ところで、特許文献1に記載の技術では、焼成炉と製品回収ユニットとは離れて配置されているため、原料粉体および焼成後の製品粉体を収容するサヤは、焼成炉と製品回収ユニットとの間を台車に乗って移動するように構成されている。これにより、焼成炉において加熱されたサヤが製品回収ユニットに移動するまでに、サヤは十分に冷やされる。ここで、粉体を焼成してから製品を取り出すまでの時間をより短縮するために、焼成炉から搬出されたサヤから直ちに製品を取り出すことが望まれている。このような場合には、サヤは高温の状態で製品回収ユニットに送られるため、サヤを把持する部分が高温に晒されて不具合が発生する虞がある。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、高温に加熱された焼成容器から容易に被焼成物を取り出すことができる被焼成物取り出し装置を提供することにある。
ここに開示される一態様の被焼成物取り出し装置は、上面が開口した焼成容器から被焼成物を取り出す取り出し装置である。前記被焼成物取り出し装置は、ロボットアームと、前記ロボットアームに設けられ、かつ、金属材料から形成され、かつ、前記焼成容器を把持可能な把持部材と、前記把持部材のうち前記焼成容器と接触する部分に形成され、かつ、セラミック成分を含むセラミック皮膜から構成された保護部材と、を備えている。
かかる被焼成物取り出し装置によれば、焼成容器を把持する把持部材のうち焼成容器と接触する部分にはセラミック皮膜から構成された保護部材が設けられている。ここで、セラミック皮膜は耐熱性に優れるため、高温に加熱された焼成容器を把持することができる。また、保護部材から把持部材へは熱が伝わりにくいため、把持部材が高温に晒されることによって発生し得る不具合の発生を抑制することができる。さらに、焼成容器を把持する把持部材は金属製であるため剛性が高く、焼成容器を確実に把持することができる。このように、高温に加熱された焼成容器を確実に把持することができるため、高温に加熱された焼成容器から容易に被焼成物を取り出すことができる。
好ましい一態様の被焼成物取り出し装置によると、前記セラミック皮膜は、セラミック溶射皮膜である。溶射によって形成されたセラミック溶射皮膜は、耐熱性および耐腐食性により優れるため、把持部材を効果的に保護することができる。
好ましい一態様の被焼成物取り出し装置によると、前記ロボットアームは、前記把持部材を回転させることによって前記焼成容器を上下に反転可能に構成され、前記焼成容器が反転される位置の下方に設けられ、前記焼成容器に収容された前記被焼成物を回収する回収装置を備えている。これにより、焼成容器から容易に被焼成物を取り出すことができる。
好ましい一態様の被焼成物取り出し装置によると、前記把持部材は、第1把持部材と、前記第1把持部材と対向する位置に設けられた第2把持部材と、を備え、前記第1把持部材は、前記焼成容器に接触する第1把持面と、前記第1把持面より上方に位置しかつ前記第1把持面よりも前記第2把持部材に向けて突出する第1上爪部と、前記第1把持面より下方に位置しかつ前記第1把持面よりも前記第2把持部材に向けて突出する第1下爪部と、を有し、前記第2把持部材は、前記焼成容器に接触する第2把持面と、前記第2把持面より上方に位置しかつ前記第2把持面よりも前記第1把持部材に向けて突出する第2上爪部と、前記第2把持面より下方に位置しかつ前記第2把持面よりも前記第1把持部材に向けて突出する第2下爪部と、を有する。このように、把持部材は、第1上爪部、第1下爪部、第2上爪部および第2下爪部を有しているため、焼成容器を移動したり回転したりするときに焼成容器が把持部材から落下することが防止される。これにより、焼成容器をより高速で移動したり回転したりすることができるため、焼成容器から被焼成物をより短時間で取り出すことができる。
好ましい一態様の被焼成物取り出し装置によると、前記焼成容器は、矩形状の底面部と、前記底面部から上方に延びる4つの側面部と、を有し、前記側面部には、下方に向けて凹む凹部がそれぞれ形成され、前記焼成容器を上下方向に複数積み重ねるときに、上に積み重ねる前記焼成容器を把持する前記第1把持部材の前記第1下爪部および前記第2把持部材の前記第2下爪部は、下側に位置する前記焼成容器の前記凹部に位置する。かかる構成によると、焼成容器の落下を防止する第1下爪部および第2下爪部が設けられていても、第1下爪部および第2下爪部は先に載置された焼成容器と干渉することなく、焼成容器を多段に積み上げることができる。
好ましい一態様の被焼成物取り出し装置によると、前記第1の把持部材および前記第2の把持部材が並ぶ方向を第1の方向としたとき、前記第1下爪部の前記第1の方向の長さは、前記第1上爪部の前記第1の方向の長さより短く、前記第2下爪部の前記第1の方向の長さは、前記第2上爪部の前記第1の方向の長さより短い。焼成容器を載置するときに第1下爪部および第2下爪部が焼成容器の底面部と接触することで焼成容器の載置位置にずれが生じる虞があるが、第1下爪部および第2下爪部を比較的短くすることによって、焼成容器との接触面積を減らし、焼成容器の載置位置のずれの発生を抑制することができる。
ここに開示される一態様の焼成システムは、前記焼成容器を搬送し、かつ、前記焼成容器内に収容された前記被焼成物を焼成する焼成炉と、前記焼成炉の下流側に設けられ、前記焼成炉から搬送された前記焼成容器を搬送する搬送ラインと、前記被焼成物取り出し装置と、前記被焼成物取り出し装置より下流側に設けられ、前記焼成容器を回収する回収ラインと、を備え、前記被焼成物取り出し装置は、前記搬送ラインの下流側に設けられている。かかる構成によると、被焼成物の焼成、被焼成物の取り出しおよび焼成容器の回収を効率よく行うことができる。
好ましい一態様の焼成システムによると、前記搬送ラインは、前記焼成容器を搬送する第1搬送機構と、前記焼成容器を前記搬送機構よりも上方に移動させる第1リフターとを備えている。これにより、被焼成物取り出し装置は容易に焼成容器を搬送ラインから持ち上げることができる。
好ましい一態様の焼成システムによると、前記回収ラインは、前記焼成容器を搬送する第2搬送機構と、前記第2搬送機構よりも上方において前記焼成容器が載置される第2リフターと、を備え、前記第2リフターは、下方に移動することによって、前記焼成容器を前記第2搬送機構上に配置するように構成されている。これにより、被焼成物取り出し装置は容易に焼成容器を回収ラインに載置することができる。
以下、本開示における典型的な実施形態の1つについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚みなど)は実際の寸法関係を反映するものではない。上、下、左、右、前、後の向きは、図中、U、D、L、R、F、Rrの矢印でそれぞれ表されている。ここで、上、下、左、右、前、後の向きは、説明の便宜上、定められているに過ぎず、特に言及されない限りにおいて本願発明を限定しない。
図1は、焼成システム10を模式的に示す平面図である。焼成システム10は、焼成炉20と、搬送ライン30と、被焼成物取り出し装置50と、回収ライン90とを備えている。焼成システム10では、被焼成物を収容する焼成容器5(図2も参照)が用いられる。焼成容器5は、焼成炉20、搬送ライン30、被焼成物取り出し装置50および回収ライン90の間をこの順番で繰り返し移動可能に構成されている。即ち、焼成容器5は、焼成システム10において繰り返し用いられる。本実施形態では、焼成容器5が搬送される方向(流れる方向)に関して、焼成炉20が最も上流側に配置され、回収ライン90が最も下流側に配置されている。
図2は、焼成容器5の平面図である。図3は、焼成容器5の側面図である。図2および図3に示すように、焼成容器5は、上面が開口した箱型に形成されている。焼成容器5は、被焼成物を収容する。焼成容器5は、耐熱性(耐火性)に優れる材料から形成されている。焼成容器5を構成する材料としては、例えば、ムライト(3Al2O3・2SiO2)、コーディライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)、ムライト・コーディライトや酸化アルミニウム(アルミナ:Al2O3)等のセラミック材料が挙げられる。焼成容器5の熱膨張係数は、例えば、2×10-3K-1~4×10-3K-1(例えば焼成容器5がムライトやコーディライトから形成されている場合には3×10-3K-1)である。焼成容器5は、矩形状の底面部5Aと、底面部5Aから上方に延びる4つの側面部5Bとを有している。側面部5Bには、下方に向けて凹む凹部5Hが形成されている。焼成容器5に凹部5Hが形成されていることによって、焼成容器5を上下方向に複数積み重ねたときに、上側の焼成容器5と下側の焼成容器5との間に隙間が形成される。
焼成炉20は、焼成容器5(図2参照)内に収容された被焼成物を焼成する。焼成炉20は、トンネル型に形成されており、焼成炉20内で焼成容器5を搬送する。焼成炉20は、内部に焼成容器5が搬送される搬送経路25を有する。搬送経路25には、例えば、複数のセラミックローラ28が所定の間隔で設けられている。焼成容器5は、セラミックローラ28上を搬送される。本実施形態の焼成炉20は、搬送経路25において複数の焼成容器5を搬送し、焼成容器5内に収容された被焼成物を連続的に焼成する連続焼成炉である。連続焼成炉としては、種々の構造が採用されうる。連続焼成炉として、例えば、ローラーハースキルン(RHK)やいわゆるプッシャー炉が挙げられる。ローラーハースキルは、セラミックローラによって、焼成容器5を搬送する連続焼成炉である。一方、プッシャー炉は、ローラーハースキルンのように焼成容器5を搬送するための搬送ローラは設けられておらず、焼成容器5は、順次プッシャーで押されることによってセラミックレールの上を滑りながら搬送される。焼成炉20の内壁は、例えば、所定の形状に成形されたセラミックファイバーボードが重ねられて形成されているとよい。セラミックファイバーボードは、例えば、いわゆるバルクファイバーに無機フィラーと無機・有機結合材とが添加されて板状に成形された板材である。焼成炉20は、焼成容器5を搬入する搬入口21と、搬入口21より下流側に形成され、かつ、焼成容器5を搬出する搬出口22とを有する。搬送経路25は、搬出口22を介して搬送ライン30に接続されている。
図1に示すように、搬送ライン30は、焼成炉20の下流側に設けられている。搬送ライン30の長手方向(ここでは左右方向)の長さは、焼成炉20の長手方向(ここでは左右方向)の長さよりも短い。搬送ライン30は、焼成炉20から搬出された焼成容器5を搬送する第1搬送機構35と、第1搬送機構35の所定の位置で焼成容器5の移動を阻止するストッパー39と、焼成容器5を第1搬送機構35よりも上方に移動させる第1リフター40と、を備えている。第1搬送機構35は、所定の間隔で配置された複数の搬送ローラ38を有する。焼成容器5は、搬送ローラ38上を搬送される。図4に示すように、ストッパー39は、第1リフター40よりも下流側に配置されている。ストッパー39の上端39Aは、搬送ローラ38よりも上方に位置する。ストッパー39は、搬送ローラ38上を搬送される焼成容器5を、把持位置GPに停止させるように構成されている。第1リフター40は、断面U字形状に形成された第1テーブル42と、第1テーブル42を上下方向に移動させる第1昇降機構44と、を備えている。第1テーブル42の上端42Aは、焼成容器5の底面部5Aと接触可能に構成されている。第1テーブル42は、第1昇降機構44の上に連結されている。第1昇降機構44は、例えば、エアーシリンダである。焼成容器5が把持位置GPに到達する前には、第1昇降機構44は、第1テーブル42を下方に移動させて、第1テーブル42の上端42Aが搬送ローラ38よりも下方に位置するように構成されている。一方、図5に示すように、把持位置GPに位置する焼成容器5を上方に移動させるときには、第1昇降機構44は、第1テーブル42を上方に移動させて、第1テーブル42の上端42Aが搬送ローラ38およびストッパー39よりも上方に位置するように構成されている。これにより、焼成容器5の底面部5Aが搬送ローラ38およびストッパー39よりも上方に位置するため、被焼成物取り出し装置50の後述する把持部材70によって容易に焼成容器5を把持することができる。
図1に示すように、被焼成物取り出し装置50は、搬送ライン30の下流側に設けられている。被焼成物取り出し装置50は、焼成容器5から被焼成物を取り出す装置である。被焼成物取り出し装置50は、ロボットアーム52と、把持部材70(図8参照)と、保護部材80(図8参照)と、回収装置85と、を備えている。
図6に示すように、ロボットアーム52は、6軸の垂直多関節型ロボットである。ロボットアーム52は、ロボット架台88上に配置されている。ロボットアーム52は、ベース部材53と、第1リンク54と、第2リンク55と、第3リンク56と、第4リンク57と、第5リンク58と、第6リンク59と、第1関節61と、第2関節62と、第3関節63と、第4関節64と、第5関節65と、第6関節66とを備えている。
図6に示すように、第1リンク54は、第1関節61を介してベース部材53に接続されている。第1リンク54は、垂直方向に延びる第1軸L1を中心にしてベース部材53に対して回転可能に構成されている。第2リンク55は、第2関節62を介して第1リンク54に接続されている。第2リンク55は、水平方向に延びる第2軸L2を中心にして第1リンク54に対して回転可能に構成されている。第3リンク56は、第3関節63を介して第2リンク55に接続されている。第3リンク56は、水平方向に延びる第3軸L3を中心にして第2リンク55に対して回転可能に構成されている。
図6に示すように、第4リンク57は、第4関節64を介して第3リンク56に接続されている。第4リンク57は、水平方向(第4リンク57が延びる方向)に延びる第4軸L4を中心にして第3リンク56に対して回転可能に構成されている。第5リンク58は、第5関節65を介して第4リンク57に接続されている。第5リンク58は、水平方向に延びる第5軸L5を中心にして第4リンク57に対して回転可能に構成されている。第6リンク59は、第6関節66を介して第5リンク58に接続されている。第6リンク59は、水平方向に延びる第6軸L6を中心にして第5リンク58に対して回転可能に構成されている。
図7に示すように、第6リンク59には、第1アーム部67Aと、第1アーム部67Aと対向する位置に配置された第2アーム部67Bと、が設けられている。第1アーム部67Aは、第1軸68Aによって第6リンク59に連結されている。第2アーム部67Bは、第2軸68Bによって第6リンク59に連結されている。第1アーム部67Aおよび第2アーム部67Bは、前後方向に延びる。第1軸68Aおよび第2軸68Bは、左右方向に延びる。第1アーム部67Aおよび第2アーム部67Bは、第1軸68Aおよび第2軸68Bによって、互いに接近および離反可能に構成されている。即ち、第1軸68Aおよび第2軸68Bが後退することによって、第1アーム部67Aおよび第2アーム部67Bが接近し、かつ、第1軸68Aおよび第2軸68Bが前進することによって、第1アーム部67Aおよび第2アーム部67Bが離反するように構成されている。
把持部材70は、焼成容器5を把持可能に構成されている。把持部材70は、ロボットアーム52に設けられている。より詳細には、図7に示すように、把持部材70は、第6リンク59の第1アーム部67Aおよび第2アーム部67Bに設けられている。把持部材70は、金属材料から形成されている。把持部材70は、例えば、ステンレス鋼から形成されている。把持部材70の熱膨張係数は、例えば、15×10-6K-1~20×10-6K-1(例えば把持部材70がSUS304から形成されている場合には17.3×10-6K-1)である。把持部材70は、第1把持部材71と、第1把持部材71と対向する位置に設けられた第2把持部材72と、を備えている。第1把持部材71および第2把持部材72は、左右方向に並ぶ。第1把持部材71は、第1アーム部67Aに設けられている。ここでは、2つの第1把持部材71が第1アーム部67Aに設けられている。第2把持部材72は、第2アーム部67Bに設けられている。ここでは、2つの第2把持部材72が第2アーム部67Bに設けられている。
図8は、第1把持部材71および第2把持部材72を模式的に示す側面図である。図9は、第1把持部材71および第2把持部材72が焼成容器5を把持している状態を示す側面図である。なお、図8および図9は、図1の前方から後方を見たときの側面図である。図8に示すように、第1把持部材71は、焼成容器5に接触する第1把持面71Aと、第1把持面71Aより上方に位置しかつ第1把持面71Aよりも第2把持部材72に向けて(ここでは右方に向けて)突出する第1上爪部71Bと、第1把持面71Aより下方に位置しかつ第1把持面71Aよりも第2把持部材72に向けて突出する第1下爪部71Cと、を有する。第1把持面71Aは、保護部材80を介して間接的に焼成容器5(詳細には焼成容器5の側面部5B)に接触する。第1下爪部71Cの左右方向の長さM1は、第1上爪部71Bの左右方向の長さM2より短い。左右方向は、第1の方向の一例である。
図8に示すように、第2把持部材72は、焼成容器5に接触する第1把持面71Aと、第2把持面72Aより上方に位置しかつ第2把持面72Aよりも第1把持部材71に向けて(ここでは左方に向けて)突出する第2上爪部72Bと、第2把持面72Aより下方に位置しかつ第2把持面72Aよりも第1把持部材71に向けて突出する第2下爪部72Cと、を有する。第2把持面72Aは、保護部材80を介して間接的に焼成容器5(詳細には焼成容器5の側面部5B)に接触する。第2下爪部72Cの左右方向の長さM3は、第2上爪部72Bの左右方向の長さM4より短い。
図8に示すように、保護部材80は、把持部材70のうち焼成容器5と接触する部分に形成されている。本実施形態では、保護部材80は、第1把持部材71の第1把持面71A、第1上爪部71Bおよび第1下爪部71C、第2把持部材72の第2把持面72A、第2上爪部72Bおよび第2下爪部72Cにそれぞれ形成されている。第1把持面71Aおよび第2把持面72Aは、保護部材80を介して間接的に焼成容器5に接触する。第1上爪部71B、第1下爪部71C、第2上爪部72Bおよび第2下爪部72Cは、保護部材80を介して間接的に焼成容器5に接触し得る。保護部材80は、セラミック成分を含むセラミック皮膜から構成されている。セラミック成分としては、例えば、各種金属の酸化物からなるセラミック(酸化物系セラミック)材料であってもよいし、炭化物、ホウ化物、窒化物、アパタイト等の非酸化物からなるセラミック材料であってよい。保護部材80の熱膨張係数は、例えば、5×10-6K-1~9.6×10-6K-1(例えば保護部材80がグレーアルミナから形成されている場合には5.3×10-6K-1)である。なお、図8を除き、保護部材80の図示を便宜上省略している。
酸化物系セラミックとして、より具体的には、例えば、アルミナ、ジルコニア、イットリア、クロミア、チタニア、コバルタイト、マグネシア、シリカ、カルシア、セリア、フェライト、スピネル、ジルコン、酸化ニッケル、酸化銀、酸化銅、酸化亜鉛、酸化ガリウム、酸化ストロンチウム、酸化スカンジウム、酸化サマリウム、酸化ビスマス、酸化ランタン、酸化ルテチウム、酸化ハフニウム、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タングステン、マンガン酸化物、酸化タンタル、酸化テルピウム、酸化ユーロピウム、酸化ネオジウム、酸化スズ、酸化アンチモン、アンチモン含有酸化スズ、酸化インジウム、スズ含有酸化インジウム、酸化ジルコニウムアルミネート、酸化ジルコニウムシリケート、酸化ハフニウムアルミネート、酸化ハフニウムシリケート、酸化チタンシリケート、酸化ランタンシリケート、酸化ランタンアルミネート、酸化イットリウムシリケート、酸化チタンシリケート、酸化タンタルシリケート等が挙げられる。例えば、アルミナ系の材料であるグレーアルミナ(Al2O3-3TiO2)を好適に用いることができる。
また、非酸化物系セラミックとしては、例えば、炭化タングステン(WC)、炭化クロム、炭化バナジウム、炭化ニオブ、炭化モリブデン、炭化タンタル、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化ケイ素、炭化ホウ素などの炭化物、ホウ化タングステン(WB)、ホウ化モリブデン、ホウ化クロム、ホウ化ハフニウム、ホウ化ジルコニウム、ホウ化タンタル、ホウ化チタンなどのホウ化物、窒化ホウ素、窒化チタン、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の窒化物、フオルステライト、ステアタイト、コーディライト、ムライト、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、Mn-Znフェライト、Ni-Znフェライト、サイアロン等の複合化物、ハイドロキシアパタイト、リン酸カルシウム等のリン酸化合物等が挙げられる。
セラミック皮膜は、例えば、溶射によって形成されたセラミック溶射皮膜である。溶射方法は特に限定されないが、例えば、大気プラズマ溶射(APS:atmospheric plasma spraying)、減圧プラズマ溶射(LPS:low pressure plasma spraying)、加圧プラズマ溶射(high pressure plasma spraying)等のプラズマ溶射法、酸素支燃型高速フレーム(High Velocity Oxygen Flame:HVOF)溶射法、ウォームスプレー溶射法および空気支燃型(High Velocity Air flame:HVAF)高速フレーム溶射法等の高速フレーム溶射等を好適に利用することができる。また、セラミック皮膜の形成方法は、溶射に限定されず、例えば、化学蒸着法(CVD)、物理蒸着法(PVD)、スパッタリング、スピンコート、ディッピング、噴霧塗装等であってもよい。
図9に示すように、第1把持部材71および第2把持部材72は、焼成容器5を把持する。このとき、焼成容器5は、第1把持部材71の第1把持面71Aおよび第2把持部材72の第2把持面72Aに把持される。ここで、第1把持面71Aおよび第2把持面72Aには、保護部材80(図8参照)が設けられているため、高温の焼成容器5を把持するときであっても、焼成容器5と第1把持部材71および第2把持部材72とは直接接触しない。このため、第1把持部材71および第2把持部材72に熱による不具合が発生することが抑制される。このように、保護部材80が設けられた把持部材70は、耐熱性および耐腐食性に優れると共に、高温の焼成容器5の熱による金属材料の流出が抑制されるため、焼成容器5が金属材料により汚染されることが抑制される。なお、焼成容器5が第1把持部材71および第2把持部材72によって把持されているとき、第1把持部材71の第1上爪部71Bおよび第2把持部材72の第2上爪部72Bは、焼成容器5の凹部5H内に位置し、第1把持部材71の第1下爪部71Cおよび第2把持部材72の第2下爪部72Cは、焼成容器5の底面部5Aよりも下方に位置する。通常は、第1上爪部71B、第2上爪部72B、第1下爪部71Cおよび第2下爪部72Cは、焼成容器5と接触しない。
図10は、回収装置85の上方において焼成容器5が反転された状態を示す側面図である。なお、図10は、図1の左方から右方を見たときの側面図である。図10に示すように、ロボットアーム52(図6参照)は、把持部材70を回転させることによって焼成容器5を上下に反転可能に構成されている。ロボットアーム52は、第6リンク59(図6参照)を第6軸L6を中心に回転させることによって、把持部材70を回転させる。回収装置85は、焼成容器5に収容された被焼成物を回収する。回収装置85は、すり鉢状に形成されている。図1に示すように、回収装置85は、ロボットアーム52の左方に設けられている。回収装置85は、焼成容器5が反転される位置の下方に設けられている。即ち、ロボットアーム52は、回収装置85の上方で把持部材70を回転させて、焼成容器5を上下に反転させる(即ち開口が下を向いた状態にする)。そして、ロボットアーム52は、焼成容器5に収容された被焼成物が回収装置85に回収された後には、把持部材70を回転させることによって焼成容器5を元の状態(即ち開口が上を向いた状態)に戻す。ここで、焼成容器5を移動させたり反転させたりするときに焼成容器5にずれが生じた場合であっても、第1把持部材71の第1上爪部71Bおよび第1下爪部71C、第2把持部材72の第2上爪部72Bおよび第2下爪部72Cが設けられているため、焼成容器5が把持部材70から落下することが防止される。
図1に示すように、回収ライン90は、被焼成物取り出し装置50の下流側に設けられている。回収ライン90の長手方向(ここでは左右方向)の長さは、焼成炉20の長手方向(ここでは左右方向)の長さよりも長い。回収ライン90は、被焼成物取り出し装置50から送られてきた焼成容器5を搬送する第2搬送機構95と、第2搬送機構95の所定の位置で焼成容器5が載置される第2リフター100と、を備えている。第2搬送機構95は、前後方向に延びる駆動軸96と、前後方向に延びる従動軸97と、左右方向に延び、かつ、駆動軸96および従動軸97に巻き掛けられた一対のベルト部材98と、を有する。ベルト部材98上には、焼成容器5が載置される。駆動軸96が回転するとベルト部材98が左右方向に走行する。これにより、ベルト部材98上に載置された焼成容器5が搬送される。即ち、焼成容器5は、ベルト部材98上を搬送される。第2リフター100は、一対のベルト部材98の間に配置されている。第2リフター100は、従動軸97より右方に配置されている。図11に示すように、第2リフター100は、平板状の第2テーブル102と、第2テーブル102上に設けられ、かつ、断面L字形状に形成された一対のガイド部材103と、第2テーブル102を上下方向に移動させる第2昇降機構104と、を備えている。第2テーブル102には、焼成容器5が載置される。第2テーブル102は、焼成容器5の底面部5Aよりも小さい形状である。本実施形態では、第2テーブル102には、ガイド部材103を介して焼成容器5が載置される。なお、焼成容器5は、第2テーブル102に直接載置されてもよいし、第2テーブル102に設けられたガイド部材103とは別の部材に載置されてもよい。第2テーブル102は、第2昇降機構104の上に連結されている。ガイド部材103は、ロボットアーム52の把持部材70によって把持された焼成容器5を第2テーブル102に載置したときに、焼成容器5のずれを抑制する部材である。焼成容器5を第2テーブル102に載置するときには、第1下爪部71Cおよび第2下爪部72Cが焼成容器5の底面部5Aと接触するため、摩擦により焼成容器5の位置がずれる虞があるが、ガイド部材103により焼成容器5の位置ずれを抑制することができる。第2昇降機構104は、例えば、エアーシリンダである。第2テーブル102に焼成容器5が載置されていないとき、および、第2テーブル102に所定の個数以下(例えば1個)の焼成容器5が配置されているときには、第2昇降機構104は、第2テーブル102を上方に移動させて、第2テーブル102が第2搬送機構95よりも上方(より詳細にはベルト部材98よりも上方)に位置するように構成されている。一方、図12に示すように、第2テーブル102に所定の個数(例えば2個)の焼成容器5が載置されると、第2昇降機構104は、第2テーブル102を下方(より詳細にはベルト部材98よりも下方)に移動させるように構成されている。ここで、第2テーブル102は、焼成容器5の底面部5Aより小さいため、第2昇降機構104によって第2テーブル102が下降するときには第2テーブル102は、ベルト部材98を通過して下方に移動するが、焼成容器5はベルト部材98に接触する。このようにして、2段に積み重ねられた焼成容器5は、ベルト部材98上に載置される。
なお、本実施形態の焼成容器5を用いる場合には、図13に示すように、既に載置されている焼成容器5の上に別の焼成容器5を積み重ねることができる。このとき、上側の焼成容器5を把持する第1把持部材71の第1下爪部71Cおよび第2把持部材72の第2下爪部72Cは、下側の焼成容器5の凹部5Hに位置する。このように、第1下爪部71Cおよび第2下爪部72Cが下側の焼成容器5と干渉しないため、下側の焼成容器5の上に適切に焼成容器5を積み重ねることができる。
以上、具体的な実施形態を挙げて詳細な説明を行ったが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。また、ここでの開示は、種々変更でき、特段の問題が生じない限りにおいて、各構成要素やここで言及された各処理は適宜に省略され、または、適宜に組み合わされうる。
上述した実施形態では、回収ライン90において焼成容器5は上下方向に2個積み重ねられるように構成されていたが、これに限定されない。焼成容器5は、上下方向に3個以上(例えば5個~10個)積み重ねられてもよい。