JP2022153077A - ガラス繊維収束剤、ガラス繊維束、繊維強化樹脂組成物および成形体 - Google Patents

ガラス繊維収束剤、ガラス繊維束、繊維強化樹脂組成物および成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】繊維強化樹脂組成物に十分な強度を付与しつつ、毛羽立ちを抑制できるガラス繊維収束剤を提供する。【解決手段】本発明のガラス繊維収束剤は、プロピレン系樹脂(A)と、重合体鎖に結合したカルボン酸塩を含むプロピレン系樹脂(B)と、重合体鎖に結合したカルボン酸塩を含むエチレン系樹脂(C)と、シランカップリング剤(D)と、水とを含む。プロピレン系樹脂(A)は、プロピレン系樹脂(B)よりも重量平均分子量Mwが高く、かつMwが15万以上のプロピレン系樹脂(A-1)を70~100質量%と、Mwが15万未満のプロピレン系樹脂(A-2)を0~30質量%とを含む。プロピレン系樹脂(B)の含有量は、(A)100質量部に対して3~50質量部である。エチレン系樹脂(C)は、平均粒子径0.1~10μmの水分散性樹脂粒子であり、その含有量は、(A)と(B)の合計100質量部に対して1~30質量部である。【選択図】なし

Description

本発明は、ガラス繊維収束剤、ガラス繊維束、繊維強化樹脂組成物および成形体に関する。
熱可塑性樹脂を強化繊維と複合させた繊維強化樹脂組成物の成形体は、力学特性や寸法安定性に優れる。そのため、繊維強化樹脂組成物は、例えばパイプ、圧力容器、自動車、航空機、電気・電子機器、玩具、家電製品などの幅広い分野で使用されている。
熱可塑性樹脂の中でもオレフィン系樹脂は、一般的に安価であり、加工性や耐薬品性にも優れることから、繊維強化複合樹脂材料のマトリクス樹脂として用いられている。特に、比重が小さく、耐熱性が比較的高く、成形性、耐薬品性などにも優れることから、ポリプロピレン系樹脂が用いられている。
一方、プロピレン系樹脂は極性が低いため、強化繊維との界面接着性に劣る。したがって、強化繊維の表面処理やサイジング剤の付与により、強化繊維とマトリクス樹脂との界面接着性を改善することが検討されている。例えば、特許文献1では、不飽和ジカルボン酸またはその塩で変性されたプロピレン系樹脂を用いた繊維処理剤が提案されている。特許文献2では、プロピレン系樹脂に適したサイジング剤として特定の酸価を有する酸変性ポリプロピレン樹脂を用いることが提案されている。これらのサイジング剤を用いた強化繊維束は、成形体の機械物性の向上に一定の効果があるとされている。
特開平6-107442号公報 特開2005-48343号公報
しかしながら、従来のサイジング剤(繊維収束剤)を用いた強化繊維束では、繊維強化樹脂組成物の製造時に、一部が毛羽立った形状になったり、その結果として微粉が発生したりすることがあり、取扱い性に問題が生じる場合があった。
特に、プルトルージョン法で繊維強化樹脂組成物を製造する場合、製造設備の運転安定性には、繊維の耐擦過性が大きく影響する。繊維は、製造プロセスの各工程で、金属等の表面に接触するが、繊維の耐擦過性が十分でない場合、接触した際の摩擦により繊維が切れて、短繊維化した「毛羽」が発生する。例えば、この毛羽は、繊維に樹脂を含浸させるための容器内(樹脂含浸ダイ内)に徐々に滞留することにより、繊維束の切断を引き起こし、製造設備の連続運転を阻害する。そのため、製造設備の運転安定性を高めるには、ガラス繊維束の毛羽立ちを抑制し、耐擦過性を高めることが望まれる。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、繊維強化樹脂組成物に十分な強度を付与しつつ、毛羽立ちなどを抑制できるガラス繊維収束剤、ガラス繊維束、繊維強化樹脂組成物および成形体を提供することにある。
本発明のガラス繊維収束剤は、プロピレン系樹脂(A)と、重合体鎖に結合したカルボン酸塩を含むプロピレン系樹脂(B)と、重合体鎖に結合したカルボン酸塩を含むエチレン系樹脂(C)と、シランカップリング剤(D)と、水とを含み、前記プロピレン系樹脂(A)は、前記プロピレン系樹脂(B)よりも高い重量平均分子量を有し、かつ重量平均分子量が15万以上であるプロピレン系樹脂(A-1)を70~100質量%と、重量平均分子量が15万未満であるプロピレン系樹脂(A-2)を0~30質量%とを含み(ただし、前記(A-1)成分と前記(A-2)成分の合計を100質量%とする)、前記プロピレン系樹脂(B)の含有量は、前記プロピレン系樹脂(A)100質量部に対して3~50質量部であり、前記エチレン系樹脂(C)は、平均粒子径0.1~10μmの水分散性樹脂粒子であり、前記エチレン系樹脂(C)の含有量は、前記プロピレン系樹脂(A)と前記プロピレン系樹脂(B)の合計100質量部に対して1~30質量部である。
本発明のガラス繊維束は、複数のガラス繊維と、本発明のガラス繊維収束剤の乾燥物とを含むガラス繊維束であって、前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分および前記(D)成分の合計量は、前記ガラス繊維束に対して0.3~5質量%である。
本発明の繊維強化樹脂組成物は、本発明のガラス繊維束を1~70質量部と、マトリクス樹脂(E)を30~99質量部とを含む。
本発明の成形体は、本発明の繊維強化樹脂組成物を含む。
本発明によれば、繊維強化樹脂組成物に十分な強度を付与しつつ、毛羽立ちなどを抑制できるガラス繊維収束剤、ガラス繊維束、繊維強化樹脂組成物および成形体を提供することができる。
本発明者らは、繊維収束剤として、プロピレン系樹脂とともに、カルボン酸塩を含むエチレン系樹脂(C)の水分散性樹脂粒子を含み、かつその平均粒子径を一定以下にすることで、ガラス繊維束の毛羽立ちを良好に抑制できることを見出した。
その理由は明らかではないが、以下のように推測される。
エチレン系樹脂(C)は、プロピレン系樹脂と親和しやすいだけでなく、カルボン酸塩を含むため、ガラス繊維と相互作用を生じやすい。また、平均粒子径を適度に小さくすることで、ガラス繊維中に拡散または分散させやすい。それにより、ガラス繊維とプロピレン系樹脂とが、エチレン系樹脂(C)を介して親和しやすく、これらの樹脂成分によってガラス繊維を十分に被覆しうる。そのため、ガラス繊維束の毛羽立ちを抑制でき、耐擦過性を高められると考えられる。
また、エチレン系樹脂(C)は、プロピレン系樹脂(A)および(B)よりも適度な柔軟性を有するため、ガラス繊維束に適度な柔軟性を付与しうる。それにより、摩擦などによりガラス繊維を切れにくくし、それによる毛羽立ちも抑制しうる。
さらに、プロピレン系樹脂として、高分子量のプロピレン系樹脂(A)と、低分子量かつカルボン酸塩を含むプロピレン系樹脂(B)とを含む。高分子量のプロピレン系樹脂(A)は、繊維強化樹脂組成物に強度を付与しうるだけでなく、例えばプロピレン系樹脂などのマトリクス樹脂(E)とも親和しやすい。また、分子鎖の絡み合いの効果により、ガラス繊維束の毛羽立ちの抑制にも寄与しうる。低分子量かつカルボン酸塩を含むプロピレン系樹脂(B)は、成形時の流動性を確保しつつ、カルボン酸塩を含むことによりガラス繊維と相互作用を生じうるため、両者間を混ざりやすくしうる。
これらのプロピレン系樹脂(A)および(B)、エチレン系樹脂(C)を含む繊維収束剤は、ガラス繊維を良好に被覆しうるため、毛羽立ちを良好に抑制しうる。以下、本発明の構成について説明する。
1.ガラス繊維収束剤
本発明のガラス繊維収束剤は、プロピレン系樹脂(A)と、プロピレン系樹脂(B)と、エチレン系樹脂(C)と、シランカップリング剤(D)と、水とを含む。すなわち、本発明のガラス繊維収束剤は、水分散性樹脂として、上記(A)、(B)および(C)成分を含む水分散体である。
1-1.プロピレン系樹脂(A)
プロピレン系樹脂(A)は、プロピレン系樹脂(B)よりも高い重量平均分子量を有する。そのようなプロピレン系樹脂(A)は、重量平均分子量が相対的に高いプロピレン系樹脂(A-1)を70~100質量%と、重量平均分子量が相対的に低いプロピレン系樹脂(A-2)を0~30質量%とを含む。
(プロピレン系樹脂(A-1))
プロピレン系樹脂(A-1)は、相対的に分子量が高いプロピレン系樹脂である。すなわち、プロピレン系樹脂(A-1)の重量平均分子量は、プロピレン系樹脂(A-2)よりも高い。このような高分子量のプロピレン系樹脂(A-1)は、繊維強化樹脂組成物に十分な強度を付与しうる。また、分子鎖の絡み合いの効果により、毛羽立ちの抑制にも寄与しうる。
具体的には、プロピレン系樹脂(A-1)の重量平均分子量は、好ましくは15万以上、より好ましくは15万~70万、さらに好ましくは20万~50万、さらに好ましくは25万~45万、特に好ましくは28万~40万である。プロピレン系樹脂成分(A-1)の重量平均分子量が下限値以上であると、毛羽立ちを抑制しやすく、上限値以下であると、成形時の溶融流動性や成形体の外観が損なわれにくい。
プロピレン系樹脂(A-1)の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて以下の条件で測定することができる。
装置:ゲル浸透クロマトグラフAlliance GPC2000型(Waters社製)
溶剤:o-ジクロロベンゼン
カラム:TSKgel GMH6-HT×2、TSKgel GMH6-HTLカラム×2(何れも東ソー社製)
流速:1.0 ml/分
試料:0.15mg/mL o-ジクロロベンゼン溶液
温度:140℃
検量線作成用標準サンプル:市販の単分散標準ポリスチレン
プロピレン系樹脂(A-1)は、プロピレン由来の構造単位を含む重合体である。中でも、プロピレン系樹脂(A-1)は、プロピレン由来の構造単位と、α-オレフィン、共役ジエンおよび非共役ジエンからなる群より選ばれる少なくとも一種のプロピレン以外のオレフィン由来の構造単位とを含む共重合体であることが好ましい。
α-オレフィンの例には、エチレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、1-ノネン、1-オクテン、1-ヘプテン、1-ヘキセン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどのプロピレンを除く炭素原子数2~20のα-オレフィンが含まれる。中でも、1-ブテン、エチレン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセンが好ましく、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンがより好ましい。
共役ジエンおよび非共役ジエンの例には、ブタジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,5-ヘキサジエンが含まれる。
α-オレフィン、共役ジエンおよび非共役ジエンは、2種以上を併用してもよい。中でも、プロピレン系樹脂(A-1)は、プロピレンとα-オレフィンの共重合体であることが好ましい。当該共重合体の例には、エチレン・プロピレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体などが含まれる。
プロピレン系樹脂(A-1)のプロピレン由来の構造単位の割合は、後述するマトリクス樹脂(E)やプロピレン系樹脂(B)との親和性を高める点から、好ましくは50~100モル%、より好ましくは50~99モル%、特に好ましくは55~98モル%、最も好ましくは60~97モル%である。
プロピレン系樹脂(A-1)の構造単位の特定は、13C NMR法、質量分析または元素分析などにより行うことができる。また、NMR法で組成を決定した組成の異なる複数種の共重合体のIR分析を行い、特定波数の吸収や検体の厚さなどの情報から検量線を作成し、組成を決定する方法を用いてもよい。IR法は、工程分析に好ましく用いられる。
プロピレン系樹脂(A-1)は、例えば周期律表の15~17族元素を含む構造を有してもよい。周期律表の15~17族元素を含む構造の例には、無水カルボン酸基やカルボン酸基、アミノ基、酸アミド基、ハロゲン基などの官能基が含まれる。このような構造(または基)を含むプロピレン系樹脂(A-1)は、プロピレン系樹脂(B)やエチレン系樹脂(C)、ガラス繊維と相互作用しやすい。
このような構造は、ラジカルグラフト反応などの公知の方法で導入することができる。17族元素の例には、塩素原子などのハロゲン原子が含まれる。16族元素の例には、酸素原子、硫黄原子が含まれ、好ましくは酸素原子である。15族元素の例には、窒素原子が含まれる。中でも、酸素原子が好ましい。すなわち、周期律表の15~17族元素を含む構造は、好ましくはカルボン酸(塩)でありうる。カルボン酸(塩)は、好ましくはカルボン酸基または無水カルボン酸基、より好ましくは無水マレイン酸構造を有する基である。
プロピレン系樹脂(A-1)が周期律表の15~17族元素を含む構造を有する場合、その元素の含有率は、プロピレン系樹脂(A)に対して、好ましくは0.0003~5質量%、より好ましくは0.0005~4.5質量%、さらに好ましくは0.0008~4.3質量%、特に好ましくは0.001~4質量%である。上記含有率が上限値以下であると、十分に高分子量のプロピレン系樹脂が得られやすく、毛羽立ちも発生しにくい。
上記含有率は、例えばグラフト反応における各成分の仕込み比から算出することができる。また、元素分析装置(例えば、varioELIII型:エレメンタール社製)などの元素分析装置により特定することもできる。
プロピレン系樹脂(A-1)は、周期律表の15~17族元素を含む化合物(好ましくはカルボン酸基やカルボン酸エステル基等を含む化合物)で変性されたものであってもよいし、変性されていないものであってもよい。
プロピレン系樹脂(A)のショアA硬度は、特に制限されないが、例えば60~90であるか、またはショアD硬度が45~65であることが好ましい。ショアA硬度は、より好ましくは65~88であり、さらに好ましくは70~85でありうる。ショアD硬度は、より好ましくは48~63であり、さらに好ましくは50~60でありうる。プロピレン系樹脂(A)のショアA硬度またはショアD硬度が上記範囲内であると、ガラス繊維への追従性がよく、部分的な割れが発生しにくく、安定した形状のガラス繊維束が得られやすい。また、後述するマトリクス樹脂(E)と組み合わせた際の強度向上にも有利である。これは、プロピレン系樹脂(A)の分子鎖とマトリクス樹脂(E)の分子鎖とが良好に絡み合うためと考えられる。
プロピレン系樹脂(A-1)の含有量は、プロピレン系樹脂(A-1)とプロピレン系樹脂(A-2)の合計100質量%に対して70~100質量%であることが好ましく、73~100質量%であることがより好ましい。
(プロピレン系樹脂(A-2))
プロピレン系樹脂(A-2)は、相対的に分子量が低いプロピレン系樹脂である。すなわち、プロピレン系樹脂(A-2)の重量平均分子量は、プロピレン系樹脂(A-1)よりも低く、かつプロピレン系樹脂(B)よりも高ければよい。そのようなプロピレン系樹脂(A-2)は、低分子量であるため拡散性、分散性がよく、ガラス繊維と相互作用しやすい。
具体的には、プロピレン系樹脂(A-2)の重量平均分子量は、好ましくは15万未満、より好ましくは2万~12万、さらに好ましくは3万~10万、さらに好ましくは4万~10万、特に好ましくは5万~10万である。プロピレン系樹脂成分(A-2)の重量平均分子量が下限値以上であると、ガラス繊維束の強度低下や取扱い性の低下(ベタ付きなど)を生じにくい。プロピレン系樹脂(A-2)の重量平均分子量は、上記と同様の方法で測定することができる。
プロピレン系樹脂(A-1)の重量平均分子量と、プロピレン系樹脂(A-2)の重量平均分子量との差は、特に制限されないが、好ましくは10万~30万、より好ましくは20万~30万でありうる。
プロピレン系樹脂(A-2)を構成する構造単位の種類や含有率(組成)は、上記と同様でありうる。プロピレン系樹脂(A-2)の組成は、プロピレン系樹脂(A-1)の組成と同じであってもよいし、異なってもよい。
また、プロピレン系樹脂(A-2)は、周期律表の15~17族元素を含む化合物(好ましくはカルボン酸基やカルボン酸エステル基等を含む化合物)で変性されたものであってもよいし、変性されていないものであってもよい。中でも、プロピレン系樹脂(A-2)は、ガラス繊維との相互作用が得られやすい観点では、変性されたものであることが好ましい。
プロピレン系樹脂(A-2)の含有量は、プロピレン系樹脂(A-1)とプロピレン系樹脂(A-2)の合計100質量%に対して0~30質量%であることが好ましく、3~30質量%であることがより好ましい。
1-2.プロピレン系樹脂(B)
プロピレン系樹脂(B)は、重合体鎖に結合したカルボン酸塩を含むため、ガラス繊維と良好に相互作用しうる。
そのようなプロピレン系樹脂(B)は、プロピレン系重合体と、不飽和ビニル基を有するエチレン系不飽和カルボン酸またはオレフィン以外の不飽和ビニル基を有する単量体とを反応させたものであってもよいし(変性法);プロピレンと、カルボン酸構造を有する単量体(例えばカルボン酸エステル)とを含む単量体混合物を重合させたもの(共重合法)であってもよい。
原料となるプロピレン系重合体は、上記プロピレン由来の構造単位を含む重合体であってもよく、プロピレン単独重合体であってもよいし、プロピレンとα-オレフィンの共重合体(エチレン・プロピレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体など)であってもよい。
原料となるカルボン酸構造を有する単量体は、例えば、中和されていてもよいカルボン酸基を有する単量体、ケン化されていてもよいカルボン酸エステルを有する単量体などでありうる。プロピレン系重合体とカルボン酸構造を有する単量体とをラジカルグラフト重合する方法は、プロピレン系樹脂(B)を製造する代表的な方法である。
中和されていてもよいカルボン酸基を有する単量体、および、ケン化されていてもよいカルボン酸エステルを有する単量体の例には、エチレン系不飽和カルボン酸、その無水物、そのエステル、およびオレフィン以外の不飽和ビニル基を有する化合物が含まれる。
エチレン系不飽和カルボン酸の例には、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸が挙げられる。酸無水物の例には、ナジック酸<TM>(エンドシス-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸)、無水マレイン酸、無水シトラコン酸が挙げられる。
オレフィン以外の不飽和ビニル基を有する化合物の例には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類;ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有ビニル類;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有ビニル類;ビニルイソシアナートなどのイソシアナート基含有ビニル類;スチレン、α-メチルスチレンなどの芳香族ビニル類;(メタ)アクリルアミドなどのアミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;N、N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノアルキル(メタ)アクリレート類;スチレンスルホン酸などの不飽和スルホン酸類;モノ(2-メタクリロイロキシエチル)アシッドホスフェートなどの不飽和リン酸類が含まれる。これらの単量体は、1種類で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。中でも、酸無水物が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。
プロピレン系樹脂(B)の重量平均分子量は、プロピレン系樹脂(A)の重量平均分子量よりも低い。それにより、プロピレン系樹脂(B)が成形時に拡散(分散)しやすく、ガラス繊維とプロピレン系樹脂(B)とを相互作用させやすくしうる。
プロピレン系樹脂(B)の重量平均分子量は、相互作用を得やすくし、プロピレン系樹脂(A)(好ましくはプロピレン系樹脂(A-2))との相溶性を高める観点では、好ましくは1000~10万、より好ましくは2000~8万、さらに好ましくは5000~5万、特に好ましくは5000~3万である。プロピレン系樹脂(A-2)の重量平均分子量は、上記と同様の方法で測定することができる。
プロピレン系樹脂(B)とプロピレン系樹脂(A)の重量平均分子量との重量平均分子量の差は、特に制限されないが、好ましくは1万~38万、より好ましくは12万~38万、特に好ましくは13万~38万である。
プロピレン系樹脂(B)のカルボン酸塩に由来する酸素原子(周期律表の15~17族元素)の含有率は、プロピレン系樹脂(A)(具体的には、プロピレン系樹脂(A-1)およびプロピレン系樹脂(A-2))よりも高いことが好ましい。具体的には、プロピレン系樹脂(B)の周期律表の15~17族元素の含有率は、プロピレン系樹脂(A-1)およびプロピレン系樹脂(A-2)よりも、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは0.7質量%以上高い。それにより、安定したエマルションが得られやすく、ガラス繊維との相互作用を高めやすい。プロピレン系樹脂(B)のカルボン酸塩の含有率は、後述するNMRやIRにより測定できる。
また、カルボン酸塩の含有率は、酸価として特定することもできる。プロピレン系樹脂(B)の酸価は、好ましくは10~100mgKOH/g、より好ましくは20~80mgKOH/g、特に好ましくは25~70mgKOH/g、最も好ましくは25~65mgKOH/gである。
カルボン酸塩の含有率は、ICP発光分析で塩を形成している金属種の検出を定量的に行う方法や、IR、NMRおよび元素分析等を用いてカルボン酸塩のカルボニル炭素の定量を行う方法で測定することもできる。具体的には、以下の方法を例示できる。試料を100MHz以上の条件で120℃以上の高温溶液条件で、13C NMR法によりカルボン酸骨格の含有率を常法により特定することができる。また、カルボニル骨格の含有率の異なる複数の試料を、13C NMRで測定してカルボン酸骨格の含有率を特定した後、同じ試料のIR測定を行い、カルボニルなどの特徴的な吸収と試料厚みや他の代表的な吸収との比とカルボン酸骨格の含有率との検量線を作成することで、IR測定により、カルボン酸骨格の導入率を特定する方法も知られている。
(調製方法)
上記の通り、プロピレン系樹脂(B)は、例えば、有機溶剤中でプロピレン系重合体と不飽和ビニル基を有するエチレン系不飽和カルボン酸またはオレフィン以外の不飽和ビニル基を有する単量体とを重合開始剤の存在下で反応させ、その後脱溶剤する方法;プロピレン系重合体を加熱溶融して得た溶融物と不飽和ビニル基を有するカルボン酸と重合開始剤とを攪拌下で反応させる方法;プロピレン系重合体と不飽和ビニル基を有するカルボン酸と重合開始剤との混合物を押出機に供給して加熱混練しながら反応させ、その後中和やケン化などの方法でカルボン酸塩とする方法が挙げられる。
重合開始剤の例には、ベンゾイルパーオキサイド、ジクロルベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイドなどのパーオキサイド化合物や、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物が含まれる。
有機溶剤の例には、キシレン、トルエン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、イソオクタン、イソデカンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;酢酸エチル、n-酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒が含まれる。2種以上の有機溶剤の混合物を用いても良い。中でも、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素がより好ましい。
中でも、プロピレン系樹脂(B)を中和またはケン化工程を経て得る方法は、プロピレン系樹脂(B)の原料を水分散体にして処理することが容易となるので、実用的で好ましい。
水分散体の中和またはケン化に用いる塩基性物質の例には、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛などのアルカリ金属またはアルカリ土類金属またはその他の金属類;ヒドロキシルアミン、水酸化アンモニウムなどの無機アミン;アンモニア、(トリ)メチルアミン、(トリ)エタノールアミン、(トリ)エチルアミン、ジメチルエタノールアミン、モルフォリンなどの有機アミン;酸化ナトリウム、過酸化ナトリウムなどの亜鉛などのアルカリ金属またはアルカリ土類金属またはその他の金属類の酸化物、水酸化物または水素化物;炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属またはその他の金属類の弱酸塩が含まれる。塩基性物質により中和またはケン化されたカルボン酸塩またはカルボン酸エステルとしては、特に、カルボン酸ナトリウム、カルボン酸カリウムなどのカルボン酸アルカリ金属塩;カルボン酸アンモニウムが好適である。
中和度またはケン化度、すなわちプロピレン系樹脂(B)の原料が有するカルボン酸基の金属塩またはアンモニウム塩などのカルボン酸塩への転化率は、水分散体の安定性と繊維との接着性の点から、通常、50~100%、好ましくは70~100%、より好ましくは85~100%である。プロピレン系樹脂(B)におけるカルボン酸基は、塩基性物質により全て中和またはケン化されていることが好ましいが、カルボン酸基の一部が中和またはケン化されず残存していてもよい。
カルボン酸基の塩成分を分析する方法としては、例えば、ICP発光分析で塩を形成している金属種の検出を行う方法、IR、NMR、質量分析または元素分析を用いて酸基の塩の構造を同定する方法がある。
カルボン酸基の中和塩への転化率を算出する方法としては、例えば、加熱トルエン中にプロピレン系樹脂(B)を溶解し、0.1規定の水酸化カリウム-エタノール標準液で滴定し、プロピレン系樹脂(B)の酸価を下式により求め、元のカルボン酸基の総モル数と比較して算出する方法がある。
酸価=(5.611×A×F)/B(mgKOH/g)
A:0.1規定水酸化カリウム-エタノール標準液使用量(ml)
F:0.1規定水酸化カリウム-エタノール標準液のファクター
B:試料採取量(g)
次に、以上の方法で算出した酸価を、下式により中和されていないカルボン酸基のモル数に換算する。
中和されていないカルボン酸基のモル数=酸価×1000/56(モル/g)
そして、別途IR、NMR、元素分析などの方法によりカルボン酸基のカルボニル炭素の定量を行って算出したカルボン酸基の総モル数(モル/g)を用いて、下式よりカルボン酸基の中和塩への転化率を算出する。
転化率%=(1-r)×100(%)
r:中和されていないカルボン酸基のモル数/カルボン酸基の総モル数
また、加熱溶融や反応、水への分散・撹拌時などにおいて乳化させる際は、後述する界面活性剤をさらに用いてもよい。
プロピレン系樹脂(A)およびプロピレン系樹脂(B)は、上記の通り、水分散性樹脂粒子として含まれることが好ましい。すなわち、プロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)は、それぞれ独立した水分散性樹脂粒子であってもよいし、プロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)が一体となって分散した水分散性樹脂粒子(混合物の水分散性樹脂粒子)であってもよい。
1-3.エチレン系樹脂(C)
エチレン系樹脂(C)は、重合体鎖に結合したカルボン酸塩を含むため、ガラス繊維と良好に相互作用しうる。また、エチレン系樹脂(C)は、プロピレン系樹脂(A)やプロピレン系樹脂(B)と比べて柔軟性を有する。そのため、ガラス繊維束にも適度な柔軟性を付与でき、毛羽立ちなどを生じにくくしうる。
そのようなエチレン系樹脂(C)は、平均粒子径が0.1~10μmである水分散性樹脂粒子である。エチレン系樹脂(C)である水分散性樹脂粒子の平均粒子径が0.1μm以上であると、繊維収束剤の粘度が上昇し過ぎないため、取扱いやすく、10μm以下であると、ガラス繊維への分散性や拡散性が良好であるため、被覆率を高めやすく、ガラス繊維の毛羽立ちを抑制しやすい。同様の観点から、エチレン系樹脂(C)である水分散性樹脂粒子の平均粒子径は、0.5~5μmであることがより好ましく、機械的物性をさらに高める観点から、0.5~2.5μmであることがさらに好ましい。
また、エチレン系樹脂(C)である水分散性樹脂粒子の平均粒子径は、プロピレン系樹脂(A)およびプロピレン系樹脂(B)の混合物である水分散性樹脂粒子の平均分子径よりも大きいことが好ましい。
水分散性樹脂粒子の平均粒子径は、コールターカウンターにより測定することができる。平均粒子径は、例えば界面活性剤としての水酸化カルシウムの配合量や水分散体の中和またはケン化に用いる塩基性物質の量によって調整することができる。例えば、エチレン系樹脂(C)の水分散体(EM2)調製時に、界面活性剤である水酸化カルシウムの配合量を多くすることで、平均粒子径を小さくすることができる。
エチレン系樹脂(C)は、下記要件(i)~(iii)を満たすことが好ましい。
(i)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が300~20000の範囲にある
エチレン系樹脂(C)は、プロピレン系樹脂(B)よりも重量平均分子量または数平均分子量が低いことが好ましい。具体的には、エチレン系樹脂(C)の数平均分子量(Mn)は、例えば300~20000、好ましくは300~10000(要件(i)’)、より好ましくは300~3000、特に好ましくは300~2000の範囲である。エチレン系樹脂(C)の数平均分子量(Mn)が上記範囲内にあると、水分散性樹脂粒子として分散させやすいだけでなく、水分散性樹脂粒子の平均粒子径がより小さくなるため、ガラス繊維に対する被覆率が向上しやすい。数平均分子量(Mn)は、上記と同様に、GPCにより測定することができる。数平均分子量(Mn)は、上記と同様に、GPCによりポリスチレン換算にて測定することができる。
エチレン系樹脂(C)の重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)は、例えば1.5~5.5、好ましくは1.5~3.0、特に好ましくは1.5~2.0の範囲である。Mw/Mnが上記範囲内にあると、水分散性樹脂粒子として分散させやすいだけでなく、水分散性樹脂粒子の粒度分布が狭いため、ガラス繊維に対する被覆率を高めやすい。
エチレン系樹脂(C)の、135℃デカリン中で測定される極限粘度[η]は、例えば、0.04~0.47dl/g、好ましくは0.04~0.30dl/g、より好ましくは0.04~0.20dl/g、さらに好ましくは0.05~0.18dl/gの範囲である。変性オレフィンワックス(A)の極限粘度[η]が上記範囲内にあると、水分散性樹脂粒子として分散させやすいだけでなく、水分散性樹脂粒子の平均粒子径がより小さくなるため、ガラス繊維に対する被覆率を高めやすい。
(ii)JIS K2207に従って測定した軟化点が70~170℃の範囲にある
エチレン系樹脂(C)の、JIS K2207で測定した軟化点は、70~170℃、好ましくは75~160℃、より好ましくは80~150℃、特に好ましくは90~140℃の範囲である。エチレン系樹脂(C)の融点が上記範囲内にあると、水分散性樹脂粒子として分散させやすいだけでなく、繊維収束剤のレベリング性がより良いため、ガラス繊維に対する被覆率を高めやすい。
エチレン系樹脂(C)の示差走査熱量計(DSC)で測定した融点は、例えば60~160℃、好ましくは70~150℃、より好ましくは80~140℃、特に好ましくは90~130℃の範囲である。エチレン系樹脂(C)の融点が上記範囲内にあると、水分散性樹脂粒子として分散させやすいだけでなく、繊維収束剤のレベリング性が良いため、ガラス繊維に対する被覆率を高めやすい。
(iii)密度勾配管法で測定した密度が830~1200kg/mの範囲にある
エチレン系樹脂(C)の密度勾配管法で測定した密度は、830~1200kg/m、好ましくは850~1100kg/m、より好ましくは880~1000kg/m、特に好ましくは900~950kg/mの範囲である。エチレン系樹脂(C)の密度が上記範囲内にあると、密度が水に近いため、水分散性樹脂粒子の分散安定性が向上しやすい。エチレン系樹脂(C)の密度は、JIS K 7112に従って測定することができる。
(iv)酸価が1~200mgKOH/gの範囲にある
エチレン系樹脂(C)は、上記の通り、未変性エチレンワックスをカルボン酸変性して得られる酸変性エチレンワックスであることが好ましい。
(未変性エチレンワックスについて)
未変性エチレンワックスは、エチレン系重合体、すなわち、エチレン単独重合体、またはエチレンと炭素原子数3~20のα-オレフィンとの共重合体であることがより好ましい。
α-オレフィンは、直鎖状であっても分岐していてもよく、置換されていても非置換であってもよい。α-オレフィンは、炭素原子数3~10のα-オレフィンが好ましく、より好ましくはプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテンなどが含まれ、さらに好ましくはプロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンが含まれる。結晶化度の観点から、プロピレン、1-ブテンであることが特に好ましい。
エチレン系重合体におけるエチレン由来の構造単位の含量は、エチレン系重合体を構成する全モノマーの合計に対して50~100モル%であることが好ましく、70~100モル%であることがより好ましく、80~100モル%であることがさらに好ましく、90~100モル%であることが特に好ましい。
未変性エチレンワックスは、樹脂であってもよいし、エラストマーであってもよい。立体構造としては、アイソタクチック構造、シンジオタクチック構造のいずれであってもよい。
未変性エチレン系ワックスの数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)は、GPC測定から求めることができる。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した数平均分子量(Mn)は、通常、300~20000、好ましくは300~10000、より好ましくは300~3000、特に好ましくは300~2000の範囲である。未変性エチレンワックスの数平均分子量(Mn)が上記範囲内にあると、得られる変性エチレンワックスが上記要件(i)を満たしやすい。
未変性エチレンワックスの、重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)は、例えば1.5~5.5、好ましくは1.5~4.0、より好ましくは1.5~3.0、特に好ましくは1.5~2.0の範囲である。分子量のGPC測定は、変性エチレンワックスと同様の条件で行うことができる。
未変性エチレンワックスの、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]は、通常、0.04~0.47dl/g、好ましくは0.04~0.30dl/g、より好ましくは0.04~0.20dl/g、さらにより好ましくは0.05~0.18dl/gの範囲である。
未変性エチレンワックスの、JIS K2207で測定した軟化点は、例えば70~170℃、好ましくは75~160℃、より好ましくは80~150℃、特に好ましくは90~140℃の範囲である。未変性エチレンワックス(c)の融点が上記範囲内にあると、得られる変性エチレンワックスが、上記要件(ii)を満たしやすい。
未変性エチレンワックスの、示差走査熱量計(DSC)で測定した融点は、例えば60~160℃、好ましくは70~150℃、より好ましくは80~140℃、特に好ましくは90~130℃の範囲である。
未変性エチレンワックスの、密度勾配管法で測定した密度は、例えば830~1200kg/m、好ましくは850~1100kg/m、より好ましくは880~1000kg/m、特に好ましくは900~950kg/mの範囲である。未変性エチレンワックスの密度が上記範囲内にあると、得られる変性エチレンワックスが、上記要件(iii)を満たしやすい。
未変性エチレンワックスは、エチレンを重合して得られた低分子量ポリエチレンであってもよく、重合して得た高分子量ポリエチレンを熱分解して低分子量化して得られた低分子量ポリエチレンであってもよい。未変性エチレンワックスは、エチレンを重合して得た低分子量ポリエチレンであることが好ましい。
エチレンを重合して得られる低分子量ポリエチレンは、従来から公知のいずれの方法によっても製造することができる。例えば、チタン系触媒、バナジウム系触媒、メタロセン触媒などを用いて、エチレンを重合すればよい。
(酸変性エチレンワックスについて)
酸変性エチレンワックスは、カルボン酸基を有する。
酸変性エチレンワックスにおけるカルボン酸基の含有率は、通常、酸価として表される。酸変性エチレンワックスの酸価は、特に限定されないが、例えば1~200mgKOH/g、好ましくは2~100mgKOH/g、より好ましくは2~70mgKOH/g、特に好ましくは2~25mgKOH/gである。酸変性エチレンワックスの酸価が上記範囲内にあると、水分散性樹脂粒子として分散させやすいだけでなく、水分散性樹脂粒子の平均粒子径が小さくなりやすい。すなわち、酸価が一定以下であると、変性エチレンワックスの溶融粘度が高くなりすぎないため、乳化させやすく;酸価が一定以上であると、親水性が損なわれにくいので、いずれも平均粒子径が小さくなりやすい。そのため、ガラス繊維に対する被覆率が一層向上しうる。酸価は、JIS K5902に従って測定することができる。
酸変性エチレンワックスは、未変性エチレンワックスを、カルボン酸構造を有する化合物で変性、具体的にはカルボン酸基を有する化合物でグラフト反応させて得られる。カルボン酸構造を有する化合物は、上記と同様のものを用いることができる。
酸変性エチレンワックスの製造方法は、特に限定されず、従来公知の種々の方法を利用することができる。未変性エチレンワックスと、カルボン酸構造を有する化合物と、有機過酸化物とを同時または逐次的に溶融混練することによって得られる。
溶融混練は、例えば、ヘンシェルミキサー、V型ブレンダー、タンブラーブレンダー、リボンブレンダーなどに装入して混練した後、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどで溶融混練する。これらのうちでも、オートクレーブなどのバッチ式溶融混練性能に優れた装置を使用すると、各成分がより均一に分散・反応した酸変性エチレンワックスを得ることができる。連続式に比べ、バッチ式は滞留時間の調整がしやすく、また滞留時間を長く取れるため変性率及び変性効率を高めることが比較的容易であり、好ましい態様である。
酸変性エチレンワックスの乳化方法について
酸変性エチレンワックスを、乳化剤や分散剤を使用して水中に分散させて、エチレン系樹脂(C)である水分散性樹脂粒子を得る。
水分散性樹脂粒子の製造方法は、特に限定されず、各種乳化方法を利用することが好ましい。具体的には、例えば変性エチレンワックスを溶剤に溶解後高圧ホモジナイザー、高圧ホモミキサーなどにより乳化後溶剤を除去する方法、変性エチレンワックスを溶融状態にして高圧ホモジナイザー、高圧ホモミキサー、押出混練機により乳化する方法、その他機械的に粉砕する方法、高圧で噴射粉砕する方法、細孔より噴霧させる方法などが挙げられる。
さらに、水分散性樹脂粒子の安定性を向上させるため、通常の乳化重合に使用される界面活性剤を用いてもよい。界面活性剤は、非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、反応性界面活性剤のいずれであってもよい。
非イオン系界面活性剤(ノニオン系界面活性剤)の例には、脂肪酸モノグリセライド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミン、ポリオキシエチレン(硬化)ヒマシ油、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、およびメチルセルロースなどが含まれ、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー、t-オクチルフェノキシエチルポリエトキシエタノール、ノニルフェノキシエチルポリエトキシエタノールなどが含まれる。その他、両性界面活性剤の例には、アルキルアンモニウムクロライド、トリメチルアルキルアンモニウムブロマイド、アルキルピリジニウムクロライド、カゼイン、他の水溶性多価金属塩類などが含まれる。
アニオン系界面活性剤の例には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニアおよびアミン等の水中で塩基として作用する物質、アルカリ金属の酸化物、水酸化物、弱酸塩、水素化物、アルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、弱破塩、水素化物などの水中で塩基として作用する物質、これら金属のアルコキシド、スルホン酸塩や脂肪酸塩などが含まれる。
アルカリ金属としては、例えばナトリウム、カリウム;アルカリ土類金属としては、例えばカルシウム、ストロンチウム、バリウム;アミンとしては、ヒドロキシルアミン、ヒドラジンなどの無機アミン、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、シクロへキシルアミン;アルカリ金属およびアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、水素化物としては、例えば酸化ナトリウム、水酸化ナトリウム、酸化カリウム、過酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム;アルカリ金属およびアルカリ土類金属の弱酸塩としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カルシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム;アンモニアおよびアミンの化合物としては、例えば水酸化アンモニウム、四級アンモニウム化合物(テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなど)、ヒドラジン水和物などを挙けることができる。また、スルホン酸塩や脂肪酸塩としては、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒド縮合物のナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、メラニン樹脂スルホン酸ナトリウム、特殊ポリアクリル酸塩、オレイン酸カリウム、オレフィン・マレイン酸コポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸トリエタノールアミンなどが挙げられる。
カチオン系界面活性剤の例には、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライドなどが含まれる。
また、エチレン系樹脂(C)である水分散性樹脂粒子は、プロピレン系樹脂(B)と同様の方法で調製されてもよく、エチレン系重合体と不飽和ビニル基を有するカルボン酸と重合開始剤との混合物を押出機に供給して加熱混練しながら反応させ、その後中和やケン化などの方法でカルボン酸塩としてもよい。
エチレン系樹脂(C)である水分散性樹脂粒子の平均粒子径は、界面活性剤の量や水分散体の中和またはケン化に用いる塩基性物質の量により調整することが好ましい。また、分散時の温度、具体的には、酸変性エチレンワックスの溶融物を水に分散させる際の温度を調整することで、得られるエチレン系樹脂(C)の重合度や密度を調整することができる。例えば、分散時の温度を高くすることで、エチレン系樹脂(C)の重合度(分子量)、密度も高くすることができる。
1-4.シランカップリング剤(D)
シランカップリング剤(D)は、官能基アミノ、エポキシ、エステル、ビニル、アルキル、メタクリロキシ、ウレイド、イソシアナート、シロキサンより選ばれた1つ以上の官能基を有する。好ましいシランカップリング剤(D)としては、アミン(第一級、第二級、第三級、第四級)、アミノ、イミノ、アミド、イミド、ウレイド、イソシアナートまたはアザミドより選ばれた1つ以上の官能基を有する、1つ以上の窒素原子を含有するシランが含まれる。
シランカップリング剤(D)は市販品であってもよい。市販品の例には、OSi Specialities (“OSi”)、Middlebury, Connecticut又はDow Corning Inc. (“DOW”)、ミッドランド、ミシガンから市販されている。シランカップリング剤(D)の例としては、アミノプロピルトリエトキシシラン、OSiから商品名A-1110として市販されている; ジアミノ-シラン、OSiから商品名A-1120として市販されている; ポリアザミドシリル化アミノシラン、OSiから商品名A1387として市販されているが挙げられるがこれらに限定されない。他の有効な市販されているアミノシランとしては、A-1100(γ-(アミノ)プロピルトリエトキシシラン)(OSi); PC-1130(アミノプロピルメチルジメトキシシラン)(Power Chemical Products(“PCC”)、南京、中国); PC1200(アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン)(PCC); PC1210(アミノエチルアミノプロピルトリエトキシシラン)(PCC); PC1220(アミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシ-シラン)(PCC); PC1300(ジエチレントリアミノプロピルトリメトキシシラン)(PCC); PC1600(シクロヘキシルアミノプロピルトリメトキシシラン)(PCC)が挙げられる。
他の適切なカップリング剤としては、有機官能性シラン、例えば、A-154(メチルトリクロロシラン); A-163(メチルトリメトキシシラン); A-189(γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン); A-143(γ-クロロプロピルトリメトキシシラン); A-151(ビニルトリエトキシシラン); A-172(ビニルトリス-(2-メトキシエトキシ)シラン); A-188(ビニルトリアセトキシシラン); A-174(γ-(メタクリロキシ)プロピルトリエトキシシラン); A-187(γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン); A-1120、n-(トリメトキシシリルプロピルエチレンジアミンを含むOSiから市販されているようなものが挙げられる。
OSi他から市販されている他の適切なカップリング剤としては、A-1102(γ-アミノプロピルトリエトキシシラン)(OSi); A-1106(アミノアルキルシリコーン溶液)(OSi); A-1108(変性アミノオルガノシラン)(OSi); A-1110(γ-アミノプロピルトリメトキシシラン)(OSi); A-1120(n-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン)(OSi); A-1122(オリゴマーのβ-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリシラノール)(OSi); A-1126(変性アミノオルガノシラン(40%/メタノール))(OSi); A-1128(変性アミノシラン(50%/メタノール))(OSi); A-1130(トリアミノ官能性シラン)(OSi); A-1170(ビス(γ-トリメトキシシリルプロピル)アミン)(OSi); A-1387(ポリアザミドシラン(50%/メタノール))(OSi); A-1524(ウレイドシラン)(OSi); A-2120(n-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン)(OSi); A-Link(登録商標)15(n-エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン)(OSi); DC1-6137(n-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン水溶液)(DOW); DYNASYLAN 1172(50% n-ビニルベンジル-n-アミノエチル-3-アミノプロピルポリシロキサン、ヒドロアセテート)(HULS);HS2776(アルキルポリシロキサン(アミノ変性(HULS))); VS142(γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(水性))(OSi); メタクリルアミド官能性シラン; n-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン; Z6020(n-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン)(DOW); Z6026(変性アミノオルガノシラン(40%/メタノール))(DOW)が挙げられる。
1-5.他の成分
ガラス繊維収束剤は、必要に応じて他の成分をさらに含んでもよい。他の成分の例には、プロピレン系樹脂(A)、プロピレン系樹脂(B)およびエチレン系樹脂(C)などの水分散性樹脂の調製に用いた水以外の溶媒(水溶性有機溶剤)や界面活性剤などが含まれる。溶媒や界面活性剤は、上記と同様のものを用いることができる。
1-6.組成
プロピレン系樹脂(B)の含有量は、プロピレン系樹脂(A)100質量部に対して3~50質量部でありうる。プロピレン系樹脂(B)の含有量が3質量部以上であると、ガラス繊維との親和性を高めやすく、収束性が得られやすい。また、プロピレン系樹脂(B)の含有量が50質量部以下であると、ガラス繊維束の強度の低下を抑制しやすい。同様の観点から、プロピレン系樹脂(B)の含有量は、プロピレン系樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは3~45質量部、より好ましくは5~45質量部、さらに好ましくは7~40質量部、さらに好ましくは10~40質量部である。
プロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)の合計含有量は、特に制限されないが、繊維収束剤の乾燥物(固形分)100質量部に対して50~90質量部であることが好ましく、70~85質量部であることがより好ましい。
プロピレン系樹脂(A)および(B)の含有量を上記範囲内にすることで、プロピレン系樹脂(A)および(B)が効果的にガラス繊維およびマトリクス樹脂(E)と相互作用しやすく、相溶性が比較的高くなり、両者の接着性を高めうる。
エチレン系樹脂(C)の含有量は、プロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)の合計100質量部に対して1~30質量部である。エチレン系樹脂(C)の含有量が1質量部以上であると、ガラス繊維への付着量が十分であることによりガラス繊維束の毛羽立ちを抑制しやすく、30質量部以下であると、ガラス繊維への付着が均一にされやすいことによりガラス繊維束の毛羽立ちを抑制しうる。同様の観点から、エチレン系樹脂(C)の含有量は、プロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)の合計100質量部に対して5~30質量部であることが好ましく、15~24質量部であることがより好ましい。
シランカップリング剤(D)の含有量は、プロピレン系樹脂(A)、プロピレン系樹脂(B)およびエチレン系樹脂(C)の合計100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.05~10質量部であることがより好ましく、0.75~10質量部であることがさらに好ましい。シランカップリング剤(D)の含有量が一定以上であると、繊維収束剤のレベリング性が一層高まりやすく、ガラス繊維の表面を均一に被覆しやすい。
界面活性剤の含有量は、特に制限されないが、プロピレン系樹脂(A)およびプロピレン系樹脂(B)の合計100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、特に好ましくは2質量部以下でありうる。
2.繊維収束剤の製造方法
繊維収束剤は、任意の方法で調製することができる。中でも、プロピレン系樹脂(A)およびプロピレン系樹脂(B)を含む水分散体(EM1)と、エチレン系樹脂(C)を含む水分散体(EM2)と、シランカップリング剤(D)を含む水分散体(EM3)とを混合して得ることが好ましい。各水分散体は、上記の方法でそれぞれ調製されうる。
3.ガラス繊維束
本発明のガラス繊維束は、複数のガラス繊維(フィラメント)を、本発明の繊維収束剤で収束させた繊維束(ストランド)である。すなわち、本発明のガラス繊維束は、複数のガラス繊維と、本発明の繊維収束剤の乾燥物とを含む。
(ガラス繊維)
ガラス繊維束を構成するガラス繊維の平均繊維径(d)は、例えば1~25μm、好ましくは5~17μmである。
ガラス繊維のアスペクト比(平均繊維長/平均繊維径=L/d)は、例えば1~100、好ましくは5~70の範囲にあり、より好ましくは50以下であるが、異なるアスペクト比のガラス繊維フィラメントを適当な比率で混合して用いてもよい。アスペクト比が上記範囲内にあると、表面光沢性と機械物性のバランスに優れる樹脂組成物を得ることができる。ガラス繊維の断面形状も、特に限定されず、円形、まゆ型、ひょうたん型、だ円型などのいずれであってもよい。
ガラス繊維は、シランカップリング剤(D)、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤等で表面処理されていてもよい。
(繊維収束剤の乾燥物)
繊維収束剤の乾燥物は、繊維収束剤から水などの溶媒成分を除去した固形分である。
プロピレン系樹脂(A)、プロピレン系樹脂(B)、エチレン系樹脂(C)およびシランカップリング剤(D)の合計量は、特に制限されないが、ガラス繊維束に対して0.3~5質量%であることが好ましい。上記合計量が0.3質量%以上であると、ガラス繊維が繊維収束剤で十分に被覆され、むき出しになる部分を少なくしうるため、得られる成形体の強度の低下や、ガラス繊維束の取り扱い性(毛羽立ち)を十分に抑制しやすい。取り扱い性とは、例えば毛羽立ちにくさ、繊維束をボビンに巻き取る際の繊維束の硬さ、さばけやすさなどである。上記合計量が5質量%以下であると、ガラス繊維による強度向上効果が損なわれにくいため、成形体の機械的強度の極端な低下や、繊維束が極端に硬くなるなどの不具合を生じにくくしうる。上記合計含有量は、同様の観点(接着性とガラス繊維束の取り扱い性とのバランスの観点)から、好ましくは0.4~4質量%、より好ましくは0.4~3質量%でありうる。
(ガラス繊維束)
ガラス繊維束の種類は、特に制限されず、ロービングガラス、チョップドストランドガラス、ミルドガラスのいずれであってもよい。
ガラス繊維束が、例えばチョップドストランドである場合、その長さ(カット長)(L)は、特に限定されないが、作業性の観点から、好ましくは0.3~10mm、より好ましくは2~7mm、さらに好ましくは2~5mmである。
ガラス繊維束の長さやそれを構成するガラス繊維の平均繊維径は、成形体を溶解濾過して分離したガラス繊維束またはガラス繊維を観察することで調べることができる。
(ガラス繊維束の製造方法)
ガラス繊維束は、複数のガラス繊維を、本発明の繊維収束剤と接触させ(または繊維収束剤で被覆し)、必要に応じてさらに収束させて得ることができる。
繊維収束剤をガラス繊維に接触させる方法は、特に制限されず、例えば繊維収束剤の樹脂成分(プロピレン系樹脂(A)、プロピレン系樹脂(B)、エチレン系樹脂(C))を、必要に応じて耐熱安定剤を併用して溶融させ、ガラス繊維と接触させてもよいし;繊維収束剤の樹脂成分を、エマルションやサスペンションなどの分散液としてガラス繊維と接触させてもよい。接触工程の後に、熱処理を行ってもよい。ガラス繊維と効率的に接触させる点から、繊維収束剤の樹脂成分は、エマルションなどの分散液としてガラス繊維と接触させることが好ましい。
すなわち、プロピレン系樹脂(A)、プロピレン系樹脂(B)、エチレン系樹脂(C)およびシランカップリング剤(D)のエマルションを含む繊維収束剤を、複数のガラス繊維に接触させるか、または、付与して、乾燥させて製造することが好ましい。
繊維収束剤の付与方法は、特に制限されず、ローラー浸漬法、ローラー転写法、スプレー法などの公知の方法を採用することができる。
4.繊維強化樹脂組成物
本発明の繊維強化樹脂組成物は、ガラス繊維束と、マトリクス樹脂(E)とを含む。マトリクス樹脂(E)は、プロピレン系樹脂(E1)を含むことが好ましく、酸変性ポリオレフィン樹脂(m)をさらに含むことがより好ましい。
(マトリクス樹脂(E))
マトリクス樹脂(E)は、上記プロピレン系樹脂(A)、プロピレン系樹脂(B)およびエチレン系樹脂(C)とは異なる樹脂である。
マトリクス樹脂(E)の例には、エポキシ樹脂、熱硬化性不飽和ポリエステル樹脂およびフェノール樹脂からなる群から選択される熱硬化性樹脂;ポリカーボネート、スチレン系樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド(PPS樹脂)、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE樹脂)、ポリアセタール(POM樹脂)、液晶ポリエステル、ポリアリーレート、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)などのアクリル樹脂、塩化ビニル、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、変性ポリオレフィン、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂などの熱可塑性樹脂;ポリエーテルエステルエラストマー、ポリエーテルエーテルエラストマー、ポリエーテルエステルアミドエラストマー、ポリエステルアミドエラストマーなどの各種エラストマー類が挙げられる。これらは、1種類だけ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。特に、熱可塑性樹脂が好ましい。
マトリクス樹脂(E)としては公知の熱可塑性樹脂を制限なく用いることができるが、極性を有する樹脂として、ポリアミド、ポリエステルが好ましく、極性の低い樹脂として、オレフィン系樹脂が好ましい。特に、コストや成形品の軽量化の点から、プロピレン系樹脂およびポリアミドがより好ましく、プロピレン系樹脂がより好ましい。
プロピレン系樹脂(E1)は、未変性のプロピレン系樹脂であっても、変性などの方法でカルボン酸構造やカルボン酸塩構造を含むプロピレン系樹脂であってもよい。未変性樹脂とカルボン酸やカルボン酸塩構造を含むプロピレン系樹脂の両方を用いる場合、その好ましい質量比は、未変性体/変性体比で、99/1~80/20であり、より好ましくは98/2~85/15であり、更に好ましくは、97/3~90/10である。
プロピレン系樹脂(E1)の組成は、プロピレン系樹脂(A)やプロピレン系樹脂(B)の説明で記載した単量体(オレフィンやカルボン酸エステル化合物など)由来の構造単位を含む一般的なプロピレン系樹脂の組成と同様でありうる。例えば、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、変性ポリプロピレンと言われるプロピレン系重合体である。
プロピレン系樹脂(E1)は、未変性プロピレン系樹脂と酸変性プロピレン系樹脂とを含むことが好ましい。そのようなプロピレン系樹脂(E1)は、プロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)の両方と相互作用しうるため、ガラス繊維束とマトリクス樹脂(E)との間の高い接着性は発現しうる。
プロピレン系樹脂(E1)の重量平均分子量Mwは、ガラス繊維束のプロピレン系樹脂(A)の重量平均分子量Mw(A)およびプロピレン系樹脂(B)の重量平均分子量Mw(B)と、以下の関係を満たすことが好ましい。
Mw(A)>Mw(E1)>Mw(B)
プロピレン系樹脂(E1)は、上記のような重量平均分子量の関係を有することで、相対的に流動性に優れているので、表面形状に優れた成形体材料や成形体を与えることが期待される。
プロピレン系樹脂(E1)の重量平均分子量は、好ましくは5万~35万、より好ましくは10万~33万、特に好ましくは15万~32万である。プロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(E1)との重量平均分子量の差は、好ましくは1万~40万、より好ましくは2万~20万、特に好ましくは2万~10万である。プロピレン系樹脂(E1)の重量平均分子量は、ポリプロピレン換算する以外は上記と同様の方法で測定することができる。
(組成)
繊維強化樹脂組成物は、本発明のガラス繊維束を1~80質量部と、マトリクス樹脂(E)を20~99質量部とを含むことが好ましく;ガラス繊維束を5~75質量部と、マトリクス樹脂(E)を25~95質量部とを含むことがより好ましい。ガラス繊維束とマトリクス樹脂(E)の組成比が上記範囲であると、繊維強化樹脂組成物の機械的物性に優れる。
(他の成分)
本発明の繊維強化樹脂組成物には、必要に応じて任意の添加剤、例えば、核剤、アンチブロッキング剤、顔料、繊維、充填剤、フィラー、染料、滑剤、可塑剤、離型剤、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、界面活性剤、帯電防止剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、スリップ防止剤、発泡剤、結晶化助剤、防曇剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、衝撃改良剤、架橋剤、共架橋剤、架橋助剤、粘着剤、軟化剤、加工助剤などが挙げられる。これら添加剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(製造方法)
本発明の繊維強化樹脂組成物は、任意の種々の方法を利用して、ドライブレンド、あるいは溶融ブレンドして製造することができる。すなわち、本発明の繊維強化樹脂組成物の製造方法は、ガラス繊維束を準備する工程と、該ガラス繊維束とマトリクス樹脂(E)とを溶融混練する工程とを含む。具体的な方法としては、例えば、ガラス繊維束、マトリクス樹脂(E)および他の任意成分を、同時にまたは任意の順序で、タンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、単軸或いは二軸の押出機などでブレンドする方法が適宜用いられる。あるいは、ガラス繊維束、マトリクス樹脂(E)および他の任意成分を、一度、任意の溶媒に分散、あるいは溶解させた後に、自然乾燥や加熱強制乾燥等、適宜の方法で乾燥することにより、ブレンドしてもよい。
特に、プルトルージョン法で繊維強化樹脂組成物を製造する場合、繊維強化樹脂組成物の製造設備の運転安定性には、繊維の耐擦過性が大きく影響する。繊維は、製造プロセスの各工程で、金属等の表面に接触するが、繊維の耐擦過性が十分でない場合、接触した際の摩擦により繊維が切れて、短繊維化した「毛羽」が発生する。例えば、この毛羽は、繊維に樹脂を含浸させるための容器内(樹脂含浸ダイ内)に徐々に滞留することにより、繊維束の切断を引き起こし、製造設備の連続運転を阻害する。そのため、製造設備の運転安定性を高めるには、ガラス繊維束の耐擦過性を高めることが望まれる。
本発明の繊維強化樹脂組成物は、特定の繊維収束剤を用いて得られたガラス繊維束を含む。そのため、ガラス繊維束の耐擦過性を高めることができ、毛羽立ちを抑制しうる。
5.成形体
本発明の成形体は、本発明の繊維強化樹脂組成物を含む。具体的には、本発明の成形体は、繊維強化樹脂組成物を成形して得られる。成形方法は、特に限定されないが、例えば射出成形、押出成形および圧縮成形などにより成形され、意匠性と成形性の観点から射出成形が好ましい。
本発明の繊維強化樹脂組成物は、家庭用品から工業用品に至る広い用途の成形体に成形されうる。用途の例には、インストルメントパネル、ドアビーム、アンダーカバー、ランプハウジング、ペダルハウジング、ラジエータサポート、スペアタイヤカバー、フロントエンドなどの各種モジュール等の自動車部品、ノートパソコン、携帯電話、デジタルスチルカメラ、PDA、プラズマディスプレーなどの電気・電子部品、電話、ファクシミリ、VTR、コピー機、テレビ、電子レンジ、音響機器、トイレタリー用品、レーザーディスク(登録商標)、冷蔵庫、エアコンなどの家庭・事務電気製品部品に好適である。また、テープ形状にした繊維強化熱可塑性樹脂組成物テープを用いたテープワインディング成形体は、例えば、パイプや圧力容器などの各種容器の外部補強部にも好適に用いることができる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。しかしながら、本発明の範囲はこれによって何ら制限を受けない。
1.繊維収束剤の調製
<繊維収束剤1の調製>
(1)プロピレン系樹脂(A)およびプロピレン系樹脂(B)を含む水分散体(EM1)の調製
(無水マレイン酸変性プロピレン系樹脂(B1)の調製)
プロピレン・ブテン共重合体96質量部、無水マレイン酸4質量部、および重合開始剤(日本油脂(株)製、商品名パーヘキサ25B)0.4質量部を混合し、加熱温度160℃、2時間で変性を行い、無水マレイン酸変性プロピレン系樹脂(B1)(重量平均分子量Mw:20000、酸価:45mgKOH/g、無水マレイン酸含有率:4質量%、融点:140℃)を得た。
(水分散体(EM1)の調製)
プロピレン系樹脂(A)として、プロピレン・ブテン共重合体(ショアD硬度:52、重量平均分子量Mw:35万)を100質量部、プロピレン系樹脂(B)として、上記無水マレイン酸変性プロピレン系樹脂(B1)10質量部、界面活性剤として、オレイン酸カリウム3質量部を混合した。この混合物を2軸スクリュー押出機(池貝鉄工株式会社製、PCM-30、L/D=40)のホッパーより3000g/時間の速度で供給し、押出機のベント部に設けた供給口より20%の水酸化カリウム水溶液を90g/時間の割合で連続的に供給し、加熱温度210℃で連続的に押出した。押出した樹脂混合物を、押出機口に設置したジャケット付きスタティックミキサーで110℃まで冷却し、さらに80℃の温水中に投入して、平均粒子径が0.5μm、固形分濃度が40質量%の水分散体(EM1)を得た。
(2)エチレン系樹脂(C)の水分散体(EM2)の調製
(無水マレイン酸変性プロピレン系樹脂(C1))
エチレン系樹脂(C)として、無水マレイン酸変性エチレン系樹脂(C1)(無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(エチレン:97~98モル%)、数平均分子量Mn:1200、軟化点:110℃、密度:920kg/m、酸価21mgKOH/g)を用いた。
(水分散体(EM2)の調製)
撹拌翼を備えた1Lのオートクレーブに、エチレン系樹脂(C)として、上記無水マレイン酸変性エチレン系樹脂(C1)を400g添加し、140℃で溶融混合した。混合した後、さらに1時間加熱を続け、同時に窒素を10L/hrの流速で吹き込んでバブリングを行い、溶融混合物を得た。
次に、内容量4Lの耐圧ホモミキサーに、水580mlおよび水酸化カリウム19.6gを入れ、140℃に加熱して5000rpmで撹拌しながら、得られた溶融混合物をギアーポンプで1時間かけて供給した。その後、さらに15分間撹拌後、室温まで冷却して、エチレン系樹脂(C)の水分散体を得た。得られた水分散体の固形分濃度は40質量%、平均粒子径は0.6μmであった。
(3)水分散体の混合
上記調製したプロピレン系樹脂(A)およびプロピレン系樹脂(B)を含む水分散体(EM1)100質量部に、エチレン系樹脂(C)を含む水分散体(EM2)を5質量部、シランカップリング剤(D)として3-アミノプロピルトリエトキシシラン(東レ・ダウコーニング社製Z-6011)を含む水分散体(EM3)(濃度40質量%)10質量部を配合し、繊維収束剤を調製した。
<繊維収束剤2の調製>
エチレン系樹脂(C)の水分散体(EM2)の調製において、エチレン系樹脂(C)を表1に記載の無水マレイン酸変性エチレン系樹脂に変更し、かつ水分散体(EM2)調製時の温度を180℃に変更した以外は繊維収束剤1と同様にして繊維収束剤2を調製した。
<繊維収束剤3の調製>
エチレン系樹脂(C)の水分散体(EM2)の調製において、エチレン系樹脂(C)を表1記載のものに変更し、水酸化カリウムを2.8gに変更して、平均粒子径3μmの水分散体を得た以外は繊維収束剤1と同様にして繊維収束剤3を調製した。
<繊維収束剤4の調製>
エチレン系樹脂(C)の水分散体(EM2)の調製において、エチレン系樹脂(C)を表1記載のものに変更し、水分散体調製時の温度を180℃に変更した以外は繊維収束剤3と同様にして繊維収束剤4を調製した。
<繊維収束剤5の調製>
プロピレン系樹脂(A)およびプロピレン系樹脂(B)を含む水分散体(EM1)の調製において、プロピレン系樹脂(A)として、プロピレン・ブテン共重合体を、プロピレン・ブテン・エチレン共重合体(ショアA硬度:75、重量平均分子量Mw:33万)に変更した以外は繊維収束剤1と同様にして繊維収束剤5を調製した。
<繊維収束剤6の調製>
プロピレン系樹脂(A)およびプロピレン系樹脂(B)を含む水分散体(EM1)の調製において、プロピレン系樹脂(A)として、プロピレン・ブテン共重合体を、プロピレン・ブテン・エチレン共重合体(ショアA硬度:75、重量平均分子量Mw:33万)に変更した以外は繊維収束剤2と同様にして繊維収束剤6を調製した。
<繊維収束剤7の調製>
プロピレン系樹脂(A)およびプロピレン系樹脂(B)を含む水分散体(EM1)100質量部に、エチレン系樹脂(C)を含む水分散体(EM2)を10質量部、シランカップリング剤(D)を含む水分散体(EM3)を11質量部配合した以外は繊維収束剤6と同様にして繊維収束剤7を調製した。
<繊維収束剤8の調製>
プロピレン系樹脂(A)およびプロピレン系樹脂(B)を含む水分散体(EM1)100質量部に、エチレン系樹脂(C)を含む水分散体(EM2)を20質量部、シランカップリング剤(D)を含む水分散体(EM3)を12質量部配合した以外は、繊維収束剤6と同様にして繊維収束剤8を調製した。
<繊維収束剤9の調製>
プロピレン系樹脂(A)およびプロピレン系樹脂(B)を含む水分散体(EM1)の調製において、プロピレン系樹脂(A)として、プロピレン・ブテン共重合体を、プロピレン・ブテン・エチレン共重合体(ショアA硬度:75、重量平均分子量Mw:33万)に変更した以外は繊維収束剤3と同様にして繊維収束剤9を調製した。
<繊維収束剤10の調製>
プロピレン系樹脂(A)およびプロピレン系樹脂(B)を含む水分散体(EM1)の調製において、プロピレン系樹脂(A)として、プロピレン・ブテン共重合体を、プロピレン・ブテン・エチレン共重合体(ショアA硬度:75、重量平均分子量Mw:33万)に変更した以外は繊維収束剤4と同様にして繊維収束剤10を調製した。
<繊維収束剤11の調製>
プロピレン系樹脂(A)およびプロピレン系樹脂(B)を含む水分散体(EM1)の調製において、プロピレン系樹脂(A)として、プロピレン・ブテン共重合体を、プロピレン・ブテン・エチレン共重合体(ショアA硬度:84、重量平均分子量Mw:34万)に変更した以外は繊維収束剤1と同様にして繊維収束剤11を調製した。
<繊維収束剤12の調製>
プロピレン系樹脂(A)およびプロピレン系樹脂(B)を含む水分散体(EM1)の調製において、プロピレン系樹脂(A)として、プロピレン・ブテン共重合体を、プロピレン・ブテン・エチレン共重合体(ショアA硬度:84、重量平均分子量Mw:34万)に変更した以外は繊維収束剤2と同様にして繊維収束剤12を調製した。
<繊維収束剤13の調製>
プロピレン系樹脂(A)およびプロピレン系樹脂(B)を含む水分散体(EM1)の調製において、プロピレン系樹脂(A)を、プロピレン系樹脂(A-1)としてプロピレン・ブテン共重合体(ショアD硬度:52、重量平均分子量Mw:35万)80質量部と、プロピレン系樹脂(A-2)として無水マレイン酸変性プロピレン系樹脂(無水マレイン酸変性プロピレン・ブテン共重合体、重量平均分子量Mw:10万、酸価:11mgKOH/g)20質量部とに変更した以外は繊維収束剤1と同様にして繊維収束剤13を調製した。
<繊維収束剤14の調製>
プロピレン系樹脂(A)およびプロピレン系樹脂(B)を含む水分散体(EM1)の調製において、プロピレン系樹脂(A)を、プロピレン系樹脂(A-1)として、プロピレン・ブテン共重合体(ショアD硬度:52、重量平均分子量Mw:35万)80質量部と、プロピレン系樹脂(A-2)として、無水マレイン酸変性プロピレン系重合体(重量平均分子量Mw:10万、酸価:11mgKOH/g)20質量部とに変更した以外は繊維収束剤2と同様にして繊維収束剤14を調製した。
<繊維収束剤15の調製>
(無水マレイン酸変性プロピレン系樹脂(A1)の調製)
プロピレン・ブテン共重合体(ショアD硬度:52、重量平均分子量Mw:35万、融点:80℃)100質量部に、無水マレイン酸0.01質量部、重合開始剤(日本油脂(株)製、商品名パーヘキサ25B)0.005質量部を加え、充分混合した後、2軸押出機(日本プラコン株式会社製、30mm押出機、L/D=42、同方向回転、ベント無し)を用いて、押出温度230℃、回転数200回転/分、押出量20kg/時間で反応させて、無水マレイン酸変性プロピレン系樹脂(A1)を得た。得られた樹脂のGPCで測定した重量平均分子量は33万であり、プロピレン・ブテン共重合体と無水マレイン酸の仕込み比から算出される酸素(周期律表16族元素)の含有率は0.0049質量%であった。
(水分散体(EM1)の調製)
プロピレン系樹脂(A)およびプロピレン系樹脂(B)を含む水分散体(EM1)の調製において、プロピレン系樹脂(A)として、上記無水マレイン酸変性プロピレン系樹脂(A1)を用いた以外は繊維収束剤1と同様にして、繊維収束剤15を調製した。
<繊維収束剤16の調製>
エチレン系樹脂(C)の水分散体(EM2)の調製において、エチレン系樹脂(C)を表3記載のものに変更し、かつ水分散体(EM2)調製時の温度を180℃に変更した以外は繊維収束剤15と同様にして繊維収束剤16を調製した。
<繊維収束剤17の調製>
エチレン系樹脂(C)の水分散体(EM2)の調製において、無水マレイン酸変性エチレン系樹脂(C1)を無水マレイン酸変性プロピレン樹脂(数平均分子量Mn:3300、軟化点:150℃、密度:900kg/m)に変更して、平均粒子径0.5μmの水分散体を得た以外は繊維収束剤1と同様にして繊維収束剤17を調製した。
<繊維収束剤18の調製>
エチレン系樹脂(C)の水分散体(EM2)の調製において、エチレン系樹脂(C)として、表3に記載の無水マレイン酸変性エチレン系樹脂を400gと、ポリオキシエチレンラウリルエーテル100gとの混合物に変更し、平均粒子径が20μmの水分散体を得た以外は繊維収束剤2と同様にして繊維収束剤18を調製した。
<繊維収束剤19の調製>
エチレン系樹脂(C)を含む水分散体(EM2)を使用しなかった以外は繊維収束剤2と同様にして繊維収束剤19を調製した。
<繊維収束剤20の調製>
プロピレン系樹脂(A)およびプロピレン系樹脂(B)を含む水分散体(EM1)100質量部に、エチレン系樹脂(C)を含む水分散体を40質量部、シランカップリング剤(D)を含む水分散体(EM3)を14質量部配合した以外は繊維収束剤2と同様にして繊維収束剤20を調製した。
<繊維収束剤21の調製>
プロピレン系樹脂(A)およびプロピレン系樹脂(B)を含む水分散体(EM1)の調製において、プロピレン系樹脂(A)として、プロピレン・ブテン共重合体を、プロピレン・ブテン・エチレン共重合体(ショアA硬度:測定範囲外、重量平均分子量Mw:10万)に変更した以外は繊維収束剤2と同様にして繊維収束剤21を調製した。
得られた繊維収束剤1~7の調製条件を表1に、繊維収束剤8~14の調製条件を表2に、繊維収束剤15~21の調製条件を表3に示す。
Figure 2022153077000001
Figure 2022153077000002
Figure 2022153077000003
表1~3における樹脂の物性は、以下の方法で測定した。
[重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)]
プロピレン系樹脂(A)、プロピレン系樹脂(B)、エチレン系樹脂(C)の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて以下の条件で測定した。
装置:ゲル浸透クロマトグラフAlliance GPC2000型(Waters社製)
溶剤:o-ジクロロベンゼン
カラム:TSKgel GMH6-HT×2、TSKgel GMH6-HTLカラム×2(何れも東ソー社製)
流速:1.0 ml/分
試料:0.15mg/mL o-ジクロロベンゼン溶液
温度:140℃
検量線作成用標準サンプル:市販の単分散標準ポリスチレン
[軟化点]
JIS K2207に準拠し測定した。
[密度]
JIS K7112に準拠し測定した。
[酸価]
JIS K5902に準拠し測定した。
[平均粒子径]
エチレン系樹脂(C)の平均粒子径は、コールターカウンター(ベックマン社製、コールターカウンター マルチサイザーII)により測定した。
2.ガラス繊維束の作製および評価
次に、上記作製した繊維収束剤を用いてガラス繊維束の作製および評価を行った。
<ガラス繊維>
ガラス繊維として、日本電気硝子社製のガラス繊維束(連続繊維、2400tex、平均繊維径:17μm)をアセトンなどの溶剤中に浸漬し、超音波洗浄で数回洗浄して乾燥させて、付着している繊維収束剤を除去したものを準備した。
<ガラス繊維束(g1)の作製>
上記ガラス繊維に、上記調製した繊維収束剤1を、ガラス繊維に対する有効成分の付着量((A)、(B)、(C)および(D)成分の合計量)が1.0質量%になるようにアプリケーターで塗布して、ガラス繊維束(g1)を作製した。
<評価>
(1)引張特性
上記作製したガラス繊維束を用いて繊維強化樹脂組成物の試験片を作製し、引張特性を評価した。
(プロピレン系重合体(p))
プライムポリマー社製のプロピレン単独重合体(h-PP、MFR(230℃、2.16kg)=220g/10分、重量平均分子量(Mw)99,900)を用いた。
(酸変性ポリオレフィン樹脂(m))
下記方法で調製した無水マレイン酸変性ポリプロピレンを用いた。
・ポリプロピレン(プライムポリマー社製、商品名J106G、MFR(230℃、2.16kg)=15g/10分)100質量部に対して、ジアルキルパーオキサイド(日油社製、パーヘキサ(登録商標)25B)1質量部、粉末化した無水マレイン酸(日油社製、CRYSTAL MAN(登録商標))3質量部を予備混合した。この混合物を190℃に温度調節した30mmφの二軸押出機に供給して、200rpmにて溶融混練して得たストランドを水槽で冷却して無水マレイン酸変性ポリプロピレン得た。未変性の残留無水マレイン酸を除去するために、この無水マレイン酸変性ポリプロピレンを40℃で2時間真空乾燥した。得られた無水マレイン酸変性ポリプロピレンのマレイン酸含量は2.5質量%、MFR(230℃、2.16kg)は800g/10分であった。
(試験片の作製)
次に、マトリクス樹脂(E)としての成分(p)および成分(m)と、ガラス繊維束(g1)とを、(p):(m):(g1)=63:7:30の質量比で、この順に樹脂混練・成形評価装置(Xplore Instruments社製)の小型混練機(DSM Xplore MC15M)のホッパー部に投入し、180℃、3分間混練した。その後直ちに、試験片作製用射出成形機(DSM Xplore IM12M)のポット部(220℃)に投入し、30~40℃の金型に9MPa(一次)、12MPa(二次)の圧力で射出成形し、35秒間保持し、JIS K 7162 1994に準拠したダンベル型試験片を作製した。
(引張試験)
そして、得られた試験片について、引張速度50mm/分、チャック間距離50mmの条件下で引張試験を実施した。応力-歪曲線における引張降伏応力(YS)(MPa)、引張破断点伸び(%)、引張弾性率(見かけの引張弾性率)(GPa)を測定した。
(2)耐擦過性(毛羽立ち)
ガラス繊維束の耐擦過性を、以下の方法で評価した。
上記作製したガラス繊維束(g1)を約30cmの長さにカットしたものを10本準備した(n=10)。このガラス繊維束(g1)を、ステンレス製の固定ロールの上面を通して、繊維束の両端をチャックで固定した。次に、繊維束張力が0.2kgとなるようにロールに接触させ、繊維束をロールに接触させた状態で10往復させた後で、毛羽発生状況を観察した。すなわち、繊維束1本ごとに切断されたガラス繊維の本数を目視で確認した。そしてn=10の平均値を算出し、その値に応じて下記のように5段階(評点1~5)で評価した。なお、ガラス繊維束(g1)1本にはガラス繊維約4000本が束ねられている。
5:毛羽発生が2本以下
4:毛羽発生が2本超8本以下
3:毛羽発生が8本超14本以下
2:毛羽発生が14本超20本以下
1:毛羽発生が20本超
<ガラス繊維束(g2)~(g21)の作製および評価>
繊維収束剤を表4~6に記載のものに変更した以外はガラス繊維束(g1)と同様にして、ガラス繊維束(g2)~(g21)を作製し、同様の評価(引張特性および耐擦過性)を行った。
ガラス繊維束(g1)~(g7)の評価結果を表4に示し;ガラス繊維束(g8)~(g14)の評価結果を表5に示し;ガラス繊維束(g15)~(g21)の評価結果を表6に示す。
Figure 2022153077000004
Figure 2022153077000005
Figure 2022153077000006
表4~6に示されるように、繊維収束剤1~16(実施例)を用いたガラス繊維束(g1)~(g16)は、いずれも繊維強化樹脂組成物の機械的物性を良好にしつつ、毛羽立ちが少なく、耐擦過性に優れることがわかる。
これに対し、繊維収束剤17~21(比較例)を用いたガラス繊維束(g17)~(g21)は、樹脂組成物の機械的物性を良好にしうるものの、毛羽立ちが発生し、耐擦過性に劣ることがわかる。
本発明によれば、繊維強化樹脂組成物に十分な強度を付与しつつ、毛羽立ちなどを抑制できるガラス繊維収束剤を提供することができる。

Claims (11)

  1. プロピレン系樹脂(A)と、
    重合体鎖に結合したカルボン酸塩を含むプロピレン系樹脂(B)と、
    重合体鎖に結合したカルボン酸塩を含むエチレン系樹脂(C)と、
    シランカップリング剤(D)と、
    水と、
    を含み、
    前記プロピレン系樹脂(A)は、
    前記プロピレン系樹脂(B)よりも高い重量平均分子量を有し、かつ
    重量平均分子量が15万以上であるプロピレン系樹脂(A-1)を70~100質量%と、重量平均分子量が15万未満であるプロピレン系樹脂(A-2)を0~30質量%とを含み(ただし、前記(A-1)成分と前記(A-2)成分の合計を100質量%とする)、
    前記プロピレン系樹脂(B)の含有量は、前記プロピレン系樹脂(A)100質量部に対して3~50質量部であり、
    前記エチレン系樹脂(C)は、平均粒子径0.1~10μmの水分散性樹脂粒子であり、 前記エチレン系樹脂(C)の含有量は、前記プロピレン系樹脂(A)と前記プロピレン系樹脂(B)の合計100質量部に対して1~30質量部である、
    ガラス繊維収束剤。
  2. 前記エチレン系樹脂(C)は、下記の要件(i)~(iii)をさらに満たす、
    請求項1に記載のガラス繊維収束剤。
    (i)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が300~20000の範囲にある
    (ii)JIS K2207に従って測定した軟化点が70~170℃の範囲にある
    (iii)密度勾配管法で測定した密度が830~1200kg/mの範囲にある
  3. 前記エチレン系樹脂(C)は、エチレンと炭素原子数3~20のα-オレフィンの共重合体のカルボン酸変性物である、
    請求項1または2に記載のガラス繊維収束剤。
  4. 前記エチレン系樹脂(C)は、エチレンと炭素原子数3~20のα-オレフィンの共重合体の無水マレイン酸変性物である、
    請求項3に記載のガラス繊維収束剤。
  5. 前記エチレン系樹脂(C)の酸価は、2~25mgKOH/gである、
    請求項1~4のいずれか一項に記載のガラス繊維収束剤。
  6. 前記プロピレン系樹脂(A-1)のショアA硬度が60~90であるか、または、ショアD硬度が45~65である、
    請求項1~5のいずれか一項に記載のガラス繊維収束剤。
  7. 複数のガラス繊維と、請求項1~6のいずれか一項に記載のガラス繊維収束剤の乾燥物とを含むガラス繊維束であって、
    前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分および前記(D)成分の合計量は、前記ガラス繊維束に対して0.3~5質量%である、
    ガラス繊維束。
  8. 請求項7に記載のガラス繊維束を1~80質量部と、マトリクス樹脂(E)を20~99質量部とを含む、
    繊維強化樹脂組成物。
  9. 前記マトリクス樹脂(E)は、熱可塑性樹脂である、
    請求項8に記載の繊維強化樹脂組成物。
  10. 前記熱可塑性樹脂は、プロピレン系樹脂である、
    請求項9に記載の繊維強化樹脂組成物。
  11. 請求項8~10のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂組成物を含む、
    成形体。
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