JP2022131579A - 分析装置および分析方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】レーザの焦点調整のばらつきを抑制し、かつ、焦点調整を自動化することができる分析装置および分析方法を提供する。【解決手段】本実施形態による分析装置は、分析対象である分析試料および焦点を調整するために用いられる第1調整試料を搭載可能なステージを備える。レーザ生成部は、分析試料または第1調整試料に照射して該試料を気化するためのレーザ光を生成する。検出部は、レーザ光の照射によって気化された分析試料または第1調整試料の元素の信号強度を検出する。コントローラは、第1調整試料の信号強度に基づいて第1調整試料の表面位置に対するレーザ光の焦点位置を判断し、分析試料の表面にレーザ光の焦点位置を適合させるように制御する。【選択図】図1

Description

本実施形態は、分析装置および分析方法に関する。
LA-ICP-MS(Laser Ablation-Inductively Coupled Plasma-Mass Spectrometer) 装置は、レーザアブレーション装置においてレーザ光の照射により試料を気化させ、この気化された試料をICP-MS装置に導入し、試料に含まれるメタル元素の定量分析を行う。
一方、メモリセルを三次元配置した立体型メモリセルアレイは、複数の異種材料を積層した積層構造を有する。このような積層構造には、高アスペクト比を有するメモリホールが形成される。メモリの性能を向上させるためには、メモリホールを介してメタル元素を積層構造に成膜したりあるいは残留メタル元素を除去したりする必要がある。このとき、積層構造に含有されるメタル元素の濃度管理が重要であり、定量分析するためにLA-ICP-MS装置が用いられる場合がある。
このような積層構造の深さ方向における高精度な定量分析を実行するためには、アブレーションの深さ方向の制御が重要となる。アブレーションの深さは、レーザの焦点位置に強く依存するため、アブレーション前またはアブレーション中のレーザの焦点調整が重要となる。しかし、レーザの焦点調整の作業は、オペレータによる手作業によって行われており、測定ごとに焦点調整のばらつきがあった。この場合、積層構造の深さ方向の形状を正確に把握できず、積層構造に含有するメタル元素の正確なプロファイルを得ることが困難であった。
特開平9-133617号公報 特開平11-201944号公報 特開平11-051094号公報 特開2004-347473号公報
レーザの焦点調整のばらつきを抑制し、かつ、焦点調整を自動化することができる分析装置および分析方法を提供する。
本実施形態による分析装置は、分析対象である分析試料および焦点を調整するために用いられる第1調整試料を搭載可能なステージを備える。レーザ生成部は、分析試料または第1調整試料に照射して該試料を気化するためのレーザ光を生成する。検出部は、レーザ光の照射によって気化された分析試料または第1調整試料の元素の信号強度を検出する。コントローラは、第1調整試料の信号強度に基づいて第1調整試料の表面位置に対するレーザ光の焦点位置を判断し、分析試料の表面にレーザ光の焦点位置を適合させるように制御する。
本実施形態によるLA-ICP-MS装置の構成例を示す図。 試料部の構成例を示す断面図。 レーザ生成部の出力とアブレーションレートとの関係を示すグラフ。 1回目の走査の様子を示す概念図。 2回目の走査の様子を示す概念図。 アブレーションレートとICP-MS測定によって得られる信号強度との関係を示すグラフ。 ICP-MS測定によって得られる信号強度とレーザ光の焦点位置との関係を示すグラフ。 本実施形態によるレーザアブレーションを示すフロー図。 調整試料を用いたレーザ光の焦点位置の調整手法を示す概念図。 調整試料を用いたレーザ光の焦点位置の調整手法を示す概念図。 調整試料を用いたレーザ光の焦点位置の調整手法を示す概念図。 調整試料を用いたレーザ光の焦点位置の調整手法を示す概念図。 調整試料を用いたレーザ光の焦点位置の調整手法を示す概念図。 調整試料を用いたレーザ光の焦点位置の調整手法を示す概念図。 調整試料を用いたレーザ光の焦点位置の調整手法を示す概念図。 調整試料を用いたレーザ光の焦点位置の調整手法を示す概念図。 調整試料を用いたレーザ光の焦点位置の調整手法を示す概念図。 調整試料を用いたレーザ光の焦点位置の調整手法を示す概念図。 調整試料を用いたレーザ光の焦点位置の調整手法を示す概念図。 調整試料を用いたレーザ光の焦点位置の調整手法を示す概念図。 調整試料を用いたレーザ光の焦点位置の調整手法を示す概念図。 調整試料を用いたレーザ光の焦点位置の調整手法を示す概念図。 調整試料を用いたレーザ光の焦点位置の調整手法を示す概念図。 調整試料を用いたレーザ光の焦点位置の調整手法を示す概念図。 調整試料を用いたレーザ光の焦点位置の調整手法を示す概念図。 調整試料を用いたレーザ光の焦点位置の調整手法を示す概念図。 調整試料の本体と金属薄膜の信号強度を示すグラフ。 調整試料の本体と金属薄膜の信号強度を示すグラフ。
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。明細書と図面において、既出の図面に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本実施形態によるLA-ICP-MS装置の構成例を示す図である。図2は、試料部9の構成例を示す断面図である。
分析装置としてのLA-ICP-MS装置1は、LA(Laser Ablation)部2と、ICP-MS(Inductively Coupled Plasma-Mass Spectrometer)部3とを備えている。LA部2は、試料部9にレーザ光Lを照射してレーザアブレーションを行う。ICP-MS部3は、LA部2で気化された試料をプラズマでイオン化して試料に含まれる元素の定量分析を行う。尚、図1において、レーザ光Lは破線矢印で示し、データや制御信号の流れは実線矢印で示している。
LA部2は、試料室4と、レーザ生成部5と、膜厚測定装置6と、コントローラ7と、ミラー10,11,14,18と、波長変換素子12,13と、レンズ17とを備えている。試料室4 内には分析対象の試料部9を搭載可能なステージ8が備えられている。
試料部9は、図2に示すように、分析試料9aと、調整試料9b_1~9b_3と、支持部材9cとを備えている。分析試料9aは、質量分析の対象となる試料であり、例えば、シリコンを主成分とする。調整試料9b_1~9b_3は、レーザ光Lの焦点位置を調整するために用いられる試料である。調整試料9b_1~9b_3は、分析試料9aの主成分と同じ材料からなり、例えば、シリコン単結晶で構成されている。例えば、調整試料9b_1~9b_3は、所定の大きさに成形された本体(例えば、シリコン単結晶)91と、その表面を被覆する金属薄膜(例えば、ニッケル)92とを備えている。金属薄膜は、焦点位置Hfの調整に用いられるシリコン単結晶に比較して無視できるほど薄く、プラズマ温度等のICP-MS装置1のコンディションの異常を検出するために用いられる。金属薄膜には、例えば、ニッケル(Ni)、ナトリウム(Na)、鉄(Fe)、タングステン(W)等のイオン化ポテンシャルの低い金属材料が用いられる。
調整試料9b_1~9b_3は、ほぼ同一の大きさを有し、互いに表面位置(Z方向の位置)が異なるように支持部材9cに搭載されている。支持部材9cは、数~数十平方センチメートルの平面領域における深さ加工精度が0.1μm以下とすることが可能な材料(例えば、金属材料)で構成されている。支持部材9cには、分析試料9a、調整試料9b_1~9b_3を搭載し固定する凹部が設けられている。例えば、分析試料9aおよび調整試料9b_1は、支持部材9cの凹部に搭載されることによって、上面の高さがほぼ面一となる。調整試料9b_2は、支持部材9cの凹部に搭載されることによって、調整試料9b_1の上面よりも所定の深さ(厚み)の分だけ低くなっている。調整試料9b_3は、支持部材9cの凹部に搭載されることによって、調整試料9b_2の上面よりも所定の深さ(厚み)の分だけ低くなっている。所定の深さ(厚み)は、レーザ光Lの所定回数の照射によってアブレートされる分析試料9aの深さ(厚み)にほぼ等しくなるように設定される。ステージ8は、支持部材9cを搭載し固定可能に構成されている。試料部9に設けられる調整試料9b_1~9b_3は、3つに限定せず、2つ以下または4つ以上であってもよい。尚、分析試料9aおよび調整試料9b_1~9b_3を用いたレーザ光Lの焦点調整手法は後で説明する。
レーザ生成部としてのレーザ生成部5は、分析試料9a、調整試料9b_1~9b_3のいずれか(以下、試料9a等ともいう)に照射して試料9a等を気化するためのレーザ光を生成する。レーザ生成部5は、例えば、波長1064nmのレーザ光を生成するNd-YAGレーザを光源として搭載してもよい。LA部2において、レーザ生成部5から所定の波長(例えば、波長1064nm)で生成されたレーザ光は、ミラー10,11で反射され、波長変換素子12へ入射する。
波長変換素子12は、レーザ光の波長を532nm(2次高調波)に変換する。その後、波長変換素子13は、レーザ光の波長を532nmから266nm(3次高調波)に変換する。レーザ光を短波長とすることにより、レーザ光のエネルギを高め、より多くの物質に対してアブレーションを行うことが可能となる。
このように、レーザ光の波長は、波長変換素子12で半減され、さらに波長変換素子13で半減された後、ミラー14、レンズ17、ミラー18を介して試料室4内の試料9a等へ照射される。レーザ光は、試料9a等に照射されて試料9a等をアブレーション(即ち、気化)する。
試料室4には、導入管19および導出管20が配管接続されている。導入管19は、アルゴンガス等のキャリアガスを試料室4内に導入する。導出管20の一端は、試料室4に接続され、他端はICP-MS部3に接続されている。導出管20は、レーザ光によって気化された試料9a等をキャリアガスとともに試料室4から導出し、ICP-MS部3へ搬送する。即ち、レーザ光の照射によって気化された試料9a等は、導入管19によって試料室4内へ導入されたキャリアガスとともに、導出管20を介してICP-MS部3へ搬送される。
検出部および演算部としてのICP-MS部3は、プラズマトーチ21と、質量分析部24とを備え、試料9a等に含まれる分析対象の材料(元素)の含有量を特定するために、試料室4からのガスを定量分析する。プラズマトーチ21は、導出管20からキャリアガスとともに導入された試料部9をプラズマでイオン化する。質量分析部24は、イオン化されたガスから試料9a等の物質のイオンのみを取り出して、気化された試料9a等の元素の信号強度(スペクトル)を検出するように構成されている。質量分析部24は、試料9a等の物質のイオンを検出する検出部、並びに、イオンの検出結果に基づく定量分析を行う。また、質量分析部24は、定量分析によって得られた結果データに基づいて演算を実行する演算部25を含む。演算部25には、例えば、コンピュータ等を用いればよい。また、本実施形態においてICP-MS部3が用いられているが、ICP-MS部3に代えて、ICP-OES(ICP-Optical Emission Spectrometer)を用いてもよい。この場合、ICP-OES部は、気化された試料9a等から得られる光波長(スペクトル)に基づいて対象元素の含有量を特定する。対象元素は、例えば、シリコン、メタル等の元素である。
膜厚測定装置6は、レーザ光Lの照射位置における試料9a等の厚みを測定する。膜厚測定装置6は、ステージ8に埋め込まれており、ステージ8に対向する試料9a等の面に向かって設けられている。即ち、膜厚測定装置6は、試料9a等の裏面から試料9a等の膜厚を測定する。膜厚測定装置6は、例えば、超音波式測定器、分光干渉式測定器または電磁誘導式測定器のいずれでもよい。膜厚測定装置6は、試料9a等の膜厚を非破壊で測定可能な装置であれば、特に限定しない。また、本実施形態において、膜厚測定装置6は、試料9a等の裏面から膜厚を測定している。しかし、後述する変形例のように、膜厚測定装置6は、レーザ光Lと干渉しない限りにおいて、試料9a等の表面から試料9a等の膜厚を測定してもよい。
コントローラ7は、膜厚測定装置6からの試料9a等の厚みの測定値または定量分析の結果に基づいて、レーザ生成部5からのレーザ光Lの照射条件を制御する。照射条件は、例えば、レーザ光Lの強度、照射時間、照射回数(パルス数)、照射面積、レーザ光Lの焦点位置等である。例えば、レーザ光Lによる試料9a等の気化速度(以下、アブレーションレートともいう)を略一定にする場合、コントローラ7は、試料9a等の厚みの変化が略一定となるようにレーザ光Lの照射条件を制御する。例えば、アブレーションレートが低すぎる場合には、コントローラ7は、レーザ光Lの強度、照射時間、照射回数(パルス数)、照射面積を増大させる。アブレーションレートが高すぎる場合には、コントローラ7は、レーザ光Lの強度、照射時間、照射回数(パルス数)、照射面積を低下させる。
一方、アブレーションレートは、試料部9の気化される表面位置(高さ:Z方向の位置)に対するレーザ光Lの焦点位置(高さ:Z方向の位置)にも依存する。レーザ光Lの焦点位置が試料9a等の表面位置にほぼ一致している場合には、アブレーションレートは大きくなり、かつ、安定する。しかし、レーザ光Lの焦点位置が試料9a等の表面位置から大きくずれている場合には、アブレーションレートは小さくなり、不安定になる。従って、コントローラ7は、アブレーションレートを安定化させるために、アブレーションを所定回数実行するごとに、アブレートされた試料9a等の深さに基づいて、試料部9の表面に対するレーザ光Lの焦点位置を調整する。試料9a等の表面に対するレーザ光Lの焦点位置を制御するために、コントローラ7は、レーザ生成部5を制御してレーザ光Lの焦点のZ方向の位置(高さ)を制御してもよく、あるいは、ステージ8のZ方向の位置(高さ)を制御してもよい。尚、Z方向は、試料9a等に対してレーザ光Lを照射する方向である。
コントローラ7は、例えば、パーソナルコンピュータで構成してもよく、あるいは、CPU等の半導体チップで構成してもよい。コントローラ7は、LA部2に含まれていてもよいが、LA部2とは別体に設けられていてもよい。さらに、コントローラ7は、ICP-MS部3に設けられていてもよい。
レーザ光Lにより試料9aを走査するための焦点Fの調整を、オペレータによる手作業で行う場合、オペレータのスキルに応じて、レーザ光Lの焦点Fの位置がばらつくおそれがある。また、分析の過程で、試料9aの表面がアブレーションによって削られると、レーザ光Lの焦点Fの位置が、試料9aの表面からずれる場合がある。例えば、図3Aは、レーザ生成部5の出力W5とアブレーションレートRabとの関係を示すグラフである。縦軸は、アブレーションレートRabを示し、横軸は、レーザ生成部5の出力W5を示す。アブレーションレートRabは、レーザ光Lを所定回数照射したときにアブレートされる材料(例えば、シリコン単結晶)の深さ(厚み)である。また、ラインL1、L2は、それぞれレーザ光Lによる1回目の走査と2回目の走査に対応している。LA-ICP-MS装置1およびその他の条件は同じである。
ラインL1、L2に示すように、同一の出力W5に対して、アブレーションレートRabは異なっている。このラインL1、L2におけるアブレーションレートRabの差は、1回目の走査における試料9aの表面位置と2回目の走査における試料9aの表面位置が若干ずれるために生じる。例えば、図3Bは、1回目の走査の様子を示す概念図である。図3Cは、2回目の走査の様子を示す概念図である。図3Bに示すように、1回目の走査によって試料9aの表面をレーザ光Lで複数回照射する場合、それにより、試料9aの表面が削られる。その結果、図3Cに示すように、2回目の走査では、1回目の走査と比べて、試料9aの表面とレーザ光Lの焦点Fとの相対位置が異なっている。これにより、アブレーションレートRabが相違してしまう。
図4は、アブレーションレートRabとICP-MS測定によって得られる信号強度Isとの関係を示すグラフである。縦軸は、例えば、ICP-MS測定で検出されたシリコンの信号強度Isを示す。横軸は、シリコンのアブレーションレートRabを示す。このグラフから、アブレーションレートRabと信号強度Isとは、相関関係にあり、ほぼ比例している。即ち、アブレーションレートRabは、信号強度Isを用いて判断可能であることが分かる。
図5は、ICP-MS測定によって得られる信号強度Isとレーザ光Lの焦点位置Hfとの関係を示すグラフである。縦軸は、例えば、ICP-MS測定で検出されたシリコンの信号強度Isを示す。横軸は、試料9a等のシリコンの表面位置に対するレーザ光Lの焦点の相対位置Hfを示す。以下、試料9a等の表面位置に対するレーザ光Lの焦点の相対位置は、単に、焦点位置Hfとも呼ぶ。信号強度Is(即ち、アブレーションレートRab)は、焦点位置Hfに依存して変動し、或る焦点位置Hfの範囲においてピーク領域P1を有する。信号強度Isのピーク領域P1は、焦点位置Hfが試料9a等の表面位置とほぼ一致(適合)した状態を示している。ピーク領域P1は、信号強度Isの最大値(ピーク点)を含む或る範囲の信号強度Isを示す。ここで、適合とは、レーザ光Lの焦点位置Hfと試料9a等の表面位置とが完全一致することだけでなく、試料9a等の表面位置が焦点位置Hfの或る範囲に含まれることを意味する。
信号強度Isのピーク領域P1から外れた領域において、信号強度Isは比較的大きな傾きで変動する。即ち、焦点位置Hfのばらつきによって、信号強度Isの変動は比較的大きい。一方、信号強度Isの傾きは、ピーク領域P1の前後において変局しており、ピーク領域P1内において、信号強度Isは、それ以外の領域と比較して安定している。従って、ピーク領域P1内では、焦点位置Hfのばらつきによって、信号強度Isの変動は比較的小さい。よって、信号強度Isがピーク領域P1内に入るように焦点位置Hfを調整することによって、焦点位置Hfのばらつきによる信号強度Isの変動を比較的小さく抑えることができる。
このような信号強度Isと焦点位置Hfとの関係を利用して、本実施形態によるICP-MS装置1は、以下のように焦点位置Hfを分析試料9aに適合させレーザアブレーションを実行する。
図6は、本実施形態によるレーザアブレーションを示すフロー図である。以下、試料9a等の主成分がシリコンであり、調整試料9b_1の金属薄膜がニッケルであるとして説明を進める。
まず、分析試料9aおよび調整試料9b_1~9b_3を有する試料部9をステージ8上に設置する(S10)。
次に、レーザ光Lの焦点位置Hfを変更しながら、調整試料9b_1(k=1)のアブレーションおよび信号強度の測定を実行する(S20)。図7A~図7Fは、調整試料9b_1を用いたレーザ光Lの焦点位置Hfの調整手法を示す概念図である。図7A~図7Fに示すように、レーザ光Lの焦点Fと調整試料9b_1の表面とのZ方向における相対位置を変更しながら、調整試料9b_1のアブレーションを実行する。
例えば、図7Aに示す焦点Fの位置において、コントローラ7は、レーザ光Lを調整試料9b_1の表面で走査させる。これとともに、ICP-MS部3が、調整試料9b_1からアブレートされた元素の信号強度を測定する。調整試料9b_1の金属薄膜(例えば、ニッケル)は、上述の通り、非常に薄い。従って、装置1のコンディションが正常であれば、焦点Fの位置が調整試料9b_1の表面位置から或る程度ずれていても短時間でアブレートされる。一方、金属薄膜の下の試料材料(例えば、シリコン)は、焦点Fが調整試料9b_1の表面位置からずれると、信号強度(アブレーションレート)に影響する。図7Aに示すように、焦点Fが調整試料9b_1の表面位置H9b_1から大きくずれている場合、調整試料9b_1のシリコンの信号強度は非常に低くなる。図5の信号強度Isのピーク領域P1の最大値に対するニッケルおよびシリコンの信号強度の比率(以下、信号強度比率ともいう)は、それぞれ約1および約0となる。即ち、この場合、ニッケルのアブレーションレートは最大値にほぼ等しい一方、シリコンのアブレーションレートはほぼ0である。
次に、ステージ8の高さ(Z方向の位置)を変更し、調整試料9b_1の表面位置H9b_1に対するレーザ光Lの焦点の相対位置を変更する。図7Bに示す焦点Fの位置において、コントローラ7は、レーザ光Lを調整試料9b_1の表面で走査させる。このとき、コントローラ7は、レーザ光Lを図7Aの走査位置からXまたはY方向にずらし、まだレーザ光Lを走査させていない調整試料9b_1の表面領域を走査させる。これにより、装置1は、焦点Fの相対位置を変更しつつ図7Aのときと同じコンディションのもと、調整試料9b_1のニッケルおよびシリコンを再度アブレートする。図7Bに示すように、焦点Fが調整試料9b_1の表面位置H9b_1に近づいているものの、依然としてずれている。この場合、調整試料9b_1のシリコンの信号強度は或る程度大きくなるものの、依然として低い。ニッケルおよびシリコンの信号強度比率は、それぞれ約1および約0.4となる。
次に、ステージ8の高さ(Z方向の位置)を変更し、調整試料9b_1の表面位置H9b_1に対するレーザ光Lの焦点の相対位置をさらに変更する。図7Cに示す焦点Fの位置において、コントローラ7は、レーザ光Lを調整試料9b_1の表面で走査させる。このとき、コントローラ7は、レーザ光Lを図7Aおよび図7Bの走査位置からXまたはY方向にずらし、まだレーザ光Lを走査させていない調整試料9b_1の表面領域を走査させる。これにより、装置1は、焦点Fの相対位置を変更しつつ図7Aおよび図7Bのときと同じコンディションのもと、調整試料9b_1のニッケルおよびシリコンを再度アブレートする。図7Cに示すように、焦点Fが調整試料9b_1の表面位置H9b_1に入ると、調整試料9b_1のシリコンの信号強度は大きくなる。ニッケルおよびシリコンの信号強度比率は、それぞれ約1および約0.8となる。
次に、ステージ8の高さ(Z方向の位置)を変更し、調整試料9b_1の表面位置H9b_1に対するレーザ光Lの焦点の相対位置をさらに変更する。図7Dに示す焦点Fの位置において、コントローラ7は、レーザ光Lを調整試料9b_1の表面で走査させる。このとき、コントローラ7は、レーザ光Lを図7A~図7Cの走査位置からXまたはY方向にずらし、まだレーザ光Lを走査させていない調整試料9b_1の表面領域を走査させる。これにより、装置1は、焦点Fの相対位置を変更しつつ図7A~図7Cのときと同じコンディションのもと、調整試料9b_1のニッケルおよびシリコンを再度アブレートする。図7Dに示すように、焦点Fの中心が調整試料9b_1の表面位置H9b_1にほぼ一致すると、調整試料9b_1のシリコンの信号強度は、ほぼ最大値になる。ニッケルおよびシリコンの信号強度比率は、それぞれ約1および約1となる。即ち、この場合、ニッケルおよびシリコンのアブレーションレートはともにほぼ最大値となる。
次に、ステージ8の高さ(Z方向の位置)を変更し、調整試料9b_1の表面位置H9b_1に対するレーザ光Lの焦点の相対位置をさらに変更する。図7Eに示す焦点Fの位置において、コントローラ7は、レーザ光Lを調整試料9b_1の表面で走査させる。このとき、コントローラ7は、レーザ光Lを図7A~図7Dの走査位置からXまたはY方向にずらし、まだレーザ光Lを走査させていない調整試料9b_1の表面領域を走査させる。これにより、装置1は、焦点Fの相対位置を変更しつつ図7A~図7Dのときと同じコンディションのもと、調整試料9b_1のニッケルおよびシリコンを再度アブレートする。図7Eに示すように、調整試料9b_1の表面位置H9b_1は焦点Fの範囲にまだ入っているものの、焦点Fの中心が調整試料9b_1の表面位置H9b_1からずれていくと、調整試料9b_1のシリコンの信号強度は最大値からまた低下していく。ニッケルおよびシリコンの信号強度比率は、それぞれ約1および約0.8となる。
次に、ステージ8の高さ(Z方向の位置)を変更し、調整試料9b_1の表面位置H9b_1に対するレーザ光Lの焦点の相対位置をさらに変更する。図7Fに示す焦点Fの位置において、コントローラ7は、レーザ光Lを調整試料9b_1の表面で走査させる。このとき、コントローラ7は、レーザ光Lを図7A~図7Eの走査位置からXまたはY方向にずらし、まだレーザ光Lを走査させていない調整試料9b_1の表面領域を走査させる。これにより、装置1は、焦点Fの相対位置を変更しつつ図7A~図7Eのときと同じコンディションのもと、調整試料9b_1のニッケルおよびシリコンを再度アブレートする。図7Fに示すように、焦点Fが調整試料9b_1の表面位置H9b_1から大きくずれると、調整試料9b_1のシリコンの信号強度はさらに低下する。ニッケルおよびシリコンの信号強度比率は、それぞれ約1および約0.6となる。
ここで、シリコンの信号強度比率の閾値を0.8とする。即ち、シリコンの信号強度の閾値を信号強度の最大値×0.8とする。この場合、シリコンの信号強度比率が0.8以上であるときに、演算部25は、調整試料9b_1の表面H9b_1がピーク領域P1に入っており、焦点Fが調整試料9b_1の表面位置H9b_1に適合している(ほぼ一致している)と判断する。換言すると、シリコンの信号強度が信号強度の最大値×0.8以上であるときに、演算部25は、調整試料9b_1の表面H9b_1がピーク領域P1に入っており、焦点Fが調整試料9b_1の表面位置H9b_1に適合している(ほぼ一致している)と判断する。調整試料9b_1の表面H9b_1がピーク領域P1に入っているとき、図5において、焦点位置Hfは、ピーク領域P1の範囲内にある。例えば、図7C、図7Dおよび図7Eの状態のときに、演算部25は、焦点Fが調整試料9b_1の表面位置H9b_1に適合していると判断し、図7Aおよび図7Fの状態のときに、焦点Fは調整試料9b_1の表面位置H9b_1に適合していないと判断する。これにより、信号強度Isが閾値以上である焦点位置Hfの範囲が判明する。
次に、コントローラ7は、分析試料9aの表面が焦点位置Hfの範囲に入るように、ステージ8のZ方向の高さを調節する(S30)。即ち、コントローラ7は、焦点位置Hfが図5のピーク領域P1内に入るように、ステージ8のZ方向の高さを調節する。このとき、分析試料9aの表面が調整試料9b_1の表面位置H9b_1とほぼ同じ高さ位置である場合、コントローラ7は、ステージ8の高さを変更することなく、X-Y面内でレーザ生成部5を分析試料9aへ平行移動させて、そのままの高さで分析試料9aのアブレーションを実行してよい。分析試料9aの表面が調整試料9b_1の表面位置H9b_1から所定値だけ異なる高さ位置にある場合、コントローラ7は、X-Y面内でレーザ生成部5を分析試料9aへ平行移動させ、ステージ8の高さを所定値だけ自動で変更して調整試料9b_1の表面位置H9b_1を焦点Fに適合させる。その後、装置1は、分析試料9aのアブレーションを実行する。これにより、装置1は、レーザ光Lの焦点位置Hfを分析試料9aの表面に自動で適合させた(ほぼ一致させた)状態で分析試料9aをアブレートすることができる。装置1は、分析試料9aをアブレートし、分析試料9aに含まれる元素の信号強度を測定する。そして、ICP-MS部3が分析試料9aの元素の信号強度に基づいて分析試料9aを分析する。
次に、装置1は、分析試料9aのアブレーションおよび信号強度の測定を所定回数繰り返す(S40)。アブレーションを繰り返すと、分析試料9aの表面が削られ、分析試料9aの表面の高さが少しずつ低くなる。このとき、アブレーションレート(例えば、レーザ光Lの1回の走査でアブレートされる分析試料9aの厚み)は、図4に示すように、ピーク領域P1の信号強度Isに対応するR1となる。アブレーションレートR1は、ピーク領域P1の信号強度Isに対応するので、比較的安定している。従って、焦点位置Hfは変更しないが、アブレーションは、レーザ光Lの焦点Fが分析試料9aの表面に適合した状態で実行され得る。また、アブレートされる分析試料9aの深さは、アブレーションの回数に依存し、予測可能である。
しかし、アブレーションの回数を所定回数よりもさらに増大させると、分析試料9aの表面位置がさらに深くなり(Z方向にさらに低下し)、レーザ光Lの焦点Fの位置が分析試料9aの表面から次第にずれてくる。この場合、上述の通り、アブレーションレートが変化しやすくなり、不安定となる。
そこで、本実施形態では、アブレーションを所定回数繰り返した後、次の調整試料9b_2(k=2)を用いて、レーザ光Lの焦点Fの位置が分析試料9aの表面に適合しているか否かを判断する(S50のYES、S60)。より詳細には、ステージ8の高さおよびレーザ光Lの焦点Fの高さを変更することなく、レーザ光Lで調整試料9b_2をアブレートし、シリコンの信号強度を測定する。このとき、ステップS20と同様に、演算部25は、シリコンの信号強度比率を演算する。尚、アブレーションを所定回数実行してアブレートされる分析試料9aの厚み(深さ)は、上述の通り予測可能である。従って、調整試料9b_2の表面位置H9b_2は、アブレーションを所定回数繰り返した後の分析試料9aの表面位置にほぼ一致させるように配置される。即ち、第1調整試料9b_1(即ち、分析試料9a)と第2調整試料9b_2との表面の高さの差は、レーザ光Lを分析試料9aに所定回数照射したときに気化される分析試料9aの厚み(H9b_1とH9b_2との差)にほぼ等しい。
調整試料9b_2をアブレートした結果、シリコンの信号強度比率が閾値(例えば、0.8)以上である場合、即ち、シリコンの信号強度が信号強度の最大値×0.8以上である場合、演算部25は、レーザ光Lの焦点Fが調整試料9b_2、即ち、分析試料9aの表面位置に依然として適合していると判断する(S50のYES)。この場合、ステージ8に対するレーザ光Lの焦点Fの高さ位置は変更せずに、装置1は、分析試料9aのアブレーションおよび信号強度の測定を継続する(S40)。
シリコンの信号強度比率が閾値(例えば、0.8)より小さい場合、即ち、シリコンの信号強度が信号強度の最大値×0.8未満である場合、演算部25は、レーザ光Lの焦点Fが調整試料9b_1の表面位置H9b_2、即ち、分析試料9aの表面位置に適合していないと判断する(S50のYES、S60のNO)。この場合、装置1は、調整試料9b_2(k=2)を用いて、レーザ光Lの焦点Fと調整試料9b_2の表面とのZ方向における相対位置を変更しながら、アブレーションおよび信号強度の測定を実行する(S20)。
図8A~図8Fは、調整試料9b_2を用いたレーザ光Lの焦点位置Fの調整手法を示す概念図である。調整試料9b_2を用いたアブレーションおよび信号強度の測定は、ステップS20と調整試料が異なるだけで、その手法は同様である。従って、ここでは、調整試料9b_2を用いたアブレーションおよび信号強度の測定の詳細な説明を省略する。
例えば、シリコンの信号強度比率の閾値を0.8とする。この場合、シリコンの信号強度比率が0.8以上であるときに、演算部25は、調整試料9b_2の表面H9b_2がピーク領域P1に入っており、焦点Fが調整試料9b_2の表面位置H9b_2に適合していると判断する。換言すると、シリコンの信号強度が信号強度の最大値×0.8以上であるときに、演算部25は、焦点Fが調整試料9b_2の表面位置H9b_2に適合していると判断する。例えば、図8C、図8Dおよび図8Eの状態のときに、演算部25は、焦点Fが調整試料9b_2の表面位置H9b_2に適合していると判断し、図8Aおよび図8Fの状態のときに、焦点Fは調整試料9b_2の表面位置H9b_2に適合していないと判断する。これにより、信号強度Isが閾値以上である焦点位置Hfの範囲が判明する。なお、閾値は0.8に限られず、例えば0.7や0.9であってもよい。また、演算部25は、例えば、シリコンの信号強度比率が閾値を超えた後、再び閾値未満になったときに、焦点Fが調整試料9b_2の表面位置H9b_2に適合していると判断してもよい。
次に、コントローラ7は、ステップS30~S50を再度実行する。このとき、ステップS30において、分析試料9aの表面が焦点位置Hfに入るようにステージ8の高さを調節し、ステップS40において、アブレーションを所定回数繰り返す。その後、ステップS50において、調整試料9b_3(k=3)を用いて、レーザ光Lの焦点Fの位置が分析試料9aの表面位置に適合しているか否かを判断する(S60)。ステップS60において、レーザ光Lの焦点Fが分析試料9aの表面位置に適合していると判断されると(、S50のYES、S60のYES)、ステージ8に対するレーザ光Lの焦点Fの高さ位置は変更せずに、装置1は、分析試料9aのアブレーションおよび信号強度の測定を継続する。
ステップS50において、レーザ光Lの焦点Fが分析試料9aの表面位置に適合していないと判断されると(S50のYES、S60のNO)、装置1は、調整試料9b_3(k=3)を用いて、レーザ光Lの焦点Fと調整試料9b_3の表面とのZ方向における相対位置を変更しながら、アブレーションおよび信号強度の測定を実行する(S20)。
図9A~図9Fは、調整試料9b_3を用いたレーザ光Lの焦点位置Hfの調整手法を示す概念図である。調整試料9b_3を用いたアブレーションおよび信号強度の測定は、ステップS20と調整試料が異なるだけで、その手法は同様である。従って、ここでは、調整試料9b_3を用いたアブレーションおよび信号強度の測定の詳細な説明を省略する。
例えば、シリコンの信号強度比率の閾値を0.8とする。この場合、シリコンの信号強度比率が0.8以上であるときに、演算部25は、調整試料9b_3の表面H9b_3がピーク領域P1に入っており、焦点Fが調整試料9b_3の表面位置H9b_3に適合している(ほぼ一致している)と判断する。換言すると、シリコンの信号強度が信号強度の最大値×0.8以上であるときに、演算部25は、焦点Fが調整試料9b_3の表面位置H9b_3に適合していると判断する。この場合、例えば、図9C、図9Dおよび図9Eの状態のときに、演算部25は、焦点Fが調整試料9b_3の表面位置H9b_3に適合していると判断し、図9Aおよび図9Fの状態のときに、焦点Fは調整試料9b_3の表面位置H9b_3に適合していないと判断する。これにより、信号強度Isが閾値以上である焦点位置Hfの範囲が判明する。
次に、コントローラ7は、ステップS30~S50を再度実行する。このとき、ステップS30において、分析試料9aの表面が焦点位置Hfに入るようにステージ8の高さを調節し、ステップS40において、アブレーションを所定回数繰り返す。
本実施形態では、調整試料9b_4以降の調整資料が設けられていないので、ステップS50においてNOとなり、処理は終了する。
尚、試料部9に搭載される調整試料の個数は任意でよい。装置1は、調整試料9b_kを用いて焦点Fの位置を調整した後、分析試料9aのアブレーションを所定回数実行するごとに、kをインクリメントして調整試料9b_kを用いて焦点Fが分析試料9aの表面位置に適合しているか否かを判断する。
調整試料9b_kが無くなった場合(S50のNO)には、アブレーションおよび信号強度の測定を終了する。
一般化すると、試料部9は、上面の高さが第(k-1)調整試料(kは2以上の整数)よりも低い第k調整試料を搭載する。第(k-1)調整試料を用いてレーザ光Lの焦点位置Hfを調整した後、分析試料9aにレーザ光Lを所定回数照射する。その後、コントローラ7は、第k調整試料の信号強度と該信号強度の最大値との比率が閾値(例えば、0.8)以上、あるいは、第k調整試料の信号強度が閾値(例えば、信号強度の最大値×0.8)以上であるか否かに基づいて、分析試料9aの表面位置とレーザ光Lの焦点位置とが適合しているか否かを判断する。
尚、第(k-1)調整試料9b_(k-1)と第k調整試料9b_kとの表面の高さの差は、第(k-1)調整試料9b_(k-1)の表面にレーザ光Lの焦点位置を適合させた後に、レーザ光Lを分析試料9aに所定回数照射したときに気化される該分析試料9aの厚み(H9b_(k-1)とH9b_kとの差)にほぼ等しく設定される。
第k調整試料の信号強度と該信号強度の最大値との比率が閾値以上、あるいは、第k調整試料の信号強度が閾値以上である場合、コントローラ7は、分析試料9aの表面位置とレーザ光Lの焦点位置とが適合していると判断し、そのまま分析試料9aのアブレーションを継続する。一方、該比率が閾値未満、あるいは、第k調整試料の信号強度が閾値未満である場合、コントローラ7は、分析試料9aの表面位置とレーザ光Lの焦点位置とが適合していないと判断する。この場合、第k調整試料を用いて、ステップS20以降を再度実行する。これにより、分析試料9aの表面位置とレーザ光Lの焦点位置とが再調整されて、分析試料9aの表面位置とレーザ光Lの焦点位置とを適合した状態で分析試料9aのアブレーションを実行することができる。
以上のように本実施形態によるICP-MS装置1は、分析試料9aだけでなく、調整試料9b_1~9b_3をステージ8上に搭載し、調整試料9b_1の信号強度に基づいてレーザ光Lの焦点位置Hfを判断する。調整試料9b_1のZ方向の表面位置は、分析試料9aのそれと同じかあるいは所定値の差とする。これにより、ICP-MS装置1は、分析試料9aの表面にレーザ光Lの焦点位置を正確にかつ自動で適合させて、分析試料9aのアブレーションおよび信号強度の測定を実行することができる。つまり、装置1は、信号強度の最大値(ピーク領域P1)を用いて分析試料9aをアブレートすることができる。その結果、分析試料9aの表面に対するレーザ光Lの焦点位置Hfのばらつきが抑制され得る。
また、本実施形態によれば、レーザ光Lを分析試料9aに所定回数照射するごとに、コントローラ7は、調整試料9b_2等を用いて、分析試料9aの表面位置とレーザ光Lの焦点位置Hfとが適合しているか否かを判断する。分析試料9aの表面位置とレーザ光Lの焦点位置Hfとが適合していない場合には、コントローラ7は、調整試料9b_2の信号強度を用いてレーザ光Lの焦点位置Hfを再度判断し、分析試料9aの表面に焦点位置Hfを適合させる。これにより、分析試料9aの表面位置がアブレーションによってZ方向に低下しても、分析試料9aの表面にレーザ光Lの焦点位置を周期的に適合させることができる。従って、分析試料9aの表面位置がZ方向に変化しても、分析試料9aのアブレーションレートを安定化することができる。
次に、装置1のコンディションとレーザ光Lの焦点位置Hfとの相違について説明する。
図10Aおよび図10Bは、調整試料9b_kの本体91と金属薄膜92の信号強度を示すグラフである。縦軸は、信号強度を示し、横軸は、レーザ光Lの焦点位置Hfを調整してからのアブレーション回数tを示している。アブレーション回数tは、アブレーション時間、あるいは、レーザ光Lの焦点位置Hfの判断回数であってもよい。
図10Aでは、本体91としてのシリコンの信号強度Isがアブレーション回数によって低下している。一方、金属薄膜92としてのニッケルの信号強度Isがアブレーション回数によって変化していない。
これは、アブレーションによって本体91が削られ、レーザ光Lの焦点位置Hfが本体91の表面位置から次第にずれていることを意味する。即ち、レーザ光Lの焦点位置Hfが本体91の表面位置からずれ、本体91の信号強度(アブレーションレート)が低下している。一方、金属薄膜(例えば、ニッケル)92は、上述の通り、非常に薄くかつアブレートされやすい。従って、レーザ光Lの焦点位置Hfが金属薄膜92の表面位置から或る程度ずれていてもすぐにアブレートされ、ほぼ等しい信号強度(アブレーションレート)が得られる。
このように、本体91の信号強度が変化し、金属薄膜92の信号強度が変化しない場合、レーザ光Lの焦点位置Hfが本体91の表面位置から次第にずれていると判断できる。
これに対し、図10Bでは、本体91としてのシリコンおよび金属薄膜92としてのニッケルの信号強度Isがともにアブレーション回数によって低下している。これは、レーザ光Lの焦点位置Hfが本体91の表面位置からずれているだけでなく、レーザ光Lの焦点位置Hf以外の装置1のコンディションが変化していることを示す。例えば、試料室4内のキャリアガス流量の変化、ICP-MS部3のプラズマ温度変化、レンズ系の汚れ、または、検出器劣化等が考えられる。このように、レーザ光Lの焦点位置Hfのずれと、焦点位置Hf以外の装置1のコンディションの変化とを区別することができる。
勿論、レーザ光Lの焦点位置Hfがニッケルをアブレートできないほどずれた場合には、ニッケルのアブレーションレートも維持できず低下する。しかし、レーザ光Lの焦点位置Hfの調整後、分析試料9aのアブレーションによって、焦点位置Hfがニッケルをアブレートできないほど分析試料9aが削られることは稀と考えられる。
このように、調整試料9b_kが本体91の表面に金属薄膜92を有することによって、ICP-MS装置1が正常に動作しているか否かの判断も行うことができる。
本実施形態による分析方法の少なくとも一部は、ハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。ソフトウェアで構成する場合には、分析方法の少なくとも一部の機能を実現するプログラムをフレキシブルディスクやCD-ROM等の記録媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。また、分析方法の少なくとも一部の機能を実現するプログラムを、インターネット等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布してもよい。さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布してもよい。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
1 LA-ICP-MS装置、2 LA部、3 ICP-MS、4 試料室、5 レーザ生成部、6 膜厚測定装置、7 コントローラ、8 ステージ、9 試料部、10,11,14,18 ミラー、12,13 波長変換素子、17 レンズ、19 導入管、20 導出管、25 演算部、9a 分析試料、9b_1~9b_3 調整試料、

Claims (7)

  1. 分析対象である分析試料および焦点を調整するために用いられる第1調整試料を搭載可能なステージと、
    前記分析試料または前記第1調整試料に照射して該試料を気化するためのレーザ光を生成するレーザ生成部と、
    前記レーザ光の照射によって気化された前記分析試料または前記第1調整試料の元素の信号強度を検出する検出部と、
    前記第1調整試料の前記信号強度に基づいて前記第1調整試料の表面位置に対する前記レーザ光の焦点位置を判断し、前記分析試料の表面に前記レーザ光の焦点位置を適合させるように制御するコントローラとを備える分析装置。
  2. 前記第1調整試料の前記信号強度と該信号強度の最大値との第1比率が閾値以上、あるいは、前記第1調整試料の前記信号強度が閾値以上である場合、前記コントローラは、前記第1調整試料の表面位置と前記レーザ光の焦点位置とが適合していると判断する、請求項1に記載の分析装置。
  3. 前記ステージは、焦点を調整するために用いられ上面の高さが前記第1調整試料よりも低い第2調整試料を搭載し、
    前記分析試料に前記レーザ光を所定回数照射した後に、前記コントローラは、前記第2調整試料の前記信号強度と該信号強度の最大値との第2比率が閾値以上、あるいは、前記第2調整試料の前記信号強度が閾値以上であるか否かに基づいて、前記分析試料の表面位置と前記レーザ光の焦点位置とが適合しているか否かを判断する、請求項2に記載の分析装置。
  4. 前記第2比率が閾値以上、あるいは、前記第2調整試料の前記信号強度が閾値以上である場合、前記コントローラは、前記分析試料の表面位置と前記レーザ光の焦点位置とが適合していると判断し、
    前記第2比率が閾値未満、あるいは、前記第2調整試料の前記信号強度が閾値未満である場合、前記コントローラは、前記分析試料の表面位置と前記レーザ光の焦点位置とが適合していないと判断する、請求項3に記載の分析装置。
  5. 前記ステージは、焦点を調整するために用いられ上面の高さが第(k-1)調整試料(kは3以上の整数)よりも低い第k調整試料を搭載し、
    前記分析試料に前記レーザ光を所定回数照射した後に、前記コントローラは、前記第k調整試料の前記信号強度と該信号強度の最大値との第k比率が閾値以上、あるいは、前記第k調整試料の前記信号強度が閾値以上であるか否かに基づいて、前記分析試料の表面位置と前記レーザ光の焦点位置とが適合しているか否かを判断する、請求項2に記載の分析装置。
  6. 前記第k比率が閾値以上、あるいは、前記第k調整試料の前記信号強度が閾値以上である場合、前記コントローラは、前記分析試料の表面位置と前記レーザ光の焦点位置とが適合していると判断し、
    前記第k比率が閾値未満、あるいは、前記第k調整試料の前記信号強度が閾値未満である場合、前記コントローラは、前記分析試料の表面位置と前記レーザ光の焦点位置とが適合していないと判断する、請求項5に記載の分析装置。
  7. 試料を搭載可能なステージと、前記試料にレーザ光を照射するレーザ生成部と、前記レーザ光の照射によって気化された前記試料の元素の信号強度を検出する検出部と、前記レーザ生成部を制御するコントローラとを備えた分析装置を用いた分析方法であって、
    分析対象である分析試料および焦点を調整するために用いられる第1調整試料を前記ステージ上に搭載し、
    前記第1調整試料にレーザ光を照射し、
    前記レーザ光の照射によって気化された前記第1調整試料の元素の信号強度を検出し、
    前記第1調整試料の前記信号強度に基づいて前記第1調整試料の表面位置に対する前記レーザ光の焦点位置を判断し、
    前記分析試料の表面に前記レーザ光の焦点位置を適合させるように前記レーザ生成部を制御し、
    前記分析試料にレーザ光を照射して前記分析試料の元素の信号強度を検出し、
    前記分析試料の元素の信号強度に基づいて前記分析試料を分析することを具備する分析方法。
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