JP5212056B2 - 合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 - Google Patents
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降伏比とは鋼板の引張り強さ(TS)に対する降伏強度(YP)の割合(YP/TS)のことであり、これを下げることにより高強度化で悪化する形状凍結性の改善、プレス加重の低減、しわ発生の抑制などを図ることができる。
したがって、自動車の車体軽量化および衝突安全性確保を一層促進するには、耐食性と延性に優れ、低降伏比型高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板が必要不可欠である。
この方法の場合、原板として冷延、焼鈍連続プロセスですでに材質を造り込んでいる冷延鋼板を使用することが可能であり、材質を造り込んだ後の最高到達板温が550℃程度であることから、原板の加工性をあまり損なわずに合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造することが出来ると考えられる。また、冷延焼鈍後のプレNiめっきにより、鋼中のSi濃度が高くても不めっきが生じにくい。しかし、実際に冷延−連続焼鈍プロセルで製造されたDP鋼を用い、特許文献1、2の方法で合金化溶融亜鉛めっきを製造したところ、原板に対して降伏比の大幅な上昇および延性の低下が認められ、原板と同等の低降伏比と延性を得ることが出来なかった。
例えば、Siの濃度を高くする方法が考えられる。
Siの効果によりセメンタイトをあまり含まないベイナイトを生成させることにより、オーステナイト中へのCの濃化をはかり、その後に冷却中にマルテンサイトや残留オーステナイトを確保できる。
ここで確保したマルテンサイトは、Cが十分に濃化しているため、変態で膨張した際、周囲のフェライト中に多量の可動転位を導入している。よって、合金化溶融亜鉛めっきラインで熱処理により焼き戻されても、固溶Cなどに固着された転位を除き、可動転位を十分に残すことが可能である。
この方法により低降伏比にすることで、合金化過程で加熱しても冷延DP鋼と同等の低降伏比と延性を確保することができる。
まず、合金化温度が高いと、装置によっては能力的に難しい場合がある。そのため、ラインスピードを下げないといけなくなり、生産性が低くなってしまうことがある。また、合金化温度が通常より高い温度で操業を続けると、装置に負担がかかってしまう。さらに、製造上も高温になることでプレめっき前の調質圧延で矯正した形状が崩れやすく、最終(合金化処理後)の調質圧延を強くかけないといけなくなり、高YP化がさらに進んでしまう。
(1)質量%で、
C :0.05〜0.20%、 Mn:1.5〜3.0%、
Si:0.5〜1.8%、 P :0.05%以下、
S :0.03%以下、 sol.Al:0.005〜1.0%、
N :0.01%以下
を含み、残部は不可避不純物からなる鋼片を熱延、酸洗、冷延後、600℃以上での昇温速度が5℃/sec以下にて昇温して、730〜800℃にて焼鈍し、さらに580℃以上から450℃以下まで50℃/sec以上で冷却して、350℃〜450℃の範囲で120秒以上保持し、冷却した後、調質圧延[1]を伸び率0.1%以上で施し、NiまたはNi−Fe合金をプレめっきし、無酸化雰囲気または還元雰囲気で5℃/sec以上で430〜500℃まで加熱後、Alを0.12%以上、0.20%以下含む溶融亜鉛浴に浸漬してめっきし、ガスワイピングにより付着量を調整し、ワイピング後に550〜610℃の範囲まで加熱しその後保持せずに冷却するか、535〜580℃まで加熱し5〜20秒保持したのち冷却することで合金化し、その後調質圧延[2]を伸び率0.1%以上で施し形状矯正する合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法であって、上記調質圧延[1]と調質圧延[2]の伸び率の合計を1.2%以下とすることを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
(2)鋼片に、さらに、以下に示す(a)〜(e)群のうちから選択した1群または2群以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
(a)群:Cr、Moのうちの1種または2種を合計で、0.05〜1.0%。
(b)群:Bを0.005%以下。
(c)群:Ti、Nb、Vのうち1種または2種以上を合計で0.005〜0.2%。
(d)群:Cu、Ni、Snのうち1種または2種以上を合計で、0.02〜2.0%。
(e)群:Ca、REMのうちの1種または2種を合計で、0.01%以下。
Cは硬化元素であり、マルテンサイトの生成に効果がある。しかし、0.05%未満では、所望の強度が得られず、0.20%を超えると溶接性の劣化を招く。したがって、C量を0.05〜0.20%とした。
Sも不純物として含有し、あまり多くなると熱間脆性の原因となり、また、加工性を劣化させるので、その上限を0.03%とした。
(a)群:Cr、Moのうちの1種または2種を合計で、0.05〜1.0%。
CrおよびMoは焼入れ硬化性を上げてマルテンサイトの生成を促進する。このような作用を発揮するには、合計で0.05%以上必要である。また、合計で3.0%を超えても効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できない。したがって、Cr、Moのうち1種類または2種類を合計で0.05%〜1.0%とすると良い。
Bも焼き入れ性向上元素であり、必要に応じて含有できる。しかし、B含有量が0.005%を超えると効果が飽和するので、Bは0.005%以下とすると良い。
Ti、Nb、Vは、炭窒化物を形成し、鋼を析出強化により高強度化する作用を有しており、必要に応じて含有できる。このよう作用を発揮するには、合計で0.005%以上必要である。また、合計で0.2%を超えても効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できない。したがって、Ti,Nb、Vのうち1種または2種以上を合計で0.005〜0.2%とすると良い。
Cu、Ni、Snは鋼板中に含まれることにより、プレNiとの組み合わせにより、めっき濡れ性、めっき密着性が向上する。このような作用を発揮するには、合計で0.02%以上必要である。また、合計で2.0%を超えても効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できない。したがって、Cu、Ni、Snのうち1種または2種以上を合計で、0.02〜2.0%とすると良い。
Ca、REMは硫化物系介在物の形態を制御し、鋼板の伸びフランジ性を向上させる効果を有する。このような作用は、合計で0.01%を超えても効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できない。したがって、Ca、REMのうちの1種または2種を合計で、0.01%以下とすると良い。
溶鋼は通常の高炉法で溶製されたもののほか、電炉法のようにスクラップを多量に使用したものでもよい。スラブは、通常の連続鋳造プロセスで製造されたものでもよいし、薄スラブ鋳造で製造されたものでもよい。スラブは一旦冷却してから、熱延前の加熱炉で加熱しても良いし、冷却途中で高温まま加熱炉に入れる、所謂HCRやDRでも良い。
焼鈍後は、580℃以上から450℃以下まで50℃/秒以上で冷却し、350〜450℃の範囲で、120秒以上保持する必要がある。これは、ベイナイト変態を促進させるための条件である。これらの条件を外れると、いずれもベイナイトの生成が不十分となり、オーステナイト中へのC濃化が足りず、十分なマルテンサイトと残留オーステナイトを得ることが出来なくなる。この保持後の冷却段階で、マルテンサイトや残留オーステナイトが生成することとなる。また、連続焼鈍時に生成したスケールを除去するため、この段階で、再度酸洗する必要がある。
一定以上の伸び率で調質圧延[1]をかけると、マイナスの効果を相殺する以上にプラスの効果が大きくなり、0.4%超ではプラスの効果の方が大きくなる。ただし、あまりに調質圧延[1]の伸び率を大きくしてしまうと、合金化で加熱する前に目的とするレベルより降伏強度が高くなってしまうため、1.1%以下にすると良い。
このときの昇温速度はヒートパターンA、Bのどちらについても20℃/sec以上にするのが好ましい。
なお、調質圧延[1]と調質圧延[2]では、合金化促進効果がある調質圧延[1]の伸び率を大きくした方がよく、0.4%超とするのが好ましい。
まず、評価方法について説明する。
機械的特性は、幅方向からJIS5号試験片を採取し、引張り試験にて評価した。引張り試験の応力―歪み曲線より、降伏強度(YP)、引張強度(TS)を求め、それから降伏比(YR=YP/TS×100)を求めた。YRは65%以下を合格とした。
めっきの評価は、合金化進行状態を調べるため、めっき層をインヒビターを添加した塩酸で溶解し、その溶液を希釈してICP(誘導結合プラズマ)にて全めっき層中のFe%を求め、9%以上を合格とした。インヒビターにはヘキサメチレンテトラミンを用いた。
まず、調質圧延や合金化温度の影響を見るため、表1に示した成分組成を有する250mm厚の連続鋳造スラブを、実機連続熱延ラインにおいて1200℃に再加熱後、粗圧延し、850℃で仕上圧延を終了して板厚3.0mmとし、550℃にて巻き取りコイルとした。この熱延コイルを酸洗−冷延−連続焼鈍−調質圧延まで連続した実機ラインで冷延鋼板とした。板厚1.6mmまで冷延し、600℃以上での昇温速度を2℃/secとして760℃まで加熱、760℃で90秒焼鈍し、650℃まで4℃/秒、650℃から420℃まで100℃/秒で冷却し、380〜420℃にて360秒保持した後、室温まで冷却後酸洗し、表2の条件で調質圧延[1]を実施した。この板を原板としてプレめっきとしで電解NiめっきをNi付着量0.3mg/m2 施し、無酸化雰囲気で20℃/秒で450℃に加熱し、溶融亜鉛めっき浴に浸漬し、ガスワイピングでZn付着量を45g/m2とした。このとき溶融亜鉛めっき浴はAl濃度0.15%、浴温440℃とした。合金化処理は連続して行い、表2の最高到達板温まで50℃/秒で加熱し、表2のヒートパターンで合金化した後、室温まで冷却した。
それを表2の条件で調質圧延[2]を実施しコイル状に巻き取り製品とした。
また表3に、各サンプルの評価結果を示した。
比較例2は調質圧延[1]の伸び率が大きすぎ、かつ調質圧延[1]と[2]の伸び率も大きすぎたため、降伏比が高くなってしまった。
比較例3は調質圧延[1]と[2]の伸び率の合計が大きすぎたため、降伏比が高くなってしまった。
比較例4は調質圧延[1]の伸び率が小さかったため、合金化処理を最高到達板温に到達後、放冷するヒートパターンとし、低降伏比を確保するために最高到達板温を600℃とすると十分に合金化できなかった。
比較例5は調質圧延[1]の伸び率が小さかったため、合金化処理を540℃で10秒間保持下のち放冷するヒートパターンとしたが、十分に合金化できなかった。
比較例6は調質圧延[1]の伸び率が小さく、合金化処理は保持時間は長かったが温度が低かったため、十分に合金化できなかった。
比較例7は実施例3と同じ合金化条件だったが、調質圧延[1]の伸び率が小さく、十分に合金化できなかった。
合金化処理は連続して行い、表2の最高到達板温まで50℃/秒で加熱し、表2の実施例3のヒートパターンで合金化した後、室温まで冷却した。
それを表2の実施例3の条件で調質圧延[2]をかけコイル状に巻き取り製品とした。
表5に各サンプルの評価結果を示した。
比較例8から10は、成分の影響で降伏比が高くなってしまった。
比較例11は、機械特性については問題なかったが、Si濃度が高く合金化が進みにくかったため、Fe%が不十分だった。
また、いずれのサンプルもめっきの密着性には問題は無かった。
Claims (3)
- 質量%で、
C :0.05〜0.20%、 Mn:1.5〜3.0%、
Si:0.5〜1.8%、 P :0.05%以下、
S :0.03%以下、 sol.Al:0.005〜1.0%、
N :0.01%以下
を含み、残部は不可避不純物からなる鋼片を熱延、酸洗、冷延処理した後、600℃以上での昇温速度が5℃/sec以下にて昇温して、730〜800℃にて焼鈍し、さらに580℃以上から450℃以下まで50℃/sec以上で冷却して、350℃〜450℃の範囲で120秒以上保持し、冷却した後、調質圧延を伸び率0.1%以上で施し、NiまたはNi−Fe合金をプレめっきし、無酸化雰囲気または還元雰囲気で5℃/sec以上で430〜500℃まで加熱後、Alを0.12%以上、0.20%以下含む溶融亜鉛浴に浸漬してめっきし、ガスワイピングにより付着量を調整し、ワイピング後に550〜610℃の範囲まで加熱しその後保持せずに冷却するか、535〜580℃まで加熱し5〜20秒保持したのち冷却することで合金化し、その後調質圧延を施し形状矯正する合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法であって、上記冷延、焼鈍後、プレめっき前の調質圧延と上記合金化処理後の調質圧延の伸び率の合計を1.2%以下とすることを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。 - 鋼片に、さらに、以下に示す(a)〜(e)群のうちから選択した1群または2群以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
(a)群:Cr、Moのうちの1種または2種を合計で、0.05〜1.0%。
(b)群:Bを0.005%以下。
(c)群:Ti、Nb、Vのうち1種または2種以上を合計で0.005〜0.2%。
(d)群:Cu、Ni、Snのうち1種または2種以上を合計で、0.02〜2.0%。
(e)群:Ca、REMのうちの1種または2種を合計で、0.01%以下。 - 上記冷延、焼鈍後、プレめっき前の調質圧延の伸び率を0.4%超とすることを特徴とする請求項1または2に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。」
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