JP2022135638A - クラッチ装置 - Google Patents

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淳史 千葉
Atsushi Chiba
翔平 大久保
Shohei Okubo
和浩 竹内
Kazuhiro Takeuchi
浩 ▲高▼本
Hiroshi Takamoto
賢一 中野
Kenichi Nakano
成実 加藤
Narumi Kato
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Abstract

Figure 2022135638000001
【課題】多板式クラッチ装置において摩擦板及びクラッチ板へのオイルの供給を向上させることができる構成を提供する。
【解決手段】一実施形態に係るクラッチ装置10は、クラッチアウタ18と、クラッチセンタ20と、加圧板22とを備え、加圧板22のクラッチスプリング収納部52には、周方向において該クラッチスプリング収納部の中心部から所定量回転遅れ方向にオフセットされた位置に、クラッチスプリング収納部52の収納空間52sから、クラッチアウタ18のアウタ円筒部32とクラッチセンタ20のセンタ円筒部40との間の環状空間CS側に向けて延びるオイル通路部80が形成されている。
【選択図】図6

Description

本発明は、クラッチ装置に関する。
クラッチ装置には、摩擦板及びクラッチ板をそれぞれ複数備えた多板式クラッチ装置がある。多板式クラッチ装置には、アシスト・スリッパークラッチ(A/Sクラッチ)の構成、つまりカム機構を備えるものがある。例えば、特許文献1が開示するクラッチ装置は、クラッチインナと加圧板との相対回転の回転差をクラッチ装置の軸方向の移動に変換するカム機構を備える。このカム機構は、入力部材からクラッチインナへ駆動力が作用しているときにクラッチインナと加圧板とを軸方向に近接させるアシストカムと、出力軸部材からクラッチインナへの駆動力の発生時にクラッチインナと加圧板とを軸方向に離間させるバックトルクカムとを備える。
一方、多板式クラッチ装置において、摩擦板及びクラッチ板にオイルを供給し、例えば冷却する構造が種々提案されている。例えば、特許文献2は、プレッシャディスクによって摩擦式のクラッチ板の断接を行うクラッチ装置を開示する。このクラッチ装置では、プレッシャディスクのコイルスプリングの装着用のスプリング受け部に、プレッシャディスクのオイル取込用孔から供給されるオイルをスプリング受け部内に取り込む供給孔が設けられるとともに、スプリング受け部内に取り込まれたオイルを、スプリング受け部の先端部のプレッシャディスクの半径方向外側に排出する排出孔が形成され、更に、クラッチセンタの側面部に半径方向外側に連通する連通孔が形成される。これにより、オイル取込用孔からプレッシャディスクの内側面側に供給されるオイルは、遠心力で半径方向外側に移動し、その一部は、供給孔からスプリング受け部内に入り、スプリング受け部の先端部の排出孔から半径方向外側に流れ、クラッチセンタの連通孔を通って多板式クラッチ装置の軸方向内側のクラッチ板に供給される。このため、軸方向内側のクラッチ板にオイルを効率良く供給し、クラッチ板を効果的に潤滑及び冷却するようにしている。
特開2017-172652公報 特開2016-65606号公報
ところで、クラッチ装置を搭載した自動二輪車等の車両は、様々な環境で用いられ、様々な使用状態においても摩擦板及びクラッチ板の潤滑等のためにそこにオイルをより好適に供給することが望まれる。本発明の目的は、多板式クラッチ装置において摩擦板及びクラッチ板へのオイルの供給を向上させることができる構成を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、
回転軸に相対回転可能に軸支される円板部と、該円板部の外周縁から軸方向に延出するアウタ円筒部とを備えるクラッチアウタと、
前記回転軸に相対回転を規制されて前記円板部に対向するように配置されるベース部と、前記クラッチアウタの前記アウタ円筒部と同軸に前記ベース部から軸方向に延出するセンタ円筒部と、該センタ円筒部の内側で前記ベース部から前記円板部とは反対側に延出するクラッチセンタ側ボス部と、前記ベース部の外周部から径方向外側に延出する受圧部とを備えたクラッチセンタと、
前記クラッチセンタ側ボス部が挿通された状態でクラッチスプリングを収容する収容空間を区画形成するクラッチスプリング収容部と、前記アウタ円筒部と前記センタ円筒部との間の環状空間において交互に複数枚軸方向に重ねられた前記アウタ円筒部に係合する摩擦板と前記センタ円筒部に係合するクラッチ板とを前記受圧部との間で挟む加圧部とを備えた加圧板と
を備えたクラッチ装置において、
前記加圧板の前記クラッチスプリング収容部には、周方向において該クラッチスプリング収容部の中心部から所定量回転遅れ方向にオフセットされた位置に、前記収容空間から前記環状空間側に向けて延びるオイル通路部が形成されている
ことを特徴とするクラッチ装置
を提供する。
上記構成によれば、クラッチスプリング収容部に滞留するオイルを、オイル通路部を介して収容空間から環状空間側に好適に流し、摩擦板及びクラッチ板に向けることができる。これにより、摩擦板及びクラッチ板へのオイルの供給を向上させることができる。
好ましくは、前述のクラッチ装置は、前記クラッチセンタと前記加圧板との相対回転の回転差を軸方向の移動に変換するカム機構を更に備える。このとき、前記クラッチスプリング収容部の前記収容空間は、前記加圧板の周方向に伸びた形状に形成されるとよい。この構成により、遠心力によりオイルがクラッチスプリング収容部において回転遅れ方向側に集まりやすいところ、収容空間は加圧板の周方向に伸びた形状に形成されるので、オフセットされた位置に位置づけられた前述のオイル通路部又はその付近にオイルをより好適に集めることが可能になり、よってそのオイル通路部を介したオイルの流れをより好ましいものにすることが可能になる。
好ましくは、前記加圧板における前記クラッチスプリング収容部の径方向内側に筒状ボス部が設けられていて、該筒状ボス部における前記クラッチスプリング収容部の径方向内側の位置に内側通路部が形成されている。この構成により、筒状ボス部の径方向内側のオイルは、内側通路部を介してクラッチスプリング収容部に供給可能になる。
好ましくは、前記内側通路部は、前記加圧板の表面に設けられた溝部である。このとき、内側通路部は溝部であるので、その加工形成をより容易に行うことが可能になる。
好ましくは、前記筒状ボス部は該筒状ボス部の内周面に径方向外側に膨らむ膨らみ部を備え、該膨らみ部の径方向外側に該膨らみ部から延びる前記内側通路部が位置付けられている。この構成により、筒状ボス部内のオイルを膨らみ部に好適に集め、そのオイルを内側通路部から径方向外側のクラッチスプリング収容部に導くことが可能になる。
好ましくは、前記オイル通路部は、前記軸方向に延びる長孔である。この構成により、クラッチ装置の断接に伴うクラッチセンタと加圧板との間の相対的な軸方向の変位に対しても十分な給油性を確保することができる。
好ましくは、前記センタ円筒部に、前記オイル通路部に対応する位置に給油孔が設けられている。この構成により、オイル通路部からのオイルをより好適に環状空間に導き、摩擦板及びクラッチ板に供給することができる。
好ましくは、前記給油孔は、前記軸方向に延びる長孔である。これにより、クラッチの断接に伴うクラッチセンタと加圧板との間の相対的な軸方向の変位に、より柔軟に対応することが可能になり、給油性をより高めることができる。
好ましくは、前記クラッチセンタと前記加圧板との相対回転の回転差を軸方向の移動に変換するカム機構を更に備え、前記カム機構は、前記クラッチセンタを前記軸方向に貫通するカム孔を備え、前記カム孔にオイル堰が設けられている。この構成により、カム機構を流れるオイルの流れを径方向外側により好適に向けることができる。
本発明の上記態様によれば、上記構成を備えるので、多板式クラッチ装置において摩擦板及びクラッチ板へのオイルの供給を向上させることができる。
本発明の一実施形態に係るクラッチ装置及びその周囲の断面図である。 図1のクラッチ装置のクラッチセンタの正面図である。 図1のクラッチ装置のクラッチセンタの背面図である。 図1のクラッチ装置のクラッチセンタの平面図である。 図1のクラッチ装置のクラッチセンタの、図2のV-V線に沿った断面図である。 図1のクラッチ装置の加圧板の斜視図である。 図1のクラッチ装置の加圧板の正面図と、その一部の円部VIIの部分の拡大図である。 図1のクラッチ装置の加圧板の、図7のVIII-VIII線に沿った断面図である。 図1のクラッチ装置のクラッチセンタの、図2のIX-IX線に沿った断面図である。 図1のクラッチ装置の加圧板の、図7のX-X線に沿った断面図である。 図9のクラッチセンタのセンタ側カム部が図10の加圧板のプレッシャー側カム部に係合しているところを示す断面図である。 図1のクラッチ装置のピン部材の基端部側の部分を示す図である。 図12のピン部材の、図12のXIII-XIII線に沿った断面図である。 図3のクラッチセンタのカム孔にオイル堰を設けたところを示す図である。 図1のクラッチ装置の給油構造におけるオイルの流れの一例を示す模式図である。 図1のクラッチ装置の給油構造の変形例におけるオイルの流れの一例を示す模式図である。
以下、本発明に係る実施形態を添付図に基づいて説明する。同一の部品(又は構成)には同一の符号を付してあり、それらの名称及び機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
本発明の一実施形態に係るクラッチ装置10及びその周囲の断面図を図1に示す。クラッチ装置10はエンジンと変速機との間に設けられている。当該エンジンは、自動二輪車に搭載されていて、ここでは水冷式の多気筒4ストローク内燃機関であるが、この形式に限定されず、例えば単気筒4ストローク内燃機関であってもよい。なお、クラッチ装置10が設けられる車両は、前輪または後輪を2つ備えた3輪の車両、及び、4輪以上を備えた車両であってもよい。
エンジンのクランク軸16は、車両の車幅方向でもある左右方向に指向してクランクケース12内に軸支される。クランクケース12は、クランク軸16が配置されるクランク室を形成するとともに、クランク室の後方に変速機を収容するミッション室を形成する。
変速機は、互いに噛み合う複数の変速歯車をそれぞれ軸支するメイン軸14及びカウンタ軸(不図示)を備える。メイン軸14は、クラッチ装置10を介してエンジンの駆動力が伝達されて回転される。メイン軸14及びカウンタ軸は、エンジンのクランク軸16と平行に延びている。メイン軸14は、本発明における回転軸である。
クラッチ装置10は、クランク軸16側から変速機への駆動力の伝達を、任意に接続及び切断することが可能である。クラッチ装置10は、変速機の上記メイン軸14上に設けられる。クラッチ装置10の軸方向は、メイン軸14の軸方向に一致する。
クラッチ装置10は、所謂多板式クラッチ装置である。クラッチ装置10は、メイン軸14に相対回転可能に軸支されるクラッチアウタ18と、クラッチアウタ18の内側に配置され、メイン軸14に固定されるクラッチセンタ20と、クラッチ装置10の軸方向においてクラッチセンタ20に対向する加圧板22と、加圧板22とクラッチセンタ20との間に交互に嵌挿されて狭持される摩擦板24a及びクラッチ板24bと、加圧板22をクラッチセンタ20側に付勢する複数のクラッチスプリング26とを備える。なお、以下では、摩擦板24aとクラッチ板24bとを含めて、クラッチ板24と称する場合がある。
メイン軸14上には、エンジンの駆動力が入力される入力部材28が設けられている。入力部材28は、エンジンのクランク軸16に設けられたプライマリドライブギア30に噛み合う歯車であり、プライマリドリブンギアである。入力部材28は、ここではニードルベアリングであるベアリング28aを介して、メイン軸14に相対回転可能に軸支されている。
クラッチアウタ18は、アウタ円筒部32と、アウタ円筒部32の一端を塞ぐように設けられた円板部34とを備える。このように、クラッチアウタ18は、有底円筒状である。円板部34は、その中央部をメイン軸14が貫通するように形成されていて、メイン軸14に相対回転可能に軸支される。クラッチアウタ18は、円板部34に挿通されるリベット36によって、入力部材28の外側面に一体に固定されている。すなわち、クラッチアウタ18は、入力部材28にクランク軸16の駆動力が伝達されると、メイン軸14上において、入力部材28と同期回転する。円板部34の外周縁から軸方向に延出するアウタ円筒部32は、その内側に、クラッチセンタ20、加圧板22、それらの間に交互に嵌挿される摩擦板24a及びクラッチ板24bを収容する空間を区画形成する。
クラッチセンタ20を図2から図5に示す。図2はクラッチセンタ20の正面図であり、図3はクラッチセンタ20の背面図であり、図4はクラッチセンタ20の平面図である。図5は、図2のV-V線に沿ったクラッチセンタ20の断面図である。クラッチセンタ20を図1から図5に基づいて説明する。
クラッチセンタ20は、中央部がメイン軸14に固定されてクラッチアウタ18の円板部34に対向するように配置される円板状のベース部38と、クラッチアウタ18のアウタ円筒部32と同軸にベース部38からクラッチ装置10の軸線10Aの方向つまり軸方向に延出するセンタ円筒部40と、ベース部38の外周部から径方向外側に延出するフランジ状の受圧部42と、センタ円筒部40の内側でベース部38からクラッチ装置10の軸方向に延出する複数のクラッチセンタ側ボス部44とを備える。クラッチセンタ20は、ベース部38がメイン軸14に相対回転を規制されてその中央部が軸支されていてつまりメイン軸14に固定されており、メイン軸14と同期回転する。また、クラッチセンタ20は、メイン軸14の軸方向つまりクラッチ装置10の軸方向に移動不能に固定されている。
図2に示すように、クラッチセンタ側ボス部44は、クラッチセンタ20の周方向に互いに等間隔で複数設けられている。ここでは、3つのクラッチセンタ側ボス部44が設けられている。クラッチセンタ側ボス部44は、図1において、クラッチセンタ20のクラッチアウタ18の円板部34側とは反対側に延出する。
また、クラッチセンタ20は、複数のクラッチセンタ側ボス部44の先端面に取り付けられるストッパプレート46を備える(図1参照)。ストッパプレート46は、クラッチセンタ側ボス部44の先端面に挿通されるボルト48によって、クラッチセンタ側ボス部44に固定されている。
加圧板22を図6から図8に示す。図6は加圧板22の斜視図であり、図7は加圧板22の正面図であり、図8は図7のVIII-VIII線に沿った加圧板22の断面図である。以下、加圧板22について図1及び図6から図8に基づいて説明する。
プレッシャープレートと称される加圧板22は、円板状の板部50と、板部50からクラッチセンタ20側へクラッチ装置10の軸方向に延出する複数の筒状部52と、筒状部52の径方向外側において板部50の外周部に形成されて受圧部42に対向する加圧部54とを備える。筒状部52は、クラッチスプリング収容部に相当する。
加圧板22の板部50の中央部には、メイン軸14が挿通される貫通孔55aを定める筒状ボス部55が設けられている。その筒状ボス部55の内径側には、図1に示すようにベアリング保持部55hが設けられ、そこにベアリング56が設けられる。筒状ボス部55の内径側において貫通孔55aに突出すように設けられるベアリング保持部55hは、加圧板22においてクラッチセンタ20側ではなく、その反対側に位置付けられている。
筒状部52は、筒状の収容空間形成面52fを有する。この収容空間形成面52fにより、クラッチスプリング26を収容する収容空間52sが区画形成される。ここでは、収容空間52sは孔である。図1のクラッチ装置10において加圧板22のクラッチセンタ20側に位置する筒状部52の先端部には、収容空間52sに張り出すように筒状部52の径方向内側に延びるフランジ状のスプリング座面52aが形成されている。筒状部52には、更に、筒状部52の先端を軸方向に貫通する貫通孔52bが形成されている。スプリング座面52aにクラッチスプリング26の一端が接するように、収容空間52sにクラッチスプリング26は配置される。図7に示すように、収容空間形成面52fはつまりそれにより区画形成された収容空間52sは、加圧板22の周方向に伸びた形状に、より具体的には周方向に長い長孔状に形成されている。これに伴い、スプリング座面52aの径方向内側において軸方向に貫通するように延びる貫通孔52bは、図7に示すように、加圧板22の周方向に長い長孔状に形成されている。なお、ここでは、収容空間52s及び貫通孔52bは図7に示すように周方向に伸びた長円状であるが、周方向に伸びた楕円状であってもよい。
加圧板22は、各筒状部52の貫通孔52bにクラッチセンタ20の各クラッチセンタ側ボス部44が挿通された状態で、クラッチセンタ20に組み付けられている。加圧板22は、クラッチ装置10の軸方向に移動可能である。また、加圧板22は、貫通孔52b内をクラッチセンタ側ボス部44が移動可能な範囲内において、クラッチセンタ20に対して相対回転可能である。
クラッチスプリング26はコイルスプリングである。クラッチスプリング26の内周部にクラッチセンタ側ボス部44が挿通された状態で、クラッチスプリング26は収容空間52sに配置されるつまり収容される。クラッチスプリング26は、一端26aが加圧板22のスプリング座面52aに当接し、他端26bがストッパプレート46に当接するように、クラッチセンタ20に保持される。
クラッチ板24つまり摩擦板24aとクラッチ板24bは、クラッチアウタ18のアウタ円筒部32とクラッチセンタ20のセンタ円筒部40との間の環状空間CSに配置されるとともに、受圧部42と加圧部54との間に挟まれる。リング状に形成された駆動側クラッチ板である摩擦板24aは、その外周縁に複数形成された外周突部がクラッチアウタ18のアウタ円筒部32の内周面に軸方向に指向して周方向に複数形成された溝条に摺動自在に係合し、クラッチ装置10の軸方向に移動可能であるとともに、クラッチアウタ18とともに一体的に回転する。リング状に形成された被動側クラッチ板であるクラッチ板24bは、その内周縁に複数形成された内周突部がクラッチセンタ20のセンタ円筒部40の外周面に軸方向に指向して周方向に複数形成された溝条40aに摺動自在に係合し、クラッチ装置10の軸方向に移動可能であるとともに、クラッチセンタ20とともに一体的に回転する。摩擦板24aとクラッチ板24bとは、交互に軸方向に積層して、それぞれ複数枚が配置されている。
クラッチスプリング26は、加圧部54と受圧部42とでクラッチ板24を圧着する方向、すなわち、クラッチ接続方向に加圧板22を付勢している。図1に示す状態は、クラッチ接続状態であり、クラッチ板24がクラッチスプリング26の付勢力により軸方向に押圧されることで、クラッチアウタ18とクラッチセンタ20とが摩擦板24aとクラッチ板24bとの摩擦によって接続されている。クラッチ接続状態では、クラッチセンタ20及び加圧板22は一体に回転する。
詳細には、クラッチ接続状態では、エンジンの駆動力は、入力側から順に、入力部材28、クラッチアウタ18、摩擦板24a、クラッチ板24b、クラッチセンタ20、及び、メイン軸14の順番で伝達される。その後、エンジンの駆動力は、メイン軸14からカウンタ軸及び駆動チェーンを経て、駆動輪である後輪に伝達される。
図1に示すように、メイン軸14は中空に形成されていて、その内部に油路となる軸孔14hを区画形成する。エンジンが稼動してクランク軸16が回転しているときに、スカベンジポンプが駆動されてメイン軸14の軸孔14hに導入されたオイルは、例えば軸孔14hから径方向に分岐した枝孔14hhに分流して、メイン軸14上の複数の変速歯車の各軸支部に供給されるとともに、クラッチアウタ18を支持するプライマリドリブンギアである入力部材28の軸支部であるニードルベアリング28aにも供給される。
中空に形成されたメイン軸14のクラッチ装置10側の先端部には、ピン部材60が軸方向に移動可能に差し込まれている。図1に示すように、メイン軸14と同芯にピン部材60は設けられている。
ピン部材60は、一端が閉じられた中空の部材であり、メイン軸14の軸孔14hに挿入される基端部60a及び外部に突出する先端部60bを有する主軸部60cと、この主軸部60cから径方向に延びるフランジ部60dとを備える。先端部60bには、運転者のクラッチレバーによる操作によって作動する駆動部材(不図示)が係合する首部60eが設けられている。首部60eの基端側において、ピン部材60において基端部60aから先端部60b側に延びる軸孔60fは終端する。なお、フランジ部60dの先端部60b側における段差部60gには、加圧板22の板部50の中央部の筒状ボス部55のベアリング保持部55hに設けられる前述のベアリング56が嵌合する。
運転者のクラッチレバーによる操作によって駆動部材が動かされることによりピン部材60が軸方向において図1中右側に動かされることで、ピン部材60と加圧板22との相対回転を許容するベアリング56を介して加圧板22が押圧される。つまり、ピン部材60の移動に伴い加圧板22がクラッチスプリング26の付勢力に抗してクラッチ接続方向(図1において紙面右側から左側)とは反対のクラッチ切断方向(図1において紙面左側から右側)に移動させられると、クラッチ装置10は、クラッチ切断状態となる。クラッチ切断状態では、クラッチスプリング26の付勢力によるクラッチ板24の押圧が解除され、クラッチアウタ18からクラッチセンタ20に駆動力が伝達されなくなる。
クラッチ装置10は、アシスト・スリッパークラッチ(A/Sクラッチ)としての構成を備え、具体的にはクラッチインナ20と加圧板22との相対回転の回転差をクラッチ装置10の軸方向の移動に変換するカム機構62を備える。カム機構62は、センタ側カム部64と、プレッシャー側カム部66とを備える。複数のセンタ側カム部64はクラッチセンタ20に設けられ、複数のプレッシャー側カム部66は加圧板22に設けられている。センタ側カム部64とプレッシャー側カム部66とは、対向して互いに摺動可能に組み合わされるように、設計されている。
カム機構62は、センタ側カム部64とプレッシャー側カム部66とを協働させることで、アシストカム68又はバックトルクカム70を実現させる。アシストカム68は、入力部材28からクラッチセンタ20への駆動力が作用しているときにクラッチセンタ20と加圧板22とを軸方向に近接させて加圧板22のクラッチ板24に対する圧着力を増加させる。バックトルクカム70は、メイン軸14からクラッチセンタ20への駆動力の発生時にクラッチセンタ20と加圧板22とを軸方向に離間させて加圧板22のクラッチ板24に対する圧着力を減少させる。
センタ側カム部64は、図2に示すように、クラッチセンタ20の周方向に互いに等間隔で複数設けられている。ここでは、3つのセンタ側カム部64が設けられている。センタ側カム部64は、クラッチセンタ側ボス部44を周方向において間に挟むように、クラッチセンタ側ボス部44と交互に設けられている。隣り合うセンタ側カム部64の周方向の中間に、クラッチセンタ側ボス部44は位置付けられている。
ここで、クラッチセンタ20の図2のIX-IX線に沿った断面図を図9に示す。センタ側カム部64は、クラッチセンタ20のベース部38から加圧板22側へ軸方向に突出する爪部として構成されている。センタ側カム部64は、ベース部38から先端64t側に向けて離れるほど回転方向R1とは反対側の回転方向R2側に位置するようにオーバーハング傾斜したアシスト傾斜面64aと、ベース部38から先端64t側に向けて離れるほど回転方向R2側に位置するように傾斜したバックトルク傾斜面64bとを備える。アシスト傾斜面64aと、バックトルク傾斜面64bとは周方向において反対側を向く。ここで、図2に示すように、アシスト傾斜面64aにおいてクラッチ装置10の軸方向に延びる中心軸線10Aから径方向に延びるとともにセンタ側カム部64の先端64t側縁部を通るように延びる仮想線IL1を定め、バックトルク傾斜面64bにおいてクラッチ装置10の軸方向に延びる中心軸線10Aから径方向に延びるとともにセンタ側カム部64の先端64t側縁部を通るように延びる仮想線IL2を定める。図2のクラッチセンタ20において、中心軸線10Aは紙面に直交し、仮想線IL1と仮想線IL2とは所定角度θ1をなす。
なお、クラッチセンタ20は鋳造で作製され、オーバーハングしたアシスト傾斜面64aの形成などのために、アシスト傾斜面64aの回転方向R2側に、軸方向に貫通する貫通孔(以下、カム孔)72が形成されている。図9に示すように、軸方向において、アシスト傾斜面64aが部分的にカム孔72の上を覆うようにカム孔72はアシスト傾斜面64aに隣接して設けられている。
プレッシャー側カム部66は、図7に示すように、加圧板22の周方向に互いに等間隔で複数設けられている。プレッシャー側カム部66の数はセンタ側カム部64の数と同数であるので、ここでは3つのプレッシャー側カム部66が設けられている。プレッシャー側カム部66は、筒状部52を加圧板22の周方向において間に挟むように、筒状部52と交互に設けられている。隣り合うプレッシャー側カム部66の周方向の中間に、筒状部52は位置付けられている。
ここで、加圧板22の図7のX-X線に沿った断面図を図10に示す。プレッシャー側カム部66は、加圧板22の円板状の板部50において軸方向にクラッチセンタ20側に突き出る壁部66wを有し、その壁部66wにおいて軸方向にへこむ凹状に形成されている。なお、加圧板22も鋳造により作製されるので、プレッシャー側カム部66は、軸方向に貫通する貫通孔92を有し、また板部50のクラッチセンタ20側において径方向に開く。プレッシャー側カム部66の壁部66wは、図6に示すように、隣の筒状部52を区画形成する壁部52wと連続し、加圧板22において板部50の中央の筒状ボス部55の貫通孔55a周りに周方向に連続して延びる。板部50からクラッチセンタ20側に向けて離れるほど回転方向R1側に位置するようにオーバーハング傾斜したアシスト傾斜面66aと、板部50からクラッチセンタ20側に向けて離れるほど回転方向R1側に位置するように傾斜したバックトルク傾斜面66bとを備える。アシスト傾斜面66aと、バックトルク傾斜面66bとは、周方向において対向する。ここで、アシスト傾斜面66aにおいてクラッチ装置10の軸方向に延びる中心軸線10Aから径方向に延びるとともにクラッチセンタ20側の縁部を通るように延びる仮想線IL3を定め、バックトルク傾斜面66bにおいてクラッチ装置10の軸方向に延びる中心軸線10Aから径方向に延びるとともにクラッチセンタ20側の縁部を通るように延びる仮想線IL4を定める。図7の加圧板22において、中心軸線10Aは紙面に直交し、仮想線IL3と仮想線IL4とは所定角度θ2をなす。所定角度θ2は上記所定角度θ1よりもわずかに大きい。したがって、凹部であるプレッシャー側カム部66内に、爪部であるセンタ側カム部64は摺動可能に挿入可能である。
図11に、図9のセンタ側カム部64が図10のプレッシャー側カム部66に係合しているところを示す断面図を示す。センタ側カム部64のアシスト傾斜面64aはプレッシャー側カム部66のアシスト傾斜面66aに当接して摺動し得る。センタ側カム部64のバックトルク傾斜面64bは、プレッシャー側カム部66のバックトルク傾斜面66bに当接して摺動し得る。
クラッチセンタ20はメイン軸14に接続されているため、加圧板22と比較するとクラッチアウタ18の回転に追従し難い。このため、入力部材28からクラッチ装置10に入力される駆動力(トルク)が急激に増大する場合、すなわち、例えば自動二輪車がエンジンの出力を増加させて加速しようとする場合、加圧板22は、クラッチセンタ20に対し、回転方向R1に相対回転する。これにより、プレッシャー側カム部66のアシスト傾斜面66aは、センタ側カム部64のアシスト傾斜面64aに当接し、プレッシャー側カム部66のアシスト傾斜面66aとセンタ側カム部64のアシスト傾斜面64aとを含んで構成されるアシストカム68が作動状態となり、カムの作用により、加圧板22は、クラッチセンタ20に近接するようにクラッチ接続方向へ軸方向に移動する。このように、クラッチセンタ20と加圧板22との相対回転の回転差をクラッチ接続方向の移動に変換できるため、クラッチを強固に接続できる。このため、クラッチスプリング26の荷重を小さくすることも可能である。
また、クラッチセンタ20の回転数が入力部材28の回転数を上回る場合、すなわち、例えば自動二輪車が急激にシフトダウンして減速しようとする場合、クラッチセンタ20は、加圧板22に対し、回転方向R1に相対回転する。換言すると、加圧板22は、クラッチセンタ20に対し、回転方向R1とは逆向きの回転方向R2に相対回転する。これにより、プレッシャー側カム部66のバックトルク傾斜面66bがセンタ側カム部64のバックトルク傾斜面64bに当接し、プレッシャー側カム部66のバックトルク傾斜面66bとセンタ側カム部64のバックトルク傾斜面64bとを含んで構成されるバックトルクカム70が作動状態となり、カムの作用により、加圧板22は、クラッチセンタ20から離間するようにクラッチ切断方向へ軸方向に移動する。このように、クラッチセンタ20と加圧板22との相対回転の回転差をクラッチ切断方向の移動に変換できるため、例えば、自動二輪車の減速時に後輪側からクラッチセンタ20を経て入力部材28側に伝達されるバックトルクを自動的に低減させることができる。
さて、上記構成のクラッチ装置10において、クラッチ板24つまり摩擦板24aとクラッチ板24bへ給油をより効果的に行うように、更なる給油構造SOが適用されている。
給油構造SOは、オイル通路部80を備える。図7の円部VIIの拡大図に示すように、オイル通路部80は、加圧板22のクラッチスプリング収容部である筒状部52に形成されている。図1のクラッチ装置10において、オイル通路部80は概ね径方向に延びるように設けられている。オイル通路部80は、加圧板22の筒状部52の壁部52wに貫通孔として形成されていて、筒状部52の収容空間52sに開くとともに、筒状部52の経方向外側に開く。つまり、オイル通路部80は、筒状部52の収容空間52sを区画形成する収容空間形成面52fと筒状部52の収容空間52sよりも経方向外側において周方向に延びる外側面52oとのそれぞれに開く。オイル通路部80は、周方向において筒状部52の中心部から所定量、クラッチ装置10の回転遅れ方向つまり回転方向R2側にオフセットされた位置に、筒状部52の収容空間52sから、アウタ円筒部32とセンタ円筒部40とによりそれらの間に区画形成される環状空間CS側に向けて延びる。筒状部52の中心部は、クラッチ装置10の軸線を含み筒状部52を、ここでは特に収容空間52sを、略二等分するように定められる面上に位置する部分である。図6に示すように、筒状部52の中心部の一例である線CL1と、この筒状部52に関係づけられたオイル通路部80の中心を通る線CL2とは、周方向距離つまりオフセット量OFSだけずれている。このオフセット量は、クラッチ装置10の所望の作動領域において遠心力で、収容空間52sのオイルが環状空間CS側に好適に径方向外側に抜けるように実験により定められるとよい。これにより、加圧板22の筒状部52内のオイルを好適に環状空間側に送ることを可能にし、摩擦板24a及びクラッチ板24bにオイルを従来よりも供給することが可能になる。なお、ここでは、オイル通路部80は、図7において軸線10Aから径方向に延びる線RLに沿って延びるように区画形成されているが、これに限定されない。
また、上述のように、加圧板22における筒状部52の収容空間52sは、加圧板22の周方向に伸びた形状に、特に長孔状に形成されている。収容空間52sが周方向に長い長孔状に形成されることで、図7に示すように、オイル通路部80は収容空間52sの径方向で最も外側又はそれに非常に近い位置において収容空間52sに開くことになる。これは、収容空間52sが軸方向に直交する断面での断面形状として正円を有する場合に比べて、オイル通路部80が収容空間52sにおける径方向でより外側の位置で収容空間52sつまり貫通孔52bに開くことを意味する。したがって、遠心力によりオイルがクラッチスプリング収容部である筒状部52において回転遅れ方向側に集まりやすいところ、収容空間52sは加圧板22の周方向に長い長孔状に形成されているので、オフセットされた位置に位置づけられたオイル通路部80又はその付近にオイルをより好適に集めることが可能になる。よって、そのオイル通路部80を介したオイルの径方向外側への流れをより好ましいものとすることが可能になる。
更に、加圧板22における筒状部52の径方向内側の筒状ボス部55の位置に内側通路部82が形成されている。内側通路部82は、筒状ボス部55の貫通孔55aと筒状部52の収容空間52sとのそれぞれに開く。ここでは、内側通路部82は、加工性の点から、加圧板22の表面に設けられた溝部である。内側通路部82は、貫通孔であってもよい。なお、内側通路部82は、オイル通路部80の径方向内側において径方向に延びている。
更に、クラッチセンタ20のセンタ円筒部40には、オイル通路部80に対応する位置に給油孔84が設けられている。図1及び図4に示すように、給油孔84は概ね径方向に延びるように設けられている。給油孔84は、オイル通路部80の径方向外側に設けられている。ここでは給油孔84はオイル通路部80の径方向外側に位置するように設けられているが、オイル通路部80の径方向外側であって、オイル通路部80のクラッチ装置10の回転遅れ方向つまり回転方向R2側に所定量オフセットされた位置に設けられてもよい。
したがって、まず、加圧板22の筒状ボス部55の内側のオイルは内側通路部82を介して筒状部52に導かれる。そして、筒状部52のオイルはオイル通路部80を通過し、さらに給油孔84を介して環状空間CSに導かれる。
なお、オイル通路部80及び給油孔84は、それぞれ軸方向に延びる長孔である。これは、第1に、クラッチ装置の断接に伴うクラッチインナ20と加圧板22との相対的な軸方向の変位に対して柔軟に対応するためである。また、このようにそれらを長孔とすることで、上記カム機構62によりクラッチインナ20と加圧板22との相対回転の回転差がクラッチ装置10の軸方向の移動に変換されるので、このときのクラッチインナ20と加圧板22との位置変化にも対応することができる。
更に、加圧板22における筒状部52の径方向内側の筒状ボス部50aにオイルを好適に供給するように、ピン部材60の円筒状の主軸部60cの外面には、軸方向に延びる凹溝部86が形成されている。ここで、図12に、ピン部材60の基端部60a側の部分を示す。また、図13に図12のXIII-XIII線に沿ったピン部材60の断面図を示す。
ピン部材60において、凹溝部86は、基端部60aの端面に開き、フランジ部60dの基端部60a側で終わる。この凹溝部86は、図1のクラッチ接続状態において、そのフランジ部60d側の端部がメイン軸14の軸孔14hからわずかに外側に延びるように形成されている。したがって、メイン軸14の軸孔14hを流れるオイルは、クラッチセンタ20と加圧板22との間の空間BSに、つまり、筒状ボス部55の径方向内側に噴き出ることになる。
こうしてクラッチセンタ20と加圧板22との間の空間BSに噴き出たオイルを、加圧板22の筒状ボス部55の内側通路部82から径方向外側に導くように、内側通路部82の径方向内側の筒状ボス部55の部分は、径方向外側に膨らむ膨らみ部90を構成するように設計されている。つまり、膨らみ部90の径方向外側に該膨らみ部90から延びる内側通路部82が位置付けられている。具体的には、筒状ボス部55の内周面55iに、その膨らみ部90が設けられている。したがって、筒状ボス部55の貫通孔55aの軸方向に直交する断面は正円ではない。図7の円部VIIの拡大図に示すように、筒状ボス部55の貫通孔55aつまりそれを区画形成する内周面55iを正円と仮定した場合のそれを破線で示し、それに符号「55ai」を付す。図6及び図7に示すように、膨らみ部90は、抜き勾配等によって内側通路部82側が径方向に広がる様に傾斜していて、筒状ボス部55の貫通孔55aを区画形成する内周面55iにおいて軸方向の一端から他端側にまで延びるように設けられていて、ここではベアリング保持部55hの近傍まで延びる。しかし、膨らみ部90は、筒状ボス部55の内周面55iにおいて軸方向の一部分のみに設けられてもよい。
更に、遠心力で径方向外側に導かれるオイルをより好適に環状空間CSに導くように、ここでは、図14に示すように、クラッチセンタ20に形成されたカム孔72を覆うオイル堰91が設けられている。オイル堰91は、堰き止め部材であり、ここでは板状の部材であり、カム孔72に接合される。オイル堰91は、遠心力によりオイルが向かいやすいカム孔72の径方向外側の部分つまりカム孔72の一部のみを塞ぐように設けられている。しかし、これはオイル堰91がカム孔72の全体を塞ぐように設計されることを排除するものではない。なお、このようなオイル堰は、プレッシャー側カム部66において、アシスト傾斜面66aとバックトルク傾斜面66bとにより部分的に区画形成される貫通孔92(例えば図10参照)に対して、その全部又は一部を塞ぐように適用されてもよい。
クラッチスプリング26が収容される筒状部52とは周方向に並ぶカム機構62を流れるオイルは、オイル堰91により流出がせき止められて径方向外側に流れて、上記のように筒状部52から径方向外側に流れるオイルとともに、環状空間CSに供給されるとよい。なお、オイル堰91により径方向外側に指向されるオイルを、そのまま環状空間CSに導くように、カム機構62のカム孔72の径方向外側に位置するクラッチセンタ20のセンタ円筒部40の部分には、油路94が複数形成されるとよい。ただし、油路94はたった1つのみ設けられてもよい。
以上述べたように、上記構成を有するクラッチ装置10の給油構造SOでは、オイル通路部80、内側通路部82、給油孔84、凹溝部86及び膨らみ部90が形成されている。これにより、図15に模式的に示すように、ピン部材60の凹溝部86から空間BSに流れ出たオイルは、加圧板22の膨らみ部90に溜まり、内側通路部82を介して筒状部52の内部に入り、オイル通路部80及び給油孔84を介して環状空間CSに流れることができる。これにより、環状空間CSの中でも、筒状部52の径方向外側の箇所に直接的にオイルを供給することができ、よってその位置にある摩擦板24a及びクラッチ板24bの部分にオイルをより好適に供給することができる。
特に、オイル通路部80は、筒状部52に対して遅れ方向にオフセットされた位置に設けられているので、筒状部52内に滞留するオイルをより好適に筒状部52内から径方向外側に流すことができる。よって、クラッチ装置10内のオイルを、つまりカム機構62辺りを流れるオイルのみならず、筒状部52周囲を流れるオイルをも、より好適に径方向外側に導き、摩擦板24a及びクラッチ板24bに供給することが可能になる。
更に、加圧板22における筒状部52の収容空間52sは、加圧板22の周方向に伸びた形状に、ここでは周方向に長い長孔状に形成されている。遠心力によりオイルがクラッチスプリング収容部である筒状部52において回転遅れ方向側に集まりやすいところ、収容空間52sは加圧板22の周方向に長い長孔状に形成されるので、オフセットされた位置に位置づけられたオイル通路部80又はその付近にオイルをより好適に集めることが可能になる。よって、そのオイル通路部80を介したオイルの流れをより好ましいものとすることが可能になる。
また、給油構造SOでは、上記オイル堰91が形成されている。これにより、図15で説明したように流れ得るオイルの量を多くしたり、カム機構62周囲から直接的に環状空間CSに流れるオイルの量を多くしたりすることが可能になる。
そして、上記したように、クラッチセンタ20のセンタ円筒部40の部分に油路94を1つ又は複数形成する場合には、図16に模式的に示すように、ピン部材60の凹溝部86から空間BSに流れ出たオイルは、センタ側カム部64と、プレッシャー側カム部66との間又はその周囲をオイル堰91により径方向外側に方向付けられつつ抜け、センタ円筒部40の油路94を介して、環状空間CSに流れることができる。これにより、環状空間CSの摩擦板24a及びクラッチ板24bにオイルをより好適に供給し続けることができる。
以上、本発明に係る実施形態及びその変形例について説明したが、本発明はそれらに限定されない。本願の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神及び範囲から逸脱しない限り、種々の置換、変更が可能である。
10…クラッチ装置、14…メイン軸(回転軸)、16…クランク軸、18…クラッチアウタ
20…クラッチセンタ、22…加圧板、24a…摩擦板、24b…クラッチ板
26…クラッチスプリング、28…入力部材、32…アウタ円筒部
34…円板部、38…ベース部、40…センタ円筒部、42…受圧部
44…クラッチセンタ側ボス部、46…ストッパプレート、50…板部
52…筒状部、55…筒状ボス部、60…ピン部材、62…カム機構
64…センタ側カム部、66…プレッシャー側カム部、68…アシストカム
70…バックトルクカム、72…貫通孔(カム孔)、80…オイル通路部、82…内側通路部
84…給油孔、86…凹溝部、90…膨らみ部、91…オイル堰、94…油路

Claims (9)

  1. 回転軸(14)に相対回転可能に軸支される円板部(34)と、該円板部(34)の外周縁から軸方向に延出するアウタ円筒部(32)とを備えるクラッチアウタ(18)と、
    前記回転軸(14)に相対回転を規制されて前記円板部(34)に対向するように配置されるベース部(38)と、前記クラッチアウタ(18)の前記アウタ円筒部(32)と同軸に前記ベース部(38)から軸方向に延出するセンタ円筒部(40)と、該センタ円筒部(40)の内側で前記ベース部(38)から前記円板部(34)とは反対側に延出するクラッチセンタ側ボス部(44)と、前記ベース部(38)の外周部から径方向外側に延出する受圧部(42)とを備えたクラッチセンタ(20)と、
    前記クラッチセンタ側ボス部(44)が挿通された状態でクラッチスプリング(26)を収容する収容空間(52s)を区画形成するクラッチスプリング収容部(52)と、前記アウタ円筒部(32)と前記センタ円筒部(40)との間の環状空間(CS)において交互に複数枚軸方向に重ねられた前記アウタ円筒部(32)に係合する摩擦板(24a)と前記センタ円筒部(40)に係合するクラッチ板(24b)とを前記受圧部(42)との間で挟む加圧部(54)とを備えた加圧板(22)と
    を備えたクラッチ装置(10)において、
    前記加圧板(22)の前記クラッチスプリング収容部(52)には、周方向において該クラッチスプリング収容部(52)の中心部から所定量回転遅れ方向にオフセットされた位置に、前記収容空間(52s)から前記環状空間(CS)側に向けて延びるオイル通路部(80)が形成されている
    ことを特徴とするクラッチ装置(10)。
  2. 前記クラッチセンタ(20)と前記加圧板(22)との相対回転の回転差を軸方向の移動に変換するカム機構(62)を更に備え、
    前記クラッチスプリング収容部(52)の前記収容空間(52s)は、前記加圧板(22)の周方向に伸びた形状に形成されている
    ことを特徴とする請求項1に記載のクラッチ装置(10)。
  3. 前記加圧板(22)における前記クラッチスプリング収容部(52)の径方向内側に筒状ボス部(55)が設けられていて、該筒状ボス部(55)における前記クラッチスプリング収容部(52)の径方向内側の位置に内側通路部(82)が形成されている
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載のクラッチ装置(10)。
  4. 前記内側通路部(82)は、前記加圧板(22)の表面に設けられた溝部である
    ことを特徴とする請求項3に記載のクラッチ装置(10)。
  5. 前記筒状ボス部(55)は該筒状ボス部(55)の内周面(55i)に径方向外側に膨らむ膨らみ部(90)を備え、該膨らみ部(90)の径方向外側に該膨らみ部(90)から延びる前記内側通路部(82)が位置付けられている
    ことを特徴とする請求項3又は4に記載のクラッチ装置(10)。
  6. 前記オイル通路部(80)は、前記軸方向に延びる長孔である
    ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のクラッチ装置(10)。
  7. 前記センタ円筒部(40)に、前記オイル通路部(80)に対応する位置に給油孔(84)が設けられている
    ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のクラッチ装置(10)。
  8. 前記給油孔(84)は、前記軸方向に延びる長孔である
    ことを特徴とする請求項7に記載のクラッチ装置(10)。
  9. 前記クラッチセンタ(20)と前記加圧板(22)との相対回転の回転差を軸方向の移動に変換するカム機構(62)を更に備え、
    前記カム機構(62)は、前記クラッチセンタ(20)を前記軸方向に貫通するカム孔(72)を備え、
    前記カム孔(72)にオイル堰(91)が設けられている
    ことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のクラッチ装置(10)。
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