記ガス吸着剤が、疎水性ゼオライト、モレキュラーシーブ、金属有機構造体(MOF)、活性炭からなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせを含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルム。
  6. 前記高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムが、ガス吸着層と、ヒートシール層とを有し、
    該ガス吸着層は、前記高耐熱性低臭樹脂と、前記ガス吸着剤とを含有する層であり、
    該ヒートシール層は、前記高耐熱性低臭樹脂を含有し、ヒートシール性を有する層であり、
    前記高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムの少なくとも片側の最外層は、ヒートシール層であり、
    該ガス吸着層に含有される前記高耐熱性低臭樹脂と、該ヒートシール層に含有される前記高耐熱性低臭樹脂とは、同一又は異なっていることを特徴とする、
    請求項1~5のいずれか1項に記載の高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルム。
  7. 90℃以上、100℃以下の温度において、10分以上、60分以下ボイルした際の熱収縮率が、0%以上、10%以下であり、
    表面にゆず肌状の変化が発生していないことを特徴とする、
    請求項1~6のいずれか1項に記載の高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルム。
  8. 請求項1~7のいずれか1項に記載の高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルムを用いた、ボイル殺菌またはセミレトルト殺菌用の、高耐熱性低臭ガス吸着シーラントフィルム。
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