JP2022136976A - 溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法および合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 - Google Patents

溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法および合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 Download PDF

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崇之 前田
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Abstract

【課題】高Si含有であり、かつ、良好なめっき密着性を有する溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供すること。【解決手段】溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法は、溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法であって、Si含有量が1.0質量%以上である鋼素材を熱間圧延して、500℃~700℃で巻き取る工程と、前記巻き取り後の鋼板の表面に、鋼板温度750℃以下の加熱温度で酸化処理を施し、それに続いて還元処理を施す工程と、前記還元処理後の鋼板に溶融亜鉛めっき処理を施し、前記鋼板の表面に亜鉛めっき層を形成する工程と、を含む。【選択図】なし

Description

本発明は、高Si含有の高強度高加工性の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法および合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法に関する。
自動車業界では、CO削減のための燃費向上および衝突安全性能の向上の観点から、自動車のボディー等の自動車用部材の軽量化および高強度化が要求されている。そのため、自動車のボディー等の自動車用部材には引張強度が980MPa以上の超高強度鋼板が適用されている。このような高強度鋼板の加工性を向上させるために、鋼板の化学組成に安価なSiを含有させる方法が知られている。鋼板の化学組成にSiを含有させることによって、鋼板の強度だけでなく、加工性も向上することができる。
一般的に、Si添加鋼を自動車用部材へ適用する場合、耐食性や溶接性確保の観点から、溶融亜鉛めっき鋼板(GI鋼板)および該溶融亜鉛めっき鋼板を合金化した合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA鋼板)が使用される。しかしながら、鋼板にSiが添加された溶融亜鉛めっき鋼板は、その製造過程においてSi酸化物層が鋼板表面を覆うため、最終的に、不めっき、めっき密着性の低下、合金化処理における合金化ムラ等の問題を招きやすい。さらに、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の加工時にめっきが剥離する等の問題も生じ得る。このようなSi添加による問題を抑制するために、鋼素材にSiを含有する溶融亜鉛めっき鋼板は、酸化加熱帯および還元加熱帯を有する焼鈍炉を用いた酸化還元法を用いて製造されることが多い。酸化還元法によると、酸化加熱帯で生成した酸化鉄が還元焼鈍時において還元Fe層を生成するため、めっき時におけるめっき濡れ性を良好にすることができる。さらに、熱間圧延における巻き取り温度を高くすることによって、予めめっきに必要なSiO等を含む内部酸化層を鋼板に形成する方法も用いられる。
また、近年、溶融亜鉛めっき鋼板の強度および加工性のさらなる向上のために、鋼板のSi含有量を1質量%以上まで増加させた溶融亜鉛めっき鋼板や内部酸化層を良好に形成させる方法について、様々な開発が進められている。
具体的には、例えば、特許文献1には、質量%で、C:0.05~0.25%、Si:0.3~2.5%、Mn:1.5~2.8%、P:0.03%以下、S:0.02%以下、Al:0.005~0.5%、N:0.0060%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる高強度鋼板の上に、Feを含有し、残部がZnおよび不可避的不純物からなる合金化溶融亜鉛めっき層を有する鋼板において、高強度鋼板とめっき層との界面から5μm以下の鋼板側の結晶粒界と結晶粒内にSiを含む酸化物が平均含有率0.6~10質量%で存在し、めっき層中にSiを含む酸化物が平均含有率0.05~1.5質量%で存在することを特徴とする外観が良好な高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板が記載されている。
また、例えば、特許文献2には、めっき密着性、加工性および外観性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法であって、質量%で、C:0.05~0.30%、Si:0.1~2.0%、Mn:1.0~4.0%含むスラブを熱間圧延した後、特定の温度Tでコイルに巻き取り、酸洗する熱間圧延工程と、熱間圧延工程で得られた熱延板に対して冷間圧延を施す冷間圧延工程と、冷間圧延工程で得られた冷延板に対して、特定の条件で焼鈍を施す焼鈍工程と、焼鈍工程後の焼鈍板に対して、0.12~0.22質量%のAlを含有した溶融亜鉛めっき浴で溶融亜鉛めっき処理を施す溶融亜鉛めっき処理工程と、を有する高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法が記載されている。
さらに、例えば、特許文献3には、冷延鋼板であって、素材鋼片を、熱間圧延後、黒皮スケールを付着させたまま、実質的に還元が起きない雰囲気中にて650~950℃の温度範囲で熱処理を施して、鋼板の地鉄表層部に内部酸化層を形成させたのち、常法に従う酸洗、冷間圧延および再結晶焼鈍を施して得たことを特徴とする冷延鋼板が記載されている。
特開2006-233333号公報 国際公開第2016/038801号 特開2000-309824号公報
しかしながら、980MPa以上の引張強度を有する高強度高加工性の溶融亜鉛めっき鋼板を得るために、Si含有量を1質量%以上まで増加させた場合、従来の方法を適用しただけでは良好なめっき密着性を有する溶融亜鉛めっき鋼板を得ることは難しい。特に、鋼板のコイル幅方向センター(以下、単に「幅方向センター」とも言う)近傍と比べると、鋼板のコイル幅方向エッジ(以下、単に「幅方向エッジ」とも言う)近傍において、良好なめっき密着性を確保し難い。
具体的には、高Si添加鋼を用いる場合、熱間圧延における巻き取り後にコイルが冷却される際、鋼板の幅方向エッジ近傍ではコイルの冷却が急峻である。そのため、鋼板の幅方向エッジ近傍では、内部酸化層が成長し難く、層が薄く形成される。その一方で、鋼板の幅方向センター近傍では、内部酸化層が十分に成長し、層が厚く形成される。さらには、鋼板の幅方向エッジ近傍の内部酸化層では、酸洗で溶けにくい粒界酸化が薄くなっている。そのため、続く酸洗工程において、鋼板の幅方向センター近傍より、鋼板の幅方向エッジ近傍の内部酸化層が優先的に溶解し、鋼板の表面に粒内酸化しているSiOが多く残存してしまう。その結果、鋼板の表面におけるSiOは、後の酸化還元法における酸化処理の際、鋼板の表面が酸化して生成したFeOと反応してしまい、焼鈍後において鋼板とめっきとの間に厚いファイアライト層((FeO)・SiO層)を形成する。ファイアライト層が形成されると、それに続く工程であるめっき後において、めっき密着性が悪くなり、合金化後にめっきが剥離し易くなってしまう。図1に、ファイアライト層が形成された場合における合金化溶融亜鉛めっき鋼板の概略図を示す。図1に示すように、合金化溶融亜鉛めっき鋼板1において、鋼板2の表面に形成されたファイアライト層3のために、めっき層4が鋼板2から剥離している。
このような問題は、前述した特許文献に記載の技術を用いても解決することはできない。例えば、特許文献1に記載の鋼板の製造方法においても、幅方向エッジ近傍におけるコイルの急冷について考慮されていないため、内部酸化層の厚みを鋼板の幅方向に均一とすることは困難であり、鋼板の幅方向エッジ近傍の表面にSiOが多く残存し易い。また、特許文献2に記載の製造方法についても、SiおよびMnの含有量が多くなる程巻き取り温度を下げる必要があるため、幅方向エッジ近傍に所定の量の酸化物を生成させることが難しくなり、鋼板の表面にSiOが残存し易いと考えられる。その結果、特許文献1および特許文献2に開示されている技術を用いても、ファイアライト層が形成するおそれがあり、鋼板の幅方向に均一な良好なめっき密着性を得ることは困難である。一方、特許文献3に記載の製造方法によると、熱処理の温度が高いため、表面を覆う還元Fe層を酸洗で除去することができなくなる。その結果、鋼板の汚染や鋼板の表面付近の脱炭が進行するため、所定の強度、例えば980MPaもの引張強度を有する鋼板を得ることは難しくなる。
そこで、本発明は、高Si含有であり、かつ、良好なめっき密着性を有する溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は以下の好適な態様を包含する。
本発明の第一の局面に係る溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法は、Si含有量が1.0質量%以上である鋼素材を熱間圧延して、500℃~700℃で巻き取る工程と、
前記巻き取り後の鋼板の表面に、鋼板温度750℃以下の加熱温度で酸化処理を施し、それに続いて還元処理を施す工程と、
前記還元処理後の鋼板に溶融亜鉛めっき処理を施し、前記鋼板の表面に亜鉛めっき層を形成する工程と、を含む。
前述の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法において、前記巻き取りと前記酸化処理との間に、非還元性の雰囲気下において540℃~620℃の均熱保持温度で鋼板を焼鈍する工程をさらに含むことが好ましい。
本発明の第二の局面に係る合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法は、前述の第一の局面に係る溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法で得られる溶融亜鉛めっき鋼板に形成されている前記亜鉛めっき層を合金化する工程をさらに含む。
本発明によれば、高Si含有であり、かつ、良好なめっき密着性を有する溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供することができる。
図1は、ファイアライト層が形成された場合における合金化溶融亜鉛めっき鋼板の概略図である。
本発明者らは、Si含有量が多い鋼板を用いて、良好なめっき密着性を有する溶融亜鉛めっき鋼板を製造する方法について様々な研究を重ねた。そして、酸化処理の加熱の際のファイアライト層の形成を抑制することに着目し、本発明を完成した。具体的には、溶融亜鉛めっき鋼板の製造の際、酸化還元法における酸化処理の加熱温度を鋼板温度750℃以下に設定することによって、ファイアライト層の形成を抑制できることが分かった。その結果、鋼板の幅方向エッジ近傍でも良好なめっき密着性を有する高強度高加工性の溶融亜鉛めっき鋼板が得られることが分かった。このようにして得られる溶融亜鉛めっき鋼板およびめっき層が合金化された合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、例えば980MPa以上の引張強度を有することができる。
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の変更をすることができる。
本明細書において、「内部酸化層」とは、熱間圧延および酸洗前の焼鈍(換言すると、「熱間圧延後かつ酸化還元法による焼鈍前の焼鈍」。以下同様。)の加熱時において鋼板内部に生成させることができる、SiOを含む内部酸化層(粒界酸化および粒内酸化の両方の酸化部分を含む)を意味する。さらに、内部酸化層は、溶融亜鉛めっき処理が施される鋼板の表層と、SiO等の酸化物を含有していない鋼板の内側の部分である鋼板素地部分との間に存在する。
本明細書において、「(鋼板の)コイル幅方向エッジ」または「幅方向エッジ」とは、特定の位置を示していない限り、基本的に、コイル幅方向の両方のエッジ、すなわち板幅方向の両端を意図している。また、本明細書において、「(鋼板の)コイル幅方向エッジ近傍」または「幅方向エッジ近傍」とは、コイル幅方向エッジの位置の周辺箇所を意味する。コイル幅方向エッジから特定の位置を示す場合は、当該幅方向エッジ(換言すると、幅方向0mmの位置)からの距離を併せて記す。
本明細書において、「(鋼板の)コイル幅方向センター」または「幅方向センター」とは、鋼板の板幅方向の中央を意図している。また、本明細書において、「(鋼板の)コイル幅方向センター近傍」または「幅方向センター近傍」とは、コイル幅方向センターの位置の周辺箇所を意味する。
本明細書において、「(鋼板の)圧延方向後端」とは、溶融亜鉛めっき用鋼板の圧延方向に対して平行な方向の後端の位置、すなわち最後端0mmの位置を意図している。また、本明細書において、「(鋼板の)圧延方向後端近傍」とは、圧延方向後端の位置の周辺箇所を意味する。
本明細書において、「(鋼板の)圧延方向前端」とは、溶融亜鉛めっき用鋼板の圧延方向に対して平行な方向の前端の位置、すなわち最前端0mmの位置を意図している。また、本明細書において、「(鋼板の)圧延方向前端近傍」とは、圧延方向前端の位置の周辺箇所を意味する。
1.溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法
本実施形態における溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法は、Si含有量が1.0質量%以上である鋼素材(鋼または鋼板)を熱間圧延して、500℃~700℃で巻き取る工程と、前記巻き取り後の鋼板の表面に、鋼板温度750℃以下の加熱温度で酸化処理を施し、それに続いて還元処理を施す工程と、前記還元処理後の鋼板に溶融亜鉛めっき処理を施し、前記鋼板の表面に亜鉛めっき層を形成する工程と、を含む。
以下、各工程および各工程前後における任意の工程について、詳細に説明する。
(圧延用の鋼素材の準備)
まず、Si含有量が1.0質量%以上である化学組成を有する圧延用のスラブ等の鋼素材を作製する。なお、鋼素材の化学組成は、後に詳細に述べる。スラブ等の鋼素材は既知の任意の方法により準備することができる。スラブの作製方法としては、例えば、後述する化学組成を有する鋼を溶製し、造塊または連続鋳造によって、スラブを作製する方法を挙げられる。必要に応じて、造塊または連続鋳造により得た鋳造材を分塊圧延してスラブを得てもよい。
(熱間圧延)
次いで、得られたスラブ等の鋼素材を用いて熱間圧延を行い、熱延鋼板を得る。
熱間圧延は、既知の任意の条件による方法で行ってよいが、巻き取り温度を500℃~700℃にする。巻き取り温度を500℃以上に設定することによって、内部酸化層を十分に成長させることができ、後の工程を経た後に、幅方向エッジ近傍の鋼板の表面にSiOが露出および溶解し、ファイアライト層の形成に繋がってしまうおそれを防ぐことができる。巻き取り温度は、好ましくは520℃以上、より好ましくは530℃以上である。また、巻き取り温度を700℃以下に設定することによって、熱延後の冷却で生成する還元鉄の量が増加してしまい、後の酸洗による除去が困難となることを避けることができる。巻き取り温度は、好ましくは680℃以下、より好ましく660℃以下である。
熱間圧延時における他の条件については、特に限定されない。例えば、熱間圧延では、熱間圧延前のスラブを常法に従って1000℃~1300℃以下の温度で均熱保持し、仕上げ圧延温度を800℃以上に設定し、その後コイル状の鋼板として巻き取ればよい。さらに、熱間圧延後の巻き取った熱延鋼板は、常温まで自然冷却してもよい。
(焼鈍)
さらに、巻き取り後の鋼板を、非還元性の雰囲気下において540℃~620℃の均熱保持温度で焼鈍すると好ましい。
本明細書において、「非還元性の雰囲気下」とは、鋼板の表面が実質的に還元しないガス雰囲気下のことを意味する。限定されるわけではないが、例えば、N‐1.0体積%未満H、アルゴン、大気等のガス雰囲気下が好ましい。
焼鈍時の均熱保持温度を540℃以上にすることによって、鋼板の幅方向エッジ近傍まで、内部酸化層を良好に成長させて残留させることができる。その結果、ムラなく合金化できる溶融亜鉛めっき鋼板を得ることができる。さらに、鋼板の幅方向センター近傍から幅方向エッジ近傍までだけでなく、鋼板の圧延方向前端近傍から圧延方向後端近傍まで、内部酸化層を良好に成長させて残留させるとより好ましい。その結果、鋼板の略全面においてムラなく略均一かつ確実に合金化できる溶融亜鉛めっき鋼板を得ることができる。なお、前述した熱間圧延時の巻き取りの際の加熱だけでは幅方向エッジ近傍まで十分に内部酸化層を成長させることは難しい。また、焼鈍時の均熱保持温度を620℃以下にすることによって、後の酸洗によるスケール除去が困難となってしまうことを避けることができる。焼鈍時の均熱保持温度は、より好ましくは550℃以上である。また、焼鈍時の均熱保持温度は、より好ましくは610℃以下である。
焼鈍時の均熱保持時間は、特に限定されず、熱間圧延の条件(特に巻き取り温度)、本工程の均熱保持温度および後の工程の酸洗条件を考慮した上で、所望の内部酸化層を得るための好適な時間に制御すればよい。例えば、焼鈍時の均熱保持時間を30時間以上確保することによって、所望の内部酸化層を有するめっき原板を得ることができる。焼鈍時の均熱保持時間の上限は、特に限定されないが、例えば、均熱保持時間が30時間よりも過度に長い時間でなければ、生産性が低下することを防ぐことができる。
(酸洗)
次いで、焼鈍後の鋼板を酸洗すると好ましい。酸洗方法は特に限定されず、公知の任意の方法を適用すればよい。例えば、塩酸等を用いて浸漬させることにより、スケールを除去すればよい。
酸洗は、鋼板に付着したスケールが除去される程度において調整しながら行うと好ましい。具体的には、例えば、スケールを除いた後の鋼板における酸洗減少量(すなわち、鋼板の面積当たりの重量減少量)が31g/m未満となるように酸洗することが好ましい。酸洗減少量を31g/m未満とすることによって、特に鋼板の幅方向エッジ近傍において鋼板の表面の内部酸化層中の素地鋼板結晶粒の一部が溶解し、剥離脱落して、SiOが鋼板の表面上に露出して分散してしまうことを防ぐことができる。それによって、めっき処理後におけるファイアライト層の形成を確実に抑制することができ、より優れためっき密着性を有する溶融亜鉛めっき鋼板を得ることができる。
酸洗減少量は、酸洗液の種類(例えば塩酸液)、酸洗液の濃度、酸洗液の温度および酸洗時間を適切に制御することによって、前述の所望の酸洗減少量を達成することができる。例えば、塩酸濃度を、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上に設定すればよい。また、塩酸濃度は、例えば、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下に設定すればよい。さらに、例えば、酸洗液の温度は、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上に設定すればよい。また、酸洗液の温度は、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下に設定すればよい。酸洗時間は、例えば、酸洗減少量が31g/m未満になるように、酸洗液の濃度および温度に応じて、適宜調整すればよい。
(冷間圧延)
さらに、酸洗後の鋼板に冷間圧延を施してもよい。冷間圧延の方法は特に限定されず、公知の任意の方法を適用すればよい。例えば、所望する板厚にするために、冷間圧延の冷延率を10%~70%の範囲にすることができる。鋼板の板厚は、特に限定されない。
(酸化処理および還元処理)
次いで、得られた鋼板の表面に対して、酸化還元法による焼鈍を適用する。まず、鋼板の表面に酸化処理を施すことによって、鋼板の表面に酸化Fe層を形成する。さらに、還元性の雰囲気下で当該酸化Fe層に還元処理(本明細書において、「還元焼鈍処理」とも言う)を施して還元Fe層を形成する。この際、還元により酸化Fe層から供給される酸素は、鋼板内部におけるSiやMnを酸化させる。すなわち、このような酸化還元法による焼鈍を適用することによって、酸化Fe層がバリアー層となり、Siの酸化物を鋼板の内部に留めることができ、鋼板の表面近傍におけるSiの酸化を抑制することができる。その結果、溶融亜鉛めっきに対する濡れ性を良好とすることができ、最終的にめっき密着性についてもより良好とすることができる。
酸化処理および還元処理は、公知の任意の単数または複数の設備を用いて実施すればよい。好ましくは、製造効率、コスト面および品質保持の観点から、連続溶融亜鉛めっきライン(CGL:Continuous Galvanizing Line)の設備が用いられる。連続溶融亜鉛めっきラインを用いることによって、酸化還元法による酸化処理および還元処理と、後述する溶融亜鉛めっき処理および合金化処理とを、一連の製造ラインで連続して行うことができる。さらに具体的には、酸化還元法による酸化処理および還元処理は、例えば、無酸化炉(NOF:Non Oxygen Furnace)型または直火炉(DFF:Diret Fired Furnace)型の連続溶融亜鉛めっきラインにおける焼鈍炉を用いて行うとより好ましい。
酸化処理は、例えばNOF型またはDFF型の焼鈍炉内の酸化加熱帯等において、鋼板の表面に、鋼板温度750℃以下の加熱温度で施される。鋼板温度を750℃以下にすることによって、特に鋼板の幅方向エッジ近傍表面におけるSiOと酸化処理により生じるFeOとの反応を抑制することができる。その結果、焼鈍後におけるファイアライト層の形成を防ぐことができ、良好なめっき密着性を有する溶融亜鉛めっき鋼板を得ることができる。
本明細書において、酸化処理における加熱時の「鋼板温度」とは、酸化加熱帯において加熱制御される鋼板の最高到達板温を意味する。
酸化処理における鋼板温度は、好ましくは730℃以下、より好ましくは720℃以下、さらに好ましくは700℃以下である。酸化処理における鋼板温度の下限は、特に限定されず、鋼板の表面において後述するガス雰囲気下で酸化Fe層が形成される温度であればよい。例えば、酸化処理における鋼板温度は、好ましくは650℃以上、より好ましくは670℃以上である。
酸化処理における昇温時間は、特に限定されず、過度に長すぎることで酸化処理によってファイアライト層が形成しないように調整すればよい。具体的には、酸化処理における昇温時間は、熱間圧延の条件(特に巻き取り温度)、酸洗前の焼鈍条件、酸洗条件および酸化処理における加熱時の鋼板温度を考慮した上で、適切に調整すればよい。例えば、酸化処理における昇温時間は、好ましくは10秒以上、より好ましくは15秒以上である。また、例えば、酸化処理における昇温時間は、好ましくは120秒以下、より好ましくは90秒以下である。
酸化処理は、特に限定されないが、例えば、O、CO、NおよびHOを含むガス雰囲気下において行うことができる。より詳細には、酸化処理は、例えばNOF型またはDFF型の焼鈍炉等において、コークス炉ガス(COG:Cokes Oven Gas)、液化石油ガス(LPG:Liquefied Petroleum Gas)等の燃焼ガス中で、未燃焼のO濃度を制御したガス雰囲気下において行うことができる。O濃度は100ppm~17000ppmの範囲で制御すると好ましい。O濃度は、より好ましくは500ppm以上、さらに好ましくは2000ppm以上で制御される。また、O濃度は、より好ましくは15000ppm以下、さらに好ましくは13000ppm以下で制御される。
還元焼鈍処理における鋼板の加熱温度(均熱保持温度)は、特に限定されず、酸化処理によって形成された酸化Fe層が還元Fe層になる温度で行われればよい。具体的には、好ましくはAc点以上の均熱保持温度で還元焼鈍を行うと好ましい。なお、Ac点は、下式(i)により算出することができる(「レスリー鉄鋼材料学」(丸善株式会社発行、William C. Leslie著、p273))。式(i)中の[ ]で囲まれた元素記号は、当該元素の含有量(質量%)を表す。
Ac(℃)=910-203×[C]1/2-15.2×[Ni]+44.7×[Si]+104×[V]+31.5×[Mo]+13.1×[W]-{30×[Mn]+11×[Cr]+20×[Cu]-700×[P]-400×[Al]-120×[As]-400×[Ti]} …(i)
また、還元処理における加熱時間(均熱保持時間)は、特に限定されず、酸化処理により形成された酸化Fe層が還元Fe層になるように適切に調整すればよい。例えば、還元処理における加熱時間は、好ましくは30秒以上、より好ましくは45秒以上である。また、還元処理における加熱時間は、好ましくは600秒以下、より好ましくは500秒以下である。
還元焼鈍処理は、例えばNOF型またはDFF型の焼鈍炉内の還元加熱帯等において、公知の任意の処理方法によって行うことができる。具体的には、主にHガスおよびN等の不活性ガスを含む還元性の雰囲気下で、鋼板の表面を加熱することによって行うことができる。HガスおよびN等の不活性ガスを含む混合ガスを用いる場合、例えばHガスを3体積%~25体積%の割合において含み、N等の不活性ガスを残部として含むことができる。
(溶融亜鉛めっき処理)
さらに、還元処理後の鋼板に溶融亜鉛めっき処理を施し、鋼板の表面に亜鉛めっき層を形成することによって、本実施形態における溶融亜鉛めっき鋼板を製造することができる。
溶融亜鉛めっき処理の方法は特に限定されず、公知の任意の方法を適用すればよい。例えば、鋼板を亜鉛めっき浴に400℃~500℃程度の鋼板温度で浸漬させることによって、鋼板の表面に亜鉛めっき層を形成することができる。さらに、鋼板の亜鉛めっき浴への浸漬時間は、所望の亜鉛めっき付着量に応じて調整すればよい。
(合金化処理)
本実施形態に係る合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法では、前述の方法で得られた溶融亜鉛めっき鋼板に形成された亜鉛めっき層を合金化する工程をさらに含む。
具体的には、溶融亜鉛めっき鋼板を所定の合金化温度で加熱することによって、鋼板に含まれるFe原子が亜鉛めっき層に拡散し、亜鉛めっき層を合金化することができる。合金化方法は、特に限定されず、公知の任意の方法を適用することができる。合金化温度は、特に限定されないが、例えば、好ましくは460℃~650℃で設定することができる。合金化温度での加熱時間も、特に限定されないが、例えば、好ましくは10秒~40秒で設定することができる。さらに、合金化の加熱は、例えば大気雰囲気下とすることができる。
2.鋼素材の化学組成
本実施形態における溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法および合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法に使用される、鋼素材の化学組成は、Si以外は特に限定されない。以下、鋼素材の化学組成の一例について説明する。
[Si:1質量%以上]
Siは、安価な鋼の強化元素であり、かつ、鋼板の加工性に対して影響を与え難い。また、Siは、鋼板の加工性向上に有用な残留オーステナイトが分解して炭化物が生成することを抑制できる元素である。このような作用を有効に発揮させるため、Si含有量は1.0質量%以上、好ましくは1.1質量%以上、さらに好ましくは1.2質量%以上である。Si含有量の上限は、特に限定されないが、Si含有量が多すぎると、Siによる固溶強化作用が顕著になって圧延負荷が増大してしまうおそれがあり、熱間圧延の際にSiスケールが発生して鋼板の表面欠陥が生じてしまう可能性がある。そのため、例えば、Si含有量は、製造安定性の観点から、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは2.7質量%以下、さらに好ましくは2.5質量%以下である。
[Mn:好ましくは1.5質量%以上3.0質量%以下]
Mnも、Siと同様に、安価な鋼の強化元素であり、鋼板の強度向上に有効である。Mnは、Siと一緒に、さらに必要に応じてCも一緒に鋼に添加することによって、最終的に980MPa以上の溶融亜鉛めっき鋼板の引張強度を確保するために特に有効な強化元素である。さらに、Mnは、オーステナイトを安定化し、残留オーステナイトの生成による鋼板の加工性向上に寄与する元素である。このような作用を有効に発揮させるため、Mn含有量は、好ましくは1.5質量%以上、より好ましくは1.8質量%以上、さらに好ましくは2.0質量%以上である。しかしながら、Mn含有量が多すぎると、鋼板の延性が低下し、鋼板の加工性に悪影響を及ぼし、鋼板の溶接性が低下するおそれがある。このような観点から、Mn含有量は、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは2.8質量%以下、さらに好ましくは2.7質量%以下である。
[C:好ましくは0.08質量%以上0.30質量%以下]
Cは、鋼板の強度向上に有効な元素であり、Siと一緒に、さらに必要に応じてMnも一緒に鋼に添加することによって、最終的に980MPa以上の溶融亜鉛めっき鋼板の引張強度を確保するために特に有効な強化元素である。さらに、Cは、残留オーステナイトを確保して加工性を改善するために必要な元素である。このような作用を有効に発揮させるため、C含有量は、好ましくは0.08質量%以上、より好ましくは0.11質量%以上、さらに好ましくは0.13質量%以上である。鋼板の強度の確保の観点からはC含有量が多い方が好ましいが、C含有量が多すぎると耐食性、スポット溶接性および加工性が劣化するおそれがある。そのため、C含有量は、好ましくは0.30質量%以下、より好ましくは0.25質量%以下、さらに好ましくは0.20質量%以下である。
[P:好ましくは0質量%超0.1質量%以下]
Pは、不純物元素として不可避的に存在する元素である。P含有量が過剰になると、鋼板の溶接性を劣化させるおそれがある。そのため、P含有量は、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.08質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%以下に抑制する。
[S:好ましくは0質量%超0.05質量%以下]
Sは、不純物元素として不可避的に存在する元素である。通常、鋼は、不可避的に0.0005質量%程度においてSを含有している。S含有量が過剰になると、硫化物系介在物を形成し、腐食環境下で水素吸収を促し、鋼板の耐遅れ破壊性を劣化させ、鋼板の溶接性および加工性を劣化させるおそれがある。そのため、S含有量は、好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、さらに好ましくは0.005質量%以下に抑制する。
[Al:好ましくは0質量%超1.0質量%以下]
Alは、脱酸作用を有する元素である。このような作用を有効に発揮させるため、Al含有量は、好ましくは0質量%超、より好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.02質量%以上である。Al含有量が過剰になると、アルミナ等の介在物が増加し、鋼板の加工性が劣化するおそれがある。そのため、Al含有量は、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
[Cr:好ましくは0質量%超1.0質量%以下]
Crは、鋼板の強度向上に有効な元素である。さらに、Crは、鋼板の耐食性を向上させる元素であり、鋼板の腐食による水素の発生を抑制する作用を有する。具体的には、Crは、酸化鉄(α-FeOOH)の生成を促進させる作用を有する。酸化鉄は、大気中で生成する錆のなかでも熱力学的に安定であり、かつ保護性を有するといわれている。このような錆の生成を促進することによって、発生した水素が鋼板へ侵入することを抑制でき、過酷な腐食環境下、例えば、塩化物の存在下で鋼板を使用した場合でも水素による助長割れを十分に抑制できる。また、Crは、BおよびTiと同様に、鋼板の耐遅れ破壊性にも有効な元素であるため、鋼板の強度と伸び等の加工性に影響を与えない量において添加することができる。これらの作用を有効に発揮させるには、Cr含有量は、好ましくは0質量%超、より好ましくは0.003質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上である。一方、Cr含有量が過剰になると、鋼板の伸び等の加工性が劣化するおそれがある。そのため、Cr含有量は、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、さらに好ましくは0.6質量%以下である。
[Cu:好ましくは0質量%超1.0質量%以下]
Cuも、Crと同様に、鋼板の強度向上に有効であり、かつ、鋼板の腐食による水素の発生を抑制する作用を有し、鋼板の耐食性を向上させる元素である。Cuも、Crと同様に、酸化鉄の生成を促進させる作用を有する。これらの作用を有効に発揮させるには、Cu含有量は、好ましくは0質量%超、より好ましくは0.003質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上である。また、鋼板の加工性の観点から、Cu含有量は、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
[Ni:好ましくは0質量%超1.0質量%以下]
Niも、CrおよびCuと同様に、鋼板の強度向上に有効であり、かつ、鋼板の腐食による水素の発生を抑制する作用を有し、鋼板の耐食性を向上させる元素である。Niも、CrおよびCuと同様に、酸化鉄の生成を促進させる作用を有する。これらの作用を有効に発揮させるには、Ni含有量は、好ましくは0質量%超、より好ましくは0.003質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上である。また、鋼板の加工性の観点から、Ni含有量は、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
[Ti:好ましくは0質量%超0.15質量%以下]
Tiも、Cr、CuおよびNiと同様に、鋼板の強度向上に有効であり、かつ、鋼板の腐食による水素の発生を抑制する作用を有し、鋼板の耐食性を向上させる元素である。Tiも、Cr、CuおよびNiと同様に、酸化鉄の生成を促進させる作用を有する。また、Tiは、BおよびCrと同様に、鋼板の耐遅れ破壊性にも有効な元素であるため、鋼板の強度と伸び等の加工性に影響を与えない量において添加することができる。これらの作用を有効に発揮させるには、Ti含有量は、好ましくは0質量%超、より好ましくは0.003質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上である。また、鋼板の加工性の観点から、Ti含有量は、好ましくは0.15質量%以下、より好ましくは0.12質量%以下、さらに好ましくは0.10質量%以下である。
[Nb:好ましくは0質量%超0.15質量%以下]
Nbは、鋼板の強度向上に有効であり、かつ、焼入れ後のオーステナイト粒を微細化して鋼板の靭性の改善に作用する元素である。このような作用を有効に発揮させるには、Nb含有量は、好ましくは0質量%超、より好ましくは0.03質量%以上、さらに好ましくは0.005質量%以上である。一方、Nb含有量が過剰になると、炭化物、窒化物または炭窒化物を多量に生成し、鋼板の加工性または耐遅れ破壊性が劣化するおそれがある。そのため、Nb含有量は、好ましくは0.15質量%以下、より好ましくは0.12質量%以下、さらに好ましくは0.10質量%以下である。
[V:好ましくは0質量%超0.15質量%以下]
Vも、Nbと同様に、鋼板の強度向上に有効であり、かつ、焼入れ後のオーステナイト粒を微細化して鋼板の靭性の改善に作用する元素である。このような作用を有効に発揮させるには、V含有量は、好ましくは0質量%超、より好ましくは0.03質量%以上、さらに好ましくは0.005質量%以上である。一方、V含有量が過剰になると、Nbと同様に、炭化物、窒化物または炭窒化物を多量に生成し、鋼板の加工性または耐遅れ破壊性が劣化するおそれがある。そのため、V含有量は、好ましくは0.15質量%以下、より好ましくは0.12質量%以下、さらに好ましくは0.10質量%以下である。
[B:好ましくは0質量%超0.005質量%以下]
Bは、鋼板の焼入れ性および溶接性の向上に有用な元素である。また、Bは、TiおよびCrと同様に、鋼板の耐遅れ破壊性にも有効な元素であるため、鋼板の強度と伸び等の加工性に影響を与えない量において添加することができる。これらの作用を有効に発揮させるには、B含有量は、好ましくは0質量%超、より好ましくは0.0002質量%以上、さらに好ましくは0.0003質量%以上、特に好ましくは0.0004質量%以上である。一方、B含有量が過剰になると、このような効果は飽和し、かつ、延性が低下して加工性が悪くなるおそれがある。そのため、B含有量は、好ましくは0.005質量%以下、さらに好ましくは0.004質量%以下、さらに好ましくは0.003質量%以下である。
[N:好ましくは0質量%超0.01質量%以下]
Nは、不純物元素として不可避的に存在する元素である。N含有量が過剰になると、窒化物を形成して鋼板の加工性が劣化するおそれがある。特に、焼入れ性の向上のために鋼板がBを含有する場合、NはBと結合してBN析出物を形成し、Bの焼入れ性向上作用を阻害する。そのため、N含有量は、好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.008質量%以下、さらに好ましくは0.005質量%以下に抑制する。
また、本実施形態における鋼素材の化学組成は、上記成分のほか、強度や十分な加工性を阻害しない範囲で、他の周知の任意成分をさらに含有することもできる。
[残部]
残部はFeおよび不可避不純物である。不可避不純物としては、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる微量元素(例えば、As、Sb、Sn等)の混入が許容される。なお、前述したようなP、SおよびNは、通常含有量が少ないほど好ましいため、不可避不純物ともいえる。しかし、これらの元素は特定の範囲まで含有量を抑えることによって本発明がその効果を発揮することができるため、上記のように規定している。このため、本明細書において、残部を構成する「不可避不純物」は、その組成範囲が規定されている元素を除いた概念である。
本実施形態における製造方法によると、Si含有量が1質量%以上である高Si含有の鋼素材を用いるために、高強度高加工性の溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板を安価に製造することができ、かつ、コイル幅方向においてめっき密着性を良好とすることができる。そのため、合金化溶融亜鉛めっき鋼板において、鋼板の幅方向エッジ近傍でもめっきが剥離することがない。より具体的には、製造される溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、980MPa以上の引張強度を有することができる。
さらに、前述したように、連続溶融亜鉛めっきラインを用いて、酸化処理、還元処理、溶融亜鉛めっき処理および合金化処理を一連の製造ラインで連続して行うことによって、製品の品質を保持したまま安価に効率よくめっき密着性が良好な高強度高加工性の合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造することができる。
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1では、本発明例の一つである溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造し、製造した溶融亜鉛めっき鋼板におけるめっき密着性を評価した。
[溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造]
後の表1に示す鋼種Aの化学組成の鋼材を転炉にて溶製した後、連続鋳造によりスラブを製造した。得られたスラブを、仕上げ圧延終了温度を900℃として、板厚2.0mmとなるまで熱間圧延し、後の表2に示すように640℃℃で巻き取り、得られた熱延鋼板を常温まで冷却した。その後、熱延鋼板を焼鈍炉に投入し、焼鈍を行った。焼鈍条件は、N‐0.9体積%未満Hの非還元性の雰囲気下において、熱延鋼板を580℃まで約8.5時間で昇温し、580℃で30時間均熱保持し、次いで200℃以下まで約5時間かけて冷却した。その後、得られた焼鈍鋼板を、濃度8重量%である塩酸を用いて85℃において40秒間浸漬させることによって酸洗した。最後に、焼鈍鋼板が板厚2.0mmから1.4mmになるまで冷間圧延を行った。次いで、そのように製造した鋼板を用いて、NOF型の焼鈍炉を有する連続溶融亜鉛めっきラインを適用して、酸化処理、還元処理、溶融亜鉛めっき処理および合金化処理を行った。酸化処理では、17000ppm未満のOとCO、NおよびHOとを含む燃焼排ガス雰囲気下において、45秒の昇温時間で、716℃の鋼板温度になるように、鋼板を加熱した。
ここで、「鋼板温度」とは、NOF型(または後述する実施例2および実施例3ではDFF型)の焼鈍炉の酸化加熱帯において加熱制御される鋼板の最高到達板温を意味する。
還元処理は、酸化後の鋼板を、N‐Hのガス雰囲気下において、約800℃(800℃~900℃)の均熱保持温度において約60秒(50秒~60秒)にわたり加熱した。溶融亜鉛めっき処理は、還元後の鋼板を亜鉛めっき浴に430℃において浸漬させて、溶融亜鉛めっき層を形成した。このようにして溶融亜鉛めっき鋼板を得て、その後、合金化処理により合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得た。
[溶融亜鉛めっき鋼板のめっき密着性の評価]
得られた合金化溶融亜鉛めっき鋼板のめっき密着性を評価した。具体的には、得られた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を用いて、以下の条件にてクランクプレスでハット型成形部材を成形し、成形部材の側壁の摺動面のめっき剥離状況を目視にて判定した。なお、評価サンプルは、得られた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の圧延方向後端近傍における、幅方向エッジから50mm~100mmの位置を包含するように切り取った。具体的な評価基準についても以下に示す。実施例1の溶融亜鉛めっき鋼板のめっき密着性の評価結果は、鋼板の製造条件と共に、後の表2にまとめて示す。
(クランクプレスの条件)
評価サンプルのサイズ:幅40mm×長さ250mm
ダイ幅:52mm
ダイ肩半径:2mm
パンチ幅:48mm
パンチ肩半径:5mm
ビード:有り
ビード先端半径:2mm
ビード高さ:3mm
成形高さ:60mm
(めっき密着性の評価基準)
〇:めっき層に明確な剥離は観察されない
×:めっき層にフレーク状の浮き上がりが観察される
(実施例2)
実施例2では、後の表1に示す鋼種Cの化学組成の鋼材を用い、熱間圧延巻き取り温度を660℃とし、DFF型の焼鈍炉を有する連続溶融亜鉛めっきラインを適用して、酸化処理、還元処理、溶融亜鉛めっき処理および合金化処理を行い、DFF型の焼鈍炉内の酸化加熱帯の鋼板温度を671℃とし、還元処理の均熱保持温度を約900℃(900℃~950℃)とし、均熱保持時間を約300秒(240秒~360秒)としたこと以外は、前述の実施例1と同じ方法で溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造した。さらに、めっき密着性についても同様に評価した。実施例2の溶融亜鉛めっき鋼板のめっき密着性の評価結果についても、鋼板の製造条件と共に、後の表2にまとめて示す。
(実施例3)
実施例3では、後の表1に示す鋼種Dの化学組成の鋼材を用い、DFF型の焼鈍炉内の酸化加熱帯の鋼板温度を679℃としたこと以外は、前述の実施例2と同じ方法で溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造した。さらに、めっき密着性についても同様に評価した。実施例3の溶融亜鉛めっき鋼板のめっき密着性の評価結果についても、鋼板の製造条件と共に、後の表2にまとめて示す。
(比較例1)
比較例1では、後の表1に示す鋼種Bの化学組成の鋼材を用いて、熱間圧延巻き取り温度を550℃とし、NOF型の焼鈍炉内の酸化加熱帯の鋼板温度を906℃としたこと以外は、前述の実施例1と同じ方法で溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造した。さらに、めっき密着性についても同様に評価した。比較例1の溶融亜鉛めっき鋼板のめっき密着性の評価結果についても、鋼板の製造条件と共に、後の表2にまとめて示す。
Figure 2022136976000001
Figure 2022136976000002
(考察)
上記表2に示すように、溶融亜鉛めっきラインにおける加熱温度が716℃である実施例1、671℃である実施例2および679℃である実施例3の溶融亜鉛めっき鋼板は、優れためっき密着性を有していた。一方、比較例1の溶融亜鉛めっき鋼板は、酸洗前の焼鈍条件が実施例1、実施例2および実施例3と同じであっても、溶融亜鉛めっきラインにおける加熱温度が高く、本実施形態における規定の温度から外れるため、めっき密着性が劣っていた。これは、比較例1では酸化処理の加熱時の鋼板温度が高すぎたことにより、鋼板とめっきとの間に厚いファイアライト層が形成されたためと考えられる。
本出願は、2021年3月8日に出願された日本国特許出願特願2021-036226号を基礎とするものであり、その内容は、本願に含まれるものである。
今回開示された実施形態および実施例は、全ての点で例示であって制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上述した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
1 合金化溶融亜鉛めっき鋼板
2 鋼板
3 ファイアライト層
4 めっき層

Claims (3)

  1. 溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法であって、
    Si含有量が1.0質量%以上である鋼素材を熱間圧延して、500℃~700℃で巻き取る工程と、
    前記巻き取り後の鋼板の表面に、鋼板温度750℃以下の加熱温度で酸化処理を施し、それに続いて還元処理を施す工程と、
    前記還元処理後の鋼板に溶融亜鉛めっき処理を施し、前記鋼板の表面に亜鉛めっき層を形成する工程と、を含む、溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  2. 前記巻き取りと前記酸化処理との間に、非還元性の雰囲気下において540℃~620℃の均熱保持温度で鋼板を焼鈍する工程をさらに含む、請求項1に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  3. 合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法であって、
    請求項1または2に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法で得られる溶融亜鉛めっき鋼板に形成されている前記亜鉛めっき層を合金化する工程をさらに含む、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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