JP2022136977A - 溶融亜鉛めっき用鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板 - Google Patents

溶融亜鉛めっき用鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板 Download PDF

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【課題】高Si含有であり、かつ、合金化ムラが抑制された合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造できる溶融亜鉛めっき用鋼板を提供すること。【解決手段】溶融亜鉛めっき用鋼板は、鋼板の表層と鋼板素地部分との間にSiの酸化物を含む内部酸化層を有し、鋼板の化学組成におけるSi含有量が1.0質量%以上であり、かつ、当該溶融亜鉛めっき用鋼板の圧延方向後端における、コイル幅方向エッジから10mm、30mmおよび50mmの位置、ならびに、コイル幅方向センターの位置の4つの全ての位置で測定される鋼板の表面から深さ1μmまでの固溶Si量が1.4重量%以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、高Si含有の高強度高加工性の溶融亜鉛めっき用鋼板、ならびに、それを原板とする溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板に関する。
自動車業界では、CO削減のための燃費向上および衝突安全性能の向上の観点から、自動車のボディー等の自動車用部材の軽量化および高強度化が要求されている。そのため、自動車のボディー等の自動車用部材には引張強度が980MPa以上の超高強度鋼板が適用されている。このような高強度鋼板の加工性を向上させるために、鋼板の化学組成に安価なSiを含有させる方法が知られている。鋼板の化学組成にSiを含有させることによって、鋼板の強度だけでなく、加工性も向上することができる。
一般的に、Si添加鋼を自動車用部材へ適用する場合、耐食性や溶接性確保の観点から、溶融亜鉛めっき鋼板(GI鋼板)および該溶融亜鉛めっき鋼板を合金化した合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA鋼板)が使用される。しかしながら、鋼板にSiが添加された溶融亜鉛めっき鋼板は、その製造過程においてSi酸化物層が鋼板表面を覆うため、最終的に、不めっき、めっき密着性の低下、合金化処理における合金化ムラ等の問題を招きやすい。さらに、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の加工時にめっきが剥離する等の問題も生じ得る。このようなSi添加による問題を抑制するために、鋼素材にSiを含有する溶融亜鉛めっき鋼板は、酸化加熱帯および還元加熱帯を有する焼鈍炉を用いた酸化還元法を用いて製造されることが多い。酸化還元法によると、酸化加熱帯で生成した酸化鉄が還元焼鈍時において還元Fe層を生成するため、めっき時におけるめっき濡れ性を良好にすることができる。さらに、熱間圧延における巻き取り温度を高くすることによって、予めめっきに必要なSiO等を含む内部酸化層を鋼板に形成する方法も用いられる。
また、近年、溶融亜鉛めっき鋼板の強度および加工性のさらなる向上のために、鋼板のSi含有量を1質量%以上まで増加させた溶融亜鉛めっき鋼板や内部酸化層を良好に形成させる方法について、様々な開発が進められている。
具体的には、例えば、特許文献1には、質量%で、C:0.05~0.25%、Si:0.3~2.5%、Mn:1.5~2.8%、P:0.03%以下、S:0.02%以下、Al:0.005~0.5%、N:0.0060%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる高強度鋼板の上に、Feを含有し、残部がZnおよび不可避的不純物からなる合金化溶融亜鉛めっき層を有する鋼板において、高強度鋼板とめっき層との界面から5μm以下の鋼板側の結晶粒界と結晶粒内にSiを含む酸化物が平均含有率0.6~10質量%で存在し、めっき層中にSiを含む酸化物が平均含有率0.05~1.5質量%で存在することを特徴とする外観が良好な高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板が記載されている。
また、例えば、特許文献2には、めっき密着性、加工性および外観性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法であって、質量%で、C:0.05~0.30%、Si:0.1~2.0%、Mn:1.0~4.0%含むスラブを熱間圧延した後、特定の温度Tでコイルに巻き取り、酸洗する熱間圧延工程と、熱間圧延工程で得られた熱延板に対して冷間圧延を施す冷間圧延工程と、冷間圧延工程で得られた冷延板に対して、特定の条件で焼鈍を施す焼鈍工程と、焼鈍工程後の焼鈍板に対して、0.12~0.22質量%のAlを含有した溶融亜鉛めっき浴で溶融亜鉛めっき処理を施す溶融亜鉛めっき処理工程と、を有する高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法が記載されている。
さらに、例えば、特許文献3には、冷延鋼板であって、素材鋼片を、熱間圧延後、黒皮スケールを付着させたまま、実質的に還元が起きない雰囲気中にて650~950℃の温度範囲で熱処理を施して、鋼板の地鉄表層部に内部酸化層を形成させたのち、常法に従う酸洗、冷間圧延および再結晶焼鈍を施して得たことを特徴とする冷延鋼板が記載されている。
特開2006-233333号公報 国際公開第2016/038801号 特開2000-309824号公報
しかしながら、980MPa以上の引張強度を有する高強度高加工性の溶融亜鉛めっき鋼板を得るために、Si含有量を1質量%以上まで増加させた場合、従来の製造方法を適用しただけではコイル全面に均一に合金化された合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得ることは難しい。特に、鋼板のコイル幅方向センター(以下、単に「幅方向センター」とも言う)近傍と比べると、鋼板のコイル幅方向エッジ(以下、単に「幅方向エッジ」とも言う)近傍において、亜鉛めっきが均一に合金化し難い。
具体的には、高Si添加鋼を用いる場合、熱間圧延における巻き取り後にコイルが冷却される際、鋼板の幅方向エッジ近傍ではコイルの冷却が急峻である。そのため、鋼板の幅方向エッジ近傍では、内部酸化層が成長し難く、層が薄く形成される。その一方で、鋼板の幅方向センター近傍では、内部酸化層が十分に成長し、層が厚く形成される。さらには、続く酸洗工程において、鋼板の幅方向エッジ近傍の内部酸化層は、優先的に溶解してしまう。このようにコイル幅方向において内部酸化層の厚さが異なってしまうことにより、合金化ムラが発生してしまう。
このような問題は、前述した特許文献に記載の技術を用いても解決することはできない。例えば、特許文献1に記載の鋼板の製造方法においても、幅方向エッジ近傍におけるコイルの急冷について考慮されていないため、鋼板の幅方向エッジ近傍において内部酸化層を残留させることはできない。また、特許文献2に記載の製造方法については、SiおよびMnの含有量が多くなる程巻き取り温度を下げる必要があるため、幅方向エッジ近傍に所定の量の酸化物を生成させることが難しい。その結果、特許文献1および特許文献2に開示されている技術を用いても、鋼板の幅方向に均一に合金化ムラがない合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造することは困難である。一方、特許文献3の製造方法によると、熱処理の温度が高いため、表面を覆う還元Fe層を酸洗で除去することができなくなる。その結果、鋼板の汚染や鋼板の表面付近の脱炭が進行するため、所定の強度、例えば980MPaもの引張強度を有する鋼板を得ることは難しくなる。
そこで、本発明は、高Si含有であり、かつ、合金化ムラが抑制された合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造できる溶融亜鉛めっき用鋼板を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は以下の好適な態様を包含する。
本発明の第一の局面に係る溶融亜鉛めっき用鋼板は、鋼板の表層と鋼板素地部分との間にSiの酸化物を含む内部酸化層を有し、鋼板の化学組成におけるSi含有量が1.0質量%以上であり、かつ、当該溶融亜鉛めっき用鋼板の圧延方向後端における、コイル幅方向エッジから10mm、30mmおよび50mmの位置、ならびに、コイル幅方向センターの位置の4つの全ての位置で測定される鋼板の表面から深さ1μmまでの固溶Si量が1.4重量%以下である。
本発明の第二の局面に係る溶融亜鉛めっき鋼板は、前述の第一の局面に係る溶融亜鉛めっき用鋼板の表面に、亜鉛めっき層を備える。
本発明の第三の局面に係る合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、前述の第一の局面に係る溶融亜鉛めっき用鋼板の表面に、合金化された亜鉛めっき層を備える。
本発明によれば、高Si含有であり、かつ、合金化ムラが抑制された合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造できる溶融亜鉛めっき用鋼板を提供することができる。
図1は、本実施形態における溶融亜鉛めっき用鋼板の概略断面図である。 図2は、コイル幅方向における内部酸化層量の分布の一例を模式的に示すグラフである。 図3は、鋼板の固溶Si量と内部酸化層量との相関の一例を模式的に示すグラフである。
本発明者らは、Si含有量が多くても、合金化ムラが抑制された合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造できる原板、具体的には溶融亜鉛めっき用鋼板について、様々な研究を重ねた。そして、溶融亜鉛めっき用鋼板においてSiの表面濃化を抑制し、かつ、幅方向エッジ近傍に内部酸化層を残留させることに着目し、本発明を完成した。具体的には、本発明に係る溶融亜鉛めっき用鋼板は、鋼板の表層と鋼板素地部分との間にSiの酸化物を含む内部酸化層を有し、鋼板の化学組成におけるSi含有量が1.0質量%以上であり、かつ、当該溶融亜鉛めっき用鋼板の圧延方向後端における、コイル幅方向エッジから10mm、30mmおよび50mmの位置、ならびに、コイル幅方向センターの位置の4つの全ての位置で測定される鋼板の表面から深さ1μmまでの固溶Si量が1.4重量%以下である。このような溶融亜鉛めっき用鋼板の構成によると、合金化ムラが抑制される高強度高加工性の合金化溶融亜鉛めっき鋼板が得られることが分かった。このようにして得られる合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、例えば980MPa以上の引張強度を有することができる。
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の変更をすることができる。
本明細書において、「(鋼板の)コイル幅方向エッジ」または「幅方向エッジ」とは、特定の位置を示していない限り、基本的に、コイル幅方向の両方のエッジ、すなわち板幅方向の両端を意図している。また、本明細書において、「(鋼板の)コイル幅方向エッジ近傍」または「幅方向エッジ近傍」とは、コイル幅方向エッジの位置の周辺箇所を意味する。コイル幅方向エッジから特定の位置を示す場合は、当該幅方向エッジ(換言すると、幅方向0mmの位置)からの距離を併せて記す。
本明細書において、「(鋼板の)コイル幅方向センター」または「幅方向センター」とは、鋼板の板幅方向の中央を意図している。また、本明細書において、「(鋼板の)コイル幅方向センター近傍」または「幅方向センター近傍」とは、コイル幅方向センターの位置の周辺箇所を意味する。
本明細書において、「(鋼板の)圧延方向後端」とは、溶融亜鉛めっき用鋼板の圧延方向に対して平行な方向の後端の位置、すなわち最後端0mmの位置を意図している。また、本明細書において、「(鋼板の)圧延方向後端近傍」とは、圧延方向後端の位置の周辺箇所を意味する。
本明細書において、「(鋼板の)圧延方向前端」とは、溶融亜鉛めっき用鋼板の圧延方向に対して平行な方向の前端の位置、すなわち最前端0mmの位置を意図している。また、本明細書において、「(鋼板の)圧延方向前端近傍」とは、圧延方向前端の位置の周辺箇所を意味する。
1.溶融亜鉛めっき用鋼板(原板)の構成、化学組成および特性
本実施形態における溶融亜鉛めっき用鋼板は、鋼板の表層と鋼板素地部分との間にSiの酸化物を含む内部酸化層を有し、鋼板の化学組成におけるSi含有量が1.0質量%以上であり、かつ、当該溶融亜鉛めっき用鋼板の圧延方向後端における、コイル幅方向エッジから10mm、30mmおよび50mmの位置、ならびに、コイル幅方向センターの位置の4つの全ての位置で測定される鋼板の表面から深さ1μmまでの固溶Si量が1.4重量%以下である。
本明細書における内部酸化層とは、熱間圧延および酸洗前の焼鈍(換言すると、「熱間圧延後かつ(溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造の際における)酸化還元法による焼鈍前の焼鈍」。以下同様。)の加熱時において鋼板内部に生成させることができる、SiOを含む内部酸化層(粒界酸化および粒内酸化の両方の酸化部分を含む)を意味する。さらに、本明細書における鋼板素地部分とは、熱間圧延または酸洗前の焼鈍の加熱を施した後において、SiO等の酸化物を含有していない鋼板の内側の部分を意味する。図1に、本実施形態における溶融亜鉛めっき用鋼板の概略断面図を示す。図1に示すように、溶融亜鉛めっき用鋼板1は、鋼板の表層2と鋼板素地部分3との間に内部酸化層4を有している。このような構成は、当業者に公知の技術を用いて確認することができ、例えば、内部酸化層4の厚さが大きい箇所では、走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope)を用いて確認することができる。
本実施形態における溶融亜鉛めっき用鋼板の化学組成は、Si含有量が1.0質量%以上であれば特に限定されないが、より詳細については後に述べる。
本明細書において、「鋼板の表面から深さ1μmまでの固溶Si量(重量%)」とは、後の実施例で詳細に述べるように、当該鋼板の供試片および全自動走査型X線光電子分光分析装置を用いて、下記(式1)から測定および算出することができる鋼板の表面から深さ1μmまでの固溶Si量の平均値(重量%)を意味する。
固溶Si量(重量%)=[Si(Si-Si,Fe-Si)/{Si(SiO)+Si(Si-Si,Fe-Si)}]×鋼中Si含有量 (式1)
本明細書において、「鋼板の表面から深さ1μmまでの固溶Si量が1.4重量%以下である」とは、鋼板の特定の位置を含む供試片を用いて測定される、鋼板の表面から深さ1μmまでの固溶Si量(詳細には固溶Si量の平均値)が1.4重量%以下であることを意味する。すなわち、後の実施例で詳細に述べるように、本実施形態における溶融亜鉛めっき用鋼板は、当該鋼板の圧延方向後端における、コイル幅方向エッジから10mm、30mmおよび50mmの位置、ならびに、コイル幅方向センターの位置の各々の位置を含む4つの供試片を用いて測定される、鋼板の表面から深さ1μmまでの固溶Si量(詳細には固溶Si量の平均値)が、全て1.4重量%以下の値となっている。加えて、本実施形態における溶融亜鉛めっき用鋼板は、当該鋼板の圧延方向後端における、コイル幅方向エッジから70mmの位置を含む供試片を用いて測定される、鋼板の表面から深さ1μmまでの固溶Si量も1.4重量%以下の値となっていると好ましい。
このような本実施形態の固溶Si量の規定における、当該鋼板の表面から深さ1μmまでの固溶Si量の値は、好ましくは1.36重量%以下、より好ましくは1.32重量%以下、さらに好ましくは1.30重量%以下である。また、本実施形態の固溶Si量の規定において、当該鋼板の表面から深さ1μmまでの固溶Si量の値の下限値は、特に限定されず、より低い値であればよい。例えば、前述した4つの位置を含む4つの供試片のうちの1つ以上の供試片、例えばコイル幅方向センターの位置を含む供試片を用いて測定される当該固溶Si量の値が、0重量%であってもよい。
このような本実施形態における溶融亜鉛めっき用鋼板の構成の規定、化学組成の規定および特性の規定を満たすことによって、当該溶融亜鉛めっき用鋼板は、幅方向センター近傍だけでなく、当該溶融亜鉛めっき用鋼板の幅方向エッジ近傍(具体的には、圧延方向後端(0mm)の位置における幅方向エッジから0mm~50mmの位置)においても好適に内部酸化層を有する。すなわち、本実施形態における溶融亜鉛めっき用鋼板は、当該溶融亜鉛めっき用鋼板の、圧延方向後端における、好ましくは幅方向エッジから0mm~50mmの位置(より好ましくは0mmの位置)に、鋼板の表層と鋼板素地部分との間にSiの酸化物を含む内部酸化層を有している。このように、本実施形態における溶融亜鉛めっき用鋼板は、最も内部酸化が残留し難い幅方向エッジ近傍において内部酸化層を有している。そのため、当該溶融亜鉛めっき用鋼板を用いることによって、合金化ムラが抑制された高強度高加工性の合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造することができる。
また、内部酸化層は、鋼板の幅方向エッジ近傍だけでなく、鋼板の圧延方向前端近傍と比べると圧延方向後端近傍においても成長し難く、最終的に亜鉛めっきが均一に合金化し難くなる場合がある。従って、本実施形態における溶融亜鉛めっき用鋼板は、鋼板の幅方向センター近傍から幅方向エッジ近傍までだけでなく、鋼板の圧延方向前端近傍から圧延方向後端近傍まで、内部酸化層を有していると好ましい。具体的には、実質的にほとんど途切れることなく、鋼板の幅方向エッジ近傍かつ鋼板の圧延方向後端近傍まで、内部酸化層が残留していると好ましい。内部酸化層がこのように残留していることによって、コイル全面においてより確実かつ均一に溶融亜鉛めっきを合金化することができる。
このような本実施形態における内部酸化層の構成および固溶Si量の規定を満たす溶融亜鉛めっき用鋼板は、鋼板の製造工程における各条件を制御することによって、製造することができる。特に、後に詳細に説明するように、溶融亜鉛めっき用鋼板の製造時における熱間圧延の条件(特に巻き取り温度)、酸洗前の焼鈍条件および酸洗条件を、適切に制御することによって、製造することができる。加えて、幅方向エッジ近傍に内部酸化層を残留させるためには、熱間圧延後の鋼板の酸洗前の焼鈍工程が重要である。
2.溶融亜鉛めっき用鋼板の製造方法
本実施形態における溶融亜鉛めっき用鋼板の製造方法は、Si含有量が1.0質量%以上である鋼素材(鋼または鋼板)を用い、かつ、最終的に製造される溶融亜鉛めっき用鋼板が前述した溶融亜鉛めっき用鋼板の特性および構成を満たしていれば、特に限定されない。
以下、本実施形態における溶融亜鉛めっき用鋼板の製造方法の一例について説明する。
(圧延用の鋼素材の準備)
まず、Si含有量が1.0質量%以上である化学組成を有する圧延用のスラブ等の鋼素材を作製する。なお、鋼素材の化学組成は、後に詳細に述べる。スラブ等の鋼素材は既知の任意の方法により準備することができる。スラブの作製方法としては、例えば、後述する化学組成を有する鋼を溶製し、造塊または連続鋳造によって、スラブを作製する方法を挙げられる。必要に応じて、造塊または連続鋳造により得た鋳造材を分塊圧延してスラブを得てもよい。
(熱間圧延)
次いで、得られたスラブ等の鋼素材を用いて熱間圧延を行い、熱延鋼板を得る。
熱間圧延は、既知の任意の条件による方法で行ってよいが、巻き取り温度を500℃~700℃とする。巻き取り温度を500℃以上に設定することによって、内部酸化層を十分に成長させることができ、後の工程を経た後に、幅方向エッジ近傍において内部酸化層を確保し易くなる。巻き取り温度は、好ましくは520℃以上、より好ましくは530℃以上である。また、巻き取り温度を700℃以下に設定することによって、熱延後の冷却で生成する還元鉄の量が増加してしまって後の酸洗による除去が困難となることを避けることができる。巻き取り温度は、好ましくは680℃以下、より好ましく660℃以下である。
熱間圧延時における他の条件については、特に限定されない。例えば、熱間圧延では、熱間圧延前のスラブを常法に従って1000℃~1300℃以下の温度で均熱保持し、仕上げ圧延温度を800℃以上に設定し、その後コイル状の鋼板として巻き取ればよい。さらに、熱間圧延後の巻き取った熱延鋼板は、常温まで自然冷却してもよい。
(焼鈍)
さらに、巻き取った鋼板を、非還元性の雰囲気下において540℃~620℃の均熱保持温度で焼鈍する。
本明細書において、「非還元性の雰囲気下」とは、鋼板の表面が実質的に還元しないガス雰囲気下のことを意味する。限定されるわけではないが、例えば、N‐1.0体積%未満H、アルゴン、大気等のガス雰囲気下が好ましい。
焼鈍時の均熱保持温度を540℃以上にすることによって、鋼板の幅方向エッジ近傍まで、内部酸化層を良好に成長させて残留させることができる。その結果、ムラなく合金化できる溶融亜鉛めっき鋼板を得ることができる。さらに、鋼板の幅方向センター近傍から幅方向エッジ近傍までだけでなく、鋼板の圧延方向前端近傍から圧延方向後端近傍まで、内部酸化層を良好に成長させて残留させるとより好ましい。その結果、鋼板の略全面においてムラなく略均一かつ確実に合金化できる溶融亜鉛めっき鋼板を得ることができる。なお、前述した熱間圧延時の巻き取りの際の加熱だけでは幅方向エッジ近傍まで十分に内部酸化層を成長させることは難しい。焼鈍時の均熱保持温度を620℃以下にすることによって、後の酸洗によるスケール除去が困難となってしまうことを避けることができる。焼鈍時の均熱保持温度は、より好ましくは550℃以上である。また、焼鈍時の均熱保持温度は、より好ましくは610℃以下である。
焼鈍時の均熱保持時間は、特に限定されず、熱間圧延の条件(特に巻き取り温度)、本工程の均熱保持温度および後の工程の酸洗条件を考慮した上で、所望の内部酸化層を得るための好適な時間に制御すればよい。例えば、焼鈍時の均熱保持時間を30時間以上確保することによって、所望の内部酸化層を有するめっき原板(本実施形態における溶融亜鉛めっき用鋼板)を得ることができる。焼鈍時の均熱保持時間の上限は、特に限定されないが、例えば、均熱保持時間が30時間よりも過度に長い時間でなければ、生産性が低下することを防ぐことができる。
(酸洗)
次いで、焼鈍後の鋼板を酸洗すると好ましい。酸洗方法は特に限定されず、公知の任意の方法を適用すればよい。例えば、塩酸等を用いて浸漬させることにより、スケールを除去すればよい。
酸洗は、鋼板に付着したスケールが除去される程度において、かつ、酸洗後の鋼板が前述した本実施形態における固溶Si量の規定を満たすように、調整しながら行うと好ましい。具体的には、例えば、酸洗液の種類(例えば塩酸液)、酸洗液の濃度、酸洗液の温度および酸洗時間を、熱間圧延の条件(特に巻き取り温度)および酸洗前の焼鈍条件を考慮した上で、適切に制御することによって、酸洗後の鋼板が前述した本実施形態における固溶Si量の規定を満たすことができる。
例えば、塩酸濃度を、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上に設定すればよい。また、塩酸濃度は、例えば、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下に設定すればよい。さらに、例えば、酸洗液の温度は、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上に設定すればよい。また、酸洗液の温度は、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下に設定すればよい。酸洗時間は、酸洗後の鋼板が前述した本実施形態における固溶Si量の規定を満たすように、酸洗液の濃度および温度に応じて、適宜調整すればよい。
(冷間圧延)
さらに、酸洗後の鋼板に冷間圧延を施してもよい。冷間圧延の方法は特に限定されず、公知の任意の方法を適用すればよい。例えば、所望する板厚にするために、冷間圧延の冷延率を10%~70%の範囲にすることができる。鋼板の板厚は、特に限定されない。
なお、冷間圧延の工程を含む場合は、冷間圧延後の鋼板が前述した本実施形態における固溶Si量の規定を満たすように、熱間圧延時の巻き取り温度、酸洗前の焼鈍条件および酸洗条件を適宜調整しておけばよい。
上述してきたような工程および任意の工程を含むことによって、本実施形態における溶融亜鉛めっき用鋼板を製造することができる。
3.溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板
本実施形態における溶融亜鉛めっき鋼板は、前述した実施形態における溶融亜鉛めっき用鋼板の表面に、亜鉛めっき層を備える。また、さらなる実施形態における合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、前述した実施形態における溶融亜鉛めっき用鋼板の表面に、合金化された亜鉛めっき層を備える。
これらの実施形態における溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、前述の実施形態における原板である溶融亜鉛めっき用鋼板を用いて製造することができる。以下、製造方法の一例について説明する。
(酸化処理および還元処理)
最初に、前述の実施形態における溶融亜鉛めっき用鋼板の表面に対して、酸化還元法による焼鈍を適用する。まず、鋼板の表面に酸化処理を施すことによって、鋼板の表面に酸化Fe層を形成する。さらに、還元性の雰囲気下で当該酸化Fe層に還元処理(本明細書において、「還元焼鈍処理」とも言う)を施して還元Fe層を形成する。この際、還元により酸化Fe層から供給される酸素は、鋼板内部におけるSiやMnを酸化させる。すなわち、このような酸化還元法による焼鈍を適用することによって、酸化Fe層がバリアー層となり、Siの酸化物を鋼板の内部に留めることができ、鋼板の表層付近において固溶Si量が増加することを抑制できる。その結果、溶融亜鉛めっきに対する濡れ性を良好とすることができ、最終的に合金化ムラについてもより確実に減少させることができる。
酸化処理および還元処理は、公知の任意の単数または複数の設備を用いて実施すればよい。好ましくは、製造効率、コスト面および品質保持の観点から、連続溶融亜鉛めっきライン(CGL:Continuous Galvanizing Line)の設備が用いられる。連続溶融亜鉛めっきラインを用いることによって、酸化還元法による酸化処理および還元処理と、後述する溶融亜鉛めっき処理および合金化処理とを、一連の製造ラインで連続して行うことができる。さらに具体的には、酸化還元法による酸化処理および還元処理は、例えば、無酸化炉(NOF:Non Oxygen Furnace)型または直火炉(DFF:Diret Fired Furnace)型の連続溶融亜鉛めっきラインにおける焼鈍炉を用いて行うとより好ましい。
酸化処理は、例えばNOF型またはDFF型の焼鈍炉内の酸化加熱帯等において、鋼板の表面に、鋼板温度750℃以下の加熱温度で施されると好ましい。鋼板温度を750℃以下にすることによって、良好なめっき密着性を有する溶融亜鉛めっき鋼板を得ることができる。
酸化処理における鋼板温度は、好ましくは730℃以下、より好ましくは720℃以下、さらに好ましくは700℃以下である。酸化処理における鋼板温度の下限は、特に限定されず、鋼板の表面において後述するガス雰囲気下で酸化Fe層が形成される温度であればよい。例えば、酸化処理における鋼板温度は、好ましくは650℃以上、より好ましくは670℃以上である。
酸化処理における昇温時間は、好ましくは10秒以上、より好ましくは15秒以上である。また、例えば、酸化処理における昇温時は、好ましくは120秒以下、より好ましくは90秒以下である。
酸化処理は、特に限定されないが、例えば、O、CO、NおよびHOを含むガス雰囲気下において行うことができる。より詳細には、酸化処理は、例えばNOF型またはDFF型の焼鈍炉等において、コークス炉ガス(COG:Cokes Oven Gas)、液化石油ガス(LPG:Liquefied Petroleum Gas)等の燃焼ガス中で、未燃焼のO濃度を制御したガス雰囲気下において行うことができる。O濃度は100ppm~17000ppmの範囲で制御すると好ましい。O濃度は、より好ましくは500ppm以上、さらに好ましくは2000ppm以上で制御される。また、O濃度は、より好ましくは15000ppm以下、さらに好ましくは13000ppm以下で制御される。
還元焼鈍処理における鋼板の加熱温度(均熱保持温度)は、特に限定されず、酸化処理によって形成された酸化Fe層が還元Fe層になる温度で行われればよい。具体的には、好ましくはAc点以上の均熱保持温度で還元焼鈍を行うと好ましい。なお、Ac点は、下式(i)により算出することができる(「レスリー鉄鋼材料学」(丸善株式会社発行、William C. Leslie著、p273))。式(i)中の[ ]で囲まれた元素記号は、当該元素の含有量(質量%)を表す。
Ac(℃)=910-203×[C]1/2-15.2×[Ni]+44.7×[Si]+104×[V]+31.5×[Mo]+13.1×[W]-{30×[Mn]+11×[Cr]+20×[Cu]-700×[P]-400×[Al]-120×[As]-400×[Ti]} …(i)
また、還元処理における加熱時間(均熱保持時間)は、特に限定されず、酸化処理により形成された酸化Fe層が還元Fe層になるように適切に調整すればよい。例えば、還元処理における加熱時間は、好ましくは30秒以上、より好ましくは45秒以上である。また、還元処理における加熱時間は、好ましくは600秒以下、より好ましくは500秒以下である。
還元焼鈍処理は、例えばNOF型またはDFF型の焼鈍炉内の還元加熱帯等において、公知の任意の処理方法によって行うことができる。具体的には、主にHガスおよびN等の不活性ガスを含む還元性の雰囲気下で、鋼板の表面を加熱することによって行うことができる。HガスおよびN等の不活性ガスを含む混合ガスを用いる場合、例えばHガスを3体積%~25体積%の割合において含み、N等の不活性ガスを残部として含むことができる。
(溶融亜鉛めっき処理)
さらに、還元処理後の鋼板に溶融亜鉛めっき処理を施し、鋼板の表面に亜鉛めっき層を形成することによって、本実施形態における溶融亜鉛めっき鋼板を製造することができる。
溶融亜鉛めっき処理の方法は特に限定されず、公知の任意の方法を適用すればよい。例えば、鋼板を亜鉛めっき浴に400℃~500℃程度の鋼板温度で浸漬させることによって、鋼板の表面に亜鉛めっき層を形成することができる。さらに、鋼板の亜鉛めっき浴への浸漬時間は、所望の亜鉛めっき付着量に応じて調整すればよい。
(合金化処理)
本実施形態に係る合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法では、前述の方法で得られた溶融亜鉛めっき鋼板に形成された亜鉛めっき層を合金化する工程をさらに含む。
具体的には、溶融亜鉛めっき鋼板を所定の合金化温度で加熱することによって、鋼板に含まれるFe原子が亜鉛めっき層に拡散し、亜鉛めっき層を合金化することができる。合金化方法は、特に限定されず、公知の任意の方法を適用することができる。例えば、合金化温度は、特に限定されないが、例えば、好ましくは480℃~650℃で設定することができる。合金化温度での加熱時間も、特に限定されないが、例えば、好ましくは10秒~40秒で設定することができる。さらに、合金化の加熱は、例えば大気雰囲気下とすることができる。
4.鋼素材の化学組成
鋼素材、すなわち本実施形態における溶融亜鉛めっき用鋼板の化学組成は、Si以外は特に限定されない。以下、鋼素材の化学組成の一例について説明する。
[Si:1質量%以上]
Siは、安価な鋼の強化元素であり、かつ、鋼板の加工性に対して影響を与え難い。また、Siは、鋼板の加工性向上に有用な残留オーステナイトが分解して炭化物が生成することを抑制できる元素である。このような作用を有効に発揮させるため、Si含有量は1.0質量%以上、好ましくは1.1質量%以上、さらに好ましくは1.2質量%以上である。Si含有量の上限は、特に限定されないが、Si含有量が多すぎると、Siによる固溶強化作用が顕著になって圧延負荷が増大してしまうおそれがあり、熱間圧延の際にSiスケールが発生して鋼板の表面欠陥が生じてしまう可能性がある。そのため、例えば、Si含有量は、製造安定性の観点から、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは2.7質量%以下、さらに好ましくは2.5質量%以下である。
[Mn:好ましくは1.5質量%以上3.0質量%以下]
Mnも、Siと同様に、安価な鋼の強化元素であり、鋼板の強度向上に有効である。Mnは、Siと共に、さらに必要に応じてCも一緒に鋼に添加することによって、最終的に980MPa以上の溶融亜鉛めっき鋼板の引張強度を確保するために特に有効な強化元素である。さらに、Mnは、オーステナイトを安定化し、残留オーステナイトの生成による鋼板の加工性向上に寄与する元素である。このような作用を有効に発揮させるため、Mn含有量は、好ましくは1.5質量%以上、より好ましくは1.8質量%以上、さらに好ましくは2.0質量%以上である。しかしながら、Mn含有量が多すぎると、鋼板の延性が低下し、鋼板の加工性に悪影響を及ぼし、鋼板の溶接性が低下するおそれがある。このような観点から、Mn含有量は、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは2.8質量%以下、さらに好ましくは2.7質量%以下である。
[C:好ましくは0.08質量%以上0.30質量%以下]
Cは、鋼板の強度向上に有効な元素であり、Siと一緒に、さらに必要に応じてMnも一緒に鋼に添加することによって、最終的に980MPa以上の溶融亜鉛めっき鋼板の引張強度を確保するために特に有効な強化元素である。さらに、Cは、残留オーステナイトを確保して加工性を改善するために必要な元素である。このような作用を有効に発揮させるため、C含有量は、好ましくは0.08質量%以上、より好ましくは0.11質量%以上、さらに好ましくは0.13質量%以上である。鋼板の強度の確保の観点からはC含有量が多い方が好ましいが、C含有量が多すぎると耐食性、スポット溶接性および加工性が劣化するおそれがある。そのため、C含有量は、好ましくは0.30質量%以下、より好ましくは0.25質量%以下、さらに好ましくは0.20質量%以下である。
[P:好ましくは0質量%超0.1質量%以下]
Pは、不純物元素として不可避的に存在する元素である。P含有量が過剰になると、鋼板の溶接性を劣化させるおそれがある。そのため、P含有量は、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.08質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%以下に抑制する。
[S:好ましくは0質量%超0.05質量%以下]
Sは、不純物元素として不可避的に存在する元素である。通常、鋼は、不可避的に0.0005質量%程度においてSを含有している。S含有量が過剰になると、硫化物系介在物を形成し、腐食環境下で水素吸収を促し、鋼板の耐遅れ破壊性を劣化させ、鋼板の溶接性および加工性を劣化させるおそれがある。そのため、S含有量は、好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、さらに好ましくは0.005質量%以下に抑制する。
[Al:好ましくは0質量%超1.0質量%以下]
Alは、脱酸作用を有する元素である。このような作用を有効に発揮させるため、Al含有量は、好ましくは0質量%超、より好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.02質量%以上である。Al含有量が過剰になると、アルミナ等の介在物が増加し、鋼板の加工性が劣化するおそれがある。そのため、Al含有量は、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
[Cr:好ましくは0質量%超1.0質量%以下]
Crは、鋼板の強度向上に有効な元素である。さらに、Crは、鋼板の耐食性を向上させる元素であり、鋼板の腐食による水素の発生を抑制する作用を有する。具体的には、Crは、酸化鉄(α-FeOOH)の生成を促進させる作用を有する。酸化鉄は、大気中で生成する錆のなかでも熱力学的に安定であり、かつ保護性を有するといわれている。このような錆の生成を促進することによって、発生した水素が鋼板へ侵入することを抑制でき、過酷な腐食環境下、例えば、塩化物の存在下で鋼板を使用した場合でも水素による助長割れを十分に抑制できる。また、Crは、BおよびTiと同様に、鋼板の耐遅れ破壊性にも有効な元素であるため、鋼板の強度と伸び等の加工性に影響を与えない量において添加することができる。これらの作用を有効に発揮させるには、Cr含有量は、好ましくは0質量%超、より好ましくは0.003質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上である。一方、Cr含有量が過剰になると、鋼板の伸び等の加工性が劣化するおそれがある。そのため、Cr含有量は、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、さらに好ましくは0.6質量%以下である。
[Cu:好ましくは0質量%超1.0質量%以下]
Cuも、Crと同様に、鋼板の強度向上に有効であり、かつ、鋼板の腐食による水素の発生を抑制する作用を有し、鋼板の耐食性を向上させる元素である。Cuも、Crと同様に、酸化鉄の生成を促進させる作用を有する。これらの作用を有効に発揮させるには、Cu含有量は、好ましくは0質量%超、より好ましくは0.003質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上である。また、鋼板の加工性の観点から、Cu含有量は、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
[Ni:好ましくは0質量%超1.0質量%以下]
Niも、CrおよびCuと同様に、鋼板の強度向上に有効であり、かつ、鋼板の腐食による水素の発生を抑制する作用を有し、鋼板の耐食性を向上させる元素である。Niも、CrおよびCuと同様に、酸化鉄の生成を促進させる作用を有する。これらの作用を有効に発揮させるには、Ni含有量は、好ましくは0質量%超、より好ましくは0.003質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上である。また、鋼板の加工性の観点から、Ni含有量は、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
[Ti:好ましくは0質量%超0.15質量%以下]
Tiも、Cr、CuおよびNiと同様に、鋼板の強度向上に有効であり、かつ、鋼板の腐食による水素の発生を抑制する作用を有し、鋼板の耐食性を向上させる元素である。Tiも、Cr、CuおよびNiと同様に、酸化鉄の生成を促進させる作用を有する。また、Tiは、BおよびCrと同様に、鋼板の耐遅れ破壊性にも有効な元素であるため、鋼板の強度と伸び等の加工性に影響を与えない量において添加することができる。これらの作用を有効に発揮させるには、Ti含有量は、好ましくは0質量%超、より好ましくは0.003質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上である。また、鋼板の加工性の観点から、Ti含有量は、好ましくは0.15質量%以下、より好ましくは0.12質量%以下、さらに好ましくは0.10質量%以下である。
[Nb:好ましくは0質量%超0.15質量%以下]
Nbは、鋼板の強度向上に有効であり、かつ、焼入れ後のオーステナイト粒を微細化して鋼板の靭性の改善に作用する元素である。このような作用を有効に発揮させるには、Nb含有量は、好ましくは0質量%超、より好ましくは0.03質量%以上、さらに好ましくは0.005質量%以上である。一方、Nb含有量が過剰になると、炭化物、窒化物または炭窒化物を多量に生成し、鋼板の加工性または耐遅れ破壊性が劣化するおそれがある。そのため、Nb含有量は、好ましくは0.15質量%以下、より好ましくは0.12質量%以下、さらに好ましくは0.10質量%以下である。
[V:好ましくは0質量%超0.15質量%以下]
Vも、Nbと同様に、鋼板の強度向上に有効であり、かつ、焼入れ後のオーステナイト粒を微細化して鋼板の靭性の改善に作用する元素である。このような作用を有効に発揮させるには、V含有量は、好ましくは0質量%超、より好ましくは0.03質量%以上、さらに好ましくは0.005質量%以上である。一方、V含有量が過剰になると、Nbと同様に、炭化物、窒化物または炭窒化物を多量に生成し、鋼板の加工性または耐遅れ破壊性が劣化するおそれがある。そのため、V含有量は、好ましくは0.15質量%以下、より好ましくは0.12質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下である。
[B:好ましくは0質量%超0.005質量%以下]
Bは、鋼板の焼入れ性および溶接性の向上に有用な元素である。また、Bは、TiおよびCrと同様に、鋼板の耐遅れ破壊性にも有効な元素であるため、鋼板の強度と伸び等の加工性に影響を与えない量において添加することができる。これらの作用を有効に発揮させるには、B含有量は、好ましくは0質量%超、より好ましくは0.0002質量%以上、さらに好ましくは0.0003質量%以上、特に好ましくは0.0004質量%以上である。一方、B含有量が過剰になると、このような効果は飽和し、かつ、延性が低下して加工性が悪くなるおそれがある。そのため、B含有量は、好ましくは0.005質量%以下、さらに好ましくは0.004質量%以下、さらに好ましくは0.003質量%以下である。
[N:好ましくは0質量%超0.01質量%以下]
Nは、不純物元素として不可避的に存在する元素である。N含有量が過剰になると、窒化物を形成して鋼板の加工性が劣化するおそれがある。特に、焼入れ性の向上のために鋼板がBを含有する場合、NはBと結合してBN析出物を形成し、Bの焼入れ性向上作用を阻害する。そのため、N含有量は、好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.008質量%以下、さらに好ましくは0.005質量%以下に抑制する。
また、本実施形態における鋼素材の化学組成は、上記成分のほか、強度や十分な加工性を阻害しない範囲で、他の周知の任意成分をさらに含有することもできる。
[残部]
残部はFeおよび不可避不純物である。不可避不純物としては、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる微量元素(例えば、As、Sb、Sn等)の混入が許容される。なお、前述したようなP、SおよびNは、通常含有量が少ないほど好ましいため、不可避不純物ともいえる。しかし、これらの元素は特定の範囲まで含有量を抑えることによって本発明がその効果を発揮することができるため、上記のように規定している。このため、本明細書において、残部を構成する「不可避不純物」は、その組成範囲が規定されている元素を除いた概念である。
本実施形態における溶融亜鉛めっき用鋼板によると、Si含有量が1質量%以上である高Si含有であるために、高強度高加工性の溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板を安価に製造することができ、かつ、コイル幅方向において合金化ムラを抑制することができる。より具体的には、製造される溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、980MPa以上の引張強度を有することができる。
さらに、前述したように、溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造の際、連続溶融亜鉛めっきラインを用いて、酸化処理、還元処理、溶融亜鉛めっき処理および合金化処理を一連の製造ラインで連続して行うことによって、製品の品質を保持したままより安価に効率よく合金化ムラのない高強度高加工性の合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造することができる。
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1では、本発明例の一つである溶融亜鉛めっき用鋼板を製造し、製造した当該溶融亜鉛めっき用鋼板における様々な位置における固溶Si量を測定した。さらに、製造した当該溶融亜鉛めっき用鋼板における合金化ムラを評価した。
[溶融亜鉛めっき用鋼板の製造]
後の表1に示す鋼種Aの化学組成の鋼材を転炉にて溶製した後、連続鋳造によりスラブを製造した。得られたスラブを、仕上げ圧延終了温度を900℃として、板厚2.0mmとなるまで熱間圧延し、後の表2に示すように640℃で巻き取り、得られた熱延鋼板を常温まで冷却した。その後、熱延鋼板を焼鈍炉に投入し、焼鈍を行った。焼鈍条件は、N‐0.5体積%Hの非還元性の雰囲気下において、熱延鋼板を580℃まで約8.5時間で昇温し、580℃で30時間均熱保持し、次いで200℃以下まで約5時間かけて冷却した。その後、得られた焼鈍鋼板を、濃度8重量%である塩酸を用いて85℃において40秒間浸漬させることによって酸洗した。最後に、焼鈍鋼板が板厚2.0mmから1.4mmになるまで冷間圧延を行い、最終的に溶融亜鉛めっき用鋼板を得た。
[溶融亜鉛めっき用鋼板の供試片における固溶Si量(重量%)の測定]
得られた溶融亜鉛めっき用鋼板における様々な位置での固溶Si量を測定した。具体的には、鋼板の圧延方向後端における、任意に選択した一方の側のコイル幅方向エッジから10mm、30mm、50mmおよび70mmの位置、ならびに、コイル幅方向センターの位置を中心に含むように、20mm×20mm×1.4mm(板厚)のサイズの供試片をシャー切断機によって切り出した。その後、各々の供試片について鋼板の表面から深さ1μmまでの固溶Si量(重量%)、詳細には固溶Si量の平均値(重量%)を測定した。溶融亜鉛めっき用鋼板の固溶Si量は、全自動走査型X線光電子分光分析装置(アルバックファイ(株)製、「Quantera-SXM」)を用いて測定した。測定条件は、X線出力:24.2W、X線ビーム径:100μm、および、分析位置:深さ1μmとした。具体的には、下記(式1)に示すように、Si(Si-Si,Fe-Si)の{Si(SiO)+Si(Si-Si,Fe-Si)}に対するピーク面積強度の比率を求め、実際の鋼中Si含有量を乗じることで固溶Si量(重量%)を算出した。算出された溶融亜鉛めっき用鋼板における固溶Si量(重量%)は、鋼板の製造条件と共に、後の表2にまとめて示す。
固溶Si量(重量%)=[Si(Si-Si,Fe-Si)/{Si(SiO)+Si(Si-Si,Fe-Si)}]×鋼中Si含有量 (式1)
[合金化ムラの評価]
合金化ムラを評価するために、溶融亜鉛めっき用鋼板から合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造した。得られた溶融亜鉛めっき用鋼板に、NOF型の焼鈍炉を有する連続溶融亜鉛めっきラインを適用して、酸化処理、還元処理、溶融亜鉛めっき処理および合金化処理を施した。酸化処理では、17000ppm未満のOとCO、NおよびHOとを含む燃焼排ガス雰囲気下において、45秒の昇温時間で、約710℃(680℃~730℃)の鋼板温度になるように、鋼板を加熱した。ここで、「鋼板温度」とは、NOF型(または後述する実施例3および実施例4ではDFF型)の焼鈍炉の酸化加熱帯において加熱制御される鋼板の最高到達板温を意味する。還元処理は、N‐Hのガス雰囲気下において、約800℃(770℃~820℃)の均熱保持温度において50秒間加熱した。溶融亜鉛めっき処理は、還元後の鋼板を亜鉛めっき浴に430℃において浸漬させて、溶融亜鉛めっき層を形成した。このようにして溶融亜鉛めっき鋼板を得て、その後、合金化処理により合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得た。
合金化溶融亜鉛めっき鋼板の合金化ムラは、得られた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の外観を目視で観察し、Zn-Fe合金化が進行し、Znの金属光沢がなくなっている場合を「〇」と評価した。一方、Znの金属光沢が残っている場合を「×」と評価した。
(実施例2)
実施例2では、後の表1に示す鋼種Bの化学組成の鋼材を用い、熱間圧延の巻き取り温度を550℃としたこと以外は、前述の実施例1と同じ方法で溶融亜鉛めっき用鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造した。さらに、溶融亜鉛めっき用鋼板における固溶Si量についても同じ方法で算出し、合金化ムラについても同様に評価した。実施例2の溶融亜鉛めっき用鋼板における固溶Si量および合金化ムラの評価結果についても、鋼板の製造条件と共に、後の表2にまとめて示す。
(実施例3)
実施例3では、後の表1に示す鋼種Cの化学組成の鋼材を用い、熱間圧延の巻き取り温度を660℃とし、DFF型の焼鈍炉を有する連続溶融亜鉛めっきラインを適用して、酸化処理、還元処理、溶融亜鉛めっき処理および合金化処理を行い、還元処理の均熱保持温度を約900℃(900℃~950℃)とし、均熱保持時間を約300秒(240秒~360秒)としたこと以外は、前述の実施例1と同じ方法で溶融亜鉛めっき用鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造した。
次いで、得られた溶融亜鉛めっき用鋼板から前述の実施例1と同様の各位置を含む供試片を切り出した。その後、各供試片の内部酸化層量を算出した。供試片の内部酸化層量は、例えば、濃度10質量%の塩酸を用いて、温度80℃の条件下で当該供試片を浸漬して、単位面積当たりの溶解量を測定することにより求めることができる。図2のグラフにおいて、このような方法により求められるコイル幅方向における内部酸化層量の分布の一例を模式的に示す。一般的に、熱間圧延の条件および酸洗前の焼鈍条件が同じであれば、鋼種にかかわらず、内部酸化層量の分布は同様の傾向を示すことが想定される。実施例3の鋼板は、図2に示す分布と類似した内部酸化層量の分布の傾向、具体的にはコイル幅方向エッジから10mmの位置の供試片が最も内部酸化層量が少なくなる傾向を示した。また、図3のグラフにおいて、鋼板の固溶Si量と内部酸化層量との相関の一例を模式的に示す。図3のグラフは、各供試片の固溶Si量と内部酸化層量とを測定することによって求めることができる。一般的に、鋼種、熱間圧延の条件および酸洗前の焼鈍条件にかかわらず、図3のグラフに示すように、内部酸化層量がより少ない場合、固溶Si量はより多くなる傾向となっている。
図2および図3から、実施例3における最も固溶Si量(重量%)が多くなるコイル幅方向の位置は、内部酸化層量が最も少ないコイル幅方向エッジから10mmの位置であることが分かる。従って、実施例3では、溶融亜鉛めっき用鋼板のコイル幅方向エッジから10mmの位置の供試片のみの固溶Si量を前述と同様の方法で算出した。さらに、当該供試片の合金化ムラについても同様に評価した。実施例3の溶融亜鉛めっき用鋼板における固溶Si量および合金化ムラの評価結果についても、鋼板の製造条件と共に、後の表2にまとめて示す。
(実施例4)
実施例4では、後の表1に示す鋼種Dの化学組成の鋼材を用い、板厚が2.3mmとなるよう熱間圧延し、焼鈍後の鋼板に対して板厚2.3mmから1.4mmになるまで冷間圧延をしたこと以外は、前述の実施例3と同じ方法で溶融亜鉛めっき用鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造した。
さらに、溶融亜鉛めっき用鋼板の各位置を含む供試片の内部酸化層量を前述の実施例3と同様に算出した。実施例4の鋼板は、図2に示す分布とほぼ同じ内部酸化層量の分布の傾向、具体的にはコイル幅方向エッジから10mmの位置の供試片が最も内部酸化層量が少なくなる傾向を示した。従って、図2および図3に基づくと、実施例4の鋼板も、最も固溶Si量(重量%)が多くなるコイル幅方向の位置は、コイル幅方向エッジから10mmの位置であることが分かる。そのため、実施例4でも、溶融亜鉛めっき用鋼板のコイル幅方向エッジから10mmの位置の供試片のみの固溶Si量を前述と同様の方法で算出した。さらに、当該供試片の合金化ムラについても同様に評価した。実施例4の溶融亜鉛めっき用鋼板における固溶Si量および合金化ムラの評価結果についても、鋼板の製造条件と共に、後の表2にまとめて示す。
(比較例1)
比較例1では、熱間圧延における巻き取り温度を660℃とし、かつ酸洗前の焼鈍を行わなかったこと以外は、前述の実施例1と同じ方法で溶融亜鉛めっき用鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造した。さらに、溶融亜鉛めっき用鋼板における固溶Si量についても同じ方法で算出し、合金化ムラについても同様に評価した。比較例1の溶融亜鉛めっき用鋼板における固溶Si量および合金化ムラの評価結果についても、鋼板の製造条件と共に、後の表2にまとめて示す。
Figure 2022136977000002
Figure 2022136977000003
(考察)
上記表2に示すように、実施例1の溶融亜鉛めっき用鋼板では、最も固溶Si量が多いコイル幅方向エッジから10mmの位置も含めていずれの位置においても固溶Si量は本実施形態において規定される1.4重量%以下を満たし、合金化ムラも発生していなかった。実施例2の溶融亜鉛めっき用鋼板では、熱間圧延の巻き取り温度が実施例1よりも低い温度であり、内部酸化層が成長し難い製造条件であったが、いずれの位置においても固溶Si量は本実施形態において規定される1.4重量%以下を満たし、合金化ムラも発生していなかった。なお、実施例2の溶融亜鉛めっき用鋼板は、他の実施例の鋼板とは異なり、コイル幅方向エッジから10mmの位置の供試片ではなく50mmの位置の供試片が最も固溶Si量が多くなっていた。これは、熱間圧延の巻き取り温度が他の実施例と比べて顕著に低いことが影響したと想定される。さらに、実施例3および実施例4の溶融亜鉛めっき用鋼板は、前述した通り、最も固溶Si量(重量%)が多いことが想定されるコイル幅方向エッジ部から10mmの位置の供試片の固溶Si量が、本実施形態において規定される1.4重量%以下を満たし、合金化ムラも発生していなかった。これらは、実施例1と同様に、酸洗前に焼鈍を行ったためと考えられる。また、この合金化ムラの結果から、実施例1、実施例2、実施例3および実施例4の溶融亜鉛めっき用鋼板では、コイル幅方向エッジ近傍において、鋼板の表層と鋼板素地部分との間にSiの酸化物を含む内部酸化層を有していることが想定される。
一方、比較例1(従来材)の溶融亜鉛めっき用鋼板では、コイル幅方向エッジから50mmの位置までは固溶Si量は規定の1.4重量%以下を満たしており、合金化ムラは発生していなかった。しかし、コイル幅方向エッジにより近い位置における固溶Si量が規定の1.4重量%以下を満たさない位置では、合金化ムラが発生しており、コイル幅方向に均一に合金化できていなかった。すなわち、熱間圧延の巻き取り温度を高くしても、酸洗前に焼鈍を行わなければ、コイル幅方向エッジ近傍には完全に内部酸化層が形成されず、続く工程における酸洗によって鋼板の表面に近い固溶Si量が多くなり、最終的に合金化ムラへと繋がったと考えられる。
加えて、これらの結果から、高Si含有量の溶融亜鉛めっき用鋼板において、その製造時における熱間圧延時の巻き取り温度、酸洗前の焼鈍条件および酸洗条件を適切に制御することによって、前述の(式1)より算出される鋼板の表面から深さ1μmまでの固溶Si量が1.4重量%以下であれば、合金化ムラのない合金化溶融亜鉛めっき鋼板となることが分かる。
本出願は、2021年3月8日に出願された日本国特許出願特願2021-036227号を基礎とするものであり、その内容は、本願に含まれるものである。
今回開示された実施形態および実施例は、全ての点で例示であって制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
1 溶融亜鉛めっき用鋼板
2 鋼板の表層
3 鋼板素地部分
4 内部酸化層

Claims (3)

  1. 鋼板の表層と鋼板素地部分との間にSiの酸化物を含む内部酸化層を有し、鋼板の化学組成におけるSi含有量が1.0質量%以上であり、かつ、当該溶融亜鉛めっき用鋼板の圧延方向後端における、コイル幅方向エッジから10mm、30mmおよび50mmの位置、ならびに、コイル幅方向センターの位置の4つの全ての位置で測定される鋼板の表面から深さ1μmまでの固溶Si量が1.4重量%以下である、溶融亜鉛めっき用鋼板。
  2. 請求項1に記載の溶融亜鉛めっき用鋼板の表面に、亜鉛めっき層を備える、溶融亜鉛めっき鋼板。
  3. 請求項1に記載の溶融亜鉛めっき用鋼板の表面に、合金化された亜鉛めっき層を備える、合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
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