本発明は、シート付き型枠に関し、更に詳しくは、型枠本体と樹脂シートとを備えるシート付き型枠に関する。以下、本発明に係るシート付き型枠を添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。
第一実施形態に係るシート付き型枠1について、図1A~図8に基いて説明する。図1A及び図1Bにシート付き型枠1を示す。シート付き型枠1は、木製の型枠本体2と、樹脂シート3と、を備える。
図2に型枠本体2を示す。型枠本体2は、コンクリートを打設する際に使用される、木製の枠である。具体的には、型枠本体2は、無垢の木材により製造されるのが好ましいが、合板やMDF(Medium Density Fiberboard)といった繊維板等からなる木質材により製造されてもよい。
型枠本体2は、堰板本体21と、桟木本体22と、を有する。堰板本体21は、木製の平板である。堰板本体21は、板面に直交する方向(厚さ方向)から見て(正面視という)、長方形状をしている。堰板本体21の一方の板面が、コンクリート打設面210となる。コンクリート打設面210は平面である。堰板本体21は、コンクリート打設面210と、裏面211と、一方の端縁がコンクリート打設面210に隣接すると共に他方の端縁が裏面211に隣接して、コンクリート打設面210と交差する側面212と、を有する。桟木本体22は、堰板本体21のコンクリート打設面210と反対側の裏面211に取り付けられる。なお、後述するが、堰板本体21のコンクリート打設面210には樹脂シート3が貼付されるため、コンクリート打設面210は直接コンクリートと接触せず、コンクリートは樹脂シート3に接触する。
桟木本体22は、木製の棒状部材により構成される。桟木本体22は、堰板本体21の裏面211の両方の長辺及び短辺に沿った外周側の端部に取り付けられる。堰板本体21の裏面211の長辺に沿って取り付けられる桟木本体22を裏面211の長辺側の桟木本体221とし、堰板本体21の裏面211の短辺に沿って取り付けられる桟木本体22を裏面211の短辺側の桟木本体222とする。
裏面211の長辺側の桟木本体221の長手方向の長さは、堰板本体21の裏面211の長辺の長さと同等に形成される。裏面211の短辺側の桟木本体222の長手方向の長さは、堰板本体21の裏面211の短辺の長さから、裏面211の長辺側の桟木本体221の幅(堰板本体21の裏面211の短辺に沿う長さ)の2倍分を引いた長さと同等に形成される。
桟木本体22は、長手方向に直交する断面が長方形状をしており、四つの側面のうちの一つである平面が堰板本体21の裏面211に取り付けられる。なお、後述するが、桟木本体22には樹脂シート3が貼付されるため、桟木本体22の側面は堰板本体21の裏面211と接触せず、桟木本体22に貼付された樹脂シート3が裏面211に接触する。
裏面211の長辺側の桟木本体221の長手方向の長さは、堰板本体21の裏面211の長辺の長さと同じに形成されることが好ましい。裏面211の短辺側の桟木本体222の長手方向の長さは、堰板本体21の裏面211の短辺の長さと同じに形成されることが好ましい。
図3A~図4に樹脂シート3を示す。樹脂シート3は、型枠本体2のコンクリート打設面210をはじめとする表面を覆う、樹脂製のシートである。樹脂シート3は、例えばポリプロピレンからなるシートにより構成されている。樹脂シート3は、堰板用シート31と、桟木用シート32と、を有する。
図3Aに堰板用シート31を示す。堰板用シート31は、打設面対向部311と、折り曲げ部312と、を備える。打設面対向部311は、コンクリート打設面210の全面に対向する部分である。打設面対向部311は、コンクリート打設面210と同じ形状でかつ同じ大きさの長方形状をしている。すなわち、打設面対向部311は、コンクリート打設面210に過不足なく対応している。
折り曲げ部312は、打設面対向部311に連続する。折り曲げ部312と打設面対向部311との間には罫線310が形成される。折り曲げ部312は、罫線310で打設面対向部311に対して折り曲げられる。折り曲げ部312は、堰板本体21の側面212及び裏面211に対向する部分である。折り曲げ部312は、堰板本体21の裏面211の長辺側の側面212に対向する部分(裏面211の長辺側の折り曲げ部312とする)と、堰板本体21の裏面211の短辺側の側面212に対向する部分と、を有する。裏面211の長辺側の折り曲げ部3121の長手方向の長さは、堰板本体21の裏面211の長辺側の側面212の長手方向の長さと同じに形成され、裏面211の短辺側の折り曲げ部3122の長手方向の長さは、堰板本体21の裏面211の短辺側の側面212の長手方向の長さと同じに形成される。また、裏面211の長辺側の折り曲げ部3121及び裏面211の短辺側の折り曲げ部3122の短手方向の長さは、堰板本体21の側面212の短手方向の長さ(すなわち堰板本体21の厚み)よりも長く形成される。裏面211の長辺側の折り曲げ部3121及び裏面211の短辺側の折り曲げ部3122には、打設面対向部311との境界(打設面対向部311との境界に位置する罫線310)から堰板本体21の側面212の短手方向の長さ(すなわち堰板本体21の厚み)の位置に、中間の罫線310が形成されている。裏面211の長辺側の折り曲げ部3121及び裏面211の短辺側の折り曲げ部3122のうち、中間の罫線310よりも打設面対向部311側の部分をそれぞれ内側折り曲げ部3121A、内側折り曲げ部3122Aとし、中間の罫線310よりも先端側の部分をそれぞれ外側折り曲げ部3121B、外側折り曲げ部3122Bとする。
図3Bに樹脂シート3の端部を拡大した斜視図を示す。樹脂シート3は、裏面(型枠本体2と対向する側)に両面テープ4が貼付されている。両面テープ4は、樹脂シート3の裏面の全面に両面テープ4が貼付されている。木製の堰板本体21や桟木本体22の表面に凹凸がある。このため、堰板本体21や桟木本体22の表面に両面テープ4を貼付した際、両面テープ4の粘着剤が堰板本体21や桟木本体22の表面の凹部に食い込んで、両面テープ4が強固に堰板本体21や桟木本体22の表面に取り付けることができる。両面テープ4の樹脂シート3に貼付される側と反対側の粘着面には、両面テープ4が樹脂シート3に貼付される直前まで、保護フィルム5が貼付されている。
図4に桟木用シート32を示す。桟木用シート32は、長辺側対向部321と、短辺側対向部322と、端曲げ部323と、を備える。長辺側対向部321は、桟木本体22の裏面211の長辺側の面に対向する部分であり、桟木本体22の裏面211の長辺側の面と同じ形状でかつ同じ大きさの長方形状をしている。すなわち、長辺側対向部321は、桟木本体22の裏面211の長辺側の面に過不足なく対向している。
短辺側対向部322は、長辺側対向部321に連続する。短辺側対向部322は、桟木本体22の裏面211の短辺側の面に対向する部分であり、桟木本体22の裏面211の短辺側の面と同じ形状でかつ同じ大きさの長方形状をしている。すなわち、短辺側対向部322は、桟木本体22の裏面211の短辺側の面に過不足なく対向している。
端曲げ部323は、短辺側対向部322に連続する。端曲げ部323は、桟木本体22の裏面211の長辺側の面に対向する部分であるが、桟木本体22の裏面211の長辺側の面の短手方向長さよりも短手方向長さが短い。すなわち、両方の端曲げ部323は、一部が重なりつつ両方合わせて桟木本体22の裏面211の長辺側の面に過不足なく対向している。
上述した樹脂シート3は、型枠本体2に貼付されて、シート付き型枠1が構成される。具体的には、堰板用シート31が堰板本体21に貼付されて、シート付き堰板11(図7A及び図7B参照)が構成される。また、桟木用シート32が桟木本体22に貼付されて、シート付き桟木12(図8参照)が構成される。シート付き堰板11にシート付き桟木12が取り付けられて、シート付き型枠1が構成される。シート付き型枠1の製造方法について説明する。
シート付き型枠1の製造方法は、(1)型枠本体2の準備工程、(2)樹脂シート3の準備工程、(3)樹脂シート3の型枠本体2への貼付工程及び(4)シート付き堰板11へのシート付き桟木12の取付工程を有する。
(1)型枠本体2の準備工程
型枠本体2の準備工程は、型枠本体2すなわち堰板本体21及び桟木本体22を準備する工程である。堰板本体21及び桟木本体22を準備するとは、堰板本体21及び桟木本体22を製造して、堰板本体21及び桟木本体22を準備することである。
堰板本体21の準備工程は、木製の板材より、堰板本体21となる所定の形状及び所定の大きさの部分を切断し切り出して、堰板本体21を形成する工程である。
桟木本体22の準備工程は、桟木本体22の断面形状と同じ断面形状を有する長尺の棒状部材を所定の長さに切断して、桟木本体22を形成する構成である。なお、堰板本体21の準備工程と桟木本体22の準備工程の順序は任意であり、これらの工程は同時に行われてもよい。
(2)樹脂シート3の準備工程
樹脂シート3の準備工程は、(2.1)樹脂シート3への両面テープ4の貼付工程、(2.2)両面テープ4付き樹脂シート3の原形作成工程及び(2.3)罫線作成工程を有する。
(2.1)樹脂シート3への両面テープ4の貼付工程
図5に、樹脂シート3の製造装置7の概略構成図を示す。第1ロール71には樹脂シート3が巻き付けられており、第2ロール72には片面に保護フィルム5が貼付された両面テープ4が巻き付けられている。第1ロール71から樹脂シート3を繰り出し、第2ロール72から保護フィルム5が貼付された両面テープ4を繰り出す。両面テープ4の保護フィルム5が貼付されていない側の粘着面に、樹脂シート3が貼付される。これにより、両面テープ4付き樹脂シート3が形成され、第3ロール73に巻き取られる。
(2.2)両面テープ4付き樹脂シート3の原形作成工程
原形作成工程は、第3ロール73に巻き取られた両面テープ4付き樹脂シート3より、それぞれ堰板用シート31、桟木用シート32となる所定の形状及び所定の大きさの部分を切断し切り出して、堰板用シート31、桟木用シート32の原形となる部分を作成する工程である。原形作成工程は、トムソン刃を使用したトムソン加工により行われる。トムソン加工を行うトムソン加工装置については、様々なものが公知であり、これらが適宜利用可能であるため、説明を省略する。
堰板用シート31の原形となる部分は、打設面対向部311となる部分と折り曲げ部312となる部分を含む部分である。具体的には、図3Aに示すように、堰板用シート31の原形となる部分は、打設面対向部311を中心として、各辺に折り曲げ部312を有する略十字状に形成され、四隅に切欠が形成された長方形状に形成される。
桟木用シート32の原形となる部分は、図4に示すように、長辺側対向部321と、長辺側対向部321の両側の裏面211の長辺にそれぞれ連続する短辺側対向部322と、短辺側対向部322に連続する端曲げ部323と、を有する長方形状に形成される。
(2.3)罫線作成工程
罫線作成工程は、図3Aに示すように、堰板用シート31と桟木用シート32とに罫線310を形成する工程である。堰板用シート31においては、打設面対向部311と打設面対向部311に隣接する折り曲げ部312との境界と、側面212の裏面211側の辺に対応する部分(後述する)に、罫線310を形成する。桟木用シート32においては、図4に示すように、長辺側対向部321と短辺側対向部322との境界及び短辺側対向部322と端曲げ部323との境界に罫線310を形成する。
罫線作成工程は、特殊なトムソン刃を使用したトムソン加工により行われる。特殊なトムソン刃は、先端が鋭利とならずに丸みを帯びている。このような特殊なトムソン刃を使用したトムソン加工では、樹脂シート3の原形となる部分は切断されず、罫線310となる薄肉部が形成される。第一実施形態では、図3Bに示すように、特殊なトムソン刃を用いて、保護フィルム5及び両面テープ4を変形させて、罫線310となる薄肉部を形成している。両面テープ4に罫線310を形成すれば、罫線310は一定の幅を有するため、曲げ易いだけでなく、樹脂シート3を曲げた時に両面テープ4の粘着剤が罫線310の溝に集まるので、樹脂シート3が浮き上がることを抑えることができる。また、保護フィルム5は、樹脂シート3を堰板本体21や桟木本体22に貼付する際、両面テープ4から全部を一度に剥がすことができて、作業効率がよい。
堰板用シート31においては、罫線310により、打設面対向部311に対して折り曲げ部312を折り曲げやすくなる。また、桟木用シート32においては、罫線310により、長辺側対向部321に対して短辺側対向部322を折り曲げやすくなると共に、短辺側対向部322に対して端曲げ部323を折り曲げやすくなる。
(3)樹脂シート3の型枠本体2への貼付工程
樹脂シート3の型枠本体2への貼付工程は、堰板用シート31の堰板本体21への貼付工程と、桟木用シート32の桟木本体22への貼付工程と、を有する。
堰板用シート31の堰板本体21への貼付工程は、まず、両面テープ4に貼付されている保護フィルム5を剥がす。次に、図6に示すように、堰板用シート31の打設面対向部311を堰板本体21のコンクリート打設面210へ位置合わせした後、両面テープ4を介して、打設面対向部311をコンクリート打設面210に貼付する。
次に、図7Aに示すように、折り曲げ部312を打設面対向部311に対して罫線310に沿って折り曲げ、折り曲げ部312を堰板本体21の側面212に貼付する。その後、側面212の裏面211側の辺で罫線310に沿って更に折り曲げて、折り曲げ部312の残りの部分を裏面211に貼付する。このとき、図7Bに示すように、堰板用シート31の角部においては、隣接する折り曲げ部312が重なって重なり部313となる。重なり部313においては、樹脂シート3が重なっているため、樹脂シート3二枚分の厚みとなる。
重なり部313は、堰板本体21の四隅に形成されるが、裏面211の短辺又は長辺の両端部の重なり部313間には重なり部は形成されず、この部分の厚みは樹脂シート3一枚分である。このため、裏面211の短辺又は長辺に沿って両方の重なり部313間に、樹脂シート3を追加して貼付してもよい。追加する樹脂シート3は、折り曲げ部312と裏面211との間に位置するように裏面211に貼付してもよいし、裏面211に貼付した折り曲げ部312に重ねて貼付してもよい。
樹脂シート3を追加しない場合、複数の堰板本体21を重ねた状態では、堰板本体21が両方の重なり部313で支持される両持ち状態となって、重なり部313間が撓むおそれがあるが、樹脂シート3を追加すると、このように堰板本体21が撓みにくくなる。
また、堰板本体21の裏面211に樹脂シート3を介して桟木本体22を取り付ける際、裏面211側の樹脂シート3の表面に段差がなくなり、桟木本体22を強固に取り付けやすくなる。また、桟木本体22と裏面211側の樹脂シート3との間に隙間が形成されにくくなり、この隙間からコンクリートが流れ込みにくくなる。これにより、桟木本体22と裏面211側の樹脂シート3との間の隙間からコンクリートが流れ込んで、堰板本体21の裏面211にコンクリートが接触して、堰板本体21が腐食することが防止される。
堰板用シート31には、打設面対向部311と折り曲げ部312の境界に罫線310が形成されているため、打設面対向部311と折り曲げ部312の境界において堰板用シート31が直角に曲がりやすく、打設面対向部311がコンクリート打設面210に沿いやすいと共に折り曲げ部312が側面212に沿いやすい。また、堰板用シート31には、側面212の裏面211側の辺に対応する部分に罫線310が形成されているため、この部分において罫線310に沿って堰板用シート31が直角に曲がりやすく、折り曲げ部312が側面212に沿いやすいとともに更に折り曲げられた部分が裏面211に沿いやすい。これにより、堰板用シート31が堰板本体21の表面に沿わずに堰板本体21から浮いた状態となるのを抑えやすくなる。
桟木用シート32の桟木本体22への貼付工程は、まず、両面テープ4に貼付されている保護フィルム5を剥がした後、図8に示すように、桟木用シート32の端曲げ部323を桟木本体22の裏面211の長辺側の側面に位置合わせした後、両面テープ4を介して、端曲げ部323を桟木本体22の裏面211の長辺側の側面に貼付する。次に、短辺側対向部322を長辺側対向部321に対して罫線310に沿って折り曲げ、短辺側対向部322を桟木本体22の裏面211の短辺側の側面に貼付する。次に、長辺側対向部321を短辺側対向部322に対して罫線310に沿って更に折り曲げて、長辺側対向部321を桟木本体22の裏面211の長辺側の側面に貼付する。その後、同様に、短辺側対向部322を桟木本体22の裏面211の短辺側の側面に貼付し、端曲げ部323を桟木本体22の裏面211の長辺側の側面に貼付する。このとき、最初に貼付した端曲げ部323と最後に貼付した端曲げ部323とは一部が重なる。
桟木用シート32には、長辺側対向部321と短辺側対向部322の境界及び短辺側対向部322と端曲げ部323の境界に罫線310が形成されているため、これらの境界において桟木用シート32が直角に曲がりやすく、桟木用シート32が桟木本体22の側面に沿いやすい。これにより、桟木用シート32が桟木本体22の表面に沿わずに桟木本体22から浮いた状態となるのを抑えやすくなる。
(4)シート付き堰板11へのシート付き桟木12の取付工程
シート付き堰板11へのシート付き桟木12の取付工程は、シート付き桟木12をシート付き堰板11の裏面(堰板本体21の裏面211側の面)の所定の位置に取り付ける工程である。これにあたっては、シート付き堰板11のコンクリート打設面210側の面より釘(不図示)を打ち込んで、シート付き桟木12をシート付き堰板11の裏面に取り付けて、シート付き桟木12をシート付き堰板11に固定する。
シート付き桟木12の取り付けは、まず、裏面211の長辺側の桟木本体221を有するシート付き桟木12を、シート付き堰板11の裏面211の長辺に沿って取り付ける。このとき、裏面211の長辺側の桟木本体221を有するシート付き桟木12の長手方向の両端縁は、シート付き堰板11の長手方向の両端縁にそれぞれ一致する。
次に、裏面211の短辺側の桟木本体222を有するシート付き桟木12を、シート付き堰板11の裏面211の短辺に沿って取り付ける。このとき、裏面211の短辺側の桟木本体222を有するシート付き桟木12を、裏面211の長辺側の桟木本体221を有するシート付き桟木12の間に挿入すれば、シート付き桟木12間に隙間が形成されない。特に、第一実施形態では、シート付き桟木12の端面に桟木用シート32がないため、各シート付き桟木12を隙間なくかつシート付き堰板11に対して所定の位置に精度よく取り付けることができる。
このようにすることで、シート付き桟木12の外周面が連続した四平面に囲まれると共に、シート付き桟木12の外周面とシート付き堰板11の外周面とが面一状となる。以上の工程により、図1Aに示すシート付き型枠1の完成品が製造される。
第一実施形態のシート付き型枠1にあっては、堰板用シート31の折り曲げ部312が、堰板本体21の側面212を覆っているため、折り曲げ部312と側面212との間にコンクリートが流れ込んで側面212に直接接触し、コンクリートが側面212から剥離しにくくなることを防止することができる。また、桟木用シート32が桟木本体22の側面を覆っているため、並設されたシート付き型枠1の間にコンクリートが流れ込んで桟木本体22の側面に直接接触し、コンクリートが桟木本体22の側面から剥離しにくくなることを抑えることができる。従来、堰板本体21のコンクリート打設面210及び側面212、桟木本体22の側面に付着したコンクリートをヘラで削ぎ落していたところ、第一実施形態では、樹脂からなる堰板用シート31や桟木用シート32に付着したコンクリートをタオル等で拭き取ることができ、コンクリートをシート付き型枠1から容易に剥離させやすいため効率よくケレン作業ができて省力化が図れると共に、シート付き型枠1に傷がつきにくい。また、コンクリートの水分が木製の型枠本体2に付着して木製の型枠本体2が劣化(あるいは腐食)するのを防止し、型枠本体2を長期間使用することができる。
また、堰板本体21に両面テープ4を介して堰板用シート31が貼付されてシート付き堰板11が構成され、桟木本体22に両面テープ4を介して桟木用シート32が貼付されてシート付き桟木12が構成されている。このため、樹脂シート3が型枠本体2から浮いた状態となりにくくなる。すなわち、例えばタッカーにより樹脂シート3を型枠本体2に対して部分的に固定する方法では、樹脂シート3の型枠本体2に固定されていない部分が型枠本体2から浮き上がりやすい。例えば、シート付き堰板11にセパレータを取り付けるための貫通孔を形成するような場合、堰板本体21を貫通したドリルが堰板用シート31を堰板本体21から離れる方向に押して、堰板用シート31が堰板本体21から剥離しやすくなる。これに対して、両面テープ4により樹脂シート3を型枠本体2に貼付することにより、樹脂シート3の全面(あるいは面積にして半分以上の部分)を容易に型枠本体2に固定することができ、樹脂シート3が型枠本体2から浮き上がりにくくすることができる。更に、両面テープ4の粘着剤は両面テープ4の面に沿って流れるなどして塊になることがなく、粘着剤の塊によって樹脂シート3が浮き上がることが抑制される。
樹脂シート3が型枠本体2から浮きがると、特に、堰板本体21の側面212と折り曲げ部312との間に隙間が形成されると、並設されたシート付き型枠1の間にコンクリートが流れ込んだ場合に、側面212と折り曲げ部312との間にまで流れ込んでしまい、木製の側面212に付着してしまいやすいが、第一実施形態のシート付き型枠1にあっては、これを抑制することができる。また、シート付き型枠1を繰り返し使用する場合、シート付き型枠1に貫通孔が形成されていても、堰板用シート31が堰板本体21から浮き上がりにくいため、コンクリートが貫通孔から堰板本体21と浮き上がった堰板用シート31との間に流れ込むことを抑制することができる。
また、堰板本体21に両面テープ4を介して堰板用シート31が貼付されて構成されたシート付き堰板11に、桟木本体22に両面テープ4を介して桟木用シート32が貼付されて構成されたシート付き桟木12を取り付けて、シート付き型枠1を構成している。これにより、シート付き型枠1を繰り返し使用する中でシート付き桟木12を取り換える必要が生じても、シート付き桟木12をシート付き堰板11から取り外しやすく、シート付き桟木12をシート付き堰板11に取り付けやすい。すなわち、樹脂シート3は堰板用シート31と桟木用シート32とに分離しており、堰板用シート31は堰板本体21に貼付されていると共に桟木用シート32は桟木本体22に貼付されている。このため、樹脂シート3が分離しておらず型枠本体2の全体に貼付されている場合、桟木本体22を堰板本体21から取り外そうとすると、まず型枠本体2から樹脂シート3を剥がして、次に堰板本体21から桟木本体22を取り外し、桟木本体22を取り換えてこれを堰板本体21に取り付けて型枠本体2を構成し、型枠本体2に樹脂シート3を取り付けることになるが、このような面倒な手間が省かれる。また、樹脂シート3を使うことにより、樹脂からなる中空構造体等を使用しなくても、コンクリートの表面を平坦で綺麗になるように養生することができる。
次に、第二実施形態について、図9に基づいて説明する。なお、第二実施形態は、第一実施形態と大部分において同じであるため、第一実施形態と重複する説明については説明を省略し、主に第一実施形態と異なる部分について説明する。
第一実施形態では、桟木本体22の側面の全面に桟木用シート32が貼付されていたが、桟木本体22の端面には桟木用シート32が貼付されていなかった。
これに対して、第二実施形態では、桟木用シート32の長辺側対向部321の端部に端面対向部324が連続して形成されている。端面対向部324は、長辺側対向部321に対して折り曲げられて、桟木本体22の端面に貼付される。
これにより、桟木本体22の端面が露出するのが抑制される。
次に、第三実施形態について、図10に基づいて説明する。なお、第三実施形態は、第一実施形態と大部分において同じであるため、第一実施形態と重複する説明については説明を省略し、主に第一実施形態と異なる部分について説明する。
第一実施形態では、桟木用シート32の全面に両面テープ4が貼付されており、両面テープ4を介して桟木用シート32の全面が桟木本体22の側面の全面に貼付されていた。
これに対して、第三実施形態では、桟木用シート32の一部にのみ両面テープ4が貼付されている。具体的には、桟木用シート32の端曲げ部323の端部にのみ両面テープ4が貼付され、桟木用シート32の中間部には両面テープ4が貼付されていない。
これにより、使い終わったシート付き桟木12をリサイクルするため、桟木本体22から桟木用シート32を剥がす際、桟木用シート32を剥がしやすい。
次に、第四実施形態について、図11A及び図11Bに基づいて説明する。なお、第四実施形態は、第一実施形態と大部分において同じであるため、第一実施形態と重複する説明については説明を省略し、主に第一実施形態と異なる部分について説明する。
第一実施形態では、桟木用シート32の端曲げ部323の互いに重なる部分において、特に罫線310は形成されていなかった。
これに対して、第四実施形態では、桟木用シート32の端曲げ部323の互いに重なる部分に、桟木用シート32の厚みを考慮した二本の罫線310が形成されている。二本の罫線310の間隔は、桟木用シート32の厚みと等しい。
これにより、桟木用シート32の端曲げ部323の互いに重なる部分において、隙間が形成されにくくなる。
次に、第五実施形態について、図12に基づいて説明する。なお、第五実施形態は、第一実施形態と大部分において同じであるため、第一実施形態と重複する説明については説明を省略し、主に第一実施形態と異なる部分について説明する。
第一実施形態では、堰板用シート31は、略十字状に形成されていた。これに対して、第五実施形態では、堰板用シート31は、打設面対向部311を中心として各辺に折り曲げ部314、315を有する点は第一実施形態と同様であるものの、折り曲げ部314には切欠3141が形成されると共に、折り曲げ部315には突出片3151が形成される点で異なる。
折り曲げ部314、315の短手方向の長さは、堰板本体21の側面212の短手方向の長さ(すなわち堰板本体21の厚み)と同じに形成される。また、切欠3141と突出片3151は、同じ形状でかつ同じ大きさの長方形状又は正方形状をしている。また、折り曲げ部315の本体部と突出片3151との間には罫線310が形成されている。
第五実施形態では、折り曲げ部314を打設面対向部311に対して罫線310に沿って折り曲げ、折り曲げ部314を堰板本体21の側面212に貼付して、折り曲げ部314の貼付は終了する。すなわち、折り曲げ部314は堰板本体21の裏面211には貼付されない。また、折り曲げ部314が貼付された側面212の端部においては、切欠3141に対応する部分には折り曲げ部314が貼付されない。
折り曲げ部315を打設面対向部311に対して罫線310に沿って折り曲げ、折り曲げ部315を堰板本体21の側面212に貼付する。その後、罫線310に沿って突出片3151を折り曲げて、切欠3141に対応して折り曲げ部314が貼付されていない側面212に突出片3151を貼付して、折り曲げ部315(突出片3151を含む)の貼付は終了する。折り曲げ部315は、堰板本体21の裏面211には貼付されない。
切欠3141に対応する部分に突出片3151が貼付されることにより、側面212の全面に堰板用シート31が貼付される。また、側面212に貼付される堰板用シート31においては、重なり部が形成されないですむ。
また、堰板本体21の側面212に貼付される折り曲げ部315の本体部と突出片3151とが連続するため、折り曲げ部315の本体部と突出片3151との間に隙間が形成されず、折り曲げ部315の本体部と突出片3151との間に隙間からコンクリートが流れ込むことがない。また、堰板用シート31が堰板本体21から浮き上がりにくく、堰板用シート31と堰板本体21との間にコンクリートが流れ込みにくい。
第五実施形態では、構成されたシート付き堰板11の裏面には、堰板用シート31が貼付されていない。このため、シート付き桟木12をシート付き堰板11の裏面に取り付けやすい。すなわち、シート付き堰板11を構成する堰板本体21の裏面211に、シート付き桟木12を直接取り付けるため、間に堰板用シート31が介在せず、強固に固定しやすい。例えば、接着剤によりシート付き堰板11の裏面(堰板本体21の裏面211)にシート付き桟木12を取り付けやすい。
次に、第六実施形態について、図13A及び図13Bに基づいて説明する。なお、第六実施形態は、第一実施形態と大部分において同じであるため、第一実施形態と重複する説明については説明を省略し、主に第一実施形態と異なる部分について説明する。
図13Aに示すように、第六実施形態では、シート付き堰板11は、堰板本体21のコンクリート打設面210と堰板用シート31の打設面対向部311との間に、樹脂製の中空構造体6を有する点で、第一実施形態と異なる。
中空構造体6は、図13Bに示すように、ハニカム構造を有するコア層61と、コア層61の両面に溶着等により形成されるスキン層62と、を有する。このような中空構造体6としては、公知の様々な中空構造体が適宜利用可能であり、詳細な説明を省略する。シート付き型枠1が中空構造体6を有することにより、打設されたコンクリートを養生させる際のシート付き型枠1の保温性を向上させることができる。
次に、変形例について説明する。
堰板本体21及び桟木本体22は、木材及び木質材以外の材質を含んでもよい。
堰板本体21(コンクリート打設面210)は、正面視において、長方形状ではなく、例えば正方形状や、四角形以外の形状をしてもよく、形状は限定されない。コンクリート打設面210は、平面であることが好ましいが、必ずしも平面でなくてもよい。
桟木本体22は、堰板本体21の裏面211の長辺又は短辺に沿った端部にのみ取り付けられてもよい。桟木本体22の断面形状は、長方形状ではなく、例えば正方形状や、四角形以外の形状をしてもよく、形状は限定されない。桟木本体22の長手方向の長さは、堰板本体21の裏面211の辺の長さと同じに形成されなくてもよい。
樹脂シート3は、透明な樹脂により形成されてもよいし、半透明又は不透明な樹脂により形成されてもよい。樹脂シート3の材質としては、ポリプロピレン以外にも例えばポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル、フッ素樹脂、シリコン添加樹脂等が好適に使用されるが、これらに限定されない。樹脂シート3の厚さは、特に限定されないが、0.1mm以上でかつ1.0mm以下であることが好ましく、更に、0.3mm以上でかつ0.6mm以下であることがより好ましい。
堰板用シート31を保管したり輸送したりするにあたっては、堰板用シート31を複数枚重ねて、対角の位置にある切欠(図3A参照)に紐等を引っ掛けて束ねてもよい。更に、このように束ねた堰板用シート31の束を、複数積み重ねてもよい。各堰板用シート31は平坦であるため、堰板用シート31の束は上面が略水平となるように寝かせられて、複数の束を積み重ねても崩れにくい。
堰板用シート31の打設面対向部311は、コンクリート打設面210に完全に過不足なく対応していなくてもよく、コンクリート打設面210に対して過不足があってもよい。打設面対向部311は、正面視において、長方形状ではなく、例えば正方形状や、四角形以外の形状をしてもよく、形状は限定されないが、概ねコンクリート打設面210に対応した形状及び大きさをしていればよい。
堰板用シート31の折り曲げ部312は、正面視において、長方形状ではなく、例えば正方形状や、四角形以外の形状をしてもよく、形状は限定されない。
堰板本体21の裏面211全面に堰板用シート31が貼付されてもよい。
桟木用シート32は、正面視において、長方形状ではなく、例えば正方形状や、四角形以外の形状をしてもよく、形状は限定されない。
桟木用シート32は、両端に端曲げ部323を有するのではなく、いずれかに長辺側対向部321を有してもよい。すなわち、桟木用シート32は、長辺側対向部321、短辺側対向部322、長辺側対向部321、短辺側対向部322を順に連続して有してもよい。また、桟木用シート32は、桟木本体22の全周に貼付されなくてもよいし、桟木本体22の端面に貼付されてもよい。
原形作成工程は、トムソン刃を使用したトムソン加工により行われなくてもよく、例えばプレス型によりシートを打ち抜いて、樹脂シート3の原形となる部分を作成してもよい。
堰板用シート31の原形となる部分は、様々な形状や大きさの堰板本体21に対応できるように、使用されると想定される堰板本体21よりも大きく形成されてもよい。
罫線作成工程は、トムソン刃を使用したトムソン加工により行われなくてもよく、他の方法により行われてもよい。罫線310となる薄肉部の断面形状は、V字形状や半円形状等でもよく、特に限定されない。また、罫線310は、樹脂シート3に形成しても勿論よい。
保護フィルム5を部分的に切断すると共に両面テープ4に部分的に切り込みを入れてもよい。これにより、保護フィルム5を堰板本体21や桟木本体22に貼付する場合に、貼付する部分ごとに剥がすことができて、貼る作業中に両面テープ4が意図しない部分に付着することがない。
両面テープ4は、樹脂シート3の全面に貼付されなくてもよい。特に、樹脂シート3の端部に両面テープ4を貼付せずに指で摘まむ摘まみ部を形成し、樹脂シート3の中間部の全面に両面テープ4を貼付してもよい。これにより、リサイクル等のために堰板本体21や桟木本体22から樹脂シート3を剥がす際に摘まみ部を摘まんで樹脂シート3を剥がしやすい。また、樹脂シート3の全面に両面テープ4及び保護フィルム5を貼付しておき、樹脂シート3の端部の保護フィルム5は剥がさずに残し、他の部分の保護フィルム5を剥がすようにしてもよい。これにより、リサイクル等のために堰板本体21や桟木本体22から樹脂シート3を剥がす際に樹脂シート3を剥がしやすい。
シート付き堰板11へのシート付き桟木12の取り付けは、コンクリート打設面210側からの釘打ちや、接着剤によるものに限定されない。例えば、シート付き桟木12を介してシート付き堰板11の裏面211側の面に釘を打ち込んで、シート付き桟木12をシート付き堰板11に固定してもよい。
上述したシート付き型枠1の製造方法は一例であり、シート付き型枠1の製造方法は上記の製造方法に限定されない。
以上、述べた実施形態及び変形例から明らかなように、第1の態様のシート付き型枠1は、木製の型枠本体2と、樹脂シート3と、を備える。型枠本体2は、堰板本体21と、桟木本体22と、を有する。樹脂シート3は、堰板用シート31と、桟木用シート32と、を有する。堰板本体21の表面に、両面テープ4を介して堰板用シート31が貼付されてシート付き堰板11が構成されている。桟木本体22の表面に、両面テープ4を介して桟木用シート32が貼付されてシート付き桟木12が構成されている。シート付き堰板11にシート付き桟木12が取り付けられて構成されている。
第1の態様によれば、樹脂シート3は堰板用シート31と桟木用シート32とを有し、堰板用シート31は堰板本体21に貼付されていると共に桟木用シート32は桟木本体22に貼付されているため、シート付き桟木12をシート付き堰板11から取り外しやすく、シート付き桟木12をシート付き堰板11に取り付けやすい。
第2の態様は、第1の態様との組み合わせにより実現され得る。第2の態様では、堰板本体21は、コンクリート打設面210となる面と、コンクリート打設面210と反対側の裏面211と、を有する。シート付き堰板11は、コンクリート打設面210及び裏面211に堰板用シート31が貼付されている。シート付き堰板11の裏面211に、堰板用シート31を介してシート付き桟木12が取り付けられている。
第2の態様によれば、コンクリートがシート付き堰板11の裏面に流れ込んでも、シート付き堰板11の裏面に付着したコンクリートを剥離させやすい。