JP2022155217A - セラミックス成形用バインダー組成物およびセラミックスラリー - Google Patents

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瑞貴 河野
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Abstract

【課題】熱分解での残渣の発生を抑制でき、且つ安定性に優れたセラミックスラリーを製造するため、並びに平滑性および柔軟性に優れたセラミックス成形体(特に、グリーンシート)を製造するために有用な、セラミックス成形用バインダー組成物を提供すること。【解決手段】成分(A)および成分(B)を含むセラミックス成形用バインダー組成物であって、成分(A)が、特定のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートであるモノマー(a)とその他の共重合可能なモノマー(b)との特定の共重合体であり、成分(B)がフタル酸エステルおよび/または式:R2O-(AO2)q-(AO3)r-H(式中の記号の定義は明細書に記載した通りである)で表される化合物であり、並びに成分(A)の量と成分(B)の量との質量比が15/85~95/5であるセラミックス成形用バインダー組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、セラミックス成形用バインダー組成物、および前記セラミックス成形用バインダー組成物を含むセラミックスラリーに関するものである。ここで「セラミックス成形用バインダー組成物」とは、セラミックス成形体の製造に用いられるバインダー組成物を意味する。
情報電子分野においては、積層セラミックコンデンサ(以下「MLCC」と記載することがある)に代表される積層型電子部品のような、様々な電子部品が利用されている。MLCCは、チタン酸バリウム、アルミナなどのセラミックス粉体を用いて形成された誘電体層と、ニッケルなどの導電材を用いて形成された電極層を交互に積層した構造を持つ。誘電体層の作製方法としては、セラミックス粉体、溶媒、バインダーなどの原料を混合してセラミックスラリーを調製し、ドクターブレードなどを用いてポリエチレンテレフタレートフィルムなどの支持体上にセラミックスラリーを均一に塗布および乾燥させて得られたセラミックグリーンシート(以下「グリーンシート」と記載することがある)を焼成処理する方法が一般的である。
グリーンシートには、裁断、圧着などの工程で、寸法変化、破損などの不具合が生じないような強度および柔軟性が求められる。強度に優れるグリーンシートを製造するために、バインダーとして、強度に優れるポリビニルブチラールが汎用されている。しかし、ポリビニルブチラールは熱分解性が低く、グリーンシートの焼成処理時にカーボン分が残渣として発生し、グリーンシートから形成される層に欠陥が生じて、その性能低下につながるという問題があった。
熱分解しやすく、残渣を生じにくいバインダーとしてアクリル樹脂が知られている。アクリル樹脂は、その原料となるモノマーの種類により、様々な物性を付与することができる。ポリビニルブチラールに匹敵する高強度を達成するために、ガラス転移温度(Tg)の高いモノマーを過剰に用いて得られたアクリル樹脂をグリーンシートのバインダーとして使用すると、得られるグリーンシートが、脆く、割れやすくなるという問題があった。
例えば、特許文献1には、(A)(メタ)アクリル酸エステル、(B)ポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリル酸エステル、および(C)これらと共重合可能なモノマーの共重合体からなる非水系セラミックス成形用バインダーが開示されている。特許文献1で使用されているポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリル酸エステルのような低Tgのモノマーを使用して得られたポリマーを、グリーンシートのバインダーとして使用することで、脆さが改善された、柔軟性のあるグリーンシートを作製することができる。しかし、ポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリル酸エステルのポリオキシエチレン鎖の分子量調整だけでは、前記(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を含む共重合体からなるバインダーを用いて得られるグリーンシートの強度が、MLCCのような小型で精密な電子部品の製造のためには不足する場合があった。
特許文献2に示されるような、従来の製造方法で得られるポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートを含むモノマーからアクリル樹脂を合成した場合、アクリル樹脂の意図しない高分子量化またはゲル化が生じることがある。そのため、従来の製造方法で得られるポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートを含むモノマーから合成されたアクリル樹脂を含むセラミックスラリーは、長期間保管する際の安定性が不十分な場合があった。
特許文献3には、バインダー樹脂(特に、アクリル樹脂)と、特定のフタル酸エステル系可塑剤とを含むセラミックペーストが開示されている。特許文献3に記載されるように、高強度のアクリル樹脂と、可塑剤とを使用することによって、グリーンシートの強度および柔軟性を調整することができる。しかし、強度および柔軟性はトレードオフの関係であり、優れた強度および優れた柔軟性を両立することが難しい。
特開平6-72759号公報 特開2005-281274号公報 特開2007-261821号公報
本発明は、熱分解での残渣の発生を抑制でき、且つ安定性に優れたセラミックスラリーを製造するため、並びに平滑性および柔軟性に優れたセラミックス成形体(特に、グリーンシート)を製造するために有用な、セラミックス成形用バインダー組成物を提供することを目的とする。
上述の目的を達成し得る本発明は、以下の通りである。
[1] 成分(A)および成分(B)を含むセラミックス成形用バインダー組成物であって、
成分(A)が、モノマー(a)と、その他の共重合可能なモノマー(b)との共重合体であり、
モノマー(a)が、式(1):
CH=CR-COO-(AO-H (1)
(式(1)中、
は、水素原子またはメチル基を示し、
AOは、炭素数2~4のオキシアルキレン基の少なくとも1種を示し、2種以上のAOが存在する場合、それらの付加形態はブロックまたはランダムのいずれでもよく、および
pは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、5~100の数である。)
で表され、且つゲル浸透クロマトグラフィー測定により求められるクロマトグラムから算出されるwとwの比率w/wが、式(2):
0.25≦w/w≦0.90 (2)
(式(2)中、前記クロマトグラムのピークにおいて、最大ピーク高さ(h)における保持時間をtとし、最大ピーク高さの1/10(h1/10)における二つの保持時間をtおよびt(但し、t<t)とした場合、wはtとtとの差(t-t)を示し、およびwはtとtとの差(t-t)を示す。)
の関係を満たす、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートであり、
成分(A)中のモノマー(a)に由来する構成単位の量とモノマー(b)に由来する構成単位の量とのモル比(モノマー(a)に由来する構成単位の量/モノマー(b)に由来する構成単位の量)が1/99~10/90であり、
成分(A)の重量平均分子量が、50,000~1,000,000であり、
成分(B)が、フタル酸エステル、および/または式(3):
O-(AO-(AO-H (3)
(式(3)中、
は、炭素数8~10のアルキル基を示し、
AOは、炭素数2~3のオキシアルキレン基の少なくとも1種を示し、2種以上のAOが存在する場合、それらの付加形態は、ブロックまたはランダムのいずれでもよく、
AOは、炭素数3~4のオキシアルキレン基の少なくとも1種を示し、2種以上のAOが存在する場合、それらの付加形態は、ブロックまたはランダムのいずれでもよく、並びに
qおよびrは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、qは、3~9の数であり、rは、2~4の数であり、並びにq/rは、1.0~3.0である。)
で表される化合物であり、並びに
成分(A)の量と成分(B)の量との質量比(成分(A)の量/成分(B)の量)が、15/85~95/5であるセラミックス成形用バインダー組成物。
[2] 前記[1]に記載のセラミックス成形用バインダー組成物、セラミックス粉体、分散剤および有機分散媒を含むセラミックスラリー。
[3] セラミックス粉体100質量部に対して、前記[1]に記載のセラミックス成形用バインダー組成物の含有量が0.1~100質量部であり、分散剤の含有量が0.1~10質量部であり、および有機分散媒の含有量が10~500質量部である前記[2]に記載のセラミックスラリー。
本発明のセラミックス成形用バインダー組成物を用いれば、熱分解での残渣の発生を抑制でき、且つ安定性に優れたセラミックスラリー、並びに平滑性および柔軟性に優れたセラミックス成形体(特に、グリーンシート)を製造することができる。
図1は、wおよびwを説明するための、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートのゲル浸透クロマトグラフィー測定により求められるクロマトグラムのモデルである。
本明細書において記号「~」を用いて規定された数値範囲は、「~」の両端(上限および下限)の数値を含むものとする。例えば「2~4」は、2以上、4以下を表す。
本明細書において「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタクリレートを表す。ここで、(メタ)アクリレートは、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。そのため、2種以上の(メタ)アクリレートが存在し得る場合、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよび/またはメタクリレートを表す。「(メタ)アクリロイル基」等の用語も、「(メタ)アクリレート」と同様の意味である。
<セラミックス成形用バインダー組成物>
本発明のセラミックス成形用バインダー組成物(以下「本発明の組成物」と記載することがある)は、成分(A)および成分(B)を含む。以下、成分(A)および成分(B)について、順に説明する。
<成分(A)>
本発明で使用する成分(A)(以下「本発明の成分(A)」と記載することがある)は、モノマー(a)と、その他の共重合可能なモノマー(b)との共重合体であり、
モノマー(a)が、式(1):
CH=CR-COO-(AO-H (1)
(式(1)中、
は、水素原子またはメチル基を示し、
AOは、炭素数2~4のオキシアルキレン基の少なくとも1種を示し、2種以上のAOが存在する場合、それらの付加形態はブロックまたはランダムのいずれでもよく、および
pは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、5~100の数である。)
で表され、且つゲル浸透クロマトグラフィー測定により求められるクロマトグラムから算出されるwとwの比率w/wが、式(2):
0.25≦w/w≦0.90 (2)
(式(2)中、前記クロマトグラムのピークにおいて、最大ピーク高さ(h)における保持時間をtとし、最大ピーク高さの1/10(h1/10)における二つの保持時間をtおよびt(但し、t<t)とした場合、wはtとtとの差(t-t)を示し、およびwはtとtとの差(t-t)を示す。)
の関係を満たす、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートであり、
成分(A)中のモノマー(a)に由来する構成単位の量とモノマー(b)に由来する構成単位の量とのモル比(モノマー(a)に由来する構成単位の量/モノマー(b)に由来する構成単位の量)が1/99~10/90であり、並びに
成分(A)の重量平均分子量が、50,000~1,000,000である。
(モノマー(a))
本発明の成分(A)を製造するために用いられるモノマー(a)(以下「本発明のモノマー(a)」と記載することがある)は、上記式(1)で表されるように、重合性官能基を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートである。本発明のモノマー(a)は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
式(1)中のRは、モノマー(a)の重合のしやすさの観点から、好ましくはメチル基である。
式(1)中のAOは、好ましくは炭素数2または3のオキシアルキレン基の少なくとも1種であり、より好ましくはオキシエチレン基および/またはオキシプロピレン基であり、さらに好ましくはオキシプロピレン基(即ち、-CHCH(CH)O-または-CH(CH)CHO-)である。
式(1)中のpはオキシアルキレン基の平均付加モル数である。そのため、pは小数であってもよい。pは、モノマー(a)およびモノマー(b)から得られる成分(A)の強度を高くする観点から、好ましくは5~50、より好ましくは5~20、さらに好ましくは5~12である。
本発明のモノマー(a)は、示差屈折率計を用いるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により求められるクロマトグラム(縦軸:屈折率強度、横軸:保持時間)から算出されるwとwの比率w/wが、上記式(2)の関係を満たすことを特徴とする(図1参照)。
モノマー(a)のw/wが0.25より小さくなると、モノマー(a)の分子量分布における高分子量側の偏りが大きくなり、重合性官能基の濃度が低くなり、モノマー(a)の重合性が低下する可能性がある。モノマー(a)の重合性の観点から、w/wが、0.30以上であることが好ましく、0.35以上であることがより好ましい。
一方、モノマー(a)のw/wが0.90より大きくなると、そのようなモノマー(a)自体およびそのようなモノマー(a)を用いて重合反応を行った際、ゲル化が生じやすくなる。また、w/wが0.90より大きくなると、そのようなモノマー(a)を重合して得られるポリマーは高分子量化し、そのようなポリマーを用いてグリーンシートを製造すると、グリーンシートの平滑性が不十分となる。グリーンシートの平滑性の観点から、w/wが、0.80以下であることが好ましく、0.60以下であることがより好ましい。
本発明において、w/wを算出するためのクロマトグラム(縦軸:屈折率強度、横軸:保持時間)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)のシステムとしてHLC-8320GPC(登録商標)、ガードカラムとしてShodex KF-G、カラムとしてShodex KF804Lを3本連続装着し、カラム温度40℃、展開溶剤としてテトラヒドロフランを1mL/分の流速で流し、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートの0.1質量部テトラヒドロフラン溶液0.1mLを注入し、EcoSEC GPC計算プログラムを用いて得られるものである。
成分(A)中のモノマー(a)に由来する構成単位の量とモノマー(b)に由来する構成単位の量とのモル比(モノマー(a)に由来する構成単位の量/モノマー(b)に由来する構成単位の量)が1/99~10/90であることが必要である。前記モル比を前記範囲に調整することによって、本発明の組成物から得られるシートの強度が良好になる。前記モル比は、好ましくは1/99~6/94、より好ましくは1/99~4/96である。前記モル比は、成分(A)の製造時のモノマー使用量から算出することができる。
上記式(2)の要件を満たす本発明のモノマー(a)は、複合金属シアン化物錯体触媒(以下「DMC触媒」と記載することがある)の存在下で、出発原料(例えば、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート)にエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド(好ましくはプロピレンオキシド)を付加させることによって製造することができる。具体的には、反応容器内に、出発原料とDMC触媒を加え、不活性ガス雰囲気の撹拌下、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド(以下、これらをまとめて「炭素数2~4のアルキレンオキシド」と記載する)を連続または断続的に添加し付加重合する。炭素数2~4のアルキレンオキシドは加圧して添加しても良く、大気圧下で添加してもよい。
炭素数2~4のアルキレンオキシドの平均供給速度に制限はないが、炭素数2~4のアルキレンオキシドの仕込み量によって変化させることが望ましい。具体的には炭素数2~4のアルキレンオキシドの全供給量の5質量部以上20質量部以下を供給する間の速度(単位時間あたりの供給量)をV、炭素数2~4のアルキレンオキシドの全供給量の20質量部超50質量部以下を供給する間の速度をV、炭素数2~4のアルキレンオキシドの全供給量の50質量部超100質量部以下を供給する間の速度をVとしたとき、本発明のモノマー(a)を製造するための一態様では、V/V=1.1~2.0、V/V=1.1~1.5となるように炭素数2~4のアルキレンオキシドの平均供給速度を制御することが好ましい。また、本発明のモノマー(a)を製造する別の一態様では、V/V=0.4~0.9、V/V=0.5~0.95となるように炭素数2~4のアルキレンオキシドの平均供給速度を制御することが好ましい。
また、出発原料に炭素数2~4のアルキレンオキシドを付加させるための反応温度は、50℃~120℃が好ましく、70℃~90℃がより好ましい。この反応温度が50℃より低いと反応速度が非常に小さく、120℃より高いと、出発原料における重合性基の重合や、着色の問題が生じる。
出発原料に炭素数2~4のアルキレンオキシドを付加させるための反応温度は、50℃~120℃が好ましく、70℃~90℃がより好ましい。この反応温度が50℃より低いと反応速度が非常に小さく、120℃より高いと、出発原料における重合性基の重合や、着色の問題が生じる。
出発原料および炭素数2~4のアルキレンオキシドに含まれる微量の水分量については特に制限はないが、出発原料に含まれる水分量は、0.5質量%以下、炭素数2~4のアルキレンオキシドに含まれる水分量は、0.01質量%以下であることが望ましい。
DMC触媒の使用量は、特に制限されるものではないが、製造されるモノマー(a)(即ち、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート)100質量部に対して、0.0001~0.1質量部が好ましく、0.001~0.05質量部がより好ましい。DMC触媒の反応系への投入は初めに一括して行ってもよく、順次分割して行ってもよい。重合反応終了後、DMC触媒の除去を行う。触媒の除去は、ろ別や遠心分離、合成吸着剤による処理など公知の方法により行うことができる。
モノマー(a)(即ち、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート)の製造において、DMC触媒は公知のものを用いることができる。DMC触媒は、例えば、式(4):
[M’(CN)(HO)・(L) (4)
(式(4)中、MおよびM’は、金属原子を示し、Lは、有機配位子を示し、a、b、c、d、xおよびyは、正の整数を示す。)
で表されるものを使用することができる。
金属原子(金属カチオン)Mとしては、例えば、Zn(II)、Fe(II)、Fe(III)、Co(II)、Ni(II)、Al(III)、Sr(II)、Mn(II)、Cr(III)、Cu(II)、Sn(II)、Pb(II)、Mo(IV)、Mo(VI)、W(IV)、W(VI)等が挙げられる。なかでもZn(II)が好ましく用いられる。
金属原子(金属カチオン)M’としては、例えば、Fe(II)、Fe(III)、Co(II)、Co(III)、Cr(II)、Cr(III)、Mn(II)、Mn(III)、Ni(II)、V(IV)、V(V)等が挙げられる。なかでもFe(II)、Fe(III)、Co(II)、Co(III)が好ましく用いられる。
有機配位子Lとしては、例えば、アルコール、エーテル、ケトン、エステルなどが使用でき、アルコールがより好ましい。好ましい有機配位子は、水溶性のものであり、具体例としては、tert-ブチルアルコール、n-ブチルアルコール、iso-ブチルアルコール、N,N-ジメチルアセトアミド、エチレングリコールジメチルエーテル(グライム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)等が挙げられる。特に好ましいDMC触媒は、tert-ブチルアルコールが配位したZn(II)[Co(III)(CN)(HO)(tert-ブチルアルコール)である。
出発原料に炭素数2~4のアルキレンオキシドを付加させる反応においては、その他の添加剤を使用してもよい。例えば、重合禁止剤としてヒドロキノン(HQ)、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MQ)、2,6-ジ-tert-ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ジ-tert-ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロールなどを反応系に添加することができる。重合禁止剤は、好ましくはMQおよび/またはBHTであり、より好ましくはBHTである。重合禁止剤の添加量としては、出発原料(例えば、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート)と炭素数2~4のアルキレンオキシドとの合計100質量部に対し、0.001~0.3質量部が好ましい。この添加量が0.001質量部より少ないと、重合禁止剤の機能が不十分となり、炭素数2~4のアルキレンオキシドの付加中にゲル化が生じる可能性がある。この添加量が0.3質量部より多いと、得られるモノマー(a)(即ち、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート)の純度が低くなる場合がある。
(モノマー(b))
本発明の成分(A)は、モノマー(a)と、その他の共重合可能なモノマー(b)との共重合体である。ここで「その他の共重合可能なモノマー」とは、モノマー(a)と異なり、且つモノマー(a)と共重合可能なモノマーを意味する。モノマー(b)は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
モノマー(b)は、好ましくはオレフィン性二重結合を有するモノマーであり、より好ましくは(メタ)アクリロイル基を有するモノマーである。
モノマー(b)としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、ビニル化合物等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルおよびビニル化合物は、いずれも1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸グリセロール、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシフェニル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸グリシジル等が挙げられる。
ビニル化合物としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン等のスチレン系モノマー、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニルモノマー、塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリルなどの塩素含有ビニルモノマー、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー、(メタ)アクリロニトリル等のシアノ基含有ビニル系モノマー、(メタ)アクリルアミド等のカルバモイル基含有ビニル系モノマー、酢酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル等が挙げられる。
本発明の組成物から得られるシートの強度および伸張性、本発明のセラミックスラリーから得られるセラミックス成形体(特にグリーンシート)の強度および柔軟性を高める観点から、モノマー(b)は、
(i)好ましくは(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニルおよびスチレンからなる群から選ばれる少なくとも一つ、
(ii)より好ましくはメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニルおよびスチレンからなる群から選ばれる少なくとも一つ、
(iii)さらに好ましくはメタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチルおよびメタクリル酸イソブチルからなる群から選ばれる少なくとも一つ、
(iv)特に好ましくはメタクリル酸メチルのみ、またはメタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ブチルの両方、
(v)最も好ましくはメタクリル酸メチル
である。
本発明の成分(A)は、
(I)好ましくは(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニルおよびスチレンからなる群から選ばれる少なくとも一つと、モノマー(a)とからなる共重合体、
(II)より好ましくはメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニルおよびスチレンからなる群から選ばれる少なくとも一つ、モノマー(a)とからなる共重合体、
(III)さらに好ましくはメタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチルおよびメタクリル酸イソブチルからなる群から選ばれる少なくとも一つと、モノマー(a)とからなる共重合体、
(IV)特に好ましくはメタクリル酸メチルのみ、またはメタクリル酸メチルおよびメタクリル酸ブチルの両方と、モノマー(a)とからなる共重合体、
(V)最も好ましくはメタクリル酸メチルとモノマー(a)とからなる共重合体
である。
ここで、「メタクリル酸メチルとモノマー(a)とからなる共重合体」とは、モノマーとしてメタクリル酸メチルおよびモノマー(a)のみを用いて形成される共重合体を意味する。「メタクリル酸メチルとモノマー(a)とからなる共重合体」と同様の他の表現も、「メタクリル酸メチルとモノマー(a)とからなる共重合体」と同様の意味である。
(成分(A)の重量平均分子量)
本発明の成分(A)の重量平均分子量は、50,000~1,000,000であることが必要である。成分(A)の重量平均分子量が50,000未満であると、本発明の組成物から得られるシートの強度が不十分になる。また、成分(A)の重量平均分子量が1,000,000を超えると、本発明のセラミックスラリーから得られるセラミックス成形体(特にセラミックグリーンシート)の表面の平滑性が損なわれるなどの不具合が起こりやすくなる。成分(A)の重量平均分子量は、好ましくは100,000~800,000、より好ましくは200,000~600,000である。本発明の成分(A)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてポリスチレン換算で求めることができる。
(成分(A)の製造方法)
成分(A)の製造方法としては、懸濁重合、溶液重合、乳化重合などの公知の方法を選択することができる。懸濁重合の場合、例えばイオン交換水にポリビニルアルコールなどの水溶性高分子を少量溶解させ、原料モノマーを水中で高速撹拌することによりモノマーの懸濁液を調製し、この状態を保ちながら重合開始剤によりモノマーを重合させることによって、成分(A)を合成することができる。溶液重合の場合、有機溶媒中でモノマーを重合させることでポリマー溶液を得る。このとき、後述する本発明のセラミックスラリーが含み得る有機分散媒を、前記ポリマー溶液の有機溶媒として使用してもよい。上記重合方法の中でも、高分子量の成分(A)が得られやすいことから、懸濁重合が好ましい。
重合開始剤の使用量は、用いるモノマーの組み合わせや、反応条件などに応じて適宜設定することができる。モノマーおよび重合開始剤を反応器に添加する方法に特に限定はない。例えばモノマーおよび重合開始剤の全量を一括で反応器に添加してもよく、モノマーおよび/または重合開始剤を、分割して(例えば滴下して)反応器に添加してもよい。
重合時には、成分(A)の分子量を制御する目的で、連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤としては、例えばα-メチルスチレンダイマー、1-チオグリセロールなどの汎用の化合物を使用することができる。
<成分(B)>
本発明で使用する成分(B)(以下「本発明の成分(B)」と記載することがある)は、フタル酸エステル、および/または式(3):
O-(AO-(AO-H (3)
(式(3)中、
は、炭素数8~10のアルキル基を示し、
AOは、炭素数2~3のオキシアルキレン基の少なくとも1種を示し、2種以上のAOが存在する場合、それらの付加形態は、ブロックまたはランダムのいずれでもよく、
AOは、炭素数3~4のオキシアルキレン基の少なくとも1種を示し、2種以上のAOが存在する場合、それらの付加形態は、ブロックまたはランダムのいずれでもよく、並びに
qおよびrは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、qは、3~9の数であり、rは、2~4の数であり、並びにq/rは、1.0~3.0である。)
で表される化合物(以下「化合物(3)」と記載することがある)である。フタル酸エステルおよび化合物(3)は、いずれも、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
フタル酸エステルとしては、例えば、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジデシル、フタル酸ジイソデシル等が挙げられる。フタル酸エステルは、好ましくはフタル酸ジオクチルである。
式(3)中のRの炭素数8~10のアルキル基は、直鎖状または分枝鎖状のいずれでもよい。その具体例としては、オクチル基、1-メチルヘプチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、イソノニル基、3,5,5-トリメチル-1-ヘキシル基、デシル基、1-メチルノニル基、3,7-ジメチルオクチル基等が挙げられる。Rは、好ましくはイソノニル基または3,5,5-トリメチル-1-ヘキシル基である。
式(3)中のAOは、好ましくはオキシエチレン基および/またはオキシプロピレン基であり、より好ましくはオキシエチレン基またはオキシプロピレン基であり、さらに好ましくはオキシエチレン基である。
式(3)中のqはオキシアルキレン基の平均付加モル数である。そのため、qは小数であってもよい。qは、3~9の数である。qが3より小さい場合、成分(A)に対する化合物(3)(成分(B))の相溶性が低下し、成分(A)中に化合物(3)(成分(B))が入り込みにくくなる。その結果、成分(A)および化合物(3)(成分(B))を含むセラミックスラリーから形成されるセラミックス成形体(特にグリーンシート)の柔軟性が低下する。一方、qが9より大きい場合、セラミックスラリーの有機分散媒に対する化合物(3)の相溶性が低下し、セラミックスラリーの安定性が低下する。qは、好ましくは5~9、より好ましくは7~9である。
式(3)中のAOは、好ましくはオキシプロピレン基および/またはオキシブチレン基であり、より好ましくはオキシプロピレン基である。
式(3)中のrはオキシアルキレン基の平均付加モル数である。そのため、rは小数であってもよい。rは、2~4の数である。rが2より小さい場合、化合物(3)の親水性が高くなりすぎて、化合物(3)は、セラミックスラリーに用いられる有機分散媒との馴染みが悪くなる。その結果、成分(A)、化合物(3)(成分(B))および有機分散媒を含むセラミックスラリーからセラミックス成形体(特にグリーンシート)を形成した際に、ハジキのような現象が生じ、得られるセラミックス成形体の表面の平滑性が損なわれる。rが4より大きい場合、成分(A)に対する化合物(3)の相溶性が低下し、成分(A)中に化合物(3)(成分(B))が入り込みにくくなる。その結果、成分(A)および化合物(3)(成分(B))を含むセラミックスラリーから形成されるセラミックス成形体(特にグリーンシート)の柔軟性が低下する。rは、好ましくは3である。
式(3)中のqおよびrの比(即ち、q/r)は、1.0~3.0である。q/rが1.0より小さい場合、成分(A)に対する化合物(3)の相溶性が低下し、成分(A)中に化合物(3)(成分(B))が入り込みにくくなる。その結果、成分(A)および化合物(3)(成分(B))を含むセラミックスラリーから形成されるセラミックス成形体(特にグリーンシート)の柔軟性が低下する。一方、q/rが3.0より大きい場合、化合物(3)の親水性が高くなりすぎて、化合物(3)は、セラミックスラリーに用いられる有機分散媒との馴染みが悪くなる。その結果、成分(A)、化合物(3)(成分(B))および有機分散媒を含むセラミックスラリーからセラミックス成形体(特にグリーンシート)を形成した際に、ハジキのような現象が生じ、得られるセラミックス成形体の表面の平滑性が損なわれる。q/rは、好ましくは1.6~3.0、より好ましくは2.4~3.0である。
化合物(3)は、成分(A)との馴染みが良い。そのため、本発明の成分(B)は、好ましくは化合物(3)である。
化合物(3)は、例えば、出発原料であるアルコールに、AOに対応するアルキレンオキシドを付加させた後、AOに対応するアルキレンオキシドを付加させることによって製造することができる。アルキレンオキシドの付加は当業者にとって周知であり、当業者であれば、その付加条件を適宜設定することによって、化合物(3)を製造することができる。
<成分(A)の量と成分(B)の量との質量比>
本発明の組成物において、成分(A)の量と成分(B)の量との質量比(成分(A)の量/成分(B)の量)は15/85~95/5であることが必要である。前記質量比が15/85未満であると、本発明のセラミックスラリーから形成されるセラミックス成形体(特にグリーンシート)の強度が不十分となり、また、前記成形体の平滑性が損なわれる場合がある。前記質量比が95/5を超えると、本発明の組成物から得られるシートの伸張性が損なわれる。前記質量比は、好ましくは40/60~95/5であり、より好ましくは70/30~95/5である。
<セラミックスラリー>
本発明は、本発明のセラミックス成形用バインダー組成物、セラミックス粉体、分散剤、および有機分散媒を含むセラミックスラリーも提供する。セラミックス粉体、分散剤および有機分散媒は、いずれも、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
セラミックス粉体は、酸化物系セラミックス粉体または非酸化物系セラミックス粉体のいずれもでよい。酸化物系セラミックス粉体としては、例えば、アルミナ、チタニア、ジルコニア、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛等が挙げられる。非酸化物系セラミックス粉体としては、例えば、炭化ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられる。
レーザー回折散乱式粒度分布測定装置によって測定されるセラミックス粉体の体積基準のメジアン径d50は、好ましくは0.05~50.0μm、より好ましくは0.10~10.0μm、さらに好ましくは0.20~5.00μm、特に好ましくは0.20~1.00μmである。
分散剤に特に限定はなく、カチオン性分散剤、アニオン性分散剤、ノニオン性分散剤、および両性分散剤のいずれも使用することができる。高分子分散剤を使用してもよい。
カチオン性分散剤としては、例えば、ポリアミン系分散剤等が挙げられる。アニオン性分散剤としては、例えば、カルボン酸系分散剤、リン酸エステル系分散剤、硫酸エステル系分散剤、スルホン酸エステル系分散剤等が挙げられる。ノニオン性分散剤としては、例えば、ポリエチレングリコール系分散剤等が挙げられる。高分子系分散剤としては、例えば、高分子ポリカルボン酸系分散剤等が挙げられる。
セラミックスラリーのシート成形性の観点から、有機分散媒は、好ましくは揮発性の高い有機分散媒である。揮発性の高い有機分散媒としては、例えばメタノール、エタノール、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
セラミックス粉体100質量部に対して、セラミックス成形用バインダー組成物の含有量が0.1~100質量部であり、分散剤の含有量が0.1~10質量部であり、および有機分散媒の含有量が10~500質量部であるセラミックスラリーが好ましい。前記セラミックス成形用バインダー組成物の含有量は、より好ましくは1~50質量部、さらに好ましくは5~20質量部である。前記分散剤の含有量は、より好ましくは0.2~5質量部、さらに好ましくは0.5~2質量部である。前記有機分散媒の量は、より好ましくは20~200質量部、さらに好ましくは25~100質量部である。
<セラミックスラリーの他の成分>
本発明のセラミックスラリーは、本発明の効果を阻害しない範囲で、上述のセラミックス成形用バインダー組成物、さらにセラミックス粉体、分散剤および有機分散媒とは異なる他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、消泡剤等が挙げられる。
<セラミックス成形体の製造方法>
本発明のセラミックスラリーから、セラミックス成形体を製造する方法に、特に限定はない。セラミックス成形体の製造方法としては、例えば、本発明のセラミックスラリーを乾燥して得られた組成物をプレスする方法(以下「プレス方式の方法」と記載することがある);本発明のセラミックスラリーをシート状に塗布し、乾燥することによって、セラミックス成形体であるグリーンシートを製造する方法(以下「シート方式の方法」と記載することがある);等が挙げられる。
プレス方式の方法では、例えばセラミックス粉体、成分(A)、成分(B)および有機分散媒、並びに必要に応じて分散剤および他の添加剤を混合し、ボールミルなどで撹拌して、セラミックスラリーを調製し、スプレードライなどによってセラミックスラリーを乾燥して、粒状の組成物を調製し、得られた粒状の組成物を型に充填してプレスすることによってセラミックス成形体を製造することができる。得られたセラミックス成形体は、最終的に焼結される。
シート方式の方法では、例えばセラミックス粉体、成分(A)、成分(B)および有機分散媒、並びに必要に応じて分散剤および他の添加剤を混合し、ボールミルなどで撹拌して、セラミックスラリーを調製し、必要に応じてセラミックスラリーの脱泡を行った後、セラミックスラリーを、ドクターブレード法などにより支持体上に塗布し、加熱乾燥してグリーンシートを製造することができる。
シート方式の方法で使用する支持体に特に限定はなく、公知のものを使用することができる。支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ステンレス鋼(SUS)、ガラス板等が挙げられる。
支持体に塗布したセラミックスラリーの乾燥方法に、特に限定はなく、公知の方法で乾燥を行うことができる。乾燥機としては、例えば、乾燥炉、ホットドライヤー等が挙げられる。乾燥時の雰囲気は、大気雰囲気でもよく、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気でもよい。乾燥時の圧力は、常圧下でもよく、減圧下でもよい。乾燥時の温度および時間は、セラミックスラリーの成分によって異なるが、その温度は、例えば30~150℃であり、その時間は、例えば5~60分である。また、乾燥後に得られるグリーンシートの膜厚は、0.5~20.0μmとなるように、セラミックスラリーを塗布することが好ましい。
得られたグリーンシートから、成分(A)および成分(B)を除去する脱脂処理によって、誘電体層などを製造することができる。脱脂処理の方法に特に限定はなく、公知の方法を行うことができる。例えば、電気炉などを使用して、不活性ガス雰囲気下、例えば350~500℃および30~150分でグリーンシートを焼結することによって、成分(A)および成分(B)を除去することができる。
以下、本発明をさらに詳細な実施例に基づき説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<略語>
以下の表で使用する略語の意味は、以下の通りである。
HPMA:メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル
DMC:合成例1で得られたDMC触媒
BF:三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体
MMA:メタクリル酸メチル
nBMA:メタクリル酸ブチル
INA:イソノナノール
TMHA:3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノール
EO:オキシエチレン基
PO:オキシプロピレン基
PVB:ポリビニルブチラール(積水化学工業社製「エスレックBM-2」)
DOP:フタル酸ジオクチル
<複合金属シアン化物錯体(DMC)触媒の合成>
(合成例1)
塩化亜鉛2.1gを含む2.0mLの水溶液中に、カリウムヘキサシアノコバルテートKCo(CN)を0.84g含む15mLの水溶液を、40℃にて撹拌しながら15分かけて滴下した。滴下終了後、水16mL、およびtert-ブチルアルコール16gを加え、70℃に昇温し、1時間撹拌した。室温まで冷却後、濾過操作(1回目)を行い、固体を得た。この固体に、水14mL、およびtert-ブチルアルコール8.0gを加え、30分撹拌したのち、濾過操作(2回目)を行い、固体を得た。得られた固体にtert-ブチルアルコール18.6g、およびメタノール1.2gを加え、30分撹拌したのち、濾過操作(3回目)を行い、得られた固体を40℃、減圧下で3時間乾燥し、DMC触媒(Zn(II)[Co(III)(CN)(HO)(tert-ブチルアルコール))0.7gを得た。
<モノマー(a)またはモノマー(a’)の合成>
(合成例2:モノマー(a-1)の合成)
温度計、圧力計、安全弁、窒素ガス吹き込み管、撹拌機、真空排気管、冷却コイルおよび蒸気ジャケットを装備したステンレス製5リットル(内容積4,890mL)の耐圧反応装置に2-ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)500g(水分量0.02質量%)、合成例1で得られたDMC触媒0.3g、および2,6-ジ-tert-ブチルヒドロキシトルエン(BHT)0.6gを仕込んだ。窒素置換後、70℃へと昇温し、0.3MPa以下の条件で、撹拌しながら、窒素ガス吹き込み管より、プロピレンオキシド(メチルオキシラン、水分量0.005質量%)403gを滴下した。反応槽内の圧力と温度の経時的変化を観察したところ、滴下終了後から5時間後、反応槽内の圧力が急激に減少した。その後、反応槽内を70℃に保ちながら、0.5MPa以下の条件で、窒素ガス吹き込み管より、徐々にプロピレンオキシド1132gを滴下した。なお、平均供給速度については、Vが260g/時間、Vが203g/時間、Vが152g/時間であった(V/V=1.28、V/V=1.34)。滴下終了からさらに70℃で0.5時間反応させた後、反応層から反応混合物を抜き取り、反応混合物の濾過操作を行って、固体を除去し、液状のモノマー(a-1)を得た。
(合成例3:モノマー(a-2)の合成)
HPMAの使用量を250gに変更し、プロピレンオキシドの使用量を1630gに変更したこと以外は合成例2と同様の方法で、モノマー(a-2)を合成した。
(合成例4:モノマー(a-3)の合成)
HPMAの使用量を120gに変更し、プロピレンオキシドの使用量を1656gに変更したこと以外は合成例2と同様の方法で、モノマー(a-3)を合成した。
(比較合成例1:モノマー(a’-1)の合成)
HPMAの使用量を500gに変更し、プロピレンオキシドの使用量を1590gに変更し、触媒として、合成例1で得た得られたDMC触媒0.3gの代わりに三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体17.7gを使用したこと以外は合成例2と同様の方法で、モノマー(a’-1)を合成した。
合成例2~合成例4および比較合成例1で得られたモノマー(a-1)~モノマー(a-3)およびモノマー(a’-1)、並びにこれらの出発原料、使用した触媒、並びに上記式(1)のR、AO、およびp、並びに上記式(2)のw/w、並びに水酸基価より算出したこれらの分子量を表1に記載する。なお、モノマー(a-1)~モノマー(a-3)が、上記式(2)の要件を満たす本発明のモノマー(a)であり、モノマー(a’-1)が、上記式(2)の要件を満たさないモノマー(a’)である。
Figure 2022155217000001
<成分(A)または成分(A’)の合成>
(合成例5:成分(A-1)の合成)
撹拌機、温度計、冷却管、窒素ガス導入管を備えた1Lセパラブルフラスコにイオン交換水600gとポリビニルアルコール(クラレ社製「ポバールPVA-224E」)0.6gを仕込み、撹拌しながら、加熱して水溶液を調製した。この水溶液に、モノマー(a-1)21.2g、モノマー(b-1)としてメタクリル酸メチル178.8g、重合開始剤として日油社製「パーロイルOPP」3.2g、連鎖移動剤として日油社製「ノフマーMSD」(α-メチルスチレンダイマー)0.6gの混合物を投入し、50℃で3時間加熱し、粒子状の共重合体を得た。さらに粒子状の共重合体を含む混合物を70℃に昇温し、70℃で2時間撹拌して開始剤を完全に分解させた。次いで混合物を室温まで冷却し、濾過操作を行って、湿った粒子状の共重合体を得た。アルミ製バットの上に湿った粒子状の共重合体を敷き詰め、40℃の恒温乾燥器にバットを入れて、水分を十分に除去し、粒子状の共重合体である成分(A-1)を得た。
(合成例6:成分(A-2)の合成)
モノマー(a-1)21.2gの代わりにモノマー(a-2)35.8gを使用し、メタクリル酸メチルの使用量を164.2gに変更し、パーロイルOPPの使用量を2.6gに変更したこと以外は合成例5と同様の方法での方法で、共重合体である成分(A-2)を得た。
(合成例7:成分(A-3)の合成)
モノマー(a-1)21.2gの代わりにモノマー(a-3)60.6gを使用し、メタクリル酸メチルの使用量を139.4gに変更し、パーロイルOPPの使用量を2.0gに変更し、ノフマーMSDの使用量を0.4gに変更したこと以外は合成例5と同様の方法で、共重合体である成分(A-3)を得た。
(合成例8:成分(A-4)の合成)
モノマー(a-1)の使用量を20.6gに変更し、メタクリル酸メチルの使用量を159.2gに変更し、モノマー(b-2)としてメタクリル酸ブチル20.2gをさらに使用したこと以外は合成例5と同様の方法で、共重合体である成分(A-4)を得た。
(合成例9:成分(A-5)の合成)
モノマー(a-1)の使用量を46.8gに変更し、メタクリル酸メチルの使用量を153.2gに変更したこと以外は合成例5と同様の方法で、共重合体である成分(A-5)を得た。
(比較合成例2:成分(A’-1)の合成)
モノマー(a-1)21.2gの代わりにモノマー(a’-1)22.0gを使用し、メタクリル酸メチルの使用量を178.0gに変更したこと以外は合成例5と同様の方法で、共重合体である成分(A’-1)を得た。
(比較合成例3:成分(A’-2)の合成)
モノマー(a-1)の使用量を101.4gに変更し、メタクリル酸メチルの使用量を98.6gに変更し、パーロイルOPPの使用量を3.0gに変更し、ノフマーMSDの使用量を0.5gに変更した以外は合成例5と同様の方法で、共重合体である成分(A’-2)を得た。
[重量平均分子量]
以下の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、合成例5~9、比較合成例2および3で得られた共重合体(即ち、成分(A-1)~成分(A-5)、成分(A’-1)および成分(A’-2))の重量平均分子量を求めた。
装置:東ソー社製、HLC-8220
カラム:昭和電工社製、Shodex KF-805L
標準物質:ポリスチレン
溶離液:THF(テトラヒドロフラン)
流量:1.0ml/min
カラム温度:40℃
検出器:RI(示差屈折率検出器)
合成例5~合成例9、比較合成例2および3で得られた共重合体である成分(A-1)~成分(A-5)、成分(A’-1)および成分(A’-2)、これら共重合体の合成に使用したモノマーの種類および量、(モノマー(a-1)、モノマー(a-2)、モノマー(a-3)またはモノマー(a’-1))/(モノマー(b-1)またはモノマー(b-2))のモル比(表2中、「(a)/(b)のモル比」と記載する)、並びにこれら共重合体の重合平均分子量を、表2に記載する。なお、成分(A-1)~成分(A-5)が、本発明の要件を満たす成分(A)であり、成分(A’-1)および成分(A’-2)が、本発明の成分(A)に対応するが、本発明の要件を満たさない成分(A’)である。詳しくは、成分(A’-1)は、上記式(2)の要件を満たさないモノマー(a’-1)を用いて得られた共重合体であり、成分(A’-2)は、モノマー(a)の使用量が過剰である(即ち、モノマー(a)に由来する構成単位の量が過剰である)共重合体である。
Figure 2022155217000002
<成分(B)の合成>
(合成例10:成分(B-1)の合成)
5Lオートクレーブに、イソノナノール(KHネオケム社製「オキソコール900」)433g、および水酸化カリウム10gを仕込み、窒素置換後、撹拌しながら120℃に昇温した。次に滴下装置によりエチレンオキシド1058gを6時間かけて滴下し、120℃でさらに1時間反応させた。続いて滴下装置によりプロピレンオキシド523gを4時間かけて滴下し、120℃でさらに1時間反応させた。その後、オートクレーブ内から粗生成物を取り出し、JISK1557-5に準拠して測定されるpHが6~7となるように、粗生成物を塩酸で中和した。次に、粗生成物から塩酸由来の水分を除去するため、100℃および1時間、中和後の粗生成物の減圧処理を行い、最後に濾過により塩を除去して、1913gの成分(B-1)を得た。
(合成例11:成分(B-2)の合成)
イソノナノール 433gを3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノール 433gに変更したこと以外は合成例10と同様の方法で、1905gの成分(B-2)を得た。
(合成例12:成分(B-3)の合成)
エチレンオキシドをの使用量を790gに変更したこと以外は合成例10と同様の方法で、1659gの成分(B-3)を得た。
(合成例13:成分(B-4)の合成)
イソノナノール 433gを3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノール 433gに変更し、エチレンオキシドの使用量を530gに変更したこと以外は合成例10と同様の方法で、1412gの成分(B-4)を得た。
合成例10~合成例13および比較合成例4で得られた成分(B-1)~(B-4)、並びにこれらの出発原料、上記式(3)のR、AO、q、AO、rおよびq/rを表3に記載する。なお、成分(B-1)~(B-4)が、上記式(3)の要件を満たす本発明の成分(B)である。
Figure 2022155217000003
<セラミックス成形用バインダー組成物の製造および評価>
(実施例1~11および比較例1~4)
表4~6に示す量で、本発明の要件を満たす成分(A)または本発明の要件を満たさない成分(A’)と、本発明の要件を満たす成分(B)とを混合することによって実施例1~11および比較例1~4のセラミックス成形用バインダー組成物(以下「組成物」と記載することがある)を製造した。なお、比較例4では、本発明の要件を満たさない成分(A’)としてポリビニルブチラールを使用した。
Figure 2022155217000004
Figure 2022155217000005
Figure 2022155217000006
[脱脂性]
得られた組成物(即ち、実施例1~11および比較例1~4の組成物のいずれか)5mgをアルミパンに入れ、示差熱-熱重量測定(TG-DTA)装置にて、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で、室温から500℃まで昇温し、組成物を加熱した。加熱前後の組成物の重量から、下記式:
残存率(%)=100×加熱後の組成物の重量/加熱前の組成物の重量
により残存率を算出し、下記基準で脱脂性を評価した。
脱脂性の評価基準
○:残存率が1.0%未満
×:残存率が1.0%以上
[シート強度]
得られた組成物(即ち、実施例1~11および比較例1~4の組成物のいずれか)10質量部を、メチルエチルケトン30質量部に溶解させて調製した溶液を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、バーコーターNo.32にて塗工し、60℃の恒温槽で1時間乾燥させて、厚さ30μmのシートを製造した。得られたシートをPETフィルムから剥離し、幅10mm×長さ50mmの試験片を切り出し、オートグラフ(島津製作所社製:EZ-SX)にて、10mm/minの引張速度で引張試験を実施して引張強度を測定し、下記基準でシート強度を評価した。
シート強度の評価基準
◎:引張強度が15.0N/mm以上
○:引張強度が10.0N/mm以上、15.0N/mm未満
×:引張強度が10.0N/mm未満
[シート伸張性]
上述のシート強度の評価と同様にして、試験片の調製および引張試験を実施して破断伸び(=100×(L-L)/L、L:標点距離、L:破断時の標点距離)を測定し、下記基準でシート伸張性を評価した。
シート伸張性の評価基準
◎:破断伸びが100%以上
○:破断伸びが70%以上100%未満
×:破断伸びが70%未満
実施例1~11および比較例1~4の組成物の評価結果(即ち、残存率(%)およびそれによる脱脂性の評価結果、引張強度(N/mm)およびそれによるシート強度の評価結果、破断伸び(%)およびそれによるシート伸張性の評価結果)を表7~9に記載する。
Figure 2022155217000007
Figure 2022155217000008
Figure 2022155217000009
<セラミックスラリーの製造および評価>
(実施例12~22および比較例5~8)
セラミックス粉体としてチタン酸バリウム(堺化学社製:「BT-03」、体積基準のメジアン径d50:300nm)100質量部、高分子ポリカルボン酸系分散剤(日油社製:「マリアリムAKM-0531」)0.8質量部、有機分散媒としてトルエン18質量部およびエタノール18質量部、並びに粒径1mmのジルコニアボール100質量部をボールミルに入れ、8時間混合した後、トルエン10質量部、エタノール10質量部、並びに実施例1~11および比較例1~4の組成物のいずれか10質量部加え、さらに12時間混合した後、ジルコニアボールを濾別することによって、実施例12~22および比較例5~8のセラミックスラリーを調製した。
[グリーンシート平滑性]
得られたセラミックスラリー(即ち、実施例12~22および比較例5~8のセラミックスラリーのいずれか)をドクターブレード法によってキャリアシートであるPETフィルム上に厚さ20μmのシート状に塗布した後、90℃および10分乾燥させて、グリーンシートを作製した。作製したグリーンシートの表面粗さを、表面粗さ計を用いて測定し、算術平均粗さ(μm)を算出して、下記基準でグリーンシート平滑性を評価した。
グリーンシート平滑性の評価基準
◎:算術平均粗さが0.050μm未満
○:算術平均粗さが0.050μm以上、0.060μm未満
×:算術平均粗さが0.060μm以上
[グリーンシート柔軟性]
グリーンシート平滑性の評価と同様の方法で得られたグリーンシートを、23℃および65%RHの環境下で24時間静置した後、グリーンシートを用いて屈曲性試験(円筒形マンドレル法、JISK5600-5-1準拠)を実施した。具体的には、キャリアシート(PETフィルム)およびグリーンシートの積層体のキャリアシートを直径6mmまたは12mmの円筒形マンドレルに接触させた状態で、グリーンシートが外側になるようにして前記積層体を180°折り曲げたときのグリーンシートのクラック発生の有無を観察し、下記基準でグリーンシート柔軟性評価した。
グリーンシート柔軟性の評価基準
◎:直径6mmの円筒形マンドレルを用いた場合でも、グリーンシートにクラックが生じない。
○:直径6mmの円筒形マンドレルを用いた場合にグリーンシートにクラックが生じ、直径12mmの円筒形マンドレルを用いた場合にグリーンシートにクラックが生じない。
×:直径12mmの円筒形マンドレルを用いた場合にグリーンシートにクラックが生じる。
[セラミックスラリー安定性]
得られたセラミックスラリー(即ち、実施例12~22および比較例5~8のセラミックスラリーのいずれか)を、23℃および65%RHの環境下で24時間静置し、スラリーの状態を目視で観察し、セラミックスラリー安定性を下記基準で評価した。
セラミックスラリー安定性の評価基準
○:24時間経過時、分離等は見られず、セラミックスラリーは均一なままである。
×:24時間以内に分離またはダマの発生により、セラミックスラリーが不均一となる。
実施例12~22および比較例5~8のセラミックスラリーの評価結果(即ち、算術平均粗さ(μm)およびそれによるグリーンシート平滑性の評価結果、グリーンシート柔軟性、並びにセラミックスラリー安定性)を表10~12に記載する。なお、実施例12~22および比較例5~8のセラミックスラリーの製造に使用した組成物の種類(実施例1~11および比較例1~4のいずれか)を、表10~12の「スラリー製造に使用した組成物」に記載する。
Figure 2022155217000010
Figure 2022155217000011
Figure 2022155217000012
表7、8、10および11に示す通り、実施例1~11の組成物および実施例12~22のセラミックスラリーは、いずれの評価においても良好な結果を示した。
成分(A)の量/成分(B)の量が10/90であり、成分(B)の量が過剰である比較例1の組成物および比較例6のセラミックスラリーでは、それぞれ、シート強度およびグリーンシート平滑性が不十分であった。
上記式(2)の要件を満たさないモノマー(a’-1)を用いて得られた成分(A’-1)を用いた比較例7のセラミックスラリーでは、グリーンシート平滑性が不十分であった。また、比較例7のセラミックスラリーでは、23℃および65%RHの環境下で24時間静置中に成分(A’-1)に由来すると考えられるダマの発生が確認され、セラミックスラリー安定性が不十分であった。
モノマー(a)に由来する構成単位の量が過剰である成分(A’-2)を用いた比較例3の組成物および比較例8のセラミックスラリーでは、それぞれ、シート強度およびグリーンシート平滑性が不十分であった。
成分(A’)としてポリビニルブチラールを用いた比較例4の組成物では、脱脂性が不十分であった。
本発明の組成物およびセラミックスラリーは、セラミックス成形体(特にセラミックグリーンシート)の製造に有用である。

Claims (3)

  1. 成分(A)および成分(B)を含むセラミックス成形用バインダー組成物であって、
    成分(A)が、モノマー(a)と、その他の共重合可能なモノマー(b)との共重合体であり、
    モノマー(a)が、式(1):
    CH=CR-COO-(AO-H (1)
    (式(1)中、
    は、水素原子またはメチル基を示し、
    AOは、炭素数2~4のオキシアルキレン基の少なくとも1種を示し、2種以上のAOが存在する場合、それらの付加形態はブロックまたはランダムのいずれでもよく、および
    pは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、5~100の数である。)
    で表され、且つゲル浸透クロマトグラフィー測定により求められるクロマトグラムから算出されるwとwの比率w/wが、式(2):
    0.25≦w/w≦0.90 (2)
    (式(2)中、前記クロマトグラムのピークにおいて、最大ピーク高さ(h)における保持時間をtとし、最大ピーク高さの1/10(h1/10)における二つの保持時間をtおよびt(但し、t<t)とした場合、wはtとtとの差(t-t)を示し、およびwはtとtとの差(t-t)を示す。)
    の関係を満たす、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートであり、
    成分(A)中のモノマー(a)に由来する構成単位の量とモノマー(b)に由来する構成単位の量とのモル比(モノマー(a)に由来する構成単位の量/モノマー(b)に由来する構成単位の量)が1/99~10/90であり、
    成分(A)の重量平均分子量が、50,000~1,000,000であり、
    成分(B)が、フタル酸エステル、および/または式(3):
    O-(AO-(AO-H (3)
    (式(3)中、
    は、炭素数8~10のアルキル基を示し、
    AOは、炭素数2~3のオキシアルキレン基の少なくとも1種を示し、2種以上のAOが存在する場合、それらの付加形態は、ブロックまたはランダムのいずれでもよく、
    AOは、炭素数3~4のオキシアルキレン基の少なくとも1種を示し、2種以上のAOが存在する場合、それらの付加形態は、ブロックまたはランダムのいずれでもよく、並びに
    qおよびrは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、qは、3~9の数であり、rは、2~4の数であり、並びにq/rは、1.0~3.0である。)
    で表される化合物であり、並びに
    成分(A)の量と成分(B)の量との質量比(成分(A)の量/成分(B)の量)が、15/85~95/5であるセラミックス成形用バインダー組成物。
  2. 請求項1に記載のセラミックス成形用バインダー組成物、セラミックス粉体、分散剤および有機分散媒を含むセラミックスラリー。
  3. セラミックス粉体100質量部に対して、請求項1に記載のセラミックス成形用バインダー組成物の含有量が0.1~100質量部であり、分散剤の含有量が0.1~10質量部であり、および有機分散媒の含有量が10~500質量部である請求項2に記載のセラミックスラリー。
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