JP6969116B2 - 接着性樹脂組成物及び積層体 - Google Patents

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Description

本発明は、接着性樹脂組成物及び積層体に係り、特に、良好な接着性を示す接着層を形成し得る接着性樹脂組成物と、この接着性樹脂組成物を用いた積層体に関する。
ポリオレフィン系樹脂は各種分野で幅広く利用されている。ポリオレフィン系樹脂は成形性、耐薬品性には優れるものの、ガスバリア性や耐内容物性に劣る。この欠点の改良方法としてガスバリア性に優れたポリアミド樹脂やエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)層との積層体とすることが広く採用されており、これらのガスバリア層とポリオレフィン系樹脂層とを接着するための接着性樹脂組成物として極性基で変性したポリオレフィンを含む接着性樹脂組成物が提供されている。
このような積層体の層構成としては、「主材層/接着層/ガスバリア性を有する樹脂層/接着層/主材層」が基本的な層構成であり、その中でもコストと衛生性の観点から主材にポリオレフィンを用いる構造が主流である。ここでポリオレフィンとしては、使用温度が0℃以下の低温から100℃前後の場合はポリエチレン系樹脂が、レトルト処理などの高温耐熱性を要求される用途や硬度、透明性等を要求される用途ではポリプロピレン系樹脂が一般的に使用されてきた。
通常、ポリエチレン系樹脂を主材とする場合は接着層に用いる材料(接着材)としてポリエチレン系接着材が、ポリプロピレン系樹脂を主材の場合は接着材としてポリプロピレン系接着材が使用される。しかしながら、ポリプロピレン系接着材の接着強度は、ポリエチレン系接着材の接着強度に比べて低いため、接着強度の改良が望まれてきた。
このような問題を解決する方法としては、例えば、プロピレン系重合体/粘着付与剤/グラフト変性プロピレン系重合体/ポリエチレン/エチレン・α−オレフィンランダム共重合体からなる樹脂組成物を接着材として使用する方法が開示されている(特許文献1参照)。また、他の解決方法として、プロピレン系逐次重合生成物/変性ポリプロピレン系樹脂/オレフィン系樹脂からなる樹脂組成物を接着材として使用する方法も開示されている(特許文献2参照)。
特開2004−269688号公報 特開2007−92027号公報
特許文献1に記載された方法では、未だ接着強度の改良が十分でなく、かつ粘着付与剤を必須の構成としているため、成形時に発煙を生じたり、油性の飲食品を包装する材料として用いた場合に、粘着付与剤が飲食品中に漏れ出すという問題が発生する場合があった。また、特許文献2に記載された方法での接着強度改良も十分とはいえず、更なる改良が望まれてきた。
このように、従来法では、特に主材としてポリプロピレン系樹脂を用いるポリプロピレン系積層体における接着材として、十分な接着強度が得られる樹脂組成物は提供されていなかった。
かかる状況に鑑み、本発明の目的は、共押出成形性に優れるとともに、得られる積層体における層間接着性が優れる接着性樹脂組成物と、この接着性樹脂組成物からなる層を含む積層体を提供することにある。
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、2種類の変性法による不飽和カルボン酸変性ポリプロピレン系樹脂を組み合わせて用いることにより、特異な性能改良効果が発現され、ポリアミド樹脂やEVOH樹脂などのガスバリア層を有する積層体において良好な接着性が発揮されることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
[1] 下記成分(A)〜(D)を含み、これらの合計量100質量%に対して各成分の含有量が、成分(A)が0.5〜5質量%、成分(B)が5〜20質量%、成分(D)が5〜30質量%、残部が成分(C)である接着性樹脂組成物。
成分(A):ポリプロピレン系樹脂を、少なくとも1種の不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体で溶液中グラフト変性してなる変性ポリプロピレン系樹脂であって、変性量が1.5質量%以上の変性ポリプロピレン系樹脂
成分(B):エチレン単位含有量が10質量%以上で、曲げ弾性率が300MPa以下であるポリプロピレン系樹脂を、少なくとも1種の不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体で溶融グラフト変性してなる変性ポリプロピレン系樹脂であって、変性量が1.5質量%未満の変性ポリプロピレン系樹脂
成分(C):ポリプロピレン系樹脂
成分(D):エチレン・α−オレフィン共重合体
[2] 接着性樹脂組成物のメルトフローレート(JIS K7210(230℃、荷重2.16kg))が1〜10g/10分で、不飽和カルボン酸成分の含有量が0.1質量%以上である、[1]に記載の接着性樹脂組成物。
[3] 成分(A)の変性ポリプロピレン系樹脂の原料となるポリプロピレン系樹脂がプロピレンの単独重合体、或いはプロピレン単位含有量が95質量%以上のプロピレン・エチレン及び/又はプロピレン以外のα−オレフィン共重合体である、[1]又は[2]に記載の接着性樹脂組成物。
[4] 成分(B)の変性ポリプロピレン系樹脂の原料となるポリプロピレン系樹脂がメルトフローレート(JIS K7210(230℃、荷重2.16kg))が0.5〜50g/10分で、密度0.860〜0.880g/cmのプロピレン・エチレン共重合体である、[1]ないし[3]のいずれかに記載の接着性樹脂組成物。
[5] 成分(C)を含み、成分(C)のポリプロピレン系樹脂がプロピレンホモ重合体、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体の何れかであり、プロピレン単位の含有量が80質量%以上で、メルトフローレート(JIS K7210(230℃、荷重2.16kg))が1〜30g/10分である、[1]ないし[4]のいずれかに記載の接着性樹脂組成物。
[6] 成分(D)のエチレン・α−オレフィン共重合体が、密度0.895g/cm以下、メルトフローレート(JIS K7210(190℃、荷重2.16kg))が、0.2〜20g/10分である、[1]ないし[5]のいずれかに記載の接着性樹脂組成物。
[7] [1]ないし[6]のいずれかに記載の接着性樹脂組成物からなる層を含むポリプロピレン系樹脂層とガスバリア層とを有する積層体。
[8] 前記ガスバリア層と前記接着性樹脂組成物からなる層とが接触している、[7]に記載の積層体。
[9] 前記ガスバリア層が、エチレン・ビニルアルコール共重合体又はポリアミド系樹脂からなる層である、[7]又は[8]に記載の積層体。
[10] 共押出成形体である、[7]ないし[9]のいずれかに記載の積層体。
本発明の接着性樹脂組成物は、共押出成形性に優れると共に、ポリアミド樹脂やEVOH樹脂などのガスバリア層に対して、良好な層間接着性を発揮するものであるため、本発明の接着性樹脂組成物を用いて、層間接着強度の高い積層体を提供することができる。
以下に本発明について詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施の形態の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
なお、本発明において、「〜」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
なお、本発明において、樹脂のメルトフローレート(MFR)、密度、曲げ弾性率、成分(A),(B)の変性ポリプロピレン系樹脂の変性量(グラフト率)は、以下のようにして測定された値である。
<MFR>
成分(A)の変性原料となるポリプロピレン系樹脂、成分(B)の変性原料となるポリプロピレン系樹脂、成分(C)のポリプロピレン系樹脂、積層体のポリプロピレン系樹脂層を構成するポリプロピレン系樹脂のMFRは、JIS K7210に従い、温度230℃、荷重2.16kg、10分の条件で測定される。成分(D)のエチレン・α−オレフィン共重合体のMFRはJIS K7210に従い、温度190℃、荷重2.16kg、10分の条件で測定される。
<密度>
JIS K7112に従い、水中置換法で測定される。
<曲げ弾性率>
JIS K7171−1994に準拠して測定される。
<変性量(グラフト率)>
成分(A),(B)および樹脂組成物の変性量(グラフト率)は、赤外分光測定装置で測定した際の、後述の原料ポリプロピレン系樹脂にグラフトした不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体(以下、「不飽和カルボン酸成分」と称す場合がある。)の含有率を意味する。例えば、変性ポリプロピレン系樹脂を厚さ100μm程度のシート状にプレス成形したサンプル中の不飽和カルボン酸成分特有の吸収、具体的には1,900〜1,600cm−1(C=O伸縮振動帯)のカルボニル特性吸収を測定することにより求めることができる。変性量(グラフト率)は、上記の方法で、予め作成した検量線から求めることもできる。
以下において、共重合体(共重合樹脂)に含まれる単量体単位を単に「単位」と称す場合がある。例えば、プロピレンに基づく単量体単位を「プロピレン単位」と称し、エチレンに基づく単量体単位、α−オレフィンに基づく単量体単位をそれぞれ「エチレン単位」、「α−オレフィン単位」と称す場合がある。
〔接着性樹脂組成物〕
本発明の接着性樹脂組成物は、下記成分(A)〜(D)を含み、これらの合計量100質量%に対して各成分の含有量が、成分(A)が0.5〜5質量%、成分(B)が5〜20質量%、成分(D)が0〜30質量%、残部が成分(C)であることを特徴とする。
成分(A):ポリプロピレン系樹脂を、少なくとも1種の不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体で溶液中グラフト変性してなる変性ポリプロピレン系樹脂であって、変性量が1.5質量%以上の変性ポリプロピレン系樹脂
成分(B):エチレン単位含有量が10質量%以上で、曲げ弾性率が300MPa以下であるポリプロピレン系樹脂を、少なくとも1種の不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体で溶融グラフト変性してなる変性ポリプロピレン系樹脂であって、変性量が1.5質量%未満の変性ポリプロピレン系樹脂
成分(C):ポリプロピレン系樹脂
成分(D):エチレン・α−オレフィン共重合体
本発明で用いる成分(A)と成分(B)は、上記の変性量とすることにより、基本的に分子量が成分(A)<成分(B)となり、共押出した際、被着体と溶融状態で接触した直後から、まず変性量が多い(不飽和カルボン酸成分含有量が多い)ため被着体との反応性が高く、分子量が低く、界面に移行しやすい成分(A)が初期に被着体界面に移行し、その後、分子量が大きく、被着体との接着強度を向上させることができる効果がある成分(B)が被着体に移行するが、成分(A)が先に界面に移行していることにより、その移行速度を向上させることができる。また、添加量の多い成分(B)の組成をエチレン単位含有量10質量%以上とすることで、剥離時の引張伸びを増加させることにより、接着強度を向上させることができる。
[成分(A)]
本発明の接着性樹脂組成物に用いられる成分(A)である不飽和カルボン酸成分で溶液中グラフト変性した変性ポリプロピレン系樹脂の原料となるポリプロピレン系樹脂(以下「原料ポリプロピレン系樹脂(a)」と称す場合がある。)としては、プロピレンの単独重合体、或いはプロピレンを主成分としてプロピレン単位として95質量%以上含み、これと、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンとの共重合体が挙げられる。このような成分(A)であれば、特に高温時の接着性を保持する効果が大きいものとなる。
原料ポリプロピレン系樹脂(a)の立体規則性には限定は無く、プロピレン連鎖がアイソタクティック、シンジオタクティック、アタクティック、ステレオブロック等の何れでもよいが、特に成分(A)は特に高温時の接着性を保持する効果が大きいため、プロピレン連鎖がアイソタクティックであることが好ましく、特にアイソタクティックホモポリプロピレンが好ましい。また、重合に用いる触媒も公知のものを適宜採用することができる。重合形態は、単独重合体、ランダム重合体以外に、ブロック共重合体も可能である。
原料ポリプロピレン系樹脂(a)のMFR(230℃、荷重2.16kg)は限定されないが、好ましくは100g/10分以下、より好ましくは50g/10分以下であり、更に好ましくは20g/10分以下である。溶液変性の場合、グラフト率は高くできるが、分子の切断が大きいため、MFRが上記上限を超えると、分子量が小さくなりすぎてその後の加工性に影響を及ぼし、また分子量が小さいために接着強度が発現しにくくなる。MFRの下限は特に制限はないが、一般的に製造可能な観点から通常0.1g/10分以上である。
原料ポリプロピレン系樹脂(a)は、1種のみを用いてもよく、組成や物性等の異なるものの2種以上を併用してもよい。
上記の原料ポリプロピレン系樹脂(a)の変性に用いる不飽和カルボン酸としては、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸が好ましく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ナジック酸TM(エンドシス−ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2,3ジカルボン酸)等が挙げられる。不飽和カルボン酸の誘導体としては、これらの不飽和カルボン酸の酸無水物、カルボン酸エステル等が例示され、更には、酸ハロゲン化物、アミド、イミドなどの誘導体であってもよい。これらの誘導体としては、酸無水物が好ましい。
不飽和カルボン酸成分としては、特にマレイン酸及び/又はその無水物が好適である。
これらの不飽和カルボン酸成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。更には、ビニルトリメトキシシランなどのいわゆるビニルシラン類などを不飽和カルボン酸成分とともに併用することもできる。
原料ポリプロピレン系樹脂(a)の不飽和カルボン酸成分による溶液中グラフト変性は、原料ポリプロピレン系樹脂(a)を有機溶剤に溶解した溶液に不飽和カルボン酸成分及びラジカル発生剤等を加え、通常60〜350℃、好ましくは80〜190℃の温度で、0.5〜15時間、好ましくは1〜10時間反応させることにより行われる。
グラフト変性に用いる不飽和カルボン酸成分の使用量は限定されないが、原料ポリプロピレン系樹脂(a)100質量部に対し、不飽和カルボン酸成分を通常1.5〜5質量部、好ましくは1.8〜3質量部の割合で配合することが望ましい。不飽和カルボン酸成分量が上記上限より多いと、未反応の不飽和カルボン酸成分が多くなってしまい、接着強度の低下につながり、また上記下限より少ないと、反応性が乏しくなり、所定のグラフト量よりも低下する場合がある。
ラジカル発生剤は限定されないが、具体的には、ベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ペルオキシベンゾエ−ト)ヘキシン−3、ラウロイルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert−ブチルペルベンゾエ−ト、tert−ブチルペルイソブチレ−ト、tert−ブチルペルピバレ−ト、及びクミルペルピバレ−ト等の有機ペルオキシドや有機ペルエステル、あるいは、アゾビスイソブチロニトリル、ジメチルアゾイソブチレ−ト等のアゾ化合物等を使用することができる。
これらのラジカル発生剤は、原料ポリプロピレン系樹脂(a)の種類やMFR、不飽和カルボン酸成分の種類および反応条件等に応じて適宜選択することができ、2種以上を併用してもよい。ラジカル発生剤の配合量は限定されないが、原料ポリプロピレン系樹脂(a)100質量部に対し、通常0.001〜5質量部、好ましくは0.005〜3質量部である。ラジカル発生剤の使用量が上記上限より多いと、ラジカルの分子切断の効果が高くなってしまい、分子量が大きく低下してしまい、物性、接着性に悪影響を及ぼす。また上記下限より少ないと、反応性が乏しくなり、グラフト変性できない場合がある。
成分(A)の変性ポリプロピレン系樹脂における不飽和カルボン酸成分による変性量(グラフト率)は、1.5質量%以上、好ましくは2質量%以上であり、一方、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。不飽和カルボン酸成分による変性量が前記下限値より低いと、成分(A)の配合量を増量する必要があり、コストが高くなってしまう。また、該変性量が前記上限値より高いと熱安定性が低下するほか、分子量が大きく低下してしまい、接着性が発現せず、また他の成分との相溶性が低下する傾向にある。
ここで変性量(グラフト率)とは、前述の通り、赤外分光測定装置で測定した際の、不飽和カルボン酸成分の含有率を意味する。例えば、厚さ100μm程度のシート状にプレス成形したサンプル中のカルボン酸及び/又はその誘導体特有の吸収、具体的には1900〜1600cm−1(C=O伸縮振動帯)のカルボニル特性吸収を測定することにより求めることができる。なお、不飽和カルボン酸成分による変性は、100%が反応に供されずに、原料ポリプロピレン系樹脂(a)と反応していない不飽和カルボン酸成分も変性ポリプロピレン系樹脂中に残留している場合があるが、本発明における変性量(グラフト率)は、上記の方法で測定した際の値を意味するものとする。後述の成分(B)の変性量(グラフト率)についても同様である。
なお、成分(A)及び後述の成分(B)とも、未反応の不飽和カルボン酸成分を除く処理を行うことができる。この処理方法は限定されないが、具体的な例としては、装置下部より気体が吹き込める構造を有する貯蔵タンクに変性ポリプロピレン系樹脂を入れて、ヒーターあるいは熱媒油で装置を100℃程度に加熱し、装置下部より窒素などの不活性気体あるいは空気を吹き込み、6〜24時間処理する方法がある。
本発明において、成分(A)の変性ポリプロピレン系樹脂は1種のみを用いてもよく、単量体組成や物性、グラフト変性に用いた不飽和カルボン酸成分の種類や、変性量の異なるものの2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の接着性樹脂組成物において、成分(A)の含有量は、成分(A)と後述の成分(B)、成分(C)及び成分(D)の合計100質量%に対して0.5〜5質量%である。成分(B)の含有量が上記上限より多いとコストが高くなり、上記下限よりも少ないと接着強度が発現しない。成分(A)は、成分(A)と後述の成分(B)、成分(C)及び成分(D)の合計100質量%に対して1〜2質量%用いることが好ましい。
[成分(B)]
成分(B)の原料として用いるポリプロピレン系樹脂(以下、「原料ポリプロピレン系樹脂(b)」と称す場合がある。)は、エチレン単位含有量が10質量%以上である必要がある。また、成分(B)の原料ポリプロピレン系樹脂は、エチレン及びプロピレン以外の第3のコモノマ―、例えば1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン・4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィンや、その他のビニルモノマーに基づく単量体単位を含むものであってもよい。
α−オレフィン以外のその他のビニルモノマーとしては、アクリル酸、アクリル酸エチル等の不飽和カルボン酸及びその誘導体、酢酸ビニル等のビニルエステル、スチレン、メチルスチレン等の不飽和芳香族化合物等のその他のビニルモノマーの1種又は2種以上が挙げられる。
原料ポリプロピレン系樹脂(b)のエチレン単位の含有量は、5質量%以上であって、好ましくは7〜30質量%、より好ましくは10〜20質量%である。原料ポリプロピレン系樹脂(b)のエチレン単位の含有量が5質量%未満であると、剥離時の引張伸びを増加させることができず、接着強度の向上効果を得ることができない。ただし、原料ポリプロピレン系樹脂(b)のエチレン単位の含有量が多過ぎると他の樹脂成分との相溶性が悪化し、その結果接着性が発現されなくなるので、原料ポリプロピレン系樹脂(b)のエチレン単位の含有量は、上記範囲であることが好ましい。
原料ポリプロピレン系樹脂(b)としては、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。
また、原料ポリプロピレン系樹脂(b)は、曲げ弾性率が300MPa以下であることを必須とする。エチレン単位の含有量が10質量%以上で、かつ曲げ弾性率が300MPa以下であれば、グラフト変性時のMFRの低下を抑えることが可能であり、成分(A)と併用することにより、被着体との密着性、特に、共押出成形時の被着体との密着性に優れる接着性樹脂組成物とすることができる。原料ポリプロピレン系樹脂(b)の曲げ弾性率はより好ましくは80MPa以下、更に好ましくは60MPa以下である。ただし、原料ポリプロピレン系樹脂(b)の曲げ弾性率が過度に小さいと、樹脂組成物製造時の成分(B)の加工性が損なわれるおそれがあるため、原料ポリプロピレン系樹脂(b)の曲げ弾性率は好ましくは30MPa以上である。
また、原料ポリプロピレン系樹脂(b)のMFR(230℃、荷重2.16kg)は特に限定されないが、通常0.5〜50g/10分、好ましくは1〜30g/10分、より好ましくは2〜25g/10分である。MFRが前記下限値よりも小さい場合には、単独での凝集力が強くなり他の成分との均一混合性が不十分になる場合があるほか、本発明の接着性樹脂組成物を製造する際のエネルギー負荷が大きくなりすぎ、過ぎる場合がある。また、MFRが前記上限値よりも大きい場合には、本発明の接着性樹脂組成物の流動性が高くなり接着強度が低下する傾向にある。
また、原料ポリプロピレン系樹脂(b)の密度は、成形性と強度とを共に優れたものとするために、0.860〜0.880g/cmであることが好ましい。
原料ポリプロピレン系樹脂(b)は1種のみを用いてもよく、組成や物性等の異なるものの2種以上を併用してもよい。
原料ポリプロピレン系樹脂(b)のグラフト変性に用いる不飽和カルボン酸成分及びラジカル発生剤としては、原料ポリプロピレン系樹脂(a)のグラフト変性に用いる不飽和カルボン酸成分及びラジカル発生剤として前述したものが挙げられ、好ましいものも同様である。
グラフト変性に用いる不飽和カルボン酸成分の使用量は限定されないが、原料ポリプロピレン系樹脂(b)100質量部に対し、不飽和カルボン酸成分を通常0.01〜2質量部、好ましくは0.05〜1.5質量部の割合で配合することが望ましい。不飽和カルボン酸成分が上記上限より多いと、未反応の不飽和カルボン酸成分が多くなってしまい、接着強度の低下につながり、また上記下限より少ないと、反応性が乏しくなり、グラフト変性されない場合がある。
ラジカル発生剤は、原料ポリプロピレン系樹脂(b)の種類やMFR、不飽和カルボン酸成分の種類および反応条件等に応じて適宜選択することができ、2種以上を併用してもよい。ラジカル発生剤の配合量は限定されないが、原料ポリプロピレン系樹脂(b)100質量部に対し、通常0.001〜5質量部、好ましくは0.005〜3質量部である。ラジカル発生剤の使用量が上記上限より多いと、ラジカルの分子切断の効果が高くなってしまい、分子量が大きく低下してしまい、物性、接着性に悪影響を及ぼす。また上記下限より少ないと、反応性が乏しくなり、グラフト変性できない場合がある。
成分(B)の変性ポリプロピレン系樹脂を得るためのグラフト変性は、溶融変性法で行う。溶融変性法としては、原料ポリプロピレン系樹脂(b)と、不飽和カルボン酸成分と、必要により後述するラジカル発生剤を予め混合した上で、混練機中で溶融混練して反応させる方法や、混練機中で溶融した原料ポリプロピレン系樹脂(b)に、ラジカル発生剤と不飽和カルボン酸成分との混合物を装入口から添加して反応させる方法等を用いることができる。混合には通常、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等が使用され、溶融混練には通常、単軸又は二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、ブラベンダーミキサー等を使用することができる。
成分(B)の変性ポリプロピレン系樹脂における不飽和カルボン酸成分による変性量(グラフト率)は1.5質量%未満であり、好ましくは1.2質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。一方、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上である。不飽和カルボン酸成分による変性量が上記上限値より多いと熱安定性が低下するほか、未反応の不飽和カルボン酸成分が増加してしまい、接着性の低下を起こす。一方、上記下限値より少ないと、本発明の接着性樹脂組成物における基材層への接着性能が低下する傾向にある。
本発明において、成分(B)の変性ポリプロピレン系樹脂は1種のみを用いてもよく、単量体組成や物性、グラフト変性に用いた不飽和カルボン酸成分の種類や、変性量の異なるものの2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の接着性樹脂組成物において、成分(B)の含有量は、前述の成分(A)と成分(B)、後述の成分(C)及び成分(D)の合計100質量%に対して5〜20質量%である。成分(B)の合計量が上記上限より多いと外観不良となり、上記下限よりも少ないと接着強度が発現しない。成分(B)は、前述の成分(A)と成分(B)、後述の成分(C)及び成分(D)の合計100質量%に対して5〜15質量%用いることが好ましい。
[成分(C)]
成分(C)は成分(A)及び成分(B)以外のポリプロピレン系樹脂であり、一般的な熱可塑性ポリプロピレン系樹脂を用いることができる。成分(C)のポリプロピレン系樹脂としては、例えばプロピレンホモ重合体、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体などが挙げられる。コモノマーとして用いるα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等の炭素数4〜20程度のα−オレフィンなどが挙げられる。コモノマーとして用いるα−オレフィンは1種であってもよく、2種以上を併用してもよい。
成分(C)のポリプロピレン系樹脂のプロピレン単位の含有量は80質量%以上が好ましく、更に好ましくは85質量%以上であり、その上限は100質量%である。プロピレン単位の含有量が上記下限以上であると、耐熱性の面で好ましい。
成分(C)のポリプロピレン系樹脂は公知の方法によって製造される。例えば、チーグラーナッタ触媒、メタロセン触媒等の触媒を用い、バッチ法、気相法、スラリー法など公知の手段で製造される。
成分(C)のポリプロピレン系樹脂のMFR(230℃、荷重2.16kg)は特に制限はないが、1〜30g/10分であることが好ましく、3〜15g/10分であることがより好ましい。成分(C)のポリプロピレン系樹脂のMFRが上記上限以下であると、耐熱性、機械的強度等が良好なものとなる傾向があり、上記下限以上であると、成形性、延伸性等が良好なものとなる傾向がある。
成分(C)のポリプロピレン系樹脂は、1種のみを用いてもよく、組成や物性等の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
本発明の接着性樹脂組成物において、成分(C)の含有量は、前述の成分(A)、成分(B)及び成分(C)と後述の成分(D)との合計量100質量%に対して、成分(A)及び成分(B)を前述の含有量とし、成分(D)を後述の含有量としたときの残部であるが、好ましくは、成分(C)の含有量は、前述の成分(A)、成分(B)及び成分(C)と後述の成分(D)との合計量100質量%に対して50質量%以上、より好ましくは70質量%以上であり、また、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。成分(B)は本発明の接着性樹脂組成物よりなる層の機械的強度、耐熱性、延伸性に寄与する成分であり、成分(C)の含有量が上記下限よりも少ないと、これらの特性を十分に得ることができないが、多過ぎると、相対的に他の成分の含有量が少なくなって接着性、延伸時の接着強度維持効果が損なわれる。
[成分(D)]
成分(D)のエチレン・α−オレフィン共重合体は、本発明の接着性樹脂組成物に接着性、機械的強度を付与するための成分である。
成分(D)のエチレン・α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィンは限定されないが、具体的には、例えば、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等の1種又は2種以上が挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンとしては炭素数が3〜8であるものが好ましい。
成分(D)のエチレン・α−オレフィン共重合体のMFR(190℃、荷重2.16kg)は限定されないが、0.2〜20g/10分であることが好ましく、0.3〜15g/10分であることがより好ましい。MFRが上記下限以上であるとその他の樹脂との溶融混練の際、混練不足による異物の発生がなく、成形した際に外観良好な接着性樹脂組成物を得易く、また、上記上限以下であると、成分(D)が配向することなく微分散性が保たれるために好ましい。
また、エチレン・α−オレフィン共重合体の密度は限定されないが、通常0.895g/cm以下、好ましくは0.87g/cm以下であることが望ましい。エチレン・α−オレフィン共重合体の密度が上記上限以下であると成形時の歪緩和効果が十分となり層間接着強度が向上する傾向がある。エチレン・α−オレフィン共重合体の密度の下限は限定されないが、通常0.85g/cm以上である。
本発明に好適なエチレン・α−オレフィン共重合体としては市販品を用いることもでき、例えば、三井化学社製「タフマー(登録商標)」シリーズ、DOW社「エンゲージ(登録商標)」シリーズ等の中から前記の特性に該当するものを適宜選択することができる。
これらの成分(D)は、1種のみを用いてもよく、エチレン単位の含有量や物性等の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
本発明の接着性樹脂組成物において、成分(D)の含有量は、前述の成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)の合計100質量%に対して5〜30質量%である。成分(D)の含有量が上記上限よりも多いと耐熱性が低下するが、少ないと剥離時の伸びが損なわれて、接着強度が低下するため、好ましくは、成分(D)の含有量は、前述の成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)の合計100質量%に対して10〜20質量%である。
<その他の成分>
本発明の接着性樹脂組成物には、上記の各成分に加え、本発明の効果を著しく損なわない範囲で各種目的に応じ他の任意の添加剤や樹脂等(以下、これらを「その他の成分」と称す。)を配合することができる。その他の成分は、1種類のみを用いても、2種類以上を任意の組合せと比率で併用してもよい。
添加剤としては、一般的にポリオレフィンに用いられる補助添加成分、具体的には、プロセス油、中和剤、加工助剤、可塑剤、結晶核剤、衝撃改良剤、難燃剤、難燃助剤、架橋剤、架橋助剤、帯電防止剤、滑剤、充填材、相溶化剤、耐熱安定剤、耐候安定剤(酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤など)、防曇剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、抗菌剤、カーボンブラック、着色剤(顔料、染料など)等が挙げられる。
このうち、難燃剤は、ハロゲン系難燃剤と非ハロゲン系難燃剤に大別されるが、非ハロゲン系難燃剤が好ましく、具体的には、金属水酸化物、リン系難燃剤、窒素含有化合物(メラミン系、グアニジン系)難燃剤及び無機系化合物(硼酸塩、モリブデン化合物)難燃剤等が挙げられる。
熱安定剤及び酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物等が挙げられる。
充填材は、有機充填材と無機充填材に大別される。有機充填材としては、澱粉、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻、フスマ等の天然由来のポリマーやこれらの変性品等が挙げられる。また、無機充填材としては、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、金属繊維、金属ウイスカー、セラミックウイスカー、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、炭素繊維等が挙げられる。
これらの添加剤を用いる場合、その含有量は限定されないが、本発明の接着性樹脂組成物中の含有量として、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上であり、また、通常5質量%以下、好ましくは2質量%以下であることが望ましい。なおこれらの添加剤は、本発明の接着性樹脂組成物をマスターバッチとして用いる場合には、前記した含有量の2〜50倍、好ましくは3〜30倍の濃度で含有させることもできる。
その他の成分として用いる樹脂としては、具体的には、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ナイロン66、ナイロン11等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、及びポリメチルメタクリレート系樹脂等のアクリル/メタクリル系樹脂等を挙げることができる。
本発明の接着性樹脂組成物がこれらのその他の樹脂を含有する場合、その含有量は、成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)の合計100質量部に対して30質量部以下であることが好ましい。
<製造方法>
成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)と、必要に応じて添加されるその他の成分を用いて、本発明の接着性樹脂組成物を製造するための配合方法は、溶融法、溶液法、懸濁分散法等があり、特に限定されない。実用的には溶融混練法が好ましい。
溶融混練のための具体的な方法としては、粉状又は粒状の成分(A)〜(D)、並びに必要に応じて添加されるその他の成分を、所定の配合割合にて、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等を用いて均一に混合した後、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、単軸又は二軸等の多軸混練押出機等の通常の混練機を用いて混練する方法が例示できる。
各成分の溶融混練の温度は、通常100〜300℃の範囲、好ましくは120〜280℃の範囲、特に好ましくは150〜250℃の範囲である。さらに、各成分の混練順序及び方法は、特に限定されるものではなく、成分(A)〜(D)と必要に応じて用いられるその他の成分とを一括して混練する方法、又は成分(A)〜(D)と必要に応じて用いられるその他の成分の一部を予め混練しておき、その後残りの成分を混練する方法でもよい。
<MFR・不飽和カルボン酸成分の含有量>
上記のようにして得られる本発明の接着性樹脂組成物のMFR(230℃、荷重2.16kg)は1〜10g/10分、特に2〜8g/10分であることが好ましい。接着性樹脂組成物のMFRが上記範囲であると良好な成形性、特に良好な共押出成形性が得られるため好ましい。
また、本発明の接着性樹脂組成物の不飽和カルボン酸成分の含有量は、0.1質量%以上であることが好ましく、特に0.11質量%以上であることが好ましい。不飽和カルボン酸成分の含有量が上記下限以上であると、良好な接着性を得ることができる。ただし、不飽和カルボン酸成分の含有量が多過ぎると焼け等が多くなり、その結果、製品の外観等に悪影響を及ぼすため、接着性樹脂組成物中の不飽和カルボン酸成分量は0.3質量%以下、特に0.2質量%以下であることが好ましい。
ここで、接着性樹脂組成物の不飽和カルボン酸成分の含有量は、前述の成分(A)、(B)の変性量と同様にして測定することができる。
[積層体]
本発明の積層体は、本発明の接着性樹脂組成物からなる層を含むポリプロピレン系樹脂層とガスバリア層とを有し、好ましくは、本発明の接着性樹脂組成物からなる層とガスバリア層とが直接接しているものである。
<接着層>
本発明の積層体における本発明の接着性樹脂組成物からなる層は通常接着層であり、その厚みとしては限定されるものではなく、用途や被接着層の種類等に応じて適宜決定されるが、通常1〜100μmの範囲であることが好ましく、更には2〜50μmの範囲であることが好ましく、特に3〜20μmの範囲であることが好ましい。
<ガスバリア層>
本発明において、ガスバリア層に用いられる樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)が挙げられる。
エチレン・ビニルアルコール共重合体は、通常エチレン・酢酸ビニル共重合体を鹸化して得られるものであり、本発明においては、そのエチレン単位の含有量が20〜50モル%で、鹸化度が95%以上のものが好ましい。なお、鹸化度の上限は100%である。エチレン・ビニルアルコール共重合体のエチレン単位の含有量が少な過ぎると熱分解し易く、溶融成形が困難で、また延伸性にも劣り、かつ吸水し膨潤し易く耐水性が劣るものとなる。一方、エチレン・ビニルアルコール共重合体のエチレン単位の含有量が多過ぎると、耐ガス透過性が低下する傾向がある。また、鹸化度が低過ぎる場合には、耐ガス透過性が低下する傾向がある。
ポリアミド樹脂としては、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム等のラクタムの重合体、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸の重合体、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−又は1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p−アミノシクロヘキシルメタン)等の脂環式ジアミン、m−又はp−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等のジアミンと、アジピン酸、スペリン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸等のジカルボン酸との重縮合体、及びこれらの共重合体であって、具体的には、ナイロン6、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン611、ナイロン612、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロンMXD6等があり、中でもナイロン6、ナイロンMXD6が好ましい。
ガスバリア層の厚みとしては特に限定されるものではなく、用途や樹脂種、要求特性等によって適宜決定されるが、通常2〜200μm、好ましくは3〜100μmである。
<ポリプロピレン系樹脂層>
ポリプロピレン系樹脂層は、本発明の接着性樹脂組成物からなる接着層のみからなるものであってもよく、その他のポリプロピレン系樹脂層との積層構造であってもよい。
その他のポリプロピレン系樹脂層を構成するプロピレン系樹脂とは、プロピレン含量が50モル%以上のプロピレン系樹脂である。具体的には、プロピレン単独重合体(プロピレンホモポリマー)、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・ブテンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・ヘキセンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・オクテンランダム共重合体、プロピレン・ブテン・ヘキセンランダム共重合体、プロピレン・ブテン・オクテンランダム共重合体、プロピレン・ヘキセン・オクテンランダム共重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体等のプロピレン系重合体を挙げることができ、中でもMFR(230℃,2.16kg)0.1〜30g/10分の、プロピレン単独重合体(プロピレンホモポリマー)、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・ブテンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・ヘキセンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・オクテンランダム共重合体、プロピレン・ブテン・ヘキセンランダム共重合体、プロピレン・ブテン・オクテンランダム共重合体、特にプロピレン単独重合体(プロピレンホモポリマー)、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・ブテンランダム共重合体が好ましく用いられる。
その他のポリプロピレン系樹脂層の厚みとしては特に限定されるものではなく、用途や樹脂種、要求特性等によって適宜決定されるが、通常20〜5,000μm、好ましくは30〜4,000μmである。
なお、上記のポリプロピレン系樹脂層、及び前述のガスバリア層には、その目的を損なわない範囲において、本発明の接着性樹脂組成物或いはその成分を含んでいてもよく、また、前述の本発明の接着性樹脂組成物が含有していてもよいその他の成分や添加剤を含有していてもよい。
<その他の層>
本発明の積層体は、更にその他の層が積層されていてもよい。
その他の層としては特に制限されることはない。例えば、ポリカーボネート樹脂;ポリスチレン(GPPS)、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、スチレン−アクリロニトリルグラフト共重合体(ABS樹脂)等のスチレン系樹脂等からなる樹脂層や、プロピレン系樹脂以外のオレフィン系重合体、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマー等のポリオキシメチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂等のアクリル/メタクリル系樹脂などのその他の熱可塑性樹脂層などが挙げられる。
<積層体の厚み>
本発明の積層体が多層シートである場合、その総厚みは200〜5,000μmであることが好ましい。また、本発明の積層体が多層フィルムである場合、その総厚みは30〜200μmであることが好ましい。
<積層体の製造方法>
本発明の積層体を製造する方法としては、従来より公知の種々の手法を採用することができる。例えば、押出機で溶融させた個々の溶融樹脂を多層ダイスに供給し、ダイスの中で積層する共押出法によるインフレーション成形、T−ダイ成形によるフィルム成形もしくはシート成形を行う方法が挙げられる。さらに、単体又は他樹脂との共押出しにより得られた本発明の接着性樹脂組成物フィルムと被着材フィルムとの熱ラミネート、ヒートシール等による積層法を用いることもできる。
以下、共押出法について詳細に説明する。
上記の各層を構成する組成物の原料を予め溶融混練若しくはドライブレンドによって調製し、単軸、2軸などの押出成形法により押出し、フィードブロック、マルチマニフォールドダイなどで合流し積層構造にし、所定の形状のダイから押出して、冷却後、フィルム形状の場合は巻き取り機で巻き取る。共押出成形法における押出し温度は、ガスバリア層の樹脂の特性によって適時選択されるが、一般的に300℃以下に抑制するのが好ましい。フィルムの引き取り速度(m/h)は所望の厚みに応じて適時設定し、押出機の基材原料の吐出量(g/h)は、用いる原料の種類、目的とするフィルムの各層厚み等により適宜選択することが好ましい。冷却方法は公知の方法を採用することができるが、例として、ロール上へのキャスト冷却、ないしはエアナイフによる冷却、丸ダイスから押出してブローアップによる冷却などの方法により冷却して、積層体を得る。
本発明の積層体は、上記のようにして製造された積層体に対して延伸や、熱成形等の二次成形を施したものであってもよい。
[用途]
本発明の接着性樹脂組成物は、ガスバリア性の樹脂に対して優れた接着強度特性を示す。このため、このような本発明の接着性樹脂組成物を接着層とする本発明の積層体は、優れた接着強度特性を示し、更に強度、耐熱性及びガスバリア性等にも優れたものとすることができる。従って、本発明の積層体は、ハム等の畜肉包装フィルム、ゼリーカップや米飯トレーなどの一般食品包装用材料に好適に使用することができる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
[原材料]
以下の諸例では次の原材料を使用した。
<成分(A)>
・A−1
以下の方法で製造した変性ポリプロピレンを成分(A)の変性ポリプロピレンA−1とした。
クロロベンゼン6Lに、プロピレン単独重合体(密度0.90g/cm、MFR(230℃,荷重2.16kg)10g/10分)のパウダー5kg、無水マレイン酸500gを130℃で溶解させた。次いで、この溶液にジクミルペルオキシドのクロロベンゼン溶液(200g/400L)を加えた。さらに130℃で8時間反応を続け、次いで40℃まで冷却し、樹脂を析出させた。析出させた樹脂をろ過し、さらにアセトンで繰り返し洗浄し、90℃で減圧乾燥してグラフト量2.2質量%の変性ポリプロピレンA−1を得た。
<成分(B)>
・B−1
市販のプロピレン・エチレン共重合体(密度:0.874g/cm、MFR(230℃,荷重2.16kg):3g/10分、曲げ弾性率:60MPa、エチレン単位含有量:11質量%)5kgに対し、無水マレイン酸50g及び有機化酸化物(日本油脂社製、パーブチルI)150gを加えて混合し、予め230℃に設定した二軸押出機に投入し、溶融混合してストランドカットによりペレット状の変性ポリプロピレン系樹脂B−1を得た。この変性ポリプロピレン系樹脂B−1の変性量は0.8質量%であった。
・b−1
市販のプロピレン・エチレン共重合体(密度:0.9g/cm、MFR(230℃,荷重2.16kg):2g/10分、曲げ弾性率:700MPa、エチレン単位含有量:3質量%)5kgに対し、無水マレイン酸50g及び有機化酸化物(日本油脂社製、パーブチルI)150gを加えて混合し、予め230℃に設定した二軸押出機に投入し、溶融混合してストランドカットによりペレット状の変性ポリプロピレン系樹脂b−1を得た。この変性ポリプロピレンの系樹脂b−1の変性量は0.8質量%であった。
<成分(C)>
・C−1
ポリプロピレン系樹脂として、日本ポリプロ株式会社製のノバテックPP EG7F(MFR(230℃、荷重2.16kg):2g/10分)を用いた。
<成分(D)>
・D−1
エチレン・α−オレフィン共重合体として、三井化学社のタフマー(登録商標)PO775(エチレン・プロピレン共重合体、MFR(190℃、荷重2.16kg)0.6g/10分、密度:0.860g/cm)を用いた。
[接着性樹脂組成物の作成]
上記に記載した原材料を、それぞれ表−1に記載の配合量にてドライブレンドして混合し、単軸押出機(IKG社製、PSM50−32(1V)、D=50mmφ、L/D=32)を用い、設定温度210℃、スクリュー回転数60rpm、押出量20kg/hで溶融混練し、ストランドカットによりペレット状の接着性樹脂組成物を得た。
[多層積層体の成形]
上記で得られた接着性樹脂組成物を接着層とし、以下の製造方法により多層積層体を得た。
プラ技研社製多層押出フィルム成形機(各層の押出機:40mmφ,450mm幅マルチマニフォールドダイス、リップ開度:0.5mm)を用いて、3種5層多層フィルムを得た。層構成は、ポリプロピレン層/接着層/EVOH層/接着層/ポリプロピレン層とし、各層厚みを35μm/10μm/10μm/10μm/35μmとし、多層フィルムの全厚みを100μmとした。成形温度は280℃、成形速度は20m/分とし、冷却は、冷却ロール(温度30℃)を用いた後、エアナイフ冷却を行うことにより実施した。なお、上記のポリプロピレン層、EVOH層には以下のものを用いた。
ポリプロピレン層:日本ポリプロ社製 ポリプロピレン系樹脂
ノバテック(登録商標)PP FW4B
EVOH:クラレ社製 クラレエバール F101A
[接着強度の測定]
上記で得られた多層フィルムを押出方向(MD方向)に幅15mmの短冊状に切り出して試験片とし、23℃雰囲気下、速度300mm/minにて180°ピール剥離試験を行い、接着強度を測定した。また、100℃における耐熱接着強度は、100℃に調整された恒温槽内で同様に試験を実施して測定した。ここで、接着強度は、EUOH層と接着層との界面における接着強度である。
表−1に各実施例及び比較例の結果を示す。
なお、表−1には、前述の方法で測定した接着性樹脂組成物のMFR(230℃,荷重2.16kg)と、不飽和カルボン酸成分含有量(マレイン酸量)を併記した。
Figure 0006969116
表−1より明らかなように、本発明の接着性樹脂組成物を用いた実施例1〜4の多層フィルムでは、常温の接着強度も100℃の耐熱接着強度もいずれも良い値を示した。これに対して、成分(B)を用いていない比較例1,2では接着強度が低い。成分(A)を用いていない比較例3,4のうち、比較例3では接着強度が低く、比較例4では、常温の接着強度は高いものの、成分(A)が添加されていないため、高温での剥離強度が低下している。成分(B)の含有量が少な過ぎる比較例5,6でも接着強度が低い。成分(B)として、原料ポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率が大きいものを用いた比較例7でも接着強度が低い。

Claims (10)

  1. 下記成分(A)〜(D)を含み、これらの合計量100質量%に対して各成分の含有量が、成分(A)が0.5〜5質量%、成分(B)が5〜20質量%、成分(D)が5〜30質量%、残部が成分(C)である接着性樹脂組成物。
    成分(A):ポリプロピレン系樹脂を、少なくとも1種の不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体で溶液中グラフト変性してなる変性ポリプロピレン系樹脂であって、変性量が1.5質量%以上の変性ポリプロピレン系樹脂
    成分(B):エチレン単位含有量が10質量%以上で、曲げ弾性率が300MPa以下であるポリプロピレン系樹脂を、少なくとも1種の不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体で溶融グラフト変性してなる変性ポリプロピレン系樹脂であって、変性量が1.5質量%未満の変性ポリプロピレン系樹脂
    成分(C):ポリプロピレン系樹脂
    成分(D):エチレン・α−オレフィン共重合体
  2. 接着性樹脂組成物のメルトフローレート(JIS K7210(230℃、荷重2.16kg))が1〜10g/10分で、不飽和カルボン酸成分の含有量が0.1質量%以上である、請求項1に記載の接着性樹脂組成物。
  3. 成分(A)の変性ポリプロピレン系樹脂の原料となるポリプロピレン系樹脂がプロピレンの単独重合体、或いはプロピレン単位含有量が95質量%以上のプロピレン・エチレン及び/又はプロピレン以外のα−オレフィン共重合体である、請求項1又は2に記載の接着性樹脂組成物。
  4. 成分(B)の変性ポリプロピレン系樹脂の原料となるポリプロピレン系樹脂がメルトフローレート(JIS K7210(230℃、荷重2.16kg))が0.5〜50g/10分で、密度0.860〜0.880g/cmのプロピレン・エチレン共重合体である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の接着性樹脂組成物。
  5. 成分(C)を含み、成分(C)のポリプロピレン系樹脂がプロピレンホモ重合体、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体の何れかであり、プロピレン単位の含有量が80質量%以上で、メルトフローレート(JIS K7210(230℃、荷重2.16kg))が1〜30g/10分である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の接着性樹脂組成物。
  6. 成分(D)のエチレン・α−オレフィン共重合体が、密度0.895g/cm以下、メルトフローレート(JIS K7210(190℃、荷重2.16kg))が、0.2〜20g/10分である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の接着性樹脂組成物。
  7. 請求項1ないし6のいずれか1項に記載の接着性樹脂組成物からなる層を含むポリプロピレン系樹脂層とガスバリア層とを有する積層体。
  8. 前記ガスバリア層と前記接着性樹脂組成物からなる層とが接触している、請求項7に記載の積層体。
  9. 前記ガスバリア層が、エチレン・ビニルアルコール共重合体又はポリアミド系樹脂からなる層である、請求項7又は8に記載の積層体。
  10. 共押出成形体である、請求項7ないし9のいずれか1項に記載の積層体。
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