JP2022147565A - 積層体 - Google Patents

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愛由 平松
Ayu Hiramatsu
豊明 佐々木
Toyoaki Sasaki
正和 田中
Masakazu Tanaka
貴行 植草
Takayuki Uekusa
健士朗 ▲高▼峯
Kenjiro TAKAMINE
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Abstract

【解決手段】X層と、Y層とが積層されてなる積層体であって、X層が、DSCで測定した融点(TmA)が200℃以上である4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)10~90質量部と、ポリアミド(B)1~50質量部と、変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(C)0.1~20質量部と、DSCで融点が計測されないか、またはDSCで測定した融点(TmD)が200℃未満である4-メチル-1-ペンテン系重合体(D)1~40質量部とを含む、4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物(ただし成分(A)、(B)、(C)および(D)の合計量を100質量部とする)から構成される積層体。【効果】本発明の積層体は、4-メチル-1-ペンテン系重合体が持つ耐熱性、ガス透過性を保ち、さらに破断伸びなどの機械強度に優れ、層間剥離強度にも優れる。【選択図】なし

Description

本発明は積層体に関し、詳しくは、4-メチル-1-ペンテン系重合体を含む層を有する積層体に関する。
4-メチル-1-ペンテンをモノマーとする重合体(ポリ-4-メチル-1-ペンテン)は、透明性、離型性、耐熱性、ガス透過性等に優れているため各種用途に広く使用されている。
例えば、特許文献1には、ポリ-4-メチル-1-ペンテンの特長である離型性や耐熱性を保持したまま、高温下での弾性率、強度、熱寸法安定性を向上させた、ポリ-4-メチル-1-ペンテン、ポリアミドおよびエチレン性不飽和結合含有モノマー変性ポリ-4-メチル-1-ペンテンを含むポリ-4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物からなる層を含むフィルムが記載されている。
特許文献2には、ポリ-4-メチル-1-ペンテンの特長である離型性、低吸水性を保持したまま、フィルム強度ならびに成形性が向上した、ポリ-4-メチル-1-ペンテン、ポリアミドおよびエチレン性不飽和結合含有モノマー変性ポリ-4-メチル-1-ペンテンを含むポリ-4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物からなる層を含むフィルムが記載されている。
特許文献3には、層間剥離し難く、表面平滑性に特に優れ、離型性及び耐熱性に優れた、4-メチル-1-ペンテン系重合体と4-メチル-1-ペンテン共重合体とを含む樹脂組成物からなる層を含むフィルムが記載されている。
特開2015-189862号公報 特開2013-155326号公報 特開2019-1139号公報
上記のとおり、様々な4-メチル-1-ペンテン系重合体を含む積層体が提案されているが、4-メチル-1-ペンテン系重合体が持つ耐熱性、ガス透過性を保ちながら、さらに破断伸びなどの機械強度に優れ、層間剥離強度に優れる積層体は提供されていなかった。
本発明は、破断伸びなどの機械強度に優れ、層間剥離強度にも優れる積層体を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の二種の4-メチル-1-ペンテン系重合体とポリアミドと変性4-メチル-1-ペンテン系重合体とを含む組成物を用いることによって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の[1]~[7]に関する。
[1] X層と、Y層とが積層されてなる積層体であって、
X層が、DSCで測定した融点(TmA)が200℃以上である4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)10~90質量部と、ポリアミド(B)1~50質量部と、変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(C)0.1~20質量部と、DSCで融点が計測されないか、またはDSCで測定した融点(TmD)が200℃未満である4-メチル-1-ペンテン系重合体(D)1~40質量部とを含む、4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物(ただし成分(A)、(B)、(C)および(D)の合計量を100質量部とする)から構成される積層体。
[2] 前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)のASTM D1238に準拠した、260℃、5kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)が1~300g/10minである、[1]に記載の積層体。
[3] 前記ポリアミド(B)が、下記要件(B-1)および(B-2)を満たす、[1]または[2]に記載の積層体。
(B-1)ASTM D1238に準拠した、280℃、5kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)が1~100g/10minである。
(B-2)DSCで測定した融点(TmB)が150~300℃である。
[4] 前記変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(C)が、下記要件(C-1)~(C-3)を満たす、[1]~[3]のいずれかに記載の積層体。
(C-1)DSCで測定した融点(TmC)が200~240℃である。
(C-2)変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(C)中のエチレン性不飽和結合含有モノマーのグラフト量が、0.1~10質量%である。
(C-3)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.2~4dl/gである。
[5] 前記エチレン性不飽和結合含有モノマーが、無水マレイン酸である、[4]に記載の積層体。
[6] 前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(D)が、下記要件(D-1)および(D-2)を満たす、[1]~[5]のいずれかに記載の積層体。
(D-1)4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(P)の含有率が65モル%以上96モル%未満であり、炭素原子数2~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から導かれる構成単位(Q)の含有率が4モル%を超え35モル%以下である。
(D-2)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5~5.0dl/gである。
[7] 前記Y層が、ポリプロピレンを含む樹脂組成物から形成されている、[1]~[6]のいずれかに記載の積層体。
本発明の積層体は、4-メチル-1-ペンテン系重合体が持つ耐熱性、ガス透過性を保ち、さらに破断伸びなどの機械強度に優れ、層間剥離強度にも優れる。
本発明において、数値範囲に関する「A~B」との記載は、特に断りがなければ、A以上B以下であることを表す。例えば、「1~5%」との記載は、1%以上5%以下を意味する。
本発明の積層体は、X層とY層とが積層されてなり、X層が4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)とポリアミド(B)と変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(C)と4-メチル-1-ペンテン系重合体(D)とを含む4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物から構成されている。
<X層>
X層は、前記4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物から構成される。4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物は、前記成分(A)、(B)、(C)および(D)の合計量を100質量部として、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を10~90質量部、ポリアミド(B)を1~50質量部、変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(C)を0.1~20質量部、4-メチル-1-ペンテン系重合体(D)を1~40質量部含む。4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物は、好ましくは、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を20~80質量部、ポリアミド(B)を2~50質量部、変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(C)を1~18質量部、4-メチル-1-ペンテン系重合体(D)を5~40質量部含み、より好ましくは、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を30~80質量部、ポリアミド(B)を3~45質量部、変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(C)を2~15質量部、4-メチル-1-ペンテン系重合体(D)を8~38質量部含む。
前記4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物が前記成分を前記範囲で含有すると、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)との相溶性が良好な4-メチル-1-ペンテン系重合体(D)を含むことにより、X層を構成する各成分の相溶性が向上する。その結果、X層と、基材となるポリプロピレンなどを含むY層との親和性も良好になり、X層とY層との剥離強度を高めることが可能になる。
[4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)]
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、4-メチル-1-ペンテンの単独重合体、または4-メチル-1-ペンテンと他のモノマーとの共重合体であり、そのいずれの意味をも含む。
4-メチル-1-ペンテンと共重合する他のモノマーとしては、炭素原子数2~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)が挙げられる。4-メチル-1-ペンテンを除く炭素原子数2~20のα-オレフィンとして具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセンおよび1-エイコセンなどが挙げられる。本発明において、エチレンはα-オレフィンに包含されるものとする。これらのうち、好ましくは4-メチル-1-ペンテンを除く炭素原子数6~20のα-オレフィンであり、さらに好ましくは炭素原子数8~20のα-オレフィン、たとえば1-オクテン、1-デセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセンおよび1-オクタデセン等である。これらのオレフィンは1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、本発明の目的を損なわない範囲で、4-メチル-1-ペンテンおよび炭素原子数2~20のオレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)以外の重合性化合物(以下、重合性化合物ともいう)に由来する構成単位を含んでいてもよい。
前記重合性化合物としては、例えばスチレン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルナン等の環状構造を有するビニル化合物;酢酸ビニル等のビニルエステル類;無水マレイン酸等の不飽和有機酸またはその誘導体;ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン等の共役ジエン類;1,4-ヘキサジエン、1,6-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、5-ビニルノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロペンル-2-ノルボルネン、2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,2-ノルボルナジエン等の非共役ポリエン類などが挙げられる。
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)が共重合体である場合、共重合体を構成する4-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位の含有量は、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上である。
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、DSCで測定した融点(TmA)が200℃以上であり、好ましくは200~250℃、より好ましくは200~245℃、さらに好ましくは200~240℃である。4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の融点が200℃以上であると、耐熱性の観点から好ましい。
融点(TmA)は、重合体の立体規則性および共に重合するα-オレフィン量に依存するので、これらを適宜調整することにより、前記範囲に調整することができる。
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、ASTM D1238に準拠した、260℃、5kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)が1~300g/10minであることが好ましく、2~100g/10minであることがより好ましく、3~50g/10minであることがさらに好ましい。4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)のメルトフローレートが前記範囲であると、成形時の流動性の点で好ましい。
前記4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物に含まれる4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、一種単独でもよく、二種以上であってもよい。
〔4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の製造方法〕
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、オレフィン類を重合して製造してもよく、高分子量の4-メチル-1-ペンテン系重合体を、熱分解して製造してもよい。また、溶媒に対する溶解度の差で分別する溶媒分別、あるいは沸点の差で分取する分子蒸留などの方法で精製されていてもよい。
重合反応により製造する場合、例えば4-メチル-1-ペンテンおよび必要に応じて共重合させるα-オレフィンの仕込量、重合触媒の種類、重合温度、重合時の水素添加量等を調整することで、得られる4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の融点、立体規則性および分子量等を制御する。重合反応により製造する方法は、公知の方法であってもよい。例えば、チーグラナッタ触媒、メタロセン系触媒等の公知の触媒を用いた方法により製造され得る。
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、前述のように製造したもの以外にも、例えば三井化学株式会社製TPX等、市販の重合体であってもよい。
[ポリアミド(B)]
ポリアミド(B)としては、特に制限はないが、例えば脂肪族ポリアミドおよび芳香族ポリアミドが挙げられる。
前記脂肪族ポリアミドとは、分子鎖中に芳香環を有していないものを指し、アミノカルボン酸、ラクタム、ジアミンと、ジカルボン酸を主たる原料とするポリアミドである。
アミノカルボン酸の具体例としては、6-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、9-アミノノナン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸等が挙げられる。ラクタムの具体例としては、α-ピロリドン、ε-カプロラクタム、ω-ラウロラクタム、ε-エナントラクタム、ウンデカンラクタムなどが挙げられる。ジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂肪族、脂環族のジアミンが挙げられる。
ジカルボン酸としては、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,4-シクロヘキサジカルボン酸などの脂肪族、脂環式のジカルボン酸が挙げられる。
脂肪族ポリアミドの具体例としては、PA6、PA66、PA11、PA12などが挙げられ、これらはホモポリマーでも2種以上のコポリマーでも良い。また、ポリアミド(B)は一種単独でもよく、2種以上であってもよい。
前記芳香族ポリアミドとは、芳香族モノマー成分を少なくとも1成分含む芳香族ポリアミド樹脂であり、例えば、脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジアミン、または芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンを原料とし、これらの重縮合によって得られるポリアミドである。
原料の脂肪族ジアミン及び脂肪族ジカルボン酸としては、前記の脂肪族ポリアミドにおいて挙げた脂肪族ジアミン及び脂肪族ジカルボン酸と同様のものが挙げられる。
芳香族ジアミンとしては、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン等が挙げられる。芳香族ジカルボン酸としてはテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。
芳香族ポリアミドの具体例としては、ポリノナンメチレンテレフタルアミド(ポリアミド9T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ポリアミド6T/6)、ポリデカアミド/ポリヘキサメチレンテレフタラミドコポリマー(ポリアミド12/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6T/6I)、ポリヘキサメチレンアミパミド/ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ(2-メチルペンタメチレンテレフタルアミド)コポリマー(ポリアミド6T/M5T)、ポリキシリレンアミパミド(ポリアミドMXD6)、およびこれらの混合物ないし共重合樹脂などが挙げられる。
これらの中でも、ナイロン66、ナイロン46などの脂肪族ポリアミドが好ましく用いられる。より好ましくは、ナイロン66である。
ポリアミド(B)は、下記要件(B-1)および(B-2)を満たすことが好ましい。
(B-1)ASTM D1238に準拠した、280℃、5kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)が1~100g/10minである。
ポリアミド(B)のASTM D1238に準拠した、280℃、5kg荷重におけるメルトフローレートは1~100g/10minであることが好ましく、2~50g/10minであることがより好ましく、3~30g/10minであることがさらに好ましい。
ポリアミド(B)の前記メルトフローレートが前記範囲にあると、4-メチル-1-ペンテン系重合体と粘度が同等になることにより、良好な物性を有する積層体を得ることができる。
(B-2)DSCで測定した融点(TmB)が150~300℃である。
ポリアミド(B)のDSCで測定した融点(TmB)は150~300℃であることが好ましく、160~290℃であることがより好ましく、170~280℃であることがさらに好ましい。
ポリアミド(B)の融点(TmB)が150℃より低いと、樹脂組成物製造時に4-メチル-1-ペンテン系重合体とポリアミドとの粘度差が大きくなる点で不都合があり、融点(TmB)が300℃を超えると、4-メチル-1-ペンテン系重合体が熱分解を起こしやすい点で不都合がある。
ポリアミド(B)は、固体粘弾性測定によって得られた温度60℃における貯蔵弾性率(E’)が好ましくは300~1500MPa、より好ましくは400~1300MPa、さらに好ましくは500~1100MPaであり、130℃における貯蔵弾性率(E’)が好ましくは50~800MPa、より好ましくは100~500MPa、さらに好ましくは200~400MPaである。
ポリアミド(B)が上記条件を満たすことにより、ポリアミド(B)を含む樹脂組成物からなる積層体は、高温下での弾性率、強度、熱寸法安定性が向上する。
[変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(C)]
変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(C)は、例えば、上述した4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)をエチレン性不飽和結合含有モノマーでグラフト変性することにより得られる。ここで、変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(C)は、ポリアミド(B)の反応性官能基と反応し得る官能基を1種以上有することが好ましい。
前記反応性官能基の種類としてはハロゲン原子、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、水酸基、アミノ基、アミド基、イミド基、エステル基、アルコキシシラン基、酸ハライド基、芳香族環およびニトリル基等が挙げられ、特にカルボキシル基や酸無水基またはこれらの誘導体であることが好ましい。
変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(C)は、下記要件(C-1)~(C-3)を満たすことが好ましい。
(C-1)DSCで測定した融点(TmC)が200~240℃である。
変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(C)のDSCで測定した融点(TmC)は、200~240℃であることが好ましく、より好ましくは210~235℃、さらに好ましくは215~230℃である。
4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物の調製において、成分(A)~(D)の混練は、変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(C)の融点以上の温度で行うことが好ましい。前記成分の混練は、温度が200℃よりも低いと、混練状態が悪くなり、得られる4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物の引張強度、引張伸びなど機械物性が低下する。したがって、変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(C)の融点は上記下限以上であることが好ましい。
(C-2)変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(C)中のエチレン性不飽和結合含有モノマーのグラフト量が0.1~10質量%である。
変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(C)中のエチレン性不飽和結合含有モノマーのグラフト量は、0.1~10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.3~7質量%、さらに好ましくは0.5~5質量%である。
変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(C)中のエチレン性不飽和結合含有モノマーのグラフト量が0.1重量未満であると、ポリアミド(B)との反応性が低下し、4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物の引張強度、引張伸びなど機械物性が低下する。また、変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(C)中のエチレン性不飽和結合含有モノマーのグラフト量が10質量%よりも高いと、変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(C)とポリアミド(B)との反応が過剰に進行し、架橋反応まで進行し、樹脂組成物の成形性が阻害される。
(C-3)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.2~4dl/gである。
変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(C)の135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]は0.2~4dl/gであることが好ましく、より好ましくは0.3~2dl/gである。変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(C)の極限粘度[η]が0.2dl/g未満であると、変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(C)自体の強度が低下するため、4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物の引張強度、引張伸びなど機械物性が低下する。また、変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(C)の極限粘度[η]が4dl/gよりも高いと、成形時の4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)およびポリアミド(B)との粘度差が大きくなり、4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物の成形不良を起こしやすい。
〔変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(C)の製造方法〕
変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(C)は、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)に上記官能基を有するエチレン性不飽和結合含有モノマーを、有機過酸化物を用いてグラフト変性することにより得ることができる。
(エチレン性不飽和結合含有モノマー)
前記エチレン性不飽和結合含有モノマーは、1分子内にラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合と1種類以上の官能基とを併せ持つ化合物である。官能基としては、ハロゲン原子、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、水酸基、アミノ基、アミド基、イミド基、エステル基、アルコキシシラン基、酸ハライド、芳香族環およびニトリル基などが挙げられる。
エチレン性不飽和結合含有モノマーの具体例としては、不飽和カルボン酸およびその誘導体(酸無水物、酸アミド、エステル、酸ハロゲン化物および金属塩)、イミド、水酸基含有エチレン性不飽和化合物、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物、スチレン系モノマー、アクリロニトリル、酢酸ビニルならびに塩化ビニルなどが挙げられ、好ましくは不飽和カルボン酸およびその誘導体、水酸基含有エチレン性不飽和化合物およびエポキシ基含有エチレン性不飽和化合物が挙げられる。
不飽和カルボン酸およびその誘導体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、α-エチルアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、エンドシス-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,3-ジカルボン酸(ナジック酸、登録商標)、無水ナジック酸およびメチル-エンドシス-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸(メチルナジック酸、登録商標)などの不飽和カルボン酸およびその無水物;ならびにメタクリル酸メチルなどの不飽和カルボン酸エステル、不飽和カルボン酸ハライド、不飽和カルボン酸アミドおよびイミドなどが挙げられ、好ましくは塩化マロニル、マレイミド、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水ナジック酸、アクリル酸、ナジック酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチルおよびメタクリル酸メチルなどが挙げられ、より好ましくはアクリル酸、マレイン酸、ナジック酸、無水マレイン酸、無水ナジック酸およびメタクリル酸メチルが挙げられる。不飽和カルボン酸およびその誘導体は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
水酸基含有エチレン性不飽和化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、テトラメチロールエタンモノ(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートおよび2-(6-ヒドロキシヘキサノイルオキシ)エチルアクリレート、10-ウンデセン-1-オール、1-オクテン-3-オール、2-メチロールノルボルネン、ヒドロキシスチレン、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、N-メチロールアクリルアミド、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、グリセリンモノアリルエーテル、アリルアルコール、アリロキシエタノールおよび2-ブテン-1,4-ジオールおよびグリセリンモノアルコールなどが挙げられ、好ましくは10-ウンデセン-1-オール、1-オクテン-3-オール、2-メタノールノルボルネン、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシスチレン、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、N-メチロールアクリルアミド、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、グリセリンモノアリルエーテル、アリルアルコール、アリロキシエタノール、2-ブテン-1,4-ジオールおよびグリセリンモノアルコールなどが挙げられ、より好ましくは2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよび2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。水酸基含有エチレン性不飽和化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物の具体例としては、下記式(I)で表される不飽和グリシジルエステル類、下記式(II)で表される不飽和グリシジルエーテル類、および下記式(III)で表されるエポキシアルケン類などが挙げられる。
Figure 2022147565000001
式(I)中、Rは重合可能なエチレン性不飽和結合を有する炭化水素基を示す。
Figure 2022147565000002
式(II)中、Rは重合可能なエチレン性不飽和結合を有する炭化水素基を示し、Xは-CH2-O-または-C64-O-で表される2価の基を示す。
Figure 2022147565000003
式(III)中、R1は重合可能なエチレン性不飽和結合を有する炭化水素基を示し、R2は水素原子またはメチル基を示す。
エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物の具体例としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、イタコン酸のモノまたはジグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸のモノ、ジまたはトリグリシジルエステル、テトラコン酸のモノまたはジグリシジルエステル、エンド-シス-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸(ナジック酸、登録商標)のモノまたはジグリシジルエステル、エンド-シス-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジメチル-2,3-ジカルボン酸(メチルナジック酸、登録商標)のモノまたはジグリシジルエステル、アリルコハク酸のモノまたはジグリシジルエステル、p-スチレンカルボン酸のグリシジルエステル、アリルグリシジルエーテル、2-メチルアリルグリシジルエーテル、スチレン-p-グリシジルエーテル、3,4-エポキシ-1-ブテン、3,4-エポキシ-3-メチル-1-ブテン、3,4-エポキシ-1-ペンテン、3,4-エポキシ-3-メチル-1-ペンテン、5,5-エポキシ-1-ヘキセンおよびビニルシクロヘキセンモノオキシドなどが挙げられ、好ましくグリシジルアクリレートおよびグリシジルメタクリレートが挙げられる。エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
上記エチレン性不飽和結合含有モノマーのうち、より好ましくは不飽和カルボン酸またはその誘導体であり、特に好ましくは不飽和カルボン酸無水物であり、最も好ましくは無水マレイン酸である。
(有機過酸化物)
前記有機過酸化物としては、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)オクタン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バラレートおよび2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)ブタンなどのペルオキシケタール類;ジ-t-ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、α,α’-ビス(t-ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)ヘキサンおよび2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3などのジアルキルペルオキシド類;アセチルペルオキシド、イソブチルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、2,5-ジクロロベンゾイルペルオキシドおよびm-トリオイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド類;t-ブチルオキシアセテート、t-ブチルペルオキシイソブチレート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシラウリレート、t-ブチルペルオキシベンゾエート、ジt-ブチルペルオキシイソフタレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、t-ブチルペルオキシマレイックアシッド、t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、クミルペルオキシオクテートなどのペルオキシエステル類;ジ(2-エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネートおよびジ(3-メチル-3-メトキシブチル)ペルオキシジカーボネートなどのペルオキシジカーボネート類;ならびにt-ブチルハイドロペルオキシド、クメンハイドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロペルオキシド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロペルオキシドおよび1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロペルオキシドなどのハイドロペルオキシド類などが挙げられ、好ましくはt-ブチルペルオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエートおよびジクミルペルオキシドなどが挙げられる。
(グラフト変性)
変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(C)は、上記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)と上記エチレン性不飽和結合含有モノマーと、上記の有機過酸化物を、加熱条件下でグラフト変性反応させることにより製造することができる。変性反応は、溶媒の存在下で行うこともできるし、溶媒の非存在下で行うこともできる。
溶媒の存在下で行う場合、溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカンおよび灯油などの脂肪族炭化水素;メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタンおよびシクロドデカンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、エチルトルエン、トリメチルベンゼン、シメンおよびジイソプロピルベンゼンなどの芳香族炭化水素;ならびにクロロベンゼン、ブロモベンゼン、o-ジクロロベンゼン、四塩化炭素、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタンおよびテトラクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素などが挙げられる。
溶媒の存在下で行う変性反応の温度は、50~300℃、好ましくは60~290℃である。変性反応の時間は1~10分、好ましくは2~9分である。変性反応は、常圧および加圧のいずれの条件下においても行うことができる。反応に供給されるエチレン性不飽和結合含有モノマーの割合は、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)100質量
に対して0.2~100質量部、好ましくは0.5~50質量部である。
溶媒の非存在下で行う場合は、特に溶融状態で混練して変性反応を行うことが好ましい。具体的には、樹脂同士あるいは樹脂と固体または液体の添加物を、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダーおよびブレンダーなどにより混合し、均一な混合物とした後、該混合物を混練する方法が挙げられる。混練には、例えば、バンバリーミキサー、プラストミル、ブラベンダープラストグラフ、および一軸または二軸の押出機などが用いられる。
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の変性方法として特に好ましくは、一軸または二軸押出機を用い、あらかじめ十分に予備混合した4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)、エチレン性不飽和結合含有モノマーおよび/またはその誘導体、ならびに有機過酸化物を押出機の供給口より供給して混練を行う方法である。本変性方法を用いると、連続生産が可能となり、生産性が向上する。
混練機の混練を行う部分のシリンダー温度は、200~300℃、好ましくは220~290℃である。温度が200℃よりも低いと変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(C)中のグラフト量が向上しない場合があり、温度が300℃よりも高いと、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の分解が起こる場合がある。混練時間は、好ましくは0.1~30分間、特に好ましくは0.5~5分間である。混練時間が0.1分に満たないと十分なグラフト量は得られない場合があり、また、混練時間が30分を超えると変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(C)の分解が起こる場合がある。
変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(C)の製造方法において、溶融混練で製造する場合、各成分の配合割合としては、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)100質量部に対して、エチレン性不飽和結合含有モノマーを好ましくは0.1~20質量部、より好ましくは0.3~10質量部、さらに好ましくは0.5~5質量部、および有機過酸化物を好ましくは0.001~10質量部、より好ましくは0.005~5質量部、さらに好ましくは0.01~4質量部である。
上述のようにして得られた変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(C)は、用いるエチレン性不飽和結合含有モノマーの種類により、通常、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、水酸基、アミノ基、アミド基、イミド基、エステル基、アルコキシシラン基、酸ハライド基、芳香族環およびニトリル基などを有し、好ましくはカルボキシル基、酸無水物基またはこれらの誘導体を有し、より好ましくはカルボキシル基、酸無水物基、アミド基、エステル基、酸ハライド基などを有する。
[4-メチル-1-ペンテン系重合体(D)]
4-メチル-1-ペンテン系重合体(D)は、4-メチル-1-ペンテンと他のモノマーとの共重合体である。
4-メチル-1-ペンテンと共重合する他のモノマーとしては、炭素原子数2~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)が挙げられる。4-メチル-1-ペンテン以外の炭素数2以上20以下のα-オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセンが好ましく、炭素原子数2~4のα-オレフィン、すなわちエチレン、プロピレン、1-ブテンが更に好ましく、プロピレンが特に好ましい。これらのオレフィンは1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
4-メチル-1-ペンテン系重合体(D)は、本発明の効果を損なわない範囲で、4-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位および4-メチル-1-ペンテン以外の炭素数2以上20以下のα-オレフィンに由来する構成単位以外のその他の構成単位を含んでいてもよい。その他の構成単位の含有率は、たとえば0~10モル%である。
上記その他の構成単位を形成するモノマーとしては、環状オレフィン、芳香族ビニル化合物、共役ジエン、非共役ポリエン、官能ビニル化合物、水酸基含有オレフィン、ハロゲン化オレフィン等が挙げられる。
環状オレフィン、芳香族ビニル化合物、共役ジエン、非共役ポリエン、官能ビニル化合物、水酸基含有オレフィン、及びハロゲン化オレフィンとしては、例えば、特開2013-169685号公報の段落0034~0041に記載の化合物を用いることができる。
上記その他の構成単位を形成するモノマーとしては、ビニルシクロヘキサン、スチレンが特に好ましい。
4-メチル-1-ペンテン系重合体(D)に、上記その他の構成単位が含まれる場合、上記その他の構成単位は、一種のみ含まれていてもよく、また、二種以上含まれていてもよい。
4-メチル-1-ペンテン系重合体(D)は、DSCで融点が計測されないか、またはDSCで測定した融点(TmD)が200℃未満であり、好ましくはDSCで融点が計測されないか、または融点(TmD)が110℃~180℃であり、より好ましくはDSCで融点が計測されないか、または融点(TmD)が110℃~160℃であり、特に好ましくはDSCで融点が計測されないか、または融点(TmD)が125℃~150℃である。
4-メチル-1-ペンテン系重合体(D)は、下記要件(D-1)および(D-2)を満たすことが好ましい。
(D-1)4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(P)の含有率が65モル%以上96モル%未満であり、炭素原子数2~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から導かれる構成単位(Q)の含有率が4モル%を超え35モル%以下である。
構成単位(P)の含有率は、65モル%以上96モル%未満であることが好ましく、より好ましくは68モル%以上92モル%未満であり、さらに好ましくは68モル%以上90モル%未満であり、特に好ましくは70モル%以上88モル%未満である。
構成単位(P)の含有率が65モル%以上であることにより、耐熱性に優れ、また、重合体(A)との相容性にすぐれ得られるフィルムのグロスに優れる。
構成単位(Q)の含有率(構成単位(Q)が2種以上である場合は当該2種以上の合計の含有率)は、4モル%を超え35モル%以下であることが好ましく、より好ましくは8モル%を超え32モル%以下であり、さらに好ましくは10モル%を超え32モル%以下であり、特に好ましくは12モル%を超え30モル%以下である。
4-メチル-1-ペンテン系重合体(D) における構成単位(Q)の含有率が4モル%を超えることにより、得られる積層フィルムの層間強度に優れデラミし難くなる。
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)が炭素原子数2~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から導かれる構成単位を含む場合、その構成単位は、構成単位(Q)と同じであってもよく、異なっていてもよい。
4-メチル-1-ペンテン系重合体(D) における各構成単位の含有率(モル%)の値は、13C-NMRによる測定法により測定され、具体的な測定方法については実施例の項に記載の通りである。
(D-2)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5~5.0dl/gである。
4-メチル-1-ペンテン系重合体(D)の、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]は、0.5~5.0dl/gであることが好ましく、より好ましくは0.5~4.0dl/gであり、さらに好ましくは1.0~3.0dl/gである。4-メチル-1-ペンテン系重合体(D) の極限粘度[η]が上記範囲内であると、成形性の点で好ましい。
極限粘度[η]は、4-メチル-1-ペンテン系重合体(D)を製造する際の、重合時の水素の添加量により調整することが可能である。
4-メチル-1-ペンテン系重合体(D)は、ASTM D1238に準拠した、230℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)が0.1~100g/10minであることが好ましく、0.5~50g/10minであることがより好ましく、0.5~30g/10minであることがさらに好ましい。4-メチル-1-ペンテン系重合体(D)のメルトフローレートが前記範囲であると、成形時の流動性の点で好ましい。
〔4-メチル-1-ペンテン系重合体(D)の製造方法〕
4-メチル-1-ペンテン系重合体(D)は、従来知られているメタロセン触媒系により、例えば、国際公開第2005/121192号、国際公開第2011/055803号、国際公開第2014/050817等に記載された方法により合成することができる。
〔その他の樹脂〕
前記4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲内において、上述の成分(A)~(D)以外のその他の樹脂を含有していてもよい。その他の樹脂としては例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1-ブテン、スチレン系樹脂、エチレン・α‐オレフィン共重合体等のポリオレフィン系重合体を添加することも可能である。その他の樹脂の含有量は、X層の全質量に対して好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
〔添加剤〕
前記4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物は、前記成分(A)~(D)の他、更に、本発明の目的を損なわない範囲内において、例えば、耐候安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、核剤、滑剤、顔料、染料、老化防止剤、塩酸吸収剤、無機又は有機の充填剤、有機系又は無機系の発泡剤、架橋剤、架橋助剤、粘着剤、軟化剤、難燃剤、二次抗酸化剤、天然油、合成油、ワックス、他のオレフィン重合体等の各種添加剤を含有していてもよい。配合量は特に制限されないが、該樹脂組成物100質量部に対して、通常0~50質量部であり、0~30質量部が好ましく、0~10質量部がさらに好ましく、0~1質量部が特に好ましい。
核剤としては、公知の核剤が使用可能である。通常、核剤は、前記4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物の成形性をさらに改善させる、すなわち結晶化温度を高め結晶化速度を速めるために配合される。この場合、例えば核剤はジベンジリデンソルビトール系核剤、リン酸エステル塩系核剤、ロジン系核剤、安息香酸金属塩系核剤、フッ素化ポリエチレン、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)リン酸ナトリウム、ピメリン酸やその塩、2,6-ナフタレン酸ジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド等であり、配合量は特に制限されないが、該樹脂組成物100質量部に対して0.1~1質量部程度があることが好ましい。配合タイミングに特に制限は無く、重合中、重合後、あるいは成形加工時での添加が可能である。
酸化防止剤としては、公知の酸化防止剤が使用可能である。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、イオウ系酸化防止剤、ラクトーン系酸化防止剤、有機ホスファイト化合物、有機ホスフォナイト化合物、あるいはこれらを数種類組み合わせたものが使用できる。
滑剤としては、例えばラウリル酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの飽和または不飽和脂肪酸およびそのナトリウム、カルシウム、マグネシウム塩などがあげられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。またかかる滑剤の配合量は、該樹脂組成物100質量部に対して通常0.1~3質量部が好ましく、0.1~2質量部がさらに好ましい。
スリップ剤としては、ラウリル酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、エルカ酸、ヘベニン酸などの飽和または不飽和脂肪酸のアミド、あるいはこれらの飽和または不飽和脂肪酸のビスアマイドを用いることが好ましい。これらのうちでは、エルカ酸アミドおよびエチレンビスステアロアマイドが特に好ましい。これらの脂肪酸アミドは本発明に係る樹脂組成物100質量部に対して、通常0.01~5質量部の範囲で配合することが好ましい。
X層が成分(A)~(D)以外の任意成分を含むときは、X層の全質量から当該任意成分を差し引いた質量を100質量%として、前述した成分(A)~(D)の含有量の定義が適用される。
<Y層>
本発明の積層体におけるY層は、本発明の積層体に優れた機械特性を付与するために設けられる層である。Y層は、ポリプロピレンを含む樹脂組成物から形成されることが好ましい。当該ポリプロピレンは、プロピレンを主体とする公知の重合体であり、そのような例としては、プロピレン単独重合体、プロピレンとプロピレン以外のα-オレフィンとのプロピレン・α‐オレフィン共重合体(プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体などのランダム共重合体、ブロック共重合体又はこれらの混合物)等を挙げることができる。ポリプロピレンとしてはアイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレンが好適に用いられ、立体規則性を示すアイソタクチックメソペンダッド分率(mmmm)またはシンジオタクチックメソペンダッド分率(rrrr)が90%以上であることが好ましく、92%以上であることがより好ましく、93%以上であることがさらに好ましい。立体規則性が高いと、樹脂の結晶性が向上し、高い熱安定性、機械特性を付与することができる。
プロピレン・α‐オレフィン共重合体におけるα‐オレフィンの共重合比率としては、5質量%以下であることが好ましい。また、プロピレン・α‐オレフィン共重合体は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよく、核剤(結晶化核剤)を含んでいても良い。核剤としては、特に限定されず、各種無機化合物、各種カルボン酸又はその金属塩、ジベンジリデンソルビトール系化合物、アリールフォスフェート系化合物、環状多価金属アリールフォスフェート系化合物と脂肪族モノカルボン酸アルカリ金属塩又は塩基性アルミニウム・リチウム・ヒドロキシ・カーボネート・ハイドレートとの混合物、各種高分子化合物等のα晶核剤等が挙げられる。これらの結晶化核剤は単独の材料でも使用でき、また二種以上の材料を併用することもできる。
前記ポリプロピレンのMFRは、ASTM D1238に準じて測定できる。具体的には、温度230℃、荷重2.16kg荷重の測定条件で、0.5~25g/10分であることが好ましく、1~15g/10分であることがより好ましく、2~10g/10分であることがさらに好ましい。ポリプロピレンのMFRが前記範囲にあると、押出成形に好適である。
前記ポリプロピレンに含まれる重合触媒残渣等に起因する灰分は、微小異物(フィッシュアイ)を低減するため、可能な限り少ないことが好ましく、50ppm以下であることが好ましく、さらに好ましくは40ppm以下である。
また、Y層を形成する樹脂組成物には、X層を形成する樹脂組成物に配合するものと同様の熱安定剤、酸化防止剤、すべり剤、塩素捕獲剤、帯電防止剤等が添加されていてもよい。
<積層体>
本発明の積層体は、X層とY層が積層された積層体である。本発明の積層体は、4-メチル-1-ペンテン系重合体が持つ耐熱性、ガス透過性を保ち、さらに破断伸びなどの機械強度に優れ、層間剥離強度にも優れる。
本発明の積層体は、延伸されていてもよく、延伸されていなくても良い。延伸する場合は、一軸延伸で二軸延伸でも良い。二軸延伸する方法は、同時でも逐次でも良い。
本発明の積層体の層構成としては、X層とY層が積層された二層構造、X層/Y層/X層の順に積層されてなる三層構造、X層及びY層のいずれとも異なるC層(例えば、エチレン変性アイソタクチックポリプロピレン樹脂(ランダムコポリマーやブロックコポリマー)、アタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピン等を含む組成物、オレフィン系重合体やスチレン系重合体、アクリル系重合体等から得られる粘着性を発現する粘着材料から形成される層など)が、X層/Y層/C層の順に積層されてなる三層構造等が挙げられる。積層時における成形性の観点からは、X層/Y層の二層構造または、X層/Y層/X層の三層構造が好ましい。
前記積層体の、剥離速度300mm/分におけるテープ剥離力は、7N/50mm以下であることが好ましい。より好ましくは1~6.5N/50mmである。当該テープ剥離力は、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の融点および配合量により調節できる。テープ剥離力は、粘着シートの試験方法(JIS Z0237-2000)に準拠して測定される。測定方法の具体例としては、粘着材としてアクリル系粘着材(日東電工株式会社製、商品名ニットーテープ31B)を使用し、50mm幅×100mm長さに切った試験フィルムと粘着テープを温度23℃、相対湿度50%の環境下に1時間放置した後、粘着フィルムを約2kgのゴムロールで圧力を加えながら2往復通過させて試験板に貼り付ける。貼り付け後、温度23℃または50℃、相対湿度50%の一定環境下に1日間置いた後、温度23℃、相対湿度50%の環境で、180°方向に、速度300mm/分で引き剥がした際の剥離力を測定することにより評価できる。
前記積層体の、45°グロスは、70%以上であることが好ましい。より好ましくは80%以上である。上限については特に限定ないが、通常130%以下である。45°グロスは、公知の方法により測定することができる。
延伸前のフィルム、すなわち原反フィルムの厚みは特に限定されないが、通常100μm~1000μmであり、150~800μmが好ましく、更に好ましくは、200~500μmである。
前記延伸フィルムの総厚みは、3~60μmであることが好ましく、より好ましくは10~50μm、さらに好ましくは20~50μmである。フィルムの総厚みが3~60μmであることにより、機械特性及び延伸性に優れたフィルムを得ることができる。
前記延伸フィルムにおけるX層1層の厚みは、Y層1層の厚みに対し、2~250%であることが好ましく、より好ましくは25~200%である。前記延伸フィルムが2つ以上のX層を含有する場合、各X層の厚みは同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
〔積層体の製造方法〕
各成分を混合して、X層用またはY層用の樹脂組成物ペレットを調製する方法については、種々公知の方法、例えば、多段重合法、プラストミル、ヘンシェルミキサー、V-ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラー、ブレンダー、ニーダールーダー等で混合する方法、あるいは混合後、一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で、例えば180~300℃下で溶融混練後、造粒あるいは粉砕する方法を採用することができる。該方法により、各成分および添加剤が均一に分散混合された高品質の樹脂組成物ペレットを得ることができる。
本発明の積層体を製造する方法については特に制限は無く、例えば、X層を形成する4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物およびY層の原料の溶融混練物をTダイから押し出し、キャスト成形する方法等を挙げることができる。具体的には、共押出成形法、押出ラミネート法、熱ラミネート法、ドライラミネート法等を用いることができる。
また、本発明の積層体は、さらに樹脂の融点未満の温度でのアニーリング処理を行っても良いし、積層体の成形時または成形後に延伸してもよい。
前記積層体を延伸し、延伸フィルムを製造する場合は、通常、まず、X層とY層と、必要に応じてその他の層とが積層されてなる積層体である原反フィルム(原反シートともいう)を成形し、次に、その原反フィルムを延伸することによって得られる。原反フィルムの成形方法は例えば、あらかじめT-ダイ成形またはインフレーション成形にて得られた表面層フィルム上に、押出ラミネーション、押出コーティング等の公知の積層法により積層する方法や、複数のフィルムを独立して成形した後、各々のフィルムをドライラミネーションにより積層する方法等が挙げられるが、生産性の点から、複数の成分を多層の押出機に供して成形する共押出成形が好ましい。
前記積層体を延伸フィルムとする場合、前記延伸フィルム用の原反シートは、上述した樹脂組成物ペレットを、シリンダー温度を通常180~300℃の範囲で溶融押出して得ることができる。
前記原反シートから延伸フィルムを製造するには、バッチ式の延伸でも、キャスト成形直後に逐次延伸を施すこと、あるいは、同時延伸することもできる。逐次延伸ではキャスト原反シートを100~165℃に保ち、速度差を設けたロール間に通して流れ方向に2~5倍に延伸し、直ちに室温に冷却する。次いで、当該フィルムをテンターに導き、150℃以上の温度で幅方向に5~10倍に延伸した後、緩和、熱固定を施し巻き取ることにより得られる。
〔用途〕
本発明の積層体は、4-メチル-1-ペンテン系重合体が持つ耐熱性、ガス透過性を保ち、さらに破断伸びなどの機械強度に優れ、層間剥離強度にも優れるという特性を活用して、様々な用途に適用し得る。
本発明の積層体は、上述した種々の成形加工方法により成形することができ、特に限定されることなく自動車部品、家電材料部品、電気・電子部品、建築部材、土木部材、農業資材および日用品、各種フィルム、通気性フィルムやシート、一般産業用途およびレクリエーション用途に好適な発泡体、糸やテキスタイル、医療または衛生用品などの各種用途に利用することができる。
例えば、フィルム成形体であれば、ガス透過フィルム、剥離フィルム、保護フィルム、光学フィルム、光学補償フィルム、液晶反射フィルム、偏向フィルム、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ、鮮度保持フィルム、食器用フィルム、血小板保存用袋、細胞保存用袋などへ使用することができる。特に延伸成形体(好ましくは延伸フィルム)は、厚み均一性、ならびに未延伸成形物に比較して機械的強度に優れる。強度が要求されるプリント基板用離型フィルム、熱硬化性樹脂用離型フィルム、半導体製造用封止フィルム、コンデンサフィルム、キャパシタフィルム、複合材用離型フィルム、リジッド基板用離型フィルム、合成皮革用工程紙、ベーキングカートンや青果物用包装材、各種の医療用あるいは食器用フィルム、血小板保存用袋、細胞保存用袋、微生物検出培地用のシート、瞬時の耐熱性が要求される殺菌工程に利用するバッグ、農薬や化粧品用のボトル等に好適に使用することができる。また、射出成形体であればパソコン、携帯電話などの製品の筺体部品、フロントドア、インパネボックスなどのこれまで樹脂部品が用いられている部品への展開が挙げられる。押出成形であれば、ゴムホース工程部材であるマンドレル、シースへの利用が可能であり、様々な用途への展開が可能である。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例で使用した4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)、ポリアミド(B)、変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(C)、および4-メチル-1-ペンテン系重合体(D)の各種物性値は以下の方法で測定した。
(組成)
重合体の4-メチル-1-ペンテン及びα-オレフィンの含有率(モル%)は13C-NMRにより測定した。測定条件は、下記のとおりである。
・測定装置:核磁気共鳴装置(ECP500型、日本電子(株)製)
・観測核:13C(125MHz)
・シーケンス:シングルパルスプロトンデカップリング
・パルス幅:4.7μ秒(45°パルス)
・繰り返し時間:5.5秒
・積算回数:1万回以上
・溶媒:オルトジクロロベンゼン/重水素化ベンゼン(容量比:80/20)混合溶媒
・試料濃度:55mg/0.6mL
・測定温度:120℃
・ケミカルシフトの基準値:27.50ppm
(メルトフローレート(MFR))
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)のメルトフローレート(MFR)はASTM D1238に準拠して260℃、5kg荷重にて測定した。
4-メチル-1-ペンテン系重合体(D)およびポリプロピレンのメルトフローレート(MFR)はASTM D1238に準拠して230℃、2.16kg荷重にて測定した。
ポリアミド(B)のメルトフローレート(MFR)はASTM D1238に準拠して280℃、5kg荷重にて測定した。
メルトフローレート(MFR)の単位はいずれも「g/10min」である。
(融点(Tm))
重合体の融点(Tm)は、測定装置として示差走査熱量計(DSC220C型、セイコーインスツル(株)製)を用いて下記のように測定した。
約5mgの重合体を測定用アルミニウムパン中に密封し、室温から10℃/minで280℃まで加熱した。共重合体を完全融解させるために、280℃で5分間保持し、次いで、10℃/minで-50℃まで冷却した。-50℃で5分間置いた後、10℃/minで280℃まで2度目の加熱を行なった。この2度目の加熱でのピーク温度(℃)を重合体の融点(Tm)とした。
(グラフト量)
変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(C)においてグラフトしたエチレン性不飽和結合含有モノマー量は、試料を250℃、予熱5分、プレス3分で処理してプレスフィルムを作成し、日本分光社製FT-IR410型により透過法でIR測定を行い、1860cm-1と4321cm-1のピーク強度より算出した。
より具体的には、後述する無水マレイン酸変性4-メチル-1-ペンテン重合体において、無水マレイン酸がエチレン性不飽和結合含有モノマーに相当する。
(極限粘度[η](dl/g))
重合体の極限粘度[η]は、ウベローベ粘度計を用いて、デカリン溶媒中135℃で測定した。すなわち、約20mgの重合パウダー、ペレットまたは樹脂塊を、デカリン25mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定する。このデカリン溶液に、デカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定する。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿したときのηsp/Cの値を極限粘度として求めた(下式参照)
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
(ポリアミド(B)の貯蔵弾性率(E’))
ポリアミド(B)をサーモ・プラスチックス工業株式会社製一軸押出機(TP20型)にて、シリンダー温度280℃、ダイス温度280℃、ロール温度60℃の条件で厚さ約50μmの押出フィルムを得た。
当該フィルムを、固体粘弾性装置(商品名「RSA-III」、ティー・エイ・インスツルメント社製)を使用し、-50℃から250℃まで3℃/minの速度で昇温しながら測定周波数1HzでフィルムのMD方向の弾性率を測定し、そのうちの60℃および130℃の測定結果から、それぞれの温度における貯蔵弾性率(E’)を算出した。
実施例および比較例で使用した4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)、ポリアミド(B)、変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(C)および4-メチル-1-ペンテン系重合体(D)を以下に示す。
(4-メチル-1-ペンテン系重合体(A))
(A-1)三井化学株式会社製 TPX(登録商標)RT18(MFR(260℃、5kg荷重)26g/10min、融点(Tm)232℃)
(A-2)三井化学株式会社製 TPX(登録商標)MX002(MFR(260℃、5kg荷重)21g/10min、融点(Tm)224℃)
(ポリアミド(B))
(B-1)宇部興産株式会社製UBE NYLON1030B(ポリアミド6(PA6)、MFR(280℃、5kg荷重)7g/10min、融点(Tm)225℃、固体粘弾性測定によって得られた温度60℃における貯蔵弾性率(E’)800MPa、130℃における貯蔵弾性率(E’)300MPa)
(変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(C))
下記の方法により無水マレイン酸変性4-メチル-1-ペンテン重合体(C-1)を製造した。
4-メチル-1-ペンテン系重合体(三井化学株式会社製 TPX(登録商標)MX002UP;MFR(260℃、5kg荷重)3g/10min、融点(Tm)224℃)100質量部と、無水マレイン酸1質量部と、有機過酸化物として、2,5-ジメチル‐2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン‐3を0.02質量部とを、2軸押出機(株式会社池貝製、PCM45、φ=45mm、L/D=30)にて、シリンダー温度:270℃で、溶融混練を3分間行い、無水マレイン酸変性4-メチル-1-ペンテン重合体(C-1)を得た。
得られた無水マレイン酸変性4-メチル-1-ペンテン重合体(C-1)の融点(Tm)は222℃、4-メチル-1-ペンテン系重合体のマレイン酸グラフト量は0.8質量%、135℃、デカリン中での極限粘度[η]は1.5dl/gであった。
(4-メチル-1-ペンテン系重合体(D))
下記の方法により4-メチル-1-ペンテン系重合体(D-1)を製造した。
充分に窒素置換した容量1.5Lの撹拌翼付きのSUS製オートクレーブに、300mlのn-ヘキサン(乾燥窒素雰囲気下、活性アルミナ上で乾燥したもの)、及び450mlの4-メチル-1-ペンテンを23℃で装入した後、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し、撹拌機を回した。
次に、オートクレーブを内温が60℃になるまで加熱し、全圧(ゲージ圧)が0.40MPaとなるようにプロピレンで加圧した。
続いて、予め調製しておいた、Al換算で1mmolのメチルアルミノキサン、及び0.01mmolのジフェニルメチレン(1-エチル‐3-t-ブチル-シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチル-フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを含むトルエン溶液0.34mlをオートクレーブに窒素で圧入し、重合反応を開始させた。重合反応中は、オートクレーブの内温が60℃になるように温度を調整した。
重合開始から60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し、重合反応を停止させた後、オートクレーブ内を大気圧まで脱圧した。脱圧後、反応溶液に、該反応溶液を撹拌しながらアセトンを添加し、溶媒を含む重合反応生成物を得た。
次いで、得られた溶媒を含む重合反応生成物を減圧下、100℃で12時間乾燥させて、36.9gの粉末状の4-メチル-1-ペンテン系重合体(D-1)を得た。
得られた4-メチル-1-ペンテン系重合体(D-1)の4-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位の含有率は72.5モル%、プロピレンに由来する構成単位の含有率は27.5モル%、融点(Tm)は計測されず、MFRは11g/10min、極限粘度[η]は1.5dl/gであった。
(実施例1)
X層/Y層からなる積層体である積層フィルムを成形した。
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A-1) 37質量%と、ポリアミド(B-1) 38質量%と、変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(C-1) 5質量%と、4-メチル-1-ペンテン系重合体(D-1) 20質量%の割合となるように各成分を、二軸押出機(株式会社池貝製、PCM45、φ=45mm、L/D=30)にて、シリンダー温度270℃、回転数200rpmで溶融混練して、4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物を調製し、これをX層の原料とした。
Y層を形成する樹脂はポリプロピレン(プライムポリプロ(登録商標)F113G(プロピレンのホモポリマー、密度:910kg/m3、MFR(230℃):3.0g/10min、(株)プライムポリマー製))を用いた。
上記で得られた樹脂組成物および樹脂を、リップ幅330mmTダイを設置し、3つのホッパー投入口と30mmφスクリューを設置した三種三層式Tダイシート成形機を用いて、X層のシリンダー温度は280℃、Y層のシリンダー温度は230℃、ダイス温度を280℃に設定し、Tダイから溶融混練物を厚み200μm(X層165μm/Y層35μm)で押し出し、キャスト成形することにより、実施例1のフィルムを得た。なお、各層の厚みは、押出量から算出した。
得られたフィルムの評価結果を表1に示した。具体的な試験方法は以下の通りである。
<引張破断伸び>
得られた押出フィルムは、JIS K6781に準拠してMD方向、TD方向のいずれにも引張試験を行って(スパン間80mm、引張速度200mm/min、23℃)、引張破断伸び(%)を求めた。
<剥離強度>
得られた押出フィルムはTピール法により剥離速度300mm/min、測定温度23℃、試験区間10-200mmの条件で行い、0.25mm間隔で剥離強度(N)を測定した。前記区間で測定された剥離強度の最大値を最大剥離強度(N)とした。なお、剥離強度が大きいため前記区間の一部で剥離を行うことができなかったときは、剥離できた区間において測定された剥離強度の最大値M(N)を求め、「M以上」と評価した。
また、前記区間で測定された剥離強度の平均値を平均剥離強度(N)とし、剥離応力の平均値を平均剥離応力(N/cm)とした。なお、剥離強度が大きいため、前記区間の一部で剥離することができなかったときは、剥離強度の平均値および剥離応力の平均値を求めることができないので、いずれも「測定不能」と評価した。
(比較例1)
X層を形成する樹脂組成物を表に記載の割合で溶融混練した以外は、実施例1と同様の方法により、積層フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
(比較例2)
X層を形成する樹脂組成物を表に記載の割合で溶融混練して調製し、Y層のシリンダー温度を250℃に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、積層フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
(比較例3)
X層を形成する樹脂組成物を表に記載の割合で溶融混練した以外は、実施例1と同様の方法により、積層フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
Figure 2022147565000004

Claims (7)

  1. X層と、Y層とが積層されてなる積層体であって、
    X層が、DSCで測定した融点(TmA)が200℃以上である4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)10~90質量部と、ポリアミド(B)1~50質量部と、変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(C)0.1~20質量部と、DSCで融点が計測されないか、またはDSCで測定した融点(TmD)が200℃未満である4-メチル-1-ペンテン系重合体(D)1~40質量部とを含む、4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物(ただし成分(A)、(B)、(C)および(D)の合計量を100質量部とする)から構成される積層体。
  2. 前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)のASTM D1238に準拠した、260℃、5kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)が1~300g/10minである、請求項1に記載の積層体。
  3. 前記ポリアミド(B)が、下記要件(B-1)および(B-2)を満たす、請求項1または2に記載の積層体。
    (B-1)ASTM D1238に準拠した、280℃、5kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)が1~100g/10minである。
    (B-2)DSCで測定した融点(TmB)が150~300℃である。
  4. 前記変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(C)が、下記要件(C-1)~(C-3)を満たす、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層体。
    (C-1)DSCで測定した融点(TmC)が200~240℃である。
    (C-2)変性4-メチル-1-ペンテン系重合体(C)中のエチレン性不飽和結合含有モノマーのグラフト量が、0.1~10質量%である。
    (C-3)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.2~4dl/gである。
  5. 前記エチレン性不飽和結合含有モノマーが、無水マレイン酸である、請求項4に記載の積層体。
  6. 前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(D)が、下記要件(D-1)および(D-2)を満たす、請求項1~5のいずれか1項に記載の積層体。
    (D-1)4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(P)の含有率が65モル%以上96モル%未満であり、炭素原子数2~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から導かれる構成単位(Q)の含有率が4モル%を超え35モル%以下である。
    (D-2)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5~5.0dl/gである。
  7. 前記Y層が、ポリプロピレンを含む樹脂組成物から形成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の積層体。
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