JP2022122461A - 積層造形用Fe基合金粉末および積層造形物 - Google Patents

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将啓 坂田
Masahiro Sakata
芳和 相川
Yoshikazu Aikawa
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Abstract

【課題】 急速溶融急冷凝固を伴うプロセスにおいてTi酸化物のような突起物が形成させることのない、高密度で、かつ優れた硬さなどの機械的特性を有する造形物が得られるFe基合金粉末と、この粉末からなる造形物の提供。【解決手段】 質量%で、Ni:15.0~21.0%、Mo:0.01~5.00%、Al:0.01~3.00%、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする積層造形用Fe基合金粉末。【選択図】 なし

Description

本発明は、三次元積層造形法、溶射法、レーザーコーティング法、肉盛法等の、急速溶融急冷凝固を伴うプロセスに適したFe基合金粉末に関する。とりわけ、パウダーベッド方式(粉末床溶融結合方式)による積層造形法に好適なFe基合金粉末に関する。
金属からなる造形物の製作に、3Dプリンターが使用されはじめている。この3Dプリンターとは、積層造形法によって造形物を製作するものであり、金属積層造形法の代表的な方式にはパウダーベッド方式(粉末床溶融結合方式)やメタルデポジション方式(指向性エネルギー堆積方式)などがある。パウダーベッド方式では、レーザービームまたは電子ビームの照射によって、敷き詰められた粉末のうち照射された部位が溶融し凝固する。この溶融と凝固により、粉末粒子同士が結合する。照射は、金属粉末の一部に選択的になされ、照射がなされなかった部分は、溶融せず、照射がなされた部分のみにおいて、結合層が形成される。
形成された結合層の上に、さらに新しい金属粉末が敷き詰められ、それらの金属粉末にレーザービームまたは電子ビームの照射が行われる。すると、照射により、金属粒子が溶融、凝固し、新たな結合層が形成される。また、新たな結合層は、既存の結合層とも結合される。
照射による溶融・凝固が順次繰り返されていくことにより、結合層の集合体が徐々に成長する。この成長により、三次元形状を有する造形体が得られる。こうした積層造形法を用いると、複雑な形状の造形物が、容易に得られる。
パウダーベッド方式の積層造形法としては、「鉄系粉末」と、「ニッケル、ニッケル系合金、銅、銅系合金、および黒鉛から成る群から選ばれる1種類以上の粉末」が混合されたものを金属光造形用金属粉末として用い、これらの金属粉末を敷く粉末層形成ステップと、粉末層にビームを照射して焼結層を形成する焼結層形成ステップと、造形物の表面を切削する除去ステップを繰り返して焼結層を形成して、三次元形状造形物を製造するといった手順が開示されている(特許文献1参照。)。
航空、宇宙分野の構造物等向けの合金には、強度および耐疲労性が要求される。このような用途には、たとえば、マルエージング鋼が適している。そして、一般的なマルエージング鋼は、Cを実質的に含まず、かつ、Ni、Mo、Ti、Co等の合金元素を含んでいる(特許文献2参照。)。
そこで、主成分がFeであり、Ni:15~21%、Co:5%以下、Mo:7%以下、Ti:0.1~6%、Al:0.1~3%を含有するFe基合金粉末が提案されている(特許文献2参照。)。なお、このマルエージング鋼にはTiが0.1質量%以上含有されている一方で、このマルエージング鋼には、Nbが含まれていない。
また、主成分がFeであり、Ni:14~22%、Co:0~5%、Mo:0.1~15%、Ti:0.1~5%、Al:3%以下を含有するマルエージング鋼からなる積層造形用合金粉末が提案されている(特許文献3参照。)。なお、このマルエージング鋼にはTiが0.1質量%以上含有されている一方で、このマルエージング鋼には、Nbが含まれていない。
特開2008-81840号公報 特開2020-63519公報 特開2020-45567公報
航空、宇宙分野の構造材、金型等には、強度、耐疲労性、靭性に優れることが要請されることから、それらの特性に優れるマルエージング鋼を適用することが一般的には好適とされる。もっとも、前述の特許文献2、3に開示されているマルエージング鋼は、いずれもTiを0.1%以上含んでいるので、積層造形法によって大きいサイズの造形物を作製しようとするときには、Ti酸化物が形成されることがあることがわかった。
たとえば、粉末床溶融結合方式で積層造形する場合には、形成されたTi酸化物が突起物となって、薄い粉末層に顕出されることとなる。すると、本来は粉末層が平らになるはずのところが、平らにならず、部分的に凸になる箇所が顕れる。結合層の上に、さらに新しい金属粉末を敷き詰めてはレーザー照射を逐次繰り返していく方法であるところ、凸となる箇所に本来は平面的に敷き詰めるはずだった粉末が乗り上がるようになるため、周囲の粉末層は部分的に所定の粉末層厚さ以上の厚さとなってしまう。そこで、所定のレーザー照射位置と敷き詰められた粉末層とが正しく合致しきれず、レーザー照射による造形時に乗り上げの周囲が溶融不足となるなどしてしまうこととなる。すると、できあがった大きいサイズの造形物の内部に欠陥が生じるなどの不具合がもたらされる。このようにTi酸化物による突起物があると、とくに大きなサイズの造形物を製造する際には、欠陥を含まない造形物の作製が困難となる。
そこで、本発明の目的は、急速溶融急冷凝固を伴うプロセスにおいてTi酸化物のような突起物が形成させることのない、高密度で、かつ優れた硬さなどの機械的特性を有する造形物が得られるFe基合金粉末と、この粉末からなる造形物を提供することである。
発明者らの検討したところ、Ti酸化物の乗り上げに起因しての欠陥形成などのトラブルを低減させるために、Tiを0.10%までの含有に留めると、大きいサイズの造形物を積層造形させる場合においても、高密度の造形物が得られやすいものとなった。もっとも、Tiが0.10%以下となると強度が低下してしまい十分とはいえないことから、さらなる工夫が必要となった。
Fe基合金の強化元素であるTiとAlは、他元素と金属間化合物を形成することで、強度を向上させる役割があるが、TiとAlはいずれも活性な元素であるため、酸素と反応して、酸化物を形成しやすい。そこで発明者らは鋭意検討した結果、酸素と反応しにくく、かつ結晶粒微細化による強度向上が期待できるNbを添加することによって、高密度かつ機械的特性に優れた造形物が得られることを見出すに至った。また、Coは、オーステナイト相を形成する元素であって、マルテンサイト相の形成を抑制することとなるので、このFe基合金では、Coの含有量を0.5%以下とすることが好ましい。
そこで本発明の課題を解決する第1の手段は、質量%で、Ni:15.0~21.0%、Mo:0.01~5.00%、Al:0.01~3.00%、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする積層造形用Fe基合金粉末である。
その第2の手段は、第1の手段に記載の成分に、さらに、Nbを0.10~3.00%以下含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする積層造形用Fe基合金粉末である。
その第3の手段は、第1または第2に記載の成分にさらに、Co:0.50%未満、Ti:0.10%未満を1種又は2種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする積層造形用Fe基合金粉末である。
その第4の手段は、平均粒子径D50(μm)とそのタップ密度TD(Mg/m3)との比(D50/TD)が、0.2~20.0であることを特徴とする第1~3のいずれか1項に記載のFe基合金粉末である。
その第5の手段は、第1~4の手段のいずれか1手段に記載のFe基合金粉末から作製された積層造形物である。
本発明のFe基合金粉末は、従来のマルエージング鋼のようにTiは含有されておらず、もしくはTiの含有量を従前よりも極めて低く抑えているので、積層造形法に用いても、Ti酸化物のような突起物に起因した乗り上げによる造形不良などが生じにくく、大きいサイズの造形物を作製する場合においても、高密度な造形物を安定して形成することが可能である。
さらに、本発明のFe基合金粉末にNbを0.10~3.0%添加した場合には、高密度であることに加えて十分な硬さを備えることができるので、マルエージング鋼の適用場面で所望されている機械的特性を十分に兼ね備えており、積層造形により高密度と硬さのいずれにも優れた造形物を得ることができる。
本発明におけるFe基合金粉末は、従来の合金元素としてNi、Mo、Ti、Coを含んだマルエージング鋼と異なり、Tiフリー、Coフリー、あるいは、TiやCoの含有を極めて抑えたFe基合金粉末である。そして、本発明の実施の形態の説明に先立って、以下では、まず、本発明のFe基合金粉末の成分、特性を規定する理由について説明する。なお、以下の%は質量%である。
Ni:15.0~21.0%
Niは、MoおよびAlと金属間化合物を形成し、優れた強度を有する造形物を得るための元素である。この観点から、Niは15.0%以上が好ましく、16.0%以上がより好ましく、17.0%以上が特に好ましい。
もっとも、Niは、オーステナイト相を形成する元素であるため、多量のNiを添加すると、マルテンサイト変態が抑制され、マルテンサイト相の形成が困難となる。この観点から、Niの含有率は21.0%以下が好ましい。より好ましくは、Niは20.0%以下である。特に好ましくは、Niは19.5%以下である。
Mo:0.01~5.00%
Moは、Feと金属間化合物を形成し、強度を確保するための元素である。この観点から、Moは1.0%以上であることが好ましい。
もっとも、多量のMoを添加すると、靭性が低下する。この観点から、Moは5.0%以下が好ましい。より好ましくは、4.0%以下である。
Al:0.01~3.00%
Alは、Niと金属間化合物を形成し、強度、耐酸化性に優れる造形物を得るための元素である。この観点から、Alの含有率は0.01%以上が好ましく、0.1%以上がより好ましい。
もっとも、多量のAlを添加すると、急速溶融急冷凝固プロセスにおいて高温割れが生じやすい。この観点から、Alの含有率は3.0%以下が好ましく、2.5%以下がより好ましい。
Nbを0.10~3.00%
Nbは、結晶粒微細化の効果があり、強度を確保するための元素である。また、NbはTiと異なり、酸化物を形成しにくいため、乗り上げ現象を起こさない。これらの観点から、Nbの含有率は0.01%以上添加することが好ましい。より好ましくは、Nbの含有率は0.1%以上添加することである。
もっとも、多量のNbを添加すると、靭性が低下する。この観点から、Nbの含有率は3.0%以下が好ましく、より好ましくは、2.5%以下である。
Co:0.50%未満
Coは、オーステナイト相を形成する元素である。よって、Coの含有率が多い場合には、マルテンサイト相の形成が困難となる。そこで、この観点から、Coが含有される場合であっても、その含有率は0.50%未満であることが好ましく、より好ましくは0.1%未満である。
Ti:0.10%未満
Tiは、強化元素であるが、活性であるため、積層造形中に酸化物を形成しやすく、造形不良や欠陥を招来しかねない乗り上げ現象を起こすなど、造形物の形成を妨げる元素でもある。この観点から、Tiを含有する場合であっても、Tiの含有は、0.10%未満がより好ましい。
D50/TD:0.2~20.0
平均粒子径D50(μm)とそのタップ密度TD(Mg/m3)の比である「D50/TD」は、粉末の流動性と造形性のバランスを示す指標である。D50/TDが0.2未満である場合、微粉化により粉末の流動性が低下し、造形物の密度が低下する。もっとも、D50/TDが20より大きい場合、積層造形時に粉末の一部が溶け残って焼結され、欠陥として残存する。
よって、D50/TDは0.2~20.0であることが好ましい。
平均粒子径D50の測定では、粉末の全体積が100%とされて、累積カーブが求められる。このカーブ上の、累積体積が50%である点の粒子径が、平均粒子径D50である。平均粒子径D50は、レーザー回折散乱法によって測定される。この測定に適した装置として、日機装社のレーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置「マイクロトラックMT3000」が挙げられる。この装置のセル内に、粉末が純水と共に流し込まれ、粒子の光散乱情報に基づいて、粒子径が検出される。
タップ密度は、「JIS Z 2512」の規定に準拠して測定される。測定では、約50gの粉末が容積100cm3のシリンダーに充填され、密度が測定される。測定条件は、以下の通りである。
落下高さ:10mm
タップ回数:200
[Fe基合金粉末の粒子径]
Fe基合金粉末の平均粒子径は、10μm以上100μm以下が好ましい。平均粒子径が10μm以上である粉末は、流動性に優れる。この観点から、平均粒子径は20μm以上がより好ましく、30μm以上が特に好ましい。平均粒子径が100μm以下である粉末から、相対密度が大きい造形物が得られうる。この観点から、平均粒子径は80μm以下がより好ましく、60μm以下が特に好ましい。
[Fe基合金粉末の製造方法]
粉末の製造方法として、水アトマイズ法、単ロール急冷法、双ロール急冷法、ガスアトマイズ法、ディスクアトマイズ法および遠心アトマイズ法が例示される。好ましい製造方法は、単ロール冷却法、ガスアトマイズ法およびディスクアトマイズ法である。粉末に、メカニカルミリング等が施されてもよい。ミリング方法として、ボールミル法、ビーズミル法、遊星ボールミル法、アトライタ法および振動ボールミル法が例示される。
積層造形に用いる粉末は、球状化の観点から、ガスアトマイズ法が好ましい。本発明では、以下の実施例では、ガスアトマイズを例に説明する。
[造形]
造形物の作製方法として、金属粉末を溶融および凝固する工程である急速溶融急冷凝固プロセスが挙げられる。このプロセスの具体例として、三次元積層造形法、溶射法、レーザーコーティング法および肉盛法が挙げられる。特に、本発明のFe基合金粉末は、粉末床溶融結合方式の三次元積層造形法に適しており、大きなサイズの造形物を高密度に形成することができる。
三次元積層造形法として、例えば3Dプリンターを用いることができる。積層造形法のうち粉末床溶融結合方式(パウダーベッド方式)では、敷き詰められた本発明のFe基合金粉末に、レーザービーム又は電子ビームが照射される。照射により、粒子が急速に加熱され、急速に溶融する。溶融された粒子はその後、急速に凝固する。この溶融と凝固とにより、粒子同士が結合する。照射は、敷き詰められたFe基合金粉末の一部に対して選択的になされる。敷き詰められた粉末のうち、照射がなされなかった部分は、溶融しない。照射がなされた部分のみにおいて、結合層が形成されることとなる。
結合層の上に、さらにFe基合金粉末が薄く敷き詰められる。このFe基合金粉末の一部に、レーザービーム又は電子ビームが照射される。照射により、粒子が急速に溶融する。溶融された粒子はその後、急速に凝固する。この溶融と凝固とにより、粉末中の粒子同士が結合され、新たな結合層が形成される。新たな結合層は、既存の結合層とも結合される。
照射による結合が繰り返されることによって、結合層の集合体が徐々に成長する。この成長により、三次元形状を有する造形物が得られる。この積層造形法により、複雑な形状の造形物が、容易に得られる。
本発明においては、Tiを極力用いないことから、Ti酸化物による乗り上げ現象が起こらず、造形不良となりにくいので、所望の高密度を維持しやすいものとなっている。
[球形度]
粉末の球形度は、0.80~0.95が好ましい。球形度が0.80以上である粉末は、流動性に優れる。そこで、球形度は0.83以上がより好ましく、0.85以上が特に好ましい。
他方、球形度が1に近いとレーザーの反射率が高くなるので、粉体にレーザーのエネルギーの効率が低下する。そこで、レーザーの反射が抑制の観点からは、粉末の球形度が0.95以下である粉末であることが好ましい。そこで、球形度は0.93以下がより好ましく、0.90以下が特に好ましい。
球形度の測定では、粉末が樹脂に埋め込まれた試験片が準備される。この試験片が鏡面研磨に供され、研磨面が光学顕微鏡で観察される。顕微鏡の倍率は、100倍である。無作為に抽出された20個の粒子について画像解析がなされ、この粒子の球形度が測定される。20個の測定値の平均が、粉末の球形度である。球形度は、粉末1粒子の最大長と、最大長に対して垂直方向における長さの割合を意味している。
[熱処理]
Fe基合金粉末を用いた造形物は、形成された未熱処理造形物をそのまま用いるのではなく、未熱処理造形物に対して溶体化熱処理を施す工程、および時効熱処理を施す工程を経ることで、本発明の所望する特性の造形物を得ることができる。
溶体化熱処理を施すことにより、過飽和マルテンサイト組織が得られる。次に、時効熱処理を施すことにより、マルテンサイト相内にNi、Mo、またはAlを含む金属間化合物が析出される。これらの金属間化合物に起因して、機械的特性に優れる造形物が得られる。
[溶体化熱処理]
溶体化熱処理の温度が700℃以上の場合、合金元素が十分に固溶したマルテンサイト組織が得られる。この観点から、溶体化熱処理の温度は700℃以上が好ましく、750℃以上がより好ましい。温度が900℃以下の場合、組織の脆化が抑制される。この観点から、温度は900℃以下が好ましい。
溶体化熱処理時間が1.0h以上の場合には、合金元素が十分に固溶したマルテンサイト組織が得られる。この観点から、溶体化熱処理の時間は1.0h以上が好ましく、1.5h以上がより好ましい。もっとも、溶体化熱処理の時間が3.0h以下であるほうが、エネルギーコストが抑制されるので、3.0h以下であることが好ましい。さらに、溶体化熱処理の時間は2.5h以下であることがより好ましい。
時効熱処理の温度が450℃以上の場合には、Ni3MoやNi3Alなどの金属間化合物が十分に析出した組織が得られる。この観点から、時効熱処理の温度は450℃以上が好ましく、470℃以上が特に好ましい。温度が550℃以下である時効では、合金元素の母相への固溶が抑制される。さらに、結晶粒粗大化が抑制される。この観点から、温度は550℃以下が好ましく、530℃以下がより好ましい。
時効熱処理の時間は、3.0h以上の場合、Ni3MoやNi3Alなどの金属間化合物が十分に析出した組織が得られる。この観点から、時効熱処理の時間は3.0h以上が好ましい。6.0h以下である場合、エネルギーコストが抑制される。さらに、結晶粒粗大化が抑制される。この観点から、時効熱処理の時間は6.0h以下が好ましく、5.5h以下がより好ましい。
[熱処理後の造形物の物性]
ロックウェル硬さ:45~60HRC
ロックウェル硬さHRCが45以上である造形物は、強度に優れる。この観点から、本発明のFe基合金を用いた造形物のロックウェル硬さHRCは45以上であることが好ましい。他方、ロックウェル硬さHRCが60以下である造形物は、靱性および耐久性に優れる。この観点から、ロックウェル硬さHRCは60以下が好ましい。
[相対密度]
熱処理を施した造形物の相対密度は、90%以上が好ましい。この造形物は、造形物内部の欠陥が少なく、硬さに優れる。この観点から、相対密度は93%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましい。
相対密度は、積層造形法等で作製した10mm角試験片の密度と、原料である粉末のかさ密度との比に基づいて算出される。10mm角試験片の密度は、アルキメデス法によって測定される。粉末のかさ密度は、乾式密度測定器によって測定される。
かさ密度の測定では、Heガス置換を利用した定容積膨張法によって測定される。この測定に適した装置として、島津製作所の乾式自動密度計「AccuPyc1330」が挙げられる。この装置のセル内に、粉末を充填させて密度を測定する。
[実施例]
表1に記載の実施例1~20の化学成分からなる鋼を、それぞれガスアトマイズすることでFe基合金粉末とした。また、表2に記載の比較例1~2の化学成分からなる鋼も同様にガスアトマイズすることでFe基合金粉末とした。
まず、真空中にて、アルミナ製坩堝で、表1および表2の所定の組成を有する原料を高周波誘導加熱で加熱し、溶解した後、坩堝下にある直径が5mmのノズルから、溶湯を落下させた。次いで、この溶湯に向けてアルゴンガスを噴霧し、多数の粒子を得た。これらの粒子に分級を施して直径が63μmを超える粒子を除去し、Fe基合金粉末を得た。
Figure 2022122461000001
Figure 2022122461000002
[造形]
これらの粉末を原料として、三次元積層造形装置(EOS-M280)による積層造形法を実施し、大型サイズ(250×250×10mm)の直方体の造形を試み、実施例1~20について、この大型サイズの未熱処理造形物を得た。
なお、造形に際しては、表1に示したように、本発明の実施例1~20の粉末がD50/TD:0.2~20.0の範囲であることを確認してから、造形に用いた。結果、造形中及び造形物に不良は認められず、所望の造形物を得ることができた。
他方、表2に記載のとおり、比較例1、2では、この大型サイズの造形物は造形不良となり、造形物を得ることができなかった。
[熱処理]
実施例1~20の大型サイズの未熱処理造形物に、表1に示される熱処理条件、即ち、温度800又は820℃、時間は1時間又は2時間もしくは3時間で溶体化熱処理を施した。このときの冷却方法は空冷であった。さらに、溶体化熱処理の後、温度480℃又は520℃で、3時間もしくは5時間の時効熱処理を行なった。このときの冷却方法も空冷であった。
[比較例における大型サイズ(250×250×10mm)の造形]
表2の比較例1および比較例2において、大型サイズ(250×250×10mm)の造形は、表2に記載のとおり、途中で造形不良が生じたので、中断した。
[造形物の相対密度]
造形物の密度は、アルキメデス法によって測定した。すなわち、乾式自動密度計「AccuPyc1330」によって測定した粉末のかさ密度から、造形物の相対密度を算出し、造形性を評価した。表3に実施例1~20の造形物の相対密度を示す。
[造形物の硬さ測定]
硬さ測定のために、大型サイズの直方体(250×250×10mm)から10mm角の試験片(10×10×10mm)を切り出し、先端半径0.2mmのダイヤモンド鋼球が付いた圧子で、試験面に基本荷重である10kgfをかけた。次に、基本加重に試験荷重である100kgfを加えた110kgfの荷重を10mm角の試験片にかけて、この試験片を塑性変形させた。次に、荷重を基準荷重である10kgfに戻し、基準面からの永久窪みの深さを測定した。この深さから、変換式により、ロックウェル硬さを算出した。測定は、熱処理後に行った。表3に硬さ(HRC)を示す。
[シャルピー衝撃値の測定]
造形物の靱性を確認するために、JIS 4号試験片である2mmV切欠き試験片(10×10×55mm)に対して、JIS Z 2242に則ってシャルピー衝撃試験を実施し、3回平均の値をシャルピー衝撃値として表3に示した。
Figure 2022122461000003
以上のとおり、本発明の実施例No.1~20の積層造形用Fe基合金粉末は、乗り上げ現象による造形不良を起こすこともなく、積層造形法によって大型の造形物を適切に得ることができた。得られた造形物の相対密度は99.7~99.8%と、いずれも極めて高密度であった。
また、極めて高密度な造形物が得られることから、熱伝導性にも優れており、金型等の大型の造形物として用いた場合には優れた特性となる。
また、時効処理後の硬さも、48.7~53.7HRCとなった。45HRC以上の十分な硬さを確保しており、高密度と相まって耐久性も確保されている。また、造形物のシャルピー衝撃値は、18.8~26.6J/cm2となった。このように硬さが高すぎないことから、靭性とのバランス上も優れている。
比較例については、そもそも造形不良となり、大型の造形物を得ることができなかったので、造形物の評価をすることに至らなかった。このように、本発明の積層造形用Fe基合金粉末を用いることで、硬さと高密度を両立させた優れた造形物を得ることができる。

Claims (5)

  1. 質量%で、Ni:15.0~21.0%、Mo:0.01~5.00%、Al:0.01~3.00%、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする積層造形用Fe基合金粉末。
  2. 請求項1に記載の成分に、さらに、Nbを0.10~3.00%以下含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする積層造形用Fe基合金粉末。
  3. 請求項1または2に記載の成分にさらに、Co:0.50%未満、Ti:0.10%未満を1種又は2種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする積層造形用Fe基合金粉末。
  4. 平均粒子径D50(μm)とそのタップ密度TD(Mg/m3)との比(D50/TD)が、0.2~20.0であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の積層造形用Fe基合金粉末。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載のFe基合金粉末から作製された積層造形物。
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