JP2022148950A - Fe基合金粉末を用いた造形物の製造方法 - Google Patents

Fe基合金粉末を用いた造形物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 硬さや靭性などの優れた機械的特性を有する造形物の製造方法の提供。【解決手段】 質量%で、Ni:15.0~21.0%、Mo:0.01~10.0%、Al:0.01~3.00%、Co:0.45%以下(ただし、Coは0%の場合を含む)、Ti:0.10~6.00%、Nb:2.0%以下(ただし、Nbは0%の場合を含む)、残部Fe及び不可避的不純物からなるFe基合金粉末を原料として、溶融・凝固させて所定の形状の造形物を造形する工程と、該造形物を910~1030℃で溶体化熱処理する工程と、450~550℃にて1.0~6.0時間処理する時効熱処理工程とを含む、造形物の製造方法。【選択図】 図1

Description

本発明は、三次元積層造形法、溶射法、レーザーコーティング法、肉盛法等の、急速溶融急冷凝固を伴うプロセスに適したFe基合金粉末、とりわけ、パウダーベッド方式(粉末床溶融結合方式)による積層造形法に好適なFe基合金粉末を原料として造形物を得る製造方法に関する。
金属からなる造形物の製作に、3Dプリンターが使用されはじめている。この3Dプリンターとは、積層造形法によって造形物を製作するものであり、金属積層造形法の代表的な方式にはパウダーベッド方式(粉末床溶融結合方式)やメタルデポジション方式(指向性エネルギー堆積方式)などがある。パウダーベッド方式では、レーザービームまたは電子ビームの照射によって、敷き詰められた粉末のうち照射された部位が溶融し凝固する。この溶融と凝固により、粉末粒子同士が結合する。照射は、金属粉末の一部に選択的になされ、照射がなされなかった部分は、溶融せず、照射がなされた部分のみにおいて、結合層が形成される。
形成された結合層の上に、さらに新しい金属粉末が敷き詰められ、それらの金属粉末にレーザービームまたは電子ビームの照射が行われる。すると、照射により、金属粒子が溶融、凝固し、新たな結合層が形成される。また、新たな結合層は、既存の結合層とも結合される。
照射による溶融・凝固が順次繰り返されていくことにより、結合層の集合体が徐々に成長する。この成長により、三次元形状を有する造形体が得られる。こうした積層造形法を用いると、複雑な形状の造形物が、容易に得られる。
パウダーベッド方式の積層造形法としては、「鉄系粉末」と、「ニッケル、ニッケル系合金、銅、銅系合金、および黒鉛から成る群から選ばれる1種類以上の粉末」が混合されたものを金属光造形用金属粉末として用い、これらの金属粉末を敷く粉末層形成ステップと、粉末層にビームを照射して焼結層を形成する焼結層形成ステップと、造形物の表面を切削する除去ステップを繰り返して焼結層を形成して、三次元形状造形物を製造するといった手順が開示されている(特許文献1参照。)。
航空、宇宙分野の構造物等向けの合金には、強度および耐疲労性が要求される。このような用途には、たとえば、マルエージング鋼が適している。
そこで、主成分がFeであり、C:0.1%以下、Ni:14~22%、Co:0~5%、Mo:0.1~15%、Ti:0.1~5%、Al:3%以下を含有するマルエージング鋼からなる積層造形物が提案されている(特許文献2参照。)。この発明では原料粉末にCが含有されている。
特開2008-81840号公報 特許第6610984号公報
航空、宇宙分野の構造材、金型等には、強度、耐疲労性、靭性に優れることが要請されることから、それらの特性に優れるマルエージング鋼を適用することが一般的には好適とされる。もっとも、従来のマルエージング鋼は、Ni3Mo相やNi3Ti相などの金属間化合物を析出させることで、高強度を達成している。
航空、宇宙分野の構造材、金型等では、積層造形法を適用することで、製造時間短縮や、設計自由度など様々なメリットがあるため、積層造形法をはじめとする3Dプリンターが用いられ始めている。そこで、本発明では、積層造形法を用いてマルエージング鋼からなる造形物の製造方法を検討する。
従来のマルエージング鋼において、Coは、Moの固溶量を低下させる役割がある。Coの含有が少ない場合においても、Moを含む析出物は析出するが、Co量が多いと、Moがより析出しやすくなる。その結果、Moを含むNi3Mo相などの金属間化合物が多く析出されることから、Coが含有されている。このようにCoは金属間化合物の形成による高強度化に寄与する。
他方で、Coはオーステナイト安定化元素でもあることから、マルテンサイト変態を抑制することがある。マルテンサイト変態が抑制されると、熱処理を実施しても比較的強度の低いオーステナイト相が残存することになり、優れた強度は得られない。さらに、Coは、特定化学物質障害予防規制の対象物質であることから、Coを含有しないことが好ましい。
もっとも、低CoやCoを含有しないマルエージング鋼に、従来の熱処理を施した場合には、脆性相(Laves相)が形成されることから、機械的特性、特に靭性が低くなる。そこで、Coを多く含有する溶製材と同等の機械的特性(ロックウェル硬さ51~55HRCかつシャルピー衝撃値16.0~26.0J/cm2程度)を得ることは困難であった。
本発明者らは、Coを含有しないマルエージング鋼に、溶体化熱処理を910~1030℃、かつ、時効熱処理を450~550℃で、処理時間が1.0~6.0時間に制御することで、Laves相の析出を抑制し、靭性低下を防ぐことができることを見出した。さらに、本熱処理を施した場合、Ti、Al、Moからなる析出物が形成されるため、高強度を有する造形物が得られる。その結果、Coを含有しないか、Coを少量含有するのみ(低Co)にもかかわらず、高強度、高靭性を両立することができることを見出した。
ここで、本発明においては、質量%でCoが0.45%以下のものを低Coという。マルテンサイト変態の抑制を防ぐためには、Coが0.45%以下の低Coであることが望ましい。
本発明の目的は、Coを含まないか、Coを0.45%以下含有するFe基合金粉末に対して、急速溶融急冷凝固を伴うプロセスにおいて作製し、Laves相とは異なる析出物を利用して、硬さや靭性などの優れた機械的特性を有する造形物の製造方法の提供にある。
Co含有の有無にかかわらずマルエージング鋼に対して、溶体化熱処理の温度を高くする場合、結晶粒粗大化が生じるため、強度低下が懸念される。高強度が要求されるマルエージング鋼において、結晶粒粗大化を防ぐため、溶体化熱処理は900℃以下の温度で実施することが多い。本発明者らは、Coを含有しない、もしくは低Coのマルエージング鋼に対して、靭性低下の原因となるLaves相に着目し、溶体化熱処理の温度をあえて910℃以上に高くすることによって、Laves相の析出を抑制可能であることを見出した。
また、積層造形法は、溶製時後は異なる急冷凝固プロセスであるため、得られる造形物の結晶粒は微細である。そのため、溶体化熱処理の温度を910℃以上とした場合においても、結晶粒粗大化を回避可能であることを見出した。
さらに、時効熱処理を制御することで、強度の向上が可能であり、低Co及びCoを含有しないマルエージング鋼造形体が、高強度、高靭性を両立することを見出した。
そこで、本発明の課題を解決する第1の手段は、質量%で、
Ni:15.0~21.0%、
Mo:0.01~10.0%、
Al:0.01~3.00%、
Co:0.45%以下(ただし、Coは0%の場合を含む)、
Ti:0.10~6.00%、
Nb:2.0%以下(ただし、Nbは0%の場合を含む)、
残部Fe及び不可避的不純物からなるFe基合金粉末を原料として、
溶融・凝固させて所定の形状の造形物を造形する工程と、
該造形物を910~1030℃で溶体化熱処理する工程と、
450~550℃にて1.0~6.0時間処理する時効熱処理工程とを含む、
造形物の製造方法である。
その第2の手段は、質量%で、
Ni:15.0~21.0%、
Mo:0.01~10.0%、
Al:0.01~3.00%、
Co:0.45%以下(ただし、Coは0%の場合を含む)、
Ti:0.10~6.00%、
Nb:2.0%以下(ただし、Nbは0%の場合を含む)、
残部Fe及び不可避的不純物からなるFe基合金粉末を原料として、
溶融・凝固させて所定の形状の造形物を造形する工程と、
該造形物を910~1030℃で0.5~5.0時間処理する溶体化熱処理する工程と、
450~550℃にて1.0~6.0時間処理する時効熱処理工程とを含む、
造形物の製造方法である。
その第3の手段は、造形物を作製する工程が、Fe基合金粉末を積層して溶融・凝固させる積層造形法による工程である、第1または第2の手段に記載の製造方法である。
本発明に係るFe基合金造形体に、所定の温度で溶体化熱処理を施すことで、Laves相の析出を抑制することができる。そこで、低Co含有もしくはCoを含有しない場合であっても、高靭性を有する造形物を得ることができる。
さらに、Ti、Al、Moからなる析出物が形成されることから、溶体化処理の温度が高いのにも関わらず、高強度を有する造形物を得ることができる。したがって、高強度かつ高靭性であり、溶製材と同等以上の機械的特性を有する造形物を得ることが可能である。
具体的には、本発明の製造方法で熱処理して造形物を製造すると、ロックウェル硬さが50~60HRCで、シャルピー衝撃値が16.0~30.0J/cm2以上で、常温引張強度が1700MPa以上の特性を得ることができる。
実施例12の組織のTEM画像である。図中の番号1はTiAl、番号2及び番号3はTiMoである。 比較例8の組織のTEM画像である。図示した箇所にLaves相が観察される。
本発明の造形物の製造に用いるFe基合金粉末では、Coフリー、もしくはCoの含有をきわめて抑えたマルエージング鋼を原料に用いている。そこで、本発明の造形物の製造方法の説明に先って、以下では、本発明の造形物の製造に用いるFe基合金の成分、特性を規定する理由について説明する。なお、以下の成分組成における%は質量%である。
Ni:15.0~21.0%、
Niは、MoおよびAlと金属間化合物を形成し、優れた強度を有する造形物を得るための元素である。この観点から、Niは15.0%以上が好ましく、16.0%以上がより好ましく、17.0%以上が特に好ましい。
もっとも、Niは、オーステナイト相を形成する元素であるため、多量のNiを添加すると、マルテンサイト変態が抑制され、マルテンサイト相の形成が困難となる。この観点から、Niの含有率は21.0%以下が好ましい。より好ましくは、Niは20.0%以下である。特に好ましくは、Niは19.5%以下である。
Mo:0.01~10.0%、
Moは、TiおよびFe、Niと金属間化合物を形成し、強度を確保するための元素であり、Moは0.01%以上必要である。この観点からは、Moの含有率は1.0%以上が好ましい。もっとも、多量のMoを添加すると、靭性が低下する。この観点から、Moは10.0%以下とすることが好ましい。より好ましくは、Moは6.0%以下である。
Al:0.01~3.00%、
Alは、TiおよびNiと金属間化合物を形成し、強度、耐酸化性に優れる造形物を得るための元素である。この観点から、Alの含有率を0.01%以上とする。さらに0.1%以上がより好ましい。
もっとも、多量のAlを添加すると、急速溶融急冷凝固プロセスにおいて高温割れが生じやすい。この観点から、Alの含有率は3.0%以下が好ましい。より好ましくは、Alは2.5%以下である。
Co:0.45%以下(ただし、Coは0%の場合を含む)、
Coは、オーステナイト相を形成する元素である。そこで、Coの含有率が過剰となると、マルテンサイト相の形成が困難となる。この観点から、Coの含有率は0.45%以下とする。好ましくは、Coは0.30%以下である。Coを含まなくてもよい。
Ti:0.10~6.00%、
Tiは、AlおよびMoと金属間化合物を形成し、強度、耐酸化性を確保するための元素である。この観点から、Tiの含有率は0.10質量%以上とする。好ましくは、Tiは0.50%以上である。もっとも、多量のTiを添加すると、急速溶融急冷凝固プロセスにおいて高温割れが生じやすい。そこで、Tiの含有率は6.0%以下とする。好ましくは、Tiは4.0%以下である。
Nb:2.0%以下(ただし、Nbは0%の場合を含む)
Nbは、強度を確保する際に添加してもよい任意的付加的成分である。もっとも、添加量が多い場合、靭性が低下するため、2.0%以下とする。
D50/TD:0.2~20.0
平均粒子径であるD50(μm)とそのタップ密度であるTD(Mg/m3)の比である「D50/TD」は、粉末の流動性と造形性のバランスを示す指標である。D50/TDが0.2未満である場合、微粉化により粉末の流動性が低下し、造形物の密度が低下する。もっとも、D50/TDが20より大きい場合、積層造形時に粉末の一部が溶け残って焼結され、欠陥として残存する。
よって、D50/TDは0.2~20.0であることが好ましい。
平均粒子径D50の測定では、粉末の全体積が100%とされて、累積カーブが求められる。このカーブ上の、累積体積が50%である点の粒子径が、平均粒子径D50である。平均粒子径D50は、レーザー回折散乱法によって測定される。この測定に適した装置として、日機装社のレーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置「マイクロトラックMT3000」が挙げられる。この装置のセル内に、粉末が純水と共に流し込まれ、粒子の光散乱情報に基づいて、粒子径が検出される。
タップ密度は、「JIS Z 2512」の規定に準拠して測定される。測定では、約50gの粉末が容積100cm3のシリンダーに充填され、密度が測定される。測定条件は、以下の通りである。
落下高さ:10mm
タップ回数:200回
[Fe基合金粉末の粒子径]
Fe基合金粉末の平均粒子径は、10μm以上100μm以下が好ましい。平均粒子径が10μm以上である粉末は、流動性に優れる。この観点から、平均粒子径は20μm以上がより好ましく、30μm以上が特に好ましい。平均粒子径が100μm以下である粉末から、相対密度が大きい造形物が得られうる。この観点から、平均粒子径は80μm以下がより好ましく、60μm以下が特に好ましい。
[Fe基合金粉末の製造方法]
粉末の製造方法として、水アトマイズ法、単ロール急冷法、双ロール急冷法、ガスアトマイズ法、ディスクアトマイズ法及び遠心アトマイズ法が例示される。好ましい製造方法は、単ロール冷却法、ガスアトマイズ法及びディスクアトマイズ法である。粉末に、メカニカルミリング等が施されてもよい。ミリング方法として、ボールミル法、ビーズミル法、遊星ボールミル法、アトライタ法及び振動ボールミル法が例示される。
積層造形に用いる粉末は、球状化の観点から、ガスアトマイズ法が好ましい。本発明では、以下の実施例では、ガスアトマイズを例に説明する。
[造形]
造形物の作製方法として、金属粉末を溶融および凝固する工程である急速溶融急冷凝固プロセスが挙げられる。このプロセスの具体例として、三次元積層造形法、溶射法、レーザーコーティング法および肉盛法が挙げられる。特に、本発明のFe基合金粉末は、粉末床溶融結合方式の三次元積層造形法に適しており、大きなサイズの造形物を高密度に形成することができる。
三次元積層造形法として、例えば3Dプリンターを用いることができる。積層造形法のうち粉末床溶融結合方式(パウダーベッド方式)では、敷き詰められた本発明のFe基合金粉末に、レーザービーム又は電子ビームが照射される。照射により、粒子が急速に加熱され、急速に溶融する。溶融された粒子はその後、急速に凝固する。この溶融と凝固とにより、粒子同士が結合する。照射は、敷き詰められたFe基合金粉末の一部に対して選択的になされる。敷き詰められた粉末のうち、照射がなされなかった部分は、溶融しない。照射がなされた部分のみにおいて、結合層が形成されることとなる。
結合層の上に、さらにFe基合金粉末が薄く敷き詰められる。このFe基合金粉末の一部に、レーザービーム又は電子ビームが照射される。照射により、粒子が急速に溶融する。溶融された粒子はその後、急速に凝固する。この溶融と凝固とにより、粉末中の粒子同士が結合され、新たな結合層が形成される。新たな結合層は、既存の結合層とも結合される。
照射による結合が繰り返されることにより、結合層の集合体が徐々に成長する。この成長により三次元形状を有する造形物が得られる。この積層造形法により、複雑な形状の造形物が、容易に得られる。
[球形度]
粉末の球形度は、0.80~0.95が好ましい。球形度が0.80以上である粉末は、流動性に優れる。そこで、球形度は0.83以上がより好ましく、0.85以上が特に好ましい。
他方、球形度が1に近いとレーザーの反射率が高くなるので、粉体にレーザーのエネルギーの効率が低下する。そこで、レーザーの反射が抑制の観点からは、粉末の球形度が0.95以下である粉末であることが好ましい。そこで、球形度は0.93以下がより好ましく、0.90以下が特に好ましい。
球形度の測定では、粉末が樹脂に埋め込まれた試験片が準備される。この試験片が鏡面研磨に供され、研磨面が光学顕微鏡で観察される。顕微鏡の倍率は、100倍である。無作為に抽出された20個の粒子について画像解析がなされ、この粒子の球形度が測定される。20個の測定値の平均が、粉末の球形度である。球形度は、粉末1粒子の最大長と、最大長に対して垂直方向における長さの割合を意味している。
[熱処理]
Fe基合金粉末を用いた造形物は、形成された未熱処理造形物をそのまま用いるのではなく、未熱処理造形物に対して溶体化熱処理を施す工程、および時効熱処理を施す工程を経ることで、本発明の所望する特性の造形物を得ることができる。
溶体化熱処理の制御により、Laves相の析出を抑制し、過飽和マルテンサイト組織が得られる。時効熱処理の制御により、マルテンサイト相内にTi、Al、Moなどを含む金属間化合物が析出される。これらの金属間化合物に起因して、機械的特性、特に強度に優れる造形物が得られる。
[溶体化熱処理]
溶体化熱処理温度:910~1030℃
処理時間:好ましくは0.5~5.0時間
溶体化熱処理の温度が910℃以上の場合、Laves相の析出が抑制される。さらに、合金元素が十分に固溶したマルテンサイト組織が得られる。この観点から、溶体化熱処理の温度は910℃以上とする。好ましくは、溶体化熱処理の温度は950℃以上である。もっとも、温度が1030℃を超えると、結晶粒粗大化が顕著になるため、強度低下が生じる。そこで、溶体化熱処理の温度は、910~1030℃とする。
上述の溶体化熱処理温度に到達することで、Laves相の抑制しうるので、合金元素が十分に固溶したマルテンサイト組織が得られる。Laves相の析出を抑制するうえでは、本発明の温度での溶体化熱処理の処理時間は0.5時間以上が好ましい。もっとも、溶体化熱処理の処理時間が長すぎると、結晶粒が粗大化するため、強度が低下する。そこで、910~1030℃での溶体化処理時間は、0.5~5.0時間が好ましい。より好ましくは、溶体化処理時間は0.5~4.0時間である。
[時効熱処理]
処理温度:450~440℃
処理時間:1.0~6.0時間
時効熱処理の温度が450℃以上であれば、TiAlやTiMoをはじめとした金属間化合物が十分に析出した組織が得られる。そこで、時効熱処理温度は450℃以上とする。好ましくは、470℃以上である。そして、温度が550℃以下である時効では、合金元素の母相への固溶が抑制される。さらに、結晶粒粗大化が抑制される。もっとも、550℃を超えると、母相への固溶や結晶粒粗大化が抑制され難くなる。そこで、時効熱処理温度は550℃以下とする。好ましくは、530℃以下である。
時効熱処理の時間は、1.0時間以上の場合、TiAlやTiMoをはじめとした金属間化合物が十分に析出した組織が得られる。そこで、処理時間は1.0時間以上とする。もっとも、時効熱処理の処理時間が長い場合、結晶粒が粗大化するため、強度が低下する。そこで、処理時間は6.0時間以下とする。好ましくは、処理時間は5.0時間以下である。
[熱処理後の造形物の物性]
ロックウェル硬さが50HRC以上である造形物は、強度に優れる。この観点から、ロックウェル硬さは50HRC以上が好ましい。そして、ロックウェル硬さが60HRC以下である造形物は、靱性及び耐久性に優れる。他方、ロックウェル硬さが60HRCを超えると、靭性や耐久性に支障が生じてくる場合がある。この観点から、ロックウェル硬さは60HRC以下が好ましい。
シャルピー衝撃値が16.0J/cm2以上である造形物は、靭性に優れる。そこで、シャルピー衝撃値は、16.0J/cm2以上が好ましく、20.0J/cm2以上がより好ましい。一方で、シャルピー衝撃値が大きい場合、強度は低下する傾向がある。この観点から、シャルピー衝撃値は30.0J/cm2以下が好ましい。
常温引張強度が1700MPa以上である造形物は、強度に優れる。そこで、常温引張強度は1700MPa以上が好ましく、1800MPa以上がより好ましい。一方で、常温引張強度が大きい場合、靭性が低下する傾向がある。この観点から、常温引張強度は2200MPa以下が好ましい。
[相対密度]
熱処理を施した造形物の相対密度は、90%以上であることが好ましい。この造形物は、造形物内部の欠陥が少なく、硬さに優れる。この観点から、相対密度は93%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましい。
相対密度は、積層造形法等で作製した10mm角試験片の密度と、原料である粉末のかさ密度との比に基づいて算出される。10mm角試験片の密度は、アルキメデス法によって測定される。粉末のかさ密度は、乾式密度測定器によって測定される。
かさ密度の測定では、Heガス置換を利用した定容積膨張法によって測定される。この測定に適した装置として、島津製作所の乾式自動密度計「AccuPyc1330」が挙げられる。この装置のセル内に、粉末を充填させて密度を測定する。
[実施例]
表1の実施例1~18及び比較例1~9に記載の化学成分及び残部Fe及び不可避不純物からなる原料をガスアトマイズすることでFe基合金粉末とした。
まず、真空中にて、アルミナ製坩堝で、所定の組成を有する原料を高周波誘導加熱で加熱し、溶解した後、坩堝下にある直径が5mmのノズルから、溶湯を落下させた。次いで、この溶湯に向けてアルゴンガスを噴霧し、多数の粒子を得た。これらの粒子に分級を施して直径が63μmを超える粒子を除去し、Fe基合金粉末を得た。
Figure 2022148950000002
Figure 2022148950000003
[造形]
この粉末を原料として、三次元積層造形装置(EOS-M280)による積層造形法を用いて、粉体の敷き詰めと照射を繰り返し、所定の形状(たとえば一辺10mmの立方体)の未熱処理造形物を得た。
[熱処理]
この未熱処理造形物に、表1に示される条件で溶体化熱処理を施した。このときの冷却方法は空冷であった。溶体化熱処理の後、表1に示される条件で時効化熱処理を施した。このときの冷却方法は空冷であった。
[造形物の相対密度]
造形物の密度を、アルキメデス法によって測定した。乾式自動密度計「AccuPyc1330」によって測定した粉末のかさ密度から、造形物の相対密度を算出した。造形物の相対密度は、いずれも99%以上であることを確認した。
[造形物の硬さ測定]
熱処理を施した10mm角の試験片(10×10×10mm)を作製し、先端半径0.2mmのダイヤモンド鋼球が付いた圧子で、試験面に基本荷重である10kgfをかけた。次に、基本加重に試験荷重である100kgfを足した110kgfの荷重を試験片に加え、この試験片を塑性変形させた。次に、荷重を基準荷重である10kgfに戻し、基準面からの永久窪みの深さを測定した。この深さから、変換式により、ロックウェル硬さHRCを算出した。測定は、熱処理前及び熱処理後に行った。この結果を表1、2に示す。
[シャルピー衝撃値の測定]
造形物の靱性を確認するために、熱処理を施したJIS 4号試験片である2mmV切欠き試験片(角10mm、長さ55mm)に対して、JIS Z 2242に則って2mmUノッチのシャルピー衝撃試験を実施した。3回平均の値をシャルピー衝撃値として、結果を表1、2に示す。
[常温引張特性]
JIS 14A号φ5試験片(直径5mm、標点間距離25mm)を作製し、JISの規定に準拠して、引張試験を行った。試験中に加わった最大引張応力σ(σ=測定荷重F/断面積S)を引張強さとして、結果を表1、2に示す。
[TEM観察]
熱処理を施した造形体に対して、FIB(集光イオンビーム)加工にて、薄膜状の試料を作製した。この試料を透過電子顕微鏡(TEM)で観察し、無作為で抽出された10箇所(1箇所は2μm四方の領域)で析出物の組成を特定した。
実施例12の結果を図1に、比較例8の結果を図2に示す。実施例12では、析出物はTi、Al、Moからなる析出物であるのに対し、比較例8では、Laves相が析出している。
以上の通り、本発明の実施例の手順で製造された造形物は、適切な溶体化処理と時効処理が施されているので、Laves相の析出を抑制することができており、造形物の靭性は16~30J/mm2の範囲にあり優れている。
さらに、Ti、Al、Moからなる金属間化合物の析出が確認でき、強度は1700~2200MPaの範囲にあり優れている。
また、硬さはいずれも50HRC以上を満たすものとなった。
このように、実施例の方法に基づくと、高強度かつ高靭性を両立する造形物を得ることができる。
比較例については、図2にも例示するように、Laves相が析出しており、高靭性の造形体を得ることができなかった。
このように、本発明の製造方法を行うことで、強度と靭性に優れた造形物を得ることができる。

Claims (3)

  1. 質量%で、
    Ni:15.0~21.0%、
    Mo:0.01~10.0%、
    Al:0.01~3.00%、
    Co:0.45%以下(ただし、Coは0%の場合を含む)、
    Ti:0.10~6.00%、
    Nb:2.0%以下(ただし、Nbは0%の場合を含む)、
    残部Fe及び不可避的不純物からなるFe基合金粉末を原料として、
    溶融・凝固させて所定の形状の造形物を造形する工程と、
    該造形物を910~1030℃で溶体化熱処理する工程と、
    450~550℃にて1.0~6.0時間処理する時効熱処理工程とを含む、
    造形物の製造方法。
  2. 質量%で、
    Ni:15.0~21.0%、
    Mo:0.01~10.0%、
    Al:0.01~3.00%、
    Co:0.45%以下(ただし、Coは0%の場合を含む)、
    Ti:0.10~6.00%、
    Nb:2.0%以下(ただし、Nbは0%の場合を含む)、
    残部Fe及び不可避的不純物からなるFe基合金粉末を原料として、
    溶融・凝固させて所定の形状の造形物を造形する工程と、
    該造形物を910~1030℃で0.5~5.0時間処理する溶体化熱処理する工程と、
    450~550℃にて1.0~6.0時間処理する時効熱処理工程とを含む、
    造形物の製造方法。
  3. 造形物を作製する工程が、Fe基合金粉末を積層して溶融・凝固させる積層造形法による工程である、請求項1または2に記載の製造方法。
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