JP2022149188A - 金属張積層板及び回路基板 - Google Patents

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Abstract

【課題】製造段階での発泡等の抑制を可能としながら、低吸湿であり且つ金属層との接着性に優れたポリイミド絶縁層を有する金属張積層板を提供する。【解決手段】金属張積層板は金属層とポリイミド絶縁層とを有する。ポリイミド絶縁層の厚みは20μm以上100μm以下であり、熱膨張係数は10ppm/K以上30ppm/K以下である。ポリイミド絶縁層は、金属層に接するポリイミド層(A)を含む。ポリイミド層(A)を構成するポリイミドは、特定の酸二無水物残基とジアミン残基とから構成され、厚みが20μm以上60μm以下の範囲内である。金属層との界面から厚み方向に0.5μm以上3.0μm以下の範囲内における平均複屈折(Δnxy-z)と、前記ポリイミドにおける全酸二無水物残基に対するPMDA残基のモル比率(X)との関係が下記式(i);TIFF2022149188000012.tif11170を満たす。【選択図】図1

Description

本発明は、電子材料分野、例えば回路基板を形成するために用いられる金属張積層板及びこれを加工してなる回路基板に関する。
近年、電子機器の小型化、軽量化、省スペース化の進展に伴い、薄く軽量で、可撓性を有し、屈曲を繰り返しても優れた耐久性を持つフレキシブル回路基板(FPC;Flexible Printed Circuit Board)の需要が増大している。FPCは、限られたスペースでも立体的かつ高密度の実装が可能であるため、例えば、HDD、DVD、携帯電話、スマートフォン等の電子機器の配線や、ケーブル、コネクター等の部品にその用途が拡大しつつある。FPCに用いる絶縁樹脂として、耐熱性や接着性に優れたポリイミドが注目されている。
FPC等の回路基板の製造に用いられる金属張積層板は、金属層と絶縁樹脂層との積層体であって、微細な回路加工が可能であり、狭い空間での曲げが可能であるため、電子機器の小型化及び軽量化に伴って、その活用が増大している。また、電気、電子機器の高性能化、高機能化に伴い、情報の高速伝送化が要求されており、FPCの材料である金属張積層板の絶縁樹脂層についても、高速伝送化に対応した電気特性を有するように、低誘電率化、低誘電正接化を図る試みがなされている。例えば特許文献1では、金属張積層板の絶縁樹脂層を構成する非熱可塑性ポリイミド層及び熱可塑性ポリイミド層のそれぞれの原料モノマー構成等を工夫することによって、誘電特性の改善を図り、高周波用回路基板への対応を図ることが提案されている。
また、近年では、150℃を超える環境でのFPCの使用も想定されるようになっている。例えば、車載用電子機器に用いられるFPCは、150℃程度の高温環境に繰り返し晒されることがある。車載用電子機器以外のデバイスについても、例えば、高速処理を行うことができるCPU(Central Processing Unit)を有するノートパソコンやスーパーコンピュータ等において、さらなる小型化、軽量化を図るためFPCの使用が増えている。このようなデバイスにおいても、CPUが発する熱により、FPCは高温環境に繰り返し晒される。高温環境での使用に起因するFPCの劣化の代表的な要因は、配線層と絶縁樹脂層との接着性の低下による配線層の浮きや剥がれである。
以上のような背景から、今後、FPCの材料である金属張積層板は、絶縁樹脂層の低誘電正接化と、高温環境下での耐熱接着性(ピール強度保持率の維持)の両立が必要になることが予想され、特に、使用環境の変化に応じて、従来よりもさらに長期間に亘って耐熱接着性の維持が要求されると考えられる。
ところで、絶縁樹脂としてポリイミドを用いる金属張積層板の製造方法として、金属箔上にポリアミド酸溶液を塗布・乾燥することを繰り返して作製した積層体を、高温で熱処理してイミド化することによって、複数のポリイミド層を形成するキャスト法が知られている。この場合、金属層に接する層を接着性の高い熱可塑性ポリイミド層とし、その上に、非熱可塑性ポリイミド層を積層した構成が一般的である。しかし、キャスト法では、溶媒の沸点を超える温度で熱処理が行われており、また、熱可塑性ポリイミド層の片側が金属層で被覆されていることから、ポリアミド酸層の乾燥状態や残溶媒量などによって、金属層に接する熱可塑性ポリイミド層と隣接する非熱可塑性ポリイミド層との間で、気化した溶媒や、イミド化によって発生した水(イミド化水)の体積膨張に起因する膨れや剥がれ、発泡などの現象(以下、「発泡等)と記す)が発生することがある。この発泡等を抑制するため、特許文献2では、フッ素原子を含む原料モノマーを用いて非熱可塑性ポリイミド層のガス透過性を高めるとともに、金属層に接する熱可塑性ポリイミド層を、350℃における貯蔵弾性率が1×10Pa以上であり、かつ、ガラス転移温度(Tg)が280℃以上のポリイミドによって形成することが提案されている。
国際公開WO2018/061727 特開2019-186534号公報
イミド化のための熱処理に伴って発生する発泡等は、金属層に接する熱可塑性ポリイミド層の溶剤透過性が、非熱可塑性ポリイミド層に比較して高いことが原因の一つであると推定される。つまり、熱可塑性ポリイミド層と非熱可塑性ポリイミド層との間の溶剤透過性差が大きいほど、発泡等が生じやすくなる。特に、低誘電正接化を目的として、特許文献1のように非熱可塑性ポリイミドの秩序構造を高め得る原料モノマーの比率を増加させた場合、分子の運動が抑制されて溶剤透過性が低下し、金属層に接する熱可塑性ポリイミド層と隣接する非熱可塑性ポリイミド層との界面に溶剤やイミド化水が滞留し、発泡等が生じやすくなると考えられる。
発泡等の発生を抑制するための一つの解決策として、金属張積層板において、金属層に、熱可塑性ポリイミド層ではなく、非熱可塑性ポリイミド層を直接積層することが有効であると考えられる。しかし、金属層/非熱可塑性ポリイミド層という積層構造とした場合、接着性の高い熱可塑性ポリイミド層が存在しないことによって、金属層と非熱可塑性ポリイミド層との接着性が低下し、回路基板の信頼性を低下させることが懸念される。この懸念事項に加えて、金属張積層板のポリイミドに対しては、寸法安定性のために低熱膨張性であることや、回路基板の信頼性保持のために低吸湿であることも求められている。
従って、本発明の目的は、低熱膨張性のポリイミド層を金属層に直接積層した構造とすることにより、製造段階での発泡等の抑制を可能としながら、低吸湿であり且つ金属層との接着性に優れたポリイミド絶縁層を有する金属張積層板を提供することである。
本発明者らは、金属張積層板の金属層と特定構造を有するポリイミド層との間の剥離界面を詳細に検討したところ、剥離がポリイミド層の金属層に非常に近接した領域で凝集破壊により生じており、凝集破壊時のピール強度がポリイミド層における金属層近傍の面配向状態と密接に関連していることに着目し、所定のピール強度を発現するには、ピロメリット酸二無水物残基の存在割合とポリイミド層における金属層近傍の面配向状態の指標となる複屈折率との間に所定の関係を満たす必要があることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明の金属張積層板は、金属層と、ポリイミド絶縁層とを有する。
前記ポリイミド絶縁層は、その厚みが20μm以上100μm以下の範囲内、その熱膨張係数が10ppm/K以上30ppm/K以下の範囲内にあり、前記金属層に接するポリイミド層(A)を含む。
前記ポリイミド層(A)を構成するポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物から誘導される酸二無水物残基と、ジアミン化合物から誘導されるジアミン残基とを含有する。ここで、前記ポリイミド層(A)を構成するポリイミドは、前記酸二無水物残基の100モル部に対して、ピロメリット酸二無水物(PMDA)から誘導される酸二無水物残基(PMDA残基)を40モル部以上90モル部以下の範囲内、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)から誘導される酸二無水物残基(BPDA残基)を10モル部以上60モル部以下の範囲内で含有し、その合計が80モル部以上である。一方、前記ポリイミド層(A)を構成するポリイミドは、前記ジアミン残基の100モル部に対して、下記の一般式(1)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を80モル部以上含有する。また、前記ポリイミドのイミド基濃度は34重量%以下である。
Figure 2022149188000002
式(1)において、連結基Xは単結合を示し、Yは独立に水素、炭素数1~3の1価の炭化水素、又はアルコキシ基を示し、nは1又は2であり、pおよびqは独立して0、1、2、3又は4の数である。
更に、本発明の金属張積層板においては、前記ポリイミド層(A)は、その厚みが20μm以上60μm以下の範囲内であるとともに、前記金属層との界面から厚み方向に0.5μm以上3.0μm以下の範囲内における平均複屈折率(Δnxy-z)と、前記ポリイミドにおける全酸二無水物残基に対するPMDA残基のモル比率(X)と、の関係が下記式(i)を満たしている。
Figure 2022149188000003
本発明の金属張積層板においては、前記ポリイミド絶縁層が、さらにポリイミド層(B)を有し、前記ポリイミド層(B)を構成するポリイミドが、テトラカルボン酸二無水物から誘導される酸二無水物残基及びジアミン化合物から誘導されるジアミン残基からなるモノマー残基を有し、前記モノマー残基100モル部に対して、-O-、-S-、-CO-、-SO-、-SO-、-CH-、-C(CH-又は-NH-から選ばれる2価の屈曲基を有するモノマー残基が20モル部以上含有してもよい。
本発明の金属張積層板においては、前記ポリイミド層(A)と前記ポリイミド層(B)の厚みの比(B/A)が0.03以上0.25以下の範囲内であってもよい。
本発明の金属張積層板においては、前記金属層の前記ポリイミド絶縁層に接する面の十点平均粗さ(Rzjis)が1.2μm以下であってもよい。
本発明の金属張積層板は、その金属層を配線に加工することにより回路基板として機能することができ、そのような回路基板も本発明の一態様である。
本発明の金属張積層板においては、金属層に接するポリイミド層(A)を構成するポリイミドが、酸二無水物残基としてPMDA残基とBPDA残基とを所定割合で含有し、ジアミン残基として式(1)のジアミン残基を特定割合で含有している。しかも、前記ポリイミド層(A)は、前記金属層との界面からポリイミド層の厚み方向に0.5μm以上3.0μm以下の範囲内における平均複屈折率(Δnxy-z)と、前記ポリイミドにおける全酸二無水物残基に対するPMDA残基のモル比率(X)との間に特定の関係性を有している。このため、製造段階での発泡等の発生が抑制されるだけでなく、前記金属層との接着性向上の両立を図ることができる。また、ポリイミド層(A)は低熱膨張性を示すため、寸法安定性に優れた回路基板を提供することができる。
本発明の実施の形態に係る金属張積層板の構成例を示す模式的断面図である。 本発明の実施の形態に係る金属張積層板の別の構成例を示す模式的断面図である。 実施例及び参考例における各PMDA残基比率(モル%)におけるΔnxy-z_0.5-3.0(X軸)とピール強度(Y軸)との関係の散布図である。 算出したΔnxy-z_0.5-3.0の数値と(Y軸)とPMDA残基比率(X軸)との関係の散布図である。
次に、本発明の実施の形態について説明する。
[金属張積層板]
本実施の形態の金属張積層板は、単層又は複数層からなるポリイミド絶縁層と、該ポリイミド絶縁層の少なくとも片側の面に設けられている金属層と、を備えている。ポリイミド絶縁層は、金属層の少なくとも一層に接しているポリイミド層(A)を含む。
図1及び図2は、本実施の形態に係る金属張積層板の構成例を示している。具体的には、図1は本発明の一実施の形態に係る金属張積層板30の概略構成を示す厚み方向の断面図であり、また、図2は、本発明の別の実施の形態に係る金属張積層板30の概略構成を示す厚み方向の断面図である。金属張積層板30は、金属層10と、この金属層10の片面に積層されたポリイミド絶縁層20と、を備えている。図1に示すように、ポリイミド絶縁層20は、単層のポリイミド層(A)21でもよいし、図2に示すように、複数層のポリイミド層(A)21及びポリイミド層(B)23からなっていてもよい。図1に示す金属張積層板30は、ポリイミド絶縁層20が、金属層10に接するポリイミド層(A)21からなる単層構造である。図2に示す金属張積層板30は、ポリイミド絶縁層20が、金属層10に接するポリイミド層(A)21と、このポリイミド層(A)21に積層されたポリイミド層(B)23からなる2層構造である。つまり、金属張積層板30の好ましい積層構造例として、金属層10とポリイミド層(A)21とがこの順に積層された構造や、金属層10とポリイミド層(A)21とポリイミド層(B)23とがこの順に積層された構造を挙げることができる。なお、金属張積層板30は、図1、図2に例示する積層構造に限るものではなく、例えば、ポリイミド絶縁層20が3層以上のポリイミド層を備えていてもよく、ポリイミド絶縁層20における金属層10とは反対側の面に別の金属層を備えていてもよい。
<ポリイミド絶縁層>
(層厚)
本発明の金属張積層板を構成するポリイミド絶縁層20の厚みは、20μm以上100μm以下、好ましくは20μm以上80μm以下である。この厚さは、図1の場合には単層のポリイミド層(A)21の厚さに相当し、図2の場合にはポリイミド層(A)21とポリイミド層(B)23との積層体の厚さに相当する。ポリイミド絶縁層20の厚みが20μmを下回ると、後述する複屈折率に関連して厚み方向でポリイミド分子の配向差を付け難く、ポリイミド絶縁層の低CTE(熱膨張係数)化と金属層10とポリイミド絶縁層20との間のピール強度発現との両立が困難になる傾向がある。逆に、100μmを超えると、ポリイミド絶縁層20の厚みムラが発生し易くなる。
(熱膨張係数)
また、ポリイミド絶縁層20の熱膨張係数(CTE)は、10ppm/K以上30ppm/K以下、好ましくは15ppm/K以上25ppm/K以下である。熱膨張係数がこの範囲であれば、ポリイミド絶縁層20の寸法変化率の制御が容易となる。ポリイミド絶縁層20の熱膨張係数(CTE)の調整は、主に、ポリイミド絶縁層20を構成するポリイミド中の酸二無水物残基やジアミン残基の種類や存在割合、イミド基割合、イミド化工程における熱処理条件によって調節することができる。
(誘電正接)
また、ポリイミド絶縁層20は、その10GHzにおける誘電正接(Tanδ)が、好ましくは0.008以下、より好ましくは0.006以下、特に好ましくは0.004以下である。これにより、ポリイミド絶縁層20を、回路基板の絶縁樹脂層として適用する場合において、高周波信号の伝送時における誘電損失を低減することができる。ポリイミド絶縁層20の誘電正接(Tanδ)は、主に、ポリイミド絶縁層20を構成するポリイミド中の酸二無水物残基やジアミン残基の種類や存在割合、イミド基割合、イミド化工程における熱処理条件によって調節することができる。
(比誘電率)
なお、ポリイミド絶縁層20は、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)により測定した10GHzにおける比誘電率が4.0以下であることが好ましい。これにより、ポリイミド絶縁層20を、回路基板の絶縁樹脂層として適用する場合において、誘電損失の悪化を抑制し、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスを抑制することができる。ポリイミド絶縁層20の比誘電率は、主に、ポリイミド絶縁層20を構成するポリイミド中の酸二無水物残基やジアミン残基の種類や存在割合、イミド基割合、イミド化工程における熱処理条件によって調節することができる。
(ポリイミド層(A))
本発明の金属張積層板を構成するポリイミド絶縁層20が含むポリイミド層(A)21を構成するポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物から誘導される酸二無水物残基と、ジアミン化合物から誘導されるジアミン残基とを含有する。
(酸二無水物残基)
ポリイミド層(A)21を構成するポリイミドが含有する前記酸二無水物残基は、その100モル部中に、ピロメリット酸二無水物(PMDA)から誘導される酸二無水物残基(PMDA残基)が40モル部以上90モル部以下、好ましくは50モル部以上80モル部以下の範囲内で含有し、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)から誘導される酸二無水物残基(BPDA残基)を10モル部以上60モル部以下、好ましくは20モル部以上50モル部以下の範囲内で含有している。
ポリイミド層(A)21を構成するポリイミドにおいて、前記酸二無水物残基100モル部中のPMDA残基含有量を40モル部以上とすることにより、高い弾性率を発現させ、金属層10とポリイミド層(A)21との間の凝集破壊によるピール強度を向上させることができる。なお、PMDA残基が90モル部を超えてしまうと、相対的にBPDA残基の含有量が10モル部未満となり、イミド基濃度低下に伴ってポリイミド層(A)21のイミド基濃度を増加させ、ポリイミド層(A)21の低吸湿性を担保することが難しくなる。
ポリイミド層(A)21を構成するポリイミドにおいて、前記酸二無水物残基100モル部中のBPDA残基含有量を10モル部以上とすることにより、吸湿率の上昇や誘電特性の悪化、吸湿半田耐熱性の低下を抑制するとともに、低熱膨張化も実現することができる。なお、60モル部を超えてしまうと、相対的にPMDA残基含有量が40モル部を下回ってしまい、ポリイミド層(A)21の弾性率の低下や秩序構造の形成を促進させ、金属層10とポリイミド層(A)21との間の凝集破壊によるピール強度を向上させることが難しくなる。また寸法変化率の制御も困難となる。
なお、ポリイミド層(A)21を構成するポリイミドは、前記酸二無水物残基100モル部中に、PMDA残基とBPDA残基とは、合計で80モル部以上、好ましくは90モル部以上含有する。80モル部を下回ると、金属箔近傍のポリイミド層(A)21の配向制御によるピール強度の向上とポリイミド層20全体の配向制御による寸法変化率の制御との両立が困難となる。
ポリイミド層(A)21を構成するポリイミドが含有する前記酸二無水物残基は、本発明の効果を損なわない範囲で、PMDA残基とBPDA残基以外の、一般にポリイミドの原料として用いられる酸二無水物から誘導される酸二無水物残基を含有することができる。そのような酸二無水物残基として、例えば、1,4-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル)二無水物(TAHQ)、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、2,2’,3,3’-、2,3,3’,4’-又は3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'-又は2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-、2,3,3',4'-又は2,2',3,3'-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニルプロパン二無水物、ビス(2,3-又は3.4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2,7,8-、1,2,6,7-又は1,2,9,10-フェナンスレン-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、2,3,5,6-シクロヘキサン二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸)-1,1-ビフェニル-4,4’-ジイル、ビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸)-2,2',3,3',5,5'-ヘキサメチルビフェニル-4,4’-ジイル、2,6-又は2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-(又は1,4,5,8-)テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-(又は2,3,6,7-)テトラカルボン酸二無水物、2,3,8,9-、3,4,9,10-、4,5,10,11-又は5,6,11,12-ペリレン-テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルメタン二無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート等の芳香族テトラカルボン酸二無水物から誘導される酸二無水物残基が挙げられる。
(ジアミン残基)
本発明の金属張積層板において、ポリイミド層(A)21を構成するポリイミドが含有する、ジアミン化合物から誘導されるジアミン残基は、その100モル部中に、下記の一般式(1)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を80モル部以上、好ましくは85モル部以上含有する。これにより、吸湿率の上昇や誘電特性の悪化を抑制するとともに、吸湿半田耐熱性の低下を抑制し、低熱膨張化についても実現することが可能となる。
Figure 2022149188000004
式(1)において、連結基Xは単結合を示し、Yは独立に水素、炭素数1、2又は3以下の1価の炭化水素、又はアルコキシ基を示し、nは1又は2であり、pおよびqは独立して0、1、2、3又は4の数を示す。式(1)のジアミン化合物の中でも、特に好ましい化合物として、2、2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニルを挙げることができる。
なお、ポリイミド層(A)21を構成するポリイミドのイミド基濃度は、34重量%以下、好ましくは31重量%以上33.5重量%以下である。ここで、「イミド基濃度」は、ポリイミド中のイミド基部(-(CO)-N-)の分子量を、ポリイミドの構造全体の分子量で除した値を意味する。イミド基濃度が34重量%を超えると、極性基の増加によってポリイミドの吸湿性が過度に増加することが懸念される。
ポリイミド層(A)21を構成するポリイミドが含有するジアミン残基は、本発明の効果を損なわない範囲で、式(1)のジアミンから誘導されるジアミン残基以外の、一般にポリイミドの原料として用いられるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を含有することができる。そのようなジアミン残基としては、1,4-ジアミノベンゼン(p-PDA;パラフェニレンジアミン)、1,3-ジアミノベンゼン(m-PDA;メタフェニレンジアミン)、4-アミノフェニル-4’-アミノベンゾエート(APAB)、3,3’-、3,4’-又は4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-、3,4’-又は4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、3,3’-、3,4’-又は4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-、3,4’-又は4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-、3,4’-又は4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-、3,4’-又は4,4’-ジアミノベンゾフェノン、(3,3’-ビスアミノ)ジフェニルアミン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼンアミン、3-[3-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼンアミン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-Q)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、4,4’-[2-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、4,4’-[4-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、4,4’-[5-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、ビス[4,4’-(3-アミノフェノキシ)]ベンズアニリド、4-[3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]フェノキシ]アニリン、4,4’-[オキシビス(3,1-フェニレンオキシ)]ビスアニリン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル(BAPE)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン(BAPK)、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、9,9-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、2,2-ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-メチレンジ-o-トルイジン、4,4’-メチレンジ-2,6-キシリジン、4,4’-メチレン-2,6-ジエチルアニリン、3,3’-ジアミノジフェニルエタン、3,3’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシベンジジン、3,3''-ジアミノ-p-テルフェニル、4,4’-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p-β-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-β-メチル-δ-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(2-メチル-4-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(1,1-ジメチル-5-アミノペンチル)ベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,4-ビス(β-アミノ-t-ブチル)トルエン、2,4-ジアミノトルエン、m-キシレン-2,5-ジアミン、p-キシレン-2,5-ジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノ-1,3,4-オキサジアゾール、ピペラジン、2’-メトキシ-4,4’-ジアミノベンズアニリド、4,4’-ジアミノベンズアニリド、1,3-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)-2,5-ジ-tert-ブチルベンゼン、6-アミノ-2-(4-アミノフェノキシ)ベンゾオキサゾール、2,6-ジアミノ-3,5-ジエチルトルエン、2,4-ジアミノ-3,5-ジエチルトルエン、2,4-ジアミノ-3,3’-ジエチル-5,5’-ジメチルジフェニルメタン、ビス(4-アミノ-3-エチル-5-メチルフェニル)メタン等の芳香族ジアミン化合物から誘導されるジアミン残基、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級のアミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマー酸型ジアミン等の脂肪族ジアミン化合物から誘導されるジアミン残基などが挙げられる。
ポリイミド層(A)21の厚みは、20μm以上60μm以下、好ましくは20μm以上50μm以下である。この範囲を下回ると、後述する複屈折率に関連して厚み方向でポリイミド分子の配向差を付け難く、ポリイミド絶縁層の低CTE(熱膨張係数)化と金属層10とポリイミド絶縁層20との間のピール強度発現との両立が困難になる傾向がある。逆に、この範囲を超えると、ポリイミド絶縁層20の厚みムラが発生し易くなる。
(ポリイミド層(A)の金属層近傍の複屈折率)
一般に、ポリイミド分子の面内配向性が高まると、ポリイミド分子鎖間の絡み合いが減少し、平均複屈折率(Δnxy-z)が高くなるため、ポリイミド絶縁層20と金属層10との間のピール強度が低下する傾向がある。逆に、ポリイミド分子の面内配向性が低下すると、ポリイミド分子鎖間の絡み合いが増大し、平均複屈折率(Δnxy-z)が減少するため、ポリイミド絶縁層20と金属層10との間のピール強度が増大する傾向がある。他方、ポリイミド中のPMDA残基のモル%が増大するほど、平均複屈折率(Δnxy-z)が減少する傾向がある。ここで、Δnxy-zは、ポリイミド層(A)21の平面(XY)方向の屈折率と厚み(Z)方向の屈折率の差を意味する。
また、金属層10とポリイミド層(A)21との間を剥離する力を加えた場合に、金属層10との界面から厚み方向に0.5μm以上3μm以下の範囲内に応力が集中するため、一定以上のポリイミド分子鎖間の絡み合いを担保することでピール強度を向上させることが可能となる。
以上のことから、本発明の金属張積層板を構成するポリイミド絶縁層20が含むポリイミド層(A)21においては、ポリイミド層(A)21を構成するポリイミドにおける全酸二無水物残基に対するPMDA残基のモル比率(X)と、金属層10との界面から厚み方向に0.5μm以上3.0μm以下の範囲内におけるポリイミド分子の配向の指標となる平均複屈折率(Δnxy-z)との間に、以下の式(i)を満たすことが必要となる。
Figure 2022149188000005
式(i)の直接的な意味は、金属層10とポリイミド層(A)21との間に所期のピール強度(例えば、ピール強度0.8kN/m以上)を実現するためには、ポリイミド層(A)21を構成するポリイミド中の全酸二無水物残基中のPMDA残基の存在割合をX[モル%]としたとき、金属層10との界面から厚み方向に0.5μm以上3.0μm以下の範囲内におけるポリイミド層(A)21の平均複屈折率(Δnxy-z)の測定値が、式(i)を少なくとも満たす必要があることを示している。この式(i)の導出は、後述する実施例の欄で詳細に説明する。なお、ピール強度が0.8kN/m未満であると、金属層を配線加工した際に、ポリイミド絶縁層20との間の接着性が不満足なものになることが懸念される。
ポリイミド層(A)21において、金属層10との界面から厚み方向に0.5μm以上3.0μm以下の範囲内における平均複屈折率(Δnxy-z_0.5-3.0)を制御する手段として、例えば、ポリイミド層(A)21を構成するポリイミドの前駆体であるポリアミド酸をイミド化するための熱処理条件、金属箔へのポリアミド酸の塗布厚み制御、ポリアミド酸へのフィラー添加などを利用することが可能である。
ポリイミド層(A)21を構成するポリイミドの重量平均分子量は、例えば10,000以上400,000以下の範囲内が好ましく、50,000以上350,000以下の範囲内がより好ましい。重量平均分子量が10,000未満であると、フィルムの強度が低下して脆化しやすい傾向となる。一方、重量平均分子量が400,000を超えると、過度に粘度が増加して塗工作業の際にフィルム厚みムラ、スジ等の不良が発生しやすい傾向になる。
(ポリイミド層(B))
本発明の金属張積層板を構成するポリイミド絶縁層20は、ポリイミド層(A)21の他に、ポリイミド層(B)23を有することができる。
ポリイミド層(B)23を構成するポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物から誘導される酸二無水物残基とジアミン化合物から誘導されるジアミン残基とを有する(以下、酸二無水物残基とジアミン残基とを合わせてモノマー残基と称することがある)。これらのモノマー残基は、ポリイミド層(B)23が任意の層であることから、モノマー残基の種類や構成残基間比率は特に限定されない。従って、ポリイミド層(B)23を構成するポリイミドが有するモノマー残基として、ポリイミド層(A)21を構成するポリイミドが有するポリマー残基の中から適宜選択したものを採用することできる。
但し、ポリイミド層(B)23を構成するポリイミドにおいては、前記モノマー残基100モル部に対して、-O-、-S-、-CO-、-SO-、-SO-、-CH-、-C(CH-又は-NH-から選ばれる2価の屈曲基を有するモノマー残基を20モル部以上、好ましくは30モル部以上含有する。これにより、ポリイミド層(B)23を高熱膨張性とすることができ、ポリイミド層(A)21の層厚方向におけるポリイミドの配向差によりフィルムカールが生ずることを抑制することができる。
このような、-O-、-S-、-CO-、-SO-、-SO-、-CH-、-C(CH-又は-NH-から選ばれる2価の屈曲基を有するモノマー残基のうち、酸二無水物残基の具体例としては、例えば3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,4’ -又は4,4’-オキシジフタル酸二無水物、2,2’,3,3’-、2,3,3’,4’-又は3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、2,2-ビス[4-(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル])-プロパン二無水物、ビス(2,3-又は3.4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-又は3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルメタン二無水物から誘導される酸二無水物残基などを挙げることができる。
また、このような、-O-、-S-、-CO-、-SO-、-SO-、-CH-、-C(CH-又は-NH-から選ばれる2価の屈曲基を有するモノマー残基のうち、ジアミン残基の具体例としては、例えば3,3’-、3,4’-又は4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-、3,4’-又は4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、3,3’-、3,4’-又は4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-、3,4’-又は4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-、3,4’-又は4,4’-ジアミノベンゾフェノン、(3,3’-ビスアミノ)ジフェニルアミン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼンアミン、3-[3-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼンアミン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-Q)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、4,4’-[2-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、4,4’-[4-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、4,4’-[5-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、4-[3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]フェノキシ]アニリン、4,4’-[オキシビス(3,1-フェニレンオキシ)]ビスアニリン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル(BAPE)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン(BAPK)、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、9,9-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、2,2-ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス-[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’-メチレンジ-o-トルイジン、4,4’-メチレンジ-2,6-キシリジン、4,4’-メチレン-2,6-ジエチルアニリン、3,3’-ジアミノジフェニルエタン、4,4’-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p-β-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、1,3-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)-2,5-ジ-tert-ブチルベンゼン、2,6-ジアミノ-3,5-ジエチルトルエン、2,4-ジアミノ-3,5-ジエチルトルエン、2,4-ジアミノ-3,3’-ジエチル-5,5’-ジメチルジフェニルメタン、ビス(4-アミノ-3-エチル-5-メチルフェニル)メタン等のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を挙げることができる。
なお、ポリイミド層(B)23を構成するポリイミド中のイミド基濃度は、好ましくは30重量%以下である。イミド基濃度が30重量%を超えると、ガラス転移温度以上の温度での弾性率が低下しにくくなり、また極性基の増加によって低吸湿性も悪化する。
また、ポリイミド層(B)23を構成するポリイミドの重量平均分子量は、好ましくは10,000以上400,000以下の範囲内、より好ましくは50,000以上350,000以下の範囲内である。重量平均分子量がこの範囲を下回ると、フィルムの強度が低下して脆化しやすい傾向となり、上回ると、過度に粘度が増加して塗工作業の際にフィルム厚みムラ、スジ等の不良が発生しやすい傾向になる。
(ポリイミド層(A)とポリイミド層(B)との厚み比)
本発明の金属張積層板において、ポリイミド絶縁層20が、ポリイミド層(A)21とポリイミド層(B)23との積層体である場合、ポリイミド層(A)21とポリイミド層(B)23の厚みの比[B/A]は、好ましくは0.03以上0.25以下、より好ましくは0.04以上0.2以下である。厚みの比[B/A]が前述の範囲を下回るとフィルムカールの抑制が困難となり、上回るとポリイミド絶縁層20の低熱膨張化が困難となる。
なお、以上説明したポリイミド絶縁層20は、必要に応じて、ポリイミド層(A)21又はポリイミド層(B)23中に、無機フィラーや有機フィラーを含有してもよい。具体的には、例えば二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム等の無機フィラーやフッ素系ポリマー粒子や液晶ポリマー粒子等の有機フィラーが挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。
(金属層)
本発明の金属張積層板を構成する金属層10としては、特に制限はないが、例えば、銅、ステンレス、鉄、ニッケル、ベリリウム、アルミニウム、亜鉛、インジウム、銀、金、スズ、ジルコニウム、タンタル、チタン、鉛、マグネシウム、マンガン及びこれらの合金等が挙げられる。この中でも、特に銅又は銅合金が好ましい。なお、後述する回路基板における配線層の材質も金属層10と同様である。
金属層10の厚みは特に限定されるものではないが、例えば銅箔に代表される金属箔を用いる場合、好ましくは35μm以下であり、より好ましくは5μm以上25μm以下の範囲内がよい。生産安定性及びハンドリング性の観点から金属箔の厚みの下限値は5μmとすることが好ましい。なお、銅箔を用いる場合は、圧延銅箔でも電解銅箔でもよい。また、銅箔としては、市販されている銅箔を用いることができる。
また、金属層10のポリイミド層(A)21に接する面における十点平均粗さ(Rzjis)は、1.2μm以下であることが好ましく、1.0μm以下であることがより好ましい。金属層10が金属箔を原料とする場合、表面粗さRzjisを1.2μm以下にすることで、高密度実装に対応する微細配線加工が可能となり、また、高周波信号伝送時の導体損失を低減できるため、高周波信号伝送用の回路基板への適用が可能となる。
また、金属箔は、例えば、防錆処理や、接着力の向上を目的として、例えばサイディング、アルミニウムアルコラート、アルミニウムキレート、シランカップリング剤等による表面処理を施しておいてもよい。
<金属張積層板の製造方法>
本発明の金属張積層板30は、常法に従って製造することができ、例えば、以下の[1]、[2]の方法を例示することができる。
[1]金属層10となる金属箔に、ポリアミド酸溶液を塗布・乾燥することを、1回もしくは複数回繰り返した後、イミド化してポリイミド絶縁層20を形成した金属張積層板30を製造する方法。
[2]金属層10となる金属箔に、多層押出により同時にポリアミド酸溶液を多層に積層した状態で塗布・乾燥した後、イミド化を行うことによってポリイミド絶縁層20を形成した金属張積層板30を製造する方法(以下、多層押出法)。
上記[1]の方法は、例えば、次の工程(1a)、(1b);
(1a)金属箔にポリアミド酸溶液を塗布し、乾燥させる工程と、
(1b)金属箔上でポリアミド酸を熱処理してイミド化することによりポリイミド絶縁層20を形成する工程と、
を含むことができる。この場合、工程(1a)の乾燥工程における加熱条件と、特に工程(1b)のイミド化の際の加熱条件を調整することにより、ポリイミドの面内配向をコントロールして、ポリイミドの複屈折率やCTEなどの特性を制御することが可能になる。
上記[1]の方法において、ポリイミド層(A)を構成するポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液と、ポリイミド層(B)を構成するポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液について、工程(1a)を繰り返し行うことによって、金属箔上にポリアミド酸の積層構造体を形成することができる。なお、ポリアミド酸溶液を金属箔上に塗布する方法としては特に制限されず、例えばコンマ、ダイ、ナイフ、リップ等のコーターにて塗布することが可能である。
上記[2]の方法は、上記[1]の方法の工程(1a)において、多層押出により、ポリイミド層(A)を構成するポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液と、ポリイミド層(B)を構成するポリイミドの前駆体のポリアミド酸溶液を同時に塗布し、乾燥させる以外は、上記[1]の方法と同様に実施できる。
このように製造される金属張積層板30は、金属箔上でポリアミド酸のイミド化を完結させることによって、ポリアミド酸の樹脂層が金属箔に固定された状態でイミド化されるので、イミド化過程におけるポリイミド絶縁層20の伸縮変化を抑制して、ポリイミド絶縁層20の厚みや寸法精度を維持することができる。
<回路基板>
金属張積層板30は、主にFPCなどの回路基板材料として有用である。金属張積層板30の金属層10を常法によってパターン状に加工して配線層を形成することによって、本発明の実施の一形態である回路基板を製造できる。すなわち、本発明の金属張積層板の金属層が配線に加工されている回路基板も本発明の一態様となる。
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
[粘度の測定]
E型粘度計(ブルックフィールド社製、商品名;DV-II+Pro)を用いて、25℃における粘度を測定した。トルクが10%~90%になるよう回転数を設定し、測定を開始してから2分経過後、粘度が安定した時の値を読み取った。
[ガラス転移温度の測定]
ガラス転移温度は、5mm×70mmのサイズのポリイミドフィルムを、動的粘弾性測定装置(DMA:TAインスツルメント社製、商品名;RSA G2)を用いて、30℃から400℃まで昇温速度4℃/分、周波数10GHzで測定を行い、弾性率変化(Tanδ)が最大となる温度をガラス転移温度とした。
[熱膨張係数(CTE)の測定]
3mm×20mmのサイズのポリイミドフィルムを、サーモメカニカルアナライザー(日立ハイテクテクノロジー社(旧セイコーインスツルメンツ社製)、(商品名;TMA/SS6100)を用い、5.0gの荷重を加えながら一定の昇温速度で30℃から260℃まで昇温させ、更にその温度で10分保持した後、5℃/分の速度で冷却し、250℃から100℃までの平均熱膨張係数(熱膨張係数)を求めた。実用上10ppm/K以上30ppm/K以下であることが求められている。
[比誘電率及び誘電正接の測定]
ベクトルネットワークアナライザ(Agilent社製、商品名;E8363C)及びスプリットポスト誘電体共振器(SPDR共振器)を用いて、周波数10GHzにおけるポリイミドフィルムの比誘電率および誘電正接を測定した。なお、測定に使用した材料は、温度;24~26℃、湿度;45~55%の条件下で、24時間放置したものである。実用上、誘電正接は0.004以下、比誘電率は4.0以下であることが求められている。
[銅箔の表面粗度の測定]
銅箔の表面粗度は、AFM(ブルカー・エイエックスエス社製、商品名;Dimension Icon型SPM)、プローブ(ブルカー・エイエックスエス社製、商品名;TESPA(NCHV)、先端曲率半径10nm、ばね定数42N/m)を用いて、タッピングモードで、銅箔表面の80μm×80μmの範囲で測定し、十点平均粗さ(Rzjis)を求めた。実用上1.2μm以下であることが求められている。
[ピール強度の測定]
銅張積層板(銅箔/多層ポリイミド層)の銅箔を10mm間隔で樹脂の塗工方向に幅1mmに回路加工した後、幅;8cm×長さ;4cmに切断した。ピール強度は、テンシロンテスター(東洋精機製作所社製、商品名;ストログラフVE-1D)を用いて、切断した測定サンプルのポリイミド層面を両面テープによりアルミ板に固定し、回路加工された銅箔を180°方向に50mm/分の速度で剥離していき、ポリイミド層から10mm剥離したときの中央値強度を求め、初期ピール強度とした。実用上0.8kN/m以上であることが求められている。
[ポリイミド層の厚みの測定]
銅張積層板について、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去して、ポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムを短冊状に切り出し、樹脂包埋した後、ミクロトームにてフィルム厚み方向の切断を行い約100nmの超薄切片を作製した。作製した超薄切片について、日立ハイテクテクノロジー社製SEM(SU9000)のSTEM機能を用いて、加速電圧30kVで観察を行い、ポリイミド各層の厚みを各5点測定し、その平均値を各ポリイミド層の厚みとし、各層の和を多層ポリイミドフィルムの厚みとした。
[銅箔からの厚み方向距離0.5-3.0(μm)の平均複屈折率(Δnxy-z_0.5-3.0)]
多層ポリイミドフィルムをエポキシ樹脂(ビューラー社製エポキシキュア主剤と硬化剤)に含侵させ、脱気後に35℃、5時間の条件で硬化・包埋した。次にウルトラミクロトーム(ライカマイクロシステムズ社製EM UC6)を用いて、ガラスナイフでのエポキシ樹脂部分のトリミングを行い、サンプルサイズを縦300μm、横50μm程度のサイズにした。次にトリミング後のサンプルについて、多層ポリイミドフィルムの厚み方向への切削を行った。この際ボード内に蒸留水を入れたダイヤモンドナイフボート(DiATOME社製ultra 35°)を使用し、切削厚さ500nm、切削速度0.8mm/secに設定を行った。
次に水面上に浮かんだ切削後のサンプルをアセトンで超音波洗浄したカバーガラス上にすくい取った後に、顕微鏡型複屈折率計(フォトニックラティス社、WPA-micro)を用いて、多層ポリイミドフィルム断面のリタデーションの測定を行った。この際、干渉縞抑制のためにサンプル上に屈折液(n=1.58)を滴下後に、ポリイミドフィルム厚み100nm毎に1点の測定を実施する操作を多層ポリイミドフィルム全厚みに対して行った。この操作を同一サンプルで測定位置をずらして計5回行った後に、断面厚み100nm毎のリタデーションの平均値を算出した。
算出したリタデーションの平均値を切削厚さで除することで、100nm毎の複屈折率(Δnxy-z)を算出した。このうち、多層ポリイミドフィルムの銅箔エッチング面から0.5μmから3.0μmのΔnxy-zの平均値をΔnxy-z_0.5-3.0とした。ここで、“Δnxy-z”は多層フィルムの平面(xy)方向の屈折率と厚み(z)方向の屈折率の差を意味する。本発明では、全酸二無水物残基中のPMDA残基の存在量をXモル%としたとき、式(i)「(Δnxy-z)≦-0.00153×X+0.22469」から、PMDA残基50モル%の場合にはΔnxy-z_0.5-3.0の値が0.14819以下、65モル%の場合にはΔnxy-z_0.5-3.0の値が0.12524以下、80モル%の場合にはΔnxy-z_0.5-3.0の値が0.10229以下であれば所定のピール強度(0.8kN/m)を発現すると判断できる。
なお、多層ポリイミドフィルムの切削厚みは、カバーガラス上にすくい取った切削後のサンプルとカバーガラスとの段差を原子間力顕微鏡(ブルカー社、Dimension Icon)で測定することにより測定した。
[銅張積層板の発泡確認]
得られた銅張積層板の外観を目視で観察した際に発泡が生じるか確認を実施した。
実施例及び参考例で用いた略号は、以下の化合物を示す。
PMDA:ピロメリット酸二無水物
BPDA:3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
BTDA:3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
m-TB:2,2'-ジメチル‐4,4'-ジアミノビフェニル
TPE-R:1,3-ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン
BAPP:2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
DMAc:N,N-ジメチルアセトアミド
(合成例1)
窒素気流下で、5000mlのセパラブルフラスコに、223.126gのm-TB(1.0510モル)及び22.709gのBAPP(0.0553モル)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、118.850gのPMDA(0.5449モル)及び160.316gのBPDA(0.5449モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液1を得た。ポリアミド酸溶液1の溶液粘度は26,500cpsであった。
次に、銅箔1の上に、ポリアミド酸溶液1を硬化後の厚みが約25μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、120℃から360℃まで段階的な熱処理を10分以内で行い、イミド化を完結した。得られた銅張積層板について、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去して、ポリイミドフィルム1(Tg;303℃、引張弾性率;8.1GPa、吸湿率;0.59重量%)を作製した。このポリイミドフィルム1を構成するポリイミドのイミド基濃度は31.6重量%であった。また、ポリイミドの全酸二無水物残基中のPMDA残基の含有量は50モル%であった。
(合成例2)
窒素気流下で、5000mlのセパラブルフラスコに、228.541gのm-TB(1.0766モル)及び23.260gのBAPP(0.0567モル)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、158.255gのPMDA(0.7255モル)及び114.944gのBPDA(0.3907モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液2を得た。ポリアミド酸溶液2の溶液粘度は33,000cpsであった。
次に、銅箔1の上に、ポリアミド酸溶液2を硬化後の厚みが約25μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、120℃から360℃まで段階的な熱処理を10分以内で行い、イミド化を完結した。得られた銅張積層板について、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去して、ポリイミドフィルム2(Tg;346℃、引張弾性率;9.1GPa、吸湿率;0.74重量%)を作製した。このポリイミドフィルム2を構成するポリイミドのイミド基濃度は32.5重量%であった。また、ポリイミドの全酸二無水物残基中のPMDA残基の含有量は65モル%であった。
(合成例3)
窒素気流下で、5000mlのセパラブルフラスコに、201.011gのm-TB(0.9469モル)、23.865gのBAPP(0.0557モル)及び32.5646gのTPE-R(0.1114モル)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、155.567gのPMDA(0.7132モル)及び112.992gのBPDA(0.3840モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液3を得た。ポリアミド酸溶液3の溶液粘度は30,600cpsであった。
次に、銅箔1の上に、ポリアミド酸溶液3を硬化後の厚みが約25μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、120℃から360℃まで段階的な熱処理を10分以内で行い、イミド化を完結した。得られた銅張積層板について、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去して、ポリイミドフィルム3(Tg;335℃、引張弾性率;8.3GPa、吸湿率;0.63重量%)を作製した。このポリイミドフィルム3を構成するポリイミドのイミド基濃度は31.9重量%であった。また、ポリイミドの全酸二無水物残基中のPMDA残基の含有量は65モル%であった。
(合成例4)
窒素気流下で、5000mlのセパラブルフラスコに、226.518gのm-TB(1.0670モル)、23.054gのBAPP(0.0562モル)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、156.853gのPMDA(0.7191モル)、65.101gのBPDA(0.2213モル)及び53.474gのBTDA(0.1659モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液4を得た。ポリアミド酸溶液4の溶液粘度は32,400cpsであった。
次に、銅箔1の上に、ポリアミド酸溶液4を硬化後の厚みが約25μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、120℃から360℃まで段階的な熱処理を10分以内で行い、イミド化を完結した。得られた銅張積層板について、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去して、ポリイミドフィルム4(Tg;351℃、引張弾性率;8.7GPa、吸湿率;0.75重量%)を作製した。このポリイミドフィルム4を構成するポリイミドのイミド基濃度は32.2重量%であった。また、ポリイミドの全酸二無水物残基中のPMDA残基の含有量は65モル%であった。
(合成例5)
窒素気流下で、5000mlのセパラブルフラスコに、234.226gのm-TB(1.1033モル)、23.838gのBAPP(0.0581モル)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、199.620gのPMDA(0.9152モル)及び67.316gのBPDA(0.2288モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液5を得た。ポリアミド酸溶液5の溶液粘度は41,700cpsであった。
次に、銅箔1の上に、ポリアミド酸溶液5を硬化後の厚みが約25μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、120℃から360℃まで段階的な熱処理を10分以内で行い、イミド化を完結した。得られた銅張積層板について、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去して、ポリイミドフィルム5(Tg;381℃、引張弾性率;9.4GPa、吸湿率;0.96重量%)を作製した。このポリイミドフィルム5を構成するポリイミドのイミド基濃度は33.4重量%であった。また、ポリイミドの全酸二無水物残基中のPMDA残基の含有量は80モル%であった。
(合成例6)
窒素気流下で、5000mlのセパラブルフラスコに、217.961gのm-TB(1.0267モル)、22.183gのBAPP(0.0540モル)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、81.269gのPMDA(0.3726モル)及び203.586gのBPDA(0.6920モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液6を得た。ポリアミド酸溶液6の溶液粘度は27,500cpsであった。
次に、銅箔1の上に、ポリアミド酸溶液6を硬化後の厚みが約25μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、120℃から360℃まで段階的な熱処理を10分以内で行い、イミド化を完結した。得られた銅張積層板について、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去して、ポリイミドフィルム6(Tg;287℃、引張弾性率;6.7GPa、吸湿率;0.53重量%)を作製した。このポリイミドフィルム6を構成するポリイミドのイミド基濃度は30.9重量%であった。また、ポリイミドの全酸二無水物残基中のPMDA残基の含有量は35モル%であった。
(合成例7)
窒素気流下で、5000mlのセパラブルフラスコに、32.318gのm-TB(0.1522モル)及び178.010gのTPE-R(0.6089モル)並びに重合後の固形分濃度が12重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、50.555gのPMDA(0.2318モル)及び159.117gのBPDA(0.5408モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液7を得た。ポリアミド酸溶液7の溶液粘度は2,250cpsであった。
次に、銅箔1の上に、ポリアミド酸溶液7を硬化後の厚みが約10μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、120℃から360℃まで段階的な熱処理を10分以内で行い、イミド化を完結した。得られた銅張積層板について、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去して、ポリイミドフィルム7(Tg;226℃、吸湿率;0.41重量%)を作製した。このポリイミドフィルム7を構成するポリイミドのイミド基濃度は27.4重量%であった。また、ポリイミドの全酸二無水物残基中のPMDA残基の含有量は30モル%であった。
[実施例1]
銅箔1上に、銅箔と接するポリイミド層(A)としてポリアミド酸溶液1を硬化後の厚みが27.5μmとなるように均一に塗布した後、120℃で2分間加熱乾燥して溶媒を除去した。ポリイミド層(A)上にポリイミド層(B)であるポリアミド酸溶液7を硬化後の厚みが2.5μmとなるように均一に塗布した後、120℃で1分間加熱乾燥して溶媒を除去した。この際、ポリアミド酸の塗布、加熱処理に用いた上記工程を第1の熱処理工程とした。
その後、145℃から360℃まで段階的な熱処理を行うことでイミド化を完結させる第2の熱処理工程を得て、銅張積層板a-1を作製した。この際、第2の熱処理工程はトータル熱処理時間を10分、トータル熱処理時間に対する熱処理開始温度から145℃の熱処理時間割合を20%とした(熱処理条件1)。
表1に示すように、得られた銅張積層板a-1を用いて初期ピール強度を測定した結果、0.91kN/mであり、銅箔からの厚み方向の距離0.5μmから3.0μm間のポリイミド層の複屈折率(Δnxy-z)は0.137であった。また外観観察をした結果、発泡は見られなかった。なお、ポリイミド層(A)のイミド基濃度は31.6重量%であり、また、ポリイミドの全酸二無水物残基中のPMDA残基の含有量は50モル%であった。
更に、銅張積層板a-1について、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去して、多層ポリイミドフィルムa-1を得た。得られた多層ポリイミドフィルムa-1について、CTE及び誘電特性の評価を実施した結果、CTE;26.7ppm/K、比誘電率;3.45、誘電正接;0.0033であった。
[実施例2]
第2の熱処理工程が、140℃から360℃まで段階的な熱処理であり、トータル熱処理時間に対する熱処理開始温度から145℃の熱処理時間割合を20%としたこと(熱処理条件2)以外は、実施例1と同様に銅張積層板、多層ポリイミドフィルムの作製を行い、銅張積層板a-2並びに多層ポリイミドフィルムa-2を得た。
表1に示すように、得られた銅張積層板a-2を用いて初期ピール強度を測定した結果、0.88kN/mであり、銅箔からの厚み方向の距離0.5μmから3.0μm間のポリイミド層の複屈折率(Δnxy-z)は0.140であった。また外観観察をした結果、発泡は見られなかった。ポリイミド層(A)のイミド基濃度は31.6重量%であり、また、ポリイミドの全酸二無水物残基中のPMDA残基の含有量は50モル%であった。
更に、銅張積層板a-2について、塩化第二鉄水溶液を用いて銅箔をエッチング除去して、多層ポリイミドフィルムa-2を得た。得られた多層ポリイミドフィルムa-2について、CTE及び誘電特性の評価を実施した結果、CTE;26.5ppm/K、比誘電率;3.44、誘電正接;0.0033であった。
[実施例3]
第2の熱処理工程が、135℃から360℃まで段階的な熱処理であり、トータル熱処理時間に対する熱処理開始温度から145℃の熱処理時間割合を30%としたこと(熱処理条件3)以外は、実施例1と同様に銅張積層板、多層ポリイミドフィルムの作製を行い、銅張積層板a-3並びに多層ポリイミドフィルムa-3を得た。
表1に示すように、得られた銅張積層板a-3を用いて初期ピール強度を測定した結果、1.03kN/mであり、銅箔からの厚み方向の距離0.5μmから3.0μm間のポリイミド層の複屈折率(Δnxy-z)は0.123であった。また外観観察をした結果、発泡は見られなかった。ポリイミド層(A)のイミド基濃度は31.6重量%であり、また、ポリイミドの全酸二無水物残基中のPMDA残基の含有量は50モル%であった。
[実施例4]
ポリイミド層(A)の硬化後の厚みを20.0μmとなるようにしたこと以外は、実施例1と同様に銅張積層板、多層ポリイミドフィルムの作製を行い、銅張積層板a-4並びに多層ポリイミドフィルムa-4を得た。
表1に示すように、得られた銅張積層板a-4を用いて初期ピール強度を測定した結果、0.86kN/mであり、銅箔からの厚み方向の距離0.5μmから3.0μm間のポリイミド層の複屈折率(Δnxy-z)は0.142であった。また外観観察をした結果、発泡は見られなかった。ポリイミド層(A)のイミド基濃度は31.6重量%であり、また、ポリイミドの全酸二無水物残基中のPMDA残基の含有量は50モル%であった。
[実施例5]
ポリイミド層(A)の硬化後の厚みを47.5μmとなるようにしたこと、また第2の熱処理工程が、135℃から360℃まで段階的な熱処理であり、トータル熱処理時間を20分、トータル熱処理時間に対する熱処理開始温度から145℃の熱処理時間割合を30%としたこと(熱処理条件4)以外は、実施例1と同様に銅張積層板、多層ポリイミドフィルムの作製を行い、銅張積層板a-5並びに多層ポリイミドフィルムa-5を得た。
表1に示すように、得られた銅張積層板a-5を用いて初期ピール強度を測定した結果、0.87kN/mであり、銅箔からの厚み方向の距離0.5μmから3.0μm間のポリイミド層の複屈折率(Δnxy-z)は0.141であった。また外観観察をした結果、発泡は見られなかった。ポリイミド層(A)のイミド基濃度は31.6重量%であり、また、ポリイミドの全酸二無水物残基中のPMDA残基の含有量は50モル%であった。
[実施例6]
ポリイミド層(A)としてポリアミド酸溶液2を使用したこと以外は、実施例1と同様に銅張積層板、多層ポリイミドフィルムの作製を行い、銅張積層板b-1並びに多層ポリイミドフィルムb-1を得た。
表1に示すように、得られた銅張積層板b-1を用いて初期ピール強度を測定した結果、0.81kN/mであり、銅箔からの厚み方向の距離0.5μmから3.0μm間のポリイミド層の複屈折率(Δnxy-z)は0.125であった。また外観観察をした結果、発泡は見られなかった。ポリイミド層(A)のイミド基濃度は32.5重量%であり、また、ポリイミドの全酸二無水物残基中のPMDA残基の含有量は65モル%であった。
[実施例7]
第2の熱処理工程として熱処理条件3を用いたこと以外は、実施例6と同様に銅張積層板、多層ポリイミドフィルムの作製を行い、銅張積層板b-2並びに多層ポリイミドフィルムb-2を得た。
表2に示すように、得られた銅張積層板b-2を用いて初期ピール強度を測定した結果、0.99kN/mであり、銅箔からの厚み方向の距離0.5μmから3.0μm間のポリイミド層の複屈折率(Δnxy-z)は0.108であった。また外観観察をした結果、発泡は見られなかった。ポリイミド層(A)のイミド基濃度は32.5重量%であり、また、ポリイミドの全酸二無水物残基中のPMDA残基の含有量は65モル%であった。
[実施例8]
ポリイミド層(A)としてポリアミド酸溶液3を使用したこと以外は、実施例7と同様に銅張積層板、多層ポリイミドフィルムの作製を行い、銅張積層板c-1並びに多層ポリイミドフィルムc-1を得た。
表2に示すように、得られた銅張積層板c-1を用いて初期ピール強度を測定した結果、0.84kN/mであり、銅箔からの厚み方向の距離0.5μmから3.0μm間のポリイミド層の複屈折率(Δnxy-z)は0.123であった。また外観観察をした結果、発泡は見られなかった。ポリイミド層(A)のイミド基濃度は31.9重量%であり、また、ポリイミドの全酸二無水物残基中のPMDA残基の含有量は65モル%であった。
[実施例9]
ポリイミド層(A)としてポリアミド酸溶液4を使用したこと以外は、実施例7と同様に銅張積層板、多層ポリイミドフィルムの作製を行い、銅張積層板d-1並びに多層ポリイミドフィルムd-1を得た。
表2に示すように、得られた銅張積層板d-1を用いて初期ピール強度を測定した結果、1.01kN/mであり、銅箔からの厚み方向の距離0.5μmから3.0μm間のポリイミド層の複屈折率(Δnxy-z)は0.106であった。また外観観察をした結果、発泡は見られなかった。ポリイミド層(A)のイミド基濃度は32.2重量%であり、また、ポリイミドの全酸二無水物残基中のPMDA残基の含有量は65モル%であった。
[実施例10]
ポリイミド層(A)としてポリアミド酸溶液5を使用したこと以外は、実施例7と同様に銅張積層板、多層ポリイミドフィルムの作製を行い、銅張積層板e-1並びに多層ポリイミドフィルムe-1を得た。
表2に示すように、得られた銅張積層板e-1を用いて初期ピール強度を測定した結果、0.87kN/mであり、銅箔からの厚み方向の距離0.5μmから3.0μm間のポリイミド層の複屈折率(Δnxy-z)は0.095であった。また外観観察をした結果、発泡は見られなかった。ポリイミド層(A)のイミド基濃度は33.4重量%であり、また、ポリイミドの全酸二無水物残基中のPMDA残基の含有量は80モル%であった。
[実施例11]
第2の熱処理工程が、140℃から360℃まで段階的な熱処理であり、トータル熱処理時間を10分、トータル熱処理時間に対する熱処理開始温度から145℃の熱処理時間割合を30%としたこと(熱処理条件5)以外は、実施例10と同様に銅張積層板、多層ポリイミドフィルムの作製を行い、銅張積層板e-2並びに多層ポリイミドフィルムe-2を得た。
表2に示すように、得られた銅張積層板e-2を用いて初期ピール強度を測定した結果、0.81kN/mであり、銅箔からの厚み方向の距離0.5μmから3.0μm間のポリイミド層の複屈折率(Δnxy-z)は0.100であった。また外観観察をした結果、発泡は見られなかった。ポリイミド層(A)のイミド基濃度は33.4重量%であり、また、ポリイミドの全酸二無水物残基中のPMDA残基の含有量は80モル%であった。
(参考例1)
第2の熱処理工程が、155℃から360℃まで段階的な熱処理であり、トータル熱処理時間を10分としたこと(熱処理条件6)以外は、実施例1と同様に銅張積層板、多層ポリイミドフィルムの作製を行い、銅張積層板a-6並びに多層ポリイミドフィルムa-6を得た。
表2に示すように、得られた銅張積層板a-6を用いて初期ピール強度を測定した結果、0.77kN/mであり、銅箔からの厚み方向の距離0.5μmから3.0μm間のポリイミド層の複屈折率(Δnxy-z)は0.149であった。また外観観察をした結果、発泡は見られなかった。ポリイミド層(A)のイミド基濃度は31.6重量%であり、また、ポリイミドの全酸二無水物残基中のPMDA残基の含有量は50モル%であった。なお、参考例1の場合、初期ピール強度が0.80kN/mを下回ったのは、Δnxy-z_0.5-3.0の値が0.14819(PMDA残基50モル%時)を上回ったためと考えられる。
(参考例2)
ポリイミド層(A)としてポリアミド酸溶液2を使用したこと以外は、参考例1と同様に銅張積層板、多層ポリイミドフィルムの作製を行い、銅張積層板b-3並びに多層ポリイミドフィルムb-3を得た。
表3に示すように、得られた銅張積層板b-3を用いて初期ピール強度を測定した結果、0.75kN/mであり、銅箔からの厚み方向の距離0.5μmから3.0μm間のポリイミド層の複屈折率(Δnxy-z)は0.133であった。また外観観察をした結果、発泡は見られなかった。ポリイミド層(A)のイミド基濃度は32.5重量%であり、また、ポリイミドの全酸二無水物残基中のPMDA残基の含有量は65モル%であった。なお、参考例2の場合、初期ピール強度が0.80kN/mを下回ったのは、Δnxy-z_0.5-3.0の値が0.12524(PMDA残基65モル%時)を上回ったためと考えられる。
(参考例3)
ポリイミド層(A)としてポリアミド酸溶液5を使用したこと以外は、参考例1と同様に銅張積層板、多層ポリイミドフィルムの作製を行い、銅張積層板e-3並びに多層ポリイミドフィルムe-3を得た。
表3に示すように、得られた銅張積層板e-3を用いて初期ピール強度を測定した結果、0.74kN/mであり、銅箔からの厚み方向の距離0.5μmから3.0μm間のポリイミド層の複屈折率(Δnxy-z)は0.108であった。また外観観察をした結果、発泡は見られなかった。ポリイミド層(A)のイミド基濃度は33.4重量%であり、また、ポリイミドの全酸二無水物残基中のPMDA残基の含有量は80モル%であった。なお、参考例3の場合、初期ピール強度が0.80kN/mを下回ったのは、Δnxy-z_0.5-3.0の値が0.10229(PMDA残基80モル%時)を上回ったためと考えられる。
(参考例4)
ポリイミド層(A)としてポリアミド酸溶液6を使用したこと以外は、実施例1と同様に銅張積層板、多層ポリイミドフィルムの作製を行い、銅張積層板f-1並びに多層ポリイミドフィルムf-1を得た。
表3に示すように、得られた銅張積層板f-1を用いて初期ピール強度を測定した結果、0.91kN/mであり、銅箔からの厚み方向の距離0.5μmから3.0μm間のポリイミド層の複屈折率(Δnxy-z)は0.104であった。また外観観察をした結果、発泡は見られなかった。ポリイミド層(A)のイミド基濃度は30.9重量%であり、また、ポリイミドの全酸二無水物残基中のPMDA残基の含有量は35モル%であった。なお、参考例4の場合、CTEが30ppm/Kを上回ったのは、全酸二無水物残基中のPMDA残基濃度が40モル%を下回ったためと考えられる。
(参考例5)
第2の熱処理工程として熱処理条件3を用いたこと以外は、参考例4と同様に銅張積層板、多層ポリイミドフィルムの作製を行い、銅張積層板f-2並びに多層ポリイミドフィルムf-2を得た。
表3に示すように、得られた銅張積層板f-2を用いて初期ピール強度を測定した結果、0.99kN/mであり、銅箔からの厚み方向の距離0.5μmから3.0μm間のポリイミド層の複屈折率(Δnxy-z)は0.095であった。また外観観察をした結果、発泡は見られなかった。ポリイミド層(A)のイミド基濃度は30.9重量%であり、また、ポリイミドの全酸二無水物残基中のPMDA残基の含有量は35モル%であった。なお、参考例5の場合、CTEが30ppm/Kを上回ったのは、全酸二無水物残基中のPMDA残基濃度が40モル%を下回ったためと考えられる。
(参考例6)
第2の熱処理工程として熱処理条件6を用いたこと以外は、参考例4と同様に銅張積層板、多層ポリイミドフィルムの作製を行い、銅張積層板f-3並びに多層ポリイミドフィルムf-3を得た。
表3に示すように、得られた銅張積層板f-3を用いて初期ピール強度を測定した結果、0.80kN/mであり、銅箔からの厚み方向の距離0.5μmから3.0μm間のポリイミド層の複屈折率(Δnxy-z)は0.114であった。また外観観察をした結果、発泡は見られなかった。ポリイミド層(A)のイミド基濃度は30.9重量%であり、また、ポリイミドの全酸二無水物残基中のPMDA残基の含有量は35モル%であった。なお、参考例6の場合、CTEが30ppm/Kを上回ったのは、全酸二無水物残基中のPMDA残基濃度が40モル%を下回ったためと考えられる。
[比較例1]
銅箔1上に、銅箔と接するポリイミド層(A)としてポリアミド酸溶液7を硬化後の厚みが2.5μmとなるように均一に塗布した後、120℃で1分間加熱乾燥して溶媒を除去した。次にポリイミド層(A)上にポリイミド層(B)としてポリアミド酸溶液1を硬化後の厚みが25μmとなるように均一に塗布した後、120℃で2分間加熱乾燥して溶媒を除去した。さらにポリイミド層(B)上にポリイミド層(C)としてポリアミド酸溶液7を硬化後の厚みが2.5μmとなるように均一に塗布を行い、第1の熱処理工程を実施した。それ以降工程は、実施例1と同様に銅張積層板、多層ポリイミドフィルムの作製を行い、銅張積層板g-1並びに多層ポリイミドフィルムg-1を得た。
表3に示すように、得られた銅張積層板g-1を用いて初期ピール強度を測定した結果、1.03kN/mであったが、外観観察をした結果、発泡が観察された。このため、銅箔からの厚み方向の距離0.5μmから3.0μm間のポリイミド層の複屈折率(Δnxy-z)について測定しなかった。なお、非常に薄いポリイミド層(A)のイミド基濃度は27.4重量%であり、また、ポリイミドの全酸二無水物残基中のPMDA残基の含有量は30モル%であった。
なお、実施例1~実施例11、参考例1~参考例6及び比較例1で作製した銅張積層板及び多層ポリイミドフィルムの評価結果を表1~表3に記載する。
Figure 2022149188000006
Figure 2022149188000007
Figure 2022149188000008
<式(i):「(Δnxy-z)≦-0.00153×X+0.22469」の導出>
(a)実施例及び参考例における各PMDA比率(モル%)におけるΔnxy-z_0.5-3.0(X軸)とピール強度(Y軸)との関係の散布図を作成した(図3参照)。
(b)各PMDA比率について、図3にグラフ化したものを線近似し、近似式よりピール強度が0.8kN/mとなるΔnxy-z_0.5-3.0を算出した(表4参照)。
Figure 2022149188000009
(c)続いて、算出したΔnxy-z_0.5-3.0の数値と(Y軸)とPMDA比率(X軸)との関係の散布図を作成した(図4参照)。但し、この際、層間のないPMDA比率35%(40%未満)のものを除外した。
(d)図4のPMDA残基50-80モル%について、近似式を求めた。その結果、式(i)が導出された。従って、Δnxy-z_0.5-3.0の実測値が、式(i)の関係を満たせば、所定のピール強度(0.8kN/m)を発現すると判断できる。
(e)例えば、PMDA残基50モル%の場合にはΔnxy-z_0.5-3.0の測定値が0.14819以下、65モル%の場合にはΔnxy-z_0.5-3.0の測定値が0.12524以下、80モル%の場合にはΔnxy-z_0.5-3.0の測定値が0.10229以下であれば所定のピール強度(0.8kN/m)を発現すると判断できる。
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。
10…金属層
20…ポリイミド絶縁層
21…ポリイミド層(A)
23…ポリイミド層(B)
30…金属張積層板

Claims (5)

  1. 金属層と、ポリイミド絶縁層と、を有する金属張積層板であって、
    前記ポリイミド絶縁層は、厚みが20μm以上100μm以下の範囲内、熱膨張係数が10ppm/K以上30ppm/K以下の範囲内であり、前記金属層に接するポリイミド層(A)を含み、
    前記ポリイミド層(A)を構成するポリイミドが、テトラカルボン酸二無水物から誘導される酸二無水物残基と、ジアミン化合物から誘導されるジアミン残基とを含有し、
    前記酸二無水物残基の100モル部に対して、ピロメリット酸二無水物(PMDA)から誘導される酸二無水物残基(PMDA残基)を40モル部以上90モル部以下の範囲内、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)から誘導される酸二無水物残基(BPDA残基)を10モル部以上60モル部以下の範囲内で含有し、PMDA残基とBPDA残基の合計が80モル部以上であり、
    前記ジアミン残基の100モル部に対して、下記の一般式(1)で表されるジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を80モル部以上含有し、
    前記ポリイミドのイミド基濃度が34重量%以下であり、
    前記ポリイミド層(A)は、厚みが20μm以上60μm以下の範囲内であるとともに、前記金属層との界面から厚み方向に0.5μm~3.0μmの範囲内における平均複屈折率(Δnxy-z)と、前記ポリイミドにおける全酸二無水物残基に対するPMDA残基のモル比率(X)と、の関係が下記式(i);
    Figure 2022149188000010
    を満たすことを特徴とする金属張積層板。
    Figure 2022149188000011
    [式(1)において、連結基Xは単結合を示し、Yは独立に水素、炭素数1、2又は3の1価の炭化水素、又はアルコキシ基を示し、nは1又は2であり、pおよびqはそれぞれ独立に0、1、2、3又4の数である。]
  2. 前記ポリイミド絶縁層が、さらにポリイミド層(B)を有し、前記ポリイミド層(B)を構成するポリイミドが、テトラカルボン酸二無水物から誘導される酸二無水物残基及びジアミン化合物から誘導されるジアミン残基からなるモノマー残基を有し、前記モノマー残基100モル部に対して、-O-、-S-、-CO-、-SO-、-SO-、-CH-、-C(CH-又は-NH-から選ばれる2価の屈曲基を有するモノマー残基が20モル部以上含有することを特徴とする請求項1に記載の金属張積層板。
  3. 前記ポリイミド層(A)と前記ポリイミド層(B)の厚みの比(B/A)が0.03以上0.25以下の範囲内であることを特徴とする請求項2に記載の金属張積層板。
  4. 前記金属層の前記ポリイミド絶縁層に接する面の十点平均粗さ(Rzjis)が1.2μm以下である請求項1~3のいずれか1項に記載の金属張積層板。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載の金属張積層板の金属層が配線に加工されている回路基板。
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