JP2023050085A - 溶融凝固成形用Fe基合金及び金属粉末 - Google Patents

溶融凝固成形用Fe基合金及び金属粉末 Download PDF

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Abstract

【課題】積層造形などの溶融凝固成形に用いた時に、造形物に割れが発生しにくく、かつ、高硬度の肉盛り層、積層造形物等を得ることが可能な溶融凝固成形用Fe基合金、及び、これと同等の平均組成を有する金属粉末を提供すること。【解決手段】溶融凝固成形用Fe基合金は、18.0≦Co<25.0mass%、12.0≦Mo+W/2≦20.0mass%、0.2≦Mn≦5.0mass%、及び、0.5≦Ni≦10.0mass%を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなり、58≦Co+3(Mo+W/2)≦95、及び、A/B≧1.6を満たす。但し、A=Co+Ni+3Mn、B=Mo+W/2+Si。金属粉末は、平均組成が当該溶融凝固成形用Fe基合金と同等であるものからなる。【選択図】図2

Description

本発明は、溶融凝固成形用Fe基合金及び金属粉末に関し、さらに詳しくは、肉盛り溶接、積層造形などの溶融凝固成形に用いた時に、造形時に割れが発生しにくく、かつ、高硬度の造形物が得られる溶融凝固成形用Fe基合金、及び、これと同等の平均組成を有する金属粉末に関する。
冷間加工用の金型や摺動部材には、高い耐摩耗性が要求される。一般に、耐摩耗性は、硬さと相関があり、硬さが高いほど耐摩耗性に優れる。特に、高硬度が得られる合金として、高速度工具鋼、Co基超合金、Ni基超合金等が挙げられる。しかしながら、これらの合金は加工性に乏しいため、大体積を機械加工で除去すると工具の摩耗が激しく、加工コストが高くなるという問題がある。
近年、積層造形技術の発達により、これらの難加工材を完成品に近い状態で造形することが可能になってきた。そのため、積層造形用の金属粉末に関し、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、25~35wt%のCoと、10~17.5wt%のMoと、Feとを含む合金粉末が開示されている。
同文献には、このような組成を有する合金粉末を用いて積層造形を行った後、400℃から700℃で造形物を時効処理すると、耐摩耗部材として必要な硬さが得られる点が記載されている。
特許文献2には、積層造形用の金属粉末ではないが、
所定量のCo、Mo、W、及び、Nを含み、残部がFeからなる合金粉末(カーボンフリー析出硬化型Fe-Co-Mo/W-N合金粉末)をHIP処理することにより得られる本体と、
前記本体の表面にPVD法又はCVD法により形成されたコーティングと
を備えた工具(コーティングされた金属製品)が開示されている。
同文献には、本体部を粉末冶金法を用いて作製すると、各相が微細に分散している組織が得られる点が記載されている。
積層造形プロセスでは急冷凝固で組織が形成され、プロセス中に熱応力が発生する。そのため、凝固ままの状態において造形物の靱性が不足していた場合、熱応力によりプロセス中に造形物が割れるという問題があった。
この点に関し、特許文献1には、低温で時効処理することが可能な積層造形用粉末が開示されている。しかしながら、特許文献1に記載の合金粉末を積層造形に適用した場合、成分バランスや冷却条件によっては造形物中にフェライト相が析出する場合がある。フェライト相が析出した部分は冷却後にマルテンサイト組織が得られないため、結晶粒が粗くなりやすく、プロセス中の熱応力により造形物に割れが発生しやすい。また、特許文献1に記載の合金粉末は、相対的に多量のCoを含んでいる。Coは、近年、リチウムイオン電池向け等で需要が増加して入手性が悪く、かつ、価格も高価である。
一方、特許文献2に記載の合金粉末は、HIPにて成形することを前提とした粉末であって、積層造形に適用することを前提とした粉末ではない。また、特許文献2に記載の合金粉末は、積層造形に用いた時に割れが発生する成分(例えば、25%Co、19.2%Moなど)を含んでいる。
特開2020-084286号公報 米国出願公開第2009/0007992号明細書
本発明が解決しようとする課題は、肉盛り溶接、積層造形などの溶融凝固成形に用いた時に、造形物に割れが発生しにくく、かつ、高硬度の肉盛り層、積層造形物等を得ることが可能な溶融凝固成形用Fe基合金を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、このような溶融凝固成形用Fe基合金と同等の平均組成を有する金属粉末を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係る溶融凝固成形用Fe基合金は、
18.0≦Co<25.0mass%、
12.0≦Mo+W/2≦20.0mass%、
0.2≦Mn≦5.0mass%、及び、
0.5≦Ni≦10.0mass%
を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなり、
次の式(1)及び式(2)を満たすことを要旨とする。
58≦Co+3(Mo+W/2)≦95 …(1)
A/B≧1.6 …(2)
但し、
A=Co+Ni+3Mn、
B=Mo+W/2+Si、
Mo、Si及び/又はWを含まない時は、式(1)及び/又は式(2)において、Mo=0、Si=0、及び/又は、W=0として計算する。
本発明に係る金属粉末は、平均組成が本発明に係る溶融凝固成形用Fe基合金と同等であるものからなる。
Fe-Co-Mo系合金において、Coは、
(a)オーステナイト相安定化元素としての機能と、
(b)時効処理時に、マトリックス中にFe-Co-Mo系化合物(μ相)からなる微粒子を析出させる機能と
を備えている。
そのため、Fe基合金の低コスト化を図るために単にCo量を減少させると、析出強化相としてのμ相の析出量が少なくなるだけでなく、凝固時にフェライト相が析出しやすくなる。このようなFe基合金を積層造形に適用した場合において、造形物にフェライト相が析出した時には、冷却後にマルテンサイト組織が得られないために結晶粒が粗くなる。その結果、造形物に割れが発生しやすくなる。
これに対し、Co含有量を必要最低限度に抑えつつ、適量のNi及びMnを添加すると、凝固時におけるフェライト相の析出が抑制され、かつ、時効処理によって適量のμ相を析出させることができる。その結果、このようなFe基合金からなる粉末を肉盛り溶接、積層造形などの溶融凝固成形に用いた時には、造形物に割れが発生しにくく、かつ、高硬度の肉盛り層、積層造形物等を得ることができる。
実施例11で得られた肉盛り溶接部の溶接長方向に対して垂直な断面の写真である。 実施例11及び比較例8で得られた肉盛り溶接部の幅方向の位置と硬さとの関係を示す図である。
以下に、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 溶融凝固成形用Fe基合金]
[1.1. 成分]
本発明に係る溶融凝固成形用Fe基合金(以下、単に「Fe基合金」ともいう)は、以下のような元素を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる。添加元素の種類、その成分範囲、及びその限定理由は、以下の通りである。
[1.1.1. 主構成元素]
(1)18.0≦Co<25.0mass%:
Coは、強化相であるμ相の析出を促進させる機能と、高温でのオーステナイトの安定度を高める機能とがある。そのため、Co含有量が少なくなりすぎると、μ相の析出量が不足し、硬さが著しく低下する。従って、Co含有量は、18.0mass%以上である必要がある。Co含有量は、好ましくは、20.0mass%以上、さらに好ましくは、22.0mass%以上である。
一方、Co含有量が過剰になると、硬さ増加の効果が飽和するだけでなく、製造コストが増加する。従って、Co含有量は、25.0mass%未満である必要がある。
(2)12.0≦Mo+W/2≦20.0mass%:
Mo及びWは、それぞれ、Coと同様に、強化相であるμ相の析出を促進させる機能と、高温でのオーステナイトの安定度を高める機能とがある。また、Wの原子量はMoの約2倍であるため、Moの全部又は一部をMoの2倍の量のWで置き換えても同様の効果が得られる。しかしながら、(Mo+W/2)量が少なくなりすぎると、μ相の析出量が不足し、高硬度な造形物が得られない場合がある。従って、(Mo+W/2)量は、12.0mass%以上である必要がある。(Mo+W/2)量は、好ましくは、14.0mass%以上である。
一方、(Mo+W/2)量が過剰になると、μ相の体積率が大きくなりすぎ、造形物の靱性が低下する場合がある。従って、(Mo+W/2)量は、20.0mass%以下である必要がある。(Mo+W/2)量は、好ましくは、16.0mass%以下である。
(3)0.2≦Mn≦5.0mass%:
Mnは、脱酸材としての機能と、フェライトの形成を抑制する機能とがある。そのため、Mn含有量が少なくなりすぎると、このような粉末を溶融凝固成形に適用した時に、造形時にフェライト相が析出し、造形物に割れが発生しやすくなる。従って、Mn含有量は、0.2mass%以上である必要がある。Mn含有量は、好ましくは、0.5mass%以上、さらに好ましくは、0.7mass%以上である。
一方、Mn含有量が過剰になると、造形物に含まれる残留オーステナイトが増加し、硬さが不足する場合がある。従って、Mn含有量は、5.0mass%以下である必要がある。Mn含有量は、好ましくは、3.0mass%以下、さらに好ましくは、1.0mass%以下である。
(4)0.5≦Ni≦10.0mass%:
Niは、フェライトの形成を抑制する機能がある。そのため、Ni含有量が少なくなりすぎると、このような粉末を溶融凝固成形に適用した時に、造形時にフェライト相が析出し、造形物に割れが発生しやすくなる。従って、Ni含有量は、0.5mass%以上である必要がある。Ni含有量は、好ましくは、0.8mass%以上、さらに好ましくは、1.0mass%以上である。
一方、Ni含有量が過剰になると、造形物に含まれる残留オーステナイトが増加し、硬さが不足する場合がある。従って、Ni含有量は、10.0mass%以下である必要がある。
[1.1.2. 副構成元素]
本発明に係るFe基合金は、上述した元素に加えて、以下のような1種又は2種以上の元素をさらに含んでいても良い。添加元素の種類、その成分範囲、及びその限定理由は、以下の通りである。
(1)0≦Si≦1.0mass%:
Siは、脱酸材としての機能と、μ相の析出を促進する機能とがあり、必要に応じて添加することができる。
しかしながら、Si含有量が過剰になると、μ相の析出が過度に促進され、液相からμ相が晶出しやすくなる。その結果、造形物の靱性が劣化する場合がある。従って、Si含有量は、1.0mass%以下が好ましい。Si含有量は、さらに好ましくは、0.5mass%以下、さらに好ましくは、0.3mass%以下である。
(2)0≦W≦20.0mass%:
上述したように、Wは、Moと同様に、強化相であるμ相の析出を促進させる機能と、高温でのオーステナイトの安定度を高める機能とがあるため、Moの全部又は一部をWに置き換えることができる。しかしながら、W含有量が過剰になると、μ相の体積率が大きくなりすぎ、造形物の靱性が低下する場合がある。従って、W含有量は、20.0mass%以下が好ましい。W含有量は、さらに好ましくは、15.0mass%以下である。
(3) 10.0≦Mo≦20.0mass%:
上述したように、Moは、Wと同様に、強化相であるμ相の析出を促進させる機能と、高温でのオーステナイトの安定度を高める機能とがあるため、Wの全部又は一部をMoに置き換えることができる。しかしながら、Mo含有量が少なくなりすぎると、μ相の析出量が不足し、高硬度が得られない場合がある。従って、Mo含有量は、10.0mass%以上が好ましい。Mo含有量は、さらに好ましくは、12.0mass%以上、さらに好ましくは、14.0mass%以上である。
一方、Mo含有量が過剰になると、μ相の体積率が大きくなりすぎ、靱性が低下する場合がある。従って、Mo含有量は、20.0mass%以下が好ましい。Mo含有量は、さらに好ましくは、16.0mass%以下である。
(4)P≦0.05mass%:
Pは、製造時に混入する不可避的不純物である。Pは、結晶粒界に偏析し、造形物の靱性を低下させる。そのため、P含有量は、0.05mass%以下が好ましい。P含有量は、さらに好ましくは、0.03mass%以下である。P含有量は、少ないほど良い。
(5)S≦0.05mass%:
Sは、製造時に混入する不可避的不純物である。Sは、結晶粒界に偏析し、造形物の靱性を低下させる。そのため、S含有量は、0.05mass%以下が好ましい。S含有量は、さらに好ましくは、0.03mass%以下である。S含有量は、少ないほど良い。
[1.1.3. 不可避的不純物]
本発明に係るFe基合金において、以下に示す成分が以下に示す量で含まれる場合がある。このような場合、本発明においては、これらの成分を不可避的不純物として扱う。
Cr≦0.5mass%、C≦0.1mass%、
Cu≦0.5mass%、Al≦0.2mass%、N≦0.1mass%、
O≦0.1mass%、Sn≦0.05mass%、Nb≦0.05mass%、
Ta≦0.05mass%、Ti≦0.5mass%、Zr≦0.05mass%、
B≦0.02mass%、Ca≦0.01mass%、Se≦0.03mass%、
Te≦0.03mass%、Bi≦0.03mass%、Pb≦0.05mass%、
Mg≦0.02mass%、REM≦0.01mass%。
[1.2. 成分バランス]
本発明に係るFe基合金は、次の式(1)及び式(2)を満たしている必要がある。
58≦Co+3(Mo+W/2)≦95 …(1)
A/B≧1.6 …(2)
但し、
A=Co+Ni+3Mn、
B=Mo+W/2+Si、
Mo、Si及び/又はWを含まない時は、式(1)及び/又は式(2)において、Mo=0、Si=0、及び/又は、W=0として計算する。
[1.2.1. 式(1)]
「Co+3(Mo+W/2)」は、μ相の析出量の指標(以下、これを「指標C」ともいう)となる。指標Cが小さくなりすぎると、高硬度が得られない。従って、指標Cは、58以上である必要がある。指標Cは、好ましくは、61以上、さらに好ましくは、64以上である。
一方、指標Cが大きくなりすぎると、μ相の体積率が大きくなりすぎ、造形物の靱性が著しく劣化する場合がある。従って、指標Cは、95以下である必要がある。指標Cは、好ましくは、85以下、さらに好ましくは、80以下である。
[1.2.2. 式(2)]
式(2)の「A」は、オーステナイト相安定化元素の当量を表す。
式(2)の「B」は、フェライト相安定化元素の当量を表す。
さらに、式(2)の「A/B」(以下、これを「当量比」ともいう)は、フェライト相安定化元素の当量に対するオーステナイト相安定化元素の当量の比を表す。
当量比が小さくなりすぎると、このような粉末を溶融凝固成形に適用した時に、フェライト粒界が割れの起点となり、造形物に割れが発生しやすくなる。従って、当量比は、1.6以上である必要がある。当量比は、好ましくは、1.7以上である。
一方、当量比が大きくなりすぎると、残留オーステナイトが増加して硬さが低下する場合がある。従って、当量比は、2.4未満が好ましい。当量比は、さらに好ましくは、2.2以下である。
[1.3. 形状]
本発明において、Fe基合金の形状は特に限定されない。Fe基合金の形状としては、塊、棒、管、線、粉末などがある。特に、粉末は溶融凝固成形の原料として好適である。
[2. 金属粉末]
本発明に係る金属粉末は、平均組成が本発明に係る溶融凝固成形用Fe基合金と同等であるものからなる。金属粉末は、平均粒子径が10μm以上300μm以下であるものが好ましい。
[2.1. 成分]
「平均組成が溶融凝固成形用Fe基合金と同等である」とは、
(a)金属粉末が同一の組成を有する1種類の金属粒子の集合体からなり、かつ、個々の金属粒子が上述した組成範囲内にあること、
(b)金属粉末が異なる組成を有する2種以上の金属粒子の混合物からなり、かつ、個々の金属粒子がそれぞれ上述した成分範囲内にあること、又は、
(c)金属粉末が異なる組成を有する2種以上の金属粒子の混合物からなり、かつ、1種又は2種以上の金属粒子が上述した成分範囲内にはないが、金属粉末全体の組成の平均値が上述した成分範囲内にあること、
をいう。
金属粉末が異なる組成を有する2種以上の金属粒子の混合物からなる場合、個々の金属粒子は単一の金属元素を含む純金属粒子であっても良く、あるいは、2種以上の金属元素を含む合金粒子であっても良い。金属粉末が混合物からなる場合、その平均組成は、例えば、混合物から10g程度の試料を抜き取り、蛍光X線分析法、燃焼赤外線吸収法、プラズマ発光分光分析法などの方法を用いて分析することにより得られる。
金属粉末の組成(平均組成)の詳細については、上述したFe基合金と同様であるので、説明を省略する。
[2.2. 平均粒径]
「平均粒径」とは、個数頻度D50(μm)、すなわち、粉末の累積50個数%粒子径(メディアン径)をいう。D50の測定方法としては、例えば、
(a)レーザー回折・散乱法に基づく粒子分布測定装置を用いて測定する方法、
(b)粒子画像分析装置を用いて測定する方法、
(c)コールターカウンターを用いて測定する方法、
などがある。
本発明において、「D50」というときは、レーザー回折・散乱法に基づく粒子分布測定装置により測定されたメディアン径をいう。
金属粉末の平均粒径及び粒度分布は、金属粉末の製造条件、及び、金属粉末の分級条件により制御することができる。
金属粉末を用いた溶融凝固成形においては、ノズルを用いて造形領域に金属粉末を供給する場合がある。この場合において、金属粉末の平均粒径が小さくなりすぎると、金属粉末の流動性が低下し、金属粉末を安定的に供給するのが困難となる場合がある。従って、金属粉末の平均粒径は、10μm以上が好ましい。平均粒径は、好ましくは、50μm以上、さらに好ましくは、80μm以上である。
一方、金属粉末の平均粒径が大きくなりすぎると、粒径の大きな粒子がノズルに詰まり、安定して粉末を供給できなくなる場合がある。従って、金属粉末の平均粒径は、300μm以下が好ましい。平均粒径は、好ましくは、200μm以下、さらに好ましくは、150μm以下である。
[2.3. 粒子形状]
金属粉末に含まれる個々の金属粒子の粒子形状は、特に限定されない。金属粒子は、球状粒子でも良く、あるいは、不規則形状粒子でも良い。高い流動性を得るには、金属粒子は、球状粒子が好ましい。
[2.4. 表面被覆]
金属粒子は、表面がナノ粒子で被覆されていても良い。「ナノ粒子」とは、直径が1nm以上100nm以下である無機化合物の粒子をいう。
金属粒子の表面をある種のナノ粒子で被覆すると、金属粒子の凝集を抑制することができる場合がある。金属粒子の凝集を抑制する作用があるナノ粒子としては、例えば、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al23)、酸化マンガン(MnO)、酸化鉄(Fe23)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)などの金属酸化物がある。
金属粒子の表面をナノ粒子で被覆する場合、被覆量が少なすぎると、金属粒子の凝集を十分に抑制することができなくなる場合がある。従って、ナノ粒子の含有量は、0.005mass%以上が好ましい。
一方、ナノ粒子の被覆量が過剰になると、ナノ粒子が介在物となり、溶融凝固成形を行った時に造形物の強度及び/又は靱性が低下する場合がある。従って、ナノ粒子の含有量は、0.05mass%以下が好ましい。
[2.5. 用途]
本発明に係る金属粉末は、溶融凝固成形用の原料粉末として用いることができる。
ここで、「溶融凝固成形法」とは、種々の熱源を用いて金属粉末を溶融させ、溶融した金属粉末を凝固及び堆積させることにより造形物の全部又は一部を形成する方法をいう。
「造形物の全部を形成する」とは、金属粉末の溶融、凝固及び堆積のみによって、造形物の全体を形成することをいう。
「造形物の一部を形成する」とは、造形物の一部を構成する基材の表面に、金属粉末の溶融、凝固及び堆積により造形物の他の一部を構成する新たな層を積層すること(例えば、金型の補修)をいう。
溶融凝固成形法の内、代表的なものとしては、例えば、
(a)指向性エネルギー堆積(Direct Energy Deposition、DED)法、
(b)粉末床溶融法、
(c)プラズマ肉盛溶接法、
などがある。
これらの内、「指向性エネルギー堆積(DED)法」とは、金属粉末を供給しながらレーザーや電子ビームを照射し、溶融金属を既存部材や基板等の被肉盛り材上に選択的に堆積させる方法をいう。DED法は、金属層を繰り返し堆積させることができ、線状、壁状、塊状などの種々の形状に肉盛りすることができる。レーザーを熱源に用いた装置を用いることで、堆積させる融液の体積を絞ることができ、被肉盛り材との界面に発生する成分の混合による品質低下を抑制することができる。そのため、被肉盛り材には、Fe基合金、Ni基合金、Co基合金などの様々な材料を用いることができる。
「粉末床溶融法」とは、3D-CAD等により生成された3次元データ(例えば、STLデータ)に基づいて数十μm単位のスライスデータを作成し、得られたスライスデータを用いて粉末床に対してレーザーを選択的に走査させながら照射し、焼結層を積層させることで造形する方法をいう。
「プラズマ肉盛溶接法」とは、電極と基材との間にプラズマアークを発生させ、この中に金属粉末を投入して金属粉末を溶融させ、基材表面に金属を盛り上げる方法をいう。
[3. 金属粉末の製造方法]
本発明に係る金属粉末は、ガスアトマイズ法、水アトマイズ法、プラズマアトマイズ法、プラズマ回転電極法、遠心力アトマイズ法などの方法を用いて製造することができる。あるいは、このようにして得られた粉末に対して、還元性熱プラズマによる球状化処理を組み合わせてもよい。
これらの内、「ガスアトマイズ法」とは、合金原料を誘導溶解炉等で溶融させ、溶湯をタンディッシュの底部から落下させながら溶湯に高圧ガスを吹き付け、溶湯を粉砕、凝固させることで金属粉末を得る方法をいう。高圧ガスには、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスが用いられる。ガスアトマイズ条件は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な条件を選択することができる。
ガスアトマイズ法を用いて金属粉末を製造した後、分級を行い、平均粒径及び粒度分布を調整するのが好ましい。分級方法としては、例えば、乾式サイクロン、湿式サイクロン、乾式ふるい、超音波ふるいなどがある。平均粒径及び粒度分布が制御された金属粉末を用いると、溶融凝固成形に適用した時に緻密な造形物を得ることができる。
さらに、必要に応じて組成の異なる2種以上の金属粉末を混合し、成分調整を行っても良い。
[4. 作用]
Fe-Co-Mo系合金において、Coは、
(a)オーステナイト相安定化元素としての機能と、
(b)時効処理時に、マトリックス中にFe-Co-Mo系化合物(μ相)からなる微粒子を析出させる機能と
を備えている。
そのため、Fe基合金の低コスト化を図るために単にCo量を減少させると、析出強化相としてのμ相の析出量が少なくなるだけでなく、凝固時にフェライト相が析出しやすくなる。このようなFe基合金を積層造形に適用した場合において、造形物にフェライト相が析出した時には、冷却後にマルテンサイト組織が得られないために結晶粒が粗くなる。その結果、造形物に割れが発生しやすくなる。
これに対し、Co含有量を必要最低限度に抑えつつ、適量のNi及びMnを添加すると、凝固時におけるフェライト相の析出が抑制され、かつ、時効処理によって適量のμ相を析出させることができる。その結果、このようなFe基合金からなる粉末を肉盛り溶接、積層造形などの溶融凝固成形に用いた時には、造形物に割れが発生しにくく、かつ、高硬度の肉盛り層、積層造形物等を得ることができる。
(実施例1~10、比較例1~7)
[1. 試料の作製]
[1.1. 金属粉末の作製]
ガスアトマイズ法を用いて、表1に示す17種類の金属粉末を作製した。なお、表中に記載されていない元素が不純物として規定された量の範囲内で含まれる場合がある。
Figure 2023050085000002
[1.2. 肉盛り造形物の作製]
作製した金属粉末及びDED方式のレーザー金属積層造形装置(金属3Dプリンタ)を用いて硬さ及び組織を確認するための造形物を作製した。基板には、SKD61の平板(50×70×10mm)を用いた。また、造形時の条件は、以下の通りである。なお、造形条件は、98%以上の密度が得られるように適宜調節した。
レーザー出力: 1500~2000W
粉末流量: 5~10g/min
送り速度: 100~1000mm/min
造形物の寸法: 高さ5~10mm×幅10~12mm×長さ60~70mm
[2. 試験方法]
[2.1. 割れ]
造形物に対して浸透探傷試験を実施し、造形物及び基板界面における割れの有無を確認した。
[2.2. 硬さ1(造形まま硬さ)]
造形物を5mm厚に切断し、断面を研磨紙により研磨した。造形部の断面中央部においてロックウェル硬さ(JIS Z2245)を測定した。
[2.3. 硬さ3(時効処理後硬さ)]
造形物を5mm厚に切断した。切断された試料を600℃に加熱した大気炉に挿入し、30分保持した後、空冷した。以下、これを「時効処理」ともいう。空冷後の試料の酸化被膜を研磨紙により除去したのち、造形物の断面中央部においてロックウェル硬さ(JIS Z2245)を測定した。
[3. 結果]
表2に結果を示す。表2より、以下のことが分かる。
(1)比較例1、6、7は、造形物に割れが見られた。これは、A/Bが1.6未満であるために、フェライト粒の界面で割れが発生したためと考えられる。
(2)比較例2は、割れが見られず、硬さも高かった。しかし、Co添加量が多いため、製造コストが高い。
(3)比較例3、4は、時効処理後の硬さ(硬さ2)が低い。これは、Co+3(Mo+W/2)が58未満であり、μ相の析出量が不足したためと考えられる。
(4)比較例5は、時効処理後の硬さ(硬さ2)が低い。これは、Mn量が過剰であるために、組織に軟質な残留オーステナイトが多いためと考えられる。
(5)実施例1~10は、いずれも、割れが生じず、かつ、時効処理後の硬さ(硬さ2)も高くなった。
Figure 2023050085000003
(実施例11、比較例8)
[1. 試料の作製]
真空誘導溶解炉にて、表3に示す組成を有する5kgの鋼塊を作製した。鋼塊を1200℃において5Hr加熱した後、断面寸法が30mm×30mmとなるように鍛造した。鍛造した鋼片からφ1.6mmの丸棒をワイヤ放電加工にて切り出し、溶接試験用の溶接棒とした。
Figure 2023050085000004
次に、得られた溶接棒を用いて、SKD61の平板状にTIG溶接法で肉盛りを行った。TIG肉盛り条件は、以下のとおりである。
溶接電流: 100A程度
ワイヤ挿入方向: 前方
ガス流量: 5~10L/min(Ar)程度
溶接長: 50mm
溶接回数: 幅方向3パス/1層×高さ方向5層
パス間オーバーラップ率: 50%狙い
各層間の冷却: n層目(1≦n≦4)の肉盛り溶接が終了し、肉盛り部の温度が150℃以下になった後、(n+1)層の肉盛りを実施
予熱: なし
ウィービング: なし
[2. 試験方法]
溶接長方向に対して垂直に切断した肉盛り品を樹脂に埋め込み、鏡面となるまで機械研磨した。次いで、鏡面研磨面に対し、ビッカース硬さ試験を行った。
図1に、実施例11で得られた肉盛り溶接部の溶接長方向に対して垂直な断面の写真を示す。図1中、左側の領域、中央の領域、及び、右側の領域が、それぞれ、1パス目、2パス目、及び、3パス目の肉盛り溶接領域に対応している。ビッカース硬さは、溶接高さ方向の半分の位置(図1の破線で示した位置)において、溶接幅方向(図1の破線の方向)に0.5mm間隔で測定した。
[3. 結果]
図2に、実施例11及び比較例8で得られた肉盛り溶接部の幅方向の位置と硬さとの関係を示す。なお、図2の横軸の「位置=ゼロmm」は、図1の破線の左端の位置に対応する。比較例8は、熱影響部(位置が0~5mmの領域)の硬さが高くなり、硬さが800Hvを超える領域が出現した。これは、1パス目の肉盛り溶接でマルテンサイトが生成した領域が、2パス目の肉盛り溶接時に再加熱され、時効硬化したためと考えられる。
これに対し、実施例11は、熱処理後の硬さに対して影響の大きいCo及びMo量が比較例8とほぼ同量であるにも関わらず、熱影響部の硬さが比較例8のそれより低くなった。これは、適量のNiを添加したことで、マルテンサイト変態開始温度(Ms)が低下したためと考えられる。すなわち、Msが低下したために1パス目の肉盛り溶接部のマルテンサイト変態が完了する前に2パス目の肉盛り溶接が行われ、時効硬化が抑制されたためと考えられる。
なお、実施例11及び比較例8のいずれも、5~10mmの位置における硬さは600Hv以下であった。これは、最終の5層目、3パス目に対応する部分であり、肉盛り後、熱影響を受けないために時効硬化が発生しなかったためと考えられる。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係る金属粉末は、積層造形や肉盛り溶接を用いて、金型や摺動部材などの耐摩耗性が必要な部分を製造、補修するための原料粉末として用いることができる。
また、本発明は、その特性上、溶接または積層造形用のワイヤーとして用いるのにも好適である。

Claims (3)

  1. 18.0≦Co<25.0mass%、
    12.0≦Mo+W/2≦20.0mass%、
    0.2≦Mn≦5.0mass%、及び、
    0.5≦Ni≦10.0mass%
    を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなり、
    次の式(1)及び式(2)を満たす溶融凝固成形用Fe基合金。
    58≦Co+3(Mo+W/2)≦95 …(1)
    A/B≧1.6 …(2)
    但し、
    A=Co+Ni+3Mn、
    B=Mo+W/2+Si、
    Mo、Si及び/又はWを含まない時は、式(1)及び/又は式(2)において、Mo=0、Si=0、及び/又は、W=0として計算する。
  2. 0≦Si≦1.0mass%、及び/又は、
    0≦W≦20.0mass%
    をさらに含む請求項1に記載の溶融凝固成形用Fe基合金。
  3. 平均組成が請求項1又は2に記載の溶融凝固成形用Fe基合金と同等である金属粉末。
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