JP2022148199A - Fe基合金及び金属粉末 - Google Patents

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Abstract

【課題】肉盛り溶接、積層造形などの溶融凝固成形に用いた時に耐摩耗性が高く、かつ、耐錆性に優れた肉盛り層、積層造形物等を得ることが可能なFe基合金、及びこれと同等の平均組成を有する金属粉末を提供すること。【解決手段】Fe基合金は、18.0≦Co≦30.0mass%、12.0≦Mo+W/2≦22.0mass%、及び、0.2≦Cr≦6.5mass%を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなり、さらに、65.0≦Co+3(Mo+W/2)≦96.0mass%を満たす。金属粉末は、0≦Si≦1.0mass%をさらに含むものでも良い。金属粉末は、平均組成がFe基合金と同等であるものからなる。【選択図】図2

Description

本発明は、Fe基合金及び金属粉末に関し、さらに詳しくは、肉盛り溶接、積層造形などの溶融凝固成形に用いた時に耐摩耗性が高く、かつ、耐錆性に優れた肉盛り層、積層造形物等を得ることが可能なFe基合金、及び、これと同等の平均組成を有する金属粉末に関する。
冷間・温間加工用の金型や摺動部材には高い耐摩耗性が要求される。以下、金型や摺動部材などの高い耐摩耗性が要求される部材を総称して「耐摩耗部材」ともいう。一般に、耐摩耗性は硬さと相関があり、硬さが高いほど耐摩耗性に優れる。
浸炭や窒化などの表面の硬化処理は、耐摩耗部材の耐摩耗性を向上させる方法の一つであるが、浸炭や窒化が適用できる合金は限られている。また、硬化処理時に表面に侵入したCやNが合金中のCrと反応して炭化物や窒化物を形成し、基地中のCr固溶量が少なくなるために、耐摩耗部材の耐錆性が低下する場合がある。
耐摩耗部材の防錆方法としては、
(a)耐摩耗部材の材料として、耐摩耗性に加えて耐錆性を有する合金を使用する方法、
(b)耐摩耗部材の表面に防錆油を塗布する方法、
(c)耐摩耗部材の表面を、耐錆性を付与することが可能な金属材料や無機化合物でコーティングする方法
などがある。
これらの内、防錆油を塗布する方法は、油を使用できない用途(例えば、紙類の加工に用いられる工具の防錆)には適用できない。また、表面をコーティングする方法は、使用中にコーティングが剥離する場合がある。これに対し、耐摩耗性、及び、耐錆性を有する合金を使用する方法は、油を使用できない用途にも適用でき、コーティングが剥離することもないのでメンテナンスが簡単であるという利点がある。
表面処理なしでも高硬度、及び、耐錆性が得られる合金としては、例えば、高速度工具鋼、Co基超合金、Ni基超合金などがある。しかしながら、これらの合金は、いずれも加工性に乏しい。そのため、所望の形状を有する耐摩耗部材を作製する方法として機械加工により大体積を除去する方法を用いると、工具の摩耗が著しく、加工コストが高くなるという問題がある。
近年、積層造形技術の発達により、これらの高硬度・難加工材を溶融凝固させ、基材表面に肉盛ることことで、大体積を機械加工により除去することなく耐摩耗部材の耐摩耗性を向上させることが可能になってきた。そのため、このような積層造形方法、あるいは、積層造形に適した材料に関し、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、
(a)ダイス鋼(SKD11)からなる円筒状のパンチの先端部(摩耗箇所)をワイヤカットにより除去して第一面を形成し、
(b)金属3Dプリンタを用いて、第一面にマルテンサイト系ステンレス鋼(SUS420J2)を肉盛りする
金型部品の製造方法が開示されている。
同文献には、このような方法により、摩耗した金型部品を初期状態又は初期状態に近い状態に再生できる点が記載されている。
特許文献2には、25mass%Co-17.5mass%Mo-Feからなる積層造形用の合金粉末が開示されている。
同文献には、このような合金粉末を用いて積層造形した後、600℃×5minの熱処理を行うと、造形体の硬さが900HV以上になる点が記載されている。
特許文献1に記載の方法を用いると、摩耗した金型部品を再生することができる。しかしながら、特許文献1には、積層造形によって60HRC以上の高硬度が得られる材料、又は60HRC以上の高硬度が得られる造形方法については、記載も示唆もない。
一方、60HRC以上の高硬度が得られる材料としては、例えば、高速度工具鋼がある。しかし、高速度工具鋼はCを多量に含むため、これを溶融状態からの急冷凝固を伴う積層造形に適用した場合、残留オーステナイト量が多くなり、従来の製法で製造された部材に比べて硬さが低下する。
これに対し、特許文献2に記載の合金粉末を用いて積層造形を行い、造形体を熱処理すると、900HV(66HRCに相当)以上の高硬度が得られる点が記載されている。しかしながら、同文献に記載の合金粉末を用いて製造される造形体は、耐錆性に乏しく、使用中の酸化で表面性状が悪化するという問題がある。
国際公開第2018/225803号 特開2020-084286号公報
本発明が解決しようとする課題は、肉盛り溶接、積層造形などの溶融凝固成形に用いた時に耐摩耗性が高く、かつ、耐錆性に優れた肉盛り層、積層造形物等を得ることが可能なFe基合金、及び、これと同等の平均組成を有する金属粉末を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係るFe基合金は、
18.0≦Co≦30.0mass%、
12.0≦Mo+W/2≦22.0mass%、及び、
0.2≦Cr≦6.5mass%
を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなり、
次の式(1)を満たすことを要旨とする。
65.0≦Co+3(Mo+W/2)≦96.0mass% …(1)
本発明に係る金属粉末は、平均組成が本発明に係るFe基合金と同等であるものからなる。
所定の元素を含み、かつ、式(1)を満たす金属粉末を用いて溶融凝固成形を行った後、500~600℃で10分以上熱処理を施すと、65HRC以上の硬さを有する造形部が得られる。得られた造形部は耐錆性があるため、多湿環境でも錆の発生が抑制される。これは、Fe-Co-Mo-W系合金に適量のCrを添加することによって、μ相((Fe,Co)6(Mo,W)7)の析出及びこれに伴うMoの枯渇に起因する耐錆性の低下が抑制されるためと考えられる。
金属3Dプリンタの模式図である。 Co+3(Mo+W/2)と肉盛り部の時効熱処理後の硬さ(硬さ2)との関係を示す図である。 比較例3及び実施例2で得られた試料の耐錆性試験後の表面の顕微鏡写真である。
以下に、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. Fe基合金]
[1.1. 成分]
本発明に係るFe基合金は、以下のような元素を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる。添加元素の種類、その成分範囲、及びその限定理由は、以下の通りである。
[1.1.1. 主構成元素]
(1)18.0≦Co≦30.0mass%:
本発明に係るFe基合金は、いわゆるFe-Co-Mo-W系合金からなる。Fe-Co-Mo-W系合金は、急冷時にマルテンサイト変態を生じさせ、かつ、時効処理によりμ相((Fe,Co)6(Mo,W)7)を多量に析出させることによって高強度を得ることが可能な合金である。
Coは、μ相の析出を促進させる作用と、高温におけるオーステナイトの安定度を高める作用がある。そのため、Co含有量が少なくなりすぎると、μ相の析出量が減少し、時効処理後の硬さが著しく低下する。従って、Co含有量は、18.0mass%以上である必要がある。Co含有量は、好ましくは、20.0mass%以上、さらに好ましくは、22.0mass%以上である。
一方、必要以上にCoを添加しても、硬さの増加に対する効果が飽和する。また、Co含有量が過剰になると、製造コストが増加する。従って、Co含有量は、30.0mass%以下である必要がある。Co含有量は、好ましくは、26.0mass%以下、さらに好ましくは、25.0mass%以下である。
(2)12.0≦Mo+W/2≦22.0mass%:
Mo及びWは、いずれも、μ相の析出量を増加させる作用、及び、μ相の安定度を増加させる作用がある。但し、Wの原子量はMoの約2倍であるため、Wを用いてMoと同等の効果を得るためには、WはMoの2倍量を添加する必要がある。
Mo及び/又はW含有量が少なくなりすぎると、μ相の析出量が不足し、高強度が得られない。従って、Mo+W/2は、12.0mass%以上である必要がある。Mo+W/2は、好ましくは、14.0mass%以上である。
一方、Mo及び/又はW含有量が過剰になると、μ相の体積分率が過剰となり、靱性が著しく劣化する。従って、Mo+W/2は、22.0mass%以下である必要がある。Mo+W/2は、好ましくは、18.0mass%以下、さらに好ましくは、16.5mass%以下である。
(3)0.2≦Cr≦6.5mass%:
一般に、Moは、Fe基合金の耐錆性を向上させる作用がある。しかし、Fe-Co-Mo-W系合金において、Moはμ相の形成に消費されるため、Moは時効処理後のFe-Co-Mo-W系合金の耐錆性を向上させる効果はあまりない。
これに対し、Fe-Co-Mo-W系合金に対してCrを添加すると、Moの枯渇に起因する耐錆性の低下を抑制することができる。このような効果を得るためには、Cr含有量は、0.2mass%以上である必要がある。Cr含有量は、好ましくは、0.5mass%以上である。
一方、Cr含有量が過剰になると、σ相が析出し、靱性が劣化する。従って、Cr含有量は、6.5mass%以下である必要がある。Cr含有量は、好ましくは、5.0mass%以下、さらに好ましくは、4.0mass%以下、2.0mass%以下、1.0mass%以下、あるいは、0.7mass%以下である。
[1.1.2. 成分バランス]
本発明に係るFe基合金は、次の式(1)を満たしている必要がある。
65.0≦Co+3(Mo+W/2)≦96.0mass% …(1)
「Co+3(Mo+W/2)(以下、これを「変数1」ともいう)」は、μ相の析出量の指標であり、溶融凝固成形+時効処理後の硬さと相関がある。式(1)を満たすように成分を最適化すると、著しく靱性を損なうことなく、使用時の硬さを高くし、高い耐摩耗性を得ることができる。
変数1が小さくなりすぎると、強化相であるμ相の析出量が不足し、必要な硬さが得られない。従って、変数1は、65.0mass%以上である必要がある。
一方、変数1が大きくなりすぎると、溶融凝固成形を行った時に、造形物の微細組織に占めるμ相の体積分率が過剰となる。そのため、硬さの向上への効果が飽和するだけでなく、硬質なμ相の体積分率が増加し、靱性が劣化する。従って、変数1は、96.0mass%以下である必要がある。変数1は、好ましくは、85.0mass%以下、さらに好ましくは、80.0mass%以下である。
[1.1.3. 副構成元素]
本発明に係るFe基合金は、上述した元素に加えて、以下のような1種又は2種以上の元素をさらに含んでいても良い。添加元素の種類、その成分範囲、及びその限定理由は、以下の通りである。
(1)0≦Si≦1.0mass%:
Siは、脱酸材としての作用、及び、μ相の析出を促進させる作用があり、必要に応じて、添加することができる。このような効果を得るためには、Si含有量は、0.1mass%以上が好ましい。
一方、Si含有量が過剰になると、μ相の析出が過度に促進され、凝固時に液相から粗大なμ相が析出する場合がある。その結果、溶融凝固成形を行った時に造形物の靱性が低下する。従って、Si含有量は、1.0mass%以下が好ましい。Si含有量は、好ましくは、0.5mass%以下、さらに好ましくは、0.3mass%以下である。
(2)0≦Mn≦0.5mass%:
Mnは、脱酸剤としての作用があり、必要に応じて添加することができる。
一方、Mn含有量が過剰になると、オーステナイト変態点が低下する。その結果、急冷後における残留オーステナイト量が増加し、硬さが低下する。従って、Mn含有量は、0.5mass%以下が好ましい。Mn含有量は、さらに好ましくは、0.3mass%以下である。
(3)0≦P≦0.05mass%:
Pは、製造時に混入する不可避的不純物である。P含有量が過剰になると、溶融凝固成形を行った時にPが結晶粒界に偏析し、造形物の靱性が低下する。従って、P含有量は、0.05mass%以下が好ましい。P含有量は、好ましくは、0.03mass%以下である。P含有量は、少ないほど良い。
(4)0≦S≦0.05mass%:
Sは、製造時に混入する不可避的不純物である。S含有量が過剰になると、溶融凝固成形を行った時にSが結晶粒界に偏析し、造形物の靱性が低下する。従って、S含有量は、0.05mass%以下が好ましい。S含有量は、好ましくは、0.03mass%以下である。S含有量は、少ないほど良い。
[1.1.4. 不可避的不純物]
本発明に係るFe基合金において、以下に示す成分が以下に示す量で含まれる場合がある。このような場合、本発明においては、これらの成分を不可避的不純物として扱う。
C≦0.10mass%、V≦0.90mass%、Ni≦0.50mass%、
Al≦0.19mass%、N≦0.10mass%、O≦0.10mass%、
Cu≦0.50mass%、Sn≦0.05mass%、Nb≦0.05mass%、
Ta≦0.05mass%、Ti≦0.05mass%、Zr≦0.05mass%、
B≦0.01mass%、Ca≦0.01mass%、Se≦0.03mass%、
Te≦0.01mass%、Bi≦0.01mass%、Pb≦0.05mass%、
Mg≦0.02mass%、REM≦0.01mass%。
[1.2. 形状]
本発明において、Fe基合金の形状は特に限定されない。Fe基合金の形状としては、塊、棒、管、線、粉末などがある。特に、粉末は溶融凝固成形の原料として好適である。
[2. 金属粉末]
本発明に係る金属粉末は、平均組成が本発明に係るFe基合金と同等であるものからなる。
[2.1. 成分]
「平均組成がFe基合金と同等である」とは、
(a)金属粉末が同一の組成を有する1種類の金属粒子の集合体からなり、かつ、個々の金属粒子が上述した組成範囲内にあること、
(b)金属粉末が異なる組成を有する2種以上の金属粒子の混合物からなり、かつ、個々の金属粒子がそれぞれ上述した成分範囲内にあること、又は、
(c)金属粉末が異なる組成を有する2種以上の金属粒子の混合物からなり、かつ、1種又は2種以上の金属粒子が上述した成分範囲内にはないが、金属粉末全体の組成の平均値が上述した成分範囲内にあること、
をいう。
金属粉末が異なる組成を有する2種以上の金属粒子の混合物からなる場合、個々の金属粒子は単一の金属元素を含む純金属粒子であっても良く、あるいは、2種以上の金属元素を含む合金粒子であっても良い。
金属粉末の組成(平均組成)の詳細については、上述したFe基合金と同様であるので、説明を省略する。
[2.2. 平均粒径]
「平均粒径」とは、個数頻度D50(μm)、すなわち、粉末の累積50個数%粒子径(メディアン径)をいう。D50の測定方法としては、例えば、
(a)レーザー回折・散乱法に基づく粒子分布測定装置を用いて測定する方法、
(b)粒子画像分析装置を用いて測定する方法、
(c)コールターカウンターを用いて測定する方法、
などがある。
本発明において、「D50」というときは、レーザー回折・散乱法に基づく粒子分布測定装置により測定されたメディアン径をいう。
金属粉末の平均粒径及び粒度分布は、金属粉末の製造条件、及び、金属粉末の分級条件により制御することができる。
金属粉末を用いた溶融凝固成形においては、ノズルを用いて造形領域に金属粉末を供給する場合がある。この場合において、金属粉末の平均粒径が小さくなりすぎると、金属粉末の流動性が低下し、金属粉末を安定的に供給するのが困難となる場合がある。従って、金属粉末の平均粒径は、10μm以上が好ましい。平均粒径は、好ましくは、50μm以上、さらに好ましくは、80μm以上である。
一方、金属粉末の平均粒径が大きくなりすぎると、粒径の大きな粒子がノズルに詰まり、安定して粉末を供給できなくなる場合がある。従って、金属粉末の平均粒径は、300μm以下が好ましい。平均粒径は、好ましくは、200μm以下、さらに好ましくは、150μm以下である。
[2.3. 粒子形状]
金属粉末に含まれる個々の金属粒子の粒子形状は、特に限定されない。金属粒子は、球状粒子でも良く、あるいは、不規則形状粒子でも良い。高い流動性を得るには、金属粒子は、球状粒子が好ましい。
[2.4. 表面被覆]
金属粒子は、表面がナノ粒子で被覆されていても良い。「ナノ粒子」とは、直径が1nm以上100nm以下である無機化合物の粒子をいう。
金属粒子の表面をある種のナノ粒子で被覆すると、金属粒子の凝集を抑制することができる場合がある。金属粒子の凝集を抑制する作用があるナノ粒子としては、例えば、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al23)、酸化マンガン(MnO)、酸化鉄(Fe23)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)などの金属酸化物がある。
金属粒子の表面をナノ粒子で被覆する場合、被覆量が少なすぎると、金属粒子の凝集を十分に抑制することができなくなる場合がある。従って、ナノ粒子の含有量は、0.005mass%以上が好ましい。
一方、ナノ粒子の被覆量が過剰になると、ナノ粒子が介在物となり、溶融凝固成形を行った時に造形物の強度及び/又は靱性が低下する場合がある。従って、ナノ粒子の含有量は、0.05mass%以下が好ましい。
[2.5. 用途]
本発明に係る金属粉末は、溶融凝固成形用の原料粉末として用いることができる。
ここで、「溶融凝固成形法」とは、種々の熱源を用いて金属粉末を溶融させ、溶融した金属粉末を凝固及び堆積させることにより造形物の全部又は一部を形成する方法をいう。
「造形物の全部を形成する」とは、金属粉末の溶融、凝固及び堆積のみによって、造形物の全体を形成することをいう。
「造形物の一部を形成する」とは、造形物の一部を構成する基材の表面に、金属粉末の溶融、凝固及び堆積により造形物の他の一部を構成する新たな層を積層すること(例えば、金型の補修)をいう。
溶融凝固成形法の内、代表的なものとしては、例えば、
(a)指向性エネルギー堆積(Direct Energy Deposition、DED)法、
(b)粉末床溶融法、
(c)プラズマ肉盛溶接法、
などがある。
これらの内、「指向性エネルギー堆積(DED)法」とは、金属粉末を供給しながらレーザーや電子ビームを照射し、溶融金属を既存部材や基板等の被肉盛り材上に選択的に堆積させる方法をいう。DED法は、金属層を繰り返し堆積させることができ、線状、壁状、塊状などの種々の形状に肉盛りすることができる。レーザーを熱源に用いた装置を用いることで、堆積させる融液の体積を絞ることができ、被肉盛り材との界面に発生する成分の混合による品質低下を抑制することができる。そのため、被肉盛り材には、Fe基合金、Ni基合金、Co基合金などの様々な材料を用いることができる。
「粉末床溶融法」とは、3D-CAD等により生成された3次元データ(例えば、STLデータ)に基づいて数十μm単位のスライスデータを作成し、得られたスライスデータを用いて粉末床に対してレーザーを選択的に走査させながら照射し、焼結層を積層させることで造形する方法をいう。
「プラズマ肉盛溶接法」とは、電極と基材との間にプラズマアークを発生させ、この中に金属粉末を投入して金属粉末を溶融させ、基材表面に金属を盛り上げる方法をいう。
[3. 金属粉末の製造方法]
本発明に係る金属粉末は、ガスアトマイズ法を用いて製造することができる。ここで、「ガスアトマイズ法」とは、合金原料を誘導溶解炉等で溶融させ、溶湯をタンディッシュの底部から落下させながら溶湯に高圧ガスを吹き付け、溶湯を粉砕、凝固させることで金属粉末を得る方法をいう。高圧ガスには、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスが用いられる。ガスアトマイズ条件は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な条件を選択することができる。
ガスアトマイズ法を用いて金属粉末を製造した後、分級を行い、平均粒径及び粒度分布を調整するのが好ましい。分級方法としては、例えば、乾式サイクロン、湿式サイクロン、乾式ふるい、超音波ふるいなどがある。平均粒径及び粒度分布が制御された金属粉末を用いると、溶融凝固成形に適用した時に緻密な造形物を得ることができる。
さらに、必要に応じて組成の異なる2種以上の金属粉末を混合し、成分調整を行っても良い。
[4. 作用]
所定の元素を含み、かつ、式(1)を満たす金属粉末を用いて溶融凝固成形を行った後、500~600℃で10分以上熱処理を施すと、65HRC以上の硬さを有する造形部が得られる。得られた造形部は耐錆性があるため、多湿環境でも錆の発生が抑制される。
Fe-Co-Mo-W系合金は、時効処理でμ相((Fe,Co)6(Mo,W)7)を多量に析出させることで強度を増加させることが可能な合金である。しかしながら、添加されたMoはμ相の形成に消費され、時効熱処理後の基地中にはほとんど固溶しておらず、耐錆性の向上に寄与しない。
これに対し、Fe-Co-Mo-W系合金中に適量のCrを添加すると、Crは時効熱処理後の基地中に固溶しているために、硬さに悪影響を及ぼすことなく耐錆性の向上に寄与する。そのため、時効処熱処理後に65HRC以上の高硬度を保ちつつ、耐錆性を向上させることができる。
(実施例1~9、比較例1~7)
[1. 試料の作製]
[1.1. 金属粉末の作製]
ガスアトマイズ法を用いて、表1に示す16種類の金属粉末を作製した。なお、表中に記載されていない元素が不純物として規定された量の範囲内で含まれる場合がある。
[1.2. 肉盛り造形物の作製]
作製した金属粉末及びDED方式のレーザー金属積層造形装置(金属3Dプリンタ)を用いて造形物を作製した。図1に、金属3Dプリンタの模式図を示す。図1において、金属3Dプリンタ10は、粉末供給ノズル12と、レーザー発信器(図示せず)と、粉末供給装置(図示せず)と、シールドガス供給装置(図示せず)とを備えている。粉末供給ノズル12は、二重管構造になっており、外管12aと内管12bとの間に金属粉末14とキャリアガス(シールドガス)を供給できるようになっている。レーザー光が通過する内管12b内には集光レンズ(図示せず)が設置されている。さらに、内管12b内には、金属粉末14の酸化を防ぐためのシールドガスを供給できるようになっている。
このような金属3Dプリンタ10を用いた肉盛りは、具体的には、以下のようにして行う。すなわち、まず、被肉盛り材20の上面に粉末供給ノズル12を近接して配置する。次いで、外管12a及び内管12bとの隙間に金属粉末14及びキャリアガスを供給し、内管12b内にはシールドガスを供給する。この状態で、集光レンズ(図示せず)に向かってレーザー光を照射すると、レーザー光の焦点近傍において金属粉末14と被肉盛り材20の表層部分が溶融して一体化する。さらに、粉末供給ノズル12を水平方向に移動させると、溶融して一体化した融液が凝固して肉盛り層22となる。
実施例1~9及び比較例1~7において、被肉盛り材20には、SKD61の平板(50×70×10mm)を用いた。また、造形時の条件は、以下の通りである。
レーザー出力: 1500~2000W
粉末流量: 5~10g/min
送り速度: 100~1000mm/min
造形物の寸法: 高さ5~10mm×幅10~12mm×長さ60~70mm
[2. 試験方法]
[2.1. 硬さ1]
造形物を5mm厚に切断し、研磨紙により断面を研磨した。さらに、研磨した断面中央部のロックウェル硬さ(JIS Z2245)を測定した。
[2.2. 硬さ2]
造形物を5mm厚に切断した。これを600℃に加熱した大気炉に挿入し、30分保持した後、空冷する時効熱処理を行った。時効熱処理後の試料の酸化被膜を研磨紙により除去した後、造形物の断面中央部のロックウェル硬さ(JIS Z2245)を測定した。
[2.3. 耐錆性]
造形物を600℃で30分保持する時効熱処理を行った。次いで造形物を切断、研磨し、10mm×10mm×高さ5~10mmの平板とした。この時の肉盛り部の硬さは、「硬さ2」とHRCにて2ポイント以内の差であった。
10mm×10mmの平面を研磨紙にて#1000まで機械研磨した後、室温、湿度98%の湿潤環境に1時間静置した。湿潤環境から取り出し、乾燥させた後、表面状態を確認した。
[3. 結果]
表1に、結果を示す。なお、表1には、各試料の組成も併せて示した。また、表1の耐錆性の評価に関し、「○」は直径0.5mm以上の斑点状の錆がないことを表し、「×」は直径0.5mm以上の斑点状の錆があることを表す。図2に、Co+3(Mo+W/2)と肉盛り部の時効処理後の硬さ(硬さ2)との関係を示す。さらに、図3に、比較例3及び実施例2で得られた試料の耐錆性試験後の表面の顕微鏡写真を示す。表1及び図2~図3より、以下のことが分かる。
Figure 2022148199000002
(1)比較例1、5は、硬さ2が低い。これは、(Mo+W/2)量が12mass%未満であり、μ相の析出量が不足したためと考えられる。
(2)比較例2~4、6は、耐食性試験後に錆が発生した。これは、Cr量が0.2mass%未満であるためと考えられる。
(3)比較例4は、硬さ2が低い。これは、Co量が18mass%未満であり、μ相の析出量が不足したためと考えられる。
(4)比較例7は、硬さ2が低い。これは、Si量が1mass%を超えているために、μ相の析出温度が高くなり、これによってμ相が粗大となり、硬さに寄与しなくなったためと考えられる。
(5)実施例1~9は、いずれも硬さ2が高く、かつ、高い耐錆性を有していた。これは、変数1が所定の範囲内であり、かつ、適量のCrを含有しているためと考えられる。
(6)Cr含有量が0.1mass%である比較例3は、斑点状の錆が多数発生した(図3参照)。一方、Cr含有量が0.6mass%である実施例4は、錆が薄く発生しているものの、斑点状の錆は発生しておらず、耐錆性が向上していることが分かった。
さらに、Cr含有量が6.0mass%である実施例2は、錆が全く見られず、耐錆性が向上していることが分かった(図3参照)。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係る金属粉末は、積層造形や肉盛り溶接技術を用いて、耐摩耗性が要求される冷間加工用金型、温間加工用金型、成形用治具、切削加工用工具を製造又は補修するための粉末原料として用いることができる。

Claims (3)

  1. 18.0≦Co≦30.0mass%、
    12.0≦Mo+W/2≦22.0mass%、及び、
    0.2≦Cr≦6.5mass%
    を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなり、
    次の式(1)を満たすFe基合金。
    65.0≦Co+3(Mo+W/2)≦96.0mass% …(1)
  2. 0≦Si≦1.0mass%
    をさらに含む請求項1に記載のFe基合金。
  3. 平均組成が請求項1又は2に記載のFe基合金と同等である金属粉末。
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